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特開2024-61734新規変形免疫グロブリンFC融合タンパク質及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061734
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】新規変形免疫グロブリンFC融合タンパク質及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240426BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240426BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240426BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240426BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240426BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240426BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240426BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240426BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/09 Z
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N15/12
C07K19/00
C07K14/47
A61K39/395 V
A61K47/68
A61K38/02
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024026636
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2021568433の分割
【原出願日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/847,470
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521498069
【氏名又は名称】プロジェン・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PROGEN CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】チン,ヒョンタク
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ウンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ジェイン
(57)【要約】
【課題】ADCC及びCDCのようなエフェクター機能なしに融合された治療タンパク質がより長い半減期を示しながらも、生理活性タンパク質の生成と活性には影響を及ぼさない新規変形Fcドメインタンパク質を提供すること。
【解決手段】新規免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質及びその使用を提供する。本発明の一実施例による免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質は、他の生物学的活性タンパク質と融合タンパク質の形態に発現させる際、該当生物学的活性タンパク質の生体内半減期を増加させるだけでなく、ADCCやCDCのようなエフェクター機能を有効に抑制することで、予期せぬ副作用を最小化することができるという利点を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1乃至4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む変形IgG4 Fcドメインタンパク質の18番目及び196番目のアミノ酸が他のアミノ酸に変異されている、免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項2】
前記18番目のアミノ酸の変異が、T18N、T18K、及びT18Qからなる群より選択される変異である、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項3】
前記196番目のアミノ酸の変異が、M196A、M196F、M196I、M196L、M196V、M196P、及びM196Wからなる群より選択される変異である、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項4】
配列番号5乃至9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項5】
少なくとも1つの生物学的活性タンパク質(API、active pharmaceutical ingredient)が、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端及び/またはC-末端に連結されている、融合タンパク質。
【請求項6】
前記生物学的活性タンパク質が、リンカーペプチドまたは抗体のヒンジ領域によって前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端またはC-末端に連結されている、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記生物学的活性タンパク質が、サイトカイン、酵素、血液凝固因子、膜受容体の細胞外ドメイン、成長因子、ペプチドホルモン、または抗体ミメティックである、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質または請求項5に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項10】
請求項5に記載の融合タンパク質を含む同形二量体。
【請求項11】
請求項5に記載の融合タンパク質を含む異形二量体。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質がKnobs-into-Holes構造を有する、請求項11に記載の異形二量体。
【請求項13】
請求項5に記載の融合タンパク質、請求項10に記載の同形二量体、及び請求項11に記載の異形二量体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含む、組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、またはそれを含む同形二量体または異形二量体を個体に投与するステップを含む、前記生物学的活性タンパク質の生体内半減期を延長する方法。
【請求項15】
治療的に有効な量の請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、または前記融合タンパク質を含む同形二量体または異形二量体を個体に投与するステップを含む、前記個体の疾患治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月14日出願の米国特許出願第62/847,470号に対して工業所有権の保護に関するパリ条約による優先権の利益を主張し、その内容全体は引用により本明細書中に包含させる。
【背景技術】
【0002】
本発明は新規変形免疫グロブリンFc融合タンパク質及びその用途に関し、より詳しくは、半減期が増加され、ADCCやCDCのような抗体Fc断片から起因する副作用を最小化することができる新規変形免疫グロブリンFc融合タンパク質及びその用途に関する。
【0003】
免疫グロブリン(抗体)Fcドメインは多様な治療および診断タンパク質のための担体タンパク質として広く使用されている。抗体は2つの機能的に独立した部分、つまり、抗原に結合する「Fab」と知られている可変ドメインと、食細胞による補体の活性化及び攻撃のようなエフェクター機能に連結される「Fc」と知られている不変ドメインを含む。Fcは血清半減期が長く、Fabは寿命が短い(Capon et al.,Nature 337:525-531、1989)。治療タンパク質またはペプチドと共に構成される際、Fcドメインはより長い半減期を提供することができるか、Fc受容体結合、タンパク質A結合、補体固定、そして、更には胎盤伝達のような機能を統合する。特に、このようなFcドメインのより長い半減期は、胎児性Fc受容体(Neonatal Fc Receptor;以下、「FcRn」と称する)結合親和性に起因する。
【0004】
これまでFcドメイン及び生物学的活性タンパク質を融合するための多くの技術が開発され、生物学的活性タンパク質の半減期を増加させてきた。その代表的な例としては、TNFα受容体2がIgG1抗体のFcドメインに連結される融合タンパク質であるエタネルセプト(商標名:Enbrel(登録商標))が挙げられる(米国特許第5,447,851号)。その他にもIgG抗体のFcドメインに融合される一部のサイトカイン及び成長ホルモンも存在する。
【0005】
しかし、細胞表面受容体の細胞外ドメインとしての融合とは異なって、水溶性タンパク質のIgGへの融合は非-融合サイトカインまたは成長因子に比べ生物学的活性の減少を引き起こす。キメラタンパク質は二量体として存在し、互いに近接した2つの活性タンパク質の存在によって受容体のような標的分子に結合するのに立体障害(steric hinderance)を誘発する。よって、効率的なFc融合タンパク質を生成するためにはこのような問題を克服すべきである。
【0006】
Fc融合技術の他の限界は、意図していない免疫反応である。免疫グロブリンのFcドメインはまた、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)のようなエフェクター(effector)機能を有する。特に、4つのヒトIgGイソ型は活性化Fcγ受容体(FcγRI、FcγRIIa、及ビFcγRIIIaを含むFcγR)、抑制性FcγRIIb受容体及び補体(C1q)の第1因子とは異なる親和度を有して結合して、非常に異なるエフェクターの機能を誘発する(Bruhns,P.et al.,Blood 113(16):3716-3725、2009)。FcγRまたはC1qに対するIgGの結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基に依存する。しかし、Fcドメインのエフェクター機能は、Fcドメインに融合された治療用タンパク質が生体内で個体に投与される際に個体で細胞死、サイトカイン分泌または炎症を引き起こし、よって、これらが必ずしも必要なものでなければ、所望しない反応を減少させるために抑制すべきである。
【0007】
前記確認された問題点を克服するために、US2006/0074225A1,Armour,K.L.et al.(Eur.J.Immunol.,29(8):2613-2624,1999),Shields,R.L.et al.(J.Biol.Chem.276(9): 6591-6604,2001),そしてIdusogie,EE.et al.(J.Immunol.164(8):4178-4184,2000)に記載のものを含んで、一部変形されたFcドメインタンパク質が開発されている。
【0008】
併せて、半減期の改善にもかかわらず、Fcドメインと融合された治療タンパク質の半減期を更に改善する必要性も依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記従来技術は満足できる半減期の延長水準を達成することができないか、他の副作用を有するという短所を有する。
【0010】
よって、本発明は上述した多様な問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、ADCC及びCDCのようなエフェクター機能なしに融合された治療タンパク質がより長い半減期を示しながらも、生理活性タンパク質の生成と活性には影響を及ぼさない新規変形Fcドメインタンパク質を提供することである。しかし、このような課題は例示的なものであって、本発明の範囲を制限しない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によると、配列番号1乃至4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む変形(modified)IgG4 Fcドメインタンパク質の18番目及び196番目のアミノ酸が他のアミノ酸に変異された免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質が提供される。
【0012】
本発明の他の一観点によると、一つ以上の生物学的活性タンパク質(API、active pharmaceutical ingredient)が前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端及び/またはC-末端に連結された融合タンパク質が提供される。
【0013】
本発明のまた他の一観点によると、前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0014】
本発明の更に他の一観点によると、前記融合タンパク質を含む同形(homo)または異形(hetero)-二量体が提供される。
【0015】
本発明の更に他の一観点によると、前記融合タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド、または前記同形または異形-二量体を有効成分として含む組成物が提供される。
【0016】
本発明の更に他の一観点によると、前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、またはそれを含む同形または異形-二量体を個体に投与するステップを含む前記生物学的活性タンパク質の生体内半減期を延長する方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施例による免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質は、他の生物学的活性タンパク質と融合することで前記生物学的活性タンパク質の半減期を増加させながらも、抗体基盤のタンパク質治療剤を使用する際の副作用であるADCCやCDCのような抗体のFcドメイン依存性エフェクター機能を不活性化することができる。しかし、本発明の効果は上述した内容な限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例による単一特異性融合タンパク質の構造を示す概要図である。
図2】本発明の一実施例による単一特異性融合タンパク質の構造を示す概要図である。
図3】本発明の一実施例による単一特異性融合タンパク質の構造を示す概要図である。
図4】本発明の一実施例による二重特異性融合タンパク質の構造を示す概要図である。
図5】本発明の一実施例による二重特異性融合タンパク質で構成される同形二量体の構造を示す概要図である。
図6】本発明の一実施例による単一特異性融合タンパク質の同形二量体の構造を示す概要図である。
図7】本発明の一実施例による2つの互いに異なる単一特異性融合タンパク質の異形二量体の構造を示す概要図である。
図8】本発明の一実施例による2つの異なる二重特異性融合タンパク質で構成される異形二量体の構造を示す概要図である。
図9】本発明の一実施例によるIgG1のヒンジ領域とリンカーペプチド(linker peptide)を有する単一特異性融合タンパク質の同形二量体の構造を示す概要図である。
図10】本発明の一実施例による2つの互いに異なる単一特異性融合タンパク質で構成される異形二量体の構造を示す概要図である。
図11】本発明の一実施例によってC-末端に生物学的活性タンパク質を有する単一特異性融合タンパク質の同形二量体の構造を示す概要図である。
図12】本発明の一実施例によってC-末端に生物学的活性タンパク質を有する2つの異なる二重特異性融合タンパク質で構成される異形二量体の構造を示す概要図である。
【0019】
図13】FcRnによって抗体がリサイクルされる過程を概略的に示す概要図である。
