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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061851
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】管継手における管端防食構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
F16L57/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040436
(22)【出願日】2024-03-14
(62)【分割の表示】P 2021088005の分割
【原出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000148139
【氏名又は名称】株式会社川西水道機器
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川西 秀人
(57)【要約】
【課題】 簡素な構造でありながら作業性がよく、既設管の修理にも適用可能な管継手における管端防食構造を提供すること。
【解決手段】 管100が挿入される受口部21を有する継手本体2と、管100と継手本体2との間をシールする環状のパッキン3と、継手本体2に連結されパッキン3を押圧する押輪4と、管100の管端部110から管内に挿入され管端部110の内周面102を覆う防食コア5とを備える。管端部100の外周面101に密着する筒状部61と筒状部61から中心に向けて突出するリブ62とを有するゴムカバー6をさらに備える。筒状部61の端部61aは、パッキン3及び押輪4の開口部43により管端部110の外周面100に押圧される。リブ62は、防食コア5の鍔部52により管100の管端面112に押圧される。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管が挿入される受口部を有する継手本体と、前記管と前記継手本体との間をシールする環状のパッキンと、前記継手本体に連結され前記パッキンを押圧する押輪と、前記管の管端部から管内に挿入され前記管端部の内周面を覆う防食コアとを備えた管継手における管端防食構造であって、
前記管端部の外周面に密着する筒状部と前記筒状部から中心に向けて突出するリブとを有するゴムカバーをさらに備え、
前記筒状部の端部は、前記パッキン及び前記押輪の開口部により前記管端部の外周面に押圧され、
前記リブは、前記防食コアの鍔部により前記管の管端面に押圧される
管継手における管端防食構造。
【請求項2】
前記リブの突出幅は前記管の肉厚よりも小であり、前記リブの内側端部は前記管端面の内側縁部より前記外周面側に位置している請求項1記載の管継手における管端防食構造。
【請求項3】
前記管は、内面ライニング鋼管である請求項1又は2記載の管継手における管端防食構造。
【請求項4】
前記筒状部の肉厚は、1.0~1.5mmである請求項1~3のいずれかに記載の管継手における管端防食構造。
【請求項5】
前記筒状部の軸方向への伸縮量は、1.0mm以下である請求項1~4のいずれかに記載の管継手における管端防食構造。
【請求項6】
前記押輪の外周面に係止されるフックを備えた止輪をさらに有する請求項1~6のいずれかに記載の管継手における管端防食構造。
【請求項7】
前記止輪は、互いを対向させて緊締手段により前記管の外周面に固定される一対の分割体からなり、前記押輪は、前記受口部に前記パッキンを介在させて螺合緊締されるユニオンナットであり、前記分割体は、前記外周面に沿う本体部と、先端に前記フックが設けられ前記管の軸方向に沿うアームと、前記本体部の端部から外方へ向けて突出し前記アームが設けられた突出部とを有する請求項6記載の管継手における管端防食構造。
【請求項8】
前記突出部は、前記緊締手段が貫通する貫通孔を有するフランジ部と、前記フランジ部から垂設された壁部とを少なくとも有し、前記止輪は、前記緊締手段が挿通し且つ対向する前記フランジ部に挟持されるゴム部材を有する請求項7記載の管継手における管端防食構造。
【請求項9】
