(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061675
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ネイル実技用模擬ハンド、ネイルチップ用ルースキューティクルシール、および、ネイル実技用模擬セット
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20240425BHJP
G09B 19/24 20060101ALI20240425BHJP
A45D 29/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G09B19/24 A
A45D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181031
(22)【出願日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022168201
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522410787
【氏名又は名称】株式会社スペース
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀博
(57)【要約】
【課題】 検定試験本番やそのための練習において、実際の人の手指の代わりになり得るネイル実技用模擬ハンド、ルースシール、およびネイル実技用模擬セットを提供する。
【解決手段】 ネイル実技用模擬ハンドが備える少なくとも1本の模擬指13の先端部には、ネイルチップ30が装着される爪床部14と、ネイルチップ30の爪根部が嵌入される爪根嵌入部15と、爪根嵌入部15から先端側へ延びるキューティクル部16と、が設けられ、キューティクル部16の先端位置から爪根嵌入部15の最奥位置までの寸法が、2mm以上4mm以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を備え、
前記模擬指の先端部には、
人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、
前記爪床部の基端部に形成されて前記ネイルチップの爪根部が基端方向に嵌入される嵌入溝を有する爪根嵌入部と、
前記爪根嵌入部から先端側へ延びるキューティクル部と、が設けられ、
前記模擬指の幅方向中央において、前記キューティクル部の先端位置から前記爪根嵌入部の嵌入溝の基端側の最奥位置までの寸法が、2mm以上4mm以下である、
ネイル実技用模擬ハンド。
【請求項2】
前記キューティクル部の厚み寸法が、0.6mm以上0.8mm以下である、
請求項1に記載のネイル実技用模擬ハンド。
【請求項3】
人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を備え、
前記模擬指の先端部には、
人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、
前記爪床部の基端部に形成されて前記ネイルチップの爪根部が基端方向に嵌入される嵌入溝を有する爪根嵌入部と、
前記爪根嵌入部から先端側へ延びるキューティクル部と、が設けられ、
前記模擬指の幅方向に交差する断面における前記爪床部の表面において、前記爪床部の先端に対応する位置を第1端位置とし、前記爪床部において前記キューティクルの先端に対応する位置を第2端位置とした場合に、前記爪床部の表面は、前記第1端位置と前記第2端位置とを1:1に分かつ位置と1:3に分かつ位置との間に、前記表面側に高いピークがある凸状を成している、
ネイル実技用模擬ハンド。
【請求項4】
前記爪床部の表面は、前記第1端位置と前記ピークとの間の第1曲面と、前記第2端位置と前記ピークとの間の第2曲面とを有し、前記第1曲面は前記第2曲面よりも曲率が大きい、
請求項3に記載のネイル実技用模擬ハンド。
【請求項5】
人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を備え、
前記模擬指は、
塑性変形可能な金属製の棒状体と、
前記棒状体の先端部を覆って設けられた柱状の第1樹脂体と、
前記棒状体および前記第1樹脂体を覆って設けられ、前記第1樹脂体よりも軟質の樹脂製であって人の手の指を模した表面形状を有する第2樹脂体と、で構成され、
前記第2樹脂体の先端部には、
人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、
前記爪床部の幅方向の両外側に形成されて前記爪床部の表面より表面側へ高くなるように形成された側爪郭部と、が設けられている、
ネイル実技用模擬ハンド。
【請求項6】
前記第2樹脂体は、デュロメータ(タイプA)で測定した硬度が33以上37以下のエラストマーから成る、
請求項5に記載のネイル実技用模擬ハンド。
【請求項7】
前記棒状体において前記第1樹脂体に覆われている前記先端部には拡幅部が設けられている、
請求項5に記載のネイル実技用模擬ハンド。
【請求項8】
模擬ハンドが有する模擬指の爪床部に装着されるネイルチップに貼り付けられて模擬的なルースキューティクルを形成するのに用いられるルースシールであって、
粘着層および基材が積層されて成る転写シートによって構成され、
前記粘着層および前記基材は、平面視で前記ネイルチップの爪根部に整合する形状を成している、
ネイルチップ用ルースシール。
【請求項9】
前記粘着層および前記基材を合わせた厚み寸法が、40μm以上60μm以下である、
請求項8に記載のネイルチップ用ルースシール。
【請求項10】
前記基材は、アクリル系樹脂から成る、
請求項8に記載のネイルチップ用ルースシール。
【請求項11】
人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を有する模擬ハンドと、
人の手の指の爪を模して前記模擬指に装着されるネイルチップと、
前記ネイルチップに貼り付けられて模擬的なルースキューティクルを形成するルースシールと、を備えるネイル実技用模擬セットであって、
前記模擬指は、塑性変形可能な金属製の棒状体と、前記棒状体の先端部を覆って設けられた柱状の第1樹脂体と、前記棒状体および前記第1樹脂体を覆って設けられ、前記第1樹脂体よりも軟質の樹脂製であって人の手の指を模した表面形状を有する第2樹脂体と、で構成され、
前記模擬指の指先に対応する前記第2樹脂体の先端部には、人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、前記爪床部の基端部に形成されて前記ネイルチップの爪根部が基端方向に嵌入される嵌入溝を有する爪根嵌入部と、前記爪根嵌入部から先端側へ延びるキューティクル部と、前記爪床部の幅方向の両外側に形成されて前記爪床部の表面より表面側へ高くなるように形成された側爪郭部と、が設けられ、
前記模擬指の幅方向中央において、前記キューティクル部の先端位置から前記爪根嵌入部の嵌入溝の基端側の最奥位置までの寸法が、2mm以上4mm以下であり、
前記ルースシールは、粘着層および基材が積層されて成る転写シートが、平面視で前記ネイルチップの爪根部に整合する形状を成した構成となっている、
