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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061829
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】蛍光薬剤用内視鏡照明システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/07 20060101AFI20240426BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61B1/07 730
A61B1/00 731
A61B1/00 621
A61B1/00 511
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039363
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2022579879の分割
【原出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102020117579.5
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】尾登 邦彦
(57)【要約】
【課題】撮像および治療の両方に使用できる内視鏡用の照明装置を提供する。
【解決手段】出力光を出力するための照明装置が提供され、660nm~699nmの第1の範囲に第1のピーク波長を有する第1の光を放射するように構成された第1の光源と、689nm~705nmの第2の範囲に第2のピーク波長を有する第2の光を放射するように構成された第2の光源と、を含み、第2のピーク波長は、第1のピーク波長よりも少なくとも5nm大きく、第2の光源は、第1の光源とは独立してオンおよびオフが切り替えられるように構成され、装置は、第2の光源がオフに切り替えられている場合には第1の光を出力光として出力し、第2の光源がオンに切り替えられている場合には第1の光および第2の光を出力光として出力するように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力光を出力するための照明装置であって、
660nm~699nmの第1の範囲に第1のピーク波長を有する第1の光を放射するように構成された第1の光源と、
689nm~705nmの第2の範囲に第2のピーク波長を有する第2の光を放射するように構成された第2の光源と、を含み、
前記第2のピーク波長は、前記第1のピーク波長よりも少なくとも5nm大きく、
前記第2の光源は、前記第1の光源とは独立してオンおよびオフが切り替えられるように構成され、
前記装置は、前記第2の光源がオフに切り替えられている場合には前記第1の光を前記出力光として出力し、前記第2の光源がオンに切り替えられている場合には前記第1の光および前記第2の光を前記出力光として出力するように構成される、照明装置。
【請求項2】
前記第1の光源からの前記第1の光と前記第2の光源からの前記第2の光とを合成して前記出力光を出力するように構成された第1のコンバイナをさらに含む、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
出力光を出力するための照明装置であって、
660nm~700nmの第1の範囲に第1のピーク波長を有する第1の光を放射するように構成された第1の光源と、
所定の波長よりも小さい波長の光を通過させ、前記所定の波長よりも大きい波長の光を遮断するように構成された第1のフィルタと、
前記第1の光源からの前記第1の光の光路上にあって、前記装置が前記第1のフィルタによりフィルタリングされた前記第1の光を前記出力光として出力するように構成される第1の位置と、前記装置が前記出力光として680nm~720nmの波長範囲のいずれかの波長の光強度の30%を超える光強度をフィルタリング除去するフィルタを通過することなく前記第1の光を出力するように構成される第2の位置との間で、前記第1のフィルタを移動させるように構成された移動装置と、を含み、
前記所定の波長は689nm~700nmの範囲内であり、
前記所定の波長よりも大きい波長における前記第1の光の強度は、前記ピーク波長における前記第1の光の強度の少なくとも50%である、照明装置。
【請求項4】
白色光を放射するように構成された白色光源と、
前記出力光が前記白色光を含むように、前記白色光源からの前記白色光を合成するように構成された白色光コンバイナと、をさらに含み、
前記白色光源は、前記第1の光源から、および利用可能であれば前記第2の光源から独立してオンおよびオフに切り替えられるように構成される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記白色光コンバイナは、前記第1のコンバイナと一体である、請求項2に従属する請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1の光コンバイナの少なくとも1つは、少なくとも1つのダイクロイック反射界面を含む、
