(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061763
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】光学積層体、偏光板、ディスプレイパネル及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20240426BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B32B7/023
G02B5/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033102
(22)【出願日】2024-03-05
(62)【分割の表示】P 2019564769の分割
【原出願日】2019-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2018003481
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018003482
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】江口 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】高坂 洋介
(72)【発明者】
【氏名】戸部 伸之
(72)【発明者】
【氏名】鳥本 将宏
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】葛原 満広
(57)【要約】
【課題】反射防止性能を備えつつ、優れた耐擦傷性を有する光学積層体を提供する。
【解決手段】
光透過性基材の一方の面上に、少なくとも防眩層及び低屈折率層がこの順番に積層された光学積層体であって、上記低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸の算術平均粗さRaと凹凸の十点平均粗さRzとを測定したとき、上記Raが4nm以下であり、上記Rzが60nm以下であることを特徴とする光学積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材の一方の面上に、防眩層及び低屈折率層がこの順番に積層された光学積層体であって、
前記低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸の算術平均粗さRaと凹凸の十点平均粗さRzとを測定したとき、
前記Raが4nm以下であり、
前記Rzが60nm以下である
ことを特徴とする光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、偏光板、ディスプレイパネル及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置における画像表示面には、通常、観察者及び観察者の背景等の映り込みを抑制するために、表面に凹凸を有する防眩フィルムや表面に反射防止層を有する反射防止用の光学積層体が設けられている。
このような反射防止用の光学積層体は、光の散乱や干渉によって、像の映り込みを抑制したり反射率を低減したりするものである。
【0003】
反射防止用光学積層体の1つとして、透明性基材の表面に凹凸形状を有する防眩層を形成し、その上に屈折率の低い低屈折率層を設けたものが知られている。
このような光学積層体は、梱包材に梱包されて運搬や搬送がされるが、防眩層の凹凸形状の主に凸部が低屈折率層の表面に存在するため、光学積層体と梱包材とが接触した場合点接触となり、低屈折率層の表面は傷付き難いと考えられていた。
しかしながら、実際には光学積層体と梱包材との擦れにより、擦傷が入るといった課題が生じていた。
そのため、光学積層体の耐擦傷性を向上させて欲しいといった要望が強くなっている。
【0004】
従来の光学積層体では、例えば、防眩層に重合性不飽和基を有する化合物を用いて防眩層に硬度を付与したり、低屈折率層に無機微粒子を含有させて低屈折率層に硬度を付与したりすることにより、光学積層体の耐擦傷性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、従来の光学積層体では、耐擦傷性が充分であるとは言い難く、より耐擦傷性を向上させた光学積層体が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みて、反射防止性能を備えつつ、優れた耐擦傷性を有する光学積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光透過性基材の一方の面上に、防眩層及び低屈折率層がこの順番に積層された光学積層体であって、上記低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸の算術平均粗さRaと凹凸の十点平均粗さRzとを測定したとき、上記Raが4nm以下であり、上記Rzが60nm以下であることを特徴とする光学積層体である(以下、第1の本発明ともいう)。
また、本発明は、光透過性基材の一方の面上に、防眩層及び低屈折率層がこの順番に積層された光学積層体であって、上記低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸の算術平均粗さRaと凹凸の十点平均粗さRzとを測定したとき、上記Raが1.5nm以下であり、上記Rzが30nm以下であり、ナノインデンテーション法により測定した圧子を300nm押し込んだ時の硬度が、前記ナノインデンテーション法により測定した圧子を30nm押し込んだ時の硬度よりも高いことを特徴とする光学積層体でもある(以下、第2の本発明ともいう)。
なお、以下の説明において、第1の本発明の光学積層体と第2の本発明の光学積層体とを区別しないときは、「本発明の光学積層体」と称して説明する。
【0009】
第1の本発明の光学積層体は、ナノインデンテーション法により、押し込み深さ30nmの条件で測定した低屈折率層表面の硬度が、440MPa以上であることが好ましい。
本発明の光学積層体において、低屈折率層は、中空状シリカ微粒子を含有することが好ましい。
また、本発明は、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に本発明の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。
また、本発明は、本発明の光学積層体、又は、本発明の偏光板を備えることを特徴とするディスプレイパネルでもある。
また、本発明は、本発明の光学積層体、又は、本発明の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明者らは、光透過性基材の一方の面上に防眩層及び低屈折率層を有する光学積層体に耐擦傷性を付与する方法について鋭意検討した結果、表面に位置する低屈折率層に硬度を付与する方法、上記低屈折率層に平坦性を付与する方法、上記低屈折率層表面に滑り性を付与する方法、及び、上記低屈折率層と上記防眩層との層間密着性を付与する方法により、光学積層体の耐擦傷性を向上することができることを見出した。
そして、本発明者らは、従来の防眩層と低屈折率層とを備えた光学積層体の表面に生じる傷について詳細に観察したところ、凹凸形状に関係なく傷が発生していたことを見出した。すなわち、傷のモードは2つあり、1つは低屈折率層が削られて膜厚が減ることで、該低屈折率層を有する光学積層体の各層から反射光が干渉して生じる干渉色が変化するもの、もう1つは、低屈折率層が全て、削り取られて傷になっているものであった。つまり、防眩層を下層に有する低屈折率層の表面の凹凸形状と他の表面との接触は、点接触ではなく意外にも面全体で受けていたことが判明した。
このような防眩層と低屈折率層とを備えた光学積層体の耐擦傷性という課題は、特に大画面ディスプレイ用の光学積層体の場合は鮮明な画像が求められるので、高透明性が必須な場合で、かつ、優れた防眩性が求められる場合に顕著な課題である。
更に、上記課題が生じるメカニズムについて詳細に検討をした結果、上記低屈折率層の表面が梱包材などに接触したとき、低屈折率層の中の微粒子などが影響する非常にミクロな低屈折率層表面の肌理(表面にあるいろいろな形のもの)がきっかけとなり、梱包材等の他の物品表面との擦れで外力が低屈折率層に加わると、該低屈折率層の削れや層全体の剥がれを生じると推測した。
このような検討の結果、防眩層と低屈折率層とを備えた光学積層体の耐擦傷性を向上させるには、上述した面で接する低屈折率層の表面部分に剥がれるきっかけとなるものがない状態、すなわち、肌理が細かく、平坦な方が傷付きにくいはずと考えた。そして、凹凸のある表面において、その低屈折率層の表面の肌理状態、すなわち、平坦性を制御するためには、低屈折率層表面の凹凸の特に凸部の影響が小さい微視的な視野にて、平坦性を検討する必要があることに想到した。
このように、本発明者らは微視的な視野で見た場合の上記低屈折率層の表面に着目し、該表面を極めて平坦化することにより、優れた耐擦傷性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の光学積層体は、光透過性基材の上に、少なくとも防眩層及び低屈折率層がこの順に形成されている。
上記低屈折率層とは、本発明の光学積層体を構成する光透過性基材、防眩層等の、低屈折率層以外の構成物の屈折率よりも低い屈折率を有する層のことを意味する。
なお、後述する低屈折率層の表面の算術平均粗さRa、凹凸の十点平均粗さRz、及び、ナノインデンテーション法により測定された硬度は、光透過性基材の一方の面上に、少なくとも防眩層及び低屈折率層がこの順番に積層された光学積層体について測定したものである。
また、上記光学積層体の層構成は、STEMを使用することにより、倍率1000~2万倍で好適に断面観察することができる。
【0012】
なお、上記低屈折率層の表面の凹凸高さが低ければ低いほど、該低屈折率層の表面が平坦化されていると言えるが、上記凹凸の算術平均粗さRaや十点平均粗さRzは、上記低屈折率層の表面の凹凸高さの指標となる。
このように、本発明では、低屈折率層表面の肌理、平坦性の判断には、RaとRzとを使用するが、Raとは、実際の形状は不明なパラメータであるが、対象の低屈折率層面上に存在するミクロないろいろな形の肌理全体の平均高さがわかるものであり、肌理全体の高さを制御できる。
また、Rzは、低屈折率層表面の肌理の中でも最も高いところと低いところとの平均値である。Raだけであると、低屈折率層表面の肌理が平均化された結果にすぎないので、突発的に高い凸部や、低い凹部が存在しても判別ができない可能性もあり、このような凹凸は傷を生じる原因になるため、低屈折率層表面の肌理の制御に不足があることとなる。そこで、本発明では、上記Raに加えてRzで最大許容高さ及び最大許容深さを制御することとし、その結果、上記のような突発的な凸部や凹部の制御が可能となる。
【0013】
第1の本発明の光学積層体では、上記低屈折率層は、極めて平坦性に優れたものであり、具体的には、上記低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域におけるJIS B0601(2001)に規定される凹凸の算術平均粗さRaと凹凸の十点平均粗さRzとを測定したとき、上記Raが4nm以下であり、上記Rzが60nm以下である。第1の本発明の光学積層体において、上記Raが4nmを超えたり、上記Rzが60nmを超えたりすると、本発明の光学積層体の平坦性が不足し耐擦傷性が不充分となる。
すなわち、第1の本発明の光学積層体では、光透過性基材の上に、少なくとも防眩層及び低屈折率層がこの順に形成された構成であるので、上記低屈折率層の表面に上記防眩層由来の凹凸形状が形成され、防眩性能が担保されているが、上記低屈折率層の表面を微視的な視野(5μm四方領域)で見ると、極めて平坦化されたものである。このため、第1の本発明の光学積層体は、優れた耐擦傷性を有する。
上記低屈折率層の微視的な視野での表面の算術平均粗さ(Ra)は、3nm以下であることがより好ましく、2nm以下であることが更に好ましい。
また、上記低屈折率層の微視的な視野での表面の十点平均粗さ(Rz)は、45nm以下であることがより好ましく、35nm以下であることが更に好ましい。
なお、上記優れた耐擦傷性とは、例えば、ボンスター販売(株)製、ボンスター#0000番のスチールウールを用いた摩擦荷重700g/cm
2、10往復摩擦する耐擦傷試験で傷が生じないことを意味する。
ここで、上記低屈折率層の表面の凹凸形状、特に凸部以外の面において、特定領域内の平坦性を制御する方法としては、後述する低屈折率層用組成物の溶剤における選択、後述する低屈折率層用組成物を塗布し塗膜を形成する際の乾燥条件や硬化条件、後述する防眩層用組成物に含有されるレベリング剤の選択等により、好適に形成することができる。
なお、本明細書において、上記低屈折率層の表面の算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)は、AFM:SPM-9600(島津製作所社製)により、以下の条件で測定し、算出した。
AFMで得られる表面粗さパラメータの定義は、JIS B0031(1994)に規定されるものであるが、AFMの場合は、走査範囲(視野面積)内の面平均値としてSPM-9600付属ソフトにて算出できる。
カンチレバー:NCH-W(ナノワールド)
走査範囲:5μm(視野面積5μm×5μm)
走査速度:1Hz
ただし、上記AFM測定は、特異的な脱落や凹凸等の欠点が観察される場所を除いて測定したものである。
上記走査範囲を5μm(視野面積5μm×5μm)としたのは、もともと何らかの凹凸のある防眩層表面に積層される低屈折率層表面の肌理状態、平坦性の判断、制御をするためには、その防眩層の凹凸の影響を小さくするために、なるべく測定する視野面積を狭くしたものである。上記視野面積が上記範囲よりも広いと、測定サンプルのたわみや防眩層の凹凸、環境異物などの欠点を含んでAFMでの測定自体が困難となることがある。一方、上記視野面積が上記範囲よりも狭いと、低屈折率層の表面粗さを適切に評価できないことがある。また、上記Ra及びRzの解析条件は以下の通りであり、測定に使用した装置はSPM-9600(島津製作所社製)である。
<測定サンプルの作製>
以下の(1)~(4)の順で測定サンプルを作製する。
(1)試料台にカーボンテープを張り付け、剥離紙をピンセットで剥がす。
(2)サンプルの端をピンセットでもちハサミでカットする。カーボンテープより小さい8mm×8mmサイズにカットしてサンプルを作製する。
(3)サンプルの表と裏をブロワーで吹いて異物を除去する。
(4)サンプル表(測定面)を上にして、サンプル裏面にカーボンテープを貼り付けて測定サンプルを作製する。
<算術平均粗さRa>
算術平均粗さRaは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【数1】
<十点平均粗さRz>
十点平均粗さRzは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を、以下の式のように求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【数2】
なお、上記Yp
1、Yp
2、Yp
3、Yp
4、Yp
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高。
上記Yv
1、Yv
2、Yv
3、Yv
4、Yv
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も低い谷底から5番目までの谷底の標高。
【0014】
第1の本発明の光学積層体における上記低屈折率層は、ナノインデンテーション法により、押し込み深さ30nmの条件で測定した低屈折率層表面の硬度が、440MPa以上であることが好ましい。
このような硬度の範囲であることにより、第1の本発明の光学積層体に更に優れた耐擦傷性を好適に付与することができる。
なお、ナノインデンテーション法とは、直接測定できる物理量である、荷重、圧子がサンプル表面と接触した場所からの圧子の変位量、及び、時間を用いて硬さや弾性率を求めることができる方法である。すなわち、
図1(a)に示したように、圧子(鋭角圧子)を試料に圧入したときの圧入荷重p、及び、除荷時の押し込み深さ(圧入深さh)を連続的にその場観察することにより得られた
図1(b)に示したような圧入荷重-圧入深さ曲線から、圧痕を直接観察することなく硬度や弾性率を求める方法である。ただし、この手法の基本となる原理は、弾性変形領域という仮定の下で導かれたため、硬度を求める場合、この仮定に合わせて弾性変形条件下で算出する。
圧子の圧入過程では弾性変形と塑性変形の混在を避けるのは困難であるので、弾性変形の寄与だけを分離するため、解析の出発点として塑性変形した時点の表面を扱う。つまり、
図1(b)に示したように、圧入荷重-圧入深さ曲線において、単純弾性回復である除荷曲線に注目して硬度を求めていく。よって、このナノインデンテーション法の硬度とは、本発明のような高分子材料からなる硬化樹脂層の主に弾性変形の性質が表れる硬度である。
本発明の目的である耐擦傷性を向上させるには、傷を受ける表面の層自身が何らかの擦る力を受けた直後にその力を押し返す力が影響すると考えられる。そのメカニズムは、ちょうど上記したナノインデンテーション法による硬度のメカニズム(塑性変形後に弾性回復する力)と合致することから、各種ある押しこみ硬さ試験法の中でも、ナノインデンテーション法による硬度で評価することが本発明には最適であるとして選択した。
ところで、上述したように、平坦性を向上させ、低屈折率層表面の肌理を良好なものにすることは擦傷性向上には欠かせないと考えている。肌理が良好である場合は、荷重300g/cm
2~500g/cm
2程度の耐擦傷性が得られ、家庭仕様の固定されたTVモニターディスプレイに好ましく用いられる。一方、近年のディスプレイとは、駅や空港などでデジタルサイネージなどに多用されており、埃などの異物、人や鞄、その他の物品が触れ、擦れる場面が増えており、より高レベルの耐擦傷性、例えば荷重600g/cm
2以上の耐擦傷性が好まれる場合がある。その場合には、平坦性とともに擦り力を受ける表面層である低屈折率層自身の弾性変形、弾性回復力に関与する硬度を向上させることが有効であることが分かった。
押しこみ深さが30nmである理由は、低屈折率層自身の弾性変形力が関与する硬度を求めるためである。また、この深さであると安定した測定が可能で、下地である層、例えば防眩層の影響はほとんどない。