図14a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-11)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図14b】生産されたPG-11をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図15a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-22)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図15b】生産されたPG-22をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図16a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-088)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図16b】生産されたPG-088をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図17a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-088m)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図17b】生産されたPG-088mをサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図18a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-075)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図18b】生産されたPG-075を抗-IgG抗体を利用したウエスタンブロット分析で結果を示す写真である。
図19a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-110)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図19b】生産されたPG-110をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図20a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-129)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図20b】生産されたPG-129をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図21a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-400)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図21b】生産されたPG-400をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図22a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-410)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
【0020】
図22b】生産されたPG-410をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラムである。
図23】本発明の一実施例による異形二量体タンパク質MG12-4(左側)及びMG12-5(右側)の試料生産結果を示すSDS-PAGE分析結果を示す写真である。
図24a】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-50-1)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図24b】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-50-2)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真である。
図24c】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-073)の試料生産結果を示すSDS-PAGEの分析結果を示す写真(左側)、及び前記SDS-PAGE分析結果に基づいて推定される前記融合タンパク質の多様な切断形態の構造を示す概要図(右側)である。
図24d】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-210-5)の試料生産結果を示すSDS-PAGE分析結果を示す写真(上端)、及び生産されたPG-210-5をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラム(下端)である。
図24e】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-210-6)の試料生産結果を示すSDS-PAGE分析結果を示す写真(上端)、及び生産されたPG-210-6をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)で分析した結果を示すクロマトグラム(下端)である。
図25】本発明の一実施例によって製造された融合タンパク質(PG-11)と組換えヒト胎児性Fc受容体(rhFcRn)との間の結合親和度を表面プラズモン共鳴(SPR)分析を利用して分析した結果を示す一連のグラフである。3つのグラフは、それぞれ独立して施行された3度の試験結果を示す。
図26】本発明の一実施例によって製造された融合タンパク質(PG-11、上端)と組換えヒト胎児性Fc受容体(rhFcRn)との間の結合親和度をIgG4 Fcドメインを使用しているTrulicity(下端)と比較し、表面プラズモン共鳴(SPR)分析を利用して分析した結果を示す一連のグラフである。左側中間及び右側のグラフは、それぞれ独立して施行された3度の試験結果を示す。
図27】本発明の一実施例によって製造された融合タンパク質(PG-11、上端)と組換えヒト胎児性Fc受容体(rhFcRn)との間の結合親和度をIgG1 Fcドメインが含まれたヒト型組換え抗体であるリツキシマブ(Rituximab、下端)と比較し、表面プラズモン共鳴(SPR)分析を利用して分析した結果を示す一連のグラフである。下端の左側中間及び右側のグラフは、それぞれ独立して施行された3度の試験結果を示す。
図28】抗-PD-L1 scFγ及びIL-2タンパク質が本発明の一実施例によるNTIGタンパク質のN-末端及びC-末端にそれぞれ連結された二重特異性融合タンパク質(左側)と、対照群として抗-PD-L1 scFγ及びIL-2タンパク質が配列番号2の変形IgG4 Fcタンパク質のN-末端及びC-末端にそれぞれ連結された二重特異性融合タンパク質(右側)のrhFcRnとの結合親和度を、rhFcRnをリガンドとし、前記2つの物質を検体としてSPR分析によって比較分析した結果を示す一連のグラフである。
図29】抗-PD-L1 scFγ及びIL-2タンパク質が本発明の一実施例によるNTIGタンパク質のN-末端及びC-末端にそれぞれ連結された二重特異性融合タンパク質(左側)と、対照群として抗-PD-L1 scFγ及びIL-2タンパク質が配列番号2の変形IgG4 Fcタンパク質のN-末端及びC-末端にそれぞれ連結された二重特異性融合タンパク質(右側)のrhFcRnとの結合親和度を、前記図28とは逆に、前記2つの物質をリガンドとし、rhFcRnを検体としてSPR分析によって比較分析した結果を示す一連のグラフである。
【0021】
図30】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-11)のFcガンマ受容体I(FcgR1、左側)とFcガンマ受容体IIIa(FcgR3a、右側)との結合親和度をIgG1系列のヒト化抗体であるリツキシマブと比較し、BLI分析によって分析した結果を示す一連のグラフである。上端、中段、下端は、独立して施行された3度の試験結果を示す。
図31】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-11)の他の多様なFcガンマ受容体(FcgR2a、FcgR2b、FcgR3b)との結合親和度をIgG1系列のヒト化抗体であるリツキシマブと比較して、BLI分析によって分析した結果を示す一連のグラフである。対照群としてはPBSを使用する。
図32】本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-11)の補体C1qとの結合親和度をリツキシマブと比較し分析した結果を示すグラフである。
図33】本発明の多様な一実施例によるGLP-2類似体を含む融合タンパク質(PG-22、PG-210-5、PG-210-6、MG12-4、及びMG12-5)のGLP-2活性を比較分析した結果を示す一連のグラフである。上下端の2つのグラフは、独立して施行された2度の試験結果をそれぞれ示す。
図34】本発明の実施例2-3の二量体性IL-10変異体融合タンパク質(左側)、及び実施例2-4の単量体性IL-10変異体融合タンパク質(右側)の処理濃度によるIL-10R1との親和度をBLI分析で確認した結果を示す一連のグラフである。
図35a】本発明の一実施例による融合タンパク質PG-210-6の処理濃度によるマクロファージにおけるTNF-αの放出程度をELISA分析で定量分析した結果を示すグラフである。
図35b】本発明の一実施例による融合タンパク質PG-410の処理濃度によるマクロファージにおけるTNF-αの放出程度をELISA分析で定量分析した結果を示すグラフである。
図35c】本発明の一実施例による融合タンパク質PG-110及びPG-088mの処理濃度によるマクロファージにおけるTNF-αの放出程度をELISA分析で定量分析した結果を示すグラフである。
図36a】比較例であって、FcεRIα-modified IgG4 Fc(上端)と本発明の実施例3-3の融合タンパク質FcεRIα-NTIG-IL-10Vm(下端)のマウスIgEとの親和度をBLI分析で分析した結果を示す一連のグラフである。
図36b】本発明の実施例3-3の融合タンパク質FcεRIα-NTIG-IL-10VmのヒトIgEとの親和度をBLI分析で分析した結果を示すグラフである。
図37】本発明の一実施例による融合タンパク質PG-110及びFcεRIα-modified IgG4 FcのIgE抑制活性をβ-ヘキソサミニダーゼ放出分析によって分析した結果を示すグラフである。
図38】本発明の一実施例による融合タンパク質PG-400(左側)及びPG-410(右側)のCD40Lとの結合親和度をBLI分析で分析した結果を示すグラフである。
図39】本発明の一実施例による融合タンパク質PG-110の多様な投与経路(SC、IV、IP、及びIM)による薬力学的プロファイルを分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一観点によると、配列番号1乃至4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む変形IgG4 Fcドメインタンパク質の18番目及び196番目のアミノ酸が他のアミノ酸に変異された免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質が提供される。
【0023】
本文書で使用される用語である「変形IgG4免疫グロブリンFcドメインタンパク質」または「変形IgG4 Fcドメインタンパク質」は、免疫グロブリンのFcドメインの構成要素であるヒンジ、CH2、及びCH3の全部及び一部が互いに異なる類型の抗体分子、つまり、IgG、IgD、IgE、IgMなどから由来するものを組み合わせて製造された組換え抗体Fcドメインタンパク質を意味する。代表的な変形IgG4免疫グロブリンFcドメインタンパク質としては、韓国特許第897938号に開示されたものが存在する。
【0024】
本文書で使用される用語である「免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質」または「Fcドメイン変異体タンパク質」は、前記変形IgG4 Fcドメインタンパク質内の少なくとも一つ以上のアミノ酸が置換、欠失、または付加された変異体タンパク質を意味する。
【0025】
前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質において、前記18番目アミノ酸の変異はT18N、T18K、及びT18Qからなる群より選択される変異であり、前記196番目アミノ酸の変異はM196A、M196F、M196I、M196L、M196V、M196P、及びM196Wからなる群より選択される変異であり、前記18番目アミノ酸の変異はT18Qであることがより好ましく、前記196番目アミノ酸の変異はM196Lであることがより好ましい。
【0026】
前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質は、C-末端にリシン(K)が除去されるか除去されないものである。リシンの除去可否は、C-末端に他のAPIが連結されるのか否かによって決定される。例えば、本発明の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のC-末端にAPIが連結されればリシンが除去されることがタンパク質生産の側面で有利であり、C-末端にAPIが連結されなければあえてリシンを除去する必要がない。
【0027】
前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質は、配列番号5乃至9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
本発明の他の一観点によると、一つ以上の生物学的活性タンパク質(API、active pharmaceutical ingredient)が前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端及び/またはC-末端に連結された融合タンパク質が提供される(図1乃至4)。
【0029】
本文書で使用される用語である「生物学的活性タンパク質」は、人体の組織及び器官を構成するタンパク質である構造タンパク質とは区分される概念であり、人体内で起こる代謝作用や細胞間、または細胞内シグナル伝達などの特定の機能を行うタンパク質であって、該当タンパク質の欠乏または過剰によって引き起こされる疾患の診断及び/または治療に使用される。
【0030】
図1乃至図4に示したように、本発明の融合タンパク質(10乃至40)において、生物学的活性タンパク質または医薬品有効成分(11)(API)は、IgG1のヒンジ領域(13)及び/またはGSリンカーのようなリンカーペプチド(14)によって免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質(12)のN-末端またはC-末端に連結される。しかし、ヒンジ領域(13)は二量体化に必須的である。生物学的活性タンパク質(11)がIgG1のヒンジ領域(13)に直接連結される場合、ヒンジ領域(つまり、配列番号20及び21)は図3に示したようにリンカーとみなされる。ヒンジ領域は、柔軟性及びシステイン残基によって分子間ジスルフィド結合を形成し得る二量体化部分構造を提供する。
【0031】
本発明の一実施例による融合タンパク質は一つまたは2つの生物学的活性タンパク質を含む。前記融合タンパク質が2つの生物学的活性タンパク質を有する場合、融合タンパク質はそれ自体で二重特異性を示す(図4)。図4aに示したように、第1生物学的活性タンパク質(11a)はIgG1のヒンジ領域(13)によって免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質(12)のN-末端に連結され、第2生物学的活性タンパク質(11b)は免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質(12)のC-末端にリンカーペプチド(14)によって連結される。併せて、図4bに示したように、IgG1のヒンジ(13)のN-末端に更にGSリンカーのようなリンカーペプチド(14)が連結され、リンカーペプチド(14)のN-末端に第1生物学的活性タンパク質(11a)が連結され、第2生物学的活性タンパク質(11b)は免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質(12)のC-末端にリンカーペプチド(14)によって連結される。この場合、N-末端に連結されるリンカーペプチド(14)とC-末端に連結されるリンカーペプチド(14)は同じ配列であり、GSリンカーのような性質を有するが、具体的な配列は一部異なり得る。
【0032】
前記融合タンパク質において、前記生物学的活性タンパク質は、サイトカイン、酵素、血液凝固因子、膜受容体の細胞外ドメイン、成長因子、ペプチドホルモン、または抗体ミメティックである。
【0033】
