(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006173
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240110BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240110BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H05K7/20 B
H05K9/00 U
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106818
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】露木 康博
(72)【発明者】
【氏名】河合 義夫
(72)【発明者】
【氏名】難波 明博
【テーマコード(参考)】
5E321
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E321AA17
5E321AA21
5E321AA41
5E321BB60
5E321CC30
5E321GG05
5E321GG09
5E321GH03
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB01
5E322AB06
5E322EA10
5E322EA11
5E322FA04
5E322FA06
5F136BC05
5F136FA51
5F136FA63
5F136FA81
(57)【要約】
【課題】本開示は、輻射ノイズを抑制しつつ、電子部品の放熱性を向上させることが可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】隣接して配置されて配線115で接続された第1および第2の電子部品111,112を含む回路基板110と、その回路基板110を収容するハウジング120と、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aとハウジング120との間に配置される放熱部材130とを備える電子制御装置。放熱部材130は、ハウジング120に対向する第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aに跨って設けられ、配線115は、放熱部材130よりも誘電率が低い低誘電率媒体170によって覆われている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して配置されて配線で接続された第1および第2の電子部品を含む回路基板と、該回路基板を収容するハウジングと、前記第1および第2の電子部品の放熱面と前記ハウジングとの間に配置される放熱部材とを備える電子制御装置であって、
前記放熱部材は、前記ハウジングに対向する前記第1および第2の電子部品の前記放熱面に跨って設けられ、
前記配線は、前記放熱部材よりも誘電率が低い低誘電率媒体によって覆われていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記第1の電子部品の前記放熱面に対向する第1の凸部と、前記第2の電子部品の前記放熱面に対向する第2の凸部と、前記第1および第2の凸部の間に設けられて前記配線に対向する凹部と、を有し、
前記放熱部材は、前記第1の凸部、前記凹部、および前記第2の凸部の形状に倣う形状を有し、前記回路基板、前記第1の電子部品、および前記第2の電子部品とともに、前記配線の周囲に前記低誘電率媒体によって満たされた空間を画定することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記第1の凸部の頂面において前記凹部に隣接する端縁は、前記第1の電子部品の前記放熱面において前記配線に隣接する端縁よりも、前記第1の電子部品の前記放熱面の中央側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記第2の凸部の頂面において前記凹部に隣接する端縁は、前記第2の電子部品の前記放熱面において前記配線に隣接する端縁よりも、前記第2の電子部品の前記放熱面の中央側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記第1の凸部の頂面において前記凹部と反対側の端縁は、前記第1の電子部品の前記放熱面において前記配線と反対側に位置する端縁よりも、前記第1の電子部品の前記放熱面の中央側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記第2の凸部の頂面において前記凹部と反対側の端縁は、前記第2の電子部品の前記放熱面において前記配線と反対側に位置する端縁よりも、前記第2の電子部品の前記放熱面の中央側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記低誘電率媒体は、空気であることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項8】
