(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061799
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】乳癌の早期予測のため、処置応答、再発および予後のモニタリングのための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6837 20180101AFI20240426BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240426BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240426BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240426BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240426BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20240426BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
C12Q1/6837 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12N15/11 Z
C12Q1/6851 Z
G01N33/50 P
C12N9/12
C12N9/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035986
(22)【出願日】2024-03-08
(62)【分割の表示】P 2020562713の分割
【原出願日】2019-05-08
(31)【優先権主張番号】62/668,435
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523338381
【氏名又は名称】イージー バイオメド カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EG BIOMED CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン、ルオ‐カイ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、チン‐ション
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ション‐チャオ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ユイ‐メイ
(72)【発明者】
【氏名】スー、チー‐ミン
(57)【要約】
【課題】 乳癌の早期予測のため、処置応答、再発および予後のモニタリングのための方
法を提供する。
【解決手段】 本発明は、乳癌の早期予測のため、処置応答、再発および予後をモニタリ
ングするための新規エピジェネティックバイオマーカーのセットを開示する。遺伝子の異
常なメチル化は、乳癌患者由来の腫瘍組織および血漿サンプルにおいて検出され得るが、
正常な健常個体では検出されない。本開示は、本明細書中で使用されるプライマーおよび
プローブも開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌の検出を必要とするヒト被験体におけるメチル化状態を検出するための方法であっ
て、前記方法は、(a)生物学的サンプルを提供する工程、および(b)標的DNA配列
GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメントにおけるエピジェネティッ
クバイオマーカーのメチル化状態をアッセイする工程を含み、コントロールのメチル化状
況を基準として、前記ヒト被験体の前記DNA配列に過剰メチル化が存在することが、乳
癌を示す、方法。
【請求項2】
ヒト被験体における、乳癌の素因もしくは罹患を検出するためまたは乳癌の処置応答、
予後もしくは再発を予測するための方法であって、前記方法は、(a)生物学的サンプル
を提供する工程、および(b)標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそ
れらのフラグメントにおけるエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態をアッセ
イする工程を含み、コントロールのメチル化状況を基準として、前記ヒト被験体の前記D
NA配列に過剰メチル化が存在することが、前記乳癌の素因もしくは罹患、処置応答不良
、予後不良または再発を示す、方法。
【請求項3】
前記サンプル中の前記標的GCM2およびITPRIPL1 DNA配列またはそれら
のフラグメントならびにコントロールDNA配列のメチル化レベルをアッセイするために
、GCM2メチル化特異的プローブおよびITPRIPL1メチル化特異的プローブを使
用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメントを
含む生物学的サンプルを提供する工程、(b)GCM2メチル化特異的プローブおよびI
TPRIPL1メチル化特異的プローブを用いて、前記サンプル中の前記標的GCM2お
よびITPRIPL1 DNA配列またはそれらのフラグメントならびにコントロールD
NA配列のメチル化レベルをアッセイする工程、(c)コントロールDNA配列に対する
、前記標的GCM2およびITPRIPL1 DNA配列またはそれらのフラグメントの
相対的なメチル化状態を計測して、過剰メチル化されたGCM2およびITPRIPL1
の存在を検出する工程、および(d)前記ヒト被験体の前記標的DNA配列GCM2およ
びITPRIPL1 DNA配列またはそれらのフラグメントが、前記被験体におけるコ
ントロールDNA配列のメチル化と比べて過剰メチル化されているとき、前記被験体を、
乳癌処置を必要とすると特定する工程を含む、方法。
【請求項5】
(a)標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメントを
含む生物学的サンプルを提供する工程、(b)GCM2メチル化特異的プローブおよびI
TPRIPL1メチル化特異的プローブを用いて、前記サンプル中の前記標的GCM2お
よびITPRIPL1 DNA配列またはそれらのフラグメントならびにコントロールD
NA配列のメチル化レベルをアッセイする工程、(c)コントロールDNA配列に対する
、前記標的GCM2およびITPRIPL1 DNA配列またはそれらのフラグメントの
相対的なメチル化状態を計測して、過剰メチル化されたGCM2およびITPRIPL1
の存在を検出する工程、および(d)前記ヒト被験体の前記標的DNA配列GCM2およ
びITRPIPL1が、前記被験体におけるコントロールDNA配列のメチル化状況と比
べて過剰メチル化されているとき、前記被験体を、乳癌の素因もしくは罹患、処置応答不
良または予後不良もしくは再発を有すると特定する工程を含む、方法。
【請求項6】
前記生物学的サンプルが、組織、細胞、血液、尿、血清または血漿である、請求項1~
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメントにおける
メチル化が、前記コントロールのメチル化より約64%高い、請求項1~5のいずれかに
記載の方法。
【請求項8】
前記DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメントにおける
メチル化が、前記コントロールのメチル化よりそれぞれ約69%および約80%高い、請
求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ヒト被験体における前記標的DNA配列のメチル化が、コントロールにおけるメチル化
より少なくとも0.5倍高いとき、前記過剰メチル化が示唆される、請求項1~5のいず
れかに記載の方法。
【請求項10】
ヒト被験体における前記標的DNA配列のメチル化が、コントロールにおけるメチル化
より少なくとも2倍高いとき、前記過剰メチル化が示唆される、請求項1~5のいずれか
に記載の方法。
【請求項11】
前記GCM2メチル化特異的プローブが、配列番号15に対して少なくとも85%の相
同性を有する配列を有し、ITPRIPL1メチル化特異的プローブが、配列番号16に
対して少なくとも85%の相同性を有する配列を有する、請求項3~5のいずれかに記載
の方法。
【請求項12】
前記GCM2メチル化特異的プローブが、配列番号15の配列を有し、ITPRIPL
1メチル化特異的プローブが、配列番号16の配列を有する、請求項3~5のいずれかに
記載の方法。
【請求項13】
コントロールDNA配列に対する、前記標的GCM2およびITPRIPL1 DNA
配列またはそれらのフラグメントの相対的なメチル化状態の基準が、GCM2の場合、約
54%より高い感度および約100%の特異度を有し、ITPRIPL1の場合、約79
%より高い感度および約96%より高い特異度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以下の1つ以上の標的DNA配列またはそれらの組み合わせのいずれか:C1orf1
14またはそのフラグメント、ZNF177またはそのフラグメントおよびC8orf4
7またはそのフラグメントのメチル化レベルをアッセイする工程をさらに含む、請求項1
