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特開2024-61738キャリア付金属箔、及びそれを用いたミリ波アンテナ基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061738
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】キャリア付金属箔、及びそれを用いたミリ波アンテナ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20240426BHJP
   B32B 9/04 20060101ALI20240426BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20240426BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240426BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B9/04
B32B15/04 B
B32B7/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028281
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2020557561の分割
【原出願日】2019-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018217756
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019118303
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019180631
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】小宮 未希子
(72)【発明者】
【氏名】柳井 威範
(72)【発明者】
【氏名】石井 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宜範
(57)【要約】
【課題】キャリアの剥離性及び金属層の選択エッチング性に優れ、これを用いて製造された半導体パッケージ(例えばミリ波アンテナ基板)における伝送損失及び抵抗の低減を実現可能な、キャリア付金属箔を提供する。
【解決手段】(a)キャリアと、(b)キャリア上に設けられる剥離機能層であって、(b1)キャリアに近い側の、厚さが10nmを超え200nm未満である密着層、及び(b2)キャリアから遠い側の、厚さが50nm以上500nm以下である剥離補助層を含む、剥離機能層と、(c)剥離機能層上に設けられる複合金属層であって、(c1)剥離補助層に近い側の炭素層、及び(c2)剥離補助層から遠い側の、主としてAu又はPtで構成される第1金属層を含む、複合金属層とを備えた、キャリア付金属箔。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キャリアと、
(b)前記キャリア上に設けられる剥離機能層であって、
(b1)前記キャリアに近い側の、厚さが10nmを超え200nm未満である密着層、及び
(b2)前記キャリアから遠い側の、厚さが50nm以上500nm以下である剥離補助層を含む、剥離機能層と、
(c)前記剥離機能層上に設けられる複合金属層であって、
(c1)前記剥離補助層に近い側の炭素層、及び
(c2)前記剥離補助層から遠い側の、主としてAu又はPtで構成される第1金属層を含む、複合金属層と、
を備えた、キャリア付金属箔。
【請求項2】
前記キャリアが、ガラス、シリコン、又はセラミックスで構成される、請求項1に記載のキャリア付金属箔。
【請求項3】
前記剥離機能層が、前記密着層及び/又は前記剥離補助層として、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN、及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を80原子%以上含む層を少なくとも1層備える、請求項1又は2に記載のキャリア付金属箔。
【請求項4】
前記密着層の厚さTに対する前記剥離補助層の厚さTの比であるT/Tが1を超え20以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項5】
前記炭素層がアモルファスカーボンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項6】
前記第1金属層が50nm以上2000nm以下の厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項7】
前記複合金属層が、
(c3)前記炭素層と前記第1金属層との間に設けられ、Ti、Ta、Ni、W、Cr、及びPdからなる群から選択される少なくとも1種を50原子%以上含む第2金属層をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項8】
前記第2金属層が50nm以上1000nm以下の厚さを有する、請求項7に記載のキャリア付金属箔。
【請求項9】
前記複合金属層が、
(c4)前記第1金属層の前記炭素層から遠い側の面に設けられ、Ti、Ta、Ni、W、Cr、及びPdからなる群から選択される少なくとも1種を合計で50原子%以上含むバリア層をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項10】
ミリ波アンテナ基板の製造に用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔を用いてミリ波アンテナ基板を製造することを含む、ミリ波アンテナ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア付金属箔、及びそれを用いたミリ波アンテナ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の実装密度を上げて小型化するために、プリント配線板の多層化が広く行われるようになってきている。このような多層プリント配線板は、携帯用電子機器の多くで、軽量化や小型化を目的として利用されている。そして、この多層プリント配線板には、層間絶縁層の更なる厚さの低減、及び配線板としてのより一層の軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満たす技術として、コアレスビルドアップ法を用いた多層プリント配線板の製造方法が採用されている。コアレスビルドアップ法とは、いわゆるコア基板を用いることなく、絶縁層と配線層とを交互に積層(ビルドアップ)して多層化する方法である。コアレスビルドアップ法においては、支持体と多層プリント配線板との剥離を容易に行えるように、キャリア付銅箔を使用することが提案されている。例えば、特許文献1(特開2005-101137号公報)には、キャリア付銅箔のキャリア面に絶縁樹脂層を貼り付けて支持体とし、キャリア付銅箔の極薄銅層側にフォトレジスト加工、パターン電解銅めっき、レジスト除去等の工程により第一の配線導体を形成した後、ビルドアップ配線層を形成し、キャリア付支持基板を剥離し、極薄銅層を除去することを含む、半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1に示されるような埋め込み回路の微細化のため、極薄銅層の厚さを1μm以下としたキャリア付銅箔が望まれる。そこで、極薄銅層の厚さ低減を実現するため、スパッタリング等の気相法により極薄銅層を形成することが提案されている。例えば、特許文献2(国際公開第2017/150283号)には、ガラス又はセラミックス等のキャリア上に、剥離層、反射防止層、及び極薄銅層がスパッタリングにより形成されたキャリア付銅箔が開示されている。また、特許文献3(国際公開第2017/150284号)には、ガラス又はセラミックス等のキャリア上に、中間層(例えば密着金属層及び剥離補助層)、剥離層及び極薄銅層(例えば膜厚300nm)がスパッタリングにより形成されたキャリア付銅箔が開示されている。特許文献2及び3には、所定の金属で構成される中間層を介在させることでキャリアの機械的剥離強度の優れた安定性をもたらすことや、反射防止層が望ましい暗色を呈することで、画像検査(例えば自動画像検査(AOI))における視認性を向上させることも教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-101137号公報
【特許文献2】国際公開第2017/150283号
【特許文献3】国際公開第2017/150284号
【発明の概要】
【0006】
ところで、近年、自動車分野において衝突防止機能等の安全運転支援システムの普及が進んでおり、かかるシステムにおいて車載用ミリ波レーダーが活用されている。また、情報通信技術分野においては、広帯域確保及び大容量伝送が可能なミリ波通信に関する技術開発が進められている。したがって、これらの用途等に適したミリ波用の半導体パッケージ(以下、「ミリ波アンテナ基板」とする)の需要も高まっているといえる。ここで、ミリ波アンテナ基板等の製造においては、Auめっきを用いた微細回路形成手法が用いられる。この点、従来のキャリア付銅箔を用いてミリ波アンテナ基板等を作製した場合、Cuの化学的安定性が低いため、抵抗(例えばAuめっきとの接続抵抗)が高くなる等の問題が起こりうる。また、ミリ波アンテナ基板等の製造においては、干渉を低減すべく絶縁層として比較的厚い樹脂(例えば厚さ200μm以上)をキャリア付金属箔に積層することから、キャリア付金属箔はかかる樹脂からの応力の影響を受けやすく、それ故、キャリアの剥離が不安定となりうる。