請求項2に記載の電子制御装置の製造方法であって、
前記第1の凸部と前記凹部と前記第2の凸部の形状に倣う前記放熱部材を前記ハウジングに配置する工程と、
前記回路基板を前記配線が前記低誘電率媒体によって覆われた状態で前記ハウジングに配置された前記放熱部材の上に設置し、前記放熱部材によって前記第1および第2の電子部品の前記放熱面を跨いで覆うとともに、前記配線の周囲に前記放熱部材、前記回路基板、前記第1の電子部品、および前記第2の電子部品によって前記低誘電率媒体で満たされた空間を画定する工程と、
を有することを特徴とする電子制御装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の電子部品からの輻射ノイズを適切に抑制するとともに、放熱性を適切に向上させることができる電子機器が知られている(下記特許文献1、第0009段落、要約)。この従来の電子機器は、プリント基板と、高さが異なる複数の電子部品と、そのプリント基板上に実装され、高さが異なる複数の電子部品と、金属材料から構成され、複数の電子部品を覆うとともにプリント基板に対して接地されているリッドとを備えている。
【0003】
また、この従来の電子機器は、複数の電子部品のうち少なくとも1つ以上の放熱対象の電子部品とリッドとの間に設けられている第1放熱部材と、リッドの上方に設けられているヒートシンクと、リッドとヒートシンクとの間に設けられている第2放熱部材と、を備えている。この従来の電子機器において、リッドの上面部は、前記複数の電子部品の高さに合わせて段差を有する形状である(特許文献1、第0010段落、請求項1)。
【0004】
この従来の電子機器によれば、複数の電子部品から放射された電磁波によりリッドにノイズ電流が誘起されたとしても、その誘起されたノイズ電流が接地部分に排出されることで、輻射ノイズを抑制することができる。また、リッドの上面部が複数の電子部品の高さに合わせて段差を有する形状であるので、放熱対象の電子部品の高さが他の電子部品よりも低い場合でも、その放熱対象の電子部品とリッドとの距離を狭めるように段差を形成することで、第1放熱部材の厚さを抑えることができ、放熱性の悪化を未然に回避することができる。これにより、プリント基板上に高さが異なる複数の電子部品が実装される構成において、複数の電子部品からの輻射ノイズを適切に抑制すると共に、放熱性を適切に向上させることができる(特許文献1、第0011段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の電子機器は、放熱対象の電子部品とリッドとの間に設けられている第1放熱部材の外縁が放熱対象の電子部品の外縁よりも内側に位置し、放熱対象の電子部品の面積よりも第1放熱部材の面積が小さくなっている(特許文献1、
図1、
図3-5、
図7-11、
図13-
図16、および
図18)。このような構成において、放熱部材とリッドとの接触面積を増加させて電子部品の放熱性を向上させるために、隣接して配置されて配線で接続された二つの電子部品の放熱面に跨って放熱部材を配置することが考えられる。
【0007】
しかし、上記従来の電子機器は、隣接して配置された二つの電子部品の放熱面に跨って放熱部材を配置すると、二つの電子部品を接続する配線も放熱部材によって覆われるおそれがある。このように、二つの電子部品とそれらを接続する配線が、一つの連続する放熱部材によって覆われると、放熱部材を介した輻射ノイズが増加するおそれがある。
【0008】
本開示は、輻射ノイズを抑制しつつ、電子部品の放熱性を向上させることが可能な電子制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、隣接して配置されて配線で接続された第1および第2の電子部品を含む回路基板と、該回路基板を収容するハウジングと、前記第1および第2の電子部品の放熱面と前記ハウジングとの間に配置される放熱部材とを備える電子制御装置であって、前記放熱部材は、前記ハウジングに対向する前記第1および第2の電子部品の前記放熱面に跨って設けられ、前記配線は、前記放熱部材よりも誘電率が低い低誘電率媒体によって覆われていることを特徴とする電子制御装置である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の上記一態様によれば、放熱部材よりも誘電率が低い低誘電率媒体によって配線を覆うことで輻射ノイズを抑制しつつ、放熱部材とハウジングとの接触面積を増加させて電子部品の放熱性を向上させることが可能な電子制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示に係る電子制御装置の実施形態を示す分解斜視図。
