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  • 特開-ロータの製造方法およびロータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006168
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ロータの製造方法およびロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/16 20060101AFI20240110BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02K15/16 A
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106802
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝目 彬人
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠也
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS09
5H615SS44
5H615SS53
5H615SS57
5H615TT31
5H615TT32
(57)【要約】
【課題】簡略化された工程で、かつモータの性能に影響を及ぼすことなくロータのアンバランスを低減または解消する。
【解決手段】軸心を中心として円周方向に配列された挿入孔と、挿入孔内に配置される磁石および樹脂とを含むロータの製造方法は、挿入孔のうち第1群の挿入孔に磁石および樹脂を配置し、ロータを第1の回転数で回転させてロータのアンバランス位置を特定する第1工程と、第1工程で磁石が配置されていない挿入孔のうち、アンバランス位置から相対的に遠い第2群の挿入孔に磁石および樹脂を配置し、ロータを第2の回転数で回転させる第2工程と、第1工程で磁石が配置されていない挿入孔のうち、アンバランス位置に相対的に近い第3群の挿入孔に磁石および樹脂を配置し、ロータを第2の回転数よりも少ない第3の回転数で回転させる第3工程とを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータおよびロータを備えたモータに用いられるロータの製造方法であって、
前記ロータは、軸心を中心として円周方向に配列された挿入孔と、前記挿入孔内に配置される磁石および樹脂とを含み、
前記挿入孔のうち第1群の挿入孔に前記磁石および前記樹脂を配置し、前記ロータを第1の回転数で回転させて前記ロータのアンバランス位置を特定する第1工程と、
前記第1工程で前記磁石が配置されていない前記挿入孔のうち、前記アンバランス位置から相対的に遠い第2群の挿入孔に前記磁石および前記樹脂を配置し、前記ロータを第2の回転数で回転させる第2工程と、
前記第1工程で前記磁石が配置されていない前記挿入孔のうち、前記アンバランス位置に相対的に近い第3群の挿入孔に前記磁石および前記樹脂を配置し、前記ロータを前記第2の回転数よりも少ない第3の回転数で回転させる第3工程と
を含む、ロータの製造方法。
【請求項2】
前記第1群の挿入孔は、前記円周方向について等間隔で設定される、請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記第2の回転数は、前記第1の回転数以下である、請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
前記第1工程は、前記軸心から前記アンバランス位置までの距離を測定する工程をさらに含み、
前記第2の回転数または前記第3の回転数の少なくともいずれかは、前記距離に応じて決定される、請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項5】
前記第1の回転数、前記第2の回転数および前記第3の回転数のうち少なくともいずれかは、前記磁石の質量または前記樹脂の粘度の少なくともいずれかに応じて決定される、請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項6】
ステータおよびロータを備えたモータに用いられるロータであって、
前記ロータは、軸心を中心として円周方向に配列された挿入孔と、前記挿入孔内に配置される磁石および樹脂とを含み、
前記磁石および前記樹脂は、
前記挿入孔のうち第1群の挿入孔に前記磁石および前記樹脂を配置し、前記ロータを第1の回転数で回転させて前記ロータのアンバランス位置を特定する第1工程と、
