(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006184
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 46/00 20220101AFI20240110BHJP
【FI】
B01D46/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106843
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】木寺 康仁
(72)【発明者】
【氏名】工藤 雅章
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA33
4D058KA01
4D058KA06
4D058KA23
4D058KC37
4D058KC54
4D058KC63
4D058KC64
4D058KC81
4D058LA01
(57)【要約】
【課題】ケーシングに取り付けられるエアフィルタのシール部材の剥がれを抑制することのできるエアフィルタを提供する。
【解決手段】実施形態のエアフィルタは、ケーシング内の空間を水平に横切るようにしてケーシングに取り付けられ、枠体と、濾材と、シール部材と、被覆材とを備える。枠体は、ケーシングの内壁に沿って周状に設けられ、前記空間内に出入りするエアフィルタをガイドする互いに平行な一対のガイド部を周上の2つの部分に有するフィルタ受け部に対し上方から押し付けられる。濾材は、枠体に保持される。シール部材は、フィルタ受け部の側の枠体の部分に周状に設けられている。被覆部材は、枠体とガイド部との間に挟持されるシール部材の前記部分を被覆し、ガイド部との間の摩擦が、シール部材とガイド部との間の摩擦より小さい低摩擦材料からなる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内の空間を水平に横切るようにして前記ケーシングに取り付けられるエアフィルタであって、
前記ケーシングの内壁に沿って周状に設けられたフィルタ受け部であって、前記空間内に出入りする前記エアフィルタをガイドする互いに平行な一対のガイド部を周上の2つの部分に有するフィルタ受け部に対し上方から押し付けられる枠体と、
前記枠体に保持され、前記空間内の空気が通過することにより空気中の微粒子の少なくとも一部を捕集する濾材と、
前記フィルタ受け部の側の前記枠体の部分に周状に設けられたシール部材と、
前記枠体と前記ガイド部との間に挟持される前記シール部材の部分を被覆し、前記ガイド部との間の摩擦が、前記シール部材と前記ガイド部との間の摩擦より小さい低摩擦材料からなる被覆材と、を備えることを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記枠体が前記ガイド部と向き合う方向の厚さに関して、前記シール部材の厚さは、前記被覆材の厚さより厚い、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記被覆材は、MD方向に延びる樹脂フィルムのテープからなり、前記テープのMD方向は前記シール部材の前記部分が延びる方向と一致している、請求項1又は2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記枠体は、空気が前記濾材を通過する方向に見て、長辺方向と短辺方向とを有する矩形形状を有し、
前記エアフィルタが前記ケーシングに取り付けられることにより前記ガイド部と対向する前記枠体の部分は、前記短辺方向に延びる部分である、請求項1又は2に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記シール部材は、多孔質ゴムからなる、請求項1又は2に記載のエアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングに取り付けられるエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングに取り付けられるエアフィルタは、平面視矩形状の枠体を備えている。エアフィルタは、ケーシングの内壁に沿って周状に設けられた取付枠に取り付けられる。枠体には、例えば、ガスケットと呼ばれるシール部材が設けられ(特許文献1)、枠体と取付枠との間にシール部材が挟み込まれることにより、ケーシング内を流れる空気が漏れなくエアフィルタを通過するよう、気密に保持することができる。
【0003】