~5のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
RKL001のメチル化レベルがさらにアッセイされる、請求項14のいずれかに記載
の方法。
【請求項16】
以下の1つ以上の標的DNA配列またはそれらの組み合わせのいずれか:C1orf1
14またはそのフラグメント、ZNF177またはそのフラグメントおよびC8orf4
7またはそのフラグメントのメチル化レベルをアッセイするために、C1orf114メ
チル化特異的プローブ、ZNF177メチル化特異的プローブもしくはC8orf47メ
チル化特異的プローブまたはそれらの組み合わせのいずれかをさらに使用する、請求項1
4のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
標的であるC1orf114、ZNF177およびC8orf47またはそれらのフラ
グメントのメチル化特異的プローブが、それぞれ配列番号17、18および14に対して
少なくとも85%の相同性を有する配列を有する、請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
標的であるC1orf114またはそのフラグメント、ZNF177またはそのフラグ
メントおよびC8orf47またはそのフラグメントの前記メチル化特異的プローブが、
それぞれ配列番号17、18および14の配列を有する、請求項16のいずれかに記載の
方法。
【請求項19】
コントロールDNA配列に対する、前記標的C1orf114、ZNF177および/
もしくはC8orf47 DNA配列またはそれらのフラグメントの相対的なメチル化状
態の基準が、それぞれ、C1orf114の場合、約75%より高い感度および約76%
の特異度、ならびにZNF177の場合、約62%より高い感度および約82%の特異度
を有する、請求項16または17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
コントロールDNA配列に対する、標的であるGCM2およびITPRIPL1または
それらのフラグメント;標的であるGCM2、ITPRIPL1およびC1orf114
またはそれらのフラグメント;ならびにGCM2、ITPRIPL1、C1orf114
およびZNF177またはそれらのフラグメントの組み合わせの相対的なメチル化状態の
基準が、それぞれ、約87%より高い感度および約96%の特異度、約95%より高い感
度および約72%の特異度、約87%より高い感度および約96%の特異度を有する、請
求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記基準が、加重和スコアの解析によって前記特異度および感度を計測する工程をさら
に含む、請求項13、19または20に記載の方法。
【請求項22】
標的であるGCM2、ITPRIPL1およびC1orf114もしくはそれらのフラ
グメントまたは標的であるGCM2、ITPRIPL1、C1orf114およびZNF
177もしくはそれらのフラグメントの組み合わせの相対的なメチル化状態の基準が、そ
れぞれ、約87%より高い感度および約96%の特異度、ならびに約91%より高い感度
および約96%の特異度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
RKL001のメチル化レベルをアッセイするために、RKL001メチル化特異的プ
ローブをさらに使用する、請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
RKL001メチル化特異的プローブが、配列番号13に対して少なくとも85%の相
同性を有する配列を有する、請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
RKL001メチル化特異的プローブが、配列番号13の相同性を有する配列を有する
、請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記メチル化状態が、ポリメラーゼ連鎖反応によって検出される、請求項1~5のいず
れかに記載の方法。
【請求項27】
配列番号14~18からなる群より選択される配列を有するプローブ。
【請求項28】
配列番号1~13からなる群より選択される配列を有するプライマー。
【請求項29】
乳癌の検出を必要とするヒト被験体におけるメチル化状態を検出するため、あるいはヒ
ト被験体における乳癌の素因もしくは罹患を検出するためまたは乳癌の処置応答、予後も
しくは再発を予測するためのキットであって、前記キットは、標的DNA配列GCM2お
よびITPRIPL1またはそれらのフラグメントにおけるエピジェネティックバイオマ
ーカーのメチル化状態をアッセイするための、配列番号5~8の配列を有するプライマー
または配列番号15および16の配列を有するプローブを含む、キット。
【請求項30】
標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1もしくはそれらのフラグメントにおけ
るエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態をアッセイするために、配列番号9
~12および1~4の配列を有する1つ以上のプライマーならびに/または配列番号17
、18、12および13の配列を有する1つ以上のプローブを、1つ以上の標的DNA配
列C1orf114またはそのフラグメント、ZNF177またはそのフラグメント、C
8orf47またはそのフラグメントおよびRKL0014またはそれらの組み合わせの
いずれかと組み合わせて、さらに含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
重亜硫酸ナトリウム、ならびに標的遺伝子全体を増幅するためのアダプター、ならびに
請求項1~23のいずれかに示されたような標的DNA配列におけるエピジェネティック
バイオマーカーのDNA領域からの少なくとも1つのシトシンの変換されたメチル化配列
およびまたは変換された非メチル化配列の存在を定量するためのポリヌクレオチド(例え
ば、検出可能に標識されたポリヌクレオチド)をさらに含む、請求項29または30に記
載のキット。
【請求項32】
標的配列全体または遺伝子の増幅のためのメチル化感知制限酵素をさらに含む、請求項
31に記載のキット。
【請求項33】
前記方法が、乳癌の検出を必要とするヒト被験体におけるメチル化状態を検出する、請
求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、乳癌のリスクもしくは感受性ならびに/または乳癌の予後および悪性度を予
測するための遺伝子バイオマーカーに関する。特に、本発明は、遺伝子バイオマーカーの
メチル化に基づいて、乳癌を検出し、乳癌のリスクもしくは乳癌の感受性ならびに/また
は乳癌の予後および悪性度を予測する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌は、身体の他の部分に浸潤するかまたは広がる可能性のある、異常な細胞成長を伴う
疾患の一群であり、世界の死因第一位である。
【0003】
メチル化DNAは、ほとんどの腫瘍タイプの組織における有望なバイオマーカーの1ク
ラスとして研究されている。多くの場合において、DNAメチルトランスフェラーゼは、
遺伝子発現のエピジェネティックな制御として、シトシン-リン酸-グアニン(CpG)
アイランド部位のDNAにメチル基を付加する。
米国特許出願公開第2008/0311570(A1A)号明細書は、癌をスクリーニ
ングするための方法を提供しており、その方法は、以下の工程を含む:(1)試験検体を
提供する工程;(2)その試験検体のゲノムDNA内の少なくとも1つの標的遺伝子にお
けるCpG配列のメチル化状況を検出する工程であって、その標的遺伝子は、SOX1、
PAX1、LMX1A、NKX6-1、WT1およびONECUT1からなる、工程;お
よび(3)その標的遺伝子におけるメチル化状況の有無に基づいて、その検体に癌または
癌性の病理学的変化が存在するかを判定する工程。国際公開第2016/071477(
A1)号パンフレットは、shox2遺伝子におけるCpGメチル化を解析することによ
る、処置に対する癌患者の応答の評価に関する。欧州特許第2828405(B1)号明
細書は、血液または血漿および便における複数の遺伝子マーカーを評価することによって
直腸結腸新形成を検出するための方法を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0311570(A1A)号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/071477(A1)号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第2828405(B1)号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示は、乳癌の早期予測のため、処置応答、再発および予後をモニタリングするため
の新規エピジェネティックバイオマーカーのセットを開示する。遺伝子の異常なメチル化
は、癌患者由来の腫瘍組織および血漿サンプルにおいて検出され得るが、正常な健常個体
では検出されない。本開示は、本明細書中で使用されるプライマーおよびプローブも開示
する。
【0006】
1つの実施形態において、本開示は、乳癌の検出を必要とするヒト被験体におけるメチ
