(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061739
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】反射防止フィルムおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/115 20150101AFI20240426BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20240426BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240426BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240426BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240426BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240426BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G02B1/115
H10K50/00
H10K59/10
H10K50/86
G09F9/00 313
B32B7/023
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028443
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2020044632の分割
【原出願日】2020-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 佳史
(72)【発明者】
【氏名】梨木 智剛
(57)【要約】
【課題】視認方向による反射光の特性の変化が少ない画像表示を実現する。
【解決手段】反射防止フィルム(100)は、フィルム基材(1)上に反射防止層(5)を備える。反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した合計6層または8層の薄膜からなる多層膜である。低屈折率層はSiO
2層であり、高屈折率層は、Nb
2O
5層、Si
3N
4層またはSiON層であり、それぞれの薄膜の膜厚が所定範囲であることにより、2°入射光の正反射光と、θ°入射光の正反射光との、視感反射率の比Y
θ/Y
2および色度差Δa
*b
*が小さくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材上に複数の薄膜からなる反射防止層を備える反射防止フィルムであって、
前記反射防止層は、前記フィルム基材側から、膜厚8~10nmのNb2O5層、膜厚41~45nmのSiO2層、膜厚21~25nmのNb2O5層、膜厚18~20nmのSiO2層、膜厚77~95nmのNb2O5層、膜厚10.5~15nmのSiO2層、膜厚25~30nmのNb2O5層、および膜厚60~89nmのSiO2層を備える合計8層の薄膜からなる、
反射防止フィルム。
【請求項2】
フィルム基材上に複数の薄膜からなる反射防止層を備える反射防止フィルムであって、
前記反射防止層は、前記フィルム基材側から、膜厚5~10nmのSi3N4層、膜厚48~60nmのSiO2層、膜厚23~27nmのSi3N4層、膜厚23~32nmのSiO2層、膜厚85~105nmのSi3N4層、膜厚4~7nmのSiO2層、膜厚40~50nmのSi3N4層、および膜厚70~95nmのSiO2層を備える合計8層の薄膜からなる、
反射防止フィルム。
【請求項3】
フィルム基材上に複数の薄膜からなる反射防止層を備える反射防止フィルムであって、
前記反射防止層は、前記フィルム基材側から、膜厚9~10.5nmのNb2O5層、膜厚41~47nmのSiO2層、膜厚25~28nmのNb2O5層、膜厚39~42nmのSiO2層、膜厚17~23nmのNb2O5層、および膜厚90~106nmのSiO2層を備える合計6層の薄膜からなる、
反射防止フィルム。
【請求項4】
フィルム基材上に複数の薄膜からなる反射防止層を備える反射防止フィルムであって、
前記反射防止層は、前記フィルム基材側から、膜厚13~16.5nmのSi3N4層、膜厚32~40nmのSiO2層、膜厚47~55nmのSi3N4層、膜厚20.5~24nmのSiO2層、膜厚34~44.5nmのSi3N4層、および82~98nmのSiO2層を備える合計6層の薄膜からなる、
反射防止フィルム。
【請求項5】
フィルム基材上に複数の薄膜からなる反射防止層を備える反射防止フィルムであって、
前記反射防止層は、前記フィルム基材側から、膜厚13~19.5nmのSiON層、膜厚22~37nmのSiO2層、膜厚58~80nmのSiON層、膜厚2~10nmのSiO2層、膜厚59~85nmのSiON層、および膜厚65~95nmのSiO2層を備える合計6層の薄膜からなる、