前記本体部の裏面には、前記突出部の近傍に前記管側へ向けて突出する歯部が設けられている請求項7又は8記載の管継手における管端防食構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手における管端防食構造に関する。さらに詳しくは、管が挿入される受口部を有する継手本体と、前記管と前記継手本体との間をシールする環状のパッキンと、前記継手本体に連結され前記パッキンを押圧する押輪と、前記管の管端部から管内に挿入され前記管端部の内周面を覆う防食コアとを備えた管継手における管端防食構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き管継手における管端防食構造として、例えば特許文献1に記載の如きものが知られている。この管端防食構造では、防食キャップのフランジ部を継手本体の受口部に接着させ、押輪の螺合緊締によりフランジ部を受口部とパッキンで強く挟持させることで防食キャップの脱落を防止している。そのため、フランジ部の接着に時間を要し作業性が低下していた。また、フランジ部を受口部とパッキンで挟持するため、管継手を既設管に対しスライドさせることができず、既設管の修理(接続)に適用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-204737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、簡素な構造でありながら作業性がよく、既設管の修理にも適用可能な管継手における管端防食構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る管継手における管端防食構造の特徴は、管が挿入される受口部を有する継手本体と、前記管と前記継手本体との間をシールする環状のパッキンと、前記継手本体に連結され前記パッキンを押圧する押輪と、前記管の管端部から管内に挿入され前記管端部の内周面を覆う防食コアとを備えた構成において、前記管端部の外周面に密着する筒状部と前記筒状部から中心に向けて突出するリブとを有するゴムカバーをさらに備え、前記筒状部の端部は、前記パッキン及び前記押輪の開口部により前記管端部の外周面に押圧され、前記リブは、前記防食コアの鍔部により前記管の管端面に押圧されることにある。
【0006】
上記構成によれば、管端部の外周面に筒状部を密着させればよく、ゴムカバーを管端部に容易に装着することができる。そして、筒状部から中心に向けて突出するリブは防食コアの鍔部により管端面に押圧され、筒状部の端部はパッキン及び押輪の開口部により管端部の外周面に押圧される。このように、管端部に装着したゴムカバー及び防食コアによって、管の外周面及び管端面を簡単に覆うことができ、管端防食処理の作業性が極めて高い。しかも、上述の如く、ゴムカバーを管端部に装着し防食コアで管端面に押圧すればよいので、図13A,Bに示すように、既設管の修理にも適用することができ、汎用性も高い。
【0007】
上記構成において、前記リブの突出幅は前記管の肉厚よりも小であり、前記リブの内側端部は前記管端面の内側縁部より前記外周面側に位置しているようにするとよい。これにより、管端部の内周面を覆う防食コアを管内に挿入する際に、リブと防食コアとが接触することを回避できるので、防食コアの挿入がスムースに行え、作業性がさらに向上する。
【0008】
ここで、前記管は、例えば内面ライニング鋼管である。また、前記筒状部の肉厚は、1.0~1.5mmであるとよく、前記筒状部の軸方向への伸縮量は、1.0mm以下であるとよい。
【0009】
上記いずれかの構成において、前記押輪の外周面に係止されるフックを備えた止輪をさらに有する。係る場合、前記止輪は、互いを対向させて緊締手段により前記管の外周面に固定される一対の分割体からなり、前記押輪は、前記受口部に前記パッキンを介在させて螺合緊締されるユニオンナットであり、前記分割体は、前記外周面に沿う本体部と、先端に前記フックが設けられ前記管の軸方向に沿うアームと、前記本体部の端部から外方へ向けて突出し前記アームが設けられた突出部とを有する。
【0010】
上記構成において、前記突出部は、前記緊締手段が貫通する貫通孔を有するフランジ部と、前記フランジ部から垂設された壁部とを少なくとも有し、前記止輪は、前記緊締手段が挿通し且つ対向する前記フランジ部に挟持されるゴム部材を有するとよい。一対の分割体はゴム部材によって接近できないため、止輪に管を挿通させる際に、作業者が分割体を手で押さえて管を挿通させる空間を確保する必要がなく、作業性がよい。なお、前記本体部の裏面には、前記突出部の近傍に前記管側へ向けて突出する歯部が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明に係る管継手における管端防食構造の特徴によれば、簡素な構造でありながら作業性がよく、既設管の修理にも適用可能となった。
