(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061679
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】小直径炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法およびこれを利用した炭素ナノチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/75 20060101AFI20240425BHJP
C01B 32/162 20170101ALI20240425BHJP
【FI】
B01J23/75 M
C01B32/162
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181170
(22)【出願日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0136552
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ミュン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン テ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,サン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,チュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ワン スン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ウ ラム
(72)【発明者】
【氏名】カン,チャン グ
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AC03B
4G146AC07A
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AC27A
4G146AC30B
4G146AD22
4G146BA12
4G146BA48
4G146BC09
4G146BC33
4G146BC43
4G146BC44
4G169AA03
4G169BC16B
4G169BC54B
4G169BC67B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小直径炭素ナノチューブを合成できる炭素ナノチューブ製造用触媒、およびこの製造方法を提供する。
【解決手段】一実施例として(a)主触媒前駆体、支持体前駆体、助触媒前駆体および析出抑制剤を溶媒中に溶解させて前駆体溶液を製造する段階;および(b)前記前駆体溶液を反応器の内部に噴霧して熱分解する段階;を含み、前記助触媒前駆体対比前記析出抑制剤のモル分率は0.1~1.5である、炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主触媒前駆体、支持体前駆体、助触媒前駆体および析出抑制剤を溶媒中に溶解させて前駆体溶液を製造する段階;および
(b)前記前駆体溶液を反応器の内部に噴霧して熱分解する段階;を含み、
前記助触媒前駆体対比前記析出抑制剤のモル分率は0.1~1.5である、炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記主触媒前駆体はCo、FeおよびNiの中から選択された1種以上の金属前駆体である、請求項1に記載の炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記支持体前駆体はAl、CaおよびMgの中から選択された1種以上の金属前駆体である、請求項1に記載の炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記助触媒前駆体はV、MnおよびMoの中から選択された1種以上の金属前駆体である、請求項1に記載の炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法。
【請求項5】
前記析出抑制剤はクエン酸(Citric acid)、トリカルバリル酸(Tricarballylicacid)、メルカプトコハク酸(Mercaptosuccinic acid)、コハク酸(Succinic acid)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つである、請求項1に記載の炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された方法で製造された、炭素ナノチューブ製造用触媒。
【請求項7】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の見掛け密度は0.02~0.2g/mlである、請求項6に記載の炭素ナノチューブ製造用触媒。
【請求項8】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の粒子形態は球状である、請求項6に記載の炭素ナノチューブ製造用触媒。
【請求項9】
(1)請求項6に記載された炭素ナノチューブ製造用触媒を化学気相蒸着反応器に投入する段階;および
(2)炭素源ガスを注入して炭素ナノチューブを合成する段階;を含む、炭素ナノチューブの製造方法。