反射防止フィルム。
【請求項6】
画像表示媒体の視認側表面に、請求項1~5のいずれか1項に記載の反射防止フィルムが配置されている、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置の表面には、表示画像の視認性向上を目的として反射防止フィルムが設けられる場合がある。反射防止フィルムは、フィルム基材上に、屈折率の異なる複数の薄膜からなる反射防止層を備えている。
【0003】
反射防止層による光の反射特性は、一般に視感反射率(Y値)により評価される。比視感度の高い波長550nm付近の反射率を小さくすることにより、視感反射率が小さくなる。反射防止フィルムでは、視感反射率が小さいことに加えて、反射光色相がニュートラルであることも要求されている。
【0004】
正面から視認した場合の反射特性だけでなく、斜め方向の反射光の特性も制御した反射防止フィルムが提案されている。例えば、特許文献1では、5~45°のあらゆる角度からの入射光に対する正反射光の色相が所定範囲である反射防止フィルムが開示されている。特許文献2では、入射角度20~30°の範囲の色度が最も小さくなるように光学設計を行うことにより、5~45°の範囲内での反射光の色差を小さくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-138662号公報
【特許文献2】特開2016-177183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の反射防止フィルムでは、特定の視認方向の反射率を小さくすることが可能であるが、広い視認方向で反射率の変化が小さく、かつ反射光の色の変化を小さくすることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
反射防止フィルムは、フィルム基材上に複数の薄膜からなる反射防止層を備える。反射防止層は、薄膜として、低屈折率層および高屈折率層を、それぞれ少なくも1層含む多層薄膜である。本発明の反射防止フィルムにおいて、反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した合計6層または8層の薄膜からなる多層膜である。低屈折率層はSiO2層であり、高屈折率層は、Nb2O5層、Si3N4層またはSiON層である。それぞれの薄膜の膜厚が所定範囲であることにより、反射防止層側から照射したD65光源の正反射光が所定の特性を満たし得る。
【0008】
θ°入射光の正反射光の視感反射率Yθは、5~50°の範囲の任意の角度θにおいて、Yθ/Y2≦6.0を満たすことが好ましい。Y2は2°入射光の正反射光の視感反射率である。θ°入射光の正反射光のクロマティクネス指数a*
θおよびb*
θは、5~50°の範囲の任意の角度θにおいて、Δa*b*={(a*
2-a*
θ)2+(b*
2-b*
θ)2}1/2で表される色度差Δa*b*が、Δa*b*≦6.0を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の反射防止フィルムを用いることにより、視認方向による反射光の特性の変化が少ない画像表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】反射防止フィルムの積層形態を示す断面図である。
【
図2】彩度C
*および色度差Δa
*b
*について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[反射防止フィルムの構成]
図1は、一実施形態にかかる反射防止フィルムの構成を模式的に示す断面図である。反射防止フィルム100は、フィルム基材1上に反射防止層5を備える。反射防止層5は、複数の薄膜の積層体である。
図1に示す反射防止層5は、フィルム基材1側から、高屈折率層51,53,55と低屈折率層52,54,56とを交互に積層した6層の薄膜からなる多層膜である。
【0012】
<フィルム基材>
フィルム基材1は、可撓性のフィルム10を含む。フィルム基材1の厚みは特に限定されないが、強度や取扱性等の作業性、薄層性等の観点から、5~300μm程度が好ましく、10~250μmがより好ましく、20~200μmがさらに好ましい。
【0013】
フィルム10としては、一般に透明フィルムが用いられる。透明フィルムの可視光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。フィルム10を構成する樹脂材料としては、例えば、透明性、機械強度、および熱安定性に優れる熱可塑性樹脂が挙げられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
