(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061733
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】血流インジケータを有するシャント
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
A61M1/36 143
A61M1/36 119
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024026477
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2023542563の分割
【原出願日】2022-01-16
(31)【優先権主張番号】63/138,451
(32)【優先日】2021-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517112731
【氏名又は名称】インスパイア エム.ディー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】コーエン イツハク
(57)【要約】
【課題】血液をシャントする装置を提供する。
【解決手段】血液(22)をシャントする装置(20)が、入口ポート(26)及び出口ポート(28)を定めるように成形された流量指示チャンバ(24)と、流量指示チャンバ(24)内に配置され、入口ポート(26)から出口ポート(28)への血液(22)の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体(46)とを含む。流量指示チャンバ(24)の壁(52)の少なくとも一部は、可動体(46)が見えるように透明である。他の実施形態についても説明する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液をシャントする装置であって、
入口ポート及び出口ポートを定めるように成形された流量指示チャンバと、
前記流量指示チャンバ内に配置され、前記入口ポートから前記出口ポートへの前記血液の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体と、
を備え、前記流量指示チャンバの壁の少なくとも一部は、前記可動体が見えるように透明である、
装置。
【請求項2】
前記可動体は複数のビーズを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ビーズの少なくとも1つは複数の面を含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ビーズの各々は抗凝固剤でコーティングされる、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記可動体は、前記血液によって力が及ぼされることに応答して回転するように構成された回転部材を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記回転部材は、複数のスポークを含むホイールを含む、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ホイールは、前記入口ポート及び前記出口ポートに対して、前記スポークの各々が、前記入口ポートから前記出口ポートへの前記血液の妨げられない経路に垂直である時に前記妨げられない経路に交わるように配置される、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記妨げられない経路に交わる前記スポークの各々上の最近位点は、前記スポークの近位端から前記スポークの長さの50%~80%に位置する、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記流量指示チャンバに結合して内部に血液フィルタを保持するように構成されたフィルタチャンバをさらに備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
ねじ付きリングをさらに備え、
前記フィルタチャンバは、フィルタチャンバポートを定めるように成形され、
前記流量指示チャンバは、前記ねじ付きリングの第1の側に螺入するように構成され、
前記フィルタチャンバは、前記入口ポート又は前記出口ポートが前記フィルタチャンバポートと流体的に接続されるように、前記ねじ付きリングの第2の側に螺入するように構成される、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記流量指示チャンバは、内部に血液フィルタを保持するようにさらに構成される、
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記入口ポート及び前記出口ポートから成る一群のポートから選択されたポートを通る血液の流れを調節するように構成されたバルブをさらに備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記バルブは、
前記流量指示チャンバの壁を貫通し、該流量指示チャンバ内に押し込まれた時に前記ポートを覆うように構成された押圧可能要素と、
前記押圧可能要素及び前記流量指示チャンバの内壁に結合され、前記押圧可能要素に加わる押圧力がないときに、前記押圧可能要素が前記ポートを覆うのを妨げるように構成されたばねと、
を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ばねは引張ばねを含む、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
第1の導管の上流端を被験者のソース血管に結合し、前記第1の導管の下流端をシャントの入口ポートに結合するステップと、
第2の導管の上流端を前記シャントの出口ポートに結合し、前記第2の導管の下流端を前記被験者のシンク血管に結合することにより、前記ソース血管から前記シャントを介して前記シンク血管に血液が流れることで、前記シャント内に配置された1又は2以上の可動体の動きを引き起こし、前記動きが前記シャントの壁を通じて見えるようにするステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記可動体は複数のビーズを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記可動体は、前記血液によって力が及ぼされることに応答して回転する回転部材を含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記回転部材は、複数のスポークを含むホイールを含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シャントは、前記可動体を含む流量指示チャンバと、前記流量指示チャンバに結合されて内部に血液フィルタを保持するフィルタチャンバとを含む、
