(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061885
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス及びキット
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240426BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12M1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042734
(22)【出願日】2024-03-18
(62)【分割の表示】P 2020024512の分割
【原出願日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019036677
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 医療分野研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 研究課題名:「積層化細胞シートを用いた創薬試験用立体組織モデル」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保 寛嗣
(72)【発明者】
【氏名】塩山 高広
(72)【発明者】
【氏名】加川 友己
(72)【発明者】
【氏名】日向 裕人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 穂高
(57)【要約】
【課題】筋収縮を定量的に測定することを可能とし、量産可能な、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス及びキットの提供。
【解決手段】ゲルの一端を固定するための第1ゲル保持部を備える第1ゲルアダプタホルダと、前記ゲルの他端を固定するとともに前記第1ゲル保持部に対向して設けられる第2ゲル保持部を備える第2ゲルアダプタホルダと、前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダを連結するための連結部材が固定可能な固定部と、を有する張力測定デバイス。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスであって、
ゲルの一端を固定するための第1ゲル保持部を備える第1ゲルアダプタホルダと、
前記ゲルの他端を固定するとともに前記第1ゲル保持部に対向して設けられる第2ゲル保持部を備える第2ゲルアダプタホルダと、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダを連結するための連結部材が固定可能な固定部と、を有する張力測定デバイス。
【請求項2】
前記第1ゲルアダプタホルダは、第1嵌合部を有し、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダが収容されるとともに、前記第1嵌合部と嵌合可能に構成された第2嵌合部を備える培地槽をさらに有する、請求項1に記載の張力測定デバイス。
【請求項3】
前記固定部は、前記第1ゲルアダプタホルダに設けられ、前記連結部材に係合可能である、請求項1または2に記載の張力測定デバイス。
【請求項4】
張力検出手段および前記第2ゲルアダプタホルダを連結するロッドをさらに有し、
前記第2ゲルアダプタホルダは、前記第2ゲル保持部の上側に設けられる第1延在部をさらに有し、
前記ロッドは、前記第1延在部が挿入される凹部を有し、
前記第1延在部が前記凹部に挿入された状態で、前記第1延在部および前記凹部に固定部材を挿入することによって、前記第2ゲルアダプタホルダおよび前記ロッドが連結される、請求項1~3のいずれか1項に記載の張力測定デバイス。
【請求項5】
前記第2ゲルアダプタホルダは、前記連結部材がスライド可能に挿入される一対の袖部を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の張力測定デバイス。
【請求項6】
筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス用のキットであって、
ゲルの一端を固定するための第1ゲル保持部を備える第1ゲルアダプタホルダと、
前記ゲルの他端を固定するとともに前記第1ゲル保持部に対向して設けられる第2ゲル保持部を備える第2ゲルアダプタホルダと、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダを連結するための連結部材と、
前記連結部材によって連結された前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダが嵌まる基板と、
前記連結部材が固定可能な固定部と、を有するキット。
【請求項7】
前記第1ゲルアダプタホルダは第1嵌合部を備え、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダが収容されるとともに、前記第1嵌合部と嵌合可能に構成された第2嵌合部を備える培地槽をさらに有する、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
張力検出手段および前記第2ゲルアダプタホルダを連結するロッドと、
前記培地槽の頂部に固定可能であるとともに、前記ロッドを把持可能なロッド把持部を備えるロッド保持治具と、をさらに有する、請求項6または7に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
創薬研究においては、開発された薬の安全性・有効性を評価するために培養細胞を用いたインビトロ試験や、実験動物を用いたインビボ試験が行われている。前者に関しては、動物細胞のインビトロ培養系が用いられている。後者は、げっ歯類の動物を中心とした実験動物を用いた系により評価が行われている。
【0003】
一般に、創薬の成功率は、約6000分の1ともいわれており、数多くの候補薬の開発失敗により、製薬会社等の研究開発コストは増大する傾向にある。一般に、1種類の新薬を開発するのに数百億円の投資が必要ともいわれる。新薬開発の失敗の主な要因は、(1)細胞単体を用いる評価スクリーニング系と実際のヒト生体組織との差異、(2)実験動物とヒトとの差異、に起因しているといわれる。これらの差異を解消し、創薬の成功率を向上させ、研究開発コストを低減することが創薬開発現場で求められている。
【0004】
近年、様々な機能細胞へ分化する能力を有するiPS細胞などの多能性幹細胞を利用した創薬スクリーニング方法が開発されている。しかしながら、従来用いられている評価系は、細胞単体を用いるものであり、生体組織の状態を反映していない。そのため、多能性幹細胞から分化誘導した体細胞から、生体組織を模倣する評価系を開発することが求められている。
