(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061813
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】身体温冷装置
(51)【国際特許分類】
A61F 7/10 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
A61F7/10 351
A61F7/10 352A
A61F7/10 330P
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038173
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2020094747の分割
【原出願日】2020-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 友一
(72)【発明者】
【氏名】小林 英久
(72)【発明者】
【氏名】段 彦昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍之介
(57)【要約】
【課題】利用者に継続的に冷感が得られること。
【解決手段】身体温冷装置1において、第2温度センサ202は、第2プレート12の温度であるネック温度NT2を検出し、制御部101は、第2ペルティエ素子14への通電を開始することにより第2プレート12が冷却されてネック温度NT2が目標温度TT以下に到達したときに第2ペルティエ素子14への通電を停止し、第2ペルティエ素子14への通電を停止することによりネック温度NT2が目標温度TTより高い上限温度UTに到達したときに第2ペルティエ素子14への通電を開始する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の頸部に接するように設けられたプレートと、
前記プレートを冷却するペルティエ素子と、
前記プレートの温度であるネック温度を検出する温度センサと、
前記ペルティエ素子への通電を開始することにより前記プレートが冷却されて前記ネック温度が目標温度以下に到達したときに前記ペルティエ素子への通電を停止し、前記ペルティエ素子への通電を停止することにより前記ネック温度が前記目標温度より高い上限温度に到達したときに前記ペルティエ素子への通電を開始する制御部と、
を具備する身体温冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、身体温冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルティエ素子を用いて利用者の身体を冷却または加熱することにより、利用者に冷感または温感を与える身体温冷装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-154181号公報
【特許文献2】特開2013-248293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一定の温度で利用者の身体を冷却し続けていると、利用者の感覚に慣れが生じることにより利用者は冷感を感じづらくなってしまうため、身体温冷装置の装着感が悪くなってしまう。一般には、一定の温度が約3秒以上続くと、利用者の感覚に慣れが生じると言われている。
【0005】
そこで、本開示では、利用者に継続的に冷感が得られる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の身体温冷装置は、利用者の頸部に接するように設けられたプレートと、前記プレートを冷却するペルティエ素子と、温度センサと、制御部とを有する。前記温度センサは、前記プレートの温度であるネック温度を検出する。前記制御部は、前記ペルティエ素子への通電を開始することにより前記プレートが冷却されて前記ネック温度が目標温度以下に到達したときに前記ペルティエ素子への通電を停止する。また、前記制御部は、前記ペルティエ素子への通電を停止することにより前記ネック温度が前記目標温度より高い上限温度に到達したときに前記ペルティエ素子への通電を開始する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、目標温度と、目標温度より高い上限温度とを用いて、通電開始時と通電停止時との一定の温度差を確保することで、利用者に継続的に冷感が得られるため、身体温冷装置の装着感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を正面側から示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を背面側から示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を示す正面図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を示す背面図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を示す側面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を示す下面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施例1における首掛け部材及び第1プレートを示す拡大図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施例1における首掛け部材を利用者が装着したときの右側頸部及び左側頸部と第1プレートとの位置関係を説明するための側面図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施例1における頸動脈三角を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材が有する流路を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施例1における首掛け部材が有する流路を示す模式図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施例1の身体温冷装置全体を説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施例2の身体温冷装置の構成例を示す模式図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施例2の身体温冷装置の処理例の説明に供するフローチャートである。
