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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061797
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】複合型断熱材
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20240426BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F16L59/02
F01N3/28 311N
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035768
(22)【出願日】2024-03-08
(62)【分割の表示】P 2021555782の分割
【原出願日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2019206787
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2019年11月1日開催のThe 30th International Symposium Transport Phenomena
(71)【出願人】
【識別番号】000119287
【氏名又は名称】井前工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109793
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 惠理子
(72)【発明者】
【氏名】君家 直之
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 公彦
(72)【発明者】
【氏名】川岡 周矢
(72)【発明者】
【氏名】井前 憲司
(72)【発明者】
【氏名】井前 義彦
(57)【要約】
【課題】 薄くても、高温で優れた断熱性を有する複合型断熱材を提供する。
【解決手段】 ヒドロキシル基を有するシリカ繊維製の第1基布;ヒドロキシル基を有するシリカ繊維製の第2基布;並びに前記第1基布と前記第2基布とで挟持された断熱層であって、断熱材料の粒子及び繊維長0.5~5mmのシリカ短繊維を含む断熱層を含む複合型断熱材。前記断熱材料の粒子は、シリカエアロゲル粒子及びセラミック粒子から選択される少なくとも1種であり、前記断熱層には、さらに膜形成性無機バインダーが含まれていてもよい。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基を有するシリカ繊維製の第1基布;
ヒドロキシル基を有するシリカ繊維製の第2基布;及び
前記第1基布と前記第2基布とで挟持された断熱層であって、断熱材料の粒子及び繊維長0.5~5mmのシリカ短繊維を含む断熱層
を含む複合型断熱材。
【請求項2】
前記断熱材料の粒子は、シリカエアロゲル粒子及びセラミック粒子から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の複合型断熱材。
【請求項3】
前記断熱材料の粒子は、粒子径0.5μm~1mmである請求項1に記載の複合型断熱材。
【請求項4】
前記断熱層は、さらに膜形成性無機バインダーを含む請求項1に記載の複合型断熱材。
【請求項5】
前記膜形成性無機バインダーは、層状ケイ酸塩である請求項4に記載の複合型断熱材。
【請求項6】
前記シリカ短繊維の繊維長は、0.5~3mmである請求項1に記載の複合型断熱材。
【請求項7】
前記断熱層に含まれる前記シリカ短繊維の少なくとも一部が、前記第1基布及び前記第2基布に含まれる前記シリカ繊維と、シロキサン結合を形成している請求項1~6のいずれか1項に記載の複合型断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカエアロゲル粒子、セラミック粒子といった断熱材料を、シリカ繊維製基布で挟持したサンドイッチタイプの複合型断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車、ディーゼル車の排気システムでは、排ガス中の大気汚染物質(炭化水素、NOx、CO、NOなど)を無害なNと酸素に変換して排出するために、排ガスの酸化還元分解反応を触媒する触媒コンバータが、エギゾーストマニホールドの下流に取り付けられている。
【0003】
図1に示すように、一般的な触媒コンバータ1は、ステンレス製のケーシング2内にハニカム構造のセラミック製の触媒担体3が収納されていて、ケーシング2と触媒担体3との隙間に、断熱材4が充填されている。排ガスは、ハニカムの空孔を通過する際に、担持されている触媒と接することで浄化される。
【0004】
上記断熱材4は、セラミック製担体を外部からの振動や衝撃からの保護、セラミック製担体とステンレス製ケーシングの熱膨張差の吸収、触媒担体の位置決め、さらには周辺機器と高温排気ガスとの断熱といった役割を有し、一般に、グラスウールやロックウールなどの無機系繊維塊が用いられている(例えば、特開2018-168806号公報の段落0009)。
【0005】
グラスウール、ロックウールの他、特開2013-24214号公報では、触媒担体の周囲に包囲する触媒コンバータ用保持材として、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維、これらの混合繊維群から選ばれる第1繊維からなる保持部と、ガラス繊維、ロックウール、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びこれらの混合繊維から選ばれる第2繊維からなる断熱部とを、湿式により積層複合化したものが提案されている。
また、特表2013-514496号公報では、ケーシングとセラミック製触媒担体との間に取り付けることができるマットとして、シートの中に湿って横たわり且つニードリングにより物理的に絡み合っている複数のゾル-ゲル無機繊維由来のマットが提案されている。かかるマットは、安定化させたゾルゲル繊維の層を湿潤形成し、これをニードリングにより繊維同士を絡み合わせた後、焼成することにより形成(湿式積層)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-168806号公報
【特許文献2】特開2013-24214号公報
【特許文献3】特表2013-514496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、触媒コンバータに担持される浄化触媒としては、酸化還元分解を同時にする三元触媒が一般的である。三元触媒反応が有効に発揮できる温度は、400~700℃程度であることから、触媒担体をかかる温度範囲に保持することが、排ガスの高度な浄化のためには必要である。
【0008】
この点、走行時の排ガス温度は、500℃以上の高温であり、触媒コンバータは有効に作用することができる。しかしながら、走行初期や加速時などは、排ガス温度が低いため、触媒担体の温度を有効に上昇させる必要がある。特に近年の厳しい排ガス規制をクリアするためには、走行初期のケーシングの放熱による温度低下を早い段階で防止すること、あるいは一旦停止した後の走行開始直後から浄化触媒が有効に機能を発揮することが求められる。