上記ナノインデンテーション法により、押し込み深さ30nmの条件で測定した低屈折率層表面の硬度が、500MPa以上であることがより好ましく、600MPa以上であることが更に好ましい。上記押し込み深さ30nmの条件で測定した低屈折率層表面の硬度の好ましい上限は4000MPa、より好ましい上限は2000MPa、更に好ましい上限は1600MPaである。4000MPaを超えると、下地である防眩層などとの硬度差によりマイクロクラックが生じやすく、そのために低屈折率層と防眩層などとの密着性が低下して剥がれが生じることがある。
なお、本明細書において、上記ナノインデンテーション法による硬度は、HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用い、変位量制御モードで測定したものである。
具体的には、上記低屈折率層において、上記圧子として
図2に示したようなBerkovich圧子(三角錐、ダイヤモンド製、陵角115度)をLoadingRate10nm/sで30nm押し込み、一定時間保持して残留応力の緩和を行った後、除荷させることで、荷重-変位曲線を取得でき、その後、インデンテーション硬さは装置で自動的に算出される。算出の概要:除荷曲線を用いて、サンプルが圧子に接触している深さ:接触深さが算出され、その接触深さより接触投影面積(A(nm
2))が求められ、この面積と緩和後の最大荷重(Pmax(μN))を用い、Pmax/Aにより、インデンテーション硬さが自動的に算出される。なお、自動計算には、Oliver-Pharrらの解析手法などが用いられている。
なお、安定な測定結果を得るため、顕微鏡を用い、倍率50~500倍の条件で試料面を観察し、極端な凹凸構造のある部分を避け、特異な欠点などのない可能な限り平坦性のある部分を選択し測定を行った。また、圧子の押し込み深さは、ナノインデンテーション法による硬度を安定して測定できる30nmを選択し、ナノインデンテーション法による硬度の測定は、25℃±5℃、相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0015】
上記ナノインデンテーション法の測定サンプル作製方法は、例えば、以下の方法を用いることができる。
20mm×20mmの大きさに切り出した光学積層体を、低屈折率層側が上面となるように市販のスライドガラスに、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成社製)を介して固定する。具体的には、スライドガラス1(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン社製)の中央部に上記接着樹脂を滴下する。この際、接着樹脂を塗り広げず、また後述するように押し広げたときに接着樹脂が光学積層体からはみ出さないように滴下は1滴とする。
その後、上記大きさに切り出した光学積層体を低屈折率層側が上面になり、かつ、光学積層体の中央部に接着樹脂が位置するようにスライドガラスに接触させ、スライドガラス1と光学積層体の間で接着樹脂を押し広げ、仮接着する。
そして、別の新しいスライドガラス2を光学積層体の上に載せ、スライトガラス1/接着樹脂/光学積層体/スライドガラス2の積層体を得る。
次いで、スライドガラス2の上に30g以上50g以下の重りを置き、その状態で、12時間室温で放置する。その後、重りとスライドガラス2を取り外し、これを測定用サンプルとする。
なお、接着樹脂で固定した光学積層体の4隅を、さらにテープ(製品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン社製)で固定してもよい。
【0016】
具体的な上記測定サンプルを用いたナノインデンテーション法による硬度(インデンテーション硬度)の測定方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。
上記測定サンプルは、除振台に平行に設置した測定機器の測定ステージに固定する。
この固定は、スライドガラス1の4辺をテープ(製品名「セロテープ(登録商標)、ニチバン社製」)等で固定する方法は任意であり、測定用サンプルが動かなければよい。
また、上記測定機器が、空気吸引システムを有していれば、空気吸引システムによって固定してもよい。
測定用サンプルを測定ステージに固定した後、以下の測定条件で低屈折率層の表面の押込み量30nm位置のインデンテーション硬度を測定する。
インデンテーション硬度は、測定用サンプルの低屈折率層の表面中央付近(接着樹脂が存在する領域)の任意の5点を測定し、得られた5点の硬度の算術平均値とする。
ただし、測定する任意の5点は、顕微鏡を用いて倍率50倍~500倍で低屈折率層を観察し、極端な凸構造になっている部分、及び、極端な凹部構造になっている部分は避け、可能な限り平坦性のある部分から選択するものとする。
【0017】
上記圧子を30nm押し込んだ時の硬度の具体的な測定条件は、例えば、以下の条件が好ましく用いられる。
使用圧子:Berkovich圧子(三角錐)
測定条件:変位制御方式
変位量制御モード 最大変位量:30nm
最大変位量への到達時間:3秒
最大変位量での保持時間:5秒
最大変位量からの除荷時間:3秒
試験点数:5点(この算術平均値を測定結果とする)
測定時の温度:25℃
測定時の相対湿度:50%
【0018】
また、第2の本発明の光学積層体では、上記低屈折率層は、極めて平坦性に優れたものであり、具体的には、上記低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域におけるJIS B0601(1992)に規定される凹凸の算術平均粗さRaと凹凸の十点平均粗さRzとを測定したとき、上記Raが1.5nm以下であり、上記Rzが30nm以下である。
すなわち、第2の本発明の光学積層体では、光透過性基材の上に、少なくとも防眩層及び低屈折率層がこの順に形成された構成であるので、上記低屈折率層の表面に上記防眩層由来の凹凸形状が形成され、防眩性能が担保されているが、上記低屈折率層の表面を微視的な視野(5μm四方領域)で見ると、極めて平坦化されたものである。
第2の本発明の光学積層体では、このような算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)の範囲を充足し、更に、低屈折率層表面のナノインデンテーション法により測定した硬度が特定の関係を満たすことにより、光学積層体に好ましい平坦性が得られ優れた耐擦傷性を付与することができる。
第2の本発明の光学積層体において、上記低屈折率層の表面の算術平均粗さ(Ra)は、1.2nm以下であることが好ましく、1.0nm以下であることがより好ましい。
また、第2の本発明の光学積層体において、上記低屈折率層の表面の十点平均粗さ(Rz)は、25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。
なお、上記優れた耐擦傷性とは、例えば、ボンスター販売(株)製、ボンスター#0000番のスチールウールを用いた摩擦荷重700g/cm
2、10往復摩擦する耐擦傷試験で傷が生じないことを意味する。
ここで、第2の本発明の光学積層体における上記低屈折率層の表面の凹凸形状は、制御する方法としては、後述する低屈折率層用組成物の溶剤における選択、後述する低屈折率層用組成物を塗布し塗膜を形成する際の乾燥条件や硬化条件、後述する防眩層用組成物に含有されるレベリング剤の選択等により、好適に形成することができる。
なお、本明細書において、第2の本発明の光学積層体における上記低屈折率層の表面の算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)は、AFM:SPM-9600(島津製作所社製)により、以下の条件で測定し、算出した。
AFMで得られる表面粗さパラメータの定義は、JIS B0031(1994)に規定されるものであるが、AFMの場合は、走査範囲(視野面積)内の面平均値としてSPM-9600付属ソフトにて算出できる。
カンチレバー:NCH-W(ナノワールド)
走査範囲:5μm(視野面積5μm×5μm)
走査速度:1Hz
ただし、上記AFM測定は、特異的な脱落や凹凸等の欠点が観察される場所を除いて測定したものである。
上記走査範囲を5μm(視野面積5μm×5μm)としたのは、もともと何らかの凹凸のある防眩層表面に積層される低屈折率層表面の肌理状態、平坦性の判断、制御をするためには、その防眩層の凹凸の影響を小さくするために、なるべく測定する視野面積を狭くしたものである。上記視野面積が上記範囲よりも広いと、測定サンプルのたわみや防眩層の凹凸、環境異物などの欠点を含んでAFMでの測定自体が困難となることがある。一方、上記視野面積が上記範囲よりも狭いと、低屈折率層の表面粗さを適切に評価できないことがある。また、上記Ra及びRzの解析条件は以下の通りであり、測定に使用した装置はSPM-9600(島津製作所社製)である。
<測定サンプルの作製>
以下の(1)~(4)の順で測定サンプルを作製する。
(1)試料台にカーボンテープを張り付け、剥離紙をピンセットで剥がす。
(2)サンプルの端をピンセットでもちハサミでカットする。カーボンテープより小さい8mm×8mmサイズにカットしてサンプルを作製する。
(3)サンプルの表と裏をブロワーで吹いて異物を除去する。
(4)サンプル表(測定面)を上にして、サンプル裏面にカーボンテープを貼り付けて測定サンプルを作製する。
<算術平均粗さRa>
算術平均粗さRaは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【数3】
<十点平均粗さRz>
十点平均粗さRzは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を、以下の式のように求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【数4】
なお、上記Yp
1、Yp
2、Yp
3、Yp
4、Yp
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高。
上記Yv
1、Yv
2、Yv
3、Yv
4、Yv
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も低い谷底から5番目までの谷底の標高。
【0019】
第2の本発明の光学積層体において、上記低屈折率層は、ナノインデンテーション法により測定した圧子を300nm押し込んだ時の硬度が、上記ナノインデンテーション法により測定した圧子を30nm押し込んだ時の硬度よりも高いことを特徴とする光学積層体である。
このような硬度の範囲であることにより、第2の本発明の光学積層体に優れた耐擦傷性を好適に付与することができる。
なお、ナノインデンテーション法とは、直接測定できる物理量である、荷重、圧子がサンプル表面と接触した場所からの圧子の変位量、及び、時間を用いて硬さや弾性率を求めることができる方法である。すなわち、
図1(a)に示したように、圧子(鋭角圧子)を試料に圧入したときの圧入荷重p、及び、除荷時の押し込み深さ(圧入深さh)を連続的にその場観察することにより得られた
図1(b)に示したような圧入荷重-圧入深さ曲線から、圧痕を直接観察することなく硬度や弾性率を求める方法である。ただし、この手法の基本となる原理は、弾性変形領域という仮定の下で導かれたため、硬度を求める場合、この仮定に合わせて弾性変形条件下で算出する。
圧子の圧入過程では弾性変形と塑性変形の混在を避けるのは困難であるので、弾性変形の寄与だけを分離するため、解析の出発点として塑性変形した時点の表面を扱う。つまり、
図1(b)に示したように、圧入荷重-圧入深さ曲線において、単純弾性回復である除荷曲線に注目して硬度を求めていく。よって、このナノインデンテーション法の硬度とは、本発明のような高分子材料からなる硬化樹脂層の主に弾性変形の性質が表れる硬度である。
本発明の目的である耐擦傷性を向上させるには、傷を受ける表面の層自身が何らかの擦る力を受けた直後にその力を押し返す力が影響すると考えられる。そのメカニズムは、ちょうど上記したナノインデンテーション法による硬度のメカニズム(塑性変形後に弾性回復する力)と合致することから、各種ある押しこみ硬さ試験法の中でも、ナノインデンテーション法による硬度で評価することが本発明には最適であるとして選択した。
ところで、上述したように、平坦性を向上させ、低屈折率層表面の肌理を良好なものにすることは擦傷性向上には欠かせないと考えている。極めて平坦で、肌理を良好にし、更に上記したバランスの硬度(ナノインデンテーション硬さ)とすることにより、荷重700g/cm
2以上の優れた擦傷性を付与することができる。
圧子を30nm押し込んだ時の硬度とは、低屈折率層だけの弾性変形、弾性回復力といった物性が関与する硬度である。一方、圧子を300nm押し込んだ時の硬度とは、厚みが約100nmの低屈折率層より更に200nmプラスした深さで、例えば、低屈折率層の下地が防眩層であれば、防眩層と低屈折率層両方の物性が関与する硬度である。
本来、擦傷性とは低屈折率層が強く関係する場所であるが、荷重が大きくなってくるとその下地層である防眩層なども関係性が強くなってくる。なお、この場合の下地層とは、直接低屈折率層の下地である単層に限らず、低屈折率層よりも下にある複数層全体であってもよい。
上記したような平坦性と硬度(ナノインデンテーション硬さ)バランスの組み合わせが、高い擦傷性に有効であるのは、以下の理由と考えられる。
防眩層/低屈折率層などの下地層/低屈折率層の硬度が、低屈折率層の硬度よりも大きい場合に達成される積層体の弾性物性の状態が、擦られた時の力を押し返すような物性、弾性回復力を発揮できる状態になっており、そこに極めて平坦な表面性があれば、更にうまく擦りの力を押し返し、かつ滑らせ続けることができ、結果、傷のつかない元の状態を維持できるようになるからと考えられる。一方、低屈折率層の硬度が、下地層/低屈折率層の硬度よりも大きい場合は、擦りの力を押し返す力が弱まり、上記した状態にしにくく、また、低屈折率層の硬度が過剰に大きいためクラックが入りやすく下地層との密着性が弱まる場合がある。
第2の本発明の光学積層体において、上記ナノインデンテーション法により測定した圧子を300nm押し込んだ時の硬度は、好ましい下限が490MPa、好ましい上限が580MPaであり、より好ましい下限が510MPa、より好ましい上限が560MPaである。
また、第2の本発明の光学積層体において、上記ナノインデンテーション法により測定した圧子を30nm押し込んだ時の硬度の好ましい下限が470MPa、好ましい上限が560MPaであり、より好ましい下限が490MPa、より好ましい上限が540MPaである。
なお、本明細書において、上記ナノインデンテーション法による硬度は、HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用い、変位量制御モードで測定したものである。
具体的には、上記低屈折率層において、上記圧子として
図2に示したようなBerkovich圧子(三角錐、ダイヤモンド製、陵角115度)をLoadingRate10nm/sで30nmまたは300nm押し込み、一定時間保持して残留応力の緩和を行った後、除荷させることで、荷重-変位曲線を取得でき、その後、インデンテーション硬さは装置で自動的に算出される。算出の概要:除荷曲線を用いて、サンプルが圧子に接触している深さ:接触深さが算出され、その接触深さより接触投影面積(A(nm
2))が求められ、この面積と緩和後の最大荷重(Pmax(μN))を用い、Pmax/Aにより、インデンテーション硬さが自動的に算出される。なお、自動計算には、Oliver-Pharrらの解析手法などが用いられている。
なお、安定な測定結果を得るため、顕微鏡を用い、倍率50~500倍の条件で試料面を観察し、極端な凹凸構造のある部分を避け、特異な欠点などのない可能な限り平坦性のある部分を選択し測定を行った。また、圧子の押し込み深さは、ナノインデンテーション法による硬度を安定して測定できる30nmまたは300nmを選択し、ナノインデンテーション法による硬度の測定は、25℃±5℃、相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0020】
上記ナノインデンテーション法の測定サンプル作製方法は、例えば、以下の方法を用いることができる。
20mm×20mmの大きさに切り出した光学積層体を、低屈折率層側が上面となるように市販のスライドガラスに、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成社製)を介して固定する。具体的には、スライドガラス1(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン社製)の中央部に上記接着樹脂を滴下する。この際、接着樹脂を塗り広げず、また後述するように押し広げたときに接着樹脂が光学積層体からはみ出さないように滴下は1滴とする。
その後、上記大きさに切り出した光学積層体を低屈折率層側が上面になり、かつ、光学積層体の中央部に接着樹脂が位置するようにスライドガラスに接触させ、スライドガラス1と光学積層体の間で接着樹脂を押し広げ、仮接着する。
そして、別の新しいスライドガラス2を光学積層体の上に載せ、スライトガラス1/接着樹脂/光学積層体/スライドガラス2の積層体を得る。
次いで、スライドガラス2の上に30g以上50g以下の重りを置き、その状態で、12時間室温で放置する。その後、重りとスライドガラス2を取り外し、これを測定用サンプルとする。
なお、接着樹脂で固定した光学積層体の4隅を、さらにテープ(製品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン社製)で固定してもよい。
【0021】
具体的な上記測定サンプルを用いたナノインデンテーション法による硬度(インデンテーション硬度)の測定方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。
上記測定サンプルは、除振台に平行に設置した測定機器の測定ステージに固定する。
この固定は、スライドガラス1の4辺をテープ(製品名「セロテープ(登録商標)、ニチバン社製」)等で固定する方法は任意であり、測定用サンプルが動かなければよい。
また、上記測定機器が、空気吸引システムを有していれば、空気吸引システムによって固定してもよい。
測定用サンプルを測定ステージに固定した後、以下の測定条件で低屈折率層の表面の押込み量30nmまたは300nm位置のインデンテーション硬度を測定する。
インデンテーション硬度は、測定用サンプルの低屈折率層の表面中央付近(接着樹脂が存在する領域)の任意の5点を測定し、得られた5点の硬度の算術平均値とする。
ただし、測定する任意の5点は、顕微鏡を用いて倍率50倍~500倍で低屈折率層を観察し、極端な凸構造になっている部分、及び、極端な凹部構造になっている部分は避け、可能な限り平坦性のある部分から選択するものとする。
【0022】
上記圧子を30nm押し込んだ時の硬度の具体的な測定条件は、例えば、以下の条件が好ましく用いられる。
