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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006178
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】鋲打ち方法および締結物
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/00 20060101AFI20240110BHJP
   F16B 15/00 20060101ALI20240110BHJP
   F16B 15/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16B5/00 C
F16B15/00 D
F16B15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106833
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】橋村 真治
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA18
3J001GA02
3J001GA03
3J001GA06
3J001GB01
3J001GC02
3J001GC13
3J001HA02
3J001JD01
3J001KA21
(57)【要約】
【課題】被締結材の割れの発生を抑制して、充分な耐リーク性を有するようにする。
【解決手段】下穴41を有する第一被締結材40の表面40aに、第二被締結材50の裏面50aを重ね合わせる準備工程と、第二被締結材50の表面50bから離れた位置にセットした金属製の鋲1aを下穴41の位置に向けて移動させて、鋲1aを第二被締結材50、第一被締結材40の順に打ち込んで下穴41内に到達させる鋲打ち工程と、を含む。下穴41は、先細りテーパー状の略円錐形状または略円錐台形状の内壁面を有する穴部43を備え、鋲1aは、先細り形状の第一軸部3を備え、第一軸部3は先端側に向かうほど縮径する先端部3a1を有し、第一軸部3の外周面には、基端側から先端側にかけて螺旋溝3bが刻設されており、最大締め代が、3~13%である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下穴を有する第一被締結材の表面に、第二被締結材の裏面を重ね合わせる準備工程と、
前記第二被締結材の表面から離れた位置にセットした金属製の鋲を前記下穴の位置に向けて移動させて、前記鋲を前記第二被締結材、前記第一被締結材の順に打ち込んで前記下穴内に到達させる鋲打ち工程と、を含み、
前記下穴は、先細りテーパー状の略円錐形状または略円錐台形状の内壁面を有する穴部を備え、
前記鋲は、先細り形状の第一軸部を備え、
前記第一軸部は先端側に向かうほど縮径する先端部を有し、
前記第一軸部の外周面には、当該第一軸部の基端側から先端側にかけて溝が刻設されており、
前記鋲の打ち込み後に前記穴部の前記内壁面と前記第一軸部とが接触している位置における、前記内壁面の円周長と前記第一軸部の円周長との差を前記内壁面の円周長で割った値である締め代に関し、当該締め代の最大値となる最大締め代が、3~13%であることを特徴とする鋲打ち方法。
【請求項2】
前記内壁面と前記第一軸部とが接触している接触箇所における当該第一軸部の軸方向の長さである鋲接触長さが、5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項3】
前記先端部は、当該先端部の基端の仮想底面と先端の頂点とによって形成される円錐形よりも外側に膨出する膨出部を有し、
前記膨出部で前記締め代が前記最大締め代となることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項4】
前記穴部の開口径は、前記第一軸部の基端部の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項5】
前記穴部の開口径φ1と前記第一軸部の基端部の径φ2との関係は、1.0×φ2<φ1≦1.1×φ2であることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項6】
前記穴部のテーパー角度は、2~10°であることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項7】
前記鋲は、前記第一軸部の基端から延出している頭部をさらに備え、
前記第一軸部は、前記頭部から垂下していて、
前記頭部は、前記第一軸部と連結している中心部と当該中心部から外方に拡がる周縁部とを有し、
前記周縁部の径は、前記第一軸部の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項8】
前記頭部は、前記周縁部が前記第一軸部の側に傾斜しながら拡がる傘形状であることを特徴とする請求項7に記載の鋲打ち方法。
【請求項9】
前記頭部の前記周縁部の厚さは、0.1~2.0mmであることを特徴とする請求項7に記載の鋲打ち方法。
【請求項10】
前記頭部の傾斜角度は、5~30°であることを特徴とする請求項7に記載の鋲打ち方法。
【請求項11】
前記溝は前記第一軸部の外表面に螺旋状に形成された螺旋溝であり、
前記鋲打ち工程では、前記第二被締結材の表面から離れた位置にセットした前記鋲を回転しない状態で前記下穴の位置に向けて移動させ、前記鋲を前記第二被締結材、前記第一被締結材の順に回転させながらねじ込んで前記下穴内に到達させることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項12】
前記螺旋溝の螺旋角度は、60~360°であることを特徴とする請求項11に記載の鋲打ち方法。
【請求項13】
前記鋲は、前記第一軸部とは前記頭部の反対側で当該頭部から延出している第二軸部を更に備え、
前記鋲打ち工程では、前記第二軸部を保持する保持部を有する補助部材を用い、当該補助部材で前記第二軸部を保持した状態で前記鋲を前記補助部材ごと前記下穴の位置に向けて移動させることを特徴とする請求項7に記載の鋲打ち方法。
【請求項14】
前記第一被締結材および前記第二被締結材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項15】
前記第一被締結材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成され、前記第二被締結材は、樹脂で形成された板材であることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項16】
前記第一被締結材は、鋳造材であることを特徴とする請求項1に記載の鋲打ち方法。
【請求項17】
下穴を有する第一被締結材と、
前記第一被締結材の表面に、裏面が重ね合わされた第二被締結材と、
金属製で前記第二被締結材、前記第一被締結材の順に打ち込まれて前記下穴内に達している鋲と、を備え、
前記下穴は、先細りテーパー状の略円錐形状または略円錐台形状の内壁面を有する穴部を備え、
前記鋲は、先細り形状の第一軸部を備え、
前記第一軸部は前端側に向かうほど縮径する先端部を有し、
前記第一軸部の外周面には、当該第一軸部の基端側から先端側にかけて溝が刻設されており、
