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特開2024-6172アートフラワーおよびアートフラワーセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006172
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アートフラワーおよびアートフラワーセット
(51)【国際特許分類】
   A41G 1/00 20060101AFI20240110BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240110BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A41G1/00 M
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106817
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】522265877
【氏名又は名称】古畑 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】古畑 聡志
(72)【発明者】
【氏名】真子 孝
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA04
4H011BB18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光を照射することにより発光する発光層を有するアートフラワーを提供する。
【解決手段】本発明に係るアートフラワー10は、花びら11、葉12、および茎13の少なくともいずれかに発光層が形成されたアートフラワー10であって、発光層は、紫外光が照射されることにより発光して色を変化させる。発光層は、赤色、青色、および緑色の3色に変化、若しくは赤色、青色、および緑色のうち少なくとも2色の調合色に発光して色を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層が形成されたアートフラワーであって、前記発光層は、光を照射することにより発光することを特徴とするアートフラワー。
【請求項2】
前記発光層は、前記光を照射することにより発光して色を変化させることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項3】
前記発光層は、赤色、青色、および緑色の3色に変化、若しくは赤色、青色、および緑色のうち少なくとも2色の調合色に発光して色を変化させることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項4】
前記発光層は、塗材を用いて形成され、前記塗材は、顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項5】
前記塗材は、更にアモルファス酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項6】
前記塗材は、更に湿潤剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項7】
前記湿潤剤は、パープルオロ化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項8】
前記発光層は、前記塗材をスプレー状に吹き付けて塗布し形成することを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項9】
前記発光層とともに光触媒層が形成されることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項10】
前記光触媒層は、前記発光層の表面に形成されることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項11】
前記光触媒層は、酸化チタン光触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項12】
前記酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項13】
前記酸化チタン光触媒は、銅および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項14】
前記銅化合物は、酸化銅とすることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項15】
前記酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項16】
前記酸化チタン光触媒は、銀および/または銀化合物が配合されていることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項17】
前記銀化合物は、酸化銀とすることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項18】
前記酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含み、前記混合した光触媒に銀および/または銀化合物が配合されていることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項19】
前記光触媒層は、酸化チタン光触媒の分散液を用いて形成され、前記分散液は、アモルファス酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項20】
前記酸化チタン光触媒の分散液は、アナターゼ型酸化チタン光触媒の分散液であることを特徴とする請求項19に記載のアートフラワー。
【請求項21】