使用圧子:Berkovich圧子(三角錐、ダイヤモンド製、陵角115度)
測定条件:変位制御方式
変位量制御モード 最大変位量:30nm
最大変位量への到達時間:3秒
最大変位量での保持時間:5秒
最大変位量からの除荷時間:3秒
試験点数:5点(この算術平均値を測定結果とする)
測定時の温度:25℃
測定時の相対湿度:50%
上記圧子を300nm押し込んだ時の硬度の具体的な測定条件は、例えば、以下の条件が好ましく用いられる。
使用圧子:Berkovich圧子(三角錐)
測定条件:変位制御方式
変位量制御モード 最大変位量:300nm
最大変位量への到達時間:30秒
最大変位量での保持時間:5秒
最大変位量での除荷時間:30秒
試験点数:5点(この算術平均値を測定結果とする)
測定時の温度:25℃
測定時の相対湿度:50%
【0023】
第2の本発明の光学積層体において、上記低屈折率層の表面の水に対する接触角が102°以下であることが好ましい。上記低屈折率層の表面の水に対する接触角が、102°以下であると、上記低屈折率層と他の層との層間密着性を充分に付与することができ、耐擦傷性を向上することができる。
上記低屈折率層の表面の水に対する接触角は、100°以下であることがより好ましい。
【0024】
上記低屈折率層は、中空状シリカ微粒子を含有することが好ましい。
上記中空状シリカ微粒子は、上記低屈折率層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げる役割を果たすものである。なお、本明細書において、「中空状シリカ微粒子」とは、内部に気体が充填された構造であり、シリカ微粒子本来の屈折率に比べて気体の占有率に反比例して屈折率が低下するシリカ微粒子を意味する。
【0025】
上記中空状シリカ微粒子の具体例としては特に限定されず、例えば、特開2001-233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ微粒子が好ましく挙げられる。中空状シリカ微粒子は、製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、後述するバインダー成分等と混合して低屈折率層を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率が低くなるよう調整することが可能となる。
【0026】
本発明の光学積層体において、上記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が45~65nmである。45nm未満であると、上記低屈折率層を充分に低屈折率化できず、一方、65nmを超えると、上記低屈折率層の表面から突出する量が増大し、上述した極めて高い平滑性の低屈折率層を得ることができなくなる。上記中空状シリカ微粒子の平均粒子径の好ましい下限は47nm、好ましい上限は60nmであり、この範囲内であれば、低屈折率層の平滑性が保たれ、良好な外観を得ることができる。
なお、上記中空状シリカ微粒子の平均粒子径とは、上記低屈折率層中の中空状シリカ微粒子の平均粒子径を意味しており、上記低屈折率層の厚み方向の断面をSEM、TEM及びSTEM等で観察し、任意の単粒子状の中空状シリカ微粒子30個を選択してその断面の粒子径を測定し、その平均値として算出される値である。
例えば、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)により、信号選択を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「0°」とし、上記低屈折率層の厚み方向の断面の任意の箇所を1万倍~20万倍で20枚撮像観察した後、STEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、30個の中空状シリカ微粒子の最大径を実測し、その算術平均値として求められる。
【0027】
本発明の光学積層体において、上記中空状シリカ微粒子は、平均粒子径が上記低屈折率層の厚みに対して、50%以上、100%未満であることが好ましい。50%未満であると、低屈折率層の屈折率を充分に低くすることができず、本発明の光学積層体の反射防止性能が劣ることがある。一方、100%以上であると、中空状シリカ微粒子に起因した微細な凹凸形状が低屈折率層の表面に形成されてしまい肌理の制御が不足し、ある特定領域内で充分な平坦性を備えた低屈折率層とすることができないことがあり、また、本発明の光学積層体のヘイズが悪化してしまうことがある。上記中空状シリカ微粒子の平均粒子径は、上記低屈折率層の厚みに対して、好ましい下限は70%であり、好ましい上限は80%である。上記中空状シリカ微粒子の平均粒子径がこの範囲にあることで、本発明の効果をより好適に奏することが可能となる。
【0028】
また、上記中空状シリカ微粒子は、シェルの厚みが5~12nmであることが好ましい。5nm未満であると、中空状シリカ微粒子の強度が不充分となることがあり、12nmを超えると、低屈折率層を充分に低屈折率化できないことがある。シェルの厚みのより好ましい下限は6nm、より好ましい上限は10nmである。なお、上記シェルとは、上記中空状シリカ微粒子の中心部分に存在する気体を除いたシリカにより構成される外殻を意味し、該シェルの厚みは、上記低屈折率層の断面顕微鏡観察により測定することができる。
【0029】
上記低屈折率層における上記中空状シリカ微粒子の含有量としては、後述する低屈折率層における中空状シリカ微粒子の含有状態により適宜調整されるが、後述するバインダー樹脂(固形分)100質量部に対して、50~200質量部であることが好ましい。50質量部未満であると、中空状シリカ微粒子の含有量が少ないため、低屈折率層の屈折率が充分に低くならず、本発明の光学積層体の反射防止性能が不充分となることがある。一方、200質量部を超えると、中空状シリカ微粒子を添加しただけの効果が見られず、また、低屈折率層の強度が不充分となることがある。より好ましい下限は60質量部、より好ましい上限は180質量部である。
【0030】
上記低屈折率層は、中実シリカ微粒子を含有することが好ましい。
なお、本明細書において、「中実シリカ微粒子」とは、上述した中空状シリカ微粒子とは異なり、内部に気体が充填されていない構造であり、シリカ微粒子本来の屈折率を備えたシリカ微粒子を意味する。上記中実シリカ微粒子は、液体中で合成される非晶質の湿式シリカや、主に四塩化ケイ素の燃焼によって製造される乾式シリカなどいずれでもよい。
【0031】
上記中実シリカ微粒子は、平均粒子径が8~50nmであることが好ましい。8nm未満であると、低屈折率層表面の硬度が上がらないことがあり、50nmを超えると、低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域において測定した算術平均粗さRa及びRzが高くなることがある。
上記中実シリカ微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は20nmである。
ここで、上記中実シリカ微粒子の平均粒子径とは、上述した中空状シリカ微粒子と同様にして測定された値を意味する。
【0032】
上記低屈折率層における上記中実シリカ微粒子の含有量としては、後述するバインダー樹脂の固形分100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましい。
上記低屈折率層における上記中実シリカ微粒子の含有量が10質量部未満であると、上記低屈折率層表面の硬度を上げる効果が不足し、充分な耐擦傷性を付与できないことがあり、100質量部を超えると、低反射率の調整が困難となることがあり、また、充分な平坦性を備えた低屈折率層とすることができないことがある。
上記低屈折率層における上記中実シリカ微粒子の含有量のより好ましい下限は20質量部であり、より好ましい上限は90質量部であり、更に好ましい上限は80質量部、特に好ましい上限は60質量部である。
【0033】
更に、上記中実シリカ微粒子は、表面に後述するバインダー樹脂に対する反応性を有する官能基、例えば、エチレン性不飽和結合を有する官能基等を有することが好ましい。上記反応性官能基を表面に有することで、低屈折率層の硬度が優れたものとなる。
【0034】
本発明の光学積層体において、上記低屈折率層には上述した硬度を阻害しない範囲で添加剤を有していてもよい。
上記添加剤としては特に限定されず、例えば、フッ素系化合物、シリコーン系化合物及びシリコーン・フッ素原子含有系化合物等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。例えば、低屈折率層を積層する下地の層に含まれる添加剤と相溶性の良い材料を適宜上記化合物より選択、組み合わせればよい。
上記フッ素系化合物、シリコーン系化合物及びシリコーン・フッ素原子含有系化合物を低屈折率層に含有することで、上述したような凸部以外の面の特定範囲領域で、極めて平滑性に優れた低屈折率層を表面に備えたとしても、本発明の光学積層体は、優れた防眩性、凹凸形状(特に凸部)を備えているため、耐ブロッキング性に優れたものとなる。本発明の光学積層体では、低屈折率層の表面、空気界面側に上述した化合物が高濃度で存在しているものと推測される。そのため、上記添加剤は、防汚剤としての機能も発揮する。このため、本発明の光学積層体は、優れた防汚性能も備えたものとなる。
【0035】
上記シリコーン系化合物としては特に限定されず、例えば、有機シリコーンが挙げられる。有機シリコーンとしては特に限定されないが、分子中に反応性官能基を有することが好ましい。上記反応性官能基を有することで、上記有機シリコーンが後述するバインダー成分と反応し、低屈折率層中からの脱落を好適に防止することができる。
上記反応性官能基を有する有機シリコーンとしては、例えば、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、(メタ)アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じ難いことから好ましい。
【0036】
上記有機シリコーンの含有量としては、目的とする低屈折率層の耐ブロッキング性能及び防汚性能により適宜決定されるが、上述した中空状シリカ微粒子と後述するバインダー成分との合計100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、形成する低屈折率層に充分な耐ブロッキング性能及び防汚性能を付与することができないことがあり、10質量部を超えると、添加した有機シリコーンが低屈折率層からブリードアウトすることがある。また、有機シリコーンを添加しただけの効果が見られず、製造コストが高くなり、得られる低屈折率層の硬度、外観が低下し、更に、反射率上昇の原因となることもある。上記有機シリコーンの含有量のより好ましい下限は2質量部、より好ましい上限は8質量部である。
【0037】
上記防汚剤としても機能する上記フッ素系化合物としては、例えば、反応性官能基とフッ素原子とを含有する化合物等が挙げられ、上記シリコーン・フッ素原子含有系化合物としては、例えば、反応性官能基とフッ素原子及びケイ素原子とを含有する化合物等が挙げられる。このような防汚剤を含有することで、形成する低屈折率層の防汚性能をより向上させることができる。
【0038】
上記反応性官能基とフッ素原子とを含有する化合物としては、例えば、反応性フッ素化合物、特にエチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができ、より具体的には、例えば、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)が挙げられる。
また、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α-トリフルオロ(メタ)アクリル酸メチル等の分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中にフッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1~14の、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等も挙げられる。
更にまた、主鎖にフッ素化アルキレン基を有するフッ素ポリマー、オリゴマーや、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマー、オリゴマー等も挙げられる。これらの中でも、特に、主鎖及び側鎖にフッ素化アルキレン基、フッ素化アルキル基を有するフッ素化ポリマーは、低屈折率層からのブリードアウトの問題が生じにくいことから特に好適に用いられる。
【0039】
上記反応性官能基と、フッ素原子及びケイ素原子とを含有する化合物としては、例えば、上記反応性フッ素化合物に上記反応性官能基を分子中に有する有機シリコーンを反応させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体、あるいはフッ素変性させた有機シリコーン化合物等が挙げられる。
【0040】
本発明の光学積層体において、上記低屈折率層は、上述した本発明の効果を阻害しない範囲であれば、上記フッ素系化合物、シリコーン系化合物及びシリコーン・フッ素原子含有系化合物以外に防汚剤を含んでいてもよい。
上記低屈折率層が防汚剤を更に含有することで、本発明の光学積層体は、より優れた防汚性能を有することとなる。
【0041】
また、上記低屈折率層は、バインダー成分を含有することが好ましい。
上記バインダー成分としては、電離放射線硬化型樹脂が挙げられ、本発明では、特に(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
上記(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリルモノマーの重合体又は共重合体が挙げられ、上記(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートが好適に挙げられる。
また、これら(メタ)アクリレートモノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
これらの(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの(メタ)アクリルモノマーは、後述するような屈折率の範囲を満たすとともに硬化反応性に優れ、得られる低屈折率層の硬度を向上させることができる。
【0042】
上記(メタ)アクリルモノマーは、屈折率が1.47~1.53であることが好ましい。屈折率を1.47未満とすることは事実上不可能であり、1.53を超えると、充分に低い屈折率の低屈折率層を得ることができないことがある。
【0043】
また、上記(メタ)アクリルモノマーは、重量平均分子量が250~1000であることが好ましい。250未満であると、官能基数が少なくなるため、得られる低屈折率層の硬度が低下する恐れがある。1000を超えると、一般的には、官能基当量(官能基数/分子量)が小さくなるため、架橋密度が低くなり充分な硬度の低屈折率層が得られなくなることがある。
なお、上記(メタ)アクリルモノマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。GPC移動相の溶剤には、テトラヒドロフランやクロロホルムを使用することができる。測定用カラムは、テトラヒドロフラン用又はクロロホルム用のカラムの市販品カラムを組み合わせて使用するとよい。上記市販品カラムとしては、例えば、Shodex GPC KF-801、GPC-KF800D(いずれも、商品名、昭和電工社製)等を挙げることができる。検出器には、RI(示差屈折率)検出器及びUV検出器を使用するとよい。このような溶剤、カラム、検出器を使用して、例えば、Shodex GPC-101(昭和電工社製)等のGPCシステムにより、上記重量平均分子量を適宜測定することができる。
【0044】
本発明の光学積層体は、ケン化処理の前後における上記低屈折率層の表面の水の接触角の変化率が15%以下であることが好ましい。15%を超えると、低屈折率層の表面の有機シリコーンが脱落してしまい、本発明の光学積層体の耐ブロッキング性や耐汚染性が不充分となることがある。上記低屈折率層の表面の水の接触角の変化率のより好ましい上限は10%であり、更に好ましい上限は5%である。
なお、上記ケン化処理の前後における低屈折率層の表面の水の接触角の変化率は、低屈折率層のケン化処理前後で接触角計にて測定し{(前測定値-後測定値)/前測定値}×100で算出することができる。
【0045】
本発明の光学積層体において、上記低屈折率層は、屈折率が1.45未満であることが好ましい。1.45以上であると、本発明の光学積層体の反射防止性能が不充分となることがある。より好ましい下限は1.15であり、物理的強度を良好にするために好ましい下限は1.20である。良好な表示品質のために上記低屈折率層の屈折率の好ましい上限は1.40であり、近年の画像表示装置の高レベルな表示品質に対応するために特に好ましい上限は1.36である。
【0046】
上記低屈折率層の膜厚(nm)dAは、下記式(I):
dA=mλ/(4nA) (I)
(上記式中、
nAは低屈折率層の屈折率を表し、
mは正の奇数を表し、好ましくは1を表し、
λは波長であり、好ましくは480~580nmの範囲の値である)
を満たすものが好ましい。
【0047】
また、本発明にあっては、低屈折率層は下記数式(II):
120<nAdA<145 (II)
を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
【0048】
上記低屈折率層は、上述した中空状シリカ微粒子、中実シリカ微粒子、バインダー成分のモノマー成分、及び、フッ素系化合物、シリコーン系化合物及びシリコーン・フッ素原子含有系化合物並びに必要に応じてその他の防汚剤等を含有する低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いて形成することができる。
【0049】
上記低屈折率層用組成物は、更に溶剤を含有していてもよい。
上記溶剤としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、PGMEA等のエステル;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン等のアミド;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;1-メトキシ-2-プロパノール等のエーテルアルコール等が挙げられる。なかでも、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール(IPA)、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、PGME、PGMEAが好ましい。
