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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061842
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】転がり軸受ホルダユニット
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20240426BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20240426BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20240426BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20240426BHJP
   F16C 35/12 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/52
F16C35/067
F16C19/16
F16C35/12
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039786
(22)【出願日】2024-03-14
(62)【分割の表示】P 2020131006の分割
【原出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋治
(72)【発明者】
【氏名】藤裏 英雄
(72)【発明者】
【氏名】滝本 達也
(72)【発明者】
【氏名】井口 洋二
(57)【要約】
【課題】ひずみゲージを配置する部分の構造に起因する軸の剛性の低下を抑制可能な転がり軸受ホルダユニットを提供する。
【解決手段】本転がり軸受ホルダユニットは、外輪、前記外輪の内周側に前記外輪と同軸状に配置された内輪、及び前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の転動体、を備え、所定の回転軸を有する転がり軸受と、前記転がり軸受の前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面と接するように配置される軸受ホルダと、前記外輪又は前記内輪のひずみを検出する抵抗体を備えたひずみゲージと、を有し、前記軸受ホルダは、肉厚部と、前記肉厚部よりも厚さが薄い肉薄部と、を備え、前記ひずみゲージは、前記肉薄部に配置され、前記転がり軸受には、所定の接触角となる予圧が加えられており、前記肉厚部は、少なくとも、前記接触角を示す直線と前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面との交点から、前記交点に近い方の前記外輪又は前記内輪の端面である予圧側端面までの領域と接するように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、前記外輪の内周側に前記外輪と同軸状に配置された内輪、及び前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の転動体、を備え、所定の回転軸を有する転がり軸受と、
前記転がり軸受の前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面と接するように配置される軸受ホルダと、
前記外輪又は前記内輪のひずみを検出する抵抗体を備えたひずみゲージと、を有し、
前記軸受ホルダは、肉厚部と、前記肉厚部よりも厚さが薄い肉薄部と、を備え、
前記ひずみゲージは、前記肉薄部に配置され、
前記転がり軸受には、所定の接触角となる予圧が加えられており、
前記肉厚部は、少なくとも、前記接触角を示す直線と前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面との交点から、前記交点に近い方の前記外輪又は前記内輪の端面である予圧側端面までの領域と接するように配置されている転がり軸受ホルダユニット。
【請求項2】
前記肉厚部の前記回転軸方向の長さは、前記外輪及び前記内輪の前記回転軸方向の長さよりも短い請求項1に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項3】
前記肉厚部の前記回転軸方向の長さは、前記外輪及び前記内輪の前記回転軸方向の長さと略等しく、
前記肉厚部は、前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面の全面と接するように配置される請求項1に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項4】
前記肉薄部は、前記肉厚部の端面の前記回転軸に近い側から前記回転軸方向と略平行な方向に突出している請求項3に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項5】
前記肉薄部は、前記肉厚部の端面の前記回転軸から遠い側から前記回転軸方向と略平行な方向に突出している請求項3に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項6】
前記肉薄部は、前記肉厚部の端面から前記回転軸と略垂直な方向に延伸し、前記外輪又は前記内輪の端面の一部と接して配置され、
前記肉厚部の径方向の厚さよりも、前記肉薄部の前記回転軸方向の厚さが薄い請求項3に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項7】
前記肉厚部及び前記肉薄部は円筒状である請求項1乃至6の何れか一項に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項8】
前記軸受ホルダは、径の異なる別部材が互いに接合されて形成されている請求項7に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項9】
前記肉厚部は円筒状であり、前記肉薄部は前記肉厚部に設けられた凹部である請求項1乃至6の何れか一項に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項10】
前記転がり軸受を2つ備え、
2つの前記転がり軸受は、各々の前記回転軸が一致するように所定間隔をあけて、前記予圧側端面が互いに対向するように配置され、
2つの前記転がり軸受に対して1つの軸受ホルダが設けられ、
前記肉厚部は、少なくとも、各々の前記転がり軸受の前記領域と接するように配置され、
前記肉厚部の一方の前記軸受ホルダと接する部分が、他方の前記軸受ホルダ側に延伸して他方の前記軸受ホルダと接する部分と一体化されている請求項1乃至9の何れか一項に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項11】
前記転がり軸受を2つ備え、
2つの前記転がり軸受は、各々の前記回転軸が一致するように所定間隔をあけて、前記予圧側端面が互いに外側を向くように配置され、
2つの前記転がり軸受に対して1つの軸受ホルダが設けられ、
前記肉厚部は、少なくとも、各々の前記転がり軸受の前記領域と接するように配置され、
前記肉薄部の一方の前記軸受ホルダと接する部分が、他方の前記軸受ホルダ側に延伸して他方の前記軸受ホルダと接する部分と一体化されている請求項1乃至9の何れか一項に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項12】
前記抵抗体はCr混相膜から形成されている請求項1乃至11の何れか一項に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項13】
前記外輪の外径が30mm以下である請求項1乃至12の何れか一項に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受ホルダユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