前記鋲の打ち込み後に前記穴部の前記内壁面と前記第一軸部とが接触している位置における、前記内壁面の円周長と前記第一軸部の円周長との差を前記内壁面の円周長で割った値である締め代に関し、当該締め代の最大値となる最大締め代が、3~13%であることを特徴とする締結物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋲打ち方法および締結物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ合金製鋳物にアルミ合金製の蓋を機械的に締結する方法として、ボルト締結が一般的に知られている。
また、セルフタッピングネジを用いて、被接合材にねじ溝を形成しながら締結するセルフタップ締結が知られている。
一方、螺旋溝が刻設されている鋲を高速で移動させることで二部材を締結する鋲打ち方法として、特許文献1に記載される技術が提案されている。特許文献1に記載される技術は、まず、一方の金属板の表面に他方の金属板の裏面を重ね合わせる。そして、他方の金属板の表面から離れた位置にセットした金属製の鋲を回転しない状態で高速に移動させて、鋲を他方の金属板および一方の金属板の順に回転させながらねじ込む。使用する鋲は、円盤状の頭部と、頭部の中央部に設けられた先細り形状の軸部とを備えている。また、軸部の外周面には、先端側から基端側にかけて螺旋溝が刻設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-39535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被締結材が、板材等と、角材等の厚みのある材料とである場合に、角材等の表面に板材等の裏面を重ね合わせた状態の被締結材に対して、板材等の表面から鋲を打ち込んで両者の締結を行おうとしたときには、鋲が打ち込まれた際に角材等に割れが発生するおそれがあった。角材等に割れが発生すると、被締結材からリークが発生する。
このような観点から、本発明は、被締結材の割れの発生を抑制して、充分な耐リーク性を有する鋲打ち方法および締結物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために第一の発明は、鋲打ち方法であって、下穴を有する第一被締結材の表面に、第二被締結材の裏面を重ね合わせる準備工程と、前記第二被締結材の表面から離れた位置にセットした金属製の鋲を前記下穴の位置に向けて移動させて、前記鋲を前記第二被締結材、前記第一被締結材の順に打ち込んで前記下穴内に到達させる鋲打ち工程と、を含み、前記下穴は、先細りテーパー状の略円錐形状または略円錐台形状の内壁面を有する穴部を備え、前記鋲は、先細り形状の第一軸部を備え、前記第一軸部は先端側に向かうほど縮径する先端部を有し、前記第一軸部の外周面には、当該第一軸部の基端側から先端側にかけて溝が刻設されており、前記鋲の打ち込み後に前記穴部の前記内壁面と前記第一軸部とが接触している位置における、前記内壁面の円周長と前記第一軸部の円周長との差を前記内壁面の円周長で割った値である締め代に関し、当該締め代の最大値となる最大締め代が、3~13%であることを特徴とする。
【0006】
前記内壁面と前記第一軸部とが接触している接触箇所における当該第一軸部の軸方向の長さである鋲接触長さが、5mm以上であることを特徴とする。
【0007】
前記先端部は、当該先端部の基端に想定する底面と先端の頂点とによって規定される円錐形よりも外側に膨出する膨出部を有し、前記膨出部で前記締め代が前記最大締め代となることが好ましい。
【0008】
前記穴部の開口径は、前記第一軸部の基端部の径よりも大きいことが好ましい。
【0009】
前記穴部の開口径φ1と前記第一軸部の基端部の径φ2との関係は、1.0×φ2<φ1≦1.1×φ2であることが好ましい。
【0010】
前記穴部のテーパー角度は、2~10°であることが好ましい。
【0011】
前記鋲は、前記第一軸部の基端から延出している頭部をさらに備え、前記第一軸部は、前記頭部から垂下していて、前記頭部は、前記第一軸部と連結している中心部と当該中心部から外方に拡がる周縁部とを有し、前記周縁部の径は、前記第一軸部の径よりも大きいことが好ましい。
【0012】
前記頭部は、前記周縁部が前記第一軸部の側に傾斜しながら拡がる傘形状であることが好ましい。
【0013】
前記頭部の前記周縁部の厚さは、0.1~2.0mmであることが好ましい。
【0014】
前記頭部の傾斜角度は、5~30°であることが好ましい。
【0015】
前記溝は前記第一軸部の外表面に螺旋状に形成された螺旋溝であり、前記鋲打ち工程では、前記第二被締結材の表面から離れた位置にセットした前記鋲を回転しない状態で前記下穴の位置に向けて移動させ、前記鋲を前記第二被締結材、前記第一被締結材の順に回転させながらねじ込んで前記下穴内に到達させることが好ましい。
【0016】
前記螺旋溝の螺旋角度は、60~360°であることが好ましい。
【0017】
前記鋲は、前記第一軸部とは前記頭部の反対側で当該頭部から延出している第二軸部を更に備え、前記鋲打ち工程では、前記第二軸部を保持する保持部を有する補助部材を用い、当該補助部材で前記第二軸部を保持した状態で前記鋲を前記補助部材ごと前記下穴の位置に向けて移動させることが好ましい。
【0018】
前記第一被締結材および前記第二被締結材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されていることが好ましい。
【0019】
また、前記第一被締結材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成され、前記第二被締結材は、樹脂で形成された板材であることが好ましい。
【0020】
前記第一被締結材は、鋳造材であることが好ましい。
【0021】
また、第二の発明は、締結物であって、下穴を有する第一被締結材と、前記第一被締結材の表面に、裏面が重ね合わされた第二被締結材と、金属製で前記第二被締結材、前記第一被締結材の順に打ち込まれて前記下穴内に達している鋲と、を備え、前記下穴は、先細りテーパー状の略円錐形状または略円錐台形状の内壁面を有する穴部を備え、前記鋲は、先細り形状の第一軸部を備え、前記第一軸部は先端側に向かうほど縮径する先端部を有し、前記第一軸部の外周面には、当該第一軸部の基端側から先端側にかけて溝が刻設されており、前記鋲の打ち込み後に前記穴部の前記内壁面と前記第一軸部とが接触している位置における、前記内壁面の円周長と前記第一軸部の円周長との差を前記内壁面の円周長で割った値である締め代に関し、当該締め代の最大値となる最大締め代が、3~13%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る鋲打ち方法および締結物によれば、締結物の割れの発生を抑制して、十分な耐リーク性をもたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に用いる鋲の外観斜視図である。
図2】本発明の実施形態に用いる鋲の側面図である。
図3】本発明の実施形態に用いる鋲の底面図である。
図4図3のIV-IVに対応する縦断面図である。
図5】本発明の実施形態に用いる別形態の鋲の側面図である。
図6】本発明の実施形態に用いる被締結材の縦断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る鋲打ち方法に用いる鋲打ち装置の概略構成図である。
図8】鋲打ち装置から鋲を射出した状態を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る締結物の縦断面図である。
図10A】実施例の試験における抜き力測定方法の概略図である。
図10B図10AのXB-XBに対応する縦断面図である。
図11】本発明の実験データ1の実験結果を示す表である。
図12】本発明の実験データ2の実験結果を示す表である。