【0050】
また、上記低屈折率層用組成物は、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては、例えば、光重合開始剤、レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光吸収波長調整剤、顔料、染料、上述した以外の樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記光重合開始剤としては、上記低屈折率層用組成物がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系を含有する場合、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184(BASF社製)として市販されている1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられ、これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記低屈折率層用組成物がカチオン重合性官能基を有する樹脂系を含有する場合、上記光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられ、これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明で使用できる具体的な光重合開始剤としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02、DAROCUR TPO、DAROCUR1173;日本シーベルヘグナー社製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46;日本化薬社製のKAYACURE DETX-S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。なかでも、イルガキュア369、イルガキュア127、イルガキュア907、Esacure ONE、SpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、KAYACURE DETX-Sが好ましい。
上記光重合開始剤の添加量は、上記バインダー樹脂の固形分100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。
上記レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光吸収波長調整剤、顔料、染料、その他の樹脂は、公知のものを使用することができる。
【0052】
また、上記低屈折率層用組成物の粘度を好ましい塗布性が得られる0.5~5cps(25℃)、好ましくは0.7~3cps(25℃)の範囲のものとすることが好ましい。可視光線の優れた反射防止膜を実現でき、かつ、均一で塗布ムラのない薄膜を形成することができ、更に、被塗布物に対する密着性に特に優れた低屈折率層を形成することができる。
【0053】
上記低屈折率層用組成物の調製方法としては特に限定されず、例えば、上述した中空状シリカ微粒子、バインダー成分のモノマー成分、有機シリコーン、及び、必要に応じて添加される防汚剤、溶剤、光重合開始剤等の成分を混合することにより得ることができる。混合には、ペイントシェーカー又はビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
等の公知の方法を使用することができる。
【0054】
上記低屈折率層は、後述する防眩層上に、上記低屈折率層用組成物を塗布し形成した塗膜を必要に応じて乾燥し、電離放射線の照射及び/又は加熱により塗膜を硬化させることにより形成することができる。
上記低屈折率層用組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の各種方法が挙げられる。
【0055】
上記光透過性基材は、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。光透過性基材を形成する材料の具体例としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられる。上記光透過性基材を構成する樹脂材料は、単独で用いられてもよく複数が併用されてもよい。
【0056】
上記光透過性基材は、上記熱可塑性樹脂を柔軟性に富んだフィルム状体として使用することが好ましいが、硬化性が要求される使用態様に応じて、これら熱可塑性樹脂の板を使用することも可能であり、又は、ガラス板等の板状体のものを使用してもよい。
【0057】
その他、上記光透過性基材としては、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)フィルムが挙げられる。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体等が用いられる基材で、例えば、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(COP)、住友ベークライト(株)製のスミライトFS-1700、JSR(株)製のアートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製のアペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製のオプトレッツOZ-1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ株式会社製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
【0058】
上記光透過性基材の厚さとしては、フィルム状体の場合、5~300μmであることが好ましく、より好ましくは下限が10μm、更に好ましくは下限が15μmであり、より好ましくは上限が200μmである。薄膜化が望まれる場合には、更に好ましくは上限が90μm、特に好ましくは上限が70μm、最も好ましくは上限が50μmである。上記光透過性基材が板状体の場合には、これらの厚さを超える厚さであってもよい。
上記光透過性基材は、その上に上記防眩層等を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的又は化学的な処理のほか、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布が予め行われていてもよい。
また、LCD向けの光透過性基材として、主に用いられることが多いトリアセチルセルロース又はポリメチルメタクリレートやポリエステル、ノルボルネン系樹脂、環状オレフィン系樹脂を材料とし、更に、OLED向けの光透過性基材としては、上記LCD向けの光透過性基材に加え、ポリイミドフィルム(ポリイミド単体ではなく、ポリアミドが混合してもよい)も材料とし、かつ、ディスプレイ薄膜化を目指す場合は、上記光透過性基材の厚さとしては7~45μmであることが好ましい。更なるディスプレイ薄膜化を目指す場合、上記光透過性基材の厚みのより好ましい上限は30μmで、樹脂系によって更に薄膜化が可能なもの(COP、ポリイミドフィルムなど)の好ましい上限は20μmである。
【0059】
上記防眩層は、上記光透過性基材の一方の面上に形成されており、表面に凹凸形状を有するものである。
上記防眩層の凹凸形状を形成する方法は特に限定されず、例えば、防眩剤を含む組成物により形成したもの、バインダー樹脂の相分離により形成したもの、エンボス加工により形成したものであってもよい。
なかでも、上記防眩層の凹凸形状は、防眩剤、及び、バインダー樹脂を含む防眩層用組成物により形成したものであることが好ましい。
【0060】
上記防眩剤は微粒子であり、形状は、真球状、楕円状、不定形等、特に限定されない。また、上記防眩剤としては、有機微粒子、無機微粒子・無機成分を使用することができ、好ましくは透明性の微粒子がよい。
上記有機微粒子の材料としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド縮合物、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂及びポリフッ化エチレン樹脂等が挙げられる。有機微粒子は、凹凸の特に凸形状の比較的大きな凸形状土台をつくる基本材料として好ましいものである。
上記無機微粒子の材料としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、チタン酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、硼素酸化物、スズ酸化物、リン酸化物、インジウムスズ酸化物、ジルコニウム酸化物、その他の金属酸化物、金属、金属窒化物、炭素同位体、微粉珪酸、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、微粉タルク、酸化チタン、珪藻土、スメクタイト、カオリンクレー等が挙げられる。
上記無機成分の材料としては、特に限定されず、例えば、シリカゾル、ジルコニアゾル等の金属酸化物ゾル、アエロジル、膨潤性粘土などの粘土系成分等が挙げられる。
上記無機微粒子・無機成分は、単独で凝集されることで凹凸の特に凸形状の土台として用いることができる。さらに、有機微粒子によって凹凸土台をつくった場合、その有機微粒子の周囲に無機微粒子・無機成分を存在させたり、有機微粒子と有機微粒子との間(有機微粒子が凝集しておらず、有機微粒子の平均粒径の3倍以上距離のある間)に無機微粒子・無機成分の凝集体として存在させることは、耐擦傷性を向上させるための、特定領域内での平坦な形状を形成する材料として好ましい。
上記防眩剤は、単独で使用してもよく、2種以上を同時に使用してもよい。
本発明の凝集とは、微粒子同士が、ある粒子周囲360°のどこかで密着している微粒子の集合だけではなく、微粒子同士が、ある粒子周囲360°のどこかで、微粒子の平均粒径の3倍未満の距離で集まっているような微粒子の集合も含まれる。特に、防眩層の中では微粒子の周囲にはバインダー樹脂が存在するので、微粒子同士が完全に密着している凝集体より、微粒子間にバインダーを含んで凝集体を形成することが多いと考えられる。
【0061】
上記無機微粒子は、導電性金属酸化物微粒子であってもよい。上記導電性金属酸化物微粒子としては特に限定されず、例えば、ZnO、Sb2O2、SnO2、CeO2、酸化インジウム錫、In2O3、Al2O3、アンチモンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛等を挙げることができる。
なお、上記有機微粒子と上記無機微粒子と上記無機成分の材料を同時に使用してもよく、それぞれ複数使用してもよい
【0062】
上記有機微粒子又は無機微粒子・無機成分は、コア/シェル構造を有するものであってもよい。この場合、シェル部は表面に重合性官能基が導入されたものであってもよい。上記シェル部は、重合性官能基が直接又は重合性官能基を備えるモノマー、オリゴマー、ポリマーがグラフト形態となって化学反応によりコアに結合した構造;粒子部分(コア)の表面に重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーが被膜形態となって化学反応により結合した構造等を挙げることができる。
【0063】
上記防眩層の上に、上記低屈折率層を積層した場合の特定領域内での形状を好適に制御するためには、上記防眩層の表面の凹凸の制御を好適に行うことが重要になる。好ましい例としては、例えば、上記防眩層は、上記有機微粒子、上記無機微粒子・上記無機成分の防眩材料をそれぞれ単独または複数種類含有し、更にバインダー樹脂を含有するものがある。上記防眩層の上に、上記低屈折率層を積層し、低屈折率層の表面の肌理が良好になるためには、上記防眩層の表面の凹凸形状の土台となる比較的大きい凸部を制御し、また、凸部と凸部の間の面表面には可能な限り、粒子起因の凸凹が少ないほうが望ましい。
そのような防眩層の表面形状を形成する場合、各防眩材料を単独で用いる場合には、防眩層の厚さを平均粒子径よりも1.5倍以上大きなものにするのが好ましい。各防眩材料が凝集粒子である場合は、その凝集体の平均粒子径よりも1.5倍以上大きなものにすることが好ましい。防眩層の凸部とは、例えば上記有機微粒子である場合、微粒子が単独で存在する場合もあるが、おおよそは、数個の微粒子が粒子間隔が狭い状態で存在する場合が多い。つまり、最低限、防眩層の表面を観察した場合、微粒子が2個以上密に集まっている部分が凸部を形成しやすい。これは、膜厚を平均粒子径よりも大きなものにすることによって、このような比較的大きい凸部を形成する微粒子の集合とは別の、1個で存在する微粒子(または、比較的大きい凸部を形成する大きな微粒子集合体よりも小さな微粒子集合体)の上に、充分にバインダー樹脂が存在できるため、上記したような凸部と凸部の間の面形状が制御しやすいからである。また、その時に用いるバインダー樹脂の粘度は高いほうが好ましい。上記バインダー樹脂の粘度は、バインダー樹脂自身の粘度又は溶媒と溶質間の固形分、更には製造時の乾燥条件などによって調整可能である。バインダー樹脂や溶媒は、後述するものより適宜選択、混合して用いることができる。
なお、各防眩材料を単独で用いるとは、上記有機微粒子と上記無機微粒子・無機成分の2種類を混合して用いないことを意味している。一方、例えば、上記有機微粒子であれば、樹脂材料違いのアクリル樹脂微粒子とスチレン-アクリル共重合体微粒子を混合したり、粒径違いの微粒子を混合して用いることは単独として考える。
上記無機微粒子・上記無機成分と、有機微粒子といった複数種の防眩剤、及び、バインダー樹脂を含有する場合は、表面の凹凸形状は、後述する無機微粒子・無機成分の凝集体と有機微粒子とにより形成されていてもよい。このような方法により形成された防眩層では、上記防眩層の表面に形成された凹凸形状が、主な凸部と凸部の間の面表面に、粒子起因の凸凹が少なく制御できた形状とすることができる。
これは、後述するように、上記無機微粒子・上記無機成分と有機微粒子とが防眩層中で特定の状態で分布しているためであると推測される。
この場合の有機微粒子と無機微粒子・無機成分の粒子径は、有機微粒子のほうが大きいものが好ましい。
無機微粒子・無機成分は、有機微粒子の平均粒径の、10%以下の平均粒子径であることが好ましい。なお、上記は、無機微粒子や無機成分の形状が球状あるいは不定形で長径/短径が5未満である場合であって、形状が不定形で長径/短径が5以上、層状の薄片状態の場合にはこの限りではなく、有機微粒子よりも大きくても小さくてもよい。
【0064】
上記無機微粒子・上記無機成分は、凝集体を形成して上記防眩層中に粗密に含有されたものを有することが好ましい。上記無機微粒子・上記無機成分の凝集体が防眩層中で粗密に分布していることで、該防眩層の表面に凹凸形状の凸部以外の面状態が好適に形成されるため好ましい。このような面状態であることで、上記低屈折率層を積層した場合、耐擦傷性を向上させるため、低屈折率層表面の任意の5μm四方領域における平坦性を良好にしやすいからである。
上記「防眩層中で粗密に分布している」とは、上記防眩層には、上記無機微粒子・上記無機成分の凝集体が密に分布している領域と、上記無機微粒子・上記無機成分の凝集体が粗に分布している領域とが複数存在していることを意味する。すなわち、上記防眩層中に、上記無機微粒子・上記無機成分の凝集体は、不均一に分散している。
なお、本明細書において、電子顕微鏡(TEM、STEM等の透過型が好ましく、例えば上述した観察条件を用いられる)にて倍率1万倍の条件で防眩層の厚み方向の任意の断面を観察したときの1画面内において、2μm四方の観察領域に占める無機微粒子・上記無機成分の凝集体の面積割合が5%以上である領域を「無機微粒子・上記無機成分の凝集体が密に分布している領域」と定義し、2μm四方の観察領域に占める無機微粒子・上記無機成分の凝集体の面積割合が1%未満である領域を「無機微粒子・上記無機成分の凝集体が粗に分布している領域」と定義する。
また、上記無機微粒子・上記無機成分の凝集体が密に分布している領域、若しくは、無機微粒子・上記無機成分の凝集体が粗に分布している領域、すなわち、上記電子顕微鏡にて倍率1万倍の条件で観察する領域は、例えば、3000倍程度の倍率の低い条件で、防眩層の厚み方向の断面の無機微粒子の分布状態を電子顕微鏡観察することで、選び出すことができる。
なお、このような無機微粒子・無機成分の凝集体の分布は、上記防眩層の厚み方向の断面電子顕微鏡観察にて容易に判別することができる。また、上記無機微粒子・上記無機成分の凝集体の面積割合は、例えば、画像解析ソフトを用いて算出することができる。
画像解析ソフトとしては、例えば、三谷商事(株)製の商品名:WinRoofが挙げられる。倍率1万倍の条件で観察する2μm四方の領域の画像をこのソフトで2値化して算出できる。
【0065】
上記無機微粒子は、表面処理されていることが好ましい。上記無機微粒子が表面処理されていることで、該無機微粒子の凝集体の上記防眩層中での粗密に分布する程度を好適に制御することができ、また、有機微粒子の周囲に密に分布する効果を適度な範囲に制御できる。また、無機微粒子自体の耐薬品性及び耐ケン化性の向上を図ることもできる。
【0066】
上記表面処理としては、疎水化処理であることが好ましく、例えば、上記無機微粒子を、アルキル基を有するシラン化合物等の疎水化剤で処理する方法等が挙げられる。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、上記アルキル基を有するシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルシラノール、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ここで、上記無機微粒子の好ましい材料としては、例えば、シリカ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、チタン酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、硼素酸化物、スズ酸化物、リン酸化物、インジウムスズ酸化物、ジルコニウム酸化物、などが挙げられ、特に上記無機微粒子としてシリカ微粒子は汎用性がある。
通常、シリカ微粒子の表面には水酸基(シラノール基)が存在しているが、上記表面処理がされることで上記シリカ微粒子表面の水酸基が少なくなり、上記シリカ微粒子が過度に凝集することを防止でき、上述した効果が発揮される。