内周側に軌道面を有する外輪と、外周側に軌道面を有する内輪と、外輪の軌道面と内輪の軌道面との間に介在された転動体とを備えた転がり軸受と、外輪又は内輪のひずみを検出するひずみゲージとを備えたユニットが知られている。例えば、転がり軸受に二重円筒型の軸受用部材を設け、この軸受用部材にひずみゲージを配置する構造が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3766864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、転がり軸受に軸受ホルダを設け、軸受ホルダにひずみゲージを配置した転がり軸受ホルダユニットの場合、ひずみゲージを配置する部分の軸受ホルダの構造によっては、転がり軸受ホルダユニットに挿入される軸の剛性を担保することが困難である。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ひずみゲージを配置する部分の構造に起因する軸の剛性の低下を抑制可能な転がり軸受ホルダユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本転がり軸受ホルダユニットは、外輪、前記外輪の内周側に前記外輪と同軸状に配置された内輪、及び前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の転動体、を備え、所定の回転軸を有する転がり軸受と、前記転がり軸受の前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面と接するように配置される軸受ホルダと、前記外輪又は前記内輪のひずみを検出する抵抗体を備えたひずみゲージと、を有し、前記軸受ホルダは、肉厚部と、前記肉厚部よりも厚さが薄い肉薄部と、を備え、前記ひずみゲージは、前記肉薄部に配置され、前記転がり軸受には、所定の接触角となる予圧が加えられており、前記肉厚部は、少なくとも、前記接触角を示す直線と前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面との交点から、前記交点に近い方の前記外輪又は前記内輪の端面である予圧側端面までの領域と接するように配置されている。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ひずみゲージを配置する部分の構造に起因する軸の剛性の低下を抑制可能な転がり軸受ホルダユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する図である。
図3】接触角について説明する図である。
図4】軸受ホルダの肉厚部の配置について説明する図である。
図5】転がり軸受ホルダユニット1の使用方法を説明する図(その1)である。
図6】転がり軸受ホルダユニット1の使用方法を説明する図(その2)である。
図7】ひずみゲージのゲージ長について説明する図である。
図8】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図9】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
図10】第1実施形態の変形例1に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図11】第1実施形態の変形例2に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図12】第1実施形態の変形例3に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図13】第1実施形態の変形例4に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図14】第2実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図15】第2実施形態の変形例1に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図16】第2実施形態の変形例2に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図17】第2実施形態の変形例3に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図18】第2実施形態の変形例4に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図である。
図19】第3実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する斜視図である。
図20】第4実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図(その1)である。
図21】第4実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は断面図、図2(c)は背面図である。
【0011】
図1及び図2を参照すると、転がり軸受ホルダユニット1は、転がり軸受2と、軸受ホルダ60と、ひずみゲージ100とを有する。転がり軸受2は、外輪10と、内輪20と、複数の転動体30と、保持器40と、シール51及び52とを有する。なお、図2(a)及び図2(c)において、シール51及び52の図示は便宜的に省略されている。
【0012】
外輪10は、回転軸mを中心軸とする円筒形の構造体である。内輪20は、外輪10の内周側に外輪10と同軸状に配置された円筒形の構造体である。複数の転動体30の各々は、外輪10と内輪20との間に形成される軌道50内に配置された球体である。軌道50内にはグリース等の潤滑剤(図示略)が封入される。シール51及び52は、外輪10の内周面から内輪20側に突起し、軌道50を外界から遮断する。
【0013】
外輪10の内周面には、断面が円弧状の凹部11が外輪10の周方向に形成されている。又、内輪20の外周面には、断面が円弧状の凹部21が内輪20の周方向に形成されている。複数の転動体30は、凹部11及び21により周方向に案内される。
【0014】
保持器40は、軌道50内に配置されて複数の転動体30を保持する。具体的には、保持器40は、回転軸mと同軸の環状体であり、回転軸mの方向における一方の側に転動体30を収容するための凹部41を有し、他方の側が環状体の周方向に連続した背面部42となっている。
【0015】
軸受ホルダ60は、外輪10の外周面と接するように配置されており、外輪10の外周面を全周に亘って押さえている。ここで、外輪10の外周面と接するとは、軸受ホルダ60が他の部材を介さずに外輪10の外周面と直接的に接する場合の他、接着剤等の他の部材を介して間接的に接する場合も含む。軸受ホルダ60は、例えば、外輪10に圧入されている。或いは、軸受ホルダ60は、外輪10に接着されてもよい。軸受ホルダ60は、例えば、真鍮、アルミニウム、ステンレスなどの金属や、樹脂等により形成できる。
【0016】
軸受ホルダ60は、円筒状(中空円柱状)の肉厚部61と、肉厚部61よりも径方向の厚さが薄い円筒状の肉薄部62とを備えている。軸受ホルダ60は、回転軸m方向の長さが外輪10及び内輪20の回転軸m方向の長さと略等しい。肉厚部61及び肉薄部62の各々の回転軸m方向の長さは、外輪10及び内輪20の回転軸m方向の長さよりも短い。肉厚部61及び肉薄部62は、内径が外輪10の外径と略等しく、回転軸m方向に隣接している。肉厚部61と肉薄部62とは、例えば、一体成型されている。
【0017】
本実施形態では、肉厚部61及び肉薄部62の各々の厚さは、略一定である。肉薄部62は、転動体30の回転時に外輪10で生じるひずみを、ひずみゲージ100に伝達するひずみ伝達部である。肉薄部62には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0018】
ひずみゲージ100は、外輪10又は内輪20のひずみを検出するセンサであり、受感部となる抵抗体103、配線104、端子部105等を有している。ひずみゲージ100は、外輪10又は内輪20のひずみを抵抗体103の抵抗値の変化として検出する。
【0019】
ひずみゲージ100において、抵抗体103は、例えば、長手方向(ゲージ長方向)を外輪10の周方向に向けて配置されている。外輪10の周方向は軸方向よりも伸縮し易いため、抵抗体103の長手方向を外輪10の周方向に向けて配置することで、大きなひずみ波形を得ることができる。ひずみゲージ100の出力を外部装置でモニタすることにより、外輪10で生じるひずみを監視できる。
【0020】
図3は、接触角について説明する図であり、回転軸mと転動体30の中心とを通る断面図である。図3に示すように、外輪10及び内輪20には、所定の接触角θとなる予圧が加えられている。外輪10及び内輪20に適切な予圧を加えることで、回転軸の振れ精度向上や振動・騒音の低減に寄与できる。
【0021】
ここで、接触角θは、断面視において、外輪10と転動体30との接点と、内輪20と転動体30との接点とを結ぶ直線Aと、ラジアル方向に伸びる直線Bとのなす角である。Cは、断面視において、直線Aの延長線と、外輪10の外周面との交点である。Dは、断面視において、交点Cから、交点Cに近い方の外輪10の端面である予圧側端面までの、外輪10の外周面の領域である。領域Dは、転動体30の回転時の変位が比較的大きい領域である。なお、直線Aの延長線を、接触角を示す直線と称する場合がある。
【0022】