前記分散液は、更にアモルファスシリカを含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項22】
前記分散液は、更に湿潤剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項23】
前記湿潤剤は、パープルオロ化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項24】
前記分散液は、更にアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項25】
前記アルコールは、エタノール系のアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項26】
前記発光層および前記光触媒層は、透明または半透明となっていることを特徴とする請求項1に記載のアートフラワー。
【請求項27】
請求項1乃至請求項24の少なくともいずれか一項に記載のアートフラワーと、光を照射する光照射器と、を有することを特徴とするアートフラワーセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アートフラワーおよびアートフラワーセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、施設や店舗、住宅等において、人工観葉植物であるアートフラワーが利用されることが多くなっている。アートフラワーは、室内に華やかさを持たせて空間に彩りをもたらすためのものであり、昨今は、外観が生花に極めて近いものも多く、生花の代用品として広く活用されている。このようなアートフラワーは、例えば、特許文献1に開示された技術を参照することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3027786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は、例えば、発光するような斬新なアートフラワーの提供が望まれていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、光を照射することにより発光する発光層を有するアートフラワーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るアートフラワーは、発光層が形成されたアートフラワーであって、前記発光層は、光を照射することにより発光することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、上記の構成により、光を照射することにより発光する発光層を有するアートフラワーを提供することができる。
前記発光層は、前記光を照射することにより発光して色を変化させることができる。
【0008】
前記発光層は、赤色、青色、および緑色の3色に変化、若しくは赤色、青色、および緑色のうち少なくとも2色の調合色に発光して色を変化させることができる。
【0009】
前記発光層は、塗材を用いて形成され、前記塗材は、顔料を含み、増粘剤を含まないことにより、低粘度とすることができる。これにより、塗材をアートフラワーに塗布し易くすることができる。すなわち、塗材をスプレー状に吹き付けてアートフラワーに塗布し発光層を形成する場合にあっては、塗布の仕上がりや塗布効率を向上させることが可能となるが、塗材は、低粘度のため、塗布の仕上がりや塗布効率を更に向上させることができる。
【0010】
前記塗材は、更にアモルファス酸化チタンを含むことにより、更なる低粘度化と結合性の向上を図ることができる。これにより、塗材がアートフラワー上で斑なくスムーズに塗布されて発光層を平滑に被膜化することができ、密着性、定着性も高めることができる。
【0011】
前記塗材は、更に湿潤剤を含むことにより、レベリング性が高まり、発光層を平滑に被膜化することができ、密着性、定着性も高めて成膜性を向上させることができ、発光層の透明性と仕上りの質感を向上させることができる。
【0012】
前記湿潤剤は、パープルオロ化合物を含むことができ、発光層の透明性と仕上りの質感を更に向上させることができる。
【0013】
前記発光層とともに光触媒層が形成されることにより、抗ウイルス・抗菌、消臭、空気浄化等の光触媒効果を有するアートフラワーを提供することができる。
【0014】
前記光触媒層は、前記発光層の表面に形成されることにより、光触媒層を直接空気に接触させることができ、光触媒効果を向上させることができる。
【0015】
前記光触媒層は、酸化チタン光触媒を含むことにより、可視光や紫外線に応答して光触媒効果を発揮することができる。
【0016】
前記酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒を含むことにより、紫外線の応答性を有しながら可視光にも応答することができ、屋内環境下においても光触媒効果を得ることが可能となる。
【0017】
前記酸化チタン光触媒は、銅および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を含むことにより、紫外線の応答性を有しながら可視光の応答性を更に向上させることができ、暗所下でも光触媒効果を発揮することができる。
【0018】
前記銅化合物は、酸化銅とすることにより、可視光の応答性を更に一層向上させることができ、暗所下における光触媒効果を更に向上させることができる。
【0019】
前記酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含むことにより、紫外線の応答性を有しながら可視光の応答性を更に向上させることができ、暗所下でも光触媒効果を発揮することができる。
【0020】
前記酸化チタン光触媒は、銀および/または銀化合物が配合されていることにより、抗ウイルス・抗菌力がさらに高まり、暗所下でも抗ウイルス・抗菌力を発揮することができる。
【0021】
前記銀化合物は、酸化銀とすることにより、暗所下における光触媒効果を更に向上させることができる。