【
図17】
図17は、本開示の実施例2の身体温冷装置の動作例の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施例において同一の構成には同一の符号を付す。
【0010】
[実施例1]
<身体温冷装置の装着>
図1は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す正面図である。
図2は、本開示の実施例1の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す側面図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、身体温冷装置1は、利用者Uの右側頸部RN及び左側頸部LNから後頸部PNにわたって装着されることで、利用者Uの各頸動脈Aを流れる血液、及び、後頸部PNを加熱または冷却する。以下では、一例として、身体温冷装置1を用いて冷却する場合について説明する。
【0012】
以下では、利用者Uの前方を身体温冷装置1(首掛け部材16)の正面側とし、利用者Uの後方を身体温冷装置1(首掛け部材16)の背面側とする。図面では、利用者Uが直立した状態で利用者Uに装着される身体温冷装置1の首掛け部材16について、利用者Uの左右方向をX方向とし、利用者Uの前後方向をY方向とし、利用者Uの高さ方向をZ方向として示す。
【0013】
<身体温冷装置の構成>
図3は、本開示の実施例1の身体温冷装置1の首掛け部材16を正面側から示す斜視図である。
図4は、本開示の実施例1の身体温冷装置1の首掛け部材16を背面側から示す斜視図である。
【0014】
身体温冷装置1は、利用者Uの右側頸部RN及び左側頸部LNの各頸動脈Aに接するように設けられた一対の第1プレート11A,11Bと、一対の第1プレート11A,11Bの各々を冷却する一対の第1ペルティエ素子13A,13Bと、利用者Uの後頸部PNに接するように設けられた第2プレート12と、第2プレート12を冷却する第2ペルティエ素子14とを有する。以下では、一対の第1プレート11A,11Bを「第1プレート11」と総称し、一対の第1ペルティエ素子13A,13Bを「第1ペルティエ素子13」と総称することがある。
【0015】
また、身体温冷装置1は、第1プレート11及び第2プレート12が設けられると共に、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14が設けられた首掛け部材16を有する。さらに、身体温冷装置1は、後述の熱交換部17、電源部18及びコントローラ100を有する。
【0016】
図5は、本開示の実施例1の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す正面図である。
図6は、本開示の実施例1の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す背面図である。
図7は、本開示の実施例1の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す側面図である。
図8は、本開示の実施例1の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す下面図である。
【0017】
第1プレート11及び第2プレート12は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。第1プレート11は、
図3、
図4、
図6及び
図8に示すように、首掛け部材16の正面側に延びる両端部の各々の内側に設けられている。第2プレート12は、
図3、
図5、
図7及び
図8に示すように、首掛け部材16の背面側で湾曲した中央部29の内側に設けられている。
【0018】
第1ペルティエ素子13は、
図3に示すように、第1プレート11に接触して設けられており、首掛け部材16の両端部(後述の上段部16Aの前端部28)の内部に配置されている。第2ペルティエ素子14は、第2プレート12に接触して設けられており、首掛け部材16の両端部に連続する中央部29の内部に配置されている。第1プレート11は第1ペルティエ素子13と熱的に接続され、第2プレート12は第2ペルティエ素子14と熱的に接続されている。
【0019】
このように、首掛け部材16における3箇所に分散して配置される一対の第1プレート11A,11B及び第2プレート12の各々が頸動脈Aを流れる血液を冷却することで、利用者Uが冷感を効果的に得られる右側頸部RN及び左側頸部LNと、利用者Uが冷感を得やすい後頸部PNとの3箇所に絞って集中的に冷却することができる。
【0020】
このため、身体温冷装置1によれば、例えば、右側頸部RNと後頸部PNと左側頸部LNとにわたって連続するU字状のプレートを用いて、右側頸部RN、左側頸部LN及び後頸部PNを含む頸部Nまわりにわたって冷却する構造と比べて、伝熱する面積を小さくできるため、利用者Uの頸部Nを効率的に冷却することができる。その結果、身体温冷装置1の消費電力が抑えられるため、バッテリーで駆動する場合には、連続使用時間を延ばすことが可能になる。加えて、第1プレート11A,11B及び第2プレート12の各々が、首掛け部材16における3箇所に分散されることにより、上述のようなU字状のプレートのように頸部Nの動きが拘束されることや、利用者Uの圧迫感が抑えられるので、利用者Uの開放感、頸部Nの動きの自由度が高められ、快適な装着感が得られる。
【0021】