かかる要求を満足するためには、高温に達した触媒担体を、一旦停止時にも高温に保持できる保温が必要である。換言すると、触媒担体の温度低下を小さくするとともに、外気温と遮断できる優れた断熱性能を有することが求められる。したがって、触媒担体の周囲に設けられる断熱材には、このような要求を満たすことができる断熱性能が求められるようになっている。
【0009】
触媒コンバータに充填される断熱材、すなわちガラス繊維、ロックウール、シリカ繊維やアルミナ繊維からなるマットやブランケットで、所望の断熱効果(保温効果)を達成するためには、現状では、厚みを2cm以上とする必要がある。しかしながら、ケーシング及び触媒担体のサイズによる制約があり、分厚くすることは実質上困難である。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、厚み3~18mm程度でも所望の断熱効果を発揮することができる複合型断熱材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の複合型断熱材は、以下の形態を有するものである。
[形態1]
ヒドロキシル基を有するシリカ繊維製の第1基布;ヒドロキシル基を有するシリカ繊維製の第2基布;並びに前記第1基布と前記第2基布とで挟持された断熱層であって、断熱材料の粒子及び繊維長0.5~5mmのシリカ短繊維を含む断熱層を含む複合型断熱材。
[形態1の2]
前記シリカ短繊維の繊維長は、0.5~3mmであってもよい。
【0012】
[形態2]
前記断熱材料の粒子は、シリカエアロゲル粒子及びセラミック粒子から選択される少なくとも1種である形態1に記載の複合型断熱材。
【0013】
〔形態3〕
前記断熱材料の粒子は、粒子径0.5μm~1mmである形態1又は形態2に記載の複合型断熱材。
【0014】
[形態4]
前記断熱層は、さらに膜形成性無機バインダーを含む形態1~3のいずれか1つの形態である複合型断熱材。
[形態5]
形態4において、前記膜形成性無機バインダーは、層状ケイ酸塩である複合型断熱材。
【0015】
[形態6]
第1基布に含まれるシリカ繊維と第2基布に含まれるシリカ繊維の繊維径、繊維長が、異なっている形態1~5のいずれか1つの形態である複合型断熱材。
[形態7]
第1基布に含まれるシリカ繊維と第2基布に含まれるシリカ繊維の繊維長は、30~150mmである形態1~6のいずれか1つの形態である複合型断熱材。
【0016】
〔形態8〕
前記断熱層に含まれる前記シリカ短繊維の少なくとも一部が、前記第1基布及び前記第2基布に含まれる前記シリカ繊維と、シロキサン結合を形成している形態1~7のいずれか1つの形態である複合型断熱材。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複合型断熱材は、シリカエアロゲル粒子、セラミック粒子といった断熱材料が、シリカ繊維製の第1の基布と第2の基布との間に安定的に挟持されているので、耐熱性に優れ、且つ優れた断熱性を有する。
しかも、断熱層に含まれているシリカ短繊維は、断熱層の強度アップに寄与できるだけでなく、シリカ短繊維の少なくとも一部が、断熱層とこれを挟持している第1基布、第2基布を構成しているシリカ繊維とシロキサン結合を形成できるので、3層構造の一体性が高く、粒子状の断熱材を安定的に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】自動車に用いられている触媒コンバータの構造を示す模式断面図である。
図2】本発明の第一実施形態の複合型断熱材の構造を示す模式図である。
図3】本発明の第二実施形態の複合型断熱材の構造を示す模式図である。
図4】本発明の第三実施形態の複合型断熱材の構造を示す模式図である。
図5】本発明の第四実施形態の複合型断熱材の構造を示す模式図である。
図6】本発明の第五実施形態の複合型断熱材の構造を示す模式図である。
図7】参考例2の断熱材の構成を示す模式図である。
図8】複合型断熱材(No.1~4、参考例1)の熱伝導性試験の結果を表すグラフである。
図9】複合型断熱材(No.3,5、参考例1,2)の熱伝導性試験の結果を表すグラフである。
図10】曲げ強度試験方法を説明するための模式図である。
図11】複合型断熱材(No.3、参考例2)の曲げ強度試験の結果を表すグラフである。
図12】複合型断熱材(No.1,5、参考例4)の曲げ強度試験の結果を表すグラフである。
図13】No.1の複合型断熱材の切断面を撮像した電子顕微鏡写真である。
図14】No.3の複合型断熱材の切断面を撮像した電子顕微鏡写真である。
図15】剥離強度試験(No.5、参考例4)の結果を表すチャートである。
図16】No.5の接合界面を撮像した光学顕微鏡写真及び三次元画像である。
図17】参考例4の接合界面を撮像した光学顕微鏡写真及び三次元画像である。
図18】No.1の剥離強度試験結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔複合型断熱材の製造方法〕
本発明の複合型断熱材は、ヒドロキシル基を有するシリカ繊維製の第1の基布と第2の基布との間に、ヒドロキシル基を有するシリカ短繊維と、断熱材料の粒子とを含む断熱層が挟持された挟持体を、300~700℃で、加熱加圧する工程を含む方法により製造される。前記断熱材料の粒子としては、シリカエアロゲル粒子、セラミック粒子又はこれらの混合物が用いられる。
【0020】
(1)シリカ繊維製基布
第1の基布、第2の基布として用いられる、ヒドロキシル基を有するシリカ繊維群で構成される基布(以下、単に「シリカ繊維製基布」と称する場合がある)とは、ヒドロキシル基を有するシリカ繊維の板状集合体であって、具体的には、織布、編布又は不織布などの布帛;フェルト;マット;ブランケットなどの形態を有している。
【0021】
基布構成繊維としての、ヒドロキシル基を有するシリカ繊維は、SiOを81重量%以上有し、SiO-のネットワークの一部にSi(OH)が存在しているもので、焼成により下記(1)式に示す脱水縮合により、繊維同士がシロキサン結合を形成して接合することが可能である。
【0022】
【化1】
【0023】
基布の構成繊維であるシリカ繊維は、組成内にSi(OH)が含まれるシリカ繊維であれば特に限定しないが、例えば、AlO1.5・18〔(SiO2)0.6(SiO1.5OH)0.4〕で表される組成が挙げられる。
【0024】
上記シリカ繊維の代表的組成としては、以下の組成を有することが好ましい。
SiO2:81~97重量%;
Al2O3:3~19重量%;並びに
ZrO2、TiO2、Na2O、Li2O、K2O、CaO、MgO、SrO、BaO、Y2O3、La2O3、Fe2O3およびこれらの混合物から選択される成分(「その他の成分」と称する)を2重量%以下。
【0025】
具体的には、下記組成を有する出発ガラス物質を溶融し、
55~80重量%のSiO2
5~19重量%のAl2O3
15~26重量%のNa2O、
0~12重量%のZrO2
0~12重量%のTiO2、および
Li2O、K2O、CaO、MgO、SrO、BaO、Y2O3、La2O3、Fe2O3およびこれらの混合物を1.5重量%以下;
当該溶融物からフィラメントを形成し;