前記融合タンパク質において、前記リンカーペプチドの長さは2乃至60アミノ酸長(a.a.)、4乃至55a.a.、5乃至50a.a.、5乃至46a.a.、5乃至45a.a.、または5乃至30a.a.である。前記リンカーペプチドのうち免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端にAPIを連結するリンカーペプチドはIgG1の抗体重鎖のヒンジ領域の一部または全部を含み、ヒンジ領域の一部を含む場合、ヒンジ領域の一部のN-末端またはC-末端に人工的なリンカーペプチドが追加されるものである。併せて、ヒンジ領域は2つ以上の抗体重鎖のヒンジ領域の部分が混合されたハイブリッド状のヒンジ領域であってもよい。前記リンカーペプチドは、詳しくは、GGGGSGGGGSGGGGSEKEKEEQEERTHTCPPCP(配列番号14)、RNTGRGGEEKKGSKEKEEQEERETKTPECP(配列番号15)、GGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCP(配列番号16)、GSGGGSGTLVTVSSESKYGPPCPPCP(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSEPKSSDKTHTCPPCP(配列番号18)、EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号19)、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号20)、GGGGSGGGGSGGGGSAKNTTAPATTRNTTRGGEEKKKEKEKEEQEERTHTCPPCP(配列番号21)、A(EAAAK)ALEA(EAAAK)A(配列番号22)、(GS)(nは1~10の整数である、単位体配列番号23)、(GSSGGS)(単位体:配列番号24、nは1乃至10の整数)、SGGGSGGGGSGGGGSGGEEQEEGGS(配列番号25)、AAGSGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号26)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号27)、EGKSSGSGSESKST(配列番号28)、GSAGSAAGSGEF(配列番号29)、(EAAAK)(単位体:配列番号30、nは1乃至10の整数)、CRRRRRREAEAC(配列番号31)、GGGGGGGG(配列番号32)、GGGGGG(配列番号33)、PAPAP(配列番号34)、(Ala-Pro)(nは1~10の整数)、VSQTSKLTRAETVFPDV(配列番号35)、PLGLWA(配列番号36)、TRHRQPRGWE(配列番号37)、AGNRVRRSVG(配列番号38)、RRRRRRRR(配列番号39)、GSSGGSGSSGGSGGGDEADGSRGSQKAGVDE(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、AEAAAKEAAAAKA(配列番号42)、GFLG(配列番号43)、AAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECP(配列番号44)、GGSGG(配列番号45)、GGSGGSGGS(配列番号46)、GGGSGG(配列番号47)、及びGSTSGSGKPGSGEGS(配列番号48)からなる群より選択される一つまたはそれ以上の組み合わせである。
【0034】
この際、前記サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、または腫瘍怪死因子であり、前記ケモカインは CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL16、XCL1、XCL2、またはCX3CL1であり、前記インターフェロンはインターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-ε、インターフェロン-κ、インターフェロン-δ、インターフェロン-γ、インターフェロン-τ、インターフェロン-ω、インターフェロン-ν、またはインターフェロン-ζであり、前記インターロイキンはIL-2、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12α、IL-12β、IL-13、IL-15,またはIL-21であり、前記コロニー刺激因子はマクロファージコロニー刺激因子(macrophage colony-stimulating factor、M-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor、GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor、G-CSF)、またはPromegapoietinであり、前記腫瘍怪死因子はTNFα、TNFβ、CD40リガンド(CD40L)、Fasリガンド(FasL)、TNF-関連アポトーシス誘導リガンド(TNF-related apoptosis inducing ligand、TRAIL)、またはLIGHTである。
【0035】
前記融合タンパク質において、前記酵素は組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue-type plasminogen activator;tPA)、ウロキナーゼ(urokinase)、アルテプラーゼ(alteplase)、レテプラーゼ(reteplase)、テネクテプラーゼ(tenecteplase)、ストレプトキナーゼ(streptokinase)、anlsteplase、スタフィロキナーゼ(taaphylokinase)、ナットウキナーゼ(nattokinase)、ルンブロキナーゼ(limbrokinase)、コラゲナーゼ、グルタナーゼ(glutenase)、アルグルセラーゼ(alglucerase)、ベラグルセラーゼ(velaglucerase)、イミグルセラーゼ(imiglucerase)、タリグルセラーゼ(taliglucerase)-α、β-グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、α-ガラクトシダーゼA、α-グルコシダーゼ、α-L-イズロニダーゼ(iduroniase)、アリールスルファターゼ(arylsulphatase)B、アガルシダーゼ(agalsidase)、アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase)、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(phenylalanine ammonia lyase)、ドルナーゼ(dornase)、ラスブリカーゼ(rasburicase)、ペグロティカーゼ(pegloticase)、グルカルピダーゼ(glucarpidase)またはオクリプラスミン(ocriplasmin)であるが、これに限らない。
【0036】
前記融合タンパク質において、前記血液凝固因子はfactor VIIIまたはfactor IVである。
【0037】
前記融合タンパク質において、前記膜受容体は受容体型チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase、RTK)スーパーファミリー、T細胞受容体、Fc受容体、ケモカイン状態、Toll-like受容体ファミリー、グアニル酸シクラーゼ-連結受容体(guanylyl cyclase-coupled receptor、GCCR)、または受容体セリン/トレオニンキナーゼであり、前記受容体型チロシンキナーゼはEGFRファミリー、インスリン受容体ファミリー、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)ファミリー、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)ファミリー、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)ファミリー、大腸がんキナーゼ(colon cancer kinase、CCK)ファミリー、神経成長因子受容体(NGFR)ファミリー、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)ファミリー、エリスロポエチン-生産ヒト肝細胞受容体(EphR)ファミリー、チロシンプロテインキナーゼ受容体(AXL)ファミリー、アンジオポエチン受容体(TIER)ファミリー、受容体型チロシンキナーゼ連関受容体(RYKR)ファミリー、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー、RET(rearranged during transfection)ファミリー、ロイコサイト受容体型チロシンキナーゼ(LTK)ファミリー、ROR(receptor tyrosine kinase-like orphan receptors)ファミリー、または筋肉特異的キナーゼ(MuSK)ファミリー、CD80(B7.1)、CD83であり、前記Fc受容体はFcγ状態、Fcα受容体、またはFcε受容体であり、前記サイトカイン受容体は第1型サイトカイン受容体、第2型サイトカイン受容体、腫瘍怪死因子受容体ファミリー、ケモカイン受容体、TGF-β受容体ファミリーであり、前記Toll様受容体ファミリーはTLR1、TLR2,TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、またはTLR13であり、前記グアニル酸シクラーゼ-連結受容体はナトリウム利尿因子受容体1(NPR1)、NPR2、またはNPR3であり、前記受容体セリン/トレオニンキナーゼはTGF-βスーパーファミリー受容体、骨形成タンパク質(BMP)受容体、またはアクチビン受容体様キナーゼ(ALK)である。
【0038】
前記融合タンパク質において、前記成長因子はアドレノメデュリン(adrenomedullin)、アンジオポエチン(angiopoietin)、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein)、毛様体神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor)、白血病阻止因子(leukemia inhibitory factor)、上皮成長因子(epidermal growth factor、EGF)、エフリン(ephrin)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor、GDNF)ファミリー、成長分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor、HGF)、肝癌細胞由来増殖因子(hepatoma-derived growth factor、HDGF)、インスリン、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor、IGF)、表皮細胞増殖因子(keratinocyte growth factor、KGF)、移動刺激因子(migration-stimulating factor、MSF)、マクロファージ刺激因子(macrophage-stimulating factor)、ニューレグリン(neuregulin)、神経栄養因子(neurotrophin)、胎盤増殖因子(placental growth factor、PGF)、血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor、PDGF)、T細胞増殖因子(TCGF)、トロンボポエチン(thrombopoietin、TPO)、トランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor、TGF)ファミリー、または血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)である。
【0039】
前記融合タンパク質において、前記ペプチドホルモンはヒト成長ホルモン(hGF)、GLP-1類似体、GLP-2類似体、インスリン、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone)、アミリン(amylin)、アンジオテンシン(angiotensin)、ニューロペプチドY(neuropeptide Y)、エンケファリン(enkephalin)、ニューロテンシン(neurotensin)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide)、カルシトニン(calcitonin)、コレシストキニン(choloecystokinin)、ガストリン(gastrin)、グレリン(ghelin)、グルカゴン(glucagon)、卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone)、レプチン(leptin)、メラニン細胞刺激ホルモン(melanocyte-stimulating hormone、MSH)、オキシトシン(oxytocin)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone)、プロラクチン(prolactin)、レニン(renin)、ソマトスタチン(somatostatin)、甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone、TSH)、チロトロピン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone、TRH)、バソプレッシン(vasopressin)、または血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide)である。
【0040】
前記融合タンパク質において、前記抗体ミメティックはscFv、VNAR、VH、affibody、affilin、affimer、affitin、alphabody、anticalin、avimer、DARPin、Fynomer、Kunitz domain peptide、monobody、repebody、VLR、またはnanoCLAMPである。
【0041】
前記融合タンパク質において、前記IL-10タンパク質は87番目アミノ酸であるイソロイシンがアラニンに置換されたIL-10変異体タンパク質であり、134番目アミノ酸であるアスパラギンと135番目アミノ酸であるリシンとの間に6乃至10a.a.の長さを有するリンカーペプチドが挿入された単量体性IL-10変異体タンパク質であり、配列番号54または56に記載されるアミノ酸配列からなる。
【0042】
本発明で使用される用語である「融合タンパク質」は、2つ以上のタンパク質またはタンパク質内の特定機能を担当するドメインがそれぞれのタンパク質またはドメインが本然の機能を担当するように連結された組み換えタンパク質(recombinant protein)を意味する。前記2つ以上のタンパク質またはドメインの間には通常的に柔軟な構造を有するリンカーペプチド(linker peptide)が挿入される。前記リンカーペプチドは、GGGGSGGGGSGGGGSEKEKEEQEERTHTCPPCP(配列番号14)、RNTGRGGEEKKGSKEKEEQEERETKTPECP(配列番号15)、GGGGSGGGGSGGGGSEPKSCDKTHTCPPCP(配列番号16)、GSGGGSGTLVTVSSESKYGPPCPPCP(配列番号17)、GGGGSGGGGSGGGGSEPKSSDKTHTCPPCP(配列番号18)、EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号19)、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号20)、GGGGSGGGGSGGGGSAKNTTAPATTRNTTRGGEEKKKEKEKEEQEERTHTCPPCP(配列番号21)、A(EAAAK)ALEA(EAAAK)A(配列番号22)、(GS)(nは1~10の整数である、単位体配列番号23)、(GSSGGS)(単位体:配列番号24、nは1乃至10の整数)、SGGGSGGGGSGGGGSGGEEQEEGGS(配列番号25)、AAGSGGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号26)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号27)、EGKSSGSGSESKST(配列番号28)、GSAGSAAGSGEF(配列番号29)、(EAAAK)(単位体:配列番号30、nは1乃至10の整数)、CRRRRRREAEAC(配列番号31)、GGGGGGGG(配列番号32)、GGGGGG(配列番号33)、PAPAP(配列番号34)、(Ala-Pro)(nは1~10の整数)、VSQTSKLTRAETVFPDV(配列番号35)、PLGLWA(配列番号36)、TRHRQPRGWE(配列番号37)、AGNRVRRSVG(配列番号38)、RRRRRRRR(配列番号39)、GSSGGSGSSGGSGGGDEADGSRGSQKAGVDE(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、AEAAAKEAAAAKA(配列番号42)、GFLG(配列番号43)、AAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECP(配列番号44)、GGSGG(配列番号45)、GGSGGSGGS(配列番号46)、GGGSGG(配列番号47)、及びGSTSGSGKPGSGEGS(配列番号48)が含まれる。