このようなエアフィルタでは、使用される間、圧力損失等のフィルタ性能が所望の範囲に維持されるよう、定期的にケーシングから取り出され、塵埃が堆積した濾材の清掃あるいは交換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ケーシング内の空間を水平に横切るようにエアフィルタが取り付けられる横置きタイプのケーシングがある。横置きタイプのケーシングの取付枠は、ケーシングの空間内に出入りするエアフィルタをガイドする互いに平行な一対のガイド部を、周上の2つの部分に有しており、ガイド部をレールとして枠体を滑らせるようにエアフィルタを移動させることで、エアフィルタを所定の取付位置に案内できるようになっている。しかし、枠体とガイド部との間に挟み込まれたシール部材が、エアフィルタの出し入れの際にガイド部と間の摩擦によってめくれ、枠体の表面から剥れる場合がある。シール部材が剥れたエアフィルタでは、取付枠との間を気密に保つことができず、リークの原因となってしまう。特に、大型で高重量のエアフィルタは、エアフィルタを出し入れする際のシール材とガイド部との間の摩擦が大きくなり、シール部材の剥がれが生じやすい。また、大型で高重量のエアフィルタをケーシング内にスムーズに出し入れするために、例えば、エアフィルタを水平方向に対して傾斜させてガイド部の手前側の端部に支持させつつ、ガイド部に対し枠体を滑らせて移動させることが行われる。このとき、シール部材に局所的に大きな荷重がかかり、シール部材が損傷する場合がある。
【0006】
本発明は、ケーシングに取り付けられる際のエアフィルタのシール部材の剥がれを抑制することのできるエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様1~5を包含する。
(態様1)
ケーシング内の空間を水平に横切るようにして前記ケーシングに取り付けられるエアフィルタであって、
前記ケーシングの内壁に沿って周状に設けられたフィルタ受け部であって、前記空間内に出入りする前記エアフィルタをガイドする互いに平行な一対のガイド部を周上の2つの部分に有するフィルタ受け部に対し上方から押し付けられる枠体と、
前記枠体に保持され、前記空間内の空気が通過することにより空気中の微粒子の少なくとも一部を捕集する濾材と、
前記フィルタ受け部の側の前記枠体の部分に周状に設けられたシール部材と、
前記枠体と前記ガイド部との間に挟持される前記シール部材の部分を被覆し、前記ガイド部との間の摩擦が、前記シール部材と前記ガイド部との間の摩擦より小さい低摩擦材料からなる被覆材と、を備えることを特徴とするエアフィルタ。
【0008】
(態様2)
前記枠体が前記ガイド部と向き合う方向の厚さに関して、前記シール部材の厚さは、前記被覆材の厚さより厚い、態様1に記載のエアフィルタ。
【0009】
(態様3)
前記被覆材は、MD方向に延びる樹脂フィルムのテープからなり、前記テープのMD方向は前記シール部材の前記部分が延びる方向と一致している、態様1又は2に記載のエアフィルタ。
【0010】
(態様4)
前記枠体は、空気が前記濾材を通過する方向に見て、長辺方向と短辺方向とを有する矩形形状を有し、
前記エアフィルタが前記ケーシングに取り付けられることにより前記ガイド部と対向する前記枠体の部分は、前記短辺方向に延びる部分である、態様1から3のいずれか1つに記載のエアフィルタ。
【0011】
(態様5)
前記シール部材は、多孔質ゴムからなる、態様1から4のいずれか1つに記載のエアフィルタ。
【発明の効果】
【0012】
上記態様のエアフィルタによれば、ケーシングに取り付けられる際のエアフィルタのシール部材の剥がれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態のエアフィルタの一例を示す外観斜視図である。
【
図2】エアフィルタが取り付けられたケーシングを一部省略して示す外観斜視図である。
【
図3】ケーシングに取り付けられたエアフィルタを、空気が濾材を通過する方向の上流側から見て示す図である。
【
図4】(a)、(b)は、ケーシングに取り付けられる際のエアフィルタの動きを説明する図である。
【
図6】(a)は、エアフィルタのフィルタ受け部への押し付けが解除された状態を示す図であり、(b)は、エアフィルタがフィルタ受け部に押し付けられた状態を示す図である。
【
図7】(a)、(b)は、エアフィルタをフィルタ受け部に押し付ける押付機構の動作を説明する図である。
【
図8】押付機構及び押付機構周辺の構成を示す斜視図である。
【
図9】押付機構及び押付機構周辺の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態のエアフィルタを説明する。
図1は、実施形態のエアフィルタ1の一例を示す外観斜視図である。
