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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061816
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】スクリーンマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/14 20060101AFI20240426BHJP
   B41N 1/24 20060101ALI20240426BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240426BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B41C1/14
B41N1/24
H05K3/34 505D
H05K3/12 610P
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038271
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2019161283の分割
【原出願日】2019-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000176534
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】307049155
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 華奈
(72)【発明者】
【氏名】飯島 芙早子
(72)【発明者】
【氏名】坪井 恵
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(57)【要約】
【課題】印刷精度を向上できるスクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】一形態にかかるスクリーンマスクの製造方法は、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程と、前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程と、エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、前記一方側の表面に段差を形成する、エッチング処理と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、
第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程と、
前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、
前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程と、
エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、一方側の表面に段差を形成する、エッチング処理と、を備えるスクリーンマスクの製造方法。
【請求項2】
前記第2パターニング工程は、前記第2の乳剤層の一方側から、前記第1の乳剤層の少なくとも一部と前記第2の乳剤層の少なくとも一部を含む領域を露光するとともに、
第2露光パターンの露光部位は、前記第1パターニング工程における非露光部位の少なくとも一部、及び前記第1パターニング工程における露光部位の少なくとも一部の前記一方側の領域を含む、請求項1に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項3】
前記エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、前記開口の縁部分の前記一方側の表面に段差を形成する、請求項1に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項4】
前記露光はマスクレス露光である請求項1乃至3のいずれかに記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項5】
前記第2の乳剤層は前記第1の乳剤層よりも柔らかい請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項6】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に形成され、塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の開口エッジよりも前記印刷面とは反対側の供給側の開口エッジが広くなる段差部または傾斜面を有するとともに、前記印刷面側の開口エッジに前記印刷面側に突出する突起部を有する、マスク膜と、を備えるスクリーンマスク。
【請求項7】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に設けられるとともにパターン開口が形成され、前記パターン開口は塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の開口エッジよりも前記印刷面とは反対側の供給側の開口エッジが広く、かつ、前記パターン開口の内側壁面は所定の第1方向における一方側が他方側よりも前記開口エッジの広がりが大きく非対称に構成されたマスク膜と、を備えるスクリーンマスク。
【請求項8】
前記マスク膜は、スキージの移動方向の後方が先方よりも、前記供給側に拡大する、請求項7に記載のスクリーンマスク。
【請求項9】
前記マスク膜の前記パターン開口の内側壁は傾斜面を有する、請求項7または請求項8に記載のスクリーンマスク。
【請求項10】
前記マスク膜の前記パターン開口の内側壁は中途部に段差を有する、請求項7または請求項8に記載のスクリーンマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷手法の一つであるスクリーン印刷はサポート材であるメッシュ上に樹脂組成物で形成された所定のパターン開口が形成されたスクリーンマスクを用い、被印刷物に任意の印刷体を形成する方法である。このスクリーン印刷法は、例えば配線、電極、蛍光材料の印刷等、種々の印刷に用いられ、電子部品等を含む様々な分野で利用されている。
【0003】
近年、電子部品の小型化、高品質化により、スクリーンマスクの高精度化が求められている。
【0004】