【0043】
本文書で使用される用語である「抗体」は、免疫グロブリン(immunoglobulin)分子であって2つの同じ重鎖及び2つの同じ軽鎖が結合して生成される二重四量体タンパク質で、前記軽鎖の可変領域(V)及び前記重鎖の可変領域(V)によって構成される抗原結合部位(antigen-binding site)によって抗原特異的結合をし、それによって抗原特異的体液性免疫反応(humoral immune response)を誘発する。抗体にはその起源によってIgA、IgG、IgD、IgE、IgM、IgYなどが存在する。
【0044】
本文書で使用される用語である「抗体の抗原結合断片(antigen-binding fragment of antibody)」は、抗体から由来する抗原結合能を有する断片であって、抗体をタンパク質切断酵素で切断して生成された断片はもちろん、組換え方式で生成された単一鎖断片をいずれも含むが、これにはFab、F(ab’)、scFv、diabody、triabody、sdAb、及びVHが含まれる。
【0045】
本文書で使用される用語である「Fab」は、抗原結合抗体断片(fragment antigen-binding)であり、抗体分子をタンパク質分解酵素であるパパインで切断して生成される断片で、V-CH1及びV-Cの2つのペプチドの二量体であって、パパインによって生成された他の断片はFc(fragment crystallizable)と称する。
【0046】
本文書で使用される用語である「F(ab’)」は、抗体をタンパク質分解酵素であるペプシンで切断して生成される断片のうち抗原結合部位を含む断片であって、前記2つのFabがジスルフィド結合で連結された四量体状を示す。ペプシンによって生成された他の断片はpFc’と称する。
【0047】
本文書で使用される用語である「Fab」は、前記F(ab’)を弱い還元条件で分離することで生成されるFabと構造が類似した分子である。
【0048】
本文書で使用される用語である「scFv」は「single chain variable fragment」の略語であって実際の抗体の断片ではないが、抗体の重鎖可変領域(V)と軽鎖可変領域(V)を約25a.a.サイズのリンカーペプチドで連結して製造した一種の融合タンパク質であり、固有の抗体断片ではないにもかかわらず、抗原結合能を有すると知られている(Glockshuber et al.,Biochem.29(6):1362-1367,1990)。
【0049】
本文書で使用される用語である「diabody」及び「triabody」は、それぞれ2つ及び3つのscFvがリンカーによって連結された形態の抗体断片を意味する。
【0050】
本文書で使用される用語である「sdAb(single domain antibody)」は、ナノボディ(nanobody)とも称される抗体の単一可変領域断片からなる抗体断片である。主に重鎖から由来するsdAbが使用されるが、軽鎖から由来する単一可変領域断片も抗原に対して特異的結合すると報告されている。重鎖及び軽鎖からなる通常の抗体とは異なって、単一鎖の二量体のみからなるサメ抗体の可変領域断片からなるVNAR、及びラクダ類抗体の可変領域断片からなるVHもsdAbに含まれる。
【0051】
本文書で使用される用語である「抗体ミメティック(antibody mimetic)」は、2つの重鎖及び2つの軽鎖が異種四合体の4次構造を形成して機能を発揮する通常の全長抗体とは異なって、monobody、可変性リンパ球受容体(VLR)などのように非抗体由来のタンパク質の骨組から製造される抗体と類似した機能、つまり、抗原結合能を有するタンパク質を含む概念である。このような抗体ミメティックとしては、タンパク質AのZドメイン由来のAffibody(Nygren,P.A.,FEBS J.275(11):2668-2676,2008)、Gamma-B crystallinまたはUbiquitin由来のAffilin(Ebersbach et al.,J.Mol.Biol.372(1):172-185,2007)、Cystatin由来のAffimer(Johnson et al.,Anal.Chem.84(15):6553-6560,2012)、Sac7d由来のAffitin(Krehenbrink et al.,J.Mol.Biol.383 (5):1058-1068,2008)、Triple helix coiled coilタンパク質由来のAlphabody(Desmet et al.,Nat.Commun.5:5237,2014)、lipocalin由来のAnticalin(Skerra et al.,FEBS J.275(11):2677-2683,2008)、多様な膜受容体のドメイン由来のAvimer(Silverman et al.,Nat.Biotechnol.23(12):1556-1561,2005)、Ankyrin repeat motif由来のDARPin(Stumpp et al.,Drug Discov.Today.13(15-16):695-701,2008)、Fynタンパク質のSH3ドメイン由来のFynomer(Grabulovski et al.,J.Biol.Chem.282(5):3196-3204,2007)、多様なタンパク質阻害剤のKunitzドメイン由来のKunitz domain peptide(Nixon and Wood,Curr.Opin.Drug Discov.Dev.9(2):261-268,2006)、フィブロネクチンの10番目の第3型ドメイン由来のmonobody(Koide and Koide,Methods Mol.Biol.352:95-109,2007)、炭水化物結合モジュール32-2由来のnanoCLAMP(Suderman et al.,Protein Exp.Purif.134:114-124,2017)、ヌタウナギ由来の可変性リンパ球受容体(variable lymphocyte receptor,VLR)(Boehm et al.,Ann.Rev.Immunol.30:203-220,2012)、及び前記VLRを基に抗原親和性を向上させるように操作されたrepebody(Lee et al.,Proc.Natl:Acad.Sci.USA,109:3299-3304,2012)などが含まれる。
【0052】
本発明のまた他の一観点によると、前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0053】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号5乃至9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質を含合化するものであればいかなるものを使用してもよく、該当タンパク質を生産するのに使用される宿主細胞の種類にコドン最適化されたものである。このような宿主細胞によるコドン最適化技術は業界でよく知られている(Fuglsang et al.,Protein Expr.Purif.F31(2):247-249,2003)。より好ましくは、配列番号10乃至13からなる群より選択される核酸配列を含む。
【0054】
本発明の更に他の一観点によると、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターが提供される。
【0055】
前記組換えベクターにおいて、前記ポリヌクレオチドは調節配列に作動可能に連結される遺伝子コンストラクトの形態で含まれる。
【0056】
本文書で使用される用語である「作動可能に連結される(operably linked to)」とは、目的とする拡散配列(例えば、試験管内転写/翻訳システムで、または宿主細胞で)がその発現が行われるようにする方式で前記調節配列に連結されていることを意味する。
【0057】
前記「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の調節要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む意味である。調節配列には、多くの宿主細胞で目的とする拡散が恒常的に発現されるように指示すること、特定の組織細胞でのみ目的とする拡散が発現されるように指示すること(例えば、組織特異的調節配列)、そして特定シグナルによって発現が誘導されるように指示すること(例えば、誘導性調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換された宿主細胞の選択、及び所望のタンパク質の発現水準などのような因子によって異なり得るということは当業者であれば理解できる。本発明の発現ベクターは宿主細胞に導入されて前記融合タンパク質を発現する。前記真核細胞及び原核細胞で発現を可能にする調節配列は当業者によく知られている。上述したように、これらは通常転写開始を担当する調節配列、及び選択的に転写物の転写終結及び安定化を担当するポリ-Aシグナルを含む。更なる調節配列は、転写調節因子以外にも翻訳増進因子及び/または天然組み合わせまたは異種性プロモーター領域を含む。例えば、哺乳類の宿主細胞で発現を可能にする可能な調節配列は、CMV-HSVチミジンキナーゼプロモーター、SV40、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、ヒト腎臓要素1α-プロモーター、グルココルチコイド誘導性MMTV-プロモーター(モロニーマウス腫瘍ウイルス)、メタロチオネイン誘導性またはテトラシクリン誘導性プロモーター、またはCMV増幅剤またはSV-40増幅剤などのような増幅剤を含む。神経細胞内発現のために、神経細糸プロモーター(neurofilament-promoter)、PGDF-プロモーター、NSE-プロモーター、PrP-プロモーター、またはthy-1-プロモーターなどが使用されるということが考慮されている。前記プロモーターは当分野で知られており、文献(Charron J.Biol.Chem.270:25739-25745,1995)に記述されている。原核細胞内の発現のために、lac-プロモーター、tac-プロモーター、またはtrpプロモーターを含む多数のプロモーターが開示されている。転写を開始する因子の他、前記調節配列は本発明の一実施例によるポリヌクレオチドの下流(downstream)にSV40-ポリ-A部位またはTK-ポリ-A部位のような転写終結シグナルを含んでもよい。本文書において、適当な発現ベクターは当分野で知られており、その例としては、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Parmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pGX-27(特許第1442254号)、pX(Pagano et al.,Science 255:1144-1147,1992)、酵母ツーハイブリッド(two-hybrid)ベクター、例えば、pEG202及びdpJG4-5(Gyuris et al.,Cell 75:791-803,1995)、または原核発現ベクター、例えば、λgt11またはpGEX(Amersham Pharmacia)がある。本発明の核酸分子以外にも、ベクターは分泌シグナルをコードするポリヌクレオチドを更に含んでもよい。前記分泌シグナルは当業者によく知られている。そして、使用された発現システムによって、本発明の一実施例による融合タンパク質を細胞区画に導くリーダ配列(leader sequence)が本発明の一実施例によるポリヌクレオチドのコード配列に組み合わせられるが、好ましくは解読されたタンパク質またはそのタンパク質を細胞質周辺または細胞外媒質に直接分泌するリーダ配列である。
【0058】
また、本発明のベクターは、例えば、標準組換えDNA技術によって製造されるが、標準組換えDNA技術には、例えば、平滑末端及び接着末端ライゲーション、適切な末端を提供するための制限酵素処理、不適合な結合を防止するためにアルカリホスファターゼ処理によるリン酸基の除去、及びT4 DNAライゲーズによる酵素的連結などが含まれる。化学的合成または遺伝子組換え技術によって得られたシグナルペプチドをコードするDNA、本発明の一実施例による免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質、またはそれを含む融合タンパク質をコードするDNAを適切な調節配列が含まれているベクターに組み換えることで、本発明のベクターが製造される。前記調節配列が含まれているベクターは商業的に購入または製造することができるが、本発明の一実施例ではpBispecific backbone vector(Genexine, Inc.,韓国)、pAD15 vector、pGP30(Genexine, Inc.,韓国)、またはpN293F vector(Y-Biologics, Inc.,韓国)を骨格ベクターとして使用している。
【0059】
前記発現ベクターは分泌シグナル配列をコードするポリヌクレオチドを更に含むが、前記分泌シグナル配列は、細胞内で発現する組換えタンパク質の細胞外への分泌を誘導し、tPA(tissue plasminogen activator)シグナル配列、HSV gDs(単純ヘルペスウィルス糖タンパク質D)シグナル配列、または成長ホルモンシグナル配列である。
【0060】
本発明の一実施例による前記発現ベクターは宿主細胞で前記タンパク質を発現するようにする発現ベクターであり、前記発現ベクターはプラスミドベクター、ウィルスベクター、コスミドベクター、ファージミドベクター、ヒト人工染色体など、いかなる形態を示してもよい。
【0061】
本発明の更に他の一観点によると、前記融合タンパク質を含む同形二量体または異形二量体が提供される。
【0062】
前記同形二量体において、図5に示したように、異なる生物学的活性タンパク質11a及び11bが免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質12のN-末端及びC-末端にそれぞれ連結される場合、製造された同形二量体100は二重特異性を示す。しかし、図6に示したように、生物学的活性タンパク質11を含むたった一つの単一特異性融合タンパク質が二量体化されたら、生成される同形二量体200は依然として単一特異性を示す(図6)。異形二量体の場合、図7に示したように、生物学的活性タンパク質11a及び11bをそれぞれ含む2つの異なる単一特異性融合タンパク質が二量体化されたら、製造される異形二量体300は二重特異性を示す。図8に示したように、それぞれ2つの異なる生物学的活性タンパク質11a、11b、11c、及び11dを含む2つの異なる二重特異性融合タンパク質が二量体化されたら、生成される異形二量体400は4重特異性を示す。
【0063】
選択的に、本発明の一実施例による同形二量体または異形二量体500、600、700、及び800は生物学的活性タンパク質(11、11a、11b、11c、及び11d)とヒンジ領域(13)との間または免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質(12)領域と前記生物学的活性タンパク質(11、11a、11b、11c、及び11d)との間に一つまたは2つ以上のリンカーペプチド(14)を含む。このような融合パートナーは、前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端またはC-末端に前記リンカーペプチド14によって連結される(図9乃至12)。
【0064】
特に、融合タンパク質のN-末端に連結される生物学的活性タンパク質11aは標的部分として作用するリガンドであり、同じ融合タンパク質のC-末端に連結される他の生物学的活性タンパク質11bは求められる生物学的活性を有する機能性タンパク質である(図5及び8)。逆に、前記機能性タンパク質はN-末端に連結され、リガンドはC-末端に連結されてもよい。これらの二重特異性融合タンパク質はヒンジ領域13に存在するシステイン残基による分子間ジスルフィド結合によって同形二量体を形成し、免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質の間の選択的な疎水性相互作用は二量体化を助ける。2つの異なる二重特異性融合タンパク質は異形二量体を形成する。このような方式で、本発明の一実施例による同形二量体または異形二量体タンパク質は一つ乃至4つの生物学的活性タンパク質を含み、各末端に存在する生理活性タンパク質にリンカーペプチドを加えてより多種のタンパク質を付加してもよい。
【0065】
本発明の一実施例による異形二量体を製造しようとする場合、同形二量体の形成を最小化するために当業界でよく知られているKnobs-into-Holes(KIH)技術を使用する。
【0066】
