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特開2024-61657固体マイクロ電池を製造する方法および対応するマイクロ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061657
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】固体マイクロ電池を製造する方法および対応するマイクロ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240425BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240425BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240425BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240425BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240425BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240425BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240425BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240425BHJP
【FI】
H01M10/0585
B32B9/00 A
B32B7/025
H01M10/0562
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/139
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023179279
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】2210878
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】コロンナ ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】オウカッシ サミ
(72)【発明者】
【氏名】バート モード
(72)【発明者】
【氏名】ドウシャン ジェローム
【テーマコード(参考)】
4F100
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AA17B
4F100AB12D
4F100AB17D
4F100AB31D
4F100BA03
4F100BA07
4F100DE01A
4F100EH66A
4F100GB41
4F100JA11A
4F100JA11B
4F100JG01C
4F100YY00A
4F100YY00B
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ12
5H029CJ24
5H029HJ04
5H029HJ05
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA19
5H050GA12
5H050GA24
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】漏れ電流を制限する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、固体マイクロ電池であって:
- 基板(S)と;
- 第1および第2の反対側の表面(20、21)を有するカソードを形成するリチウム-コバルト-酸化物層(2)と;
- カソード(2)の第2の表面(21)が基板(S)に向けて配置された、カソード(2)の第1の表面(20)に形成されたリチウム系固体電解質(4)と;
- 固体電解質(4)上に形成されたアノード(5)と;
を備え、
リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、第1の表面(20)から第2の表面(21)へと増加する粒度を持つことが注目に値する、固体マイクロ電池に関する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体マイクロ電池を製造する方法であって:
a)初期基板(1)およびリチウム-コバルト-酸化物層(2)を連続して備える積層体を使用する工程であって;リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、第1および第2の反対側の表面(20、21)を有するカソードを形成し、第1の表面(20)が、初期基板(1)に向けて配置され;リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、第1の表面(20)から第2の表面(21)へと増加する粒度を持ち;リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、それぞれ、第1および第2の表面(20、21)に向けて配置された第1および第2の区域(Z、Z)を連続して含有し;第1の区域(Z)が、等軸晶粒状体(G)を優勢に含有し;第2の区域(Z)が、円柱状粒状体(G)を優勢に含有し;第1の区域(Z)が、40nm以下の平均粒度を持ち、粒度が、粒度分析を介して得られるリチウム-コバルト-酸化物粒子の特性寸法である、工程と;
b)転写基板(3)を、カソード(2)の第2の表面(21)に接合し、次に積層体を反転させる工程と;
c)カソード(2)の第1の表面(20)を露出させるために、初期基板(1)を除去する工程と;
d)カソード(2)の第1の表面(20)に、リチウム系固体電解質(4)を形成する工程と;
