(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061697
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】ルテニウム含有層の形成方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240426BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240426BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/31 B
H01L21/316 X
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174306
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルテアガ ミュラー ロシオ アレハンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ガティノ ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジラール ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】パレム ヴェンカテスワラ
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
5F004AA04
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F045AA08
5F045AB31
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AE13
5F045AE15
5F045AE17
5F045CB06
5F045EE19
5F058BC03
5F058BF04
5F058BF38
(57)【要約】
【課題】基板上に形成したパターン形成用のマスク表面に、選択性誘引要素の形成が不要で、エッチング残渣の発生を抑制可能な保護層としてのルテニウム含有層を選択的に形成するルテニウム含有層の形成方法及び積層体を提供すること。
【解決手段】被酸化層を有する基板を準備する準備工程と、気相成長法により酸化ルテニウムを用いて、ルテニウム含有層を前記被酸化層上に堆積させる堆積工程とを含み、ここで、前記被酸化層は、炭素原子を含む、ルテニウム含有層の形成方法。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化層を有する基板を準備する準備工程と、
気相成長法により酸化ルテニウムを用いて、ルテニウム含有層を前記被酸化層上に堆積させる堆積工程と、
を含み、
ここで、前記被酸化層は、炭素原子を含む、ルテニウム含有層の形成方法。
【請求項2】
前記ルテニウム含有層の平均組成は、RuOx(ここで、xの値は0以上2以下)である、請求項1に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項3】
前記堆積工程1サイクルあたりに形成される前記ルテニウム含有層の厚さが、0.05nm以上0.30nm以下である、請求項1又は2に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項4】
前記堆積工程により形成される前記ルテニウム含有層の厚さが、1nm以上30nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項5】
前記堆積工程において、前記酸化ルテニウムを前記被酸化層に曝露する第1曝露と、該第1曝露後、水素ガス、アンモニアガス、及びヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種の共反応剤を前記第1曝露後の前記被酸化層に曝露する第2曝露とを備える堆積サイクルを1回又は2回以上行う、請求項1~4のいずれか1項に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項6】
前記基板は酸化物層をさらに有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項7】
前記酸化物層がSiO2層、SiN層、SiON層、Al2O3層、ZrO2層、TiO2層又はHfO2層である、請求項6に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項8】
