(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061667
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】羊水マーカー検出テストストリップを有する着用物品
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240425BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240425BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/53 D
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180645
(22)【出願日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022169529
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第69回日本臨床検査医学会学術集会抄録集 「日本臨床検査医学会誌 Vol.70補冊」 発行所:一般社団法人日本臨床検査医学会 発行日:令和4年10月31日 [刊行物等] 第69回日本臨床検査医学会学術集会 開催日:令和4年11月18日
(71)【出願人】
【識別番号】522414648
【氏名又は名称】Cranebio株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敬太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】竹下 元
(72)【発明者】
【氏名】阿部 美里
(72)【発明者】
【氏名】菅原 育
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB15
2G045DA36
2G045FB03
2G045FB06
2G045FB07
2G045GC12
(57)【要約】
【課題】前期破水のモニタリングを簡便に行うことができる製品を提供すること。
【解決手段】イムノクロマト法を用いたテストストリップを有する着用物品であって、
前記テストストリップは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するためのものであり、
前記テストストリップは、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する、
着用物品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムノクロマト法を用いたテストストリップを有する着用物品であって、
前記テストストリップは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するためのものであり、
前記テストストリップは、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する、
着用物品。
【請求項2】
下着又は吸収性物品である、請求項1に記載の着用物品。
【請求項3】
前記テストストリップが、3mm以下の幅を有する、
請求項1又は2に記載の着用物品。
【請求項4】
前記テストストリップが、
膣分泌液に接触する第1部材
膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を認識する標識抗体を含有する、第2部材、及び
捕捉抗体を含有する表示部を有する、第3部材
を有しており、
前記捕捉抗体は、前記標識抗体とインスリン様成長因子結合蛋白1との結合により形成される複合体を捕捉することができ、
前記膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1が、前記第1部材から、前記第2部材を介して、前記第3部材の前記表示部に移動するように構成されており、かつ、
前記捕捉抗体が前記複合体を捕捉することによって、前記第3部材の前記表示部が呈色するように構成されている、
請求項1又は2に記載の着用物品。
【請求項5】
前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材が、この順番で、少なくとも部分的に互いに重なり合って積層されており、
前記積層方向における、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材の厚みの合計が、1.5mm以下である、
請求項4に記載の着用物品。
【請求項6】
前記標識抗体が、250nm~500nmの粒径を有する着色剤を有する、
請求項4に記載の着用物品。
【請求項7】
着用物品に適用して用いるための、イムノクロマト法を用いたテストストリップであって、
前記テストストリップは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するためのものであり、
前記テストストリップは、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する、
テストストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羊水マーカー検出テストストリップを有する着用物品、及び、着用物品に適用して用いるための羊水マーカー検出テストストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
破水、特に前期破水をモニタリングして早期検出を行うことは、安全な出産のために重要である。
【0003】
従来の検査方法として、例えば、前期破水における羊水の確認に適したpH検査用の綿棒が知られている。
【0004】
また、羊水に由来するIGFBP-1を検出するための抗原-抗体反応に基づくキットも知られている。このキットでは、滅菌スワブを用いて膣分泌液を採取する。このような従来の検査キットでは、IGFBP-1の検出範囲が比較的高い濃度範囲に設定されている。ライナー状にした場合には、他の粘液に含まれている化合物によって希釈されるが、希釈率は未知であるため、感度の再設定が必要となる。
【0005】
また、羊水漏出を検出するためのパンティーライナーも知られており、これは、羊水漏出を示すと考えられるpH変化を検出することによって機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方法では、前期破水の有無を調べるために、綿棒などを用いて膣中をぬぐい、それによって、検出対象となる膣分泌液を採取する。このような検出の方法は、手間がかかり、継続的にモニタリングを行う用途などには適しない。
【0007】
また、前期破水は、本人が自覚しにくいので、モニタリングを行うきっかけが得られない場合もある。
【0008】
本発明は、前期破水のモニタリングを簡便に行うことができる製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記の態様を含む本発明によって解決できる:
<態様1>
イムノクロマト法を用いたテストストリップを有する着用物品であって、
前記テストストリップは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するためのものであり、
前記テストストリップは、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する、
着用物品。
<態様2>
下着又は吸収性物品である、態様1に記載の着用物品。
<態様3>
前記テストストリップが、3mm以下の幅を有する、
態様1又は2に記載の着用物品。
<態様4>
前記テストストリップが、
膣分泌液に接触する第1部材
膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を認識する標識抗体を含有する、第2部材、及び
捕捉抗体を含有する表示部を有する、第3部材
を有しており、
前記捕捉抗体は、前記標識抗体とインスリン様成長因子結合蛋白1との結合により形成される複合体を捕捉することができ、
前記膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1が、前記第1部材から、前記第2部材を介して、前記第3部材の前記表示部に移動するように構成されており、かつ、
前記捕捉抗体が前記複合体を捕捉することによって、前記第3部材の前記表示部が呈色するように構成されている、
態様1~3のいずれか一項に記載の着用物品。
<態様5>
前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材が、この順番で、少なくとも部分的に互いに重なり合って積層されており、
前記積層方向における、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材の厚みの合計が、1.5mm以下である、
態様4に記載の着用物品。
<態様6>
前記標識抗体が、250nm~500nmの粒径を有する着色剤を有する、
態様4又は5に記載の着用物品。
<態様7>
着用物品に適用して用いるための、イムノクロマト法を用いたテストストリップであって、
前記テストストリップは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するためのものであり、
前記テストストリップは、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する、
テストストリップ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前期破水のモニタリングを簡便に行うことができる製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】
図1-1は、本発明に係るテストストリップの具体的な構成に関する概念図である。
【
図1-2】
図1-2は、本発明に係るテストストリップの具体的な構成に関する概略図である。
【
図2-1】
図2-1は、参考例を説明する図である。
【
図2-2】
図2-2は、参考例を説明する図である。
【
図2-3】
図2-3は、参考例を説明する図である。
【
図2-4】
図2-4は、参考例を説明する図である。
【
図2-5】
図2-5は、
図2-3に記載の1つのグラフの拡大図である。
【
図2-6】
図2-6は、
図2-3に記載の1つのグラフの拡大図である。
【
図2-7】
図2-7は、
図2-3に記載の1つのグラフの拡大図である。
【
図2-8】
図2-8は、
図2-3に記載の1つのグラフの拡大図である。
【
図4】