(e)固体電解質(4)上にアノード(5)を形成する工程と
を連続して含む、方法。
【請求項2】
工程a)が、リチウム-コバルト-酸化物層(2)が多結晶層であるように実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)が、第1の区域(Z)が100nm~500nmの間に含まれる厚さ、好ましくは200nm~400nmの間に含まれる厚さを有するように実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)が、リチウム-コバルト-酸化物層(2)が1μm~200μmの間に含まれる厚さ、好ましくは10μm~200μmの間に含まれる厚さを有するように実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が、積層体がリチウム-コバルト-酸化物層(2)の第2の表面(21)に形成されたカソード集電体(6)を備えるように実行され;かつ工程b)が、転写基板(3)がカソード集電体(6)に接合するように実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、転写基板(3)がカソード(2)の第2の表面(21)に接合するカソード集電体(6)を備えるように実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)が、転写基板(3)がカソード集電体(6)を形成するように、転写基板(3)が導電性の材料から作製されるように実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)が、積層体が初期基板(1)とリチウム-コバルト-酸化物層(2)の間に形成された緩衝層(T)、好ましくは金属緩衝層を備えるように実行され;工程c)が、カソード(2)の第1の表面(20)を露出させるために、初期基板(1)および緩衝層(T)を除去することからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アノード(5)に電気的に接続されたアノード集電体(7)を形成する工程f)を含み、工程f)が、工程e)後に実行される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)が:
)初期基板(1)を使用する工程と;
)リチウム-コバルト-酸化物層(2)が第1の表面(20)から第2の表面(21)へと増加する粒度を持つように設定された成長によって、初期基板(1)上にリチウム-コバルト-酸化物層(2)を形成する工程と;
を含み、
工程a)が、請求項10が請求項8に従属する場合は、リチウム-コバルト-酸化物層(2)が緩衝層(T)上に形成されるように実行され;
工程a)が、電気分解、カソード・スパッタリング、および化学蒸着から選択される技術を使用して実行される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
固体マイクロ電池であって:
- 基板(S)と;
- リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、それぞれ、第1および第2の表面(20、21)に向けて配置された第1および第2の区域(Z、Z)を連続して含有し;第1の区域(Z)が、等軸晶粒状体(G)を優勢に含有し;第2の区域(Z)が、円柱状粒状体(G)を優勢に含有し;第1の区域(Z)が、40nm以下の平均粒度を持ち、粒度が、粒度分析を介して得られるリチウム-コバルト-酸化物粒子の特性寸法である、第1および第2の反対側の表面(20、21)を有するカソードを形成するリチウム-コバルト-酸化物層(2)と;
- カソード(2)の第2の表面(21)が基板(S)に向けて配置された、カソード(2)の第1の表面(20)に形成されたリチウム系固体電解質(4)と;
- 固体電解質(4)上に形成されたアノード(5)と;
を備え、
リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、第1の表面(20)から第2の表面(21)へと増加する粒度を持つ、固体マイクロ電池。
【請求項12】
リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、多結晶層である、請求項11に記載のマイクロ電池。
【請求項13】
- リチウム-コバルト-酸化物層(2)が、1μm~200μmの間に含まれる厚さ、好ましくは10μm~200μmの間に含まれる厚さを有し;
- 第1の区域(Z)が、100nm~500nmの間に含まれる厚さ、好ましくは200nm~400nmの間に含まれる厚さを有する、
請求項11または12に記載のマイクロ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム系固体電解質を含む固体マイクロ電池の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、マイクロエレクトロニクス、モノのインターネット、および埋込み可能機器または携帯機器に特に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
先行技術分野において、特に文献US2021/0359339A1から公知の固体マイクロ電池を製造する方法は:
a)成膜技術を使用して、リチウム-コバルト-酸化物カソードを形成する工程と;
b)カソードの表面を研磨する工程と;
c)カソードの表面を、酸素-プラズマ処理を使用して再活性する工程と
を含む。
【0004】
厚いリチウム-コバルト-酸化物層(すなわち、数十マイクロメートルの厚さを有する)を使用することにより、高い表面粗さをもたらし、高い漏れ電流へとつながる。工程B)およびC)は、この問題を解決することを可能にする。
【0005】