【0022】
前記酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含み、前記混合した光触媒に銀および/または銀化合物が配合されていることにより、紫外線の応答性を有しながら可視光の応答性を更に一層向上させることができ、暗所下でも光触媒効果を更に発揮することができる。
【0023】
前記光触媒層は、酸化チタン光触媒の分散液を用いて形成され、前記分散液は、アモルファス酸化チタンを含むことにより、分散液の膜結合を高めて密着性、定着性を高めることができる。また、前記分散液は、アモルファス酸化チタンを含むことにより、低粘度化も図ることができる。前記酸化チタン光触媒の分散液は、アナターゼ型酸化チタン光触媒の分散液である。
【0024】
前記分散液は、更にアモルファスシリカを含むことにより、密着性、定着性を更に高めることができる。
【0025】
前記分散液は、更に湿潤剤を含むことにより、分散液がレベリングされて成膜性を向上させることができる。これにより、成膜性の向上、密着性の向上、仕上りの向上が図られて光触媒層が平滑に被膜化されることにより、光触媒層の透明性と仕上りの質感を向上させることができる。
【0026】
前記湿潤剤は、パープルオロ化合物を含むことができ、光触媒層の透明性と仕上りの質感を更に向上させることができる。
【0027】
前記分散液は、更にアルコールを含むことにより、分散液を微霧化・付着性を向上させて光触媒層の透明性と仕上りの質感を更に一層向上させることができる。
前記アルコールは、エタノール系のアルコールを含むことができる。
【0028】
前記発光層および前記光触媒層は、透明または半透明となっていることにより、アートフラワーの美観を損なうことを防止することができる。
【0029】
上記目的を達成するために、本発明に係るアートフラワーセットは、上記のアートフラワーと、光を照射する光照射器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、光を照射することにより発光する発光層を有するアートフラワーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るアートフラワーセットの全体構成を示す図である。
図2】同アートフラワーセットにおけるアートフラワーの発光層および光触媒層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係るアートフラワーセット1について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアートフラワーセット1の全体構成を示す図、図2は、同アートフラワーセット1におけるアートフラワー10の発光層20および光触媒層30を示す図である。
【0033】
図1および図2を参照して本発明のアートフラワーセット1の概要を説明すると、アートフラワーセット1は、アートフラワー10(フォトクロミックフラワー10)と、光を照射する光照射器2より詳しくは紫外光を照射する光照射器2と、を有している。すなわち、アートフラワー10は、花びら11、葉12、および茎13(正確には、花びら11、葉12、および茎13を模擬した物)の少なくともいずれかに発光層20が形成されたアートフラワー10であって、発光層20は、屋内の環境下で光照射器2により紫外光を照射することにより発光して色を変化させることができる(アートフラワー10は、造花である)。紫外光照射器2は、例えば、ケミカルライトおよび/またはブラックライトとすることができる。アートフラワー10の花びら11、葉12、および茎13は、例えば、樹脂素材により形成することができる。花びら11は、白色の花びら11とすることができる。
【0034】
[発光層の構成]
発光層20は、明所若しくは暗所の光環境下で、紫外光を照射することにより、発光することができる。より詳しくは、発光層20は、紫外光を照射することにより、赤色、青色、および緑色の3原色に変化、若しくは赤色、青色、および緑色のうち少なくとも2色の調合色に発光して色を変化させることができる(発光層20は、通常の光では無色透明で色の変化はしない)。
すなわち、アートフラワー10は、発光層20を有することで、24時間機能するアートフラワー10となり、見て楽しむイルミネーション化の要素も付与され、更に存在感を高めることができる。また、アートフラワー10は、明るい昼間でも、紫外光を照射することにより、発光して色が浮き上がり、周囲が暗所になるほど鮮明な色となる。
つまり、従来のアートフラワーは、暗所下や薄暗い室内では、鑑賞性がなくなりその有用性が低下することとなるが、暗所下や薄暗い室内において、紫外光照射で発光して鮮やかな色に変化するアートフラワー10であれば、鑑賞性が高まりインテリアとしてその有用性もさらに高まる。特に、単純なスポットライトと違って、紫外光照射でアートフラワー10の白い花びら11が特有の色に発光して浮き上がり、さらにその発光色が場所や用途に応じて選べれば、その鑑賞性、有用性はさらに高まるものと考えられる。
【0035】
発光層20は、塗材を用いて形成することができる。塗材は、顔料を含むことが好ましく、更に、顔料は、水性の発光顔料とすることが好ましい(本実施形態の塗材は、発光顔料を主成分とする顔料タイプである)。水性の発光顔料は、紫外光を照射することにより発光する。また、塗材は、増粘剤を含まないことが好ましい。つまり、塗材は、通常、顔料、増粘剤(添加剤)、合成樹脂を混合して製造されるが、増粘剤を混合せず増粘剤が除かれた構成となっている。更に、本発明の塗材は、水の含有量が50wt%以上となっている。ここで、本実施形態において、顔料とは、例えば着色に用いる粒子が水に不溶で混ざり合っており、接着性を有する状態のものを言う。発光層20は、透明または半透明となっている。
【0036】