【0007】
本発明者らは、今般、キャリアの剥離に寄与する層の厚さを特定の範囲に制御し、かつ、主としてAu又はPtで構成された金属層を採用することで、キャリアの剥離性及び金属層の選択エッチング性に優れ、これを用いて製造された半導体パッケージ(例えばミリ波アンテナ基板)における伝送損失及び抵抗の低減を実現可能な、キャリア付金属箔を提供できるとの知見を得た。
【0008】
したがって、本発明の目的は、キャリアの剥離性及び金属層の選択エッチング性に優れ、これを用いて製造された半導体パッケージ(例えばミリ波アンテナ基板)における伝送損失及び抵抗の低減を実現可能な、キャリア付金属箔を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様によれば、
(a)キャリアと、
(b)前記キャリア上に設けられる剥離機能層であって、
(b1)前記キャリアに近い側の、厚さが10nmを超え200nm未満である密着層、及び
(b2)前記キャリアから遠い側の、厚さが50nm以上500nm以下である剥離補助層を含む、剥離機能層と、
(c)前記剥離機能層上に設けられる複合金属層であって、
(c1)前記剥離補助層に近い側の炭素層、及び
(c2)前記剥離補助層から遠い側の、主としてAu又はPtで構成される第1金属層を含む、複合金属層と、
を備えた、キャリア付金属箔が提供される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、前記キャリア付金属箔を用いてミリ波アンテナ基板を製造することを含む、ミリ波アンテナ基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のキャリア付金属箔の一例を示す模式断面図である。
図2】本発明のキャリア付金属箔の他の一例を示す模式断面図である。
図3】本発明のミリ波アンテナ基板の製造方法の一例を示す工程流れ図であり、前半の工程(工程(i)~(iii))を示す図である。
図4】本発明のミリ波アンテナ基板の製造方法の一例を示す工程流れ図であり、図3に続く工程(工程(iv)~(vi))を示す工程流れ図である。
図5】本発明のミリ波アンテナ基板の製造方法の他の一例を示す工程流れ図であり、前半の工程(工程(i)~(iii))を示す図である。
図6】本発明のミリ波アンテナ基板の製造方法の他の一例を示す工程流れ図であり、図5に続く工程(工程(iv)~(vi))を示す工程流れ図である。
図7】実施例の評価2-1における伝送損失測定用サンプルの作製手順を示す工程流れ図であり、前半の工程(工程(i)~(iii))を示す図である。
図8】実施例の評価2-1における伝送損失測定用サンプルの作製手順を示す工程流れ図であり、図7に続く工程(工程(iv)~(vi))を示す工程流れ図である。
図9図8(vi)に示される伝送損失測定用サンプルの斜視図である。
図10】実施例の評価2-2における伝送損失測定用サンプルの作製手順を示す工程流れ図であり、前半の工程(工程(i)~(iii))を示す図である。
図11】実施例の評価2-2における伝送損失測定用サンプルの作製手順を示す工程流れ図であり、図10に続く工程(工程(iv)~(vi))を示す工程流れ図である。
図12】実施例の評価3-1及び3-2における配線パターンのエッジ部分の角度θを示す断面模式図である。
図13】実施例の評価3-2におけるコアレス支持体の作製手順を示す工程流れ図であり、前半の工程(工程(i)~(iii))を示す図である。
図14】実施例の評価3-2におけるコアレス支持体の作製手順を示す工程流れ図であり、図13に続く工程(工程(iv)~(vi))を示す工程流れ図である。
図15】実施例の評価4における接続抵抗測定用サンプルの作製手順(工程(i)~(iv))を示す工程流れ図である。
図16】実施例の評価4における接続抵抗測定用サンプルを用いたI-V測定を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
キャリア付金属箔
本発明のキャリア付金属箔の一例が図1及び2に模式的に示される。図1及び2に示されるように、キャリア付金属箔10は、キャリア12と、剥離機能層14と、複合金属層20とをこの順に備えたものである。剥離機能層14はキャリア12上に設けられ、キャリア12に近い側の密着層16、及びキャリア12から遠い側の剥離補助層18を含む。密着層16は、厚さが10nmを超え200nm未満の層である。剥離補助層18は、厚さが50nm以上500nm以下の層である。複合金属層20は剥離機能層14上に設けられ、剥離補助層18に近い側の炭素層22、及び剥離補助層18から遠い側の第1金属層26を含む。第1金属層26は主としてAu又はPtで構成される層である。図2に示されるように、複合金属層20は、炭素層22と第1金属層26との間に第2金属層24をさらに含んでいてもよい。また、複合金属層20は、第1金属層26の炭素層22から遠い側の面にバリア層28をさらに含んでいてもよい。キャリア12の両面に上下対称となるように上述の各種層を順に備えてなる構成としてもよい。このように、キャリア12の剥離に寄与する層(すなわち密着層16及び剥離補助層18)の厚さを特定の範囲に制御し、かつ、主としてAu又はPtで構成された金属層(すなわち第1金属層26)を採用することで、キャリアの剥離性及び金属層の選択エッチング性に優れたキャリア付金属箔を提供することが可能となる。また、このキャリア付金属箔10を用いて製造された半導体パッケージ(例えばミリ波アンテナ基板)における伝送損失及び抵抗の低減を実現することが可能となる。
【0013】
キャリア12の材質はガラス、セラミックス、シリコン、樹脂、及び金属のいずれであってもよい。好ましくは、キャリア12は、ガラス、シリコン又はセラミックスで構成される。キャリア12の形態はシート、フィルム及び板のいずれであってもよい。また、キャリア12はこれらのシート、フィルム及び板等が積層されたものであってもよい。例えば、キャリア12はガラス板、セラミックス板、シリコンウェハ、金属板等といった剛性を有する支持体として機能しうるものであってもよいし、金属箔や樹脂フィルム等といった剛性を有しない形態であってもよい。キャリア12を構成する金属の好ましい例としては、銅、チタン、ニッケル、ステンレススチール、アルミニウム等が挙げられる。セラミックスの好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、その他各種ファインセラミックス等が挙げられる。樹脂の好ましい例としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等が挙げられる。より好ましくは、電子素子を搭載する際の加熱に伴うコアレス支持体の反り防止の観点から、熱膨張係数(CTE)が25ppm/K未満(典型的には1.0ppm/K以上23ppm/K以下)の材料であり、そのような材料の例としては、上述したような各種樹脂(特にポリイミド、液晶ポリマー等の低熱膨張樹脂)、ガラス、シリコン及びセラミックス等が挙げられる。また、ハンドリング性やチップ実装時の平坦性確保の観点から、キャリア12はビッカース硬度が100HV以上であるのが好ましく、より好ましくは150HV以上2500HV以下である。これらの特性を満たす材料として、キャリア12はガラス、シリコン又はセラミックスで構成されるのが好ましく、より好ましくはガラス又はセラミックスで構成され、特に好ましくはガラスで構成される。ガラスから構成されるキャリア12としては、例えばガラス板が挙げられる。ガラスをキャリア12として用いた場合、軽量で、熱膨脹係数が低く、絶縁性が高く、剛直で表面が平坦なため、第1金属層26の表面を極度に平滑にできる等の利点がある。また、キャリア12がガラスである場合、微細回路形成に有利な表面平坦性(コプラナリティ)を有している点、配線製造工程におけるデスミアや各種めっき工程において耐薬品性を有している点、キャリア付金属箔10からキャリア12を剥離する際に化学的分離法が採用できる点等の利点がある。キャリア12を構成するガラスの好ましい例としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくは無アルカリガラス、ソーダライムガラス、及びそれらの組合せであり、特に好ましくは無アルカリガラスである。無アルカリガラスは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、及び酸化カルシウムや酸化バリウム等のアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、更にホウ酸を含有する、アルカリ金属を実質的に含有しないガラスのことである。この無アルカリガラスは、0℃から350℃までの広い温度帯域において熱膨脹係数が3ppm/K以上5ppm/K以下の範囲で低く安定しているため、加熱を伴うプロセスにおけるガラスの反りを最小限にできるとの利点がある。キャリア12の厚さは100μm以上2000μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以上1800μm以下、さらに好ましくは400μm以上1100μm以下である。このような範囲内の厚さであると、ハンドリングに支障を来さない適切な強度を確保しながら配線の薄型化、及び電子部品搭載時に生じる反りの低減を実現することができる。
【0014】