しかしながら、このような先行技術プロセスは、工程B)およびC)が実行するのに慎重を要する場合がある限り、完全に満足できるものではない。工程B)およびC)は、専用の装置(例えばプラズマ用の真空チャンバ、§0038を参照のこと)を必要とし、かつ特定の困難をもたらす(例えば、研磨により、カソードの表面に汚染物質の層が加わる、§0071を参照のこと)。工程B)およびC)は、長期間の実行を必要とする場合があり、調整可能なパラメータ(例えば、使用される気体、プラズマ処理時間、プラズマ濃度、汚染物質の層の除去など)を最適化するのに特別な技術力が必要とされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当業者は、工程B)およびC)を回避しながら、それにもかかわらず漏れ電流を制限する方法を探究してきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の欠点を完全にまたは部分的に改善することを目的とする。この目的を達成するために、本発明の1つの主題は、固体マイクロ電池を製造する方法であって:
a)初期基板およびリチウム-コバルト-酸化物層を連続して備える積層体を使用する工程であって;リチウム-コバルト-酸化物層が、第1および第2の反対側の表面を有するカソードを形成し、第1の表面が初期基板に向けて配置され;リチウム-コバルト-酸化物層が、第1の表面から第2の表面へと増加する粒度を持つ、工程と;
b)転写基板を、カソードの第2の表面に接合し、次に積層体を反転させる工程と;
c)カソードの第1の表面を露出させるために、初期基板を除去する工程と;
d)カソードの第1の表面に、リチウム系固体電解質を形成する工程と;
e)固体電解質上にアノードを形成する工程と
を連続して含む、方法である。
【0008】
したがって、本発明によるこのような方法は、特に工程b)に基づいて、先行技術の工程B)およびC)を回避しながら、カソードの第1の表面と電解質との間の界面で、好ましい結晶性(すなわち、より小さい粒状体)が得られることを可能にする。本発明者らは、初期基板上のリチウム-コバルト-酸化物層の成長により、第1の表面(初期基板に向けて配置される)から、反対側の第2の表面へと増加する粒度が生じ、第1の表面は低い粗さを有し、第2の表面は高い粗さを有することを見出した。工程b)およびc)により、カソードの第1の表面と電解質との間の界面における小粒状体の存在を得て、それによって漏れ電流を制限することが可能となる。
【0009】
その上、カソードの第1の表面と電解質との間の界面における小粒状体の存在により、続いて、Liリチウムイオンの拡散が容易となり、これは、マイクロ電池の内部抵抗の低減を可能とする。
【0010】
本発明による方法は、以下の特色のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0011】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は、リチウム-コバルト-酸化物層が多結晶層であるように実行される。
【0012】
多結晶層は、粒状体の凝集から成り立つ層とは異なる。したがって、多結晶リチウム-コバルト-酸化物層を有すると、凝集された粒状体から成り立つ層と比較して、単位体積当たりのより高い利用可能なエネルギーを得ることが可能となる。
【0013】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は:
- リチウム-コバルト-酸化物層が、それぞれ第1および第2の表面に向けて配置される、第1および第2の区域を連続して含有し;
- 第1の区域が、等軸晶粒状体を優勢に含有し;
- 第2の区域が、円柱状粒状体を優勢に含有する
ように実行される。
【0014】
上述のように、本発明者らは、初期基板上のリチウム-コバルト-酸化物層の成長により、第1の区域から第2の区域へと増加する粒度が生じ、第1の表面は低い粗さ(等軸晶粒状体)を有し、第2の表面は高い粗さ(円柱状粒状体)を有することを見出した。
【0015】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は、第1の区域が、100nm~500nmの間に含まれる厚さ、好ましくは200nm~400nmの間に含まれる厚さを有するように実行される。
【0016】
そのような厚さの1つの利点は、続いて、Liリチウムイオンの拡散を容易にし、マイクロ電池の内部抵抗の低減を可能とすることである。
【0017】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は、第1の区域が、40nm以下の平均粒度を持つように実行される。
【0018】
そのような粒度の1つの利点は、漏れ電流を著しく制限することである。
【0019】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は、リチウム-コバルト-酸化物層が、1μm~200μmの間に含まれる厚さ、好ましくは10μm~200μmの間に含まれる厚さを有するように実行される。
【0020】
そのような厚さの1つの利点は、マイクロ電池の貯蔵容量を増加させることである。
【0021】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は、積層体がリチウム-コバルト-酸化物層の第2の表面に形成されたカソード集電体を備えるように実行され;工程b)は、転写基板がカソード集電体に接合するように実行される。
【0022】
転写基板およびカソード集電体の材料に応じて、リチウム-コバルト-酸化物層の第2の表面にカソード集電体を形成し、工程b)における接合を容易にすることが賢明な場合がある。
【0023】
本発明の1つの特色によれば、工程b)は、転写基板が、カソードの第2の表面に接合したカソード集電体を備えるように実行される。
【0024】