図4は、軸受ホルダの肉厚部の配置について説明する図であり、図2(b)に対応する断面図である。図4に示すように、軸受ホルダ60の肉厚部61は、少なくとも外輪10の外周面の領域Dと接するように配置されている。このように、軸受ホルダ60の肉厚部61は、転動体30の回転時の変位が比較的大きい領域Dと接するように配置される。これにより、ひずみゲージ100を配置する部分の構造に起因する、転がり軸受ホルダユニット1に挿入される軸の剛性の低下を抑制可能となり、軸の剛性を担保できる。
【0023】
一方、外輪10の外周面の領域Dを除く領域は、転動体30の回転時の変位が比較的小さいため、その領域には軸受ホルダ60の肉薄部62を配置できる。そして、肉薄部62は、厚さが薄いことで、転動体30の回転時に外輪10で生じるひずみを、ひずみゲージ100に好適に伝達できる。
【0024】
肉薄部62の厚さは、ひずみ伝達性の観点から、ひずみゲージ100の出力電圧が出力内に内包しているノイズ成分の約10倍の出力を得ることが望ましい。ひずみゲージ100がホイートストンブリッジの抵抗の1つを構成する場合、例えば肉薄部62が円筒形状であれば、肉薄部62の厚さは以下に示す式(1)を満たす厚さ以下にする必要がある。
【0025】
【数1】
式(1)において、tは肉薄部62の厚さ、Pは肉薄部62に加わる荷重、Lは肉薄部62の内径、nは転がり軸受2の回転数、Wは肉薄部62の回転軸m方向の長さ、Kはゲージ率、Vはブリッジ電圧、Eは肉薄部62のヤング率、eはひずみゲージ100の出力電圧eが出力内に内包しているノイズ電圧である。但し、内輪固定の場合には、Lは肉薄部の外径となる。
【0026】
式(1)は、次のように導出できる。すなわち、肉薄部62の形状を指定して有限要素法等によるシミュレーションからひずみεを求めることができるため、それを下記式にひずみゲージのパラメータと共に導入することで出力電圧eが概算できる。その出力電圧eがノイズ出力eの平均の10倍程度になるように、肉薄部62の厚さtを逆算すればよい。
【0027】
具体的には、ひずみεは、曲げモーメントMと断面係数Zを用い式(2)で表せる。又、曲げモーメントMと断面係数Zは、それぞれ式(3)及び式(4)で表せる。又、出力電圧eをノイズ電圧eの10倍とすると、出力電圧e及びノイズ電圧eは、式(5)で表せる。式(5)に式(2)~式(4)を代入すると式(6)が得られ、式(6)のtを右辺にもっていき整理すると、式(1)が得られる。
【0028】
【数2】
【0029】
【数3】
【0030】
【数4】
【0031】
【数5】
【0032】
【数6】
上記は肉薄部62が円筒形状である場合に用いられる計算例である。肉薄部62の形状に応じて上記式を適宜変更することで、同様にして肉薄部62の必要な厚みを計算することができる。
【0033】
例えば、外輪10が小径(例えば、直径30mm程度)である場合、肉厚部61の厚さは、転がり軸受ホルダユニット1に挿入される軸の剛性を担保する観点から、肉薄部62の曲げ剛性の10倍以上になる厚さが望ましい。例えば肉薄部62が円筒形状の場合、好ましい肉厚部61の厚みは肉薄部62の約3倍であり、この場合、肉薄部62の曲げ剛性の約10倍になる。
【0034】
なお、ひずみゲージ100を配置する位置は、肉薄部62における肉厚部61に近い方が好ましい。予圧の交点Cに近い方が荷重の伝達による変形が大きいためである。これにより、肉薄部62の厚みをより確保できる。さらに、ひずみゲージ100の肉厚部61側の端部を肉厚部61の肉薄部62側の端面に当接するように配置することで、ひずみゲージ100の位置決めを容易に行うことができる。
【0035】
例えば、外輪10が小径(例えば、直径30mm程度)であって、外輪10にひずみゲージ100を配置することが困難な場合がある。このような場合、転がり軸受2の外輪10の外周側に、肉厚部61及び肉薄部62を有する軸受ホルダ60を配置し、肉薄部62にひずみゲージ100を配置すればよい。これにより、ひずみゲージ100を容易に配置できる。外輪10のひずみは、ひずみ伝達部である肉薄部62を介してひずみゲージ100に伝わり、ひずみゲージ100で検出可能である。又、軸受ホルダ60の肉厚部61が、少なくとも外輪10の外周面の領域Dと接するように配置されることで、転がり軸受ホルダユニット1に挿入される軸の剛性を担保できる。又、転がり軸受2の外輪10の外周側に軸受ホルダ60を配置することで、転がり軸受2が故障した場合でも転がり軸受2の交換が容易であり、メンテナンス性に優れる。
【0036】
図5は、転がり軸受ホルダユニット1の使用方法を説明する図(その1)である。図5に示すように、2つの転がり軸受ホルダユニット1を、各々の回転軸mが一致するように所定間隔をあけて、予圧側端面が互いに対向するように配置し、軸200を挿入してもよい。これは、予圧方向としては背面組み合せ(DB)であり、直線Aと回転軸mとの交点が外側を向くため、剛性が高くなる。
【0037】
図6は、転がり軸受ホルダユニット1の使用方法を説明する図(その2)である。図6に示すように、2つの転がり軸受ホルダユニット1を、各々の回転軸mが一致するように所定間隔をあけて、予圧側端面が互いに外側を向くように配置し、軸200を挿入してもよい。これは、予圧方向としては正面組み合せ(DF)であり、直線Aと回転軸mとの交点が内側を向くため、剛性には不利になるが、取付け誤差に対する許容量は大きくなる。図5の使用方法と図6の使用方法は、用途に応じて適宜選択できる。
【0038】
図7は、ひずみゲージのゲージ長について説明する図である。図7において、θは、回転軸mと隣接する転動体30の中心とを結ぶ2本の直線のなす角度である。又、Rは軸受ホルダ60の肉薄部62の内径である。ひずみゲージのゲージ長Lは、転がり軸受2の隣接する転動体30間の距離よりも小さいことが好ましい、すなわち、θ/360×2π×R>Lであることが好ましい。これにより、単独の転動体30による外輪10のひずみを検知することができる。
【0039】
(ひずみゲージ)
図8は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図9は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図8のA-A線に沿う断面を示している。図8及び図9を参照すると、ひずみゲージ100は、基材101と、機能層102と、抵抗体103と、配線104と、端子部105とを有している。但し、機能層102は、必要に応じて設ければよい。
【0040】
なお、本実施形態では、便宜上、ひずみゲージ100において、基材101の抵抗体103が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体103が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体103が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体103が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ100は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を基材101の上面101aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材101の上面101aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0041】
基材101は、抵抗体103等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材101の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材101の厚さが5μm~200μmであると、接着層を介して基材101の下面に接合される起歪体表面(例えば、軸受ホルダの肉薄部)からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0042】
基材101は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0043】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材101が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材101は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0044】
基材101の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。又、基材101の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材101上に、例えば、絶縁膜が形成される。