フィルム10の反射防止層5形成面側には、ハードコート層11が設けられていることが好ましい。フィルム10の表面にハードコート層11が設けられることにより、反射防止フィルムの硬度や弾性率等の機械特性を向上できる。ハードコート層11は、表面の硬度が高く、耐擦傷性に優れるものが好ましい。
【0015】
硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂の種類としてはポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、アミド系、シリコーン系、シリケート系、エポキシ系、メラミン系、オキセタン系、アクリルウレタン系等の各種の樹脂があげられる。これら硬化性樹脂は、一種または二種以上を、適宜に選択して使用できる。
【0016】
ハードコート層は微粒子を含むものであってもよい。例えば、ハードコート層に微粒子を含めることによりハードコート層11の表面に凹凸を形成して、防眩性を持たせてもよい。防眩性を付与するために用いられる微粒子は、μmオーダーの粒子径を有するマイクロ粒子であることが好ましい。マイクロ粒子の平均粒子径は、0.5~10μmが好ましく、1~5μmがより好ましい。ハードコート層11の表面に微細な凹凸が形成されることにより、その上に設けられる反射防止層5(またはプライマー層3)との密着性が向上する傾向がある。ハードコート層11の表面に、プライマー層3や反射防止層5等の薄膜との密着性に優れる凹凸を形成するために用いられる微粒子は、nmオーダーの粒子径を有するナノ粒子であることが好ましい。ナノ粒子の平均粒子径は、10~150nmが好ましく、20~100nmがより好ましく、25~80nmがさらに好ましい。
【0017】
ハードコート層11は、例えば、フィルム10上に、硬化性樹脂を含有する溶液を塗布することにより形成できる。ハードコート層を形成するための溶液には、重合開始剤が配合されていることが好ましい。微粒子を含む防眩性ハードコート層を形成するためには、硬化性樹脂に加えて上記の微粒子を含有する溶液を透明フィルム上に塗布することが好ましい。溶液中には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0018】
ハードコート層11の厚みは特に限定されないが、高い硬度を実現するためには、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。塗布による形成の容易性を考慮すると、ハードコート層の厚みは15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0019】
<プライマー層>
フィルム基材1上には、反射防止層5の密着性向上等を目的として、プライマー層3が設けられてもよい。プライマー層3を構成する材料としては、例えば、シリコン、ニッケル、クロム、インジウム、スズ、金、銀、白金、亜鉛、チタン、タングステン、アルミニウム、ジルコニウム、パラジウム等の金属;これらの金属の合金;これらの金属の酸化物、フッ化物、硫化物または窒化物;等が挙げられる。中でも、プライマー層の材料は好ましくは無機酸化物層であり、化学量論組成よりも酸素量が少ない酸化物でもよい。
【0020】
プライマー層3の厚みは、例えば、1~20nm程度であり、好ましくは2~15nm、より好ましくは3~15nmである。プライマー層の膜厚が上記範囲であれば、密着性向上と光透過性とを両立できる。
【0021】
<反射防止層>
反射防止層5は、屈折率の異なる複数の薄膜の積層体である。なお、本明細書において、「屈折率」は、特に断りがない場合は波長550nmにおける屈折率である。
【0022】
屈折率の異なる複数の薄膜を積層することにより、可視光の広帯域の波長範囲において、反射率を小さくできる。反射防止層5を構成する薄膜としては、金属または半金属の酸化物、窒化物、フッ化物等からなるセラミック材料が好ましい。反射防止層5を構成する薄膜は、樹脂バインダー中に高屈折率または低屈折率の微粒子を含有させることにより屈折率を調整したものでもよい。
【0023】
低屈折率層52,54,56は、例えば屈折率が1.6以下、好ましくは1.5以下である。低屈折率材料としては、酸化シリコン、窒化チタン、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ハフニウム、フッ化ランタン等が挙げられる。
【0024】
高屈折率層51,53,53は、例えば屈折率が1.8以上、好ましくは1.9以上である。高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、窒化シリコン、酸窒化シリコン等が挙げられる。
【0025】