塗材は、更に結合剤としてのアモルファス酸化チタンより詳しくはアモルファス酸化チタン水和物を含むことが好ましい。アモルファス酸化チタン水和物は、無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物とすることが好ましい。より詳しくは、アモルファス酸化チタン水和物は、ペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物とすることが好ましい。アモルファス酸化チタンは、例えばつなぎ剤(バインダー)としての機能を果たす(後述するアナターゼ型酸化チタン光触媒は、例えばペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物を窯で煮詰めて結晶化させて生成される)。
【0037】
塗材は、更に湿潤剤を含むことが好ましい(塗材は、顔料、アモルファス酸化チタン水和物、湿潤剤を混合して得られる)。
湿潤剤は、界面活性剤とすることができ、フッ素系のパープルオロ化合物を含むことが好ましい。
【0038】
ここで、発光層20は、花びら11、葉12、および茎13の少なくともいずれかに塗材をスプレー状に吹き付けて塗布し形成することができる。発光層20への塗材の吹き付けはスプレーガンを用いて行うことができる。スプレーガンのノズル口径は、0.8~1.2mmとすることが好ましい。
【0039】
すなわち、塗材をスプレー状に吹き付けて塗布する塗布方法は、仕上りや塗布効率、設備投資の観点から優れた塗布方法となるが、塗材を水性の発光塗料とした場合には、粘度が高く、スプレーガンから塗材が噴射しにくくスムーズな吐出に至らず、詰まりやすい状態となる(本実施形態にあっては、水性塗料とは、顔料や樹脂や増粘剤の細かい粒子が水に混ぜ合わさっている状態のものを言う)。
【0040】
これに対し、上記の如く塗材を水性の発光顔料とした場合には、粘度が低くスプレーノズルの詰まりが改善されスムーズな吐出とすることができる。更に上記のようにアモルファス酸化チタン水和物を塗材に加えることで、塗材の粘度を更に下げることができ、スプレーノズルの詰まりを更に改善することができる。
【0041】
なお、アートフラワー10の素材は上記の如く樹脂であり、そもそも水分を弾いて寄せ付けにくい撥水性を有するため、スプレー粒子がレベリングせずに弾かれて、粒子のままで付着する状態となることがある。このため、本来の無色透明の仕上りとはならず、意匠性を低下させることがあった。そこで、塗材には、水性の発光顔料の粘性を低下させると同時に、撥水性のアートフラワーの樹脂素材上でもスプレー粒子がレベリングする成膜性を持たせることが求められた。
【0042】
このため、高い結合性を持つ低粘度の無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物に着目し、これを水性の発光顔料と組み合わせるとともに、更に湿潤剤を組合わせて、低粘度化と成膜性を向上させた塗材とすることとした。
【0043】
これにより、アートフラワー10の樹脂素材上で、スプレー霧がレベリングして平滑に被膜化することが可能となった。
【0044】
[光触媒層の構成]
光触媒層30は、発光層20の表面21に形成されている。すなわち、アートフラワー10上に塗材で発光層20を形成し、発光層20の上に光触媒コート剤で光触媒層30を形成する二層コート方式としている。光触媒層30のアートフラワー10へのコートも上記同様にスプレー状に吹き付けて行っている(スプレーガンのノズル口径は、例えば0.5mm程度)。
【0045】
光触媒層30は、酸化チタン光触媒を含むことが好ましい。光触媒層30は、透明または半透明となっている。光触媒層30は、光のない暗所下や薄暗い室内においても光触媒作用を反応活性させることができる。光触媒は、反応活性するためには通常5000lux程度の高照度が必要となるが、本発明の光触媒層30は、500lux以下の低照度下でも反応活性することができる。
【0046】
酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒を含むことが好ましい。窒素ドープ酸化チタン光触媒は、紫外線と、可視光下で反応活性することができる。
【0047】
酸化チタン光触媒は、更に銅(Cu)および/または銅化合物が助触媒として担持された銅担持酸化チタン光触媒を含むことが好ましい。
銅化合物は、酸化銅とすることが好ましい。
【0048】
すなわち、酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含むことが好ましい。つまり、銅(Cu)および/または銅化合物の分散液は、配合用分散液としての調達が難しく、予め銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒と窒素ドープ酸化チタン光触媒を混合することで容易に銅(Cu)および/または銅化合物が配合された酸化チタン光触媒を製造することができる。
【0049】
つまり、酸化チタン光触媒の光触媒層30は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒の分散液と銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒の分散液を混合した光触媒の分散液を含む光触媒コート剤を用いて形成することができる。
【0050】
酸化チタン光触媒は、更に銀(Ag)および/または銀化合物が配合されていることが好ましい。
銀化合物は、酸化銀とすることが好ましい。
すなわち、酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含み、これら混合した光触媒に銀(Ag)および/または銀化合物が配合されていることが好ましい。すなわち、酸化チタン光触媒は、酸化チタン、銅、銀がハイブリッド化された酸化チタン光触媒である。
【0051】
つまり、酸化チタン光触媒の光触媒層30は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒の分散液と銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒の分散液と銀(Ag)および/または銀化合物の分散液を混合した光触媒の分散液を含む光触媒コート剤を用いて形成することができる。