また、上記疎水化剤の種類により上記シリカ微粒子表面の疎水化度を調整して、上記シリカ微粒子の凝集を制御することも好ましく、例えば、アルキル基を有するシラン化合物のアルキル鎖を長くすることで、該アルキル基を有するシラン化合物による立体障害の影響が大きくなり、その結果、上記シリカ微粒子表面の疎水化度を下げることができる。
【0067】
また、上記シリカ微粒子は、非晶質シリカからなることが好ましい。上記シリカ微粒子が結晶性シリカからなる場合、その結晶構造中に含まれる格子欠陥により、シリカ微粒子のルイス酸性が強くなってしまい、上述したシリカ微粒子の過度の凝集を制御できなくなることがある。
【0068】
このようなシリカ微粒子としては、それ自身が凝集しやすく後述する凝集体を形成しやすいことから、例えば、フュームドシリカが好適に用いられる。ここで、上記フュームドシリカとは、乾式法で作製された200nm以下の粒径を有する非晶質のシリカをいい、ケイ素を含む揮発性化合物を気相で反応させることにより得られる。具体的には、例えば、ケイ素化合物、例えば、SiCl4を酸素と水素の炎中で加水分解して生成されたもの等が挙げられる。具体的には、例えば、AEROSIL R805(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0069】
上記シリカ微粒子の含有量としては特に限定されないが、上記防眩層中0.1~5.0質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、上述した有機微粒子の周囲に密な分布を充分に形成できないことがあり、耐擦傷性を向上に好ましい防眩層の表面状態を形成しにくい場合があり、5.0質量%を超えると、凝集体が過度に生じて内部拡散が生じるため、透明性が低下し、白っぽく見える問題が生じることがある。より好ましい下限は0.5質量%、より好ましい上限は3.0質量%である。
【0070】
上記シリカ微粒子は、平均粒子径が1~100nmであることが好ましい。1nm未満であると、有機微粒子の周囲に密な分布を充分に形成できないことがあり、100nmを超えると、上記有機微粒子の周囲に密な分布を充分に形成できないことがある。より好ましい下限は5nm、より好ましい上限は50nmである。
なお、上記シリカ微粒子の平均粒子径は、断面電子顕微鏡(TEM、STEM等の透過型で倍率は1~10万倍以上が好ましい)の画像から、目視観察にてランダムに50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値から求めることができる。また、上記画像から、画像処理ソフトウェア(例えば、三谷商事(株)製の商品名WinRoof等)を用いても測定することができる平均値である。どちらの方法であっても、断面観察画像を用いているため、ほぼ同じ測定結果が得られる。
【0071】
また、上記シリカ微粒子の凝集体は、上記防眩層中で上述したシリカ微粒子が数珠状(真珠のネックレス状)に連なった構造を形成していてもよい。
上記防眩層中で上記シリカ微粒子が数珠状に連なった凝集体を形成していることで、後述するように好適に上記防眩層の表面凹凸形状の凸部以外の面状態を好適に形成することができる。
なお、上記シリカ微粒子が数珠状に連なった構造とは、例えば、上記シリカ微粒子が直線状に連続して連なった構造(直鎖構造)、該直鎖構造が複数絡み合った構造、上記直鎖構造にシリカ微粒子が複数連続して形成された側鎖を1又は2以上有する分岐構造等、任意の構造が挙げられる。
【0072】
また、上記シリカ微粒子の凝集体は、平均粒子径が100nm~2μmであることが好ましい。100nm未満であると、後述する硬化収縮による凝集体の凹凸形成の緩衝作用が充分に発揮できないことがあり、2μmを超えると、上記有機微粒子の周囲に密な分布を充分に形成できないことがあるほか、シリカ微粒子の凝集体により光が拡散されたり、凝集体により生じる表面凹凸が大きくなり過ぎることで、画像表示装置の明室及び暗室コントラストが劣ったりすることがある。上記凝集体の平均粒子径のより好ましい下限は200nm、より好ましい上限は1μmである。凝集体は、形が定まらないため、2μm、1μmとは、その凝集体の長径である場合が多い。
なお、上記シリカ微粒子の凝集体の平均粒子径は、断面電子顕微鏡による観察(1万~2万倍程度)からシリカ微粒子の凝集体が多く含まれる5μm四方の領域を選び、その領域中のシリカ微粒子の凝集体の粒子径を測定し、最大のものを除いた上位5つのシリカ微粒子の凝集体の粒子径を平均したものである。なお、上記「シリカ微粒子の凝集体の粒子径」は、シリカ微粒子の凝集体の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。また、上記シリカ微粒子の凝集体の粒子径は、画像解析ソフトを用いて算出してもよい。
【0073】
また、上記シリカ微粒子は、上記防眩層中に含有される有機微粒子の周囲に凝集体を形成して密に分布していることが好ましい。
なお、上記シリカ微粒子の凝集体は、上述したように、上記防眩層中で粗密に含有されていることが好ましく、上記防眩層には、上記有機微粒子の周囲に多数のシリカ微粒子の凝集体が存在している領域と、上記シリカ微粒子の凝集体のみが密に分布している領域とが形成されていることが好ましい。例えば、有機微粒子の周囲にシリカ微粒子の凝集体が密に分布している状態は、上記防眩層の断面の電子顕微鏡観察により容易に確認することができる。
ここで、上記防眩層の断面を電子顕微鏡観察した場合、上記有機微粒子の周囲に密に分布したシリカ微粒子の凝集体は、有機微粒子の中心を通る断面だけではなく、該有機微粒子の中心からずれた断面においても密に分布している状態が観察される。
なお、上記「有機微粒子の周囲に上記シリカ微粒子の凝集体が密に分布している」とは、電子顕微鏡(TEM、STEM等の透過型が好ましい)にて倍率2万倍の条件で防眩層の厚み方向の上記有機微粒子が観察される断面を顕微鏡観察したときに、上記有機微粒子から200nm外側の円周内でかつ上記有機微粒子を除いた領域に占めるシリカ微粒子の凝集体の面積割合が10%以上である状態を意味する。
【0074】
シリカ微粒子の凝集体と有機微粒子とが防眩層に含有されていることで、防眩層の上に上記低屈折率層を積層した場合、低屈折率層表面の肌理が良好で、特定領域範囲のRaとRzが制御できる形状とすることができ、耐擦傷性を向上させるため好ましい。このような形状にできるのは、以下に挙げる理由によるものと推測される。
すなわち、防眩層用組成物を塗布後、乾燥して溶剤が蒸発する際、バインダー樹脂の粘度が低い場合にはバインダー樹脂が有機微粒子の形状に追随した状態になりやすい。更に、バインダー樹脂が多官能モノマーのみであった場合には硬化するときに体積が収縮する場合があるが、ポリマー状態である有機微粒子は収縮することが無いため、バインダー樹脂のみが収縮することにより、例えば有機微粒子が2個以上凝集した場所に対応する位置の表面に形成される比較的大きな凸部が急な傾斜になり、かつ、そのような凹凸形状の土台となるような比較的大きいの凸部と凸部の合間に、単独で存在する有機微粒子などをきっかけとする小さな凸部も生じやすい場合がある。
しかしながら、有機微粒子の周りにシリカ微粒子の凝集体が密に分布することにより、上記防眩層用組成物の有機微粒子周りの粘度が上昇し、溶剤が蒸発する際、バインダー樹脂が有機微粒子の形状に追随し難く、また、その部分のバインダー(バインダー樹脂とシリカ微粒子からなる)は硬化収縮し難くなり、さらには、シリカ微粒子は凝集体になるときは、バインダー樹脂を含んで疎に凝集しているため、硬化収縮に対する緩衝作用をも有しているので、結果として、数個以上集合した有機微粒子の凝集体に対応する位置の表面に形成される比較的大きな凸部の急な傾斜は抑えられると共に、単独(または比較的大きな凸を形成する微粒子の凝集体よりも小さな凝集体)で存在する有機粒子の周囲には上記緩衝作用を有するものが存在するため、比較的大きいの凸部と凸部の合間、つまり凸部以外の面が平坦性の高い面状態になってくる。
このため、上記有機微粒子により防眩層の表面に形成される凹凸形状の凸部以外の面の状態が、好ましいもの制御しやすいと推測される。シリカ微粒子を例にとって上記理由を記載したが、シリカ微粒子だけに限らず、その他の上記無機微粒子・上記無機成分を上記有機微粒子と併用した場合も、無機微粒子・無機成分の凝集体が形成され、同様なメカニズムで良好な防眩層の表面形状を形成できると考えている。
なお、上述したように、有機微粒子だけを含む防眩層組成物であっても、バインダー樹脂の粘度や膜厚制御などによって、好適な表面状態を持つ防眩層は形成できる。
有機微粒子だけを含む防眩層組成物と、有機微粒子以外に無機微粒子・無機成分を含む防眩性組成物を比較した場合、後者材料系のほうが、バインダー樹脂自身の固有物理物性によらず、組成物粘度などを自由にアレンジできるため、様々な表面形状設計が可能である点ではよりよいといえる。
【0075】
また、上記防眩層において、上記有機微粒子及びシリカ微粒子は、単粒子状態での形状が球状であることが好ましい。上記有機微粒子及びシリカ微粒子の単粒子がこのような球状であることで、画像表示装置に適用した場合、高コントラストの表示画像を得ることができる。
なお、上記「球状」とは、例えば、真球状、楕円球状等が挙げられ、いわゆる不定形を除く意味である。
【0076】
上記有機微粒子は、主に防眩層の表面凹凸形状を形成する微粒子であり、屈折率や粒径の制御が容易な微粒子である。このような有機微粒子を含むことで、防眩層に形成される凹凸形状の大きさの制御が容易となる。また、上記有機微粒子とバインダー樹脂との屈折率差の制御が容易であるため、防眩性の制御及び透明性を維持し、白っぽさの発生を抑制することができる。
【0077】
上記有機微粒子の含有量としては、上記防眩層中0.5~10.0質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、防眩性能が不充分となることがあり、10.0質量%を超えると、耐擦傷性を向上できる防眩層の表面状態が得られにくい場合があり、また、透明性が低下し、白っぽく見える問題が生じることがあり、また、画像表示装置に用いた場合に表示画像のコントラストに劣ることがある。より好ましい下限は1.0質量%、より好ましい上限は8.0質量%である。
【0078】
また、上記有機微粒子の大きさは、防眩層の厚さ等に合わせて適宜決定されるが、例えば、平均粒子径が0.3~5.0μmであることが好ましい。0.3μm未満であると、有機微粒子の分散性が制御できなくなる恐れがあり、5.0μmを超えると、防眩層表面の凸形状が大きくなって、耐擦傷性を向上できる防眩層の表面状態が得られにくい場合がある。より好ましい下限は1.0μm、より好ましい上限は3.0μmである。
また、上記有機微粒子の平均粒子径は、防眩層の厚さに対して20~60%であることが好ましい。60%を超えると、有機微粒子は塗膜層表面に突出し、また有機微粒子により生じる凸が大きすぎるものとなる恐れがある。20%未満であると、充分な凸形状を防眩層表面に形成できなくなって、防眩性能が不充分となることがある。
なお、上記防眩層中の有機微粒子の平均粒径は、防眩層の透過光学顕微鏡観察において、粒子の最大径を平均した値として求められる。この場合は、2cm四方程度の光学積層体をスライドガラスにテープ等で固定し、異物、傷等がない均質面と考えられる部位3箇所を200~500倍で観察し、その視野内に見える15個の粒子の最大径を計測、算術平均した値として求められる。
もしくはそれが不適な場合は、粒子中心近傍を通る断面の電子顕微鏡(TEM、STEM等の透過型が好ましい)観察において、任意の同じ種類で、ほぼ同じ位の粒径として観察される拡散粒子30個選択して(粒子のどの部位の断面であるか不明であるためn数を増やしている)その断面の最大粒径を測定し、その平均値として算出される値である。いずれも画像から判断するため、画像解析ソフトにて算出してもよい。
なお、防眩層に用いられる粒子の粒径の場合は、上記重量平均径と顕微鏡等で観察した径は、大きく変わらない。
例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)のSEM機能を用い、1000~20000倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、撮像した粒子のうち任意の30個を選択して最大粒径を測定し、その算術平均値として求められる。測定条件としては、例えば、信号選択を「SE」、加速電圧を「5kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」等にすることができるが、この限りではない。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。
【0079】
なお、上記防眩層には、無機成分の中で、特に膨潤性粘土のような粘土系無機成分を含有させることでも、凸形状、凸部以外の防眩層の表面状態の調整を容易にすることができる。
【0080】
上記膨潤性粘土は、陽イオン交換能を有し、該膨潤性粘土の層間に水を取り込んで膨潤するものであればよく、天然物であっても合成物(置換体、誘導体を含む)であってもよい。また、天然物と合成物との混合物であってもよい。
上記膨潤性粘土としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト、微粉珪酸、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、微粉タルク、酸化チタン、珪藻土、スメクタイト、カオリンクレー等を挙げることができる。これらの膨潤性粘土は、1種を使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。
【0081】
上記膨潤性粘土の含有量は、上記バインダー樹脂の固形分100質量%に対して、0.1~10質量%含有されることが好ましく、0.2~5質量%含有されることがより好ましい。上記膨潤性粘土の含有量が0.1質量%では、未添加の場合と粘度の変化が少ないため、凸部以外の防眩層の表面状態を制御する効果が足りないことがある。上記膨潤性粘土の含有量が10質量%を超えると、粘度が高すぎるためにコーティング適正が不足することがある。
【0082】
上記防眩層は、上記膨潤性粘土無機成分を用いた場合においても、有機微粒子や、無機微粒子、その他の無機成分をそれぞれ混合させて含有することができる。
上記有機微粒子、無機微粒子・その他の無機成分を上記膨潤性粘土無機成分と共に含有することにより、防眩層表面に形成される比較的大きな凸部以外の防眩層の表面状態を好適に多様に制御することができる。
上記有機微粒子、無機微粒子・その他の無機成分としては、上述した防眩剤で例示されたものと同様のものを用いることができる。
【0083】
上記バインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、電離放射線硬化型樹脂が好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂」とは、特に言及しない限り、モノマー、オリゴマー、ポリマー等も包含する概念である。
【0084】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系等の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート)等の多官能化合物等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。また、本発明では、上記電離放射線硬化型樹脂として、上述した化合物をPO、EO等で変性したものも使用できる。
【0085】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0086】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、防眩層を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。
上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0087】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0088】
上記防眩剤及びバインダー樹脂を含有する防眩層は、例えば、防眩剤、バインダー樹脂のモノマー成分及び溶剤を含有する防眩層用組成物を、光透過性基材上に塗布し、乾燥させて形成した塗膜を電離放射線照射等により硬化させることで形成することができる。
【0089】
上記防眩剤の粒子径及び含有量、上記バインダー樹脂の含有量としては、特に限定されず、後述する防眩層の表面の形状を、低屈折率層を積層した折に耐擦傷性が向上する面状態を満たすように、適宜調整すればよい。
【0090】
上記防眩層用組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
【0091】
上記防眩層用組成物は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては特に限定されず、上記低屈折率層用組成物において説明した光重合開始剤と同様のものが挙げられる。上記光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記防眩層用組成物は、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0092】
上記防眩層用組成物における上記光重合開始剤の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して、0.5~10.0質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、形成する防眩層のハードコート性能が不充分となることがあり、10.0質量部を超えると、逆に硬化を阻害する可能性も出てくるため、好ましくない。
【0093】
上記防眩層用組成物中における原料の含有割合(固形分)としては特に限定されないが、通常は5~70質量%、特に25~60質量%とすることが好ましい。
【0094】
上記防眩層用組成物は、レベリング剤を含有することが好ましい。
上記レベリング剤としては、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、シリコーン・フッ素原子含有系レベリング剤等が挙げられ、単独で用いても、併用してもよい。好ましくはフッ素系レベリング剤、シリコーン・フッ素原子含有系レベリング剤が挙げられる。
上記防眩層用組成物は、上記レベリング剤としてフッ素系またはシリコーン系などのレベリング剤を含有することが好ましい。