ル化状態を検出するための方法を開示し、その方法は、(a)生物学的サンプルを提供す
る工程、および(b)標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフ
ラグメントにおけるエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態をアッセイする工
程を含み、コントロールのメチル化状況を基準として、そのヒト被験体の上記DNA配列
に過剰メチル化が存在することが、乳癌を示す。
【0007】
1つの実施形態において、本開示は、ヒト被験体における、乳癌の素因もしくは罹患を
検出するためまたは乳癌の処置応答、予後もしくは再発を予測するための方法を開示し、
その方法は、(a)生物学的サンプルを提供する工程、および(b)標的DNA配列GC
M2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメントにおけるエピジェネティックバ
イオマーカーのメチル化状態をアッセイする工程を含み、コントロールのメチル化状況を
基準として、そのヒト被験体の上記DNA配列に過剰メチル化が存在することが、乳癌の
素因もしくは罹患、処置応答不良、予後不良または再発を示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、サンプル中の標的GCM2およびITPRIPL1 DNA
配列またはそれらのフラグメントならびにコントロールDNA配列のメチル化レベルをア
ッセイするために、GCM2メチル化特異的プローブおよびITPRIPL1メチル化特
異的プローブを使用する。
【0009】
1つの実施形態において、本開示は、(a)標的DNA配列GCM2およびITPRI
PL1またはそれらのフラグメントを含む生物学的サンプルを提供する工程、(b)GC
M2メチル化特異的プローブおよびITPRIPL1メチル化特異的プローブを用いて、
前記サンプル中の上記標的GCM2およびITPRIPL1 DNA配列またはそれらの
フラグメントならびにコントロールDNA配列のメチル化レベルをアッセイする工程、(
c)コントロールDNA配列に対する、標的GCM2およびITPRIPL1 DNA配
列またはそれらのフラグメントの相対的なメチル化状態を計測して、過剰メチル化された
GCM2およびITPRIPL1の存在を検出する工程、および(d)上記ヒト被験体の
標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1 DNA配列またはそれらのフラグメン
トが、前記被験体におけるコントロールDNA配列のメチル化と比べて過剰メチル化され
ているとき、その被験体を、乳癌処置を必要とすると特定する工程を含む、方法を提供す
る。この方法は、乳癌の検出を必要とするヒト被験体におけるメチル化状態を検出し得る
。
【0010】
1つの実施形態において、本開示は、(a)標的DNA配列GCM2およびITPRI
PL1またはそれらのフラグメントを含む生物学的サンプルを提供する工程、(b)GC
M2メチル化特異的プローブおよびITPRIPL1メチル化特異的プローブを用いて、
上記サンプル中の標的GCM2およびITPRIPL1 DNA配列またはそれらのフラ
グメントならびにコントロールDNA配列のメチル化レベルをアッセイする工程、(c)
コントロールDNA配列に対する、標的GCM2およびITPRIPL1 DNA配列ま
たはそれらのフラグメントの相対的なメチル化状態を計測して、過剰メチル化されたGC
M2およびITPRIPL1の存在を検出する工程、および(d)上記ヒト被験体の標的
DNA配列GCM2およびITRPIPL1が、前記被験体におけるコントロールDNA
配列のメチル化状況と比べて過剰メチル化されているとき、その被験体を、乳癌の素因も
しくは罹患、処置応答不良または予後不良または再発を有すると特定する工程を含む、方
法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルは、組織、細胞、血液、尿、血清
または血漿である。
【0012】
いくつかの実施形態において、コントロールのメチル化よりも約64%高い、本明細書
中に記載されるDNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメント
におけるメチル化は、乳癌を示唆する。さらなる実施形態において、コントロールのメチ
ル化よりも約69%高い、上記DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれら
のフラグメントにおけるメチル化は、乳癌を示唆する。さらなる実施形態において、コン
トロールのメチル化よりもそれぞれ約69%および約80%高い、上記DNA配列GCM
2およびITPRIPL1またはフラグメントにおけるメチル化は、乳癌を示唆する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される過剰メチル化は、ヒト被験体に
おける上記標的DNA配列のメチル化が、コントロールにおけるメチル化よりも少なくと
も0.5倍、1倍、2倍または3倍高いとき、示唆される。1つの実施形態において、過
剰メチル化は、ヒト被験体における上記標的DNA配列のメチル化が、コントロールにお
けるメチル化より少なくとも2倍高いとき、示唆される。
【0014】
メチル化アッセイにおいて使用されるプローブのある特定の実施形態は、配列番号13
~18からなる群より選択される配列に対して約85%、約86%、約87%、約88%
、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%
、約97%、約98%、約99%またはそれより高いパーセントの相同性を有する。いく
つかの実施形態において、GCM2メチル化特異的プローブは、配列番号15に対して少
なくとも85%の相同性を有する配列を有し、ITPRIPL1メチル化特異的プローブ
は、配列番号16に対して少なくとも85%の相同性を有する配列を有する。いくつかの
実施形態において、GCM2メチル化特異的プローブは、配列番号15の配列を有し、I
TPRIPL1メチル化特異的プローブは、配列番号16の配列を有する。
【0015】
さらなる実施形態において、本開示の方法は、以下の1つ以上の標的DNA配列または
それらの組み合わせのいずれか:C1orf114またはそのフラグメント、ZNF17
7またはそのフラグメントおよびC8orf47またはそのフラグメントのメチル化レベ
ルをアッセイする工程をさらに含む。さらに、RKL001のメチル化レベルが、さらに
アッセイされる。
【0016】
いくつかの実施形態において、C1orf114メチル化特異的プローブ、ZNF17
7メチル化特異的プローブもしくはC8orf47メチル化特異的プローブまたはそれら
の組み合わせのいずれかが、以下の1つ以上の標的DNA配列またはそれらの組み合わせ
のいずれか:C1orf114またはそのフラグメント、ZNF177またはそのフラグ
メントおよびC8orf47またはそのフラグメントのメチル化レベルをアッセイするた
めにさらに使用される。さらに、標的であるC1orf114、ZNF177およびC8
orf47またはそれらのフラグメントのメチル化特異的プローブは、それぞれ配列番号
17、18および14に対して少なくとも85%の相同性を有する配列を有する。さらな
る実施形態において、標的であるC1orf114またはそのフラグメント、ZNF17
7またはそのフラグメントおよびC8orf47またはそのフラグメントのメチル化特異
的プローブは、それぞれ配列番号17、18および14の配列を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、コントロールDNA配列に対する、標的C1orf11
4、ZNF177および/もしくはC8orf47 DNA配列またはそれらのフラグメ
ントの相対的なメチル化状態の基準は、それぞれ、C1orf114の場合、約75%よ
り高い感度および約76%の特異度を有し、ZNF177の場合、約62%より高い感度
および約82%の特異度を有する。いくつかの実施形態において、標的であるGCM2お
よびITPRIPL1またはそれらのフラグメント;標的であるGCM2、ITPRIP
L1およびC1orf114またはそれらのフラグメント;ならびにGCM2、ITPR
IPL1、C1orf114およびZNF177またはそれらのフラグメントの組み合わ
せの相対的なメチル化状態の基準は、それぞれ、コントロールDNA配列に対して、約8
7%より高い感度および約96%の特異度、約95%より高い感度および約72%の特異
度、約87%より高い感度および約96%の特異度を有する。さらなる実施形態において
、その基準は、加重和スコアの解析によって特異度および感度を計測する工程をさらに含
む。いくつかのさらなる実施形態において、標的であるGCM2、ITPRIPL1およ
びC1orf114もしくはそれらのフラグメントまたは標的であるGCM2、ITPR
IPL1、C1orf114およびZNF177もしくはそれらのフラグメントの組み合
わせの相対的なメチル化状態の基準は、それぞれ、約87%より高い感度および約96%
の特異度、ならびに約91%より高い感度および約96%の特異度を有する。
【0018】
さらなる実施形態において、RKL001のメチル化レベルをアッセイするために、R
KL001メチル化特異的プローブをさらに使用する。好ましくは、RKL001メチル