反射防止層5は、好ましくは、高屈折率層と低屈折率層の交互積層体である。空気界面での反射を低減するために、反射防止層5の最外層(フィルム基材1から最も離れた層)として設けられる薄膜56は、低屈折率層であることが好ましい。反射防止層は、低屈折率層および高屈折率層に加えて、高屈折率層と低屈折率層の中間的な屈折率を有する中屈折率層を含んでいてもよい。中屈折率層の屈折率は、例えば、1.6~1.9程度である。
【0026】
高屈折率層および低屈折率層の膜厚は、それぞれ、5~200nm程度であり、10~150nm程度が好ましい。屈折率や積層構成等に応じて、可視光の反射率が小さくなるように、各層の膜厚を設計すればよい。
【0027】
反射防止層5を構成する薄膜の成膜方法は特に限定されず、ウェットコーティング法、ドライコーティング法のいずれでもよい。膜厚が均一な薄膜を形成できることから、真空蒸着、CVD,スパッタ、電子線蒸等のドライコーティング法が好ましい。中でも、膜厚の均一性に優れることから、スパッタ法が好ましい。
【0028】
<反射防止層上への付加層>
反射防止フィルムは、反射防止層5上に、付加的な機能層を備えていてもよい。例えば、外部環境からの汚染防止や、付着した汚染物質の除去を容易とする等の目的で、反射防止層5上に防汚層(不図示)を設けてもよい。
【0029】
反射防止フィルムの表面に防汚層を設ける場合は、界面での反射を低減する観点から、反射防止層5の最表面の低屈折率層56と防汚層との屈折率差が小さいことが好ましい。防汚層の屈折率は、1.6以下が好ましく、1.55以下がより好ましい。防汚層の材料としては、フッ素基含有のシラン系化合物や、フッ素基含有の有機化合物等が好ましい。防汚層は、リバースコート法、ダイコート法、グラビアコート法等のウェットコーティング法や、真空蒸着法、CVD法等のドライコーティング法等により形成できる。防汚層の厚みは、通常、1~100nm程度であり、好ましくは2~50nm、より好ましくは3~30nmである。
【0030】
[反射光の特性]
反射防止フィルムは、視認角度による反射光の特性の変化が小さいことが好ましい。光の特性は、色相、彩度および明度の3つの指標により評価できる。反射光の特性は、照射する光のスペクトルに依存する。以下では、反射防止フィルムの反射防止層5側(フィルム基材1と反対側)の面に、CIE標準光源D65を照射した際の反射光の特性について言及する。
【0031】
反射防止層5側から光を入射して反射光を測定する場合、裏面側(フィルム基材1と空気との界面)での可視光の反射率が4%程度であり、大半が裏面からの反射光となる。裏面反射の影響を排除するために、反射光の特性の評価には、フィルム基材1の裏面側(反射防止層5の形成面と反対側の面)に、黒色フィルムや黒色板を貼り合わせた試料を用いる。
【0032】
<視感反射率>
視感反射率Yは、反射光の明度を表す指標であり、XYZ表色系(またはYxy表色系)におけるY値である。視感反射率Yは、完全反射体のY値が100%となるように規格化されている。
【0033】
一般に、反射防止フィルムは、正面から光を照射した際の反射率が小さくなるように設計されており、入射角度θが大きいほど正反射光の反射率が大きくなる傾向がある。光の入射角度(視認方向)の変化に伴う反射光量の差を小さくする観点から、2°入射光の正反射光の視感反射率Y2と、θ°入射光の正反射光の視感反射率Yθとの比Yθ/Y2は、θ=5~50°の任意の入射角度θにおいて、6.0以下であることが好ましい。Yθ/Y2は、θ=5~50°の範囲において、5.5以下がより好ましく、5.0以下がさらに好ましく、4.5以下が特に好ましい。
【0034】
2°入射光の正反射光の視感反射率Y2は、1.0%以下が好ましく、0.9%以下がより好ましく、0.8%以下がさらに好ましい。Y2はできる限り小さい方が好ましいが、特定方向の入射光に対する反射率が小さくなるように光学設計を行うと、入射角度θが変化した際の反射率変化が大きくなる場合がある。そのため、Y2は、0.1%以上、0.2%以上、または0.3%以上であってもよい。
【0035】
視認方向に関わらず環境光の反射を低減して視認性を高める観点から、θ°入射光の正反射光の視感反射率Yθは、5~50°の範囲の任意の角度θにおいて、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましい。
【0036】
<クロマティクネス指数>
CIELAB色空間(L
*a
*b
*色空間)では、明度をL
*で表現し、色相および彩度をクロマティクネス指数a
*およびb
*で表現する。a
*およびb
*が0の場合は無彩色であり、+a
*は赤方向、-a
*は緑方向、+b
*は黄方向、-b
*は青方向を示す。
図2に示すa
*b
*平面では、半径方向が彩度、周方向が色相に対応している。
【0037】
C*={(a*)2+(b*)2}1/2で定義される彩度は、色付きの度合いを表し、C*が0の場合は無彩色であり、C*が大きいほど色付きが大きい。色空間をa*b*平面空に投影した場合の2点間の距離が大きいほど、2つの光の色の違いが大きいことを意味する。