上記防眩層用組成物がレベリング剤を含有することにより、防眩層がベナードセル構造となることを好適に回避することができる。溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、乾燥する場合、塗膜内において塗膜表面と内面とに表面張力差等を生じ、それによって塗膜内に多数の対流が引き起こされる。この対流により生じる構造はベナードセル構造と呼ばれ、形成する防眩層にゆず肌や塗工欠陥といった問題の原因となる。
また、上記ベナードセル構造は、防眩層の表面の凹凸が大きくなりすぎて透明性が低下し白っぽくなったり、表示装置内部からの透過光が防眩層の凹凸をきっかけとして歪み、画像のところどころできらきらと見えるシンチレーションを生じるなどの悪影響を及ぼす。前述のようなレベリング剤を用いると、この対流を防止することができるため、欠陥やムラのない凹凸膜が得られるだけでなく、凹凸形状の調整も容易となる
また、上記防眩層用組成物に含有されるレベリング剤は、上記低屈折率層用組成物を塗布する際に、該低屈折率組成物に移動してしまい、上記低屈折率層用組成物との相溶性や、上記低屈折率層用組成物に含有されるレベリング剤や防汚剤等の成分との相性に問題がある場合には、後述する低屈折率層に含有される中空状シリカ等の配列が乱され、低屈折率層表面に形成される凹凸形状が大きくなってしまう場合がある。
そのような場合には、上記防眩層用組成物に、非反応性のレベリング剤を含有することが好ましい。
上記非反応性のレベリング剤は、後述する低屈折率層用組成物との相溶性や、上記低屈折率層用組成物に含有されるレベリング剤や防汚剤等の成分との相性において問題となりにくいので、低屈折率層表面に好適な凹凸形状を形成することができる。
【0095】
上記非反応性のレベリング剤としては、親油性基含有オリゴマーのものが好適に用いられる。
上記非反応性のレベリング剤の含有量としては、上記防眩層中のバインダー樹脂100質量部に対して0.025~0.50質量部であることが好ましい。
上記非反応性のレベリング剤の含有量が、0.025質量部未満であると、レベリング力不足で外観ムラが生じることがあり、上記非反応性のレベリング剤の含有量が0.50質量部を超えると、塗液が泡立ちやすくなり欠点の原因となることがある。
上記非反応性のレベリング剤の含有量のより好ましい下限は0.050質量部であり、より好ましい上限は0.20質量部である。
【0096】
上記防眩層用組成物は、レベリング剤として、上記非反応性のレベリング剤のみを含有することが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他のレベリング剤を含んでいてもよい。
【0097】
上記防眩層用組成物には、防眩層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0098】
また、上記防眩層用組成物は、光増感剤を混合して用いてもよく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホソフィン等が挙げられる。
【0099】
上記防眩層用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0100】
上記防眩層用組成物を光透過性基材上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の方法を挙げることができる。
上記の方法のいずれかで防眩層用組成物を塗布した後、形成した塗膜を乾燥させるために加熱されたゾーンに搬送され各種の公知の方法で塗膜を乾燥させ溶剤を蒸発させる。ここで溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、有機微粒子及びシリカ微粒子の凝集体の分布状態を調整できる。
特に、乾燥条件の選定によって有機微粒子及びシリカ微粒子の凝集体の分布状態を調整する方法が簡便で好ましい。具体的な乾燥温度としては、30~120℃、乾燥風速では0.2~50m/sであることが好ましく、この範囲内で適宜調整した乾燥処理を、1回又は複数回行うことで有機微粒子及びシリカ微粒子の凝集体の分布状態を所望の状態に調整することができる。
【0101】
また、上記乾燥後の塗膜を硬化させる際の電離放射線の照射方法としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を用いる方法が挙げられる。
また、紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0102】
上記防眩層の厚さとしては、2.0~15.0μmであることが好ましい。2.0μm未満であると、防眩層表面が傷付きやすくなることがあり、15.0μmを超えると、防眩層が割れやすくなることがある。上記防眩層の厚さのより好ましい範囲は2.0~7.0μm、更に好ましくは上限が5.0μmである。なお、上記防眩層の厚さは、SEMや光学顕微鏡等の断面顕微鏡観察により測定することができる。
観察により、異物、傷等のない任意の5点を計測した算術平均値として算出できる。
【0103】
本発明の光学積層体は、また、本発明の効果が損なわれない範囲内で、必要に応じて、防眩層及び低屈折率層が積層されていない光透過性基材上の面、上記低屈折率層の上面、又は、光透過性基材と防眩層との間に、機能性層(帯電防止層、防汚層、接着剤層、反射防止層、他のハードコート層等)の1層又は2層以上を適宜形成することができる。なかでも、帯電防止層及び防汚層のうち少なくとも一層を有することが好ましい。これらの層は、公知の反射防止用積層体と同様のものを採用することもできる。
なお、本発明の光学積層体は、上述の通り低屈折率層の上に防汚層などの機能層が積層されていてもよいが、該機能層は、耐擦傷性や反射防止性等の光学特性を損なわない程度の極薄膜である。なお、上記極薄膜とは、例えば、膜厚が35nm以下で薄いほどよい薄膜である。
すなわち、本発明の光学積層体は、上述した低屈折率層を必須の構成とするが、このような低屈折率層を有する本発明の光学積層体により得られるあらゆる物性は、上記極薄膜の機能層が積層されていても同じ性能を示すものである。
よって、本発明の光学積層体の実質の空気界面とは、低屈折率層ではない場合もある。
【0104】
また、本発明の光学積層体は、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。85%未満であると、透明性が不足し、本発明の光学積層体を画像表示装置の表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、90%以上であることがより好ましく、91%以上であることが更に好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K7361に従い、村上色彩技術研究所社製「HM-150」等で測定できる。
更に、本発明の光学積層体は、防眩層の上に低屈折率層を有する反射防止フィルムである。防眩層があるだけでも、周囲の物品が映りこむことを良好に防止でき、その上に低屈折率層があることにより、透明性が向上し、画像や文字が鮮明に見える効果を有する。また、単なる5°正反射率(%)ではなく、人間が目で感じる明度として算出される視感反射率(%)として制御することで、より好ましい光学積層体とすることができる。本発明において好ましい視感反射率(%)は、3.0%以下であり、低ければ低いほど好ましく、2.0%以下、更には1.0%以下であることが望ましい。物理的強度を維持する場合には、約0.1%といったほとんど無反射とすることは困難性があるため、本発明の光学積層体の好ましい範囲としては、0.3%~1.8%以下、1.5%以下、最も好ましいのは1.0%以下である。
上記視感反射率(%)は、例えば、分光反射率測定器(島津製作所社製、商品名:UV-2450)等を用いて、5°正反射率を380~780nmまでの波長範囲で測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト(装置内蔵)で算出して求めることができる。
【0105】
また、本発明の光学積層体は、ヘイズが15%未満であることが好ましい。上記防眩層は、含有する微粒子による内部拡散による内部ヘイズ及び表面の凹凸形状による外部ヘイズからなってよく、内部拡散による内部ヘイズは、0%以上10%未満の範囲であることが好ましく、0%以上7%未満の範囲であることがより好ましく、0%以上5%未満の範囲であることが更に好ましい。表面の外部ヘイズは、0%以上5%未満の範囲であることが好ましく、0%以上3%未満の範囲であることがより好ましく、0%以上1%未満の範囲であることが更に好ましい。
また、上記内部ヘイズは、以下のように求められる。
光学積層体の低屈折率層の表面にある凹凸上に、表面凹凸を形成する樹脂と屈折率が等しいか屈折率差が0.02以下である樹脂をワイヤーバーで乾燥膜厚が8μm(完全に表面の凹凸形状がなくなり、表面が平坦とできる膜厚とする)となるように塗布し、70℃で1分間乾燥後、100mJ/cm2の紫外線を照射して硬化する。これによって、表面にある凹凸がつぶれ、平坦な表面となったフィルムが得られる。ただし、この凹凸形状を有する防眩層を形成する組成物中にレベリング剤等が入っていることで、上記防眩層の表面に塗布する樹脂がはじきやすく濡れにくいような場合は、あらかじめ防眩層の表面をケン化処理(2mol/LのNaOH(又はKOH)溶液で55℃、3分浸した後、水洗し、キムワイプ(登録商標)等で水滴を完全に除去した後、50℃オーブンで1分乾燥)により、親水処理を施すとよい。
この表面を平坦にしたフィルムは、表面凹凸をもたないので、内部ヘイズだけを持つ状態となっている。このフィルムのヘイズを、JIS K-7136に従ってヘイズと同様な方法で測定することで、内部ヘイズを求めることができる。
また、上記外部ヘイズは、(ヘイズ-内部ヘイズ)として求めることができる。
簡易的には、表面凹凸を形成する樹脂よりも低屈折率の粘着層を持つ光学用透明粘着フィルムを上記樹脂層の代わりとして算出することも出来る。その時には、あらかじめ、該光学用透明粘着フィルムのヘイズを測定しておき、内部ヘイズから差し引くとよい。
【0106】
本発明の光学積層体は、コントラスト比が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。80%未満であると、本発明の光学積層体をディスプレイ表面に装着した場合において、暗室コントラストに劣り視認性を損なう恐れがある。なお、本明細書における、上記コントラスト比は、以下の方法により測定された値である。すなわちバックライトユニットとして冷陰極管光源に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板(サムスン社製 AMN-3244TP)を用い、該偏光板をパラレルニコルに設置したときに通過する光の輝度のLmaxを、クロスニコルに設置したときに通過する光の輝度のLminで割った値(Lmax/Lmin)をコントラストとし、光学積層体(光透過性基材+防眩層等)のコントラスト(L1)を、光透過性基材のコントラスト(L2)で割った値(L1/L2)×100(%)をコントラスト比とする。
なお、上記輝度の測定は暗室下で行う。上記輝度の測定には、色彩輝度計(トプコン社製 BM-5A)を用い、色彩輝度計の測定角は、1°に設定し、サンプル上の視野φ5mmで測定する。また、バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が3600cd/m2になるように設置する。
【0107】
また、本発明の光学積層体は、60°グロス値の好ましい下限が100、より好ましい下限が105、更に好ましい下限が110であり、好ましい上限が160、より好ましい上限が150である。上記60°グロスは、精密光沢度計GM-26PRO(株式会社村上色彩技術研究所)などにより、JIS Z 8741に準拠しグロス(%)を求めた。サンプルの大きさは5cm×10cmで、サンプルの裏面(防眩層のない面)を空気吸引法により黒板に密着させて測定する。
図3は、JIS Z 8741に準拠したグロスの測定方法(角度)を説明する図である。
図3に示すように、60°とは、斜め角度から視認した場合の防眩性を確認するイメージである。つまり、60°グロスによって、大画面になった場合も視野角によらず、好ましい防眩性を制御できる。
更に、本発明の光学積層体は、20°グロスの好ましい下限が70、より好ましい下限が75、更に好ましい下限が80であり、好ましい上限が150、より好ましい上限が120、更に好ましい上限が100である。
図3に示すように、20°とは、画面を正面(すなわち、画面に対して垂直となる角度から20°)から視認した場合の防眩性を確認するイメージであり、TVやモニターが大画面でも小画面でも特に気にする角度で、ここは好ましい防眩性であることが重要である。よってこのグロスを制御することで、標準として備えていることが好ましい防眩性を制御できる。この画面正面方向とは、視認する人物自身が映りこむ可能性が高い角度範囲であるため、上記斜め方向から視認した60°グロス値よりも正面方向の20°グロス値が小さくなるような表面形状が好ましい。グロス値が低いほうが、防眩性が高く映りこみしにくいことを意味する。但し、優れた反射防止性能と高透明性のある光学積層体とするためには、斜め方向の60°グロスに対する、正面方向の20°グロスの防眩性割合(%)は、65%~95%が好ましい。65%よりも小さい場合は正面防眩性が強すぎる傾向があり、透明性が低下し、95%よりも大きい、つまりは20°と60°グロスとがほぼ同じ場合には、正面防眩性が低すぎる傾向があり、観察する人物自身の映りこみが気になる可能性がある。
上記した20°グロスの好ましい範囲と、60°グロスの好ましい範囲を同時に満たすことで、本発明の光学積層体は、優れた防眩性能を有するものとなる。
また、上記した反射率(視感反射率)と、全光線透過率と、20°グロス、60°グロスを同時に好ましい範囲とすることによって、特に、50インチ以上の大画面や動画を見るモニターなどのディスプレイの視認性が視野角によることなく非常に良いため、本発明の光学積層体の防眩層/低屈折率層の防眩性として好ましい。本発明の光学積層体は、このようなどの角度から見ても視認しやすい光学特性と共に、優れた耐擦傷性を有するため、近年多用される大画面デジタルサイネージなどに非常に適しているといえる。
本発明においては、グロスの単位(%)記載は省略している。
【0108】
本発明の光学積層体の、低屈折率層が積層されている側とは反対側の光透過性基材面に、粘着剤層等を介して、カバーガラス、フィルム、あるいは偏光素子、表示素子等の他の部材が更に積層されている場合は、光学積層体のグロス、反射率(視感反射率)、全光線透過率、ヘイズ、コントラスト比等の光学特性は、該粘着剤層及び部材を剥離して取り除いたり、粘着剤層等の膜厚をなるべく薄くする前処理をしたりした後に測定してもよい。
一方、光学積層体の低屈折率層表面側のナノインデンテーション硬さ等の機械特性、並びに防眩層中の微粒子の粒径等については、該低屈折率層が他の部材の表面に積層されていれば、上記前処理を行わずに直接測定することができる。
【0109】
<大きさ、形状等>
本発明の光学積層体は、所定の大きさにカットした枚葉状の形態でもよいし、長尺シートをロール状に巻き取ったロール状の形態であってもよい。
また、上記枚葉の大きさは特に限定されないが、最大径が2~500インチ程度である。「最大径」とは、光学積層体の任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、光学積層体が長方形の場合は、該領域の対角線が最大径となる。また、光学積層体が円形の場合は、直径が最大径となる。
また、本発明の光学積層体がロール状の形態である場合、ロール状に巻き取られる長尺シートの幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は300~3000mm、長さは50~5000m程度である。ロール状の形態の本発明の光学積層体は、表示装置等の大きさに合わせて、枚葉状にカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しないロール端部等は除外することが好ましい。
また、枚葉の形状も特に限定されず、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形等)や円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。より具体的には、本発明の光学積層体が四角形状である場合には、縦横比は表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、3:4、10:16、9:16、1:2等が挙げられるが、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。
【0110】
また、本発明の光学積層体は、更に偏光素子や位相差フィルム等の他の光学部材を有していてもよい。例えば、本発明の光学積層体として、光透過性基材の少なくとも一方の面に上述した防眩層等を有し、さらに偏光素子を有するものが挙げられる。上記偏光素子は、少なくとも一方の面に偏光素子保護フィルムを有していてもよい。
本発明の光学積層体が偏光素子を有する場合、その層構成としては、偏光素子の少なくとも一方の面に光透過性基材及び防眩層等が順に積層された構成が挙げられる。具体的には、偏光素子の一方の面に光透過性基材及び防眩層等が順に積層され、他方の面に偏光素子保護フィルムが積層されている構成や、偏光素子の両面に偏光素子保護フィルムが積層され、一方の偏光素子保護フィルム上に光透過性基材及び防眩層等が順に積層された構成等が挙げられる。これらの光学積層体は、通常、防眩層等側の面が出光面になる。
上記偏光素子を有する光学積層体は、偏光板として用いることもできる。このような偏光板もまた、本発明の一つである。
すなわち、本発明は、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に本発明の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。
【0111】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明の光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材(トリアセチルセルロースフィルム)にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0112】
本発明の光学積層体又は偏光板は、ディスプレイパネル、並びに、画像表示装置として好適に用いることができる。
本発明は、本発明の光学積層体、又は、本発明の偏光板を備えることを特徴とするディスプレイパネルでもある。