得られたフィラメントを酸抽出し;
抽出したフィラメントから、残留する酸および/または塩残留物を除去後、乾燥することにより製造することができる。
【0026】
酸処理において、アルカリ金属イオンはプロトンに置換されるが、Si-Oネットワーク中にイオン(Al3+、TiO2+またはTi4+、およびZrO2+またはZr4+)が残存することになる。二酸化ケイ素骨格中のプロトンによって置換された金属イオンは、原子価に依存して、ある数のヒドロキシル基が残ると考えられる。これらのヒドロキシル基が、300~700℃程度で、上記(1)式に示す脱水縮合により、新たなSi-O-Si結合を形成する。
【0027】
基布を構成するシリカ繊維としては、上記組成を有する材料を溶融紡糸して得られるフィラメントであって、径6~13μm、好ましくは7~10μm程度である。また、繊維長は、特に限定しないが、平板状の集合体において、繊維同士が交絡できるように、基布形成性の点から、30~150mmであることが好ましく、より好ましくは50~130mmであることが好ましい。
【0028】
シリカ繊維としては、市販のものを用いることができる。例えば、BELCHEM GmbH社のBELCOTEX(登録商標)などを用いることができる。
BELCOTEX(登録商標)繊維は、一般にアルミナによって変性されたケイ酸から作成され、標準タイプのステープル繊維プレヤーンでは、約550テックスの平均繊度を有する。BELCOTEX(登録商標)繊維は、アモルファスであり、一般的組成としては、約94.5重量パーセントのシリカ、約4.5重量パーセントのアルミナ、0.5重量パーセント未満の酸化物、および0.5重量パーセント未満の他の成分を含有する。平均径約9μmで径のばらつきは少なく、融点1500℃~1550℃で、1100℃までの耐熱性がある。
【0029】
尚、BELCOTEX以外であっても、ヒドロキシル基を有するシリカ繊維であれば使用可能である。
基布を構成するシリカ繊維は、1種類に限定されず、繊維径、繊維長が異なる2種類以上のシリカ繊維の組み合わせであってもよい。
【0030】
基布において、シリカ繊維同士は交絡していることが好ましい。湿式法又は乾式法により形成したウエブを、水流交絡法、ニードルパンチ法等の従来公知の方法により交絡させることができる。これらのうち、ニードルパンチにより繊維を絡ませて、所定厚みの板状体を安定化させたマット(ニードルマット)が好ましく用いられる。
【0031】
第1基布、第2基布として用いられるシリカ繊維製基布の厚みは、特に限定しないが、好ましくは3~25mm、より好ましくは5~20mmである。薄すぎると、加熱加圧工程で、基布間を挟持するシリカ短繊維との接合が不十分となる傾向にある。厚みの上限は、用途、特に適用される触媒コンバータのサイズなど、断熱材が設置される触媒担体とケーシングの間隙に応じて、適宜選択される。
【0032】
また、基布の密度は、80kg/m~180kg/m、より好ましくは90kg/m~160kg/mである。密度が高くなりすぎると、挟持体の一体化のための加熱加圧が不十分となる傾向にある。一方、密度が低くなりすぎると、基布の空孔に該当する基布内での繊維間間隙が大きくなり、シリカエアロゲルや赤外線吸収材などの断熱材料や、シリカ短繊維が埋没するおそれがあり、挟持体の作製が困難となる。
【0033】
(2)シリカ短繊維
シリカ短繊維は、第1基布と第2基布との間で、断熱材料を保持する役割を有する。シリカ短繊維としては、第1基布、第2基布の構成繊維として用いられるシリカ繊維の短繊維を用いることができる。すなわち、ヒドロキシル基を有するシリカ繊維としては、0.1~20%Al、80~99.9%SiOを含有するシリカ繊維が好ましく用いられる。
シリカ短繊維のサイズは、繊維径6~13μm、好ましくは7~10μm程度である。繊維長は、長さ0.5mm~5mm、好ましくは1~3mmである。このようなシリカ短繊維としては、例えば、BELCOTEX(登録商標)繊維の短繊維(ステープルファイバー)を用いることができる。
【0034】
繊維長が長くなると、短繊維の大部分がマット面の面方向に沿って伏せたように存在しやすくなり、結果として、断熱材料の保持能が不十分となる。また、短繊維同士の絡み合いが生じやすく、解繊が困難になる。一方、0.5mm未満では、シリカエアロゲル、赤外線吸収材のサイズとの関係で、これらの材料を保持する機能が低下する。
【0035】
(3)断熱材料
(3-1)シリカエアロゲル
本発明で使用するシリカエアロゲルとは、ナノサイズ(約10~50nm)の気孔を有し、気孔内に空気が含有されているシリカ粒子である。気孔率60体積%以上、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上の気孔を有し、密度0.1~0.4g/cm程度と非常に軽い。このような多孔性に基づき、優れた断熱性を発揮することができる。
【0036】
シリカエアロゲルは、二次粒子径が10~500μmである。しかしながら、シリカエアロゲル粒子は凝集しやすく、粒径1~5mmの凝集体として存在している場合がある。かかる場合、解砕分散処理して用いることが好ましい。解砕分散により、シリカエアロゲルの90%以上が粒径5μm~1mmの範囲内、より好ましくは10μm~500μmの範囲内におさめることができる。
シリカエアロゲルとしては、当該粒径範囲を有する市販品を用いてもよいし、適宜解砕分散処理して用いてもよい。
【0037】
本発明で用いられるシリカエアロゲルは、好ましくは表面に疎水基を有する、疎水性エアロゲルである。具体的には、粒子表面に、下記式で表わされる3置換シリル基が結合することで疎水性となっている。式中、R1,R2,R3は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~18のアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基から選ばれ、好ましくはメチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
【0038】
【化2】
【0039】
シリカエアロゲルは、通常、シリカエアロゲル:短繊維(重量比)=2:8~8:2の割合で用いられる。シリカエアロゲルの含有割合が高いほど、高い断熱効果が得られる反面、含有比率が高くなるほど、相対的に繊維割合が減少するため、基布間での保持安定性が低下するおそれがある。シリカエアロゲルを安定的に保持するのに必要十分量の短繊維の量は、短繊維の状態、短繊維の種類(短繊維の径、繊維長など)、後述する膜形成性無機バインダーの有無、基布上へのシリカ短繊維及び断熱材料の敷設方法などにより適宜選択される。
【0040】
膜形成性バインダーを併用せず、シリカ短繊維及び断熱材料を乾式(無溶媒下)で混合し、敷設する場合には、安定的保持及び断熱性の観点から、エアロゲル:短繊維(重量比)=2:8~8:2、好ましくは2:8~5:5、より好ましくは3:7~4:6の割合で用いる。
一方、短繊維を個々の繊維として存在できる程度にまで解繊し、シリカエアロゲルとの混合均質性を高め、さらには膜形成性無機バインダーを併用することで、エアロゲルの1/35程度にまで短繊維量を減らすことが可能である。シリカ短繊維を予め分散媒体内で十分に解繊、好ましくは1本1本の繊維にまで分散させた後、断熱材料と混合することにより、さらに必要に応じて膜形成性無機バインダーを添加することにより、シリカエアロゲル/短繊維(重量比)を1以上、2以上、4以上、10以上、最大35以下、30以下、20以下、10以下の割合で用いることもできる。