ネイル実技用模擬セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばネイリスト技能検定試験またはその練習において使用できるネイル実技用模擬ハンド、当該ハンドに装着可能なネイルチップに貼り付けられてルースキューティクルのケアに供されるルースキューティクルシール(以下、「ルースシール」とも称する)、および、ネイル実技用模擬セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他人の爪をケアしたり装飾(ネイルアート)を施したり、といったことがネイリストによって行われている。このネイリストの育成のために、公益財団法人日本ネイリスト検定試験センターよって検定試験が実施されている。そして、ネイリストを目指す者や、更に上級の資格を得ようとする者の中には、専門学校に通ってネイルケアの実技等を学ぶ者もいる。
【0003】
ここで、ネイルケアの実技の練習を行うにあたり、実際の人(モデル)を用意するとなると、練習に適した爪を有するモデルを探す必要があったり、そのモデルに交通費や報酬などを支払う必要があったりして、施術者にとって負担が少なくない。また、モデルの人にとっても、長時間の練習に拘束されたり、何度もモデルをすることで爪への負担が大きくなったりする。
【0004】
そのため、より簡便にネイルケアの練習を行えるよう、ハンド型の模型(ハンドマネキン)が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1では、実際の人間の手に近いハンドマネキンで練習することが望ましいという課題を挙げ、この課題を解決するための発明を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ネイルケアの実技を行うことを想定すると、特許文献1に記載のハンドマネキンは依然として実際の人間の手からは程遠いものである。そのため、ネイルケアの何らかの練習に用いることができたとしても、上記試験センターが実施する検定試験本番やそのための練習において、実際の人(モデル)の代わりになり得るものではない。
【0007】
そこで本発明は、検定試験本番やそのための練習において、実際の人の手指の代わりになり得るネイル実技用模擬ハンドと、当該ハンドに装着可能なネイルチップに貼り付けられてルースキューティクルのケアに供されるルースシールと、ネイル実技用模擬セットとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るネイル実技用模擬ハンドは、人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を備え、前記模擬指の先端部には、人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、前記爪床部の基端部に形成されて前記ネイルチップの爪根部が基端方向に嵌入される嵌入溝を有する爪根嵌入部と、前記爪根嵌入部から先端側へ延びるキューティクル部と、が設けられ、前記模擬指の幅方向中央において、前記キューティクル部の先端位置から前記爪根嵌入部の嵌入溝の基端側の最奥位置までの寸法が、2mm以上4mm以下である。
【0009】
このような構成により、キューティクルのスキンアップを練習する場合にネイルチップの根元が露出せず、実際の人の指を用いる場合と同じようなリアルな感覚で練習できる。また、ネイルチップの表面にルースシールを貼り付けた状態で爪床部に装着すると、ルースシールの根元部分が嵌入溝にて挟持される。従って、ルースキューティクルに見立てたルースシールによりプッシュアップを練習する場合に、ルースシールの全てが剥がれてしまうことなく、外部に露出している部分のみが捲れ上がり、リアルな感覚で練習できる。さらに、ルースシールが挟持されることで、ルースキューティクルをニッパーでカットしつつ手前に引いて除去するニッパーリングの練習においても、ルースシール全体が抜け出ることなく、リアルな感覚で行える。
【0010】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンドは、さらに、前記キューティクル部の厚み寸法が、0.6mm以上0.8mm以下であってもよい。
【0011】
このような構成により、ニッパーリングにおいてルースシールをカットするときに誤ってキューティクル部を一緒にカットしてしまうのを防止できる。この目的のため、実際の人の手指のキューティクルより、模擬ハンドのキューティクル部の方が、厚み寸法が若干大きく設定されている。
【0012】
本発明に係るネイル実技用模擬ハンドは、人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を備え、前記模擬指の先端部には、人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、前記爪床部の基端部に形成されて前記ネイルチップの爪根部が基端方向に嵌入される嵌入溝を有する爪根嵌入部と、前記爪根嵌入部から先端側へ延びるキューティクル部と、が設けられ、前記模擬指の幅方向に交差する断面における前記爪床部の表面において、前記爪床部の先端に対応する位置を第1端位置とし、前記爪床部において前記キューティクルの先端に対応する位置を第2端位置とした場合に、前記爪床部の表面は、前記第1端位置と前記第2端位置とを1:1に分かつ位置と1:3に分かつ位置との間に、前記表面側に高いピークがある凸状を成している。
【0013】
このような構成により、実際の人の手指の爪床形状に類似するので、当該爪床に装着されたネイルチップにより実際の爪表面の曲面形状や姿勢を再現できる。従って、カラーリングやネイルアートを練習する場合に、実際の爪表面を対象にしているのと同じようなリアルな感覚で行える。
【0014】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンドは、さらに、前記爪床部の表面は、前記第1端位置と前記ピークとの間の第1曲面と、前記第2端位置と前記ピークとの間の第2曲面とを有し、前記第1曲面は前記第2曲面よりも曲率が大きい、という構成であってもよい。
【0015】
このような構成により、当該爪床に装着したネイルチップの形状や姿勢が、より実際の爪に類似することとなる。
【0016】
本発明に係るネイル実技用模擬ハンドは、人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を備え、前記模擬指は、塑性変形可能な金属製の棒状体と、前記棒状体の先端部を覆って設けられた柱状の第1樹脂体と、前記棒状体および前記第1樹脂体を覆って設けられ、前記第1樹脂体よりも軟質の樹脂製であって人の手の指を模した表面形状を有する第2樹脂体と、で構成され、前記第2樹脂体の先端部には、人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、前記爪床部の幅方向の両外側に形成されて前記爪床部の表面より表面側へ高くなるように形成された側爪郭部と、が設けられている。
【0017】