また、本発明は、本発明の光学積層体、又は、本発明の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
上記ディスプレイパネルとは、ディスプレイの視聴者側部材である。液晶ディスプレイを例に説明すると、ディスプレイパネルとは、液晶材を閉じ込めた2枚のガラス板(例えば、カラーフィルタ基板とアレイ基板)、偏光素子等(偏光素子と偏光素子保護フィルム等)、及び、本発明の光学積層体等からなる部材である。
【0113】
本発明の光学積層体は、液晶表示装置等の画像表示装置の構成部材として用い、かつ、光学積層体の防眩層等の上面が観察者側(画像表示装置の出光面側)を向くように配置して用いることが好ましい。更には、画像表示装置の表面に本発明の光学積層体を設置し、かつ、本発明の光学積層体の防眩層等の上面が観察者側(表示装置の出光面側)を向くように配置して用いることが好ましい。
【0114】
本発明の光学積層体と、偏光素子とをそれぞれ表示装置の大きさに合わせてカットした枚葉の状態としてから貼り合わせてもよく、ロール状の部材同士を貼り合わせてもよい。ロール状の部材同士を貼り合わせた場合は、その後に表示装置の大きさに合わせてカットしてもよい。
なお、本発明の光学積層体を液晶表示装置等の表示装置に適用する場合は、枚葉状又はロール状の形態の光学積層体を後述する表示素子等と貼り合わせた後に、表示装置の大きさに合わせてカットしてもよい。カットする際、物性が安定しないロール端部等は除外することが好ましい。
【0115】
[画像表示装置]
本発明の光学積層体を設置した画像表示装置は、前述した本発明の光学積層体又は本発明の偏光板を備えたものであることを特徴とする。本発明の効果をより有効に得る観点から、画像表示装置は、液晶表示素子、プラズマ表示素子、有機EL表示素子等の表示素子の観察者側(画像表示装置の出光面側)に前述した本発明の光学積層体又は偏光板を備えたものであることが好ましい。より詳細には、表示素子の観察者側の表面に前述した本発明の光学積層体又は偏光板を備え、かつ、該光学積層体又は偏光板の防眩層等の上面(凹凸形状を有する面)が観察者側となるよう配置された画像表示装置であることが好ましい。
上記画像表示装置の大きさは特に限定されないが、最大径が2~500インチ程度である。「最大径」とは、表示装置の任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、表示装置が長方形の場合は、該領域の対角線が最大径となり、円形の場合は、直径が最大径となる。
【0116】
上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、マイクロLEDディスプレイ、CRT、タブレットPC、タッチパネル、電子ペーパー等の画像表示装置であってもよい。
【0117】
上記の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0118】
本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側から照射される。なお、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0119】
上記画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極および、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0120】
上記画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRT等の画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0121】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、電子ペーパー、タッチパネル、タブレットPC等のディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FED、タッチパネル等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。また、フォルダブル、ベンダブル、又は、ローラブルの画像表示装置やタッチパネルにおける画像表示面にも好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0122】
本発明の光学積層体は、上述した構成からなるものであるため、優れた耐擦傷性を有する光学積層体とすることができる。また、好適な防眩性と優れた透明性とを有している。
このため、本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機又は無機ELD)、マイクロLEDディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー等の高精細画像用のディスプレイ表面に好適に適用することができる。また、フォルダブル、ベンダブル、又は、ローラブルの画像表示装置やタッチパネルにおける画像表示面にも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】ナノインデンテーション法を説明する図であり、(a)は、圧子を試料に圧入又は除荷する様子を示す模式図であり、(b)は、圧入荷重-圧入深さ曲線の一例を示すグラフである。
【
図2】Berkovich圧子の一例を示す模式図である。
【
図3】JIS Z 8741に準拠したグロスの測定方法(角度)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0124】
本発明の内容を下記の実施例により説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0125】
以下のように、実施例及び比較例に係る光学積層体を製造し、それぞれの物性測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示す。全ての測定や評価では、サンプルの皺や汚れのない部分を用い、また、製造サンプルの端部ではなく、比較的安定な塗膜と考えられる中央部付近から測定サンプルとしている。
【0126】
<第1の本発明の光学積層体>
(実施例1)
光透過性基材(厚み40μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、製品名:TD40UC、富士フイルム社製)を準備し、該光透過性基材の片面に、下記に示した組成の防眩層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。
次いで、形成した塗膜に対して、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、更に10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が30mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、5μm厚み(硬化時)の防眩層を形成した。
(防眩層用組成物)
4官能アクリレートモノマー(製品名:SR295、サートマー社製) 50質量部
ウレタンアクリレートオリゴマー(製品名:UV1700B、日本合成化学社製) 50質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 3質量部
非反応性フッ素系レベリング剤(製品名:F554、DIC社製) 0.1質量部
有機微粒子(平均粒子径:2.0μm、球状ポリアクリル-スチレン共重合体、積水化成品社製) 3質量部
フュームドシリカ(オクチルシラン処理;平均粒子径12nm、日本アエロジル社製) 1質量部
メチルイソブチルケトン 160質量部
イソプロピルアルコール 40質量部
【0127】
次いで、形成した防眩層の表面に、下記組成の低屈折率層用組成物を、乾燥後(40℃×1分)の膜厚が0.11μmとなるように塗布し、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて、積算光量100mJ/cm2で紫外線照射を行って硬化させて低屈折率層を形成し、実施例1に係る光学積層体を作製した。
(低屈折率層用組成物)
3官能アクリレートモノマー(製品名:SR444、サートマー社製) 100質量部
中空状シリカ微粒子(平均粒子径:50nm、日揮触媒化成社製) 180質量部
中実シリカ微粒子(平均粒子径:12nm、日産化学社製) 60質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 10質量部
反応性フッ素系レベリング剤(RS-78、DIC社製) 8質量部
メチルイソブチルケトン 10000質量部
【0128】
(実施例2)
低屈折率層用組成物において、中実シリカ微粒子の配合量を20質量部とした以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る光学積層体を作製した。
【0129】
(実施例3)
低屈折率層用組成物において、中実シリカ微粒子の配合量を100質量部とした以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る光学積層体を作製した。
【0130】
(実施例4)
低屈折率層用組成物において、中実シリカ微粒子を加えなかった以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る光学積層体を作製した。
【0131】
(実施例5)
防眩層用組成物において、非反応性フッ素系レベリング剤(製品名:F554、DIC社製)に替えて、非反応性フッ素系レベリング剤(F551、DIC社製)を0.1質量部用いた以外は実施例4と同様にして防眩層用組成物を調製し、該防眩層用組成物を用いた以外は、実施例4と同様にして実施例5に係る光学積層体を作製した。
【0132】
(実施例6)
低屈折率層用組成物において、中実シリカ微粒子の配合量を110質量部とした以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る光学積層体を作製した。
【0133】
(実施例7)
低屈折率層用組成物において、中実シリカ微粒子の配合量を80質量部とした以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る光学積層体を作製した。
【0134】
(実施例8)
低屈折率層用組成物において、3官能アクリレートモノマーを、2官能アクリレートモノマー(製品名:M240、東亜合成社製)とした以外は実施例7と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る光学積層体を作製した。
【0135】
(実施例9)
低屈折率層用組成物において、3官能アクリレートモノマーを、6官能アクリレートモノマー(製品名:DPHA、サートマー社製)とした以外は実施例7と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る光学積層体を作製した。
【0136】
(実施例10)
低屈折率層用組成物において、反応性フッ素系レベリング剤(RS-78、DIC社製)に代えて、シリーコン・フッ素原子含有添加剤(KY-1203、信越化学工業社製)を用いた以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例10に係る光学積層体を作製した。
【0137】
(実施例11)
低屈折率層用組成物において、反応性フッ素系レベリング剤(RS-78、DIC社製)に代えて、シリコーン系レベリング剤(KP-611、信越化学工業社製)を用いた以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例11に係る光学積層体を作製した。
【0138】
(比較例1)
防眩層用組成物において、非反応性フッ素系レベリング剤(製品名:F554、DIC社製)に替えて、シリコン系レベリング剤(TSF4460、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)を0.1質量部用いた以外は実施例4と同様にして防眩層用組成物を調製し、該防眩層用組成物を用いた以外は、実施例4と同様にして比較例1に係る光学積層体を作製した。
【0139】
(比較例2)
低屈折率層用組成物において、3官能アクリレートモノマー(製品名:SR444、サートマー社製)に替えて、2官能アクリレートモノマー(製品名:SR238F、サートマー社製)を100質量部用いた以外は比較例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、比較例1と同様にして比較例2に係る光学積層体を作製した。
【0140】
(低屈折率層表面の算術平均粗さ(Ra)、及び、十点平均粗さ(Rz)の測定)
AFM:SPM-9600(島津製作所社製)を用い、以下の条件で測定し、算出した。
AFMで得られる表面粗さパラメータの定義は、JIS B0031(1994)に規定されるものであるが、AFMの場合は、走査範囲(視野面積)内の面平均値としてSPM-9600付属ソフトにて算出できる。
ただし、上記AFM測定は、特異的な脱落や凹凸等の欠点が観察される場所を除いて測定した。
カンチレバー:NCH-W(ナノワールド)
走査範囲:5μm(視野面積5μm×5μm)
走査速度:1Hz
解析ソフト:SPMマネージャー Version 4.36.10
<測定サンプルの作製>
以下の(1)~(4)の順で測定サンプルを作製した。
(1)試料台にカーボンテープを張り付け、剥離紙をピンセットで剥がす。
(2)サンプルの端をピンセットでもちハサミでカットする。カーボンテープより小さい8mm×8mmサイズにカットしてサンプルを作製する。
(3)サンプルの表と裏をブロワーで吹いて異物を除去する。
(4)サンプル表(測定面)を上にして、サンプル裏面にカーボンテープを貼り付けて測定サンプルを作製した。
<算術平均粗さRa>
算術平均粗さRaは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表しRaを得た。
【数5】
<十点平均粗さRz>
十点平均粗さRzは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を、以下の式のように求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【数6】
なお、上記Yp
1、Yp
2、Yp
3、Yp
4、Yp
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高。
上記Yv
1、Yv
2、Yv
3、Yv
4、Yv
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も低い谷底から5番目までの谷底の標高。
【0141】
(低屈折率層表面の硬度:ナノインデンテーション硬さ(MPa)の測定)
HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用い、変位量制御モードで以下の条件で測定した。上記低屈折率層において、上記圧子としてBerkovich圧子(三角錐、ダイヤモンド製、陵角115度)をLoadingRate10nm/sで30nm押し込み、一定時間保持して残留応力の緩和を行った後、除荷させることで、荷重-変位曲線を取得、その後、インデンテーション硬さを装置で自動的に算出した。
算出の概要:除荷曲線を用いて、サンプルが圧子に接触している深さ:接触深さが算出され、その接触深さより接触投影面積(A(nm2))が求められ、この面積と緩和後の最大荷重(Pmax(μN))を用い、Pmax/Aにより、インデンテーション硬さが装置で自動的に算出される。なお、安定な測定結果を得るため、顕微鏡を用い、倍率50~500倍の条件でサンプル面を観察し、極端な凹凸構造のある部分を避け、特異な欠点などのない可能な限り平坦性のある部分を選択し測定を行った。
【0142】
<測定サンプルの作製>
20mm×20mmの大きさに切り出した光学積層体を低屈折率層側が上面となるように市販のスライドガラスに、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成社製)を介して固定した。具体的には、スライドガラス1(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン社製)の中央部に上記接着樹脂を滴下する。この際、接着樹脂を塗り広げず、また後述するように押し広げたときに接着樹脂が光学積層体からはみ出さないように滴下は1滴とした。
その後、上記大きさに切り出した光学積層体を低屈折率層側が上面になり、かつ、光学積層体の中央部に接着樹脂が位置するようにスライドガラスに接触させ、スライドガラス1と光学積層体の間で接着樹脂を押し広げ、仮接着した。
そして、別の新しいスライドガラス2を光学積層体の上に載せ、スライトガラス1/接着樹脂/光学積層体/スライドガラス2の積層体を得た。
次いで、スライドガラス2の上に30g以上50g以下の重りを置き、その状態で、12時間室温で放置する。その後、重りとスライドガラス2を取り外し、これを測定用サンプルとした。
そして、得られた測定用サンプルを除振台に平行に設置したHYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」の測定ステージに固定した。
インデンテーション硬度は、測定用サンプルの低屈折率層の表面中央付近(接着樹脂が存在する領域)の任意の5点を測定し、得られた5点の硬度の算術平均値とする。
ただし、測定する任意の5点は、顕微鏡を用いて倍率50倍~500倍で低屈折率層を観察し、極端な凸構造になっている部分、及び、極端な凹部構造になっている部分は避け、可能な限り平坦性のある部分から選択した。
【0143】
使用圧子:Berkovich圧子(三角錐、ダイヤモンド製、陵角115度)
測定条件:変位制御方式
変位量制御モード 最大変位量:30nm
最大変位量への到達時間:3秒
最大変位量での保持時間:5秒
最大変位量での除荷時間:3秒
試験点数:5点
測定時の温度:25℃
測定時の湿度:50%
【0144】
(耐擦傷性試験)
以下の条件でスチールウール試験機:SAM JEE TECH社製、型番 SJTR-053を用いた耐擦傷性試験を行った。
[スチールウールの準備]
スチールウールを正方形の大きさ(7cm×7cm)になるようにカットする。
スチールウールの試験ヘッドの2つあるくぼみのうち、下のくぼみにはまるように、結束バンドを用いてスチールウールを固定する。スチールウールはしわやたるみのないように取り付ける。スチールウールの試験方向と、スチールウールの繊維の方向が直交になるようにセットする。