図2は、エアフィルタ1が取り付けられたケーシング100を一部省略して示す外観斜視図である。
図3は、ケーシング100に取り付けられたエアフィルタ1を、空気が濾材を通過する方向の上流側から見て示す図である。
【0015】
エアフィルタ1は、ケーシング100内を流れる空気を濾過し、清浄化するために用いられる。ケーシング100は、横置きタイプのケーシングであり、エアフィルタ1は、ケーシング100内の空間Sを水平に横切るようにしてケーシング100に取り付けられる。
【0016】
エアフィルタ1は、枠体2と、濾材3と、シール部材5と、被覆材6と、を備える。
【0017】
枠体2は、ケーシング100のフィルタ受け部10に対し上方から押し付けられるエアフィルタ1の部分である。枠体2は、例えば、ケーシング100の後述する押付機構30により上方から押し付けられる。
【0018】
フィルタ受け部10は、ケーシング100の内壁に沿って周状に設けられたケーシング100の部分である。図示されるフィルタ受け部10は、ケーシング100内の空間Sを空気が流れる方向(X方向)に見て、矩形状の形状を有している。フィルタ受け部10は、空間S内に出入りするエアフィルタ1をZ方向にガイドする互いに平行な一対のガイド部10aを周上の2つの部分に有する。図示されるフィルタ受け部10において、矩形状のフィルタ受け部10の四辺のうち、Z方向と平行な2つ二辺と対応する部分がガイド部10aである。
【0019】
ケーシング100は、フィルタ受け部10を含め、例えば、鋼板等の金属製の板材や部品を組み合わせて作製されており、フィルタ受け部10を構成する板材の空間Sの側の表面には、錆止め剤等の表面処理剤あるいは塗料が塗布されてなる皮膜が形成されている。
【0020】
枠体2は、金属あるいはセラミック製の板材を組み合わせて作製される。金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、又はステンレスである。板材は、例えば、アルマイト処理、クロメート処理等により表面に形成された皮膜を有している。ステンレス製の板材の表面は、亜鉛又はアルミニウムでめっきされていてもよい。
【0021】
濾材3は、枠体2に保持され、空間S内の空気が通過することにより空気中の塵埃等の微粒子の少なくとも一部を捕集する。濾材3は、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、あるいはこれらの混合繊維からなる繊維体であり、例えば、不織布、ペーパ、綿、あるいはマットの形態を有している。濾材3の具体例として、ガラス繊維からなる、ガラス不織布、ガラス濾紙、グラスウール等が挙げられる。
図1に示す濾材3は、プリーツ加工され、山折りと谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状を有している。
【0022】
図1に示すエアフィルタ1は、さらに、複数のセパレータ4を備える。
セパレータ4は、濾材3の山折り、谷折りされた部分の内側のスペースのそれぞれに挿入され、プリーツの隣り合う間隔を保持する機能を有する。セパレータ4は、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属製の薄板状の部材が波形状をなすようコルゲート加工されてなる。金属製のセパレータ4を備える大型のエアフィルタ1の重量は、例えば、8.5kg、10.0kg、13.0kg、13.5kgである。大型のエアフィルタ1の寸法は、例えば、縦(Z方向)が610~760mmであり、横(Y方向)が450~760mmであり、奥行き(X方向)が290mmである。
【0023】
シール部材5は、フィルタ受け部10の側の枠体2の表面に周状に設けられた部材である。シール部材5は、エアフィルタ1がフィルタ受け部10に押し付けられることにより枠体2とフィルタ受け部10との間に挟み込まれ、ケーシング100内を流れる空気が漏れなくエアフィルタ1を通過するよう、気密に保持することができる。シール部材5は、例えば、クロロプレンゴム等のゴム、硬質発泡ポリウレタン等の発泡樹脂を材質とする帯状の部材を、枠体2の表面に接着剤を用いて接着される。
【0024】
被覆材6は、枠体2とガイド部10aとの間に挟持されるシール部材5の部分5a(被挟持部)を被覆する部材である。図示される被挟持部5aは、Z方向に見て矩形状のシール部材5の四辺のうち、ガイド部10aと平行な二辺と対応するシール部材5の部分である。被覆材6は、ガイド部10aとの間の摩擦が、シール部材5とガイド部10aとの間の摩擦より小さい低摩擦材料からなる。これにより、ケーシング100に取り付けられる際のエアフィルタ1のシール部材5の剥がれを抑制することができる。
【0025】
