(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006177
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】腹壁硬度評価装置及び腹壁硬度評価方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61B5/00 101N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106832
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠
(72)【発明者】
【氏名】奥山 亘
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XD26
4C117XE27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】腹壁硬度の測定に好適であり、持ち運びが容易であり、腹壁硬度を定量的に評価できる腹壁硬度評価装置及び腹壁硬度評価方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定する反発力測定部と、押し当てにより腹部が窪む深さを測定する深さ測定部と、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価する評価部と、を備える、腹壁硬度評価装置を提供する。また、本発明は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定することと、押し当てにより腹部が窪む深さを測定することと、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価することと、を含む、腹壁硬度評価方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹部への押し当てに対し、前記腹部が押し返す反発力を測定する反発力測定部と、
前記押し当てにより前記腹部が窪む深さを測定する深さ測定部と、
前記深さ及び前記反発力に基づいて、前記腹部の硬度を評価する評価部と、
を備える、腹壁硬度評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記深さ及び前記反発力を軸とする関数の傾きに基づいて、前記硬度を評価する、
請求項1に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記深さ及び前記反発力に加えて、皮膚の硬度に基づいて、前記硬度を評価する、
請求項1に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項4】
前記深さ測定部は、
前記腹部に向かって光を出射し、前記腹部が反射した前記光を受光する受発光部と、
前記光の出射時刻及び受光時刻に基づいて、前記受発光部から前記腹部までの距離を測定する距離測定部と、を有する、請求項1に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項5】
前記深さ測定部は、
前記押し当てによる窪みが生じていない状態において前記距離測定部が測定した皮膚表面から前記受発光部までの距離と、
前記押し当てによる窪みが生じている状態において前記距離測定部が測定した皮膚表面から前記受発光部までの距離と、の差分に基づいて、前記深さを測定する、請求項4に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項6】
前記深さ測定部は、
前記距離測定部が測定した、前記押し当てにより生じる窪みの底の皮膚表面から前記受発光部までの距離と、
前記距離測定部が測定した、前記押し当てにより生じる窪みの外周囲の皮膚表面から前記受発光部までの距離と、の差分に基づいて、前記深さを測定する、請求項4に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項7】
前期深さ測定部は、前記押し当てにより生じる窪みの外周囲に生じる隆起の外周囲の皮膚表面から前記受発光部までの距離を測定する、請求項4に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項8】
前記反発力測定部は、
前記腹部に押し当てる加圧部と、
前記反発力を測定する力測定部と、を有する、請求項1に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項9】
前記腹部は、ストーマの外周囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の腹壁硬度評価装置。
【請求項10】
腹部への押し当てに対し、前記腹部が押し返す反発力を測定することと、
前記押し当てにより前記腹部が窪む深さを測定することと、
前記深さ及び前記反発力に基づいて、前記腹部の硬度を評価することと、
を含む、腹壁硬度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腹壁硬度評価装置及び腹壁硬度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
便や尿の排泄を自らの意志により制御できない場合、または、消化器系もしくは泌尿器系器官の疾患がある場合に、外科的手術を行って腸管や尿管を体表まで導き、腹部の体表面にストーマが造設されることがある。ストーマが造設された人は、ストーマからの排泄物を一時的に収容できるパウチをストーマに装着する必要がある。
【0003】
ストーマ及び該ストーマの外周囲の皮膚状態には個人差がある。そのため、個人にとって最適なストーマ装具が選定されることが求められている。
【0004】
