(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061811
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】キャリア付金属箔
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240426BHJP
H05K 3/46 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
B32B9/00 A
H05K3/46 S
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037955
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2021575712の分割
【原出願日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2020016841
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】北畠 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】小出 将大
(72)【発明者】
【氏名】石井 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宜範
(57)【要約】
【課題】金属層表面の異物粒子数を抑制して回路形成性を向上し、かつ、240℃以上の高温(例えば260℃)で長時間加熱された後においても、安定した剥離性を保持することが可能な、キャリア付金属箔を提供する。
【解決手段】キャリアと、キャリア上に設けられ、金属酸窒化物を含む、剥離機能層と、剥離機能層上に設けられる金属層とを備えた、キャリア付金属箔。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、
前記キャリア上に設けられ、金属酸窒化物を含む、剥離機能層と、
前記剥離機能層上に設けられる金属層と
を備えた、キャリア付金属箔。
【請求項2】
前記金属酸窒化物が、TaON、NiON、TiON、NiWON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のキャリア付金属箔。
【請求項3】
前記剥離機能層が、
前記キャリア上に設けられ、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を含む密着層と、
前記密着層上に設けられ、TaON、NiON、TiON、NiWON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸窒化物を含む剥離層と、
を含む、請求項1又は2に記載のキャリア付金属箔。
【請求項4】
前記密着層が、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を30原子%以上含む、請求項3に記載のキャリア付金属箔。
【請求項5】
前記密着層の厚さT1が5nm以上400nm以下である、請求項3又は4に記載のキャリア付金属箔。
【請求項6】
前記剥離層は、X線光電子分光法(XPS)により測定される、前記金属酸窒化物を構成する金属成分に対するOの原子比率が4%以上であり、かつ、前記金属酸窒化物を構成する金属成分に対するNの原子比率が20%以上である、請求項3~5のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項7】
前記剥離層の厚さT2が1nm以上150nm以下である、請求項3~6のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項8】
前記剥離層の厚さT2に対する前記密着層の厚さT1の比であるT1/T2が0.03以上400以下である、請求項3~7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項9】
前記キャリアが、ガラス、シリコン、又はセラミックスで構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項10】
前記金属層がCu、Au及びPtからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は合金で構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【請求項11】
前記金属層の厚さT3が10nm以上1000nm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア付金属箔に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の実装密度を上げて小型化するために、プリント配線板の多層化が広く行われるようになってきている。このような多層プリント配線板は、携帯用電子機器の多くで、軽量化や小型化を目的として利用されている。そして、この多層プリント配線板には、層間絶縁層の更なる厚みの低減、及び配線板としてのより一層の軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満たす技術として、コアレスビルドアップ法を用いた多層プリント配線板の製造方法が採用されている。コアレスビルドアップ法とは、いわゆるコア基板を用いることなく、絶縁層と配線層とを交互に積層(ビルドアップ)して多層化する方法である。コアレスビルドアップ法においては、支持体と多層プリント配線板との剥離を容易に行えるように、キャリア付金属箔を使用することが提案されている。例えば、特許文献1(特開2005-101137号公報)には、キャリア付銅箔のキャリア面に絶縁樹脂層を貼り付けて支持体とし、キャリア付銅箔の極薄銅層側にフォトレジスト加工、パターン電解銅めっき、レジスト除去等の工程により第一の配線導体を形成した後、絶縁材料を積層して熱プレス加工を行う等してビルドアップ配線層を形成し、キャリア付支持基板を剥離し、極薄銅層を除去することを含む、半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法が開示されている。
【0004】
このような多層プリント配線板の製造工程においては、絶縁材料を積層するたびに熱プレス加工を行うため、キャリア付金属箔は高温で長時間加熱されることになる。また、この熱プレス加工の加熱温度は積層する絶縁材料の硬化温度に依存するため、その温度は絶縁材料の種類によって異なる。この点、熱プレス加工の加熱温度が高温になるほど、剥離強度が過度に上昇して剥離性が失われることが知られている。
【0005】
加熱に伴う剥離強度の上昇に対処可能なキャリア付金属箔として、金属酸化物及び炭素を含む剥離層を設ける手法が提案されている。例えば、特許文献2(国際公開第2019/131000号)には、キャリア、所定の金属で構成される中間層、金属酸化物層と炭素層とを含む剥離層、所望により設けられるエッチングストッパー層、及び極薄銅層を順に備えたキャリア付銅箔が開示されており、上記所定の剥離層を設けることで、350℃以上の高温で長時間加熱された後においても、安定した剥離性を保持することが可能になるとされている。また、この文献には、キャリア付銅箔における極薄銅層等の厚さの更なる低減を実現するために、中間層、炭素層、極薄銅層等をスパッタリングで形成することも記載されている。