このような構成により、指の関節の曲がり具合を棒状体により再現し、指を把持したときの骨の感触を第1樹脂体により再現し、指を把持したときの皮膚や筋肉の感触を第2樹脂体により再現することができる。従って、側爪郭部を押し下げるスキンダウンにおいて、実際の人の指先に対する施術と同じような、リアルな感覚で行うことができる。
【0018】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンドは、さらに、前記第2樹脂体は、デュロメータ(タイプA)で測定した硬度が33以上37以下のエラストマーから成る、という構成であってもよい。
【0019】
このような構成により、模擬指を使ったスキンダウン等の施術を、よりリアルな感覚で行うことができる。
【0020】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンドは、さらに、前記棒状体において前記第1樹脂体に覆われている前記先端部には拡幅部が設けられている、という構成であってもよい。
【0021】
このような構成により、模擬指の関節を繰り返し曲げ伸ばししても、棒状体から第1樹脂体が抜けて外れてしまうのを防止できる。拡幅部は、例えば棒状体の先端を折り曲げることで構成できる。
【0022】
本発明に係るネイルチップ用ルースシールは、模擬ハンドが有する模擬指の爪床部に装着されるネイルチップに貼り付けられて模擬的なルースキューティクルを形成するのに用いられるルースシールであって、粘着層および基材が積層されて成る転写シートによって構成され、前記粘着層および前記基材は、平面視で前記ネイルチップの爪根部に整合する形状を成している。
【0023】
このような構成により、ルースキューティクルを除去するプッシュバックや、ルースキューティクルをキューティクルと一緒に押し上げるプッシュアップなどの施術の練習に際して、実際のルースキューティクルを扱っているようなリアルな感覚で行うことができる。
【0024】
また、本発明に係るネイルチップ用ルースシールは、さらに、前記粘着層および前記基材を合わせた厚み寸法が、40μm以上60μm以下である、という構成であってもよい。
【0025】
このような構成により、プッシュバックやプッシュアップの施術の練習を、よりリアルな感覚で行うことができる。
【0026】
また、本発明に係るネイルチップ用ルースシールは、前記基材は、アクリル系樹脂から成る、という構成であってもよい。
【0027】
このような構成により、プッシュバックやプッシュアップの施術の練習を、さらにリアルな感覚で行うことができる。
【0028】
本発明に係るネイル実技用模擬セットは、人の手の指を模した少なくとも1本の模擬指を有する模擬ハンドと、人の手の指の爪を模して前記模擬指に装着されるネイルチップと、前記ネイルチップに貼り付けられて模擬的なルースキューティクルを形成するルースシールと、を備えるネイル実技用模擬セットであって、前記模擬指は、塑性変形可能な金属製の棒状体と、前記棒状体の先端部を覆って設けられた柱状の第1樹脂体と、前記棒状体および前記第1樹脂体を覆って設けられ、前記第1樹脂体よりも軟質の樹脂製であって人の手の指を模した表面形状を有する第2樹脂体と、で構成され、前記模擬指の指先に対応する前記第2樹脂体の先端部には、人の手の指の爪を模したネイルチップが装着される爪床部と、前記爪床部の基端部に形成されて前記ネイルチップの爪根部が基端方向に嵌入される嵌入溝を有する爪根嵌入部と、前記爪根嵌入部から先端側へ延びるキューティクル部と、前記爪床部の幅方向の両外側に形成されて前記爪床部の表面より表面側へ高くなるように形成された側爪郭部と、が設けられ、前記模擬指の幅方向中央において、前記キューティクル部の先端位置から前記爪根嵌入部の嵌入溝の基端側の最奥位置までの寸法が、2mm以上4mm以下であり、前記ルースシールは、粘着層および基材が積層されて成る転写シートが、平面視で前記ネイルチップの爪根部に整合する形状を成した構成となっている。
【0029】
このような構成により、ネイルケアの実技で用いた場合に、実際の人の手の指を対象にしているかのようなリアルな感覚で行うことができる。特に、側爪郭のスキンダウン、ルースキューティクルのプッシュアップおよびニッパーリングなどに際して、上記セットを用いれば、リアルな感覚で練習することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、検定試験本番やそのための練習において、実際の人の手指の代わりになり得るネイル実技用模擬ハンドと、当該ハンドに装着可能なネイルチップに貼り付けられてキューティクルのケアに供されるルースキューティクルシールと、ネイル実技用模擬セットとを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、ネイル実技用模擬セットを示す模式的斜視図である。
【
図4】
図4Aは、ネイルチップおよびルースキューティクルシールの平面図である。
図4Bは、ルースシールセットの模式図である。
図4Cは、ルースキューティクルシールの断面図である。
【
図5】
図5は、模擬指の指先部分を第1樹脂体も含めて示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施の形態)
本発明の実施の形態について、以下、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、ネイル実技用模擬セット1を示す模式的斜視図である。図示するように、ネイル実技用模擬セット1(以下、「模擬セット1」と称する)は、人の手を模した本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10(以下、「模擬ハンド10」)と、人の手の爪を模した本発明に係るネイルチップ30とを備えている。本実施の形態に係る模擬ハンド10は、手首に対応する部分(模擬手首)11の先に、手の甲に対応する部分(模擬甲)12が設けられ、さらにこの模擬甲12から延びる五指に対応する部分(5本の模擬指)13を有している。
【0034】
なお、模擬手首11及び模擬甲12は、必ずしも実物の外観を忠実に模すことを要しない。一方、模擬指13は実際の人の指を比較的忠実に模していることが好ましい。従って、模擬ハンド10が有する5本の模擬指13として、実際の人の親指、人差し指、中指、薬指、及び小指のそれぞれに対応した外観形状及び寸法の模擬指13A~13Eを有している。ただし、模擬セット1をネイルケアの練習としてのみ使用するのであれば、模擬セット1は5本の模擬指13を有する必要はなく、少なくとも1本の模擬指13を有する構成としてもよい。
【0035】
各模擬指13の指先部分13aには爪床部14が形成され、この爪床部14には、ネイルチップ30を装着可能になっている。なお、以下では模擬指13の長手方向のうち指先へ向かう方向を「先端側」または「前」とし、その反対方向を「基端側」または「後」とする。また、模擬指13の指先部分13aにおいて、爪床部14が設けられている側を「上」とし、その反対方向を「下」とする。更に、上述した長手方向及び上下方向の何れにも直交する方向を「幅方向」とし、先端側から見たときを基準として「右」と「左」とを規定する。