化特異的プローブは、配列番号13に対して少なくとも85%の相同性を有する配列を有
する。より好ましくは、RKL001メチル化特異的プローブは、配列番号13の相同性
を有する配列を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、メチル化状態は、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸配列決定
(例えば、バイサルファイトシークエンスまたはパイロシークエンス)、バイサルファイ
ト変換、質量分析、メチル化特異的ヌクレアーゼ、質量に基づく分離、標的捕捉またはマ
イクロアレイによって検出される。特定の実施形態において、メチル化状態は、ポリメラ
ーゼ連鎖反応によって検出される。
【0020】
ポリメラーゼ連鎖反応において使用されるプライマーのある特定の実施形態は、配列番
号1~12からなる群より選択される配列に対して約85%、約86%、約87%、約8
8%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約9
6%、約97%、約98%、約99%またはそれより高いパーセントの相同性を有する。
いくつかの実施形態では、標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれら
のフラグメントのメチル化状態を検出または計測するために、配列番号5~8の配列を有
するプライマーまたは配列番号15および16の配列を有するプローブを使用する。
【0021】
本開示は、本明細書中に記載されるような標的DNA配列におけるエピジェネティック
バイオマーカーのメチル化プロファイルを検出するためおよび/または特徴付けるための
キットも提供する。そのキットは、重亜硫酸ナトリウム、ならびに標的遺伝子全体を増幅
するためのアダプター、ならびに本明細書中に記載されるような標的DNA配列における
エピジェネティックバイオマーカーのDNA領域からの少なくとも1つのシトシンの変換
されたメチル化配列およびまたは変換された非メチル化配列の存在を定量するためのポリ
ヌクレオチド(例えば、検出可能に標識されたポリヌクレオチド)をさらに含み得る。さ
らに、そのキットは、標的配列全体または遺伝子を増幅するためのメチル化感知制限酵素
(methylation sensing restriction enzymes
)をさらに含み得る。
【0022】
1つの実施形態において、上記キットは、標的DNA配列GCM2およびITPRIP
L1もしくはそれらのフラグメントにおけるエピジェネティックバイオマーカーのメチル
化状態をアッセイするために、配列番号9~12および1~4の配列を有する1つ以上の
プライマーならびに/または配列番号17、18、12および13の配列を有する1つ以
上のプローブを、1つ以上の標的DNA配列C1orf114またはそのフラグメント、
ZNF177またはそのフラグメント、C8orf47またはそのフラグメントおよびR
KL0014またはそれらの組み合わせのいずれかと組み合わせて、さらに含む。
【0023】
1つの実施形態において、上記キットは、1つ以上の標的DNA配列C1orf114
またはそのフラグメント、ZNF177またはそのフラグメント、C8orf47または
そのフラグメントおよびRKL0014またはそれらの組み合わせのいずれかとともに、
標的DNA配列GCM2またはそのフラグメントおよびITPRIPL1またはそのフラ
グメントにおけるエピジェネティックバイオマーカーのメチル化プロファイルを検出する
ためおよび/または特徴付けるために使用され得る。そのキットは、標的DNA配列のメ
チル化状態を検出または計測するための、配列番号9~12および1~4の配列を有する
1つ以上のプライマーならびに/または配列番号17、18、12および13の配列を有
する1つ以上のプローブをさらに含む。
【0024】
さらなる実施形態において、上記キットは、標的配列全体または遺伝子を増幅するため
のメチル化感知制限酵素をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1A~Fは、それぞれ、腫瘍組織と隣接する正常組織との間の、標的核酸、ならびに遺伝子のプロモーター、エキソンおよび遺伝子本体領域のメチル化状態の差異についてのヒートマップを示している(A:RKL001;B:C8orf47;C:GCM2;D:C1orf114;E:ITPRIPL1;F:ZNF177)。
【0026】
【
図2】
図2は、健常被験体および乳癌患者の血漿サンプル中の標的遺伝子のエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態の早期検出の差異を示している。
【0027】
【
図3】
図3は、乳癌患者および健常被験体における標的遺伝子のエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態の早期検出を示している、受信者動作特性(ROC)曲線解析を示している。GI:GCM2、ITPRIPL1;GIC:GCM2、ITPRIPL1、C1orf114;GICZ:GCM2、ITPRIPL1、C1orf114、ZNF177;G(a
*)I(b
*)C(c
*)Z(d
*):加重和スコアの解析後のGCM2+ITPRIPL1+C1orf114+ZNF177。
【0028】
【
図4】
図4A~Cは、手術前および手術後の乳癌患者における標的遺伝子C1orf114(A)、CA-153(B)およびCEA(C)のエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態による処置応答を示している。
【0029】
【
図5】
図5は、ITPRIPL1遺伝子のメチル化状態のカプラン・マイヤー曲線に基づいた、乳癌患者における予後不良を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、本明細書中に記載される特定の材料および方法に限定されないと理解される
。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明するための目的のものであって
、添付の請求項によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解さ
れるべきである。
【0031】
本明細書および添付の請求項において使用されるとき、単数形「a」、「an」および
「the」は、その内容が別段明確に規定されていない限り、複数の指示対象を含むこと
に注意しなければならない。したがって、例えば、「バイオマーカー(a biomar
ker)」に対する言及は、2つ以上のバイオマーカーの混合物などを含む。
【0032】
用語「AUC」は、本明細書中で使用されるとき、曲線下面積の省略形である。特に、
この用語は、受信者動作特性(ROC)曲線下面積のことを指す。ROC曲線は、診断検
査の考えられる種々のカットポイントに対する偽陽性率に対して真陽性率をプロットした
ものである。ROC曲線は、選択されたカットポイントに応じて感度と特異度との間にト
レードオフを示す(感度が上昇すると、特異度が低下する)。ROC曲線下面積(AUC
)は、診断検査の精度に対する尺度である(面積が大きいほど好ましく、1が最善であり
、無作為検査であれば、ROC曲線は対角線上に乗ることになり、0.5という面積を有
する;参照として、J.P.Egan.Signal Detection Theor
y and ROC Analysis,Academic Press,New Yo
rk,1975)。
【0033】
用語「生物学的サンプル」とは、被験体から単離された組織、細胞または体液のサンプ
ルのことを指し、それらとしては、例えば、血液、バフィーコート、血漿、血清、血液細
胞(例えば、末梢血単核細胞(PBMCS)、杆状球、好中球、後骨髄球、単球またはT
細胞)、糞便、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚サンプル、皮膚、気道、腸管およ
び尿生殖器の外分泌物、涙液、唾液、乳、器官、生検材料、ならびにインビトロ細胞培養
物の構成物のサンプル(培養液中での細胞および組織、例えば、組換え細胞の成長に由来
する条件培地、ならびに細胞構成要素が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられ
るがこれらに限定されない。
【0034】
用語「バイオマーカー」とは、コントロール被験体(例えば、陰性診断を受けたまたは
検出不可能な癌を有する人物、正常または健常な被験体)から採取された同等のサンプル
と比較される、ヒト癌を有する患者から採取されたサンプル中に存在する核酸分子のこと
を指す。バイオマーカーは、検出および/または定量され得る、核酸、核酸のフラグメン
ト、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドであり得る。バイオマーカーには、遺伝
子由来のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。
【0035】
用語「CpGアイランド」は、本明細書中で使用されるとき、あるゲノムにおける一続
きのDNAであって、そのゲノムの残りと比べてGCリッチなDNAのことを指す。数百
塩基対、時として数千塩基対にも及ぶこれらの領域のGC含有量は、通常、50%以上で
ある。これらの領域は、遺伝子の5’末端の印となることが多い。
【0036】
バイオマーカーの「コントロール量」は、ある検査量のバイオマーカーに対して比較さ