【
図2】
図1に示す電子制御装置の上下を反転させた分解斜視図。
【
図3】
図2に示す電子制御装置の第1および第2の電子部品の近傍の拡大断面図。
【
図4】
図1から
図3の実施形態に係る電子制御装置の製造方法のフロー図。
【
図5】
図3の電子制御装置の変形例1を示す電子部品の近傍の拡大断面図。
【
図6】
図3の電子制御装置の変形例2を示す電子部品の近傍の拡大断面図。
【
図7】
図3の電子制御装置の変形例3を示す電子部品の近傍の拡大断面図。
【
図8】
図3の電子制御装置の変形例4を示す電子部品の近傍の拡大断面図。
【
図9】
図3の電子制御装置の変形例5を示す電子部品の近傍の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示に係る電子制御装置の実施形態を説明する。
【0013】
図1は、本開示に係る電子制御装置の実施形態を示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示す電子制御装置100の上下を反転させた分解斜視図である。本実施形態の電子制御装置100は、たとえば、車両に搭載され、エンジン、電子機器、または各種のアクチュエータなどを制御する電子制御ユニット(ECU)である。電子制御装置100は、回路基板110と、ハウジング120と、放熱部材130と、を備えている。
【0014】
回路基板110は、たとえば、熱硬化性樹脂およびガラスクロスを素材とする多層基板、セラミックス基板、または、ポリイミドを素材とするフレキシブルプリント基板(FPC)である。回路基板110は、図示を省略する金属配線を含む複数の回路と、第1および第2の電子部品111,112を含む複数の素子とを有している。第1および第2の電子部品111,112は、たとえば、システム・オン・チップ(SoC)、集積回路(IC)、中央処理装置(CPU)、またはメモリ素子など、放熱を必要とする電子部品である。
【0015】
また、回路基板110は、コネクタ113と、複数の貫通孔114と、を有している。コネクタ113は、たとえば、回路基板110の回路に接続された複数のコネクタピンを有している。電子制御装置100は、コネクタ113にコネクタケーブルを接続することで、コネクタケーブルを介して制御対象の外部の機器に接続される。複数の貫通孔114は、たとえば、回路基板110の周縁部に設けられ、回路基板110をハウジング120のカバー122に固定するための複数のネジ140を挿通させる。
【0016】
ハウジング120は、回路基板110を収容する筐体である。ハウジング120は、たとえば、ベース部121と、カバー122とを有している。ベース部121およびカバー122は、たとえば、金属材料を鍛造、プレス加工、または切削加工することによって製造された金属製の部材である。ベース部121およびカバー122の金属材料としては、たとえば、アルミニウム、または、アルミニウムを主成分とする合金を使用することができる。
【0017】
ベース部121およびカバー122は、たとえば、樹脂とフィラーの混合物を射出成形することによって製造された高熱伝導性樹脂製の部材であってもよい。高熱伝導性樹脂の熱伝導率は、たとえば、2W/(m・K)から30W/(m・K)までの範囲に含まれる。高熱伝導性樹脂の樹脂材料としては、たとえば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA6)などを使用することができる。また、高熱伝導性樹脂のフィラーとしては、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、またはアルミナ(Al2O3)などを使用することができる。
【0018】
ベース部121は、たとえば、矩形の板状の部材である。ベース部121は、たとえば、周壁部121aと、貫通孔121bとを有している。周壁部121aは、たとえば、ベース部121の周縁部に設けられ、カバー122の内側に嵌合する。貫通孔121bは、たとえば、ベース部121の四隅に設けられ、ベース部121をカバー122に固定するためのボルト150を挿通させる。
【0019】
カバー122は、たとえば、回路基板110の上面を覆う上壁部122aと、回路基板110の周囲を囲む周壁部122bとを有している。上壁部122aは、
図1に示すように、ハウジング120の外表面である上面に複数の放熱フィン122fを有している。周壁部122bは、たとえば、上壁部122aの周縁部からベース部121へ向けて延び、内側にベース部121の周壁部121aを嵌合させる。
【0020】