図4(a)、(b)は、ケーシング100に取り付けられる際のエアフィルタ1の動きを説明する図である。
横置きタイプのケーシング100にエアフィルタ1を取り付けるとき、フィルタ受け部10のガイド部10aをレールとして枠体2を滑らせるようにエアフィルタ1を移動させることで、エアフィルタ1を所定の取付位置に案内することができる。しかし、被覆材6を備えないエアフィルタでは、枠体2とガイド部10aとの間に挟み込まれたシール部材が、エアフィルタの出し入れの際にガイド部10aと間の摩擦によってめくれ、枠体2の表面から剥れる場合がある。シール部材が剥れたエアフィルタでは、フィルタ受け部10との間を気密に保つことができず、リークの原因となってしまう。特に、ゴム製のシール材は、ガイド部10aとの間の摩擦が大きいため、シール部材がフィルタ受け部10に追随して剥がれやすい。また、大型で高重量のエアフィルタは、エアフィルタを出し入れする際のシール材とガイド部10aとの間の摩擦が大きくなり、シール部材の剥がれが生じやすい。さらに、大型で高重量のエアフィルタをケーシング100内にスムーズに出し入れするために、例えば、エアフィルタを水平方向に対して傾斜させてガイド部10aの手前側の端部10a´に支持させつつ、ガイド部10aに対し枠体を滑らせて移動させるとき、シール部材に局所的に大きな荷重がかかり、シール部材が損傷するおそれがある。
【0026】
本実施形態のエアフィルタ1では、被覆材6を備えるため、シール部材5とガイド部10aとの接触が抑えられるとともに、被覆材6とガイド部10aとの間の摩擦が小さいので、エアフィルタ1をガイド部10aに対し滑らせやすく、ケーシング100に対しスムーズに出し入れできる。本実施形態のエアフィルタ1では、被覆材6とガイド部10aとの間の摩擦が小さいので、枠体2とガイド部10aとの間に挟み込まれたシール部材5のめくれを抑え、枠体2の表面から剥れるのを抑えることができる。これにより、エアフィルタ1とフィルタ受け部10との間が気密に保たれ、リークを防ぐことができる。特に、大型で高重量のエアフィルタ1をケーシング100内にスムーズに出し入れするために、
図4(a)に示すように、エアフィルタ1を水平方向に対して傾斜させてガイド部10aの手前側の端部10a´に支持させつつ、ガイド部10aに対し枠体2を滑らせて移動させるとき、シール部材5に局所的に大きな荷重がかかっても、シール部材5が損傷することを抑えられる。
【0027】
被覆材6は、上記のように低摩擦材料からなり、被覆材6とガイド部10aの間の摩擦係数は、シール部材5とガイド部10aの間の摩擦係数より小さい。例えば、シール部材5とガイド部10aの間の静止摩擦係数は、0.2~0.3であるのに対し、被覆材6とガイド部10aの間の静止摩擦係数は、0.08~0.13である。
【0028】
被覆材6は、フッ素系樹脂、シリコーン等の樹脂材料からなることが好ましく、フッ素系樹脂材料からなることが特に好ましい。フッ素系樹脂材料は、フッ素樹脂を含む材料であり、好ましくはフッ素樹脂からなる材料である。フッ素樹脂は、好ましくは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)、PFA(パーフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、FEP(パーフルオロエチレン・パーフルオロプロピレン共重合)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のうちの少なくとも1種であり、より好ましくはPTFEである。
【0029】
被覆材6は、好ましくはテープ状の形態を有する。テープ状の被覆材6は、可撓性に優れ、ガイド部10aに密着しやすいので、リークの原因となる隙間が生じ難い。被覆材6は、シール部材5の側の面に接着剤が塗布された接着層(不図示)を有している。
【0030】
枠体2がガイド部10aと向き合う方向(X方向)の厚さに関して、シール部材5の厚さは、被覆材6の厚さより厚いことが好ましい。これにより、シール部材5がガイド部10aに追従して変形しやすくなり、ガイド部10aに対する密着性が確保される。被覆材6はシール部材5と比べ変形し難いため、被覆材6の厚さがシール部材5の厚さ以上の厚さであると、シール部材5がガイド部10aに追従して変形し難くなり、ガイド部10aに対する密着性が悪くなる。そのため、リークの原因となる隙間が被覆材6とガイド部10aとの間に生じやすい。シール部材5の厚さの被覆材6の厚さに対する比は、好ましくは6~100であり、より好ましくは12~60である。被覆材6の厚さは、例えば0.1~0.5mmである。
【0031】