前記第1工程で前記磁石が配置されていない前記挿入孔のうち、前記アンバランス位置から相対的に遠い第2群の挿入孔に前記磁石および前記樹脂を配置し、前記ロータを第2の回転数で回転させる第2工程と、
前記第1工程で前記磁石が配置されていない前記挿入孔のうち、前記アンバランス位置に相対的に近い第3群の挿入孔に前記磁石および前記樹脂を配置し、前記ロータを前記第2の回転数よりも少ない第3の回転数で回転させる第3工程と
によって配置される、ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータの製造方法およびロータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータおよびロータを備えたモータに用いられるロータは、積層鉄心本体の円周方向に形成された複数の磁石挿入孔に永久磁石を挿入して樹脂封止することによって形成される。このようなロータの製造工程において、積層鉄心本体の円周方向の積層厚みの偏差によって生じるアンバランス重量を打ち消すための技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された技術では、積層鉄心本体の円周方向の積層厚みの偏差を測定してアンバランス重量を推定する工程と、アンバランス重量を打ち消すように各磁石挿入孔への永久磁石の挿入や樹脂の充填を行う工程とが実施される。具体的には、重量の異なる永久磁石を磁石挿入孔に選択的に挿入するか、各磁石挿入孔内で永久磁石の配置位置を調整するか、または各磁石挿入孔への樹脂の充填量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-19381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1のような技術では、計測されたアンバランス重量に基づいて永久磁石の重量、配置位置、または樹脂の充填量を決定する必要があり、工程が煩雑である。また、永久磁石の重量を変更した場合には、モータの性能に影響が出る可能性もある。
【0005】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、簡略化された工程で、かつモータの性能に影響を及ぼすことなくロータのアンバランスを低減または解消することが可能なロータの製造方法およびロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、ステータおよびロータを備えたモータに用いられるロータの製造方法であって、上記ロータは、軸心を中心として円周方向に配列された挿入孔と、上記挿入孔内に配置される磁石および樹脂とを含み、上記挿入孔のうち第1群の挿入孔に上記磁石および上記樹脂を配置し、上記ロータを第1の回転数で回転させて上記ロータのアンバランス位置を特定する第1工程と、上記第1工程で上記磁石が配置されていない上記挿入孔のうち、上記アンバランス位置から相対的に遠い第2群の挿入孔に上記磁石および上記樹脂を配置し、上記ロータを第2の回転数で回転させる第2工程と、上記第1工程で上記磁石が配置されていない上記挿入孔のうち、上記アンバランス位置に相対的に近い第3群の挿入孔に上記磁石および上記樹脂を配置し、上記ロータを上記第2の回転数よりも少ない第3の回転数で回転させる第3工程とを含む、ロータの製造方法が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、ステータおよびロータを備えたモータに用いられるロータであって、上記ロータは、軸心を中心として円周方向に配列された挿入孔と、上記挿入孔内に配置される磁石および樹脂とを含み、上記磁石および上記樹脂は、上記挿入孔のうち第1群の挿入孔に上記磁石および上記樹脂を配置し、上記ロータを第1の回転数で回転させて上記ロータのアンバランス位置を特定する第1工程と、上記第1工程で上記磁石が配置されていない上記挿入孔のうち、上記アンバランス位置から相対的に遠い第2群の挿入孔に上記磁石および上記樹脂を配置し、上記ロータを第2の回転数で回転させる第2工程と、上記第1工程で上記磁石が配置されていない上記挿入孔のうち、上記アンバランス位置に相対的に近い第3群の挿入孔に上記磁石および上記樹脂を配置し、上記ロータを上記第2の回転数よりも少ない第3の回転数で回転させる第3工程とによって配置される、ロータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本開示によれば、簡略化された工程で、かつモータの性能に影響を及ぼすことなくロータのアンバランスを低減または解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係るモータを示す断面図である。