【0052】
光触媒層は、上記のように酸化チタン光触媒の分散液を用いて形成され、分散液は、結合剤としてのアモルファス酸化チタンより詳しくはアモルファス酸化チタン水和物を含むことが好ましい。アモルファス酸化チタン水和物は、無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物とすることが好ましい。より詳しくは、アモルファス酸化チタン水和物は、ペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物とすることが好ましい。なお、酸化チタン光触媒の分散液は、例えばアナターゼ型酸化チタン光触媒の分散液とすることができる。
【0053】
分散液は、更に結合剤としてのアモルファスシリカを含むことが好ましい。分散液は、更に結合硬化剤としての無機バインダーを含むことが好ましい。分散液は、更に湿潤剤を含むことが好ましい。湿潤剤は、界面活性剤とすることができ、フッ素系のパープルオロ化合物を含むことが好ましい。分散液は、更にアルコールを含むことが好ましい。アルコールは、エタノール系のアルコールを含むことが好ましい(分散液は、上記した光触媒の分散液にアモルファス酸化チタン、アモルファスシリカ、無機バインダー、湿潤剤、アルコールが加えられている)。
【0054】
以下、本発明の実施例を示す。
[実施例1]
アートフラワー10上に発光層20を形成するための塗材を、水性の発光塗料として塗布を試みた。試料とするアートフラワー10の種類は胡蝶蘭の造花とし、樹脂素材とした。
塗布箇所は白い花びら部11とし、塗布するスプレーガンはノズル口径1.0mmで、塗布量はアートフラワー10の単位面積当たり15cc/mを目安とした。
【0055】
水性発光塗料では、粘度が高く含有量も多すぎるため、スプレーガンの小さなノズル口径では塗料が出にくく、詰まりやすい状態で吐出量の安定が確保できない状態であった。
【0056】
[実施例2]
アートフラワー10上に発光層20を形成するための塗材を水性の発光顔料として塗布を試みた。試料とするアートフラワー10の種類は胡蝶蘭の造花とし、樹脂素材とした。塗布箇所は白い花びら部11とし、塗布するスプレーガンはノズル口径1.0mmで、塗布量はアートフラワー10の単位面積当たり15cc/mを目安とした。粘度の低い水性の発光顔料で試すことにより、詰まりが改善され吐出量の安定が確保できる状態となった。
【0057】
[実施例3]
アートフラワー10上に発光層20を形成するための塗材を水性の発光顔料と無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物を組合わせて塗布を試みた。
【0058】
まず、任意の混合比で、水性の発光顔料と無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物が問題なく混合するかの確認を行った。
【0059】
無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物は、ペーハーが中性に近いこともあり、水性の発光顔料と混合しても凝固、分離等の性状変化は認められなかった。
【0060】
そこで、水性の発光顔料と無機質の不活性アモルファス酸化チタンより詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物の混合比を体積比で50:50でアートフラワー10上での塗布を試みた。
【0061】
試料とするアートフラワー10の種類は胡蝶蘭の造花とし、樹脂素材とした。塗布箇所は白い花びら部11とし、塗布するスプレーガンはノズル口径1.0mmで、塗布量はアートフラワー10の単位面積当たり15cc/mを目安とした。
【0062】
その結果、塗材の粘度も下がり、吐出状態も安定してスムーズな吐出であった。
ただし、塗布後の乾燥膜を紫外光照射で確認したところ、発光力がやや弱く、鮮やかな色が出にくい状態であった。
【0063】
次に、水性の発光顔料と無機質のアモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物の混合比を体積比で80:20~60:40より詳しくは70:30でアートフラワー10上での塗布を試みたところ、吐出状態も安定してスムーズな吐出は確保されていた。また、塗布後の乾燥膜は発光力が確保されており、鮮やかな色が浮かび上がる状態となった。塗材としての水性の発光顔料と無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物の混合比を体積比で、80:20~60:40より詳しくは70:30とすることとした。
【0064】
[実施例4]
アートフラワー10上に発光層20を形成するための塗材を水性の発光顔料、無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物、および湿潤剤を添加して塗布を試みた。水性の発光顔料と無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物の混合比を体積比で、80:20~60:40より詳しくは70:30とし、湿潤剤の添加量は、塗材における重量割合で0.06~0.1wt%とした(すなわち、水性の発光顔料と無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物の重量割合が99.04~99.9wt%、湿潤剤の重量割合が0.06~0.1wt%)。
【0065】
試料とするアートフラワー10の種類は胡蝶蘭の造花とし、樹脂素材とした。塗布箇所は白い花びら部11とし、塗布するスプレーガンはノズル口径1.0mmで、塗布量はアートフラワー10の単位面積当たり15cc/mを目安とした。
【0066】
その結果、アートフラワー10の樹脂素材上で、スプレー霧が微粒子でもレベリングして平滑に成膜することが可能となった。これにより、発光層20が無色透明の仕上りとなり、アートフラワー10の意匠性を向上させることができた。