後頸部PNは頸動脈Aのような太い血管がなく血液の流量が少ないことから、第2ペルティエ素子14によって吸熱される熱量は、第1ペルティエ素子13によって吸熱される熱量よりも小さい。よって、第2ペルティエ素子14には、第1ペルティエ素子13よりも小さいペルティエ素子が用いられている。これにより、第2ペルティエ素子14によって後頸部PNを冷却する作用は、第1ペルティエ素子13によって頸動脈Aを冷却する作用よりも小さくなる。よって、後頸部PNを冷やし過ぎることを避けて、利用者Uの快適感が高められる。
【0022】
<第1プレートの形状>
図9は、本開示の実施例1における首掛け部材16及び第1プレート11を示す拡大図である。
図9に示すように、第1プレート11は、頸動脈Aに接する接触領域21を有しており、接触領域21が、互いに対向する上辺21a及び下辺21bと、互いに対向する前辺21c及び後辺21dとを有する。上辺21aは、後述の上縁28a側に配置され、下辺21bは、後述の下縁28b側に配置される。前辺21cは、後述の前縁28c側に配置される。上辺21aと下辺21bとの幅W1は、後辺21d側から前辺21c側に向かって広がっている。幅W1は、首掛け部材16の後述の上段部16Aが延びる方向に直交する方向の幅を指す。言い換えると、上辺21aが首掛け部材16の前方に向かって上がり勾配を有し、下辺21bが首掛け部材16の前方に向かって下がり勾配を有し、前辺21c側の幅W1は、後辺21d側の幅W1よりも大きい。
【0023】
また、第1プレート11の接触領域21では、前辺21cの下側よりも前辺21cの上側が利用者Uの前方側に位置するように前辺21cが傾斜すると共に、後辺21dの下側よりも後辺21dの上側が利用者Uの前方側に位置するように後辺21dが傾斜している。言い換えると、前辺21cは、首掛け部材16の両端部(後述の上段部16Aの前端部28)の先端側に向かって、上がり勾配を有するように形成されている。なお、接触領域21の上辺21a、下辺21b、前辺21c及び後辺21dは、接触領域21の外周縁に沿う各辺であり、この外周縁の曲線部分を形成する。
【0024】
このように第1プレート11の接触領域21の面積が利用者Uの前方側に向かって大きくなるように形成されることで、利用者Uの頸動脈Aが位置する後述の頸動脈三角T(
図10)に対向するように接触領域21が延ばされると共に、頸動脈三角Tに対して接触領域21が占める大きさを適切に確保できる。
【0025】
また、第1プレート11の接触領域21は、頸動脈Aに向かって盛り上がる曲面状に形成されている。例えば、接触領域21の中央は、上辺21a、下辺21b、前辺21c及び後辺21dから、頸動脈A側に膨らんでいる。これにより、利用者Uの頸部Nの大きさのばらつきにかかわらずに、接触領域21が頸動脈Aと適切に接することが可能になり、第1プレート11と頸動脈Aとの接触状態の安定性が確保される。なお、曲面状の接触領域21は球面で形成されてもよいし、緩やかな複数の曲面の組み合わせで形成されてもよい。
【0026】
第2プレート12は、
図5及び
図6に示すように、楕円状の接触領域22を有しており、利用者Uの後頸部PNの脊椎(図示せず)の両側に接するように配置されている。接触領域22は、Z方向である上下方向における中央が後頸部PN側に向かって膨らんでおり、上下方向における中央が、後頸部PNまわりに沿って接するように形成されている。
【0027】
<首掛け部材の形状>
身体温冷装置1の首掛け部材16は、
図2、
図3及び
図4に示すように、U字状の上段部16Aと、上段部16Aの下方に配置されたU字状の下段部16Bとを有する。
図3、
図5及び
図8に示すように、上段部16Aでは、第1プレート11A,11Bの各々が両端部に設けられると共に、第2プレート12が、両端部に連続する中央部に設けられている。首掛け部材16では、
図3、
図4及び
図7に示すように、上段部16Aが延びる方向における上段部16Aの一端部と、下段部16Bが延びる方向における下段部16Bの一端部とが連結されると共に、上段部16Aの他端部と下段部16Bの他端部とが連結されている。
【0028】
図4、
図5、
図6及び
図7に示すように、下段部16Bは、上段部16Aよりも細いロッド状に形成されており、利用者Uの頸部Nの付け根、すなわち首元に沿うように湾曲して形成されている。
【0029】
図2及び
図7に示すように、上段部16Aと下段部16Bとは、首掛け部材16のZ方向である上下方向に空隙25をあけて配置されている。空隙25は、右側頸部RN及び左側頸部LNから後頸部PNまで連続して形成されている。言い換えると、首掛け部材16が上段部16Aと下段部16Bとに分割されることにより、上段部16Aと下段部16Bとの間に空隙25を確保することが可能になる。これにより、首掛け部材16による頸部Nの拘束が抑えられるので、首掛け部材16による圧迫感が抑えられると共に頸部Nの動きの自由度を高められ、快適な装着感が得られる。
【0030】
また、首掛け部材16において、利用者Uの右側頸部RN及び左側頸部LNにおける上下方向の空隙25Aは、後頸部PNにおける上下方向の空隙25Bよりも大きい。後頸部PNに接する下段部16Bの後方側が、上段部16Aの後方側である上方に向かって湾曲されることで、後頸部PNにおける上下方向の空隙25Bが小さくなっている。このように右側頸部RN及び左側頸部LNにおける上下方向の空隙25Aが大きく確保されることにより、首掛け部材16による右側頸部RN及び左側頸部LNの圧迫感が抑えられる。これにより、首掛け部材16の装着状態における頸部Nの開放感が高められ、快適な装着感が得られる。
【0031】
また、
図8に示すように、X-Y平面(以下では「水平面」と呼ぶことがある)上で、利用者Uの頸部Nに対する上段部16Aの外側に下段部16Bが配置されており、上段部16Aの外周側と下段部16Bの内周側とが重なるように配置されることで、首掛け部材16全体はU字状に形成されている。したがって、上段部16Aは、下段部16Bの位置よりも利用者Uの頸部Nに近づけて配置されている。
【0032】
