(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061698
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240426BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240426BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240426BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240426BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240426BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20240426BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240426BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240426BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20240426BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20240426BHJP
B32B 3/26 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/291
H01M50/293
H01M10/613
H01M10/658
H01M50/262 E
H01M50/209
H01M10/647
H01M10/6557
H01M10/6561
B32B3/26 A
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166033
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】細谷 資将
【テーマコード(参考)】
4F100
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4F100AA17C
4F100AA20C
4F100AB01A
4F100AK01D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100DC21B
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4F100DG15C
4F100GB41
4F100JJ02C
5H031EE01
5H031EE03
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5H031KK02
5H040AA27
5H040AA37
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5H040AT02
5H040AT06
5H040AY06
5H040CC25
5H040CC34
5H040LL01
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】
断熱機能に優れかつ弾性変形可能な延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供する。
【解決手段】
本発明は、厚さ方向の一方から他方への延焼を防止するための延焼防止シート20であって、ベースシート22と、ベースシート22の厚さ方向の一方の面に形成される1または複数個の凸部であってその高さ方向に弾性的に変形可能な凸部21と、ベースシート21の一方の面と反対側の他方の面から凸部21の天面31までの間に配置されていて、凸部21よりも断熱性の高い少なくとも1枚の断熱シート80と、を備える延焼防止シート20、およびそれを備えるバッテリーに関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方から他方への延焼を防止するための延焼防止シートであって、
ベースシートと、
前記ベースシートの厚さ方向の一方の面に形成される1または複数個の凸部であってその高さ方向に弾性的に変形可能な凸部と、
前記ベースシートの前記一方の面と反対側の他方の面から前記凸部の天面までの間に配置されていて、前記凸部よりも断熱性の高い少なくとも1枚の断熱シートと、
を備えることを特徴とする延焼防止シート。
【請求項2】
前記断熱シートは、前記ベースシートの前記一方の面側であって、前記凸部の隙間と対向するように前記凸部の天面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項3】
前記断熱シートは、1または複数個の前記凸部の天面に個別に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項4】
前記断熱シートは、前記ベースシートの前記他方の面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項5】
前記断熱シートは、前記凸部よりも耐熱性に優れ、粒状、針状若しくは繊維状の金属酸化物の不織布、または前記金属酸化物を含むシートであることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項6】
前記断熱シートは、シリカエアロゲルのシートまたはシリカエアロゲルを含むシートであることを特徴とする請求項5に記載の延焼防止シート。
【請求項7】
前記ベースシートは、金属層と樹脂層とのラミネート構造を有することを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項8】
前記凸部は、その裏側に、前記ベースシート側に開口する第1凹部または前記ベースシートにて被覆される空間を備え、
前記凸部は、その外周面側に、前記ベースシートとの接続部から立ち上がるドーム状の壁部と前記凸部の先端との間にあって前記先端の径を前記ドーム状の壁部の径よりも小さくする少なくとも1つの外側段差部を備え、
前記凸部の先端は、前記先端の天面から前記ベースシートに向かって窪む第2凹部を備えることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項9】
前記ベースシートは、前記凸部の前記第1凹部または前記空間から前記ベースシートの外側へと通じる通気路を有することを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項10】
前記凸部の先端の前記裏面から前記ベースシートに向かって延出する柱状または筒状の延出部を、さらに備える請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項11】
前記外側段差部は、前記壁部から前記先端に向かう間に、前記ベースシートと平行になる平行部位を有することを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項12】
前記壁部は、前記ベースシートと前記壁部との接続部よりも前記外側段差部よりの位置において、前記第1凹部側または前記空間側に突出させた厚肉部を備えることを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項13】
前記壁部と前記先端との間に、前記ベースシートと前記壁部との接続部の肉厚以下の肉厚のネック部を備えることを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項14】
前記第2凹部は、前記先端の天面から前記外側段差部を超える長さに形成され、
前記先端および前記凸部は、それぞれ、前記第2凹部の外周囲に枠状に形成されており、
前記第1凹部または前記空間は、前記枠状の前記凸部の内側に形成されており、
前記凸部は、前記外側段差部に加えて、前記第2凹部側に、前記ベースシートとの接続部から立ち上がる壁部と前記凸部の先端との間にあって前記第2凹部を拡げる方向に形成される少なくとも1つの内側段差部を備えることを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項15】
前記内側段差部は、前記壁部から前記先端に向かう間に、前記ベースシートと平行になる平行部位を有することを特徴とする請求項14に記載の延焼防止シート。
【請求項16】
前記断熱シートの外表面に、前記外表面以外の面粗さよりも大きな凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項17】
前記ベースシートの面内中央を含む領域に、前記凸部の前記先端から前記ベースシートに向かって熱源が膨張したときにその膨張を許容する領域を備えることを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項18】
前記膨張を許容する領域は、前記ベースシートの厚さ方向に貫通する穴または当該厚さ方向に窪む第3凹部であり、
前記凸部は、前記穴または前記第3凹部の周囲に配置されていることを特徴とする請求項17に記載の延焼防止シート。
【請求項19】
前記ベースシートの前記凸部と反対側の面は、前記延焼防止シートを熱源の壁面に固定可能な平滑面であって、
当該平滑面は、前記延焼防止シートの表面の中で最も面粗さが小さいことを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項20】
前記ベースシートの前記他方の面に、前記凸部の変形を促進可能なリブを備えることを特徴とする請求項8に記載の延焼防止シート。
【請求項21】
前記ベースシートおよび前記凸部は、主にシリコーンゴムから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の延焼防止シートと、熱源としての複数個のバッテリーセルと、を備えるバッテリーであって、
少なくとも1組の互いに隣り合う前記バッテリーセル同士の間に前記延焼防止シートを備えることを特徴とするバッテリー。
【請求項23】