【0038】
光の入射角度(視認方向)の変化に伴う反射光の色の違いを小さくする観点から、2°入射光の正反射光のクロマティクネス指数a
*
2およびb
*
2と、θ°入射光の正反射光のクロマティクネス指数a
*
θおよびb
*
θは、θ=5~50°の範囲の任意の角度θにおいて、Δa
*b
*≦6.0を満たすことが好ましい。
図2に示すように、Δa
*b
*は、2°入射光の正反射光(A)と、θ°入射光の正反射光の、a
*b
*平面における距離であり、Δa
*b
*={(a
*
2-a
*
θ)
2+(b
*
2-b
*
θ)
2}
1/2で表される。以下ではΔa
*b
*を「色度差」と称する場合がある。色度差Δa
*b
*は、θ=5~50°の範囲において、5.5以下がより好ましく、5.0以下がさらに好ましく、4.5以下が特に好ましい。Δa
*b
*は、4.0以下、3.5以下または3.0以下であってもよい。
【0039】
2°入射光の正反射光の彩度C*は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。2°入射光の正反射光の彩度C*は、2.5以下または2.0以下であってもよい。
【0040】
視認方向に関わらず反射光をニュートラル色として色付きを抑制する観点から、θ°入射光の正反射光の彩度C*は、5~50°の範囲の任意の角度θにおいて、9.0以下が好ましく、7.0以下がより好ましく、5.0以下が特に好ましい。
【0041】
<反射防止層の光学設計>
反射防止層を構成する薄膜の膜厚を適切に設計することにより、上記の特性を有する反射防止フィルムが得られる。反射光の特性(スペクトル)は、光学モデル計算により正確に評価することが可能である。光学計算により多層光学薄膜の反射スペクトルを求める方法としては、薄膜のそれぞれの界面に対して薄膜干渉の公式を繰り返し適用して、多重反射した波を全て足し合わせる方法;およびマックスウェル方程式の境界条件を考慮して転送行列により反射スペクトルを計算する方法、等が知られている。
【0042】
D65光源を入射した際の正反射光の反射スペクトルを、複数の入射角度θについて計算し、それぞれのθについて、反射スペクトルから、視感反射率Y、ならびにクロマティクネス指数a*およびb*を算出する。反射防止層を構成する薄膜の膜厚を変更しながら、これらの光学計算を繰り返し実施することにより、薄膜の設定膜厚の最適化が可能であり、反射光が上記の特性を満たす反射防止フィルムが得られる。
【0043】
反射防止層を構成する薄膜の数が少ない場合は、θ=5~50°の任意の範囲において、Yθ/Y2およびΔa*b*の両方が小さくなるように膜厚を設計することが困難である。後の実施例に示すように、反射防止層の積層数(薄膜の総数)が大きい場合は、反射防止層を構成する材料に関わらず、Yθ/Y2およびΔa*b*の両方が小さくなるように薄膜の膜厚を設計することが可能である。反射防止層は、低屈折率層と高屈折率層を合計で5層以上含むことが好ましく、低屈折率層を3層以上含むことが好ましい。反射防止層は、低屈折率層と高屈折率層を合計で6層以上含むことがより好ましい。
【0044】
視感反射率Yを小さくする観点から、反射防止層は、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が大きいことが好ましい。低屈折率層と高屈折率層の屈折率差は、0.30以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましい。
【0045】
低屈折率層の屈折率は、1.50以下が好ましく、1.48以下がより好ましく、1.47以下がさらに好ましい。低屈折率層の屈折率は一般に1.00以上であり、1.20以上、1.30以上または1.35以上であってもよい。高屈折率層の屈折率は、1.80以上が好ましく、1.84以上がより好ましく、1.87以上がさらに好ましい。高屈折率層の屈折率は一般に3.00以下であり、2.50以下、2.40以下または2.30以下であってもよい。高屈折率層の波長400nmにおける屈折率は、1.84~2.55が好ましく、1.88~2.50がより好ましい。高屈折率層の波長700nmにおける屈折率は1.78~2.35が好ましく、1.80~2.30がより好ましい。
【0046】
波長550nm付近における反射率を小さくすれば、視感反射率Yが小さくなる傾向がある。一方で、波長550nm付近の反射率が最小となるように光学設計を行うと、他の波長における反射率が大きくなり、反射光のクロマティクネス指数a*および/またはb*が大きくなり、反射光が色付く傾向がある。
【0047】
