(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061808
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、プリント配線板、および、半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20240426BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240426BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240426BHJP
C08G 61/10 20060101ALI20240426BHJP
C08G 65/44 20060101ALI20240426BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240426BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240426BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L65/00
C08K3/013
C08G61/10
C08G65/44
C08J5/24 CER
B32B15/08 U
B32B27/00 103
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037214
(22)【出願日】2024-03-11
(62)【分割の表示】P 2023553179の分割
【原出願日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2022039676
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥一
(72)【発明者】
【氏名】田所 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】印南 享
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真
(72)【発明者】
【氏名】二村 圭亮
(57)【要約】
【課題】 成形性に優れ、かつ、誘電正接(Df)が低い樹脂組成物、ならびに、硬化物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、プリント配線板、および、半導体装置の提供。
【解決手段】式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)と、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含み、前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~70/30である、樹脂組成物。式(T1)中、Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し、yは0~4の整数を表す。*は他の部位との結合位置を表す。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダン骨格を有する樹脂(A)と、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含み、前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~70/30であり、
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)が熱硬化性化合物であり、
前記樹脂(A)が、式(T1-1)で表される樹脂を含み、
前記樹脂(A)の数平均分子量(Mn)が400~3000であり、
式(T1-1)で表される樹脂の、式(α)から算出されるパラメーターαが0.55以上1.00以下であり、かつ、式(β)から算出されるパラメーターβが0.20以上3.00以下である、樹脂組成物。
【化1】
(式(T1-1)中、Rは、式(Tx)で表される構成単位を含む基である。Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。yは0~4の整数である。)
【化2】
(式(Tx)中、n、o、およびpは、平均繰り返し単位数であり、nは0超20以下の数を表し、oおよびpは、それぞれ独立して0~20の数を表し、1.0≦n+o+p≦20.0である。Maは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。xは0~4の整数を表す。構成単位(a)、(b)、(c)は、それぞれ*で構成単位(a)、(b)、(c)、または他の基と結合しており、各構成単位はランダムに結合していてもよい。)
【数1】
(式(α)および式(β)における括弧内は、
1H-NMRにおける該当する化学シフト値間の積分値を示す。)
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)が、式(OP)で表されるポリフェニレンエーテル化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(OP)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)
n1-はポリフェニレンエーテル構造を表し、n1は1~100の整数を表し、n2は1~4の整数を表す。Rxは、式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基である。)
【化4】
(式(Rx-1)および式(Rx-2)中、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。*は、酸素原子との結合部位である。Mcは、それぞれ独立に炭素数1~12の炭化水素基を表す。zは0~4の整数を表す。rは1~6の整数を表す。)
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)が、式(OP-1)で表されるポリフェニレンエーテル化合物を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化5】
(式(OP-1)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)n
2-はポリフェニレンエーテル構造を表し、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表し、n
1は1~6の整数を表し、n
2は1~100の整数を表し、n
3は1~4の整数を表す。)
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の数平均分子量(Mn)が500~3000であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が800~6000である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~45/55である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
重合禁止剤を実質的に含まない、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、前記樹脂(A)および前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の他の化合物(C)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記他の化合物(C)が、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、(メタ)アリル基を含む化合物、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、アリールシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ペルフルオロビニルエーテル樹脂、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外のスチレン基を有する化合物、前記インダン骨格を有する樹脂(A)以外のイソプロペニル基を有する化合物、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の多官能(メタ)アクリレート化合物、エラストマー、ならびに、石油樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記樹脂(A)および前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量が40質量部以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、充填材(D)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記充填材(D)の含有量が、10~1000質量部である、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)が、式(OP)で表されるポリフェニレンエーテル化合物を含み、
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の数平均分子量(Mn)が500~3000であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が800~6000であり、
前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~45/55であり、
重合禁止剤を実質的に含まず、
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記樹脂(A)および前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量が40質量部以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化6】
(式(OP)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)
n1-はポリフェニレンエーテル構造を表し、n1は1~100の整数を表し、n2は1~4の整数を表す。Rxは、式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基である。)
【化7】
(式(Rx-1)および式(Rx-2)中、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。*は、酸素原子との結合部位である。Mcは、それぞれ独立に炭素数1~12の炭化水素基を表す。zは0~4の整数を表す。rは1~6の整数を表す。)
【請求項13】
さらに、充填材(D)を含み、
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記充填材(D)の含有量が、10~1000質量部である、請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1、2、12または13に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項15】
基材と、請求項1、2、12または13に記載の樹脂組成物とから形成された、プリプレグ。
【請求項16】
請求項15に記載のプリプレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板。
【請求項17】
支持体と、前記支持体の表面に配置された請求項1、2、12または13に記載の樹脂組成物から形成された層とを含む、樹脂複合シート。
【請求項18】
絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、請求1、2、12または13に記載の樹脂組成物から形成された層を含む、プリント配線板。
【請求項19】
請求項18に記載のプリント配線板を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、プリント配線板、および、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末をはじめ、電子機器や通信機器等に用いられる半導体素子の高集積化および微細化が加速している。これに伴い、半導体素子の高密度実装を可能とする技術が求められており、その重要な位置をしめるプリント配線板についても改良が求められている。
一方、電子機器等の用途は多様化し拡大をつづけている。これを受け、プリント配線板やこれに用いる金属箔張積層板、プリプレグなどに求められる諸特性も多様化し、かつ厳しいものとなっている。そうした要求特性を考慮しながら、改善されたプリント配線板を得るために、各種の材料や加工法が提案されている。その1つとして、プリプレグや樹脂複合シートを構成する樹脂材料の改良開発が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、半導体封止材、および、プリント配線板に好適な材料として、末端にイソプロペニルフェニル基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の樹脂をそのまま用いると十分に硬化しない。そこで、他の化合物、特に、熱硬化性化合物とブレンドした新規な樹脂組成物が求められる。特に、成形性に優れ、かつ、誘電正接(Df)が低い樹脂組成物が求められる。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、成形性に優れ、かつ、誘電正接(Df)が低い樹脂組成物、ならびに、硬化物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、プリント配線板、および、半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、末端にイソプロペニル基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂に、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物を、特定の比で配合することにより、上記課題は解決された。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)と、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを含み、前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~70/30である、樹脂組成物。
【化1】
(式(T1)中、Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し、yは0~4の整数を表す。*は他の部位との結合位置を表す。)
<2>前記樹脂(A)が、式(T1-1)で表される樹脂(好ましくは式(T1-1-2)で表される樹脂)を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(T1-1)中、Rは、式(Tx)で表される構成単位を含む基である。Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。yは0~4の整数である。)
【化3】
(式(Tx)中、n、o、およびpは、平均繰り返し単位数であり、nは0超20以下の数を表し、oおよびpは、それぞれ独立して0~20の数を表し、1.0≦n+o+p≦20.0である。Maは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。xは0~4の整数を表す。構成単位(a)、(b)、(c)は、それぞれ*で構成単位(a)、(b)、(c)、または他の基と結合しており、各構成単位はランダムに結合していてもよい。)
<3>前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)が、式(OP)で表されるポリフェニレンエーテル化合物を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(OP)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)
n1-はポリフェニレンエーテル構造を表し、n1は1~100の整数を表し、n2は1~4の整数を表す。Rxは、式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基である。)
【化5】
(式(Rx-1)および式(Rx-2)中、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。*は、酸素原子との結合部位である。Mcは、それぞれ独立に炭素数1~12の炭化水素基を表す。zは0~4の整数を表す。rは1~6の整数を表す。)
<4>前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)が、式(OP-1)で表されるポリフェニレンエーテル化合物を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
【化6】
(式(OP-1)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)n
2-はポリフェニレンエーテル構造を表し、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表し、n
1は1~6の整数を表し、n
2は1~100の整数を表し、n
3は1~4の整数を表す。)
<5>前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の数平均分子量(Mn)が500~3000であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が800~6000である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂(A)の数平均分子量(Mn)が400~3000である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~45/55である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>重合禁止剤を実質的に含まない、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>さらに、前記樹脂(A)および前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の他の化合物(C)を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記他の化合物(C)が、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、(メタ)アリル基を含む化合物(例えば、アルケニルナジイミド化合物)、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、アリールシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ペルフルオロビニルエーテル樹脂、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外のスチレン基を有する化合物、前記インダン骨格を有する樹脂(A)以外のイソプロペニル基を有する化合物、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の多官能(メタ)アクリレート化合物、エラストマー、ならびに、石油樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、<9>に記載の樹脂組成物。
<11>前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記樹脂(A)および前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量が40質量部以上である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>さらに、充填材(D)を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記充填材(D)の含有量が、10~1000質量部である、<12>に記載の樹脂組成物。
<14>前記樹脂(A)が、式(T1-1)で表される樹脂を含み、
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)が、式(OP-1)で表されるポリフェニレンエーテル化合物を含み、
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の数平均分子量(Mn)が500~3000であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が800~6000であり、
前記樹脂(A)の数平均分子量(Mn)が400~3000であり、
前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~45/55であり、
重合禁止剤を実質的に含まず、
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記樹脂(A)および前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量が40質量部以上である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【化7】
(式(T1-1)中、Rは、式(Tx)で表される構成単位を含む基である。Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。yは0~4の整数である。)
【化8】
(式(Tx)中、n、o、およびpは、平均繰り返し単位数であり、nは0超20以下の数を表し、oおよびpは、それぞれ独立して0~20の数を表し、1.0≦n+o+p≦20.0である。Maは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。xは0~4の整数を表す。構成単位(a)、(b)、(c)は、それぞれ*で構成単位(a)、(b)、(c)、または他の基と結合しており、各構成単位はランダムに結合していてもよい。)
【化9】
(式(OP)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)
n1-はポリフェニレンエーテル構造を表し、n1は1~100の整数を表し、n2は1~4の整数を表す。Rxは、式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基である。)
【化10】
(式(Rx-1)および式(Rx-2)中、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。*は、酸素原子との結合部位である。Mcは、それぞれ独立に炭素数1~12の炭化水素基を表す。zは0~4の整数を表す。rは1~6の整数を表す。)
<15><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の硬化物。
<16>基材と、<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物とから形成された、プリプレグ。
<17><16>に記載のプリプレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板。
<18>支持体と、前記支持体の表面に配置された<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された層とを含む、樹脂複合シート。
<19>絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された層および<16>に記載のプリプレグから形成された層の少なくとも一方を含む、プリント配線板。
<20><19>に記載のプリント配線板を含む半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、成形性に優れ、かつ、誘電正接(Df)が低い樹脂組成物、ならびに、硬化物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂複合シート、プリント配線板、および、半導体装置を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書において、(メタ)アリル基は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0010】
本明細書において、樹脂固形分とは、充填材および溶剤を除く成分をいい、樹脂(A)とポリフェニレンエーテル化合物(B)、ならびに、必要に応じて配合される他の化合物(C)、およびその他の樹脂添加剤成分(難燃剤等の添加剤等)を含む趣旨である。
本明細書において、比誘電率と誘電率は同じ意味として用いられる。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物は、式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)(単に「樹脂(A)」と称することもある」)と、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(単に「ポリフェニレンエーテル化合物(B)」と称することもある」)とを含み、樹脂(A)とポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~70/30であることを特徴とする。
【化11】
(式(T1)中、Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し、yは0~4の整数を表す。*は他の部位との結合位置を表す。)
このような構成とすることにより、成形性に優れ、かつ、硬化物としたときに誘電正接(Df)が低い樹脂組成物が得られる。
式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)は、単独では重合しにくい。また、樹脂(A)との相溶性がある化合物と組合せて用いないと、相分離を引き起こしやすい。本実施形態においては、樹脂(A)に末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)を所定の比率でブレンドすることにより、相溶性が向上し、成形性に優れた樹脂組成物が得られ、硬化物にできたと推測される。また、樹脂(A)がインダン骨格を有することから、硬化物としたときに誘電正接(Df)を低くできる樹脂組成物が得られたと推測される。
さらに、本実施形態においては、溶融粘度が低い樹脂組成物が得られる。また、耐熱性が高い樹脂組成物が得られる。また、樹脂(A)がインダン骨格を有することから、比誘電率(Dk)が低い樹脂組成物が得られたと推測される。
【0012】
<式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)>
本実施形態の樹脂組成物は、式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)を含む。樹脂(A)を用いることにより、硬化物としたとき、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)に優れた樹脂組成物が得られる。
【化12】
(式(T1)中、Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し、yは0~4の整数を表す。*は他の部位との結合位置を表す。)
【0013】
式(T1)において、Mbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5の炭化水素基であることがより好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の炭化水素基であることがさらに好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示され、フッ素原子または塩素原子が好ましい。Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていない炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましい。