請求項2、4、および5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
撮像システムであって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の前記照明装置と、
前記照明装置からの前記出力光によってシーンが照明されている場合には、前記シーンを第1の撮像面上に撮像するように構成された撮像装置と、を含む、撮像システム。
【請求項8】
前記撮像装置は、
予め設定された波長よりも小さい波長を有する前記シーンからの光を前記第1の撮像面に到達しないように遮断し、かつ、前記予め設定された波長よりも大きい波長を有する前記シーンからの光を前記第1の撮像面に到達するように通過させるように構成された励起光カットフィルタを含み、
前記予め設定された波長は690nm~700nmの範囲内である、請求項7に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記第1の撮像面に配置された第1の撮像素子をさらに含む、
請求項7または8に記載の撮像システム。
【請求項10】
前記予め設定された波長よりも大きい波長を有する前記シーンからの前記光が前記撮像面に到達し、かつ、最小波長よりも短い波長を有する他の光が前記第1の撮像面とは異なる第2の撮像面に到達するように、前記シーンからの前記光を分割するように構成されたさらなるダイクロイックミラーと、
前記第2の撮像面に配置された第2の撮像素子と、をさらに含み、
前記撮像装置が前記励起光カットフィルタを含む場合には、前記励起光カットフィルタは、前記最小波長よりも小さい波長を有する光を通過させるように構成され、
前記最小波長は前記予め設定された波長よりも少なくとも20nm小さい、
請求項9に記載の撮像システム。
【請求項11】
内視鏡であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の前記照明装置または請求項7から10のいずれか一項に記載の前記撮像システムと、
前記内視鏡の遠位端に配置された剛性先端部分と、を含み、
前記内視鏡の前記剛性先端部分は、前記照明装置からの出力光を出力するように構成される、内視鏡。
【請求項12】
前記剛性先端部分は前記照明装置を含む、請求項11に記載の内視鏡。
【請求項13】
前記照明装置からの前記出力光を前記剛性先端部分に伝送するように構成された光ファイバをさらに含み、
前記照明装置は、前記内視鏡の近位端または前記内視鏡の外部に配置される、
請求項11に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光薬剤用内視鏡照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
NIR-PIT(近赤外光免疫療法)は、新たな癌治療として期待されている。NIR-PIT用薬剤は、光反応器であるIRDye700DX(以下、IR700)とのコンジュゲート構造と抗体医薬を有する。薬物の主な機能は、分子標的治療のための薬物送達システム(DDS)、自己蛍光(510nm)に対する十分な分化を伴う蛍光撮像、および治療である(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6704485/を参照)。
【0003】
IR700の励起および発光特性を図1に示す。グラフが示すように、励起感度(λp,ex=689nmでの最大励起感度)と蛍光の発光(λp,em=699nm)のピーク波長は非常に近い。
【0004】
励起光によって励起されるIR700からの蛍光によってシーンを撮像しようとする場合、励起光は放射される蛍光に近い波長を有するべきである。しかしながら、このような励起光は蛍光による撮像を乱す。撮像システムが多くの励起光なしに十分な蛍光信号を得るようにこれら2つの光を分離することは困難である。
【0005】
一方、治療的な使用のためには、IR700のピーク励起波長(689nm)およびピーク励起波長付近の数nmにおける50J/cm2などの高い比エネルギー蓄積が必要である。そうでなければ、治療反応に長時間を要することがある。
【0006】
撮像および治療が単一の内視鏡によって実行される場合には、撮像および治療使用の要件は互いに矛盾する。
【0007】
CIE1931は、電磁可視スペクトルの波長分布と人間の色覚における生理学的に知覚される色とを結び付ける。図2は、CIE1931(people.cs.clemson.eduから取得したx-y平面)による色域を示す。中央の領域(色の表記なし)は、白っぽい光を示す。色域の境界の数字は、それぞれのスペクトルクリーン光の波長(nm)を示す。白色光は、座標x=1/3、y=1/3、およびz=1/3を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、IR700からの蛍光に基づく撮像と、例えば癌治療のためのIR700の治療的使用との両方を可能にする改善された照明システムを提供する。
【0010】