前記被酸化層が、アモルファスカーボン層、ボロンドープアモルファスカーボン層、タングステンドープアモルファスカーボン層、フォトレジスト層又はポロゲン含有多孔質low-k前駆層である、請求項1~7のいずれか1項に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項9】
前記被酸化層が、アモルファスカーボン層である請求項8に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項10】
前記被酸化層がパターニングされている、請求項1~9のいずれか1項に記載のルテニウム含有層の形成方法。
【請求項11】
表面に被酸化層及び酸化物層を有する基板と、
前記被酸化層の表面に形成されたルテニウム含有層と、
を有し、
ここで、前記被酸化層は炭素原子を含む、積層体。
【請求項12】
前記ルテニウム含有層の平均組成は、RuOx(ここで、xの値は0以上2以下)である、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記被酸化層は、アモルファスカーボン層、フォトレジスト層、ボロンドープアモルファスカーボン層、タングステンドープアモルファスカーボン層又はポロゲン含有多孔質low-k前駆層である、請求項11又は12に記載の積層体。
【請求項14】
前記被酸化層が、アモルファスカーボン層である、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
前記ルテニウム含有層の厚さが、1nm以上30nm以下である、請求項11~14のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ルテニウム含有層の形成方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性ポリマーフォトレジストは、フォトリソグラフィーにおいて、薄膜のパターン部分または半導体基板のバルクを処理するために利用される。フォトレジストを露光、現像した後、高指向性異方性反応性イオンエッチング(以下、「RIE」ということがある。)プロセスによって最終的に基板上に三次元構造を形成する。ナノエレクトロニクスにおいては三次元形状の小型化及び複雑化がますます要求されているため、パターン転写するにはフォトレジスト単独では薄すぎる場合がある。例えば、22nm以下のリソグラフィー用のフォトレジストは、高エネルギーイオン照射に耐えられず、RIE中に速やかに劣化することがある。この問題を克服するために、フォトレジストより高い選択性及び耐性のあるアモルファスカーボン(以下、「AC」ということがある。)のような材料が導入され、アモルファスカーボンとフォトレジストとのマスク積層体を形成する。理想的には、フォトレジストは、レジストを通る垂直壁を有する基板の面内のACによって与えられる意図されたパターンの正確な形状を有する。したがって、基板の一部はレジストおよびACで被覆され、他の部分は被覆されないことになる。レジストおよびACで覆われた基板の一部はエッチング、イオン注入、または他のパターン転写メカニズム中に保護層として作用するので、パターン転写に必要である。
【0003】
高アスペクト比構造を形成するには指向性反応性イオンエッチングを長時間行う必要があることから、ACが徐々に劣化することを避けることができない。エッチングプロセスによるACの劣化は、側壁の表面へのイオンの衝突によって促進され、その結果、標的エッチング層の形状や寸法を確保することができない場合がある。
【0004】
近年、反応性イオンエッチング中のACの漸進的な劣化を低減または排除するために、ポリアミドのような炭素質材料やTiNおよびTaNのような金属ハードマスク等を導入したりしている(非特許文献1、2参照)。しかしながら、これらの材料は、アモルファスカーボン上への選択的形成には阻害剤や不動態化剤、自己組織化単分子層等の選択性誘引要素を必要とすることに起因してパターニングプロセスに適合させることが困難であることや、エッチングプロセスによる残渣層がマスク上に成長すること、マスク上への選択的形成性が低いこと等といった理由により理想的なプロセスとはいえない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Vacuum Science & Technology A,39, 2, 2021
【非特許文献2】J. Vac. Sci. Technol. B 24, 5, 2006 2262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、基板上に形成したパターン形成用のマスク表面に、選択性誘引要素の形成が不要で、エッチング残渣の発生を抑制可能な保護層としてのルテニウム含有層を選択的に形成するルテニウム含有層の形成方法及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは鋭意検討したところ、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本開示は、一実施形態において、