図13】本発明の実施例に係る締結物の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。さらに、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであり、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0025】
[鋲の構成について]
本発明の実施形態で用いる鋲について、図面を参照して詳細に説明する。
図1ないし図4に示す鋲1aは、重ねられた締結対象の二部材に高速で打ち込まれ、この二部材を締結するものである。図1に示すように、鋲1aは、円盤状の頭部2と、頭部2の片側の中央部に設けられた第一軸部3と、頭部2の別の片側の中央部に設けられた第二軸部4とを主に備えている。鋲1aは、例えば金属製であり、締結対象の部材の材質に応じて様々な材質で製造することができる。以下の説明における上下の方向は適宜各図に矢印で示している。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。また、本明細書で「表面」とは、裏面に対する反対側の面の意味である。ここでは鋲1aを用いて二つの部材を締結する場合を説明するが、鋲1の締結対象は三つ以上の部材であってもよい。
【0026】
図1に示す第一軸部3は、締結対象の部材を貫通する部位である。第一軸部3は、頭部2から垂下する本体部3aと、第一軸部3の基端(頭部2との連結部分)に形成される首部3cとを有している。本体部3aは、基端側に設けられた基端部3a2と、先端側に設けられた先端部3a1とを有している。本体部3aは、先細りの略砲弾形状を呈する。基端部3a2は、略円柱状を呈し、基端部3a2の径φ2は一定になっている。
【0027】
先端部3a1は、基端部3a2に連続し、先端に向けて先細りとなる(先端側に向かうほど縮径する)部位である。先端部3a1は、当該先端部3a1の基端に想定する仮想底面3a4(基端部3a2と先端部3a1との仮想界面)と先端3a3の頂点とによって形成される円錐形6(図2)よりも外側に膨出する膨出部5を有している。膨出部5は、後記する下穴41の内壁面と接触する部位であって、かつ、締め代が最大締め代となる部位である。本実施形態では、先端3a3は平坦面となっているが、先端部3a1全体としては先端3a3に向けて先鋭になっており、被締結材30に打ち込まれる際の抵抗を小さくすることができる。なお、先端3a3は、平坦面を設けずに先鋭の形状としてもよい。「締め代」、「最大締め代」については後記する。
【0028】
図2図4図5を参照して先端部3a1及び膨出部5の形状について説明する。本体部3aを断面視した場合、基端部3a2の一方の側面の先端部3a1側の端部3a51から、先端部3a1の一方の側面部3a61が先端3a3側に向かって伸びており、この側面部3a61が先端3a3側に向かうにつれて、中心軸に向かって外側に膨らむ円弧CA1を描きながら縮径している。基端部3a2の他方の側面の先端部3a1側の端部3a52からも同様に、先端部3a1の他方の側面部3a62が先端3a3側に向かって伸びており、この側面部3a62が先端3a3側に向かうにつれて、中心軸に向かって外側に膨らむ円弧CA2を描きながら縮径している。そして、基端部3a2の両側面の各端部3a51,3a52から延びている先端部3a1の各側面部3a61,3a62が、先端3a3で合流している。本体部3aは、このような断面構造を有する先端部3a1及び基端部3a2が回転することで得られる回転体形状の外形を有する構造体となっている。
【0029】
より具体的に、断面視した場合に、基端部3a2の側面の各端部3a51,3a52において、基端部3a2の各側面を通過する各仮想直線L1,L2に接する円をそれぞれ仮想円VC1,VC2とする。先端部3a1の各側面部3a61,3a62を構成する円弧CA1,CA2は、仮想円VC1,VC2の一部となっている。この仮想円VC1,VC2の半径、すなわち曲率半径R1によって、先端部3a1の側面部を構成する円弧CA1,CA2の大きさを表すことができる。本実施形態では、先端部3a1及び膨出部5の側面部を構成する円弧CA1,CA2の曲率半径R1は22.27mmであり、基端部3a2の半径R2は2mmとなっている。基端部3a2の半径R2との関係では、R1=R2×11.135となっている。
【0030】
円弧CA1,CA2の曲率半径R1は、好ましくは14mm以上、より好ましくは18mm以上、さらに好ましくは20mm以上であり、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは26mm以下、特に好ましくは24mm以下である。先端部3a1及び膨出部5を構成する円弧CA1,CA2の曲率半径R1と、基端部3a2の半径R2との関係は、好ましくはR2×5≦R1、より好ましくはR2×7≦R1、さらに好ましくはR2×9≦R1、特に好ましくはR2×10≦R1である。また、曲率半径R1と半径R2との関係は、好ましくはR1≦R2×20、より好ましくはR1≦R2×15、さらに好ましくはR1≦R2×13、特に好ましくはR1≦R2×12である。曲率半径R1が上記の下限以上の関係にあることで、先端部3a1の長さが十分に長くなり、下穴41の内壁面と第一軸部3との鋲接触長さを確保しやすくなる。また、曲率半径R1が上記の上限以下の関係にあることで、膨出部5の膨出量が十分に大きくなり、下穴41の内壁面と第一軸部3とによる最大締め代を確保しやすくなる。したがって、曲率半径R1と半径R2との関係が上記関係を満たすことで、下穴41と第一軸部3との接触による引抜き抵抗を大きくして、耐リーク性を向上させることができる。
【0031】
第一軸部3の外周面には、第一軸部3の基端側から先端側にかけて溝が刻設されている。より具体的には、第一軸部3に刻設される溝が、第一軸部3の外表面に螺旋状に形成された螺旋溝3bとなっている。螺旋溝3bは、本体部3aの先端部3a1から基端部3a2にかけて形成されている。首部3cは、図2に示すように、本体部3aよりも小径に形成されている。なお、第一軸部3には、首部3cが設けられていなくてもよく、その場合には螺旋溝3bが第一軸部3の先端から基端まで形成されることが好ましい。また、先端部3a1、基端部3a2及び首部3cの長さ(長さの比)は、下穴41の形状に合わせて適宜設定すればよい。
【0032】
頭部2は、締結対象の部材に打ち込まれた場合に、鋲1aが締結対象の部材に埋没するのを防ぐとともに、リークを抑えるための部位である。頭部2の形状やサイズは特に限定されるものではなく、鋲1aの打ち込み速度に応じて発生するエネルギー(運動エネルギー)を、頭部2が弾性変形して吸収することで受けることができればよい。ここでの頭部2は、第一軸部3の基端から延出している。頭部2は、第一軸部3と連結している中心部2aと当該中心部2aから外方に拡がる周縁部2bとを有している。周縁部2bの径は、第一軸部3の径よりも大きくなっている。頭部2の形状は特に制限されないが、本実施形態では周縁部2bが第一軸部3の側に下方に傾斜しながら拡がる傘形状になっている。頭部2は、本実施形態では、平面視円形状だが、平面視楕円形状、平面視多角形状であってもよい。
【0033】
螺旋溝3bは、その基端から先端に向けてなぞると上から見て右回り(時計回り)に形成されている。なお、螺旋溝3bは、上から見て左回り(反時計回り)に形成されていてもよい。螺旋溝3bは、締結対象の部材に打ち込まれた場合に、鋲1aを回転させながら締結対象の部材を掘る役割を担っている。
【0034】