【請求項10】
前記炭素源ガスは炭素数1~4の飽和または不飽和炭化水素、一酸化炭素およびこれらのうち2以上の混合物からなる群から選択された一つを含む、請求項9に記載の炭素ナノチューブの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載された方法で製造された、炭素ナノチューブ。
【請求項12】
前記炭素ナノチューブの直径は7~12nmである、請求項11に記載の炭素ナノチューブ。
【請求項13】
前記炭素ナノチューブの純度は90%以上である、請求項11に記載の炭素ナノチューブ。
【請求項14】
前記炭素ナノチューブのバンドルの長さは50~200μmである、請求項11に記載の炭素ナノチューブ。
【請求項15】
前記炭素ナノチューブのBET比表面積は250~400m2/gである、請求項11に記載の炭素ナノチューブ。
【請求項16】
前記炭素ナノチューブの見掛け密度は0.005~0.5g/mlである、請求項11に記載の炭素ナノチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は小直径炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法、それにより製造された炭素ナノチューブ製造用触媒、小直径炭素ナノチューブの製造方法、およびそれにより製造された炭素ナノチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
環境に優しいエネルギーおよび電気自動車に対する関心と需要が増加するにつれて、二次電池の需要および性能改善の必要性が急激に増加している。特に、電気自動車用二次電池はエネルギー密度が高く、寿命が長く、自己放電率が低い高容量二次電池であることが要求され、このような物性を確保するためには電気伝導性が高い導電材の開発が必須である。
【0003】
導電材は電池内電荷の移動通路の役割をするもので、炭素系列の導電性物質、例えば黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、炭素ナノチューブなどが使われ得、既存には主に導電性カーボンブラックを使っていた。
【0004】
炭素ナノチューブ(carbon nanotube)は1個の炭素原子が3個の他の炭素原子と結合した六角形のハニカム形の格子で構成されたチューブ状構造を有する素材であって、優秀な電気伝導性によって二次電池用次世代導電材として脚光を浴びている。炭素ナノチューブを導電材として使う場合、二次電池のエネルギー密度および寿命特性を向上させることができ、電池の大きさを減らすことができる。
【0005】
一方、炭素ナノチューブは直径が小さいほど優秀な電気伝導性を示すため、小直径の炭素ナノチューブを二次電池用導電材として使う場合、二次電池の容量および寿命特性をさらに向上させることができる。したがって、既存対比減少した直径を有する炭素ナノチューブを合成するための触媒およびこれを利用した炭素ナノチューブ製造技術の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書の記載事項は前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、本明細書の一目的は、小直径炭素ナノチューブを合成できる炭素ナノチューブ製造用触媒およびこの製造方法を提供することである。
【0007】
本明細書の他の一目的は、電気伝導性が優秀な小直径炭素ナノチューブおよびこの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面によると、(a)主触媒前駆体、支持体前駆体、助触媒前駆体および析出抑制剤を溶媒中に溶解させて前駆体溶液を製造する段階;および(b)前記前駆体溶液を反応器の内部に噴霧して熱分解する段階;を含み、前記助触媒前駆体対比前記析出抑制剤のモル分率は0.1~1.5である、炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法を提供する。
【0009】
一実施例において、前記主触媒前駆体はCo、FeおよびNiの中から選択された1種以上の金属前駆体であり得る。
【0010】
一実施例において、前記支持体前駆体はAl、CaおよびMgの中から選択された1種以上の金属前駆体であり得る。
【0011】
一実施例において、前記助触媒前駆体はV、MnおよびMoの中から選択された1種以上の金属前駆体であり得る。
【0012】
一実施例において、前記析出抑制剤はクエン酸(Citric acid)、トリカルバリル酸(Tricarballylic acid)、メルカプトコハク酸(Mercaptosuccinic acid)、コハク酸(Succinic acid)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つであり得る。
【0013】
他の一側面によると、前記炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法で製造された、炭素ナノチューブ製造用触媒を提供する。
【0014】
一実施例において、前記炭素ナノチューブ製造用触媒の見掛け密度は0.02~0.2g/mlであり得る。
【0015】
一実施例において、前記炭素ナノチューブ製造用触媒の粒子形態は球状であり得る。
【0016】