被酸化層を有する基板を準備する準備工程と、
気相成長法により酸化ルテニウムを用いて、ルテニウム含有層を前記被酸化層上に堆積させる堆積工程と、
を含み、
ここで、前記被酸化層は、炭素原子を含む、ルテニウム含有層の形成方法に関する。
【0009】
当該形成方法によれば、被酸化層(つまり、酸化を受ける性質を有する層)を有する基板における被酸化層上にルテニウム含有層を選択的に堆積させることができる。ルテニウム(Ru)は、酸化物や窒化物、反射防止コーティング層等の被覆層をエッチングするために典型的に使用される多くのプラズマ化学物質(例えば、パーフルオロカーボン(PFC)ガスなど)に対して耐エッチング性を有する。同時に、ルテニウムは、被覆層材料を除去しない他のプラズマ化学物質によって残渣を生じることなく容易に除去することができる。従って、ルテニウム含有層はエッチングに際してのパターンマスクのような被酸化層の保護層として作用する。その結果、阻害剤や自己組織化単分子層(SAM)を必要とせずに、マスクの劣化を回避し、残留物形成を減少させることができる。さらにはパターンの目詰まりや崩壊の危険性を減少させることができる。なお、この理由は定かでないものの、酸化ルテニウム(RuO4)は気相反応にも適用可能な強力な酸化剤であり、被酸化層との一種の親和性を有していることが一因であると推察される。
【0010】
また、前記被酸化層は炭素原子を含むことが好ましい。被酸化層が酸化可能な炭素原子又は炭素-炭素間結合を含むことで(すなわち、有機層又は半有機層であることで)酸化ルテニウムと被酸化層との親和性がより向上する。その結果、被酸化層上への酸化ルテニウム層の選択的形成性をより向上させることができる。
【0011】
一実施形態において、前記ルテニウム含有層の平均組成は、RuOxであってもよい。ここで、xの値は0以上2以下である。またxの値が0(実質的に0の場合を含む)の場合、純粋なルテニウム層が形成されることを意味する。ここで、平均組成とは、X線光電子分光法によって、平均から求められる。具体的には、X線光電子分光法によって、3反復のデータを取得して、その平均から平均組成を算出できる。
【0012】
一実施形態において、前記堆積工程1サイクルあたりに形成されるルテニウム含有層の厚さが、0.05nm以上0.20nm以下であることが好ましい。また、一実施形態において、前記堆積工程により形成されるルテニウム含有層の厚さが、1nm以上30nm以下であることが好ましい。これらにより、ルテニウム含有層のマスク保護機能、強度及び生産性を高度にバランスさせることができる。
【0013】
一実施形態において、当該形成方法は、前記堆積工程において、前記酸化ルテニウムを前記被酸化層に曝露する第1曝露と、該第1曝露後、水素ガス、アンモニアガス、及びヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種の共反応剤を前記第1曝露後の前記被酸化層に曝露する第2曝露とを備える堆積サイクルを1回又は2回以上行うことが好ましい。堆積工程では、酸化ルテニウムの作用により被酸化層における炭素-炭素間結合はエポキシ、アルデヒド、ケトン等の酸化基に変換され、これと同時に、RuO2などの酸化ルテニウム種が生成される。次いで、水素ガス等の共反応剤による酸化基や酸化ルテニウム種の還元を行うことにより、被酸化層に結合した酸化基の還元と並行して、平均組成がRuOx(ここで、xの値は0以上2以下である。)であるルテニウム含有層の析出をもたらすことができる。
【0014】
一実施形態において、前記基板は酸化物層をさらに有することが好ましい。酸化ルテニウムは、酸化を受ける性質を有しない酸化物層に対して反応性を示さないので、被酸化層上へのルテニウム含有層の選択的形成性をより向上させることができる。
【0015】
一実施形態において、前記酸化物層はSiO2層、SiN層、SiON層、Al2O3層、ZrO2,層、TiO2層又はHfO2層であってもよい。基板用途に応じて適宜の酸化物層を配置し得る。
【0016】