キャリア12の密着層16に隣接する側の表面は、レーザー顕微鏡を用いてJIS B 0601-2001に準拠して測定される、0.1nm以上70nm以下の算術平均粗さRaを有するのが好ましく、より好ましくは0.5nm以上60nm以下、さらに好ましくは1.0nm以上50nm以下、特に好ましくは1.5nm以上40nm以下、最も好ましくは2.0nm以上30nm以下である。このようにキャリア12表面の算術平均粗さが小さいほど、第1金属層26の炭素層22と反対側の表面(第1金属層26の外側表面)において望ましく低い算術平均粗さRaをもたらすことができ、それにより、第1金属層26を用いて形成される配線において、ライン/スペース(L/S)が13μm以下/13μm以下(例えば12μm/12μmから2μm/2μmまで)といった程度にまで高度に微細化された配線パターンを形成するのに適したものとなる。
【0015】
剥離機能層14は、キャリア12と炭素層22との間に介在して、キャリア12の安定的な剥離に寄与する層である。前述したように、剥離機能層14は、キャリア12に近い側の密着層16、及びキャリア12から遠い側の剥離補助層18を含む。この点、密着層16及び剥離補助層18の厚さをそれぞれ所定の範囲に制御することで、キャリア付金属箔10に所望の剥離強度を付与することが可能となる。剥離機能層14は、キャリア付金属箔10の剥離機能をより一層向上させる点から、密着層16及び/又は剥離補助層18として、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN、及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を80原子%以上(好ましくは85原子%以上、より好ましくは90原子%以上)含む層を少なくとも1層備えるのが好ましい。剥離機能層14における上記元素又は成分の含有率の上限値は特に限定されず、100原子%であってもよいが、98%以下であるのが現実的である。剥離機能層14における上記元素又は成分の含有率はX線光電子分光法(XPS)で分析することにより測定される値とする。
【0016】
キャリア付金属箔10は、密着層16の厚さTに対する剥離補助層18の厚さTの比であるT/Tが1を超え20以下であるのが好ましく、より好ましくは1.5以上15以下、さらに好ましくは2以上10以下、特に好ましくは2.5以上6以下である。T/Tを上記範囲内とすることで、例えば240℃以上340℃以下といった幅広い温度域での熱処理を施した場合であっても、炭素層22が有する剥離機能の低下を抑制することができる。密着層16及び剥離補助層18の厚さの比が剥離性に影響を及ぼすメカニズムは必ずしも定かではないが、上記厚さの比を変化させることで、加熱時におけるキャリア付金属箔10の各層を構成する元素の拡散挙動に変化が生じることによるものと考えられる。
【0017】
密着層16は、キャリア12と剥離補助層18との密着性を確保するためにキャリア12と剥離補助層18の間に介在させる層である。したがって、剥離補助層18よりも相対的にキャリア12との密着性に優れた成分で構成されるのが好ましい。かかる観点から、密着層16はCu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN、及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種で構成される層であるのが好ましく、より好ましくはTi、Ta、TiN、及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくはTi、及びTiNからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはTiで構成される層である。密着層16は、XPSにより測定される上記金属又は成分の含有率が80原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは85原子%以上、さらに好ましくは90原子%以上である。また、密着層16における上記金属又は成分の含有率の上限値は特に限定されず100原子%であってもよいが、98原子%以下が現実的である。密着層16は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。また、特に制限されるものではないが、密着層16の成膜後に大気に暴露される場合、それに起因して混入する酸素の存在は許容される。密着層16は、XPSにより測定される酸素含有率が0原子%以上5原子%以下であるのが典型的であり、より典型的には0.05原子%以上4原子%以下、さらに典型的には0.1原子%以上3原子%以下である。密着層16は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により形成された層であるのが膜厚分布の均一性を向上できる点で特に好ましい。
【0018】
密着層16の厚さTは、10nmを超え200nm未満であり、好ましくは15nm以上180nm以下、より好ましくは20nm以上150nm以下、さらに好ましくは30nm以上120nm以下、特に好ましくは40nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。このような範囲内であると、キャリア12と剥離補助層18との適度な密着性を確保しつつ、絶縁樹脂積層時の真空プレス等の熱処理に伴う剥離機能の低下(剥離強度の上昇)を効果的に抑制することが可能となる。密着層16の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0019】
剥離補助層18は、キャリア12の剥離強度を所望の値に制御する点から、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN、及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種で構成される層であるのが好ましく、より好ましくはCu、Ni、AlZn、及びWからなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくはCu、Ni、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはCuで構成される層である。剥離補助層18は、XPSにより測定される上記金属又は成分の含有率が80原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは85原子%以上、さらに好ましくは90原子%以上である。また、剥離補助層18における上記金属又は成分の含有率の上限値は特に限定されず100原子%であってもよいが、98原子%以下が現実的である。剥離補助層18は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。また、特に制限されるものではないが、剥離補助層18の成膜後に大気に暴露される場合、それに起因して混入する酸素の存在は許容される。剥離補助層18は、XPSにより測定される酸素含有率が0原子%以上5原子%以下であるのが典型的であり、より典型的には0.05原子%以上4原子%以下、さらに典型的には0.1原子%以上3原子%以下である。剥離補助層18は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により形成された層であるのが膜厚分布の均一性を向上できる点で特に好ましい。
【0020】
剥離補助層18の厚さTは、50nm以上500nm以下であり、好ましくは100nm以上450nm以下、より好ましくは150nm以上400nm以下、さらに好ましくは200nm以上350nm以下、特に好ましくは250nm以上300nm以下である。このような範囲内であると、剥離機能の低下(剥離強度の上昇)を効果的に抑制できるとともに、ミリ波アンテナ基板製造等のプロセス中におけるデラミネーション(基板の層間剥離)の発生をも効果的に抑制することが可能となる。剥離補助層18の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0021】
複合金属層20は、剥離補助層18に近い側の炭素層22と、剥離補助層18から遠い側の第1金属層26とを含む。複合金属層20は、炭素層22と第1金属層26との間に第2金属層24をさらに含んでいてもよい。また、複合金属層20は、第1金属層26の炭素層22から遠い側の面にバリア層28をさらに含んでいてもよい。複合金属層20の厚さは51nm以上3220nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以上2000nm以下、さらに好ましくは300nm以上1000nm以下である。複合金属層20の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0022】