他の一側面によると、(1)前記炭素ナノチューブ製造用触媒を化学気相蒸着反応器に投入する段階;および(2)炭素源ガスを注入して炭素ナノチューブを合成する段階;を含む、炭素ナノチューブの製造方法を提供する。
【0017】
一実施例において、前記炭素源ガスは炭素数1~4の飽和または不飽和炭化水素、一酸化炭素およびこれらのうち2以上の混合物からなる群から選択された一つを含むことができる。
【0018】
さらに他の一側面によると、前記炭素ナノチューブの製造方法で製造された、炭素ナノチューブを提供する。
【0019】
一実施例において、前記炭素ナノチューブの直径は7~12nmであり得る。
【0020】
一実施例において、前記炭素ナノチューブの純度は90%以上であり得る。
【0021】
一実施例において、前記炭素ナノチューブのバンドルの長さは50~200μmであり得る。
【0022】
一実施例において、前記炭素ナノチューブのBET比表面積は250~400m2/gであり得る。
【0023】
一実施例において、前記炭素ナノチューブの見掛け密度は0.005~0.5g/mlであり得る。
【発明の効果】
【0024】
本明細書の多様な効果の中の一つとして、既存対比減少した直径を有する小直径炭素ナノチューブの合成に使われ得る炭素ナノチューブ製造用触媒を提供することができる。
【0025】
本明細書の多様な効果のうち他の一つとして、触媒前駆体溶液を製造する過程で触媒の成分が析出されることを防止できるため、炭素ナノチューブ製造用触媒を高い歩留まりで製造することができる。
【0026】
本明細書の多様な効果のうちさらに他の一つとして、小直径炭素ナノチューブを高い純度で合成することができる。
【0027】
本明細書の多様な効果のうちさらに他の一つとして、直径が小さいので電気伝導性が優秀であり、二次電池用導電材として使用時、二次電池の容量および寿命特性を向上させることができる炭素ナノチューブを提供することができる。
【0028】
本明細書の効果は前記の効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明または請求の範囲に記載された構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本明細書の実施例1により製造した触媒のSEMイメージである。
【
図2】本明細書の実施例2により製造した触媒のSEMイメージである。
【
図3】本明細書の実施例3により製造した触媒のSEMイメージである。
【
図4】本明細書の比較例3により製造した触媒のSEMイメージである。
【
図5】本明細書の比較例4により製造した触媒のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、添付した図面を参照して本明細書の一側面を説明することにする。しかし、本明細書の記載事項は多様な異なる形態で具現され得、したがってここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面で本明細書の一側面を明確に説明するために説明とかかわらない部分は省略し、明細書全体を通じて類似する部分に対しては類似する図面符号を付した。
【0031】
明細書全体で、或る部分が他の部分と「連結」されているとする時、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。また、或る部分が何らかの構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに具備できるということを意味する。
【0032】
本明細書で数値的値の範囲が記載された時、この具体的な範囲が別途に記述されない限りその値は有効数字に対する化学での標準規則により提供された有効数字の精度を有する。例えば、10は5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は9.50~10.49の範囲を含む。
【0033】
以下、添付された図面を参照して本明細書の一実施例を詳細に説明することにする。
【0034】
炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法
本明細書の一側面に係る炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法は、(a)主触媒前駆体、支持体前駆体、助触媒前駆体および析出抑制剤を溶媒中に溶解させて前駆体溶液を製造する段階;および(b)前記前駆体溶液を反応器の内部に噴霧して熱分解する段階;を含み、前記助触媒前駆体対比前記析出抑制剤のモル分率は0.1~1.5である。
【0035】
炭素ナノチューブ製造用触媒は触媒の製造方法または触媒を構成する成分間の比率により結晶構造が異なって形成され得、触媒の結晶構造により該当触媒を使って合成した炭素ナノチューブの成長形態および特性が変わり得る。
【0036】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法は噴霧熱分解法を使うことによって球状の粒子形態を有する触媒を製造でき、担持法で製造した触媒対比見掛け密度が低い触媒を製造することができる。
【0037】