一実施形態において、前記被酸化層が、アモルファスカーボン層、ボロンドープアモルファスカーボン層、タングステンドープアモルファスカーボン層、フォトレジスト層又はポロゲン含有多孔質low-k前駆層であることが好ましい。アモルファスカーボン層及びフォトレジスト層は代表的に芳香族クラスターとして縮合された、または別のフラグメントもしくはヘテロ原子に連結された酸化可能なsp2炭素原子を含む。また、ポロゲン含有多孔質low-k前駆層は、酸化に対して強い親和性を有するsp2炭素原子及びsp3炭素原子、あるいはC-H結合などの官能基を有する。従って、これらの被酸化層は酸化ルテニウムによる酸化反応に対する親和性を発揮し得ることができる。その結果、ルテニウム含有層の選択的形成性のさらなる向上を図ることができる。ここで、アモルファスカーボン層とは、実質的にアモルファスカーボン(単独)で構成されている層のことを意味する。ボロンドープアモルファスカーボン層とは、ボロンがドープされたアモルファスカーボンで構成されている層のことを意味する。タングステンドープアモルファスカーボン層とは、タングステンのドープされたアモルファスカーボンで構成されている層のことを意味する。
【0017】
一実施形態において、前記被酸化層としてはアモルファスカーボン層であることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、前記被酸化層がパターニングされていてもよい。被酸化層が、ラインアンドスペースやコンタクトホールの形状を有していても、保護層としての酸化ルテニウム層を選択的に形成することができ、被酸化層の保護が可能となる。
【0019】
本開示は、別の実施形態において、
被酸化層を有する基板を堆積チャンバの中に設ける準備工程と、
気相成長法により、気化された酸化ルテニウムを前記堆積チャンバに導入して、ルテニウム含有層を前記被酸化層上に堆積させる堆積工程と、
を含み、
ここで、前記被酸化層は、炭素原子を含む、ルテニウム含有層の形成方法に関する。
【0020】
本開示は、別の実施形態において、
被酸化層を有する基板を準備する準備工程と、
酸化ルテニウムの気相成長法による堆積により、前記被酸化層上にルテニウム含有膜を形成する堆積工程と、
を含み、
ここで、前記被酸化層は、炭素原子を含む、ルテニウム含有層の形成方法に関する。
【0021】
本開示は、別の実施形態において、
表面に被酸化層及び酸化物層を有する基板と、
前記被酸化層の表面に形成されたルテニウム含有層と、を有し、
ここで、前記被酸化層は炭素原子を含む、積層体に関する。
【0022】
当該積層体においては、被酸化層の表面に保護層としてのルテニウム含有層が選択的に形成されているので、被酸化層の劣化を防止しつつ酸化物層に対するエッチング等の処理を効率的に行うことができる。
【0023】
前記被酸化層は炭素原子を含むことが好ましい。被酸化層が酸化可能な炭素原子又は炭素-炭素間結合を含むことで酸化ルテニウムと被酸化層との親和性がより向上し、被酸化層上へのルテニウム含有層の選択的形成性をより向上させることができる。
【0024】
別の実施形態において、前記被酸化層は、アモルファスカーボン層、ボロンドープアモルファスカーボン層、タングステンドープアモルファスカーボン層、フォトレジスト層又はポロゲン含有多孔質low-k前駆層であることが好ましい。中でも、前記被酸化層が、アモルファスカーボン層であることが好ましい。これらの被酸化層は酸化可能な炭素原子を有しており、酸化ルテニウムによる酸化反応に対する親和性を発揮し得ることができ、ルテニウム含有層の選択的形成性のさらなる向上を図ることができる。
【0025】
別の実施形態において、前記ルテニウム含有層の厚さが、1nm以上30nm以下であることが好ましい。これにより、ルテニウム含有層のマスク保護機能、強度及び生産性を高度にバランスさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】一実施形態に係るルテニウム含有層の形成方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図1B】一実施形態に係るルテニウム含有層の形成方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図1C】一実施形態に係るルテニウム含有層の形成方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図1D】一実施形態に係るルテニウム含有層の形成方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図2】ルテニウム含有層形成から除去までの有機炭素質層の表面における一連の反応の推定メカニズムを示す模式図である。
【
図3A】実施例1におけるアモルファスカーボン層の表面に形成されたルテニウム単独を含むルテニウム含有層の電子顕微鏡写真(倍率:120,000倍)である。
【
図3B】実施例1におけるSiO
2層の表面の電子顕微鏡写真(倍率100,000倍)である。
【