前記延焼防止シートは、前記複数個の前記バッテリーセルを並べた列の中央に位置する少なくとも1つの前記バッテリーセルに前記凸部の先端を向けて配置されていることを特徴とする請求項22に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の動力は、ガソリンや軽油などの化石燃料を用いたエンジンから、バッテリーからの電気を用いたモータへと移行しつつある。バッテリーの1種であるリチウムイオンバッテリーでは、一般的に、複数個のバッテリーセル(単に「セル」ともいう。)が金属製の筐体内に配置されている。バッテリーセルでは、長年の使用により、電極に生じたキレート生成物が正負の両電極を分離しているイオン交換膜を突き破ることが、広く知られている。この結果、電気的な短絡によってバッテリーセルが異常過熱を起こす可能性がある。一部のバッテリーセルが異常過熱すると、多くのバッテリーセルへの熱伝達の連鎖が生じ、バッテリー全体が燃焼または爆発する危険性がある。
【0003】
また、充電時および放電時にバッテリーセルが高温になると、バッテリーセルの容器が膨張すること、さらに充電および放電が完了するとバッテリーセルの容器が元の形状に戻ること、が知られている。このようなバッテリーセルの膨張および膨張からの復帰が生じた際に、バッテリーセルの形状変化に追従して弾性変形する部材をバッテリーセル同士の間に配置し、バッテリーセルの過剰な圧力が隣のバッテリーセルに加わらないようにするのが望ましい。
【0004】
上述したバッテリーセル間の熱伝達の連鎖の防止、および隣のバッテリーセルへの過剰な圧力がかからないようにするために、従来から次のような方法が知られている。当該方法は、ゴム状弾性体で構成されるシートの片面側に複数の凸部を形成して、かかるシートをバッテリー同士の間に配置することによりバッテリーセルからの熱伝達の抑制に加えて、凸部の変形容易性を利用してシート全体の弾性変形を発揮させる方法である(特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-119556号公報
【特許文献2】特開2022-011636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来から公知の方法では、バッテリーセル間の断熱機能が十分とはいえず、より断熱性に優れたシートが望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものあり、断熱機能に優れた弾性変形可能な延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る延焼防止シートは、厚さ方向の一方から他方への延焼を防止するための延焼防止シートであって、
ベースシートと、
前記ベースシートの厚さ方向の一方の面に形成される1または複数個の凸部であってその高さ方向に弾性的に変形可能な凸部と、
前記ベースシートの前記一方の面と反対側の他方の面から前記凸部の天面までの間に配置されていて、前記凸部よりも断熱性の高い少なくとも1枚の断熱シートと、
を備える。
(2)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記断熱シートは、前記ベースシートの前記一方の面側であって、前記凸部の隙間と対向するように前記凸部の天面に備えられていても良い。
(3)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記断熱シートは、1または複数個の前記凸部の天面に個別に備えられていても良い。
(4)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記断熱シートは、前記ベースシートの前記他方の面に備えられていても良い。
(5)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記断熱シートは、前記凸部よりも耐熱性に優れ、粒状、針状若しくは繊維状の金属酸化物の不織布、または前記金属酸化物を含むシートであっても良い。
(6)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記断熱シートは、シリカエアロゲルのシートまたはシリカエアロゲルを含むシートであっても良い。
(7)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記ベースシートは、金属層と樹脂層とのラミネート構造を有するものでも良い。
(8)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、
前記凸部は、その裏側に、前記ベースシート側に開口する第1凹部または前記ベースシートにて被覆される空間を備え、
前記凸部は、その外周面側に、前記ベースシートとの接続部から立ち上がるドーム状の壁部と前記凸部の先端との間にあって前記先端の径を前記ドーム状の壁部の径よりも小さくする少なくとも1つの外側段差部を備え、
前記凸部の先端は、前記先端の天面から前記ベースシートに向かって窪む第2凹部を備えていても良い。
(9)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記ベースシートは、前記凸部の前記第1凹部または前記空間から前記ベースシートの外側へと通じる通気路を有していても良い。
(10)別の実施形態に係る延焼防止シートは、好ましくは、前記凸部の先端の前記裏面から前記ベースシートに向かって延出する柱状または筒状の延出部を、さらに備えていても良い。
(11)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記外側段差部は、前記壁部から前記先端に向かう間に、前記ベースシートと平行になる平行部位を有していても良い。
(12)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記壁部は、前記ベースシートと前記壁部との接続部よりも前記外側段差部よりの位置において、前記第1凹部側または前記空間側に突出させた厚肉部を備えていても良い。
(13)別の実施形態に係る延焼防止シートは、好ましくは、前記壁部と前記先端との間に、前記ベースシートと前記壁部との接続部の肉厚以下の肉厚のネック部を備えていても良い。
(14)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、
前記第2凹部は、前記先端の天面から前記外側段差部を超える長さに形成され、前記先端および前記凸部は、それぞれ、前記第2凹部の外周囲に枠状に形成されており、
前記第1凹部または前記空間は、前記枠状の前記凸部の内側に形成されており、
前記凸部は、前記外側段差部に加えて、前記第2凹部側に、前記ベースシートとの接続部から立ち上がる壁部と前記凸部の先端との間にあって前記第2凹部を拡げる方向に形成される少なくとも1つの内側段差部を備えていても良い。
(15)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記内側段差部は、前記壁部から前記先端に向かう間に、前記ベースシートと平行になる平行部位を有していても良い。
(16)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記断熱シートの外表面に、前記外表面以外の面粗さよりも大きな凹凸が形成されていても良い。
(17)別の実施形態に係る延焼防止シートは、好ましくは、前記ベースシートの面内中央を含む領域に、前記凸部の前記先端から前記ベースシートに向かって熱源が膨張したときにその膨張を許容する領域を備えていても良い。
(18)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記膨張を許容する領域は、前記ベースシートの厚さ方向に貫通する穴または当該厚さ方向に窪む第3凹部であり、前記凸部は、前記穴または前記第3凹部の周囲に配置されていても良い。
(19)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記ベースシートの前記凸部と反対側の面は、前記延焼防止シートを熱源の壁面に固定可能な平滑面であって、当該平滑面は、前記延焼防止シートの表面の中で最も面粗さが小さくても良い。
(20)別の実施形態に係る延焼防止シートは、好ましくは、前記ベースシートの前記他方の面に、前記凸部の変形を促進可能なリブを備えていても良い。
(21)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記ベースシートおよび前記凸部は、主にシリコーンゴムから構成されていても良い。
(22)上記目的を達成するための一実施形態に係るバッテリーは、上述のいずれかの延焼防止シートと、熱源としての複数個のバッテリーセルと、を備えるバッテリーであって、少なくとも1組の互いに隣り合う前記バッテリーセル同士の間に前記延焼防止シートを備える。
(23)別の実施形態に係るバッテリーにおいて、好ましくは、前記延焼防止シートは、前記複数個の前記バッテリーセルを並べた列の中央に位置する少なくとも1つの前記バッテリーセルに前記凸部の先端を向けて配置されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、断熱機能に優れかつ弾性変形可能な延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るバッテリーの組み立て状況を示す。
【
図2】
図2は、
図1とは別の実施形態に係るバッテリーの組み立て状況を示す。
【
図3】
図3は、
図2のバッテリーセルがその厚さ方向に膨張したときの延焼防止シートの状況を示す(3A,3B)。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る延焼防止シートの平面図、正面図、右側面図および底面図を示す。
【
図5】
図5は、
図4の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図、当該断面図の一部Bの拡大図および当該一部Bの拡大図の一部Cの拡大図(5A)と、凸部の上方から加圧したときの凸部の変化(5B)とを示す。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態の変形例1に係る延焼防止シートの平面図、正面図、右側面図および底面図を示す。
【
図7】
図7は、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【
図8】
図8は、本発明の第1実施形態の変形例2に係る延焼防止シートにおいて、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【
図9】
図9は、本発明の第1実施形態の変形例3に係る延焼防止シートにおいて、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【
図10】