カバー122の上壁部122aの周縁部には、たとえば、回路基板110をカバー122に固定するネジ140がねじ込まれる複数のネジ穴122cが設けられている。また、カバー122の四隅の周壁部122bの内側には、ベース部121をカバー122に固定するボルト150がねじ込まれる複数のネジ穴122dが設けられている。また、回路基板110のコネクタ113の位置に対応するカバー122の周壁部122bの一側には、コネクタ113の形状に対応する切欠部122eが設けられている。
【0021】
カバー122は、
図2に示すように、内表面である上壁部122aの下面において、回路基板110の第1および第2の電子部品111,112に対向する位置に、第1および第2の凸部161,162を有している。第1および第2の凸部161,162は、たとえば、四角垂台形状を有している。また、第1および第2の凸部161,162の頂面の全体は、たとえば、
図1に示す放熱部材130に接する第1および第2の電子部品111,112の放熱面の全体に対向している。
【0022】
なお、第1および第2の凸部161,162は、たとえば、円錐台形状、直方体形状、または円柱形状など、任意の形状を有することができる。また、第1および第2の凸部161,162の頂面は、必ずしも全体が第1および第2の電子部品111,112の放熱面に対向していなくてもよい。
【0023】
また、第1および第2の凸部161,162の頂面の面積は、たとえば、第1および第2の電子部品111,112の放熱面の面積と比較して、小さくてもよく、大きくてもよい。また、第1および第2の凸部161,162の頂面の一部と、第1および第2の電子部品111,112の放熱部の一部が対向していてもよい。また、第1および第2の凸部161,162のいずれかの頂面に複数の電子部品が対向していてもよい。
【0024】
放熱部材130は、第1および第2の電子部品111,112の放熱面とハウジング120との間に配置される。より詳細には、放熱部材130は、回路基板110に設けられた第1および第2の電子部品111,112の放熱面と、ハウジング120のカバー122に設けられた第1および第2の凸部161,162との間に配置される。放熱部材130は、少なくとも電子制御装置100の組み立て時において、配置された面の形状に倣う粘性、流動性、または可塑性を、少なくとも一時的に有している。
【0025】
放熱部材130は、たとえば、熱伝導グリースまたは熱伝導接着剤を含む放熱対策部材(Thermal Interface Material:TIM)である。熱伝導接着剤としては、たとえば、シート状の熱硬化性のシリコーン樹脂に高熱伝導率のフィラーを含有させたものを使用することができる。フィラーとしては、たとえば、シリカ、アルミナ、窒化アルミナ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなどの無機材料やセラミックスを使用することができる。熱伝導接着剤は、たとえば、せん断強度が0.02MPa以上のものを使用することができる。
【0026】
図3は、
図2に示す電子制御装置100の組み立て後における第1および第2の電子部品111,112の近傍の模式的な拡大断面図である。第1および第2の電子部品111,112は、互いに隣接して配置され、一つ以上の配線115によって接続されている。第1および第2の電子部品111,112は、たとえば、図示を省略するインターポーザとはんだバンプを介して回路基板110の回路に接続され、回路基板110に実装されている。
【0027】
放熱部材130は、前述のように、少なくとも電子制御装置100の組み立て時に粘性、流動性、または可塑性を有している。そのため、放熱部材130は、第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162a、または、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aの上にそれぞれ分離して塗布または配置しても、隣接する放熱部材130が互いに接触して一体化する。その結果、放熱部材130は、ハウジング120のカバー122に設けられた第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aに対向する第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aに跨って一体に設けられている。
【0028】
配線115は、たとえば、互いに隣接する第1および第2の電子部品111,112間の高速通信を可能にする高速通信配線である。配線115は、放熱部材130よりも誘電率が低い低誘電率媒体170によって覆われている。低誘電率媒体170は、たとえば、比誘電率がほぼ1の空気である。また、低誘電率媒体170として、たとえば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、またはエポキシ樹脂など、比誘電率が2から3程度の樹脂材料を用いてもよい。
【0029】