【0012】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る管継手における管端防食構造を示す斜視図である。
図2】止輪の締付前の状態を示す管軸方向視図である。
図3図2の平面図である。
図4図2の側面図である。
図5図2のA-A断面図である。
図6】管挿入前における止輪と押輪との係止状態を説明する図である。
図7】第一分割体を示す斜視図である。
図8】第二分割体を示す斜視図である。
図9】ゴム部材を示す斜視図である。
図10】止輪の締付後の状態を示す図2相当図である。
図11】止輪の締付後の状態を示す図4相当図である。
図12A】新設管における施工手順を説明する図である。
図12B】新設管における施工手順を説明する図である。
図13A】既設管における施工手順を説明する図である。
図13B】既設管における施工手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る管継手10における管端防食構造1は、図1,5に示すように、大略、管100が挿入される受口部21を有する継手本体2と、管100と継手本体2との間をシールする環状のパッキン3と、継手本体2に連結されパッキン3を押圧する押輪4と、管100の管端部110から管内に挿入され管端部110の内周面101を覆う防食コア5と、管端部110の外周面102に装着されるゴムカバー6とを備える。また、本実施形態において、管端防食構造1は、押輪4の外周面に係止されるフック72を備えた止輪7をさらに有する。
【0015】
本実施形態において、管100は、図5に示すように、管100の内周面102にライニング103が施された内面ライニング鋼管であり、外周面101はライニングで被覆されていない。ライニング103としては、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の材質のものが挙げられる。この管100を切断すると、その切断面(管端面112)において金属の管本体111が露出し、露出した金属部分である外周面101及び管端面112の露出部113から腐食が進行する。本発明に係る管端防食構造1は、継手本体2の内部において、外周面101及び管端面112を覆うことで管端部110の腐食を防止する。
【0016】
継手本体2は、図1,5に示すように、テーパー状の受口部21と、その外周面に刻設された雄ねじ22とを有する。受口部21の内径R1は、ゴムカバー6が装着された管端部110が挿通可能となるように、管100の外径R2とゴムカバー6の肉厚tの和よりも若干大きく形成されている。
【0017】
本実施形態において、押輪4は、受口部21にパッキン3を介在させて螺合緊締されるユニオンナットである。このユニオンナット4は、図1,5に示すように、外周面に設けられ止輪7のフック72が係止される溝部41と、内周面に刻設された雌ねじ42と、溝部41より突出する環状フランジ44を有する。ユニオンナット4を受口部21に螺合緊締することで、パッキン3を圧縮変形させて管継手の止水性を確保する。ユニオンナット4の開口部43の内径R3も、ゴムカバー6が装着された管端部110が挿通可能となるように、管100の外径R2とゴムカバー6の肉厚t1の和よりも若干大きく形成されている。
【0018】
防食コア5は、図5に示すように、管端部110の内周面102のライニング103を覆う筒状部51と、この筒状部51から外方に向けて突出する環状の鍔部52とを有する。筒状部51の内側には、環状凸部53が複数設けられている。筒状部51は、管100の内周面102に密着するように、外径が管100の内径よりも僅かに大きくしてある。このような防食コア5としては、例えば特開2009-41638号公報に記載の如き製品が利用できる。
【0019】