従来、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)が、実際にストーマを目視したりストーマの周囲を触診したりして評価することで、ストーマ装具のタイプを選定している。この評価が属人的であるため、評価に技術や経験を必要とする。また、ストーマ装具のタイプを選定できる者がWOCナースに限られる。
【0005】
この評価において、ストーマの外周囲の硬度は重要な評価項目の一つである。ストーマの外周囲のしわをのばすために、皮膚表面に対向する面に、テーパ状の凸面が形成されているストーマ装具がある。腹壁の硬度によって、この凸面の高さ及び硬さなどの適否が異なる。例えば、硬い腹部に対して凸面が高く、硬いストーマ装具を使用すると、腹部過圧迫による皮膚障害を来したり、凸面が腹部に反発することでストーマ装具が剥がれてしまったりする恐れがある。したがって、腹壁の硬度は定量的に評価されることが好ましい。
【0006】
例えば特許文献1では、「吸引ポンプに連通する吸引カップと該吸引カップにより吸引された皮膚の高さを検出するセンサーを有するセンサー部と、上記センサーで検出される皮膚の高さを表示する表示手段を有する装置本体部とを備えた皮膚の硬度測定装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の硬度測定装置を含め、市販されている硬度測定装置は、腹壁硬度の測定には不適応であったり、ポンプ等を備えることから大型になりやすく、持ち運びが困難であったりする。
【0009】
そこで、本発明は、腹壁硬度の測定に好適であり、持ち運びが容易であり、腹壁硬度を定量的に評価できる腹壁硬度評価装置及び腹壁硬度評価方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定する反発力測定部と、押し当てにより腹部が窪む深さを測定する深さ測定部と、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価する評価部と、を備える、腹壁硬度評価装置を提供する。
評価部は、深さ及び反発力を軸とする関数の傾きに基づいて、硬度を評価してよい。
評価部は、深さ及び反発力に加えて、皮膚の硬度に基づいて、硬度を評価してよい。
深さ測定部は、腹部に向かって光を出射し、腹部が反射した光を受光する受発光部と、光の出射時刻及び受光時刻に基づいて、受発光部から腹部までの距離を測定する距離測定部と、を有してよい。
深さ測定部は、押し当てによる窪みが生じていない状態において距離測定部が測定した皮膚表面から受発光部までの距離と、押し当てによる窪みが生じている状態において距離測定部が測定した皮膚表面から受発光部までの距離と、の差分に基づいて、深さを測定してよい。
深さ測定部は、距離測定部が測定した、押し当てにより生じる窪みの底の皮膚表面から受発光部までの距離と、距離測定部が測定した、押し当てにより生じる窪みの外周囲の皮膚表面から受発光部までの距離と、の差分に基づいて、深さを測定してよい。
前期深さ測定部は、押し当てにより生じる窪みの外周囲に生じる隆起の外周囲の皮膚表面から受発光部までの距離を測定してよい。
反発力測定部は、腹部に押し当てる加圧部と、反発力を測定する力測定部と、を有してよい。
腹部は、ストーマの外周囲であってよい。
また、本発明は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定することと、押し当てにより腹部が窪む深さを測定することと、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価することと、を含む、腹壁硬度評価方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、腹壁硬度の測定に好適であり、持ち運びが容易であり、腹壁硬度を定量的に評価できる腹壁硬度評価装置及び腹壁硬度評価方法を提供できる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の構成例を示す簡略側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の測定手順の例を示す簡略側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の測定手順の例を示す簡略側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る評価部3の評価結果の例を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置を実現するコンピュータ30の構成例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されることはない。また、本発明は、下記の実施例及びその変形例のいずれかを組み合わせることができる。
【0014】
以下の実施形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った用語で構成を説明することがある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、完全に平行な状態から例えば数%程度ずれた状態を含むことも意味する。他の「略」を伴った用語についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0015】
特に断りがない限り、図面において、「上」とは図中の上方向または上側を意味し、「下」とは、図中の下方向または下側を意味し、「左」とは図中の左方向または左側を意味し、「右」とは図中の右方向または右側を意味する。また、図面については、同一または同等の要素または部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
<1.第1の実施形態(腹壁硬度評価装置の例)>