首掛け部材16は、例えば、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の樹脂材料によって形成されている。下段部16Bは、弾性材料の一例としてのポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等によってロッド状に形成されている。下段部16Bは、上段部16Aに対して弾性変形する、つまり、下段部16Bが柔軟に撓むことにより、下段部16Bと上段部16Aとは相対的に移動可能に接続されている。したがって、上段部16Aは、利用者Uの頸部Nの動きに追従するように柔軟に移動できる。言い換えると、下段部16Bは、利用者Uの肩等の動きに応じて、上段部16Aに対して弾性変形するように形成されている。加えて、上述のように、上段部16Aと下段部16Bとの間に空隙25A,25Bが確保されることにより、利用者Uの頸部Nの動きに追従する上段部16A及び下段部16Bの各移動の自由度が高められ、快適な装着感が得られる。
【0033】
したがって、利用者Uの頸部Nや肩等の動きに伴って上段部16Aに対して頸部Nが押し付けられた場合には、上段部16Aが下段部16B側にスムーズに移動することで、上段部16Aによって利用者Uの頸部Nが圧迫されることが抑えられる。
【0034】
<位置決め部>
図1、
図2、
図7及び
図9に示すように、首掛け部材16は、第1プレート11が右側頸部RN及び左側頸部LNの各頸動脈Aに接する位置に首掛け部材16を位置決めするように利用者Uの身体に載せられる位置決め部27を有する。位置決め部27は、首掛け部材16の下段部16Bにおける前方側の湾曲部分によって形成されており、下段部16Bに一対の位置決め部27が一体的に形成されている。
【0035】
各位置決め部27は、
図1、
図2及び
図9に示すように、利用者Uの鎖骨Bに接する位置に形成されている。位置決め部27が載せられる身体の部位の一例として鎖骨が挙げられる。首掛け部材16の下段部16Bの各位置決め部27を鎖骨Bに載せるように首掛け部材16が装着されることにより、上段部16Aに設けられた第1プレート11が、利用者Uの頸部Nの上下方向及び左右方向に対して容易に位置決めされる。また、位置決め部27が鎖骨Bを基準として第1プレート11を位置決めすることで、第1プレート11を容易に位置決めできると共に、第1プレート11の位置決め状態の安定性を高められる。
【0036】
また、位置決め部27を有する下段部16Bは、上述のように弾性材料によって形成されているので、首掛け部材16の装着状態で鎖骨Bや肩等が動いた場合であっても、下段部16Bが撓むことで第1プレート11の位置の変動が抑えられるので、位置決め部27によって第1プレート11が位置決めされた状態の安定性が高められる。したがって、第1プレート11が右側頸部RNまたは左側頸部LNと接触する面積を維持することができるため、頸動脈Aを効率的に冷却できる。
【0037】
<首掛け部材の前端部の形状>
図9に示すように、首掛け部材16の上段部16Aの両端部である一対の前端部28では、前端部28における上縁28aと下縁28bとの幅W2が、利用者Uの前方に向かって広がっている。幅W2は、首掛け部材16の上段部16Aが延びる方向に直交する方向の幅を指す。また、前端部28の上縁28aは、利用者Uの前方に向かって下がり勾配を有するように形成されている。上縁28aと同様に、前端部28の下縁28bは、利用者Uの前方に向かって下がり勾配を有するように形成されている。また、
図2、
図7及び
図9に示すように、前端部28において、上段部16Aの下縁28bと上縁28aでは、Z方向である上下方向に対する高さが、後ろ側よりも前側が低くなるように形成されている。
【0038】
首掛け部材16の前端部28では、前端部28の前縁28cにおける下縁28b側よりも上縁28a側が利用者Uの前方側に位置するように、前縁28cが傾斜している。なお、一対の前端部28では、
図5及び
図8に示すように、上段部16Aが延びる方向の先端同士が近づくように湾曲されている。このため、上述した前縁28cの傾斜形状を言い換えると、前端部28の前縁28cでは、下縁28b側よりも上縁28a側が、上段部16Aが延びる方向の先端側に位置するように傾斜している。
【0039】
このように前端部28の面積が、上段部16Aの後ろ側の面積よりも大きく形成されることにより、利用者Uの頸動脈Aが位置する後述の頸動脈三角T(
図10)に対向するように第1プレート11を配置できると共に、頸動脈三角Tに対して第1プレート11の大きさを適切に確保することができる。このため、前端部28に配置される第1プレート11の接触領域21の大きさを拡大することが可能になり、頸動脈三角Tに対して占める第1プレート11の接触領域21の大きさが適切に確保される。第1プレート11の接触領域21の大きさを適切に確保することで、第1プレート11の大きさを必要以上に大きくせずに済むため、第1ペルティエ素子13の消費電力を抑えることができる。加えて、上述のような形状に前端部28が形成されることで、利用者Uの前頸部AN(
図2)の喉元の周囲に空間が確保されるため、利用者Uの圧迫感が抑えられ、首掛け部材16の装着状態における頸部Nの開放感が高められ、快適な装着感が得られる。
【0040】
<第1プレートと頸部との位置関係>
図10は、本開示の実施例1における首掛け部材16を利用者Uが装着したときの右側頸部RN及び左側頸部LNと第1プレート11との位置関係を説明するための側面図である。
図10において、頸動脈三角Tの領域を斜線で示す。
図10に示すように、第1プレート11は、利用者Uが首掛け部材16を装着したときに利用者Uの各頸動脈三角Tの領域に接するように、上段部16Aの前端部28に配置されている。つまり、第1プレート11は、頸動脈三角Tの位置を基準として配置されており、第1プレート11の接触領域21と、頸動脈三角Tの領域とが重なる範囲が適切に確保されている。これにより、第1プレート11の接触領域21は、頸動脈三角Tに位置する頸動脈Aと容易かつスムーズに接することが可能になり、頸動脈Aを流れる血液を適切に冷却することができる。
【0041】
<頸動脈三角>
図11は、本開示の実施例1における頸動脈三角を説明するための模式図である。