【0036】
図2A、
図2B、および
図3を参照して模擬指13の更に詳細な構成について説明する。なお、
図2A、
図2B、および
図3は、5本の模擬指13A~13Eのうち何れか1本の模擬指13(ここでは、人差し指に対応する模擬指13B)の構成を示す図面であるが、寸法を除き、他の模擬指13についても同様の構成になっている。また、
図3は、模擬指13の軸線A(
図2(B)参照)に沿った縦断面図、すなわち、模擬指13の幅方向の中央を通って幅方向に直交する平面により切断した縦断面図であり、指先部分13aを拡大して示している。
【0037】
図2Aの側面図および
図2Bの平面図に示すように、長寸を成す模擬指13の先端部分である指先部分13aの上部には、周囲よりも少し下方へ窪んだ部分が形成されている。この窪み部分の底面部分が、ネイルチップ30が装着される爪床部14を成している。爪床部14は、平面視で前後方向に長寸であり、その先端縁は略円弧状を成し、基端縁は角を丸めた矩形状を成している。
図1に示すように、ネイルチップ30は平面視で長方形状を成して左右端および後端が、ネイルチップ30が載置される面(爪床部14および後記の嵌入溝15a)の平面視形状と整合すると共に、爪床部14および嵌入溝15aに接する裏面についても爪床部14および嵌入溝15aと形状的に整合するよう凹んだ曲面形状を成している。このようなネイルチップ30は、基端部から先端部にかけて、爪根部31,爪甲部32、および、爪先部33を有する。上述した爪床部14は、このうち爪根部31および爪甲部32の裏面に接するようにしてネイルチップ30を支持する。
【0038】
なお、ネイルチップ30において、爪根部31は、爪床部14に装着されたときに後述するキューティクル部16等により覆われて露出しない基端部分であり、爪先部33は、爪床部14から突出する先端部分であり、爪甲部32は、爪根部31と爪先部33との間に位置する部分である。また、爪床部14へのネイルチップ30の装着においては、適度な接着強度を有する接着剤を用いて固定すればよい。
【0039】
図3に示すように、爪床部14の基端部には、ネイルチップ30の爪根部31が基端方向(後方)に嵌入される嵌入溝15aを有する爪根嵌入部15が形成されている。嵌入溝15aは、基端方向に奥行を有して左右方向へ延びる溝であり、その上下方向寸法である溝幅は、ほぼ全体にわたってネイルチップ30の爪根部31の厚み寸法と同一(あるいは、ほぼ同一)であるが、奥方部分(後側部分)は部分的に手前部分よりも小さくなっている。これにより、ネイルチップ30を嵌入溝15aに入れやすく、かつ、入れた状態にて爪根部31が爪根嵌入部15によってしっかりと上下から挟持される。
【0040】
爪根嵌入部15の上部先端縁からは、キューティクル部16が先端側(前方)へ延びている。キューティクル部16は、実際の人の手指のキューティクルを模した構成であり、爪根嵌入部15の幅方向の一方端から他方端までの全幅にわたって形成されている。
【0041】
模擬指13の指先部分13aには、爪床部14の幅方向の両外側に形成されて爪床部14の表面よりも表面側へ高くなるように形成された側爪郭部17が設けられている。この側爪郭部17は、実際の人の手指の側爪郭を模した構成であり、爪床部14の表面と側爪郭部17の表面とを比較した場合、側爪郭部17の表面の方が軸線Aから離れて位置している。従って、指先部分13aにおいて、爪床部14は若干窪んだ構成であるのに対し、その左右の側爪郭部17は爪床部14よりも盛り上がった形状になっている。
【0042】
[各部の寸法等について]
次に、上述した模擬ハンド10が有する模擬指13について、ネイリスト技能検定試験またはその練習をするのに好適な、各部の寸法の一例を説明する。
【0043】
はじめに、模擬指13の種類によって異なる寸法について説明する。
【0044】
図2Aに示すように、模擬指13の長手方向(前後方向)の長さ寸法をL1とする。このとき、親指(第1指)に対応する模擬指13Aの寸法L1は51mm、人差し指(第2指)に対応する模擬指13Bの寸法L1は72mm、中指(第3指)に対応する模擬指13Cの寸法L1は75mm、薬指(第4指)に対応する模擬指13Dの寸法は72mm、小指(第5指)に対応する模擬指13Eの寸法は52mmとなっている。
【0045】
図2Bに示すように、模擬指13の爪床部14の長手方向(前後方向)の寸法をL2とする。なお、この寸法L2は、爪床部14の幅方向の中央位置での長手方向の寸法であり、かつ、外部に露出している部分(すなわち、キューティクル部16の前端から基端側を除く部分)の寸法である。このとき、第1指に対応する模擬指13Aの寸法L2は15mm、第2指~第4指に対応する模擬指13B~13Dの寸法L2は何れも14mm、第5指に対応する模擬指13Eの寸法L2は12mmとなっている。
【0046】
図2Bに示すように、模擬指13の爪床部14の幅方向の寸法をL3とする。このとき、第1指に対応する模擬指13Aの寸法L3は11mm、第2指~第4指に対応する模擬指13B~13Dの寸法L3は何れも10mm、第5指に対応する模擬指13Eの寸法L3は8mmとなっている。本実施の形態では、以上のように寸法L1~L3を設定することで、模擬ハンド10として実際の人の手のサイズに近い構成であり、各指の寸法上のバランスも現実に近いものを実現している。
【0047】
次に、各種の模擬指13において共通する寸法について説明する。
【0048】
図3に示すように、キューティクル部16の長手方向(前後方向)の寸法をL4とする。より詳しくは、模擬指13の幅方向中央におけるキューティクル部16の先端位置から基端位置までの寸法をL4とする。このとき、全ての模擬指13について、寸法L4は0.5mmとなっている。
【0049】
図3に示すように、キューティクル部16の上下方向の厚み寸法をL5とする。このとき、全ての模擬指13について、寸法L5は0.6mm以上0.8mm以下、より好ましくは0.7mmとなっている。このように、実際の人の手指のキューティクルに比べて、模擬指13のキューティクル部16は厚み寸法L5が若干大きく設定されている。
【0050】
図3に示すように、爪床部14の基端部(後端部)であって露出していない部分の前後方向の寸法をL6とする。より詳しくは、模擬指13の幅方向中央において、キューティクル部16の先端位置から爪根嵌入部15の嵌入溝15aの基端側の最奥位置までの寸法をL6とする。このとき、全ての模擬指13について、寸法L6は2.0mm以上4.0mm以下、好ましくは2.5mm以上3.5mm以下、より好ましくは3.0mmとなっている。
【0051】
図3の断面図で見たときの爪床部14の形状についてより詳しく説明する。図示するように、模擬指13の幅方向に交差する断面における爪床部14の露出している部分の表面は、長手方向の中央付近が上方に膨らんだような上に(表面側に)凸の輪郭形状を成している。ここで、爪床部14の露出部分において、幅方向の中心に沿って先端に対応する位置を第1端位置P1とし、基端に対応する位置(キューティクル部16の先端に対応する位置)を第2端位置P2とする。そして、凸状を成す輪郭において最も表面側に高くなっている位置をピークP3とする。このとき、ピークP3は、第1端位置P1と第2端位置P2とを1:1に分かつ位置と1:3に分かつ位置との間に位置している。より好ましくは、ピークP3は、第1端位置P1と第2端位置P2とを1:2に分かつ位置に位置している。