前記炭化水素基は、アルキル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。Mbとしては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0014】
yは0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましく、0であることが一層好ましい。
【0015】
樹脂(A)は、樹脂分子それぞれについて、式(T1)で表される末端基を、すべての末端に有していてもよいし、一部の末端にのみ有していてもよい。
樹脂(A)の樹脂分子における式(T1)で表される末端基の数は、2つ含まれることが好ましい。
【0016】
樹脂(A)は、インダン骨格を有する。樹脂(A)に含まれる樹脂分子の内、少なくとも1つの分子が、少なくとも1つのインダン骨格を有していれば特に限定されないが、樹脂(A)の樹脂分子におけるインダン骨格の数は、1分子当たり1以上含むことが好ましく、1~20含むことがより好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0017】
樹脂(A)は、下記式(Txn)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【化13】
(式(Txn)中、nは、平均繰り返し単位数であり、0超20以下の数を表す。Maはそれぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。xは0~4の整数を表す。)
【0018】
式(Txn)において、Maは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5の炭化水素基であることがより好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の炭化水素基であることがさらに好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示され、フッ素原子または塩素原子が好ましい。Maは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていない炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましい。前記炭化水素基は、アルキル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
Maとしては、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0019】
xは0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましく、0であることが一層好ましい。
【0020】
樹脂(A)は、式(T1-1)で表される樹脂を含むことがより好ましく、式(T1-1-2)で表される樹脂を含むことがより好ましい。
【化14】
(式(T1-1)中、Rは、式(Tx)で表される構成単位を含む基である。Mbは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。yは0~4の整数である。)
式(T1-1)中、Mbおよびyは、式(T1)におけるMbおよびyと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【化15】
(式(T1-2)中、Rは、式(Tx)で表される構成単位を含む基である。)
【化16】
(式(Tx)中、n、o、およびpは、平均繰り返し単位数であり、nは0超20以下の数を表し、oおよびpは、それぞれ独立して0~20の数を表し、1.0≦n+o+p≦20.0である。Maは、それぞれ独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。xは0~4の整数を表す。構成単位(a)、(b)、(c)は、それぞれ*で構成単位(a)、(b)、(c)、または他の基と結合しており、各構成単位はランダムに結合していてもよい。)
【0021】
式(Tx)中、n、oおよびpは、それぞれ、樹脂中の全分子における平均繰り返し単位数を意味する。
式(Tx)中、n、oおよびpの総和は、1.1≦n+o+pであることが好ましく、1.2≦n+o+pであることがより好ましく、1.5≦n+o+pであることがさらに好ましく、2.0≦n+o+pであることが一層好ましく、2.5≦n+o+pであることがより一層好ましく、3.0≦n+o+pであることがさらに一層好ましく、3.3≦n+o+pであることが特に一層好ましい。また、式(Tx)中、n、oおよびpの総和は、n+o+p≦20.0であることが好ましく、n+o+p≦10.0であることがより好ましく、n+o+p≦8.0であることがさらに好ましく、n+o+p≦7.0であることが一層好ましく、n+o+p≦6.4であることがより一層好ましい。n、oおよびpの総和は、後述する実施例に記載の方法で算出できる。
式(Tx)中、Maおよびxは、それぞれ、式(Txn)におけるMaおよびxと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0022】
式(T1-1)で表される樹脂(好ましくは、式(T1-1-2)で表される樹脂)は、さらに、式(α)から算出されるパラメーターαが0.55以上1.00以下であり、式(β)から算出されるパラメーターβが0.20以上3.00以下であることが好ましい。パラメーターαおよびパラメーターβを上記範囲とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、耐熱性が優れる傾向にある。
【数1】
(式(α)および式(β)における括弧内は、
1H-NMRにおける該当する化学シフト値間の積分値を示す。)
【0023】
ここで、αは、式(T1-1)で表される樹脂好ましくは、式(T1-1-2)で表される樹脂)中のインダン骨格を有する構成単位(式(Tx)における構成単位(a))の比率を示している。より具体的には、インダン骨格を有する構成単位を、上記パラメーターαの範囲を満たすように調整することにより、得られる樹脂分子の剛直性が高く、ガラス転移温度を高くできると推測される。さらに、剛直性が高い分子は剛直性が低い分子に比べて運動性が低いため、誘電緩和の際の緩和時間が長くなり、Dfを低くできると推測される。αは、式(T1-1)で表される樹脂を合成する際、原料の濃度を薄くする、高極性溶媒を使用する、触媒量を増やす、反応温度を高める等の条件によって高めることができる。
一方、βは、式(T1-1)で表される樹脂(好ましくは、式(T1-1-2)で表される樹脂)中の末端の二重結合比率を規定している。より具体的には、例えば、後述する他の化合物(C)(特に熱硬化性化合物)が有する官能基との架橋点が多くなり、熱硬化した際にネットワークを形成しやすくなり、ガラス転移温度が高く、Dfが低い硬化物が得られると推測される。βは、式(T1-1)で表される樹脂を合成する際、触媒量を少なくする、反応温度を低くする、低極性溶媒を使用する等の条件によって高めることができる。
式(T1-1)で表される樹脂(好ましくは、式(T1-1-2)で表される樹脂)を合成する際に、上記記載のパラメーターα、βを高める方法を用いて、式(T1-1)で表される樹脂(好ましくは、式(T1-1-2)で表される樹脂)のパラメーターα、βを調整することができる。もちろん、上記以外の方法によってパラメーターα、βを調整してもよい。
【0024】
パラメーターαは、0.57以上であることが好ましく、0.59以上であることがさらに好ましく、0.60以上であることが一層好ましく、0.62以上であることがより一層好ましく、0.65以上、0.70以上、0.75以上、0.80以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある。パラメーターαは、実質的には、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)および耐熱性が優れる傾向にあることから、パラメーターαは大きい方がよいが、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.82以下、0.80以下、0.77以下、0.75以下、0.74以下であってもよい。
パラメーターβは、0.25以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましく、0.35以上であることがさらに好ましく、0.40以上であることが一層好ましく、0.43以上であることがより一層好ましく、0.50以上であることがさらに一層好ましく、0.60以上、0.65以上、0.70以上、0.77以上、0.80以上、0.90以上、0.95以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上し、かつ、Dfが低くなる傾向にある。パラメーターβは、2.50以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましく、1.50以下であることがさらに好ましく、1.30以下であることが一層好ましく、1.20以下であることがより一層好ましく、1.10以下であることがさらに一層好ましく、さらには、1.00以下、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.83以下、0.80以下であってもよい。パラメーターβを前記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上し、かつDfが低くなる傾向にある。
【0025】
樹脂(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)(詳細は後述する実施例に記載の方法に従う)は、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であることがさらに好ましく、600以上であることが一層好ましく、650以上であることがより一層好ましい。数平均分子量を前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上し、かつDfが低くなる傾向にある。また、樹脂(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)の上限値は、3000以下であることが好ましく、2500以下であることがより好ましく、2000以下であることがさらに好ましく、1500以下であることが一層好ましく、1250以下であることがより一層好ましく、用途等に応じて、1000以下、800以下であってもよい。数平均分子量を前記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上し、かつ、比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)が低くなる傾向にある。
また、樹脂(A)のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)(詳細は後述する実施例に記載の方法に従う)は、500以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、900以上であることがさらに好ましく、1000以上であることが一層好ましい。重量平均分子量を前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上し、かつ、Dfが低くなる傾向にある。樹脂(A)のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)(詳細は後述する実施例に記載の方法に従う)の上限値は、6000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、4000以下であることがさらに好ましく、3000以下であることが一層好ましく、2800以下であることがより好ましく、用途等に応じて、2500以下、2000以下、1500以下であってもよい。重量平均分子量を前記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上し、かつ、比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)が低くなる傾向にある。
【0026】
樹脂(A)は、重量平均分子量と数平均分子量の比である、Mw/Mnが、1.1~3.0であることが好ましい。樹脂(A)のMw/Mnは、1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましく、1.4以上であることが一層好ましく、1.5以上であることがより一層好ましく、1.6以上であることがさらに一層好ましい。また、樹脂(A)のMw/Mnは、2.5以下であることがより好ましく、2.4以下であることがさらに好ましく、2.3以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.8以下であってもよい。
重量平均分子量および数平均分子量は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物における樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であってもよく、用途等に応じて、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上であってもよい。樹脂(A)の含有量を前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物のDfを低くできる傾向にある。また、樹脂(A)の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、55質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが一層好ましく、45質量部以下であることがより一層好ましく、40質量部以下であることがさらに一層好ましく、35質量部以下であることが特に一層好ましい。樹脂(A)の含有量を前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の成形性、得られる硬化物の耐熱性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂(A)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
本実施形態における樹脂(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の製造方法で得られたものを使用することができる。また、樹脂(A)を合成する際の、原料、反応温度、触媒種、触媒量、反応溶媒、原料濃度等は、特に限定されるものではなく、上述した所望の物性に応じて、適宜選択あるいは制御することができる。
【0029】
本実施形態において、樹脂(A)を合成する際の原料の一例として、m-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、p-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、および、1,4-ジイソプロペニルベンゼンなどを使用することができる。
【0030】
本実施形態における、樹脂(A)を合成するときの反応温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、反応速度の向上およびインダン骨格(式(Tx)における構成単位(a))比率が向上する傾向にあり、好ましい。また、反応温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、副生成物の生成を効果的に抑制できる傾向にある。
また、反応の開始から終了まで同じ反応温度である必要はなく、温度を変化させてもよい。この場合、全行程の反応温度の平均温度が上記範囲であることが好ましい。
【0031】
本実施形態における、樹脂(A)を合成するときに使用する触媒は、特に定めるものでは無いが、酸触媒が例示される。酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、BF3エーテル錯体、BF3フェノール錯体、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化インジウムなどのルイス酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト等の固体酸、ヘテロポリ塩酸、強酸性イオン交換樹脂等を用いることができる。
触媒を用いる場合、その量は、樹脂(A)の上記原料100質量部に対し、0.01~20.0質量部であることが挙げられる。
触媒は、通常、1種単独であるが、2種以上を併用してもよい。併用する場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
本実施形態において、樹脂(A)を合成するときの反応溶媒は、特に定めるものでは無いが、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチレンクロライド、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、アルコール溶剤あるいはケトン溶剤などと併用することができ、水を添加することもできる。アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、メチルプロピレンジグリコール、ジエチレングリコールエチルエーテル、ブチルプロピレングリコール、プロピルプロピレングリコール等が挙げられ、ケトン溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、その他には テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態における反応溶媒の一例は、芳香族炭化水素系溶剤を含むことである。
【0033】
本実施形態における、樹脂(A)を合成するときの上述の原料の濃度は、5%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることが好ましく、12%以上、15%以上、17%以上、20%以上、22%以上、25%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、反応速度の向上およびインダン骨格(式(Tx)における構成単位(a))比率が向上する傾向にあり、好ましい。また、上述の原料の濃度は、49%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、副生成物の生成を効果的に抑制できる傾向にある。
また、反応の開始から終了まで同じ濃度である必要はなく、濃度を変化させてもよい。
【0034】
<末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)を含む。本実施形態において、ポリフェニレンエーテル化合物(B)は、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B2)を含むことが好ましい。
末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)は、末端に、ビニルベンジル基等の式(Rx-1)で表される基、(メタ)アクリル基等の式(Rx-2)で表される基、マレイミド基からなる群から選択される基を有するポリフェニレンエーテル化合物であることが好ましく、ビニルベンジル基等の式(Rx-1)で表される基および/または(メタ)アクリル基等の式(Rx-2)で表される基を有するポリフェニレンエーテル化合物であることがより好ましく、末端に、ビニルベンジル基等の式(Rx-1)で表される基および/または(メタ)アクリル基等の式(Rx-2)で表される基を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物であることがさらに好ましい。
【化17】
(式(Rx-1)および式(Rx-2)中、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。*は、酸素原子との結合部位である。Mcは、それぞれ独立に炭素数1~12の炭化水素基を表す。zは0~4の整数を表す。rは1~6の整数を表す。)
【0035】
これらのポリフェニレンエーテル化合物を用いることにより、プリント配線板等の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)と低吸水性等をより効果的に向上させることができる傾向がある。本実施形態では、特に、末端に、ビニルベンジル基を有するポリフェニレンエーテル化合物であることが好ましい。ビニルベンジル基を有することにより、樹脂(A)との相溶性が顕著に向上する傾向にある。
以下、これらの詳細を説明する。
【0036】
末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(好ましくは、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B2))は、下記式(X1)で表されるフェニレンエーテル骨格を有する化合物が例示される。
【0037】
【化18】
(式(X1)中、R
24、R
25、R
26、および、R
27は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、または、水素原子を表す。)
【0038】
末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(好ましくは、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B2))は、式(X2):
【化19】
(式(X2)中、R
28、R
29、R
30、R
34、および、R
35は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。R
31、R
32、および、R
33は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
で表される繰り返し単位、および/または、式(X3):
【化20】
(式(X3)中、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42、および、R
43は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖、分岐または環状の2価の炭化水素基である。)で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0039】
末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(好ましくは、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B2))は、末端の一部または全部を、エチレン性不飽和基で官能基化された変性ポリフェニレンエーテル化合物(以下、「変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)」ということがある)であることが好ましく、末端に、ビニルベンジル基等の式(Rx-1)で表される基、(メタ)アクリル基等の式(Rx-2)で表される基、マレイミド基からなる群から選択される基を2以上有する変性ポリフェニレンエーテル化合物であることがより好ましく、ビニルベンジル基等の式(Rx-1)で表される基および/または(メタ)アクリル基等の式(Rx-2)で表される基であることがさらに好ましい。このような変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)を採用することにより、樹脂組成物の硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)をより小さくし、かつ、低吸水性、金属箔ピール強度を高めることが可能になる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)は、式(OP)で表されるポリフェニレンエーテル化合物が挙げられる。
【化21】
(式(OP)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)
n1-はポリフェニレンエーテル構造を表し、n1は1~100の整数を表し、n2は1~4の整数を表す。Rxは、式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基である。)
【化22】
(式(Rx-1)および式(Rx-2)中、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。*は、酸素原子との結合部位である。Mcは、それぞれ独立に炭素数1~12の炭化水素基を表す。zは0~4の整数を表す。rは1~6の整数を表す。)
【0041】
n1および/またはn2が2以上の整数の場合、n1個の構成単位(Y-O)および/またはn2個の構成単位は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。n2は、2以上が好ましく、より好ましくは2である。
【0042】
式(Rx-1)および式(Rx-2)中、R1、R2、および、R3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。
R1は、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
R1、R2、および、R3としての、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基の炭素数は、それぞれ、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0043】
式(Rx-1)における、rは1~6の整数を表し、1~5の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1~3の整数であることがさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であることがより一層好ましい。
【0044】
式(Rx-1)における、Mcは、それぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基を表し、炭素数1~10の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、オクチル基、またはノニル基であることがさらに好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、またはt-ブチル基であることが一層好ましい。
式(Rx-1)における、zは0~4の整数を表し、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0または1がさらに好ましく、0が一層好ましい。
【0045】
式(Rx-1)で表される基の具体例は、ビニルベンジル基であり、式(Rx-2)で表される基の具体例は、(メタ)アクリロイル基である。
Rxは、式(Rx-1)で表される基であることが好ましい。
【0046】
変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)としては、式(OP-1)で表されるポリフェニレンエーテル化合物が挙げられる。
【化23】
(式(OP-1)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-O)n
2-はポリフェニレンエーテル構造を表し、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表し、n
1は1~6の整数を表し、n
2は1~100の整数を表し、n
3は1~4の整数を表す。)
n
2および/またはn
3が2以上の整数の場合、n
2個の構成単位(Y-O)および/またはn
3個の構成単位は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。n
3は、2以上が好ましく、より好ましくは2である。
【0047】
本実施形態における変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)は、また、式(OP-2)で表される化合物であることが好ましく、式(OP-2-2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化24】
【化25】
ここで、-(O-X-O)-は、式(OP-3):
【化26】
(式(OP-3)中、R
4、R
5、R
6、R
10、および、R
11は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
7、R
8、および、R