図4は、実施例1及び2に係るテストストリップの感度試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下で、本発明の詳細を説明する。
【0013】
<態様1>
イムノクロマト法を用いたテストストリップを有する着用物品であって、
前記テストストリップは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するためのものであり、
前記テストストリップは、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する、
着用物品。
【0014】
上述のとおり、従来の方法では、前期破水の有無を調べるために、例えば綿棒などを用いて膣中をぬぐうことによって、膣分泌液を採取する必要があった。しかしながら、前期破水は本人が自覚しにくいので、このように手間のかかる手法では、前期破水を早期に発見できないおそれがある。
【0015】
これに対して、本願の態様1に係る発明では、羊水中に多量に含まれるインスリン様成長因子結合蛋白1(Insulin-like Growth Factor Binding Protein-1、IGFBP-1)を検出するためのテストストリップが着用物品に適用されているので、特段の操作を要することなく、着用しているだけで、前期破水のモニタリングを行うことができる。
【0016】
また、本願態様1に係る着用物品が有するテストストリップでは、検出濃度範囲が0.3μg/L~25μg/Lに最適化されているので、膣分泌液中における羊水由来のインスリン様成長因子結合蛋白1を信頼性高く検出することできる。
【0017】
テストストリップの検出濃度は、IGFBP1のカゼインブロッキングバッファー溶液(1.0%Casein、100mM Borate、pH8.5)を標準液として用いて測定することができる。
【0018】
限定する意図はないが、具体的には、例えば、陽性検体粉末として、インスリン様増殖因子結合たんぱく質1(IGFBP1)、ヒト、組み換え体(25μg)(富士フィルム和光純薬株式会社:製品コード092-06201)を用い、希釈溶液として、ブロッキングバッファー溶液(1.0%Casein、100mM Borate、pH8.5)を用い、陽性検体粉末を希釈溶液にて目的の濃度になるように溶解・希釈することによって、標準溶液を作製することができる。
【0019】
本発明のテストストリップは、
より好ましくは0.4μg/L~20μg/L、
さらに好ましくは0.5μg/L~15μg/L、
さらにより好ましくは0.5μg/L~10μg/L
のインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する。
【0020】
<態様2>
下着又は吸収性物品である、態様1に記載の着用物品。
【0021】
態様2に係る発明によれば、着用物品が、普段使いできる下着又は吸収性物品なので、前期破水のモニタリングを、比較的簡便に、かつ継続して行うことができる。
【0022】
この態様では、例えば、下着の内側表面にテストストリップを接着してよく、また、吸収性物品を構成するシート状部材の間に、テストストリップを配置してよい。吸収性物品などの着用物品にテストストリップを適用する方法は特に限定されず、公知の方法に従って行うことができる。
【0023】
<態様3>
前記テストストリップが、3mm以下の幅を有する、
態様1又は2に記載の着用物品。
【0024】
前期破水の場合には、液量が比較的少ない場合がある。また、前期破水の場合には、羊水がおりもの等と一緒に排出されることがあり、この場合、テストストリップに接触する羊水含有膣分泌液の粘度が、比較的高くなる場合がある。
【0025】
これに対して、態様3に係る発明では、テストストリップの幅が3mm以下に低減されているので、検出のためにテストストリップに保持される必要のある液量が比較的低減されている。したがって、態様3に係る発明によれば、量が少なくかつ粘性が高い羊水含有膣分泌液を検出対象とした場合であっても、良好に検出を行うことができる。
【0026】
なお、テストストリップの幅は、1mm~10mmであってよいが、好ましくは5mm以下である。テストストリップの幅の上限は、さらには4mm以下であってよい。特に好ましくは、テストストリップの幅が、1mm以上5mm未満、1.5mm~4.5mm、又はさらには2mm~4mm、特には2mm~3mmである。テストストリップの幅がこれらの範囲にある場合には、呈色反応などの特に良好な視認性が得られることがある。
【0027】
テストストリップの幅は、使用者の視認性や加工性の観点からは、好ましくは2mm以上である。
【0028】
<態様4>
前記テストストリップが、
膣分泌液に接触する第1部材
膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を認識する標識抗体を含有する、第2部材、及び
捕捉抗体を含有する表示部を有する、第3部材
を有しており、
前記捕捉抗体は、前記標識抗体とインスリン様成長因子結合蛋白1との結合により形成される複合体を捕捉することができ、
前記膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1が、前記第1部材から、前記第2部材を介して、前記第3部材の前記表示部に移動するように構成されており、かつ、