また、噴霧熱分解法を使って製造された触媒は中空構造を有することができ、この場合、中空の厚さは0.5~10μm、好ましくは1~8μmであり得、中空の比率は50体積%以上であり得る。ここで中空構造とは、内部が空いている立替構造であって、例えば、内部が空いている球状または多面体状の構造を意味し、中空がすべて密閉された閉じられた構造(closed structure)、中空のうち一部が開放された開かれた構造(open structure)、またはこれらの組み合わせをすべて含む。触媒が前記のように中空構造を有する場合、小直径炭素ナノチューブの合成に有利であり得る。
【0038】
前記方法で製造した触媒を使用すると既存対比減少した直径を有する小直径炭素ナノチューブを合成でき、前記小直径炭素ナノチューブの直径は7~12nmであり得る。前記方法で製造した触媒を使って合成した炭素ナノチューブは低い見掛け密度および優秀な電気伝導性を示すため、二次電池用導電材として使う場合、二次電池の容量および寿命特性を向上させることができる。
【0039】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法は、前駆体溶液の製造中に触媒の成分の析出を抑制して炭素ナノチューブ製造用触媒を高い歩留まりで製造することができる。
【0040】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法を利用した触媒製造歩留まり率は90%以上であり得る。例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%以上であり得るが、これに限定されるものではない。触媒製造歩留まり率が前記範囲未満であれば触媒製造工程の経済性が低下し得る。
【0041】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法は、助触媒前駆体対比析出抑制剤のモル分率を調節することによって既存対比減少した直径を有する小直径炭素ナノチューブの合成に使われ得る。前記方法で製造した触媒を使って合成した炭素ナノチューブの直径は7~12nmであり得、低い見掛け密度および優秀な電気伝導性を示すため二次電池用導電材として使う場合、二次電池の容量および寿命特性を向上させることができる。
【0042】
前記助触媒前駆体対比前記析出抑制剤のモル分率は例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5またはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。助触媒前駆体対比析出抑制剤のモル分率が前記範囲未満であれば、前駆体溶液製造中に触媒の成分が析出されて炭素ナノチューブ製造用触媒が製造されない可能性がある。助触媒前駆体対比析出抑制剤のモル分率が前記範囲超過であれば、触媒製造歩留まり率が低下し得、製造された触媒を使って合成した炭素ナノチューブの直径が増加し、電気伝導性が低下して二次電池用導電材として不適合となり得る。
【0043】
前記(a)段階は炭素ナノチューブ製造用触媒に含まれる金属成分の前駆体を含む前駆体溶液を準備する段階であって、主触媒前駆体、支持体前駆体、助触媒前駆体および析出抑制剤を溶媒に投入した後、窒素雰囲気下で撹はんする段階を含むことができる。
【0044】
前記主触媒前駆体はCo、FeおよびNiの中から選択された1種以上の金属前駆体であり得るが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記支持体前駆体はAl、CaおよびMgの中から選択された1種以上の金属前駆体であり得るが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記助触媒前駆体はV、MnおよびMoの中から選択された1種以上の金属前駆体であり得るが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記金属前駆体は各金属の硝酸塩、硫酸塩、アルコキシド、クロリド、アセテート、カーボネートおよびこれらのうち2以上の混合物からなる群から選択された一つであり得るが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記析出抑制剤は主触媒前駆体、支持体前駆体および助触媒前駆体を溶媒中に円滑に溶解させる役割を遂行する。
【0049】
前記析出抑制剤は有機酸(organic acid)であって、例えば、カルボン酸(Carboxylic acid)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記析出抑制剤はクエン酸(Citric acid)、トリカルバリル酸(Tricarballylic acid)、メルカプトコハク酸(Mercaptosuccinic acid)、コハク酸(Succinicacid)およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つであり得るが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記(a)段階で、前記溶媒は極性溶媒であり得、前記極性溶媒として水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールまたはこれらのうち2以上の混合溶媒を使うことができ、例えば、脱イオン水を使用することができるが、これに限定されるものではない。前記溶媒として脱イオン水を使用すると、前駆体溶液内の不純物を最小化でき、これに伴い、最終的に製造される触媒の純度を向上させることができる。前記触媒の純度の向上は結果的に炭素ナノチューブの純度を向上させることができる。