炭素層22は主として炭素を含んでなる層であり、好ましくは主として炭素又は炭化水素からなる層であり、より好ましくは硬質炭素膜であるアモルファスカーボンからなる。したがって、炭素層22はアモルファスカーボンを含むのが好ましい。炭素層22はXPSにより測定される炭素濃度が60原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは80原子%以上、特に好ましくは85原子%以上である。炭素濃度の上限値は特に限定されず100原子%であってもよいが、98原子%以下が現実的である。炭素層22は不可避不純物(例えば雰囲気等の周囲環境に由来する酸素、炭素、水素等)を含みうる。また、炭素層22には第1金属層26、又は存在する場合には第2金属層24の成膜手法に起因して金属原子(例えばAu、Pt等)が混入しうる。炭素は剥離機能層14との相互拡散性及び反応性が小さく、300℃を超える温度でのプレス加工等を受けても、第1金属層26(存在する場合には第2金属層24)と接合界面との間での高温加熱による金属結合の形成を防止して、キャリアの引き剥がし除去が容易な状態を維持することができる。この炭素層22もスパッタリング等の気相法により形成された層であるのがアモルファスカーボン中の過度な不純物を抑制する点、前述の密着層16及び剥離補助層18の成膜との連続生産性の点などから好ましい。炭素層22の厚さは1nm以上20nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上10nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0023】
第1金属層26は主としてAu又はPtで構成される層であり、好ましくは主としてAuで構成される層である。これらの元素はCu等の他の金属元素と比べて化学的安定性が高く、それ故キャリア付金属箔10を用いて製造されたミリ波アンテナ基板において、伝送損失及び接続抵抗の低減を望ましく実現することができる。また、ミリ波アンテナ基板は、アンテナの指向性を担保すべく配線の端部形状が保たれている(すなわち配線のエッジ部分の角度が90°に近い)ことが望ましいと考えられるところ、これらの金属は選択エッチング性に優れるため、Auエッチングを伴う配線形成(パターニング)の際に、上記端部形状を実現しやすいといえる。第1金属層26を構成する上記金属は、純金属であってもよいし、合金であってもよい。第1金属層26は、XPSにより測定される上記金属(例えばAu)の含有率が60原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは80原子%以上、特に好ましくは90原子%以上である。また、第1金属層26における上記金属(例えばAu)の含有率の上限値は特に限定されず、100原子%であってもよいが、98原子%以下が典型的である。第1金属層26を構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。第1金属層26はスパッタリング等の気相法により形成された層であるのが好ましい。第1金属層26は50nm以上2000nm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは70nm以上1500nm以下、さらに好ましくは100nm以上800nm以下、特に好ましくは200nm以上500nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0024】
第2金属層24は、キャリア付金属箔10に対してエッチングストッパー機能や反射防止機能等の所望の機能を付与するものであることが好ましい。第2金属層24を構成する金属の好ましい例としては、Ti、Ta、Ni、W、Cr、Pd及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくはTi、Ta、Ni、W、Cr及びそれらの組合せ、さらに好ましくはTi、Ta、Ni及びそれらの組合せ、特に好ましくはTi、Ta及びそれらの組合せ、最も好ましくはTiである。第2金属層24を構成する上記金属は、純金属であってもよいし、合金であってもよい。第2金属層24は、XPSにより測定される上記金属の含有率が50原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは60原子%以上、さらに好ましくは70原子%以上、特に好ましくは80原子%以上である。また、第2金属層24における上記金属の含有率の上限値は特に限定されず、100原子%であってもよいが、98原子%以下が典型的である。これらの元素は、フラッシュエッチング液(例えばAuフラッシュエッチング液)に対して溶解しないという性質を有し、その結果、フラッシュエッチング液に対して優れた耐薬品性を呈することができる。したがって、第2金属層24は、後述する第1金属層26よりもフラッシュエッチング液によってエッチングされにくい層となり、それ故エッチングストッパー層として機能しうる。また、第2金属層24を構成する上述の金属は光の反射を防止する機能も有するため、第2金属層24は、画像検査(例えば自動画像検査(AOI))において視認性を向上させるための反射防止層としても機能しうる。第2金属層24は、窒素を含んでいてもよく、XPSにより測定される窒素含有率が典型的には0原子%以上50原子%以下であり、より典型的には10原子%以上、さらに典型的には20原子%以上、特に典型的には30原子%以上である。第2金属層24を構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。第2金属層24はスパッタリング等の気相法により形成された層であるのが好ましい。第2金属層24の厚さは、50nm以上1000nm以下であるのが好ましく、より好ましくは100nm以上800nm以下、さらに好ましくは200nm以上500nm以下、特に好ましくは300nm以上400nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0025】
バリア層28は、第1金属層26を構成する金属(すなわちAu又はPt)と、第1金属層26上(すなわちキャリア付金属箔10のキャリア12と反対側の表面)に形成されうる配線層を構成する金属(例えばCu)との金属間化合物の形成を抑制するための層である。金属間化合物の形成をより効果的に抑制する点から、バリア層28を構成する金属の好ましい例としては、Ti、Ta、Ni、W、Cr、Pd及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくはTa、Ni、W、Cr、及びそれらの組合せである。バリア層28を構成する上記金属は、純金属であってもよいし、合金であってもよい。バリア層28は、XPSにより測定される上記金属の含有率が50原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは60原子%以上、さらに好ましくは70原子%以上、特に好ましくは80原子%以上である。また、バリア層28における上記金属の含有率の上限値は特に限定されず、100原子%であってもよいが、98原子%以下が典型的である。バリア層28を構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。バリア層28はスパッタリング等の気相法により形成された層であるのが好ましい。バリア層28の厚さは、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、より好ましくは2nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上70nm以下、特に好ましくは5nm以上50nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0026】
密着層16、剥離補助層18、炭素層22、第2金属層24、第1金属層26及びバリア層28はいずれも物理気相堆積(PVD)膜、すなわち物理気相堆積(PVD)法により形成された膜であるのが好ましく、より好ましくはスパッタ膜、すなわちスパッタリングにより形成された膜である。
【0027】
キャリア付金属箔10全体の厚さは特に限定されないが、好ましくは500μm以上3000μm以下、より好ましくは700μm以上2500μm以下、さらに好ましくは900μm以上2000μm以下、特に好ましくは1000μm以上1700μm以下である。キャリア付金属箔10のサイズは特に限定されないが、好ましくは10cm角以上、より好ましくは20cm角以上、さらに好ましくは25cm角以上である。キャリア付金属箔10のサイズの上限は特に限定されないが、1000cm角が上限の1つの目安として挙げられる。また、キャリア付金属箔10は、配線の形成前後において、それ自体単独でハンドリング可能な形態である。
【0028】
キャリア付金属箔の製造方法
本発明のキャリア付金属箔10は、キャリア12を用意し、キャリア12上に、密着層16、剥離補助層18、炭素層22、所望により第2金属層24、第1金属層26、及び所望によりバリア層28を形成することにより製造することができる。密着層16、剥離補助層18、炭素層22、第2金属層24(存在する場合)、第1金属層26、及びバリア層28(存在する場合)の各層の成膜は、極薄化によるファインピッチ化に対応しやすい観点から、物理気相堆積(PVD)法により行われるのが好ましい。物理気相堆積(PVD)法の例としては、スパッタリング法、真空蒸着法、及びイオンプレーティング法が挙げられるが、0.05nmから5000nmまでといった幅広い範囲で膜厚制御できる点、広い幅ないし面積にわたって膜厚均一性を確保できる点等から、最も好ましくはスパッタリング法である。特に、密着層16、剥離補助層18、炭素層22、第2金属層24(存在する場合)、第1金属層26、及びバリア層28(存在する場合)の全ての層をスパッタリング法により形成することで、製造効率が格段に高くなる。物理気相堆積(PVD)法による成膜は公知の気相成膜装置を用いて公知の条件に従って行えばよく特に限定されない。例えば、スパッタリング法を採用する場合、スパッタリング方式は、マグネトロンスパッタリング、2極スパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法等、公知の種々の方法であってよいが、マグネトロンスパッタリングが、成膜速度が速く生産性が高い点で好ましい。スパッタリングはDC(直流)及びRF(高周波)のいずれの電源で行ってもよい。また、ターゲット形状も広く知られているプレート型ターゲットを使用することができるが、ターゲット使用効率の観点から円筒形ターゲットを用いることが望ましい。以下、密着層16、剥離補助層18、炭素層22、第2金属層24(存在する場合)、第1金属層26、及びバリア層28(存在する場合)の各層の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜について説明する。