本文書で使用される用語である「Knobs-into-Holes(KIH)」は、二重特異性IgG抗体の生産において、重鎖の異形二量体化(heterodimierization)のために使用される抗体工学における一つの設計戦略を意味する。前記KIH技術は、異形二量体を形成する2つの融合タンパク質を第1融合タンパク質及び第2融合タンパク質に区分する場合、前記第1融合タンパク質の変形IgG Fc領域のうちCH3ドメインの10番目アミノ酸であるセリンがシステイン(C)に置換され、22番目アミノ酸であるトレオニン(T)がトリプトファン(W)に置換されること(Knobs構造)であり、前記第2融合タンパク質のFc領域のうちCH3ドメインの5番目アミノ酸であるチロシン(Y)がシステイン(C)に、22番目アミノ酸であるトレオニンがセリン(S)に、24番目アミノ酸であるロイシン(L)がアラニン(A)に、63番目アミノ酸であるチロシン(Y)がバリン(V)に置換されること(Hole構造)であり、逆に前記第1融合タンパク質はFc領域のうちCH3ドメインの5番目アミノ酸であるチロシン(Y)がシステイン(C)に、22番目アミノ酸であるトレオニン(T)がセリン(S)に、24番目アミノ酸であるロイシン(L)がアラニン(A)に、63番目アミノ酸であるチロシン(Y)がバリン(V)に置換されること(Hole構造)であり、前記第2融合タンパク質は変形IgG4 Fc領域のうちCH3ドメインの10番目アミノ酸であるセリンがシステイン(C)に置換され、22番目アミノ酸であるトレオニン(T)がトリプトファン(W)に置換されること(Knobs構造)である。
【0067】
この際、前記変異が起こったアミノ酸の位置は基準配列(配列番号77のヒトIgG1 CH3ドメインのアミノ酸配列)を基準にする。もし前記CH3ドメイン上にKnob-into-Holes構造とは関係のない部位でアミノ酸の付加、欠失、または置換などの更なる変異が発生した場合であっても、前記基準配列を基準にして該当位置に相応するアミノ酸が変異されたものを使用すればよい。選択的に、前記Knob-into-Holes構造は当業界によく知られている他のアミノ酸変異によって導入されてもよい。このような変異は先行文献(Wei et al.,Oncotarget 8(31):51037-51049,2017;Ridgway et al.,Protein Eng.7):617-621,1996;Carter,P.,J.Immunol.Methods 48(1-2):7-15,2001;Merchant et al.,Nat.Biotechnol.16(7):677-681,1998)によく記述されている。このような選択的な変異としては、例えば、第1融合タンパク質のCH3ドメインの22番目アミノ酸であるトレオニンがチロシンに置換されたKnobs構造、及び第2融合タンパク質のCH3ドメインの63番目アミノ酸であるチロシンがトレオニンに置換されたHole構造の組み合わせによって二重特異性二量体融合タンパク質が生成される。前記Knobs-into-Holes構造は、逆に前記第1融合タンパク質にHole構造が導入され、前記第2融合タンパク質にKnobs構造が導入されて形成されてもよい。
【0068】
本発明の更に他の一観点によると、前記融合タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド、または前記同形または異形-二量体を有効成分として含む組成物が提供される。
【0069】
本発明の更に他の一観点によると、前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、またはそれを含む同形二量体または異形二量体を個体に投与するステップを含む前記生物学的活性タンパク質の生体内半減期を延長する方法が提供される。
【0070】
本発明の更に他の一観点によると、前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、またはそれを含む同形または異形-二量体を有効成分として含む組成物が提供される。
【0071】
前記組成物は薬学的に許容可能な担体を含むが、前記担体以外にも薬学的に許容可能な補助剤、賦形剤、または希釈剤を更に含んでもよい。
【0072】
本文書で使用される用語である「薬学的に許容可能な」とは、生理学的に許容され、人に投与される際に通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似した反応を起こさない組成物をいう。前記担体、賦形剤、及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝固剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、及び防腐剤などを更に含んでもよい。
【0073】
また、本発明の一実施例による薬学的組成物は、哺乳動物に投与する際、活性生物迅速な放出、または持続または遅延された放出ができるように当業界に公知の方法を使用して剤形化される。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のセラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態を含む。
【0074】
本発明の一実施例による組成物は多様な経路で投与されるが、例えば、経口、非経口、例えば、坐剤、経皮、静脈、腹腔、筋肉内、病変内、鼻腔、脊椎管内投与で投与され、また、徐放型、または連続的また反復的放出のための移植装置を使用して投与される。投与回数は所望の範囲内で一日1回または数回に分けて投与するが、週1回、週2回、月1回などの間隔で投与されてもよく、投与期間も特に限らない。
【0075】
本発明の一実施例による組成物は、一般に使用される薬学的に許容可能な担体と共に適合の形態で剤形化される。薬学的に許容可能な担体としては、例えば、水、適合のオイル、食塩水、水性グルコース、及びグリコールなどのような非経口投与用担体などがあり、安定化剤及び保存剤を更に含んでもよい。適合の安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸などのような抗酸化剤がある。適合の保存剤としては、ベンズアルコニウムクロリド、メチルまたはプロピルパラベン、及びクロロブタノールがある。また、本発明による組成物は、その投与方法や剤形によって必要な場合、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。前記例示したものをはじめ、本発明に適合の薬学的に許容可能な担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences、最新版]に詳細に記載されている。
【0076】
前記組成物の患者に対する投与量は、患者の伸長、体表面積、年齢、投与される特定化合物、性別、投与時間及び経路、一般的な健康、及び同時に投与される他の薬物を含む多くの要素によって異なり得る。薬学的に活性のタンパク質は100ng/体重(kg)-10mg/体重(kg)の量で投与され、より好ましくは1乃至500μg/kg(体重)で投与され、最も好ましくは5乃至50μg/kg(体重)で投与されるが、前記要素を考慮して投与量が調節される。
【0077】
本発明の一観点によると、治療的に有効な量の前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、またはそれを含む同形または異形-二量体を個体に投与するステップを含む前記個体の疾患治療方法が提供される。
【0078】
本文書で使用される用語である「治療的に有効な量(therapeutically effective amount)」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比率で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効用量の水準は対象の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定される。本発明の組成物の治療的に有効な量は0.1mg/kg乃至1g/kg、より好ましくは1mg/kg乃至500mg/kgであるが、有効投与量は患者の年齢、性別、及び状態によって適切に調整される。
【0079】
前記疾病は前記生物学的活性タンパク質の投与を必要とする疾患であり、例えば、前記生物学的活性タンパク質がGLP-1類似体であれば前記治療対象疾病は糖尿病または代謝症候群であり、前記生物学的活性タンパク質がGLP-2類似体であれば短腸症候群、炎症性腸疾患であり、前記生物学的活性タンパク質がIL-2であれば悪性腫瘍であり、前記生物学的活性タンパク質がFceRIaであれば喘息、アトピー性皮膚炎などIgE媒介のアレルギー疾患であり、抗-CD40L抗体類似体であれば自己免疫疾患または臓器移植拒絶反応である。
【実施例0080】
以下、実施例及び実験例を介して本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は以下に開示される実施例及び実験例に限らず、互いに異なる様々な形態に具現されるものであって、以下の実施例及び実験例は本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0081】
実施例1:免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質の設計
抗体のFcドメインを生物学的活性タンパク質または医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient、API)に連結して該当APIの半減期を増加させる技術は広く使用されている技術である。しかし、抗体のFcドメイン部分は297番アミノ酸であるアスパラギンにN-連結糖鎖が付加されるが、抗体生産のための宿主細胞の特性によって糖鎖のパターンがヒト抗体とは異なるように示されるか、糖鎖のパターンが一定ではなく異質な(heterogenous)形態に生産されるため、APIが連結された融合タンパク質の活性が一定ではないか、ADCC(antibody-dependent cellular cytotoxicity)やCDC(complement-dependent cytotoxicity)のような場合によっては不必要な効果を示すようになり、副作用を誘発する恐れがある。更に、抗体が生体内に投入されてから半減期が増加する理由は、抗体が生体内で血管内皮細胞によって内包作用によって吸収された後、エンドソーム状態で低いpHによって胎児性Fc受容体(neonatal Fc receptor、以下、「FcRn」と称する)と結合することで、リソソームによる分解を回避し、エンドソームが細胞膜にリサイクルされる過程で細胞外の生理学的pH条件ではFcRnと分離されるためであると知られている(図13)。このようなFcRnによる抗体のリサイクルは、抗体の半減期を略21日まで延長する効果を示すと知られている(Raghavan,M.et al.,Biochem,34(45):14649-14657,1995)。
【0082】
しかし、従来の抗体FcドメインはIgGの種類によってFcRnとの親和性が異なるため、APIの半減期を向上するのに限界がある。
【0083】
そこで、本発明者らは、従来に使用されていたFcドメインタンパク質のFcRnとの親和性を上げながらも、ADCC及びCDC活性のないFcドメインタンパク質変異体を設計した。
【0084】
そのために、本発明者らは、配列番号1乃至4で記載されるアミノ酸配列からなる変形IgG4 Fcタンパク質の18番目アミノ酸であるトレオニン(T)をグルタミン(Q)に置換し、196番目アミノ酸であるメチオニン(M)をロイシン(L)に置換した変異体(配列番号6乃至9)を設計し、それを「NTIG(配列番号5)」と命名した。
【0085】
実施例2:単一特異性融合タンパク質コンストラクトの製造
次に、本発明者らは、前記実施例1で製造された免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質(NTIG)のN-末端及び/またはC-末端に多様な生物学的活性タンパク質が連結された多様な融合タンパク質を製造した。
【0086】
2-1:GLP-1E-NTIGの設計及び生産
本発明者らは、GLP-1及びExendin-4のハイブリッドペプチドであるGLP-1/Exendin-4ハイブリッドペプチド(配列番号49)のC-末端に前記実施例1で製造されたNTIGタンパク質(配列番号7)をハイブリッド状のヒンジ領域を含むリンカーペプチド((GS)-IgD/IgG1ハイブリッドヒンジ、配列番号14)で連結した融合タンパク質(GLP-1E-NTIG、配列番号50)を設計し、それを「PG-11」と命名した。前記GLP-1E-NTIGは、宿主細胞での分泌のためのtPAシグナル配列(配列番号51)が追加されるように設計した。一方、前記PG-11をコードするポリヌクレオチドをオリゴヌクレオチド合成、PCR増幅、及び位置指定突然変異技術を利用して合成した後、pGP30発現ベクター(Genexine, Inc.,韓国)に挿入した。前記製造されたベクターをThermo Fisher社のExpiCHO kitを利用して一時的発現を行った。詳しくは、ExpiCHO-S cellに前記のように製造されたベクターとキット内に含まれているExpiFectamine試薬を混合した後、8%CO及び37℃の条件を備えている培養器で1日間培養してから、温度を32℃まで下げて7日次まで培養を行った。
【0087】
次に、Protein A捕獲精製を行い、非還元及び還元条件におけるSDS-PAGE分析によって候補物質が精製されたのかを確認して、候補物質のpI値に合わせて剤形化緩衝液で剤形化を行った。剤形化が完了された物質をNano dropを利用して定量し、SEC-HPLCを利用して最終純度を確認した(図14a及び14b)。
【0088】
2-2:GLP-2-2G-NTIGの設計及び生産
本発明者らは、ヒトGLP-2ペプチドの2番目アミノ酸であるアラニン(A)がグリシン(G)に置換された変異体であるGLP-2類似体(GLP-2-2G、配列番号52)のC-末端に前記NTIG(配列番号7)を前記リンカーペプチド(配列番号14)で連結した融合タンパク質(GLP-2-2G-NTIG、配列番号53)を設計し、それを「PG-22」と命名した。同じく前記PG-22も分泌のためにtPAシグナル配列(配列番号51)を追加するように設計した。前記実施例2-1と同じく、前記PG-22をコードするポリヌクレオチドを製造し、pGP30発現ベクター(Genexine, Inc.,韓国)に挿入して、ExpiCHOシステムを利用して生産した後、最終純度を確認した(図15a及び15b)。
【0089】
2-3:NTIG-IL-10Vの設計及び生産
本発明者らは、前記NTIGのC-末端にIL-10変異体(配列番号54)をリンカーペプチド(配列番号26)で連結した融合タンパク質(NTIG-IL-10V、配列番号55)を設計し、それを「PG-088」と命名した。前記実施例2-1と同じく、前記PG-088をコードするポリヌクレオチドを製造し、pBispec発現ベクター(Genexine, Inc.,韓国)に挿入して、ExpiCHOシステムを利用して生産した後、最終純度を確認した(図16a及び16b)。
【0090】
2-4:NTIG-IL-10V monomerの設計及び生産
本発明者らは、前記NTIGのC-末端にIL-10単量体性変異体(配列番号56)をリンカーペプチド(配列番号26)で連結した融合タンパク質(NTIG-IL-10Vm、配列番号57)を設計し、それを「PG-088m」と命名した。前記実施例2-1と同じく、前記PG-088mをコードするポリヌクレオチドを製造し、pBispec発現ベクターに挿入して、ExpiCHOシステムを利用して生産した後、最終純度を確認した(図17a及び17b)。前記IL-10単量体性変異体(IL-10Vm)は、免疫促進活性と免疫抑制活性の2つの両面的な活性を有するIL-10タンパク質の免疫促進活性を選択的に抑制するための突然変異が導入されたものであって、タンパク質の生産過程で自己二量体化の形成で凝集体が発生する問題点を解決するために、中間にGGSGGSGGS(配列番号46)のリンカーを挿入することで単量体型に生産されるようにした単量体性変異体タンパク質である。
【0091】
実施例3:二重特異性融合タンパク質遺伝子コンストラクトの製造
3-1:anti-PD-L1-NTIG-IL-2の製造
PD-L1を標的にするscFvを前記NTIG(配列番号7)のN-末端に連結し、IL-2をC-末端に連結した融合タンパク質(anti-PD-L1-NTIG-IL-2)と、NTIGの代わりに配列番号2の変形IgG4 Fcドメインタンパク質を使用した融合タンパク質(anti-PD-L1-modified IgG4 Fc-IL-2)をそれぞれコードするポリヌクレオチドをpBispec発現ベクターに挿入し、ExpiCHO systemを利用してタンパク質を生産した。
【0092】
3-2:FcεRIα-NTIG-IL-10Vの設計及び生産