図5は、シール部材5及び被覆材6を示す図である。
被覆材6は、MD(machine direction)方向に延びる樹脂フィルムのテープからなり、テープのMD方向は、枠体2とガイド部10aとの間に挟持されるシール部材5の部分5a(被挟持部)が延びる方向(Z方向)と一致していることが好ましい。樹脂フィルムのテープは、MD方向の引張強度が高いため、被挟持部が延びる方向と一致していることで、エアフィルタ1のケーシング100に対する出し入れに伴う、被覆材6の破れや、破れが進展してシール部材5から剥離することを抑えられる。特に、被覆材6の厚さが薄くても、
図4(a)に示すように、水平方向に対しエアフィルタ1を傾斜させてガイド部10aの手前側の端部10a´に支持させたときに端部10a´から受ける局所的な大きな力に対して耐久性を確保できる。
【0032】
被覆材6は、シール部材5のうち被挟持部5aにのみ設けられることが好ましい。ケーシング100への出入りの際にフィルタ受け部10との間で摩擦が発生しやすい被挟持部5aにのみ被覆材6を設けることで、被覆材6のコストを抑えることができる。この場合、
図5に示すように、シール部材5の四辺のうち他の二辺と対応する部分5bと重なる被挟持部5aの端部(矩形の四隅のうちの2つ)にも設けられることが好ましい。その一方で、被覆材6は、シール部材5の全ての部分に設けられることも好ましい。大型の高重量のエアフィルタ1は、シール部材5の四辺のうち被挟持部5a以外の部分5bもフィルタ受け部10との間で大きな摩擦が発生するので、シール部材5の剥がれを抑制する効果は向上する。また、この場合、短辺方向に延びる枠体2の部分と、長辺方向に延びる枠体2の部分とで、被覆材6の厚さに差がないことが好ましい。このような厚さの差により段差が生じると、濾材3を通過せずに、その隙間を通る気流が発生し、リークが生じる恐れがある、一方で、短辺方向に延びる枠体2の部分では、被覆材6の耐久性確保の観点から、長辺方向に延びる枠体2の部分と比べ、被覆材6の厚さが厚いことも好ましい。
【0033】
枠体2は、空気が濾材を通過する方向(X方向)に見て、例えば、
図5に示されるように、長辺方向(Y方向)と短辺方向(Z方向)とを有する矩形形状を有している。この場合、エアフィルタ1がケーシング100に取り付けられることによりガイド部10aと対向する枠体2の部分(ガイド部対向部)は、短辺方向に延びる部分であることが好ましい。枠体2のガイド部対向部が、シール部材5の短辺と平行な部分であることで、エアフィルタ1をケーシング100内に出し入れする際のエアフィルタ1の移動量が短く、エアフィルタ1の出し入れの作業性に優れる。
【0034】
シール部材5は、多孔質ゴム(発泡ゴム)からなることが好ましい。多孔質ゴムは、例えば、ゴムスポンジ、フォームラバー、軟質ウレタンフォームである。特に、ゴムスポンジ製のシール部材5は、表面に厚さ方向の凹凸が少なく平滑なため、被覆材6のシール部材5に対する接着状態が良好になる。そのため、被覆材6はシール部材5から剥離し難い。この点で、シール部材5は、クロロプレンゴム等のゴムスポンジ製であることが好ましい。
【0035】
次に、ケーシング100の一例を示し、ケーシング100の押付機構30について説明する。
ケーシング100は、好ましくは、略直方体形状の外形を有し、内側が空洞の筐体である。ケーシング100は、エアフィルタ1の清掃及び濾材(後述)の交換等(メンテナンス)の際にエアフィルタ1を出し入れするための取出口(例えば
図2(a)において左側の端部)と、外部から空気が取り込まれる取込口と、エアフィルタ1を通過した空気が排出される排出口と、を有している。取出口には、例えば、開閉式の扉が設けられる。
図1に示すケーシング100において、取込口は、例えば、直方体の底面をなすケーシング100の部分に設けられ、排出口は、例えば、直方体の上面をなすケーシングの部分に設けられる。
【0036】
ケーシング100は、上述のフィルタ受け部10と、押付機構30と、載置部50(
図7及び
図8参照)と、を備える。
【0037】
フィルタ受け部10は、
図2に示すように、ケーシング100内の底部に配置された矩形の支持台である。支持台は、エアフィルタ1の外周部(後述する外枠)を下方から支持しつつ、取込口から取り込まれた空気をエアフィルタ1の濾材3に通過させるよう、上方から見て、矩形の外周を周状に延び、その内周側が開口された形状を有している。
【0038】
図2、
図3、及び
図6のほか、
図7~
図9にも、押付機構30を示す。なお、
図4(a)、(b)において、押付機構30の図示は省略されている。
図3に、押付機構30の後述する押付部材33によりエアフィルタ1を押し付ける位置が上方から見て示される。