図2図1のII-II線に沿った矢視図である。
図3】本開示の一実施形態に係るロータの製造方法の第1工程を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係るロータの製造方法の第2工程を示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係るロータの製造方法の第3工程を示す図である。
図6】挿入孔に配置された磁石および樹脂に作用する力について説明するための図である。
図7図3から図5を参照して説明したロータの製造方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
図1は本開示の一実施形態に係るモータを示す断面図であり、図2図1のII-II線に沿った矢視図である。図示されるように、モータ1は、ステータ2およびロータ3を有する。ロータ3はシャフト4に取り付けられて回転する部分であり、ステータ2はロータ3の周りに固定された部分である。なお、ステータ2およびシャフト4、ならびにロータ3の以下で説明する以外の部分については公知の構成を利用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0012】
ロータ3は、積層鉄心で形成される本体31と、本体31に形成される複数の挿入孔32と、挿入孔32内に配置される磁石33および樹脂34とを含む。挿入孔32は、ロータ3の軸心3Aを中心として円周方向に配列され、本体31を軸方向に貫通する。磁石33は、例えば挿入孔32に対応する長さを有する棒状の永久磁石である。挿入孔32の断面形状は限定されないが、例えば長方形であり、図示されるように磁石33の断面形状よりも大きい。磁石33の断面形状も限定されないが、例えば長方形である。挿入孔32の壁面と磁石33との間の隙間には、樹脂34が充填される。樹脂34は、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂である。以下では、複数の挿入孔32に磁石33および樹脂34を配置する工程について、さらに説明する。
【0013】
図3は、本開示の一実施形態に係るロータの製造方法の第1工程を示す図である。第1工程は、ロータ3がシャフト4に取り付けられて回転可能になった後に実行される。第1工程では、挿入孔32のうち第1群の挿入孔32Aに磁石33および樹脂34を配置し、ロータ3を第1の回転数nで回転させてアンバランス位置Pを特定する。第1群の挿入孔32Aは、複数の挿入孔32のうちの一部であり、挿入孔32が配列されている円周方向について等間隔で設定される。つまり、第1群の挿入孔32Aに属する挿入孔32から円周方向に1または複数の挿入孔32をスキップして、第1群の挿入孔32Aに属する次の挿入孔32が存在する。アンバランス位置Pは、ロータ3にアンバランスが生じている、すなわち回転時の質量主軸が軸心3Aに一致していない場合の質量主軸の位置である。例えば、ロータ3の回転位相とロータ3の周面の振動波形とを測定することによってアンバランス位置Pが特定される。
【0014】
なお、本実施形態では、第1の工程においてアンバランス位置Pがロータ3の軸心3Aに対してどの方向にあるかが特定できればよく、軸心3Aからアンバランス位置Pまでの距離dは必ずしも測定されなくてもよい。
【0015】
図4は、本開示の一実施形態に係るロータの製造方法の第2工程を示す図である。第2工程は、第1工程の後に実行される。第2工程では、第1工程で磁石33が配置されていない挿入孔32のうち、第1工程で特定されたアンバランス位置Pから相対的に遠い第2群の挿入孔32Bに磁石33および樹脂34を配置し、ロータ3を第2の回転数nで回転させる。第2の工程における第2の回転数nは、例えば後述する例のように第1の工程における第1の回転数n以下としてもよいが、特に限定されない。
【0016】
図5は、本開示の一実施形態に係るロータの製造方法の第3工程を示す図である。第3工程は、第2工程の後に実行される。第3工程では、第1工程で磁石33が配置されていない挿入孔32のうち、第1工程で特定されたアンバランス位置Pに相対的に近い第3群の挿入孔32Cに磁石33および樹脂34を配置し、ロータ3を第3の回転数nで回転させる。第3の工程における第3の回転数nは、第2工程における第2の回転数nよりも少ない。
【0017】