図10は、本発明の第1実施形態の変形例4に係る延焼防止シートにおいて、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施形態に係る延焼防止シートの平面図および底面図(11A)と、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(11B)と、を示す。
【
図12】
図12は、本発明の第3実施形態に係る延焼防止シートの平面図および底面図(12A)と、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(12B)と、を示す。
【
図13】
図13は、本発明の第4実施形態に係る延焼防止シートの平面図および底面図(13A)と、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(13B)と、を示す。
【
図14】
図14は、本発明の第5実施形態に係る延焼防止シートの平面図を示す。
【
図15】
図15は、本発明の第5実施形態に係る延焼防止シートの変形例の平面図を示す。
【
図16】
図16は、本発明の第6実施形態に係る延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(16A)、および当該延焼防止シートの裏面に環状のリブを取り付けた状態の(16A)と同視の断面図とリブを裏面からみた図(16B)を示す。
【
図17】
図17は、本発明の第7実施形態に係る延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図を示す。
【
図18】
図18は、本発明の第8実施形態およびその変形例に係る2種類の延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(18A,18B)を示す。
【
図19】
図19は、本発明の第9実施形態に係る延焼防止シートの底面図を示す。
【
図20】
図20は、本発明の第10実施形態に係る延焼防止シートをその底面側からみた底面図を示す。
【
図21】
図21は、本発明の第11実施形態に係る延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
1.バッテリー
図1は、本発明の一実施形態に係るバッテリーの組み立て状況を示す。
【0013】
この実施形態に係るバッテリー1は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル(単に「セル」と称しても良い。)10を備える。バッテリー1は、一方に開口する有底型の筐体2を備える。筐体2は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル10は、筐体2の内部3に配置される。複数のバッテリーセル10は、好ましくは、バッテリーセル10,10同士の間に、延焼防止シート20を挟んだ状態で、バッテリーセル群の両側から圧縮する方向に力Pを与えられ、互いに密着した状態で筐体2内にセットされる。
【0014】
延焼防止シート20は、後程、詳述するように、ベースシートの厚さ方向の一方の面に複数個の凸部21を備えると共に、当該一方の面と反対側の他方の面から凸部21の天面までの間に、凸部21よりも断熱性の高い少なくとも1枚の断熱シート80と、を備える。
図1では、延焼防止シート20は、ベースシートと、当該ベースシートの厚さ方向の一方の面に備える複数の凸部21と、凸部21の天面に固定されていてベースシートとほぼ同じ面積の断熱シート80と、を備える。
図1の例では、7枚の延焼防止シート20は、8個のバッテリーセル10におけるバッテリーセル10,10同士の間に挟まれている。7枚の延焼防止シート20は、全て、バッテリーセル10の配列する一方向(矢印X方向)に凸部21の先端方向を向けて配置されている。なお、バッテリーセル10の数および延焼防止シート20の数は、それぞれ上記の数に限定されない。また、筐体2の底部には、冷却部材の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ4が備えられている。冷却水に代えて、有機溶剤などの他の冷却媒体を用いても良い。
【0015】
このように、バッテリー1は、延焼防止シート20と、複数個のバッテリーセル10とを備え、少なくとも1組の互いに隣り合うバッテリーセル10,10同士の間に延焼防止シート20を備える構造を有する。
【0016】
図2は、
図1とは別の実施形態に係るバッテリーの組み立て状況を示す。
【0017】
図2のバッテリー1は、
図1のバッテリー1と比較して、延焼防止シート20の向きと数が異なり、それら以外の点では共通する。
図2のバッテリー1では、延焼防止シート20は、筐体2とバッテリーセル10との間にも挟まれており、筐体2内に合計9枚配置されている。また、延焼防止シート20は、複数個のバッテリーセル10を並べた列の中央に位置する少なくとも1つのバッテリーセル10に凸部21の先端を向けて配置されている。より具体的には、8個のバッテリーセル10の列における中央に位置する2個のバッテリーセル10の内の1個のバッテリーセル10aに凸部21の先端を向けるように、延焼防止シート20が配置されている。この例では、全ての延焼防止シート20は、バッテリーセル10aに向かって凸部21の先端を向けるように筐体2内に配置されている(矢印Xおよび矢印Yを参照。)。ただし、バッテリーセル10aを挟む2枚の延焼防止シート20,20だけが凸部21の先端をバッテリーセル10aに向けて配置され、その他の延焼防止シート20は、凸部21の先端をバッテリーセル10aに向けていなくとも良い。また、奇数個のバッテリーセル10を筐体2内に配置する場合には、延焼防止シート20を、バッテリーセル10を並べた列の中央に位置する1つのバッテリーセル10に凸部21の先端を向けて配置されても良い。その場合、中央に位置する1つのバッテリーセル10を挟む2枚の延焼防止シート20,20だけが凸部21の先端をバッテリーセル10に向けて配置され、その他の延焼防止シート20は、凸部21の先端を当該中央に位置するバッテリーセル10に向けていなくとも良い。
【0018】
中央に位置するバッテリーセル10に凸部21の先端を向けるように延焼防止シート20を配置するのは、次の理由からである。バッテリーセル10を一列に並べて配置すると、その列の中央付近のバッテリーセル10が最も高温になりやすい。この結果、中央付近のバッテリーセル10がバッテリーセル10の並ぶ列方向(バッテリーセル10の厚さ方向と称しても良い。)に膨らみやすい。凸部21は、後述するように、バッテリーセル10が膨張したときのクッションとして機能するように、延焼防止シート20に設けられている。このようなクッション効果を発揮しやすいように、中央に位置するバッテリーセル10に凸部21の先端を向けるように延焼防止シート20が配置されている。
【0019】
図3は、
図2のバッテリーセルがその厚さ方向に膨張したときの延焼防止シートの状況を示す(3A,3B)。(3A)は、バッテリーセル10の厚さ方向片側に断熱シート80が接する状況を示す。(3B)は、バッテリーセル10の厚さ方向両側に断熱シート80が接する状況を示す。
【0020】
図3に示すように、延焼防止シート20の面内に備えられている凸部21は、凸部21の先端方向からの圧力Fの大きさに応じて高さを変化可能な部分である。バッテリーセル10は、その高さ方向および幅方向のそれぞれ中央部分が突出するように膨張しやすい。このため、延焼防止シート20の面内略中央に配置される凸部21が最も収縮しやすい。一方、延焼防止シート20の面内略中央から離れるほど、凸部21がバッテリーセル10からの圧力を受けにくい。その理由は、バッテリーセル10の厚さ方向両側の面の略中央から離れた箇所は、略中央に比べて膨張しにくいからである。
【0021】
図1~3に示すバッテリー1は、以下の各実施形態に係る延焼防止シート20の少なくとも1つを備える。以下、延焼防止シート20について詳述する。
【0022】
2.延焼防止シート
(1)第1実施形態
図4は、本発明の第1実施形態に係る延焼防止シートの平面図、正面図、右側面図および底面図を示す。
図5は、
図4の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図、当該断面図の一部Bの拡大図および当該一部Bの拡大図の一部Cの拡大図(5A)と、凸部の上方から加圧したときの凸部の変化(5B)とを示す。
【0023】
本発明の第1実施形態に係る延焼防止シート20は、延焼防止シート20の厚さ方向の一方から他方への延焼を防止するためのシートである。延焼防止シート20は、ベースシート22と、ベースシート22の厚さ方向の一方の面に形成される1または複数個の凸部21と、ベースシート22の一方の面と反対側の他方の面から凸部21の天面31までの間に配置されている断熱シート80と、を備える。具体的には、断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。凸部21は、その高さ方向に弾性的に変形可能な部分である。断熱シート80は、凸部21よりも断熱性の高い部材である。断熱シート80は、延焼防止シート80に少なくとも1枚備えられる。凸部21とベースシート22とのユニットの厚さは、特に制約はないが、好ましくは3~12mm、より好ましくは4~10mm、さらにより好ましくは5~8mmである。以後の各実施形態における同ユニットについても同様である。第1実施形態では、凸部21は、ベースシート22の片面内に合計27個設けられているが、その個数に制約はなく、1個でも良い。
【0024】
断熱シート80は、好ましくは、凸部21よりも耐熱性に優れ、粒状、針状若しくは繊維状の金属酸化物の不織布、または金属酸化物を含むシートである。金属酸化物に代えて金属を用いても良い。断熱シート80は、さらに好ましくは、シリカエアロゲルのシートまたはシリカエアロゲルを含むシートであっても良い。以下、断熱シート80について詳細に説明する。
【0025】