【0041】
シリカエアロゲルは、断熱層の構成にもよるが、基布1mあたり、最大1.8kg程度敷設することが可能である。保持安定性、敷設用断熱材料の混合物の調製のしやすさ等の点から、好ましくは基布1mあたり、300g~1.5kg程度、より好ましくは500g~1kg程度である。
【0042】
(3-2)赤外線吸収材
赤外線吸収材は、熱源の熱エネルギーを断熱材に保持するという点で、外部との断熱材としての役割を果たすことができる。
【0043】
かかる役割を有する赤外線吸収材としては、熱放射率0.6~0.9、好ましくは0.65~0.85のセラミック粒子を用いることができる。
かかるセラミック粒子としては、光散乱法で測定される平均粒子径として、0.5~4μm、好ましくは1~3μm、より好ましくは1~2.5μmの粒子が用いられる。さらに粒子径分布として累積90%径(D90)が10μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μm以下である。このようなサイズのセラミック粒子は、赤外線、特に近赤外線を吸収した後、放射する。したがって、赤外線吸収材は、輻射熱の割合が高くなる400~900℃、好ましくは500~900℃の高温領域を保持したい場合に有効な保温材料として用いることができる。特に、輻射熱が主流となる高温域では、気孔に基づいて断熱性を発揮するシリカエアロゲルの断熱効果は小さくなるため、赤外線吸収材の保温効果は有利である。
【0044】
熱源に近い部分に固定保持する場合に鑑みて、赤外線吸収材として使用するセラミック粒子は、高温領域で長期間使用しても酸化または溶融しにくいセラミック粒子であることが好ましく、1500℃以上の高融点を有する炭化物、窒化物、ホウ化物といったセラミック粒子が好ましく用いられる。
【0045】
赤外線吸収材として用いることができるセラミックとしては、WC、TiC、SiC、ZrC等の炭化物;TiN、ZrN、TaN等の窒化物;CrB、VB、W、WB、TaB、MoB等のホウ化物;TiSi、ZrSi、WSi等のケイ化物の粒子が挙げられる。一般に、これらのセラミック粒子は、融点が1500℃以上であり、炭化物、窒化物、ホウ化物では2000℃以上であることから基布の耐熱性に基づく高温領域で使用可能であることから好ましい。尚、これらのうち、シリカ短繊維との親和性の点から、ケイ素の炭化物が好ましく、より好ましくはSiCである。
【0046】
このような赤外線吸収材は、通常、粒子状又は粉末であり、凝集しやすい傾向にあり、特に加圧した場合、凝集体の状態で固化し、粒子径100~500μm程度の凝集塊となる傾向にある。
赤外線吸収材は、シリカ短繊維と併用される場合には、シリカエアロゲルと同様に、シリカ短繊維間間隙に保持されることができる。赤外線吸収材の凝集塊は、一般に、シリカ繊維製基布との付着性に劣る傾向にあるが、バインダーやシリカ短繊維との併用により、基布上に保持することができる。
【0047】
赤外線吸収材の含有量は特に限定しないが、シリカエアロゲルと共存して断熱層を構成する場合、重量比で、シリカ短繊維:赤外線吸収材=9:1~5:5とすることが好ましく、より好ましくは9:1~6:4、さらには9:1~7:3である。また、シリカエアロゲルと赤外線吸収材の双方をシリカ短繊維で安定的に保持するためには、重量比で、シリカ短繊維:(シリカエアロゲルと赤外線吸収材の総量)=9:1~1:9程度であり、好ましくは9:1~2:8、より好ましくは9:1~4:6、さらには8:2~5:5、より好ましくは7:3~5:5である。
【0048】
(4)膜形成性無機バインダー
本発明の複合型断熱材において、断熱材料の保持は、シリカ短繊維によりなされる。しかしながら、断熱層の構成成分として、さらに膜形成性無機バインダーを含んでもよい。
【0049】
膜形成性無機バインダーとは、主成分として層状ケイ酸塩を含む分散液(スラリー)で、SiOの四面体が3個の酸素原子に互いに共通して連なっており、二次元的に平らな層状構造を作っているものである。塩を構成している金属は、アルミニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
【0050】
層状ケイ酸塩としては、xNa・ySiO(y/x=2~3)の珪酸ナトリウムが好ましく、スメクタイト(サポナイト、ヘクトライト、スティブンサイト、モンモリロナイト)、パーミキュライト群鉱物などを用いることができ、好ましくはスメクタイト群である。
膜形成性無機バインダーとしては、合成された層状ケイ酸塩の他、スメクタイト群またはパーミキュライト群鉱物のような鉱物、当該鉱物を主成分として含むベントナイトであってもよい。このような層状ケイ酸塩は、吸水により膨潤し、乾燥すると膜を形成することができる。
【0051】
膜形成性無機バインダーは、通常、水又は低級アルコール又はこれらの混合物を分散媒体とするスラリーとして用いられる。スラリーとして用いる場合、粘度、取り扱いやすさの点から、通常、固形分率1~10重量%、好ましくは3~5重量%のスラリーとして用いられる。
【0052】
膜形成性無機バインダーとしては、市販品を用いてもよく、例えば、クニミネ工業株式会社のクニピアシリーズ(主成分鉱物はモンモリロナイト)、スメクトンシリーズ(主成分鉱物は、サポナイト、スティブンサイト、ヘクトライト)、モイストナイトシリーズ(主成分鉱物は、ベントナイト)などが挙げられる。
【0053】
膜形成性無機バインダーを短繊維と併用することで、断熱材料の保持安定性を損なうことなく、短繊維量を減らすことが可能となる。また、短繊維量を減らしても、複合型断熱材としての強度を確保できる利点がある。
断熱材料の保持安定性、複合型断熱材としての強度を損なうことなく、短繊維量を減らせることは、熱伝導の割合が高くなる高温域での断熱性が要求される用途で好ましく採用される。一方、膜形成性無機バインダーの量が多くなりすぎると、粘度が高くなりすぎて、取扱い性が低下し、断熱材料の混合分散性が低下したり、シリカ繊維製基布への適用方法が限定的なものとなる。
【0054】
膜形成性バインダーを併用する場合、その含有量は、最大でもシリカエアロゲルの半分量程度とすることが好ましい。具体的には、シリカエアロゲルの重量に対して、1/2以下、好ましくは1/3~1/10、より好ましくは1/3~1/8程度である。
【0055】
(5)挟持体の態様及び挟持体の作製
上記のような第1の基布と第2の基布との間に、シリカ短繊維と断熱材料の混合物が挟持される。
断熱材料としては、上記シリカエアロゲル単独、赤外線吸収材単独で用いてもよいし、シリカエアロゲルと赤外線吸収材との混合物として用いてもよい。シリカエアロゲルとシリカ短繊維の混合物と、シリカ短繊維と赤外線吸収材の混合物とを個別の層として形成し、これらを積層した積層体として用いてもよい。シリカエアロゲルは、空孔による熱伝導の遮断により断熱効果を発揮できることから、主に100~500℃の温度域の断熱性に優れる。また、赤外線吸収材は、赤外線を吸収し、放熱することから、400℃以上、さらには450℃以上、特に500℃以上の高温域での保温性に優れる。よって、用途に応じて、使用態様を適宜選択すればよい。