9は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
および/または式(OP-4):
【化27】
(式(OP-4)中、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、および、R
19は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖、分岐または環状の2価の炭化水素基である。)で表されることが好ましい。
【0048】
また、-(Y-O)-は、式(OP-5):
【化28】
(式(OP-5)中、R
20、R
21は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
22、R
23は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)で表されることが好ましい。特にR
20およびR
21は、それぞれ独立に、メチル基および/またはシクロヘキシル基を1つ以上有する基とすることで、得られる樹脂分子の剛直性が高くなり、剛直性が高い分子は剛直性が低い分子に比べて運動性が低いため、誘電緩和の際の緩和時間が長くなり、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)が向上するために好ましい。
式(OP-5)の一例は、下記構造である。
【化29】
上記構造を有するポリフェニレン化合物については、特開2019-194312号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
式(OP-2)において、aおよびbは、それぞれ独立に、0~100の整数を表し、aおよびbの少なくとも一方は、1~100の整数である。aおよびbは、それぞれ独立に、0~50の整数であることが好ましく、1~30の整数であることがより好ましく、1~10の整数であることが好ましい。aおよび/またはbが2以上の整数の場合、2以上の-(Y-O)-は、それぞれ独立に、1種の構造が配列したものであってよく、2種以上の構造がブロックまたはランダムに配列していてもよい。
また、式(OP-2)で表される化合物を複数種含む場合、aの平均値は1<a<10であることが好ましく、bの平均値は1<b<10であることが好ましい。
【0050】
式(OP-4)における-A-としては、例えば、メチレン基、エチリデン基、1-メチルエチリデン基、1,1-プロピリデン基、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)基、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)基、シクロヘキシリデン基、フェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、1-フェニルエチリデン基等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
Rxは、式(OP)におけるRxと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0052】
上記式(OP-2)で表される化合物のなかでは、R4、R5、R6、R10、R11、R20、および、R21が炭素数3以下のアルキル基であり、R7、R8、R9、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22、および、R23が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリフェニレンエーテル化合物が好ましく、特に式(OP-3)または式(OP-4)で表される-(O-X-O)-が、式(OP-9)、式(OP-10)、および/または式(OP-11)であり、式(OP-5)で表される-(Y-O)-が、式(OP-12)または式(OP-13)であることが好ましい。aおよび/またはbが2以上の整数の場合、2以上の-(Y-O)-は、それぞれ独立に、式(OP-12)および/または式(OP-13)が2以上配列した構造であるか、あるいは式(OP-12)と式(OP-13)がブロックまたはランダムに配列した構造であってよい。
【0053】
【化30】
【化31】
(式(OP-10)中、R
44、R
45、R
46、および、R
47は、同一または異なってもよく、水素原子またはメチル基である。-B-は、炭素数20以下の直鎖、分岐または環状の2価の炭化水素基である。)
-B-は、式(OP-4)における-A-の具体例と同じものが具体例として挙げられる。
【化32】
(式(OP-11)中、-B-は、炭素数20以下の直鎖、分岐または環状の2価の炭化水素基である。)
-B-は、式(OP-4)における-A-の具体例と同じものが具体例として挙げられる。
【化33】
【化34】
【0054】
本実施形態で用いる変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)は、式(OP-14)で表される化合物および/または式(OP-15)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【化35】
(式(OP-14)中、aおよびbは、それぞれ独立に、0~100の整数を表し、aおよびbの少なくとも一方は、1~100の整数である。)
式(OP-14)におけるaおよびbは、それぞれ独立に、式(OP-2)におけるaおよびbと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【化36】
(式(OP-15)中、aおよびbは、それぞれ独立に、0~100の整数を表し、aおよびbの少なくとも一方は、1~100の整数である。)
式(OP-15)におけるaおよびbは、それぞれ独立に、式(OP-2)におけるaおよびbと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0055】
末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(好ましくは、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B2)であり、より好ましくは、変性ポリフェニレンエーテル化合物(g))のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)(詳細は後述する実施例に記載の方法に従う)は、例えば、500以上、さらには、800以上であることが好ましく、また、3,000以下であることが好ましい。数平均分子量が500以上であることにより、本実施形態の樹脂組成物を塗膜状にする際にべたつきがより一層抑制される傾向にある。数平均分子量が3,000以下であることにより、溶剤への溶解性がより一層向上する傾向にある。
また、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(好ましくは、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B2)であり、より好ましくは、変性ポリフェニレンエーテル化合物(g))のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)(詳細は後述する実施例に記載の方法に従う)は、800以上6000以下であることが好ましく、800以上5000以下であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の硬化物の比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)がより低くなる傾向にあり、上記上限値以下とすることにより、後述するワニス等を作製する際の溶剤への樹脂組成物の溶解性、低粘度性および成形性がより向上する傾向にある。
さらに、変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)である場合の、末端の炭素-炭素不飽和二重結合当量は、炭素-炭素不飽和二重結合1つあたり400~5000gであることが好ましく、400~2500gであることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の硬化物の比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)がより低くなる傾向にある。上記上限値以下とすることにより、溶剤への樹脂組成物の溶解性、低粘度性および成形性がより向上する傾向にある。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物における末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(好ましくは、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B2))の含有量の下限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以上であることが一層好ましく、60質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の成形性、得られる硬化物の耐熱性、低吸水性、および、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)がより向上する傾向にある。また、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、90質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であってもよく、さらには75質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(特に低誘電正接性)、耐熱性、および、耐薬品性がより向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物(B)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0057】
本実施形態においては、樹脂(A)とポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~70/30であり、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~65/35であることが好ましく、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~55/45であることがより好ましく、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~45/55であることがさらに好ましく、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~40/60であることが一層好ましく、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~35/65であることがより一層好ましく、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=7/93~35/65であることがさらに好ましく、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=10/90~35/65であることが特に一層好ましい。含有量の質量比を上記範囲とすることで、樹脂組成物の成形性、得られる硬化物の耐熱性、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)に優れる傾向がある。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物においては、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量が40質量部以上であることが好ましく、用途に応じて、45質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましく、60質量部以上であることが一層好ましく、65質量部以上であることがより一層好ましく、70質量部以上であることがさらに一層好ましく、75質量部以上であってもよい。樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量を前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)がより向上する傾向にある。また、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量は、100質量部以下であることが好ましい。樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量を前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の成形性、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、耐熱性、耐薬品性等のバランスに優れる傾向にある。
【0059】
<他の化合物(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル化合物(B)、他の化合物(C)(好ましくは他の硬化性化合物および/または可塑性化合物、より好ましくは他の熱硬化性化合物および/または熱可塑性化合物、さらに好ましくは他の熱硬化性化合物)を含むことが好ましい。他の化合物(C)は、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、(メタ)アリル基を含む化合物(例えば、アルケニルナジイミド化合物)、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、アリールシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ペルフルオロビニルエーテル樹脂、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外のスチレン基を有する化合物、前記インダン骨格を有する樹脂(A)以外のイソプロペニル基を有する化合物、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の多官能(メタ)アクリレート化合物、エラストマー、ならびに、石油樹脂からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、(メタ)アリル基を含む化合物(例えば、アルケニルナジイミド化合物)、オキセタン樹脂、および、ベンゾオキサジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上を含むことがより好ましい。このような成分を含むことにより、プリント配線板に求められる所望の性能をより効果的に発揮させることができる。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物が他の化合物(C)(好ましくは他の硬化性化合物および/または可塑性化合物、より好ましくは他の熱硬化性化合物および/または熱可塑性化合物、さらに好ましくは他の熱硬化性化合物)を含む場合、その含有量(総量)は、樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましく、30質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性、めっき密着性、低熱膨張性等がより向上する傾向にある。また、他の化合物(C)(好ましくは他の硬化性化合物および/または可塑性化合物、より好ましくは他の熱硬化性化合物および/または熱可塑性化合物、さらに好ましくは他の熱硬化性化合物)の含有量の上限値は、樹脂固形分100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、低吸水性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、他の化合物(C)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0061】
<<マレイミド化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物を含んでいてもよい。
マレイミド化合物は、分子中に1以上(好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、一層好ましくは2または3、より一層好ましくは)のマレイミド基を含む化合物であれば特に限定されず、プリント配線板の分野で通常用いられる化合物を広く用いることができる。
本実施形態においては、マレイミド化合物は、式(M0)で表される化合物、式(M1)で表される化合物、式(M2)で表される化合物、式(M3)で表される化合物、式(M4)で表される化合物、式(M5)で表される化合物、マレイミド化合物(M6)、および、マレイミド化合物(M7)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、式(M0)で表される化合物、式(M1)で表される化合物、式(M3)で表される化合物、式(M4)で表される化合物、式(M5)で表される化合物、および、マレイミド化合物(M6)からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、式(M1)で表される化合物、式(M3)で表される化合物、式(M4)で表される化合物、および、式(M5)で表される化合物からなる群より選択される1種以上を含むことがさらに好ましく、式(M1)で表される化合物、式(M3)で表される化合物、および、式(M5)で表される化合物からなる群より選択される1種以上を含むことが一層好ましく、式(M1)で表される化合物および/または式(M3)で表される化合物を含むことがより一層好ましく、式(M1)で表される化合物がさらに一層好ましい。これらのマレイミド化合物を、プリント配線板用材料(例えば、金属箔張積層板)等に用いると、優れた耐熱性を付与できる。
【0062】
【化37】
(式(M0)中、R
51は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはフェニル基を表し、R
52は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、n
1は1以上の整数を表す。)
R
51は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、およびフェニル基からなる群より選択される1種であることが好ましく、水素原子および/またはメチル基あることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
R
52は、メチル基であることが好ましい。
n
1は1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であることがより一層好ましい。
具体的には、以下の化合物が式(M0)の好ましい例として挙げられる。
【化38】
上記式中、R
8は各々独立に水素原子、メチル基またはエチル基を表し、メチル基が好ましい。
【0063】
式(M0)で表される化合物は、1種のみの他、2種以上の混合物であってもよい。混合物の例としては、n
1が異なる化合物の混合物、R
51および/またはR
52の置換基の種類が異なる化合物の混合物、ベンゼン環に対するマレイミド基と酸素原子の結合位置(メタ位、パラ位、オルト位)が異なる化合物の混合物、ならびに、前記の2つ以上の異なる点が組み合わされた化合物の混合物などが挙げられる。以下、式(M1)~(M6)で表される化合物についても同様である。
【化39】
(式(M1)中、R
M1、R
M2、R
M3、およびR
M4は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M5およびR
M6は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Ar
Mは2価の芳香族基を表す。Aは、4~6員環の脂環基である。R
M7およびR
M8は、それぞれ独立に、アルキル基である。mxは1または2であり、lxは0または1である。R
M9およびR
M10は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R
M11、R
M12、R
M13、およびR
M14は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M15は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、ハロゲン原子、水酸基またはメルカプト基を表す。pxは0~3の整数を表す。nxは1~20の整数を表す。)
【0064】
式中のR
M1、R
M2、R
M3、およびR
M4は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。ここでの有機基はアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が一層好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。R
M1およびR
M3は、それぞれ独立に、アルキル基が好ましく、R
M2およびR
M4は、水素原子が好ましい。
R
M5およびR
M6は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基が好ましい。ここでのアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
Ar
Mは2価の芳香族基を表し、好ましくはフェニレン基、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、アントラセンジイル基であり、より好ましくはフェニレン基であり、さらに好ましくはm-フェニレン基である。Ar
Mは置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が一層好ましく、メチル基が特に好ましい。しかしながら、Ar
Mは無置換であることが好ましい。
Aは、4~6員環の脂環基であり、5員環の脂環基(好ましくはベンゼン環と合せてインダン環となる基)がより好ましい。R
M7およびR
M8は、それぞれ独立に、アルキル基であり、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
mxは1または2であり、2であることが好ましい。
lxは0または1であり、1であることが好ましい。
R
M9およびR
M10は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基がより好ましい。ここでのアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
R
M11、R
M12、R
M13、およびR
M14は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。ここでの有機基はアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が一層好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。R
M12およびR
M13は、それぞれ独立に、アルキル基が好ましく、R
M11およびR
M14は、水素原子が好ましい。
R
M15は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、ハロゲン原子、水酸基またはメルカプト基を表し、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、または、炭素数6~10のアリール基であることが好ましい。
pxは0~3の整数を表し、0~2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0がさらに好ましい。
nxは1~20の整数を表す。nxは10以下の整数であってもよい。
尚、本実施形態の樹脂組成物は、式(M1)で表される化合物であって、少なくともnxの値が異なる化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、樹脂組成物中の式(M1)で表される化合物におけるnxの平均値(平均繰返単位数)nは、低い融点(低軟化点)で、かつ溶融粘度が低く、ハンドリング性に優れたものとするため、0.92以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましく、1.1以上であることが一層好ましい。また、nは、10.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましく、7.0以下であることがさらに好ましく、6.0以下であることが一層好ましく、5.0以下であってもよい。後述する式(M1-2)および式(M1-3)で表される化合物についても同様である。
式(M1)で表される化合物は、下記の式(M1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化40】
(式(M1-1)中、R
M21、R
M22、R
M23、およびR
M24は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M25およびR
M26は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R
M27、R
M28、R
M29、およびR
M30は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M31およびR
M32は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R
M33、R
M34、R
M35、およびR
M36は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M37、R
M38、およびR
M39は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。nxは1以上20以下の整数を表す。)
【0065】
式中のRM21、RM22、RM23、およびRM24は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。ここでの有機基はアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が一層好ましく、メチル基が特に好ましい。RM21およびRM23は、アルキル基が好ましく、RM22およびRM24は、水素原子が好ましい。
RM25およびRM26は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基が好ましい。ここでのアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
RM27、RM28、RM29、およびRM30は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表し、水素原子が好ましい。ここでの有機基はアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が一層好ましく、メチル基が特に好ましい。
RM31およびRM32は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基が好ましい。ここでのアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
RM33、RM34、RM35、およびRM36は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。ここでの有機基はアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が一層好ましく、メチル基が特に好ましい。
RM33およびRM36は、水素原子が好ましく、RM34およびRM35はアルキル基が好ましい。
RM37、RM38、およびRM39は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基が好ましい。ここでのアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
nxは1以上20以下の整数を表す。nxは10以下の整数であってもよい。
【0066】
式(M1-1)で表される化合物は、下記式(M1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化41】
(式(M1-2)中、R
M21、R
M22、R
M23、およびR