請求項15から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記シャントを通る前記血液の流れをバルブを使用して調節するステップをさらに含む、
請求項15から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
流体ポートを定めるように成形されたチャンバと、
前記チャンバから突出し、第1の開口部、及び1又は2以上の歯の第1の歯列を定めるように成形された第1の付属部と、
前記チャンバから突出し、第2の開口部、及び前記第1の歯列に平行な1又は2以上の歯の第2の歯列を定めるように成形された第2の付属部と、
を備え、前記第2の歯列は、前記第2の開口部が異なるそれぞれの整列度合いで前記第1の開口部と整列し、従って前記第1の開口部及び前記第2の開口部を通じて前記流体ポートへの又は該流体ポートからの血液を運ぶチューブが異なるそれぞれの狭窄度合いで狭窄するようになる、前記第1の付属部及び前記第2の付属部の複数の異なる相対的位置において、前記第1の歯列と噛み合うように構成される、
装置。
【請求項22】
前記チャンバは、内部に血液フィルタを保持するように構成される、
請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記チャンバ内に配置され、前記チャンバを通る前記血液の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体をさらに備え、前記チャンバの壁の少なくとも一部は、前記可動体が見えるように透明である、
請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記第1の付属部及び前記第2の付属部は、前記チャンバの壁と連続する、
請求項21から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記第1の付属部及び前記第2の付属部は、前記第1の歯列及び前記第2の歯列が互いから解放された時に、前記チューブが狭窄していないデフォルトの相対的位置に戻るように構成される、
請求項21から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記第1の付属部は、前記チャンバから突出する第1の後方アームと、前記第1の後方アームに対して角度を成し、前記第1の開口部及び前記第1の歯列を定めるように成形された第1の前方アームとを含み、
前記第2の付属部は、前記チャンバから突出する第2の後方アームと、前記第2の後方アームに対して角度を成し、前記第2の開口部及び前記第2の歯列を定めるように成形された第2の前方アームとを含む、
請求項21から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
前記第1の歯列及び前記第2の歯列内の前記歯の各々は、前記第1の歯列及び前記第2の歯列が互いに対して前進することによって前記チューブが狭窄するように後方に傾斜する、
請求項21から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
前記チューブは、前記位置のいずれにおいても完全に狭窄しない、
請求項21から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
チャンバから突出して第1の開口部と1又は2以上の歯の第1の歯列とを定めるように成形された第1の付属部を、チャンバから突出して第2の開口部と前記第1の歯列に平行な1又は2以上の歯の第2の歯列とを定めるように成形された第2の付属部を横切ってスライドさせて、前記第2の開口部が前記第1の開口部と位置ずれしている前記第1の付属部及び前記第2の付属部の相対的位置において前記第2の歯列が前記第1の歯列と噛み合うようにすることにより、前記第1の開口部及び前記第2の開口部を通じて前記チャンバの流体ポートへの又は該流体ポートからの血液を運ぶチューブを狭窄させるステップと、
前記チューブを狭窄させた後に、前記第1の歯列及び前記第2の歯列を互いから解放することにより、前記第1の付属部及び前記第2の付属部を、前記チューブが狭窄していないデフォルトの相対的位置に戻すステップと、
を含む方法。
【請求項30】
前記チャンバは、内部に血液フィルタを保持する、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記チャンバ内に1又は2以上の可動体が配置されて、前記チャンバを通る前記血液の流れに応答して動くように構成され、前記チャンバの壁の少なくとも一部は、前記可動体が見えるように透明である、
請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の付属部及び前記第2の付属部は、前記チャンバの壁と連続する、
請求項29から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の付属部は、前記チャンバから突出する第1の後方アームと、前記第1の後方アームに対して角度を成し、前記第1の開口部及び前記第1の歯列を定めるように成形された第1の前方アームとを含み、
前記第2の付属部は、前記チャンバから突出する第2の後方アームと、前記第2の後方アームに対して角度を成し、前記第2の開口部及び前記第2の歯列を定めるように成形された第2の前方アームとを含む、
請求項29から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の歯列及び前記第2の歯列の歯の各々は後方に傾斜し、前記第2の付属部を横切って前記第1の付属部をスライドさせるステップは、前記第1の歯列及び前記第2の歯列を互いに対して前進させるステップを含む、
請求項29から31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の血液を1つの血管から別の血管にシャントする処置などの医療処置に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの処置では、血液が1つの血管から別の血管にシャント(shunt)される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明のいくつかの実施形態によれば、血液をシャントする装置が提供される。装置は、入口ポート及び出口ポートを定めるように成形された流量指示チャンバと、流量指示チャンバ内に配置され、入口ポートから出口ポートへの血液の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体とを含む。流量指示チャンバの壁の少なくとも一部は、可動体が見えるように透明である。
【0004】
いくつかの実施形態では、可動体が複数のビーズを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、ビーズの少なくとも1つが複数の面を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、ビーズの各々が抗凝固剤でコーティングされる。