【0052】
前記(b)段階は(b1)前記前駆体溶液を運搬ガスとともに反応器の内部に噴霧する段階;および(b2)噴霧された前記前駆体溶液を600~1,200℃で熱分解する段階;を含むことができる。
【0053】
前記(b1)段階では触媒の粒子形態、見掛け密度などを制御するために、前記前駆体溶液を反応器の内部に噴霧してより微細な液滴(droplet)に変換させることができる。
【0054】
前記(b1)段階で、前記運搬ガスは空気であり得るが、これに限定されるものではない。
【0055】
前記(b2)段階では前記液滴を加熱して溶媒を蒸発させ、前駆体を分解することによって触媒を製造することができる。
【0056】
前記(b2)段階で、前記反応器の温度は600~1,200℃であり得る。例えば、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃、1,000℃、1,050℃、1,100℃、1,150℃、1,200℃またはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。反応器の温度が前記範囲より低いと触媒の乾燥状態が不良であって追加的な工程が必要であるため経済性の側面で不利であり、これを使って合成した炭素ナノチューブの純度や物性が低下し得る。反応器の温度が前記範囲より高いと装備または設備の構築に過多の費用が必要とされて経済的損失を招くだけでなく、固溶体の形成や結晶構造の変形により触媒の性能が低下し得る。
【0057】
炭素ナノチューブ製造用触媒
本明細書の他の一側面に係る炭素ナノチューブ製造用触媒は、前述した炭素ナノチューブ製造用触媒の製造方法で製造される。
【0058】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の見掛け密度(bulk density)は0.02~0.2g/mlであり得る。例えば、0.02g/ml、0.03g/ml、0.04g/ml、0.05g/ml、0.06g/ml、0.07g/ml、0.08g/ml、0.09g/ml、0.10g/ml、0.11g/ml、0.12g/ml、0.13g/ml、0.14g/ml、0.15g/ml、0.16g/ml、0.17g/ml、0.18g/ml、0.19g/ml、0.20g/mlまたはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。前記見掛け密度は粉末形態の触媒を利用して測定したものであり得る。見掛け密度が前記範囲を外れると触媒を使って合成された炭素ナノチューブの合成歩留まり率および純度が低下したり、直径が増加して二次電池用導電材として不適合となり得る。
【0059】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の粒子形態は球状であり得る。前記球状触媒粒子の平均アスペクト比(aspect ratio)は1.2以下であり得る。前記アスペクト比は触媒粒子の最も長い部分の長さ(長軸長さ)を最も小さい部分の長さ(短縮長さ)で割った値を意味する。
【0060】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒は気孔を含む多孔性構造であり得、前記気孔の大きさは1~10nmであり得る。
【0061】
炭素ナノチューブの製造方法
本明細書の他の一側面に係る炭素ナノチューブの製造方法は、(1)前述した炭素ナノチューブ製造用触媒を化学気相蒸着反応器に投入する段階;および(2)炭素源ガスを注入して炭素ナノチューブを合成する段階;を含む。
【0062】
前記化学気相蒸着反応器は固定層化学気相蒸着反応器または流動層化学気相蒸着反応器であり得るが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記炭素源ガスは炭素数1~4の飽和または不飽和炭化水素、一酸化炭素およびこれらのうち2以上の混合物からなる群から選択された一つを含むことができ、例えば、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、アセチレン(C2H2)、一酸化炭素(CO)またはこれらのうち2以上の混合物を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記(2)段階で、化学気相蒸着反応器の内部温度は600~1,000℃であり得る。例えば、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃、1,000℃またはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。反応器の内部温度が前記範囲未満であれば、炭素ナノチューブの成長が不可能であるか遅延され得、前記範囲超過であれば、合成された炭素ナノチューブが熱分解されるかそれぞれが相互に結合して形態を維持できない場合もある。
【0065】
前記炭素ナノチューブ製造用触媒の投入量(g)対比前記炭素源ガスの流量(L/min)の比率は0.1~1.1L/g・minであり得る。例えば、0.1L/g・min、0.2L/g・min、0.3L/g・min、0.4L/g・min、0.5L/g・min、0.6L/g・min、0.7L/・min、0.8L/g・min、0.9L/g・min、1.0L/g・min、1.1L/g・minまたはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。触媒投入量対比炭素源ガス流量の比率が前記範囲未満であれば、触媒活性が過度に減少して炭素ナノチューブが合成されない場合があり、前記範囲超過であれば、合成された炭素ナノチューブの直径が増加し、電気伝導性が低下して二次電池用導電材として不適合となり得る。