【0006】
また、キャリア付金属箔が金属酸化物層を備えることで、剥離強度が安定化することも知られている。例えば、特許文献3(特開2017-88970号公報)には、キャリア、ニッケルを含む中間層、極薄銅層をこの順に有するキャリア付銅箔において、中間層形成後、極薄銅層形成前に、中間層を30~100℃の条件下で1~300秒間乾燥させることで、ニッケルの表面に酸化層(NiO2)を形成することが開示されている。特許文献3によれば、かかるキャリア付銅箔の極薄銅層側を絶縁基板上に貼り合わせて、220℃×2時間の圧着を行った後における剥離強度のばらつきが良好に抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-101137号公報
【特許文献2】国際公開第2019/131000号
【特許文献3】特開2017-88970号公報
【発明の概要】
【0008】
上述のとおり、多層プリント配線板の製造工程においては、層間絶縁材料を積層するたびに基板が加熱されるため、キャリア付金属箔は例えば240℃以上という高温での耐熱性を有することが望まれる。この点、特許文献3に開示されるNi及びNiO2を含む中間層を備えたキャリア付金属箔は、上述のとおり220℃程度の熱プレス温度では剥離強度が低いレベルで安定するものの、240℃以上といったような更なる高温での熱プレス加工に対応するものではない。
【0009】
一方、特許文献2に開示されるように、金属酸化物層と炭素層とを含む剥離層を備えたキャリア付金属箔を用いることで、高温で長時間加熱された後においても、安定した剥離性を保持することができる。しかしながら、剥離層として炭素層を形成し、その上に金属層を形成した場合、金属層表面の異物粒子が、炭素層を形成しない場合(例えばガラスキャリア上に直接金属層を形成する場合)と比べて増加することが判明した。この異物粒子は、後工程の回路形成に影響を及ぼすことが懸念される。したがって、耐熱性を保持しつつ、異物粒子数を抑制できるキャリア付金属箔が求められている。
【0010】
本発明者らは、今般、キャリア付金属箔のキャリアと金属層との間に、所定の金属酸窒化物を含む剥離機能層を介在させることにより、金属層表面の異物粒子数を抑制して回路形成性を向上し、かつ、240℃以上の高温(例えば260℃)で長時間加熱された後においても、安定した剥離強度を保持することが可能な、キャリア付金属箔を提供できるとの知見を得た。
【0011】
したがって、本発明の目的は、金属層表面の異物粒子数を抑制して回路形成性を向上し、かつ、240℃以上の高温(例えば260℃)で長時間加熱された後においても、安定した剥離性を保持することが可能な、キャリア付金属箔を提供することにある。
【0012】
本発明の一態様によれば、
キャリアと、
前記キャリア上に設けられ、金属酸窒化物を含む、剥離機能層と、
前記剥離機能層上に設けられる金属層と
を備えた、キャリア付金属箔が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のキャリア付金属箔の一態様を示す模式断面図である。
【
図2】本発明にキャリア付金属箔の他の一態様を示す模式断面図である。
【
図3】実施例における例11(比較)のキャリア付金属箔の層構成を示す模式断面図である。
【
図4】炭素層の有無による、金属層表面の異物粒子数の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
キャリア付金属箔
本発明のキャリア付金属箔の一例が
図1及び2に模式的に示される。
図1及び2に示されるように、本発明のキャリア付金属箔10は、キャリア12と、剥離機能層14と、金属層16とをこの順に備えたものである。剥離機能層14はキャリア12上に設けられ、金属酸窒化物を含む層である。金属層16は剥離機能層14上に設けられる層である。このように、キャリア付金属箔10のキャリア12と金属層16との間に、金属酸窒化物を含む剥離機能層14を介在させることにより、金属層16表面の異物粒子数を抑制して回路形成性を向上し、かつ、240℃以上の高温(例えば260℃)で長時間加熱された後においても、安定した剥離強度を保持することが可能な、キャリア付金属箔を提供することができる。
【0015】
上述のとおり、特許文献3に開示されるような、Ni及びNiO
2を含む中間層を備えたキャリア付金属箔は、220℃程度の熱プレス温度では剥離強度が低いレベルで安定するものの、240℃以上といったような高温での熱プレス加工に対応するものではない。一方、特許文献2に開示されるように、金属酸化物層と炭素層とを含む剥離層を備えたキャリア付金属箔を用いることで、高温で長時間加熱された後においても、安定した剥離性を保持することができる。しかしながら、本発明者らの知見によれば、剥離層が炭素層を含むことにより、後工程の回路形成に影響を及ぼすことが懸念される。すなわち、本発明者らが調査した結果、剥離層として炭素層を形成し、その上に金属層を形成した場合、金属層表面の異物粒子数が、炭素層を形成しない場合と比べて増加することを突き止めた。一例として、
図3に示されるように、ガラスで構成されるキャリア112、Tiで構成される密着層114、Cuで構成される剥離補助層116、剥離層としての炭素層118、Tiで構成される第2金属層120、及びCuで構成される第1金属層122をこの順に備えたキャリア付金属箔110、並びにガラスで構成されるキャリア112上にCuで構成される第1金属層122を形成したキャリア付金属箔110’における、第1金属層122表面に存在する1平方センチメートルあたりの異物粒子(粒子径5μm以上)の数が
図4に示される。なお、
図4において、左側の棒グラフが炭素層118を有しない上記キャリア付金属箔110’の異物粒子数を表し、右側の棒グラフが炭素層118を有する上記キャリア付金属箔110の異物粒子数を表す。
図4から明らかなように、炭素層118を有するキャリア付金属箔110は、炭素層118を有しないキャリア付金属箔110’と比べて、3倍以上の異物粒子が第1金属層122表面に存在することが分かる。そして、この異物粒子は、後工程の回路形成に影響を及ぼすことが懸念される。
【0016】
これに対して、本発明のキャリア付金属箔10は、炭素層に代えて、金属酸窒化物を含む剥離機能層14を備える。このため、キャリア付金属箔10は、金属層16表面の異物粒子数の増加を効果的に抑制することができ、結果として後工程の回路形成を良好に行うことができると考えられる。そうでありながらも、金属酸窒化物を含む剥離機能層14を備えたキャリア付金属箔10は、240℃以上の高温(例えば260℃)で長時間加熱された後においても、安定した剥離強度を保持することができる。すなわち、剥離機能層14が金属酸窒化物を含むことで、加熱に伴う剥離強度の過度な上昇を抑制することができると考えられる。剥離強度の具体的な指標としては、260℃で2時間30kgf/cm2の圧力でプレスした後、3gf/cm以上50gf/cm未満であるのが好ましく、より好ましくは3gf/cm以上30gf/cm未満である。
【0017】