【0007】
いくつかの実施形態では、可動体が、血液によって力が及ぼされることに応答して回転するように構成された回転部材を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、回転部材が、複数のスポークを含むホイールを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、ホイールが、入口ポート及び出口ポートに対して、スポークの各々が、入口ポートから出口ポートへの血液の妨げられない経路に垂直である時に妨げられない経路に交わるように配置される。
【0010】
いくつかの実施形態では、妨げられない経路に交わる各スポーク上の最近位点が、スポークの近位端からスポークの長さの50%~80%に位置する。
【0011】
いくつかの実施形態では、装置が、流量指示チャンバに結合して内部に血液フィルタを保持するように構成されたフィルタチャンバをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、装置がねじ付きリングをさらに含み、
フィルタチャンバは、フィルタチャンバポートを定めるように成形され、
流量指示チャンバは、ねじ付きリングの第1の側に螺入するように構成され、
フィルタチャンバは、入口ポート又は出口ポートがフィルタチャンバポートと流体的に接続されるように、ねじ付きリングの第2の側に螺入するように構成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、流量指示チャンバが、内部に血液フィルタを保持するようにさらに構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、装置が、入口ポート及び出口ポートから成る一群のポートから選択されたポートを通る血液の流れを調節するように構成されたバルブをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、バルブが、
流量指示チャンバの壁を貫通し、流量指示チャンバ内に押し込まれた時にポートを覆うように構成された押圧可能要素と、
押圧可能要素及び流量指示チャンバの内壁に結合され、押圧可能要素に加わる押圧力がないときに、押圧可能要素がポートを覆うのを妨げるように構成されたばねと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ばねが引張ばねを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第1の導管の上流端を被験者のソース血管に結合し、第1の導管の下流端をシャントの入口ポートに結合するステップを含む方法がさらに提供される。この方法は、第2の導管の上流端をシャントの出口ポートに結合し、第2の導管の下流端を被験者のシンク血管に結合することにより、ソース血管からシャントを介してシンク血管に血液が流れることで、シャント内に配置された1又は2以上の可動体の動きを引き起こし、この動きがシャントの壁を通じて見えるようにするステップをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、シャントが、可動体を含む流量指示チャンバと、流量指示チャンバに結合されて内部に血液フィルタを保持するフィルタチャンバとを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、流体ポートを定めるように成形されたチャンバと、チャンバから突出し、第1の開口部、及び1又は2以上の歯の第1の歯列を定めるように成形された第1の付属部と、チャンバから突出し、第2の開口部、及び第1の歯列に平行な1又は2以上の歯の第2の歯列を定めるように成形された第2の付属部とを含む装置がさらに提供される。第2の歯列は、第2の開口部が異なるそれぞれの整列度合いで第1の開口部と整列し、従って第1の開口部及び第2の開口部を通じて流体ポートへの又は流体ポートからの血液を運ぶチューブが異なるそれぞれの狭窄度合いで狭窄するようになる、第1の付属部及び第2の付属部の複数の異なる相対的位置において、第1の歯列と噛み合うように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、チャンバが、内部に血液フィルタを保持するように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、装置が、チャンバ内に配置され、チャンバを通る血液の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体をさらに含み、チャンバの壁の少なくとも一部は、可動体が見えるように透明である。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の付属部及び第2の付属部がチャンバの壁と連続する。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の付属部及び第2の付属部が、第1の歯列及び第2の歯列が互いから解放された時に、チューブが狭窄していないデフォルトの相対的位置に戻るように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、
第1の付属部が、チャンバから突出する第1の後方アームと、第1の後方アームに対して角度を成し、第1の開口部及び第1の歯列を定めるように成形された第1の前方アームとを含み、
第2の付属部が、チャンバから突出する第2の後方アームと、第2の後方アームに対して角度を成し、第2の開口部及び第2の歯列を定めるように成形された第2の前方アームとを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の歯列及び第2の歯列内の歯の各々が、第1の歯列及び第2の歯列が互いに対して前進することによってチューブが狭窄するように後方に傾斜する。
【0026】
いくつかの実施形態では、チューブが、いずれの位置においても完全に狭窄しない。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、チャンバから突出して第1の開口部と1又は2以上の歯の第1の歯列とを定めるように成形された第1の付属部を、チャンバから突出して第2の開口部と第1の歯列に平行な1又は2以上の歯の第2の歯列とを定めるように成形された第2の付属部を横切ってスライドさせて、第2の開口部が第1の開口部と位置ずれしている第1の付属部及び第2の付属部の相対的位置において第2の歯列が第1の歯列と噛み合うようにすることにより、第1の開口部及び第2の開口部を通じてチャンバの流体ポートへの又は該流体ポートからの血液を運ぶチューブを狭窄させるステップを含む方法が提供される。この方法は、チューブを狭窄させた後に、第1の歯列及び第2の歯列を互いから解放することにより、第1の付属部及び第2の付属部を、チューブが狭窄していないデフォルトの相対的位置に戻すステップをさらに含む。