図11に示すように、頸動脈三角Tは、頸動脈Aが位置する領域であり、右側頸部RNに位置する右頸動脈三角と、左側頸部LNに位置する左頸動脈三角とを含む。詳細には、頸動脈三角Tは、甲状腺部101、喉頭部102、舌骨下部103、及び、舌骨部104が位置する前縁T1と、顎下三角105が位置する上縁T2と、胸鎖乳突筋部106が位置する後縁T3とで囲まれた三角形の領域を指す。
【0042】
このような頸動脈三角Tに対応するように、首掛け部材16の前端部28の形状、第1プレート11の接触領域21の形状が設定されることで、第1プレート11によって頸動脈Aを流れる血液を冷却できる。なお、第1プレート11の接触領域21では、頸部Nまわりに対する大きさが、平均的な頸動脈三角Tの領域の大きさよりも大きく形成されており、接触領域21が、利用者Uの頸部Nの大きさのばらつきにかかわらずに頸動脈三角Tの領域に適切に接するように設定されている。
【0043】
<首掛け部材の流路>
図12は、本開示の実施例1の身体温冷装置1の首掛け部材16が有する流路を示す斜視図である。
図13は、本開示の実施例1における首掛け部材16が有する流路を示す模式図である。
【0044】
図12に示すように、首掛け部材16は、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14に熱媒体としての冷却水を送る流路32を形成するチューブ部材31を有する。チューブ部材31は、首掛け部材16の上段部16Aと下段部16Bの内部に設けられており、上段部16A及び下段部16Bのそれぞれが延びる方向に沿って配置されている。なお、熱媒体は、冷却水に限定されず、冷却オイル等の他の温調液が熱媒体として用いられてもよい。
【0045】
図12及び
図13に示すように、チューブ部材31の流路32は、第2ペルティエ素子14から一方の第1ペルティエ素子13Aまで延びる第1流路32Aと、一方の第1ペルティエ素子13Aから他方の第1ペルティエ素子13Bまで延びる第2流路32Bと、他方の第1ペルティエ素子13Bから第2ペルティエ素子14まで延びる第3流路32Cとを含む。
【0046】
首掛け部材16の内部において、首掛け部材16の後方側の外部から供給された冷却水は、第1流路32A、第2流路32B、第3流路32Cの順に流れて、首掛け部材16の後方側から外部へ送られる。流路32は、
図13に示すように、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14に冷却水が供給されるように引き回されている。供給された冷却水は、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14に熱的に接続されており、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の各々と冷却水とが熱交換を行う。
【0047】
したがって、
図12に示すように、上段部16Aの内部には、上段部16Aの後方から上段部16Aの一方の前端部28に向かって冷却水が流れる第1流路32Aと、上段部16Aの他方の前端部28から上段部16Aの後方に向かって冷却水が流れる第3流路32Cとが設けられている。下段部16Bの内部には、下段部16Bの一端側から他端側に向かって冷却水が流れる第2流路32Bが設けられている。
【0048】
つまり、上段部16Aの後方から流路32に入った冷却水は、第1流路32Aに沿って上段部16Aを流れ、第2流路32Bに沿って下段部16Bを流れ、第3流路32Cに沿って上段部16Aを流れることにより、いわゆる一筆書きのように形成された流路32に沿って首掛け部材16の内部を流れて、上段部16Aの後方から首掛け部材16の外部へ出る。したがって、上段部16Aと下段部16Bのそれぞれを流路として利用することができる。
【0049】
このため、首掛け部材16における冷却水の流路32の経路を簡素化し、首掛け部材16をコンパクトに形成できるので、首掛け部材16を小型、軽量化できる。また、首掛け部材16の内部には、第1流路32A、第2流路32B及び第3流路32Cが互いに離れて配置されることにより、各流路32A,32B,32C同士において熱交換することが避けられるので、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の冷却能力を高められる。また、首掛け部材16においては、上段部16Aと下段部16Bとが空隙25をあけて配置されるので、第1流路32Aと第2流路32Bとの間、第2流路32Bと第3流路32Cとの間での熱交換を遮断できる。これにより、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の冷却能力を更に高められる。
【0050】
また、上述したように第2ペルティエ素子14の吸熱量が、第1ペルティエ素子13の吸熱量よりも小さい。このため、流路32では、吸熱量が小さい第2ペルティエ素子14を冷却水が最初に通過することで、冷却水の温度が大きく上昇することが抑えられ、第2ペルティエ素子14を通過後の温度が低い冷却水によって、第1ペルティエ素子13を適切に冷却できる。
【0051】
<チューブ部材の引き出し位置>
図2、
図4、
図7及び
図12に示すように、チューブ部材31は、第2ペルティエ素子14が配置された位置における首掛け部材16の中央部29の上側から、首掛け部材16の外側へ引き出されている。詳細には、チューブ部材31は、首掛け部材16の上段部16Aにおける、第2ペルティエ素子14が配置された中央部29の背面から水平方向に引き出されている。チューブ部材31が首掛け部材16から引き出される上段部16Aの中央部29は、後頸部PNにおける上方に位置しており、チューブ部材32の引き出し位置が、一般的な衣服の襟よりも上方になるように配置されている。また、チューブ部材31が上段部16Aから水平に引き出されていることにより、利用者Uの衣服の襟とチューブ部材31との接触を避けると共に冷却水の流動性を妨げることが抑えられる。
【0052】
これにより、利用者Uの後頸部PNから引き出されるチューブ部材31を、利用者Uの衣服の襟の上方から、襟に引っ掛からないように利用者Uの背中側に容易に引き回すことが可能になる。このため、衣服を着たままで利用者Uが首掛け部材16を容易に装着できるので、首掛け部材16の着脱性が高められる。