【0052】
また、爪床部14の表面のうち、第1端位置P1とピークP3との間の先端側の表面は上に凸の円弧状の第1曲面C1を成し、第2端位置P2とピークP3との間の基端側の表面も上に凸の円弧状の第2曲面C2を成している。そして、第1曲面C1は第2曲面C2よりも、曲率が大きくなるように設定されている。
【0053】
[内部構造について]
次に、模擬指13の内部構造について説明する。この構造は、第1指~第5指に共通する構成である。
図2Aに示すように、模擬指13は、人の手の力で塑性変形が可能な程度の剛性を有する金属製の棒状体20と、棒状体20の先端部を覆って設けられた柱状の第1樹脂体21と、棒状体20および第1樹脂体21を覆って設けられ、第1樹脂体21よりも軟質の樹脂製であって人の手の指を模した表面形状を有する第2樹脂体22と、で構成されている。このうち棒状体20は、実際の人の手指の関節に対応し、第1樹脂体21は指先の骨(末節骨)に対応し、第2樹脂体22は筋肉および皮膚に対応する。
【0054】
第1樹脂体21は、例えばABS樹脂から成る柱状体であって、棒状体20とはインサート成形により一体化されている。棒状体20の先端部であって第1樹脂体21に覆われている部分には、先端部以外の部分よりも径方向寸法が大きい拡幅部20aが設けられている。これにより、第1樹脂体21から棒状体20が抜けるのを防止している。なお、拡幅部20aを有する棒状体20は、第1線径の棒状体の先端部に第1線径より大きい第2線径の棒状体を接続することで構成してもよいし、棒状体の先端部分を折り返して、折り返した部分を拡幅部20aとして構成してもよいし(
図2Aの例)、さらに他の構成を採用してもよい。
【0055】
また、上述したように第1樹脂体21は実際の人の手指の末節骨に対応する。従って、第1樹脂体21は
図2Aに示すように、模擬指13の長手方向(前後方向)に沿って若干長寸を成している。そして、その基端側の端部は、第1関節に対応する位置の近傍に位置している。なお、本実施の形態に係る模擬指13においては、中節骨および基節骨に対応する樹脂体は設けていないが、末節骨に対応する第1樹脂体21に加えて、中節骨に対応する樹脂体を設けてもよいし、あるいは、中節骨および基節骨に対応する2つの樹脂体を設けてもよい。
【0056】
本実施の形態において、第1樹脂体21の形状には前後方向に長い直方体形状を採用している。その寸法は、前後方向寸法が20mm、上下方向寸法が6mm、幅方向寸法が7mmとなっている。また、指先部分13aの先端から第1樹脂体21の先端までの寸法は9mm以上11mm以下であって本実施の形態では10mmであり、この間の部分は第2樹脂体22で形成されている。
【0057】
第2樹脂体22は、例えばスチレン系やその他のエラストマーにより構成されている。特に、本実施の形態に係る模擬指13では、デュロメータ(タイプA)で測定したときの硬度が33以上37以下、好ましくは34以上36以下、より好ましくは35のエラストマーを、第2樹脂体22に使用している。上述した爪床部14、爪根嵌入部15、キューティクル部16、側爪郭部17などは、第2樹脂体22に形成されている。
【0058】
ここで、実際の人の指(の筋肉部分)の硬さに比べると、上述した第2樹脂体22の硬度は高く設定されている。これは、模擬セット1を用いて爪のフィリングを練習する場合に、ネイルチップ30が実際の指の爪をファイリングするのに比べて大きくぐらつくのを防止するためである。すなわち、実際の指では骨に対して筋肉が固定的に接続されているが、模擬ハンド10において第1樹脂体21と第2樹脂体22とは固定的に接続されていない。そのため、第2樹脂体22を実際の筋肉と同等の硬さとすると、ファイリング時に掛かる力によって変形しすぎてしまって違和感が生じる。一方、第2樹脂体22の硬度を高くし過ぎても違和感が生じるため、上記のとおり33以上37以下の硬度を採用している。また、第2樹脂体22の硬度を高めに設定したことによるファイリング時の違和感を解消するため、さらに側爪郭部17の幅方向寸法(側爪郭部17の前後方向の中心位置での幅方向寸法)を、実際の指における寸法よりも小さい値(例えば、1mm以下など)に設定してもよい。
【0059】
なお、第1樹脂体21および第2樹脂体22は、いずれも単一の材料により構成されている必要はなく、他の樹脂等材料を含んでいてもよい。また、第2樹脂体22は、先に一体化された棒状態20および第1樹脂体21に対し、インサート成形により構成することができる。
【0060】
棒状体20は、例えばクロムおよびニッケルを含有する鋼材であるオーステナイト系ステンレス(SUS304等)により構成され、その横断面形状は直径1.6mmの円形断面となっている。また、その長さ寸法は、第1指および第5指に関しては45mmであり、第2指~第4指に関しては65mmである。これにより、模擬指13を途中(例えば、第1関節)で屈曲させたときに屈曲状態が維持される。なお、棒状体20の材料や断面形状としてはこれに限られない。例えば、模擬指13を人手の操作により容易に屈曲させることができると共に、屈曲させたときに第2樹脂体22が発揮する弾性力に抗って屈曲状態を維持できるような、適度な剛性を有するものであればよい。
【0061】
[ルースシールについて]
上述した模擬ハンド10の模擬指13は、爪床部14にネイルチップ30が装着されてネイルケアの実技に供される。このとき、ネイルチップ30には、ルースシール40が貼り付けられる。ルースシール40は、実際の人の手指の爪のルースキューティクルを模擬的に再現するものである。このルースシール40について説明する。なお、実際の人のルースキューティクルは、キューティクルの近傍に位置して相対的に厚み寸法が大きく硬いルースキューティクルと、それよりも爪先側へ広がっている相対的に厚み寸法が小さく軟らかいルースキューティクルとがあることが知られている。 以下に説明するルースシール40はこのうち前者の ルースキューティクルを模したものであるが、同様にして後者のルースキューティクルを模したものを作製することも可能である。
【0062】
図4Aに示すように、ルースシール40は平面視でネイルチップ30の基端側部分である爪根部31と整合する形状を成している。ここで、ネイルチップ30の平面視形状について詳述する。ネイルチップ30は平面視で全体的にはおよそ前後方向に長い長方形状を成すと共に、爪根部31は左右の角31aおよび爪先部33は左右の角33aが円弧状となるように輪郭が丸められている。なお、爪根部31は左右の角31aは爪先部33の左右の角33aよりも輪郭の円弧の径は大きい。また、爪根部31の左右の角31aの間の縁31bは幅方向へ直線状を成し、その幅方向の中央には、ネイルチップ30を射出成型するときに樹脂が進入する金型のゲートが位置している。そして、当該金型においてゲートに向かうランナー内で硬化した樹脂片31cが、縁31bの中央位置から突出している。
【0063】