[水平の確認]
ストッパーをゆるめ、ヘッドが自由に上下する状態にする。おもりがない状態で「CYLINDER」をDOWNにしてヘッドを下げ、水平が取れているか確認する。
[スチールウールのならし]
スチールウールは表面が毛羽立っているため、「ならし」を行って表面を滑らかにした。
<ならし条件> おもり500g、試験速度(100mm/s)、200往復。
[試験片の設置]
サンプルサイズ:短辺3cm、長辺25cm
カットした試験片や台座にゴミがある場合はウエス等でやさしくふき取る。
試験片を塗工面を上にして、たるみのないように台座にセットする。
[試験]
指定の荷重700g/cm2、試験速度(100mm/s)
試験時の温度:25℃、試験時の湿度:50%
[評価]
試験後、黒ビニールテープ(ヤマトビニールテープNo200-38-21 38mm幅)を貼って、3波長蛍光灯(1300-1700lux)下で傷・変色の有無を確認する。
光源-試験片、試験片-検査員の角度は45度を目安とし、キズ・変色が特に見えやすい角度で判定する。折り返し部分(両端から3cm)はキズが入りやすいため不問とする。
その後の低屈折率層表面に傷の有無を目視し下記の基準にて評価した。
◎:傷、変色無し
〇:変色がうっすら見える
△:傷及び変色がうっすら見える
×:傷、変色が見える
【0145】
(5°正反射率測定)
測定側である、各光学積層体の低屈折率層を設けた側とは反対側に、黒ビニールテープ(ヤマトビニールテープNo200-38-21 38mm幅)を貼った後、紫外可視分光光度計(UV-2450 島津製作所社製)を用いて、光学積層体の表面への5°正反射率(%)を380~780nmまでの波長範囲で測定した。
(反射率:視感反射率測定)
上記測定した5°正反射率(%)データを用い、人間が目で感じる明度として換算するソフト(装置内蔵)で算出される、視感反射率を示す値を反射率(%)として求めた。
各サンプルについて5箇所の反射率の平均値を各サンプルの反射率(%):視感反射率測定結果(表1)とした。
【0146】
【0147】
低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸のRaが4nm以下であり、Rzが60nm以下である実施例に係る光学積層体では、耐擦傷性及び反射防止性能の双方ともに優れていた。
なかでも、微視的な視野におけるRaが2.0nm以下、Rzが25nm以下であり、かつ、インデンテーション硬さが440MPa以上である実施例4及び5、並びに、微視的な視野におけるRaが3.0nm以下、Rzが45nm以下であり、かつ、インデンテーション硬さが500MPa以上である実施例7では、耐擦傷性に優れていた。
とりわけ、微視的な視野におけるRaが2.0nm以下、Rzが35nm以下であり、かつ、インデンテーション硬さが500MPa以上である実施例1及び2、並びに、微視的な視野におけるRaが3.0nm以下、Rzが45nm以下であり、かつ、インデンテーション硬さが600MPa以上である実施例9では、極めて耐擦傷性に優れていた。
一方、低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸のRa及びRzが特定の範囲から外れている比較例に係る光学積層体では、耐擦傷性及び反射防止性能の双方に優れたものは得られなかった。
なお、第1の本発明の実施例に係る光学積層体は、JIS K7361に従い、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いて測定した全光線透過率が、いずれも90%以上であり、精密光沢度計GM-26PRO(株式会社村上色彩技術研究所)を用いてJIS Z 8741に準拠し、測定した20°グロス値が80~140かつ60°グロス値が110~160の範囲に含まれていた。また、20°グロス値/60°グロス値×100(%)は、70~90(%)であった。
なお、グロス測定時のサンプルの大きさは5cm×10cmで、測定はサンプルの裏面を空気吸引法により黒板に密着させて3回測定した平均値を測定値とした。
【0148】
<第2の本発明の光学積層体>
【0149】
(実施例12)
光透過性基材(厚み40μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、製品名:TD40UC、富士フイルム社製)を準備し、該光透過性基材の片面に、下記に示した組成の防眩層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。
次いで、形成した塗膜に対して、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、更に10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が30mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、5μm厚み(硬化時)の防眩層を形成した。
(防眩層用組成物)
4官能アクリレートモノマー(製品名:SR295、サートマー社製) 50質量部
ウレタンアクリレートオリゴマー(製品名:UV1700B、日本合成化学社製) 50質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 3質量部
非反応性フッ素系レベリング剤(製品名:F554、DIC社製) 0.1質量部
有機微粒子(平均粒子径:2.0μm、球状ポリアクリル-スチレン共重合体、積水化成品社製) 3質量部
フュームドシリカ(オクチルシラン処理;平均一次粒子径12nm、日本アエロジル社製) 1質量部
メチルイソブチルケトン 160質量部
イソプロピルアルコール 40質量部
【0150】
次いで、形成した防眩層の表面に、下記組成の低屈折率層用組成物を、乾燥後(40℃×1分)の膜厚が0.11μmとなるように塗布し、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて、積算光量100mJ/cm2で紫外線照射を行って硬化させて低屈折率層を形成し、実施例10に係る光学積層体を作製した。
(低屈折率層用組成物)
3官能アクリレートモノマー(製品名:SR444、サートマー社製) 100質量部
中空状シリカ微粒子(平均一次粒子径:50nm、製品名:スルーリアDAS、日揮触媒化成社製) 180質量部
中実シリカ微粒子(平均一次粒子径:12nm、製品名:MIBK-AC-2140Z、日産化学社製) 10質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 10質量部
反応性シリコーン系レベリング剤(RS-57、DIC社製) 3質量部
メチルイソブチルケトン 10000質量部
【0151】
(実施例13)
低屈折率層用組成物において、中実シリカ微粒子を加えなかったこと以外は実施例10と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例12と同様にして実施例13に係る光学積層体を作製した。
【0152】
(実施例14)
低屈折率層用組成物において、反応性シリーコン系レベリング剤(RS-57、DIC社製)を反応性フッ素系レベリング剤(RS-71、DIC社製)とした以外は実施例1と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例12と同様にして実施例14に係る光学積層体を作製した。
【0153】
(実施例15)
防眩層用組成物において、ウレタンアクリレートオリゴマーの配合量を100質量部とした以外は実施例12と同様にして防眩層用組成物を調製し、該防眩層用組成物を用いた以外は、実施例15と同様にして実施例13に係る光学積層体を作製した。
【0154】
(実施例16)
低屈折率層用組成物において、3官能アクリレートモノマーを、6官能アクリレートモノマー(製品名:DPHA、サートマー社製)とした以外は実施例12と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例12と同様にして実施例16に係る光学積層体を作製した。
【0155】
(比較例3)
低屈折率層用組成物において、メチルイソブチルケトン10000質量部の代わりに、溶剤としてメチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン(5000質量部/5000質量部)を配合した以外は、実施例12と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例12と同様にして比較例3に係る光学積層体を作製した。
【0156】
(比較例4)
低屈折率層用組成物において、中実シリカ微粒子の配合量を60質量部とした以外は実施例12と同様にして低屈折率層用組成物を調製し、該低屈折率層用組成物を用いた以外は、実施例12と同様にして比較例4に係る光学積層体を作製した。
【0157】
(低屈折率層表面の算術平均粗さ(Ra)、及び、十点平均粗さ(Rz)の測定)
AFM:SPM-9600(島津製作所社製)を用い、以下の条件で測定し、算出した。
AFMで得られる表面粗さパラメータの定義は、JIS B0031(1994)に規定されるものであるが、AFMの場合は、走査範囲(視野面積)内の面平均値としてSPM-9600付属ソフトにて算出できる。
ただし、上記AFM測定は、特異的な脱落や凹凸等の欠点が観察される場所を除いて測定した。
カンチレバー:NCH-W(ナノワールド)
走査範囲:5μm(視野面積5μm×5μm)
走査速度:1Hz
解析ソフト:SPMマネージャー Version 4.36.10
<測定サンプルの作製>
以下の(1)~(4)の順で測定サンプルを作製した。
(1)試料台にカーボンテープを張り付け、剥離紙をピンセットで剥がす。
(2)サンプルの端をピンセットでもちハサミでカットする。カーボンテープより小さい8mm×8mmサイズにカットしてサンプルを作製する。
(3)サンプルの表と裏をブロワーで吹いて異物を除去する。
(4)サンプル表(測定面)を上にして、サンプル裏面にカーボンテープを貼り付けて測定サンプルを作製した。
<算術平均粗さRa>
算術平均粗さRaは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表しRaを得た。
【数7】
<十点平均粗さRz>
十点平均粗さRzは、JIS B0031(1994)に従い、得られた測定サンプルの表面の粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を、以下の式のように求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【数8】
なお、上記Yp
1、Yp
2、Yp
3、Yp
4、Yp
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高。
上記Yv
1、Yv
2、Yv
3、Yv
4、Yv
5は、基準長さlに対する抜き取り部分の最も低い谷底から5番目までの谷底の標高。
【0158】
(低屈折率層表面の硬度:インデンテーション硬さ(MPa)の測定)
HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用い、変位量制御モードで以下の条件で測定した。上記低屈折率層において、上記圧子としてBerkovich圧子(三角錐、ダイヤモンド製、稜角115度)をLoadingRate10nm/sで、30nm又は300nm押し込み、一定時間保持して残留応力の緩和を行った後、除荷させることで、荷重-変位曲線を取得、その後、インデンテーション硬さを装置で自動的に算出した。
算出の概要:除荷曲線を用いて、サンプルが圧子に接触している深さ:接触深さが算出され、その接触深さより接触投影面積(A(nm2))が求められ、この面積と緩和後の最大荷重(Pmax(μN))、を用い、Pmax/Aにより、インデンテーション硬さが装置で自動的に算出される。なお、安定な測定結果を得るため、顕微鏡を用い、倍率50~500倍の条件でサンプル面を観察し、極端な凹凸構造のある部分を避け、特異な欠点などのない可能な限り平坦性のある部分を選択し測定を行った。
【0159】
<測定サンプルの作製>
20mm×20mmの大きさに切り出した光学積層体を低屈折率層側が上面となるように市販のスライドガラスに、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成社製)を介して固定した。具体的には、スライドガラス1(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン社製)の中央部に上記接着樹脂を滴下する。この際、接着樹脂を塗り広げず、また後述するように押し広げたときに接着樹脂が光学積層体からはみ出さないように滴下は1滴とした。
その後、上記大きさに切り出した光学積層体を低屈折率層側が上面になり、かつ、光学積層体の中央部に接着樹脂が位置するようにスライドガラスに接触させ、スライドガラス1と光学積層体の間で接着樹脂を押し広げ、仮接着した。
そして、別の新しいスライドガラス2を光学積層体の上に載せ、スライトガラス1/接着樹脂/光学積層体/スライドガラス2の積層体を得た。
次いで、スライドガラス2の上に30g以上50g以下の重りを置き、その状態で、12時間室温で放置する。その後、重りとスライドガラス2を取り外し、これを測定用サンプルとした。
そして、得られた測定用サンプルを除振台に平行に設置したHYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」の測定ステージに固定した。
インデンテーション硬度は、測定用サンプルの低屈折率層の表面中央付近(接着樹脂が存在する領域)の任意の5点を測定し、得られた5点の硬度の算術平均値とする。
ただし、測定する任意の5点は、顕微鏡を用いて倍率50倍~500倍で低屈折率層を観察し、極端な凸構造になっている部分、及び、極端な凹部構造になっている部分は避け、可能な限り平坦性のある部分から選択した。
【0160】
<30nm押し込みでのインデンテーション硬さ測定>
圧子を30nm押し込んだ時の硬度の測定条件は以下の通りである。
使用圧子:Berkovich圧子(三角錐)
測定条件:変位制御方式
変位量制御モード 最大変位量:30nm
最大変位量への到達時間:3秒
最大変位量での保持時間:5秒
最大変位量での除荷時間:3秒
試験点数:5点
測定時の温度:25℃
測定時の相対湿度:50%
<300nm押し込みでのインデンテーション硬さ測定>
圧子を300nm押し込んだ時の硬度の測定条件は以下の通りである。
使用圧子:Berkovich圧子(三角錐)
測定条件:変位制御方式
変位量制御モード 最大変位量:300nm
最大変位量への到達時間:30秒
最大変位量での保持時間:5秒
最大変位量での除荷時間:30秒
試験点数:5点
測定時の温度:25℃
測定時の相対湿度:50%
【0161】
(水の接触角の測定)
協和界面科学社製の固液界面解析装置「Drop Master 300」を用いて、純水の接触角を測定した。
光学積層体の低屈折率層表面に1.0μLの純水を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出した。5回測定した平均値を、接触角の値とした。
【0162】
(耐擦傷性試験)
光学積層体の低屈折率層の表面を、ボンスター#0000番のスチールウール(商品名:BON STAR、ボンスター販売(株)製)を用いて、700g/cm2の荷重をかけながら、10回往復摩擦し、その後の低屈折率層表面に傷の有無を目視し下記の基準にて評価した。
◎:傷、変色無し
〇:変色がうっすら見える
×:傷、変色が見える
【0163】
(5°正反射率測定)
測定側である、各光学積層体の低屈折率層を設けた側とは反対側に、黒ビニールテープ(ヤマトビニールテープNo200-38-21 38mm幅)を貼った後、紫外可視分光光度計(UV-2450 島津製作所社製)を用いて、光学積層体の表面への5°正反射率(%)を380~780nmまでの波長範囲で測定した。
(反射率:視感反射率測定)
上記測定した5°正反射率(%)データを用い、人間が目で感じる明度として換算するソフト(装置内蔵)で算出される、視感反射率を示す値を反射率(%)として求めた。
各サンプルについて5箇所の反射率の平均値を各サンプルの反射率(%):視感反射率測定結果(表2)とした。
【0164】
【0165】
低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸のRaが1.5nm以下であり、Rzが30nm以下であり、ナノインデンテーション法により測定した圧子を300nm押し込んだ時の硬度が、ナノインデンテーション法により測定した圧子を30nm押し込んだ時の硬度よりも高い実施例に係る光学積層体では、耐擦傷性及び反射防止性能の双方ともに優れていた。
なかでも、微視的な視野におけるRaが1.2nm以下、Rzが25nm以下であり、かつ、圧子の押し込み深さが30nmの時のインデンテーション硬さと圧子の押し込み深さが300nmの時のインデンテーション硬さの差が30MPa以上である実施例1及び2では、耐擦傷性が極めて優れていた。
一方、低屈折率層の表面の任意の5μm四方領域における凹凸のRa及びRzが特定の範囲から外れている比較例に係る光学積層体では、耐擦傷性に優れたものは得られなかった。
なお、第2の本発明の実施例に係る光学積層体は、JIS K7361に従い、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いて測定した全光線透過率が、いずれも90%以上であり、精密光沢度計GM-26PRO(株式会社村上色彩技術研究所)を用いてJIS Z 8741に準拠し、測定した20°グロス値が70~140かつ60°グロス値が100~160の範囲に含まれていた。また、20°グロス値/60°グロス値×100(%)は、65~85(%)であった。
なお、グロス測定時のサンプルの大きさは5cm×10cmで、測定はサンプルの裏面を空気吸引法により黒板に密着させて3回測定した平均値を測定値とした。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の光学積層体は、液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機又は無機ELD)、マイクロLEDディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等に好適に適用することができる。また、フォルダブル、ベンダブル、又は、ローラブルの画像表示装置やタッチパネルにおける画像表示面にも好適に使用することができる。