【0028】
添付図面と共に行う以下の本発明の実施形態の詳細な説明から、本発明がさらに完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、血液をシャントする装置の概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、血液をシャントする装置の概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、血液をシャントする装置の概略図である。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態によるチューブ狭窄器の概略図である。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態によるチューブ狭窄器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
概要
いくつかの事例では、1つの解剖学的部位から別の解剖学的部位に血液をシャントすることが必要な場合がある。例えば、被験者の頸動脈から血栓を除去する手術中に、被験者の頸動脈から大腿静脈などの静脈に血液をシャントすることが必要な場合がある。このような事例では、シャント装置(又は「シャント」)を使用して両部位間で血液を送り合う。しかしながら、医師が気づかないうちにシャントを通る血流が減速又は停止してしまうリスクがある。
【0031】
このリスクを軽減するために、本発明の実施形態は、流量指示チャンバを通る血液の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体を含む流量指示チャンバを含むシャントを提供する。流量指示チャンバの壁の少なくとも一部は、可動体が見えるように透明である。例えば、壁は透明窓を含むことができ、可動体は窓の裏側に配置される。従って、医師は、可動体の動き度合いを観察することによって、血液がシャントを通じて正しく流れているかどうかを容易にチェックすることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、可動体が、血液が流れている時に回転し及び/又は位置が変化する、血液中に浮遊する複数のビーズを含む。他の実施形態では、可動体が、血液がスポークを横切って流れた時に回転する、複数の放射状スポークを含むホイールを含む。
【0033】
別の課題は、例えば頸動脈を通じて被験者の脳により多くの血液を流すために、時にはシャントを通る血液の流れを減速又は停止させる必要が生じ得る点である。
【0034】
この課題に対処するために、本発明のいくつかの実施形態では、シャントが、シャントの入口ポート又は出口ポートを通る流量を制御するように構成されたバルブを備える。例えば、バルブは、上述した流量指示チャンバの壁を貫通する押圧可能要素(pushable element)と、押圧可能要素を流量指示チャンバの内壁に結合する、流量指示チャンバ内のばねとを含むことができる。ばねは、その静止状態では、血液がポートを通じて自由に流れるように押圧可能要素をポートから離れた状態で保持する。一方で、ばねの力に打ち勝つのに十分な押圧力が加わると、押圧可能要素が押されてポートを覆うことにより、血液の流れを減速又は停止させることができる。
【0035】
他の実施形態では、シャントが、ポートへの又はポートからの血液を運ぶチューブを狭窄させるように構成されたチューブ狭窄器(tube constrictor)を備える。チューブ狭窄器は、それぞれの開口部及びそれぞれの歯列を定めるように成形された一対の平行アームを含む。歯列は、開口部が互いに整列するデフォルト位置、及び開口部が様々な度合いで位置ずれする1又は2以上の他の位置において互いに噛み合うように構成される。従って、チューブが開口部を通過している間にアームを互いにスライドさせることによって、チューブを部分的に又は完全に狭窄させることができる。チューブを狭窄させた後は、通常の血流を再開させるために、歯列を互いに解放してアームがデフォルト位置に戻るようにすることができる。
【0036】
装置の説明
最初に、本発明のいくつかの実施形態による、血液22をシャントする装置20の概略図である
図1を参照する。
図1の挿入部分44は、装置20の内部の一部を示す。
【0037】
「シャント」と呼ぶことができる装置20は、入口ポート26及び出口ポート28を定めるように成形された流量指示チャンバ24を含む。血液22は、入口ポート26を通じて流量指示チャンバ24に入り込み、流量指示チャンバ内を流れ、出口ポート28を介して流量指示チャンバから出る。
【0038】
いくつかの実施形態では、入口ポート26が、装置20への血液22が流れる入口チューブ30(又はカテーテルなどの他のいずれかの入口導管)に結合するように構成される。例えば、入口チューブ30を入口ポート26に嵌め込んで挿入し、又は入口ポートを入口チューブに嵌め込んで挿入することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、装置20が、流量指示チャンバ24に結合して内部に血液フィルタ34を保持するように構成されたフィルタチャンバ32をさらに含む。血液フィルタ34は、後述する
図3に示すような複数のリブ86などの任意の好適な構造部品を使用してフィルタチャンバ内に固定することができる。フィルタチャンバ32は、血液22がフィルタチャンバに入り込む入口ポート38と、血液がフィルタチャンバから出る出口ポート40とを定めるように成形される。
【0040】
図1に示すように、フィルタチャンバは、血液が流量指示チャンバ内を流れた後にフィルタチャンバ内を流れるように、流量指示チャンバの下流で流量指示チャンバに結合することができる。(任意に、単一の共通ポートが出口ポート28及び入口ポート38の両方として機能することもできる。)このような実施形態では、出口ポート40が、装置20からの血液を運ぶ出口チューブ42(又はカテーテルなどの他のいずれかの出口導管)に結合するように構成される。
【0041】
或いは、フィルタチャンバは、流量指示チャンバの上流で流量指示チャンバに結合することもできる。(任意に、単一の共通ポートが出口ポート40及び入口ポート26の両方として機能することもできる。)このような実施形態では、フィルタチャンバの入口ポート38が入口チューブ30に結合するように構成され、流量指示チャンバの出口ポート28が出口チューブ42に結合するように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、装置20がねじ付きリング(threaded ring)36をさらに含む。流量指示チャンバ24は、ねじ付きリング36の一方の側に螺入するように構成され、フィルタチャンバ32は、2つのチャンバが互いに流体連通するようにねじ付きリングの他方の側に螺入するように構成される。例えば、