断熱シート80は、好ましくは、難燃性のシートであって、より好ましくは600℃以上の熱に耐える耐熱性を有するシートである。断熱シート80は、好ましくは、シート状繊維塊を担持体としたシリカエアロゲルである。シート状繊維塊としては、ガラス繊維; シリカ繊維、アルミナ繊維、チタニア繊維、炭化ケイ素繊維等のセラミックファイバー; 金属繊維; ロックウール、バサルト繊維等の人造鉱物繊維; 炭素繊維; ウイスカー等を抄造法にて紙状またはボード状にするか、適宜バインダーを添加してシート状に成形した不織布、マット、フェルト等のシート状成形物を用いることができる。これらの内、シリカエアロゲルの断熱効果を有効に得るためには、シリカエアロゲルの耐熱温度(750℃程度)でも担持体としての形状を保持できる担持体がより好ましい。シリカエアロゲルの空孔率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。シリカエアロゲルは、単にシート状繊維塊中に含侵され分散しているだけでも良いし、バインダー等を用いてシート状繊維塊の構成繊維状に担持されるようにしても良い。断熱シート80は、上述の無機繊維に代えて、または無機繊維に加えて、アルミナ、タルク等の無機粒子を含んでいても良い。また、断熱シート80は、シリカエアロゲルを含むシートの場合、シート状繊維塊を担持体としたシリカエアロゲル以外の材料をさらに含むシートであっても良い。
【0026】
断熱シート80の熱伝導率は、好ましくは0.05W/mk以下、より好ましくは、0.03W/mK以下、さらに好ましくは0.02W/mK以下である。断熱シート80は、担持体に基づく空孔内の対流とその低い熱伝導率により、優れた断熱性を示す。断熱シート80の厚さは、特に制約はないが、好ましくは1~8mm、より好ましくは2~6mm、さらにより好ましくは3~5mmである。以後の各実施形態における断熱シートについても同様である。断熱シート80は、その厚さが薄くなるほど担持されるシリカと空気層の量が少なくなるため、断熱性が低下する。一方、断熱シート80は、その厚さが大きくなるほど、可撓性が低下する。このため、断熱シート80の厚さは、断熱シート80の強度、可撓性および断熱性を総合的に考慮して決定されるのが好ましい。また、断熱シート80として、シリカエアロゲル以外に、ステアタイト(MgO・SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、又はムライト(3Al2O3・2SiO2)の内の1又は2以上を備えたシートを用いても良い。
【0027】
この実施形態では、断熱シート80は、延焼防止シート20の厚さ方向片面であって凸部21の天面31に支持されている。断熱シート80は、好ましくは、凸部21の天面31に接着剤を用いて接着され、またはインサート成形による熱圧着によって天面31と物理的に固着されている。接着剤を用いる場合には、アクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、フェノール樹脂系またはRTVシリコーン系の接着剤を用いるのが好ましい。ただし、接着剤に代えて、耐熱性を有する両面テープを用いることもできる。これは、以後の断熱シートと凸部21等またはベースシート22との固定方法についても同様である。凸部21側に断熱シート80を備えることによって、バッテリーセル10からの熱を凸部21に伝えにくくすることができる。特に、バッテリー1内において一列に並べた複数のバッテリーセル10の内の中央に位置する、もしくは中央に近い位置にあるバッテリーセル10aに凸部21の先端を向けて延焼防止シート20を配置する場合には、最も熱を保持しやすいバッテリーセル10aからの熱を、断熱シート80を介して凸部21に伝えることになる。このため、断熱シート80の断熱効果を期待できる。
【0028】
凸部21は、その裏側に、ベースシート22側に開口する第1凹部30を備える。また、凸部21は、その外周面側に、ベースシート22との接続部から立ち上がるドーム状の壁部33と、壁部33と凸部21の先端35との間にあって先端35の径をドーム状の壁部33の径よりも小さくする少なくとも1つの外側段差部36を備える。ここで、「径」は、先端35および壁部33が平面視にて円であればその直径を、円以外の形状(例えば四角形)であればその四角形の面積と面積を同じくする円に換算したときの直径を意味する。凸部21の先端35は、先端35の天面31からベースシート22に向かって窪む第2凹部32を備える。また、ベースシート22は、凸部21の第1凹部30からベースシート22の外周縁へと通じる溝部23を有する。溝部23は、凸部21の第1凹部30(または後述の空間30a)からベースシート22の外側へと通じる通気路の一例である。この実施形態において、溝部23は、ベースシート22に形成されている領域では、ベースシート22の厚さよりも小さい深さを有する。すなわち、溝部23は、ベースシート22の凸部21側の面(表側の面)に達しない深さで、ベースシート22の裏側の面から切り込まれたハーフカット状の凹部である。なお、溝部23のような通気路は必須の構成要素ではない。また、溝部23は、後述の実施形態にて説明するように、ハーフカット状の溝ではなく、ベースシート22の厚さと同じ深さの切れ込みでも良い。
【0029】
外側段差部36は、好ましくは、壁部33から先端35に向かう間に、ベースシート22と平行になる平行部位34を有する。凸部21は、好ましくは、先端35の裏面からベースシート22に向かって延出する柱状または筒状の延出部38を、さらに備える。壁部33は、好ましくは、ベースシート22と壁部33との接続部よりも外側段差部36よりの位置において、第1凹部30側(または第1凹部30に代えて空間を形成している場合には当該空間側)に突出させた厚肉部37を備える。また、壁部33と先端35との間には、好ましくは、ベースシート22と壁部33との接続部の肉厚以下の肉厚のネック部39を備える。
【0030】
外側段差部36は、凸部21の高さ方向の収縮と復帰の変形を生じやすくさせる機能を有する、段差がない凸部21、例えば、単なる直方体や円錐台の形状の凸部21の場合には、凸部21の高さ方向に弾性変形しにくく、変形したとしても元の形状に復帰できず、非弾性的な変形になりやすい。
【0031】
複数個のバッテリーセル10を一列に並べてクランプ固定(クランピング)を行う際には、凸部21が圧縮される。クランプ後には、若干、圧力が緩和される。このような圧力の変動に応じて、凸部21には、柔軟に弾性変形することが要求される。第1実施形態に係る延焼防止シート1において、壁部33および延出部38は、天面31側からの圧力(矢印Qを参照)が凸部21に加わったときに、その圧力を受けて凸部21をその高さ方向に収縮しすぎないように耐える機能を凸部21に付加する。ネック部39は、先端35を下降させると共に、壁部33をドーム状の壁部33の径方向外側(矢印Mの方向)に変形させるのに寄与する。クランプ後、壁部33は、矢印Mと反対側に移動する方向に変形する。このような壁部33の変形は、外側段差部36に平行部位34を備えている方が生じやすい。平行部位34は、ベースシート22の上面に対して正確に平行な場合のみならず、33の角度に対し小さい角度またはマイナスの角度で傾斜する場合を含む。また、壁部33は、ベースシート22の上面に対し略90度上方に立設形成されている方が好ましい。凸部21をベースシート22面に向けて加圧した際に、壁部33がその径方向外側に向かって押し出されるようにするためには、壁部33と先端35とをつなぐ部位は平行部位34を形成していなくとも良く、壁部33から傾斜して先端35に接続される部位でも良い。かかる部位のベースシート22の上面に対する傾斜角度は0度を超え30度以下の範囲が好ましい。また、かかる部位の傾斜角度は、0度(ベースシート22面と平行)から壁部33の内側に向かって逆傾斜するようにマイナスの角度(―1度から―30度)の範囲でも良い。また、壁部33が容易にくずれないようにするためには、厚肉部37を壁部33の内側に形成している方が好ましい。なお、延出部38は、その下端面を、第1凹部30の開口面と同じ面または若干内側の位置にする長さであるのが好ましい。
【0032】
第2凹部32は、バッテリーセル10が過熱膨張したときに、先端35をその厚さ方向(凸部21の高さ方向)に収縮させて、延焼防止シート20を当該膨張に対応させるのに寄与する。第2凹部32の深さは、好ましくは、先端35の高さに比べて小さい。このため、第2凹部32の内底面は、壁部33と先端35との境界の位置よりも高い位置にある。ただし、第2凹部32は、第1凹部30に達しない範囲で、壁部33と先端35との境界の位置と同一または当該位置よりもベースシート22側に寄った位置まで深く形成されても良い。
【0033】
このように、ドーム状の壁部33は、先端35との接続部位において段差(外側段差部36)を備えることで、クランプ時の凸部21の弾性を確保している。また、第2凹部32を備えた先端35は、その後、バッテリーセル10の膨張に対応して弾性変形するのに寄与する。このように、延焼防止シート20は、少なくとも2段階に弾性変形可能である。なお、外側段差部36を2以上備えると、凸部21は3段階以上の弾性変形も可能である。
【0034】
断熱シート80の外表面、特に凸部21と反対側の上面には、好ましくは、当該外表面以外の面粗さよりも大きな凹凸80aが形成されている。具体的には、当該凹凸80aの面粗さは、「ISO 25178表面性状」に基づく算術平均高さ(Sa)の値で、好ましくは0.3μm以上3.0μm以下、より好ましくは0.4μm以上1.0μ以下である。このような凹凸80aを断熱シート80の外表面に形成すると、バッテリーセル10からの熱の伝達を抑制できる。
【0035】
溝部23は、凸部21が変形して第1凹部30内の空気を延焼防止シート20の外部に排気すると共に、凸部21が元の形状に復帰する際に、延焼防止シート20の外部から第1凹部30に空気を流入させる通気路として機能する。溝部23を設けなくとも、凸部21の弾性変形は可能であるが、変形に時間を要することから、溝部23を設けるのが好ましい。溝部23は、好ましくは、ベースシート22の裏面、すなわち、凸部21と反対側の面に溝の開口面を向けて形成されている。溝部23は、凸部21の第1凹部30同士をつなぐように形成されている。具体的には、溝部23は、底面視にて長方形の長辺に略平行に形成され、当該長辺方向に並ぶ複数個の第1凹部30をつないでいる。溝部23は、ベースシート22の短辺方向に3本形成されている。ただし、溝部23の数は、3本に限定されず、凸部21の数に応じて変動可能である。
【0036】
なお、溝部23に代えて、例えば、壁部33から第1凹部30へと通じる通気路を設けても良い。ベースシート22の裏面は、バッテリーセル10等に貼り付けやすいように、鏡面に仕上げられているのが好ましい。すなわち、ベースシート22の凸部21と反対側の面は、延焼防止シート20をバッテリーセル(熱源の一例)10の壁面に固定可能な平滑面であるのが好ましい。当該平滑面は、延焼防止シート20の表面の中で最も面粗さが小さい。当該平滑面の面粗さとしては、「ISO 25178表面性状」に基づく算術平均高さ(Sa)の値で、好ましくは0μmより大きく0.2μm以下、より好ましくは0μmより大きく0.1μm以下、さらに好ましくは0μmより大きく0.05μm以下である。
【0037】