【0029】
密着層16及び剥離補助層18の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn及びWからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成されるターゲットを用い、非酸化性雰囲気下でマグネトロンスパッタリングにより行われるのが膜厚分布均一性を向上できる点で好ましい。ターゲットの純度は99.9wt%以上が好ましい。スパッタリングに用いるガスとしては、アルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。このとき、TiNターゲット、TaNターゲット、チタンターゲット又はタンタルターゲットを用いて、アルゴンガス(必要に応じて更に窒素ガス)中でスパッタリングを行うことにより、TiN又はTaNで構成される密着層16及び/又は剥離補助層18を形成することができる。アルゴンガス等の流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガス等の流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm以上10.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0030】
炭素層22の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、カーボンターゲットを用いてアルゴン等の不活性雰囲気下で行われるのが好ましい。カーボンターゲットはグラファイトで構成されるのが好ましいが、不可避不純物(例えば雰囲気等の周囲環境に由来する酸素や炭素)を含みうる。カーボンターゲットの純度は99.99wt%以上が好ましく、より好ましくは99.999wt%以上である。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm以上10.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0031】
第2金属層24及びバリア層28の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Ti、Ta、Ni、W、Cr及びPdからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成されるターゲットを用いて、マグネトロンスパッタ法により行われるのが好ましい。ターゲットの純度は99.9%以上が好ましい。特に、第2金属層24及びバリア層28のマグネトロンスパッタ法による成膜は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、圧力0.1Pa以上20Pa以下で行われるのが好ましい。スパッタリング圧力は、より好ましくは0.2Pa以上15Pa以下、さらに好ましくは0.3Pa以上10Pa以下である。なお、上記圧力範囲の制御は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することにより行えばよい。アルゴンガスの流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり1.0W/cm以上15.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。また、製膜時にキャリア温度を一定に保持するのが、安定した膜特性(例えば膜抵抗や結晶サイズ)を得やすい点で好ましい。成膜時のキャリア温度は25℃以上300℃以下の範囲内で調整することが好ましく、より好ましくは40℃以上200℃以下、さらに好ましくは50℃以上150℃以下の範囲内である。
【0032】
第1金属層26の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Au及びPtからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成されるターゲットを用いてアルゴン等の不活性雰囲気下で行われるのが好ましい。ターゲットは金属又は合金で構成されるのが好ましいが、不可避不純物を含みうる。ターゲットの純度は99.9%以上が好ましく、より好ましくは99.99%、さらに好ましくは99.999%以上である。第1金属層26の気相成膜時の温度上昇を避けるため、スパッタリングの際、ステージの冷却機構を設けてもよい。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、安定的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm以上10.0W/cm以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0033】
ミリ波アンテナ基板の製造方法
本発明のキャリア付金属箔10はミリ波アンテナ基板の製造に用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、前述したキャリア付金属箔10を用いてミリ波アンテナ基板を製造することを含む、ミリ波アンテナ基板の製造方法、あるいは前述したキャリア付金属箔10を用いて得られたミリ波アンテナ基板が提供される。本発明のキャリア付金属箔10を用いることで、前述したように伝送損失及び抵抗が望ましく低減されたミリ波アンテナ基板を提供することができる。以下、本発明のキャリア付金属箔10を用いたミリ波アンテナ基板の好ましい製造方法の一例について説明する。この方法は、(1)キャリア付金属箔に絶縁層及び配線層を積層して回路形成を行い、(2)ICチップを実装し、(3)キャリアを剥離し、(4)第2金属層(存在する場合)のエッチング除去を行った後、(5)パターニングによりアンテナ形成を行うことを含む。
【0034】
(1)回路形成
キャリア付金属箔10を用意し(図3(i))、このキャリア付金属箔10の第1金属層26側(存在する場合にはバリア層28側)の表面に絶縁層及び配線層を積層して回路基板30が形成された積層体32を得る(図3(ii))。回路基板30の形成手法は特に限定されるものではなく、例えば特許文献1に示されるような公知のコアレスビルドアップ法により所望の絶縁層及び配線層を形成することができる。ミリ波アンテナ基板における干渉を低減するために、回路基板30における絶縁樹脂(絶縁層)の厚さは100μm以上とするのが好ましく、より好ましくは200μm以上500μm以下である。絶縁樹脂の好ましい例としては、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。例えば、絶縁樹脂として味の素ファインテクノ株式会社製のABF-GXT31を好ましく用いることができる。絶縁層には絶縁性を向上する等の観点からシリカ、アルミナ等の各種無機粒子からなるフィラー粒子等が含有されていてもよい。また、絶縁層は複数の層で構成されていてもよい。
【0035】
(2)ICチップの実装
回路基板30の外側表面(すなわちキャリア付金属箔10と反対側の表面)にミリ波用のICチップ34を実装する(図3(iii))。なお、本明細書において、「ミリ波」とは、24GHz以上300GHz以下の周波数の電波を指すものとする。また、本明細書において、「IC(集積回路)」は、CPU(中央処理装置)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、メモリ、PMIC(パワーマネジメントIC)、RFIC(高周波集積回路(例えばGPS(全地球測位システム))等の各種ICを幅広く包含するものである。チップ実装の方式の例としては、フリップチップ実装方式、ダイボンディング方式等が挙げられる。フリップチップ実装方式は、ICチップ34の実装パッドと、回路基板30の配線層との接合を行う方式である。この実装パッド上には柱状電極(ピラー)やはんだバンプ等が形成されてもよく、実装前に回路基板30の表面に封止樹脂膜であるNCF(Non-Conductive Film)等を貼り付けてもよい。接合は、はんだ等の低融点金属を用いて行われるのが好ましいが、異方導電性フィルム等を用いてもよい。ダイボンディング接着方式は、配線層に対して、ICチップ34の実装パッド面と反対側の面を接着する方式である。この接着には、熱硬化樹脂と熱伝導性の無機フィラーを含む樹脂組成物である、ペーストやフィルムを用いるのが好ましい。ICチップ34はエポキシ樹脂等の公知の封止材を用いて樹脂封止されるのが好ましい。
【0036】
(3)キャリアの剥離
ICチップ34が実装された積層体32から、キャリア12を剥離機能層14とともに炭素層22の位置で剥離する(図4(iv))。こうすることで、第2金属層24(存在する場合)が積層体32の外側表面に露出する。なお、前述した回路基板30の形成時に厚い絶縁樹脂(例えば厚さ200μm以上)を用いた場合、キャリア付金属箔は当該絶縁樹脂からの応力の影響を受けやすく、剥離強度が不安定となりうる。この点、前述したように、本発明のキャリア付金属箔10は密着層16及び剥離補助層18の厚さが所定の範囲に制御されているため、キャリア12の剥離を安定的に行うことが可能となる。