反射光の色付きを低減するためには、可視光の広い波長範囲において、反射率が一様であることが好ましい。反射防止層を構成する薄膜の屈折率の波長依存が小さい場合に、波長による反射率の変化が小さくなり、反射光の彩度が小さくなる(ニュートラル化する)傾向がある。屈折率の波長分散が大きい材料を用いた場合でも、反射光の色付きが小さくなるように光学設計を実施することが可能であるが、薄膜の膜厚がわ僅かに異なると、反射光の色付きを生じる場合がある。光学設計の自由度を高めるとともに、膜厚の許容可能範囲(プロセスマージン)を確保する観点から、反射防止層を構成する薄膜は、屈折率の波長分散(波長の変化に伴う屈折率の変化)が小さいことが好ましい。
【0048】
高屈折率層のアッベ数νDは、20以上が好ましく、23以上がより好ましく、25以上がさらに好ましい。アッベ数νDは、波長589nmにおける屈折率nD、波長486nmにおける屈折率nF、および波長656nmにおける屈折率nCを用いて、νD=(nD-1)/(nF-nC)で表される。アッベ数νDが大きいほど、屈折率の波長分散が小さい。高屈折率層のアッベ数νDの上限は特に限定されないが、一般的なセラミック材料では、アッベ数νDが大きい(屈折率の波長分散が小さい)ほど、屈折率が小さくなる傾向がある。高屈折率層の屈折率を十分に高めて、反射率を小さくする観点から、高屈折率層のアッベ数νDは、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、28以下がさらに好ましい。
【0049】
反射防止層は、それぞれの薄膜の屈折率、積層数等を考慮して、反射光が上記の特性を満たすように、それぞれの薄膜の膜厚を設定すればよい。上述の通り、光学モデルを用いて反射防止フィルムの反射スペクトルを計算することにより、反射防止層の膜厚を最適化することが可能である。
【0050】
[反射防止フィルムの使用形態]
反射防止フィルムは、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置の表面に配置して用いられる。例えば、液晶セルや有機ELセル等の画像表示媒体を含むパネルの視認側表面に反射防止フィルムを配置することにより、外光の反射を低減して、画像表示装置の視認性を向上できる。反射防止フィルムを他のフィルムと積層してもよい。例えば、フィルム基材1の反射防止層形成面と反対側に偏光子を貼り合わせることにより、反射防止層付き偏光板を形成できる。
【0051】
本発明の反射防止フィルムは、視認方向による反射光の特性の差が小さいため、視認方向を変化させた場合でも、反射光の特性の変化が小さく、画像表示装置を均一化することが可能である。
【実施例0052】
以下では、光学モデル計算により、反射防止フィルムの反射光の諸特性を算出した例を示す。
【0053】
[反射光の特性の評価方法]
反射防止フィルムに、波長λの光を入射角度θ°で入射した際の正反射率を、波長380~780nmの範囲の1nm刻みで光学モデル計算により算出し、反射率スペクトルR(λ)を求めた。
【0054】
得られた正反射率スペクトルR(λ)に、CIE標準光源D65のスペクトルを掛け合わせて反射光のスペクトルを得た。得られた反射光スペクトルから、視感反射率Y、ならびにCIELAB表色系のクロマティクネス指数a*およびb*を算出し、a*およびb*の数値から彩度C*={(a*)2+(b*)2}1/2を算出した。
【0055】
入射角2°、および入射角度θ=5~50°の範囲の5°刻みで、上記の評価を実施し、2°入射光の正反射光の視感反射率Y2と、θ°入射光の正反射光の視感反射率Yθとの比Yθ/Y2、および2°入射光の正反射光とθ°入射光の正反射光のa*b*平面での距離Δa*b*={(a*
2-a*
θ)2+(b*
2-b*
θ)2}1/2を算出した。
【0056】
<薄膜の屈折率>
各実施例および比較例では、低屈折率層として酸化シリコン(SiO2)を用い、高屈折率層として、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、酸窒化シリコン(SiON)を用いた。酸窒化シリコンは、スパッタ成膜時の酸素導入量を変更して、相対的に酸素量の少ないSiON(1)と相対的に酸素量の多いSiON(2)の2種類の薄膜を形成し、分光エリプソメトリーにより測定した屈折率を用いた。それ以外の薄膜の屈折率は、データベースの値を用いた。それぞれの薄膜の波長400nm,500nmおよび700nmにおける屈折率n400、n550、n700、ならびにアッベ数νDを表1に示す。
【0057】
【0058】
<実施例1>
ハードコートフィルムのアクリル系ハードコート層上に、8.2nmの酸化ニオブ層、42.2nmの酸化シリコン層、24.6nmの酸化ニオブ層、18.6nmの酸化シリコン層、80.8nmの酸化ニオブ層、10.8nmの酸化シリコン層、25.6nmの酸化ニオブ層、および25.6nmの酸化シリコン層を順に積層した8層構成の反射防止層を備え、その上に厚み5nmのフッ素系樹脂からなる防汚層を備える反射防止フィルムについて上記の光学シミュレーションを実施した。ハードコートフィルム(アクリル系ハードコート層)およびフッ素系樹脂からなる防汚層の屈折率は、分光エリプソメトリーによる実測値(ハードコート層の波長550nmにおける屈折率;1.54、防汚層の波長550nmにおける屈折率:1.32)を用いた。光学シミュレーションにおいては、裏面反射の影響を排除するために、ハードコートフィルムのフィルム基材の厚みを∞とした。