より詳細には、ハウジング120のカバー122は、第1の電子部品111の放熱面111aに対向する第1の凸部161と、第2の電子部品112の放熱面112aに対向する第2の凸部162と、を有している。
図3に示す例において、第1の電子部品111の放熱面111aは、たとえば、中央部の半導体チップの表面を含む。そのため、第1および第2の電子部品111,112の回路基板110の表面からの高さは、第1の電子部品111の方が第2の電子部品112よりも高くなっている。
【0030】
一方、回路基板110に対向するカバー122の上壁部122aの内表面から回路基板110へ向けて突出する第1および第2の凸部161,162の高さは、第1の凸部161の方が第2の凸部162よりも低くなっている。これにより、第1および第2の凸部161,162が同じ高さである場合と比較して、第1の凸部161の頂面161aと第1の電子部品111の放熱面111aとの間隔D1と、第2の凸部162の頂面162aと第2の電子部品112の放熱面112aとの間隔D2との差が小さくなっている。
【0031】
また、ハウジング120のカバー122は、第1および第2の凸部161,162の間に設けられて配線115に対向する凹部163を有している。放熱部材130は、第1の凸部161、凹部163、および第2の凸部162の形状に倣う形状を有し、回路基板110、第1の電子部品111、および第2の電子部品112とともに、配線115の周囲に低誘電率媒体170によって満たされた空間を画定する。
【0032】
また、
図3に示すように、第1の凸部161の頂面161aにおいて凹部163に隣接する端縁と、第1の電子部品111の放熱面111aにおける配線115に隣接する端縁とは、回路基板110に垂直な方向に対向している。また、第1の凸部161の頂面161aにおいて凹部163と反対側の端縁と、第1の電子部品111の放熱面111aにおける配線115と反対側の端縁も、回路基板110に垂直な方向に対向している。
【0033】
同様に、第2の凸部162の頂面162aにおいて凹部163に隣接する端縁と、第2の電子部品112の放熱面112aにおける配線115に隣接する端縁とは、回路基板110に垂直な方向に対向している。また、第2の凸部162の頂面162aにおいて凹部163と反対側の端縁と、第2の電子部品112の放熱面112aにおける配線115と反対側の端縁も、回路基板110に垂直な方向に対向している。
【0034】
なお、配線115に垂直かつ回路基板110に平行な方向において、第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aの両端縁は、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aの両端縁と、回路基板110に垂直な方向に対向していてもよい。また、上記第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aの両端縁は、上記第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aの両端縁の外側に位置してもよく、内側に位置してもよい。
【0035】
図4は、
図1から
図3に示す電子制御装置100を製造するための電子制御装置の製造方法Pの一例を示すフロー図である。
図4に示す電子制御装置の製造方法Pのフローが開始されると、まず、カバー122を配置する工程P1が実施される。この工程P1では、たとえば、
図2に示すように、カバー122の上壁部122aの内表面を上にした状態で、カバー122が配置される。
【0036】
次に、放熱部材130を配置する工程P2が実施される。この工程P2では、たとえば、前述のように、少なくとも電子制御装置100の組み立て時において、粘性、流動性、または可塑性を有する放熱部材130を、カバー122の第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aに塗布または配置する。これにより、第1の凸部161と凹部163と第2の凸部162の形状に倣う放熱部材130をハウジング120に配置する。
【0037】
次に、回路基板110を設置する工程P3が実施される。この工程P3では、回路基板110を、配線115が低誘電率媒体170によって覆われた状態で、ハウジング120に配置された放熱部材130の上に設置する。そして、放熱部材130によって第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aを跨いで覆う。同時に、配線115の周囲に放熱部材130、回路基板110、第1の電子部品111、および第2の電子部品112によって低誘電率媒体170で満たされた空間を画定する。
【0038】