図6は、挿入孔に配置された磁石および樹脂に作用する力について説明するための図である。挿入孔32に磁石33を配置した状態で、ロータ3を回転数nで回転させると、磁石33には角速度ω=2πnによる遠心力F=mrωが作用する。ここで、mは磁石33の質量であり、rは磁石33の回転半径、すなわち図示された断面におけるロータ3の軸心3Aから磁石33の重心までの距離である。磁石33は、遠心力Fによって軸心3Aを中心とする径方向の外側に押し付けられる。このとき、遠心力Fは挿入孔32内に充填された樹脂34を、挿入孔32の径方向外側の壁面321と磁石33との間から押し出すように作用する。このような遠心力Fに対して、樹脂34同士を壁面321に沿う方向で引き付け合う粘性力τが抵抗することによって、壁面321と磁石33との間には厚さtの樹脂34が残る。
【0018】
ここで、粘性力τは樹脂34の粘度が一定であれば変化しないのに対して、遠心力Fは上記の式から明らかなように回転数nに応じて変化する。それゆえ、回転数nを適切に設定することによって遠心力Fの大きさを調節し、挿入孔32の壁面321と磁石33との間の樹脂34の厚さtを制御することができる。具体的には、回転数nを少なくすれば、遠心力Fが小さくなり、厚さtが大きくなる。挿入孔32内に配置される磁石33の位置は、厚さtが大きいほど壁面321から遠ざかり、軸心3Aに近づくため、回転数nをより少なくすれば磁石33が軸心3Aにより近い位置に配置される。逆の場合も同様であり、回転数nをより多くすれば磁石33が軸心3Aからより遠い位置に配置される。
【0019】
従って、図4および図5に示すように、第2の回転数nが相対的に大きい第2工程では、第2群の挿入孔32Bにおいて磁石33の外側の樹脂34が相対的に小さい厚さtになり、磁石33が軸心3Aからより遠い位置に配置される。一方、第3の回転数nが相対的に小さい第3工程では、第3群の挿入孔32Cにおいて磁石33の外側の樹脂34が相対的に大きい厚さtになり、磁石33が軸心3Aにより近い位置に配置される。これによって、ロータ3の回転時の質量主軸は、アンバランス位置Pから軸心3Aに近づく向きに移動する。このようにして、本実施形態では、第1の工程で第1群の挿入孔32Aに磁石33および樹脂34を配置した時点で生じていたロータ3のアンバランスを、第2工程および第3工程で低減または解消することができる。
【0020】
図7は、図3から図5を参照して説明したロータの製造方法の工程を示すフローチャートである。まず、第1工程(ステップS10)として第1群の挿入孔32Aに磁石33および樹脂34を配置し、ロータ3を第1の回転数nで回転させ、ロータ3にアンバランスが生じている場合にはアンバランス位置Pを特定する。次の第2工程(ステップS20)では、アンバランス位置Pに基づいて決定された第2群の挿入孔32Bに磁石33および樹脂34を配置し、ロータ3を第2の回転数nで回転させる。さらに、第3工程(ステップS30)では、第3群の挿入孔32Cに磁石33および樹脂34を配置し、ロータ3を第2工程の第2の回転数nよりも少ない第3の回転数nで回転させる。なお、例えば第1工程と第2工程との間、および第2工程と第3工程との間に他の工程が実施されてもよく、また第1工程の前、および第3工程の後に他の工程が実施されてもよい。また、後述するように、第3工程と同様に前の工程よりも少ない回転数でロータ3を回転させる第4工程以降の工程が実施されてもよい。
【0021】
以上で説明したような本開示の一実施形態では、第2の回転数nでロータ3を回転させる第2工程の後に、第2の回転数nよりも少ない第3の回転数nでロータ3を回転させる第3工程が実施される。第2工程ではアンバランス位置Pから相対的に遠い第2群の挿入孔32Bにおいて磁石33が軸心3Aからより遠い位置に配置され、第3工程ではアンバランス位置Pに相対的に近い第3群の挿入孔32Cにおいて磁石33が軸心3Aに対してより近い位置に配置される。これによって、ロータ3の回転時の質量主軸をアンバランス位置Pから軸心3Aに近づく向きに移動させ、第1の工程の時点で生じていたロータ3のアンバランスを低減または解消することができる。
【0022】
本実施形態では、例えば後述する例のようにアンバランス位置Pまでの距離dに応じて第2の回転数n及び第3の回転数nを決定するとしても、アンバランス重量に基づいて個々の磁石の重量や配置位置、樹脂の充填量などを決定する場合に比べれば工程は簡略化される。第2の回転数n及び第3の回転数nは固定値に設定することも可能であるため、その場合はさらに工程が簡略化される。また、本実施形態では磁石33の重量を変更しなくてもよいため、ロータのアンバランスの低減または解消の工程がモータの性能に影響を及ぼすこともない。
【0023】
以下、上記で説明した一実施形態の変形例について説明する。
【0024】