【0066】
前記(2)段階で、前記炭素源ガスは運搬ガスとともに注入され得る。前記運搬ガスはヘリウム、窒素、アルゴンおよびこれらのうち2以上の混合物からなる群から選択された一つであり得るが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記(2)段階で、炭素ナノチューブの合成は、高温の熱によって分解された炭素源ガスが触媒内に浸透、飽和された後、炭素が析出されながら遂行されるものであり得る。
【0068】
炭素ナノチューブ
本明細書のさらに他の一側面に係る炭素ナノチューブは、前述した炭素ナノチューブの製造方法で製造される。
【0069】
前記炭素ナノチューブの直径は7~12nmであり得る。例えば、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nmまたはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。直径が前記範囲未満であれば、炭素ナノチューブに構造的欠陥が発生したり分散性が低下し得、前記範囲超過であれば、電気伝導性が低下して二次電池用導電材として使用時、二次電池のエネルギー密度、寿命特性および自己放電率が低下し得る。
【0070】
前記炭素ナノチューブの純度は90%以上であり得る。純度が前記範囲未満であれば電気伝導性が低下し得、二次電池用導電材として使用時に、不純物が電池の内部で反応して安全事故が発生し得る。
【0071】
前記炭素ナノチューブは複数の炭素ナノチューブが相互に凝集したバンドル(bundle)型炭素ナノチューブであり得るが、これに限定されるものではない。
【0072】
前記炭素ナノチューブのバンドルの長さは50~200μmであり得る。例えば、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μmまたはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。バンドルの長さが前記範囲未満であれば電気伝導性が低下して二次電池用導電材として不適合となり得、前記範囲超過であれば分散性が低下し得る。
【0073】
前記炭素ナノチューブのBET比表面積は250~400m2/gであり得る。例えば、250m2/g、260m2/g、270m2/g、280m2/g、290m2/g、300m2/g、310m2/g、320m2/g、330m2/g、340m2/g、350m2/g、360m2/g、370m2/g、380m2/g、390m2/g、400m2/gまたはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。BET比表面積が前記範囲未満であれば電気伝導性が低下して二次電池用導電材として不適合となり得、前記範囲超過であれば分散性が低下し得る。
【0074】
前記炭素ナノチューブの見掛け密度(bulk density)は0.005~0.5g/mlであり得る。例えば、0.005g/ml、0.01g/ml、0.02g/ml、0.03g/ml、0.04g/ml、0.05g/ml、0.06g/ml、0.07g/ml、0.08g/ml、0.09g/ml、0.1g/ml、0.2g/ml、0.3g/ml、0.4g/ml、0.5g/mlまたはこれらのうち両値の間の範囲であり得る。前記見掛け密度は粉末形態の炭素ナノチューブを利用して測定したものであり得る。見掛け密度が前記範囲未満であれば、分散性が低下し得、前記範囲超過裏面電気伝導性が低下して二次電池用導電材として不適合となり得る。
【0075】
前記炭素ナノチューブは優秀な電気伝導性を示すため、二次電池用導電材として使用時に少ない量でも同一または既存対比改善された性能を示すことができ、それによりエネルギー密度が高く、寿命が長く、自己放電率が低い高容量二次電池の生産に適用され得る。
【0076】
以下、本明細書の実施例に関してさらに詳細に説明することにする。ただし、以下の実験結果は前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容が縮小されたり制限されて解釈され得ない。下記で明示的に提示していない本明細書の多様な具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載することにする。
【0077】
実施例1
Co(NO3)3・6H2O 0.78モル、Al(NO3)3・9H2O 2.28モル、NH4VO3 0.09モルおよびクエン酸0.135モルを脱イオン水に溶解させて前駆体混合溶液を製造した。その後、前駆体混合溶液を750℃の反応器の内部に噴霧して熱分解することによって触媒を製造した。
【0078】
実施例2
クエン酸を0.09モル使ったことを除いては、実施例1と同じ方法で触媒を製造した。
【0079】
実施例3
クエン酸を0.009モル使ったことを除いては、実施例1と同じ方法で触媒を製造した。
【0080】
比較例1
クエン酸を0.2モル使ったことを除いては、実施例1と同じ方法で触媒を製造した。
【0081】
比較例2
クエン酸を0.0072モル使ったことを除いては、実施例1と同じ方法で触媒を製造した。