出力光を出力するための照明装置が提供され、660nm~699nmの第1の範囲に第1のピーク波長を有する第1の光を放射するように構成された第1の光源と、689nm~705nmの第2の範囲に第2のピーク波長を有する第2の光を放射するように構成された第2の光源と、を含み、第2のピーク波長は、第1のピーク波長よりも少なくとも5nm大きく、第2の光源は、第1の光源とは独立してオンおよびオフが切り替えられるように構成され、装置は、第2の光源がオフに切り替えられている場合には第1の光を出力光として出力し、第2の光源がオンに切り替えられている場合には第1の光および第2の光を出力光として出力するように構成される。
【0011】
さらなる詳細、特徴、目的、および利点は、添付の図面と併せて解釈されるべき本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】IR700の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図2】CIE1931による色域を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による照明装置を示す図である。
図4図3の照明装置において使用されるクロスキューブのダイクロイック界面の反射率を示す図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態による撮像システムに含まれるフィルタを通る透過率を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による照明装置を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による照明装置を示す図である。
図8図7の照明装置において使用されるダイクロイック界面(ダイクロイックミラー)の反射率を示す図である。
図9図7の照明装置に含まれる光学カットフィルタの透過率を示す図である。
図10】IR700の励起スペクトルおよび発光スペクトルにわたって光路から光学カットフィルタが除去された場合の図7の照明装置からの出力光の例示的なスペクトルを示す図である。
図11】光学カットフィルタがIR700の励起スペクトルおよび発光スペクトルにわたって光路内にある場合の、図7の照明装置からの出力光の例示的なスペクトルを示す図である。
図12】本発明の一実施形態による照明装置を示す図である。
図13】本発明の一実施形態による照明装置を示す図である。
図14】本発明の一実施形態による照明装置を示す図である。
図15】本発明のいくつかの実施形態による撮像システムにおいて使用され得るセンサシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の特定の実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明するが、実施形態の特徴は、特に記載のない限り、互いに自由に組み合わせることができる。しかしながら、特定の実施形態の説明は例としてのみ与えられており、本発明を開示された詳細に限定するものとして決して理解されることを意図していないことが明確に理解されるべきである。
【0014】
第1の実施形態
第1の実施形態によれば、照明装置は、少なくとも2つの光源を有する。
【0015】
光源1は、ピーク波長660nm≦λp1<699nmを有する。それは、蛍光撮像および治療的使用の両方に使用され得る。このピーク波長は、IR700の発光ピーク波長(699nm)よりも短く、「光源2」のピーク波長よりも短い。
【0016】
光源2は、ピーク波長689nm≦λp2<705nmを有する。それは、典型的には治療的使用のみに使用される。光源2のピーク波長は、光源1のピーク波長よりも大きい。例えば、少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nm大きくてもよい。
【0017】
シーンの蛍光撮像には、通常、光源1のみが使用される。したがって、シーンから来る700nm以上の波長の光は、主にIR700による蛍光から生じる。
【0018】
治療的使用において、「光源1」および「光源2」の両方は、典型的には、PITの治療反応を促進するためにオンにされる。したがって、患者および医療従事者の負担を軽減するために、光源の1つのみによる照明と比較して処置時間が短縮される。
【0019】
光源1および2は、典型的には、レーザダイオードまたはLEDであってよい。光源1の例は、レーザダイオードL690-66-60(ウシオオプト半導体株式会社製)およびMRL-III-690である(http://www.cnilaser.com/red_laser690.htmを参照)。
【0020】
光源2の一例は、レーザダイオードMLL-FN-698である(http://www.cnilaser.com/Red-Laser-698nm.htmを参照)。
【0021】
さらに、装置は、白色光撮像などの別の撮像モード用の光源3を含んでもよい。白色光撮像の場合、第3の光源3は、第1の光源からの光よりもCIE1931の白色点(x=y=z=1/3)に近くなるように光を放射する。「白色点に近い」とは、白色点x=y=1/3(z方向は無視)からCIE1931の色域のx-y平面におけるユークリッド距離が短いことを意味する。x-y平面における座標xi,yiの照明光の白色点からのユークリッド距離は、(xi-1/3)2+(yi-1/3)2である。