れる任意の量または量の範囲であり得る。
【0037】
本明細書中で使用されるとき、癌の「早期検出」という用語は、転移前に癌の可能性を
発見することを指す。好ましくは、この用語は、サンプル組織または細胞の形態学的変化
が観察される前に癌の可能性を発見することを指す。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、用語「検出する(detect)」、「検出する(de
tecting)」または「検出」は、発見するもしくは見分けるといった一般的な行為
、または検出可能に標識された組成物の特異的観察を説明し得る。
【0039】
用語「遺伝子」とは、ポリペプチド、前駆体またはRNA(例えば、非コードRNA、
例えば、リボソームRNA、転移RNA、スプライコソームRNA、マイクロRNA)の
生成に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列のことを指す。ポリペプチド
または非コードRNAは、完全長またはフラグメントのポリペプチドの所望の活性または
機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性など)が保持され
る限り、その完全長のコード配列またはコード配列の任意の部分によってコードされ得る
。したがって、遺伝子は、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列(例えば、
リボソーム結合部位および配列内リボソーム進入部位)、エンハンサー、サイレンサー、
インスレーター、境界領域、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座調節領域を
含むこともあるし、それらを除外することもある。この用語は、構造遺伝子のコード領域
、およびその遺伝子の長さが完全長mRNAに対応するような、コード領域の5’末端と
3’末端の両方においていずれかの末端の約1kb以上の距離にわたってコード領域に隣
接して位置する配列も包含する。用語「遺伝子」はさらに、遺伝子のcDNAの形態とゲ
ノムの形態の両方を含む。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、用語「相同性」とは、第2の配列とある配列同一性の程
度を共有するが、その配列が第2の配列と同一ではない、第1の配列を指す。例えば、あ
る変異遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、その変異遺伝子の配列と相同であ
るが、同一ではない。いくつかの実施形態において、2つの配列間の相同性の程度は、適
切なストリンジェントな条件下においてそれらの間の相同組換えを可能にするのに十分な
程度である。
【0041】
核酸配列同一性およびアミノ酸配列同一性を測定する手法は、ある遺伝子に対するmR
NAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミ
ノ酸配列を決定すること、ならびにこれらの配列を第2のヌクレオチド配列またはアミノ
酸配列と比較することを含む。ゲノム配列も、この形式で決定され、比較され得る。一般
に、同一性とは、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の、それぞれ厳密
なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の一致のことを指す。2つ以上
の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを決定するこ
とによって比較され得る。2つの配列の同一性パーセントは、核酸配列かアミノ酸配列か
を問わず、アラインメントされた2つの配列の間の厳密なマッチの数を、短い方の配列の
長さで除算し、それに100を乗算した値である。
【0042】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド間の配列類似性の程度は、相同領域間
で安定な二重鎖の形成を可能にする条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーショ
ンの後、一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、そして消化されたフラグメントのサイズ測
定によって測定され得る。2つの核酸配列または2つのポリペプチド配列は、それらの配
列が、上記方法を用いて決定されたそれらの分子の定義された長さにわたって、少なくと
も約70%~75%、好ましくは、80%~82%、より好ましくは、85%~90%、
さらにより好ましくは、92%、なおもより好ましくは、95%、最も好ましくは、98
%の配列同一性を示すとき、互いに実質的に相同である。本明細書中で使用されるとき、
実質的に相同とは、特定のDNA配列またはポリペプチド配列と完全な同一性を示す配列
のことも指す。実質的に相同なDNA配列は、例えば、その特定の系に対して定義される
ストリンジェントな条件下での、サザンハイブリダイゼーション実験において特定され得
る。例えば、Sambrook et al.,前出;Nucleic Acid Hy
bridization:A Practical Approach,editors
B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford;
Washington,D.C.;IRL Press)を参照のこと。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、用語「予測」とは、ある患者がある薬物または薬物セッ
トに対して好ましくまたは好ましくなく応答する可能性のことを指し、それらの応答の程
度のことも指す。したがって、処置予測因子は、予後と無関係な、特定の処置に対する個
々の患者の応答に関する変数である。
【0044】
用語「メチル化」は、本明細書中で使用されるとき、DNAメチルトランスフェラーゼ
酵素の作用によってメチル基が、ある核酸の領域、例えば、ゲノムDNAにおけるシトシ
ン塩基に付加されて存在することを指す。
【0045】
核酸分子の「メチル化状況」、「メチル化プロファイル」または「メチル化状態」とい
う用語は、その核酸分子における1つ以上のメチル化ヌクレオチド塩基の有無のことを指
す。例えば、メチル化シトシンを含む核酸分子は、メチル化されているとみなされる(す
なわち、その核酸分子のメチル化状況は、メチル化されている)。いかなるメチル化ヌク
レオチドも含まない核酸分子は、メチル化されていないとみなされる。
【0046】
用語「過剰メチル化」とは、正常なコントロールDNAサンプル内の対応するCpGジ
ヌクレオチドに見られる、核酸分子におけるメチル化ヌクレオチド塩基の量と比べて、あ
る試験DNAサンプルのDNA配列内の1つまたは複数のCpGジヌクレオチドにおける
核酸分子にメチル化ヌクレオチド塩基が多く存在することに対応する平均的なメチル化状
況のことを指す。
【0047】
用語「低メチル化」とは、正常なコントロールDNAサンプル内の対応するCpGジヌ
クレオチドに見られる、核酸分子におけるメチル化ヌクレオチド塩基の量と比べて、ある
試験DNAサンプルのDNA配列内の1つまたは複数のCpGジヌクレオチドにおける核
酸分子にメチル化ヌクレオチド塩基が少なく存在することに対応する平均的なメチル化状
況のことを指す。
【0048】
用語「被験体」とは、ヒトのことを指す。
【0049】
用語「感受性」とは、組織がある特定の外部刺激に対して特別な方法で反応するように
させ、ゆえに、その個体を、ある特定の疾患に対して通常よりも感受性にさせる傾向があ
る、体質または身体の状態のことを指す。
【0050】
用語「標的部位」または「標的配列」とは、結合にとって十分な条件が存在する場合に
、ある結合分子が結合する核酸の一部を定義する核酸配列のことを指す。
【0051】
用語「リスク」とは、ある特定の期間中(例えば、次の10年以内)に、または被験体
の生存期間中に、疾患に罹る確率の推定値のことを指す。
【0052】
用語「予後」は、本明細書中で使用されるとき、一般に、臨床の状態または疾患の確度
の高い経過および結果の予測のことを指す。患者の予後は、通常、ある疾患の好ましいも
しくは好ましくない経過または結果を示すその疾患の因子または症状を評価することによ
ってなされる。
【0053】
用語「重量和スコア」とは、異なる目的物の重要性を強調するために個別に重み付けさ
れた、すべての目的物を含むスコアによって評価される、可能性のあるあらゆる選択肢の
ことを指す。
【0054】
癌は、細胞増殖と細胞死との均衡が調節不全に至る、遺伝子の1つ以上の変異または修
飾に起因する細胞の異常な成長を特徴とする。癌などの多くの疾患プロセスでは、遺伝子
プロモーターのCpGアイランドが、異常な過剰メチル化を獲得し、その結果、細胞分裂
後に娘細胞に受け継がれ得る転写サイレンシングが生じる。癌におけるDNAメチル化に
起因するサイレンシングは、通常、タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターに存在
するCpGアイランド内の複数のCpG部位において生じる。DNAメチル化の変化は、
癌発生の重要な構成要素として認識されている。DNAメチル化のプロファイリングは、
他の癌検出よりも高い臨床的感度およびより広いダイナミックレンジを提供する。したが