延焼防止シート20は、バッテリーセル10,10同士の間に介在させて、1つのバッテリーセル10から隣のバッテリーセル10への延焼を有効に防止する機能を有する。延焼防止シート20は、耐熱性および難燃性に優れたシートであることが好ましい。延焼防止シート20を構成するゴム状弾性体としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。上記例示のゴムの中では比較的耐熱性の高いシリコーンゴムをより好適に用いることができる。すなわち、延焼防止シート20のベースシート22および凸部21は、好ましくは、主にシリコーンゴムから成る。後述の凸部21a,28,29も上記凸部21と同様に、好ましくは主にシリコーンゴムから成る。ここで、「主に」は、50体積%を超えることを意味し、好ましくは70体積%を超えることを意味し、さらに好ましくは85体積%を超えることを意味する。延焼防止シート20は、延焼防止性能をより高めるために、シリカ、窒化ホウ素、酸化チタン、ハロゲン化合物、リン化合物、白金、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を含有していても良い。凸部21とベースシート22は、同じゴム材料で、かつ一体であるのが好ましい。ただし、凸部21とベースシート22は、別のゴム材料で構成しても良い。さらに、凸部21とベースシート22は、別体として、嵌め込み等の手段で一体化しても良い。
【0038】
(2)第1実施形態の各種変形例
(変形例1)
図6は、本発明の第1実施形態の変形例1に係る延焼防止シートの平面図、正面図、右側面図および底面図を示す。
図7は、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【0039】
変形例1では、上述の第1実施形態と異なり、断熱シート82は、1または複数個の凸部21の天面31に個別に備えられている。断熱シート82を凸部21の天面31に個別に備えると、断熱シート82自体が可撓性に乏しくても、バッテリーセル10の膨張に凸部21が弾性変形可能である。この結果、断熱シート82の厚さをより大きくでき、より大きな断熱効果を期待できる。断熱シート80を断熱シート82に変更した以外の構成は、第1実施形態と共通する。断熱シート82および以後に登場する断熱シートは、第1実施形態における断熱シート80と同様の材料で構成可能である。
【0040】
(変形例2)
図8は、本発明の第1実施形態の変形例2に係る延焼防止シートにおいて、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【0041】
変形例2では、上述の第1実施形態と異なり、断熱シート80に加えて、断熱シート90を備える。断熱シート90は、ベースシート22の凸部21と反対側の面(他方の面または底面ともいう)に備えられている。断熱シート90は、断熱シート80と同様、ベースシート22と略同一面積を有する。断熱シート90をベースシート22の底面に備えると、延焼防止シート20の構造は、ベースシート22と凸部21のユニットを2枚の断熱シート80,90で挟んだ構造となる。このため、延焼防止シート20の断熱性が高まり、延焼防止効果も高まる。延焼防止シート20を弾性変形しやすくするために、断熱シート80,90を可撓性に富む材料で構成し、あるいは厚さを小さくするのが好ましい。断熱シート90は、溝部23の上から接着されている。しかし、当該接着は、溝部23に接着剤が入らないように行われるのが好ましい。以後の変形例や各種実施形態でも同様である。断熱シート80に加えて断熱シート90を追加した以外の構成は、第1実施形態と共通する。
【0042】
(変形例3)
図9は、本発明の第1実施形態の変形例3に係る延焼防止シートにおいて、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【0043】
変形例3では、上述の変形例1と異なり、断熱シート82に加えて、断熱シート90を備える。断熱シート90は、ベースシート22の凸部21と反対側の面(他方の面または底面ともいう)に備えられている。断熱シート90は、ベースシート22と略同一面積を有する。断熱シート90をベースシート22の底面に備えることにより、延焼防止シート20は、変形例1よりも高い断熱効果を発揮できる。延焼防止シート20を弾性変形しやすくするため、断熱シート90を可撓性に富む材料で構成し、あるいは厚さを小さくするのが好ましい。断熱シート82に加えて断熱シート90を追加した以外の構成は、変形例1と共通する。
【0044】
(変形例4)
図10は、本発明の第1実施形態の変形例4に係る延焼防止シートにおいて、
図6の平面図におけるA-A線で延焼防止シートを切断したときのA-A線断面図および当該断面図の一部Bの拡大図を示す。
【0045】
変形例4では、上述の第1実施形態と異なり、断熱シート80を備えずに、断熱シート90のみを備える。断熱シート90は、ベースシート22の凸部21と反対側の面(他方の面または底面ともいう)に備えられている。この場合、凸部21側の断熱性が低くなるが、凸部21の天面31に、凹凸80aと同様の凹凸を形成して、バッテリーセル10との接触面積を小さくすることによってバッテリーセル10からの熱伝導を抑制可能である。
【0046】
(3)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0047】
図11は、本発明の第2実施形態に係る延焼防止シートの平面図および底面図(11A)と、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(11B)と、を示す。
【0048】
第2実施形態に係る延焼防止シート20では、第1実施形態と同様、断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。ただし、第2実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なるベースシート22および凸部21について詳細に説明する。
【0049】
第2実施形態に係る延焼防止シート20は、第1実施形態と比較すると、第2凹部32を、先端35の天面31に比較的大きな径で、かつ深く形成している。また、ドーム状の壁部33は、先端35との接続部位に、外側段差部36を備える。壁部33は、後述の内側の壁部43と区別するために、外側の壁部33と称しても良い。凸部21の平面視にて壁部33の内側に位置する壁部43は、先端35との接続部位に、内側段差部46を備える。具体的には、凸部21は、第2凹部32側に、ベースシート22との接続部から立ち上がる内側の壁部43と先端35との間にあって第2凹部32を拡げる方向に形成される少なくとも1つの内側段差部46を備える。この結果、凸部21は、平面視にて、略中央に第2凹部32を有する枠状の形態を有し、壁部33,43から、外側段差部36と内側段差部46を経て、壁部33と壁部43との間の距離よりも平面視にて狭い幅となる枠状の先端35を備える。本願において、「枠状」とは、平面視において中央に空間を有するように囲った形態を意味し、中央を囲んで完全に閉鎖した枠の形態以外に、1または複数の位置を開口して部分的に閉鎖した枠の形態も含むように広義に解釈される。
【0050】
第2凹部32は、内側段差部46の位置にとどまらず、当該位置からさらにベースシート22側に深く形成されている。この深く形成されている部位48は、内側段差部46より天面31側の部位よりも、内側段差部46の存在によって小径となっている。第2凹部32の内底面40は、ベースシート22の上面に達していない。第2凹部32の底(すなわち外底部)は、ベースシート22と接続部41によって接続されている。凸部21は、その裏側に、第1実施形態における第1凹部30に代えて、ベースシート22にて被覆される空間30aを備える。接続部41は、好ましくは、空間30a内に立設される柱状部である。ただし、接続部41は、空間30aを2つに分ける帯状の形状でも良い。この実施形態において、溝部23は、空間30aからベースシート22へと切り込まれた部分である。溝部23は、連通路23aを通じて空間30aとつながっている。溝部23は、底面視にて長方形のベースシート22の長辺に略平行に形成され、当該長辺方向に並ぶ複数個の空間30aをつないでいる。溝部23は、ベースシート22の短辺方向に3本形成されている。ただし、溝部23の数は、3本に限定されず、凸部21の数に応じて変動可能である。
【0051】
内側段差部46は、好ましくは、平行部位44を備えている。平行部位44の機能は、第1実施形態にて説明した平行部位34と同じ機能である。また、壁部43と先端35との間には、好ましくは、ベースシート22と壁部43との接続部の肉厚以下の肉厚のネック部49を備える。第2実施形態に係る延焼防止シート20は、先述のように、凸部21に、外側段差部36と内側段差部46とを備えている。このため、凸部21が天面31からベースシート22に向かって圧力を受けると、壁部33および壁部43は、それぞれ、外側および内側に向けて拡がるように変形する。この結果、先端35は、容易に下降できる。接続部41は、ドーム状の壁部33をさらにベースシート22の上方に維持する機能を持つ。
【0052】
第2凹部32は、バッテリーセル10が過熱を起こして膨張したときに、先端35をその厚さ方向(凸部21の高さ方向)に収縮させて、延焼防止シート20を当該膨張に対応させるのに寄与する。
【0053】
この実施形態に係る延焼防止シート20では、ドーム状の壁部33,43(逆椀状ドームとも称する)を二重枠の形状(ドーナツ形状ともいう。)に形成することによって、小さな面積で高荷重を得ることが可能となる。上記ドーナツ形状の逆椀状ドームの中央部は、接続部41を介してベースシート22上面に対し浮いている。これにより、凸部21の変形初期は、壁部33が変形して応力を生成し、その後、外側に膨らみを持つ。その後、加圧によって変形屈曲変異点をむかえたところで、第2凹部32の外底面がベースシート22に接し、壁部43(すなわち、内側の薄肉ドーム)が変形を始める。これにより、壁部33(外周部の薄肉)により生成された応力減少を壁部43(内側の薄肉部)で生成する。この結果、荷重を一定範囲で変化の少ない状態に保つことが可能となる。
【0054】
このように、ドーム状の壁部33,43は、先端35との接続部位において段差(外側段差部36および内側段差部46)を備えることで、クランプ時の凸部21の弾性を確保している。また、第2凹部32を備えた先端35は、バッテリーセル10の膨張に対応して弾性変形するのに寄与する。延焼防止シート20は、少なくとも2段階に弾性変形可能である。なお、外側段差部36および内側段差部46をそれぞれ2以上備えると、凸部21は3段階以上の弾性変形も可能である。