【0022】
白色光撮像は、別の撮像モードの一例にすぎない。また、必要に応じて、白色光での撮像に代えて(あるいは加えて)、有色光あるいはUV光あるいは(遠)赤外光(一般に、スペクトル撮像)による撮像を行ってもよい。
【0023】
2つまたは3つの光源からの光は、コンバイナによって合成される。2つの光源には、ダイクロイックミラーを用いてもよい。3つの光源に対して、2つのダイクロイックミラーを使用することができる。2つのダイクロイックミラーは、2つのダイクロイック界面を含むクロスキューブ内で機能的に組み合わされてもよい。
【0024】
図3は、そのような照明装置の一実施形態を示す。図4は、図3の照明装置に使用されるクロスキューブのダイクロイック界面の反射率を示す。図3から分かるように、光源1からの光および光源3からの光は、クロスキューブのそれぞれのダイクロイック界面で反射される。光源2からの光は、両方のダイクロイック界面を通過する。したがって、この例では、図4に示すように、一方のダイクロイック界面は、第1の光源のピーク波長λp1付近の光を反射し、他方のダイクロイック界面は、例えば400nm~650nmの範囲の白色光を反射する。反射帯域は、典型的には、互いに分離されている。ダイクロイック界面は、第2の光源のピーク波長λp2およびλp2付近の波長などの他の波長の光を通過させる。
【0025】
合成光は、光を光ファイバに入力してシーンを照明する光コネクタ上の集光器(凸レンズなど)によって集光されてもよい。例えば、光ファイバの出射端を内視鏡の遠位剛性先端部分に配置し、内視鏡の剛性先端部分に配置された撮像素子(対物レンズ)により撮像されるシーンを照明してもよい。
【0026】
照明装置が被照明シーンの近くに配置される場合、例えば照明装置が内視鏡の剛性先端部分に配置される場合には、集光器、光コネクタ、および光ファイバは省略されてもよい。図12図14はそれぞれの例を提供する。この場合、光源1および光源2は、典型的には、例えばAlGaInP材料に基づくLEDである。いくつかの実施形態は、2つの異なるタイプのLEDを含む。いくつかの実施形態では、LED1は、LED2と同じタイプであってもよいが、図7に関して以下でさらに説明するフィルタに対応するフィルタで覆われてもよい。
【0027】
図12に示すように、内視鏡の遠位端の剛性先端部分に設けられた照明装置は、1つまたは2つの回路基板上に配置されたLED1およびLED2のみを含む。さらに、照明装置は、図13に示すように、青色LEDおよび紫色LEDなどのさらなるLEDを含んでもよい。さらに、LEDは、図14に示すように、蛍光体層および/または透明キャップによって覆われてもよい。好ましくは、蛍光体層は、LED1またはLED2からの光によって蛍光またはルミネセンスが励起されないような励起スペクトルを有する。すなわちLED1およびLED2からの光の場合、蛍光体層は実質的に透明である。
【0028】
いくつかの実施形態では、異なるピーク波長を有するさらにより多くの光源の光は、適切な数のダイクロイック反射界面(n個の光源→n-1個のダイクロイック反射界面)を介して結合されてもよい。最大4つのダイクロイック界面が、それぞれのクロスキューブに一緒に配置されてもよい(出力光の伝搬方向を含む第1の平面内に配置された第1および第2の光源からの光を反射するための2つのダイクロイック界面、ならびに出力光の伝搬方向を含む第2の平面内に配置された第3および第4の光源からの光を反射するための2つのダイクロイック界面であって、第1の平面は第2の平面と交差し、典型的には、第2の平面は第1の平面に対して垂直である)。
【0029】
このような照明装置の一例を図6に示す。図6において、3つのクロスキューブ(一般に、クロスプリズム)のそれぞれは、2つのダイクロイック界面を有する。3つの近赤外(NIR)光源NIR1、NIR2、NIR3の光は、第1のクロスキューブで合波され、第2および第3のクロスキューブは、第1のクロスキューブで出力された光にRGB光(赤、緑、青)とUV光(紫外線)を合波する。RGB光によって、白色光撮像を実現することができる。UV光は、場合によっては緑色光と一緒になって、血管撮像を向上させるために使用されてもよい。図6の例では、光源からの光は、それぞれのクロスキューブに入射する前に、それぞれのレンズによってコリメートされる。ダイクロイック反射界面が適切な反射特性を有していれば、光源の配置を変更してもよい。例えば、RGB光源の一部または全部は、それらの位置をNIR光源の位置と交換することができる。
【0030】
一般に、照明装置の各光源は別々に制御可能であってもよい。すなわち、それぞれが他の光源とは独立してオンおよびオフが切り替えられてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、光源の少なくとも1つの光強度または放射色は、他の光源とは独立して制御されてもよい。いくつかの実施形態は、制御を実行するためのコントローラを含む。
【0031】