キャリア12の材質はガラス、セラミックス、シリコン、樹脂、及び金属のいずれであってもよい。好ましくは、キャリア12は、ガラス、シリコン又はセラミックスで構成される。キャリア12の形態はシート、フィルム及び板のいずれであってもよい。また、キャリア12はこれらのシート、フィルム及び板等が積層されたものであってもよい。例えば、キャリア12はガラス板、セラミックス板、シリコンウェハ、金属板等といった剛性を有する支持体として機能しうるものであってもよいし、金属箔や樹脂フィルム等といった剛性を有しない形態であってもよい。キャリア12を構成する金属の好ましい例としては、銅、チタン、ニッケル、ステンレススチール、アルミニウム等が挙げられる。セラミックスの好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、その他各種ファインセラミックス等が挙げられる。樹脂の好ましい例としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK(登録商標))、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等が挙げられる。より好ましくは、電子素子を搭載する際の加熱に伴うコアレス支持体の反り防止の観点から、熱膨張係数(CTE)が25ppm/K未満(典型的には1.0ppm/K以上23ppm/K以下)の材料であり、そのような材料の例としては、上述したような各種樹脂(特にポリイミド、液晶ポリマー等の低熱膨張樹脂)、ガラス、シリコン及びセラミックス等が挙げられる。また、ハンドリング性やチップ実装時の平坦性確保の観点から、キャリア12はビッカース硬度が100HV以上であるのが好ましく、より好ましくは150HV以上2500HV以下である。これらの特性を満たす材料として、キャリア12はガラス、シリコン又はセラミックスで構成されるのが好ましく、より好ましくはガラス又はセラミックスで構成され、特に好ましくはガラスで構成される。ガラスから構成されるキャリア12としては、例えばガラス板が挙げられる。ガラスをキャリア12として用いた場合、軽量で、熱膨脹係数が低く、絶縁性が高く、剛直で表面が平坦なため、金属層16の表面を極度に平滑にできる等の利点がある。また、キャリア12がガラスである場合、微細回路形成に有利な表面平坦性(コプラナリティ)を有している点、配線製造工程におけるデスミアや各種めっき工程において耐薬品性を有している点、キャリア付金属箔10からキャリア12を剥離する際に化学的分離法が採用できる点等の利点がある。キャリア12を構成するガラスの好ましい例としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくは無アルカリガラス、ソーダライムガラス、及びそれらの組合せであり、特に好ましくは無アルカリガラスである。無アルカリガラスは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、及び酸化カルシウムや酸化バリウム等のアルカリ土類金属酸化物を主成分とし、更にホウ酸を含有する、アルカリ金属を実質的に含有しないガラスのことである。この無アルカリガラスは、0℃から350℃までの広い温度帯域において熱膨脹係数が3ppm/K以上5ppm/K以下の範囲で低く安定しているため、加熱を伴うプロセスにおけるガラスの反りを最小限にできるとの利点がある。キャリア12の厚さは100μm以上2000μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以上1800μm以下、さらに好ましくは400μm以上1100μm以下である。このような範囲内の厚さであると、ハンドリングに支障を来さない適切な強度を確保しながら配線の薄型化、及び電子部品搭載時に生じる反りの低減を実現することができる。
【0018】
キャリア12の剥離機能層14に隣接する側の表面は、レーザー顕微鏡を用いてJIS B 0601-2001に準拠して測定される、0.1nm以上70nm以下の算術平均粗さRaを有するのが好ましく、より好ましくは0.5nm以上60nm以下、さらに好ましくは1.0nm以上50nm以下、特に好ましくは1.5nm以上40nm以下、最も好ましくは2.0nm以上30nm以下である。このようにキャリア12表面の算術平均粗さが小さいほど、金属層16の剥離機能層14と反対側の表面(金属層16の外側表面)において望ましく低い算術平均粗さRaをもたらすことができ、それにより、金属層16を用いて形成される配線において、ライン/スペース(L/S)が13μm以下/13μm以下(例えば12μm/12μmから2μm/2μmまで)といった程度にまで高度に微細化された配線パターンを形成するのに適したものとなる。
【0019】
剥離機能層14は、キャリア12と金属層16との間に介在して、キャリア12の安定的な剥離に寄与する層である。240℃以上の高温(例えば260℃)で長時間加熱された後においても、安定した剥離強度を保持する点から、剥離機能層14は、金属酸窒化物を含む層であり、好ましくはTaON、NiON、TiON、NiWON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸窒化物を含み、より好ましくはTaON 、NiON、TiON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくはTaON、NiON及びTiONからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはTaON及びTiONからなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、剥離機能層14は、キャリア12と金属層16との密着性を確保する点から、キャリア12側の表面が、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、より好ましくはTi、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくはTi、Ni、Al、Mo、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはTi、Al及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を含む。剥離機能層14のキャリア12側の表面における上記金属ないし金属窒化物の含有率は30原子%以上であり、好ましくは40原子%以上、より好ましくは50原子%以上、さらに好ましくは60原子%以上、特に好ましくは70原子%以上、最も好ましくは80原子%以上である。上記金属ないし金属窒化物の含有率の上限は特に限定されず、100原子%であってもよいが、98原子%以下であるのが典型的である。上記金属ないし金属窒化物は、キャリア12の材質との相性が良く、密着性を確保することができる。含有率を上記範囲に制御することで、高温で長時間加熱された後においても安定した密着性を確保できるため好ましい。これらの含有率はX線光電子分光法(XPS)で分析することにより測定される値とする。
【0020】