このようなネイルチップ30の爪根部31に整合するようにルースシール40は形成されている。より具体的には、ルースシール40は左右に長いおよそ長方形状を成しており、その4辺のうち左右の側辺40aと後辺40bは直線状を成し、前辺40cは後方へ凹んだ円弧状を成している。この前辺40cの円弧形状は、キューティクル部16の輪郭形状に整合するような形状になっている。また、側片40aと後辺40bとが交差する角40dは、ネイルチップ30の爪根部31の左右の角31aと同様に、輪郭が円弧状に丸められている。さらに、後辺40bの幅方向の中央には、後方へ突出した三角形状の突出片40eが設けられている。突出片40eの突出寸法は約1.5mmとしている。
図4Aに示すように、このようなルースシール40はネイルチップ30の爪根部31に載せるように重ねられて当該爪根部31を被覆する。なお、このときルースシール40の突出片40eをネイルチップ30の樹脂片31cに合わせるようにすることで、ルースシール40の貼り付け位置を間違ってネイルチップ30の爪先部33側にしてしまうことが防止される。
【0064】
図4Bは、ルースシール40が複数載置されたルースシールセット50を示す平面図であり、
図4Cは、
図4BのC-C線で切断したときのルースシールセット50の断面図である。
【0065】
図4Bに示すように、ルースシールセット50は、ルースシール40に比べて大寸であり樹脂製の台紙51を備え、当該台紙51上に複数のルースシール40が並んで載置されている。
図4Bの例では、2つのルースシール40が互いの前辺40cを向かい合わせるように対にして配置され、かつ、このような2つのルースシール40から成る対が5対、配列されている。このうち配列方向の一端に位置して対を成す2つのルースシール40は、模擬ハンド10の第1指用のルースシール401である。配列方向の他端に位置して対を成す2つのルースシール40は第5指用のルースシール405である。そして、これらの間に位置する3対が有する計6つのルースシール40は第2指~第4指用のルースシール402~404である。このように、第1指~第5指に対応するルースシール401~405が台紙51上に配列されている。また、
図4Cに示すように、台紙51の上面51aには、粘着層41および基材42がこの順で積層され、これら粘着層41および基材42によってルースシール40が構成されている。
【0066】
ルースシール40を構成する粘着層41は、層の上面および下面に対して接着力を有する公知のものを用いることができ、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などのうち1つ、または複数を組み合わせて用いることができる。なお、粘着層41を構成する粘着剤は、ネイルチップ30に貼り付けられた後も粘着性を保持する性状を有するものが採用される。また、基材42は、公知の樹脂を用いて成る層(薄膜)であり、例えばアクリル系樹脂を用いて構成することができる。
【0067】
ルースシール40は、粘着層41および基材42を合わせた厚み寸法が40μm以上60μm以下、好ましくは45μm以上55μm以下、より好ましくは50μmである。粘着層41と基材42との厚み寸法の割合は特に制限されず、粘着層41よりも基材42の方が厚み寸法が大きくてもよく、逆に小さくてもよいし、あるいは、同一寸法でもよい。本実施の形態では、粘着層41の厚み寸法を25μm、基材42の厚み寸法を25μmとしている。
【0068】
このようなルースシール40が載置される台紙51は、粘着層41に対して剥離性を有する剥離フィルムを好適に用いることができる。例えば、PETフィルムの表面(上面)にシリコーンがコーティングされたフィルムを用いることができる。この場合、シリコーンがコーティングされた面が、粘着層41が貼着される上面51aとなる。この台紙51の厚み寸法は限定されないが、一例としてルースシール40の厚みとほぼ同じ寸法のものを使うことができ、具体的には40μm以上60μm以下が好ましく、より好ましくは50μmである。
【0069】
一方、
図4Cに示すように、基材42の上面には更にキャリアフィルム52が積層されている。キャリアフィルム52は、ルースシール40の全面を覆う第1部分52aと、第1部分52aから台紙51の面に沿った方向へ延びる第2部分52bと、を有している。第1部分52aは基材42の上面に対向し、基材42の上面に対向する面に接着力を有している。従って、キャリアフィルム52の第1部分52aは基材42の上面に貼着している。一方、第2部分52bは基材42の上面に対向しておらず、台紙51の上面51aに直接対向しており、上面51aに対向する面に接着力を有している。従って、キャリアフィルム52の第2部分52bは台紙51の上面51aに貼着している。キャリアテープ52は、ルースシール40を持ち運ぶ用途から、ルースシール40よりも厚み寸法が大きいものがよく、例えば60μm以上70μm以下が好ましく、より好ましくは65μmである。
【0070】
このように、ルースシールセット50は、台紙51とキャリアフィルム52との間にルースシール40が挟持されている。このルースシールセット50の使い方は次の通りである。
【0071】
使用時には、まず、台紙51を湾曲させてルースシール40の突出部40eを台紙51の上面51aから浮かせ、ピンセットを用いてこの突出部40eを摘まんで持ち上げることで、台紙51からルースシール40をキャリアテープ52と共に引き剥がす。なお、突出部40eを摘まんで剥がすのに替えて、キャリアテープ52の第2部分52bを摘まんで持ち上げることで、キャリアテープ52と共にルースシール40を引き剥がすようにしてもよい。ユーザは、突出部40eまたは第2部分52bを持ってルースシール40をネイルチップ30の適所に位置決めして貼り付ける。このとき、前述したように突出部40eをネイルチップ30の樹脂片31cに合わせるようにして貼り付けると、ネイルチップ30に対するルースシール40の配置の間違いを防止できる。その後、ネイルチップ30からキャリアフィルム52を引き離すことで、キャリアフィルム52からルースシール30を剥離させる。
【0072】
なお、
図4Bに示すように、ルースシール40の幅方向の中央位置での前後方向寸法L10は、約5mmとなっている。ここで、
図3を参照して説明したように、爪床部14の基端部であって露出していない部分の寸法L6が、2.0mm以上4.0mm以下、好ましくは2.5mm以上3.5mm以下、より好ましくは3.0mmとなっている。従って、装着後のルースシール40は、1.0mm~3.0mm露出し、好ましくは1.5mm~2.5mm露出し、より好ましくは2.0mm露出するようになっている。
【0073】
(作用および効果)
以上に説明したように、本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10は、模擬指13の幅方向中央において、キューティクル部16の先端位置から爪根嵌入部15の嵌入溝15aの基端側の最奥位置までの寸法L6が、例えば2mm以上4mm以下である。これにより、キューティクルのスキンアップを練習する場合にネイルチップの根元が露出せず、実際の人の指を用いる場合と同じようなリアルな感覚で練習できる。また、プッシュアップを練習する場合に、ルースシールの全てが剥がれてしまうことなく、外部に露出している部分のみが捲れ上がり、リアルな感覚で練習できる。さらに、ニッパーリングの練習においても、ルースシール全体が抜け出ることなく、リアルな感覚で行える。