例えば、スクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するメッシュと、メッシュに設けられパターン開口を有するマスク膜と、を備える。マスク膜に形成されるパターン開口は、例えば印刷パターンに対応した形状であり、所定の幅を有している。例えばマスク膜を形成する乳剤をメッシュに塗布した後に、フォトマスク重ねた露光処理によってパターン開口を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-169783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなスクリーンマスクにおいて、印刷精度を向上できるスクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一形態にかかるスクリーンマスクの製造方法は、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程と、前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程と、エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、前記一方側の表面に段差を形成する、エッチング処理と、を備えるスクリーンマスクの製造方法を備える。
【0008】
他の一形態に係るスクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に形成され、塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の開口エッジよりも前記印刷面とは反対側の供給側の開口エッジが広くなる段差部または傾斜面を有するとともに、前記印刷面側の開口エッジに前記印刷面側に突出する突起部を有する、マスク膜と、を備える。
【0009】
他の一形態にかかるスクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、前記サポート材に設けられるとともにパターン開口が形成され、前記パターン開口は塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の開口エッジよりも前記印刷面とは反対側の供給側の開口エッジが広く、かつ、前記パターン開口の内側壁面は所定の第1方向における一方側が他方側よりも前記開口エッジの広がりが大きく非対称に構成されたマスク膜と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、印刷精度を向上できるスクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図。
図2】同実施形態にかかるスクリーンマスクの斜視図。
図3】同スクリーンマスクの断面図。
図4】同スクリーンマスクの一部の構成を示す説明図。
図5】同スクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
図6】同スクリーンマスクと比較例1のパターン開口の形状と印刷形状を示す説明図。
図7】同スクリーンマスクの形状と印刷形状との関係を示す説明図。
図8】同スクリーンマスクの形状と印刷形状との関係を示す説明図。
図9】第2実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図。
図10】同スクリーンマスクの一部の構成を示す説明図。
図11】同スクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
図12】同実施形態にかかるスクリーン印刷装置を用いた印刷方法を示す説明図。
図13】同スクリーンマスクと比較例2のパターン開口の形状と印刷形状を示す説明図。
図14】同スクリーンマスクの形状と印刷形状との関係を示す説明図。
図15】他の実施形態にかかるスクリーンマスクのマスク膜の形状を示す説明図。
図16】他の実施形態にかかるスクリーンマスクのマスク膜の形状を示す説明図。
図17】他の実施形態にかかるスクリーンマスクのマスク膜の形状を示す説明図。
図18】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの構成及び製造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク20について図1乃至図8を参照して説明する。図1は本実施形態に係るスクリーン印刷装置10を示す説明図である。図2はスクリーンマスク20の斜視図であり、図3はその断面図である。図4はスクリーンマスク20の一部の構成を示す説明図である。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示している。
【0013】
図1に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク20と、スクリーンマスク20の印刷面側である表面(一方の面)20aに対向して印刷媒体Baを保持する保持部材12と、スクリーンマスク20の印刷面側とは反対の裏面(他方の面)20bに当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動部と、スクリーンマスク20を印刷媒体Baに対向して支持する支持部と、を備える。
【0014】
スクリーン印刷装置10は、印刷媒体Baの表面に、各種印刷材料を所定のパターンで形成する。例えば、チップ部品(コンデンサー、チップ抵抗、インダクター、サーミスター等)、タッチパネル、液晶基板(Liquid crystal display, LCD)シール、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)基板、太陽電池用電極、その他の電子部品等の製造に用いられる。
【0015】
図1及び図2に示すように、スクリーンマスク20は、フレーム21と、フレーム21に張設されたサポート材であるメッシュ22と、メッシュ22に形成されたマスク膜23と、を備える。スクリーンマスク20において、印刷を行う際に印刷媒体Baの表面に対向する側を表面20aとし、その反対側であって塗布材Peが供給される側を裏面20bとする。
【0016】
フレーム21は、互いに平行な2対の辺を有し、例えば所望のサイズの方形の開口を備える枠状に構成される。フレーム21はメッシュ22の外周縁を支持し、開口にメッシュ22を張設する。本実施形態では一例として、フレーム21の開口部のY方向の寸法は275mm、X方向の寸法は275mm、とした。
【0017】
またフレーム21は、所定量の塗布材Peをマスク膜23の裏面側に保持する枠としても機能する。フレーム21とメッシュ22は、例えば合成ゴム系やシアノアクリレート系の接着剤により接合部で接合されている。
【0018】
メッシュ22は、経糸22aと緯糸22bとが編まれて形成された織物であり、塗布材Peを透過可能に開口した孔部22cを多数有している。経糸22aと緯糸22bは、例えばステンレス等の金属のワイヤ、あるいはポリエステル等の樹脂で構成された繊維である。経糸22aと緯糸22bは、それぞれ例えばスキージ13の移動方向(第1方向)に対して、斜めに延びている。
【0019】
このメッシュ22に、所定のパターン開口23aを有するマスク膜23が形成される。すなわち、メッシュ22によって、フレーム21の開口部分にマスク膜23が保持される。