【0055】
なお、ベースシート22の裏面の鏡面に関しては、第1実施形態と共通するので、ここでは重複した説明を省略する。
【0056】
(4)第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第3実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0057】
図12は、本発明の第3実施形態に係る延焼防止シートの平面図および底面図(12A)と、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(12B)と、を示す。
【0058】
第3実施形態に係る延焼防止シート20では、第1実施形態と同様、断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。ただし、第3実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なる凸部21について詳細に説明する。
【0059】
第3実施形態に係る延焼防止シート20は、第2実施形態と酷似した形態を有しており、主に、先端35の高さをより低くした点と、第2凹部32の外底部をベースシート22の上面に到達させている点と、空間30aに代えてベースシート22の裏面視にて開口する第1凹部30を有する点と、で第2実施形態と異なる。第1凹部30は、ベースシート22の裏面視にて枠状の形状を有する。溝部23は、第1凹部30から第2凹部32のベースシート22側に位置する外底部に連通形成されている。ただし、当該外底部に溝部23を設けなくとも良い。
【0060】
このように、第2実施形態と同様に、第1凹部30をドーナツ形状に形成することにより、小さな面積で高荷重を得ることが可能となる。すなわち、ドーナツ形状の逆椀状ドームが形成されることで、高い応力の生成が可能となる。先端35と壁部33,43との間にネック部39,49を形成することにより、ネック部39,49から変形を開始し、壁部33,43自体が径方向外側に広がるように変形しやすくしている。この結果、凸部21にかかる応力を高い状態とし、その後変形しながら応力を一定に保持することができる。
【0061】
ドーム状の壁部33,43は、壁部33,43と先端35との接続部位において段差(外側段差部36および内側段差部46)を備えることで、クランプ時の凸部21の弾性を確保している。また、第2凹部32を備えた先端35は、バッテリーセル10の膨張に対応して弾性変形するのに寄与する。延焼防止シート20は、少なくとも2段階に弾性変形可能である。なお、外側段差部36および内側段差部46をそれぞれ2以上備えると、凸部21は3段階以上の弾性変形も可能である。
【0062】
なお、ベースシート22の裏面の鏡面に関しては、第1実施形態と共通するので、ここでは重複した説明を省略する。
【0063】
(5)第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第4実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0064】
図13は、本発明の第4実施形態に係る延焼防止シートの平面図および底面図(13A)と、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(13B)と、を示す。
【0065】
第4実施形態に係る延焼防止シート20では、第1実施形態と同様、断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。ただし、第4実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なる凸部21について詳細に説明する。
【0066】
第4実施形態に係る延焼防止シート20は、第1実施形態と類似した形態を有しており、主に、ドーム状の壁部33と先端35との境界に、壁部33の厚さおよび先端35の第2凹部32より径方向外側の厚さに比較して極めて小さい厚さを有するネック部39を備える点と、ベースシート22の片面に第1実施形態よりも多い60個の凸部21を備える点と、第1実施形態における延出部38のような凸部21の開口面に達するような部分を備えていない点と、で第1実施形態と異なる。
【0067】
この実施形態におけるネック部39は、第1~第3実施形態におけるネック部39と比較して細く形成されている。この実施形態におけるネック部39の厚さは、ベースシート22上に立ち上がる壁部33から先端35までの厚さの中で最も厚さの小さい部位でもある。ネック部39は、凸部21が天面31からベースシート22の方向に加圧されたときに、最も変形しやすい部位であり、先端35を、ドーム状の壁部33の内側(すなわち、第1凹部30)へと略垂直下方に向けて移動させやすくする。壁部33は、先端35の下降に伴い、第1実施形態の場合と同様、ドーム状の壁部33の径方向外側に向けて膨らむ。
【0068】
第4実施形態に係る延焼防止シート20は、第3実施形態の凸部21を第2凹部32から分けて凸部21の数を多くして、各凸部21の大きさを小さくしたものともいえる。先端35は、第1実施形態における先端35と比べて長い。このため、バッテリーセル10の膨張時に、先端35の弾性変形を十分に生じさせて、当該膨張を吸収できるようにしている。
【0069】
この実施形態では、第1~第3実施形態における凸部21よりも小さな凸部21をより多く備える。これによって、延焼防止シート20全体を均一に圧縮しやすくできる。また、凸部21のドーム状の壁部33から先端35にかけての肉厚変化をより大きくすることで、先端35がドーム状の壁部33の内側(すなわち、ドーム内)に潜り込みやすくなる。先端35がドーム内に潜り込み、先端35直下の第1凹部30の上面がベースシート22に接した後、さらなる荷重により、先端35が変形して応力を吸収することが可能となる。
【0070】
このように、ドーム状の壁部33は、先端35との接続部位において段差(外側段差部36)を備えることで、クランプ時の凸部21の弾性を確保している。また、第2凹部32を備えた先端35は、バッテリーセル10の膨張に対応して弾性変形するのに寄与する。延焼防止シート20は、少なくとも2段階に弾性変形可能である。なお、外側段差部36を2以上備えると、凸部21は3段階以上の弾性変形も可能である。
【0071】
なお、ベースシート22の裏面の鏡面に関しては、第1実施形態と共通するので、ここでは重複した説明を省略する。
【0072】
(6)第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第5実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0073】
図14は、本発明の第5実施形態に係る延焼防止シートの平面図を示す。
図14では、凸部21が断熱シート84から透けて見えている。
【0074】
第5実施形態に係る延焼防止シート20では、第1実施形態と同様、断熱シート84は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。ただし、第5実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート84に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なるベースシート22および凸部21について詳細に説明する。
【0075】
第5実施形態に係る延焼防止シート20は、ベースシート22の面内中央を含む領域に、凸部21の先端35からベースシート22に向かって熱源(この実施形態では、バッテリーセル10)が膨張したときにその膨張を許容する領域60を備える。当該膨張を許容する領域60は、バッテリーセル10の膨張時に変形して突出してきた部分が占めるのを許容する部位と位置付けて、「膨張許容部60」とも称する。膨張許容部60としては、ベースシート22の面内中央を含む領域にあって、ベースシート22の厚さ方向に貫通する穴またはベースシート22の厚さ方向に窪む第3凹部を例示できる。凸部21は、膨張許容部60の周囲に配置されている。凸部21の形態は、第1~第4実施形態における凸部21のいずれの形態でも良い。この実施形態では、断熱シート84は、膨張許容部60を穴とする枠形状とし、凸部21の存在する部分のみを覆うシートとしている。
【0076】
(第5実施形態の変形例)
図15は、本発明の第5実施形態に係る延焼防止シートの変形例の平面図を示す。
【0077】
第5実施形態の変形例に係る延焼防止シート20では、第1実施形態の変形例1と同様、凸部21の天面31に個別に断熱シート82を備える。ただし、当該変形例においても、第1実施形態および第1実施形態の変形例2~4と同様、断熱シート82を断熱シート80に代え、断熱シート90を追加し、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なるベースシート22および凸部21について詳細に説明する。
【0078】
膨張許容部60は、穴や第3凹部に代えて、膨張許容部60の外周囲の凸部21に比べて低硬度で容易に変形しやすい凸部21a、または当該外周囲の凸部21に比べて高さの小さい1または複数個の凸部21aを備えても良い。凸部21aとして、他の凸部21に比べて肉厚を小さくしたものを例示できる。
【0079】
(7)第6実施形態
次に、本発明の第6実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第6実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0080】
図16は、本発明の第6実施形態に係る延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(16A)、および当該延焼防止シートの裏面に環状のリブを取り付けた状態の(16A)と同視の断面図とリブを裏面からみた図(16B)を示す。
【0081】
第6実施形態に係る延焼防止シート20では、第1実施形態と同様、断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。ただし、第6実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なるベースシート22、凸部21およびその他の構成について詳細に説明する。
【0082】