転写基板およびカソード集電体の材料に応じて、転写基板上にカソード集電体を前もって形成し、工程b)における接合を容易にすることが賢明な場合がある。
【0025】
本発明の1つの特色によれば、工程b)は、転写基板がカソード集電体を形成するように、転写基板が導電性の材料から作製されるように実行される。
【0026】
その1つの利点は、カソード集電体の機能を実行するための専用の層を形成する必要を回避することである。
【0027】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は、積層体が初期基板とリチウム-コバルト-酸化物層の間に形成された緩衝層、好ましくは金属緩衝層を備えるように実行され;工程c)は、カソードの第1の表面を露出させるために、初期基板および緩衝層を除去することからなる。
【0028】
緩衝層の1つの利点は、例えば初期基板とリチウム-コバルト-酸化物層が実質的に異なる熱膨張係数を有する場合、積層体が、良好な機械的強度を示すことを確実にすることである。その上、緩衝層は、例えば研削によって達成され得る、工程c)における初期基板の除去中に、停止層の機能を果たし得る。
【0029】
本発明の1つの特色によれば、本方法は、アノードに電気的に接続されたアノード集電体を形成する工程f)を含み、工程f)は、工程e)後に実行される。
【0030】
アノード集電体は、アノード上に形成され得る。しかしながら、アノード集電体は、アノードに電気的に接続され、かつカソードから電気的に絶縁されるように、転写基板上に形成されてもよい。
【0031】
本発明の1つの特色によれば、工程a)は:
)初期基板を使用する工程と;
)リチウム-コバルト-酸化物層が、第1の表面から第2の表面へと増加する粒度を持つように設定された成長によって、初期基板上にリチウム-コバルト-酸化物層を形成する工程と
を含み;
工程a2)は、緩衝層が存在する場合、リチウム-コバルト-酸化物層は、緩衝層上に形成されるように実行され;
工程a2)は、電気分解、カソード・スパッタリング、および化学蒸着から選択される技術を使用して実行される。
【0032】
上述のように、本発明者らは、初期基板上のリチウム-コバルト-酸化物層の成長により、第1の表面(初期基板に向けて配置される)から、反対側の第2の表面へと増加する粒度が生じ、第1の表面は低い粗さを有し、第2の表面は高い粗さを有することを見出した。
【0033】
本発明の別の主題は、固体マイクロ電池であって:
-基板と;
-第1および第2の反対側の表面を有するカソードを形成するリチウム-コバルト-酸化物層と;
-カソードの第2の表面が基板に向けて配置された、カソードの第1の表面に形成されたリチウム系固体電解質と;
-固体電解質上に形成されたアノードと;
を備え、
リチウム-コバルト-酸化物層が、第1の表面から第2の表面へと増加する粒度を持つことを特徴とする、固体マイクロ電池である。
【0034】
したがって、本発明によるこのようなマイクロ電池は、カソードの第1の表面と電解質との間の界面に小粒状体を持ち、これが漏れ電流を制限することを可能とする。その上、カソードの第1の表面と電解質との間の界面における小粒状体の存在により、続いて、Liリチウムイオンの拡散が容易となり、これが、マイクロ電池の内部抵抗の低減を可能とする。
【0035】
本発明の1つの特色によれば、リチウム-コバルト-酸化物層は多結晶層である。
【0036】
多結晶層は、粒状体の凝集から成り立つ層とは異なる。したがって、多結晶リチウム-コバルト-酸化物層を有すると、凝集された粒状体から成り立つ層と比較して、単位体積当たりのより高い利用可能なエネルギーを得ることが可能となる。
【0037】
本発明の1つの特色によれば、:
- リチウム-コバルト-酸化物層が、それぞれ第1および第2の表面に向けて連続して配置される、第1および第2の区域を含有し;
- 第1の区域は、等軸晶粒状体を優勢に含有し;
- 第2の区域は、円柱状粒状体を優勢に含有する。
【0038】
したがって、第1の表面は、低い粗さ(等軸晶粒状体)を有し、一方、第2の表面は高い粗さ(円柱状粒状体)を有する。
【0039】
本発明の1つの特色によれば、第1の区域は、40nm以下の平均粒度を持つ。
【0040】
そのような粒度の1つの利点は、漏れ電流を著しく制限することである。
【0041】
本発明の1つの特色によれば;
-リチウム-コバルト-酸化物層は、1μm~200μmの間に含まれる厚さ、好ましくは10μm~200μmの間に含まれる厚さを有し;
第1の区域は、100nm~500nmの間に含まれる厚さ、好ましくは200nm~400nmの間に含まれる厚さを有する。
【0042】
そのようなリチウム-コバルト-酸化物層の厚さの1つの利点は、マイクロ電池の貯蔵容量を増加させることである。さらに、そのような第1の区域の厚さの1つの利点は、続いて、Liリチウムイオンの拡散を容易にし、マイクロ電池の内部抵抗の低減を可能とすることである。
定義
- 「マイクロ電池」によって、薄い固体層から形成される積層体を備える、いわゆる「全固体」蓄電池を意味し、積層体は、一般に、約10マイクロメートルまたは約100マイクロメートル程度の厚さを有する。より正確には、マイクロ電池は、以下の特色を有する電池と定義され得る:
(i)全ての活性層(すなわち、電極および電解質)は、固体無機材料のみから作製され、したがって、これは特に、液体の電解質またはゲル形態のポリマーから作製された電解質、およびポリマー系の結合材を含有する材料から作製された電極を除外し;
(ii)活性層の個々の厚さは500μmより小さく、電解質の厚さは一般に5μmより小さく;
(iii)面積寸法は、典型的には、1mm~10cmの範囲である。
- 「基板」によって、自立性の物理的担体を意味する。基板はウエハであってもよく、一般に結晶物質のインゴットを切断することによって得られるディスクの形態をとる。