本発明者らは、前記実施例2-3で設計したNTIG-IL-10VのN-末端にIgEに特異的に結合する受容体であるFcεRIαの細胞外ドメイン(配列番号58)をリンカーペプチド(配列番号18)で連結した二重特異性融合タンパク質(FcεRIα-NTIG-IL-10V、配列番号59)を設計してそれを「PG-075」と命名し、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを製造して、pBispec発現ベクターに挿入した。前記PG-075コンストラクトも分泌のためにtPAシグナル配列(配列番号51)がN-末端に位置するように設計し、ExpiCHO systemを利用して生産して、SDS-PAGEとwestern blottingを行った(図18a及び18b)。
【0093】
3-3:FcεRIα-NTIG-IL-10Vmの設計及び生産
本発明者らは、前記実施例2-4で設計したNTIG-IL-10VmのN-末端にIgEに特異的に結合する受容体であるFcεRIαの細胞外ドメイン(配列番号58)をリンカーペプチド(配列番号18)で連結した二重特異性融合タンパク質(FcεRIα-NTIG-IL-10Vm、配列番号60)を設計してそれを「PG-110」と命名し、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを製造して、pAD15発現ベクターに挿入した。前記PG-110コンストラクトも分泌のためのtPAシグナル配列(配列番号51)がN-末端に位置するように設計した。前記pAD発現ベクターに挿入された遺伝子は、CHO DG44細胞に形質感染させた後、メトトレキサート(MTX)増幅を行っており、単一クローン選別作業を経て高効率発現細胞株を製造してから、高効率発現細胞株からPG-110タンパク質を生産及び精製した(図19a及び19b)。
【0094】
実施例4:抗-CD40Lハイブリッド抗体の製造
4-1:キメラ抗-CD40L抗体の製造
本発明者らは、WO2016/182335A1に記載のマウス由来の抗-CD40L(抗-CD154)抗体のFc部位をヒトIgG1 Fc部位に置換した抗体(C10)の重鎖CH2及びCH3ドメインにFcγRIIα結合阻害変異体が導入された抗-CD40L抗体を製造し、それを「C10M」と命名した。
【0095】
4-2:キメラ抗-CD40L-NTIGハイブリッド抗体の製造
本発明者らは、前記C10M抗体のFab部分のうち重鎖部分を、FcγRと結合しない前記実施例1で製造されたNTIGタンパク質のN-末端に連結したハイブリッド重鎖タンパク質を設計し、それを「PG-129」と命名した。
【0096】
前記ハイブリッド重鎖タンパク質は、前記C10M抗体のFabの重鎖部分(V-CH1、配列番号61)をNTIG(配列番号7)と連結したハイブリッド重鎖をコードするポリヌクレオチドを製造し、それをpAD15発現ベクター(WO2015/009052A)に挿入した。併せて、前記C10M抗体のFabの軽鎖部分(V-C、配列番号62)をコードするポリヌクレオチドを、dual promoter下で調節されるように前記pAD15発現ベクターに挿入した。次に、前記ベクターをCHO DG44(from Dr.Chasin, Columbia University,USA)細胞にNeon-transfection systemを利用して共形質感染させた。
【0097】
前記のように完了された発現ベクターは、Thermo Fisher社のExpiCHO kitを利用して一時的発現も行った。詳しくは、ExpiCHO-S cellに前記のように製造されたベクターコンストラクトとキット内に含まれているExpiFectamine試薬を混合した後、8%CO及び37℃の条件を備えている培養器で1日間培養してから、温度を32℃まで下げて7日次まで培養を行った。
【0098】
次に、Protein A捕獲精製を行い、非還元及び還元条件におけるPAGE分析及びウェスタンブロッティング分析によって候補物質が精製されたのかを確認して、候補物質のpI値に合わせて剤形化緩衝液の剤形化を行った。剤形化が完了された物質をNano dropを利用して定量し、SEC-HPLCを利用して最終純度を確認した。
【0099】
その結果、図20a及び20bに示したように、軽鎖及び重鎖が正常的に発現されているだけでなく非-還元条件で単一バンドで示されて、正常的な異種四量体を形成したことが分かった。併せて、SEC-HPLCの分析結果、純度は97.9%で非常に高く示された。
【0100】
4-3:ヒト化抗-CD40L-NTIGハイブリッド抗体の製造
本発明者らは、前記キメラ抗体が本発明のNTIG技術(免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質)を導入することで、従来のヒト抗体が有する短所を十分に改善したにもかかわらず、抗原結合部位が依然としてマウス由来抗体ということから、人体内で不必要な免疫反応を誘発する恐れがあるという判断の下、より安全なハイブリッド抗体を製造するために、本発明の基盤になる抗体の抗原結合断片であるFabの抗原決定基を除いた残りのフレームワーク部分をヒト抗体の配列に置換したヒト化抗体(抗-CD40L Fab-NTIG)を設計し(表1及び2)、それを「PG-400」と命名した。
【0101】
併せて、本発明者らは、前記ハイブリッド抗体の重鎖C-末端に免疫抑制活性を有するサイトカインであるIL-10単量体性変異体タンパク質(配列番号56)を連結した二重特異性ハイブリッド抗体(抗-CD40L Fab-NTIG-IL-10Vm)を製造するように設計し(表3)、それを「PG-410」と命名した。前記二重特異性ハイブリッド抗体の軽鎖の構造は表2に記載した通りである。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
前記ヒト化抗-CD40Lハイブリッド抗体(PG-400及びPG-410)を生産するために、前記抗体の重鎖及び軽鎖をそれぞれコードするポリヌクレオチドを製造した後、動物細胞で臨時発現するためにHEK293F細胞にN293F vector system(Y-Biologics Inc.)を利用して、プラスミドDNA形質感染を行った。核酸を用意するために培地3mlにプラスミドDNA25μgを入れて混合した後、2mg/ml PEI(Polyethylenimine、PolyPlus、USA)25μlを添加し混合した。反応液は常温で15分間静置した後、1X10cells/mlで培養された40mlの培養液に入れて、120rpm、37℃、8%COの条件で24時間培養した。DNA形質感染の24時間後、栄養補充培地成分(Soytone,BD,USA)を最終濃度10g/Lになるように添加した。7日間培養した後、細胞培養液を500rpmで10分間遠心分離して上層液を回収した。
【0106】
次に、Protein Aレジン(Resin)をカラム(Column)に充填し、1XDPBSで洗浄して用意し、前記回収された上層液を0.5ml/分の速度で4℃でレジンと結合させ、0.1M Glycineでタンパク質を溶出した。緩衝溶液を交換るために、溶出した溶液を透析チューブ(GeBAflex tube、Geba、Israel)に入れて1XDPBSで4℃で透析した。収得した物質はSuperdex 200 resinを利用してゲルろ過を行った後、PBS(pH7.4)緩衝液で剤形化した。
【0107】
前記で精製されたハイブリッド抗体に対してSDS-PAGE分析、サイズ排除FPLC、及びサイズ排除HPLC分析によってハイブリッド抗体の収率及び純度を検定した。
【0108】
その結果、図21a、21b、22a、及び22bで確認されるように、本発明のヒト化抗-CD40Lハイブリッド抗体が適用されたPG-400及びPG-410は高い純度で生産されていることが分かった。
【0109】
4-4:抗-CD40L scFv-NTIG-IL-10融合タンパク質の設計
本発明者らは前記ヒト化抗-CD40L抗体のFabのうち可変領域部分を選別した後、それを利用してscFvを設計したが、これを前記実施例4-3で使用した抗-CD40L抗体の重鎖コンストラクトのV-CH1部分の代わりに挿入することで単一鎖基盤の抗体結合-断片融合タンパク質を設計し、前記抗-CD40L scFv-NTIGのC-末端に実施例4-3で使用されたIL-10単量体性変異体(配列番号56)をリンカーペプチド(配列番号26)で連結して、二重特異性融合タンパク質を設計した(表4)。本実施例において、前記抗-CD40L scFvは軽鎖可変領域(V)-リンカー-重鎖可変領域(V)で構成されているが、逆にV-リンカー-Vの順に構成されるものを使用してもCD40L結合能が維持されるためそれを使用してもかかわらず、リンカーの種類も多様な種類を使用してもよい。
【0110】
【表4】

【0111】
実施例5:異形二量体の製造
本発明者らは、GLP-1類似体及びGLP-2類似体をいずれも含む二重特異性融合タンパク質を下記表5のように設計した。これらの二重特異性融合タンパク質は、第1融合タンパク質と第2融合タンパク質との間の分子間ジスルフィド結合及び疎水性相互作用によって異形二量体を形成するようにKnobs-into-Holes(KIH)構造が導入されたものである。
【0112】
下記実施例5-1と5-2の差は、第1融合タンパク質のGLP-1類似体とNTIGを連結するリンカーにN-グリカン糖鎖が連結されるようにN-連結糖鎖付着部位を含むのか否かの差である。これは、GLP-1受容体であるGLP-1RにはGLP-1以外にもExendin 4(Ex4)、オキシントモジュリン(OXM)、GLP-2がいずれも結合することに対し、GLP-2RにはGLP-2のみ結合し、GLP-1Rの場合は胃腸管(gastrointestinal tract、GI tract)以外にも脳、心臓、肝臓、筋肉、及び膵臓など多様な臓器で発現されるため、胃腸管特異的にGLP-1が作用されるようにするためには、GLP-1Rとの親和度を多少下げる必要があるためである。そのために、本発明者らは、GLP-1類似体のGLP-1Rとの結合力を多少下げるために、GLP-1類似体のリンカー部分(IgD/IgG1ハイブリッドヒンジを含む)にグリカンが付着されるようにグリカン付着ドメインが付加されたものを使用した(実施例5-1)。
【0113】
【表5】

【0114】
前記のように製造されたベクターコンストラクトをThermo Fisher社のExpiCHO kitを利用して一時的発現を行った。詳しくは、ExpiCHO-S cellに前記のように製造されたベクターコンストラクトとキット内に含まれているExpiFectamine試薬を混合した後、8%CO及び37℃の条件を備えている培養器で1日間培養してから、温度を32℃に下げて7日次まで培養を行った。
【0115】
前記培養によって得られた上層液をProtein Aカラム及び2次カラムを介して精製された実施例5-1及び5-2の異形二量体タンパク質(それぞれ「MG12-4」及び「MG12-5」と命名する)を4X LSD試料緩衝液と注射用水で適切に希釈し、最終3-10μg/20μLになるように調製した。還元条件試料の場合、分析しようとする各物質と4X LDS試料緩衝液、10X還元剤と注射用水を適切に希釈し、最終3-10μg/20μLになるように調製して、70℃加熱ブロックで10分間加熱した。用意された資料を予め設置された電気泳動装備に固定されているゲルの各ウェルに30μLずつ添加した。サイズマーカーの場合、3~5μL/ウェルを添加した。電源供給装置を120V、90分に設定した後、電気泳動を行った。電気泳動が完了されたゲルを分離した後、染色溶液及び脱-染色用胃液を利用して染色し、結果を分析した。その結果、図23で確認されるように、本発明の一実施例による異形二量体は正常的に生成されていることが分かった。
【0116】
実施例6:融合タンパク質の生産におけるヒンジの影響分析
本発明者らは、本発明のNTIGタンパク質のN-末端及びC-末端に多様なAPIを連結しながら、NTIGタンパク質N-末端にAPIを連結する場合、ヒンジの種類によってタンパク質の生産効率がいかに異なるのかを調査した。
【0117】
6-1:FcεRIα-NTIG-IL-13αR2の製造
本発明者らは、NTIG(配列番号7)のN-末端にFcεRIα(配列番号58)を連結し、C-末端にIL-13Rα2(配列番号74)を連結した二重特異性融合タンパク質(FcεRIα-NTIG-IL-13Rα2)を設計し、それを「PG-50」と命名した。前記PG-50を製造しながら、前記FcεRIαとNTIGを連結するヒンジ領域をIgDヒンジ(配列番号15)と、(GS)リンカーとIgG1ヒンジの組み合わせ(配列番号16)を使用する場合のタンパク質の生産性について調査した。このようにIgDヒンジを使用した融合タンパク質を「PG-50-1」と命名し、(GS)リンカー/IgG1ヒンジを使用した融合タンパク質を「PG-50-2」と命名した。IgDヒンジの場合、分子間ジスルフィド結合が一つ生成され、(GS)リンカー/IgG1ヒンジの場合、分子間ジスルフィド結合が2つ生成される。
【0118】
その結果、図24a及び4bで確認されるように、IgDヒンジを保有するPG-50-1に比べ、IgG1ヒンジを含む融合タンパク質(PG-50-2)のターゲット物質に対する生産収率が約15%増加することが分かった。
【0119】
6-2:GLP-2-2G-NTIG-IL-10wtの製造
本発明者らは、他のAPIを利用して多様な種類のヒンジがタンパク質の生産収率に及ぼす影響を分析した。そのために、詳しくは、GLP-2-2G(配列番号52)をNTIG(配列番号7)のN-末端に連結し、前記NTIGのC-末端にIL-10wt(配列番号75)が連結されたコンストラクトを製造した。この際、前記GLP-2-2GとNTIGは(GS)リンカー+IgD/IgG1ハイブリッドヒンジ(配列番号14)を利用して連結し、NTIGのC-末端には配列番号26で記載されるアミノ酸配列からなるリンカーペプチドを利用してIL-10wtを連結することで、二重特異性融合タンパク質(GLP-2-2G-NTIG-IL-10wt)を設計し、それを「PG-073」と命名した。前記のように設計された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを製造した後、pBispec発現ベクターに挿入し、前記実施例2-1で使用した方法通りにExpiCHOシステムを利用して融合タンパク質を発現させた後、培養上層液に対してSDS-PAGEでタンパク質の発現程度を確認した。前記IgD/IgG1ハイブリッドヒンジは2つの分子間ジスルフィド結合を形成する。
【0120】
その結果、図24cで確認されるように、PG-073の場合、非還元条件で主バンドは110kDaのサイズで、GLP-2-2GとIL-10がいずれも連結された二重特異性融合タンパク質であることが分かった。しかし、主バンドの下側にGLP-2が一つまたは2ついずれも切断された形態のバンドが確認された。よって、GLP-2とNTIGとの間で使用された前記(GS)リンカー+IgD/IgG1ハイブリッドヒンジリンカーは多少不安定であると確認された。更に、100ml培養液を基準に生産された融合タンパク質の量が0.5mg(PG-073)に過ぎず、タンパク質の生産量が落ちており、純度も66%程度で低いことが分かった。
【0121】
6-3及び6-4:GLP-2-2G(3 point)-NTIG-IL-10Vmの製造
そこで、本発明者らは、前記GLP-2-2G-NTIG-IL-10wt融合タンパク質でGLP-2-2Gを3 point突然変異が含まれた変異体(配列番号76)に変更し、ヒンジ部分を他の種類のリンカーまたはヒンジ(それぞれ配列番号17または18)に交換し、IL-10wtを前記実施例2-4で製造したIL-10Vmに交換した融合タンパク質(GLP-2V(3 point)-NTIG-IL-10Vmを設計し、前記融合タンパク質をそれぞれ「PG210-5(実施例6-3)」及び「PG210-6(実施例6-4)」と命名した。
【0122】
前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをpBispec発現ベクターに挿入した後、前記実施例2-1で使用した方法通りにExpiCHOシステムを利用して融合タンパク質を発現させた後、培養上層液に対してSDS-PAGEでタンパク質の発現程度を確認した。
【0123】
その結果、図24d及び24eで確認されるように、PG-210-5の場合は200ml培養液を基準に3.48mgのタンパク質が確認され、純度は約88.3%程度と確認されており、PG-210-6の場合は5mgのタンパク質が確認され、純度は約90.7%と確認された。
【0124】
実験例1:FcRn結合親和度の分析
本発明者らは、本発明のNTIGタンパク質のFcRnとの結合親和度をIgG4 Fc及びIgG1抗体と比較した。
【0125】
そのために、詳しくは、リガンドである組換えFcRn(rhFcRn,R&D systems,USA)を酢酸バッファに5μg/mlの濃度で溶解した後、バイオセンサチップ(Series S CM5 sensor chip,GE Healthcare,USA)にアミンカップリングを利用して固定した。
【0126】