例えば、第1の光源のみがオンにされる場合、照明装置は、撮像面上に撮像されるシーンを照明することができる。撮像には、撮像装置が用いられてもよい。撮像装置は、典型的には、撮像面上のシーンを撮像するための対物レンズを含む。しかしながら、撮像装置は、レンズ光学系に限定されず、例えば反射構成要素(反射光学系)を含んでもよい。
【0032】
さらに、いくつかの実施形態では、撮像装置は、バンドフィルタであってもよいフィルタ(励起光カットフィルタ)を含む。すなわち、このフィルタは、670nm~715nmの波長範囲では、IR700からの蛍光(すなわち、699nm~715nmの範囲の波長帯域)を透過し、699nm未満の範囲では励起光を遮断する。したがって、励起光が蛍光の像を乱さない(またはほとんど乱さない)。一般に、フィルタは、690nm~700nmの範囲内にある予め設定された波長未満の光を遮断し、予め設定された波長を超える光を通過させることができる。
【0033】
さらに、図5に示すように、フィルタは、第3の光源からの白色光(650nm未満の波長)を通過させ、同じ撮像装置を第1の光源による照明による蛍光撮像および第3の光源による照明による白色光撮像に使用することができる。
【0034】
撮像面上の画像は、CMOSアレイまたはCCDアレイなどの撮像素子によって取り込まれてもよい。いくつかの実施形態では、撮像面上の画像は、直接またはリレー光学系を介して観察することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、ビームはさらなるダイクロイックミラーによって分割されてもよい。さらなるダイクロイックミラーは、蛍光画像が第1の画像センサによって観察され得る一方で、他の光が第1の撮像素子から遮断されるように、蛍光を反射することができる。さらなるダイクロイックミラーは、他の光源のうちの1つまたは複数からの白色光(またはRGB光のうちの1つ)またはUV光などの他の光を通過させることができる。したがって、他の光による照明による画像は、第2の撮像素子によって観察され得る。観察は、第1および第2の撮像素子に対して同時に実行されてもよい。いくつかの実施形態では、さらなるダイクロイックミラーは、上記の構成の代わりに、蛍光を通過させ、他の光を反射することができる。
【0036】
さらに、センサ構成は、特にさらなるダイクロイックミラーが対応するフィルタ機能を含まない場合には、励起光をフィルタリングするための励起光カットフィルタ(上述のものなど)を含んでもよい。このようなセンサ構成を図15に示す。対物レンズおよび他の光学部品は、明確にするために図15から省略されている。この場合、励起光カットフィルタは、予め設定された波長より少なくとも20nm低い波長を有する光を通過させる。好ましくは、差は、励起光がほとんど励起光カットフィルタを通過せず、白色光(またはRGB光のいずれか)またはUV光が励起光カットフィルタを通過するように、さらに大きい(例えば、40nmまたはさらには60nm)。
【0037】
第2の実施形態
以下、第2の実施形態と第1の実施形態との相違点について説明する。特に明記または文脈から明らかにされていない場合、第1の実施形態の説明は第2の実施形態にも適用される。
【0038】
第2の実施形態では、図7に示すように、照明装置は、660nm≦λp1<700nmの範囲内のピーク波長λp1と、ピーク波長における強度の少なくとも30%で700nmを超えて広がる発光スペクトルと、を有するただ1つのNIR光源(第1の光源)を含む。
【0039】
さらに、光源と照明装置の出力との間(例えば、光源と光コネクタとの間)の光路上に光学フィルタ(例えばバンドパスフィルタ)が配置されている。バンドパスフィルタは、光路内にあっても光路外にあってもよいように移動可能である。バンドパスフィルタは、励起光を通過させ、IR700により放射される蛍光の波長範囲の光を実質的に遮断する。例えば、バンドパスフィルタは、所定の波長よりも小さい波長の光を通過させ、所定の波長よりも大きい波長の光を遮断することができ、所定の波長は689nm~700nmの範囲内にある。
【0040】
フィルタとして効果的であるために、所定の波長における第1の光源の光強度は、第1の光源からの光のピーク波長における光強度の少なくとも50%である。好ましくは、少なくとも65%、さらには少なくとも80%である。
【0041】
フィルタは、移動装置によって光路の内外に移動されてもよい。移動装置は、例えばモータであってもよい。モータは、コントローラによって制御されてもよい。移動装置は、例えば、フィルタを手動で移動させることができるように、ハンドルまたは他の何らかの機構であってもよい。運動は、例えば、直線運動または回転運動であってもよい。フィルタが光路から外れた場合には、照明装置から出力される光は、680nm~720nmの関連する波長範囲内の任意の波長の光強度の30%を超える光強度を除去するフィルタを通過することなく光源からの光を含む。
【0042】
フィルタが光路内にある場合、蛍光に対応する光源からの光は実質的に遮断されるため、1つの光源を撮像に使用することができる。バンドパスフィルタが光路内にない場合、光源は高い放射パワーで治療に使用され得る。
【0043】