【0020】
マスク膜23は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。例えば図5に示すように、マスク膜23はベース層23bとカバー層23cが積層されて構成される2層構造である。一例として、カバー層23cはベース層23bよりも柔軟な材料で構成されている。
【0021】
マスク膜23の厚みは例えば10μm~100μmに構成されている。
【0022】
マスク膜23は、メッシュ22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜23には、露光によって、印刷用の所定のパターン開口23aが形成されている。
【0023】
なお、パターン開口23aの最小開口幅、すなわち、パターン開口23aの最も狭い部分における開口の幅寸法は、30μm以下である。ここでは、一例として、マスク膜23の表面、すなわち印刷媒体Baに対向する表面20aにおける寸法を基準とした。
【0024】
パターン開口23aは、ライン状のパターン孔である。パターン開口23aは、印刷パターンに対応するパターン状であってマスク膜23を厚さ方向(深さ方向)に貫通するスリットを構成する。
【0025】
パターン開口23aの印刷面側の開口のエッジ(縁部分)には、印刷面側に突出する突起部23dが形成される。図5に示すように、マスク膜23のうち、突起部23dと突起部23dに繋がるパターン開口23aの内壁面の表層部は、カバー層23cで構成されている。
【0026】
突起部23dは、図4に示すように、式1,式2,式3をいずれも満たす設定とした。2μm≦ΔTb≦2/3T (式1)
10μm≦Wc≦100μm (式2)
Tm≦ T-ΔTb (式3)
ここで、Tは総厚(メッシュおよび乳剤の厚みを含む厚み)、ΔTbは印刷面からの段差厚み、Wcはパターン開口23aの片側の段差の幅、Tmはメッシュの厚さである。
【0027】
マスク膜23は、パターン開口23aにおいて感光性樹脂が存在せず、メッシュ22の孔部を通過して塗布材Peが裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜23のパターン開口23a以外であってメッシュ22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材Peとしてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0028】
マスク膜23が形成されたメッシュ22は、例えばスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。マスク膜23のパターン開口23aに塗布材Peが保持された状態で、メッシュ22の弾性変形によりマスク膜23が印刷媒体Baに接離することで、塗布材Peがパターン開口23aから印刷媒体Baに転写される。
【0029】
スキージ13は例えばウレタンゴム・シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等の材料から、例えば薄い板状に構成される。例えば、スキージ13は先端の厚みが低減するように面取りされている。スキージ13はフレーム21に対して移動可能に構成されている。例えばスキージ13は移動方向と直交する方向においてマスク膜23の領域の全長にわたる長さを有して構成される。スキージ13の先端部分13aがスクリーンマスク20の裏面20bに当接し、表側に押しつけられた状態で、図1中矢印Aに沿う移動方向に移動することで、マスク膜23の全面を押圧し、塗布材Peが予め充填されたパターン開口23aから塗布材Peを表側に押し出す。
【0030】
支持部は、印刷媒体Baに対して所定の間隔を開けて平行に、フレーム21を支持する。移動部は、スキージ13を所定の速度で所定方向に沿って移動させる。
【0031】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク20の製造方法について図5を参照して説明する。図5は、スクリーンマスク20の製造方法を示す説明図である。スクリーンマスク20の製造方法は、第1層形成工程と、第1パターニング工程と、第2層形成工程と、シーズニング工程と、第2パターニング工程と、エッチング工程と、を備える。
【0032】
第1の乳剤は例えば、光硬化性の樹脂であり、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を包含する液体である。
【0033】
第1層形成工程において、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤Pm1を塗布して第1の乳剤層を形成する。具体的には、まず、フレーム21の枠内にメッシュ22を略平面となるように取り付けた状態で、ST1に示すように、第1の乳剤Pm1をメッシュ22上に塗布する塗布処理を行うことで、メッシュ22上に、ベース層23bが平板状に形成される。このとき、塗布する回数に応じて厚さが変わるため、必要に応じて複数回塗布を繰り返す。また、乾燥後に膜厚を測定し場合によっては追加で塗布することもある。本実施形態では乾燥後に第1の乳剤層の乳厚5~20μm程度となるように乳剤Pm1の厚さを設定する。
【0034】
次に、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程を行う。例えばST2に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第1のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の露光パターン領域に、ベース層23bの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤の表面を照らす露光処理を行う。ベース層23bのうち第1の露光処理によって露光される部位である第1露光部位は紫外線によって硬化する第1乳剤硬化部(第1光架橋部)Pa1となる。一方、ベース層23bのうち第1露光部位を除く部位である第1非露光部位は、乳剤が硬化しない未硬化部Pb1となる。第1未硬化部Pb1(第1非露光部位)は、後の工程で除去されることでベース開口を形成する第1除去対象部を構成する。
【0035】
ここで、第1の露光パターンは、後の工程で積層される第2のパターンとの位置ずれを考慮して、第2の露光パターンにおけるパターン幅よりも広いベース開口を形成するパターンとする。以上によりベース層23bがパターニングされ、後にエッチング工程により除去されてベース開口を構成する第1除去対象部が形成される。
【0036】
次に、ST3に示すように、第2の乳剤Pm2をベース層23b上に塗布する塗布処理を行うことで、ベース層23bの印刷面側に第2の乳剤Pm2によりカバー層23cが形成される。このとき、塗布する回数に応じて厚さが変わるため、必要に応じて複数回塗布を繰り返す。また、乾燥後に膜厚を測定し場合によっては追加で塗布することもある。本実施形態では乾燥後にカバー層23cの乳厚が2~50μm程度となるように乳剤Pm2の厚さを設定する。そして、マスクレス露光処理を行う条件下に3時間程度静置をすることにより、枠の温度を1回目のマスクレス露光処理時と同程度とするシーズニング工程を行う。
