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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061828
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】板ばね装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/368 20060101AFI20240426BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F16F1/368 B
F16F1/18 G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039049
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2021019802の分割
【原出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】飯野 信次
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝充
(72)【発明者】
【氏名】今村 勝
(72)【発明者】
【氏名】林 孝徳
(57)【要約】
【課題】板幅方向の曲げ剛性を高め、軽量化を図り、車両の足回り部分のスペースを広く確保する。
【解決手段】繊維強化樹脂製の板ばね本体11と、板ばね本体の長手方向の両端部に1つずつ設けられた2つの目玉部12と、を備え、目玉部は、車体B1に板幅方向に延びる中心軸O回りに回転可能に支持され、板ばね本体における長手方向の中央部領域が車軸Wを支持し、かつ板ばね本体に空車荷重が加えられた状態で、板ばね本体が中心軸回りに回転しながら上方に向けて撓み変形するとともに、板ばね本体の上方に向けた最大撓み量をδ、板ばね本体の全長をL、板ばね本体の板厚をhとしたときに、h×δ/Lが、0.0005以上0.0015以下となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂製の板ばね本体と、
前記板ばね本体の長手方向の両端部に1つずつ設けられた2つの目玉部と、を備え、
前記目玉部は、車体に板幅方向に延びる中心軸回りに回転可能に支持され、
前記板ばね本体における長手方向の中央部領域が車軸を支持し、かつ前記板ばね本体に空車荷重が加えられた状態で、前記板ばね本体が前記中心軸回りに回転しながら上方に向けて撓み変形するとともに、前記板ばね本体の上方に向けた最大撓み量をδ、前記板ばね本体の全長をL、前記板ばね本体の板厚をhとしたときに、h×δ/Lが、0.0005以上0.0015以下となる、板ばね装置。
【請求項2】
前記目玉部は、前記板ばね本体の下面から下方に向けて突出した突出部を備え、
前記突出部が、車体に前記中心軸回りに回転可能に支持される、請求項1に記載の板ばね装置。
【請求項3】
前記中心軸を通り、かつ前記板ばね本体の上下面に直交する板厚方向に延びる直線は、前記板ばね本体と交差している、請求項1または2に記載の板ばね装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ばね装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維強化樹脂製の板ばね本体と、板ばね本体の長手方向の両端部に1つずつ設けられた2つの目玉部と、を備え、板ばね本体が車軸を支持し、かつ目玉部が車体に取付けられて用いられる板ばね装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-167827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維強化樹脂製の板ばね本体は、一般に金属製の板ばね本体からの置換品であることから、両者で長さ等の寸法は変わらないため、前記従来の板ばね装置では、金属製と比べて板幅方向の曲げ剛性が低く、操縦安定性が低下するという問題があり、また、軽量化を図り、車両の足回り部分のスペースを広く確保することに改善の余地があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、板幅方向の曲げ剛性を高め、軽量化を図り、車両の足回り部分のスペースを広く確保することができる板ばね装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の板ばね装置は、繊維強化樹脂製の板ばね本体と、前記板ばね本体の長手方向の両端部に1つずつ設けられた2つの目玉部と、を備え、前記目玉部は、車体に板幅方向に延びる中心軸回りに回転可能に支持され、前記板ばね本体における長手方向の中央部領域が車軸を支持し、かつ前記板ばね本体に空車荷重が加えられた状態で、前記板ばね本体が前記中心軸回りに回転しながら上方に向けて撓み変形するとともに、前記板ばね本体の上方に向けた最大撓み量をδ、前記板ばね本体の全長をL、前記板ばね本体の板厚をhとしたときに、h×δ/Lが、0.0005以上0.0015以下となる。
【0007】
この発明によれば、板ばね本体における長手方向の中央部領域が車軸を支持し、かつ板ばね本体に空車荷重が加えられた状態で、板ばね本体が板幅方向に延びる中心軸回りに回転しながら上方に向けて撓み変形するとともに、板ばね本体の上方に向けた最大撓み量をδ、板ばね本体の全長をL、板ばね本体の板厚をhとしたときに、h×δ/Lが、0.0005以上となる。