【0045】
機能層102は、基材101の上面101aに抵抗体103の下層として形成されている。すなわち、機能層102の平面形状は、図8に示す抵抗体103の平面形状と略同一である。
【0046】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体103の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層102は、更に、基材101に含まれる酸素や水分による抵抗体103の酸化を防止する機能や、基材101と抵抗体103との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層102は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0047】
基材101を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体103がCr(クロム)を含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層102が抵抗体103の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0048】
機能層102の材料は、少なくとも上層である抵抗体103の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0049】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0050】
機能層102が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層102の膜厚は抵抗体の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層102に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
【0051】
機能層102が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層102の膜厚は抵抗体の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層102に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
【0052】
機能層102が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層102の膜厚は抵抗体の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗体に流れる電流の一部が機能層102に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
【0053】
機能層102が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層102の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層102にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
【0054】
機能層102が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層102の膜厚は、1nm~0.8μmとすることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層102にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
【0055】
機能層102が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層102の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層102にクラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
【0056】
なお、機能層102の平面形状は、例えば、図8に示す抵抗体の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層102の平面形状は、抵抗体の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層102が絶縁材料から形成される場合には、抵抗体の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層102は少なくとも抵抗体が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層102は、基材101の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0057】
又、機能層102が絶縁材料から形成される場合に、機能層102の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層102の厚さと表面積が増加するため、抵抗体が発熱した際の熱を基材101側へ放熱できる。その結果、ひずみゲージ100において、抵抗体の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
【0058】
抵抗体103は、機能層102の上面に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。
【0059】
抵抗体103は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体103は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0060】
以降は、抵抗体103がCr混相膜である場合を例にして説明する。ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。又、Cr混相膜に、機能層102を構成する材料の一部が拡散されてもよい。この場合、機能層102を構成する材料と窒素とが化合物を形成する場合もある。例えば、機能層102がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0061】
抵抗体103の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体103の厚さが0.1μm以上であると抵抗体103を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体103を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材101からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0062】
機能層102上に抵抗体103を形成することで、安定な結晶相により抵抗体103を形成できるため、ゲージ特性(ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCR)の安定性を向上できる。
【0063】
例えば、抵抗体103がCr混相膜である場合、機能層102を設けることで、α-Cr(アルファクロム)を主成分とする抵抗体103を形成できる。α-Crは安定な結晶相であるため、ゲージ特性の安定性を向上できる。
【0064】
ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味する。抵抗体103がCr混相膜である場合、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体103はα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0065】
又、抵抗体103がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
【0066】
又、CrN及びCrN中のCrNの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrN及びCrN中のCrNの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCrNにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減がなされる。