一方、上記同様の観点から、剥離機能層14のキャリア12と反対側(すなわち金属層16側)の表面は、TaON 、NiON、TiON、NiWON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸窒化物を含むのが好ましく、より好ましくはTaON、NiON、TiON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくはTaON 、NiON及びTiONからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはTaON及びTiONからなる群から選択される少なくとも1種を含む。本発明において、金属酸窒化物は、金属酸窒化物を構成する金属成分(例えば、金属酸窒化物がTaONである場合にはTa)に対してO及びNをそれぞれ任意の割合で含んでいてよい。換言すれば、本発明における金属酸化物は、一般式:MOxNy(式中、MはTa、Ni、Ti、NiW、Mo等の金属成分であり、x及びyはそれぞれ独立して0を超える実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、剥離機能層14のキャリア12と反対側の表面は、金属酸窒化物を構成する金属成分に対するOの原子比率が4%以上(より好ましくは5%以上120%以下)であるのが好ましく、金属酸窒化物を構成する金属成分に対するNの原子比率が20%以上(より好ましくは25%以上45%以下)であるのが好ましい。剥離機能層14のキャリア12と反対側の表面は、金属酸窒化物を構成する金属成分の含有率が20原子%以上80原子%以下であるのが好ましく、より好ましくは25原子%以上75原子%以下、さらに好ましくは30原子%以上70原子%以下、特に好ましくは35原子%以上68原子%以下である。
【0021】
剥離機能層14は炭素層(すなわち主成分がカーボンで構成される層)を含まないのが、金属層16表面における異物粒子数を効果的に抑制できる点で好ましい。ただし、剥離機能層14は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。また、特に制限されるものではないが、剥離機能層14の成膜後に大気に暴露される場合、それに起因して不可避的に混入する二酸化炭素等の存在は許容される。上記観点から、剥離機能層14は、XPSにより測定される炭素含有率が検出下限値以下であっても良いが、3原子%以下であるのが典型的であり、より典型的には1原子%以下である。なお、XPSによる最表面(深さ0nm)の測定値は、大気に暴露した際の汚れ等により、炭素含有率が高くなる傾向があるので、剥離機能層14における上記炭素含有率は表面(すなわち剥離機能層14のキャリア12と反対側の表面)から深さ2nmの位置(SiO2スパッタレート換算)における値とする。剥離機能層14は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により形成された層であるのが膜厚分布の均一性を向上できる点で特に好ましい。
【0022】
剥離機能層14の厚さは、5nm以上500nm以下であるのが好ましく、より好ましくは10nm以上400nm以下、さらに好ましくは20nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上100nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0023】
剥離機能層14は
図1に示されるように1層構成であってもよいし、
図2に示されるように2層以上の構成であってもよい。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、剥離機能層14は、
図2に示されるように、密着層14aと剥離層14bとを含む。
【0025】
密着層14aは、キャリア12と剥離機能層14との界面の密着性を相対的に向上させることにより、剥離機能層14と金属層16との界面から安定した剥離を起こさせる機能を有する。密着層14aは、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を含む層であるのが好ましく、より好ましくはTi、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくはTi、Ni、Al、Mo、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはTi、Al及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を含む層である。密着層14aは、X線光電子分光法(XPS)により測定される上記金属ないし金属窒化物の含有率が30原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは40原子%以上、さらに好ましくは50原子%以上、さらにより好ましくは60原子%以上、特に好ましくは70原子%以上、最も好ましくは80原子%以上である。密着層14aにおける上記金属ないし金属窒化物の含有率の上限値は特に限定されず100原子%であってもよいが、98原子%以下が現実的である。また、特に制限されるものではないが、密着層14aの成膜後に大気に暴露される場合、それに起因して混入する酸素の存在は許容される。密着層14aは、X線光電子分光法(XPS)により測定される酸素含有率が0.1原子%以上10原子%以下であるのが典型的であり、より典型的には0.3原子%以上7原子%以下、さらに典型的には0.5原子%以上5原子%以下である。密着層14aは、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により形成された層であるのが膜厚分布の均一性を向上できる点で特に好ましい。密着層14aの厚さT1は5nm以上400nm以下であるのが好ましく、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上200nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0026】
剥離層14bは、密着層14a上に設けられ、TaON、NiON、TiON、NiWON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸窒化物を含む層であるのが好ましく、より好ましくはTaON、NiON、TiON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくはTaON 、NiON及びTiONからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはTaON及びTiONからなる群から選択される少なくとも1種を含む層である。剥離層14bは、X線光電子分光法(XPS)により測定される、金属酸窒化物を構成する金属成分に対するOの原子比率が4%以上(より好ましくは5%以上120%以下)であるのが好ましく、金属酸窒化物を構成する金属成分に対するNの原子比率が20%以上(より好ましくは25%以上45%以下)であるのが好ましい。また、剥離層14bは、X線光電子分光法(XPS)により測定される、金属酸窒化物を構成する金属成分の含有率が20原子%以上80原子%以下であるのが好ましく、より好ましくは25原子%以上75原子%以下、さらに好ましくは30原子%以上70原子%以下、特に好ましくは35原子%以上68原子%以下である。剥離層14bは原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。剥離層14bは、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、金属ターゲット又は金属窒化物ターゲットを用い、酸素及び/又は窒素を含む雰囲気下でスパッタリングを行う反応性スパッタリング法により形成された層であるのが、成膜時間の調整によって膜厚を容易に制御可能な点から好ましい。また、密着層14aの表面に対して、市販のプラズマアッシング装置を用いて、酸素プラズマ及び/又は窒素プラズマ中で処理を行うことにより、剥離層14bを形成してもよい。さらに、密着層14aが金属窒化物(すなわちTiN及び/又はTaN)を含む場合には、真空中で形成した密着層14aを酸化性雰囲気(例えば大気)に暴露することにより、剥離層14bを作製することもできる。