【0053】
また、首掛け部材16の上段部16Aにおける中央部29の背面には、
図4及び
図6に示すように、流路32における冷却水の流入口33a及び流出口33bが並んで設けられている。チューブ部材31は、
図4、
図8及び
図12に示すように、流入口33aに接続される流入側チューブ部材31Aと、流出口33bに接続される流出側チューブ部材31Bとを含んでいる。
【0054】
なお、チューブ部材31が首掛け部材16から引き出される位置は、上段部16Aにおける中央部29の背面側に限定されず、利用者Uの衣服の襟との接触を避けられる位置であれば、上段部16Aの任意の位置から引き出されてもよい。また、上段部16Aからチューブ部材31が引き出される方向は、水平方向に限定されず、例えば、上段部16Aにおける中央部29の背面から斜め上方に引き出されてもよい。本実施例のように利用者Uの背中側にチューブ部材31を引き回す場合には、本実施例のように上段部16Aにおける中央部29の背面からチューブ部材31が引き出される構造が好ましい。
【0055】
<身体温冷装置の他の構成>
図14は、本開示の実施例1の身体温冷装置1全体を説明するための模式図である。
図14に示すように、身体温冷装置1は、チューブ部材31A,31Bを介して首掛け部材16と接続される熱交換部17と、第1ペルティエ素子13、第2ペルティエ素子14及び熱交換部17に電力を供給する電源部18と、コントローラ100とを有する。
【0056】
熱交換部17の一例として空冷型ラジエータが挙げられ、熱交換部17は、冷却液を送るポンプと、冷却液を冷却するための送風ファンと、空気の吸込口及び吹出口とを有する。
【0057】
電源部18は、例えば充電型バッテリーであり、電力供給ライン18aを介して熱交換部17と接続され、電力供給ライン18bを介してコントローラ100と接続される。
【0058】
コントローラ100は、制御ライン19aを介して熱交換部17と接続され、熱交換部17のポンプの流量、送風ファンの回転数等を制御する。また、コントローラ100は、電力供給ライン18cを介して、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14と接続され、例えば、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14に供給される電力を制御する。
【0059】
以上、実施例1について説明した。
【0060】
[実施例2]
<身体温冷装置の構成>
図15は、本開示の実施例2の身体温冷装置の構成例を示す模式図である。
【0061】
図15に示す首掛け部材16の上段部16Aにおいて、第1ペルティエ素子13Aと第1プレート11Aとの間に第1温度センサ201Aが配置され、第1ペルティエ素子13Bと第1プレート11Bとの間に第1温度センサ201Bが配置され、第2ペルティエ素子14と第2プレート12との間に第2温度センサ202が配置される。以下では、第1温度センサ201A,201Bを「第1温度センサ201」と総称することがある。
【0062】
また、
図15において、コントローラ100は、制御部101と、記憶部102と、操作部103と、気温センサ104とを有する。
【0063】
制御部101は、電力供給ライン18cを介して、第1ペルティエ素子13A,13B及び第2ペルティエ素子14と接続され、制御ライン19bを介して、第1温度センサ201A,201B及び第2温度センサ202と接続される。また、制御部101は、電力供給ライン18bを介して電源部18と接続される。電源部18は、電力供給ライン18b、制御部101及び電力供給ライン18cを介して、第1ペルティエ素子13A,13B及び第2ペルティエ素子14へ電力を供給する。第1ペルティエ素子13A,13B及び第2ペルティエ素子14へ供給される電力は、制御部101によって制御される。制御部101は、ハードウェアとして、例えばプロセッサにより実現される。プロセッサの一例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、MCU(Micro Controller Unit)等が挙げられる。
【0064】
第1温度センサ201Aは、第1ペルティエ素子13Aの温度を検出する。この温度は、第1ペルティエ素子13Aに接する第1プレート11Aの温度でもある。第1温度センサ201Aで検出された温度NT1A(以下では「ネック温度NT1A」と呼ぶことがある)は、制御ライン19bを介して制御部101へ出力される。
【0065】
第1温度センサ201Bは、第1ペルティエ素子13Bの温度を検出する。この温度は、第1ペルティエ素子13Bに接する第1プレート11Bの温度でもある。第1温度センサ201Bで検出された温度NT1B(以下では「ネック温度NT1B」と呼ぶことがある)は、制御ライン19bを介して制御部101へ出力される。
【0066】
第2温度センサ202は、第2ペルティエ素子14の温度を検出する。この温度は、第2ペルティエ素子14に接する第2プレート12の温度でもある。第2温度センサ202で検出された温度NT2(以下では「ネック温度NT2」と呼ぶことがある)は、制御ライン19bを介して制御部101へ出力される。
【0067】
以下では、ネック温度NT1A,NT1B及びネック温度NT2を「ネック温度NT」と総称することがある。
【0068】
気温センサ104は、コントローラ100の周囲の気温OT(以下では「外気温OT」と呼ぶことがある)を検出し、検出した外気温OTを示す信号を制御部101へ出力する。
【0069】
操作部103は、利用者Uの操作を受け付け、操作部103によって受け付けられた操作に応じた制御信号が操作部103から制御部101へ出力される。利用者Uは、操作部103を操作することにより、身体温冷装置1の電源のオン/オフや、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の温度設定等を行うことができる。
【0070】