以下の説明においては、螺旋溝3bが第一軸部3を周回する角度を「螺旋角度β」で表すことにする(図3)。螺旋角度90°と言った場合に螺旋溝3bが第一軸部3を1/4周し、螺旋角度720°と言った場合に螺旋溝3bが第一軸部3を2周する。図1ないし図4では、螺旋角度180°の場合を図示しており、螺旋溝3bが第一軸部3を半周している。螺旋溝3bの螺旋角度βの適正値については後記する。
【0035】
螺旋溝3bの断面形状、幅および深さは、締結対象の部材を掘る螺旋溝3bの役割をなすことができる範囲で適宜設定することができる。ここでの螺旋溝3bは、図4に示すように、断面視で略円弧状を呈し、先端側に向かうにつれて先細り(先端側に向かうにつれて幅狭および浅い形状)になっている。なお、螺旋溝3bは、本体部3aの一部に設けられていてもよい。また、複数の螺旋溝3bが本体部3aに設けられていてもよい。
【0036】
第二軸部4は、頭部2の中心部2aから第一軸部3とは反対側の方向に延出しており、例えば略円柱状を呈する部位である。
【0037】
図5は、前記の鋲1aの変形例である鋲1bを示している。鋲1bが鋲1aと異なるのは、鋲1aの頭部2の周縁部2bの厚さが略一定であるのに対して、図5で頭部2の一部を切り欠いて図示しているとおり、鋲1bの周縁部2bの厚さは先細り形状である点である。その他の構成は前記した鋲1aと同様であり、図5図1図4と同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0038】
[被締結材について]
図6に示す被締結材30は、前記の鋲1aまたは鋲1bによる締結の対象となる部材である。被締結材30は、第一被締結材40と、第二被締結材50とを有している。すなわち、第一被締結材40と、第二被締結材50とは、鋲1aまたは鋲1bを打ち込まれて締結される。第一被締結材40と、第二被締結材50とは、下穴41を有する第一被締結材40の表面40aに、第二被締結材50の裏面50aを重ね合わせた状態で、鋲1aまたは鋲1bによって締結される。
【0039】
本実施形態では、第一被締結材40は、四角柱状のブロック材である。第一被締結材40の形状は、少なくとも後記する下穴41を設けられる程度の厚みを有する部材であれば特に制限されるものではなく、他の形状であってもよい。第一被締結材40は、例えば、円形、楕円形、多角形、又は不定形の断面形状を有する、柱状の部材である。第一被締結材40は、鋲1a,1bが挿入される向きに対して、第一軸部3の長さよりも長いことが好ましい。また、第一被締結材40は、二枚以上の板材を重ねて厚みをもたせるようにした部材でもよい。
【0040】
下穴41は、第一被締結材40の表面40aに開口した開口部42と、開口部42に連続する穴部43とを備えている。穴部43は、先細りテーパー状の略円錐形状または略円錐台形状の内壁面を有する。開口部42は、内壁面がテーパー角度θ2を成して第一被締結材40の表面40a側から内部に向かうにつれて縮径する、略円錐形状に形成されている。穴部43は、内壁面がテーパー角度θ3を成して第一被締結材40の表面40a側から内部に向かうにつれて縮径する、略円錐形状または略円錐台形状に形成されている。穴部43の深さは前記した第一軸部3の長さよりも深くなっている。穴部43の開口径φ1は、第一軸部3の基端部3a2の径φ2(図2)よりも大きくなっている。なお、開口部42は必ずしも形成されていなくてもよい。開口部42が形成されていない場合、穴部43は、第一被締結材40の表面40aに直接に開口することになる。また、下穴41の深さは前記した第一軸部3の長さと同じでもよいし、第一軸部3の長さより短くてもよい。下穴41の深さを、第一軸部3の長さよりも大きくすると、鋲1aをスムーズに挿入することができる。下穴41の深さを、第一軸部3の長さよりも短くする場合は、第一軸部3の先端が下穴41の底部に打ち込まれることで接合強度は向上するが、挿入の妨げにならない程度に設定することが好ましい。下穴41は、第一被締結材40を形成する際に設けておくようにして形成してもよく、第一被締結材40にドリル、リーマ、又はエンドミル等の工具を用いてテーパー状の穴あけ加工を施すことで形成してもよい。
【0041】
本実施形態では、第二被締結材50は、平板状の板材である。第二被締結材50は、少なくとも第一軸部3が貫通しうる長さであれば形状等は問わないが、例えば、第一軸部3の長さよりも薄い厚みを有する板状の部材である。第一被締結材40および第二被締結材50の材料は、特に制限されないが、鋲1aで締結可能な金属(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金等)で形成されている。第一被締結材40は、例えば、鋳造材であってもよい。この場合は、第一被締結材40の形成工程において、鋳造により下穴41も形成しておくことが望ましい。第二被締結材50は、例えば、金属または樹脂で形成された板材であってもよい。なお、鋳造材とは、熱をかけて溶かし、溶湯とよばれる液状になった金属を金型に入れて冷やし固めていくことを前提にした材料である。また、この場合に、鋳造材は、Al-Si-Cu系合金(からなる鋳造材)であることが好ましく、さらにはJISH5302 ADC12であることが好ましい。
【0042】
[鋲打ち方法について]
本発明の実施形態に係る鋲1a,1bを用いた鋲打ち方法について、図面を参照して詳細に説明する。図7に示す鋲打ち装置10は、重ねられた締結対象の二部材(被締結材30)に鋲1a(または鋲1b(以下同様))を高速で打ち込み、被締結材30を締結するものである。
【0043】
図7に示すように、鋲打ち装置10は、エアコンプレッサ11と、第1ニードルバルブ12と、増圧器13と、第2ニードルバルブ14と、ソレノイドバルブ15と、鋲射出部16と、これらの構成を繋ぐホース17とを備えている。
【0044】
エアコンプレッサ11は、空気を圧縮して送り出す装置である。第1ニードルバルブ12は、増圧器13用の弁である。増圧器13は、エアコンプレッサ11から送り出された空気を増圧する装置である。第2ニードルバルブ14およびソレノイドバルブ15は、圧縮された空気を鋲射出部16に送る調整用の弁である。
【0045】
本実施形態の鋲打ち方法では、下穴41を有する第一被締結材40の表面40aに、第二被締結材50の裏面50aを重ね合わせる(図6の状態とする)準備工程と、第二被締結材50の表面50b(図6)から離れた位置にセットした金属製の鋲1aを鋲打ち装置10を用いて下穴41の位置に向けて移動させて、鋲1aを第二被締結材50、第一被締結材40の順に打ち込んで下穴41内に到達させる鋲打ち工程と、を含む。
【0046】
すなわち、鋲射出部16は、ここでは長尺の円筒形状を呈し、圧縮された空気の圧力(エアー圧)を用いて内部に収容された弾20を被締結材30に向けて射出する。弾20は、鋲1aを含んで構成されていればよく、鋲1aのみであってもよい。ここでは、図8に示すように、鋲1aに補助部材21を取り付けたものを弾20として使用する。補助部材21は、鋲1aを安定した状態で被締結材30に打ち込むためのものである。また、補助部材21は、補助部材21とともに射出される鋲1aの運動エネルギーを増加させるためのものである。例えば鋲1aが軽量である場合に重さを調整するために補助部材21を使用する。
【0047】
補助部材21の材質、形状や質量は、鋲1aを安定した状態で被締結材30に打ち込むことができればよく、適宜設定することができる。ここでの補助部材21は、図8に示すように、内部に略円柱状の内周面21bが形成された円筒状を呈し、一方の開口部21aから内周面21b内に第二軸部4が差し込まれて補助部材21に鋲1aが固定されている。すなわち、内周面21bが保持部として第二軸部4を保持する。他方の開口部21cから圧縮された空気を内部に取り込み、取り込んだ空気の圧力を用いて弾20が鋲射出部16から高速で射出される。なお、予め、鋲射出部16内の弾20は取り付けられている鋲1aの第一軸部3の中心軸線が、その下に位置する被締結材30の下穴41の中心軸線に合致するようにしておく。また、鋲1aが第二軸部4を設けない形態で補助部材21に固定されていてもよい。