【0027】
剥離層14bの厚さT2は1nm以上150nm以下であるのが好ましく、より好ましくは3nm以上130nm以下、さらに好ましくは10nm以上120nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。剥離層14bは、従来のカーボンで構成される剥離層(炭素層)よりも厚く形成することが可能である。この点、剥離層14bの厚さT2が大きくなる(例えばT2が50nm以上)ことで、剥離層14bがエッチングストッパー層としての機能を担うことも可能となる。すなわち、剥離層14bを構成する上記金属酸窒化物は、フラッシュエッチング液(例えばCuフラッシュエッチング液)に対して溶解しにくいという性質を有し、その結果、フラッシュエッチング液に対して優れた耐薬品性を呈することができる。したがって、剥離層14bは、後述する金属層16よりもフラッシュエッチング液によってエッチングされにくい層となり、それ故エッチングストッパー層としても機能しうる。
【0028】
剥離層14bの厚さT2は、後述する実施例に記載される諸条件に従って、X線光電子分光法(XPS)によりキャリア付金属箔10の深さ方向元素分析を行うことにより、特定することができる。なお、XPSを用いた深さ方向元素分析では、同じエッチング条件を用いた場合であっても、材料の種類によってエッチング速度が異なるため、剥離層14bの厚さT2そのものの数値を得ることは困難である。そのため、上記厚さT2は、膜厚が既知であるSiO2膜から算出したエッチング速度を利用して、エッチングに要した時間から算出したSiO2換算の厚さを使用するものとする。こうすることで、厚さを一義的に定めることができるため、定量的な評価が可能となる。
【0029】
キャリア付金属箔10は、剥離層14bの厚さT2に対する密着層14aの厚さT1の比であるT1/T2が0.03以上400以下であるのが好ましく、より好ましくは0.07以上300以下、さらに好ましくは0.1以上200以下、特に好ましくは0.38以上100以下である。T1/T2を上記範囲内とすることで、例えば100℃以上260℃以下といった高温の範囲を含む幅広い温度域での熱処理を施した場合であっても、剥離機能層14が有する剥離機能の低下を抑制することができる。密着層14a及び剥離層14bの厚さの比が剥離性に影響を及ぼすメカニズムは必ずしも定かではないが、上記厚さの比を変化させることで、加熱時におけるキャリア付金属箔10の各層を構成する元素の拡散挙動に変化が生じることによるものと考えられる。
【0030】
金属層16は金属で構成される層である。金属層16は、第4族、第5族、第6族、第9族、第10族及び第11族の遷移元素並びにAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は合金で構成されるのが好ましく、より好ましくは第4族及び第11族の遷移元素、Pt、Al、Nb、Co、Ni並びにMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は合金、さらに好ましくは第11族の遷移元素、Pt、Ti、Al及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は合金、さらにより好ましくはCu、Au、Pt、Ti及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は合金、特に好ましくはCu、Au及びPtからなる群から選択される少なくとも1種の金属又は合金、最も好ましくはCuで構成される。金属層16を構成する上記金属は、純金属であってもよいし、合金であってもよい。金属層16は、X線光電子分光法(XPS)により測定される上記金属の含有率が60原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは80原子%以上、特に好ましくは90原子%以上である。また、金属層16における上記金属の含有率の上限値は特に限定されず、100原子%であってもよいが、98原子%以下が典型的である。金属層16を構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不可避不純物を含んでいてもよい。金属層16はスパッタリング等の気相法により形成された層であるのが好ましい。金属層16は、無粗化の金属層であるのが好ましいが、プリント配線板製造時の配線パターン形成に支障を来さないかぎり予備的粗化やソフトエッチング処理や洗浄処理、酸化還元処理により二次的な粗化が生じたものであってもよい。金属層16の厚さT3は10nm以上1000nm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは20nm以上900nm以下、さらに好ましくは30nm以上700nm以下、特に好ましくは50nm以上600nm以下、特により好ましくは70nm以上500nm以下、最も好ましくは100nm以上400nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。このような範囲の厚さの金属層16の製造は、スパッタリング法により行われることが成膜厚さの面内均一性や、シート状やロール状での生産性の観点で好ましい。
【0031】
金属層16の剥離機能層14と反対側の表面(金属層16の外側表面)が、JIS B 0601-2001に準拠して測定される、1.0nm以上100nm以下の算術平均粗さRaを有するのが好ましく、より好ましくは2.0nm以上40nm以下、さらに好ましくは3.0nm以上35nm以下、特に好ましくは4.0nm以上30nm以下、最も好ましくは5.0nm以上15nm以下である。このように算術平均粗さが小さいほど、キャリア付金属箔10を用いて製造されるプリント配線板において、ライン/スペース(L/S)が13μm以下/13μm以下(例えば12μm/12μmから2μm/2μmまで)といった程度にまで高度に微細化された配線パターンの形成を形成するのに適したものとなる。
【0032】
金属層16は、1層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。また、キャリア付金属箔10は、キャリア12と、剥離機能層14と、金属層16とをこの順に備えている限り、キャリア付金属箔10の本来の機能を損なわないかぎりにおいて、他の層が含まれていてもよい。このような他の層の一例としては、特許文献2(国際公開第2019/131000号)に示されるようなエッチングストッパー層や、金属層16を構成する金属(例えばAu又はPt)と金属層16上(すなわちキャリア付金属箔10のキャリア12と反対側の表面)に形成されうる配線層を構成する金属(例えばCu)との金属間化合物の形成を抑制するためのバリア層(例えばTi、Ta、Ni、W、Cr、Pd、又はそれらの組合せで構成される層)等が挙げられる。また、キャリア付金属箔10は、キャリア12の両面に上下対称となるように上述の各種層を順に備えてなる構成としてもよい。