【0067】
[実施例5]
実施例4において発光層20が表面形成されてなるアートフラワー10上に光触媒コート剤を塗布した。光触媒コート剤の性能には、低照度下でこれまでにない高感度で反応活性することと、強い抗ウイルス力、抗菌力を持つことを求めた。
【0068】
実施例5で使用する暗所抗菌型光触媒コート剤は、可視光下で反応活性する窒素ドープ酸化チタン光触媒の分散液に、可視光の反応感度を高める助触媒として、酸化銅が担持された銅担持酸化チタン光触媒の分散液を組合わせたものである。
【0069】
また、実施例5の暗所抗菌型光触媒コート剤は、光触媒が働かない暗所下での抗ウイルス、抗菌力をさらに高める意図で、酸化銀を配合した。
【0070】
これら光触媒の分散液を結合膜にするための無機バインダーには、無機質の不活性アモルファス酸化チタン水和物より詳しくはペルオキソチタン酸系アモルファス酸化チタン水和物とアモルファスシリカを採用した。
【0071】
また、スプレー霧の表面張力を下げて微霧化させるため、光触媒コート剤への分散媒としてアルコールを配合している。これにより、仕上がりの緻密さと膜密度を向上させることができる。
【0072】
コート剤中に配合されるアルコールの体積割合は、上記の効果が得られる15~25%の範囲とした。15%未満の濃度では仕上がりの緻密さと膜密度向上にはつながらず、25%を超えた濃度は光触媒コート剤の安定性を損なうこととなる。使用するアルコールは、エタノール製剤とした。
【0073】
加えて、光触媒コート剤には、スプレー霧がレベリングして成膜しやすいように、湿潤剤を添加した。湿潤材はフッ素系のパープルオロ化合物とした。湿潤剤を添加することにより、樹脂素材であるアートフラワー10上に塗布したときの成膜性を高め、塗膜の透明性と仕上りの質感を向上させることができる。
【0074】
発光層20上に塗布される暗所抗菌型光触媒コート剤は、スプレーコートにより発光層20上に塗布された際、スプレー霧が乾燥していく過程でレベリングされ、完全に粒状感がなくなった状態で発光層20上に成膜された。暗所抗菌型光触媒コート剤を塗布するスプレーガンはノズル口径0.5mmで、塗布量はアートフラワーの単位面積当たり30cc/mを目安とした。
【0075】
成膜性の点では、薄膜で平滑な透明クリアの光触媒膜30を形成して、その塗膜の意匠性はアートフラワーの素材感を損なわないものであった。更に、発光層20の上に成膜される光触媒層30は、光透過率が95%以上となるため、発光の度合い、色合いも低下させず、かつ素材の意匠性も低下させず、アートフラワー10の色変化を鮮やかに再現するものであった。
【0076】
この可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒コート剤は、新型コロナウイルスをはじめとするウイルス不活化試験や細菌不活化試験等が、すでに試験機関より試験済であり、そのエビデンスも充実している。
【0077】
[実施例6]
以下、実施例5における可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒塗膜の性能を以下に示す。
【0078】
試験方法は、光触媒の根本的性能となる酸化分解力を、有機成分の赤インクで褪色試験することとした。資料、塗布方法、試験方法は以下のとおりである。
(1)試料:暗所抗菌型光触媒をスプレー塗布した半磁気タイル(10×10cm)
(2)塗布方法:ノズル口径0.5mmのスプレーガンで、塗布量はm当り約30ccとなるよう往復十字塗りで重ね塗りした。
(3)試験方法:試料50倍希釈の赤インク(パイロット社製)を滴下し、乾燥後、LED照度400lux下で褪色時間を測った。
【表1】
【0079】
暗所抗菌型光触媒塗布タイルは、50分後は目視で赤インクの残渣が認められなくなった。暗所抗菌型光触媒塗膜は、LED400luxの低照度下でも、光触媒膜表面に活性酸素を発現させて、有機成分の赤インクを酸化分解して消滅させることが確認された。
【0080】
以上のことから、この暗所抗菌型光触媒が塗布されたアートフラワー10は、優れた分解性能を持つことが示され、実際の屋内光環境においても、抗ウイルス、抗菌、消臭、空気清浄化で機能すると考えられる。
【0081】
[実施例7]
次に、実施例5の可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒が塗布された胡蝶蘭の造花への菌類の付着状態の実測、検証結果を以下に示す。
【0082】
未塗布と光触媒塗布の胡蝶蘭の花びら部11で、付着菌類数を実測して、光触媒塗膜の抗菌力持続性を検証した。試験方法、試験試料、測定環境、測定機器は以下のとおりである。
(1)試験方法:ATP法による付着菌類の数測定
(2)試験試料:スプレー塗布した胡蝶蘭花びら/未塗布胡蝶蘭花びら(約50cm)
(3)測定環境:通常使用の室内に設置、LED照明点灯時の花びらへの照度:500lux
(4)測定機器:ルミテスタースマート(キッコーマン社製)…ルミテスターは検体表面のすべての菌類を検出します。
【表2】
【0083】
上記試験からわかるように、暗所抗菌型光触媒コート剤が塗布されたアートフラワー10は、500luxの照明下や暗所が混在する通常の室内環境においても、菌類の増殖が抑えられている。検出数値はほぼ菌類と判定され、光触媒の有機物分解作用により、暗所抗菌型光触媒が塗布された面が未塗布面に較べて、明らかに抗菌効果が認められる。ルミテスターの検出数値が低い程、菌類の存在が少ないといえ、この暗所抗菌型光触媒をアートフラワー10に塗布した場合も、高い清潔維持性と抗菌力維持をもつと考えられる。
【0084】
[実施例8]
次に、実施例5の可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒膜の酸化分解力が、ウイルスに対して、どの程度の抗ウイルス力を有するかを試験、確認した。
【0085】