M24は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M25およびR
M26は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R
M27、R
M28、R
M29、およびR
M30は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M31およびR
M32は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R
M33、R
M34、R
M35、およびR
M36は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。R
M37、R
M38、およびR
M39は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。nxは1以上20以下の整数を表す。)
【0067】
式(M1-2)中、RM21、RM22、RM23、RM24、RM25、RM26、RM27、RM28、RM29、RM30、RM31、RM32、RM33、RM34、RM35、RM36、RM37、RM38、RM39、および、nxは、それぞれ、式(M1-1)におけるRM21、RM22、RM23、RM24、RM25、RM26、RM27、RM28、RM29、RM30、RM31、RM32、RM33、RM34、RM35、RM36、RM37、RM38、RM39、および、nxと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0068】
式(M1-1)で表される化合物は、下記式(M1-3)で表される化合物であることが好ましく、下記式(M1-4)で表される化合物であることがより好ましい。
【化42】
(式(M1-3)中、nxは1以上20以下の整数を表す。)
nxは10以下の整数であってもよい。
【化43】
(式(M1-4)中、nxは1以上20以下の整数を表す。)
nxは10以下の整数であってもよい。
【0069】
式(M1)で表される化合物の分子量は、500以上であることが好ましく、600以上であることがより好ましく、700以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)および低吸水性がより向上する傾向にある。また、式(M1)で表される化合物の分子量は、10000以下であることが好ましく、9000以下であることがより好ましく、7000以下であることがさらに好ましく、5000以下であることが一層好ましく、4000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性および取り扱い性がより向上する傾向にある。
【0070】
式(M1)で表される化合物は、マレイミド基当量が、50g/eq.以上であることが好ましく、100g/eq.以上であることがより好ましく、200g/eq.以上であることがさらに好ましい。前記マレイミド当量の上限値は、2000g/eq.以下であることが好ましく、1000g/eq.以下であることがより好ましく、800g/eq.以下であることがさらに好ましい。ここで、マレイミド基当量は、マレイミド基1
当量あたりのマレイミド化合物の質量を表す。式(M1)で表される化合物のマレイミド基当量が上記範囲にある場合、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、低吸水性、耐熱性および取り扱い性がより向上する傾向にある。
【0071】
式(M1)で表される化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)
測定から算出される分子量分布Mw/Mnが、1.0~4.0であることが好ましく、1.1~3.8であることがより好ましく、1.2~3.6であることがさらに好ましく、1.3~3.4であることが一層このましい。式(M1)で表される化合物のMw/Mnが上記範囲にある場合、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、低吸水性、耐熱性および取り扱い性がより向上する傾向にある。
【0072】
その他、式(M1)で表される化合物の詳細は、国際公開第2020-217679号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0073】
【化44】
(式(M2)中、R
54は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、n
4は1以上の整数を表す。)
n
4は1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であってもよい。
式(M2)で表される化合物は、n
4が異なる化合物の混合物であってもよく、混合物であることが好ましい。また、式(M0)で表される化合物の所で述べたように、他の部分が異なる化合物の混合物であってもよい。
【化45】
(式(M3)中、R
55は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはフェニル基を表し、n
5は1以上10以下の整数を表す。)
R
55は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、および、フェニル基からなる群より選択される1種であることが好ましく、水素原子および/またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
n
5は1以上5以下の整数であることが好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1または2であることが一層好ましい。
式(M3)で表される化合物は、n
5が異なる化合物の混合物であってもよく、混合物であることが好ましい。また、式(M0)で表される化合物の所で述べたように、他の部分が異なる化合物の混合物であってもよい。
【化46】
(式(M4)中、R
56は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R
57はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)
R
56は、それぞれ独立にメチル基またはエチル基であることが好ましく、2つあるベンゼン環のそれぞれにおいてメチル基およびエチル基であることがより好ましく、R
57は、メチル基が好ましい。
【0074】
【化47】
(式(M5)中、R
58は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはフェニル基を表し、R
59は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、n
6は1以上の整数を表す。)
R
58は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、および、フェニル基からなる群より選択される1種であることが好ましく、水素原子および/またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
R
59は、メチル基であることが好ましい。
n
6は1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であってもよい。
式(M5)で表される化合物は、n
6が異なる化合物の混合物あってもよく、混合物であることが好ましい。また、式(M0)で表される化合物の所で述べたように、他の部分が異なる化合物の混合物であってもよい。
【0075】
マレイミド化合物(M6)は、式(M6)表される構成単位と、分子鎖の両末端にマレイミド基とを有する化合物である。
【化48】
(式(M6)中、R
61は、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または炭素数2~16の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基を表す。R
62は、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または炭素数2~16の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基を表す。R
63は、それぞれ独立に、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数2~16の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を表す。nは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。)
マレイミド化合物(M6)の詳細およびその製造方法は、国際公開第2020/262577号の段落0061~0066の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0076】
マレイミド化合物(M7)は、芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a1)と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(a2)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とする、マレイミド化合物である。
マレイミド化合物(M7)は、好ましくは、式(M7)で表される化合物である。
【化49】
(上記式(M7)中、R
1はそれぞれ独立して、前記アルキル基を表し、R
2はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;またはメルカプト基を表し、
R
3、R
4、R
5およびR
6はそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、かつR
3およびR
4の一方が水素原子、他方がメチル基であり、R
5およびR
6の一方が水素原子、他方がメチル基であり、
X
1は、以下の式(x):
【化50】
(式(x)中、R
7およびR
8はそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、かつR
7およびR
8の一方が水素原子、他方がメチル基であり、R
9はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;またはメルカプト基を表し、tは0~4の整数を表す。)
で表される置換基を表し、rは、X
1が結合されたベンゼン環1つ当たりのX
1の置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)
【0077】
本実施形態で用いるポリマレイミド化合物(M7)の詳細は、特許第7160151号の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0078】
マレイミド化合物は、公知の方法で製造してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、式(M0)で表される化合物として、ケイ・アイ化成社製「BMI-80」、式(M1)で表される化合物として、DIC社製「NE-X-9470S」、式(M2)で表される化合物として大和化成工業社製「BMI-2300」、式(M3)で表される化合物として、日本化薬株式会社製「MIR-3000-70MT」、式(M4)で表される化合物としてケイ・アイ化成社製「BMI-70」、式(M5)で表される化合物として、日本化薬社製「MIR-5000」、マレイミド化合物(M6)として、日本化薬社製「MIZ-001」、マレイミド化合物(M7)として、DIC社製「NE-X-9500」が挙げられる。
【0079】
また、上記以外のマレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、フェニルメタンマレイミドのオリゴマー、m-フェニレンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、およびこれらのプレポリマー、これらのマレイミドとアミンのプレポリマー等が挙げられる。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物がマレイミド化合物を含む場合、その含有量の下限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましく、25質量部以上であることがより一層好ましい。マレイミド化合物の含有量が1質量部以上であることにより、得られる硬化物の低誘電特性、耐燃性が向上する傾向にある。また、マレイミド化合物の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であってもよい。マレイミド化合物の含有量が70質量部以下であることにより、金属箔ピール強度および低吸水性が向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、マレイミド化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、マレイミド化合物を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとはマレイミド化合物の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部未満であることをいい、0.1質量部未満であることが好ましく、0.01質量部未満であることがより好ましい。
【0081】
<<シアン酸エステル化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物を含んでいてもよい。
シアン酸エステル化合物は、シアネート基(シアナト基)を分子内に1以上(好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、一層好ましくは2または3、より一層好ましくは2)含む化合物であれば特に限定されず、プリント配線板の分野で通常用いられる化合物を広く用いることができる。
【0082】
シアン酸エステル化合物は、プリント配線板に通常用いられる少なくとも1つのシアナト基により置換された芳香族部分を分子内に2つ以上有するシアン酸エステル化合物が好ましい。
具体的には、シアン酸エステル化合物が有するシアナト基の数の下限は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、シアナト基の数の上限は、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
また、シアン酸エステル化合物は、その硬化物が低誘電特性(Dkおよび/またはDf)に優れることが好ましい。例えば、シアン酸エステル化合物の硬化物は、空洞共振摂動法に従って測定した周波数10GHzにおける誘電率(Dk)が4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましい。また、前記誘電率の下限値は、例えば、2.0以上が実際的である。また、シアン酸エステル化合物(B)の硬化物は、空洞共振摂動法に従って測定した周波数10GHzにおける誘電正接(Df)が0.02以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。また、前記誘電正接の下限値は、例えば、0.0001以上が実際的である。誘電率、誘電正接は、例えば、実施例に記載の方法(硬化条件、測定条件)に準じて測定することができる。
【0083】
また、シアン酸エステル化合物は、その硬化物の耐熱性が高いことが好ましい。シアン酸エステル化合物の硬化物は、JIS C6481動的粘弾性測定に従って測定したガラス転移温度が150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度を前記下限値以上とすることにより、耐熱性に優れた硬化物が得られる。
【0084】
シアン酸エステル化合物は、GPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、400以上であることがさらに好ましい。重量平均分子量を前記下限値以上とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、シアン酸エステル化合物の重量平均分子量は、1000以下であることが好ましく、900以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量を前記上限値以下とすることにより、成形性および取り扱い性がより向上する傾向にある。
【0085】
シアン酸エステル化合物の好ましい範囲としては、国際公開第2021/172317号の段落0028~0033の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0086】
好ましいシアン酸エステル化合物としては、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(ナフトールアラルキル型シアネート)、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、トリスフェノールメタン型シアン酸エステル化合物、アダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールM型シアン酸エステル化合物、および、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、低吸水性をより一層向上させる観点から、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、および、ビスフェノールM型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、および、ビスフェノールM型シアン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、および、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物および/またはビスフェノールA型シアン酸エステル化合物であることが一層好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物であることがより一層好ましい。
【0087】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、式(N1)で表される化合物がより好ましい。
【0088】
式(N1)
【化51】
(式(N1)中、R
3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、n3は、1以上の整数を表す。)
【0089】
式(N1)中、R3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。
式(N1)中、n3は、1以上の整数であり、1~50の整数であることが好ましく、1~20の整数であることがより好ましく、1~10の整数であることがさらに好ましく、1~6の整数であることが一層好ましい。
【0090】
また、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、式(VII)で表される化合物が好ましい。
【化52】
(式(VII)中、R
6は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、n7は1以上の整数を表す。)
【0091】
式(VII)中、R6は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。
式(VII)中、n7は1以上の整数であり、1~20の整数であることが好ましく、1~10の整数であることがより好ましく、1~6の整数であることがさらに好ましい。
【0092】
ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物としては、2、2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、および、2、2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンのプレポリマーからなる群より選択される1種以上を用いてもよい。
【0093】
これらのシアン酸エステル化合物は、公知の方法により調製してもよく、市販品を用いてもよい。なお、ナフトールアラルキル骨格、ナフチレンエーテル骨格、キシレン骨格、トリスフェノールメタン骨格、またはアダマンタン骨格を有するシアン酸エステル化合物は、比較的、官能基当量数が大きく、未反応のシアン酸エステル基が少なくなるため、これらを用いた樹脂組成物は低吸水性がより一層優れる傾向にある。また、芳香族骨格またはアダマンタン骨格を有することに主に起因して、めっき密着性がより一層向上する傾向にある。
【0094】
本実施形態の樹脂組成物が、シアン酸エステル化合物を含む場合、その含有量の下限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であってもよい。シアン酸エステル化合物の含有量が上記下限値以上であることにより、耐熱性、耐燃焼性、耐薬品性、低誘電率、低誘電正接、絶縁性が向上する傾向にある。シアン酸エステル化合物の含有量の上限値は、本実施形態の樹脂組成物がシアン酸エステル化合物を含む場合、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましく、40質量部以下、30質量部以下であってもよい。
本実施形態における樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとはシアン酸エステル化合物の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部未満であることをいい、0.1質量部未満であることが好ましく、0.01質量部未満であることがより好ましい。
【0095】
<<エポキシ化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ化合物を含んでいてもよい。
エポキシ化合物は、1分子中に1以上(好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、一層好ましくは2または3、より一層好ましくは2)のエポキシ基を有する化合物または樹脂であれば特に限定されず、プリント配線板の分野で通常用いられる化合物を広く用いることができる。
エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエン等の二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロロヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。これらを用いることで、樹脂組成物の成形性、密着性が向上する。これらの中でも、難燃性および耐熱性をより一層向上させる観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂であることが好ましく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0096】
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ化合物を本発明の効果を損なわない範囲で含むことが好ましい。成形性、密着性の観点から、本実施形態の樹脂組成物がエポキシ化合物を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。エポキシ化合物の含有量が0.1質量部以上であることにより、金属箔ピール強度、靭性が向上する傾向にある。エポキシ化合物の含有量の上限値は、本実施形態の樹脂組成物がエポキシ化合物を含む場合、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが一層好ましく、8質量部以下、5質量部以下であってもよい。エポキシ化合物の含有量が50質量部以下であることにより、得られる硬化物の電気特性が向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、エポキシ化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、エポキシ化合物を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、エポキシ化合物の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部未満であることをいい、好ましくは0.01質量部未満であり、さらには0.001質量部未満であってもよい。
【0097】
<<フェノール化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール化合物を含んでいてもよい。
フェノール樹脂の詳細は、国際公開第2021/172317号の段落0049の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0098】
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール化合物を本発明の効果を損なわない範囲で含むことが好ましい。本実施形態の樹脂組成物がフェノール化合物を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、また、50質量部以下であることが好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、フェノール化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、フェノール化合物を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、フェノール化合物の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部未満であることをいう。
【0099】
<<(メタ)アリル基を含む化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アリル基を含む化合物を含むことが好ましく、アリル基を含む化合物を含むことがより好ましい。
また、(メタ)アリル基を含む化合物は、(メタ)アリル基を2以上含む化合物であることが好ましく、アリル基を2以上含む化合物であることがより好ましい。
(メタ)アリル基を含む化合物としては、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物、シアヌル酸トリ(メタ)アリル化合物、(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物、グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物、および、ジアリルフタレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物、(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物、および、グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物、および/または(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物を含むことがさらに好ましく、(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物を含むことが一層好ましい。
【0100】
シアヌル酸トリ(メタ)アリル化合物としては、シアヌル酸トリ(メタ)アリル化合物(例えば、下記に構造を示すシアヌル酸トリアリル)などが例示される。
【化53】
また、(メタ)アリル基を含む化合物としては、国際公開第2022/210095号に記載のアリル基を有する樹脂(例えば、同公報の合成例3、4、6、20、22に記載の化合物)が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
本実施形態の樹脂組成物が、(メタ)アリル基を含む化合物を含む場合、その分子量は、195以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、400以上であることがさらに好ましく、500以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低誘電性、耐熱性がより向上する傾向にある。(メタ)アリル基を含む化合物の分子量は、また、3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、低熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0102】