記憶部102は、例えば、後述する目標温度等の算出のために設定された温度等を記憶する。記憶部102は、ハードウェアとして、例えば、メモリにより実現される。メモリの一例として、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0071】
<身体温冷装置の処理>
図16は、本開示の実施例2の身体温冷装置の処理例の説明に供するフローチャートである。
【0072】
図16において、ステップS300では、制御部101は、外気温OT[℃]を気温センサ104から取得する。
【0073】
次いで、ステップS305では、制御部101は、外気温OTと、利用者Uに冷感を感じさせるための所定の温度PTとに基づいて、外気温OTよりも低い目標温度TT[℃]を算出する。例えば、制御部101は、式(1)に従って、目標温度TTを算出する。例えば、所定の温度PTが7℃で、気温センサ104により検出された外気温OTが27℃のとき、目標温度TTは20℃と算出される。
目標温度TT=外気温OT-所定の温度PT …(1)
【0074】
次いで、ステップS310では、制御部101は、目標温度TTに基づいて、目標温度TTよりも高い上限温度UT[℃]を算出する。式(2)におけるΔT[℃]は、例えば、3℃以上かつ10℃以下の何れかの値に設定される。ΔTは、予め設定されて記憶部102に記憶されている。例えば、ΔTが5℃に設定され、かつ、気温センサ104により検出された外気温OTが27℃であるとき、上限温度UTは25℃と算出される。
上限温度UT=目標温度TT+ΔT …(2)
【0075】
次いで、ステップS315では、制御部101は、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14への通電を開始する。これにより、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14への電力の供給が開始されて、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の温度が低下し始め、第1プレート11及び第2プレート12の冷却が開始され、ネック温度NTは徐々に低下する。
【0076】
以下、ステップS320~S350の処理は、第1ペルティエ素子13A,13B及び第2ペルティエ素子14のそれぞれについて個別に行われる。以下では、第2ペルティエ素子14についての処理を一例に挙げて説明し、第1ペルティエ素子13A,13Bについての処理の説明を省略するが、第2ペルティエ素子14についての処理と同様の処理が第1ペルティエ素子13A,13Bについても行われる。
【0077】
ステップS320では、制御部101は、ネック温度NT2を第2温度センサ202から取得する。
【0078】
次いで、ステップS325では、制御部101は、ネック温度NT2が目標温度TT以下に到達したか否かを判定する。ネック温度NT2が目標温度TT以下に到達したときは(ステップS325:Yes)、処理はステップS330へ進み、ネック温度NT2が目標温度TTに到達していないときは(ステップS325:No)、処理はステップS320に戻る。
【0079】
ネック温度NT2が目標温度TT以下に到達した場合、ステップS330では、制御部101は、通電維持時間MT1だけ、第2ペルティエ素子14への通電を維持する。
【0080】
次いで、ステップS335では、制御部101は、ネック温度NT2が目標温度TT以下に到達した時点から通電維持時間MT1経過後に、第2ペルティエ素子14への通電を停止する。これにより、第2ペルティエ素子14への電力の供給が停止し、第2ペルティエ素子14の温度低下が停止して、ネック温度NT2は徐々に上昇する。また、通電維持時間MT1は、外気温OTに基づいて制御部101によって設定される。例えば、外気温OTが30℃未満のとき通電維持時間MT1は2秒に設定され、外気温OTが30℃以上のとき通電維持時間MT1は1秒に設定される。利用者Uに冷感を感じさせるためには冷却時間が長い方がよい一方で、外気温OTが30℃以上と高い場合には、ペルティエ素子がオーバーヒートしてしまうことを考慮して通電維持時間MT1が短く設定される。
【0081】
次いで、ステップS340では、制御部101は、ネック温度NT2を第2温度センサ202から取得する。
【0082】
次いで、ステップS345では、制御部101は、ネック温度NT2が上限温度UTに到達したか否かを判定する。ネック温度NT2が上限温度UTに到達したときは(ステップS345:Yes)、処理はステップS350へ進み、ネック温度NT2が上限温度UTに到達していないときは(ステップS345:No)、処理はステップS340に戻る。
【0083】
ネック温度NT2が上限温度UTに到達した場合、ステップS350では、制御部101は、停止維持時間MT2だけ、第2ペルティエ素子14への通電停止を維持する。制御部101は、第2ペルティエ素子14への通電を停止した時点(つまり、ステップS335の処理が行われた時点)から、ネック温度NT2が上限温度UTに到達した時点までの経過時間ETに基づいて、停止維持時間MT2を設定する。例えば、経過時間ETが3秒未満のとき停止維持時間MT2は0秒に設定され、経過時間ETが3秒以上4秒未満のとき停止維持時間MT2は1秒に設定され、経過時間ETが4秒以上5秒未満のとき停止維持時間MT2は2秒に設定され、経過時間ETが5秒以上のとき停止維持時間MT2は3秒に設定される。このようにして停止維持時間MT2を設定することで、ネック温度NT2の温度上昇が早い場合には通電開始時間を早くして利用者Uに冷感を早く与えることができる。なお、経過時間ET、通電維持時間MT1及び停止維持時間MT2は、制御部101内部のタイマ(図示なし)によって計時される。
【0084】
ステップS350の処理後、処理はステップS300に戻る。よって、ステップS315で、第2ペルティエ素子14への通電が再開される。
【0085】
<身体温冷装置の動作>
図17は、本開示の実施例2の身体温冷装置の動作例の説明に供する図である。
図17では、目標温度TTが20℃に、上限温度UTが25℃に算出された場合を一例に挙げて説明する。なお、