本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定する反発力測定部と、押し当てにより腹部が窪む深さを測定する深さ測定部と、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価する評価部と、を備える。
【0017】
本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置の構成例について
図1を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の構成例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10は、反発力測定部1と、深さ測定部2と、評価部3と、を備える。反発力測定部1は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定する。深さ測定部2は、押し当てにより腹部が窪む深さを測定する。評価部3は、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価する。評価部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)がプログラムを読み込むことにより実現できる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の構成例について
図2を参照しつつ説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の構成例を示す簡略側面図である。
【0020】
図2に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10は、反発力測定部1と、深さ測定部2と、評価部3(
図2においては図示省略)と、を備える。腹部の硬度を評価する評価部3は、腹壁硬度評価装置10に備えられていてもよいし、腹壁硬度評価装置10の外部のコンピュータ(例えば、PC、タブレット端末、及びスマートフォンなど)に備えられていてもよい。
【0021】
反発力測定部1は、腹部に押し当てる加圧部11と、腹部からの反発力を測定する力測定部12と、を有する。力測定部12は、加圧部11による腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定する。反発力測定部1の実現にあたっては、例えばプッシュプルゲージなどに用いられている技術が利用できる。反発力測定部1は、持ち運びが容易になるように小型軽量化することができる。
【0022】
深さ測定部2は、押し当てにより腹部が窪む深さを測定する。深さ測定部2は、受発光部21と、距離測定部22と、を有する。受発光部21は、腹部に向かって光(例えばレーザ光など)を出射し、腹部が反射した光を受光する。距離測定部22は、例えばToF(Time Of Flight)技術を利用して、光の出射時刻及び受光時刻に基づいて、受発光部21から腹部までの距離を測定する。深さ測定部2の実現にあたっては、例えばレーザ変位計や加速度計などに用いられている技術が利用できる。深さ測定部2は、持ち運びが容易になるように小型軽量化することができる。
【0023】
反発力測定部1及び深さ測定部2のそれぞれは、この図に示されるように一体化していてもよいし、分離していてもよい。
【0024】
押し当てにより腹部が窪む深さを測定する手順について
図3を参照しつつ説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の測定手順の例を示す簡略側面図である。
【0025】
図3Aは、腹壁硬度評価装置10が腹部5の皮膚の硬度を測定する前の状態である。腹壁硬度評価装置10が備える加圧部11が腹部5に接触していない。
【0026】
図3Bは、腹壁硬度評価装置10が腹部5の皮膚の硬度の測定を開始する状態である。腹壁硬度評価装置10が備える加圧部11が腹部5に接触しているが、押し当てによる窪みが生じていない。距離測定部22は、押し当てによる窪みが生じていないこの状態において腹部5の皮膚表面から受発光部21までの距離r1を測定する。
【0027】
図3Cは、腹壁硬度評価装置10が腹部5の皮膚の硬度を測定している状態である。腹壁硬度評価装置10が備える加圧部11が腹部5に接触しており、押し当てによる窪みが生じている。距離測定部22は、押し当てによる窪みが生じているこの状態において腹部5の皮膚表面から受発光部21までの距離r2を測定する。
【0028】
深さ測定部2は、押し当てによる窪みが生じていない状態(
図3B)において距離測定部22が測定した皮膚表面から受発光部21までの距離r1と、押し当てによる窪みが生じている状態(
図3C)において距離測定部22が測定した皮膚表面から受発光部21までの距離r2と、の差分に基づいて、深さを測定することができる。深さ測定部2と距離測定部22とが一体化されているとき、この測定が可能である。
【0029】
この腹部5は、例えばストーマの外周囲(特に、略4cm以内の範囲。以下同様)であることが好ましい。ストーマの外周囲の硬度を定量的に測定することにより、個人にとって最適なストーマ装具が選定されることができる。
【0030】
なお、腹部5はヒトの腹部に限られない。本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10は、例えば哺乳類などの動物の腹部の硬度も評価できる。
【0031】
ところで、押し当てにより窪みが生じるとき、窪んだ部分の肉が周囲に押し広げられて、この窪みの外周囲の皮膚が隆起することがある。このことについて再び
図3Cを参照しつつ説明する。
図3Cに示されるとおり、押し当てにより窪みが生じるとき、この窪みの外周囲に隆起53が生じている。そのため、この隆起53が距離の測定に影響しないことが好ましい。したがって、深さ測定部2は、押し当てにより生じる窪みの外周囲に生じる隆起53の外周囲の皮膚表面から受発光部21までの距離を測定することが好ましい。これにより、深さ測定部2は、精度良く距離を測定できる。
【0032】