【0048】
鋲射出部16から射出された弾20は、回転しない状態で空中を高速で移動し、被締結材30に到達する。被締結材30に到達した鋲1aは、第一軸部3(図1参照)に刻設される螺旋溝3bによってねじ込まれるようにして回転しながら被締結材30に打ち込まれる。そして、第一軸部3全体が被締結材30に挿入し、頭部2(図1参照)が被締結材30に当接することで鋲打ちは完了する。これにより、二部材からなる被締結材30は締結される。その結果、被締結材30は鋲1aで締結されて、図9に断面図で示すような締結物60となる。
【0049】
[数値範囲について]
次に、本実施形態に係る鋲打ち方法に好適な各部の数値範囲について説明する。
まず、鋲1aの打ち込み後に穴部43の内壁面と第一軸部3とが接触している位置における、鋲1aの打ち込み前の当該内壁面の円周長と第一軸部3の円周長との差を、鋲1aの打ち込み前の当該内壁面の円周長で割った値を「締め代」とする。「最大締め代(%)」は、穴部43の内壁面と第一軸部3とが接触している区間において、締め代が最大値をとる位置の締め代である。
【0050】
本実施形態では、「最大締め代(%)」は、通常、3~13%であり、4~12%であることが好ましく、5~10%であることがより好ましく、6~8%であることがさらに好ましい。
【0051】
また、「鋲1a接触長さ(mm)」は、鋲1aが穴部43の内壁面の軸方向に接触している部分の長さである。本実施形態では、「鋲1a接触長さ(mm)」は、5mm以上であることが好ましく、6mm以上であることがより好ましく、7mm以上であることがさらに好ましい。
また、「鋲1a接触長さ(mm)」は、先端部3a1の根元部分(基端部3a2)の径φ2の125%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましく、175%以上であることが好ましい。
【0052】
また、下穴41の穴部43の入口部の直径である開口径φ1(図6)と、本体部3aの基端部3a2の径φ2(図2)との関係について、1.0×φ2<φ1≦1.1×φ2であることが好ましく、1.01×φ2<φ1≦1.09×φ2であることがより好ましく、1.02×φ2<φ1≦1.08×φ2であることがさらに好ましい。
【0053】
また、下穴41の穴部43の内壁面の傾きであるテーパー角度θ3(図6)は、2~10°であることが好ましく、3~9°であることがより好ましく、4~8°であることがさらに好ましい。
【0054】
また、鋲1aまたは鋲1bの頭部2の周縁部2bの厚さ(図4および図5参照。鋲1bについては最も厚い部分。)は、0.2~2.0mmであることが好ましく、0.3~1.8mmであることがより好ましく、0.5~1.5mmであることがさらに好ましい。
【0055】
また、図4に示すように、鋲1aの頭部2の傾斜角度θ1は、鋲1aの軸心に対して垂直な仮想面から周縁部2bの下面までの角度である。また、図5に示すように、鋲1bの頭部2の傾斜角度θ1は、鋲1bの軸心に対して垂直な仮想面から周縁部2bの下面までの角度である。鋲1bのように、周縁部2bの上面と下面との傾斜角度が異なる場合には、下面の傾斜角度を採用する。これは、下面側が耐リーク性に寄与していると考えられるためである。傾斜角度θ1は、5~30°であることが好ましく、10~25°であることがより好ましく、15~20°であることがさらに好ましい。
【0056】
さらに、螺旋角度β(図3参照。前記のとおり。)は、好ましくは60°以上、より好ましくは120°以上、さらに好ましくは180°以上、特に好ましくは240°以上である。また、螺旋角度βは、好ましくは360°以下、より好ましくは330°以下、さらに好ましくは300°以下である。螺旋角度βが上記下限値以上であることで、第一被締結材40及び第二被締結材50が鋲1の螺旋溝3bに入り込んで噛み合うことによって発揮される引張強さが向上しやすくなる。また、螺旋角度βが上記上限値以下であることで、鋲1a,1bを打ち込む際に、鋲1a,1bが螺旋溝3bの影響を受けてスムーズに回転しながら第一被締結材40及び第二被締結材50にねじ込まれやすくなる。
【0057】
[作用効果について]
以上説明した実施形態による作用効果について説明する。
従来、螺旋溝を有する鋲を用いて二つの板材を締結する方法が知られていたが(前記特許文献1)、被締結材が板材等と角材等との場合には、鋲が打ち込まれた際に角材等に割れが発生することがあるため、締結が困難であった。
【0058】
ここで、従来、タッピングネジをねじ込む際に被締結物に下穴を設けることが行われていた。タッピングネジの場合には、雄ネジの径とひっかかり率を考慮して、雄ネジの山の径と谷の径との間に下穴径を設定することができる。そして、下穴にタッピングネジをねじ込むことで、ネジ山が下穴を削って雌ネジが形成されて、雄ネジと雌ネジとの作用によって締結を行うことが出来る。
しかし、セルフタップ締結の場合、アルミ合金鋳物に付与する下穴の形状に高精度が求められる。また、一般的には金型寿命が短くなる課題がある。
一方、従来の螺旋溝を有しない鋲の場合には、被締結物に設けられた下穴に鋲が挿入されることで、下穴の周囲の被締結物に変形が生じて、変形に伴う復元力によって鋲が締め付けられることで締結力が発生する。ここで、下穴が鋲と同サイズか鋲よりも大きい場合には、被締結物の変形が生じないか変形が少なくなることで、継手強度が不足することになる。他方、下穴が鋲よりも小さすぎる場合には、下穴の周囲の被締結物の変形が大きくなることで締結物に割れが発生してしまう。特に、被締結物がADC12等のアルミダイカストのような伸びの低い材料の場合には、ある程度の変形量を超えた場合に締結物に割れが発生し易くなる。
【0059】
これに対し、本実施形態では、下穴41が先細りテーパー状の略円錐形状または略円錐台形状の内壁面を有する穴部43を備えている。また、鋲1a,1bは先細り形状の第一軸部3を有するとともに、穴部43の内壁面と第一軸部3とが接触している位置における、内壁面の円周長と第一軸部3の円周長との差を当該内壁面の円周長で割った値である締め代に関し、当該締め代の最大値となる最大締め代が3~13%となっている。
これにより本実施形態によれば、テーパー状に形成された穴部43の内壁面に対して、先端側に向かうほど縮径する先端部3a1が接触することによって被締結材30の変形を生じさせて、鋲1a,1bによる締結を行うことができる。さらに、最大締め代が13%以下であることにより、下穴41の周囲の第二被締結材50の過度の変形を抑えることで、被締結材30の割れの発生を抑制することができる。また、最大締め代が3%以上であることにより、下穴41の周囲の第二被締結材50を適度に変形させるだけの締め代を確保することができ、第二被締結材50の変形に伴って生じる締結力を発揮させやすくすることができる。したがって、本実施形態によれば、割れの発生を防いで、十分な耐リーク性を有する鋲打ち方法および締結物60を提供することができる。
【0060】