第6実施形態に係る延焼防止シート20は、第3実施形態に係る延焼防止シートと類似の形態を有している。第6実施形態に係る延焼防止シート20は、第3実施形態と異なり、内側の壁部43を縦断面視にて傾斜させて第2凹部32を開口面から内底部に向けて窄まる形態としている。また、第6実施形態に係る延焼防止シート20では、内側段差部46がないこと、および先端35の高さを大きくしていることも、第3実施形態と異なる。
【0083】
内側の壁部43の厚さは、外側の壁部33の厚さよりも小さいのが好ましい。この結果、先端35からベースシート22に向かって加圧すると、壁部33よりも先に壁部43が変形を開始する。このとき、ネック部39の変形も生じて、先端35はベースシート22に向かって略垂直下降する。
【0084】
この実施形態では、壁部43は、第2凹部32の内底面40に接続されている。しかし、壁部43は、第1実施形態における延出部38と同様、ベースシート22側に開口していても良い。溝部23は、ベースシート22における外側の壁部33の直下位置に設けられ、第1凹部30とつながっている。
【0085】
第6実施形態に係る延焼防止シート20は、ベースシート22の裏面に、凸部21の変形を促進可能なリブを備えても良い。リブは、ベースシート22の裏面から外方向に突出する部位である。この実施形態では、延焼防止シート20は、リブの一例として、2つの環状のリブ71,72を備える。リブ72は、リブ71よりも大径のリングであり、リブ71の外側に配置可能な大きさを有する。リブ71,72は、凸部21を先端35からベースシート22の方向に加圧したときに、壁部33,43、さらには内底面40の変形を促進させるのに寄与する。当該変形を促すには、内底面40のベースシート22側の面とリブ71の上面との接触面積を、内底面40のベースシート22側の面の面積より小さくするのが好ましい。この実施形態では、リブ71は、壁部43の直下の面積よりも小さい面積で内底面40のベースシート22側の面に接触している。内底面40のベースシート22側の面は、その径方向両側をリブ71で支持され、リブ71の空間上に大部分を浮かせた状態にある。このため、先端35からベースシート22の方向に加圧すると、内底面40の内、リブ71で囲まれた中央領域がベースシート22に向かって突出するように変形する。
【0086】
また、この実施形態では、リブ72と壁部33の直下との接触面積を、好ましくは、壁部33の直下の面積よりも小さくしている。このため、先端35からベースシート22の方向に加圧すると、壁部33は、バランスを崩して、リブ71の外側に変形する。
【0087】
なお、リブ71,72の形態は、この実施形態では、環状であるが、環状に限定されない。例えば、直方体や円柱の形状を有するリブをベースシート22の裏面に配置しても良い。
【0088】
(8)第7実施形態
次に、本発明の第7実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第7実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0089】
図17は、本発明の第7実施形態に係る延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図を示す。
【0090】
第7実施形態に係る延焼防止シート20では、第1実施形態と同様、断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。ただし、第7実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なるベースシート22、凸部21およびその他の構成について詳細に説明する。
【0091】
第7実施形態に係る延焼防止シート20は、第4実施形態と類似する形態を有するが、壁部33をはじめ全体を肉厚にしている点と、先端35の高さをより低くしている点で第4実施形態と異なる。壁部33をはじめ全体を厚くすると、凸部21を先端35からベースシート22方向に加圧したときに、凸部21が変形を開始するまでの初期荷重を高くすることができる。第2凹部32を浅くして先端35の高さを低くすると、バッテリーセル10の膨張時に、先端35がすぐに変形せずに、当該膨張に耐えながら徐々に変形できる。
【0092】
なお、この実施形態では、溝部23は、
図17の紙面の表裏方向に長く形成されている。
【0093】
(9)第8実施形態
次に、本発明の第8実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第8実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0094】
図18は、本発明の第8実施形態およびその変形例に係る2種類の延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図(18A,18B)を示す。
【0095】
第8実施形態に係る延焼防止シート20は、ベースシート22上に複数の凸部28を備える。断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部28の隙間と対向するように、凸部28の天面31に備えられている。ただし、第8実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なる凸部28について説明する。
【0096】
凸部28は、略直方体でかつ中実状の形状を有する。凸部28は、前述の凸部21と異なり、第1凹部30や空間30aを有していない。
【0097】
第8実施形態の変形例に係る延焼防止シート20は、ベースシート22上に複数の凸部29を備える。断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部29の隙間と対向するように、凸部29の天面31に備えられている。ただし、第8実施形態の変形例においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なる凸部29について説明する。
【0098】
凸部29は、略円錐台でかつその内部に第1凹部30を有する、いわゆる逆カップ形状を有する。凸部29は、前述の凸部21と異なり、側面に段差のない斜面を有する。
【0099】
(10)第9実施形態
次に、本発明の第9実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第9実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0100】
図19は、本発明の第9実施形態に係る延焼防止シートの底面図を示す。
【0101】
第9実施形態に係る延焼防止シート20は、第2実施形態に係る延焼防止シート20の底面に断熱シート90を備えたものである。断熱シート90は、溝部23を避けるように、アイランド状の複数個の断熱シート90aを備える。断熱シート90aは、溝部23を避けてベースシート22の底面に接着されている。このため、溝部23が接着剤で埋設される事態を確実に防止できる。
【0102】
(11)第10実施形態
次に、本発明の第10実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第10実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0103】
図20は、本発明の第10実施形態に係る延焼防止シートをその底面側からみた底面図を示す。
【0104】
第10実施形態に係る延焼防止シート20は、ベースシート22上に複数の凸部21を備える。断熱シート80は、ベースシート22の一方の面側であって、凸部21の隙間と対向するように、凸部21の天面31に備えられている。ただし、第10実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート80に代えて断熱シート82を用いたり、断熱シート90を追加したり、あるいは断熱シート90のみを用いることも可能である。以下、第1実施形態と異なるベースシート22について説明する。
【0105】
第10実施形態に係る延焼防止シート20は、第1実施形態と類似し、唯一、溝部23をベースシート22の裏面から見て十字状に配置している点で異なる。このように、溝部23をベースシート22の底面から見て、ベースシート22の長辺方向だけに形成するのではなく、ベースシート22の短辺方向にも形成して、凸部21の裏側にて溝部23がクロスするようにすると、凸部21の加圧時と加圧からの復帰時に通気しやすくなり、凸部21が弾性変形しやすい。断熱シート90aをベースシート22の底面に備える場合、クロス状の溝部23を避けるように、アイランド状の断熱シート90aを当該底面に固定するのが好ましい。
【0106】
(12)第11実施形態
次に、本発明の第11実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。第11実施形態において、前述した各実施形態と共通する部分については、その説明を省略する場合がある。
【0107】
図21は、本発明の第11実施形態に係る延焼防止シートにおいて、第1実施形態における一部Bの拡大断面図と同様の拡大断面図を示す。
【0108】
第11実施形態に係る延焼防止シート20は、第7実施形態に係る延焼防止シート20の断熱シート80を備えず、ベースシート22の底面に断熱シート90を備えている。ただし、第11実施形態においても、第1実施形態の各種変形例と同様に、断熱シート90に代えて断熱シート82を用い、あるいは断熱シート90に加えて断熱シート80を備えることも可能である。断熱シート90は、ベースシート22の底面にベースシート22とほぼ同じ面積のシートでも良く、第1凹部30の対向部分に貫通孔を有するシートでも良く、また、ドーム状の壁部33の外形に相当する部分をくり抜いて貫通孔とし、ベースシート22の上面側(凸部21側)に備えるようにしても良い。以下、第7実施形態と異なるベースシート22について説明する。
【0109】
図21の一部Gの拡大図に示すように、ベースシート22は、シリコーンゴムに代表されるゴム状弾性体に限定されず、金属層91と樹脂層92とを積層したラミネート構造を有するシートでも良い。金属層91としては、アルミニウムまたはアルミニウム基合金を好適な例として挙げることができる。樹脂層92としては、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリカーボネートを好適な例として挙げることができる。また、かかるラミネート構造を有するベースシート22に代えて、樹脂層92のみのベースシート22を用いることもできる。
【0110】
3.その他の実施形態
本発明は、上述の各実施形態に限定されず、種々変形可能である。
【0111】