【0033】
キャリア付金属箔10全体の厚さは特に限定されないが、好ましくは500μm以上3000μm以下、より好ましくは700μm以上2500μm以下、さらに好ましくは900μm以上2000μm以下、特に好ましくは1000μm以上1700μm以下である。キャリア付金属箔10の形状やサイズは特に限定されないが、好ましくは一辺が10cm以上、より好ましくは20cm以上、さらに好ましくは25cm以上の長方形又は正方形の形状である。キャリア付金属箔10を長方形又は正方形とした場合のサイズの上限は特に限定されないが、その一辺を1000cmとすることが上限の1つの目安として挙げられる。また、キャリア付金属箔10は、配線の形成前後において、それ自体単独でハンドリング可能な形態である。
【0034】
キャリア付金属箔の製造方法
本発明のキャリア付金属箔10は、上述したキャリア12を用意し、キャリア12上に、剥離機能層14(例えば密着層14a及び剥離層14b)及び金属層16を形成することにより製造することができる。剥離機能層14及び金属層16の各層の形成は、極薄化によるファインピッチ化に対応しやすい観点から、物理気相堆積(PVD)法により行われるのが好ましい。物理気相堆積(PVD)法の例としては、スパッタリング法、真空蒸着法、及びイオンプレーティング法が挙げられるが、0.05nmから5000nmまでといった幅広い範囲で膜厚制御できる点、広い幅ないし面積にわたって膜厚均一性を確保できる点等から、最も好ましくはスパッタリング法である。物理気相堆積(PVD)法による成膜は公知の気相成膜装置を用いて公知の条件に従って行えばよく特に限定されない。例えば、スパッタリング法を採用する場合、スパッタリング方式は、マグネトロンスパッタリング、2極スパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法等、公知の種々の方法であってよいが、マグネトロンスパッタリングが、成膜速度が速く生産性が高い点で好ましい。スパッタリングはDC(直流)及びRF(高周波)のいずれの電源で行ってもよい。また、ターゲット形状も広く知られているプレート型ターゲットを使用することができるが、ターゲット使用効率の観点から円筒形ターゲットを用いることが望ましい。以下、密着層14a、剥離層14b、及び金属層16の各層の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜について説明する。
【0035】
密着層14aの物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種の金属ないし金属窒化物で構成されるターゲットを用い、非酸化性雰囲気下でマグネトロンスパッタリングにより行われるのが膜厚分布均一性を向上できる点で好ましい。ターゲットの純度は99.9wt%以上が好ましい。スパッタリングに用いるガスとしては、アルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。アルゴンガス等の流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガス等の流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm2以上10.0W/cm2以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0036】
剥離層14bの物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、Ta、Ni、Ti、NiW、Mo、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種の金属ないし金属窒化物で構成されるターゲットを用い、酸素及び/又は窒素を含む雰囲気下で反応性スパッタリング法により行われるのが膜厚を容易に制御可能な点で好ましい。ターゲットの純度は99.9%以上が好ましい。スパッタリングに用いるガスとしては不活性ガス(例えばアルゴンガス)に加えて、金属酸窒化物を生じさせるためのガス(例えば酸素ガス、一酸化窒素ガス、及び二酸化窒素ガス)を含むのが好ましい。これらのガスの流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、異常放電などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上1.0Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、上記ガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm2以上15.0W/cm2以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0037】
金属層16の物理気相堆積(PVD)法(好ましくはスパッタリング法)による成膜は、第4族、第5族、第6族、第9族、第10族及び第11族の遷移元素、並びにAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成されるターゲットを用いてアルゴン等の不活性雰囲気下で行われるのが好ましい。ターゲットは純金属又は合金で構成されるのが好ましいが、不可避不純物を含みうる。ターゲットの純度は99.9%以上が好ましく、より好ましくは99.99%、さらに好ましくは99.999%以上である。金属層16の気相成膜時の温度上昇を避けるため、スパッタリングの際、ステージの冷却機構を設けてもよい。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、安定的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm2以上10.0W/cm2以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【実施例0038】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0039】
例1
図2に示されるように、キャリア12としてのガラスシート上に、剥離機能層14(密着層14a及び剥離層14b)、及び金属層16をこの順に成膜してキャリア付金属箔10を作製した。具体的な手順は以下のとおりである。
【0040】
(1)キャリアの準備
厚さ1.1mmのガラスシート(材質:ソーダライムガラス、算術平均粗さRa:0.6nm)を用意した。
【0041】
(2)密着層の形成
キャリア12上に密着層14aとして厚さ100nmのTaN層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTaNターゲット(純度99.95%以上)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0042】
(3)剥離層の形成
密着層14aが形成された試料を真空中から取り出し、5分間大気暴露することで、密着層14aの表面酸化処理(自然酸化)を行った。この表面酸化処理により、剥離層14bとしてTaON層を形成した。
【0043】
(4)金属層の形成