って、本開示は、乳癌の早期予測のため、処置応答および予後または再発をモニタリング
するための方法およびキットを提供する。
【0055】
本開示では、生物学的サンプル中の標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1ま
たはそれらのフラグメントのメチル化状態を計測することにより、ヒト被験体において乳
癌を検出する、または乳癌の素因もしくは罹患を検出する、または乳癌の処置応答、予後
もしくは再発を予測する。さらなる実施形態において、生物学的サンプル中の標的DNA
配列C1orf114、ZNF177および/またはC8orf47またはそれらのフラ
グメントのメチル化状態を計測することにより、ヒト被験体において乳癌を検出する、ま
たは乳癌の素因もしくは罹患を検出する、または乳癌の処置応答、予後もしくは再発を予
測する。さらなる実施形態では、ヒト19番染色体における核酸配列RKL001のメチ
ル化状態をさらに計測する。
【0056】
GCM2遺伝子は、神経細胞とグリア細胞の判定のバイナリースイッチとして作用する
と考えられているグリア細胞欠損ホモログ2をコードする。GCMタンパク質および哺乳
動物GCMホモログは、DNA結合活性を有する、保存されたN末端GCMモチーフを含
む。GCM2配列およびその機能は、当該分野で公知であり、例えば、ウェブサイト:h
ttps://www.genecards.org/cgi-bin/carddis
p.pl?gene=GCM2に記載されている。
【0057】
ITPRIPL1遺伝子は、イノシトール1,4,5-三リン酸レセプター相互作用タ
ンパク質様1からコードする。ITPRIPL1配列およびその機能は、当該分野で公知
であり、例えば、ウェブサイト:https://www.genecards.org
/cgi-bin/carddisp.pl?gene=ITPRIPL1に記載されて
いる。
【0058】
ZNF177は、ジンクフィンガータンパク質177をコードする。ZNF177配列
およびその機能は、当該分野で公知であり、例えば、ウェブサイト:https://w
ww.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gen
e=ZNF177に記載されている。
【0059】
C8orf47は、グルタミン酸リッチタンパク質5をコードする。C8orf47配
列およびその機能は、当該分野で公知であり、例えば、ウェブサイト:https://
www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?ge
ne=ERICH5に記載されている。
【0060】
RKL001は、19番染色体における核酸配列であり、以下の配列を有する:CGC
AGGCCAGGCCCTCTATTCCTGTCGCTGCGCCCCGCCTTGC
CGGCTGCGTGTCACCCCCCCCCCTGCCGCGCTGGCTCCCC
GTCCGTCCCACCAGCCTTGCTGTCCTGGGCAGGCCGGGGA
ATTCCTCCCGGTTCCTGGAAAAAACA(配列番号19)。
【0061】
いくつかの実施形態において、メチル化は、シトシンメチル化部位を含む。いくつかの
場合において、シトシンメチル化は、5-メチルシトシン(5-mCyt)および5-ヒ
ドロキシメチルシトシンを含む。いくつかの場合において、シトシンメチル化部位は、C
pGジヌクレオチドモチーフに存在する。他の場合において、シトシンメチル化部位は、
CHGまたはCHHモチーフに存在し、そこでは、アデニン、シトシンまたはチミンであ
る。いくつかの場合において、1つ以上のCpGジヌクレオチドモチーフまたはCpG部
位は、CpGジヌクレオチドが豊富な短いDNA配列であるCpGアイランドを形成する
。いくつかの場合において、CpGアイランドは、通常、約0.2~約1kb長であるが
、必ずしもそうではない。いくつかの場合において、メチル化は、CpGアイランドのメ
チル化を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、メチル化状態は、メチル化特異的酵素による消化;バイ
サルファイトシークエンス;プロモーターメチル化、CpGアイランドメチル化、MSP
、HeavyMethyl、MethyLightおよびMs-SNuPEから選択され
る解析;ならびに増幅DNAの検出に頼る他の方法によって解析される。用語「Meth
yLightTM」とは、蛍光に基づくリアルタイムPCR法のことを指す。Methy
lLightは、Eads et al.,Cancer Res.59:2302-2
306,1999に説明されており、これは参照により本明細書中に援用される。
【0063】
用語「HeavyMethyl」アッセイとは、増幅プライマー間のCpG位置をカバ
ーするまたは増幅プライマーによってカバーされるメチル化特異的ブロッキングプローブ
(本明細書中ではブロッカーとも称される)によって核酸サンプルのメチル化特異的選択
的増幅が可能になるアッセイのことを指す。
【0064】
用語「Ms-SNuPE」とは、メチル化感受性一本鎖ヌクレオチドプライマー伸長(
Methylation-sensitive Single Nucleotide
Primer Extension)のことを指す。MsSNuPEは、Gonzalg
o & Jones,Nucleic Acids Res.25:2529-2531
,1997に記載されており、これは参照により本明細書中に援用される。
【0065】
用語「MSP」とは、メチル化特異的PCRのことを指す。MSPは、Herman
et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9821-982
6,1996および米国特許第5,786,146号に記載されており、これらの各々は
参照により本明細書中に援用される。
【0066】
DNAのバイサルファイト修飾は、CpGメチル化状態を評価する方法である。5-メ
チルシトシンは、真核細胞のDNAにおいて最も高頻度の共有結合性の塩基修飾である。
しかしながら、5-メチルシトシンは、シトシンと同じ塩基対形成挙動を示すので、5-
メチルシトシンの位置は、配列決定法またはハイブリダイゼーション法によって直接特定
できない。さらに、5-メチルシトシンが有するエピジェネティックな情報は、例えばP
CR増幅中に、完全に失われる。バイサルファイトシークエンスは、5-メチルシトシン
の存在についてDNAを解析するための方法であり、この方法は、バイサルファイトとシ
トシンとの特異的反応に基づき、それによって、その後のアルカリ加水分解時にシトシン
が、その塩基対形成挙動がチミンに対応するウラシルに変換される。しかしながら、5-
メチルシトシンは、上述の条件下でも修飾されないまま残る。したがって、元のDNAは
、当初はそのハイブリダイゼーション挙動によってシトシンと区別できなかったメチルシ
トシンが、分子生物学的手法、例えば、増幅およびハイブリダイゼーションまたは配列決
定によって、唯一の残っているシトシンとして検出できるように変換される。
【0067】
1つの実施形態において、メチル化状態は、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸配列決定(例
えば、バイサルファイトシークエンスまたはパイロシークエンス)、バイサルファイト変
換、質量分析、メチル化特異的ヌクレアーゼ、質量に基づく分離、標的捕捉またはマイク
ロアレイによって検出される。1つの実施形態において、メチル化状態は、プライマーを
用いて標的遺伝子のメチル化CpGを増幅することによって検出される。さらなる実施形
態において、メチル化の検出は、PCR、メチル化特異的PCR(MSP)、リアルタイ
ムメチル化特異的PCR、定量的メチル化特異的PCR(QMSP)、メチル化DNA特
異的結合タンパク質を用いたPCR、または定量的PCRによって行われる。
【0068】
本開示の1つの実施形態において、本明細書中に記載される遺伝子のメチル化CpGを
増幅し得るプライマーが、使用され得る。それらのプライマーは、それらの遺伝子のメチ
ル化CpGにハイブリダイズする領域に少なくとも1つ以上のCpGジヌクレオチドを含
む。詳細には、それらの遺伝子のメチル化CpGを増幅するためのプライマーは、以下の
配列からなる群より選択される配列に対して約85%、約86%、約87%、約88%、
約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、
約97%、約98%、約99%またはそれより高いパーセントの相同性を有する配列を含
む。
【表1】
【0069】
本明細書中に記載される遺伝子のメチル化CpGとハイブリダイズすることができるプ
ローブが使用され得る。それらの遺伝子のメチル化CpGとハイブリダイズすることがで
きるプローブは、それらの遺伝子のメチル化CpGにハイブリダイズする領域に少なくと
も1つ以上のCpGジヌクレオチドを含む。詳細には、プローブは、以下の配列からなる
群より選択される配列に対して約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約
90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約
98%、約99%またはそれより高いパーセントの相同性を有する配列を含み得る。
【表2】
【0070】
1つの実施形態において、標的遺伝子のメチル化状態の検出は、標的遺伝子の正常状態