本実施形態の樹脂組成物が(メタ)アリル基を含む化合物を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であってもよい。(メタ)アリル基を含む化合物の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形性に優れ、耐熱性がより向上する傾向にある。また、(メタ)アリル基を含む化合物の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。(メタ)アリル基を含む化合物の含有量を上記上限値以下とすることにより、低熱膨張性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アリル基を含む化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0103】
<<<(メタ)アリルイソシアヌレート化合物>>>
(メタ)アリルイソシアヌレート化合物としては、(メタ)アリル基を2つ以上有し、かつ、イソシアヌレート環(ヌレート骨格)を有する化合物である限り、特に定めるものではない。(メタ)アリルイソシアヌレート化合物は、架橋点となる(メタ)アリル基の数が多いため、樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)ならびに他の樹脂成分(例えば、他の化合物(C))と強固に硬化し、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、および、耐熱性に優れる硬化物が得られる傾向にある。(メタ)アリルイソシアヌレート化合物としては、式(TA)で表される化合物が好ましい。
式(TA)
【化54】
(式(TA)中、R
Aは、置換基を表す)。
【0104】
式(TA)中、RAは、置換基を表し、式量15~500の置換基であることがより好ましい。
【0105】
RAの第一の例は、炭素数1~22のアルキル基、または、炭素数2~22のアルケニル基である。炭素数1~22のアルキル基、または、炭素数2~22のアルケニル基を有するアリル化合物を使用することによって、架橋性に優れ、かつ、高靱性を有する硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。それにより、樹脂組成物にガラスクロスなどの基材を含めない場合であっても、エッチング処理などの際に割れたりすることを抑制できる。
前記アルキル基および/またはアルケニル基の炭素数は、ハンドリング性向上の観点から、3以上が好ましく、8以上がより好ましく、さらには、12以上であってもよく、18以下であってもよい。それにより樹脂組成物の樹脂流れ性が良好となり、本実施形態の樹脂組成物を用いて多層回路基板などを作成する際の回路充填性などにより優れるようになると考えられる。
【0106】
R
Aの第二の例は、アリルイソシアヌレート基を含む基である。R
Aがアリルイソシアヌレート基を含む場合、式(TA)で表される化合物は、式(TA-1)で表される化合物であることが好ましい。
式(TA-1)
【化55】
(式(TA-1)中、R
A2は、2価の連結基である。)
【0107】
式(TA-1)中、R
A2は、式量が54~250の2価の連結基であることが好ましく、式量が54~250で、両末端が炭素原子である2価の連結基であることがより好ましく、炭素数2~20の脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましい(但し、脂肪族炭化水素基中にエーテル基を含んでいてもよく、また、水酸基を有していてもよい)。より具体的には、R
A2は、下記式(i)~(iii)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化56】
(式中(i)~(iii)中、p
c1はメチレン基の繰り返し単位数を表し、2~18の整数である。p
c2はオキシエチレン基の繰り返し単位数を表し、0または1である。*は結合部位である。)
前記p
c1は、好ましくは2~10の整数、より好ましくは3~8の整数、さらに好ましくは3~5の整数である。
前記p
c2は、0であってもよいし、1であってもよいが、好ましくは1である。
【0108】
RAの第三の例は、リン系置換基である。
【0109】
RA2は第一の例であることが好ましい。
【0110】
本実施形態では、式(TA)で表される化合物の反応基(アリル基)当量が1000g/eq.以下であることが好ましい。前記当量が1000g/eq.以下であれば、高いTgをより確実に得ることができると考えられる。
【0111】
前記炭素数1~22のアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。また、前記炭素数2~22のアルケニル基としては、例えば、アリル基、デセニル基等が挙げられる。
【0112】
式(TA)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、5-オクチル-1,3-ジアリルイソシアヌレート、5-ドデシル-1,3-ジアリルイソシアヌレート、5-テトラデシル-1,3-ジアリルイソシアヌレート、5-ヘキサデシル-1,3-ジアリルイソシアヌレート、5-オクタデシル-1,3-ジアリルイソシアヌレート、5-エイコシル-1,3-ジアリルイソシアヌレート、5-ドコシル-1,3-ジアリルイソシアヌレート、5-デセニル-1,3-ジアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよく、プレポリマーとして使用してもよい。
【0113】
式(TA)で表される化合物の製造方法は、特に限定はされないが、例えば、ジアリルイソシアヌレートとアルキルハライドとをN,N’-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤中において、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミンなどの塩基性物質の存在下で、60℃~150℃程度の温度で反応させることにより、得ることができる。
【0114】
また、式(TA)で表される化合物は、市販のものを用いることもできる。市販されているものとしては、特に限定されないが、例えば、四国化成工業(株)製L-DAIC、リン系置換基を有する四国化成工業(株)P-DAIC、が挙げられる。トリアリルイソシアヌレートとしては、例えば、(株)新菱製TAICが挙げられる。式(TA-1)で表される化合物としては、例えば、四国化成工業(株)製DD-1が挙げられる。
【0115】
(メタ)アリルイソシアヌレート化合物(好ましくは、式(TA)で表される化合物)の分子量は、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、400以上であることがさらに好ましく、500以上であることが一層好ましい。前記分子量を上記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、耐熱性がより向上する傾向にある。また、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物(好ましくは、式(TA)で表される化合物)の分子量は、3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることが一層好ましい。前記分子量を上記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の低熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0116】
本実施形態の樹脂組成物が(メタ)アリルイソシアヌレート化合物を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であってもよい。(メタ)アリルイソシアヌレート化合物の含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物が成形性に優れ、得られる硬化物の耐熱性、低熱膨張性がより向上する傾向にある。また、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であってもよい。(メタ)アリルイソシアヌレート化合物の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0117】
<<<(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物>>>
(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物としては、分子中に2個以上の(メタ)アリル基置換ナジイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては下記式(AN)で表される化合物が挙げられる。
式(AN)
【化57】
(式(AN)中、R
1は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1~6のアルキル基を表し、R
2は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、または、式(AN-2)または(AN-3)で表される基を表す。
式(AN-2)
【化58】
(式(AN-2)中、R
3は、メチレン基、イソプロピリデン基、-C(=O)-、-O-、-S-、または、-S(=O)
2-で表される基を表す。)
式(AN-3)
【化59】
(式(AN-3)中、R
4は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキレン基、または、炭素数5~8のシクロアルキレン基を表す。)
【0118】
また、式(AN)で表される化合物は、市販のものを用いることもできる。市販されているものとしては、特に限定されないが、例えば、式(AN-4)で表される化合物(BANI-M(丸善石油化学(株)製))、式(AN-5)で表される化合物(BANI-X(丸善石油化学(株)製))などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
式(AN-4)
【化60】
式(AN-5)
【化61】
【0119】
(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物(好ましくは式(AN)で表される化合物)の分子量は、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であってもよい。(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物の分子量を上記下限値以上とすることにより、低誘電性、低熱膨張性、耐熱性がより向上する傾向にある。(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物(好ましくは式(AN)で表される化合物)の分子量は、また、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましく、700以下、600以下であってもよい。(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物の分子量を上記上限値以下とすることにより、成形性、ピール強度がより向上する傾向にある。
【0120】
本実施形態の樹脂組成物が(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物(好ましくは式(AN)で表される化合物)を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であってもよい。(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形性に優れ、低誘電性、低熱膨張性、耐熱性がより向上する傾向にある。また、(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物(好ましくは式(AN)で表される化合物)の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であってもよい。(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物の含有量を上記上限値以下とすることにより、成形性、ピール強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アリル基置換ナジイミド化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0121】
<<<グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物>>>
グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物としては、グリコールウリル構造と(メタ)アリル基を2つ以上含む化合物であれば、特に定めるものではない。樹脂組成物にグリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物を配合した場合も、(メタ)アリル基の数を多くすることができ、すなわち、架橋点を多くすることができる。そのため、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物と同様に、樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)ならびに他の樹脂成分(例えば、他の化合物(C))と強固に硬化し、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、および、耐熱性に優れる硬化物が得られる傾向にある。
本実施形態において、グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物は、式(GU)で表される化合物が好ましい。
式(GU)
【化62】
(式(GU)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基であり、Rの少なくとも2つは、(メタ)アリル基を含む基である。)
式(GU)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、炭素数2~5のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2~5のアルケニル基であることが好ましく、(メタ)アリル基であることがより好ましく、アリル基であることがさらに好ましい。
式(GU)中、Rは、3つまたは4つが(メタ)アリル基を含む基であることが好ましく、4つが(メタ)アリル基を含む基であることがより好ましい。
【0122】
式(GU)で表される化合物の具体例としては、1,3,4,6-テトラアリルグリコールウリル(式(GU)において、Rが全てアリル基である化合物)が挙げられる。
【0123】
また、式(GU)で表される化合物は、市販のものを用いることもできる。市販されているものとしては、特に限定されないが、例えば、四国化成工業社製TA-Gが挙げられる。
【0124】
グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物(好ましくは式(GU)で表される化合物)の分子量は、195以上であることが好ましく、220以上であることがより好ましく、250以上であることがさらに好ましく、300以上、400以上であってもよい。グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物の分子量を上記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性、低熱膨張性がより向上する傾向にある。グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物(好ましくは式(GU)で表される化合物)の分子量は、また、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましく、700以下、600以下であってもよい。グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物の分子量を上記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0125】
本実施形態の樹脂組成物がグリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物(好ましくは式(GU)で表される化合物)を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であってもよい。グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物の含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物が成形性に優れ、得られる硬化物の耐熱性および低熱膨張性がより向上する傾向にある。また、グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物(好ましくは式(GU)で表される化合物)の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であってもよい。グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、グリコールウリル構造を有する(メタ)アリル化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0126】
<<オキセタン樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、オキセタン樹脂を含んでいてもよい。
オキセタン樹脂は、オキセタニル基を1以上(好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、一層好ましくは2または3、より一層好ましくは2)有する化合物であれば、特に限定されず、プリント配線板の分野で通常用いられる化合物を広く用いることができる。
オキセタン樹脂としては、例えば、オキセタン、アルキルオキセタン(例えば、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等)、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3-ジ(トリフルオロメチル)オキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT-101(東亞合成社製)、OXT-121(東亞合成社製)等が挙げられる。
【0127】
本実施形態の樹脂組成物は、オキセタン樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で含むことが好ましい。本実施形態の樹脂組成物が、オキセタン樹脂を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。オキセタン樹脂の含有量が0.1質量部以上であることにより、得られる硬化物の金属箔ピール強度および靭性が向上する傾向にある。オキセタン樹脂の含有量の上限値は、本実施形態の樹脂組成物が、オキセタン樹脂を含む場合、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが一層好ましく、8質量部以下であることがより一層好ましい。オキセタン樹脂の含有量が50質量部以下であることにより、得られる硬化物の電気特性が向上する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、オキセタン樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、オキセタン樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、オキセタン樹脂の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部未満であることをいう。
【0128】
<<ベンゾオキサジン化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物を含んでいてもよい。
ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2以上(好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、一層好ましくは2または3、より一層好ましくは2)のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば特に限定されず、プリント配線板の分野で通常用いられる化合物を広く用いることができる。
ベンゾオキサジン化合物としては、例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA-BXZ(小西化学社製)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ(小西化学社製)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ(小西化学社製)等が挙げられる。
【0129】
本実施形態の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物を本発明の効果を損なわない範囲で含むことが好ましい。本実施形態の樹脂組成物がベンゾオキサジン化合物を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、50質量部以下であることが好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、ベンゾオキサジン化合物の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部未満であることをいう。
【0130】
<<アリールシクロブテン樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、アリールシクロブテン樹脂を含んでいてもよい。
この詳細は、特開2019-194312号公報の段落0042に記載のアリールシクロブテン樹脂等が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0131】
<<ポリアミド樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を含んでいてもよく、熱硬化性ポリアミド樹脂を含んでいてもよい。
この詳細は、特開2019-194312号公報の段落0065に記載のポリアミドおよび特許第6951829号公報の段落0063に記載のポリアミド等を参照することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0132】
<<ポリイミド樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリイミド樹脂を含んでいてもよく、熱硬化性ポリイミド樹脂を含んでいてもよい。
この詳細は、特許第6951829号の段落0063~0064に記載のポリイミド等を参照することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0133】
<<ペルフルオロビニルエーテル樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、ペルフルオロビニルエーテル樹脂を含んでいてもよく、ペルフルオロビニルベンジルエーテル樹脂を含んでいてもよい。
この詳細は、特開2019-194312号公報の段落0043に記載のペルフルオロビニルエーテル樹脂等が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0134】
<<末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)以外のスチレン基を有する化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)以外のスチレン基を有する化合物を含んでいてもよい。
これらの詳細は、国際公開第2022/210095号に記載の末端にスチレンを有する化合物(例えば、同公報の合成例12~16に記載の化合物)、特開2022-85610号公報の段落0029~0038の記載、特開2019-194312号公報の段落0041に記載のビニルベンジルエーテル樹脂等が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0135】
<<インダン骨格を有する樹脂(A)以外のイソプロペニル基を有する化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、インダン骨格を有する樹脂(A)以外のイソプロペニル基を有する化合物を含んでいてもよい。
これらの詳細は、国際公開第2022/210095号に記載のイソプロペニル基を有する樹脂(例えば、同公報の合成例1、2、7、8に記載の化合物)が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
<<前記末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の多官能(メタ)アクリレート化合物>>
本実施形態の樹脂組成物は、前記末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。ここで、多官能(メタ)アクリレート化合物とは、一分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物を意味し、一分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を3つ以上含むことが好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイルオキシ基を3つから5つ有している化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を3つまたは4つ有している化合物であることがより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を3つ有している化合物であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレート化合物は、メタアクリロイルオキシ基を有する化合物であることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、架橋点となる(メタ)アクリレート基の数が多いため、樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)ならびに他の樹脂成分(例えば、他の化合物(C))と強固に硬化し、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、および、耐熱性に優れる硬化物が得られる。多官能(メタ)アクリレート化合物としては、式(MA)で表される化合物が好ましい。
式(MA)
【化63】
(式(MA)中、R
1は、水素原子または置換基を表し、R
2は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。)
【0137】
式(MA)中、R1は、水素原子または置換基を表し、式量15~500の置換基であることがより好ましく、式量15~300の置換基であることがより好ましく、式量15~100の置換基であることがさらに好ましく、式量15~50の置換基であることが一層好ましい。
【0138】
R1は、好ましくは炭化水素基または(メタ)アクリロイルオキシ基であり、より好ましくは炭素数22以下の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~22のアルキル基、または、炭素数2~22のアルケニル基である。炭素数1~22のアルキル基、または、炭素数2~22のアルケニル基を有する化合物を使用することによって、架橋性に優れ、かつ、高靱性を有する硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。それにより、樹脂組成物にガラスクロスなどの基材を含めない場合であっても、エッチング処理などの際に割れたりすることを抑制できる。
前記アルキル基および/またはアルケニル基の炭素数は、ハンドリング性向上の観点から、2以上が好ましく、8以上であってもよく、さらには、12以上であってもよく、18以下であってもよい。それにより樹脂組成物の樹脂流れ性が良好となり、本実施形態の樹脂組成物を用いて多層回路基板などを作成する際の回路充填性などにより優れるようになると考えられる。