図17では第2ペルティエ素子14についての動作を一例に挙げて説明し、第1ペルティエ素子13A,13Bについての動作の説明を省略するが、第2ペルティエ素子14についての動作と同様の動作が第1ペルティエ素子13A,13Bについても行われる。
【0086】
図17において、制御部101は、時刻t1で、第2ペルティエ素子14への通電を開始する。これにより、第2ペルティエ素子14への電力の供給が開始されて、第2ペルティエ素子14の温度が低下し始め、第2プレート12の冷却が開始され、ネック温度NT2は徐々に低下する。
【0087】
時刻t1からネック温度NT2が徐々に低下した結果、時刻t2でネック温度NT2が目標温度TTに到達する。そこで、時刻t2から通電維持時間MT1が計時される。よって、時刻t2から時刻t3までの間で、ネック温度NT2はさらに低下する。
【0088】
そして、時刻t2から通電維持時間MT1が経過した時刻t3で、制御部101は、第2ペルティエ素子14への通電を停止する。これにより、第2ペルティエ素子14への電力の供給が停止し、第2ペルティエ素子14の温度の低下が止まり第2プレート12の冷却が停止して、ネック温度NT2は徐々に上昇する。
【0089】
このように、第2ペルティエ素子14への通電は、時刻t1から時刻t3までの時間Tonだけ行われる。
【0090】
時刻t3からネック温度NT2が徐々に上昇した結果、時刻t4でネック温度NT2が上限温度UTに到達する。そこで、時刻t4から停止維持時間MT2が計時される。よって、時刻t4から時刻t5までの間で、ネック温度NT2はさらに上昇する。
【0091】
そして、時刻t4から停止維持時間MT2が経過した時刻t5で、制御部101は、第2ペルティエ素子14への通電を再開する。これにより、第2ペルティエ素子14への電力の供給が再開され、第2ペルティエ素子14による第2プレート12の冷却が再開されて、ネック温度NT2は再び徐々に低下する。
【0092】
このように、第2ペルティエ素子14への通電は、時刻t3から時刻t5までの時間Toffだけ停止される。
【0093】
なお、上記説明では、目標温度TTが外気温OTに応じて自動的に設定される場合を一例として説明した。しかし、目標温度TTは、操作部103に対する利用者Uの操作によって設定されてもよい。
【0094】
また、上記説明では、第1ペルティエ素子13A,13B及び第2ペルティエ素子14のについて同様の処理や動作が行われる場合について説明した。しかし、例えば、ネック温度NT1A,NT1Bに対する目標温度TTと、ネック温度NT2に対する目標温度TTとを異なる温度に設定してもよい。
【0095】
また、複数の温度センサを用いるのではなく、単一の温度センサを用いて、第1ペルティエ素子13A,13B及び第2ペルティエ素子14を制御してもよい。
【0096】
以上、実施例2について説明した。
【0097】
以上のように、本開示の身体温冷装置(実施例の身体温冷装置1)は、プレート(実施例の第1プレート11A,11B、第2プレート12)と、ペルティエ素子(実施例の第1ペルティエ素子13A,13B、第2ペルティエ素子14)と、温度センサ(実施例の第1温度センサ201A,201B、第2温度センサ202)と、制御部(実施例の制御部101)とを有する。プレートは、利用者の頸部に接するように設けられる。ペルティエ素子は、プレートを冷却する。温度センサは、プレートの温度であるネック温度(実施例のネック温度NT1A,NT1B,NT2)を検出する。制御部は、ペルティエ素子への通電を開始することによりプレートが冷却されてネック温度が目標温度(実施例の目標温度TT)以下に到達したときにペルティエ素子への通電を停止する。また、制御部は、ペルティエ素子への通電を停止することによりネック温度が目標温度より高い上限温度(実施例の上限温度UT)に到達したときにペルティエ素子への通電を開始する。
【0098】
このように、目標温度と、目標温度より高い上限温度とを用いて、通電開始時と通電停止時との温度差を確保することで、利用者の感覚に慣れが生じることを抑えることができる。このため、利用に継続的に冷感が得られるため、身体温冷装置の装着感を向上させることができる。
【0099】
また、制御部は、ネック温度が目標温度以下に到達した時点から通電維持時間(実施例の通電維持時間MT1)が経過した後にペルティエ素子への通電を停止する。
【0100】
こうすることで、冷却時間を延ばすことができ、利用者が感じる冷感を向上させることができる。
【0101】
例えば、制御部は、外気温(実施例の外気温OT)が高くなるほど短い通電維持時間を設定する。
【0102】
外気温が高くなるほど熱交換部における放熱効率が下がってペルティエ素子の冷却能力が相対的に低下するため、こうすることで、外気温が高いときの無駄な通電を抑制することができる。
【0103】
また、制御部は、ネック温度が上限温度に到達した時点から通電停止維持時間(実施例の停止維持時間MT2)が経過した後にペルティエ素子への通電を開始する。
【0104】
こうすることで、身体温冷装置が通電状態にない時間を設けることができるため、省電力化を図ることができる。
【0105】
例えば、制御部は、ペルティエ素子への通電を停止した時点からネック温度が上限温度に到達した時点までの経過時間(実施例の経過時間ET)に基づいて、通電停止維持時間を設定する。また例えば、制御部は、経過時間が短くなるほど短い通電停止維持時間を設定する。
【0106】
こうすることで、利用者の頸部の冷却が停止している時間に応じて通電停止維持時間を調節することができ、利用者の頸部の温度上昇が早い場合、つまり、利用者が早く暑さを感じる場合に、早く頸部の冷却を再開することができる。
【0107】
また例えば、目標温度と上限温度との温度差は、3℃以上かつ10℃以下である。
【0108】
こうすることで、頸部の冷却の停止による頸部の温度上昇により利用者が不快になることを防止できる。
【符号の説明】
【0109】
1 身体温冷装置
11A,11B 第1プレート
12 第2プレート
13A,13B 第1ペルティエ素子
14 第2ペルティエ素子
16 首掛け部材
18 電源部
100 コントローラ
101 制御部
102 記憶部
103 操作部
104 気温センサ
201A,201B 第1温度センサ
202 第2温度センサ