【0037】
次に、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程を行う。すなわち、ST4に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第2のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の第2の露光パターン領域に、乳剤Pm2の表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤Pm2の表面を照らす露光処理を行う。第2の露光処理によって、露光パターン領域の部位に対応して、乳剤Pm2の紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。すなわち、カバー層23cのうち第2の露光処理によって露光される部位である第2露光部位は紫外線によって硬化する第2乳剤硬化部(第2光架橋部)Pa2を形成する。第2乳剤硬化部Pa2の一部は突起部23dを構成し、他の一部はパターン開口23aの内壁を構成する。一方、カバー層23cのうち第2露光部位を除く部位である第2非露光部位は、乳剤が硬化しない第2未硬化部Pb2となる。第2未硬化部Pb2は、後の工程で除去されることでベース開口を含むパターン開口23aを形成する第2除去対象部を含む。
【0038】
第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、第2の露光処理は、第1の露光処理と同方向から、第1の露光処理よりも、幅狭の領域を対象とするパターンで露光することにより、所定範囲を硬化させる。第2パターニング工程において、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光することにより、第1の乳剤層の少なくとも一部と第2の乳剤層の少なくとも一部を含む領域を露光する。すなわち、第1の乳剤層において、第1の露光処理では硬化されなかった第1非露光部位のうち、パターン開口23aの内壁を構成する部位や、第1の露光処理で硬化された第1露光部位の一方側であってパターン開口23aのエッジの突起部23dとなる第2の乳剤層の一部が、第2の露光処理によって硬化する。
【0039】
その後、エッチング処理として、水や溶剤により、マスク膜の少なくとも片側を洗い流す。この処理によって、乳剤Pm1及びPm2の未硬化部Pb1,Pb2が洗い流される厚み方向において表面側から裏面側まで貫通するパターン開口23aが形成されるとともに、パターン開口23aのエッジ部に段差となる突起部23dが形成される。
【0040】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物を製造する方法について、図1を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体Baの表面に対向させて配置する。
【0041】
そして、図1に二点鎖線で示すように、高粘度のペースト状の塗布材Peをスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体Baとは反対側の面から供給し、塗布材Peをパターン開口23a内に充填させる。
【0042】
次に、スクリーンマスク20の裏面20b、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体Baの表側の面に対して所定の角度で配置する。そして、スキージ13をメッシュ22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体Ba側に向けて押しつけながら、所定の速度で移動させる。マスク膜23の裏面全面にわたる領域で、スキージ13がマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体Baに当接する。スキージ13が通過した塗布材Peがパターン開口23aから印刷媒体Ba側に押し出される。
【0043】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ22が復元するように変形して印刷媒体Baから離れるとともに、一部の塗布材Peが印刷媒体Ba上に転写されて残ることで、印刷媒体Ba上にパターン印刷がなされ、印刷物が完成する。このとき、塗布材Peは裏側の一部がマスク膜23側に残る。なお塗布材Peは、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。
【0044】
以上のように構成されたスクリーンマスク20、スクリーン印刷装置10、及びスクリーン印刷方法によれば、高精度での印刷が可能となる。
【0045】
図6はスクリーンマスク20および比較例にかかるスクリーンマスク20Aについて、パターン開口の形状と印刷形状を示す説明図である。比較例として突起部23dがなく、印刷面(P面)側の表面が平面状のスクリーンマスク20Aを示す。
【0046】
図6に示されるように、印刷面側の開口のエッジに突起部23dを設けたスクリーンマスク20は、比較例1の構成に比べて、印刷形状の滲みを低減でき、高精度に印刷が可能となる。
【0047】
また、上記実施形態によればスクリーンマスク20は2μm≦ΔTb≦2/3T(式1)、を満たす構成としたことにより、簡単な製造方法で、エッジにおいて所望の印圧を確保できる。
【0048】
すなわち、例えば図7に示すように、2μm>ΔTbとした場合には、突起部23dの高さが不十分で所望の印圧を得られずに、にじみの低減効果が得られない。一方で、ΔTb>2/3Tとした場合には強度不足となり、印刷時の耐久性が低下する。
【0049】
さらに、スクリーンマスク20は10μm≦Wc≦100μm(式2)の関係式を満たす構成としたことで、マスク膜が損傷しにくく、かつ、エッジにおいて所望の印圧を確保できる。すなわち、図8に示す様に、10μm>Wcとした場合には、印刷面側の突起部23dが損傷しやすく、Wc>100μmでは突起部23dにかかる圧力が相対的に小さくなり必要な印圧が得られない。
【0050】
また、本実施形態によれば、第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、露光量、露光時間などの条件を異ならせることで突起部23dを有するパターン開口を容易に形成することが可能である。
【0051】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク120について図1図9乃至図11を参照して説明する。図9は本実施形態にかかるスクリーン印刷装置の説明図であり、図10はスクリーンマスク120の一部の構成を示す説明図である。図11はスクリーンマスク120の製造方法を示す説明図である。なお、本実施形態にかかるスクリーンマスク120は、突起部23dがなく、パターン開口23aの内壁に段差部を有する構成である。この他の構成は、上記第1実施形態にかかるスクリーンマスク20の構成を同様であるため、共通する説明を省略する。