【0037】
(4)第2金属層のエッチング除去
第2金属層24が存在する場合には、市販のエッチング液等を用いて積層体32から第2金属層24をエッチング除去して、第1金属層26を積層体32の外側表面に露出させる(図4(v))。第2金属層24のエッチングは公知の手法に基づき行えばよく、特に限定されない。
【0038】
(5)アンテナ形成
積層体32の第1金属層26側の表面(ICチップ34と反対側の表面)に対してパターニングを施すことにより、アンテナ38が形成されたミリ波アンテナ基板40を得る(図4(vi))。アンテナ38の形成手法の一例としては、まず、積層体32の第1金属層26側の表面に感光性ドライフィルムを貼り付け、露光及び現像を行い、所定パターンのフォトレジスト層(図示せず)を形成する。第1金属層26の露出表面(すなわちフォトレジスト層でマスキングされていない部分)に無電解めっき(例えば無電解Auめっき)を行い、無電解めっき層36を形成した後、フォトレジスト層を剥離する。こうすることで、第1金属層26、存在する場合にはバリア層28、及び無電解めっき層36が配線パターン状に残ってアンテナ38を形成する一方、配線パターンを形成しない部分の第1金属層26が露出する。その後、露出した第1金属層26の不要部分、及び存在する場合にはバリア層28の不要部分をエッチング液で除去することにより、アンテナ38が形成されたミリ波アンテナ基板40を得ることができる。なお、従来のキャリア付銅箔を用いてミリ波アンテナ基板を作製する場合には、銅層と無電解めっき層(例えばAu層)との密着性を確保すべく、無電解めっき層の形成を行う前に無電解Niめっき等を行うことを要し、これにより抵抗が高くなりうる。これに対して、本発明のキャリア付金属箔10によれば、第1金属層26をAu等で構成することから無電解Niめっきが不要となり、結果としてミリ波アンテナ基板においてより一層低い抵抗を実現することができる。
【0039】
アンテナ38の一部又は全部は埋め込み回路の形であってもよい。すなわち、上記(1)における樹脂積層前に、第1金属層26、及び存在する場合にはバリア層28に対してパターニングを施してもよく、こうすることで配線層の一部が埋め込み回路の形で表面に組み込まれた積層体32を得ることができる(図5(ii))。なお、バリア層28が存在しない場合には、上記パターニングを行う前に、第1金属層26表面に対してスパッタリング等によりNi薄膜等を形成しておくのが好ましい。その後、積層体32に対して上記(2)~(5)の各種工程を行うことにより、アンテナ38の一部又は全部が埋め込み回路であるミリ波アンテナ基板40を得ることができる(図5及び6参照)。かかる手順にてミリ波アンテナ基板40を作製する場合、上記(5)のアンテナ形成工程において、フォトレジスト層形成の前に無電解めっき(例えば無電解Auめっき)を行ってシード層を形成しておくのが望ましい。
【実施例0040】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0041】
例1
キャリア12上に、密着層16、剥離補助層18、炭素層22、第2金属層24及び第1金属層26をこの順に成膜してキャリア付金属箔10を製造した。具体的な手順は以下のとおりである。
【0042】
(1)キャリアの準備
キャリア12として厚さ1.1mmのガラスシート(材質:ソーダライムガラス、算術平均粗さRa:0.6nm)を用意した。
【0043】
(2)密着層の形成
キャリア12上に、密着層16として厚さ50nmのチタン層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
・装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
・ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のチタンターゲット(純度99.999%)
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・スパッタリング圧:0.35Pa
・スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm
・成膜時温度:40℃
【0044】
(3)剥離補助層の形成
密着層16のキャリア12とは反対の面側に、剥離補助層18として厚さ200nmの銅層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
・装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
・ターゲット:直径8インチ(203.2mm)の銅ターゲット(純度99.98%)
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
・スパッタリング圧:0.35Pa
・スパッタリング電力:1000W(6.2W/cm
・成膜時温度:40℃
【0045】
(4)炭素層の形成
剥離補助層18の密着層16とは反対の面側に、炭素層22として厚み6nmのアモルファスカーボン層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
・装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
・ターゲット:直径8インチ(203.2mm)の炭素ターゲット(純度99.999%)
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
・スパッタリング圧:0.35Pa
・スパッタリング電力:250W(0.7W/cm
・成膜時温度:40℃
【0046】
(5)第2金属層の形成
炭素層22の剥離補助層18とは反対の面側に、第2金属層24として厚さ100nmのチタン層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成した。
・装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
・ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のチタンターゲット(純度99.999%)
・キャリアガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・スパッタリング圧:0.35Pa
・スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm
【0047】
(6)第1金属層の形成
第2金属層24の剥離補助層18とは反対の面側に、第1金属層26として厚さ300nmのAu層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
・装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
・ターゲット:直径8インチ(203.2mm)の金ターゲット(純度99.99%)
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
・スパッタリング圧:0.35Pa
・スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm
・成膜時温度:40℃
【0048】
例2
上記(6)の第1金属層26の形成後、バリア層28の形成を以下のように行ったこと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0049】
(7)バリア層の形成
第1金属層26の第2金属層24とは反対の面側に、バリア層として厚さ30nmのニッケル層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
・装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
・ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のニッケルターゲット(純度99.9%)
・キャリアガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・スパッタリング圧:0.35Pa
・スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm
【0050】
例3(比較)
第1金属層26としてAu層の代わりに銅層を形成すべく、スパッタリングターゲットを銅ターゲット(純度99.98%)としたこと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0051】
例4
第2金属層24及びバリア層28としてチタン層又はニッケル層の代わりにタンタル層を形成すべく、スパッタリングターゲットをタンタルターゲット(純度99.9%)としたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0052】
例5
第2金属層24としてチタン層の代わりにニッケル層を形成すべく、スパッタリングターゲットをニッケルターゲット(純度99.9%)としたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0053】
例6