以下に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するウイルス不活化試験の結果を示す。試験試料、試験ウイルス、試験方法、使用光源、試験期間は以下の通りである。
(1)試験試料:暗所抗菌型光触媒が塗布されたガラス(5×5cm)
未コートガラス(5×5cm)
(2)試験ウイルス:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)
(3)試験方法:ISO 18184及びISO 21702を参考
(4)使用光源:可視光1000(lux)
(5)試験機関:(株)食環境衛生研究所
【表3】
【表4】
【0086】
上記試験から、この暗所抗菌型、可視光酸化チタン光触媒膜は、新型コロナウイルスを99.9%以上不活化することが実証された。
【0087】
更に、光触媒が働かない暗所下においても、同等の不活化力が実証された。
これにより、この暗所抗菌型光触媒コート剤が塗布されたアートフラワー10は、新型コロナウイルスに対しても不活化力を有していると考えられる。また、光触媒が働かない暗所下においても、抗ウイルス力は持続することが明らかとなった。
【0088】
[実施例9]
次に、実施例5の可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒膜の酸化分解力が、細菌に対して、どの程度の抗菌力を有するかを試験、確認した。
【0089】
以下に、黄色ブドウ球菌に対する細菌不活化試験の結果を記す。試験試料、試験細菌、試験方法、使用光源、試験機関は、以下のとおりである。
(1)試験試料:暗所抗菌型光触媒が塗布されたスライドガラス、未コートスライド
ガラス
(2)試験細菌:黄色ブドウ球菌
(3)試験方法:1.各接種菌液100μLをスライドガラス上に30滴ずつ接種
2.乾燥防止のためラップで保護し、蛍光灯照射下で6時間静置
3.6時間経過後にガラス表面を拭き取り、500μLの生理食塩水へ
懸濁
4.懸濁100μLを寒天培地に接種、35℃、24時間培養後生菌数をカウント
各検討は3重測定にて実施
(4)使用光源:紫外線300μW
(5)試験機関:信州大学医学部 臨床検査部
【表5】
【0090】
上記試験から、この可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒膜は、紫外線にも反応活性して、6間後に黄色ブドウ球菌を99.9%以上不活化することが実証された。
【0091】
更に、誤差がないか3度にわたる試験でも、同様の高い滅菌率であった。これにより、この暗所抗菌型光触媒膜は、紫外光を照射しても、細菌に対して不活化させる抗菌力を有していることが確認された。
【0092】
[実施例10]
次に、実施例5の可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒膜の酸化分解力が、細菌に対して、どの程度の抗菌力を有するかを試験、確認した。照明照度をさらに下げた状態で、大腸菌に対する細菌不活化試験の結果を下記に示す。試験試料、試験細菌、試験方法、使用光源、試験機関は、以下の通りである。
(1)試験試料:暗所抗菌型光触媒が塗布されたガラス(5×5cm)
(2)試験細菌:大腸菌
(3)試験方法:1.試料のガラス片に、一定数の細菌(液量100μL)を落とした。
2.室温(25℃)で0、1、3時間、可視光及び暗所で反応させた。
3.各時間毎に試験片上の生理食塩水を洗い出し、標準寒天培地と混釈
した。
4.15時間、37℃培養後コロニーカウントを行った。
(4)使用光源:可視光200lux(10w蛍光灯、距離40cm)
(5)試験機関:(財)佐賀県環境化学検査協会
【表6】
【0093】
上記試験から、この可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒膜は、200luxの低照度下でも、3時間後に大腸菌を99%以上不活化することが実証された。
【0094】
更に、光触媒が働かない暗所下においても、照明下と同等の抗菌力が実証された。ただし、抗菌スピードは照明下の方が早い。
【0095】
これにより、この暗所抗菌型酸化チタン光触媒膜は、実環境の低照度下でも、細菌に対して不活化させる強い抗菌力を有していることが確認された。更に、光触媒が働かない暗所下においても、抗菌力が持続するとことが明らかとなった。
【0096】
[実施例11]
次に、抗菌製品技術協議会のSIAAマークを取得するために、カケンテストセンターへ試験依頼された商材のケースを参考として示す。試験試料、試験細菌、試験方法、試験機関は、以下の通りである。
(1)試験試料:実施例5の暗所抗菌型光触媒が塗布されたABS樹脂板(5×5cm)
(2)試験細菌:黄色ブドウ球菌、大腸菌
(3)試験方法:SIAA持続性基準 前処理A:耐水処理/前処理B:耐候処理
(4)試験機関:一般財団法人カケンテストセンター
【表7】
【0097】
SIAAの抗菌製品の合格基準は、抗菌活性値が2.0以上となっています。このことから、暗所抗菌型光触媒が塗布されたアートフラワー10は、実環境下で昼間、夜間を問わず、強い抗菌力が発揮されることが確認された。
【0098】
[実施例12]
次に、実施例5の可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒膜の酸化分解力が、どの程度の消臭力を有するかを試験、確認した。トイレ臭成分に代表される、アンモニア、トルエチルアミン、硫化水素における消臭試験の結果を以下に示す。試験試料、試験ガス、試験方法、使用光源、試験機関は以下の通りである。
(1)試験試料:実施例5の暗所抗菌型光触媒が塗布されたタイル(10×10cm)
(2)試験ガス:アンモニア、トルエチルアミン、硫化水素
(3)試験方法:5l容器にそれぞれ試験するガスを入れ、経時的に残留ガス濃度を検知管にて測定。
(4)使用光源:タイル面の照度が350luxとなるようLED照射
(5)試験機関:(社)佐賀県環境検査協会
【表8】
【0099】