図4】アモルファスカーボン層の表面に形成されたルテニウム単独を含むルテニウム含有層の二次イオン質量分析 チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施形態を以下に説明する。本発明は、これらの実施形態に限定されない。
【0028】
《ルテニウム含有層の形成方法》
本実施形態に係るルテニウム含有層の形成方法は、被酸化層を有する基板を準備する準備工程と、気相成長法により酸化ルテニウムを用いて、ルテニウム含有層を前記被酸化層上に堆積させる堆積工程とを含む。以下、基板上に炭素質ハードマスク及びレジスト膜の積層体を被酸化層として形成し、パターン化した後に保護層としてのルテニウム含有層を積層体表面に形成する態様を例として、
図1A~
図1Dを参照しつつ各工程を説明する。
図1A~
図1Dは、一実施形態に係るルテニウム含有層の形成方法の一工程を示す模式的断面図である。
【0029】
(準備工程)
本工程では、被酸化層を有する基板を準備する。
図1Aに示すように、基板としての半導体層10上には、犠牲層20(例えば、SiN層)と、絶縁層30(例えば、SiO
2層)とを交互に積層したハードマスク積層体(以下、「ONON(oxide-nitride-oxide-nitride-nitride)積層体」ともいう。)が形成されている。積層数は基板用途に応じて適宜設定される。ONON積層体は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法により形成することができる。
【0030】
基板は、MIM、DRAM、またはFeRam技術における絶縁材料として使用される酸化物(例えば、HfO2ベース材料、TiO2ベース材料、ZrO2ベース材料、希土類酸化物ベース材料、三元酸化物ベースの材料など)から、あるいは銅基板や銅基板とlow-k膜との間の酸素バリアとして使用される窒化物ベース膜(例えば、TaN)から選択することができる。半導体、光電池、LCD-TFT、またはフラットパネルデバイスの製造において、他の基板を使用することができる。このような基板の例としては、限定されないが、金属窒化物含有基板(例えば、TaN、TiN、SiN、WN、TaCN、TiCN、TaSiN、およびTiSiN)などの基板;絶縁体(例えば、SiO2、Si3N4、SiON、HfO2、Ta2O5、ZrO2、TiO2、Al2O3、およびチタン酸バリウムストロンチウム);またはこれらの材料の組み合わせのうちのいくつかを含む他の基板が挙げられる。
【0031】
次に、ONON積層体上に、アモルファスカーボン等の有機炭素質層40を堆積させる。有機炭素質層40は、絶縁層30との界面を底部に有する。有機炭素質層は、例えばCVDによって堆積することができる。
【0032】
有機炭素質層40上にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成し、レジスト膜をパターン化することでレジストパターン50を形成する。レジストパターン50は、例えば三次元メモリ構造の一部としてのラインアンドスペースパターンやコンタクトホールを形成するために使用される。
【0033】
図1Bに示すように、反応性イオンエッチング(RIE)からなる第1のエッチング工程の後に、レジストパターン50を用いて有機炭素質層40を処理する。有機炭素質層40及びレジストパターン50は異方性エッチングされ、両層の膜厚が薄くなる。有機炭素質層40におけるホール又はパターン間に対応する部分は、ONON積層体の絶縁層30が露出するまでエッチングされる。これにより被酸化層を有する基板を作製することができる。
【0034】
基板としては上記に限らない。例えば、多くの金属、すなわち遷移金属はいくつかの異なった酸化状態で発生することができる。このことは、それらが酸化を受けて酸化物を形成する能力を有することを意味する。このほか、C-H結合、Si-Si結合、Si-H結合、Ge-Ge結合、Ge-H結合を有する表面も選択的形成に適している。したがって、選択的蒸着法による保護層の形成は酸化ルテニウムが被酸化面に曝される限り、多種多様な基板に適用することができる。
【0035】
(堆積工程)
本工程では、気相成長法により酸化ルテニウムを用いて、ルテニウム含有膜を前記被酸化層上に堆積させる。有機炭素質層40及びONON積層体を貫通して半導体層10に至るホール又はパターンを形成するためには、さらに長時間のエッチングが必要となる。従来では、このプロセスの間に、レジストパターン50及び有機炭素質層40からの残渣の形成を促し、未貫通のホール内又はパターン間に落ち込み、ホール又はパターン間の目詰まりの危険性を増大させる。また、レジストパターン50及び有機炭素質層40の表面にイオンが衝突する間に、ホール又はパターンの変形が起こり、それらの形状の特徴または構造の崩壊が生じる。