【0082】
比較例3
Co(NO3)3・6H2O 0.78モル、NH4VO3 0.09モルおよびクエン酸0.09モルを脱イオン水に溶解させて前駆体混合溶液を製造した。前駆体混合溶液を固体支持体であるアルミナ(Al2O3)に十分に担持させた後、700℃で3時間の間焼成させて担持触媒を製造した。
【0083】
比較例4
クエン酸を0.009モル使ったことを除いては、比較例3と同じ方法で担持触媒を製造した。
【0084】
下記の表1は、前記実施例1~3および比較例1~4で使われたクエン酸含量、助触媒対比クエン酸のモル分率および触媒製造法を表したものである。
【0085】
【0086】
製造例
前記実施例1~3および比較例1~4により製造したそれぞれの触媒を350mm流動層化学気相蒸着反応器に投入し、窒素雰囲気下で反応器の内部温度を650~800℃まで昇温させた後、炭素源ガスを注入して炭素ナノチューブを合成した。この時、炭素源ガスの流量は触媒投入量1g当たり0.3L/minと一定に維持した。
【0087】
実験例1
前記実施例および比較例により製造した触媒の粒子形態、製造歩留まり率および見掛け密度を測定し、その結果を下記の表2、3および
図1~5に示した。
【0088】
1)粒子形態(morphology):FE-SEM(JEOL社、JSM-7500F)を利用して300倍の倍率で測定した。
【0089】
図1~5は、それぞれ実施例1~3および比較例3、4により製造した触媒のSEMイメージを示したものである。
【0090】
2)製造歩留まり率:投入された原材料のうち金属成分の総量対比製造された触媒の量を意味し、下記の式により計算した。
【0091】
製造歩留まり率(%)=製造された触媒の量(g)/投入された原材料のうち金属成分の総量(g)×100。
【0092】
3)見掛け密度:重さを知っている100ml容器に触媒粉末を満たして重さを測定した後、下記の式により見掛け密度を換算した。
【0093】
見掛け密度=製造された触媒の総量(g)/製造された触媒の体積(ml)。
【0094】
実験例2
前記製造例により合成した炭素ナノチューブの触媒歩留まり率、平均直径および見掛け密度を測定し、その結果を下記の表2および3に表した。
【0095】
1)触媒歩留まり率:触媒投入量対比合成された炭素ナノチューブの総量を意味し、下記の式により計算した。
【0096】
触媒歩留まり率(%)=合成された炭素ナノチューブの総量(g)/触媒投入量(g)×100。
【0097】
2)平均直径:TEM(JEOL社、JEM-2100F)を利用して200,000倍の倍率で測定した。
【0098】
3)見掛け密度:重さを知っている100ml容器に炭素ナノチューブ粉末を満たして重さを測定した後、下記の式により見掛け密度を換算した。
【0099】
見掛け密度=合成された炭素ナノチューブの総量(g)/合成された炭素ナノチューブの体積(ml)
【0100】
【0101】
前記表2を参照すると、実施例1~3により製造した触媒は触媒の製造歩留まり率が95%と高い値を示し、それぞれの触媒を使って合成した炭素ナノチューブは7~12nmの減少した直径を有するとともに、高い触媒歩留まり率を示した。
【0102】
析出抑制剤であるクエン酸を過量投入した比較例1により製造した触媒は触媒製造歩留まり率が低下し、該当触媒を使って合成した炭素ナノチューブの直径は12nmを超過した。
【0103】
析出抑制剤であるクエン酸を少なく投入した比較例2の場合、前駆体溶液の製造中に触媒の成分が析出されながら触媒粒子が合成されなかった。
【0104】
【0105】
前記表3および
図1~3を参照すると、実施例1~3により製造した触媒はすべて球状の粒子形態を有し、比較例対比低い見掛け密度を示した。それぞれの触媒を使って合成した炭素ナノチューブは7~12nmの減少した直径および低い見掛け密度を有することを確認した。
【0106】
前記表3および
図4、5を参照すると、比較例3および4により製造した担持触媒は粒状粒子形態および高い見掛け密度を示した。それぞれの触媒を使って合成した炭素ナノチューブは12nmを超過する直径および高い見掛け密度を示すことを確認した。
【0107】
実施例2および3はそれぞれ比較例3および4と主触媒および助触媒の成分が同一であり、助触媒前駆体対比析出抑制剤のモル分率も同一であるにも関わらず、触媒の製造法の差によって異なる触媒粒子形態および見掛け密度を示した。また、該当触媒を使って炭素ナノチューブを合成する場合、合成された炭素ナノチューブの直径および見掛け密度が異なることを確認した。
【0108】
前述した本明細書の説明は例示のためのものであり、本明細書の一側面が属する技術分野の通常の知識を有する者は本明細書に記載された技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではないものと理解されるべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散されて実施されてもよく、同様に分散されたものと説明されている構成要素も結合された形態で実施され得る。
【0109】
本明細書の範囲は後述する請求の範囲によって示され、請求の範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態は本明細書の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。