【0067】
一方で、膜中に微量のNもしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
【0068】
又、機能層102を構成する金属(例えば、Ti)がCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性を向上できる。具体的には、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0069】
端子部105は、配線104を介して抵抗体103の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体103及び配線104よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部105は、ひずみにより生じる抵抗体103の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。抵抗体103は、例えば、端子部105及び配線104の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の配線104及び端子部105に接続されている。端子部105の上面を、端子部105よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。
【0070】
なお、抵抗体103と配線104と端子部105とは便宜上別符号としているが、これらは同一工程において同一材料により一体に形成できる。
【0071】
抵抗体103及び配線104を被覆し端子部105を露出するように基材101の上面101aにカバー層106(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層106を設けることで、抵抗体103及び配線104に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層106を設けることで、抵抗体103及び配線104を湿気等から保護できる。なお、カバー層106は、端子部105を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0072】
カバー層106は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0073】
ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材101を準備し、基材101の上面101aに機能層102を形成する。基材101及び機能層102の材料や厚さは、前述の通りである。但し、機能層102は、必要に応じて設ければよい。
【0074】
機能層102は、例えば、機能層102を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材101の上面101aをArでエッチングしながら機能層102が成膜されるため、機能層102の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0075】
但し、これは、機能層102の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層102を成膜してもよい。例えば、機能層102の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材101の上面101aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層102を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0076】
次に、機能層102の上面全体に抵抗体103、配線104、及び端子部105となる金属層を形成後、フォトリソグラフィによって機能層102並びに抵抗体103、配線104、及び端子部105を図8に示す平面形状にパターニングする。抵抗体103、配線104、及び端子部105の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体103、配線104、及び端子部105は、同一材料により一体に形成できる。抵抗体103、配線104、及び端子部105は、例えば、抵抗体103、配線104、及び端子部105を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。抵抗体103、配線104、及び端子部105は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0077】
機能層102の材料と抵抗体103、配線104、及び端子部105の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、機能層102としてTiを用い、抵抗体103、配線104、及び端子部105としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0078】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体103、配線104、及び端子部105を成膜できる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体103、配線104、及び端子部105を成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNの割合、並びにCrN及びCrN中のCrNの割合を調整できる。
【0079】
これらの方法では、Tiからなる機能層102がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層102を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0080】
なお、抵抗体103がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層102は、抵抗体103の結晶成長を促進する機能、基材101に含まれる酸素や水分による抵抗体103の酸化を防止する機能、及び基材101と抵抗体103との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層102として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0081】
その後、必要に応じ、基材101の上面101aに、抵抗体103及び配線104を被覆し端子部105を露出するカバー層106を設けることで、ひずみゲージ100が完成する。カバー層106は、例えば、基材101の上面101aに、抵抗体103及び配線104を被覆し端子部105を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層106は、基材101の上面101aに、抵抗体103及び配線104を被覆し端子部105を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0082】
このように、抵抗体103の下層に機能層102を設けることにより、抵抗体103の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体103を作製できる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、機能層102を構成する材料が抵抗体103に拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性を向上できる。
【0083】
なお、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ100は、高感度化(従来比500%以上)かつ、小型化(従来比1/10以下)を実現している。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、ひずみゲージ100では0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。又、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、ひずみゲージ100の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化できる。
【0084】