剥離層14b上に、金属層16として厚さ300nmのCu層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成して、キャリア付金属箔10を得た。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のCuターゲット(純度99.98%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0044】
例2
剥離層14bとして、大気暴露による密着層14aの表面酸化処理を行う代わりに、TiON層を以下のようにして反応性スパッタリングにより形成したこと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0045】
(TiON層の形成)
密着層14aの表面に、狙いの厚さが約100nmのTiON層を以下の装置及び条件で反応性スパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTiNターゲット(純度99.95%以上)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:90sccm)及び酸素ガス(流量:10sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:100W(0.3W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0046】
例3
(i)密着層14aとして、TaN層に代えて、Ti層を形成したこと、及び(ii)大気暴露による密着層14aの表面酸化処理を行う代わりに、TaON層を以下のようにして反応性スパッタリングにより形成したこと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0047】
(Ti層の形成)
キャリア12上に密着層14aとして厚さ100nmのTi層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTiターゲット(純度99.999%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0048】
(TaON層の形成)
密着層14aの表面に、狙いの厚さが約100nmのTaON層を以下の装置及び条件で反応性スパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTaNターゲット(純度99.98%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:90sccm)及び酸素ガス(流量:10sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:100W(0.3W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0049】
例4
密着層14aとして、TaN層に代えて、厚さ100nmのTi層を例3と同様の装置及び条件で形成したこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0050】
例5
密着層14aとして、Ti層に代えて、Al層を形成したこと以外は、例3と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0051】
(Al層の形成)
キャリア12上に密着層14aとして厚さ100nmのAl層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のAlターゲット(純度99.95%以上)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0052】
例6
密着層14aとして、TaN層に代えて、厚さ100nmのAl層を例5と同様の装置及び条件で形成したこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0053】
例7(比較)
剥離機能層14として、TaN層(密着層14a)及びTaON層(剥離層14b)に代えて、Ta層(密着層14a)のみを形成したこと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0054】
(Ta層の形成)
キャリア12上に密着層14aとして厚さ100nmのTa層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTaターゲット(純度99.98%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0055】
例8(比較)
剥離層14bとして、TiON層に代えて、Ta層を形成したこと以外は、例2と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0056】
(Ta層の形成)
密着層14a上に、剥離層14bとして厚さ100nmのTa層を以下の装置及び条件で反応性スパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式DCスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTaターゲット(純度99.98%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:100W(0.3W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0057】
例9(比較)
剥離層14bの形成を行わなかった(すなわち密着層14aの表面酸化処理を行わなかった)こと以外は、例1と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。
【0058】
例10(比較)
剥離層14bとして、TiON層に代えてTa/TaOx層を形成したこと以外は例2と同様にしてキャリア付金属箔10の作製を行った。具体的には、密着層14a上に厚さ100nmのTa層を例8と同様の装置及び条件で形成した。Ta層が形成された試料を真空中から取り出し、1分間大気暴露することで、Ta層の表面酸化処理(自然酸化)を行った。こうすることで、剥離層14bとしてTa/TaOx層を形成した。
【0059】
例11(比較)
図3に示されるように、キャリア112上に、剥離機能層(密着層114、剥離補助層116、及び剥離層としての炭素層118)、第2金属層120、及び第1金属層122をこの順に成膜してキャリア付金属箔110を作製した。具体的な手順は以下のとおりである。
【0060】
(1)キャリアの準備
厚さ1.1mmのガラスシート(材質:ソーダライムガラス、算術平均粗さRa:0.6nm)を用意した。
【0061】
(2)密着層の形成
キャリア112上に、密着層114として厚さ100nmのTi層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTiターゲット(純度99.999%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0062】
(3)剥離補助層の形成
密着層114上に、剥離補助層116として厚さ100nmのCu層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)の銅ターゲット(純度99.98%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(6.2W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0063】