図1に示すように、流量指示チャンバをリング36の上流側に螺入させ、フィルタチャンバをリング36の下流側に螺入させて、血液が出口ポート28から入口ポート38に直接流れるようにすることができる。或いは、フィルタチャンバをリング36の上流側に螺入させ、流量指示チャンバをリング36の下流側に螺入させて、血液が出口ポート40から入口ポート26に直接流れるようにすることもできる。
【0043】
他の実施形態では、
図3に示すように、流量指示チャンバ及びフィルタチャンバが結合チューブ84を介して互いに結合される。
【0044】
さらに他の実施形態では、装置20がフィルタチャンバ32を含まない。このような実施形態では、流量指示チャンバ24を、内部に血液フィルタ34を保持するように構成することができる。
【0045】
装置20は、人間又は動物の被験者の任意2つの好適な血管間で血液22をシャントすることができる。換言すれば、装置20は、被験者の任意の好適な「ソース」血管から被験者の任意の好適な「シンク」血管へ血液22をシャントすることができる。例えば、装置20は、被験者の動脈から静脈に血液をシャントして、入口チューブ30が動脈からの血液を送り出し、出口チューブ42が静脈に血液を運ぶようにすることができる。具体例として、装置20は、頸動脈から血栓を除去する手術中に血液を頸動脈から大腿静脈にシャントすることができる。或いは、装置20は、高圧の動脈から低圧の動脈に血液をシャントすることもできる。
【0046】
装置20を配置するために、入口チューブ30の上流端は(例えば、ストップコック(stopcock)及び/又は他の任意の好適な装置を介して)ソース血管に結合され、入口チューブの下流端は装置20の入口ポート(例えば、流量指示チャンバがフィルタチャンバの上流に存在する実施形態では入口ポート26)に結合される。同様に、出口チューブ42の上流端は装置20の出口ポート(例えば、流量指示チャンバがフィルタチャンバの上流に存在する実施形態では出口ポート40)に結合され、出口チューブの下流端は(例えば、ストップコック及び/又は他の任意の好適な装置を介して)シンク血管に結合される。その後、血液はソース血管から装置20を介してシンク血管に流れる。
【0047】
血流インジケータ
装置20は、流量指示チャンバ24内に配置され、入口ポート26から出口ポート28への血液22の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体46をさらに含む。流量指示チャンバの壁52の少なくとも一部は、可動体46が見えるように透明である。例えば、(後述する)
図3に示すように、壁52は全体的に透明であることができる。或いは、
図1に示すように、壁は少なくとも1つの透明窓50を含むこともできる。従って、医師は、可動体46の動き度合いを観察することによって、流量指示チャンバを通る血流の割合を容易にチェックすることができる。いくつかの実施形態では、壁52の透明部分が、可動体46を拡大するように構成された拡大レンズを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、可動体46が、血液が流れている時に回転し及び/又は位置が変化する複数のビーズ48を含む。通常、ビーズ48は、ビーズが血液中に浮遊したままであるように、血液22の密度よりも低い密度を有する。ビーズ48は、金属、プラスチック、木材、ラテックス、合成ゴム、又はこれらの任意の組み合わせなどの、任意の好適な血液適合性材料を含むことができる。
【0049】
一般に、各ビーズは任意の好適な形状を有することができる。例えば、ビーズ48は、少なくとも1つの球形ビーズ48aを含むことができる。これに代えて又は加えて、ビーズ48は、複数の面を含む少なくとも1つのビーズを含むこともでき、このようなビーズは、より大きな力が血液によってビーズに加わるため、血流に応答する動きが球状ビーズ48aに比べて大きくなることができる。複数の面を含むビーズの例としては、立方体ビーズ48b及びピラミッド型ビーズ48cが挙げられる。
【0050】
一般に、大きなビーズは小さなビーズよりも目立つことができ、従っていくつかの実施形態では、ビーズの外面上のいずれか2点間のデカルト距離が各ビーズ48について0.1cmよりも大きい。これに代えて又は加えて、ビーズの動きを大きくするために、ビーズの外面上のいずれか2点間のデカルト距離を0.65cm未満とすることもできる。
【0051】
いくつかの実施形態では、各ビーズがヘパリンなどの抗凝固剤でコーティングされる。
【0052】
いくつかの実施形態では、視認性を高めるために、ビーズの色が血液22の色と対照的である。好適な対照色としては、黒色、青色及び白色が挙げられる。或いは、ビーズは他の任意の色を有することもできる。
【0053】
いくつかの実施形態では、出口ポート28が、ビーズの通過を妨げるように構成されたフィルタで覆われる。これに代えて又は加えて、上述したように、フィルタチャンバ32は、流量指示チャンバの下流で流量指示チャンバに結合して、出口ポート28を通過したいかなるビーズもフィルタ34によって血液からフィルタ処理されるようにすることもできる。
【0054】
次に、本発明のいくつかの実施形態による装置20の概略図である
図2を参照する。
図2の挿入部分58は、装置20の内部の一部を示す。
【0055】
いくつかの実施形態では、可動体46が、血液によって力が及ぼされることに応答して回転するように構成された回転部材を含む。
【0056】
例えば、可動体46は、複数のスポーク56(「放射状部材」と呼ぶこともできる)を含むホイール54を含むことができ、ホイール54は、血液22がスポーク56に力を及ぼすことに応答して回転するように構成される。目立ちやすいように、各スポーク56の長さは0.6cmよりも大きくてもよく、及び/又は各スポークの幅は0.3cmよりも大きくてもよい。これに代えて又は加えて、過度に大きな流量指示チャンバを必要としないように、各スポーク56の長さは3.8cmよりも小さくてもよく、及び/又は各スポークの幅は1.3cmよりも小さくてもよい。
【0057】
挿入部分58では、2本の破線を使用して、血液の妨げられない経路60、すなわちホイール54がないときに血液がたどると思われる入口ポート26から出口ポート28までの経路を定める。通常、ホイール54は、入口ポート及び出口ポートに対して、各スポークが経路60沿いの任意の地点で経路60に垂直である時に経路に交わるように配置される。従って、流量指示チャンバを通る血液の流れは、一般にホイールを単一方向に回転させ続ける。例えば、
図2では、回転インジケータ55によって示すようにホイールが時計回りに回転する。
【0058】
例えば、ハブ62に最も近いスポークの端部をスポークの近位端とし、反対端をスポークの遠位端とすると、経路60に交わるスポーク上の最近位点は、スポークの近位端からスポークの長さの50%~80%に位置することができる。(例えば、スポークの長さが3cmである場合、経路60に交わるスポーク上の最近位点は、スポークの近位端から1.5cm~2.4cmに位置することができる。)このホイールの位置付けは、ホイールが受ける回転力を有利に高めることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、血液がより高速で経路60をたどり、従って回転部材により大きな力を加えるように、血液が流れることができるチャンバ内の空間が流量指示チャンバ24の内壁61によって狭められる。