次に、本発明者らは、本発明のNTIGとIgG4 FcのFcRn結合親和度を比較するために、実施例2-1で製造したPG-11及び市販のGLP-1がIgG4 Fcに連結された融合タンパク質であるdulaglutide(商標名Trulicity)のFcRnとの結合親和度をSPR(surface plasmon resonance)分析によって分析した。分析機器としてはBiocore 8K(GE Healthcare、USA)を利用しており、分析に使用された試薬はいずれもGE Healthcareで購入したものを使用した。PG-11及びTrulicityをランニング緩衝液(PBST、pH6.0)に溶解した後、1,000nMから1/2ずつ希釈し、多重-サイクル反応速度(multi-cycle kinetic)分析を行った。25℃、30μl/分の流速で実験を行い、60秒間分析物の結合反応(association)を行って、次に60秒間解離反応(dissociation)を行った。前記実験結果を基に、最適の抗体濃度を選定して(Trulicity:8,000nM及びPG-11:2,000nM)多重-サイクル反応速度分析を行い、Biacore Insightプログラム(GE Healthcare,USA)を利用して平衡解離定数(K)を測定した。この際、再生時にはpH7.4のPBS緩衝液に交換した。
【0127】
その結果、表6、図25及び26で確認されるように、Steady state affinity K比較分析の結果、TrulicityのKD値は2,090nM、PG-11のKD値は199nMに測定されたが、これは本発明の一実施例によるPG-11のFcRnに対する親和度がTrulicityのそれに比べ約5.3倍程度高いということである。FcRnとの結合親和度は、該当Fc融合タンパク質の薬物動態学(pharmacokinetics)に関連すると知られており、それによってTrulicityに比べPG-11の体内半減期がより長いと予測される(Mackness et al.,MAbs.11(7):1276-1288,2019)。
【0128】
【表6】

【0129】
併せて、本発明者らは、本発明のNTIGとIgG1 FcのFcRn結合親和度を比較するために、前記PG-11及びIgG1系列の市販の組換えキメラ抗-CD20抗体であるリツキシマブ(Rituximab)のFcRnに対する結合親和度をSPR(surface plasmon resonance)分析によって分析した。多様な濃度(PG-11の場合2,000nM乃至1.96nM、リツキシマブの場合4,000nM乃至3.9nM)でランニングPBST緩衝液(pH6.0)に溶解した後、上述したPG-11及びTrulicityの比較分析の結果と同じく、結合60秒、解離60秒、及び再生30秒の条件で結合、解離、及び再生した。再生時にはpH7.4のPBS緩衝液を使用した。
【0130】
その結果、表7及び図27で確認されるように、Steady state affinity K比較分析の結果、リツキシマブのK値は2,390nMであり、PG-11のKD値は256nMに測定されたが、これは本発明の一実施例によるPG-11のFcRnに対する親和度がリツキシマブのそれに比べ約9.3倍程度高いということである。
【0131】
【表7】

【0132】
上述したように、本発明の一実施例によるNTIGは従来のIgG1またはIgG4のFc領域に比べFcRnに対する親和度が高く、生体内投与時に半減期が著しく改善されると予想される。
【0133】
次に、本発明者らは、本発明の一実施例によるNTIG(配列番号7)の基盤になる配列番号2の変形IgG4 Fcドメインタンパク質とFcRnとの親和度を比較した。
【0134】
そのために、本発明者らは、単純K値を算出する代わりに、前記タンパク質をpH6.0で結合させ、解離はpH7.3で行っており、それによって静的状態親和度(K)を算出した(Piche-Nicholas et al.,MAbs.10(1):81-94,2018)。詳しくは、前記実施例3-1で製造されたanti-PD-L1-NTIG-IL-2とanti-PD-L1-modified IgG4 Fc-IL-2のrhFcRnとの結合親和度を、上述したように結合及び解離時のpH条件を変更してSPR分析を行った。
【0135】
その結果、表8及び図28で確認されるように、NTIGが適用されたanti-PD-L1-NTIG-IL-2のFcRnに対する親和性が、変形IgG4 Fcを使用しているanti-PD-L1-modified IgG4 Fc-IL-2に比べ高い傾向を示すことが分かった。しかし、結合緩衝液の交換過程でanti-PD-L1-modified IgG4 Fc-IL-2タンパク質試料からタンパク質凝集体が多量生成されることで結果の信頼性が落ちる問題点が発生しており、それによって、試験物質をリガンドにし、FcRnを検体に替えて同じ実験を再度行った。
【0136】
このような結果は、NTIGの適用が従来知られている配列番号2の変形IgG4 Fcの適用に比べ、生産タンパク質のFcRn結合力の増進による体内半減期の増進効果だけでなく、タンパク質の物性及び安定性においてもより優れた効果を示すということを暗示する。
【0137】
【表8】

【0138】
分析に使用された緩衝液としては、ランニング緩衝液(1X PBST、pH7.3)、検体希釈緩衝液(1X PBST、pH6.0)、解離緩衝液(1X PBST、pH7.3)、及び再生緩衝液(1X PBST、pH8.0)を使用した。
【0139】
分析結果、表9及び図29で確認されるように、2つのタンパク質はいずれも迅速結合及び迅速解離の様相を示しており、2つのタンパク質はいずれも中性条件(pH7.3)ではFcRnとの結合がよく解離される方であったが、pH6.0条件でanti-PD-L1-NTIG-IL-2タンパク質の親和度がanti-PD-L1-modified IgG4 Fc-IL-2タンパク質の親和度より5.06倍高いことが分かった。結論的に、anti-PD-L1-modified IgG4 Fc-IL-2タンパク質に比べanti-PD-L1-NTIG-IL-2タンパク質がpH6.0条件でより低い濃度のFcRnでも速く結合する傾向性を示した。これは、細胞内に内包作用によって吸収されたFcを含むタンパク質がエンドソームの低いpH条件でFcRnと結合するということを考慮すると、NTIGを含む融合タンパク質がより効率的にFcRnによってリサイクルされ得るということを強力に示唆するのである。
【0140】
【表9】

【0141】
実験例2:多様なFcγ受容体との結合親和度の分析
IgG1のFc領域はFcγRI及びFcγRIIIaと結合親和性を有すると知られている。これらのFc受容体は、ADCCやCDCのようなエフェクター機能に関連しており、抗がん治療のための抗体またはFc融合タンパク質の使用時には抗がん治療において役に立つが、抗がん治療ではない他の疾病の治療を目的とするAPIを使用する場合は副作用を誘発する恐れがあるという短所を有する。
【0142】
そこで、本発明者らは、本発明の一実施例によるNTIG融合タンパク質のFcγRI及びFcγRIIIaとの親和度がどれぐらいなのか、バイオレイヤー干渉法分析(BLI)によってIgG1抗体と比較分析した。
【0143】
その結果、図30で確認されるように、IgG1系列の抗体であるリツキシマブはFcγRI及びFcγRIIIaと特異的結合を有することに対し、本発明の一実施例によるNTIGを含む融合タンパク質であるPG-11はこれらの抗体受容体と特異的結合をしないことが分かった。
【0144】
更に、本発明者らは、リツキシマブと本発明の一実施例によるPG-11のFcγRIIa、FcγRIIb、及びFcγRIIIbとの結合親和度を比較分析した。
【0145】
その結果、図31で確認されるように、リツキシマブは前記3つのFc受容体と特異的結合をすることが分かった。一方、本発明の一実施例によるPG-11の場合は弱い結合を示したが、sensogramの形態をみると、非-特異的結合であると判断される。
【0146】
実験例3:補体C1qの結合分析
抗体Fc領域は補体C1qと結合することでCDC(complement-dependent cytotoxicity)を誘発するが、そのため、がんの治療ではない一般治療用のFc融合タンパク質を臨床に適用する際には深刻な問題となり得る。よって、本発明の一実施例によるNTIGを含む融合タンパク質の補体C1qとの親和度がどれぐらいなのか、IgG1系列の抗体であるリツキシマブと比較分析した。
【0147】
そのために、詳しくは、コーティング緩衝液(0.1M NaHPO,pH9.6)を使用して、PG-11及びリツキシマブをそれぞれ2μg/mlになるように希釈した。次に、希釈された試料をウェルに100μlずつ添加し、4℃で一晩中反応させた。次に、プレートに洗浄緩衝液を300μlずつ添加して3回洗浄し、各ウェルに遮断緩衝液(2%BSA/PBS)を200μl添加し、常温で2時間反応させた。次に、プレートに洗浄緩衝液を300μl添加して3回繰り返し洗浄し、分析緩衝液を利用して抗-C1q抗体を10、3、1、0.3、0.1μg/mlで1/3ずつ希釈した後、各ウェルに50μlずつ混合してから(duplication)、常温で2時間反応させた。次に、プレートに洗浄緩衝液を300μlずつ混合して8回繰り返し洗浄した。C1q-HRPコンジュゲートを400倍希釈して各ウェルに50μlずつ添加した後、室温で1時間反応させた。プレートに洗浄緩衝液を300μlずつ添加して8回繰り返し洗浄した後、基質である50μl TMBを混合し、常温で反応させた。青色に発色反応が起こったら各ウェルに50μlの中止溶液を添加して反応を停止した後、450nmに設定されたマイクロプレート読取機で吸光度(optical density)を測定した。
【0148】
分析結果、図32で確認されるように、リツキシマブはC1qと濃度依存的に結合することに対し、本発明の一実施例によるPG-11はC1qと結合しないことが分かった。
【0149】
よって、本発明の一実施例によるNTIGは、APIの半減期を向上させながらもADCCやCDCのようなFc領域による副作用を最小化することができる安全なタンパク質担体であることが分かった。
【0150】
実験例4:GLP-2の活性分析
前記実施例のうちGLP-2を含む多数の融合タンパク質に対して、GLP-2活性が十分に発揮されるのか否かをcAMP Hunter(商標) eXpress GPCR分析で調査した(表10)。
【0151】
【表10】

【0152】
前記分析結果、図33及び表11で確認されるように、本発明の一実施例によって製造された融合タンパク質のうちPG-210-6は比較例のPG-22とGLP-2活性がほぼ類似しており、本発明の他の一実施例のPG-210-5はPG-210-6に比べ半分程度の活性を示すことが分かった。異形二量体であるMG12-4及びMG12-5もPG-22に比べGLP-2活性が半分程度に過ぎないことが分かったが、MG12-4及びMG12-5の場合、GLP-2が2分子で結合されているPG-22に比べGLP-2が1分子含まれているため、50%の活性減少は予測される水準であった。PG-210-5は従来の特許文献(US7812121B2)で使用されたリンカーペプチドが適用されたものであって、本発明で使用した(GS)+IgG1ヒンジの混合リンカーペプチドを使用したPGー210-6の活性が優れることが分かった。
【0153】
【表11】

【0154】
実験例5:IL-10Vm融合タンパク質の免疫抑制活性の分析
5-1:IL-10受容体との親和度分析
本発明者らは、実施例2-3及び実施例2-4の融合タンパク質のIL-10受容体(IL-10R1)との親和度をバイオレイヤー干渉法分析(BLI)によって分析した。
【0155】
そのために、まず本発明者らは、Dip and Read(商標) Amine Reactive 2nd Generation(AR2G) Reagent Kit(forteBio,Cat No.18-5092)を利用し、96ウェルプレートにIL-10R His-tagタンパク質を付着した。詳しくは、96ウェルプレートにD.W.200μlを分注した後、前記キットに含まれているamine biosensorを差し込んで10分間水和させた。次に、新しい96ウェルプレートにD.W.200μlを更に分注した後、必要な試料量の1/20でEDC:NHSを1:1で混合した後、D.W.に希釈して96ウェルプレートに200μlずつ分注した。次に、IL-10R His-tagタンパク質を10mM酢酸pH5.0溶液に10μg/mlになるように希釈した後、前記96ウェルプレートに200μlずつ添加した。次に、1Mエタノールアミンを200μlずつ96ウェルプレートに添加した後、BiosensorプレートとサンプルプレートをOctet(登録商標)-K2機器に入れて測定した。測定終了後、サンプルプレートに1x Kinetics緩衝液を200μl添加した後、基底値(baseline)を決めた。次に、前記実施例で製造されたNTIG-IL-10融合タンパク質を多様な濃度(0、62.5、125、250、500、及び1,000nM)で1x Kinetics緩衝液に希釈した後、サンプルプレートに200μlで分注し、Octet(登録商標)-K2機器でBLI(Bio-layer interferometry)を測定した。
【0156】
【表12】

【0157】
その結果、図34及び表12で示したように、本発明の実施例2-4による融合タンパク質(NTIG-IL-10Vm)はK値が29.2nMで、実施例2-3の二量体性IL-10融合タンパク質のK値(11.1nM)の約3倍程度に示された。これは単量体性IL-10変異体タンパク質が二量体性IL-10変異体タンパク質に比べ受容体との親和性が多少落ちると解釈されるが、単量体の形成によって親和度が落ちる可能性があるということは予測される程度であった。
【0158】
5-2:IL-10Vm融合タンパク質の免疫抑制活性の分析
本発明者らは、本発明の一実施例による単量体性IL-10変異体タンパク質(IL-10Vm)を含む多様な融合タンパク(PG-088m、PG-110、PG-410、及びPG-210-6)の試験管内免疫抑制活性を分析した。
【0159】
そのために、詳しくは、培養中のマクロファージRaw264.7が入っているT75フラスコから上清液を除去した後、PBSで1回洗浄してから、TrypLE(商標) Select Enzyme 3mlを添加し、37℃で3乃至5分間反応させた。次に、新しい培地10mlをT75フラスコに添加し、フラスコの底から離れた細胞浮遊液を50mlコニカルチューブに移した後、1,500rpmで5分間遠心分離した。次に、上層液を除去し、チューブを軽く叩いて細胞をほぐした。次に、新しい培地5mlを混合して細胞を計数した。細胞の濃度が1×10cells/mlになるように調整した後、96ウェル平底プレートに100μlずつ分注した。
【0160】
次に、実施例2-4で製造されたPG-088m、実施例3-3で製造されたPG-110、実施例4-3で製造されたPG-410、及び実施例6-4で製造されたPG-210-6を多様な濃度(PG-210-6及びPG-410の場合は0乃至1,000nM、PG-110及びPG-088mの場合は0乃至1507nM)で順次希釈した後、前記Raw264.7マクロファージが分注された96ウェルプレートに50μlずつ処理した。20分経過後、LPS(lipopolysaccharide)を最終濃度が400ng/mlになるようにして50μlずつ処理し、36℃で16時間培養した。次に、上清液を集めた後、製造社のプロトコールによってTNF-α ELISA(Biolegend,USA)分析を行った。
【0161】
その結果、図35a乃至35cで確認されるように、本発明の一実施例によるIL-10Vmを含む融合タンパク質は、いずれも濃度依存的にマクロファージでのTNF-αの分泌を抑制することが分かった。融合タンパク質の種類による有意な差は見つからなかった。これは、本発明の一実施例による単量体性IL-10変異体タンパク質(IL-10Vm)がNTIGタンパク質のC-末端に連結されても適切に作動するということを意味する。
【0162】
5-3:IgE結合能の分析
本発明者らは、実施例2-3で製造された融合タンパク質(FcεRIα-NTIG-IL-10Vm)のマウスIgE及びヒトIgEとの親和度をバイオレイヤー干渉法分析(BLI)によって分析した。
【0163】
そのために、まず本発明者らは、Dip and Read(商標) Amine Reactive 2nd Generation(AR2G) Reagent Kit(forteBio,Cat No.18-5092)を利用し、96プレートに対照群としてIL-10VmがないFcεRIα-NTIGタンパク質、及び実施例3-3で製造された融合タンパク質を付着した。詳しくは、96ウェルプレートにD.W.200μlを分注した後、前記キットに含まれているamine biosensorを差し込んで10分間水和させた。次に、D.W.200μlを分注した後、必要な試料量の1/20でEDC:NHSを1:1で混合した後、D.W.に希釈して96ウェルプレートに200μlずつ分注した。次に、FcεRIα-modified IgG4 Fcタンパク質及びFcεRIα-NTIG-IL-10Vm融合タンパク質を10mM酢酸pH5.0溶液に10μg/mlになるように希釈した後、前記96ウェルプレートに200μlずつ添加した。次に、1Mエタノールアミンを200μlずつ96ウェルプレートに添加した後、BiosensorプレートとサンプルプレートをOctet(登録商標)-K2機器に入れて測定した。測定終了後、サンプルプレートに1x Kinetics緩衝液を200μl添加した後、基底値(baseline)を決めた。次に、抗-DNPマウスIgE(Sigma)を多様な濃度(50pM乃至3.125nM)で1x Kinetics緩衝液に希釈した後、サンプルプレートに200μlで分注し、Octet(登録商標)-K2機器でBLI(Bio-layer interferometry)を測定した。