【0056】
したがって、第1の基布と第2の基布に挟持される態様としては、以下のような態様が挙げられる。
a)シリカ短繊維とシリカエアロゲル混合物;
b)シリカ短繊維とシリカエアロゲルと赤外線吸収材の混合物;
c)シリカ短繊維とシリカエアロゲルの混合物層と、シリカ短繊維とシリカエアロゲルと赤外線吸収材の混合物層との積層体
d)シリカ短繊維とシリカエアロゲルの混合物層と、シリカ短繊維と赤外線吸収材の混合物層との積層体
【0057】
なお、膜形成性バインダーを短繊維と併用する場合、上記混合物(層)中の、シリカ短繊維、シリカエアロゲル、赤外線吸収材の間隙に、膜形成性無機バインダーが存在することになる。
【0058】
短繊維とシリカエアロゲル及び/又は赤外線吸収材の混合方法は、特に限定しない。上記シリカ短繊維と断熱材料(シリカエアロゲル、赤外線吸収材)を、容器に、所定割合で投入し、撹拌、振盪などにより乾式の状態で混合してもよい(無溶媒混合物が得られる)。あるいは、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、酢酸エステル等のエステル類、アセトン等のケトン類などの有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒を分散媒体として用いて、断熱材料を混合分散させてもよい(分散液が得られる)。なお、分散液の調製には、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。分散液による混合法では、膜形成性無機バインダーを添加することができるという利点がある。
【0059】
短繊維は、添加混合前に解繊して用いることが好ましい。この点、分散液を調製する場合、最初に分散媒体中に短繊維をいれて攪拌することで解繊し、次いで断熱材料を添加することができる。分散媒体内での解繊は、エアーによる解繊と比べて、個々の繊維間間隙が十分に広がるように解繊することができ、且つ解繊状態を保持したままで、断熱材料を添加混合することができるので、短繊維とシリカエアロゲル、赤外線吸収材との混合の均質性が、無溶媒混合物と比べて容易であり、均質性の高い混合物が得られやすい。このことは、短繊維量を減らしても、シリカエアロゲル、赤外線吸収材を安定的に保持できること、換言すると、保持できるシリカエアロゲル量、赤外線吸収材量を増大できることを意味する。
一方、分散液を用いる方法は、後述するように、基布表面に敷設した後、分散媒体を乾燥させる必要がある。この点、無溶媒混合物を用いる場合、乾燥工程が不要となるので、挟持体の生産性に優れている。
【0060】
上記で調製した短繊維と断熱材料の混合物(無溶媒混合物、分散液)を、第1の基布表面に敷設した後、第2の基布を重ね合わせることにより、挟持体を得ることができる。
【0061】
敷設方法としては、無溶媒混合物を用いる場合、散布、振りかけなどの方法が挙げられる。敷設後、表面状態を均一にするために、へら、ブレード、ローラなどで展延してもよい。
分散液を用いる場合、分散液の粘度、固形分濃度にもよるが、スプレー法、ブレード法、スクイーズを用いる方法などが挙げられる。分散液を用いた場合、敷設後、乾燥する。乾燥温度、乾燥時間は、分散媒の種類、分散液の粘度、固形分濃度に応じて、適宜選択される。また、乾燥時間を短縮するために、漏水容器に挟持体をセットし、荷重をかけて分散媒を絞り出してもよい。
【0062】
尚、前記挟持体として、短繊維を含まない断熱材料単独の層を含んでもよい。断熱材料単独の層であっても、シリカ短繊維と断熱材料の混合物の層とを、加熱加圧により接合することで、接合強度を確保することができる。
【0063】
(5)加熱加圧工程
得られた挟持体を、加熱加圧装置にセットし、加熱加圧する。
加圧力は、通常1~15kN程度であり、好ましくは3~13kN、より好ましくは5~10kN程度である。加圧力が大きくなりすぎると、基布を構成するシリカ繊維群を損傷するおそれがある。一方、加圧力が小さすぎると、断熱層と基布との密着力が不十分となるおそれがある。また、単位体積あたりの、シリカ短繊維同士の絡み合い、接合部分が少なくなり、十分な接合強度を確保できない他、シリカエアロゲル、赤外線吸収材粒子の保持が不安定になる傾向がある。また、複合型断熱材の強度も低くなる傾向にある。
【0064】
加熱温度は、ヒドロキシル基を有するシリカ繊維、シリカ短繊維が脱水縮合できる温度であり、具体的には、300~700℃、好ましくは350~600℃、より好ましくは400~500℃である。
加熱加圧工程は、第1基布、第2基布と断熱材料を含む層(断熱層)とを接合一体化するための工程である。これらの接合一体化は、シリカ短繊維同士の一部融着、シリカ短繊維と基布表面との一部融着により達成されると考えられる。かかる融着は、シリカ繊維のヒドロキシル基同士が加熱により脱水縮合してシロキサン結合を形成することにより達成されると考えられる。
【0065】
加圧工程に用いるプレスとして、平板プレスを用いた場合には、平板状の複合型断熱材が得られることになるが、プレス金型の形状を工夫することにより、半円筒形、箱型などの複合型断熱材を得ることも可能である。
【0066】
加圧時間は、加熱温度により異なるが、300~400℃程度では、通常、1~3時間、好ましくは1.5時間~2.5時間分である。400~600℃では、5~40分、好ましくは10~30分程度となる。加熱温度を高くすることで、加圧時間を短くすることができるので、所望する生産性に応じて適宜選択すればよい。
【0067】
<複合型断熱材>
本発明の複合型断熱材は、上記製造方法により製造されるもので、第1基布と第2基布の間に挟持される断熱層の態様に応じて、以下のような態様の複合型断熱材がある。
【0068】
(1)第1実施形態
図2に示す複合型断熱材は、第1基布5aと第2基布5bとの間に挟持される断熱層11に含まれる断熱材料がシリカエアロゲル7単独の場合である。シリカエアロゲル粒子7は、交絡したシリカ短繊維6により保持されている。
【0069】
第1基布、第2基布は、上記製造方法で用いた第1基布、第2基布の圧縮物である。したがって、基布の構成繊維は、シリカ繊維である。
基布の種類は、製造方法で使用した基布の種類によって定まる。織布又は不織布などの布帛、マット、フェルト、ブランケットなどである。
第1基布、第2基布のそれぞれの厚みは、加圧圧力によるが、通常、1~8mm、好ましくは3~5mmである。また、基布の嵩密度は、加圧圧力にもよるが、100~300kg/mであることが好ましく、より好ましくは130~270kg/mである。
【0070】
断熱層11に含まれているシリカエアロゲル粒子は、上記製造方法で用いたシリカエアロゲルである。複合型断熱材の製造工程である加熱加圧工程の加圧力程度ではシリカエアロゲル粒子は圧潰することがないので、シリカエアロゲルの多孔体状態は保持されている。よって、シリカエアロゲル本来の断熱性能を複合型断熱体においても発揮できる。
【0071】
シリカエアロゲルを保持しているシリカ短繊維は、繊維径6~13μm、好ましくは7~10μmであり、繊維長0.5~5mm、好ましくは1~3mmである。かかるシリカ短繊維は、製造時に用いたシリカ短繊維に含まれていた水酸基の一部またはすべてがシリカ短繊維、さらには基布との接触点において、脱水縮合し、シロキサン結合を形成して、接合されている。シリカエアロゲルは、絡み合い且つ一部接合して形成されたシリカ短繊維間間隙に支持、保持されることで、第1基布と第2基布との間に安定的に保持される。