前記捕捉抗体が前記複合体を捕捉することによって、前記第3部材の前記表示部が呈色するように構成されている、
態様1~3のいずれか一項に記載の着用物品。
【0029】
態様4に記載の着用物品によれば、呈色反応を介して、簡便かつ迅速にインスリン様成長因子結合蛋白1の検出を行うことができる。
【0030】
着用物品が下着の場合には、例えば、下着の内側表面に接着されたテストストリップを直接視認して呈色を確認できる。また、着用物品が吸収性物品(例えばパンティーライナー)の場合には、例えば、吸収性物品を構成するシート状部材の間に配置されたテストストリップにおける呈色を、可視光透過性のシート状部材を介して、確認できる。
【0031】
態様4に係るテストストリップの測定原理を、具体例を用いて説明する。例示的な態様では、例えば、標識抗体が、着色剤標識マウス抗ヒトインスリン様成長因子結合蛋白1型モノクローナル抗体であり、捕捉抗体が、マウス抗ヒトインスリン様成長因子結合蛋白1型モノクローナル抗体である。第1部材に接触した検体中にIGFBP-1が存在すると、第2部材中で標識抗体がIGFBP-1と反応し、抗原-抗体反応に基づく複合体を形成する。この複合体は、第3部材の表示部にまで移動し、そこに固定的に結合している捕捉抗体に捕捉され、その結果、表示部が、着色剤に基づいて呈色する。
【0032】
なお、抗原の移動方向における表示部の下流側に、第2表示部(コントロール部)を設けることができる。このコントロール部には、上記の捕捉抗体とは別の第2の捕捉抗体(例えばウサギ抗マウス免疫グロブリンポリクローナル抗体)が固定的に結合している。この第2の捕捉抗体は、標識抗体を認識できる。抗原と複合体を作らない標識抗体は、表示部で捕捉されずにこれを通過し、コントロール部で捕捉されるので、その結果、コントロール部が、着色剤に基づいて呈色する。
【0033】
この態様によれば、陽性の場合に、表示部及びコントロール部が呈色し、陰性の場合には、コントロール部のみが呈色する。
【0034】
テストストリップの構成の詳細については後述する。
【0035】
<態様5>
前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材が、この順番で、少なくとも部分的に互いに重なり合って積層されており、
前記積層方向における、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材の厚みの合計が、1.5mm以下である、
態様4に記載の着用物品。
【0036】
上述のとおり、前期破水の場合には、羊水がおりもの等と一緒に排出されることがあり、この場合、テストストリップに接触する羊水含有膣分泌液の粘度が、比較的高くなる場合がある。そのため、従来のイムノクロマト法を用いた検出方法では、膣分泌液中における羊水由来のインスリン様成長因子結合蛋白1を検出することが容易でない場合があった。
【0037】
これに対して、態様5に係るテストストリップでは、テストストリップを構成する部材の厚みが低減されているので、検出のためにテストストリップに保持される必要のある液量が比較的低減されている。したがって、態様5に係るテストストリップによれば、量が少なくかつ粘性が高い羊水含有膣分泌液を検出対象とした場合であっても、良好にインスリン様成長因子結合蛋白1の検出を行うことができる。
【0038】
メンブレン厚の好適範囲は、160~230μm、より好ましくは180~220μmである。
【0039】
<態様6>
前記標識抗体が、250nm~500nm(好ましくは280~450nm、更に好ましくは300nm~400nm)の粒径を有する着色剤を有する、
態様4又は5に記載の着用物品。
【0040】
上述のとおり、前期破水の場合には、羊水がおりもの等と一緒に排出されることがあり、この場合、テストストリップに接触する羊水含有膣分泌液の粘度が比較的高くなる場合がある。羊水含有膣分泌液の粘度が比較的高いと、テストストリップにおける検体の流動性が低下し、検出に用いられる抗原の絶対量が比較的少なくなる場合がある。また、膣分泌液に含まれる羊水の量が少ない場合もある。
【0041】
これに対して、態様6に係る着用物品では、インスリン様成長因子結合蛋白1に結合する標識抗体が比較的大きい粒径を有する着色剤を有しているので、検出の視認性が向上している。したがって、態様6に係る着用物品によれば、羊水含有膣分泌液の粘度及び/又は量に起因して抗原量が比較的少なくなっている場合でも、良好に検出を行うことができる。
【0042】
<態様7>
着用物品に適用して用いるための、イムノクロマト法を用いたテストストリップであって、
前記テストストリップは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するためのものであり、
前記テストストリップは、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する、
テストストリップ。
【0043】
上述のとおり、従来の方法では、前期破水の有無を調べるために、例えば綿棒などを用いて膣中をぬぐうことによって、膣分泌液を採取する必要があった。しかしながら、前期破水は本人が自覚しにくいので、このように手間のかかる手法では、前期破水を早期に発見できないおそれがある。
【0044】