【0164】
【表13】

【0165】
その結果、図36a及び表13に示したように、本発明の実施例による融合タンパク質(FcεRIα-NTIG-IL-10Vm)のK値は0.284nMで、対照群のFcεRIα-modified IgG4 Fcより多少低く示されたが、この程度の差は有意な差ではないため、単量体性IL-10タンパク質の付加によってIgEとの結合能は落ちないことが分かった。
【0166】
前記結果と共に、本発明で使用したヒトFcεRIαとヒトIgEとの結合度を測定するために、本発明者らは、実施例3-3の融合タンパク質(PG-110)とヒトIgEとの親和度を上述したBLI方法を利用して分析した。
【0167】
【表14】

【0168】
その結果、図36b及び表14に示したように、本発明の一実施例による融合タンパク質は、ヒトIgEとも前記マウスIgEと類似する程度の親和度を示した。
【0169】
5-4:IgEに対する抑制活性分析
次に、本発明者らは、前記実施例3-3で製造された融合タンパク質(FcεRIα-NTIG-IL-10Vm)がIgEに対する抑制活性を示すのか否かを試験管内実験で調査した。
【0170】
そのために、詳しくは、対照群としてFcεRIα-modified IgG4 Fc、そして実験物質として実施例3-3の融合タンパク質(PG-110)を多様な濃度で順次希釈して用意し、抗-DNPマウスIgE 1μl/mlと混合した後、常温で30分間反応させた。次に、マウスから収得した骨髄由来肥満細胞をHBSS緩衝液で洗浄し、5×10cells/60μl濃度に合わせた後、96ウェルプレートに分注した。IgE及び試験薬物を反応させた試料20μlを予め用意された肥満細胞に添加し、37℃、5%CO培養器で25分間培養した。次に、DNP BSA(500ng/ml)を200μl添加した後、更に37℃、5%CO培養器で25分間培養し、1,500rpmの速度で4℃で遠心分離して、上層液300μlを分離した。分離された上層液300μlと基質(4-nitrophenyl N-acetyle-β-glucosaminide,5.84mM)30μlを混合した後、37℃、5%CO培養器で25分間培養した。次に、0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH10)400μlを混合し、反応を終結させた。次に、405nmにおける吸光度を測定することで、前記肥満細胞から分泌されたβ-ヘキソサミニダーゼ(β-hexosaminidase)の相対量を比較して、各薬物の濃度による肥満細胞の抑制効果を確認した。前記分析は3回独立に行い、平均を求めた。
【0171】
その結果、図37及び表15で確認されるように、本発明の一実施例による融合タンパク質PG-110は濃度依存的にIgEの活性を抑制しており、その程度は対照群のFcεRIα-modified IgG4 Fcと類似していたが、本発明の一実施例による融合タンパク質PG-110のIC50がFcεRIα-modified IgG4 Fcのそれより僅かに低く示された。
【0172】
【表15】

【0173】
実験例6:CD40Lに対する結合分析
本発明者らは、本発明の実施例4-2及び4-3でそれぞれ製造されたPG-400及びPG-410のヒトCD40Lとの結合親和度をBLI分析によって調査した。
【0174】
そのために、詳しくは、平底96ウェルブラックプレートの上に蒸留水を200μl分注した後、バイオセンサトレイを前記水和されたブラックプレートの上に載せ、アミンバイオセンサを差し込んで10分間水和させた。次に、新しい96ウェルブラック試料プレートに蒸留水を200μl分注した後、必要な量の1/20でEDC:NHSを1:1で混合してから、蒸留水に希釈して96ウェルブラック試料プレートに200μlずつ分注した。次に、human CD40L(Peptrotech、韓国)を10mM硝酸溶液(pH6.0)に5μg/mlになるように希釈して、96ウェルブラック試料プレートに200μlずつ分注した。次に、1Mエタノールアミンを前記プレートに200μlずつ添加し、バイオセンサプレートと試料プレートをOctet(登録商標)-K2機器に積載して、アミンセンサ上でCD40Lの結合程度を測定した。測定完了後、96ウェルブラック試料プレートを測定機器から取り出し、1X Kinetics緩衝液を200μl混合して基底線(baseline)を設定した。分析体であるPG-410とPG-400の濃度が200乃至12.5nMになるように1X Kinetics緩衝液に順次希釈させた後、96ウェルブラック試料プレートに200μlずつ分注した。更に試料プレートをOctet(登録商標)-K2機器に積載した後、BLI分析によってCD40Lとの結合程度を測定した。
【0175】
【表16】

【0176】
その結果、図38及び表16で確認されるように、本発明の一実施例による融合タンパク質(PG-410)はPG-400よりCD40Lに対するKon値が4.3倍程度低かったが、K値はfM以下(<1E-12)で非常に高い結合親和度を示しており、結論的に、PG-400及びPG-410タンパク質はhuman CD40Lにうまく結合することが分かった。この際、本発明の一実施例による融合タンパク質(anti-CD40L-NTIG-IL-10Vm)であるPG-410は、CD40Lと非常に高い結合親和度で結合することが分かった。
【0177】
実験例7:PG-110に対する薬力学的分析
本発明者らは、前記で製造された実施例3-3による二重特異性融合タンパク質(PG-110)の半減期及び曲線下面積(AUC, Area Under the Curve)、血中最高濃度(Cmax)などを比較することで薬力学的(PK)プロファイルを確認した。
【0178】
詳しくは、グループ当たり3匹の雄SD(Sprague Dawley)ラットに試験対象の融合タンパク質(PG-110)を1mg/kgの投与量で皮下(SC)、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、筋肉内(IM)経路で投与した。注入前及び注入後の0.5、1、5、10、24、48、72、120、168、240、及び336時間が経過した後、血液を収得し、それを30分間室温保管して凝集させた。凝集した血液を3,000rpmで10分間遠心分離した後、各サンプルの血清を収得して、超低温冷凍庫に貯蔵した。投与タンパク質のうちFcを得意的に検出するIgG-Fc Quantitation set(Bethyl,Cat#E80-104,Lot#E80-104-30)を利用して、本発明の一実施例による融合タンパク質の血清内濃度を分析した。
【0179】
その結果、図39で確認されるように、NTIGが融合された生理活性タンパク質が投与経路にかかわらず体内で長く維持されることが分かった。
【0180】
本発明上述した実施例及び実験例を参考に説明されたがこれは例示的なものに過ぎず、該当技術分野の通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であることを理解できるはずである。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付した特許請求の範囲の技術的思想によって決められるべきである。
【0181】
本発明の一実施例によるNTIGタンパク質は、多様な生物学的活性タンパク質の融合パートナーとして前記生物学的活性タンパク質の半減期を効果的に増加させることで、該当生物学的活性タンパク質の治療効果を増加させるだけでなく、Fc融合タンパク質の短所であるADCC及びCDCのようなエフェクター機能を最小化することで、より安全なタンパク質の薬物伝達を可能にする。よって、本発明の一実施例によるNTIGタンパク質は、タンパク質医薬の製造に効果的に使用される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図19a
図19b
図20a
図20b
図21a
図21b
図22a
図22b
図23
図24a
図24b
図24c
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図24e
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35a
図35b
図35c
図36a
図36b
図37
図38
図39
【配列表】
2024061734000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1乃至4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む変形IgG4 Fcドメインタンパク質の18番目及び196番目のアミノ酸が他のアミノ酸に変異されている免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質であって、前記IgG4 Fcドメインタンパク質は、Knobs-into-Holes構造を介して異形二量体を形成可能である、免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質
【請求項2】
8番目のアミノ酸の変異が、T18N、T18K、及びT18Qからなる群より選択される変異である、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項3】
96番目のアミノ酸の変異が、M196A、M196F、M196I、M196L、M196V、M196P、及びM196Wからなる群より選択される変異である、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項4】
Knobs-into-Holes構造は、前記変形IgG4 Fc領域のうちCH3ドメインの10番目のアミノ酸であるセリンがシステイン(C)に置換され、22番目のアミノ酸であるトレオニン(T)がトリプトファン(W)に置換されるか、前記のCH3ドメインの22番目のアミノ酸であるトレオニンが(T)がトリプトファン(W)に置換されるか、または前記CH3ドメインの22番目のアミノ酸であるトレオニンがチロシンに置換されるKnobs構造を含む、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項5】
Knobs-into-Holes構造は、前記変形IgG4 Fc領域のうちCH3ドメインの5番目のアミノ酸であるチロシン(Y)がシステイン(C)に、22番目のアミノ酸であるトレオニン(T)がセリン(S)に、24番目のアミノ酸であるロイシン(L)がアラニン(A)に、63番目のアミノ酸であるチロシン(Y)がバリン(V)に置換されるか、前記CH3ドメインの22番目のアミノ酸であるトレオニンがセリン(S)に、24番目のアミノ酸であるロイシン(L)がアラニン(A)に、63番目アミノ酸であるチロシン(Y)がバリン(V)に置換されるか、または前記CH3ドメインの63番目のアミノ酸であるチロシン(Y)がトレオニン(T)に置換されるHole構造を含む、請求項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項6】
配列番号8または9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
【請求項7】
一つ以上の生物学的活性タンパク質(API、active pharmaceutical ingredient)が、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端及び/またはC-末端に連結されている、融合タンパク質。
【請求項8】
物学的活性タンパク質が、サイトカイン、酵素、血液凝固因子、膜受容体の細胞外ドメイン、成長因子、ペプチドホルモン、または抗体ミメティックである、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質または請求項7または8に記載の融合タンパク質を含む異形二量体。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の免疫グロブリンFc変異体タンパク質または請求項7または8に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項12】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質、請求項7または8に記載の融合タンパク質または請求項に記載の異形二量体含む、組成物。
【請求項13】
治療的に有効な量の請求項7または8に記載の融合タンパク質または請求項9に記載の異形二量体をヒトを除く哺乳動物個体に投与するステップを含む、前記個体の疾患治療方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明の一実施例による免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質は、他の生物学的活性タンパク質と融合することで前記生物学的活性タンパク質の半減期を増加させながらも、抗体基盤のタンパク質治療剤を使用する際の副作用であるADCCやCDCのような抗体のFcドメイン依存性エフェクター機能を不活性化することができる。しかし、本発明の効果は上述した内容な限定されない。
本発明のさらなる態様を、以下に記載する:
[項1]
配列番号1乃至4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む変形IgG4 Fcドメインタンパク質の18番目及び196番目のアミノ酸が他のアミノ酸に変異されている、免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
[項2]
前記18番目のアミノ酸の変異が、T18N、T18K、及びT18Qからなる群より選択される変異である、項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
[項3]
前記196番目のアミノ酸の変異が、M196A、M196F、M196I、M196L、M196V、M196P、及びM196Wからなる群より選択される変異である、項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
[項4]
配列番号5乃至9からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質。
[項5]
少なくとも1つの生物学的活性タンパク質(API、active pharmaceutical ingredient)が、項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端及び/またはC-末端に連結されている、融合タンパク質。
[項6]
前記生物学的活性タンパク質が、リンカーペプチドまたは抗体のヒンジ領域によって前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質のN-末端またはC-末端に連結されている、項5に記載の融合タンパク質。
[項7]
前記生物学的活性タンパク質が、サイトカイン、酵素、血液凝固因子、膜受容体の細胞外ドメイン、成長因子、ペプチドホルモン、または抗体ミメティックである、項5に記載の融合タンパク質。
[項8]
項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質または項5に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[項9]
項8に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
[項10]
項5に記載の融合タンパク質を含む同形二量体。
[項11]
項5に記載の融合タンパク質を含む異形二量体。
[項12]
前記免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質がKnobs-into-Holes構造を有する、項11に記載の異形二量体。
[項13]
項5に記載の融合タンパク質、項10に記載の同形二量体、及び項11に記載の異形二量体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含む、組成物。
[項14]
項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、またはそれを含む同形二量体または異形二量体を個体に投与するステップを含む、前記生物学的活性タンパク質の生体内半減期を延長する方法。
[項15]
治療的に有効な量の項1に記載の免疫グロブリンFcドメイン変異体タンパク質に生物学的活性タンパク質が融合された融合タンパク質、または前記融合タンパク質を含む同形二量体または異形二量体を個体に投与するステップを含む、前記個体の疾患治療方法。
【外国語明細書】