このように、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ100は小型であり、軸受ホルダ60の肉薄部62に容易に貼り付け可能である。そのため、特に、直径(外輪10の外径)が30mm以下である小型の転がり軸受2を用いた転がり軸受ホルダユニットに使用すると好適である。又、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ100は高感度であり、小さい変位を検出できるため、従来は検出が困難であった微小なひずみを検出可能である。すなわち、抵抗体103の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ100を有することにより、ひずみを精度よく検出する機能を備えた転がり軸受ホルダユニット1を実現できる。
【0085】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例1では、外輪の外周面に取り付ける軸受ホルダの他の例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0086】
図10は、第1実施形態の変形例1に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図10に示すように、転がり軸受ホルダユニット1Aは、軸受ホルダ60が軸受ホルダ60Aに置換された点が、転がり軸受ホルダユニット1(図2等参照)と相違する。
【0087】
軸受ホルダ60Aは、円筒状の大径部61Aと、円筒状の小径部62Aとを有している。小径部62Aは外輪10の外周側の全体に配置され、大径部61Aは、小径部62Aの外周側の一部に配置されている。小径部62Aは、内径が外輪10の外径と略等しく、回転軸m方向の長さが外輪10の回転軸m方向の長さと略等しい。大径部61Aは、内径が小径部62Aの外径と略等しく、回転軸m方向の長さが小径部62Aの回転軸m方向の長さよりも短い。
【0088】
大径部61Aと小径部62Aとは、例えば、圧入や接着等により一体化されて軸受ホルダ60と略同一形状の軸受ホルダ60Aとなる。軸受ホルダ60Aにおいて、小径部62Aの外周面に大径部61Aが積層されている部分が肉厚部、小径部62Aのみからなる部分が肉薄部である。肉薄部である小径部62Aの外周面には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0089】
このように、軸受ホルダは一体成型されたものには限定されず、別体を接合したものであってもよく、例えば、径の異なる別部材が互いに接合されて形成されていてもよい。この場合も、肉薄部にひずみゲージ100を配置することで、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、外輪10のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、少なくとも外輪10の外周面の領域D図3参照)と接するように配置されることで、転がり軸受ホルダユニット1Aに挿入される軸の剛性を担保できる。なお、一体成型されたものには限定されず、別体を接合したものであってもよい点は、以降に説明する軸受ホルダの例についても同様である。
【0090】
図11は、第1実施形態の変形例2に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図11に示すように、転がり軸受ホルダユニット1Bは、軸受ホルダ60が軸受ホルダ60Bに置換された点が、転がり軸受ホルダユニット1(図2等参照)と相違する。
【0091】
軸受ホルダ60Bは、円筒状の肉厚部61Bと、肉厚部61Bよりも径方向の厚さが薄い円筒状の肉薄部62Bとを有している。肉厚部61Bは、内径が外輪10の外径と略等しく、回転軸m方向の長さが外輪10の回転軸m方向の長さと略等しい。すなわち、肉厚部61Bは、外輪10の外周面の全面と接するように配置されている。
【0092】
肉薄部62Bは、内径が外輪10の外径と略等しく、予圧側に位置する肉厚部61Bの端面の回転軸mに近い側から回転軸m方向と略平行な方向に突出している。肉厚部61Bと肉薄部62Bとは、例えば、一体成型されている。肉薄部62Bの外周面には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。なお、図11では肉薄部62Bが予圧側に位置する肉厚部61Bの端面から突出した例を示しているが、予圧側とは反対側の端面から突出していてもよい。予圧側の端面から突出する方がひずみが伝わりやすいため、予圧側の端面から肉薄部62Bが突出している方が好ましい。
【0093】
このように、肉厚部61Bの回転軸m方向の長さが外輪10の回転軸m方向の長さと略等しく、肉薄部62Bが肉厚部61Bの端面の回転軸mに近い側から回転軸m方向と略平行な方向に突出してもよい。この場合も、肉薄部にひずみゲージ100を配置することで、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、外輪10のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、外輪10の外周面の全面と接するように配置できるため、転がり軸受ホルダユニット1Bに挿入される軸の剛性を十分に担保できる。
【0094】
図12は、第1実施形態の変形例3に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図12に示す転がり軸受ホルダユニット1Cの軸受ホルダ60Cのように、肉薄部62Cが、予圧側に位置する肉厚部61Cの端面の回転軸mから遠い側から回転軸m方向と略平行な方向に突出する形態としてもよい。この場合も図11の場合と同様の効果を奏する。
【0095】
図13は、第1実施形態の変形例4に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図13に示すように、転がり軸受ホルダユニット1Dは、軸受ホルダ60が軸受ホルダ60Dに置換された点が、転がり軸受ホルダユニット1(図2等参照)と相違する。
【0096】
軸受ホルダ60Dは、円筒状の肉厚部61Dと、肉厚部61Dよりも厚さが薄い円筒状の肉薄部62Dとを有している。肉厚部61Dは、内径が外輪10の外径と略等しく、回転軸m方向の長さが外輪10の回転軸m方向の長さと略等しい。すなわち、肉厚部61Dは、外輪10の外周面の全面と接するように配置されている。
【0097】
肉薄部62Dは、予圧側に位置する肉厚部61Dの端面から回転軸mと略垂直な方向に延伸し、外輪10の端面の一部と環状に接して配置されている。肉厚部61Dの径方向の厚さよりも、肉薄部62Dの回転軸m方向の厚さが薄い。肉厚部61Dと肉薄部62Dとは、例えば、一体成型されている。肉薄部62Dの外輪10の端面と接する側とは反対側の面には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0098】
このように、軸受ホルダの肉薄部が外輪10の端面に接して配置されてもよい。この場合も、肉薄部にひずみゲージ100を配置することで、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、外輪10のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、外輪10の外周面の全面と接するように配置できるため、転がり軸受ホルダユニット1Dに挿入される軸の剛性を十分に担保できる。
【0099】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、内輪の内周面に取り付ける軸受ホルダの例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0100】
図14は、第2実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図14に示すように、転がり軸受ホルダユニット5は、軸受ホルダ60が軸受ホルダ70に置換された点が、転がり軸受ホルダユニット1(図2等参照)と相違する。
【0101】
軸受ホルダ70は、内輪20の内周側に配置されており、内輪20の内周面を全周に亘って押さえている。軸受ホルダ70は、例えば、内輪20に圧入されている。或いは、軸受ホルダ70は、内輪20に接着されてもよい。
【0102】
軸受ホルダ70は、円筒状の肉厚部71と、肉厚部71よりも径方向の厚さが薄い円筒状の肉薄部72とを有している。軸受ホルダ70は、回転軸m方向の長さが内輪20の回転軸m方向の長さと略等しい。肉厚部71及び肉薄部72は、外径が内輪20の内径と略等しく、回転軸m方向に隣接している。肉厚部71と肉薄部72とは、例えば、一体成型されている。
【0103】
本実施形態では、肉厚部71及び肉薄部72の各々の厚さは、略一定である。肉薄部72は、転動体30の回転時に内輪20で生じるひずみを、ひずみゲージ100に伝達するひずみ伝達部である。肉薄部72には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0104】