これに対して、態様7に係る発明では、羊水中に多量に含まれるインスリン様成長因子結合蛋白1(IGFBP-1)を検出するためのテストストリップが、着用物品に適用して用いられるので、特段の操作を要することなく、着用しているだけで、破水(特には前期破水)のモニタリングを行うことができる。
【0045】
また、このテストストリップによれば、検出濃度範囲が0.3μg/L~25μg/Lに最適化されているので、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を、信頼性高く検出することできる。
【0046】
なお、態様7に係るテストストリップの詳細については、上記態様1~6に係る着用物品についての記載(特にテストストリップに関する記載)を参照できる。
【0047】
<テストストリップの具体例>
テストストリップの概念図を、添付の
図1-1に示す。テストストリップのその他の構成については、例えば、WO2021/132724A1の記載を参照できる。また、テストストリップを有する吸収性物品について、例えば、WO2021/132724の記載を参照できる。
【0048】
イムノクロマト法を用いたテストストリップについて、図面を参照して具体的に説明する。なお図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本発明を限定するものではない。
【0049】
図1-2のテストストリップ(検査部材)60は、排泄物(膣分泌液)に基づいて呈色しうる表示部(62A及び62B)を有する。テストストリップ60は、膣分泌液を接触させる接触部(第1部材、例えばサンプルパッド)64を有する。テストストリップ60は、膣分泌液に含まれる成分(以下、「膣分泌液成分」とも呼ぶ。)が移動する移動部を有してよい。移動部では、膣分泌液成分が毛細管現象により移動してよい。移動部は、膣分泌液成分が接触部64から表示部(62A及び62B)まで移動する表示移動部66Aと、膣分泌液成分が表示部(62A及び62B)から離れる方向へ移動する終端移動部66Bとを有してよい。終端移動部は、表示部(62A及び62B)を通過した膣分泌液成分等が移動する部分である。
【0050】
膣分泌液が接触する接触部(第1部材)64は、例えばパッド(サンプルパッド又は検体パッドと称されてよい)により構成されてよい。接触部64に接触した膣分泌液中の膣分泌液成分は、例えばパッド中を移動して、第2部材(例えばコンジュゲートパッド)に移行する。コンジュゲートパッドは、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を認識する標識抗体を含有する。コンジュゲートパッド(第2部材)は、
図3-1では図示されていないが、例えば、サンプルパッド(第1部材)と厚み方向で重なり合うように配置されてよい。膣分泌液成分、膣分泌液成分に含まれる羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1と抗原抗体反応を起こして形成された複合体、及び、標識抗体が、毛細管現象により、移動部66Aを移動してよい。これらの物質が移動する部分は、例えばメンブレンにより構成されてよい。表示部は、形成された複合体を捕捉(結合)する補足抗体を含有する部位62Aを有する。この部位は、複合体が捕捉抗体により補足されることで呈色する。表示部のこの部位62Aは、テストラインと称されてよい。
【0051】
表示部は、複合体を捕捉する捕捉抗体を含有する部位62Aとは別の捕捉抗体を含む部位62Bを有してよい。部位62Bの捕捉抗体は、部位62Aで捕捉された複合体と別の複合体を捕捉してもよいし、標識抗体を捕捉してよい。部位62Bは、複合体又は標識抗体が捕捉されることで呈色する。標識抗体を捕捉する部位62Bは、コントロールラインと称されてよい。表示部62を通過した膣分泌液成分(すなわち、捕捉抗体により補足されなかった成分)は、終端移動部66Bを移動する。終端移動部66Bは、メンブレンにより構成されてよい。また、終端移動部66Bは、表示部62を通り過ぎた膣分泌液成分を吸収する吸着パッドを有してよい。吸着パッドの代わりに、表示部62を通り過ぎた膣分泌液成分は、吸収コアに吸収されてよい。イムノクロマト法が用いられる場合、表示部62と接触部64とは異なる位置に配置されている。従って、この場合、表示部62と接触部64とは異なる。
【0052】
テストストリップ(検査部材)60は、標識抗体及び捕捉抗体などの物質を保持又は含有できる部材を有していればよく、例えば、紙、不織布、織布などのいずれかの材料により構成されてよい。
【0053】
<膣分泌液から羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出する方法>
本開示は、イムノクロマト法を用いたテストストリップを有する着用物品を用いて膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出する方法を含み、この方法は、
膣分泌液をテストストリップに付着させる工程を含み、
テストストリップにおいて、0.3μg/L~25μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する。
【0054】
この方法における着用物品及びテストストリップ等の各構成要素の詳細については、着用物品及びテストストリップに関する上記の記載を参照できる。
【0055】