- 「粒度」によって、リチウム-コバルト-酸化物粒子(粒状体)の特性寸法を意味し、粒度分析(例えば透過電子顕微鏡を使用)を介して得ることができる。粒度は、等価直径、すなわち、所与のリチウム-コバルト-酸化物粒子と同一のまたは等価の挙動を有する球体の直径に対応し得る。
- 「平均粒度」によって、リチウム-コバルト-酸化物粒子の特性寸法の加算平均を意味する。
- 「優勢に」によって、第1の区域における粒状体の50%超が等軸晶であることを意味する。同様に、第2の区域における粒状体の50%超が円柱状であることを意味する。
- 「-系」によって、リチウムが、固体電解質の構成要素であることを意味する。リチウムは、必ずしも固体電解質の主要かつ優勢の要素である必要はない。固体電解質は、リチウムLi、リンPおよび酸素O、任意選択で窒素Nおよび/または硫黄Sを共に含んでもよい。酸素Oは、固体電解質の優勢成分であってもよい。
- 「等軸晶粒状体」によって、占有的な結晶配向のない成長(等方性成長)を示す粒状体を意味する。
- 「円柱状粒状体」によって、占有的な結晶配向を持つ成長(異方性成長)を示す、細長い形状(樹枝状とも呼ばれる)の粒状体を意味する。
- 「厚さ」によって、積層体の高さ寸法、すなわち、初期基板の表面に対して垂直に測定された寸法を意味する。
- 「導電性」によって、転写基板の材料が、300Kにおいて10S/cm以上の導電率を有することを意味する。
- 「XとYの間」または「XとYの間に含まれる」という表現を使用して表される値XおよびYは、定義された値の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
他の特色および利点が、本発明のさまざまな実施形態の詳細な説明、例を含む説明および添付された図式の参照から明らかとなるであろう。
【0044】
図1】本発明による方法の工程を表し、転写基板がカソード集電体を形成する実施形態を例示する概略断面図である。
【0045】
図2】工程f)を実行する一例をさらに例示する、図1に類似する概略図である。
【0046】
図3】緩衝層の存在をさらに例示する、図1に類似する概略図である。
【0047】
図4】初期基板をコーティングする酸化物層の存在をさらに例示し、その上に緩衝層が形成される、図3に類似する概略図である。
【0048】
図5】本発明による方法の工程を表し、リチウム-コバルト-酸化物層の第2の表面に、カソード集電体が形成される実施形態を例示する概略断面図である。
【0049】
図6】本発明による方法の工程を表し、転写基板がカソード集電体を形成する実施形態を例示する概略断面図である。
【0050】
図7】本発明による方法の工程を表し、緩衝層および初期基板を被覆する酸化物層が存在し、緩衝層が酸化物層の上に形成され、カソード集電体がリチウム-コバルト-酸化物層の第2の表面に形成される実施形態を例示する概略断面図である。
【0051】
図8】本発明によるマイクロ電池を部分的に示す(例えばアノード集電体は例示されていない)概略断面図である。
【0052】
判読しやすく、かつ理解を容易とするために、上述の図式は概略図であり、必ずしも縮尺どおりではないことに留意されたい。横断面は、積層体を通して高さ方向に、または言い換えれば初期基板の表面に対して垂直に切断された横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
簡単化するために、さまざまな実施形態において、同一であるかまたは同じ機能を果たす要素は、同じ参照番号で表されている。
【0054】
方法
本発明の1つの主題は、固体マイクロ電池を製造する方法であって:
a)初期基板1およびリチウム-コバルト-酸化物層2を連続して備える積層体を使用する工程であって;リチウム-コバルト-酸化物層2が、第1および第2の反対側の表面20、21を有するカソードを形成し、第1の表面20が初期基板1に向けて配置され;リチウム-コバルト-酸化物層2が、第1の表面20から第2の表面21へと増加する粒度を持つ、工程と;
b)転写基板3を、カソード2の第2の表面21に接合し、次に積層体を反転させる工程と;
c)カソード2の第1の表面20を露出させるために、初期基板1を除去する工程と;
d)カソード2の第1の表面20に、リチウム系固体電解質4を形成する工程と;
e)固体電解質4上にアノード5を形成する工程と
を連続して含む、方法である。
【0055】
工程a)
工程a)で使用される積層体は、初期基板1およびリチウム-コバルト-酸化物(LiCoO)層2を連続して備える。リチウム-コバルト-酸化物層2は、第1および第2の反対側の表面20、21を有し、第1の表面20は、初期基板1に向けて配置される。リチウム-コバルト-酸化物層2は、第1の表面20から第2の表面21へと増加する粒度を持つ。
【0056】
工程a)は、有利には:
- リチウム-コバルト-酸化物層2が、それぞれ、カソード2の第1および第2の表面20、21に向けて配置された、第1および第2の区域Z、Zを連続して含有し;
- 第1の区域Zが、等軸晶粒状体Gを優勢に含有し;
- 第2の区域Zが、円柱状粒状体Gを優勢に含有する
ように実行される。
【0057】
工程a)は、有利には、第1の区域Zが、100nm~500nmの間に含まれる厚さ、好ましくは200nm~400nmの間に含まれる厚さを有するように実行される。
【0058】
工程a)は、有利には、第1の区域Zが、40nm以下の平均粒度を持つように実行される。
【0059】
工程a)は、有利には、リチウム-コバルト-酸化物層2が、1μm~200μmの間に含まれる厚さ、好ましくは10μm~200μmの間に含まれる厚さを有するように実行される。
【0060】
工程a)は、有利には、リチウム-コバルト-酸化物層2が多結晶層であるように実行される。多結晶層は、粒状体の凝集から成り立つ層とは異なる。したがって、多結晶リチウム-コバルト-酸化物層を有すると、凝集された粒状体から成り立つ層と比較して、単位体積当たりのより高い利用可能なエネルギーを得ることが可能となる。