すなわち、低誘電率媒体170が空気である場合には、空気中で第1の凸部161と凹部163と第2の凸部162の形状に倣う放熱部材130の上に回路基板110を配置することで、配線115の周囲に空気で満たされた空間が画定される。また、低誘電率媒体170が前述のような低誘電率の樹脂である場合には、あらかじめ配線115にその樹脂を塗布しておく。その状態で、第1の凸部161と凹部163と第2の凸部162の形状に倣う放熱部材130の上に回路基板110を配置することで、配線115の周囲に低誘電率の樹脂で満たされた空間が画定される。
【0039】
その後、
図1および
図2に示す複数のネジ140を回路基板110の複数の貫通孔114に挿通させてカバー122のネジ穴122cにねじ込んで、回路基板110をカバー122に固定する。さらに、放熱部材130が導電性接着剤である場合には、たとえば、放熱部材130を加熱して硬化させる。
【0040】
次に、ベース部121を設置する工程P4が実施される。この工程P4では、たとえば、
図2に示すボルト150をベース部121の四隅の貫通孔121bに挿通させて、カバー122の四隅のネジ穴122dにねじ込んで、ベース部121をカバー122に固定する。これにより、回路基板110を収容するハウジング120が形成され、電子制御装置100が完成する。以上により、
図4に示す電子制御装置の製造方法Pのフローが終了する。
【0041】
以下、本実施形態の電子制御装置100および電子制御装置の製造方法Pの作用を説明する。
【0042】
本実施形態の電子制御装置100は、前述のように、回路基板110と、ハウジング120と、放熱部材130とを備えている。回路基板110は、隣接して配置されて配線115で接続された第1および第2の電子部品111,112を含む。ハウジング120は、回路基板110を収容する。放熱部材130は、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aとハウジング120との間に配置され、ハウジング120に対向する第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aに跨って設けられている。配線115は、放熱部材130よりも誘電率が低い低誘電率媒体170によって覆われている。
【0043】
このように、放熱部材130が第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aに跨って設けられることで、放熱部材130と放熱面111a,112aおよびハウジング120との接触面積を増加させることができる。その結果、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aから放熱部材130を介してハウジング120へ移動する熱を増加させ、第1および第2の電子部品111,112の放熱性を向上させることができる。
【0044】
また、上記のように、放熱部材130よりも誘電率が低い低誘電率媒体170によって配線115が覆われていることで、ノイズの発生を抑制することができる。すなわち、配線115に由来するノイズ強度Nは、配線115とハウジング120との間のインピーダンスZに反比例する(N∝1/Z)。また、配線115とハウジング120との間のインピーダンスZは、配線115とハウジング120との間の空間を占める物質の静電容量Cおよび周波数fに反比例する(Z=1/(2πfC))。さらに、静電容量Cは、真空の誘電率ε0、配線115とハウジング120との間の空間を占める物質の比誘電率εs、および面積Sに比例し、距離Dに反比例する(C=ε0・εs・S/D)。
【0045】
したがって、配線115が放熱部材130よりも誘電率が低い低誘電率媒体170によって覆われることで、配線115が放熱部材130に覆われている場合と比較して、配線115の周囲の静電容量Cが減少する。その結果、配線115の周囲のインピーダンスZが増加し、配線115に由来するノイズ強度Nが低下する。また、配線115を覆う低誘電率媒体170の体積が増加するほど、配線115に由来するノイズの抑制効果を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の電子制御装置100において、ハウジング120は、第1の電子部品111の放熱面111aに対向する第1の凸部161と、第2の電子部品112の放熱面112aに対向する第2の凸部162と、を有している。さらに、ハウジング120は、第1および第2の凸部161,162の間に設けられて配線115に対向する凹部163を有している。そして、放熱部材130は、これら第1の凸部161、凹部163、および第2の凸部162の形状に倣う形状を有し、回路基板110、第1の電子部品111、および第2の電子部品112とともに、配線115の周囲に低誘電率媒体170によって満たされた空間を画定する。
【0047】