膣分泌液をテストストリップに付着させる方法については特に限定されず、着用物品及びテストストリップに関する上記の記載を参照できる。例えば、本着用物品を身に着けている着用者から排泄された膣分泌液がテストストリップ(特にはテストストリップの第1部材)に付着するように、本着用物品を構成することができる。また、例えば、上記態様4のテストストリップにおいて、第1部材(特にはサンプルパッド)に膣分泌液が直接付着するように構成することによって、膣分泌液をテストストリップに付着させることができる。好ましくは、テストストリップが膣(外陰部)に直接接触するように構成する。
【0056】
上記方法の1つの実施態様では、0.4μg/L~20μg/L、又は0.5μg/L~15μg/L、又はさらには0.5μg/L~10μg/Lのインスリン様成長因子結合蛋白1を陽性として検出する。
【0057】
<参考例>
添付の
図2-1~
図2-8及び
図3は、参考として、おりもの中の物質(LH)の検出に関する実験結果を記載している。
【0058】
<<実施例1~2>>
実施例1~2では、膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1を検出するイムノクロマト法を用いたテストストリップを作成し、感度試験を行った。また、テストストリップを着用物品に適用し、着用試験を行った。
【0059】
(実施例1)
実施例1のテストストリップは、
膣分泌液に接触する第1部材、
膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1(IGFBP-1)を認識する標識抗体(Medix biochemica社製)を含有する第2部材、及び
捕捉抗体を含有する表示部を有する第3部材
を有しており、
実施例1のテストストリップの捕捉抗体は、
標識抗体とインスリン様成長因子結合蛋白1との結合により形成される複合体を捕捉することができ、
膣分泌液中の羊水由来インスリン様成長因子結合蛋白1が、第1部材から、第2部材を介して、第3部材の表示部に移動するように構成されており、かつ、
捕捉抗体が複合体を捕捉することによって、第3部材の表示部が呈色するように構成されていた。
【0060】
実施例1のテストストリップの長さは12mmであり、幅は3mmであった。第1部材としてのサンプルパッドの厚みは0.1mmであり、第2部材としてのコンジュゲートパッドの厚みは0.55mmであり、及び第3部材としてのメンブレンの厚みは0.1mmであり、第1~第3部材の厚みの合計は0.75mmであった。
【0061】
実施例1のコンジュゲートパッド中の標識抗体は、着色剤として、青色の粒径350nmのナノビーズ(製品名:NanoAct、旭化成社製)を有していた。
【0062】
(実施例2)
実施例2のテストストリップの全体的な構成及び寸法並びに第1~第3部材の寸法は、上記実施例1と同様であった。
【0063】
実施例2のコンジュゲートパッド中の標識抗体は、着色剤として、青色の粒径350nmのナノビーズ(製品名:NanoAct、旭化成社製)を有していた。
【0064】
<感度検査>
実施例1~2に係るテストストリップについて感度検査を行った。具体的には、IGFBP-1の2.5ng/ml、10ng/ml、25ng/ml、及び50ng/ml濃度溶液を調製し、それぞれのテストストリップに適用した後の感度を、吸光度計(浜松ホトニクス社製、製品名イムノクロマトリーダ(C10066-10)を用いて計測した。結果を
図4のグラフに示す。
【0065】
図4のグラフで見られるとおり、実施例1~2のテストストリップによれば、比較的低濃度(例えば0.5~10μg/L)のIGFBP-1を非常に高感度で検出できる。これらのテストストリップによれば、微量の羊水混入をも信頼性高く検出できる。
【0066】
また、実施例1及び実施例2に係るテストストリップを着用物品に付着させたものを実際に妊婦が着用する試験も行った。その結果、偽陽性は発生せず、良好な検出を行うことができた。
【0067】
<<実施例3~4>>
実施例3~4では、テストストリップの幅と呈色の視認性との関係を調べた。実施例3のテストストリップは5mmの幅を有しており、実施例4のテストストリップは3mmの幅を有していた。なお、テストストリップの幅とは、テストストリップの全体的な平面において、テストストリップの長さ方向(特には膣分泌液成分の進行方向)に直交する方向での長さを意味する。
【0068】
3名の被験者からそれぞれ10~12日間にわたって採取した膣分泌液を、上記実施例1と同様の構成を有する実施例3又は4のテストストリップのサンプルパッド上に付着させ、表示部における呈色を観察した。実施した検査の総数は、実施例3についてn=25、実施例4についてn=28であった。
【0069】
表示部における呈色について、コントロールラインがはっきり視認できた場合(〇)、コントロールラインは視認できるものの視認性がやや劣る場合(△)、の割合を算出した。結果を下記の表1に示す。
【0070】
【0071】
表1で見られるとおり、幅が3mmであった実施例4に係るテストストリップは、幅が5mmであった実施例3に係るテストストリップと比較して、より優れた視認性を示した。
【0072】
理論によって限定する意図はないが、テストストリップの幅が比較的狭いことによって、サンプルのフロー性が向上したと考えられる。すなわち、実施例4のテストストリップでは、呈色部位である表示部に到達する膣分泌液(及びその成分)成分が比較的増加した結果として、視認性が向上したと考えられる。