【0061】
図5および7に例示される実施形態によれば、工程a)は、積層体がリチウム-コバルト-酸化物層2の第2の表面21に形成されたカソード集電体6を備えるように実行される。非限定的な例として、カソード集電体6は、チタン-銅(TiCu)合金から作製されてもよい。別形として、カソード集電体6は、チタン(Ti)層および銅(Cu)層を備えてもよい。チタン層は500nmの厚さを有し得る。銅層は1μmの厚さを有し得る。
【0062】
図3、4および7に例示されるように、工程a)は、有利には、積層体が初期基板1とリチウム-コバルト-酸化物層2との間に形成された緩衝層T、好ましくは金属緩衝層を備えるように実行される。非限定的な例として、緩衝層Tは、チタン(Ti)または白金(Pt)から作製されてもよい。
【0063】
工程a)は、有利には:
)初期基板を1使用する工程と;
)リチウム-コバルト-酸化物層2が、第1の表面20から第2の表面21へと増加する粒度を持つように設定された成長によって、初期基板1上にリチウム-コバルト-酸化物層2を形成する工程と
を含む。
【0064】
工程a)は、リチウム-コバルト-酸化物層2が、適切な場合は、緩衝層T上に形成されるように実行される。工程a)は、有利には、電気分解、カソード・スパッタリング、および化学蒸着から選択される技術を使用して実行される。
【0065】
電気分解は、水熱電気化学的なプロセスである。前駆物質浴は、濃縮された水酸化リチウム溶液中のコバルト塩から構成されてもよく、溶媒は、場合によっては鉱質除去かつ脱酸素された水である。温度は、150℃~200℃の間に制御され得る。電気分解条件は、一定の電流密度を達成するようにされ得る。電気分解によって形成されるリチウム-コバルト-酸化物層2は、数百μmまでの大きい厚さを有し得る。
【0066】
カソード・スパッタリングは、粒子がカソード(「標的」と呼ばれ、リチウム-コバルト酸化物から作製される)からはじき飛ばされ、次に、希薄な雰囲気中で、初期基板1上(または適切な場合は緩衝層T上)に再凝結される技術(冷間プロセス)である。冷プラズマは、標的と初期基板1の間で生じる。電界の影響下で、プラズマの正電荷種はカソード(標的)に引きつけられ、そこに衝突する。プラズマの正電荷種はその運動量を伝達し、原子を中性粒子の形態で標的から放出させ、初期基板1上に凝結させる。膜は、初期基板1と膜の間の相互作用力に依存する多くの機構を介して形成される。非限定的な例として、初期基板1上に形成された白金緩衝層Tの存在下で、カソード・スパッタリングは、50℃~60℃の間に含まれる温度で、200Wの電力および-50V程度のバイアス電圧を用いて実行され得る。
【0067】
化学蒸着(CVD)は、初期基板1の表面で反応および/または分解する1つまたは複数の気相前駆物質に対して、初期基板1を露出させ、所望の沈着物を生成するプロセスである。リチウム-コバルト酸化物を形成するために使用される前駆物質は、(シクロペンタジエニル)コバルトジカルボニル(CpCo(CO))およびtert-ブチルリチウム(t-BuLi)であり得る。CVDは、500℃程度の温度で実行され得る。
【0068】
図5および7に例示される実施形態によれば、工程a)は、カソード集電体6をリチウム-コバルト-酸化物層2の第2の表面21に形成することからなる工程a)を含み得る。工程a)は、工程a)後に実行される。
【0069】
工程a)は、有利には、初期基板1が:
- ガラス基板、
- 二酸化ケイ素層10で被覆されたケイ素基板
から選択されるように実行される。
【0070】
工程b)
工程b)は、カソードの第2の表面21に転写基板3を接合し、次に積層体を反転させることからなる。工程b)は:
)転写基板3をカソード2の第2の表面21に接合する工程と;
)積層体が、転写基板3上に載るように積層体を反転させる工程と
を含む。
【0071】
図5および7に例示されるように、工程a)が、積層体がリチウム-コバルト-酸化物層2の第2の表面21に形成されたカソード集電体6を備えるように実行される場合、工程b)は、転写基板3がカソード集電体6に接合するように実行される。より正確には、工程b)は、転写基板3が、カソード集電体6に接合するように実行される。
【0072】
図6に例示される実施形態の別形によれば、工程b)は、転写基板3が、カソード2の第2の表面21に接合したカソード集電体6を備えるように実行される。言い換えれば、転写基板3は、カソード集電体6で被覆され得る。非限定的な例として、カソード集電体6は、チタン-銅(Ti-Cu)合金またはチタン-金(Ti-Au)合金から作製されてもよい。別形として、カソード集電体6は、チタン(Ti)層および銅(Cu)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。銅層は、500nm~2μmの間に含まれる厚さを有し得る。別形として、カソード集電体6は、チタン(Ti)層および金(Au)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。金層は、200nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0073】
図1~4に例示される実施形態のもう1つの別形によれば、工程b)は、転写基板3がカソード集電体6を形成するように、転写基板3が導電性の材料から作製されるように実行される。非限定的な例として、導電性の材料は、金属(例えば銅、アルミニウム)またはポリアニリンもしくはポリアクリレートなどのポリマーであってもよい。カソード2の第2の表面21の高い粗さに起因して、かつカソード2と導電性の転写基板3の間の熱膨張係数の違いに起因して、直接結合は、工程b)で一般に接合目的に使用することができない。したがって、カソード2の第2の表面21と導電性の転写基板3の間に界面をもたらすことが可能である。非限定的な例として、界面として:
(i)転写基板3の側面の導電性のバンプ、すなわち、はんだバンプなどのバンプ(例えば少なくとも100μmの直径を有するSn-Ag合金から作製されたバンプ)または少なくとも100μmの直径を有する金スタッド・バンプ、場合によっては非-導電性のペースト(NCP)などのポリマーによって分離された導電性のバンプ;および
(ii)カソード2の第2の表面21の側面の、薄い(例えば20nm~100nmの間に含まれる厚さを有する)金属(例えばTi-Au合金から作製されたもの)層
を使用することが可能である。
【0074】
界面の金属層は、カソード2の第2の表面21を濡れやすくすることが可能である。導電性の金バンプは、冷温または低温(100℃~150℃)で接合を実行することを可能とし、一方、はんだバンプは、250℃程度の温度で接合を実行することを可能とする。
【0075】
一実施形態では、工程b)は、転写基板3が硬化ポリマーから作製されるように実行される。硬化ポリマーが誘電体(例えばエポキシ樹脂、ポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールPBO)である場合、本方法は、有利には、例えばレーザ穿孔によって、硬化ポリマー内に導電性トラックを形成する工程を含む。
【0076】
非限定的な例として、転写基板3は、200μm~1mmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0077】
非限定的な例として、工程b)は、転写基板3およびカソード集電体6の材料の性質に応じて、共晶接合、ろう付け、伝導性ラッカー(スクリーン印刷型)を使用して、または接着剤(例えばエポキシ)によって実行されてもよい。共晶接合およびろう付けは、金属層(例えば2つのTi/CuまたはTi/Auサブ層)が、カソード2の第2の表面21に形成されることを必要とする。
【0078】
工程c)
工程c)は、カソード2の第1の表面20を露出させるために、初期基板1を除去することからなる。
【0079】
工程a)が、積層体が初期基板1とリチウム-コバルト-酸化物層2の間に形成された緩衝層T、好ましくは金属緩衝層を備えるように実行される場合、工程c)は、カソード2の第1の表面20を露出させるために、初期基板1および緩衝層Tを除去することからなる。言い換えれば、工程c)は、カソード2の第1の表面20を露出させるために、緩衝層Tを除去することからなる工程c)を含む。
【0080】
図4および7に例示されるように、初期基板1が、二酸化ケイ素層10で被覆されたケイ素基板である場合、ケイ素基板は、研削工程、続いて残留するケイ素を食刻する工程(乾式または湿式)を介して除去され得、二酸化ケイ素層10が停止層として作用する。ケイ素基板は、最初に、数十μmの厚さに到達するまで、研削によって薄くされる。積層体は、多孔質セラミック・チャックに対する吸着によって固定され、次に研削砥石の下に置くことができる。研削砥石は、材料に合わせた大きさの合成ダイヤモンド砥粒、樹脂結合剤などを含み、制御された多孔度の金属ベースの周辺部に置かれた1組の刃を備える。次に、研削砥石およびチャックを回転させ、初期基板1を、10μm~100μmの間に含まれる厚さ、好ましくは50μmの厚さが残るまで薄くするために、研削砥石が降下する。この残った厚さは、次に、乾式または湿式の食刻によって二酸化ケイ素層10まで除去される。研削砥石の回転速度(0~3000rpmの範囲で変化)、研削砥石の降下速度(0.01~50μm/秒の範囲で変化)およびチャックの回転速度(0~300rpmで変化)は、除去される材料および厚さに合わせて調整される。研削は、一連の複数の降下速度および一連の複数の研削砥石を含み得る。非限定的な例として、研削は、Disco GF01研削砥石を備えるDisco DAG810を使用して実施されてもよい。研削砥石の回転速度は、2000rpm程度であり得る。研削砥石の降下速度は、1.5μm/秒程度であり得る。チャックの回転速度は、300rpm程度であり得る。
【0081】
続いて、二酸化ケイ素層10は、食刻-工程cox)-によって除去され得、緩衝層Tが停止層として作用する。最後に、緩衝層Tは、食刻-工程c)-によって除去され得、カソード2が停止層として作用する。
【0082】
工程d)
工程d)は、カソード2の第1の表面20に、リチウム系固体電解質4を形成することからなる。
【0083】
工程d)は、有利には、固体電解質4が、固体イオン伝導体、好ましくはオキシ窒化リンリチウム(LiPO)から作製されるように実行される。
【0084】
固体電解質4は、100nm~4μmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0085】
工程e)
工程e)は、固体電解質4上にアノード5を形成することからなる。アノード5は、好ましくは、チタンTi、銅Cu、リチウムLi、アルミニウムAl、白金Pt、およびステンレス鋼から選択される金属から作製される。
【0086】
アノード5は、500nm~20μmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0087】
工程f)
図2に例示されるように、本方法は、有利には、アノード5に電気的に接続されたアノード集電体7を形成することからなる工程f)を含む。アノード集電体7は、アノード5上に形成され得る。次に、工程f)は、工程e)後に実行される。しかしながら、アノード集電体7は、アノード5に電気的に接続され、かつカソード2から電気的に絶縁されるように、転写基板3上に形成されてもよい。
【0088】