【0059】
<実施例2~7、比較例1,2>
高屈折率層の材料、積層構成(反射防止(AR)層を構成する薄膜の合計数)および各層の膜厚を表2に示すように変更した反射防止フィルムについて、実施例1と同様の光学シミュレーションを実施した。
【0060】
[評価結果]
実施例1~7および比較例1,2の反射防止フィルムの構成および光学シミュレーションの結果を表2に示す。表2において、各層の厚みの数値の単位はnmであり、フィルム基材に近い側から1層目、2層目、3層目…として記載している。反射光の特性は、θ=2°(正面)と、θ=20°、40°、50°の結果を示している。
【0061】
【0062】
反射防止層が高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ4層含む計8層からなる実施例1および実施例2では、Yθ/Y2の最大値が小さく、かつΔa*b*の最大値も小さいことが分かる。反射防止層が高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ3層含む計6層からなる実施例3~6も、Yθ/Y2の最大値が小さく、かつΔa*b*の最大値も小さいことが分かる。高屈折率層としてアッベ数νDが大きい(屈折率の波長分散が小さい)SiON(2)を用いた実施例6では、Δa*b*が小さくなる傾向がみられた反面、正面から視認した場合の反射率が高くなっていた。これは、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差が小さいために、反射率を十分に低減できなかったことが関連していると考えられる。
【0063】
反射防止層が高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ2層含む計4層からなる比較例1では、正面(2°)の反射率が低減されていたが、Yθ/Y2の最大値が6を超えていた。また、比較例1では、Δa*b*の最大値も6を超えていた比較例2では、Yθ/Y2の最大値は6以下であったが、視認方向による反射光のa*の変化が大きく、Δa*b*の最大値が約11となっていた。
【0064】
[反射防止層の膜厚の変更]
<実施例1A>
実施例1の反射防止フィルムにおいて、反射防止層を構成する8層の薄膜の膜厚を、1層ずつ変化させて同様のシミュレーションを実施した。それぞれの反射防止フィルムにおける反射防止層の膜厚、2°正反射光の特性、およびθ=5~45°の範囲におけるYθ/Y2およびΔa*b*の最大値を表3に示す。表3において、No.1の反射防止フィルムは、実施例1と同じである。No.2~5は第1層(高屈折率層)の厚みを変更したものであり、No.6~9は第2層(低高屈折率層)の厚みを変更したものであり、No.10~13は第3層(高屈折率層)の厚みを変更したものであり、No.14~17は第4層(低高屈折率層)の厚みを変更したものであり、No.18~21は第5層(高屈折率層)の厚みを変更したものであり、No.22~25は第6層(低高屈折率層)の厚みを変更したものであり、No.26~29は第7層(高屈折率層)の厚みを変更したものであり、No.30~33は第8層(低高屈折率層)の厚みを変更したものである。
【0065】
【0066】
表3に示す結果から、第1層(Nb2O5)の厚みが8~10nm、第2層(SiO2)の厚みが41~45nm、第3層(Nb2O5)の厚みが21~25nm、第4層(SiO2)の厚みが18~20nm、第5層(Nb2O5)の厚みが77~95nm、第6層(SiO2)の厚みが10.5~15nm、第7層(Nb2O5)の厚みが25~30nm、第8層(SiO2)の厚みが60~89nm程度の範囲であれば、θ=5~45°の範囲におけるYθ/Y2が6%以下、かつΔa*b*が6以下である反射防止フィルムが得られることが分かる。
【0067】
<実施例2A>
実施例2の反射防止フィルムにおいて、反射防止層を構成する8層の薄膜の膜厚を、1層ずつ変化させて同様のシミュレーションを実施した。各層の膜厚および評価結果を表4に示す。
【0068】
【0069】
表4に示す結果から、第1層(Si3N4)の厚みが5~10nm、第2層(SiO2)の厚みが48~60nm、第3層(Si3N4)の厚みが23~27nm、第4層(SiO2)の厚みが23~32nm、第5層(Si3N4)厚みが85~105nm、第6層(SiO2)の厚みが4~7nm、第7層(Si3N4)の厚みが40~50nm、第8層(SiO2)の厚みが70~95nm程度の範囲であれば、θ=5~45°の範囲におけるYθ/Y2が6%以下、かつΔa*b*が6以下である反射防止フィルムが得られることが分かる。