図14において、Cは、断面視において、直線Aの延長線と、内輪20の内周面との交点である。Dは、断面視において、交点Cから、交点Cに近い方の内輪20の端面である予圧側端面までの、内輪20の内周面の領域である。領域Dは、転動体30の回転時の変位が比較的大きい領域である。
【0105】
このように、軸受ホルダの肉薄部が内輪20の内周面に接して配置されてもよい。この場合も、肉薄部にひずみゲージ100を配置することで、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、内輪20のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、少なくとも内輪20の内周面の領域Dと接するように配置されることで、転がり軸受ホルダユニット5に挿入される軸の剛性を担保できる。
【0106】
〈第2実施形態の変形例〉
第2実施形態の変形例1では、内輪の内周面に取り付ける軸受ホルダの他の例を示す。なお、第2実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0107】
図15は、第2実施形態の変形例1に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図15に示すように、転がり軸受ホルダユニット5Aは、軸受ホルダ70が軸受ホルダ70Aに置換された点が、転がり軸受ホルダユニット5(図14等参照)と相違する。
【0108】
軸受ホルダ70Aは、円筒状の小径部71Aと、円筒状の大径部72Aとを有している。大径部72Aは内輪20の内周側の全体に配置され、小径部71Aは、大径部72Aの内周側の一部に配置されている。大径部72Aは、外径が内輪20の内径と略等しく、回転軸m方向の長さが内輪20の回転軸m方向の長さと略等しい。小径部71Aは、外径が大径部72Aの内径と略等しく、回転軸m方向の長さが大径部72Aの回転軸m方向の長さよりも短い。
【0109】
小径部71Aと大径部72Aとは、例えば、圧入や接着等により一体化されて軸受ホルダ70と略同一形状の軸受ホルダ70Aとなる。軸受ホルダ70Aにおいて、大径部72Aの内周面に小径部71Aが積層されている部分が肉厚部、大径部72Aのみからなる部分が肉薄部である。肉薄部である大径部72Aの内周面には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0110】
このように、軸受ホルダは一体成型されたものには限定されず、別体を接合したものであってもよい。この場合も、肉薄部にひずみゲージ100を配置することで、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、内輪20のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、少なくとも内輪20の内周面の領域D図14参照)と接するように配置されることで、転がり軸受ホルダユニット5Aに挿入される軸の剛性を担保できる。なお、一体成型されたものには限定されず、別体を接合したものであってもよい点は、以降に説明する軸受ホルダの例についても同様である。
【0111】
図16は、第2実施形態の変形例2に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図16に示すように、転がり軸受ホルダユニット5Bは、軸受ホルダ70が軸受ホルダ70Bに置換された点が、転がり軸受ホルダユニット5(図14等参照)と相違する。
【0112】
軸受ホルダ70Bは、円筒状の肉厚部71Bと、肉厚部71Bよりも径方向の厚さが薄い円筒状の肉薄部72Bとを有している。肉厚部71Bは、外径が内輪20の内径と略等しく、回転軸m方向の長さが内輪20の回転軸m方向の長さと略等しい。すなわち、肉厚部71Bは、内輪20の内周面の全面と接するように配置されている。
【0113】
肉薄部72Bは、外径が内輪20の内径と略等しく、予圧側に位置する肉厚部71Bの端面の回転軸mから遠い側から回転軸m方向と略平行な方向に突出している。肉厚部71Bと肉薄部72Bとは、例えば、一体成型されている。肉薄部72Bの内周面には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0114】
このように、軸受ホルダの肉薄部が内輪20の端面から突出してもよい。この場合も、肉薄部にひずみゲージ100を配置することで、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、内輪20のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、内輪20の内周面の全面と接するように配置できるため、転がり軸受ホルダユニット5Bに挿入される軸の剛性を十分に担保できる。
【0115】
図17は、第2実施形態の変形例3に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図17に示す転がり軸受ホルダユニット5Cの軸受ホルダ70Cのように、肉薄部72Cが、予圧側に位置する肉厚部71Cの端面の回転軸mに近い側から回転軸m方向と略平行な方向に突出する形態としてもよい。この場合も図16の場合と同様の効果を奏する。
【0116】
図18は、第2実施形態の変形例4に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図であり、図2(b)に対応する断面を示している。図18に示すように、転がり軸受ホルダユニット5Dは、軸受ホルダ70が軸受ホルダ70Dに置換された点が、転がり軸受ホルダユニット5(図14等参照)と相違する。
【0117】
軸受ホルダ70Dは、円筒状の肉厚部71Dと、肉厚部71Dよりも厚さが薄い円筒状の肉薄部72Dとを有している。肉厚部71Dは、外径が内輪20の内径と略等しく、回転軸m方向の長さが内輪20の回転軸m方向の長さと略等しい。すなわち、肉厚部71Dは、内輪20の内周面の全面と接するように配置されている。
【0118】
肉薄部72Dは、予圧側に位置する肉厚部71Dの端面から回転軸mと略垂直な方向に延伸し、内輪20の端面の一部と環状に接して配置されている。肉厚部71Dの径方向の厚さよりも、肉薄部72Dの回転軸m方向の厚さが薄い。肉厚部71Dと肉薄部72Dとは、例えば、一体成型されている。肉薄部72Dの内輪20の端面と接する側とは反対側の面には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0119】
このように、軸受ホルダの肉薄部が内輪20の端面に接して配置されてもよい。この場合も、肉薄部にひずみゲージ100を配置することで、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、内輪20のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、内輪20の内周面の全面と接するように配置できるため、転がり軸受ホルダユニット5Dに挿入される軸の剛性を十分に担保できる。
【0120】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、肉薄部を周状ではなく部分的に設けた軸受ホルダの例を示す。なお、第3実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0121】
図19は、第3実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する斜視図である。図19に示すように、転がり軸受ホルダユニット6は、軸受ホルダ60が軸受ホルダ80に置換された点が、転がり軸受ホルダユニット1(図2等参照)と相違する。
【0122】
軸受ホルダ80は、外輪10の外周側に配置されており、外輪10の外周面を全周に亘って押さえている。軸受ホルダ80は、例えば、外輪10に圧入されている。或いは、軸受ホルダ80は、外輪10に接着されてもよい。
【0123】
軸受ホルダ80は、円筒状の部材であり、回転軸m方向の長さが外輪10の回転軸m方向の長さと略等しく、内径が外輪10の外径と略等しい。軸受ホルダ80の外周面には凹部が設けられている。軸受ホルダ80において、凹部以外の部分が肉厚部81であり、凹部内が肉薄部82である。つまり、軸受ホルダ80において、肉厚部81は円筒状であり、肉薄部82は肉厚部81に設けられた凹部である。
【0124】
肉薄部82は、転動体30の回転時に外輪10で生じるひずみを、ひずみゲージ100に伝達するひずみ伝達部である。肉薄部82には、接着層を介してひずみゲージ100が配置されている。
【0125】