ゴムカバー6は、図5に示すように、管端部110の外周面101に密着する筒状部61と、筒状部61から中心に向けて突出する環状のリブ62とを有する。この筒状部61のゴムの肉厚t1は、内外面ライニング鋼管の外面被覆厚さと同程度であり、例えば、1.0~1.5mmである。ゴムの肉厚t1を薄くすると、装着時やユニオンナット4により管100に押圧された際に破れるおそれがある。他方、ゴムの肉厚t1を厚くすると、管端部110の外径が受口部21の内径R1よりも大きくなり、後述する歯部71bと接触して破損したり、管100を継手本体2に挿入できなくなる。なお、肉厚t1が1.0~1.5mmであれば、製作も容易である。
【0020】
また、筒状部61の軸方向Xへの伸縮量は、例えば、1.0mm以下である。上記特許文献1では、上述したように、防食キャップのフランジ部を継手本体の受口部に接着して固定させ、押輪の螺合緊締によりフランジ部を受口部とパッキンで強く挟持させる構造で略C字形状の止輪(管離脱防止装置)が伸縮可撓するため、防食キャップに伸縮性(例えば、8mm程度)が必要となる。しかし、本発明における管100は鋼管であり且つ止輪7は半円弧状の一対の分割体70a,70bであるので、伸縮・可撓性(柔軟性)は僅かである。そのため、ゴムカバー6は、筒状部61がユニオンナット4の開口部43で管端部110の外周面101に押圧できる強度があればよく、伸縮量は少なくてよい。なお、図11に示すように、止輪7を緊締手段9により締付固定する際、フック72の先端72aとユニオンナット4の本体部との間には隙間が形成され、この隙間が軸方向Xへの伸縮量となる。
【0021】
ここで、リブ62の突出幅Wは、図5に示すように、管本体111の肉厚t2よりも小であり、リブ62の内側端部62aは管端面112の内側縁部(内周面102側)より外周面101側に位置している。すなわち、管端面112の内側部分は、リブ62と接触せず管本体111の露出部113となる。上述したように、筒状部51は、外径が管100の内径よりも僅かに大きく形成してあり、中心に向けて突出する環状凸部53も設けられている。そのため、リブ62が管100の内周面102又はライニング103まで突出していると、管100に嵌入する際にリブ62と筒状部51や環状凸部53が接触する。よって、リブ62の突出幅Wを管本体111の肉厚t2よりも小とし、管端面112の内側部分に露出部113を形成することで、これらの接触を回避でき、嵌入が容易となり、作業性が向上する。
【0022】
本実施形態において、止輪7は、図1~4に示すように、互いを対向させて緊締手段9により管100の外周面101に固定される対をなす第一、第二分割体70a,70bからなる。
【0023】
第一分割体70aは、図2~4,6,7に示すように、外周面101に沿う本体部71と、先端にユニオンナット4に係止するフック72が設けられ管100の軸方向Xに沿うアーム73と、本体部71の端部71aから外方へ向けて突出しアーム73が設けられた突出部74とを有する。第一分割体70aは、本体部71の中心に対し左右対称である。
【0024】
本体部71の裏面(管100側)には、突出部74の近傍に管100側へ向けて突出する歯部71bが設けられている。この歯部71bは、本体部71の幅方向(管100の軸方向X)の適宜間隔をおいて複数配置されている。また、この歯部71bは、本体部71の中心に対し線対称に設けられている。
【0025】
突出部74は、緊締手段9のボルト9aが貫通する貫通孔76を有するフランジ部75と、フランジ部75から垂設された壁部77とを有する。本実施形態において、壁部77は、フランジ部75の軸方向Xに沿う側部(管100の径方向における外側端部)にのみ設けられ、フランジ部75の軸方向Xに直交する両端部に壁部77に相当する部材は設けられていない。これにより、図11に示すように、止輪7の縮径によるゴム部材8の圧縮変形が軸方向Xへ誘導されるので、締付トルクが過大にならず、作業性が低下することもない。なお、図4に示すように、その壁部77の軸方向Xに沿う長さLは、ゴム部材8の軸方向Xに沿う長さと同等である。
【0026】
ここで、図4に示すように、フック72及びアーム73は、フランジ部75の表面75aから同じ高さ(厚さ)H1で形成されている。他方、壁部77は、フランジ部75の表面75aから高さ(厚さ)H2で形成されている。すなわち、壁部77における他方の分割体に対向する端部77aは、フック72及びアーム73における他方の分割体に対向する端部73aよりも他方の分割体へ向けて僅かに突出している(H1<H2)。
【0027】