【0074】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10は、キューティクル部16の厚み寸法が、例えば0.6mm以上0.8mm以下である。これにより、ニッパーリングにおいてルースシールをカットするときに誤ってキューティクル部を一緒にカットしてしまうのを防止できる。
【0075】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10は、爪床部14の表面は、第1端位置P1と第2端位置P2とを1:1に分かつ位置と1:3に分かつ位置との間に、表面側に高いピークP3がある凸状を成している。これにより、実際の人の手指の爪床形状に類似するので、当該爪床に装着されたネイルチップにより実際の爪表面の曲面形状や姿勢を再現できる。従って、カラーリングやネイルアートを練習する場合に、実際の爪表面を対象にしているのと同じようなリアルな感覚で行える。
【0076】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10は、爪床部14の表面において、第1端位置P1とピークP3との間の第1曲面C1は、第2端位置P2とピークP3との間の第2曲面C2よりも曲率が大きい。これにより、当該爪床部14に装着したネイルチップ30の形状や姿勢が、より実際の爪に類似することとなる。
【0077】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10は、模擬指13が、塑性変形可能な金属製の棒状体20と、棒状体20の先端部を覆って設けられた柱状の第1樹脂体21と、棒状体20および第1樹脂体21を覆って設けられ、第1樹脂体21よりも軟質の樹脂製であって人の手の指を模した表面形状を有する第2樹脂体22と、で構成されている。これにより、指の関節の曲がり具合を棒状体により再現し、指を把持したときの骨の感触を第1樹脂体により再現し、指を把持したときの皮膚や筋肉の感触を第2樹脂体により再現することができる。従って、側爪郭部を押し下げるスキンダウンにおいて、実際の人の指先に対する施術と同じような、リアルな感覚で行うことができる。
【0078】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10は、第2樹脂体22が、デュロメータ(タイプA)で測定した硬度が33以上37以下のエラストマーから成る。これにより、模擬指13を使ったスキンダウン等の施術を、よりリアルな感覚で行うことができる。
【0079】
また、本発明に係るネイル実技用模擬ハンド10は、棒状体20において第1樹脂体21に覆われている先端部には拡幅部20aが設けられているこれにより、模擬指13の関節を繰り返し曲げ伸ばししても、棒状体20から第1樹脂体21が抜けて外れてしまうのを防止できる。
【0080】
また、本発明に係るネイルチップ用ルースシール40は、粘着層41および基材42が積層されて成る転写シートによって構成されている。これにより、ルースキューティクルを除去するプッシュバックや、ルースキューティクルをキューティクルと一緒に押し上げるプッシュアップなどの施術の練習に際して、実際のルースキューティクルを扱っているようなリアルな感覚で行うことができる。特に、基材42をネイルチップ30に貼り付けるのに、接着剤ではなく粘着材から成る粘着層41を用いることで、プッシュアップやプッシュバックの施術がよりリアルに行える。
【0081】
また、本発明に係るネイルチップ用ルースシール40は、さらに、粘着層41および基材42を合わせた厚み寸法が、例えば40μm以上60μm以下であるこれにより、プッシュバックやプッシュアップの施術の練習を、よりリアルな感覚で行うことができる。
【0082】
また、本発明に係るネイルチップ用ルースシール40は、基材42が、アクリル系樹脂から成る。これにより、プッシュバックやプッシュアップの施術の練習を、さらにリアルな感覚で行うことができる。
【0083】
また、本発明に係るネイル実技用模擬セットは、上述したような模擬指を有する模擬ハンドと、ネイルチップと、ルースシールとを備えている。
【0084】
このような構成により、ネイルケアの実技で用いた場合に、実際の人の手の指を対象にしているかのようなリアルな感覚で行うことができる。特に、側爪郭のスキンダウン、ルースキューティクルのプッシュアップおよびニッパーリングなどに際して、上記セットを用いれば、リアルな感覚で練習することができる。
【0085】
また、上述した模擬ハンド10およびネイルチップ30は、爪床部14の平面視形状および表面の立体的な曲面形状が、ネイルチップ30の平面視形状および裏面の曲面形状と整合する。このように、模擬ハンド10に対してネイルチップ30が専用品となっており、ネイルチップ30を模擬ハンド10に装着する際に、ネイルチップ30の形状を事前に整える必要がない。その結果、ネイルチップ30を模擬ハンド10の爪床部14に適切、安定的、かつ、容易に装着可能である。また、検定試験の開始時のネイルチップ形状に関して、各ユーザに同一条件を提供することができる。
【0086】
また、実際の人の指ではキューティクル部分の皮膚と爪とが一体化しているのに対し、模擬ハンド10とネイルチップ30とは実際の人の指ほどには一体化していない。そのため、模擬ハンド10においてキューティクル部16をリアルに再現することは困難であった。これに対して本実施の形態に係る模擬ハンド10は、その材料と寸法(L5)とを試行錯誤の上、好適な組み合わせを見出した。その結果、模擬ハンド10でもキューティクル部16のスキンアップの施術においてリアル感を向上できるようになった。
【0087】
また、ルースシール40をプッシュアップした際のルースシール40の立ち上がり状態をリアルに再現するのが困難であった。これに対し、本実施の形態に係るルースシール40は、上述したような粘着層41および基材42から成るルースシール40を採用し、これを貼り付けたネイルチップ30を模擬指13の嵌入溝15aに嵌め込む構成を採用している。さらに、この嵌入溝15aは、上述した深さ寸法L6を有している。これにより、プッシュアップ時にルースシール40がリアルに立ち上がる。また、立ち上がったルースシール40をニッパーで挟んで切除するときに、嵌入溝15aに入り込んでいる部分は挟持されて引っ張り出されない。従って、切除時に当該部分が引っ張り出されてしまって、リアルさが欠けてしまう事態になるのを回避できる。
【0088】
[各部の寸法等について(その2)]
上述した模擬ハンド10が有する模擬指13、ネイルチップ30、および、ルースシール40について、ネイリスト技能検定試験またはその練習をするのに好適な、各部の寸法等の一例について更に説明する。なお、ここまでに言及した寸法および以下で言及する寸法はいずれも完成品における寸法である。すなわち、例えば、第1樹脂体21および第2樹脂体22などは成形後に若干の伸縮を生じるので、同一の対象部位であっても、製造時に用いる型の寸法と完成品の寸法とで違いが生じ得るが、ここでは完成品の寸法として言及する。