を基準とした、それらの遺伝子における過剰メチル化の存在を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、乳癌を有すると疑われる患者由来
または検出されるべき被験体由来の組織、細胞、血液、尿、血清または血漿である。
【0072】
本明細書中で使用されるとき、用語「癌を有すると疑われる患者」とは、初期診断を受
けた(例えば、CTスキャンが塊を示しているか、またはバイオマーカーのレベルが高い
)が、癌のステージまたは癌を示すメチル化遺伝子の有無が不明である個体のことを指す
。この用語はさらに、かつて癌を有した人々(例えば、寛解状態の個体)も含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、状態を正確に予測する検出検査は、アッセイの感度、ア
ッセイの特異度または受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)として計測される
。ROC曲線下面積が大きいほど、例えば、検査の予測値が正確であるかまたは説得力が
ある。
【0074】
1つの実施形態において、加重和スコアは、指標として核酸配列および遺伝子における
メチル化状態を測定するために計測される。加重和モデル(WSM)は、いくつかの決定
基準に関していくつかの選択肢を評価するための最もよく知られた最も単純な多基準意思
決定分析(MCDA)/多基準意思決定法である。本開示によると、加重和スコアの解析
によって、GCM2、ITPRIPL1、C1orf114およびZNF177の組み合
わせが、コントロールと比べて約91%より高い感度および約96%より高い特異度を示
すことが示される。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されるバイオマーカーの1つ以上が、
異なるサンプルにおいて少なくともp<0.05の統計的有意差を示す。これらのバイオ
マーカーを使用する検出検査は、少なくとも0.9のAUCを示し得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるDNA配列におけるエピジェネ
ティックバイオマーカーの過剰メチル化状態は、予後「不良」、あるいは被験体がある薬
物もしくは薬物セットに対して好ましくなく応答し、癌の進行および/または1つ以上の
治療薬不応性に至る可能性と相関する。いくつかの場合において、予後「不良」とは、被
験体がある薬物または薬物セットに対して応答せず、癌が進行する可能性のことを指す。
いくつかの場合において、予後「不良」とは、5年未満から1ヶ月未満という被験体の生
存期間のことを指す。いくつかの場合において、予後「不良」とは、処置した場合の被験
体の生存期間が5年未満から1ヶ月未満である被験体の生存期間のことを指す。いくつか
の場合において、予後「不良」とは、さらに、被験体が1つ以上の薬物に対して不応性の
癌を発症する可能性のことを指す。
【0077】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書中に記載される標的DNA配列19
のメチル化プロファイルを検出するためおよび/または特徴付けるためのキットを提供す
る。いくつかの実施形態において、標的DNA配列は、GCM2およびITPRIPL1
;GCM2、ITPRIPL1およびC1orf114;GCM2、ITPRIPL1、
C1orf114およびZNF177;GCM2、ITPRIPL1、C1orf114
、ZNF177およびRKL1001;ならびにGCM2、ITPRIPL1、C1or
f114およびZNF177、RKL1001およびC8orf47からなる群より選択
される組み合わせを含む。
【0078】
いくつかの場合において、上記キットは、1つ以上の標的遺伝子のメチル化状態/レベ
ルを検出または計測する複数のプライマーまたはプローブを含む。そのようなキットは、
いくつかの場合において、本明細書中に記載されるメチル化バイオマーカー配列の少なく
とも1つにハイブリダイズする少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび遺伝子メチル化
を検出するための少なくとも1つの試薬を含む。メチル化を検出するための試薬としては
、例えば、重硫酸ナトリウム、マーカー配列がメチル化されていない場合にマーカー配列
の生成物である配列にハイブリダイズするようにデザインされたポリヌクレオチド(例え
ば、少なくとも1つのC-U変換を含む)、および/またはメチル化感受性制限酵素もし
くはメチル化依存性制限酵素が挙げられる。いくつかの場合において、上記キットは、ア
ッセイでの使用に適合されたアッセイ装置の形態として固体支持体を提供する。いくつか
の場合において、上記キットはさらに、必要に応じてキット内のポリヌクレオチド、例え
ばプローブに連結された検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態において、上記キッ
トはさらに、本明細書中に記載されるような加重和スコアを得るためのプロセス装置を含
む。
【0079】
必要に応じて、増幅された部分にハイブリダイズすることができる1つ以上の検出可能
に標識されたポリペプチドも、上記キットに含められる。いくつかの実施形態において、
上記キットは、本明細書中に記載される標的DNA配列を増幅するのに十分なプライマー
を含み、必要に応じて、増幅された各DNA領域またはその一部にハイブリダイズするこ
とができる検出可能に標識されたポリヌクレオチドを含む。上記キットはさらに、メチル
化依存性制限酵素もしくはメチル化感受性制限酵素および/または重亜硫酸ナトリウムを
含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記キットは、重亜硫酸ナトリウム、標的遺伝子全体を
増幅するためのプライマーおよびアダプター、ならびに本明細書中に記載されるエピジェ
ネティックバイオマーカーのDNA領域からの少なくとも1つのシトシンの変換されたメ
チル化配列およびまたは変換された非メチル化配列の存在を定量するためのポリヌクレオ
チド(例えば、検出可能に標識されたポリヌクレオチド)を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、上記キットは、メチル化感知制限酵素、標的遺伝子全体
を増幅するためのプライマーおよびアダプター、ならびに本明細書中に記載されるエピジ
ェネティックマーカーのDNA領域の少なくとも一部のコピー数を定量するためのポリヌ
クレオチドを含む。いくつかの実施形態において、上記キットは、メチル化結合部分、お
よび本明細書中に記載されるマーカーのDNA領域の少なくとも一部のコピー数を定量す
るための1つ以上のポリヌクレオチドを含む。
【0082】
本明細書中に記載され、特許請求される本発明は、多くの特性および実施形態を有し、
それらには、この詳細な開示に示されたものまたはこの詳細な開示に記載または言及され
たものが含まれるが、これらに限定されない。すべてを網羅することは意図されておらず
、本明細書中に記載され、特許請求される本発明は、この詳細な開示において特定された
特徴または実施形態に限定されるものではなく、例示目的でのみ含められているのであっ
て、限定目的で含められているのではない。当業者は、多くの構成要素およびパラメータ
が、ある特定の程度で変更もしくは修正されることがあること、または本発明の範囲から
逸脱することなく、公知の均等物の代わりに用いられることがあることを容易に認識する
だろう。そのような修正および均等物は、個別に示されているかのように本明細書中に援
用されることが認識されるべきである。本発明はまた、本明細書で言及されたまたは示さ
れた工程、特徴、組成物および化合物のすべてを個別にまたは集合的に含み、また、前記
工程または特徴のいずれか2つ以上の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0083】
本明細書中で参照されたまたは述べられたすべての特許、刊行物、科学論文、ウェブサ
イトならびに他の文書および資料は、本発明が属する分野の当業者の熟練度を示すもので
あり、そのような参照された文書および資料の各々は、その全体が個別に参照により援用
されているか、またはその全体が本明細書中に示されているのと同一程度に、参照により
援用される。出願人は、そのような特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入
手可能な情報および他の参照された資料または文書からのあらゆる資料および情報を本明
細書に物理的に組み込む権利を留保する。本明細書中の任意の出願、特許および刊行物へ
の言及は、それらが、有効な先行技術を構成するという、または世界のどの国においても
共通の一般的な知識の一部を形成するという自認もしくは任意の形態の示唆ではなく、ま
た、そのような自認もしくは示唆として解釈されるべきでない。
【0084】
本明細書中に記載された具体的な方法および組成物は、好ましい実施形態の代表であり
、例示的なものであって、本発明の範囲に対する限定として意図されたものではない。本
明細書を考慮すると、当業者には、他の目的、態様および実施形態が考えつくだろう。そ
れらの他の目的、態様および実施形態は、請求項の範囲によって定義される本発明の趣旨
の範囲内に包含される。本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書中に開
示された本発明に様々な置き換えおよび修正がなされ得ることは、当業者には容易に明ら