図7に示すように、第2の実施形態の照明装置は、追加的に(任意選択的に)第2の光源(例えば、白色光源)を含んでもよい。第2の光源は、第1の実施形態の第3の光源に対応し、例えば白色光撮像に使用することができる。第1の光源(可動フィルタが光路に挿入されている場合には、可動フィルタによってフィルタリングされている)および第2の光源からの光は、ダイクロイック反射面(例えば、ダイクロイックミラー)によって合成されてもよい。図8は、ピーク波長λp(図8にも概略的に示されている)付近の第1の光源からの光を反射させ、白色光源からの白色光を反射型ダイクロイック面に通過させるべき場合の、ダイクロイック反射面の反射率の一例を示す。この場合の反射帯域はまた、可動フィルタによって遮断され得る第1の光源からのスペクトル(の少なくとも一部)を含む。
【0044】
図9に、可動フィルタの透過スペクトルの一例を示す。フィルタは、第1の光源からのより低い波長範囲の光のみを透過する。図9の例では、第1の光源からの光のピーク波長より低い光のみを実質的に透過する。しかしながら、これは必須ではない。透過帯域は、IR700の蛍光を励起するのに十分な光が通過し、より大きな波長の光(蛍光に相当)の十分に大きな部分が遮断されるように設定されてよい。
【0045】
図10は、図1に示したIR700の励起スペクトルおよび発光スペクトルにわたって、第2の実施形態の第1の光源が放射する光(黒四角)の一例を示している。この場合、第1の光源からの光のスペクトルは、IR700の励起スペクトルのピークにほぼ対応する。したがって、第1の光源からの光は、IR700の蛍光を効率的に励起する。大きなエネルギー線量が組織に蓄積され得る。
【0046】
これに対して、図11は、図1に示したIR700の励起スペクトルおよび発光スペクトルに対して、可動フィルタでフィルタリングされた第1の光源からの光のスペクトル(黒四角)を示している。この例では、より大きな波長(約695nm超)の放射光の一部が遮断される。したがって、この光は、IR700の蛍光を依然として励起するが、IR700によって生成される蛍光をほとんど妨害しない。
【0047】
第2の実施形態の撮像装置は、第1の実施形態と同様であってもよい。また、第2の実施形態の照明装置は、図6に示す照明装置と同様に、1つまたは複数のRGB光源、UV光源、または(遠)IR光源などの、第1の光源とは異なる波長を放射するさらなる光源を含んでもよい。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態による照明装置は、外部ボックス(光源ボックスまたはプロセッサシステム)内に配置されてもよい。外部ボックスからの光は、内視鏡の遠位先端部に配置された撮像装置(例えば対物レンズ)の対象空間を照明するために、1つまたは複数の光ファイバを介して内視鏡の近位端から内視鏡の遠位先端部に導かれてもよい。しかしながら、照明システムは、代わりに、制御本体、内視鏡コネクタ、または内視鏡の遠位先端部に配置されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、照明装置から光ファイバに光を誘導するための光ファイバおよび光学系(例えば光コネクタ)は、照明装置の出力部分に属すると見なされてもよい。これらの実施形態では、光源およびダイクロイック反射界面などのコンバイナを設計するときに、クロスキューブから出力される光に対するそれらの影響を考慮に入れることができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態は、マザースコープとベビースコープとの組み合わせを含む。そのような組み合わせは、細い周辺領域または気管支のような器官に接近するために使用され得る。この場合、マザースコープは、従来の内視鏡として振る舞う。ベビースコープは、マザースコープの作業チャネルを介してマザースコープによって案内される。すなわち、ベビースコープはマザースコープよりもはるかに薄い。
【0051】
外部ボックス(光源ボックス)から出力された光は、マザースコープとベビースコープの両方が同じ光でそれぞれのシーンを照らすように、ビームスプリッタによってマザースコープとベビースコープに適切な割合で分割され得る。ビームスプリッタは、光源ボックスからの光コネクタの一部であってもよい。
【0052】
照明装置を含む内視鏡は、シャフト(例えば、剛性または可撓性のチューブ)のないカプセル型内視鏡であってもよいし、遠位端の剛性先端部分およびシャフト(例えば、剛性または可撓性のチューブ)を含む内視鏡であってもよい。剛性先端部分は、角度セグメントを介して直接的または間接的にシャフトに接続されてもよい。内視鏡は、人体の管腔に挿入するのに適することができる。
いくつかの実施形態では、照明装置および場合によっては、撮像装置は内視鏡に配置されないように生体外で使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