非限定的な例として、アノード集電体7は、チタン-銅(Ti-Cu)合金またはチタン-金(Ti-Au)合金から作製されてもよい。別形として、アノード集電体7は、チタン(Ti)層および銅(Cu)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。銅層は、500nm~2μmの間に含まれる厚さを有し得る。別形として、アノード集電体7は、チタン(Ti)層および金(Au)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。金層は、200nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0089】
マイクロ電池
本発明の1つの主題は、固体マイクロ電池であって:
- 基板Sと;
- 第1および第2の反対側の表面20、21を有するカソードを形成するリチウム-コバルト-酸化物層2と;
- カソードの第2の表面21が基板Sに向けて配置された、カソード2の第1の表面20に形成されたリチウム系固体電解質4と;
- 固体電解質4上に形成されたアノード5と;
を備え、
リチウム-コバルト-酸化物層2が、第1の表面20から第2の表面21へと増加する粒度を持つことが注目に値する、固体マイクロ電池である。
【0090】
基板
非限定的な例として、基板Sは:
- 導電性トラックを含む硬化誘電体ポリマー;
- 金属;
- 半導体;
- ガラスまたはセラミック
から作製されてもよい。
【0091】
基板Sは、一時的なものであっても、または持続性のものであってもよい。
【0092】
カソード
リチウム-コバルト-酸化物(LiCoO)層2は、第1および第2の反対側の表面20、21を有し、第2の表面21は、基板Sに向けて配置される。リチウム-コバルト-酸化物層2は、第1の表面20から第2の表面21へと増加する粒度を持つ。
【0093】
一実施形態によれば、リチウム-コバルト-酸化物層2は、それぞれ、カソード2の第1および第2の表面20、21に向けて配置された、第1および第2の区域Z、Zを連続して含有する。第1の区域Zは、等軸晶粒状体Gを優勢に含有する。第2の区域Zは、円柱状粒状体Gを優勢に含有する。
【0094】
第1の区域Zは、有利には、40nm以下の平均粒度を持つ。第1の区域Zは、有利には、100nm~500nmの間に含まれる厚さ、好ましくは200nm~400nmの間に含まれる厚さを有する。
【0095】
リチウム-コバルト-酸化物層2は、有利には、1μm~200μmの間に含まれる厚さ、好ましくは10μm~200μmの間に含まれる厚さを有する。
【0096】
リチウム-コバルト-酸化物層2は、有利には多結晶層である。多結晶層は、粒状体の凝集から成り立つ層とは異なる。したがって、多結晶リチウム-コバルト-酸化物層を有すると、凝集された粒状体から成り立つ層と比較して、単位体積当たりのより高い利用可能なエネルギーを得ることが可能となる。
【0097】
固体電解質
固体電解質4は、リチウム系である。固体電解質4は、カソード2の第1の表面20に形成される。
【0098】
固体電解質4は、有利には、固体イオン伝導体、好ましくはオキシ窒化リンリチウム(LiPO)から作製される。
【0099】
固体電解質4は、100nm~4μmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0100】
アノード
アノード5は、固体電解質4上に形成される。
【0101】
アノード5は、好ましくは、チタンTi、銅Cu、リチウムLi、アルミニウムAl、白金Pt、およびステンレス鋼から選択される金属から作製される。
【0102】
アノード5は、500nm~20μmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0103】
集電体
マイクロ電池は、カソード2に電気的に接続されたカソード集電体6を備え得る。カソード集電体6は、基板Sからなり得る。別形として、カソード集電体6は、基板Sとカソード2の間に形成されてもよい。非限定的な例として、カソード集電体6は、チタン-銅(Ti-Cu)合金またはチタン-金(Ti-Au)合金から作製されてもよい。別形として、カソード集電体6は、チタン(Ti)層および銅(Cu)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。銅層は、500nm~2μmの間に含まれる厚さを有し得る。別形として、カソード集電体6は、チタン(Ti)層および金(Au)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。金層は、200nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0104】
マイクロ電池は、アノード5に電気的に接続されたアノード集電体7を備え得る。アノード集電体7は、アノード5上に形成され得る。しかしながら、アノード集電体7は、アノード5に電気的に接続され、かつカソード2から電気的に絶縁されるように、基板S上に形成されてもよい。非限定的な例として、アノード集電体7は、チタン-銅(Ti-Cu)合金またはチタン-金(Ti-Au)合金から作製されてもよい。別形として、アノード集電体7は、チタン(Ti)層および銅(Cu)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。銅層は、500nm~2μmの間に含まれる厚さを有し得る。別形として、アノード集電体7は、チタン(Ti)層および金(Au)層を備えてもよい。チタン層は、20nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。金層は、200nm~500nmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0105】
本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者は、それらの技術的に使用可能な組合せを考慮し、それらの等価物と置き換えることができるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】