かであろう。適切に本明細書中に例示的に記載された本発明は、本質的なものとして本明
細書中に具体的に開示されていない任意のエレメントまたは制限がなくても実施され得る
。したがって、例えば、本明細書中の各例、本発明の実施形態または実施例において、用
語「~を含む」、「~から本質的になる」および「~からなる」のうちのいずれかは、本
明細書においてその他の2つの用語のどちらかに置き換えられてもよい。また、用語「~
を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を含む
(containing)」などは、限定なしに広く解釈されるべきである。適切に本明
細書中に例示的に記載された方法およびプロセスは、異なる工程順序で実施されてもよく
、それらは、必ずしも本明細書中または請求項に示される工程順序に限定されるものでは
ない。また、本明細書中および添付の請求項で使用されるとき、単数形「a」、「an」
および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形の参照を含む。
いかなる状況下においても、本特許は、本明細書中に具体的に開示される特定の例または
実施形態または方法に限定されると解釈されてはならない。いかなる状況下においても、
任意の審査官または特許商標庁の他の任意の役人もしくは職員による声明が、出願人によ
る応答書において明確に、かつ条件なしまたは留保なしで明示的に採用されない限り、そ
のような声明によって本特許が限定されると解釈されてはならない。さらに、タイトル、
見出しなどは、本文書の読者の理解度を高めるために提供されているものであって、本発
明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書中で言及される本発明
の態様、実施形態または構成要素のいずれの例も、非限定的であるとみなされるべきであ
る。
【0085】
用いられた用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定の用語として使
用されておらず、そのような用語および表現の使用には、示され、記載された特徴または
その一部の均等物を排除する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が
可能であることが認識される。したがって、本発明を、好ましい実施形態および自由選択
の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書中に開示された概念の修正および変更
は、当業者に頼ってよく、そのような修正および変更は、添付の請求項によって定義され
る本発明の範囲内にあるとみなされることが理解されるだろう。
【0086】
本明細書中では本発明を広く一般的に説明してきた。その一般的な開示に含まれるより
狭い種および亜属の分類の各々も、本発明の一部を成す。これは、削除された資料が本明
細書中に具体的に記載されているかを問わず、属から任意の主題を取り除いた但し書きま
たは否定的な制限を伴う本発明の一般的な説明を含む。
【0087】
他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。さらに、本発明の特徴または態様が、
マーカッシュ群で記載されている場合、当業者は、本発明が、マーカッシュ群の任意の個
々のメンバーまたはメンバーのサブグループでも記載されていることを認識するだろう。
【0088】
さらなる詳述なしに、当業者は、前述の説明に基づいて本発明を最大限に利用できると
考えられる。ゆえに以下の例は、単なる例証的なものとして解釈されるべきであり、決し
て本発明の範囲の限定として解釈されるべきでない。
【0089】
例示的な実施形態を用いて本開示を説明してきたが、当業者には様々な変更および修正
が浮かぶことがある。本開示は、添付の請求項の範囲内に含まれるようなそのような変更
および修正を包含すると意図されている。
【実施例0090】
実施例1 乳癌組織における標的核酸および遺伝子のメチル化状態
【0091】
Illumina Methylation 450Kアレイに基づくデータに対する
β値を、The Cancer Genome Atlas(TCGA)Researc
h Networkから生成した。正常組織のβ値が0.15未満であり;△β値(腫瘍
の値から正常組織の値を減じた値)が0.3より高いとき、標的核酸および遺伝子を選択
した。GCM2、ITPRIPL1、C1orf114およびZNF177、RKL10
01およびC8orf47の△β値は、0.3よりかなり高い。
【表3】
β値(T)、腫瘍組織のメチル化レベル;
青色で標識された>0.3のβ値(T)は、他の癌に対するバイオマーカーとして計算さ
れる。
【0092】
図1は、腫瘍組織と隣接する正常組織との間の、標的核酸および遺伝子のメチル化状態
(β値)の差異を示している(n=97)。色が濃いほど、Illumina Meth
ylation 450Kアレイに基づくデータによると組織のメチル化状態がより高い
ことを示す。
実施例2 乳癌組織および正常組織における標的核酸と遺伝子との間のメチル化状態の
差異の検出
【0093】
乳癌患者のうち同じ患者由来の原発腫瘍と隣接する乳房組織のマッチドペアからゲノム
DNAを抽出した後、バイサルファイト変換を行った。乳房腫瘍組織および隣接する正常
組織におけるDNAメチル化解析の検出において、メチル化特異的リアルタイムPCR(
qMSP)を使用した。ACTB遺伝子を参照遺伝子として使用した。ACTB遺伝子の
メチル化レベルを基準とした標的遺伝子のメチル化レベルが、対にされた正常な乳房組織
サンプルと比べて乳房腫瘍において少なくとも2倍高かったとき、標的を過剰メチル化さ
れているとみなした。隣接する正常組織と比べたとき、乳房腫瘍においてGCM2、IT
PRIPL1、C1orf114およびZNF177、RKL1001およびC8orf
47のすべての過剰メチル化率が、64%より高かった。
【表4】
実施例3 健常被験体および乳癌患者の血漿サンプル中の標的遺伝子のエピジェネティ
ックバイオマーカーのメチル化状態の早期検出
【0094】
循環無細胞DNAを血漿から抽出した。簡潔には、10mLの末梢血から直ちに3.5
mLの血漿を単離した。24人の乳癌患者および25人の健常被験体から得た血漿から循
環無細胞DNA(cfDNA)を抽出した後、cfDNAをバイサルファイト変換によっ
て行った。cfDNAメチル化解析に、プローブベースのメチル化特異的リアルタイムP
CR(qMSP)を用いた。GCM2、ITPRIPL1、C1orf114およびZN
F177による早期予測は、91.7%の感度および96.0%の特異度(AUC:0.
954)を示した。
【表5】
【0095】
図2は、健常被験体および乳癌患者の血漿サンプル中の標的遺伝子のエピジェネティッ
クバイオマーカーのメチル化状態の早期検出の差異を示している。さらに、
図3に示され
ているような受信者動作特性(ROC)曲線解析は、乳癌患者および健常被験体における
標的遺伝子のエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態の早期検出を示した。
実施例4 乳癌患者における標的遺伝子のエピジェネティックバイオマーカーのメチル
化状態によってモニターされる処置応答
【0096】
乳癌患者の血漿由来のcfDNAを、プローブベースのメチル化特異的リアルタイムP
CR(qMSP)によって解析した。CA-153およびCEA腫瘍マーカーは、現在、
臨床で使用されている癌バイオマーカーであり、これらを比較マーカーとして使用した。
結果は、エピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態が、医学的な手術処置に対し
て感度よく応答し得ることを示した。
図4に示されているように、手術前および手術後の
乳癌患者における標的遺伝子のエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態による
処置応答。
実施例5 乳癌患者における標的遺伝子のエピジェネティックバイオマーカーのメチル
化状態による予後予測
【0097】
Illumina Methylation 450Kアレイに基づくデータおよび追
跡調査情報を、The Cancer Genome Atlas(TCGA)Rese
arch Networkから生成した。全生存曲線を、カプラン・マイヤー法を用いて
計算し、SPSSソフトウェア(SPSS Inc.,Chicago,IL,USA)
によってログランク検定およびウィルコクソン検定を用いて比較を行った。
図5に示され
ているカプラン・マイヤー曲線は、ITPRIPL1遺伝子のメチル化状態が、乳癌患者
における予後不良を有したことを示している。GCM2、ITPRIPL1、C1orf
114、ZNF177、C8orf47および/もしくはRKL1001ならびに/また
はそれらの組み合わせのいずれかの全生存曲線も、カプラン・マイヤー法を用いて計算し
た。
乳癌の検出を必要とするヒト被験体におけるメチル化状態を検出するための方法であって、前記方法は、(a)生物学的サンプルを提供する工程、および(b)標的DNA配列GCM2およびITPRIPL1またはそれらのフラグメントにおけるエピジェネティックバイオマーカーのメチル化状態をアッセイする工程を含み、コントロールのメチル化状況を基準として、前記ヒト被験体の前記DNA配列に過剰メチル化が存在することが、乳癌を示す、方法。