【0060】
通常、ホイール54は、断面A-Aで示すように、ホイールがシャフトを中心に回転するようにシャフト64に取り付けられる(すなわち、シャフト64がハブ62を貫通する)。シャフト64は、その両端において壁52に結合する。
【0061】
回転部材(例えば、ホイール54)は、ビーズ48(
図1)について上述したように、血液の色と対照的な色を含む任意の好適な色とすることができる。
【0062】
別の実施形態では、血流の割合を測定するためにドップラー超音波が使用される。例えば、ソケットを定めるように成形された固定具を一方のチューブ上に取り付けて、ソケット内に標準的なドップラー超音波プローブを挿入することができる。
【0063】
【0064】
いくつかの実施形態では、装置20が、流量指示チャンバを通る血液の流れを調節するように構成されたバルブ66をさらに含む。従って、医師は、バルブ66を使用して、血液がシャントされる割合を制御することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、バルブ66が、流量指示チャンバ内に押し込まれた時に入口ポート26又は出口ポート28を覆うように構成された、壁52を貫通する押圧可能要素68を含む。通常は、壁を通じて血液が漏れないように、押圧可能要素が貫通する壁52の開口部を(例えば、ゴム製の)ガスケット76によって密封する。
【0066】
このような実施形態では、バルブ66が、(例えば、押圧可能要素に結合された桟部(ledge)82に結合されることによって)押圧可能要素に結合されるとともに流量指示チャンバの内壁(例えば、壁52の内側)にも結合されたばね78をさらに含む。ばね78は、押圧可能要素に押圧力が加えられていない時には押圧可能要素が入口ポート又は出口ポートを覆うのを妨げるように構成される。従って、医師は、血液の流れが減速又は停止していることを忘れないように、流れを減速又は停止させるには、ばねによって加わる力に対抗する押圧力を継続的に加えなければならない。
【0067】
通常、ばね78は、
図1に示すように引張ばね80を含む。ばね80は、押圧力がないときには最大限に圧縮されて、引張ばねが押圧可能要素をその最も外側の位置に保持するようになる。
【0068】
いくつかの実施形態では、押圧可能要素68が、頸部(neck)70と、流量指示チャンバ内に存在する頸部70の端部から突出する足部(foot)72とを含む。頸部70が流量指示チャンバ内にさらに押し込まれると、足部72が入口ポート又は出口ポートの大部分を覆うことによって血液の流れが減速する。頸部が最大限に押されると、足部72がポートを完全に覆って流れが停止するようになる。任意に、流量指示チャンバの外側に存在する頸部70の反対端は、頸部よりも幅の広い、従って流量指示チャンバ内への頸部の押し込みを容易にする頭部74で終端することができる。
【0069】
他の実施形態では、バルブ66が、引っ張られた時に入口ポート26又は出口ポート28を覆うように構成された、壁52を貫通する引張可能要素(pullable element)を含む。(なお、バルブ66は、
図2の実施形態などの、可動体46の他の任意の好適な実施形態と組み合わせることもできる。)
【0070】
次に、本発明のいくつかの実施形態による装置20の概略図である
図3を参照する。
【0071】
いくつかの実施形態では、装置20が、「ロッククリップ」と呼ぶこともできるチューブ狭窄器88を含む。チューブ狭窄器88は、第1の開口部92aを定めるように成形された第1の付属部(appendage)90aと、第2の開口部92bを定めるように成形された第2の付属部90bとを含む。
【0072】
以下で
図4A~
図4Bを参照しながらさらに説明するように、チューブ狭窄器88は、チューブを様々な狭窄度合いで狭窄させることによって、開口部92a及び92bを貫通するチューブを通る血流の割合を制御するように構成される。従って、装置20は必ずしもバルブ66(
図1)を含む必要はない。
【0073】
例えば、チューブ狭窄器88は、狭窄なし(0%)、及び完全(100%)狭窄又は部分的(例えば、80%~90%)狭窄という2つの狭窄度合いを提供することができる。或いは、チューブ狭窄器88は、3又は4以上の狭窄度合いを提供することもできる。4つの狭窄度合いの例は、0%、20%~40%(例えば、33%)、60%~80%(例えば、66%)、及び90%~100%である。(特許請求の範囲を含む本出願の文脈では、チューブを通る血流の割合が、チューブが全く狭窄していない場合の割合のx%である場合、チューブがx%狭窄したと考えることができる)。
【0074】
いくつかのこのような実施形態では、流量指示チャンバ24が結合チューブ84を介してフィルタチャンバ32に結合され、チューブ狭窄器88が結合チューブを狭窄させるように構成される。例えば、
図3に示すように、第1の付属部90a及び第2の付属部90bはフィルタチャンバ32から上流方向に突出することができ、すなわち第1及び第2の付属部は入口ポート38を越えて突出することができ、結合チューブ84は、第1及び第2の開口部を通じて血液を入口ポート38に運ぶことができる。或いは、第1及び第2の付属部は流量指示チャンバ24から下流方向に突出することもでき、すなわち第1及び第2の付属部は出口ポート28を越えて突出することができ、結合チューブ84は、第1及び第2の開口部を通じて出口ポート28からの血液を運ぶことができる。
【0075】
他のこのような実施形態では、チューブ狭窄器88が入口チューブ30を狭窄させるように構成される。換言すれば、第1の付属部90a及び第2の付属部90bは流量指示チャンバ24から上流方向に突出し、すなわち第1の付属部及び第2の付属部は入口ポート26を越えて突出し、入口チューブ30は、第1の開口部及び第2の開口部を通じて入口ポート26に血液を運ぶ。(この事例では、
図1~
図2のように流量指示チャンバ24をフィルタチャンバ32に結合することができ、或いはフィルタチャンバ32を省略することができる。)
【0076】
さらに他のこのような実施形態では、チューブ狭窄器88が出口チューブ42を狭窄させるように構成される。換言すれば、第1の付属部90a及び第2の付属部90bはフィルタチャンバ32から下流方向に突出し、すなわち第1の付属部及び第2の付属部は出口ポート40を越えて突出し、出口チューブ42は、第1の開口部及び第2の開口部を通じて出口ポート40からの血液を運ぶ。(この事例では、
図1~
図2のように流量指示チャンバ24をフィルタチャンバ32に結合することができ、或いは流量指示チャンバ24を省略することができる。)
【0077】
装置20が流量指示チャンバ24を含む実施形態では、流量指示チャンバが、ホイール54又はビーズ48(