上記の第2工程および第3工程において、ロータ3の回転時の質量主軸がアンバランス位置Pから軸心3Aに近づく向きに移動するときの移動量は、第2工程における第2の回転数nと第3工程における第3の回転数nとの差に応じて変化する。従って、第1工程でアンバランス位置Pを特定するときに軸心3Aからアンバランス位置Pまでの距離dを測定し、第2工程および第3工程における質量主軸の移動量が距離dに一致または近接するように、第2の回転数n及び第3の回転数nの少なくともいずれかを決定してもよい。より具体的には、例えば、第2の回転数nを固定値として距離dに応じて第3の回転数nを決定してもよいし、第3の回転数nを固定値として距離dに応じて第2の回転数nを決定してもよいし、適切な回転数の差が生じるように第2の回転数n及び第3の回転数nの両方を距離dに応じて変化させてもよい。
【0025】
このように距離dに応じて第2の回転数n及び第3の回転数nを設定することによってロータ3のアンバランスを最小化することができるが、距離dを測定せず第2の回転数n及び第3の回転数nを固定値に設定しても十分なアンバランスの低減または解消の効果が得られる。例えば、特に静粛性が求められる車両の駆動用モータのようにアンバランスの許容度が小さい場合は距離dに応じて第2の回転数n及び第3の回転数nを設定してもよい。また、家庭用電気製品のモータなどのようにアンバランスの許容度が比較的大きい場合は距離dを測定せず第2の回転数n及び第3の回転数nを固定値に設定してもよい。
【0026】
また、上記の第1工程から第3工程における第1の回転数n~第3の回転数nの少なくともいずれかを、磁石33の質量mまたは樹脂34の粘度の少なくともいずれかに応じて決定してもよい。上述のように、ロータ3を回転させたときに挿入孔32内の磁石33に作用する遠心力F=mrωは、回転による角速度ω=2πnに加えて磁石33の質量mによっても変化する。また、遠心力Fに抵抗する樹脂34の粘性力τは、樹脂34の粘度によって変化する。従って、磁石33の質量mまたは樹脂34の粘性の少なくともいずれかに応じて第1の回転数n~第3の回転数nを決定することによって、アンバランスの低減または解消の効果を最適化することができる。なお、例えば磁石33の質量mおよび樹脂34の粘度がほぼ一定である場合や、上述のようにアンバランスの許容度が比較的大きい場合は、第1の回転数n~第3の回転数nを固定値に設定しても十分なアンバランスの低減または解消の効果が得られる。
【0027】
上記の第1工程および第2工程における第1の回転数n及び第2の回転数nの大小関係は特に限定されないが、第2の回転数nを第1の回転数n以下としてもよい。例えば、第1工程で第1群の挿入孔32Aに充填された樹脂34が硬化する前に第2工程を実施する場合、第2の回転数nが第1の回転数n以下であれば、既に第1群の挿入孔32Aに配置されている磁石33に第2工程で作用する遠心力Fは第1の工程で作用する遠心力Fよりも大きくならず、従って壁面321と磁石33との間の樹脂34の厚さtが薄くなって磁石33の位置が変化することがない。このような構成は、例えば硬化速度が遅い熱硬化性樹脂の場合に有効である。樹脂34の硬化を待たずに次の工程が実施できることによって、工程の時間短縮が可能になる。第2工程と第3工程との間も同様であり、第3工程は第2工程で充填された樹脂34の硬化を待たずに実施することができる。なお、第1の工程で第1群の挿入孔32Aに充填された樹脂34が硬化してから第2工程を実施してもよく、その場合は例えば第2の回転数nが第1の回転数nよりも大きくてもよい。
【0028】
上記の実施形態では第1工程から第3工程までが実施されたが、他の実施形態では第4工程以降の工程が実施されてもよい。この場合、第4工程における回転数は、第3工程における第3の回転数nよりも少ない。第4工程で磁石33が配置される挿入孔32は、第1工程から第3工程で磁石33が配置されていない挿入孔32から選択される。例えば、第2工程で磁石33が配置される第2群の挿入孔32Bがアンバランス位置Pから最も遠く、第3工程で磁石33が配置される第3群の挿入孔32Cがアンバランス位置Pに対して中間的な位置にあり、第4工程で磁石33が配置される第4群の挿入孔がアンバランス位置に最も近くてもよい。第5工程以降を実施する場合も同様である。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0030】
1 :モータ
2 :ステータ
3 :ロータ
3A :軸心
31 :本体
32 :挿入孔
32A :第1群の挿入孔
32B :第2群の挿入孔
32C :第3群の挿入孔
33 :磁石
321 :壁面
4 :シャフト

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7