また、図6に示すように、管100の挿入前の状態では、緊締手段9で連結された第一、第二分割体70a,70bが重力により下方へ偏って位置(係止)する。本発明において、挿入される管100の外周面101にはゴムカバー61が装着されるので、歯部71bと外周面101とは離隔させている。そのため、フック72及びアーム73の高さ(厚さ)H1が低い(薄い)と、止輪7がユニオンナット4から脱落する可能性がある。そこで、例えば、フック72及びアーム73の高さ(厚さ)H1をフランジ部75の厚さTよりも大きくする(T<H1<H2)。これにより、第一分割体70aのフック72の先端72aが環状フランジ44と干渉(接触)しえる干渉部Pi(同図ハッチング部分)を構成すると共に、第二分割体70bのフック72の先端72aの一部も環状フランジ44としえる干渉部Pi(同図ハッチング部分)を構成するので、止輪7の脱落を防止できる。なお、フック72の先端72a及びアーム73の内側面73bは、ユニオンナット4の溝部41及び環状フランジ44に沿うように湾曲させてある。
【0028】
止輪7の第二分割体70bは、図2~4,6,8に示すように、第一分割体70aと同じ構成である。但し、ボルト9aの頭部の回り止めのための突条78がフランジ部75の表面75aに設けられている点で、第一分割体70aと相違する。
【0029】
また、止輪7は、緊締手段9が挿通し且つ対向するフランジ部75に挟持されるゴム部材8を有する。ゴム部材8は、図9に示すように、略矩形の本体部81と、本体部81を貫通し緊締手段9のボルト9aを貫通させる貫通孔82とを備える。本体部81は、一つの側面において外方に向けて突出し、対向する本体部71の端部71aに挟持される挟持部83が形成されている。図6,10に示すように、挟持部83を端部71aで挟持することで、ボルト9aを貫通させる際に対向するフランジ部75の間で姿勢が維持されるので、ボルト9aの貫通が容易となる。
【0030】
次に、主に図12A,12Bを参照しながら、本発明に係る管端防食構造1の新設管100Aへの施工方法を説明する。
【0031】
図12Aに示すように、まず、新設管100Aの管端部110にゴムカバー6を装着し、ゴムカバー6の開口部63から管内へ防食コア5を嵌入させる(同図STEP1)。上述したように、リブ62の突出幅Wを管本体111の肉厚t2よりも小さく(短く)してあるので、防食コア5の筒状部51がリブ62に接触しないので、防食コア5の嵌入をスムースに行える。
【0032】
次に、受口部21にパッキン3を介在させて継手本体2にユニオンナット4を螺合緊締させると共に、止輪7をフック72によりユニオンナット4の溝部41に係止させる。止輪7は、第一、第二分割体70a,70bのフランジ部75でゴム部材8を挟持させた状態で緊締手段9で連結させてある(同図STEP2)。この時、図4,6に示すように、壁部77の間には、間隙Sが形成されている。
【0033】
そして、図12Bに示すように、止輪7及びユニオンナット4を連結させた継手本体2に開口部63及び受口部21から管端部110を挿入していく。上述したように、受口部21の内径R1及び開口部43の内径R3は、管100の外径R2とゴムカバー6の肉厚t1の和よりも若干大きく形成されているので、ゴムカバー6が継手本体2やユニオンナット4に接触せず、管端部110の挿入をスムースに行える。
【0034】
この時、図2に示すように、対向するフランジ部75で挟持(圧縮)されたゴム部材8によって、第一、第二分割体70a,70bは互いに接近できず、歯部71の歯先がゴムカバー6の外面に接触しない(歯先の内径R4<ゴムカバー6の外径R5)。よって、管100を挿入するために、手作業で対向する第一、第二分割体70a,70bを離隔させる必要がなく、スムースに管100を止輪7に通過させることができる。また、本体部71の中央部には、歯部71bが設けられておらず、管100との間に隙間が形成される。
【0035】
管端部110の挿入は、ゴムカバー6の端部61aの先端61bがユニオンナット4の開口部43に近接するまで行う。例えば、先端61bが、第一、第二分割体70a,70bの本体部71とユニオンナット4の開口部43との間(隙間)から目視可能となるまで管端部110を挿入する(同図STEP3)。このように、筒状部61の先端61bを挿入作業の目印とすることができ、従前のように、管の外面に挿入位置をマークする必要がなく、作業効率も向上する。
【0036】