【0072】
シリカエアロゲル7とシリカ短繊維6との含有比率は、上記製造方法で採用した含有比率と実質的に一致する。
【0073】
第1実施形態の複合型断熱材では、シリカ繊維製基布の間に、シリカエアロゲルを含有する断熱層11が基布5a、5bと積層一体化された状態で挟持されている。断熱層11においても、シリカエアロゲルは、その空孔が損なわれることなく保持されているので、シリカエアロゲル本来の保温断熱性能を発揮することができる。さらに、断熱層11は、シリカ短繊維間間隙、シリカエアロゲル同士の間隙など、シリカエアロゲル自体の微小空孔に加えて、断熱層の構成要素間の間隙(短繊維間、短繊維と断熱材料との隙間、断熱材料間の隙間)を空孔として断熱機能を発揮できる。
よって、第1実施形態の複合型断熱材は、シリカ繊維製の基布単独では達成できなかった優れた断熱性能を発揮することができる。
【0074】
(2)第2実施形態
図3に示す複合型断熱材は、第1基布5aと第2基布5bとの間に挟持される断熱層12に含有される断熱材料が、シリカエアロゲル粒子7と赤外線吸収材8の混合物である。シリカエアロゲル粒子7、赤外線吸収材(セラミック粒子)8のそれぞれがシリカ短繊維6により保持されている。
【0075】
第2実施形態の複合型断熱材は、第1基布と第2基布との間に挟持される断熱層として、シリカエアロゲル、赤外線吸収材、シリカ短繊維の混合物を用いることで製造することができる。
【0076】
赤外線吸収材は、製造方法で用いた赤外線吸収材と同じであり、熱放射率0.6~0.9、好ましくは0.65~0.85のセラミック粒子である。かかる赤外線吸収材は、粉末が加熱加圧工程で凝集体となり、通常、電子顕微鏡観察により測定される粒子径として、100~500μm、好ましくは平均粒子径150~300μmの凝集塊となって、断熱層に存在している。
【0077】
第1基布、第2基布の構成、シリカエアロゲルの構成は、第1実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0078】
シリカエアロゲル、赤外線吸収材、シリカ短繊維の混合物における含有比率は、製造方法で採用した含有比率と実質的に一致する。
【0079】
第2実施形態の複合型断熱材では、断熱層12に含有される断熱材料が、シリカエアロゲル及び赤外線吸収材である。赤外線吸収材は、500℃以上の高温、すなわち熱の伝える方式としての輻射熱の割合が高い高温領域で、優れた保温性能を発揮できる。輻射熱の割合が高くなる500℃以上の高温域では、透明なシリカエアロゲルの保温断熱効果は大きくないため、かかる高温域で優れた保温効果を発揮できる赤外線吸収材との併用は、広範囲の温度域にわたって保温断熱効果を発揮でき、好ましい。
【0080】
(3)第3実施形態
図4に示す複合型断熱材は、第1基布5aと第2基布5bとの間に挟持される断熱層13が、シリカ短繊維6とシリカエアロゲル粒子7の混合物(第1混合物)の層(第1断熱層)13aと、シリカ短繊維6とシリカエアロゲル粒子7と赤外線吸収材(セラミック粒子)8の混合物(第2混合物)の層(第2断熱層)13bとを組み合わせた積層体の場合である。
【0081】
第3実施形態の複合型断熱材は、挟持体の作製において、まず第1の基布上に、シリカ短繊維とシリカエアロゲルの第1混合物を敷設した後、シリカ短繊維とシリカエアロゲルと赤外線吸収材の第2混合物を敷設して、第2の基布を重ね合わせる工程;あるいは、第2の基布上に、前記第2混合物を敷設した後、前記第1混合物を敷設して、第1の基布を重ね合わせることにより製造することができる。
【0082】
第3実施形態の複合型断熱材は、赤外線吸収材が赤外線を吸収して、保温の役割を果たすことから、赤外線吸収材を含む第2断熱層13bを、高熱側(熱源側)、また触媒反応部を断熱する場合には触媒担体側となるように取り付けることで、優れた保温機能を発揮することができる。
【0083】
(4)第4実施形態
図5に示す複合型断熱材は、第1基布5aと第2基布5bとの間に挟持される断熱層14が、シリカ短繊維6とシリカエアロゲル粒子7の混合物(第1混合物)の層(第1断熱層)13aと、シリカ短繊維6と赤外線吸収材(セラミック粒子)8の混合物(第3混合物)の層(第3断熱層)13cとを組み合わせた積層体の場合である。
【0084】
第4実施形態の複合型断熱材は、挟持体の作製において、まず第1の基布上に、第1混合物を敷設した後、第3混合物を敷設して、第2の基布を重ね合わせる工程;あるいは、第2の基布上に、前記第3混合物を敷設した後、前記第1混合物を敷設して、第1の基布を重ね合わせることにより製造することができる。
【0085】
第4実施形態の複合型断熱材は、赤外線吸収材が赤外線を吸収して、保温の役割を果たすことから、赤外線吸収材を含む第3断熱層13cを、高熱側、すなわち触媒担体側となるように取り付けることで、優れた保温機能を発揮することができる。
【0086】
以上の実施形態の複合型断熱材において、各断熱層に含まれるシリカ短繊維、シリカエアロゲル、赤外線吸収材の含有割合は、複合型断熱材の製造方法で採用した含有割合に対応する。
【0087】
なお、上記第1実施形態-第4実施形態は、いずれも第1基布と第2基布との間に挟持される断熱層が、シリカ短繊維を含んでいたが、複合型断熱材としての一体化を確保できる範囲内であれば、シリカ短繊維を含まない薄層が介在していてもよい(第5実施形態)。
【0088】
断熱層を分散液を用いて作製する場合であって、分散液中に膜形成性無機バインダーが含まれている場合、上記実施形態における断熱層の空隙(シリカエアロゲル中の気孔は含まない)に、膜形成性バインダーが適宜存在することになる。
膜形成性無機バインダーは、断熱材料、特にシリカエアロゲルの安定的保持に寄与できる。膜形成性無機バインダーは、熱伝導により断熱性を低下させる原因になるとも考えらえるが、膜形成性無機バインダーを併用することで、断熱材の厚み方向に熱伝導する原因となるシリカ短繊維の量を減らすことができるので、総合的には断熱性を向上させることができる。
【0089】
以上のような構成を有する、本発明の複合型断熱材は、断熱層の厚み、構成により、断熱性能、硬度、強度を調節できる。断熱材料の種類、断熱層の構成が等しい場合、通常、断熱性能は厚みに依存する。よって、断熱層の厚み、構成は、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0090】
〔複合型断熱材の用途〕
本発明の複合型断熱材は、優れた断熱性、耐熱性を有する。従って、薄層で高温断熱を要する用途に好ましく用いることができる。例えば、自動車の触媒コンバータに充填される断熱材として好ましく用いることができる。また、自動車に限定されず、高温構造物と外気との温度差が大きい場合において、周辺機器から高温構造物を隔離したい場合の断熱材、高温構造物を外気から保護して高温状態を保護したい場合の保温断熱材として、好適に用いることができる。
【実施例0091】
〔積層型断熱材の製造〕
(1)使用した材料
(1-1)第1基布、第2基布