さらに、第一軸部3に溝を設けることで、鋲1a,1bが打ち込まれた際に溝によって第一被締結材40の材料を削り取ることができる。ここで、ネジの場合には、ネジ山が設けられることで、ネジ山の高さに応じて円周長が拡大することになる。本実施形態では、第一軸部3の外周面に溝が設けられている場合であっても第一軸部3の円周長は変わることがないので、鋲1a,1bが打ち込まれた際に生じる第一被締結材40の周囲への変形を抑えることができる。また、鋲1a,1bの打ち込みによって削り取られた材料の一部が溝の中に取り込まれることで、第一被締結材40の変形に伴うストレスを緩和することができる。よって、被締結材30の割れの発生を抑制しながら、鋲1a,1bを下穴41に挿入して被締結材30の締結をすることができる。また、セルフタップネジを用いたセルフタップ締結の場合ほど、アルミ合金鋳物に付与する下穴41の形状に高精度が求められることはなく、被締結材30の金型寿命が短くなることを抑制することができる。
【0061】
また、下穴41の内壁面と第一軸部3とが接触している接触箇所における当該第一軸部3の軸方向の長さである鋲接触長さが、5mm以上である。これにより、締結物60の引っ張り強さを向上させることができる。
【0062】
ここで、例えば、テーパー状の下穴に向けて、柱状の軸部を有するとともに軸部の先端側に尖った形状の先端部を有するネジや釘を打ち込む場合、ネジや釘の軸部の先端側において先端部の基端側と接している部分での締め代が最大になると考えられる。すなわち、ネジや釘の場合には、柱状の軸部の先端側における締め代が最大となり、尖った先端部では締め代が最大とならないと考えられる。また、ネジや釘の場合には、柱状の軸部の先端側が下穴と接触する箇所において、ネジや釘の打ち込みに伴って生じる応力が集中すると考えられる。これに対し、本実施形態では、第一軸部3の先端部3a1に設けられた膨出部5の締め代が最大締め代となる。換言すると、最大締め代は、第一軸部3の先端でも基端でもなく、軸方向の真ん中近傍となっている。また、基端部3a2ではなく、膨出部5を有する先端部3a1において最大締め代が最大となっている。これにより、鋲1a,1bでは、膨出形状を有する膨出部5において比較的に広い範囲で下穴41の内壁面と接触することが可能となるため、鋲1a,1bの打ち込みに伴って生じる応力が分散されて、第二被締結材50に生じる割れの発生を抑制しやすくなる。また、鋲1a,1bでは、膨出部5において下穴41の内壁面と接触することで、第一軸部3と穴部43との引抜き抵抗を大きくすることができる。したがって、より十分な耐リーク性をもたせることができる。
【0063】
下穴41の穴部43の開口径φ1は、第一軸部3の基端部3a2の径φ2よりも大きい。これにより、鋲1a,1bを打ち込む際に下穴41の開口部42と鋲1a,1bの第一軸部3との間で負荷が高まるのを抑制し、第一軸部3を下穴41にスムーズに挿入することができる。
【0064】
また、穴部43の開口径φ1と第一軸部3の基端部3a2の径φ2との関係は、1.0×φ2<φ1≦1.1×φ2であることが好ましい。かかる方法によれば、最大締め代が好適に特定されることにより、被締結材30の割れの発生をより抑制して、より充分な耐リーク性をもたせることができる。
【0065】
また、穴部43のテーパー角度θ3は、2~10°であることが好ましい。かかる方法によれば、最大締め代が好適に特定されることにより、被締結材30の割れの発生をより抑制して、より充分な耐リーク性をもたせることができる。
【0066】
また、鋲1a,1bは、中心部2aと周縁部2bとを有する頭部2をさらに備えており、頭部2の周縁部2bの径は、第一軸部3の径よりも大きい。これにより、頭部2が被締結材30の表面に弾性変形して密着することで、締結物60の耐リーク性をより向上させることができる。つまり、頭部2は、被締結材30打ち込まれた際に、鋲1a,1bが被締結材30の表面に強く密着する部位である。鋲1a,1bの打ち込みで発生するエネルギー(運動エネルギー)を受けて、頭部2が弾性変形して被締結材30の表面と強く密着して保持されることで、気密性をサポートしている。また、鋲1a,1bが被締結材30と締結されるので、頭部2が弾性変形したままで保持される。また、頭部2の周縁部2bは、鋲1a,1bが打ち込まれた際のストッパーにもなり、運動エネルギーを吸収することができる。
【0067】
また、頭部2は、周縁部2bが第一軸部3の側に傾斜しながら拡がる傘形状であるため、締結物60の耐リーク性をより向上させることができる。
【0068】
また、頭部2の周縁部2bの厚さは、0.1~2.0mmの数値範囲にあるので、締結物60の耐リーク性をより向上させることができる。
また、頭部2の傾斜角度θ1は、5~30°の数値範囲にあるので、締結物60の耐リーク性をより向上させることができる。
【0069】
また、第一軸部3に刻設された溝が、第一軸部3の外表面に螺旋状に形成された螺旋溝3bであり、鋲打ち工程では、第二被締結材50の表面50bから離れた位置にセットした鋲1aまたは1bを回転しない状態で下穴41の位置に向けて移動させ、鋲1aまたは1bを第二被締結材50、第一被締結材40の順に回転させながらねじ込んで下穴41内に到達させる。そのため、鋲1aまたは1bの回転により螺旋溝3bが被締結材30の表面材を削り取って下穴41を埋めることができる。また、螺旋溝3bが削り取った第一被締結材40及び第二被締結材50の材料を螺旋溝3bの内部に保持して、鋲1a,1bと下穴41との間の空間への余分な材料流入を抑制することができる。したがって、鋲1a,1bの打ち込みに伴って、第一被締結材40及び第二被締結材50と干渉する鋲1a,1bの体積に応じて第一被締結材40が膨張することによる変形を抑えて、第一被締結材40割れを抑制しやすくなる。ここで、第一被締結材40が伸びの低いアルミ合金鋳物であるときには、螺旋溝3bによる割れの抑制がいっそう有効となる。
【0070】
また、鋲打ち工程では、第二軸部4を保持する保持部(内周面21b)を有する補助部材21を用い、当該補助部材21で第二軸部4を保持した状態で鋲1aまたは1bを補助部材21ごと下穴41の位置に向けて移動させる。そのため、補助部材21により鋲1aまたは1bの重量を増すことで、鋲1aまたは1bが打ち込まれる際の運動エネルギーを増大させることができる。したがって、補助部材21を利用して、より効率的に鋲1a,1bを打ち込むことができるようになる。
【0071】
また、第一被締結材40を鋳造材とする場合、鋳造段階で予め下穴41を形成しておくことができるので、第一被締結材40にドリル加工で下穴41を形成する工程を省くことができ、生産性の向上を図ることができる。
【0072】
<その他>
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
本実施形態では鋲1a,1bを空気の圧力を用いて被締結材30に射出していたが、他の方法を用いて鋲1a,1bを被締結材30に打ち込んでもよい。例えば、空気以外の物質を用いて鋲1a,1bに圧力を付与してもよいし、機構的な動作(例えば、ピストンの往復運動)により鋲1,1bを被締結材30に打ち込んでもよい。
【実施例0073】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、本発明に係る鋲1aの特性を把握するために、実験データ1,2の試験を行った。
実験データ1,2では、いずれも様々な条件で、複数の実施例と、当該実施例に対する複数の比較例について前記の鋲打ち装置10を用いて被締結材30に鋲1aを打ち込み、被締結材30を鋲1aで締結した締結物60(図9)を作成して、締結物60に対して各種評価を行った(図11図12)。
【0074】
[評価]
<割れの有無>
締結物60の割れの有無を目視によって確認した。締結物60に割れた生じたケースを「×」、割れが生じないケースを「○」として評価した。
【0075】
<リーク試験>