【0070】
<実施例3A>
実施例3の反射防止フィルムにおいて、反射防止層を構成する6層の薄膜の膜厚を、1層ずつ変化させて同様のシミュレーションを実施した。各層の膜厚および評価結果を表5に示す。
【0071】
【0072】
表5に示す結果から、第1層(Nb2O5)の厚みが9~10.5nm、第2層(SiO2)の厚みが41~47nm、第3層(Nb2O5)の厚みが25~28nm、第4層(SiO2)の厚みが39~42nm、第5層(Nb2O5)の厚みが17~23nm、第6層(SiO2)の厚みが90~106nm程度の範囲であれば、θ=5~45°の範囲におけるYθ/Y2が6%以下、かつΔa*b*が6以下である反射防止フィルムが得られることが分かる。
【0073】
<実施例4A>
実施例4の反射防止フィルムにおいて、反射防止層を構成する6層の薄膜の膜厚を、1層ずつ変化させて同様のシミュレーションを実施した。各層の膜厚および評価結果を表6に示す。
【0074】
【0075】
表6に示す結果から、第1層(Si3N4)の厚みが13~16.5nm、第2層(SiO2)の厚みが32~40nm、第3層(Si3N4)の厚みが47~55nm、第4層(SiO2)の厚みが20.5~24nm、第5層(Si3N4)厚みが34~44.5nm、第6層(SiO2)の厚みが82~98nm程度の範囲であれば、θ=5~45°の範囲におけるYθ/Y2が6%以下、かつΔa*b*が6以下である反射防止フィルムが得られることが分かる。
【0076】
<実施例5A>
実施例5の反射防止フィルムにおいて、反射防止層を構成する6層の薄膜の膜厚を、1層ずつ変化させて同様のシミュレーションを実施した。各層の膜厚および評価結果を表7に示す。
【0077】
【0078】
表7に示す結果から、第1層(SiON)の厚みが13~19.5nm、第2層(SiO2)の厚みが22~37nm、第3層(SiON)の厚みが58~80nm、第4層(SiO2)の厚みが2~10nm、第5層(SiON)厚みが59~85nm、第6層(SiO2)の厚みが65~95nm程度の範囲であれば、θ=5~45°の範囲におけるYθ/Y2が6%以下、かつΔa*b*が6以下である反射防止フィルムが得られることが分かる。
【0079】
<比較例1A>
比較例1の反射防止フィルムにおいて、反射防止層を構成する4層の薄膜の膜厚を、1層ずつ変化させて同様のシミュレーションを実施した。各層の膜厚および評価結果を表8に示す。
【0080】
【0081】
<比較例2A>
比較例2の反射防止フィルムにおいて、反射防止層を構成する4層の薄膜の膜厚を、1層ずつ変化させて同様のシミュレーションを実施した。各層の膜厚および評価結果を表9に示す。
【0082】
【0083】
表8,9に示すように、反射防止層を構成する薄膜の数が4層の場合は、薄膜の厚みを変更しても、θ=5~45°の範囲の任意のθに対してYθ/Y2が6%以下、かつΔa*b*が6以下である反射防止フィルムは得られなかった。
【0084】
上記の結果から、反射防止フィルムを構成する薄膜の数を5層以上、好ましくは6層以上とすることにより、より緻密な光学設計が可能となり、視認方向を変化させた際の反射光の特性変化が小さい反射防止フィルムが得られることが分かる。
【0085】
薄膜の膜厚の最適値は、薄膜を構成する材料の屈折率等によって異なるため、一概に規定することは困難である。一方で、表3~7に示したように、反射防止フィルムを構成する薄膜の厚みを変更しながら光学シミュレーションを繰り返すことにより、Yθ/Y2やΔa*b*がより小さい条件を見出すことが可能である。そのため、上記の実施例に示した材料以外の薄膜を用いた場合においても、視認方向を変化させた際の反射光の特性変化が小さい反射防止フィルムを設計することが可能である。
【0086】
[プライマー層の挿入]
<実施例1B>
実施例1の反射防止フィルムにおいて、ハードコートフィルムのアクリル系ハードコート層と反射防止層(1層目のNb2O5層)との間に、厚み3nmのSiOxプライマー層(x=0.65、波長550nmにおける屈折率;1.72)を追加して、同様のシミュレーションを実施した。実施例1Bの光学シミュレーションの結果を、実施例1の結果とともに表10に示す。
【0087】
【0088】
実施例1Bでは、正反射光のクロマティクネス指数a*
2およびb*
2が実施例1から若干変化していたが、角度θを変化させた際の反射光特性の変化の指標であるYθ/Y2およびΔa*b*の数値は、実施例1と特段の差はみられなかった。この結果から、フィルム基材と反射防止層との間にプライマー層を設けた場合も、上記の各実施例と同様に反射防止層の積層構成および膜厚を調整することにより、視認方向を変化させた際の反射光の特性変化が小さい反射防止フィルムが得られることが分かる。