上記試験から、実施例5の可視光応答酸化チタンの暗所抗菌型光触媒膜は、350luxの低照度下でも、光触媒の酸化分解力で消臭することが実証された。
【0100】
これにより、実施例5の暗所抗菌型光触媒膜は、実環境の低照度下でも、有害ガスを分解、消滅させる消臭力を有していることが確認された。
【0101】
以上説明したように本発明によれば、上記の構成により、光を照射することにより発光する発光層20を有するアートフラワー10を提供することができる。より詳しくは、本発明によれば、光を照射することにより発光して色を変化させる発光層20を有するアートフラワー10を提供することができる。これにより、光のない暗所下や薄暗い室内においてもアートフラワー10の人工観葉植物としての存在価値を高めることができる。
【0102】
また、発光層20は、塗材を用いて形成され、塗材は、顔料を含み、増粘剤を含まないことにより、低粘度とすることができる。これにより、塗材をアートフラワー10に塗布し易くすることができる。すなわち、塗材をスプレー状に吹き付けてアートフラワー10に塗布し発光層20を形成する場合にあっては、塗布の仕上がりや塗布効率を向上させることが可能となるが、塗材は、低粘度のため、塗布の仕上がりや塗布効率を更に向上させることができる。
【0103】
更に、塗材は、更にアモルファス酸化チタンを含むことにより、更なる低粘度化と結合性の向上を図ることができる。これにより、塗材がアートフラワー10上で斑なくスムーズに塗布されて発光層20を平滑に被膜化することができ、密着性、定着性も高めることができる。
【0104】
更にまた、塗材は、更に湿潤剤を含むことにより、レベリング性が高まり、発光層を平滑に被膜化することができ、密着性、定着性も高めて成膜性を向上させることができ、発光層20の透明性と仕上りの質感を向上させることができる。
【0105】
また更に、湿潤剤は、パープルオロ化合物を含むことにより、発光層の透明性と仕上りの質感を更に向上させることができる。
【0106】
また、発光層20とともに光触媒層30が形成されることにより、抗ウイルス・抗菌、消臭、空気浄化等の光触媒効果を有するアートフラワー10を提供することができる。
【0107】
更に、光触媒層30は、発光層20の表面21に形成されることにより、光触媒層30を直接空気に接触させることができ、光触媒効果を向上させることができる。
【0108】
更にまた、光触媒層30は、酸化チタン光触媒を含むことにより、可視光や紫外線に応答して光触媒効果を発揮することができる。
【0109】
また更に、酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒を含むことにより、紫外線の応答性を有しながら可視光にも応答することができ、屋内環境下においても光触媒効果を得ることが可能となる。
【0110】
また、酸化チタン光触媒は、銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を含むことにより、紫外線の応答性を有しながら可視光の応答性を更に向上させることができ、暗所下でも光触媒効果を発揮することができる。
【0111】
更に、銅化合物は、酸化銅とすることにより、可視光の応答性を更に一層向上させることができ、暗所下における光触媒効果を更に向上させることができる。
【0112】
更にまた、酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含むことにより、紫外線の応答性を有しながら可視光の応答性を更に向上させることができ、暗所下でも光触媒効果を発揮することができる。
【0113】
また更に、酸化チタン光触媒は、銀(Ag)および/または銀化合物が配合されていることにより、抗ウイルス・抗菌力がさらに高まり、暗所下でも抗ウイルス・抗菌力を発揮することができる。
【0114】
また、銀化合物は、酸化銀とすることにより、可視光の応答性を更に一層向上させることができ、暗所下における光触媒効果を更に向上させることができる。
【0115】
更に、酸化チタン光触媒は、窒素および/または窒素化合物がドープされた窒素ドープ酸化チタン光触媒と銅(Cu)および/または銅化合物が担持された銅担持酸化チタン光触媒を混合した光触媒を含み、混合した光触媒に銀(Ag)および/または銀化合物が配合されていることにより、紫外線の応答性を有しながら可視光の応答性を更に一層向上させることができ、暗所下でも抗ウイルス・抗菌効果を更に発揮することができる。
【0116】
更にまた、光触媒層30は、酸化チタン光触媒の分散液を用いて形成され、分散液は、アモルファス酸化チタンを含むことにより、分散液の膜結合を高めて密着性、定着性を高めることができる。また、前記分散液は、アモルファス酸化チタンを含むことにより、低粘度化も図ることができる。
【0117】
また更に、分散液は、更にアモルファスシリカを含むことにより、密着性、定着性を更に高めることができる。
【0118】
また、分散液は、更に湿潤剤を含むことにより、分散液がレベリングされて成膜性を向上させることができる。これにより、成膜性の向上、密着性の向上、仕上りの向上が図られて光触媒層が平滑に被膜化されることにより、光触媒層の透明性と仕上りの質感を向上させることができる。
【0119】
更に、湿潤剤は、パープルオロ化合物を含むことができ、光触媒層の透明性と仕上りの質感を更に向上させることができる。
【0120】
更にまた、分散液は、更にアルコールを含むことにより、分散液を微霧化・付着性を向上させて光触媒層の透明性と仕上りの質感を更に一層向上させることができる。
【0121】
また更に、発光層20および光触媒層30は、透明または半透明であることにより、アートフラワー10の美観を損なうことを防止することができる。
【0122】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0123】
1: アートフラワーセット
2:紫外光照射器
10:アートフラワー
11:花びら
12:葉
13:茎
20:発光層
21:表面
30:光触媒層
図1
図2