【0036】
これに対し、本実施形態では、次工程であるONON積層体及び他の反射防止コーティング層(図示せず)のプラズマエッチング工程中のポリマー粒子の形成を回避するために、エッチングガスに対してより耐性のある材料が使用される。すなわち、
図1Cに示すように、ONON積層体の底部に位置する絶縁層30上にルテニウムを堆積させることなく、レジストパターン50及び有機炭素質層40の両方の表面に気相成長法による酸化ルテニウム(RuO
4)の選択的堆積によりルテニウム含有層を形成し、これらを保護する。このとき、酸化ルテニウムは有機炭素質層40と反応し、層の表層を酸化する。酸化ルテニウムは、溶媒(例えば、メチルエチルフッ素化溶媒やテトラヒドロフラン)を伴うことができる。
【0037】
気相成長法としては、ALD法又はCVD法を好適に採用することができる。基板から汚染物質を除去するために、1秒以上10秒以下の酸素プラズマ暴露を含む前処理工程を行ってもよい。堆積チャンバは、内部で気相堆積方法が実行されるデバイスの任意の閉鎖容器またはチャンバであればよい。具体例として、限定されないが、平行板タイプリアクタ、コールドウォールタイプリアクタ、ホットウォールタイプリアクタ、枚様式リアクタ、マルチウェハリアクタ、または他のタイプの堆積システム等が挙げられる。
【0038】
次に、気化させた酸化ルテニウムを含むガスを前記堆積チャンバに導入する。純粋な(単一の)酸化ルテニウムまたは他成分がブレンドされた酸化ルテニウムは液体の状態で気化器に供給されてもよい。堆積チャンバに導入される前に、キャリアガスをバブリングすることによって気化される。必要であれば、酸化ルテニウムが十分な蒸気圧を有し、かつ分解温度以下となる温度まで容器を加熱してもよい。キャリアガスとしては、限定はされないが、Ar、He、N2、およびこれらの混合物を挙げることができる。容器はたとえば好ましくは50℃以上300℃以下、より好ましくは80℃以上200℃以下の範囲内の温度に維持されうる。
【0039】
堆積チャンバ中の酸化ルテニウムは、好ましくは0.1Pa以上2Pa以下、より好ましくは0.2Pa以上1.5Pa以下の範囲内にある圧力に維持され得る。
【0040】
酸化ルテニウムは、純粋な形態(例えば、液体もしくは低融点固体)、または好適な溶媒とのブレンドの形態で供給され得る。溶媒として、不燃性溶媒であっても可燃性溶媒であってもよい。溶媒として、例えばメチルエチルフッ素化溶媒、テトラヒドロフラン等が挙げられる。また各種溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0041】
前記堆積工程1サイクルあたりに形成される酸化ルテニウム層の厚さの下限は、0.05nmが好ましく、0.10nmがより好ましく、0.15nmがさらに好ましい。前記堆積工程1サイクルあたりの厚さの上限は、0.30nmが好ましく、0.25nmがより好ましく、0.20nmがさらに好ましい。
【0042】
前記堆積工程により形成されるルテニウム含有層の厚さの下限は、1nmが好ましく、2nmがより好ましく、4nmがさらに好ましく、5nmが特に好ましい。酸化ルテニウム層の厚さの上限は、30nmが好ましく、28nmがより好ましく、26nmがさらに好ましく、24nmが特に好ましい。
【0043】
前記堆積工程において、前記酸化ルテニウムを前記被酸化層に曝露する第1曝露と、該第1曝露後、水素ガス、アンモニアガス、及びヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種の共反応剤を前記第1曝露後の前記被酸化層に曝露する第2曝露とを備える堆積サイクルを1回又は2回以上行うことが好ましい。水素ガス等の共反応剤により、被酸化層に結合した酸化基の還元と並行してRuOx(xの値は0以上2以下である)の層の析出をもたらすことができる。
【0044】
従って、ルテニウム含有層を堆積するためのALD法プロセスは、1つの堆積サイクルが基板を第1の反応物に暴露する工程と、未反応の第1の反応物および反応副産物を反応空間から除去する工程と、基板を第2の反応物に暴露する工程と、それに続く第2の除去工程とを含むことができる。例えば、第1の反応物は酸化ルテニウム(RuO4)を含み、第2の反応物は水素(H2)ガスを含むことができる。この1つの堆積サイクルを所望のルテニウム含有層が得られるまで繰り返してもよい。
【0045】
共反応剤としての水素ガスは、キャリアガスとともに堆積チャンバに導入することが好ましい。キャリアガスとしては酸化ルテニウム導入の際のキャリアガスを好適に採用することができる。中でも、アルゴン(Ar)が好ましい。
【0046】