図1)などの任意の好適な可動体46を含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の付属部が突出元であるチャンバの壁と連続し、すなわち壁がチャンバを越えて延びて付属部を定める。他の実施形態では、例えば任意の好適な接着剤を使用して付属部がチャンバの壁に結合される。
【0079】
典型的には、各付属部は、チャンバから突出する後方アーム100と、後方アーム100に対して(例えば、約90度の)角度を成し、チューブが通過する開口部を定めるように成形された前方アーム102とを含む。
【0080】
ここで、第1の付属部90aの前方アーム102の背面、すなわち第2の付属部90bに面する前方アームの表面を示す
図3の挿入部分110を具体的に参照する。
【0081】
第1の付属部90a(例えば、第1の付属部の前方アーム102)は、第1の開口部92aに加えて、1又は2以上の歯96の第1の列94aを定めるように成形される。同様に、
図4A~
図4Bに示すように、第2の付属部90b(例えば、第2の付属部の前方アーム102)は、第1の列94aに平行な1又は2以上の歯96の第2の列94bを定めるように成形される。以下で
図4A~
図4Bを参照しながらさらに説明するように、第2の列94bは、第1の付属部及び第2の付属部の複数の異なる相対的位置において第1の列94aと噛み合うように構成される。これらの異なる位置では、第2の開口部92bが異なるそれぞれの整列度合いで第1の開口部92aと整列し、従って結合チューブ84(又は開口部を通過する他の任意のチューブ)が異なるそれぞれの狭窄度合いで狭窄するようになる。
【0082】
次に、本発明のいくつかの実施形態によるチューブ狭窄器88の概略図である
図4A~
図4Bを参照する。
【0083】
図4Aでは、第1及び第2の付属部が、第2の開口部92bが第1の開口部92aと整列する第1の相対的位置にあり、従って結合チューブ84は狭窄していない。その後、付属部の一方又は両方は、
図4Bに示すように2つの開口部が互いにそれほど整列しておらず、従ってチューブ84の大部分が狭窄する第2の相対的位置をとるように移動することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、
図4A~
図4Bに示すように、各歯96が、長い前縁104及び短い後縁106を含むように(例えば、付属部の後方アーム100に向かう)後方に傾斜する。このような実施形態では、2つの歯列を互いに対して前進させることによって、例えば少なくとも一方の前方アーム102を他方の付属部の後方アーム100に向けて押すことによってチューブを狭窄させることができる。例えば、
図4Aにピンチインジケータ(pinch indicators)98によって示すように、例えば一方の後方アーム100上に置いた人差し指と他方の後方アーム上に置いた親指とを使用して付属部同士をつまむことができる。一方又は両方の歯列が前進すると、後縁106間の接触によって歯列が次の位置で噛み合うことで列の後方へのスライドが妨げられるまで、前縁104が互いを横切ってスライドする。
【0085】
他の実施形態では、各歯96が、付属部の先端に向かって前方に傾斜する。このような実施形態では、少なくとも一方の歯列を他方の歯列に対して後方に移動させることによって、例えば少なくとも一方の前方アーム102を他方の付属部の後方アーム100から引き離すことによってチューブを狭窄させることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、
図4Bにリリースインジケータ(release indicators)108によって示すように、第1及び第2の付属部が、第1の列94a及び第2の列94bが互いから解放された時点で、チューブが狭窄していないデフォルトの相対的位置に戻るように構成される。換言すれば、付属部の少なくとも一方が弾性を有することにより、デフォルトの相対的位置からの動きが生じると、列が互いに解放された時点で付属部をデフォルト位置に戻す弾性エネルギーが付属部に蓄えられるようになる。これに代えて又は加えて、解放時には、チューブが狭窄している間にチューブの壁に蓄えられた弾性エネルギーによって第1及び第2の付属部がそのデフォルトの相対的位置に戻ることもできる。(なお、付属部は、図示のものよりも少ない歯を定めるように成形することもできる。例えば、N段階の狭窄が提供されるように、一方の付属部を単一の歯を定めるように成形し、他方の付属部をN≧2個の歯を定めるように成形することもできる。)
【0087】
通常、チューブは、歯列が互いに噛み合う任意の位置では完全に狭窄しない。換言すれば、
図4Bに示すように、チューブは、最も狭窄した噛合位置であっても部分的に(例えば、10%~20%)狭窄していないままであることができる。従って、流れが停止していることを医師が忘れないように、チューブを完全に狭窄させるには医師が付属部の一方又は両方に力を加え続ける必要があることが有利である。例えば、
図4Bに示すシナリオでは、チューブを完全に狭窄させるには付属部を継続的につまんでおく必要がある。つまむ力が存在しなければ、付属部は、付属部及び/又はチューブの壁に蓄えられた弾性エネルギーによって最も狭窄する噛合位置に戻る。(歯が後方に傾斜している実施形態では、一方の付属部の最前部の歯が他方の付属部の最後部の歯に対してロックする位置が最も狭窄する噛合位置である。歯が前方に傾斜している実施形態では、一方の付属部の最前部の歯が他方の付属部の最前部の歯に対してロックする位置が最も狭窄する噛合位置である)。
【0088】
装置20は、チューブ狭窄器88の代わりに、一方チャンバから突出してチャンバと流体連通するチューブを狭窄させるように構成された他の任意のクランプを含むこともできる。クランプは、クランプの突出元であるチャンバの壁と連続することも、或いはチャンバの壁に結合することもできる。
【0089】
当業者であれば、本発明は上記で具体的に図示し説明した内容に限定されるものではないと理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、本明細書で上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的な組み合わせ、並びに上述した説明を読んだ時点で当業者に浮かぶであろう、先行技術には存在しないこれらの変形例及び修正例の両方を含む。引用により本特許出願に組み入れられる文書は、これらの組み入れられた文書におけるいずれかの用語が本明細書において明示的又は非明示的に行っている定義と矛盾する形で定義されている限りにおいては本明細書における定義のみを考慮すべきである点を除き、本出願の不可欠な部分とみなすべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液をシャントする装置であって、
入口ポート及び出口ポートを定めるように成形された流量指示チャンバと、
前記流量指示チャンバ内に配置され、前記入口ポートから前記出口ポートへの前記血液の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体と、
を備え、前記流量指示チャンバの壁の少なくとも一部は、前記可動体が見えるように透明である、