【0139】
本実施形態では、式(MA)で表される化合物の(メタ)アクリル基当量が1000g/eq.以下であることが好ましい。前記当量が1000g/eq.以下であれば、高いTgをより確実に得ることができる傾向にある。(メタ)アクリル基当量の下限値は、例えば、99g/eq.以上である。
【0140】
前記炭素数1~22のアルキル基としては、炭素数1~22の直鎖状、または、炭素数3~22分岐鎖状のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。また、前記炭素数2~22のアルケニル基としては、炭素数2~15のアルケニル基が好ましく、例えば、アリル基、デセニル基等が挙げられる。
【0141】
式(MA)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよく、プレポリマーとして使用してもよい。
【0142】
また、式(MA)で表される化合物は、市販のものを用いることもできる。市販されているものとしては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレートとして、新中村化学工業株式会社製「NKエステルTMPT」が挙げられる。
【0143】
多官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は、300以上であることが好ましく、330以上であることがより好ましく、400以上であってもよく、500以上であってもよい。前記分子量を上記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、耐熱性がより向上する傾向にある。また、(メタ)アクリレート化合物(好ましくは、式(MA)で表される化合物)の分子量は、3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることが一層好ましい。前記分子量を上記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の低熱膨張性がより向上する傾向にある。
【0144】
これらの詳細は、国際公開第2022/210095号に記載の(メタ)アクリル基を有する樹脂(例えば、同公報の合成例5、21に記載の化合物)および特許第6962507号の(メタ)アクリル基を有する樹脂(例えば、実施例1~9に記載の化合物)が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0145】
本実施形態の樹脂組成物が多官能(メタ)アクリレート化合物を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であってもよい。多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物が成形性に優れ、得られる硬化物の耐熱性、低熱膨張性がより向上する傾向にある。また、(メタ)アクリレート化合物の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であってもよい。多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0146】
<<エラストマー>>
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマーを含んでいてもよい。エラストマーは熱可塑性であっても、熱硬化性であっても、熱可塑性および熱硬化性のいずれも示さなくてもよいが、熱可塑性が好ましい。
本実施形態におけるエラストマーは、特に限定されず、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンエチレン、スチレンブタジエンスチレン、スチレンイソプレンスチレン、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、フッ素ゴム、シリコーンゴム、それらの水添化合物、それらのアルキル化合物、およびそれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
また、エラストマーとしては、特開2019-194312号公報の段落0044および0045に記載の硬化性ビニル官能基を有するオリゴマーまたはポリマー、ポリブタジエン樹脂も例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0147】
本実施形態で用いるエラストマー(好ましくは熱可塑性エラストマー)の数平均分子量は、1000以上であることが好ましい。数平均分子量を、1000以上とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf、特に、低誘電正接性)がより優れる傾向にある。数平均分子量は、1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、用途等に応じて、600,000以上、700,000以上、800,000以上であってもよい。エラストマーの数平均分子量の上限は、400,000以下であることが好ましく、350,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、エラストマー成分の樹脂組成物への溶解性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物が2種以上のエラストマーを含む場合、それらの混合物の数平均分子量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0148】
本実施形態で用いるエラストマーは、ポリブタジエン構造を含む樹脂が挙げられる。ポリブタジエン構造は、一部または全てが、水素添加されていてもよい。具体例としては、日本曹達株式会社製、B-1000、B-2000、B-3000、BI-2000、BI-3000、CRAY
VALLEY社製、Ricon100、Ricon130、Ricon131、Ricon142、Ricon150、Ricon181、Ricon184等が挙げられる。
【0149】
本実施形態で用いるエラストマーは、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂が挙げられる。具体例としては、ナガセケムテックス社製テイサンレジン、根上工業社製のME-2000
、W-197C、KG-15、KG-3000等が挙げられる。
【0150】
本実施形態で用いるエラストマーは、ポリカーボネート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリカーボネート構造を含有する樹脂を「ポリカーボネート樹脂」ということがある。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、およびエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のFPC0220、FPC2136、旭化成ケミカルズ社製のT6002、T6001(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0151】
本実施形態で用いるエラストマーは、ポリシロキサン構造を含有する樹脂が挙げられる。具体例としては、信越シリコーン社製のSMP-2006、SMP-2003PGMEA、SMP-5005PGMEA、KR-510、SMP-7014-3S等が挙げられる。
【0152】
本実施形態で用いるエラストマーは、ポリアルキレン構造および/またはポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素数5~6のポリアルキレンオキシ構造が特に好ましい。ポリアルキレン構造および/またはポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製のPTXG-1000、PTXG-1800等が挙げられる。
【0153】
本実施形態で用いるエラストマーは、ポリイソプレン構造を含有する樹脂が挙げられる。具体例としては、クラレ社製のKL-610、KL613等が挙げられる。
【0154】
本実施形態で用いるエラストマーは、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。具体例としては、カネカ社製のSIBSTAR-073T(スチレン-イソブチレン-
スチレントリブロック共重合体)、SIBSTAR -042D( スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0155】
本実施形態において、エラストマーは、スチレン単量体単位と、共役ジエン単量体単位を含むエラストマー(以下、「エラストマー(e)」と称する)が好ましい。このようなエラストマー(e)を用いることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf、特に、低誘電正接性)がより優れる。
【0156】
上記エラストマー(e)は、スチレン単量体単位を含む。スチレン単量体単位を含むことにより、エラストマー(e)の樹脂組成物への溶解性が向上する。スチレン単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン(ビニルスチレン)、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等が例示され、これらの中でも、入手性および生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンが好ましい。これらの中でもスチレンが特に好ましい。
上記エラストマー(e)におけるスチレン単量体単位の含有量は、全単量体単位の10~50質量%の範囲が好ましく、13~45質量%の範囲がより好ましく、15~40質量%の範囲がさらに好ましい。スチレン単量体単位の含有量が50質量%以下であれば、基材等との密着性、粘着性がより良好になる。また、10質量%以上であれば、粘着昂進を抑制でき、糊残りやストップマークが生じにくく、粘着面同士の易剥離性が良好になる傾向にあるため好ましい。
エラストマー(e)はスチレン単量体単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲であることが好ましい。
本実施形態のエラストマー(e)中のスチレン単量体単位の含有量の測定方法は、国際公開第2017/126469号の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。後述する、共役ジエン単量体単位等についても同様である。
【0157】
上記エラストマー(e)は、共役ジエン単量体単位を含む。共役ジエン単量体単位を含むことにより、エラストマー(e)の樹脂組成物への溶解性が向上する。共役ジエン単量体としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである限り、特に限定されない。共役ジエン単量体は、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、および、ファルネセンが挙げられ、1,3-ブタジエン、および、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
エラストマー(e)は共役ジエン単量体単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0158】
上記エラストマー(e)においては、スチレン単量体単位と共役ジエン単量体単位との質量比率が、スチレン単量体単位/共役ジエン単量体単位=5/95~80/20の範囲であることが好ましく、7/93~77/23の範囲であることがより好ましく、10/90~70/30の範囲であることがさらに好ましい。スチレン重合体単位と共役ジエン単量体単位の質量比率が、5/95~80/20の範囲であれば、粘着昂進を抑制し粘着力を高く維持でき、粘着面同士の易剥離性が良好になる。
【0159】
上記エラストマー(e)は、エラストマーの共役ジエン結合の全部が水素添加されていてもよいし、一部水素添加されていてもよいし、水素添加されていなくてもよい。
【0160】
上記エラストマー(e)は、スチレン単量体単位および共役ジエン単量体単位に加え、他の単量体単位を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。他の単量体単位としては、スチレン単量体単位以外の芳香族ビニル化合物単位などが例示される。
上記エラストマー(e)は、スチレン単量体単位および共役ジエン単量体単位の合計が全単量体単位の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが一層好ましい。
上述の通り、エラストマー(e)は、スチレン単量体単位および共役ジエン単量体単位を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0161】
本実施形態で用いるエラストマー(e)は、ブロック重合体であっても、ランダム重合体であってもよい。また、共役ジエン単量体単位が水素添加された水添エラストマーであっても、水素添加されていない未水添エラストマーであっても、部分的に水素添加された部分水添エラストマーであってもよく、未水添エラストマーまたは部分水添エラストマーであることが好ましい。
本実施形態の一実施形態においては、エラストマー(e)は、水添エラストマーである。ここで、水添エラストマーは、例えば、エラストマー中の共役ジエン単量体単位に基づく二重結合が水素添加されているものを意味し、水素添加率(水添率)が100%のもののほか、80%以上のものを含む趣旨である。水添エラストマーにおける水添率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。本実施形態において、水添率は1H-NMRスペクトル測定の測定結果から算出される。
本実施形態の一実施形態においては、エラストマー(e)は、未水添エラストマーである。ここで、未水添エラストマーとは、エラストマー中の共役ジエン単量体単位に基づく二重結合のうち、水素添加されているものの割合、すなわち、水素添加率(水添率)が20%以下のものをいう。水添率は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
一方、部分水添エラストマーは、エラストマー中の共役ジエン単量体単位に基づく二重結合の一部が水素添加されているものを意味し、通常、水素添加率(水添率)が80%未満、20%超であるものをいう。
【0162】
本実施形態で用いるエラストマー(e)の市販品としては、株式会社クラレ製のSEPTON(登録商標)2104、V9461、S8104、旭化成株式会社製のS.O.E.(登録商標)S1606、S1613、S1609、S1605、旭化成株式会社製のタフテック(登録商標)のH1041、H1043、P2000、MP10、JSR株式会社製、DYNARON(登録商標)9901P、TR2250、等が例示される。
【0163】
本実施形態で用いるエラストマーは、また、液状ジエンであってもよい。液状ジエンとは、共役ジエン単量体単位を含む液状のエラストマーを意味する。共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、および、ファルネセンが挙げられ、1,3-ブタジエン、および、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
本実施形態で用いる液状ジエンとしては、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンの変性物、液状ポリイソプレンの変性物、液状アクリルニトリル-ブタジエンの共重合体、液状スチレン-ブタジエン共重合体が挙げられる。
また、液状ジエンの数平均分子量については、20℃において液状である限り、特に限定されないが、好ましくは500以上10,000以下である。
【0164】
本実施形態の樹脂組成物がエラストマー(好ましくは、エラストマー(e))を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましく、用途等に応じて、10質量部以上、12質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、誘電特性(低誘電正接性)がより向上する傾向にある。また、エラストマーの含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましく、32質量部以下であることが一層好ましく、28質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、エラストマーを実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとはエラストマーの含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部未満であることをいい、0.1質量部未満であることが好ましく、0.01質量部未満であることがより好ましい。
【0165】
<<石油樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、石油樹脂を含んでいてもよい。石油樹脂を含むことにより、溶融粘度を低くすることができる。
石油樹脂は、石油ナフサを熱分解して必要な留分を採取した残りの成分を、不飽和炭化水素を単離することなく無触媒、もしくは、触媒存在下に重合して得られる樹脂である。前記残りの留分としては、主として、C5留分(イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ペンテン類、ペンタン類等)またはC9留分(ビニルトルエン、インデン、ジシクロペンタジエン等)を含む留分である。
【0166】
石油樹脂の製造に用いられる触媒は、酸性触媒が好ましい。具体的には、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素エーテル錯体、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)などのルイス酸、ゼオライト、シリカ、モンモリロナイト、アルミナ等の固体酸、スルホン酸基含有フッ素樹脂、スルホン酸基含有ポリスチレン樹脂等のイオン交換樹脂、硫酸、塩酸、酢酸、リン酸、シュウ酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸等を用いることができる。これらの中でも、副反応が起こりにくく、反応速度が速い、ルイス酸や固体酸を用いることが好ましく、三フッ化ホウ素の各種錯体、塩化アルミニウムが入手のし易さや反応性が高い点でより好ましい。
【0167】
石油樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、好ましくは500~10000であり、より好ましくは500~5000である。前記上限値以下とすることにより、他の樹脂と相溶しやすくなり、かつ、溶剤への溶解性も高くなる傾向にある。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性や機械的強度がより向上する傾向にある。
【0168】
石油樹脂の軟化点は特に制限されないが、高いことが好ましく、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性が向上する傾向にある。
【0169】
石油樹脂は、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂が例示され、ジシクロペンタジエン系石油樹脂が好ましい。
ジシクロペンタジエン系石油樹脂としては、ジシクロペンタジエン、イソプロペニルノルボルネン、ジメチルジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン系留分を重合して得られる樹脂、ジシクロペンタジエン系留分とその他の不飽和結合を有するモノマー、好ましくは不飽和環状オレフィン類を重合して得られる樹脂等が挙げられる。
【0170】
前記不飽和環状オレフィン類としては、シクロペンタジエン;2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン,5-エチリデン-2-ノルボルネン等のノルボルネン系モノマー;さらに三環体以上のノルボルネン系モノマーとして、ジエチルジシクロペンタジエン,ジヒドロジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン系留分以外の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、トリシクロペンタジエン等の五環体、テトラシクオロペンタジエン等の七環体およびこれらの多環体のアルキル置換体、アルキリデン置換体、アリール置換体等が挙げられる。前記多環体のアルキル置換体としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル置換体等が挙げられ、また前記多環体のアルキリデン置換体としては、例えば、エチリデン置換体等が挙げられ、さらに前記多環体のアリール置換体としては、例えば、フェニル、トリル、ナフチル置換体等が挙げられる。
【0171】
さらに、不飽和環状オレフィン類以外の、その他の不飽和結合を有するモノマーとしては、炭素数3~12のオレフィンを共重合してもよく、例えば、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、1,3-ペンタジエン、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、ジイソブチンレン、ノネン-1、デセン-1、4-フェニルブテン-1、6-フェニルヘキセン-1、3-メチルブテン-1、4-メチルペンテン-1、3-メチルペンテン-1、3-メチルヘキセン-1、4-メチルヘキセン-1、5-メチルヘキセン-1、3,3-ジメチルペンテン-1、3,4-ジメチルペンテン-1、4,4-ジメチルペンテン-1、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンなどのα-オレフィン;ヘキサフルオロプロペン、2-フルオロプロペン、3-フルオロプロペン、3,4-ジクロロブテン-1などのハロゲン置換α-オレフィン等が挙げられる。
【0172】
前記以外のその他の不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、テトラフルオロエチレン、フルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン;スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレンなどのアルキルスチレン;p-クロロスチレン、m-クロロスチレン、o-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、o-ブロモスチレン、p-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、o-フルオロスチレン、o-メチル-p-フルオロスチレンなどのハロゲン化スチレン;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、アリルアルコール、3-ブテン-2-オール、メチルブテン-1-オール、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0173】
前記モノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0174】
石油樹脂は市販のものを適宜使用することが可能であり、脂肪族系石油樹脂としては、日本ゼオン株式会社製クイントンA100、クイントンB170、クイントンK100、クイントンM100、クイントンR100、クイントンC200S、丸善石油化学株式会社製マルカレッツT-100AS、マルカレッツR-100AS、芳香族系石油樹脂としては、JXTGエネルギー株式会社製ネオポリマーL-90、ネオポリマー120、ネオポリマー130、ネオポリマー140、ネオポリマー150、ネオポリマー170S、ネオポリマー160、ネオポリマーE-100、ネオポリマーE-130、ネオポリマー130S、ネオポリマーS、東ソー株式会社製ペトコールLX、ペトコールLX-HS、ペトコール100T、ペトコール120、ペトコール120HS、ペトコール130、ペトコール140、ペトコール140HM、ペトコール140HM5、ペトコール150、ペトコール150AS、共重合系石油樹脂としては、日本ゼオン株式会社製クイントンD100、クイントンN180、クイントンP195N、クイントンS100、クイントンS195、クイントンU185、クイントンG100B、クイントンG115、クイントンD200、クイントンE200SN、クイントンN295、東ソー株式会社製ペトロタック60、ペトロタック70、ペトロタック90、ペトロタック90V、ペトロタック100、ペトロタック100V、ペトロタック90HM、DCPD(ジシクロペンタジエン)系石油樹脂としては、丸善石油化学株式会社製マルカレッツM-890A、マルカレッツM-845A、日本ゼオン株式会社製クイントン1325、クイントン1345、クイントン1500、クイントン1525L、クイントン1700、ENEOS株式会社製HA085、HA103、HA105、HA125、HB103、HB125等が挙げられる。
また、石油樹脂としては、有機合成化学 第25巻第6号(1967)に記載のものも採用することができる。
【0175】
本実施形態の樹脂組成物が石油樹脂を含む場合、その含有量の下限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましく、25質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、溶融粘度が低下する傾向にある。また、石油樹脂の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、Dfが低下する傾向にある。
本実施形態における樹脂組成物は、石油樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、石油樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは石油樹脂の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部未満であることをいい、0.1質量部未満であることが好ましく、0.01質量部未満であることがより好ましい。
【0176】
<充填材(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、充填材(D)を含むことが好ましい。充填材(D)を含むことにより、樹脂組成物やその硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、耐燃性、低熱膨張性等の物性をより向上させることができる。
また、本実施形態で用いる充填材(D)は、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)に優れることがより好ましい。例えば、本実施形態で用いる充填材(D)は、空洞共振器摂動法に従って測定した周波数10GHzにおける比誘電率(Dk)が8.0以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。また、比誘電率の下限値は、例えば、2.0以上が実際的である。また、本実施形態で用いる充填材(D)は、空洞共振器摂動法に従って測定した周波数10GHzにおける誘電正接(Df)が0.05以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。また、誘電正接の下限値は、例えば、0.0001以上が実際的である。
【0177】
本実施形態で使用される充填材(D)としては、その種類は特に限定されず、当業界において一般に使用されているものを好適に用いることができる。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、アルミナ、ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、フォルステライト、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等の複合酸化物、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物(水和物を含む)、酸化モリブデンやモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、NER-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなど無機系の充填材の他、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型などのゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダーなど有機系の充填材などが挙げられる。