そして、挿入位置が決まれば、緊締手段9により第一、第二分割体70a,70bを管100に緊締固定する(同図STEP4)。この時、壁部77の間に形成された間隙Sが無くなるまで緊締手段9により緊締する。壁部77の先端77a同士が当接するまで締め付ければよく、緊締作業の完了の確認が容易となる。
【0037】
この時、緊締手段9の緊締によって、図10に示すように、本体部71の中央部は管100に近接するように変形すると共に歯部71bが管100に食い込む。これにより、管100の離脱が防止される。また、図11に示すように、ゴム部材8は、フランジ部75によって圧縮変形し、その圧縮変形は壁部のない軸方向Xへ誘導される。
【0038】
次に、図13A,13Bを参照しながら、本発明に係る管端防食構造1の既設管への施工方法を説明する。なお、緊締手段9による止輪7の縮径、ゴム部材8の圧縮変形は、新設管100Aの場合と同じである。
【0039】
図13Aに示すように、まず、既設管100Bを2箇所で切断し(同図STEP1)、既設管100Bの切断部C(管端部110)にゴムカバー6を装着すると共にゴムカバー6の開口部63から管内へ防食コア5を嵌入させる。また、既設管100Bを接続する接合管100Cの管端部110にも同様に、ゴムカバー6及び防食コア5を装着しておく(同図STEP2)。管端部110へのゴムカバー6及び防食コア5の装着は、新設管100Aと同じである。
【0040】
そして、図13Bに示すように、止輪7及びユニオンナット4を連結させた継手本体2に開口部63及び受口部21から一方の既設管100Bの管端部110を挿入していく。挿入は、他方の開口部63及び受口部21が管端部110に位置するまで行う(同図STEP3)。そして、他方の既設管100Bの管端部110に他方の開口部63及び受口部21から他方の既設管100Bの管端部110を挿入していく。この際、例えば、先端61bが、第一、第二分割体70a,70bの本体部71とユニオンナット4の開口部43との間(隙間)から目視可能となるまで管端部110を挿入する(同図STEP4)。挿入位置が決まれば、緊締手段9により第一、第二分割体70a,70bを管100に緊締固定する。上述したように、ゴムカバー6は、管端部110の外周面101に装着するのみであるので、図13Bに示す如き、既設管100Bに対しその軸方向に止輪7及びユニオンナット4を連結させた継手本体2をスライドさせることができるので、既設管100Bの管端防食に適用可能である。
【0041】
最後に、他の実施形態の可能性について言及する。
上記実施形態において、ゴム部材8の貫通孔82は円形としたが、貫通孔82の形状を例えばU字状に形成することも可能である。但し、U字状の場合、圧縮変形によってフランジ部75から脱落するおそれがある。よって、上記実施形態の如く、円形の貫通孔82が好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1:管端防食構造、2:継手本体、3:パッキン、4:押輪(ユニオンナット)、5:防食コア、6:ゴムカバー、7:止輪、8:ゴム部材、9:緊締手段、9a:ボルト、9b:ナット、10:管継手、21:受口部、22:雄ねじ、41:溝部、42:雌ねじ、43:開口部、44:環状フランジ、51:筒状部、52:鍔部、53:環状凸部、61:筒状部、61a:端部、61b:先端、62:リブ、62a:内側端部、63:開口部、70a:第一分割体、70b:第二分割体、71:本体部、71a:端部、71b:歯部、72:フック、72a:先端、73:アーム、73a:端部、73b:内側面、74:突出部、75:フランジ部、75a:表面、76:貫通孔、77:壁部、78:突条、81:本体部、82:貫通孔、83:挟持部、100:管(内面ライニング鋼管)、100A:新設管、100B:既設管、100C:接合管、101:外周面、102:内周面、103:ライニング、110:管端部、111:管本体、112:管端面、113:露出部、C:切断部、H1:フック及びアームの高さ(厚さ)、H2:壁部の高さ(厚さ)、R1:受口部の内径、R2:管の外径、R3:開口部の内径、R4:歯先の内径、R5:ゴムカバーの外径、T:フランジ部の厚さ、t1:筒状部の肉厚、t2:管本体の肉厚、S:間隙、Pi:干渉部、X:軸方向、Y:直交方向、W:突出幅
図1
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図13B