IR700からの蛍光に基づく撮像用の照明光と、IR700を用いた治療用の出力光を出力するための照明装置が提供され、660nm~700nmの第1の範囲に第1のピーク波長を有する第1の光を放射するように構成された第1の光源と、所定の波長よりも小さい波長の光を通過させ、前記所定の波長よりも大きい波長の光を遮断するように構成された第1のフィルタと、前記第1の光源からの前記第1の光の光路上にあって、前記照明装置が前記第1のフィルタによりフィルタリングされた前記第1の光を前記照明光として出力するように構成される第1の位置と、前記照明装置が前記出力光として680nm~720nmの波長範囲のいずれかの波長の光強度の30%を超える光強度をフィルタリング除去するフィルタを通過することなく前記第1の光を出力するように構成される第2の位置との間で、前記第1のフィルタを移動させるように構成された移動装置と、を含み、前記所定の波長は689nm~700nmの範囲内であり、前記所定の波長よりも大きい波長における前記第1の光の強度は、前記第1のピーク波長における前記第1の光の強度の少なくとも50%である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IR700からの蛍光に基づく撮像用の照明光と、IR700を用いた治療用の出力光を出力するための照明装置であって、
660nm~700nmの第1の範囲に第1のピーク波長を有する第1の光を放射するように構成された第1の光源と、
所定の波長よりも小さい波長の光を通過させ、前記所定の波長よりも大きい波長の光を遮断するように構成された第1のフィルタと、
前記第1の光源からの前記第1の光の光路上にあって、前記照明装置が前記第1のフィルタによりフィルタリングされた前記第1の光を前記照明光として出力するように構成される第1の位置と、前記照明装置が前記出力光として680nm~720nmの波長範囲のいずれかの波長の光強度の30%を超える光強度をフィルタリング除去するフィルタを通過することなく前記第1の光を出力するように構成される第2の位置との間で、前記第1のフィルタを移動させるように構成された移動装置と、を含み、
前記所定の波長は689nm~700nmの範囲内であり、
前記所定の波長よりも大きい波長における前記第1の光の強度は、前記第1のピーク波長における前記第1の光の強度の少なくとも50%である、照明装置。
【請求項2】
白色光を放射するように構成された白色光源と、
前記照明光が前記白色光を含むように、前記白色光源からの前記白色光を合成するように構成された白色光コンバイナと、をさらに含み、
前記白色光源は、前記第1の光源から独立してオンおよびオフに切り替えられるように構成される、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
撮像システムであって、
請求項1または2のいずれか一項に記載の前記照明装置と、
前記照明装置からの前記照明光によってシーンが照明されている場合には、前記シーンを第1の撮像面上に撮像するように構成された撮像装置と、を含む、撮像システム。
【請求項4】
前記撮像装置は、
予め設定された波長よりも小さい波長を有する前記シーンからの光を前記第1の撮像面に到達しないように遮断し、かつ、前記予め設定された波長よりも大きい波長を有する前記シーンからの光を前記第1の撮像面に到達するように通過させるように構成された励起光カットフィルタを含み、
前記予め設定された波長は690nm~700nmの範囲内である、請求項3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記第1の撮像面に配置された第1の撮像素子をさらに含む、
請求項3または4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記予め設定された波長よりも大きい波長を有する前記シーンからの前記光が前記第1の撮像面に到達し、かつ、最小波長よりも短い波長を有する他の光が前記第1の撮像面とは異なる第2の撮像面に到達するように、前記シーンからの前記光を分割するように構成されたさらなるダイクロイックミラーと、
前記第2の撮像面に配置された第2の撮像素子と、をさらに含み、
前記撮像装置が前記励起光カットフィルタを含む場合には、前記励起光カットフィルタは、前記最小波長よりも小さい波長を有する光を通過させるように構成され、
前記最小波長は前記予め設定された波長よりも少なくとも20nm小さい、
請求項4に記載の撮像システム。
【請求項7】
内視鏡であって、
請求項1または2に記載の前記照明装置または請求項3から6のいずれか一項に記載の前記撮像システムと、
前記内視鏡の遠位端に配置された剛性先端部分と、を含み、
前記内視鏡の前記剛性先端部分は、前記照明装置からの前記照明光および前記出力光を出力するように構成される、内視鏡。
【請求項8】
前記剛性先端部分は前記照明装置を含む、請求項7に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記照明装置からの前記照明光および前記出力光を前記剛性先端部分に伝送するように構成された光ファイバをさらに含み、
前記照明装置は、前記内視鏡の近位端または前記内視鏡の外部に配置される、
請求項7に記載の内視鏡。
【外国語明細書】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15