図7には、ケーシング100の奥行方向(Z方向)と直交する押付機構30の断面が示される。
【0039】
押付機構30は、フィルタ受け部10上の取付位置に案内されるエアフィルタ1の通路となるケーシング100内の空間Sのうち取付位置と対応する取付空間S´(
図4(a)、(b)参照)を、フィルタ受け部10との間に挟むよう設けられた機構である。ケーシング100の奥行方向は、上記空間S内を案内されるエアフィルタ1の移動方向と平行な方向(Z方向)である。
図2及び
図3に示すケーシング100において、押付機構30は、奥行方向(Z方向)と直交するケーシング100の幅方向(Y方向)の両側に1つずつ、計2つ設けられている。
【0040】
押付機構30は、被操作部31と、押付部材33と、を有する。
【0041】
被操作部31は、押付機構30によるエアフィルタ1の押し付け及び押し付けの解除を行う際に作業者が操作する部分であり、レバーとして機能する。
図3において、被操作部31の図示は省略されている。
【0042】
押付部材33は、被操作部31の操作により、エアフィルタ1をフィルタ受け部10に押し付け、エアフィルタ1を取り付けるよう構成された部材である。押付部材33は、
図2において、奥行方向(Z方向)に間隔をあけて2つ配置されている。2つの押付機構30の間で、奥行方向(Z方向)に見たときの、後述する駆動軸35の回転方向や、後述する押付部材33の形状は、取付位置の幅方向(Y方向)の中心に対して対称である。
【0043】
押付機構30は、好ましくは、駆動軸35をさらに有している。駆動軸35は、ケーシング100の奥行方向(Z方向)に延びる棒状の部分である。駆動軸35は、被操作部31及び押付部材33と一体に回転するよう被操作部31及び押付部材33のそれぞれと接続されている。被操作部31は、駆動軸35の手前側の端と接続され、駆動軸35の中心線から離れるように延びる。駆動軸35の中心線は、駆動軸35の延在方向と直交する駆動軸35の断面の中心を通る線である。
図7に示す押付部材33は、延在部33aと、押付部33bとを有するよう、例えば鋼板に曲げ加工を施して作製された部材である。なお、
図7には、幅方向(Y方向)の両側の押付機構30のうち、奥行方向(Z方向)に見て、右側に設けられた押付機構30が示される。延在部33aは、駆動軸35から遠ざかるように延びる部分である。延在部33aは、好ましくは、
図7(a)に示すように、押付部材33が、上記中心線の回りの所定の回転方向位置に位置することにより略水平方向に延びる部分である。押付部33bと駆動軸35の中心との距離は、後述の解除状態におけるエアフィルタ1と駆動軸35の中心との距離よりも長い。これにより、押付機構30は、
図7(b)に示す後述の押付状態において、押付部33bを介して、エアフィルタ1の外周部を下方に押し付け、エアフィルタ1をフィルタ受け部10に押し付ける。押付部材33は、
図3に示すように、エアフィルタ1の外周部の四隅と対応する4箇所に1つずつ配置され、エアフィルタ1の外周部を、周方向に均等な力でフィルタ受け部10に押し付ける。
【0044】
駆動軸35は、奥行方向(Z方向)に移動可能、かつ、駆動軸35の中心線の回りに回転可能である。押付機構30は、駆動軸35が、第1の奥行方向位置に位置することにより、押付部材33が中心線の回りに回転し、エアフィルタ1の押し付けを行うことが可能となるよう構成されている。第1の奥行方向位置は、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、押付部材33が駆動軸35の回りに回転可能となる奥行方向(Z方向)の位置である。押付機構30は、押付部材33の回転方向位置に応じて、
図6(a)及び
図7(a)に示す解除状態と、
図6(b)及び
図7(b)に示す押付状態と、を採りうる。
【0045】
押付機構30は、駆動軸35が第1の奥行方向位置に位置することにより、被操作部31あるいは押付部材33の自重により、被操作部31あるいは押付部材33の一部が、空間S内に入り込むよう構成されている。
図7に示す押付機構30では、被操作部31と、押付部材33の押付部33bとが駆動軸35に対し重複する方位方向に位置している。
【0046】
図8に、後述するフレーム40の一部(後述する第2壁部42)を省略して、載置部50を示す。なお、
図8において、押付機構30の被操作部31は省略されている。
載置部50は、押付部材33の一部(押付部33b)が空間の外において載置されるよう構成されている。
【0047】
載置部50は、押付部材33が所定の回転方向位置に位置し、駆動軸35が第1の奥行方向位置と異なる第2の奥行方向位置に位置することにより、押付部材33が載置部50に載置されるよう構成されていることが好ましい。駆動軸35は、押付部材33が、