【0052】
図9に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク120と、スクリーンマスク120の印刷面側である表面(一方の面)20aに対向して印刷媒体Baを保持する保持部材12と、スクリーンマスク120の印刷面側とは反対の裏面(他方の面)20bに当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動部と、スクリーンマスク120を印刷媒体Baに対向して支持する支持部と、を備える。
【0053】
図9に示すように、スクリーンマスク120は、フレーム21と、フレーム21に張設されたサポート材であるメッシュ22と、メッシュ22に形成されたマスク膜123と、を備える。スクリーンマスク120において、印刷を行う際に印刷媒体Baの表面に対向する側を表面120aとし、その反対側であって塗布材Peが供給される側を裏面120bとする。
【0054】
マスク膜123は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。
【0055】
マスク膜123の厚みは例えば10μm~100μmに構成されている。
【0056】
マスク膜123は、メッシュ22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜123には、露光によって、印刷用の所定のパターン開口123aが形成されている。
【0057】
なお、パターン開口123aの最小開口幅、すなわち、パターン開口123aの最も狭い部分における開口の幅寸法は、30μm以下である。ここでは、一例として、マスク膜123の表面、すなわち印刷媒体Baに対向する表面20aにおける寸法を基準とした。
【0058】
パターン開口123aは、ライン状のパターン孔である。パターン開口123aは、印刷パターンに対応するパターン状であってマスク膜123を深さ方向に貫通するスリットを構成する。
【0059】
パターン開口123aは塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の開口エッジよりも印刷面とは反対側の供給側の開口エッジが広く構成されている。また、パターン開口123aの内側壁面はスキージの移動方向となる第1方向の一方側が他方側よりも開口エッジの広がりが大きく、非対称に構成される。パターン開口123aの印刷面側は平面状に構成されている。言い換えると、突起部23dが形成されていない。
【0060】
パターン開口123aの内側壁は、一例として、スキージ移動方向における後側に、深さ方向の中途部に開口内に向かって突出する突起状のガイド部123eを有し、このガイド部123eによって、パターン開口123aの側壁に段差123fが形成される。パターン開口123aは、スキージ側の大幅部と印刷面側の小幅部とを、段差123fによる変曲部を介して連続して有している。大幅部と小幅部は連続しており、印刷パターンに対応するパターン状であってマスク膜23を深さ方向に貫通するスリットを構成する。
【0061】
パターン開口123aの形状は、図10に示すように、
ΔW≦ΔT≦2/3T (式4)
ΔW=(Wb-Wa)≦40μm (式5)を満たす構成とする。
ここで、Tは総厚(メッシュおよび乳剤の厚みを含む厚み)、ΔTは印刷面からの段差厚み、ΔWはパターン開口123aの片側の段差幅である。Wbは大幅部の幅寸法,Waは小幅部の幅寸法である。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0062】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク120の製造方法について図11を参照して説明する。図11は、スクリーンマスク120の製造方法を示す説明図である。スクリーンマスク120の製造方法は層形成工程と、第1パターニング工程と、第2パターニング工程と、エッチング工程と、を備える。
【0063】
層形成工程において、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に乳剤を塗布して乳剤層を形成する。乳剤は例えば、光硬化性の樹脂であり、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を包含する液体である。
【0064】
まず、フレーム21の枠内にメッシュ22を略平面となるように取り付けた状態で、ST1に示すように、乳剤Pm1をメッシュ22上に塗布する塗布処理を行う。
【0065】
次に、乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程を行う。例えばST12に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第1のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の露光パターン領域に、乳剤層の表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤の表面を照らす露光処理を行う。第1の露光処理によって、露光パターン領域の部位に対応して、乳剤の紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。第1の露光処理によって露光される部位である第1露光部位は紫外線によって硬化する第1乳剤硬化部(第1光架橋部)Pa1を形成する。第1露光部位を除く部位である第1非露光部位は、乳剤が硬化しない第1未硬化部Pb1となる。第1未硬化部Pb1は、後の工程で除去されることでパターン開口123aのうち裏面側の一部を形成する第1除去対象部を構成する。
【0066】
次に、ST13に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第2のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の第2の露光パターン領域に、乳剤Pm1の表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤Pm1の表面を照らす露光処理を行う。第2の露光処理によって、露光パターン領域の部位に対応して、乳剤Pm1の紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。
第2の露光処理によって露光される部位である第2露光部位は紫外線によって硬化する第2乳剤硬化部(第2光架橋部)Pa2を形成する。第2露光部位を除く部位である第2非露光部位は、乳剤が硬化しない第2未硬化部Pb2となる。第2未硬化部Pb2は、後の工程で除去されることでパターン開口123aのうち印刷面側の一部を形成する第2除去対象部を構成する。
【0067】