第2金属層24及びバリア層28としてチタン層又はニッケル層の代わりにタングステン層を形成すべく、スパッタリングターゲットをタングステンターゲット(純度99.9%)としたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0054】
例7
第2金属層24及びバリア層28としてチタン層又はニッケル層の代わりにクロム層を形成すべく、スパッタリングターゲットをクロムターゲット(純度99.9%)としたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0055】
例8
第2金属層24及びバリア層28としてチタン層又はニッケル層の代わりにパラジウム層を形成すべく、スパッタリングターゲットをパラジウムターゲット(純度99.9%)としたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0056】
例9
剥離補助層18の厚さを300nmとしたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0057】
例10
剥離補助層18の厚さを100nmとしたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0058】
例11
密着層16の厚さを100nmとしたこと、及び剥離補助層18の厚さを50nmとしたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0059】
例12
密着層16の厚さを150nmとしたこと、及び剥離補助層18の厚さを500nmとしたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0060】
例13(比較)
密着層16の厚さを10nmとしたこと、及び剥離補助層18の厚さを30nmとしたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0061】
例14(比較)
密着層16の厚さを200nmとしたこと、及び剥離補助層18の厚さを600nmとしたこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔の作製を行った。
【0062】
評価
例1~14のキャリア付金属箔10について、以下に示されるとおり、各種評価を行った。評価結果は表1に示されるとおりであった。なお、表1中「-」と記載した箇所については該当する評価を実施していない。
【0063】
<評価1:剥離性>
キャリア付金属箔10の剥離強度の測定を以下のように行った。まず、キャリア付金属箔10の第1金属層26(存在する場合にはバリア層28)側の表面に、厚さ18μmのパネル電解銅めっきを施し、めっきアップ層を形成した。ここで、例1については、AuとCuとの接着性を担保する目的で、パネル電解銅めっき前に無電解Niめっきを行った。めっきアップ層が形成されたキャリア付金属箔10に対して、電子部品実装を想定した半田リフロー(260℃以上で2分間保持)の熱処理を行った後、室温まで自然冷却させて銅張積層板を得た。得られた銅張積層板に対して、JIS C 6481-1996に準拠して、めっきアップ層と一体となった複合金属層20を剥離した時の剥離強度(gf/cm)を測定した。このとき、測定幅は50mmとし、測定長さは20mmとした。こうして得られた剥離強度(平均値)を以下の基準で格付け評価した。
‐評価A:剥離強度が3gf/cm以上10gf/cm以下
‐評価B:剥離強度が1gf/cm以上30gf/cm以下(ただし評価Aに該当するものは除く)
‐評価C:剥離強度が1gf/cm未満又は30gf/cmを超え50gf/cm未満
‐評価D:剥離強度が50gf/cm以上
【0064】
<評価2-1:伝送損失(樹脂積層後パターニング)>
例1~8のキャリア付金属箔10について、図7及び8に示される手順により伝送損失測定用サンプル110を作製し、伝送損失の測定及び評価を行った。
【0065】
まず、厚さ35μmの絶縁樹脂フィルム(味の素ファインテクノ株式会社製、ABF-GXT31、比誘電率3.4)を6枚積層して絶縁樹脂基材102とした(図7(i))。この絶縁樹脂基材102の片面にキャリア付金属箔10の第1金属層26側(存在する場合にはバリア層28側)を接合させ、真空プレス機を使用して、温度100℃、圧力0.7MPa、プレス時間90秒の条件で積層し、絶縁樹脂基材102の厚さhが約200μmの金属張積層板104を得た(図7(ii))。
【0066】
次に、金属張積層板104の絶縁樹脂基材102側(キャリア付金属箔10と反対側)の表面に、グランド層106として厚さ18μmのCu箔を真空プレスにより接合した(図7(iii))。真空プレスは、温度100℃、圧力0.7MPa、120秒の条件で行った。その後、絶縁樹脂基材102にキュアを施した。キュアは170℃、30分で仮硬化させた後、200℃、60分で本硬化を行った。
【0067】
その後、金属張積層板104からキャリア12を剥離機能層14とともに炭素層22の位置で剥離した(図8(iv))。金属張積層板104の片面側に露出した第2金属層24をエッチングで除去することで、第1金属層26を露出させた。こうして、第1金属層26、絶縁樹脂基材102、及びグランド層106がこの順に積層された両面金属張積層板107を得た(図8(v))。得られた両面金属張積層板107の第1金属層26側の表面を水洗及び乾燥した。
【0068】
両面金属張積層板107の第1金属層26側の表面に感光性ドライフィルム(図示せず)を貼り付け、露光、現像、及び無電解Auめっきを行った。現像は、現像液として1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、25℃で2分間、シャワー方式により行った。ドライフィルム(フォトレジスト層)を剥離した後、第1金属層26(存在する場合には更にバリア層28)の不要部分をエッチングで除去した。このようなパターニングを行うことで、シグナルライン108を形成し、特性インピーダンスが50Ω、差動インピーダンスが100Ωとなるマイクロストリップラインとした(図8(vi))。より具体的には、シグナルライン108の回路幅Wが0.47mm、厚さtが20μmとなるようにパターニングを行い、上記特性インピーダンス及び差動インピーダンスとすべく、必要に応じてさらにパターニングによる微調整を行った(図9)。なお、例3については、Au(無電解Auめっき)とCu(第1金属層26)との密着性を担保すべく、無電解Auめっき前に無電解Niめっきを行った。一方、グランド層106にはエッチングを施さなかった。こうして、マイクロストリップラインを有する伝送損失測定用サンプル110を得た(図8(vi)及び図9)。
【0069】
得られた伝送損失測定用サンプル110のマイクロストリップラインに対して、ベクターネットワークアナライザーを用いて、周波数1GHzから50GHzまでの伝送損失を測定した。周波数5GHzにおける伝送損失S、及び周波数50GHzにおける伝送損失Sから伝送損失の比率S21(=(S/S)×100(%))を求め、以下の基準で格付け評価した。
‐評価A:伝送損失の比率S21が330%以下。
‐評価B:伝送損失の比率S21が330%より大きく、450%以下。
‐評価C:伝送損失の比率S21が450%より大きい。
【0070】
<評価2-2:伝送損失(樹脂積層前パターニング)>
例1~3及び9~14のキャリア付金属箔10について、図10及び11に示される手順により伝送損失測定用サンプル110’を作製し、伝送損失の測定及び評価を行った。
【0071】
まず、キャリア付金属箔10の第1金属層26側(存在する場合にはバリア層28側)の表面を水洗及び乾燥した。キャリア付金属箔10の第1金属層26側(存在する場合にはバリア層28側)の表面に感光性ドライフィルムを貼り付け、露光及び現像を行ってフォトレジスト層(図示せず)を形成した。第1金属層26(存在する場合には更にバリア層28)の不要部分をエッチングで除去することでシグナルライン用の回路103を形成し、その後フォトレジスト層を剥離した(図10(i))。
【0072】
次いで、厚さ35μmの絶縁樹脂フィルム(味の素ファインテクノ株式会社製、ABF-GXT31、比誘電率3.4)を6枚積層した絶縁樹脂基材102を用意した。この絶縁樹脂基材102の片面に、回路103が形成されたキャリア付金属箔10のキャリア12と反対側(回路103が形成された側)の面を接合させ、真空プレス機を使用して、温度100℃、圧力0.7MPa、プレス時間90秒の条件で積層した。こうして、絶縁樹脂基材102の厚さhが約200μmの金属張積層板104’を得た(図10(ii))。
【0073】
次に、金属張積層板104’の絶縁樹脂基材102側(キャリア付金属箔10と反対側)の表面に、グランド層106として厚さ18μmのCu箔を真空プレスにより接合した(図10(iii))。真空プレスは、温度100℃、圧力0.7MPa、120秒の条件で行った。その後、絶縁樹脂基材102にキュアを施した。キュアは170℃、30分で仮硬化させた後、200℃、60分で本硬化を行った。
【0074】
その後、金属張積層板104’からキャリア12を剥離機能層14とともに炭素層22の位置で剥離した(図11(iv))。金属張積層板104’の片面側に露出した第2金属層24をエッチングで除去して、回路103を露出させた(図11(v))。
【0075】