図7(a)に示す回転方向位置に配置されることにより、第1の奥行方向位置と第2の奥行方向位置との間で奥行方向(Z方向)に移動可能である。第2の奥行方向位置において、駆動軸35の回転は制限される。
【0048】
ケーシング100にエアフィルタ1を取り付ける際、ケーシング100の取出口の扉を開け、押付機構30の駆動軸35を第1の奥行方向位置に位置させた状態で、被操作部31を操作して押付部材33を上記所定の回転方向位置に位置させ、さらに、駆動軸35を奥行方向に押し込んで第2の奥行方向位置に移動させることにより、押付部材33を載置部50に載置する。これにより、押付部材33及び被操作部31は、空間Sの外に配置される。エアフィルタ1を取付位置に移動させた後、被操作部31を操作して駆動軸35を引き出して第2の奥行方向位置から第1の奥行方向位置に移動させ、さらに、押付部材33を、
図6(b)及び
図7(b)に示す回転方向位置に回転させ、押付部材33をエアフィルタ1に押し付ける。このようにして、エアフィルタ1は取付位置に取り付けられる。
【0049】
一方、エアフィルタ1を取り出す際、被操作部31を操作して、押付機構30を解除状態にし、
図6(b)及び
図7(a)に示すように、押付部材33を所定の回転方向位置に位置させ、さらに、駆動軸35を押し込んで第1の奥行方向位置から第2の奥行方向位置に移動させ、押付部材33を載置部50に載置する。
【0050】
ケーシング100は、例えば、空調装置に外付けされる。空調装置は、例えば、空調装置の長手方向が鉛直方向と平行な縦型あるいは縦置き型と呼ばれるタイプの装置である。この種の空調装置は、一般に、上部に、空調された空気を排出する排出口を有し、ケーシング100は、排出口の近傍である空調装置の最上面(天井面)に設置される。空調装置の排出口には、ケーシング100の取込口に延びるダクトが接続され、温度、湿度、風量等が調整された空気がケーシング100内に取り込まれる。ケーシング100は、空調装置に外付けされることに制限されず、例えば、空気の流れ方向のダクトの途中の部分をなすよう構成されてもよい。
【0051】
ケーシング100は、
図7~9に示すように、フレーム40を備えることが好ましい。フレーム40は、一対の壁部41,42を有している。
図3において、フレーム40の図示は省略されている。
壁部41,42は、押付部材33に対し奥行方向(Z方向)の両側に奥行方向(Z方向)と直交するよう設けられ、駆動軸35の回転を支持するよう構成された部分である。
【0052】
フレーム40は、押付部材33の奥行方向位置と対応させて奥行方向(Z方向)の2か所に、ケーシング100の幅方向(Y方向)と平行な方向にケーシング100内を延びるよう、2本配置されている。フレーム40の延在方向(Y方向)の両端は、ケーシング100の側面の内壁と接続される。フレーム40の延在方向(Y方向)と直交するフレーム40の断面形状は、図示される例において、下に開いた略コの字形状である。ケーシング100の幅方向(Y方向)の両側に配置された2つの押付部材33は、1本のフレーム40の壁部41,42の間に位置するよう、当該フレーム40に覆われている。
【0053】
フレーム40には、駆動軸35が壁部41,42を貫通して配置されるように、下方に開いた挿通口(壁部42の挿通口のみ図示)が設けられている。また、フレーム40には、挿通口を貫通して配置された駆動軸35に貫通して配置され、下方から駆動軸35を支持可能なように側方に開いた挿通口を有する支持部材45が設けられている。
【0054】
以上、本発明のについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0055】
例えば、エアフィルタ1を押し付けるための構成は、上記例の押付機構30に制限されず、例えば、特開2018-30067号公報に記載の押圧部材、特開2011-206752号公報に記載の固定部、等を用いることができる。
また、ケーシングは、上記例のケーシング100に制限されず、例えば、特開2018-30067号及び特開2011-206752号公報に記載のケーシング、特開平10-272321号公報に記載の箱体状のメインフィルタ枠、排気ダクトの一部又は端部等であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 エアフィルタ
2 枠体
5 シール部材
6 被覆材
10 フィルタ受け部
30 押付機構
31 被操作部
33 押付部材
33a 延在部
33b 押付部
35 駆動軸
40 フレーム
41 第1壁部
42 第2壁部
45 支持部材
50 載置部
100 ケーシング