また、本実施形態の電子制御装置の製造方法Pは、上記電子制御装置100を製造する方法である。電子制御装置の製造方法Pは、前述のように、工程P2と工程P3を有している。工程P2では、第1の凸部161と凹部163と第2の凸部162の形状に倣う放熱部材130をハウジング120に配置する。工程P3では、回路基板110を配線115が低誘電率媒体170によって覆われた状態でハウジング120に配置された放熱部材130の上に設置し、放熱部材130によって第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aを跨いで覆う。それと同時に、配線115の周囲に放熱部材130、回路基板110、第1の電子部品111、および第2の電子部品112によって低誘電率媒体170で満たされた空間を画定する。
【0048】
このように、本実施形態の電子制御装置100および電子制御装置の製造方法Pでは、放熱部材130が第1の凸部161、凹部163、および第2の凸部162の形状に倣う形状を有する。これにより、ハウジング120の第1および第2の凸部161,162と反対側の放熱部材130の表面にハウジング120の凹部163の形状に対応する凹部を形成し、その凹部を配線115に対向させて配置することができる。その結果、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aの広い範囲と、ハウジング120の広い範囲を、放熱面111a,112aを跨ぐ放熱部材130を介して熱的に接続することができ、第1および第2の電子部品111,112の放熱性が向上する。さらに、放熱部材130の凹部と、回路基板110の表面と、第1および第2の電子部品111,112とによって、配線115の周囲に低誘電率媒体170によって満たされた空間を画定し、配線115に由来するノイズを低減することができる。
【0049】
また、本実施形態の電子制御装置100において、低誘電率媒体170は、たとえば、空気である。この場合、電子制御装置100の製造工程において、配線115に低誘電率媒体170を塗布する工程を省略して、高い生産性の維持と生産コストの抑制が可能になる。さらに、配線115に由来するノイズを、配線115を覆う低誘電率媒体170としての空気によって低減することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1および第2の電子部品111,112間の配線115に由来する輻射ノイズを抑制しつつ、第1および第2の電子部品111,112の放熱性を向上させることが可能な電子制御装置100を提供することができる。なお、本開示に係る電子制御装置は、前述の実施形態に係る電子制御装置100の構成に限定されない。以下、
図7から
図9までを参照して、前述の実施形態に係る電子制御装置100のいくつかの変形例を説明する。
【0051】
図5は、
図3の電子制御装置100の変形例1を示す第1および第2の電子部品111,112の近傍の模式的な拡大断面図である。この変形例1では、第1の凸部161の頂面161aにおいて凹部163に隣接する端縁が、第1の電子部品111の放熱面111aにおいて配線115に隣接する端縁よりも、第1の電子部品111の放熱面111aの中央側に位置している。同様に、この変形例1では、第2の凸部162の頂面162aにおいて凹部163に隣接する端縁は、第2の電子部品112の放熱面112aにおいて配線115に隣接する端縁よりも、第2の電子部品112の放熱面112aの中央側に位置している。
【0052】
このような構成により、
図5の変形例1に係る電子制御装置100によれば、
図3の実施形態に係る電子制御装置100と比較して、配線115に対向する凹部163の幅と深さを拡大することが可能になる。その結果、放熱部材130の表面の配線115に対向する位置により大きな凹部を形成することができ、配線115の周囲の低誘電率媒体170によって満たされた空間を拡大して、配線115に起因する輻射ノイズをより低減することが可能になる。
【0053】
また、
図5に示す変形例1の電子制御装置100では、第1の凸部161の頂面161aにおいて凹部163と反対側の端縁は、第1の電子部品111の放熱面111aにおいて配線115と反対側に位置する端縁よりも、第1の電子部品111の放熱面111aの中央側に位置している。同様に、この変形例1では、第2の凸部162の頂面162aにおいて凹部163と反対側の端縁は、第2の電子部品112の放熱面112aにおいて配線115と反対側に位置する端縁よりも、第2の電子部品112の放熱面112aの中央側に位置している。
【0054】
このような構成により、
図5の変形例1に係る電子制御装置100によれば、
図3の前述の実施形態に係る電子制御装置100と比較して、放熱部材130が第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aにおける凹部163と反対側の端縁の外側へ広がりやすくなる。その結果、放熱部材130の表面の配線115に対向する位置により大きな凹部を形成することができ、配線115の周囲の低誘電率媒体170によって満たされた空間を拡大して、配線115に起因する輻射ノイズをより低減することが可能になる。