第5実施形態に係る延焼防止シート20において、膨張許容部60とその外周に配置される凸部21を同じ形態として、膨張許容部60内の複数個の凸部21の密度(密集の度合い)を、その外周に配置される複数個の凸部21の密度(密集の度合い)より低くしても良い。
【0112】
ネック部39およびネック部49は、延焼防止シート20が先端35からベースシート22に向けて加圧を受けた際、先端35をベースシート22側に下降させやすくするのに寄与するが、延焼防止シート20にとって必須の構成要素ではない。凸部21において、外側段差部36および内側段差部46の内の少なくとも外側段差部36を有することにより、先端35をドーム状の壁部33の径方向内側へと移動させやすくなるからである。
【0113】
第5実施形態に係る延焼防止シート20において、第1~第4実施形態および第6~第11実施形態における凸部21,28,29の少なくともいずれか一種類を形成することができる。また、第1~第11実施形態の凸部21,28,29の任意の2種以上をベースシート22上に形成しても良い。
【0114】
リブ71,72は、第6実施形態以外の実施形態に設けることもできる。また、リブ71,72は、延焼防止シート20の成形時にベースシート22の底面に形成することもでき、また、別体として成形し、ベースシート22の底面に固定しても良い。
【0115】
ベースシート22の上面であって凸部21,21aのない領域に、溝やドット状の凹部を形成しても良い。これらは、ベースシート22の表面積を増やしてベースシート22からの放熱性を高める効果をもたらす。
【0116】
断熱シート80は、1枚に限定されず、2枚以上で構成されていても良い。断熱シート82は、凸部21,28,29の天面31の大きさに限定されず、ドーム状の壁部33をも覆う大きさでも良い。断熱シート82は、第2凹部32の対向部分に貫通孔を有していても良い。
【0117】
延焼防止シート20の厚さ方向片面に、断熱シート80等を備える場合に、当該片面と反対側の面に、熱伝導性に優れたシートまたは熱硬化性樹脂シートを備えても良い。熱伝導性に優れたシートの一例としては、グラファイト製のシートを挙げることができる。グラファイト製のシートは、ベースシート22よりも大きくて、熱の放散性高めるようにするのが好ましい。一方、熱硬化性樹脂シートの一例としては、シリコーン樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂としては、800℃の高温にさらされても高焼結性を発揮でき、発泡の少ないものがより好ましい。
【0118】
上述した各実施形態および各変形例の構成要素は、互いに組み合わせ可能である限り、任意に組み合わせ可能である。
【0119】
延焼防止シート20は、自動車用のバッテリー1内のバッテリーセル10以外の熱源同士の間に挟んで使用しても良い。当該熱源としては、例えば、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品等の各種電子機器、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーを挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る延焼防止シートは、例えば、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品等の各種電子機器、自動車用のバッテリー、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリー等に利用できる。
【符号の説明】
【0121】
1・・・バッテリー、10・・・バッテリーセル(熱源の一例)、20・・・延焼防止シート、21,28,29・・・凸部、22・・・ベースシート、23・・・溝部(通気路の一例)、30・・・第1凹部、30a・・・空間、31・・・天面、32・・・第2凹部、33・・・壁部、34・・・平行部位、35・・・先端、36・・・外側段差部、37・・・厚肉部、38・・・延出部、39・・・ネック部、41・・・接続部、43・・・壁部、44・・・平行部位、46・・・内側段差部、49・・・ネック部、60・・・膨張を許容する領域、71,72・・・リブ、80,82,84,90,90a・・・断熱シート、80a・・・凹凸、91・・・金属層、92・・・樹脂層。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方から他方への延焼を防止するための延焼防止シートであって、
ベースシートと、
前記ベースシートの厚さ方向の一方の面に形成される1または複数個の凸部であってその高さ方向に弾性的に変形可能な凸部と、
前記ベースシートの前記一方の面と反対側の他方の面から前記凸部の天面までの間に配置されていて、前記凸部よりも断熱性の高い少なくとも1枚の断熱シートと、
を備え、
前記凸部は、その裏側に、前記ベースシート側に開口する第1凹部または前記ベースシートにて被覆される空間を備え、
前記凸部は、その外周面側に、前記ベースシートとの接続部から立ち上がるドーム状の壁部と前記凸部の先端との間にあって前記先端の径を前記ドーム状の壁部の径よりも小さくする少なくとも1つの外側段差部を備え、
前記凸部の先端は、前記先端の天面から前記ベースシートに向かって窪む第2凹部を備えることを特徴とする延焼防止シート。
【請求項2】
前記断熱シートは、前記ベースシートの前記一方の面側であって、前記凸部の隙間と対向するように前記凸部の天面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項3】
前記断熱シートは、1または複数個の前記凸部の天面に個別に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項4】
前記断熱シートは、前記ベースシートの前記他方の面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項5】
前記断熱シートは、前記凸部よりも耐熱性に優れ、粒状、針状若しくは繊維状の金属酸化物の不織布、または前記金属酸化物を含むシートであることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項6】
前記断熱シートは、シリカエアロゲルのシートまたはシリカエアロゲルを含むシートであることを特徴とする請求項5に記載の延焼防止シート。
【請求項7】
前記ベースシートは、金属層と樹脂層とのラミネート構造を有することを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項8】
前記ベースシートは、前記凸部の前記第1凹部または前記空間から前記ベースシートの外側へと通じる通気路を有することを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項9】
前記凸部の先端の前記裏面から前記ベースシートに向かって延出する柱状または筒状の延出部を、さらに備える請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項10】
前記外側段差部は、前記壁部から前記先端に向かう間に、前記ベースシートと平行になる平行部位を有することを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項11】
前記壁部は、前記ベースシートと前記壁部との接続部よりも前記外側段差部よりの位置において、前記第1凹部側または前記空間側に突出させた厚肉部を備えることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項12】
前記壁部と前記先端との間に、前記ベースシートと前記壁部との接続部の肉厚以下の肉厚のネック部を備えることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項13】
前記第2凹部は、前記先端の天面から前記外側段差部を超える長さに形成され、
前記先端および前記凸部は、それぞれ、前記第2凹部の外周囲に枠状に形成されており、
前記第1凹部または前記空間は、前記枠状の前記凸部の内側に形成されており、
前記凸部は、前記外側段差部に加えて、前記第2凹部側に、前記ベースシートとの接続部から立ち上がる壁部と前記凸部の先端との間にあって前記第2凹部を拡げる方向に形成される少なくとも1つの内側段差部を備えることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項14】
前記内側段差部は、前記壁部から前記先端に向かう間に、前記ベースシートと平行になる平行部位を有することを特徴とする請求項13に記載の延焼防止シート。
【請求項15】
前記断熱シートの外表面に、前記外表面以外の面粗さよりも大きな凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項16】
前記ベースシートの面内中央を含む領域に、前記凸部の前記先端から前記ベースシートに向かって熱源が膨張したときにその膨張を許容する領域を備えることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項17】
前記膨張を許容する領域は、前記ベースシートの厚さ方向に貫通する穴または当該厚さ方向に窪む第3凹部であり、
前記凸部は、前記穴または前記第3凹部の周囲に配置されていることを特徴とする請求項16に記載の延焼防止シート。
【請求項18】
前記ベースシートの前記凸部と反対側の面は、前記延焼防止シートを熱源の壁面に固定可能な平滑面であって、
当該平滑面は、前記延焼防止シートの表面の中で最も面粗さが小さいことを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項19】
前記ベースシートの前記他方の面に、前記凸部の変形を促進可能なリブを備えることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項20】
前記ベースシートおよび前記凸部は、主にシリコーンゴムから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の延焼防止シートと、熱源としての複数個のバッテリーセルと、を備えるバッテリーであって、
少なくとも1組の互いに隣り合う前記バッテリーセル同士の間に前記延焼防止シートを備えることを特徴とするバッテリー。
【請求項22】
前記延焼防止シートは、前記複数個の前記バッテリーセルを並べた列の中央に位置する少なくとも1つの前記バッテリーセルに前記凸部の先端を向けて配置されていることを特徴とする請求項21に記載のバッテリー。