第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、第2の露光処理は、第1の露光処理と同方向から、第1の露光処理よりも、幅広の領域を対象とするパターンで、露光深さの深い出力で、露光することにより、所定範囲を硬化させる。
【0068】
その後、エッチング工程として、水や溶剤により、乳剤Pm1の未硬化部Pb1,Pb2を洗い流す。この処理によって、乳剤Pm1には厚み方向において表面側から裏面側まで貫通するとともにガイド部123eを有するパターン開口123aが形成される。
【0069】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物を製造する方法について、図12を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体Baの表面に対向させて配置する。
【0070】
そして、図12に示すように、高粘度のペースト状の塗布材Peをスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体Baとは反対側の面から供給し、塗布材Peをパターン開口23a内に充填させる。
【0071】
次に、スクリーンマスク20の裏面20b、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体Baの表側の面に対して所定の角度で配置する。そして、スキージ13をメッシュ22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体Ba側に向けて押しつけながら、所定の速度で移動させる。マスク膜23の裏面全面にわたる領域で、スキージ13がマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体Baに当接する。スキージ13が通過した塗布材Peがパターン開口23aから印刷媒体Ba側に押し出される。
【0072】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ22が復元するように変形して印刷媒体Baから離れるとともに、一部の塗布材Peが印刷媒体Ba上に転写されて残ることで、印刷媒体Ba上にパターン印刷がなされ、印刷物が完成する。このとき、塗布材Peは裏側の一部がマスク膜23側に残る。なお塗布材Peは、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。
【0073】
以上のように構成されたスクリーンマスク120、スクリーン印刷装置10、及びスクリーン印刷方法によれば、パターン開口123aが、スキージの移動方向における先方よりも後方が供給側に拡大する構成としたことで、図12に示すように、スキージ13を移動させて塗布材を供給する際に、供給側から印刷面側に向かって塗布材が案内されることから、吐出圧力を確保でき、高精度での印刷が可能となる。例えば、図13は、本実施形態にかかるスクリーンマスク120と、比較例2にかかるスクリーンマスク120Aの形状と吐出圧力の作用を示す説明図である。比較例2として、スキージの移動方向における前後両側にガイド部がある対称形状のスクリーンマスク120Aを示す。
【0074】
図13に示されるように、本実施形態に係るスクリーンマスク120は、比較例2として開口のスキージの移動方向前後両側の側壁に、吐出側よりも供給側が拡大するガイド部が形成されたスクリーンマスク120Aの構成に比べて、スキージの移動方向に圧力が分散して逃げることを防止でき、吐出方向の吐出圧力を確保することが可能である。このため、吐出量及び吐出圧力を確保でき、高精度の印刷が可能となる。
【0075】
また、上記実施形態にかかるスクリーンマスク120は
ΔW≦ΔT≦2/3T (式4)
を満たす構成としたことにより、エッジにおける変形を防止し、かつ、所望の印圧を確保できる。
【0076】
すなわち、例えば図14に示すように、ΔW>ΔTとした場合には、マスク膜23が変形しやすく印刷形状が崩れやすい。一方で、ΔT>2/3Tとした場合には吐出圧力を高める効果が十分に得られない。
【0077】
また、本実施形態によれば、第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、露光量,露光時間などの条件を異ならせることで突起状のガイド部123eを有するパターン開口123aを容易に形成することが可能である。
【0078】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0079】
例えば上記第1実施形態において、パターン開口23aは開口幅が一定である例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図15に示すスクリーンマスク220のように、印刷面側が小幅となるようにテーパ状に構成してもよい。
【0080】
また、他の実施形態として図16に示すスクリーンマスク320のように、印刷面側が小幅となるように段差を有する構成としてもよい。
【0081】
さらに他の実施形態として図16にスクリーンマスク420のように、印刷面側が小幅となる段差を、スキージの移動方向の後ろ側に有する非対称の段差形状としてもよい。 また、段差ではなく傾斜面を有する構成としてもよい。例えばスキージの移動方向の後ろ側のみが印刷面が小幅となる傾斜面を有していても良いし、両側が傾斜面である場合に、スキージの移動方向の後ろ側が移動方向の前側よりも傾斜角が大きい傾斜面としてもよい。
【0082】
また、上記第2実施形態においては1段の段差123fを有する構成を例示したが、段の数は1段に限られるものではない。例えば他の実施形態として図17に示すように2段、あるいはそれ以上の段数を有する構成としてもよい。この場合には、式6、式7、式8、式9、および式10を満たすことが好ましい。
ΔW≦ΔT≦2/3T (式6)
ΔW=(Wb-Wa)≦40μm (式7)
ΔW<ΔW (式8)
ΔW≦ΔT≦2/3T (式9)
ΔW<ΔW (式10)
ここで、Tは総厚(メッシュおよび乳剤の厚みを含む厚み)、ΔTは印刷面からの段差厚み、ΔWはパターン開口523aの片側の段差幅である。また、nは複数であってもよい。
【0083】
また、上記実施形態においては、一部にのみ突起を有する構成を例示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図18に示すスクリーンマスク620の製造方法は、第1層形成工程と、第1パターニング工程と、第2層形成工程と、シーズニング工程と、第2パターニング工程と、エッチング工程と、を備える。
【0084】
第1層形成工程において、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤Pm1を塗布して第1の乳剤層を形成する(ST21)。
【0085】