本実施形態においては、無機充填材が好ましく、シリカ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、フォルステライト、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、および、チタン酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)の観点からは、シリカ、および、水酸化アルミニウム、からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、シリカを含むことがさらに好ましい。これらの無機充填材を使用することで、樹脂組成物の硬化物の耐熱性、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、熱膨張特性、寸法安定性、難燃性などの特性がより向上する。
【0178】
本実施形態の樹脂組成物における充填材(D)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましく、60質量部以上であることが一層好ましく、80質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の耐熱性、低熱膨張性、低誘電正接性がより向上する傾向にある。また、充填材(D)の含有量の上限値は、樹脂固形分100質量部に対し、1000質量部以下であることが好ましく、500質量部以下であることがより好ましく、300質量部以下であることがさらに好ましく、250質量部以下であることが一層好ましく、200質量部以下、120質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の成形性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物において、好ましい実施形態の一例として、充填材(D)の含有量が溶剤を除く成分の30質量%~90質量%である態様が例示される。
本実施形態の樹脂組成物は、充填材(D)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0179】
本実施形態の樹脂組成物において、充填材(D)、特に無機充填材を用いる際、シランカップリング剤をさらに含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、充填材(D)の分散性、樹脂成分と、充填材(D)および後述する基材との接着強度がより向上する傾向にある。
シランカップリング剤としては特に限定されず、一般に無機物の表面処理に使用されるシランカップリング剤が挙げられ、アミノシラン系化合物(例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系化合物(例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、ビニルシラン系化合物(例えば、ビニルトリメトキシシラン等)、スチリルシラン系化合物、アクリルシラン系化合物(例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオニックシラン系化合物(例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、フェニルシラン系化合物等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、0.1~5.0質量部であってよい。
【0180】
<エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマー>
本実施形態の樹脂組成物には、熱硬化性および活性エネルギー線による硬化性(例えば紫外線による光硬化性等)を高めるために、エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーを併用することも可能である。本実施形態に用いるエチレン性不飽和基を有するオリゴマーまたはモノマーは、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するオリゴマーまたはモノマーであれば、特に限定されないが、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等を有するモノマーまたはオリゴマーが挙げられ、ビニル基を有するモノマーまたはオリゴマーが好ましい。
尚、本明細書においては、エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーに該当する化合物であって、ポリフェニレンエーテル化合物(B)にも該当する化合物は、ポリフェニレンエーテル化合物(B)とする。
【0181】
より具体的には、エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、分子量が1,000未満であり、かつ、分子内にエチレン性不飽和結合を含む有機基を1つ含む化合物(F1)(化合物(F1))が挙げられる。
前記エチレン性不飽和結合を含む有機基を構成するエチレン性不飽和結合は、芳香環の一部として含まれるものは含まない趣旨である。一方、非芳香環の一部として含まれるエチレン性不飽和結合は含む趣旨である。非芳香環の一部として含まれるエチレン性不飽和結合の例としては、分子中のシクロヘキセニル基などが挙げられる。また、直鎖または分岐鎖の有機基の末端以外の部分、すなわち、直鎖または分岐鎖中に含まれるエチレン性不飽和結合も含む趣旨である。
前記エチレン性不飽和結合を含む有機基は、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、アクリロイル基、および、メタクリル基からなる群より選択される1つであることがより好ましく、ビニル基であることがさらに好ましい。
また、本明細書においては、エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーに該当する化合物であって、シランカップリング剤にも該当する化合物は、シランカップリング剤とする。
【0182】
本実施形態で用いる化合物(F1)は、また、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、およびケイ素原子から選択される原子のみで構成されていることが好ましく、炭素原子、水素原子、酸素原子、およびケイ素原子から選択される原子のみで構成されていることがより好ましく、炭素原子、水素原子、酸素原子、および酸素原子から選択される原子のみで構成されていることがさらに好ましい。
本実施形態で用いる化合物(F1)は、また、極性基を有していてもよいし、有していなくてもよい。本実施形態で用いる化合物(F1)は、極性基を有していない方が好ましい。極性基としては、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ニトロ基が例示される。
【0183】
本実施形態において、化合物(F1)の分子量は70以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、90以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、本実施形態の樹脂組成物やその硬化物等からの化合物(F1)の揮発を抑制できる傾向にある。前記化合物(F1)の分子量の上限は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましく、200以下であることが一層好ましく、150以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、他の樹脂成分との反応性を高める効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物が化合物(F1)を2種以上含む場合、化合物(F1)の平均分子量値が上記範囲に含まれることが好ましく、それぞれの化合物の分子量が上記好ましい範囲に含まれることがより好ましい。
【0184】
本実施形態において、化合物(F1)は沸点が110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物を熱硬化させる際の化合物(F1)の揮発が抑制され、他の硬化性化合物と化合物(F1)とを反応させることができる。前記化合物(F1)の沸点は、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、硬化物中に残溶剤として残りにくくすることができる。
本実施形態の樹脂組成物が化合物(F1)を2種以上含む場合、沸点の平均値が上記範囲に入ればよいが、それぞれの化合物の沸点が上記好ましい範囲に含まれることが好ましい。
【0185】
化合物(F1)としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物(好ましくはスチレン系化合物)、イソプロペニル基含有化合物、飽和脂肪酸ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸アミド、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびシトラコン酸をベースにした不飽和ポリエステル化合物;アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する不飽和エポキシ(メタ)アクリレート化合物;ビニル基または(メタ)アリル基を含有する不飽和エポキシ化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエーテル(メタ)アクリレート化合物、ポリアルコール(メタ)アクリレート化合物、アルキドアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、スピロアセタールアクリレート化合物、ジアリルフタレート化合物、ジアリルテトラブロモフタレート化合物、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートおよびポリエチレンポリチオールなどが例示され、(メタ)アクリル酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、および飽和脂肪酸ビニル化合物、からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、芳香族ビニル化合物がより好ましい。
化合物(F1)の具体例としては、メチルスチレン(例えば、4-メチルスチレン)、エチルビニルベンゼン、ジエチル4-ビニルベンジルホスホネート、4-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α―メチルスチレン、等が例示される。また、化合物(F1)の具体例として、特開2019-194312号公報の段落0046および段落0049の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0186】
一方、本実施形態に係る樹脂組成物は、低誘電率性および低誘電正接性向上のために、スチレンオリゴマー(F2)を含むことも好ましい。本実施形態に係るスチレンオリゴマー(F2)とは、スチレンおよび上記スチレン誘導体、ビニルトルエンからなる群より選択される少なくとも1種を重合してなることが好ましい。スチレンオリゴマー(F2)の数平均分子量は、178以上であることが好ましく、また、1600以下であることが好ましい。また、スチレンオリゴマー(F2)は、平均の芳香環数が2~14、芳香環数の2~14の総量が50質量%以上、沸点が300℃以上である分岐構造のない化合物であることが好ましい。
【0187】
本実施形態に用いられるスチレンオリゴマー(F2)としては、例えば、スチレン重合体、ビニルトルエン重合体、α-メチルスチレン重合体、ビニルトルエン-α-メチルスチレン重合体、スチレン-α-スチレン重合体等が挙げられる。スチレン重合体としては、市販品を用いてもよく、例えばピコラスチックA5(イーストマンケミカル社製)、ピコラスチックA-75(イーストマンケミカル社製)、ピコテックス75(イーストマンケミカル社製)、FTR-8100(三井化学(株)製)、FTR-8120(三井化学(株)製)が挙げられる。また、ビニルトルエン-α-メチルスチレン重合体としては、ピコテックスLC(イーストマンケミカル社製)が挙げられる。また、α-メチルスチレン重合体としてはクリスタレックス3070(イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス3085(イーストマンケミカル社製)、クリスタレックス(3100)、クリスタレックス5140(イーストマンケミカル社製)、FMR-0100(三井化学(株)製)、FMR-0150(三井化学(株)製)が挙げられる。また、スチレン-α-スチレン重合体としてはFTR-2120(三井化学(株)製)が挙げられる。これらのスチレンオリゴマーは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物においては、α-メチルスチレンオリゴマーが、良好に熱硬化し、良好な微細配線の埋め込み性および半田耐熱性、低比誘電率、低誘電正接に優れることから好ましい。
【0188】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、低誘電率性および低誘電正接性向上のために、エチレン性不飽和基を有するモノマーとして、ジビニル化合物(F3)を含むことも好ましい。
ジビニル化合物は、ビニル基を2つ有する低分子化合物である。ビニル基が2つであることにより、高まり過ぎない程度の良好な架橋密度となり、その結果、分子の自由体積が大きくなるため、得られる硬化物の誘電正接(Df)を小さく抑えることができる。さらに、ジビニル化合物(F3)は、樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)、ならびに、他の硬化性化合物の一部の代わりとして使用されるため、極性基を有する成分の含有量が低減されること自体も誘電正接(Df)の低減に寄与すると考えられる。また、ジビニル化合物が有する官能基2つがいずれもビニル基であることによって、樹脂(A)およびポリフェニレンエーテル化合物(B)との反応性が良好なものとなり、その結果、耐熱性が向上し易くなる傾向があると考えられる。
なお、ここでのジビニル化合物(F3)は、分子量が600未満のものをいい、300以下であることが好ましく、195未満であることがより好ましい。また、分子量の下限値は54が実際的である。ジビニル化合物(F3)としては、ジビニルベンゼン、1-エチニルー4-[2―(4-エチニルフェニル)エチル]ベンゼン(BVPE)
、1,3-ビニルテトラメチルシロキサン等が挙げられる。
【0189】
その他、エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーとしては、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、および、1,4-ジイソプロペニルベンゼンも好ましく用いられる。
その他、エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーの詳細は、国際公開第2017/135168号の段落0069~0087の記載、および、国際公開第2019/230945号の段落0065~0067を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0190】
本実施形態の樹脂組成物がエチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーを含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、3質量部以上であることが一層好ましく、さらには、5質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)がより向上する傾向にある。また、エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーの含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが一層好ましく、10質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある。また、低誘電率性、低誘電正接性および耐薬品性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、エチレン性不飽和基を有するモノマーまたはオリゴマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0191】
<難燃剤>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤およびシリコーン系難燃剤が例示され、リン系難燃剤が好ましい。
難燃剤としては、公知のものが使用でき、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン、臭素化スチレン、臭素化フタルイミド、テトラブロモビスフェノールA、ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート、ペンタブロモトルエン、トリブロモフェノール、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、ビス-1,2-ペンタブロモフェニルエタン、塩素化ポリスチレン、塩素化パラフィン等のハロゲン系難燃剤、赤リン、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリアルキルホスフェート、ジアルキルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、ホスファゼン、1,3-フェニレンビス(2,6-ジキシレニルホスフェート)、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、部分ベーマイト、ベーマイト、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤、シリコーンゴム、シリコーンレジン等のシリコーン系難燃剤が挙げられる。
本実施形態においては、これらの中でも、1,3-フェニレンビス(2,6-ジキシレニルホスフェート)が得られる硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)を損なわないことから好ましい。
【0192】
本実施形態の樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。また、難燃剤の含有量の下限値は、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
難燃剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となる。
【0193】
<活性エステル化合物>
本実施形態の樹脂組成物は、活性エステル化合物を含んでいてもよい。活性エステル化合物としては、特に限定されず、例えば、国際公開第2021/172317号の段落0064~0066の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0194】
本実施形態の樹脂組成物が活性エステル化合物を含む場合、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、また、90質量部以下であることが好ましい。
本実施形態における樹脂組成物は、活性エステル化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本実施形態における樹脂組成物は、活性エステル化合物を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、活性エステル化合物の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1質量部未満であることをいい、0.1質量部未満であることが好ましく、0.01質量部未満であることがさらに好ましい。
【0195】
<分散剤>
本実施形態の樹脂組成物は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、一般に塗料用に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。分散剤は、好ましくは、共重合体ベースの湿潤分散剤、フッ素を含有するフッ素系分散剤が使用される。
分散剤の具体例としては、ビックケミー・ジャパン(株)製のDISPERBYK(登録商標)-110、111、161、180、2009、2152、2155、BYK(登録商標)-W996、W9010、W903、W940、株式会社ネオス製のフタージエント、三菱鉛筆株式会社製MPTなどが挙げられる。
【0196】
本実施形態の樹脂組成物が分散剤を含む場合、その含有量の下限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であってもよい。また、分散剤の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
分散剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となる。
【0197】
<硬化促進剤>
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリフェニルイミダゾール等のイミダゾール類;過酸化ベンゾイル、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)パーオキサイド)、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パ-フタレート、α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3などの有機過酸化物;アゾビスニトリル(例えば、アゾビスイソブチロニトリル)などのアゾ化合物;N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジンなどの第3級アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどのフェノール類;2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンなどの高温分解型ラジカル発生剤;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸マンガン、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄などの有機金属塩;これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノールなどの水酸基含有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの無機金属塩;ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイドなどの有機錫化合物などが挙げられる。
硬化促進剤は、イミダゾール類、有機過酸化物、および有機金属塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、イミダゾール類および/または有機金属塩であることがより好ましく、イミダゾール類および有機金属塩の両方を組み合わせて用いることがさらに好ましい。
また、本実施形態においては、有機過酸化物、アゾ化合物などの重合開始剤を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、重合開始剤の含有量が樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.1質量部未満であることをいい、0.01質量部未満であることが好ましく、0.001質量部未満であることがより好ましい。
特に、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)として、式(OP-1)で表されるポリフェニレンエーテル化合物を用いた時に、重合開始剤(硬化促進剤を含む)を実質的に含まない構成としても、十分に硬化させることができる。
【0198】
本実施形態の樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その含有量の下限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.005質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。また、硬化促進剤の含有量の上限値は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。
硬化促進剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となる。
【0199】
<溶剤>
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤を含有してもよく、有機溶剤を含むことが好ましい。溶剤を含有する場合、本実施形態の樹脂組成物は、上述した各種樹脂固形分の少なくとも一部、好ましくは全部が溶剤に溶解または相溶した形態(溶液またはワニス)である。溶剤としては、上述した各種樹脂固形分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解または相溶可能な極性有機溶剤または無極性有機溶剤であれば特に限定されず、極性有機溶剤としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、セロソルブ類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、エステル類(例えば、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等)、アミド類(例えば、ジメトキシアセトアミド、ジメチルホルムアミド類等)が挙げられ、無極性有機溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン等)が挙げられる。
溶剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となる。
【0200】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上記の成分以外に、樹脂およびそのオリゴマー等の種々の高分子化合物、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、重合禁止剤を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、樹脂組成物が重合禁止剤を含まないか、樹脂組成物中の重合禁止剤の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、例えば、0.008質量部未満であることであり、0.007質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以下であることがさらに好ましく、0.0001質量部以下であることが一層好ましい。
【0201】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物は、硬化物として用いられる。具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)を有する材料として、プリント配線板の絶縁層、半導体パッケージ用材料等、電子材料用樹脂組成物として好適に用いることができる。本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、プリプレグを用いた金属箔張積層板、樹脂複合シート、およびプリント配線板用の材料として好適に用いることができる。
【0202】
本実施形態の樹脂組成物は、最低溶融粘度が100,000Pa・s以下であることが好ましく、20,000Pa・s以下であることがより好ましい。最低溶融粘度の下限値は、特に定めるものでは無いが、10Pa・s以上が実際的である。このような低い溶融粘度は、樹脂(A)を用いることによって達成される。