測定する手順の他の例について
図4を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の測定手順の例を示す簡略側面図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10の測定手順の例を示す簡略側面図である。
【0033】
距離測定部22は、押し当てにより生じる窪みの底51の皮膚表面から受発光部21までの距離r3と、押し当てにより生じる窪みの外周囲52の皮膚表面から受発光部21までの距離r4と、を測定する。
【0034】
深さ測定部2は、距離測定部22が測定した、押し当てにより生じる窪みの底51の皮膚表面から受発光部21までの距離r3と、距離測定部22が測定した、押し当てにより生じる窪みの外周囲52の皮膚表面から受発光部21までの距離r4と、の差分に基づいて、深さを測定することができる。深さ測定部2と反発力測定部1とが分離していても、この測定が可能である。
【0035】
市販されている硬度測定装置は、例えば、押し当てにより腹部が窪むときの深さが不十分であったり、腹部が押し返す反発力の測定が困難であったり、持ち運びが困難であったりすることがある。
【0036】
本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置10は、押し当てにより腹部が窪むときの深さが十分であり、腹部が押し返す反発力の測定が可能であり、持ち運びが容易である。
【0037】
評価部3は、深さ及び反発力を軸とする関数の傾きに基づいて、硬度を評価する。このことについて
図5を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る評価部3の評価結果の例を示すグラフである。
図5において、横軸は、押し当てにより腹部が窪む深さである。縦軸は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力である。
【0038】
腹壁モデルは、腹壁を模した模型である。「腹壁モデルソフト」は、硬度が低い腹壁モデルの硬度を測定した値である。「腹壁モデルハード」は、硬度が高い腹壁モデルの硬度を測定した値である。「呼気」は、被験者の腹部の硬度を測定した値である。「線形」は、「呼気」の分布傾向を示す回帰直線である。
【0039】
発明者は、複数の被験者の腹壁の硬度を測定した。測定結果が特徴的な3名のそれぞれの測定結果が、
図5A、
図5B、及び
図5Cのそれぞれに示されている。
【0040】
図5Aに示されるとおり、「線形」と「腹壁モデルソフト」の傾きが近似している。「線形」の傾きは0.499となっている。この場合、評価部3は、例えば「硬度が低い」と評価することができる。
【0041】
図5Bに示されるとおり、「線形」と「腹壁モデルハード」の傾きが近似している。「線形」の傾きは0.7483となっている。この場合、評価部3は、例えば「硬度が高い」と評価することができる。
【0042】
図5Cに示されるとおり、「線形」の傾きが、0.592となっている。この場合、評価部3は、例えば「硬度が通常」と評価することができる。
【0043】
なお、これらのグラフに記載されている傾きの値は暫定値である。閾値はこの傾きの値に限られない。
【0044】
評価部3は、深さ及び反発力に加えて、皮膚の硬度に基づいて、腹壁の硬度を評価してよい。皮膚の硬度は、例えば皮膚を陰圧により一定時間吸引し、その後解除して、皮膚の変位を評価することで算出できる。
【0045】
本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置は、プログラム及びコンピュータの協業により実現できる。本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置の実現に用いられるコンピュータのハードウェア構成について
図6を参照しつつ説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価装置を実現するコンピュータ30の構成例を示すブロック図である。
【0046】
図6に示されるとおり、コンピュータ30は、構成要素として、CPU31、メモリ32、記憶部33、及び表示部34などを備えることができる。それぞれの構成要素は、例えばデータの伝送路としてのバスで接続されている。
【0047】
CPU31は、コンピュータ30のそれぞれの構成要素を制御する。あるいは、CPU31は、例えば、評価部3として機能することができる。この評価部3はプログラムにより実現されることができる。このプログラムは、CPU31に読み込まれることにより、コンピュータ30に実行させることができる。
【0048】
メモリ32は、例えば、CPU31により実行されるプログラムやデータなどを一時的に記憶することができる。メモリ32は、例えばRAM(Random Access Memory)などが用いられることにより実現できる。
【0049】
記憶部33は、CPU31の処理に必要な様々なデータを記憶する。記憶部33は、例えばストレージデバイスなどが用いられることにより実現できる。
【0050】
表示部34は、ユーザに対して情報を表示する。表示部34は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)またはOLED(Organic Light-Emitting Diode)などが用いられることにより実現できる。
【0051】
図示を省略するが、コンピュータ30は通信部をさらに備えていてよい。通信部は、例えば、インターネット、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、モバイル通信網、電話回線通信網、Bluetooth(登録商標)、NFC、または、その他の有線若しくは無線通信を用いる通信網を介して通信する機能を有する。
【0052】