第1基布、第2基布として、Frenzelit社のテクニカルニードルマット(isoTHERM(登録商標)BCT)を用いた。
このニードルマットは、BELCHEM社のBELCOTEX(登録商標)110(組成はAlO1.5・18〔(SiO2)0.6(SiO1.5OH)0.4〕、繊維径9μm)の繊維群をニードルパンチ法でマット状にしたもので、マットの厚みは公称6mmである。
【0092】
(1-2)短繊維
BELCHEM社のBELCOTEX(登録商標)110(組成はAlO1.5・18〔(SiO2)0.6(SiO1.5OH)0.4〕)のステープルファイバー(繊維径9μm、平均繊維長3mm)を用いた。
【0093】
(1-3)シリカエアロゲル
シリカエアロゲルとして、CABOT社の径1.2~4.0mmに凝集したシリカエアロゲル凝集塊をミキサーで解砕したシリカエアロゲルを用いた。解砕後のシリカエアロゲルの粒度を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(堀場製作所製、分散液:エタノール)で測定したところ、10~400μmであった。
【0094】
(1-4)赤外線吸収材
日本ケイカル株式会社のSiC粉末(光散乱法により測定される粒度分布:D50が1.8μm、D90が6.8μm)を用いた。このSiC粉末の放射率は0.82程度である。
【0095】
(1-5)膜形成性無機バインダー
クニミネ工業社製の精製ベントナイトである「クニピアF」(固形分4%の水分散液)を用いた。これは、モンモリロナイト粉末の水分散液であり、4%分散液の粘度(30mPa・s)である。
【0096】
(2)断熱材の製造
複合型断熱材No.1:
容器中に、上記繊短繊維を入れ、エアーを吹き付けることにより、絡み合っている繊維を解繊した。かかる状態で、シリカエアロゲルを添加(短繊維:シリカエアロゲル=4:3(重量比))し、ミルにて混合して、断熱層用材料(第1混合物)を調製した。
ニードルマット(縦×横×厚みが150mm×150mm×6mm)上に、上記で調製した第1混合物を、散布法により、0.16g/cmの量となるように敷設した後、ニードルマットを載せて挟持体を作製した。
作製した挟持体をプレス機にセットし、挟持体を基布の鉛直方向にプレス機で圧縮(10kN)した状態で、350℃で2時間加熱し、第1実施態様の複合型断熱材No.1を得た。得られた複合型断熱材の厚みは、8mmであった。
【0097】
複合型断熱材No.2:
断熱材料として、シリカエアロゲルと赤外線吸収材の15:4(重量比)混合物を用いた。シリカ短繊維と断熱材料の混合物を、シリカ短繊維:断熱材料=20:19(重量比)の割合で混合した混合物(第2混合物)を、散布法により、0.17g/cmの量となるように敷設した後、ニードルマットを載せて挟持体を作製した。
作製した挟持体を用いて、No.1と同様にして、第2実施態様の複合型断熱材No.2を得た。得られた複合型断熱材の厚みは、8mmであった。
【0098】
複合型断熱材No.3:
複合型断熱材No.2で調製した第2混合物を、ニードルマット上に散布法により、0.17g/cmの量となるように敷設し、次いで、この第2混合物層上に、複合型断熱材No.1で調製した第1混合物を0.16g/cmの量となるように敷設した。この第1混合物上に、ニードルマットを載せて、挟持体を作製した。
作製した挟持体を用いて、No.1と同様の方法で圧縮した後、加熱加圧して、第3実施態様の複合型断熱材No.3を得た。得られた複合型断熱材の厚みは、10mmであった。
【0099】
複合型断熱材No.4:
ニードルマット上に、赤外線吸収材を敷き詰め、赤外線吸収材層を形成した。この赤外線吸収材層上に、複合型断熱材No.1で調製した第1混合物を、0.16g/cmの量となるように敷設した。この第1混合物上に、ニードルマットを載せて、挟持体を作製した。
作製した挟持体を用いて、No.1と同様の方法で圧縮した後、加熱加圧して、図6に示す構成を有する第5実施形態の複合型断熱材No.4を得た。得られた複合型断熱材の厚みは、8mmであった。SiCは凝集塊となって赤外線吸収材層を形成していたが、ニードルマットとの付着力が不十分で、接合一体化した複合型断熱材として使用できるものではなかった。
【0100】
複合型断熱材No.5:
水を960g入れた容器中に、ノニオン系界面活性剤(4%水溶液)55g添加した後、シリカ繊維6gを投入し、撹拌混合することにより、短繊維が個々の繊維として分散できるように解繊した。次いでSiC粉末67g添加して、混合撹拌し、さらにアニオン系界面活性剤11g(4%水溶液)を添加した。次いで、シリカエアロゲル183g及び膜形成性無機バインダー54gを添加し、混合撹拌して、断熱層用スラリーを調製した。断熱層用スラリー中のシリカ短繊維:シリカエアロゲル(重量比)は、1:30であった。また、固形分におけるシリカエアロゲルの含有率は、約60重量%であった。
第1基布であるニードルマット(縦×横×厚みが150mm×150mm×6mm)上に、上記で調製した断熱層用スラリーをスクイーザ―を用いて厚み10mmとなるように塗布した。塗工量は約0.16g/cmであった。
塗布後、第2基布を重ねた後、74℃で24時間、90℃で1時間、130℃で1時間放置することにより乾燥して、挟持体を作製した。
作製した挟持体をプレス機にセットし、No.1と同様にして加熱加圧することにより、第1実施形態と同様の構成を有する複合型断熱材No.5を得た。得られた複合型断熱材の厚みは、8mmであった。
【0101】
参考例1:
第1基布、第2基布として用いたニードルマットを6層重ねて、350℃で、2時間プレス(加圧力:10kN)することによりシリカ繊維単独の断熱材を作製した。得られた複合型断熱材の厚みは、8mmであった。
【0102】
参考例2:
第1基布、第2基布として用いたニードルマットを予め800℃で焼成収縮(主として面方向に収縮)させたマットを用いた。No.5で使用した断熱用スラリーにおいて、短繊維の代わりに珪酸カルシウムを添加し、混合撹拌することにより断熱用スラリーを調製した。得られたスラリーを、マット表面にスクイーザを用いて塗工した。
塗工後、図7に示すように、折り曲げて、断熱材料を基布で挟持した積層体(厚み10.5mm)を作製した。かかる積層体を、加圧(10kN)により水を絞り出した後、乾燥炉で74℃で24時間、90℃で1時間、130℃1時間乾燥させることで、複合型断熱材を作製した。図7中、20は基布であり、21は、シリカエアロゲル及び赤外線吸収材からなる断熱層である。
【0103】
参考例3:
断熱層用材料としてシリカエアロゲルのみを用いた(短繊維を含まず)以外は、No.1と同様にして複合型断熱材を作製することを試みた。
加熱加圧により得られた複合型断熱材を取り出そうとすると、シリカエアロゲルが零れ落ち、複合型断熱材を実質的に製造できなかった。
【0104】
参考例4:
断熱層用スラリーとして、短繊維を添加していない断熱層用スラリーを用いた以外は、No.5と同様にして、複合型断熱材を作製した。
【0105】
〔評価方法及び評価結果〕
<断熱性>
上記で作製した複合型断熱材No.1~4及び参考例1について、フーリエの法則を用いた定常熱流法により熱伝導率の測定を行った。測定は、断熱材を0.17℃/分の昇温速度で、200~700℃まで加熱し、各温度域における断熱材の厚み方向の熱伝導率(λ)を測定することにより行った。熱伝導率(λ)が小さいほど、保温断熱性に優れていることを示す。なお、No.3,4については、赤外線吸収材(SiC)を含む層が高温側となるように、測定器にセットした。測定定結果を、図8に示す。