装置。
【請求項2】
前記可動体は複数のビーズを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ビーズの少なくとも1つは複数の面を含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ビーズの各々は抗凝固剤でコーティングされる、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記可動体は、前記血液によって力が及ぼされることに応答して回転するように構成された回転部材を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記回転部材は、複数のスポークを含むホイールを含む、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ホイールは、前記入口ポート及び前記出口ポートに対して、前記スポークの各々が、前記入口ポートから前記出口ポートへの前記血液の妨げられない経路に垂直である時に前記妨げられない経路に交わるように配置される、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記妨げられない経路に交わる前記スポークの各々上の最近位点は、前記スポークの近位端から前記スポークの長さの50%~80%に位置する、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記流量指示チャンバに結合して内部に血液フィルタを保持するように構成されたフィルタチャンバをさらに備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
ねじ付きリングをさらに備え、
前記フィルタチャンバは、フィルタチャンバポートを定めるように成形され、
前記流量指示チャンバは、前記ねじ付きリングの第1の側に螺入するように構成され、
前記フィルタチャンバは、前記入口ポート又は前記出口ポートが前記フィルタチャンバポートと流体的に接続されるように、前記ねじ付きリングの第2の側に螺入するように構成される、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記流量指示チャンバは、内部に血液フィルタを保持するようにさらに構成される、
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記入口ポート及び前記出口ポートから成る一群のポートから選択されたポートを通る血液の流れを調節するように構成されたバルブをさらに備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記バルブは、
前記流量指示チャンバの壁を貫通し、該流量指示チャンバ内に押し込まれた時に前記ポートを覆うように構成された押圧可能要素と、
前記押圧可能要素及び前記流量指示チャンバの内壁に結合され、前記押圧可能要素に加わる押圧力がないときに、前記押圧可能要素が前記ポートを覆うのを妨げるように構成されたばねと、
を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ばねは引張ばねを含む、
請求項13に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
当業者であれば、本発明は上記で具体的に図示し説明した内容に限定されるものではないと理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、本明細書で上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的な組み合わせ、並びに上述した説明を読んだ時点で当業者に浮かぶであろう、先行技術には存在しないこれらの変形例及び修正例の両方を含む。引用により本特許出願に組み入れられる文書は、これらの組み入れられた文書におけるいずれかの用語が本明細書において明示的又は非明示的に行っている定義と矛盾する形で定義されている限りにおいては本明細書における定義のみを考慮すべきである点を除き、本出願の不可欠な部分とみなすべきである。
本発明は、以下のような態様であっても良い。
[1]
流体ポートを定めるように成形されたチャンバと、
前記チャンバから突出し、第1の開口部、及び1又は2以上の歯の第1の歯列を定めるように成形された第1の付属部と、
前記チャンバから突出し、第2の開口部、及び前記第1の歯列に平行な1又は2以上の歯の第2の歯列を定めるように成形された第2の付属部と、
を備え、前記第2の歯列は、前記第2の開口部が異なるそれぞれの整列度合いで前記第1の開口部と整列し、従って前記第1の開口部及び前記第2の開口部を通じて前記流体ポートへの又は該流体ポートからの血液を運ぶチューブが異なるそれぞれの狭窄度合いで狭窄するようになる、前記第1の付属部及び前記第2の付属部の複数の異なる相対的位置において、前記第1の歯列と噛み合うように構成される、
装置。
[2]
前記チャンバは、内部に血液フィルタを保持するように構成される、
上記[1]に記載の装置。
[3]
前記チャンバ内に配置され、前記チャンバを通る前記血液の流れに応答して動くように構成された1又は2以上の可動体をさらに備え、前記チャンバの壁の少なくとも一部は、前記可動体が見えるように透明である、
上記[1]に記載の装置。
[4]
前記第1の付属部及び前記第2の付属部は、前記チャンバの壁と連続する、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の装置。
[5]
前記第1の付属部及び前記第2の付属部は、前記第1の歯列及び前記第2の歯列が互いから解放された時に、前記チューブが狭窄していないデフォルトの相対的位置に戻るように構成される、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の装置。
[6]
前記第1の付属部は、前記チャンバから突出する第1の後方アームと、前記第1の後方アームに対して角度を成し、前記第1の開口部及び前記第1の歯列を定めるように成形された第1の前方アームとを含み、
前記第2の付属部は、前記チャンバから突出する第2の後方アームと、前記第2の後方アームに対して角度を成し、前記第2の開口部及び前記第2の歯列を定めるように成形された第2の前方アームとを含む、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の装置。
[7]
前記第1の歯列及び前記第2の歯列内の前記歯の各々は、前記第1の歯列及び前記第2の歯列が互いに対して前進することによって前記チューブが狭窄するように後方に傾斜する、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の装置。
[8]
前記チューブは、前記位置のいずれにおいても完全に狭窄しない、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の装置。
【外国語明細書】