コンピュータ30は、例えばスマートフォン端末、タブレット端末、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)、PC(Personal Computer)、サーバ、またはウェアラブル端末(HMD:Head Mounted Display、メガネ型HMD、時計型端末、バンド型端末等)でありうる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る運動器機能評価方法を実現するプログラムは、コンピュータ30のほかのコンピュータ装置またはコンピュータシステムに格納されてもよい。この場合、コンピュータ30は、このプログラムが有する機能を提供するクラウドサービスを利用することができる。このクラウドサービスとして、例えばSaaS(Software as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)等が挙げられる。
【0054】
さらにこのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、Programmable ROM(PROM)、Erasable PROM(EPROM)、フラッシュROM、Random Access Memory(RAM))を含む。また、上記プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、または無線通信路を介して、上記プログラムをコンピュータに供給できる。
【0055】
本発明の第1の実施形態に係る腹壁硬度評価装置について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0056】
<2.第2の実施形態(腹壁硬度評価方法の例)>
本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価方法は、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定することと、押し当てにより腹部が窪む深さを測定することと、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価することと、を含む。
【0057】
本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価方法について
図7を参照しつつ説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る腹壁硬度評価方法の一例を示すフローチャートである。
【0058】
図7に示されるとおり、ステップS1において、腹部への押し当てに対し、腹部が押し返す反発力を測定する。次に、ステップS2において、押し当てにより腹部が窪む深さを測定する。そして、ステップS3において、深さ及び反発力に基づいて、腹部の硬度を評価する。なお、ステップS1とステップS2が同時に行われてもよいし、ステップS2の後にステップS1が行われてもよい。
【0059】
本発明の第2の実施形態に係る腹壁硬度評価方法について説明した上記の内容は、技術的な矛盾が特にない限り、本発明の他の実施形態に適用できる。
【0060】
また、本発明は、以下の構成をとることもできる。
[1]
腹部への押し当てに対し、前記腹部が押し返す反発力を測定する反発力測定部と、
前記押し当てにより前記腹部が窪む深さを測定する深さ測定部と、
前記深さ及び前記反発力に基づいて、前記腹部の硬度を評価する評価部と、
を備える、腹壁硬度評価装置。
[2]
前記評価部は、前記深さ及び前記反発力を軸とする関数の傾きに基づいて、前記硬度を評価する、
[1]に記載の腹壁硬度評価装置。
[3]
前記評価部は、前記深さ及び前記反発力に加えて、皮膚の硬度に基づいて、前記硬度を評価する、
[1]または[2]に記載の腹壁硬度評価装置。
[4]
前記深さ測定部は、
前記腹部に向かって光を出射し、前記腹部が反射した前記光を受光する受発光部と、
前記光の出射時刻及び受光時刻に基づいて、前記受発光部から前記腹部までの距離を測定する距離測定部と、を有する、[1]から[3]のいずれか一つに記載の腹壁硬度評価装置。
[5]
前記深さ測定部は、
前記押し当てによる窪みが生じていない状態において前記距離測定部が測定した皮膚表面から前記受発光部までの距離と、
前記押し当てによる窪みが生じている状態において前記距離測定部が測定した皮膚表面から前記受発光部までの距離と、の差分に基づいて、前記深さを測定する、[4]に記載の腹壁硬度評価装置。
[6]
前記深さ測定部は、
前記距離測定部が測定した、前記押し当てにより生じる窪みの底の皮膚表面から前記受発光部までの距離と、
前記距離測定部が測定した、前記押し当てにより生じる窪みの外周囲の皮膚表面から前記受発光部までの距離と、の差分に基づいて、前記深さを測定する、[4]または[5]に記載の腹壁硬度評価装置。
[7]
前期深さ測定部は、前記押し当てにより生じる窪みの外周囲に生じる隆起の外周囲の皮膚表面から前記受発光部までの距離を測定する、[4]から[6]のいずれか一つに記載の腹壁硬度評価装置。
[8]
前記反発力測定部は、
前記腹部に押し当てる加圧部と、
前記反発力を測定する力測定部と、を有する、[1]から[7]のいずれか一つに記載の腹壁硬度評価装置。
[9]
前記腹部は、ストーマの外周囲である、[1]から[8]のいずれか一つに記載の腹壁硬度評価装置。
[10]
腹部への押し当てに対し、前記腹部が押し返す反発力を測定することと、
前記押し当てにより前記腹部が窪む深さを測定することと、
前記深さ及び前記反発力に基づいて、前記腹部の硬度を評価することと、
を含む、腹壁硬度評価方法。
【符号の説明】
【0061】
10 腹壁硬度評価装置
1 反発力測定部
11 加圧部
12 力測定部
2 深さ測定部
21 受発光部
22 距離測定部
3 評価部
5 腹部
51 窪みの底
52 窪みの外周囲
53 隆起
ステップS1 反発力を測定する
ステップS2 深さを測定する
ステップS3 腹部の硬度を評価する