水素ガスとアルゴンガスとの合計体積に占める水素ガスの体積割合の下限は、5%が好ましく、10%がより好ましく、15%がさらに好ましい。前記水素ガスの体積割合の上限は、90%が好ましく、50%がより好ましく、30%がさらに好ましい。
また水素ガスが100%であってもよい。さらには、アルゴンガスの代わりに窒素ガスを用いてもよい。
【0047】
堆積チャンバ中の水素ガスの分圧は、好ましくは100Pa以上800Pa以下、より好ましくは200Pa以上600Pa以下の範囲内にある圧力に維持され得る。
【0048】
保護層としてルテニウム含有層(平均組成がRuOx(ここで、xの値は0以上2以下。)のルテニウム含有層又は純粋なルテニウム層)が有機炭素質層40及びレジストパターン50の両表面に堆積した後、
図1Dに示すように、さらなるエッチングによりパターンの側壁上に残渣を蓄積することなく、犠牲テンプレートを基板に転写することができる。
【0049】
ルテニウム含有層は、窒化物や酸化物、ARC材料を除去しない他のプラズマ化学物質によって、例えば、酸素プラズマによって残渣を残さない酸化ルテニウム(RuO4)層に変換される。この酸化ルテニウム層は、堆積チャンバから容易にパージすることができ、容易に除去することができる。
【0050】
図2に、ルテニウム含有層形成から除去までの有機炭素質層の表面における一連の反応の推定メカニズムを示す。ただし、本発明はこの推定メカニズムに限定されない。
【0051】
基板上に形成された被酸化層(例えば、有機炭素質層40)の表面は炭素原子を有する(
図2中、状態a))。
【0052】
酸化ルテニウム(RuO
4)による有機炭素質層40の表面の酸化により、炭素原子や炭素-炭素間結合はエポキシ、アルデヒド、ケトンなどの酸化基に変換され、同時にRuO
2などの酸化ルテニウム種を生成する(
図2中、状態b))。
【0053】
次に、共反応剤としての水素ガスでの還元の際に、有機炭素質層40に結合した酸素含有官能基の還元と並行して純粋なルテニウム層の析出をもたらすことができる(
図2中、状態c))。
【0054】
その後、ルテニウム含有層(ルテニウム層)を酸素プラズマ処理することで酸化ルテニウム(RuO
4)層としパージすることで有機炭素質層40の表面からルテニウム含有層を除去することができる(
図2中、状態d))。
【0055】
ルテニウム層の除去のためのプラズマクリーニングの条件は、酸素ガスの圧力が0.1Pa以上1.5Pa以下が好ましく、0.2Pa以上1.0Pa以下がより好ましい。電力は100W以上500W以下が好ましく、200W以上300W以下がより好ましい。プラズマ処理時間は、1秒以上50秒以下が好ましく、5秒以上20秒以下がより好ましい。
【0056】
(他の被酸化層)
材料が酸化に対して反応性でないか、またはそれほど反応性でなく、したがって酸化ルテニウム(RuO4)に対して反応性が低い場合、当業者は保護されるべき層に酸化物官能基を改変または導入することによって、ルテニウム含有層の選択的形成が起こり得ることを認識し得る。例えば、いくつかの既に酸化されているか、または未反応のlow-kまたはULK層は、これらの層に多孔性を導入するために必要とされる紫外線に暴露される前に、犠牲有機ポロゲン(例えば、BCHDまたはATRP)で充填された場合、酸化ルテニウム(RuO4)に対して反応性になり得る。
【0057】
ポロゲン有機炭素質材料は、酸化に対して強い親和性を有するsp2およびsp3の炭素-炭素間結合、炭素-水素間結合などの官能基を有する。したがって、強酸化剤としての酸化ルテニウム(RuO4)はポロゲン有機炭素質材料と選択的に反応し、ルテニウム含有層を保護層として選択的に堆積させることができる。
【0058】
《積層体》
本実施形態に係る積層体は、表面に被酸化層及び酸化物層を有する基板と、前記被酸化層の表面に形成されたルテニウム含有層とを有し、ここで、前記被酸化層は炭素原子を含む。このような構造は、ルテニウム含有層の形成方法の説明において示した
図1Cの構造に対応する(なお、
図1Cでは、ルテニウム含有層がルテニウム層であるものの、これに限らず、平均組成がRuOx(xの値は0以上2以下)であってもよい。)。従って、各要素の好適な態様は
図1A~
図1D及び
図2を参照しつつ行われた上述の説明の対応箇所を参照されたい。
【0059】
《他の実施形態》
本発明の一実施形態は、電子デバイスを製造するのに有用な方法および前駆体に関する。より詳細には基板上にルテニウム膜を堆積させることに関する。コンタクト、ビア、メモリホール及び他のスタック層を形成するための多重パターニング及び自己整合技術に関与するエッチングプロセス中に層を保護する方法に関する。
【0060】