【0055】
図6は、
図3の電子制御装置100の変形例2を示す第1および第2の電子部品111,112の近傍の模式的な拡大断面図である。この変形例2では、第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aにおける凹部163と反対側の端縁だけが、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aにおいて配線115と反対側に位置する端縁よりも、それぞれの放熱面111a,112aの中央側に位置している。
【0056】
この変形例2に係る電子制御装置100によっても、変形例1に係る電子制御装置100と同様に、放熱部材130が第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aにおける凹部163と反対側の端縁の外側へ広がりやすくなる。その結果、放熱部材130の表面の配線115に対向する位置により大きな凹部を形成することができ、配線115の周囲の低誘電率媒体170によって満たされた空間を拡大して、配線115に起因する輻射ノイズをより低減することが可能になる。
【0057】
図7は、
図3の電子制御装置100の変形例3を示す第1および第2の電子部品111,112の近傍の模式的な拡大断面図である。この変形例3では、第1および第2の凸部161,162の頂面161a,162aにおける凹部163に隣接する端縁だけが、第1および第2の電子部品111,112の放熱面111a,112aにおいて配線115に隣接する端縁よりも、それぞれの放熱面111a,112aの中央側に位置している。
【0058】
この変形例3に係る電子制御装置100によっても、変形例1に係る電子制御装置100と同様に、配線115に対向する凹部163の幅と深さを拡大することが可能になる。その結果、放熱部材130の表面の配線115に対向する位置により大きな凹部を形成することができ、配線115の周囲の低誘電率媒体170によって満たされた空間を拡大して、配線115に起因する輻射ノイズをより低減することが可能になる。
【0059】
図8は、
図3の電子制御装置100の変形例4を示す第1および第2の電子部品111,112の近傍の模式的な拡大断面図である。
図7に示す前述の変形例3に係る電子制御装置100において、ハウジング120の第1および第2の凸部161,162の間の凹部163は、四角垂台形状または円錐台形状の第1および第2の凸部161,162の側面によって画定されていた。
【0060】
これに対し、
図8の変形例4に係る電子制御装置100において、ハウジング120の第1および第2の凸部161,162の間の凹部163は、回路基板110に垂直な側面と回路基板110に平行な底面によって画定されている。このような構成により、変形例4に係る電子制御装置100によれば、
図7の変形例3に係る電子制御装置100と比較して、凹部163の容積を拡大して、配線115に対向する放熱部材130の凹部を拡大することができる。その結果、配線115の周囲の低誘電率媒体170によって満たされた空間を拡大して、配線115に起因する輻射ノイズをより低減することが可能になる。
【0061】
図9は、
図3の電子制御装置100の変形例5を示す第1および第2の電子部品111,112の近傍の模式的な拡大断面図である。本変形例に係る電子制御装置100は、ハウジング120の凹部163が凹曲面によって形成されている点のみが、
図5に示す変形例1に係る電子制御装置100と異なっている。本変形例に係る電子制御装置100によれば、
図5に示す変形例1に係る電子制御装置100と同様の効果を奏することができるだけでなく、凹部163の容積を拡大することが可能になる。その結果、配線115の周囲の低誘電率媒体170によって満たされた空間を拡大して、配線115に起因する輻射ノイズをより低減することが可能になる。
【0062】
以上、図面を用いて本開示に係る電子制御装置の実施形態とその変形例を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。たとえば、本開示に係る電子制御装置は、車載用以外にもインバータやコンバータなどの機器用に提供することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 電子制御装置
110 回路基板
111 第1の電子部品
111a 放熱面
112 第2の電子部品
112a 放熱面
115 配線
120 ハウジング
130 放熱部材
161 第1の凸部
162 第2の凸部
163 凹部
170 低誘電率媒体
P 電子制御装置の製造方法
P2 放熱部材を配置する工程
P3 回路基板を設置する工程