金属張積層板104’の回路103側(グランド層106と反対側)の表面に感光性ドライフィルム(図示せず)を貼り付け、回路103以外の部分がレジストで覆われるように露光及び現像を行った。レジストで覆われていない回路103上に無電解Auめっきを行い、その後ドライフィルム(フォトレジスト層)を剥離した。このようなパターニングを行うことで、シグナルライン108’を形成し、特性インピーダンスが50Ω、差動インピーダンスが100Ωとなるマイクロストリップラインとした(図11(vi))。より具体的には、シグナルライン108’の回路幅Wが0.47mm、厚さtが20μmとなるようにパターニングを行い、上記特性インピーダンス及び差動インピーダンスとすべく、必要に応じてさらにパターニングによる微調整を行った。なお、例3については、Au(無電解Auめっき)とCu(回路103)との密着性を担保すべく、無電解Auめっき前に無電解Niめっきを行った。このようにしてシグナルライン108’の一部(すなわち回路103)が絶縁樹脂基材102の表面に組み込まれた形のマイクロストリップラインを有する伝送損失測定用サンプル110’を得た(図11(vi))。
【0076】
得られた伝送損失測定用サンプル110’のマイクロストリップラインに対して、ベクターネットワークアナライザー(Agilent社製、VNA E5071C)を用いて、周波数1GHzから50GHzまでの伝送損失を測定した。周波数5GHzにおける伝送損失S、及び周波数50GHzにおける伝送損失Sから伝送損失の比率S21(=(S/S)×100(%))を求め、以下の基準で格付け評価した。
‐評価A:伝送損失の比率S21が330%以下。
‐評価B:伝送損失の比率S21が330%より大きく、450%以下。
‐評価C:伝送損失の比率S21が450%より大きい。
【0077】
<評価3-1:選択エッチング性(樹脂積層後パターニング)>
例1~8のキャリア付金属箔10について、配線パターン付きのコアレス支持体を作製し、選択エッチング性の測定及び評価を行った。
【0078】
まず、評価2-1と同様の手順により、第1金属層26、絶縁樹脂基材102、及びグランド層106がこの順に積層された両面金属張積層板107を得た。両面金属張積層板107の第1金属層26側の表面を水洗及び乾燥した。両面金属張積層板107の第1金属層26側の表面に感光性ドライフィルムを貼り付け、ライン/スペース(L/S)=5μm/5μmのパターンを与えるように露光及び現像を行ってフォトレジスト層を形成した。現像は、現像液として1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、25℃で2分間、シャワー方式により行った。第1金属層26の露出表面(すなわちフォトレジスト層でマスキングされていない部分)に対して無電解Auめっきを施した後、フォトレジスト層を剥離した。こうすることで、第1金属層26、存在する場合にはバリア層28、及び無電解Auめっき層が配線パターン状に残る一方、配線パターンを形成しない部分の第1金属層26が露出した。
【0079】
その後、露出した第1金属層26の不要部分、及び存在する場合にはバリア層28の不要部分をエッチング除去することにより、配線パターン付きのコアレス支持体を形成した。得られた配線パターンの断面形状をSEM観察し、図12に示されるように、絶縁樹脂基材102に対する配線パターン112のエッジ部分の角度θを測定した。求めたエッジ部分の角度θを以下の基準で格付け評価した。
‐評価A:エッジ部分の角度θが87°以上93°以下
‐評価B:エッジ部分の角度θが80°以上87°未満、又は93°より大きく100°以下。
‐評価C:エッジ部分の角度θが60°以上80°未満、又は100°より大きく120°以下。
‐評価D:エッジ部分の角度θが60°未満、又は120°より大きい。
【0080】
<評価3-2:選択エッチング性(樹脂積層前パターニング)>
例1~3及び9~14のキャリア付金属箔10について、図13及び14に示される手順により配線パターン付きのコアレス支持体116を作製し、選択エッチング性を測定及び評価した。
【0081】
まず、キャリア付金属箔10の第1金属層26側(存在する場合にはバリア層28側)の表面を水洗及び乾燥した。キャリア付金属箔10の第1金属層26側(存在する場合にはバリア層28側)の表面に感光性ドライフィルムを貼り付け、露光及び現像を行ってフォトレジスト層(図示せず)を形成した。第1金属層26(存在する場合には更にバリア層28)の不要部分をエッチングで除去することでライン/スペース(L/S)=5μm/5μmの回路105を形成し、その後フォトレジスト層を剥離した(図13(i))。
【0082】
次いで、厚さ35μmの絶縁樹脂フィルム(味の素ファインテクノ株式会社製、ABF-GXT31、比誘電率3.4)を6枚積層した絶縁樹脂基材102を用意した。この絶縁樹脂基材102の片面に、回路105が形成されたキャリア付金属箔10のキャリア12と反対側(回路105が形成された側)の面を接合させ、真空プレス機を使用して、温度100℃、圧力0.7MPa、プレス時間90秒の条件で積層した。こうして、絶縁樹脂基材102の厚さhが約200μmの金属張積層板114を得た(図13(ii))。
【0083】
その後、評価2-2と同様の手順により、金属張積層板114の絶縁樹脂基材102側(キャリア付金属箔10と反対側)の表面に、グランド層106として厚さ18μmのCu箔を真空プレスにより接合した(図13(iii))。金属張積層板114からキャリア12を剥離機能層14とともに炭素層22の位置で剥離した(図14(iv))。金属張積層板114の片面側に露出した第2金属層24をエッチングで除去して、回路105を露出させた(図14(v))。金属張積層板114の回路105側の表面を水洗及び乾燥した。
【0084】
さらにその後、金属張積層板114の回路105側(グランド層106と反対側)の表面に感光性ドライフィルム(図示せず)を貼り付け、回路105以外の部分がレジストで覆われるように露光及び現像を行った。現像は評価3-1と同様の条件で行った。レジストで覆われていない回路105上に無電解Auめっきを施し、その後ドライフィルム(フォトレジスト層)を剥離した。こうして、ライン/スペース(L/S)=5μm/5μmの配線パターン112を有するコアレス支持体116を形成した(図14(vi))。得られた配線パターンの断面形状をSEM観察し、図12に示されるように、絶縁樹脂基材102に対する配線パターン112のエッジ部分の角度θを測定した。求めたエッジ部分の角度θを評価3-1と同様の基準で格付け評価した。
【0085】
<評価4:Cuめっき接続抵抗>
例1、2及び4~14のキャリア付金属箔10について、図15に示される手順により接続抵抗測定用サンプル124を作製し、Cuめっき接続抵抗を評価した。
【0086】
まず、キャリア付金属箔10の第1金属層26側(存在する場合にはバリア層28側)を厚さ35μmの絶縁樹脂フィルム101(味の素ファインテクノ株式会社製、ABF-GXT31、比誘電率3.4)に接合させ、真空プレス及び絶縁樹脂フィルムのキュアを施して、金属張積層板118を得た(図15(i))。ここで、真空プレス及び絶縁樹脂フィルム101のキュアは、評価2-1における金属張積層板104とグランド層106の接合と同様の条件で行った。また、図15(i)に示されるように、後述するI-V測定を実施するため、金属張積層板118には第1金属層26(存在する場合にはバリア層28)が露出する(すなわち絶縁樹脂フィルム101を接合させない)領域Rを設けた。
【0087】
次いで、金属張積層板118に対して、COレーザーを用いて、絶縁樹脂フィルム101を貫通して第1金属層26(存在する場合にはバリア層28)に到達する直径30μmのビアVを形成した(図15(ii))。その後、ビアV底部から絶縁樹脂フィルム101の表面を覆うまでCuめっき120を施した(図15(iii))。Cuめっき120は、絶縁樹脂フィルム101の表面、ビアVの側面、及びビアVの底面に厚さ1μm程度の無電解Cuめっきを行った後、電解Cuめっきにてビアフィルを行うことにより形成した。Cuめっき120の厚さは55μm(ビアV部分が約35μm、及び絶縁樹脂フィルム101の表面を覆う部分が約20μm)とした。金属張積層板118のCuめっき120表面に感光性ドライフィルムを張り付け、露光及び現像により、ビアV部分を覆うように300μm×300μmのフォトレジスト層(図示せず)を形成した。Cuめっき120の不要部分(すなわちフォトレジスト層で覆われていない部分)をエッチングで除去し、その後フォトレジスト層を剥離することで、Cu電極122が形成された接続抵抗測定用サンプル124を得た(図15(iv))。
【0088】
得られた接続抵抗測定用サンプル124に対して、第1金属層26(存在する場合にはバリア層28)及びCu電極122のI-V測定を実施し、Cuめっきの接続抵抗(HAST試験前抵抗R)を算出した(図16参照)。測定は四端子法を用いて行った。接続抵抗測定用サンプル124に対してHAST試験(85℃、85%RH、200時間)を行った後、第1金属層26(存在する場合にはバリア層28)及びCu電極122のI-V測定を再度実施し、HAST試験後のCuめっきの接続抵抗(HAST試験後抵抗R)を算出した。HAST試験前後抵抗増加率(=((R-R)/R)×100(%))を求め、以下の基準で格付け評価した。なお、接続抵抗測定用サンプル124は4つ準備し、各々の結果の平均値を評価に用いた。
‐評価A:HAST試験前後抵抗増加率が10%以下。
‐評価B:HAST試験前後抵抗増加率が10%より大きく20%以下。
‐評価C:HAST試験前後抵抗増加率が20%より大きく50%以下。
‐評価D:HAST試験前後抵抗増加率が50%より大きい。
【0089】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16