したがって、繊維強化樹脂製の板ばね本体の長さが短く抑えられることとなり、板幅方向の曲げ剛性が高められるとともに、板ばね本体の軽量化を図りつつ、車両の足回り部分のスペースを広く確保することができる。
また、h×δ/Lが0.0015以下となるので、板ばね本体の長さが短くなり過ぎ、板ばね本体に生ずる応力が過度に高くなるのを抑えることが可能になり、耐久性を確保することができる。
【0008】
前記目玉部は、前記板ばね本体の下面から下方に向けて突出した突出部を備え、前記突出部が、車体に前記中心軸回りに回転可能に支持されてもよい。
【0009】
この場合、目玉部のうち、板ばね本体の下面から下方に向けて突出した突出部が、車体に前記中心軸回りに回転可能に支持されるので、板ばね本体が、前記中心軸回りに回転しながら、上方に向けて撓み変形したときに、板ばね本体の長手方向の中央部領域が、車両進行方向に変位するのを確実に抑制することができる。
【0010】
前記中心軸を通り、かつ前記板ばね本体の上下面に直交する板厚方向に延びる直線は、前記板ばね本体と交差してもよい。
【0011】
この場合、前記中心軸を通り、かつ板ばね本体の板厚方向に延びる直線が、板ばね本体と交差しているので、板ばね本体の長手方向の中央部と、前記中心軸と、の長手方向の距離が抑えられ、板ばね本体が、前記中心軸回りに回転しながら、上方に向けて撓み変形したときに、板ばね本体の長手方向の中央部領域が、車両進行方向に変位するのを確実に小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、板幅方向の曲げ剛性を高め、軽量化を図り、車両の足回り部分のスペースを広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の板ばね装置を車両に装着した状態を示す側面図である。
図2】一実施形態の板ばね装置の側面図である。
図3】比較例1として示した板ばね装置の側面図である。
図4】比較例2として示した板ばね装置の側面図である。
図5図2から図4に示す側面図を組み合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、板ばね装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
本実施形態の板ばね装置1は、板ばね本体11、および2つの目玉部12を備えている。板ばね装置1は、板ばね本体11の長手方向が車両前後方向と一致した状態で、板ばね本体11における長手方向の中央部領域が車軸Wを支持し、目玉部12が車体B1に取付けられて用いられる。
【0015】
板ばね本体11は、繊維強化樹脂(FRP)により形成されている。繊維強化樹脂に含まれる繊維としては、例えばガラス繊維、および炭素繊維等が挙げられる。図示の例では、ガラス繊維を含有した繊維強化樹脂により形成されている。繊維は、板ばね本体11の長手方向にほぼ延ばされた状態で、樹脂中に含有されている。
【0016】
板ばね本体11は、車両に装着される前は、図1に二点鎖線で示されるように、長手方向に沿って中央部領域から外側の端部に向かうに従い、上方に向けて延び、下方に向けて突の曲面状に湾曲し、前述のように車両に装着された状態で、図1に実線で示されるように、ほぼ平坦となっている。図1に二点鎖線で示されるように、板ばね本体11は、車両に装着される前の状態で、上下方向および長手方向に直交する板幅方向から見て、単一の円弧形状を呈する。
【0017】
2つの目玉部12は、板ばね本体11の長手方向の両端部に1つずつ設けられている。目玉部12は、例えばアルミニウム合金等の金属材料で形成されている。図2に示されるように、目玉部12には、板幅方向に貫き、車体B1に取付けられた支持軸B2が嵌合される嵌合孔13が形成されている。2つの支持軸B2のうちの少なくとも1つは、板幅方向に延び、かつ支持軸B2より上方に位置する回転軸線を中心に、長手方向に揺動自在に支持されている。
【0018】
目玉部12は、板ばね本体11の下面から下方に向けて突出した突出部14を備えている。突出部14は、表裏面が板幅方向を向く板状に形成されている。突出部14は、板幅方向から見て、板ばね本体11の上下面に直交する板厚方向に長い長方形状を呈する。突出部14には、板ばね本体11の下面に向けて開口し、前記板厚方向に延びる雌ねじ部が形成されている。
【0019】
目玉部12は、板ばね本体11の上面に配置された上板部15を備えている。なお、上板部15および突出部14は一体に形成されてもよい。上板部15および板ばね本体11に、前記板厚方向に貫く貫通孔が形成されており、各貫通孔に一体にボルト17が挿入されている。ボルト17の下部は、突出部14の雌ねじ部に螺着されている。これにより、突出部14が板ばね本体11に固定されている。
【0020】
突出部14に嵌合孔13が形成されており、嵌合孔13は、板ばね本体11の長手方向の端部の下方に位置している。嵌合孔13は、突出部14の下端部に形成されている。嵌合孔13の中心軸Oは、板ばね本体11における長手方向の外端縁11aより長手方向の外側に位置している。嵌合孔13の中心軸Oを通り、かつ板ばね本体11の板厚方向に延びる直線Xは、板ばね本体11と交差している。嵌合孔13に、車体B1の支持軸B2が中心軸O回りに相対回転可能に嵌合されている。図示の例では、嵌合孔13にゴムブッシュ16が嵌合されており、ゴムブッシュ16内に支持軸B2が中心軸O回りに相対回転可能に嵌合されている。なお、ゴムブッシュ16は設けなくてもよい。