次に、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程を行う。例えばST22に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第1のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の露光パターン領域に、ベース層623bの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤の表面を照らす露光処理を行う。ベース層623bのうち第1の露光処理によって露光される部位である第1露光部位は紫外線によって硬化する第1乳剤硬化部(第1光架橋部)Pa1となる。一方、ベース層623bのうち第1露光部位を除く部位である第1非露光部位は、乳剤が硬化しない未硬化部Pb1となる。第1未硬化部Pb1(第1非露光部位)は、後の工程で除去されることでベース開口を形成する第1除去対象部を構成する。
【0086】
ここで、第1の露光パターンと第2の露光パターンとは異なり、本実施形態においては第2露光部位が第1露光部位うちの一部と重なる。
【0087】
次に、ST23に示すように、第2の乳剤Pm2をベース層623b上に塗布する塗布処理を行うことで、ベース層623bの印刷面側に第2の乳剤Pm2によりカバー層623cが形成される。そして、マスクレス露光処理を行う条件下に3時間程度静置をすることにより、枠の温度を1回目のマスクレス露光処理時と同程度とするシーズニング工程を行う。
【0088】
次に、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程を行う。すなわち、ST24に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光機にて、第2のマスクレス露光処理を行う。具体的には、所定の第2の露光パターン領域に、乳剤Pm2の表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤Pm2の表面を照らす露光処理を行う。第2の露光処理によって、露光パターン領域の部位に対応して、乳剤Pm2の紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。すなわち、カバー層23cのうち第2の露光処理によって露光される部位である第2露光部位は紫外線によって硬化する第2乳剤硬化部(第2光架橋部)Pa2を形成する。第2乳剤硬化部Pa2の一部は突起部623dを構成し、他の一部はパターン開口23aの内壁を構成する。一方、カバー層23cのうち第2露光部位を除く部位である第2非露光部位は、乳剤が硬化しない第2未硬化部Pb2となる。第2未硬化部Pb2は、後の工程で除去されることでベース開口を含むパターン開口23aを形成する第2除去対象部を含む。
【0089】
第1の露光処理及び第2の露光処理は、いずれも印刷面側から光を照射する露光処理であり、第2の露光処理は、第1の露光処理と同方向から露光することにより、所定範囲を硬化させる。第2パターニング工程において、第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光することにより、第1の乳剤層の少なくとも一部と第2の乳剤層の少なくとも一部を含む領域を露光する。すなわち、第1の乳剤層において、第1の露光処理では硬化されなかった第1非露光部位のうち、パターン開口623aの内壁を構成する部位や、第1の露光処理で硬化された第1露光部位の一方側であってパターン開口623aのエッジの突起部623dとなる第2の乳剤層の一部が、第2の露光処理によって硬化する。なお、本実施形態において、第1の露光部位の一部は第2の露光部位とは重ならず、ベース層623bの表面側にカバー層623cが形成されない部位が存在する。
【0090】
その後、エッチング処理として、ST25に示すように、水や溶剤により、マスク膜の少なくとも片側を洗い流す。この処理によって、乳剤Pm1及びPm2の未硬化部Pb1,Pb2が洗い流される厚み方向において表面側から裏面側まで貫通するパターン開口623aが形成されるとともに、第1の露光部位と第2の露光部位が重なる部分が突起部623dとなり、表面に段差が形成される。
【0091】
一例として図18に示すスクリーンマスク620には、パターン開口23aが形成されているとともに、一方側の表面に段差が形成されている。すなわち、一方側の表面は第2露光工程の第2の露光部位に一方側に突出する突起部623dとなる凸部が形成され、第2の非露光部位に対応するカバー層623cが形成されない部位には凹部623gが形成される。凹部623gは、吐出方向と反対側に退避する逃げ部となり、例えば、印刷時に印刷媒体等のスクリーンマスク620と対向する部材側にアライメントマークなどの異物や突起、段差がある場合に、当該異物や突起との干渉を回避することが可能となる。
【0092】
このようなスクリーンマスク及びスクリーンマスクの製造方法によれば、任意の部位に凸部や凹部を有する段差を高精度に形成することができる。例えばスクリーンマスクの対向面にアライメントマークなどの異物や突起、段差がある場合に、当該部分に、吐出方向と反対側に退避する逃げ部となる凹みを高精度に形成でき、あるいは開口のエッジに凸部を高精度に形成することで必要な部位に必要な印圧を確保することができる。したがって、印刷精度の高いスクリーンマスク620を提供できる。
【0093】
なお、上記各実施形態において、第1の乳剤と第2の乳剤を用いる場合において、第1の乳剤と第2の乳剤は異なる材料であってもよいし、同じ材料であってもよい。
また、上記実施形態では、フレーム21にメッシュ22を接着剤24で貼り付け、フレーム21の開口部全域わたってマスク膜23を形成した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、メッシュは、いわゆるコンビネーション型を用いてもよく、また、メッシュ22の中央部分の一部にのみマスク膜23が形成されていてもよい。
【0094】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。素材の寸法比を調整することで、縦横伸び量の差を低減できるため印刷精度が向上できる。
【符号の説明】
【0095】
10…スクリーン印刷装置、12…保持部材、13…スキージ、13a…先端部分、20、20A、120、220、320、420…スクリーンマスク、20a…表面、20b…裏面、21…フレーム、22…メッシュ、22a…経糸、22b…緯糸、22c…孔部、23…マスク膜、23a…パターン開口、23b…ベース層、23c…カバー層、23d…突起部、24…接着剤、120b…裏面、123…マスク膜、123a…パターン開口、123e…ガイド部、123f…段差、Pa1…第1乳剤硬化部、Pa2…第2乳剤硬化部、Pb1…第1未硬化部、Pb2…第2未硬化部、Pm1…第1乳剤、Pm2…第2乳剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、
第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程と、
前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、