【0089】
≪寸法L20について≫
図5は、模擬指13の指先部分13aを第1樹脂体21も含めて示す断面図である。この
図5に示すように、模擬指13の指先部分13aにおいて、嵌入溝15aの基端側の最奥位置から指の上側の表面までの肉厚の寸法をL20としたとき、寸法L20は、1.5mm≦L20≦2.5mmの範囲であることが好ましく、例えばL20=2.0mmを選択できる。このような寸法L20は、嵌入溝15aの左右方向の全範囲において採用されるのが好ましいが、これに限定されない。すなわち、嵌入溝15aの左右方向の全範囲のうち少なくとも一部において、寸法L20が上記範囲内の値であることが好ましい。なお、寸法L20は模擬指13の種類に応じて異なっていてもよいし、同一でもよい。
【0090】
模擬指13においてこの寸法L20の部分は第2樹脂体22で構成されている。既に述べたように第2樹脂体22は手指の筋肉および皮膚に対応しており、スキンダウン等の施術でリアルな感覚を実現するため、比較的硬度の小さいエラストマー等を用いて構成している。一方、このような第2樹脂体22の場合、爪床部14に装着したネイルチップ30が安定せず、特にファイリング時に大きくぐらつくことが懸念される。そこで実施の形態では、上記のとおり寸法L20を規定することで、柔らかい材料により第2樹脂体22を構成しつつネイルチップ30を安定的に支持している。その結果、スキンダウンおよびファイリングの何れにおいてもリアルさが向上している。また、既に述べたようにネイルチップ30の後端部分は嵌入溝15aと平面視形状と同一になっている。一例として、ネイルチップ30の後端部分および嵌入溝15aは何れも、後端が左右へ延びる直線状を成し、かつ、左右の端部は円弧状に丸められている(
図4A等参照)。これにより、第2樹脂体22を比較的柔らかい材料を用いて構成しつつ、ネイルチップ30の安定的な支持を可能としている。
【0091】
≪寸法L21について≫
図5に示すように、第1樹脂体21の上面から、ネイルチップ30が装着される爪床部14までの肉厚の寸法をL21としたとき、寸法L21は、1.3mm≦L21≦3.2mmの範囲であることが好ましい。なお、寸法L21の測定位置は、前記肉厚において最小となる位置である。寸法L21は模擬指13の種類に応じて異なっていてもよいし、同一でもよい。例えば、親指については2.8mm≦L21≦3.2mm、より好ましくはL21=3.0mmを採用できる。人差し指については2.3mm≦L21≦2.7mm、より好ましくはL21=2.5mmを採用できる。中指については2.1mm≦L21≦2.5mm、より好ましくはL21=2.3mmを採用できる。薬指については1.3mm≦L21≦1.7mm、より好ましくは1.5mmを採用できる。小指については1.9mm≦L21≦2.3mm、より好ましくはL21=2.1mmを採用できる。
【0092】
このように、模擬指13の種類に応じてL21の値を異ならせる場合は、親指と他の指とを比較して分かるように、爪床部14の幅方向の寸法L3(
図2B参照)が大きいほど、肉厚L21を大きくするのが好ましい。
【0093】
模擬指13では、第1樹脂体21および第2樹脂体22が互いに接着されていないため、側爪郭部17に対するスキンダウンやネイルチップ30に対するファイリングのときに、第2樹脂体22が第1樹脂体21から分離して大きくぐらつくことが懸念される。従って、指幅が大きいほど(すなわち、爪床部幅が大きいほど)L21の値を大きくすれば、ぐらつきを抑制することができる。
【0094】
≪寸法L22について≫
図5に示すように、第1樹脂体21の前端から模擬指13の前端までの肉厚の寸法をL22としたとき、寸法L22は、9.5mm≦L22≦12.5mmの範囲であることが好ましい。なお、寸法L22は、第1樹脂体21の前端面と模擬指13の前端との距離が最大となる位置での測定値である。寸法L22は模擬指13の種類に応じて異なっていてもよいし、同一でもよい。例えば、親指については9.5mm≦L22≦10.5mm、より好ましくはL22=10.0mmを採用できる。人差し指については11.5mm≦L22≦12.5mm、より好ましくはL22=12.0mmを採用できる。中指、薬指、および、小指については10.5mm≦L22≦11.5mm、より好ましくはL22=11.0mmを採用できる。
【0095】
寸法L22を爪床部14の長手方向寸法L2との比較でいうと、寸法L22は、0.4×L2≦L22≦0.6×L2の範囲の値であることが好ましい。この場合、模擬指13の指先部分13aのうち特に先端側の一定範囲には第1樹脂体21が存在しない構成となる。これにより、側爪郭部17の特に先端部分へのスキンダウンを違和感なく行える一方、第2樹脂体22が必要以上にぐらつくのを防止できる。
【0096】
≪寸法L23について≫
図5に示すように、爪床部14の前端からネイルチップ30(
図5では破線で示す)の前端までの寸法をL23としたとき、寸法L23は、4.5mm≦L23≦6.0mmの範囲であることが好ましい。また、寸法L23は、5.0mm≦L23≦5.5mmの範囲であることがより好ましく、さらに好ましい値としてL23=5.0mmを採用できる。ネイリスト技能検定試験では、ネイルチップ30の角部分をラウンド形状に丸めるファイリングにおいて、仕上がり後の寸法L23を5.0mm以下とすることが要求される。従って、ファイリング前のネイルチップ30の寸法L23を上記のように設定することで、検定試験本番やそのための練習において、本実施の形態に係る模擬ハンド10およびネイルチップ30を好適に使用できる。
【0097】
以上に説明したように、本実施の形態は、模擬ハンド10、ネイルチップ30、および、ルースシール40について、それぞれを構成する材料および寸法に関する組み合わせを試行錯誤した中から好適な一例を示している。例えば、骨に対応する第1樹脂体21の寸法と、皮膚に対応する第2樹脂体22の材料硬度との関係の最適化は容易ではなく、検定試験で行われる様々の施術を違和感なく行えるか等の観点から選択する必要がある。これに対し、上述した模擬ハンド10等は、好適な材料および寸法を備えており、様々な施術をリアルな感覚で行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ネイル実技用模擬ハンド、ネイルチップ用ルースシール、およびネイル実技用模擬セットに適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ネイル実技用模擬セット
10 模擬ハンド
13 模擬指
14 爪床部
15 爪根嵌入部
15a 嵌入溝
16 キューティクル部
17 側爪郭部
20 棒状体
20a 拡幅部
21 第1樹脂体
22 第2樹脂体
30 ネイルチップ
31 爪根部
32 爪甲部
33 爪先部
40 ルースシール
41 粘着層
42 基材
50 ルースシールセット
51 台紙
52 キャリアフィルム
C1 第1曲面
C2 第2曲面
P1 第1端位置
P2 第2端位置
P3 ピーク