このように、軸受ホルダの外周部に肉薄部となる凹部を設け、凹部内にひずみゲージを配置してもよい。この場合も、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、外輪10のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、少なくとも外輪10の外周面の領域D図3参照)と接するように配置されることで、転がり軸受ホルダユニット6に挿入される軸の剛性を担保できる。なお、第1実施形態の変形例や第2実施形態、第2実施形態の変形例においても、肉薄部を周状ではなく部分的に凹部として設けてもよい。
【0126】
〈第4実施形態〉
第4実施形態では、転がり軸受を2つ備えた転がり軸受ホルダユニットの例を示す。なお、第4実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0127】
図20は、第4実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図(その1)である。図20示す転がり軸受ホルダユニット7は、2つの転がり軸受2と、1つの軸受ホルダ90と、1つのひずみゲージ100とを有する。但し、ひずみゲージ100は、各々の転がり軸受2に対して1つずつ設けてもよい。
【0128】
転がり軸受ホルダユニット7において、2つの転がり軸受2は、各々の回転軸mが一致するように所定間隔をあけて、予圧側端面が互いに対向するように配置されている。この配置は、図5と同様、予圧方向としては背面組み合せ(DB)である。
【0129】
軸受ホルダ90は、肉厚部91と、肉厚部91の回転軸m方向の両側に配置された肉薄部92とを備えている。肉厚部91は、各々の転がり軸受2の領域Dと少なくとも接するように配置されている。肉厚部91の一方の転がり軸受2と接する部分が、他方の転がり軸受2側に延伸して他方の転がり軸受2と接する部分と一体化されている。
【0130】
図21は、第4実施形態に係る転がり軸受ホルダユニットを例示する断面図(その2)である。図21示す転がり軸受ホルダユニット7Aは、2つの転がり軸受2と、1つの軸受ホルダ90Aと、1つのひずみゲージ100とを有する。但し、ひずみゲージ100は、各々の転がり軸受2に対して1つずつ設けてもよい。
【0131】
転がり軸受ホルダユニット7Aにおいて、2つの転がり軸受2は、各々の回転軸mが一致するように所定間隔をあけて、予圧側端面が互いに外側を向くように配置されている。この配置は、図6と同様、予圧方向としては正面組み合せ(DF)である。
【0132】
軸受ホルダ90Aは、肉薄部92Aと、肉薄部92Aの回転軸m方向の両側に配置された肉厚部91Aとを備えている。肉厚部91Aは、各々の転がり軸受2の領域Dと少なくとも接するように配置されている。肉薄部92Aの一方の転がり軸受2と接する部分が、他方の転がり軸受2側に延伸して他方の転がり軸受2と接する部分と一体化されている。
【0133】
このように、2つの転がり軸受に対して1つの軸受ホルダを設けてもよい。この場合も、ひずみ伝達部である肉薄部を介して、外輪10のひずみを検出可能である。又、肉厚部が、少なくとも各々の転がり軸受の外輪10の外周面の領域Dと接するように配置されることで、転がり軸受ホルダユニットに挿入される軸の剛性を担保できる。なお、本実施形態において説明した内容は、他の実施形態や変形例にも適用可能である。
【0134】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0135】
例えば、肉厚部や肉薄部は円筒状には限定されず、任意の形状としても構わない。例えば、肉厚部や肉薄部は、断面が多角形となるような形状でもよい。肉厚部については、軸の剛性に影響しない範囲でどのような形状でも採用可能であり、肉薄部についても、上述した必要な出力が得られる厚みが確保された形状であればよい。
【符号の説明】
【0136】
1、1A~1D、5、5A~5D、6、7、7A 転がり軸受ホルダユニット、2 転がり軸受、10 外輪、20 内輪、30 転動体、40 保持器、50 軌道、51、52 シール、60、60A~60D、70、70A~70D、80 軸受ホルダ、61、61B~61D、71、71B~71D、81 肉厚部、61A、72A 大径部、62A、71A 小径部、62、62B~62D、72、72B~72D、82 肉薄部、100 ひずみゲージ、101 基材、101a 上面、102 機能層、103 抵抗体、104 配線、105 端子部、106 カバー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、前記外輪の内周側に前記外輪と同軸状に配置された内輪、及び前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の転動体、を備え、所定の回転軸を有する転がり軸受と、
前記転がり軸受の前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面と接するように配置される軸受ホルダと、
前記外輪又は前記内輪のひずみを検出する抵抗体を備えたひずみゲージと、を有し、
前記軸受ホルダは、肉厚部と、前記肉厚部よりも厚さが薄い肉薄部と、を備え、
前記ひずみゲージは、前記肉薄部に配置され、
前記転がり軸受には、所定の接触角となる予圧が加えられており、
前記肉厚部は、少なくとも、前記接触角を示す直線と前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面との交点から、前記交点に近い方の前記外輪又は前記内輪の端面である予圧側端面までの領域と接するように配置されており、
前記肉薄部は、前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面を全周に亘って押さえるように配置されている転がり軸受ホルダユニット。
【請求項2】
前記肉薄部は、前記外輪又は前記内輪に圧入されている、請求項1に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項3】
前記軸受ホルダは、前記肉厚部と前記肉薄部とが一体成型されたものである、請求項1に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項4】
前記軸受ホルダは、前記肉厚部と前記肉薄部とを互いに接合して形成されたものである、請求項1に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項5】
前記軸受ホルダは、径の異なる前記肉厚部と前記肉薄部とを互いに接合して形成されたものである、請求項4に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項6】
前記軸受ホルダは前記転がり軸受の前記外輪の外周面と接するように配置されており、
前記肉厚部は、前記肉薄部の外周側の一部に配置されている、請求項5に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項7】
前記軸受ホルダは前記転がり軸受の前記外輪の内周面と接するように配置されており、
前記肉厚部は、前記肉薄部の内周側の一部に配置されている、請求項5に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【請求項8】
前記軸受ホルダは金属により形成されている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の転がり軸受ホルダユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本転がり軸受ホルダユニットは、外輪、前記外輪の内周側に前記外輪と同軸状に配置された内輪、及び前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の転動体、を備え、所定の回転軸を有する転がり軸受と、前記転がり軸受の前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面と接するように配置される軸受ホルダと、前記外輪又は前記内輪のひずみを検出する抵抗体を備えたひずみゲージと、を有し、前記軸受ホルダは、肉厚部と、前記肉厚部よりも厚さが薄い肉薄部と、を備え、前記ひずみゲージは、前記肉薄部に配置され、前記転がり軸受には、所定の接触角となる予圧が加えられており、前記肉厚部は、少なくとも、前記接触角を示す直線と前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面との交点から、前記交点に近い方の前記外輪又は前記内輪の端面である予圧側端面までの領域と接するように配置されており、前記肉薄部は、前記外輪の外周面又は前記内輪の内周面を全周に亘って押さえるように配置されている