本発明の一実施形態は、ルテニウムまたはルテニウムを含むフィルムを、無機層上に堆積させることなく、有機層または半有機層上に選択的に堆積させるためのRuO4を含むルテニウム前駆物質の使用からなる方法に関する。
【0061】
Ru膜は阻害剤または自己組織化単分子層(SAM)を必要とせずに、有機または半有機炭素質層上に化学気相成長(CVD)または原子層堆積(ALD)によって選択的に堆積され、その後、ターゲット層をパターニングするための次工程であるエッチング工程中にエッチングハードマスクとして作用する。この方法によって製造されたルテニウム層は、有機層または半有機層のライン間の間隔を減少させ、したがって転写パターン構造の反対のトリミング効果を提供するためにも使用される。
【0062】
本発明の一実施形態は、マルチパターニングおよび自己整合パターニング技術と比較して、ロジック、トランジスタおよびメモリデバイス内に改善された機械的強度を有する構造を効率良く形成する方法に関する。この方法によって堆積されたルテニウム含有層は、リソグラフィーの一工程であるエッチングプロセス中のハードマスクの損傷を避けるために、ハードマスクの保護層として働くように基板上の選択された領域に堆積される。
【実施例0063】
本明細書の開示の適用を例示するために、以下の実施例が記載されるが、本明細書に記載されるプロセスの利点のすべてが、本発明の特定の実施形態または実施形態のグループに包含され得るわけではないことを十分に理解されたい。特定の実施形態および実施例が以下に開示されるが、本発明は明白な修正を含む、本発明の具体的に開示された実施形態および/または使用を超えて拡張することが、当業者によって理解されるのであろう。したがって、開示される本発明の範囲は、以下に記載される特定の実施形態によって限定されるべきではないことが理解されるべきである。
【0064】
<実施例1>
表面にSiO2層(3μmの厚さ)とアモルファスカーボン層(700nmの厚さ、140~160nmの直径を有するコンタクトホールを100nm間隔で形成)とが順に形成された基板(株式会社アドバンテックより購入)を準備した。この基板を酸化ルテニウム(RuO4)の分解温度以下(100℃)に加熱されるチャンバ内に設置し、そこに酸化ルテニウムの蒸気を通過させるALD法サイクルを行った。サイクル条件としては、RuO4を0.8Paで10秒間チャンバにパルスし、余分な未反応ガスをチャンバからパージした。次に、分圧が500Paの水素ガス(20%H2/Ar(体積比))を共反応剤として10秒間添加し、表面反応時の酸化ルテニウム層を還元してルテニウム層(平均組成RuOxにおいてx=0)を形成した。
【0065】
上記の方法によれば、ルテニウム層の厚さは、1サイクルあたり0.07nm~0.19nmの範囲の成長速度に従った。
【0066】
その結果、30回のALD法サイクル後に、2.30nmのルテニウム層がアモルファスカーボン層上に選択的に堆積された。一方、SiO
2層上にはルテニウム層は堆積されなかった。
図3Aは、アモルファスカーボン層の表面に形成されたルテニウム単独を含むルテニウム含有層の電子顕微鏡写真(倍率:120,000倍)である。
図3Bは、SiO
2層の表面の電子顕微鏡写真(倍率:100,000倍)である。なお、電子顕微鏡として、株式会社日立ハイテク製のHitachi UHR FE-SEM SU9000を用いた。
【0067】
図4は、アモルファスカーボン層の表面に形成されたルテニウム単独を含むルテニウム含有層の二次イオン質量分析チャートである。二次イオン質量分析については、アルバック・ファイ株式会社のPHI ADEPT1010を用いた。測定条件は以下の通りである。
・一次イオン種 :Cs
+
・一次加速電圧:2.0kV
・検出領域:132×132(μm×μm)
測定された結果を
図4に示す。
図4における横軸は表面からの深さ(nm)、縦軸は各種元素の割合(%)を示す。ルテニウム含有層の表面から約4nmの深さまではルテニウムが単独で存在しており、純度の高いルテニウム層が形成されたことが分かる。
【0068】
ルテニウム層の除去のためのプラズマクリーニングの条件は、0.5Paの圧力および250Wの電力で、純度99.999%のO2ガスを用いる10秒間のO2プラズマを5パルス行うものであった。
【0069】
<実施例2>
実施例1と同様、ALD法サイクルを60回行った結果、8.44nmのルテニウム層がアモルファスカーボン層上に選択的に堆積された。一方、SiO2層上にはルテニウム層は堆積されなかった。
【0070】
<実施例3>
実施例1と同様、ALD法サイクルを120回行った結果、22.48nmのルテニウム層がアモルファスカーボン層上に選択的に堆積された。一方、SiO2層上にはルテニウム層は堆積されなかった。