締結物60の第二被締結材50の表面50b側において、頭部2及び第一軸部3の全体を覆うように樹脂製治具を配置した。樹脂製治具の配置後、樹脂製治具を第二被締結材50に向けて加圧することで、樹脂製治具と第二被締結材50との間からエアーが漏れない状態となるようにセットすることで試験体を準備した。試験体を水没させた状態で、表面50b側から樹脂製治具の内部に0.3MPaの圧力によりエアーを吹き込むことで加圧を行った。第一被締結材40と第二被締結材50との接合面からの気泡の発生を確認することによってリークの有無を評価した。1分の間に気泡が発生しなかった場合を「良」、1分の間に発生した気泡の数が5個以下であった場合を「可」、1分の間に発生した気泡の数が6個以上であった場合を「不可」として評価した。3点の締結物60に対してリーク試験を行い、3点の全数が良であったものを「○」、3点のうち少なくとも一つが良であったがその他が可または不可であったものを「△」、3点の全数が可または不可であったものを「×」と評価した。
【0076】
<引っ張り強さ>
図10A図10Bに示すように、締結物60の第一被締結材40を下側、第二被締結材50を上側に位置させて、第二被締結材50の下端側を所定の治具(図示略)で固定した。この状態で、引張試験機(島津製作所製、オートグラフ、AG-50kNX)を用いて、第一被締結材40の両端に対して上向きに引き上げる力を加えることで引抜試験を行った。引張試験機によるクロスヘッド速度は3mm/minとした。引抜試験において、鋲1a及び第二被締結材50が第一被締結材40から引き抜かれるまでの荷重を測定し、最大荷重を示した数値を締結物60の引っ張り強さとした。その結果、締結物60の引っ張り強さが2500Nを超えるものを「○」、2000~2500Nのものを「△」、2000N未満のものを「×」として評価した。
なお、リーク試験及び引張強さ試験の評価を行わなかったケースでは、該当欄に「‐」と表記している。
【0077】
[実験データ1]
実験データ1では、図6を参照して説明したように、下穴41を有する四角柱状の第一被締結材40の表面40aに、板状の第二被締結材50の裏面50aを重ね合わせた。この状態で、図7図8を参照して説明したように、鋲打ち装置10を用いて、補助部材21を取り付けた鋲1aを、第二被締結材50、第一被締結材40の順に打ち込んで、鋲1aを下穴41内に到達させた。このようにして、第一被締結材40と第二被締結材50とを鋲1aによって締結した、締結物60を得た。
【0078】
実験データ1中の各実施例、比較例においては、図1図4を参照して説明した鋲1aを用いた。鋲1aにおいて、本体部3aの先端部3a1の長さは9mm、先端部3a1の根元部分の径φ2は4mmである。また、側断面視で第一軸部3の先端部3a1及び膨出部5を構成する円弧の曲率半径R1は22.5(mm)である。また、本体部3aの基端部3a2の長さは3mm、基端部3a2の径φ2は4mm、基端部3a2の半径R2は2mmである。また、螺旋溝3bによる螺旋角度βは180°である。また、首部3cの長さは2mm、首部3cの径は3mmである。また、第二軸部4の長さは10mm、第二軸部4の径は3mmである。また、頭部2の長軸方向の長さ(高さ)は3mm、頭部2の傾斜角度θ1は20°、周縁部2bの厚さは1mmである。
【0079】
第一被締結材40は、断面が縦12mm、横12mmの正方形であり、高さ35mmの四角柱状のブロック材である。開口部42のテーパー角度θ2(図6)は105°、開口部42の高さ(深さ)(図6)は1mmである。穴部43の深さは15mmである。下穴41の深さは16mmである。第一被締結材40の材料としてはADC12を用いた。
【0080】
第二被締結材50は、縦80mm、横30mm、厚さ2.0mmの板材である。第二被締結材50の材料としてはA5052-H34を用いた。
【0081】
鋲打ち装置10において、エアコンプレッサ11によるエアー圧を0.75MPaとした。また、鋲打ち装置10による打ち込み速度を70m/secとした。
補助部材21の重量は、約14.4gである。
【0082】
実験データ1では、各実施例、比較例において、下穴41の穴部43の開口径φ1(図6)、テーパー角度θ3(図6)、片側テーパー角度(テーパー角度θ3の半分の値)、を様々な値に設定して実験を行った。
実験データ1では、「締め代」に関し、第一被締結材40及び第二被締結材50に鋲1aを打ち込んだ状態での位置関係において、「締め代が最大になる位置の鋲1aの径(mm)」、「締め代が最大になる位置の下穴の径(mm)」をそれぞれ算出した。さらに、締め代の最大値となる「最大締め代(mm)」および「最大締め代(%)」、「鋲1a接触長さ(mm)」を算出した。
実験データ1の結果は、図11に示している。
【0083】
<実施例B>
実施例B12では、開口径φ1を3.97mm、テーパー角度θ3を2.0°、片側テーパー角度を1.0°とした。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.989mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.681mm、最大締め代が0.091mmおよび4.8%、鋲1a接触長さが5.5mmであった。
【0084】
実施例B21では、開口径φ1を4.05mm、テーパー角度θ3を3.0°、片側テーパー角度を1.5°とした。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.989mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.681mm、最大締め代が0.089mmおよび4.7%、鋲1a接触長さが5.5mmであった。
【0085】
実施例B22では、開口径φ1を3.95mmとした以外は実施例B21と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.989mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.681mm、最大締め代が0.139mmおよび7.5%、鋲1a接触長さが6.0mmであった。
【0086】
実施例B31では、開口径φ1を4.13mm、テーパー角度θ3を4.0°、片側テーパー角度を2.0°とした。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.781mm、最大締め代が0.085mmおよび4.6%、鋲1a接触長さが4.8mmであった。
【0087】
実施例B32では、開口径φ1を4.03mmとした以外は実施例B31と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.781mm、最大締め代が0.137mmおよび7.4%、鋲1a接触長さが6.3mmであった。
実施例B33では、開口径φ1を3.93mmとした以外は実施例B31と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.781mm、最大締め代が0.187mmおよび10.5%、鋲1a接触長さが6.6mmであった。
【0088】
実施例B41では、開口径φ1を4.11mm、テーパー角度θ3を5.0°、片側テーパー角度を2.5°とした。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.676mm、最大締め代が0.187mmおよび7.6%、鋲1a接触長さが6.5mmであった。
実施例B42では、開口径φ1を4.01mmとした以外は実施例B41と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.577mm、最大締め代が0.190mmおよび10.7%、鋲1a接触長さが7.0mmであった。