【0106】
また、上記で作製した複合型断熱材No.3,5、参考例1、参考例2について、同様にして熱伝導率の測定を行った結果を、図9に示す。
【0107】
図8において、複合型断熱材No.1~4は、基布として用いたニードルマット単独(参考例1:黒丸)と比べて、300℃未満の断熱性に優れていた。エアロゲルによる断熱効果が得られたためであると考えられる。一方、No.1(黒三角)については、350℃超では、参考例1よりも断熱係数が高くなった。短繊維による熱伝導が、高温での断熱性を損なったものと思われる。この点、No.2~4のように、赤外線吸収材を併用することで、350℃超の高温でも優れた断熱性を保持できた。
【0108】
図9において、No.3(白三角)とNo.5(白丸)とを比べると、No.5の方が短繊維量が少ないためか、あるいは分散液法の採用によりシリカエアロゲル、赤外線吸収材の分散均一性が向上したためか、No.3よりもNo.5の方が断熱性に優れていた。
なお、図9において、シリカ短繊維を含まない複合型断熱材(参考例2:黒四角)が最も断熱性に優れていた。短繊維を含まないためと考えられる。しかしながら、分散液法を採用して、断熱層に含まれるシリカ短繊維の量を減らしたNo.5では、350℃以上の高温域においても、シリカ短繊維を含まない参考例2と同程度にまで、断熱性を確保することができた。
【0109】
<曲げ強度>
曲げ試験機(株式会社島津製作所製のEZtest)を用いて、図10(A)に示すように荷重を加え、図10(B)に示す変位d(mm)に対する荷重を測定することにより、複合型断熱材の曲げ強度を測定・評価した。
図11に、複合型断熱材No.3及び参考例2(一点鎖線)の測定結果を示す。また、図12に、複合型断熱材No.1、No.5(実線)、参考例4(破線)についての測定結果を示す。
【0110】
図11からわかるように、同程度にまで圧縮したにもかかわらず、曲げ強度は、断熱層に短繊維を含む本発明の複合型断熱材No.3の方がはるかに大きかった。加熱加圧工程を経ることで、複合型断熱材の剛性、強度をアップできたと考えられる。
また、図12において、参考例4とNo.5の測定データを比較すると、短繊維の有無以外は、断熱層の組成、断熱層の形成方法(いずれも分散液使用)が同じであるにもかかわらず、No.5の方が、参考例4よりも2.5倍以上の曲げ強度が増大していた。これらの結果から、断熱層に、短繊維を含有させることにより、複合型断熱材の剛性、強度アップを図ることができることを確認できた。
【0111】
さらに、図12において、No.5の曲げ強度は、No.1の曲げ強度よりも高いことが確認できた。断熱層に含まれる短繊維量は、No.1の方が30倍以上であるにもかかわらず、分散液法により断熱層を形成したNo.5の方が剛性が高くなったことは、驚くべき結果であった。分散液では、短繊維の解繊が十分に行うことができ、シリカエアロゲル及びSiCとの混合均一性を高めることができたため、さらには膜形成性バインダーの併用により短繊維量が少なくても、シリカエアロゲル及びSiCの保持安定性を確保できたためと考えられる。
尚、参考例2(図11参照)の強度は、参考例4と比べても格段に低かった。いずれも膜形成性無機バインダーが存在しているが、参考例2では、基布と断熱層との積層一体化のための加熱加圧工程を経ていないこと、すなわち水を絞り出すための常温加圧では、シリカ繊維同士がシロキサン結合による融着が起きないので、剛性アップが得られなかったと考えられる。
【0112】
複合型断熱材No.1及びNo.3を、断熱材の厚み方向に切断し、切断断面を顕微鏡観察した。図13(No.1)及び図14(No.3)に撮像した電子顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真からわかるように、球状のシリカエアロゲル粒子、赤外線吸収材が、シリカ短繊維により保持されていることがわかる。また、図14から、赤外線吸収材は、凝集塊となって、シリカ短繊維により保持されていた。尚、図14中、実線で囲んだ部分は、SiC凝集塊と認められる部分である。
【0113】
<基布と保温断熱層の密着性>
複合型断熱材No.5及び参考例4について、幅30mm、長さ150mmの短冊状試験片を作製した。
作製した試験片の第1基布及び第2基布をチャックで挟持し、ピール試験機を用いて、5mm/分の速度で第1基布及び第2基布を引っ張る剥離試験を行った。
各試験片の引張り荷重と変位の関係を図15に示す。短繊維を含むNo.5(実線)の方が、参考例4(破線)よりも剥離荷重が20%程度高かった。
【0114】
複合型断熱材No.5及び参考例4について、基布と断熱層の界面を、キーエンス社のマイクロスコープ(VHX-7000)を用いて観察した。No.5及び参考例4のそれぞれについて、界面の光学顕微鏡写真及び3D形状画像を、図16(No.5)及び図17(参考例4)に示す。
参考例4では、界面に浮きが認められたのに対して、No.5では目立つような浮きは認められず、接合界面の一体性が高いことが確認できた。したがって、短繊維は、シリカエアロゲルの保持だけでなく、基布との接合一体化にも寄与できることがわかった。
【0115】
さらに、No.1について、同様に剥離試験を行った結果を図18に示す。No.1ではSiCを含まないこと、短繊維量がNo.5よりも多い(約20倍)ことから、No.5の30倍以上の剥離強度を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の複合型断熱材は、従来の耐熱性無機繊維群のマットと比べて、優れた断熱性を有していた。よって、3~18mm程度の厚みで、高度な断熱性を要する部分、例えば、自動車の触媒用コンバータの断熱材として有用である。また、高温を維持したい部分の保温断熱材として利用することで、加熱エネルギーの省力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 触媒コンバータ
2 ケーシング
3 ハニカム状触媒担体
4 断熱材
5a、5b 基布
6 シリカ短繊維
7 シリカエアロゲル粒子
8 赤外線吸収材(セラミック粒子)
11、12,13、14、15 断熱層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
前記断熱材料の粒子は、シリカエアロゲル粒子を含む請求項1に記載の複合型断熱材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
〔形態8〕
前記断熱材料の粒子は、シリカエアロゲル粒子を含む形態1~7のいずれか1つの形態である複合型断熱材。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明の複合型断熱材は、シリカエアロゲル粒子、セラミック粒子といった断熱材料が、シリカ繊維製の第1の基布と第2の基布との間に安定的に挟持されているので、耐熱性に優れ、且つ優れた断熱性を有する。
しかも、断熱層に含まれているシリカ短繊維は、断熱層の強度アップに寄与できることから、形状安定性等の耐久性にも優れる。