前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程と、
エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、一方側の表面に突起を形成する、エッチング処理と、を備え
前記露光は、マスクレス露光であり、
前記第1露光パターンは、第2露光パターンで形成される開口の幅よりも広い開口を形成するパターンであり、
前記第2パターニング工程は、前記第2の乳剤層の一方側から、前記第1の乳剤層の少なくとも一部と前記第2の乳剤層の少なくとも一部を含む領域を露光するとともに、
第2パターニング工程において、第1の乳剤層のうち前記開口の内壁を構成する部位と、第2の乳剤層において前記一方側の表面に形成される突起となる部位を硬化する、スクリーンマスクの製造方法。
【請求項2】
第2露光パターンの露光部位は、前記第1パターニング工程における非露光部位の少なくとも一部、及び前記第1パターニング工程における露光部位の少なくとも一部の前記一方側の領域を含む、請求項1に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項3】
前記エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、前記開口の縁部分の前記一方側の表面に突起を形成する、請求項1に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項4】
前記第2層形成工程の後、前記第2パターニング工程の前に、マスクレス露光処理を行う条件下に所定時間静置するシーズニング工程を備える、請求項1に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項5】
前記第2の乳剤層は前記第1の乳剤層よりも柔らかい請求項1乃至請求項のいずれかに記載のスクリーンマスクの製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一形態にかかるスクリーンマスクの製造方法は、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程と、前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程と、エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、一方側の表面に突起を形成する、エッチング処理と、を備え、前記露光は、マスクレス露光であり、前記第1露光パターンは、第2露光パターンで形成される開口の幅よりも広い開口を形成するパターンであり、前記第2パターニング工程は、前記第2の乳剤層の一方側から、前記第1の乳剤層の少なくとも一部と前記第2の乳剤層の少なくとも一部を含む領域を露光するとともに、第2パターニング工程において、第1の乳剤層のうち前記開口の内壁を構成する部位と、第2の乳剤層において前記一方側の表面に形成される突起となる部位を硬化する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
他の一形態に係るスクリーンマスクの製造方法において、第2露光パターンの露光部位は、前記第1パターニング工程における非露光部位の少なくとも一部、及び前記第1パターニング工程における露光部位の少なくとも一部の前記一方側の領域を含む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
他の一形態にかかるスクリーンマスクの製造方法において、前記第2層形成工程の後、前記第2パターニング工程の前に、マスクレス露光処理を行う条件下に所定時間静置するシーズニング工程を備える。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。素材の寸法比を調整することで、縦横伸び量の差を低減できるため印刷精度が向上できる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。(1)
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に第1の乳剤を塗布して第1の乳剤層を形成する第1層形成工程と、
第1の乳剤層に所定の第1露光パターンで露光する第1パターニング工程と、
前記第1の乳剤層に第2の乳剤を重ねて塗布して第2の乳剤層を形成する第2層形成工程と、
前記第1露光パターンとは異なる第2露光パターンにて露光する第2パターニング工程と、
エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、一方側の表面に段差を形成する、エッチング処理と、を備えるスクリーンマスクの製造方法。
(2)
前記第2パターニング工程は、前記第2の乳剤層の一方側から、前記第1の乳剤層の少なくとも一部と前記第2の乳剤層の少なくとも一部を含む領域を露光するとともに、
第2露光パターンの露光部位は、前記第1パターニング工程における非露光部位の少なくとも一部、及び前記第1パターニング工程における露光部位の少なくとも一部の前記一方側の領域を含む、(1)に記載のスクリーンマスクの製造方法。
(3)
前記エッチング処理により前記第1の乳剤層及び前記第2の乳剤層に開口を形成するとともに、前記開口の縁部分の前記一方側の表面に段差を形成する、(1)に記載のスクリーンマスクの製造方法。
(4)
前記露光はマスクレス露光である(1)乃至(3)のいずれかに記載のスクリーンマスクの製造方法。
(5)
前記第2の乳剤層は前記第1の乳剤層よりも柔らかい(1)乃至(4)のいずれかに記載のスクリーンマスクの製造方法。
(6)
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に形成され、塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の開口エッジよりも前記印刷面とは反対側の供給側の開口エッジが広くなる段差部または傾斜面を有するとともに、前記印刷面側の開口エッジに前記印刷面側に突出する突起部を有する、マスク膜と、を備えるスクリーンマスク。
(7)
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に設けられるとともにパターン開口が形成され、前記パターン開口は塗布材の吐出方向の一方側である印刷面側の開口エッジよりも前記印刷面とは反対側の供給側の開口エッジが広く、かつ、前記パターン開口の内側壁面は所定の第1方向における一方側が他方側よりも前記開口エッジの広がりが大きく非対称に構成されたマスク膜と、を備えるスクリーンマスク。
(8)
前記マスク膜は、スキージの移動方向の後方が先方よりも、前記供給側に拡大する、(7)に記載のスクリーンマスク。
(9)
前記マスク膜の前記パターン開口の内側壁は傾斜面を有する、(7)または(8)に記載のスクリーンマスク。
(10)
前記マスク膜の前記パターン開口の内側壁は中途部に段差を有する、(7)または(8)に記載のスクリーンマスク。