【0089】
実施例B51では、開口径φ1を4.20mm、テーパー角度θ3を6.0°、片側テーパー角度を3.0°とした。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.671mm、最大締め代が0.142mmおよび7.7%、鋲1a接触長さが6.0mmであった。
実施例B52では、開口径φ1を4.10mmとした以外は実施例B51と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.571mm、最大締め代が0.192mmおよび10.8%、鋲1a接触長さが7.0mmであった。
【0090】
実施例B61では、開口径φ1を4.36mm、テーパー角度θ3を8.0°、片側テーパー角度を4.0°とした。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.899mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.591mm、最大締め代が0.154mmおよび8.5%、鋲1a接触長さが5.5mmであった。
実施例B62では、開口径φ1を4.26mmとした以外は実施例B61と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.899mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.571mm、最大締め代が0.204mmおよび11.7%、鋲1a接触長さが6.5mmであった。
【0091】
実施例B71では、開口径φ1を4.63mm、テーパー角度θ3を10.0°、片側テーパー角度を5.0°とした。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.718mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.488mm、最大締め代が0.115mmおよび6.6%、鋲1a接触長さが4.5mmであった。
実施例B72では、開口径φ1を4.43mmとした以外は実施例B71と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.718mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.388mm、最大締め代が0.173mmおよび9.7%、鋲1a接触長さが5.5mmであった。
【0092】
<比較例B>
比較例B11では、開口径φ1を4.07mmとした以外は実施例B12と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.989mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.681mm、最大締め代が0.041mmおよび2.1%、鋲1a接触長さが4.0mmであった。
【0093】
比較例B43では、開口径φ1を3.91mmとした以外は実施例B41と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.476mm、最大締め代が0.240mmおよび13.8%、鋲1a接触長さが7.3mmであった。
比較例B44では、開口径φ1を3.71mmとした以外は実施例B41と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.276mm、最大締め代が0.340mmおよび20.7%、鋲1a接触長さが7.5mmであった。
【0094】
比較例B53では、開口径φ1を4.00mmとした以外は実施例B51と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.955mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.471mm、最大締め代が0.242mmおよび13.9%、鋲1a接触長さが7.5mmであった。
【0095】
比較例B63では、開口径φ1を4.16mmとした以外は実施例B61と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.899mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.781mm、最大締め代が0.254mmおよび14.9%、鋲1a接触長さが7.5mmであった。
【0096】
比較例B73では、開口径φ1を4.23mmとした以外は実施例B71と同様にして行った。締め代が最大になる位置の鋲1aの径が3.718mm、締め代が最大になる位置の下穴の径が3.281mm、最大締め代が0.215mmおよび13.1%、鋲1a接触長さが6.0mmであった。
【0097】
<検討>
図11の実験データ1の各実施例の評価に示すように、「最大締め代(%)」の値が3~13%の範囲内にあれば、締結物60に割れが生じず、また、十分な耐リーク性を締結物60にもたせることができると判明した。
【0098】
また、「鋲1a接触長さ(mm)」が概ね5mm以上であれば、締結物60の引張強さが2500Nを超える良好な値を得られることが判明した。
【0099】
また、下穴41の穴部43の開口径φ1と、本体部3aの基端部3a2の径φ2との関係について、“1.0×φ2<φ1≦1.1×φ2”の関係にあり、また、下穴41の穴部43のテーパー角度θ3が、2~10°の範囲内にあることで、鋲1aとの接触によって所望の最大締め代を達成することができる形状を有する下穴41を形成することができ、これにより、評価結果が良好になる傾向にあることが判明した。
【0100】
図13は実施例B42により作成した締結物60の断面図である。図13に示すように、本実施例によれば、第一被締結材40と第二被締結材50との間が隙間なく締結されていることがわかる。また、第一軸部3と第一被締結材40との間も隙間なく結合されている。また、第一軸部3の螺旋溝3bに第一被締結材40の一部が入り込んでおり、回転しかつ第一締結部材40を削りながら挿入されていることがわかる。
【0101】
[実験データ2]
実験データ2では、各実施例において、螺旋角度β(図3)を様々な値に設定した以外は実験データ1の実施例B42と同様にして実験を行った。
実験データ2の結果は、図12に示している。
【0102】
<実施例C>
実施例C11では螺旋角度βが53°、実施例C12では105°、実施例C13では180°、実施例C14では210°、実施例C15では315°、であった。なお、実施例B42と実施例C13とは同一のデータである。
【0103】
<検討>
実験データ2の各実施例から、螺旋角度βは、60~360°の範囲内にあることで、締結物60に割れが生じておらず、締結物60が十分なリーク耐性を有しており、締結物60の引っ張り強さが十分に高くなることがわかった。
【符号の説明】
【0104】
1a 鋲
1b 鋲
2 頭部
2a 中心部
2b 周縁部
3 第一軸部
3a1 先端部
3a2 基端部
3a3 先端
3b 螺旋溝(溝)
4 第二軸部
5 膨出部
21 補助部材
21b 内周面(保持部)
30 被締結材
40 第一被締結材
40a 表面
41 下穴
43 穴部
50 第二被締結材
50a 裏面
50b 表面
60 締結物
φ1 開口径
φ2 径
θ1 傾斜角度
θ2 開口部のテーパー角度
θ3 下穴のテーパー角度
β 螺旋角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13