【0021】
板ばね本体11の下面における長手方向の中央部領域が車軸Wを支持し、かつ嵌合孔13に支持軸B2が嵌合されて、板ばね本体11に空車荷重が加えられた状態で、板ばね本体11の上方に向けた最大撓み量をδ、板ばね本体11の全長をL、板ばね本体11の板厚をhとしたときに、h×δ/Lが、0.0005以上0.0015以下となる。
つまり、乗員および荷物が搭載されていない積載荷重が零の車両に、板ばね装置1が装着されている状態で、h×δ/Lが、0.0005以上0.0015以下、好ましくは0.0006以上0.0014以下、さらに好ましくは0.0007以上0.0013以下となる。
最大撓み量δとは、板ばね本体11において、車軸Wを支持している長手方向の中央部領域における上方に向けた撓み量のことである。
板ばね本体11の全長Lとは、板ばね装置1が車両に装着される前の状態で、板ばね本体11における板厚方向の中央部を、長手方向の全長にわたって通る曲線のうち、前記直線X同士の間に位置する部分におけるこの曲線に沿う長さのことである。
板ばね本体11の板厚hとは、板ばね本体11のなかで最も板厚の薄い部分における板厚のことである。
【0022】
図示の例では、板ばね装置1が車両に装着される前の状態で、板ばね本体11の長手方向の中央部は、嵌合孔13の中心軸Oより下方に位置している。なお、板ばね装置1が車両に装着される前の状態で、板ばね本体11の長手方向の中央部は、嵌合孔13の中心軸Oに対して、上方に位置してもよいし、上下方向の同じ位置に位置してもよい。
【0023】
以上説明したように、本実施形態による板ばね装置1によれば、板ばね本体11における長手方向の中央部領域が車軸Wを支持し、かつ嵌合孔13に支持軸B2が嵌合されて、板ばね本体11に空車荷重が加えられた状態で、板ばね本体11の上方に向けた最大撓み量をδ、板ばね本体11の全長をL、板ばね本体11の板厚をhとしたときに、h×δ/Lが、0.0005以上となる。
したがって、繊維強化樹脂製の板ばね本体11の長さが短く抑えられることとなり、板幅方向の曲げ剛性が高められるとともに、板ばね本体11の軽量化を図りつつ、車両の足回り部分のスペースを広く確保することができる。
また、h×δ/Lが0.0015以下となるので、板ばね本体11の長さが短くなり過ぎ、板ばね本体11に生ずる応力が過度に高くなるのを抑えることが可能になり、耐久性を確保することができる。
【0024】
嵌合孔13が、板ばね本体11の長手方向の端部の下方に位置しているので、図3に示されるような、嵌合孔113が、板ばね本体111の長手方向の外端縁11aから長手方向に張り出して位置している比較例1の板ばね装置100、および、図4に示されるような、嵌合孔213が、板ばね本体211の上面から上方に張り出して位置している比較例2の板ばね装置200、と比べて、板ばね本体11が、嵌合孔13の中心軸O回りに回転しながら、上方に向けて撓み変形したときに、板ばね本体11のうち、車軸Wを支持している長手方向の中央部領域が、車両進行方向に変位するのを抑制することができる。
【0025】
すなわち、図2図5に示されるように、本実施形態の板ばね装置1、比較例1の板ばね装置100、および比較例2の板ばね装置200それぞれの側面図において、長手方向の中央部領域が同じ位置に位置している板ばね本体11、111、211が、同じ形状で同じ位置に位置するまで、嵌合孔13、113、213の中心軸O回りに回転しながら、上方に向けて撓み変形したときに、板ばね本体211、111、11の長手方向の中央部領域(車軸Wの中心)における長手方向の移動量D2、D1、Dが、比較例2、比較例1および本実施形態の順に小さくなっている。
【0026】
以上より、本実施形態による板ばね装置1によれば、板ばね本体11が上方に撓み変形する際に、車軸Wが車両進行方向に変位するのを抑制することが可能になり、操縦安定性を向上させること等ができる。
【0027】
嵌合孔13が、板ばね本体11の下面から下方に向けて突出した突出部14に形成されているので、板ばね本体11が、嵌合孔13の中心軸O回りに回転しながら、上方に向けて撓み変形したときに、板ばね本体11の長手方向の中央部領域が、車両進行方向に変位するのを確実に抑制することができる。
【0028】
嵌合孔13の中心軸Oを通り、かつ板ばね本体11の板厚方向に延びる直線Xが、板ばね本体11と交差しているので、板ばね本体11の長手方向の中央部と、嵌合孔13の中心軸Oと、の長手方向の距離が抑えられ、板ばね本体11が、嵌合孔13の中心軸O回りに回転しながら、上方に向けて撓み変形したときに、板ばね本体11の長手方向の中央部領域が、車両進行方向に変位するのを確実に小さく抑えることができる。
【0029】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0030】
例えば、板ばね本体11として、複数の板体が上下方向に積層された構成等を採用してもよい。
板ばね本体11に空車荷重が加えられた状態で、板ばね本体11が上方に向けて撓むのであれば、板ばね本体11の上面における長手方向の中央部領域が車軸Wを支持してもよい。
【0031】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 板ばね装置
11 板ばね本体
11a 外端縁
12 目玉部
13 嵌合孔
14 突出部
B1 車体
B2 支持軸
h 板厚
L 全長
O 中心軸
W 車軸
X 直線
Y 撓み量
δ 最大撓み量
図1
図2
図3
図4
図5