また、本実施形態の樹脂組成物は、(最低溶融温度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度が80倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。(最低溶融温度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度が低いと、硬化反応がマイルドに進行し、ボイドの生成を防止できる傾向にある。
最低溶融粘度は後述する実施例に記載する方法に従って測定される。
【0203】
本実施形態の樹脂組成物の最低溶融温度は、210℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることがさらに好ましく、180℃以下であることが一層好ましく、175℃以下であることがより一層好ましい。下限値は、例えば、120℃以上が実際的である。
最低溶融温度は後述する実施例に記載する方法に従って測定される。
【0204】
本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物の、DMA(動的機械分析)に従ったガラス転移温度が、130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、165℃以上であることがさらに好ましく、170℃以上であることが一層好ましく、さらには、180℃以上、190℃以上であってもよい。このような高いガラス転移温度は、主に、ポリフェニレンエーテル化合物(B)を用いることにより達成される。ガラス転移温度の上限値は、例えば、350℃以下が実際的である。
ガラス転移温度は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0205】
本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物の比誘電率(Dk)が低いことが好ましい。具体的には、空洞共振器摂動法に従って測定した周波数10GHzにおける比誘電率(Dk)が2.50以下であることが好ましく、2.45未満であることがより好ましく、2.44以下であることがさらに好ましい。比誘電率(Dk)の下限値については、特に定めるものではないが、例えば、0.01以上が実際的である。
また、本実施形態の樹脂組成物は、その硬化物の誘電正接(Df)が低いことが好ましい。具体的には、空洞共振器摂動法に従って測定した周波数10GHzにおける誘電正接(Df)が0.0022未満であることが好ましく、0.0021以下であることがより好ましく、0.0020以下であることが好ましく、0.0018以下、0.0015以下、0.0014以下、0.0013以下であってもよい。誘電正接(Df)の下限値については、特に定めるものではないが、例えば、0.0001以上が実際的である。
このような硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf)は、樹脂(A)と、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)とを、所定の比率で組み合わせて用いることにより達成される。
比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0206】
本実施形態の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層となる、プリプレグ、樹脂複合シート等の層状(フィルム状、シート状等を含む趣旨である)の材料として用いられるが、かかる層状の材料としたとき、その厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。厚さの上限値としては、200μm以下であることが好ましく、180μm以下であることがより好ましい。尚、上記層状の材料の厚さは、例えば、本実施形態の樹脂組成物をガラスクロス等に含浸させたものである場合、ガラスクロスを含む厚さを意味する。
本実施形態の樹脂組成物から形成される材料は、露光現像してパターンを形成する用途に用いてもよいし、露光現像しない用途に用いてもよい。特に、露光現像しない用途に適している。
【0207】
<<プリプレグ>>
本実施形態のプリプレグは、基材(プリプレグ基材)と、本実施形態の樹脂組成物とから形成される。本実施形態のプリプレグは、例えば、本実施形態の樹脂組成物を基材に適用(例えば、含浸および/または塗布)させた後、加熱(例えば、120~220℃で2~15分乾燥させる方法等)によって半硬化させることにより得られる。この場合、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量に対する樹脂組成物量(充填材(D)を含む)は、20~99質量%の範囲であることが好ましく、20~80質量%の範囲であることがより好ましい。
【0208】
基材としては、各種プリント配線板材料に用いられている基材であれば特に限定されない。基材の材質としては、例えば、ガラス繊維(例えば、E-ガラス、D-ガラス、L-ガラス、S-ガラス、T-ガラス、Q-ガラス、UN-ガラス、NE-ガラス、NER-ガラス、球状ガラス等)、ガラス以外の無機繊維(例えば、クォーツ等)、有機繊維(例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン等)が挙げられる。基材の形態としては、特に限定されず、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が挙げられる。これらの基材は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの基材の中でも、寸法安定性の観点から、超開繊処理、目詰め処理を施した織布が好ましく、強度と低吸水性の観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m2以下のガラス織布が好ましく、吸湿耐熱性の観点から、エポキシシラン、アミノシランなどのシランカップリング剤等により表面処理されたガラス織布が好ましい。電気特性の観点から、L-ガラスやNE-ガラス、NER-ガラス、Q-ガラス等の低比誘電率、低誘電正接を示すガラス繊維からなる、低誘電ガラスクロスがより好ましい。
低比誘電率性の基材とは、例えば、比誘電率が5.0以下(好ましくは、3.0~4.9)の基材が例示される。低誘電正接性の基材とは、例えば、誘電正接が0.006以下(好ましくは、0.001~0.005)の基材が例示される。比誘電率および誘電正接は、摂動法空洞共振器により、周波数10GHzで測定した値とする。
【0209】
<<金属箔張積層板>>
本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む。本実施形態の金属箔張積層板の作製方法としては、例えば、本実施形態のプリプレグを少なくとも1枚配置し(好ましくは2枚以上重ね)、その片面または両面に金属箔を配置して積層成形する方法が挙げられる。より詳細には、プリプレグの片面または両面に銅、アルミニウム等の金属箔を配置して積層成形することにより作製できる。プリプレグの枚数としては、1~10枚が好ましく、2~10枚がより好ましく、2~9枚がさらに好ましい。金属箔としては、プリント配線板用材料に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。金属箔(好ましくは、銅箔)の厚さは、特に限定されず、1.5~70μm程度であってもよい。また、金属箔として銅箔を用いる場合、銅箔としては、JIS B0601:2013に従って測定した銅箔表面の粗度Rzが、0.2~4.0μmに調整されていることが好ましい。銅箔表面の粗度Rzを0.2μm以上とすることにより、銅箔表面の粗度が適度な大きさとなり、銅箔ピール強度がより向上する傾向にある。一方、銅箔表面の粗度Rzを4.0μm以下とすることにより、銅箔表面の粗度が適度な大きさとなり、導体損失がより低減する傾向にある。銅箔表面の粗度Rzは、ピール強度向上の観点から、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは0.6μm以上であり、特に好ましくは0.7μm以上であり、また、導体損失を低減する観点から、より好ましくは3.5μm以下であり、さらに好ましくは3.0μm以下であり、特に好ましくは2.0μm以下である。
【0210】
積層成形の方法としては、プリント配線板用積層板および多層板を成形する際に通常用いられる方法が挙げられ、より詳細には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を使用して、温度180~350℃程度、加熱時間100~300分程度、面圧20~100kg/cm2程度で積層成形する方法が挙げられる。また、本実施形態のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることもできる。多層板の製造方法としては、例えば、本実施形態のプリプレグ1枚の両面に35μm程度の銅箔を配置し、上記の成形方法にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成し、この後、この内層回路板と本実施形態のプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に銅箔を配置して、上記条件にて好ましくは真空下で積層成形することにより、多層板を作製することができる。本実施形態の金属箔張積層板は、プリント配線板として好適に使用することができる。
【0211】
以上のように、本実施形態の樹脂組成物(特定成分の組合せからなる樹脂組成物)を用いて得られる電子材料用樹脂組成物は、樹脂組成物の成形性その硬化物の低誘電特性(Dkおよび/またはDf、特に低誘電正接性)のほか、低比誘電率、耐クラック性、硬化物の外観、低熱膨張性、吸湿耐熱性に優れる特性を有するものとすることができる。
【0212】
<<プリント配線板>>
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、本実施形態の樹脂組成物から形成された層および本実施形態のプリプレグから形成された層の少なくとも一方を含む。このようなプリント配線板は、常法に従って製造でき、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。まず上述した銅箔張積層板等の金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ね、さらにその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材および樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、さらに外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
【0213】
上記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態の樹脂組成物および/またはその硬化物を含む構成となる。すなわち、上述した本実施形態のプリプレグ(例えば、基材およびこれに含浸または塗布された本実施形態の樹脂組成物から形成されたプリプレグ)、上述した本実施形態の金属箔張積層板の樹脂組成物から形成された層が、本実施形態の絶縁層となる。
また、本実施形態は、前記プリント配線板を含む半導体装置にも関する。半導体装置の詳細は、特開2021-021027号公報の段落0200~0202の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0214】
また、本実施形態の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層は、その絶縁層の粗化処理後の表面粗さを小さくすることが好ましい。具体的には、粗化処理後の絶縁層の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。算術平均粗さRaの下限値は、特に限定されないが、例えば、10nm以上でありうる。絶縁層の表面の算術平均粗さRaの測定は、非接触型表面粗さ計を用いて、VSIモード、50倍レンズを用いて測定して求める。
非接触型表面粗さ計は、ビーコインスツルメンツ社製WYKONT3300を用いる。
【0215】
<<樹脂複合シート>>
本実施形態の樹脂複合シートは、支持体と、前記支持体の表面に配置された本実施形態の樹脂組成物から形成された層を含む。樹脂複合シートは、ビルドアップ用フィルムまたはドライフィルムソルダーレジストとして使用することができる。樹脂複合シートの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を支持体に塗布(塗工)し乾燥することで樹脂複合シートを得る方法が挙げられる。
【0216】
ここで用いる支持体としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、ならびに、これらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS(Steel Use Stainless)板、FRP(Fiber-Reinforced
Plastics)等の板状のものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0217】
塗布方法(塗工方法)としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。また、乾燥後に、支持体と樹脂組成物が積層された樹脂複合シートから支持体を剥離またはエッチングすることで、単層シートとすることもできる。なお、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、支持体を用いることなく単層シートを得ることもできる。
【0218】
なお、本実施形態の単層シートまたは樹脂複合シートの作製において、溶剤を除去する際の乾燥条件は、特に限定されないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、20℃~200℃の温度で1~90分間が好ましい。また、単層シートまたは樹脂複合シートは溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもできるし、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。さらに、本実施形態の単層シートまたは樹脂複合シートにおける樹脂層の厚みは、塗布(塗工)に用いる本実施形態の樹脂組成物の溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができ、特に限定されないが、一般的には塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、0.1~500μmが好ましい。
【実施例0219】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0220】
<重量平均分子量および数平均分子量の測定>
式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)、末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B1)および(B2)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によって測定した。送液ポンプ(島津製作所社製、LC-20AD)、示差屈折率検出器(島津製作所社製、RID-20A)、GPCカラム(昭和電工社製、GPC KF-801、802、803、804)を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン、流量1.0mL/分、カラム温度40℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
【0221】
<パラメーターα、βの測定>
樹脂(A)におけるパラメーターα、βは、
1H-NMR測定により算出した。合成した樹脂をヘプタンとメタノールの混合溶媒に溶解し、乾固させる操作を繰り返し行うことで回収した固体に含まれる残存溶媒を除去した。その後、回収した固体をCDCl
3に溶解し、
1H-NMR測定を行った。測定した
1H-NMRにおいて下記に示す式を用いて各樹脂のパラメーターα、βを算出した。
【数2】
(式(α)および式(β)における括弧内は、
1H-NMRにおける該当する化学シフト値間の積分値を示す。)
【0222】
<合成例1 式(T1)で表される末端基を有し、かつ、インダン骨格を有する樹脂(A)の合成>
温度計、冷却管を取り付けた三口フラスコに、トルエン520g、活性白土3g、攪拌子を入れ、攪拌しながら内温70℃まで加熱した。その後、1,3-ジイソプロペニルベンゼン(東京化成社製)150gを内温が80℃を超えないように滴下速度を制御して滴下した。滴下後内温が70℃に下がるまで撹拌した。その後、1,3-ジイソプロペニルベンゼン(東京化成社製)150gを同様に滴下し、滴下終了後さらに2時間反応させた。反応終了時にトルエン433gを添加し、濾過により活性白土を取り除いた。濾液を加熱減圧下にて溶剤を留去することにより、231gの固形樹脂を得た。
得られた樹脂(A)のMwは2674であり、Mnは1153であり、Mw/Mnは2.3であり、式(Tx)において、パラメーターαは0.71であり、パラメーターβは0.50であり、n+o+pは6.3であった。(a)、(b)、(c)で示される括弧内の構造はすべて同一の分子量であり、合成された樹脂のMnを平均分子量と仮定してn+o+pを算出した。また、GPC分析により、残存モノマーが1質量%以下であることを確認した。
得られた樹脂について、
図1にNMRチャートを示した。
【0223】
<合成例2 末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B1)>
<<2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成>>
撹拌装置、温度計、空気導入管、および、じゃま板のついた12Lの縦長反応器に、CuBr29.64g(43.2mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.86g(10.8mmol)、n-ブチルジメチルアミン69.83g(690.1mmol)、トルエン2,600gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、予め2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェノール)-4,4’-ジオール129.3g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.26g(7.3mmol)、n-ブチルジメチルアミン27.19g(268.7mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8体積%に調整した混合ガスを5.2L/分の流速でバブリングを行いながら、230分かけて滴下し、撹拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水溶液1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50質量%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「B0」)のトルエン溶液を1980g得た。樹脂「B0」のGPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量は2100、GPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量は3740、水酸基当量は1070であった。
【0224】
<<変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成>>
2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(B0)の50質量%トルエン溶液792gをエバポレーターで乾固後、N,N-ジメチルアセトアミド2772gを加え、固形分が20質量%になるまで濃縮を行い、2官能フェニレンエーテルオリゴマー体のN,N-ジメチルアセトアミド79.80質量%、トルエン0.20質量%溶液(B0)1980gを得た。次に、攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に、2官能フェニレンエーテルオリゴマー体溶液(B0)1980g(OH当量で0.37mol)、クロロメチルスチレン(CMS-P)67.78g(0.44mol)を仕込み、50℃に加熱攪拌した。反応温度を50℃に保ちながらナトリウムメトキシドのメタノール溶液(濃度:28.4質量%)84.48g(0.44mol)を滴下し、1時間攪拌した。さらにナトリウムメトキシドのメタノール溶液(濃度:28.4質量%)9.75g(0.05mol)を滴下し、2時間攪拌した。その後、85質量%のリン酸水溶液を5.91g(0.05mol)加え、生成した無機塩を除去した後、反応溶液を1975gの水に滴下することで固形化し、遠心分離機で、固液分離を行った後、純水およびメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して目的とするポリフェニレンエーテル化合物(B1)381.87gを得た。変性ポリフェニレンエーテル化合物のGPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量は2350、重量平均分子量は3880、ビニル基当量は1220g/ビニル基であった。
【0225】
実施例1~3、比較例1、参考例2、参考例3
上記合成例1で得られた樹脂(A)と合成例2で得られた末端に炭素-炭素不飽和二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B1)とを表1に示す割合で、メチルエチルケトンおよびトルエンで溶解させて混合し、ワニスを得た。表中の各成分の割合は固形分量での値を示す。
【0226】
<厚さ1.0mmの硬化板の試験片の製造>
各実施例および比較例で得られたワニスから溶剤を蒸発留去することで、樹脂組成物粉末を得た。得られた樹脂組成物の粉末を用いて、以下のようにして硬化板を作製した。ステンレス製の金型100mm×30mm×1.0mm高の枠に樹脂組成物の粉末を4.5g敷き詰め、真空プレス機(北川精機株式会社製)にセットして、200℃で1.5時間保持、面圧1.9MPaでプレスを行った。
得られた樹脂組成物の粉末または硬化板を用いて、最低溶融粘度、(最低溶融温度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度、成形性、最低溶融温度、ガラス転移温度、比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0227】
<測定方法および評価方法>
(1)最低溶融粘度、および、(最低溶融温度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度
各実施例および比較例で得られた樹脂組成物の粉末は、GC測定(GC-2025、株式会社島津製作所製)により残溶剤量が1質量%以下であることを確認した後、1g採って直径25mmの錠剤に成形して測定用サンプルを作製し、粘弾性測定装置(ARES-G2、TAインスツルメント株式会社製)を用いて、昇温温度2℃/min、周波数10rad/sの条件で測定して、最低溶融粘度(Pa・s)、および、(最低溶融温度+10℃)の粘度を求めた。
最低溶融粘度は、以下の通り評価した。
A:20,000Pa・s以下
B:20,000Pa・s超100,000Pa・s以下
C:100,000Pa・s超
また、(最低溶融温度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度の値を算出した。以下の通り評価した。
A:20倍以下
B:20倍超80倍以下
C:80倍超
【0228】
(2)成形性
成形性は、以下の通り評価した。
A:上記最低溶融粘度と(最低溶融粘度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度の値の評価結果が共にAである。
B:上記最低溶融粘度と(最低溶融粘度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度の値の評価結果がAまたはBであり、少なくとも一方はBである。
C:上記最低溶融粘度と(最低溶融粘度+10℃)の粘度÷最低溶融粘度の値の評価結果にCが含まれる。
【0229】
(3)最低溶融温度
最低溶融粘度に達した時の温度を最低溶融温度とした。
単位は、℃で示した。
【0230】
(4)ガラス転移温度
前記硬化板を12.7mm×30mmにダウンサイジングしたサンプルについて、動的粘弾性測定装置を用い、JIS C6481 5.17.2に準拠して、DMA(動的機械分析:Dynamic Mechanical Analysis)曲げ法により測定を行い、得られた損失弾性率のピーク温度をガラス転移温度とした。単位は、℃で示した。
動的粘弾性分析装置は、DMA Q800、TAインスツルメント株式会社製を用いた。
【0231】
(5)比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)
前記硬化板を幅1.0mmにダウンサイジングした後に、120℃で、60分間乾燥させた後、摂動法空洞共振器を用いて、10GHzにおける乾燥後の比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。測定温度は23℃とした。
摂動法空洞共振器は、アジレントテクノロジー社製、Agilent8722ESを用いた。
【0232】
【0233】
実施例4
上記合成例1で得られた樹脂(A)15質量部とポリフェニレンエーテル化合物(B2)(ポリフェニレンエーテル化合物(B2):Noryl SA9000、下記に構造を示す化合物、SABICジャパン合同会社製、ビニル基の二重結合当量1011g/eq.)85質量部、および、硬化促進剤として、パーブチルP(1,3-ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、日油社製)1.5質量部を、メチルエチルケトンおよびトルエンで溶解させて混合し、ワニスを得た。上述の各成分の配合量は固形分量を示す。
得られたワニスを用いて実施例1と同様に評価した。結果を表2に示した。
【化64】
【0234】
比較例2
ポリフェニレンエーテル化合物(B2)100質量部とパーブチルP1.5質量部を、メチルエチルケトンおよびトルエンで溶解させて混合し、ワニスを得た。上述の各成分の配合量は固形分量を示す。
得られたワニスを用いて実施例1と同様に評価した。結果を表2に示した。
【0235】
前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の数平均分子量(Mn)が500~3000であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が800~6000である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
前記樹脂(A)と前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の含有量の質量比が、樹脂(A)/ポリフェニレンエーテル化合物(B)=5/95~45/55である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
前記他の化合物(C)が、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、(メタ)アリル基を含む化合物、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、アリールシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ペルフルオロビニルエーテル樹脂、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外のスチレン基を有する化合物、前記インダン骨格を有する樹脂(A)以外のイソプロペニル基を有する化合物、前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)以外の多官能(メタ)アクリレート化合物、エラストマー、ならびに、石油樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
前記樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対する、前記樹脂(A)および前記ポリフェニレンエーテル化合物(B)の合計含有量が40質量部以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。