(4)炭素層の形成
剥離補助層上に、炭素層118として厚み6nmのアモルファスカーボン層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)の炭素ターゲット(純度99.999%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:250W(0.7W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0064】
(5)第2金属層の形成
炭素層上に、第2金属層120として厚さ100nmのTi層を以下の装置及び条件でスパッタリングにより形成した。
‐ 装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のTiターゲット(純度99.999%)
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
【0065】
(6)第1金属層の形成
第2金属層上に、第1金属層122として厚さ300nmのCu層をスパッタリング法により形成した。このスパッタリングは以下の装置を用いて以下の条件で行った。
・装置:枚葉式マグネトロンスパッタリング装置(キヤノントッキ株式会社製、MLS464)
‐ ターゲット:直径8インチ(203.2mm)のCuターゲット(純度99.99%)
‐ 到達真空度:1×10-4Pa未満
‐ ガス:アルゴンガス(流量:100sccm)
‐ スパッタリング圧:0.35Pa
‐ スパッタリング電力:1000W(3.1W/cm2)
‐ 成膜時温度:40℃
【0066】
評価
例1~11のキャリア付金属箔について、以下に示されるとおり、各種評価を行った。評価結果は表1及び2に示されるとおりであった。また、表2には剥離機能層としての密着層(例11の場合は剥離補助層を含む)及び剥離層の組成も併せて示してある。
【0067】
<評価1:剥離層の半定量分析>
例1につき、作製したキャリア付金属箔10の深さ方向分析を以下の測定条件及び解析条件に基づきX線光電子分光法(XPS)により行った。この分析は、キャリア付金属箔10から金属層16を剥離した後、露出した剥離機能層14表面から深さ方向に向かって、以下の条件でArイオンエッチングによって掘り下げながら行った。
【0068】
(Arイオンエッチング条件)
‐ 加速電圧:500V
‐ エッチングエリア:2mm×2mm
‐ エッチング速度:SiO2換算で4.4nm/min
【0069】
(測定条件)
‐ 装置:X線光電子分光装置(アルバック・ファイ株式会社製、Versa ProbeIII)
‐ 励起X線:単色化Al-Kα線(1486.6eV)
‐ 出力:50W
‐ 加速電圧:15kV
‐ X線照射径:200μmφ
‐ 測定面積:200μmφ
‐ パスエネルギー:26.0eV
‐ エネルギーステップ:0.1eV
‐ 中和銃:有
‐ 測定元素及び軌道:(sweep数:Ratio:Cycle数)
C 1s:(3:6:1)
N 1s:(30:6:1)
O 1s:(5:6:1)
Cu 2p3:(2:6:1)
Ta 4d: (30:6:1)
【0070】
(解析条件)
データ解析ソフト(アルバック・ファイ株式会社製「マルチパックVer9.4.0.7」)を用いてXPSデータの解析を行った。スムージングは15点で行い、バックグラウンドモードはShirleyを使用した。なお、半定量算出における各元素のバックグラウンド範囲は以下のとおりである。
‐ C 1s:280.0~292.0eV
‐ N 1s(Ta 4p3を含む):392.0~410.0eV
‐ O 1s:528.0~540.0eV
‐ Cu 2p3:927.0~939.0eV
‐ Ta 4d:212.0~250.0eV
【0071】
ただし、N 1sピークはTa 4p3ピークと干渉するため、N 1sの半定量値は波形分離解析により求めたN 1sピーク面積から算出した。波形分離解析におけるN 1s及びTa 4p3のピーク位置のエネルギー範囲は以下のとおりである。また、波形分離解析におけるフィッティング関数はガウス関数を使用した。
‐ N 1s:395.9~398.2eV
‐ Ta 4p3(金属):399.5~400.5eV
‐ Ta 4p3(酸化物):404.11~405.11eV
【0072】
例1のキャリア付金属箔10における、深さ方向の半定量値の結果は表1に示されるとおりであった。表1から明らかなように、例1のキャリア付金属箔10では、剥離機能層14表面(スパッタ深さ0nm)から2.9nmの深さにわたって、TaON層を構成する金属成分(すなわちTa)に対するOの原子比率が4%以上であり、かつ、金属酸窒化物を構成する金属成分に対するNの原子比率が20%以上である領域が存在することが分かる。したがって、例1のキャリア付金属箔10におけるTaON層(剥離層14b)の厚さはSiO2換算で約3nmであると推定される。
【0073】
【0074】
<評価2:キャリア-金属層の剥離性>
キャリア付金属箔10、110における熱履歴としての真空熱プレスを行った後の剥離強度の測定を以下のように行った。キャリア付金属箔10、110の金属層16側又は第1金属層122側に、厚さ18μmのパネル電解銅めっきを施した後、熱履歴として260℃で2時間30kgf/cm2の圧力でプレスした。得られた銅張積層板に対して、JIS C 6481-1996に準拠して、金属層16又は第1金属層122と一体となった電気銅めっき層を剥離した時の剥離強度(gf/cm)を測定した。このとき、測定幅は50mmとし、測定長さは20mmとした。こうして得られた剥離強度(平均値)を以下の基準で格付け評価した。結果は表2に示されるとおりであった。
‐ 評価A:剥離強度が3gf/cm以上30gf/cm未満
‐ 評価B:剥離強度が30gf/cm以上50gf/cm未満
‐ 評価C:剥離強度が3gf/cm未満若しくは50gf/cm以上(剥離不可を含む)、又はキャリア-剥離機能層間で剥離が起こり評価不能
【0075】
<評価3:異物粒子数>
キャリア付金属箔10、110の金属層16側表面又は第1金属層122側表面の異物粒子数の測定を以下のように行った。まず、異物検査装置(東レエンジニアリング株式会社製、HS930)を使用し、所定の面積のキャリア付金属箔表面における異物粒子(粒子サイズ5μm以上)の合計数を測定した。次に、上記合計数を測定面積で割り、単位面積(1平方センチメートル)あたりの異物粒子数を算出した。なお、キャリア付金属箔の端部から10mmまでの領域は測定範囲外とした。こうして得られた単位面積あたりの5μm以上の異物粒子数を以下の基準で格付け評価した。結果は表2に示されるとおりであった。
‐ 評価A:1平方センチメートルあたりの5μm以上の異物粒子数が0.20未満
‐ 評価B:1平方センチメートルあたりの5μm以上の異物粒子数が0.20以上0.50未満
‐ 評価C:1平方センチメートルあたりの5μm以上の異物粒子数が0.50以上
【0076】
<総合評価>
評価2及び3の評価結果に基づいて総合評価を決定した。すなわち、評価2の評価結果が評価A又はBであり、かつ、評価3の評価結果が評価A又はBである場合を合格、それ以外の場合を不合格と判定した。結果は表2に示されるとおりであった。
【0077】