【0005】
細胞を三次元的に構築する試みとしては、例えば、細胞をスキャフォールドと呼ばれる三次元構造体に播種する方法や、臓器・組織を脱細胞化し、残存したマトリックスに細胞を播種して三次元化する方法、シート状に剥離された細胞シートを三次元的に積層する方法などが開発されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1)。
【0006】
細胞シートを作製する方法の1つとして、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)が被覆された細胞培養皿(温度応答性培養皿)を用いる方法がある(特許文献1)。PIPAAmが被覆された温度応答性培養皿上で任意の細胞を培養し、細胞がコンフルエントになった後に、PIPAAmの下限臨界溶液温度(LCST)である32℃未満である20℃にすると、非侵襲的にシート状の細胞(細胞シート)が得られる。
【0007】
こうした技術を駆使し、創薬スクリーニングに利用するための評価系の研究開発が行われている。評価系の1つとして、候補薬の心毒性を評価するための心筋組織を構築する試みが行われている(例えば、特許文献2及び3)。しかしながら、これらの方法による評価系の構築は、非常に煩雑であり、量産には向かない。また、筋収縮を、定量的に測定することができない。
【0008】
創薬スクリーニング系、特に、心毒性スクリーニング試験に利用可能で、かつ、量産可能で簡便な手順による新たな評価系の開発が希求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平02-211865号公報
【特許文献2】国際公開第2012/036224号
【特許文献3】国際公開第2012/036225号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Haraguchi Y.,et al.,Scaffold-free tissue engineering using cell sheet technology.RSC Adv.,2012;2:2184-2190
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、筋収縮を定量的に測定することを可能とし、量産可能な、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス、システム及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて研究開発を行ってきた。その結果、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスの形態を工夫することにより、筋収縮を定量的に測定することを可能とし、量産可能な筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス、システム及びキットを提供する本発明を開発した。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0013】
[1] 筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスであって、
枠部材と、ゲルの一端を固定するために前記枠部材の内側面の一部に突出して設けられた第1ゲル保持部とを有する第1ゲルアダプタホルダであって、ここで前記枠部材が、前記第1ゲル保持部と対向する位置の枠部材上部に切り欠きを有し、それによって形成された一対の第1把持部を備え、ここで前記枠部材上部が一対の爪部を備える、前記第1ゲルアダプタホルダ;および
前記ゲルの他端を固定するための第2ゲル保持部と、連結部を介して前記第2ゲル保持部と繋がった接続部とを有する第2ゲルアダプタホルダ;
を備え、
ここで前記第2ゲルアダプタホルダは、前記第2ゲル保持部が、前記枠部材の内側において前記第1ゲル保持部と対向するように、前記第1把持部で前記連結部を把持することによって前記第1ゲルアダプタホルダに取り付けられ、
ここで前記一対の第1把持部の間隔は、前記一対の爪部が培地槽蓋体と嵌合した時に広がることを特徴とする、
デバイス。
【0014】
[2] 前記筋細胞が、心筋細胞、骨格筋細胞および平滑筋細胞からなる群から少なくとも1つ選択される、[1]に記載のデバイス。
【0015】
[3] 前記細胞構造体が、シート状、棒状、及び紐状からなる群から少なくとも1つ選択される形状である、[1]又は[2]に記載のデバイス。
【0016】
[4]前記第1ゲル保持部が1つ以上の第1ゲル保持口を有し、前記第2ゲル保持部が1つ以上の第2ゲル保持口を有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0017】
[5] 前記第1ゲル保持口及び前記第2ゲル保持口が、それぞれ2~5個設けられた、[4]に記載のデバイス。
【0018】
[6] 前記第1ゲル保持部及び前記第2ゲル保持部の厚さが、前記枠部材の厚さよりも薄い、[1]~[5]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0019】
[7] 前記枠部材の厚さが、0.5mm~3.0mmである、[1]~[6]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0020】
[8] 前記第1把持部は、前記連結部を把持する方向に突出した凸部を備え、かつ、前記連結部は、前記凸部が嵌まる凹部を備える、[1]~[7]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0021】
[9] 前記枠部材が、前記第2ゲルアダプタホルダを把持するための第2把持部を備える、[1]~[8]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0022】
[10] 前記第1ゲル保持部と前記第2ゲル保持部との間に、ゲルを備えた、[1]~[9]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0023】
[11] 前記ゲルが、ハイドロゲルである、[10]に記載のデバイス。
【0024】
[12] 前記ゲルが、フィブリンゲルである、[10]又は[11]に記載のデバイス。
【0025】
[13] 前記ゲルに接着させた筋細胞を含む細胞構造体を備えた、[10]~[12]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0026】
[14] 前記筋細胞が、心筋細胞、骨格筋細胞および平滑筋細胞からなる群から少なくとも1つ選択される、[13]に記載のデバイス。
【0027】
[15] 前記細胞構造体が、シート状、棒状及び紐状からなる群から少なくとも1つ選択される形状である、[13]または[14]に記載のデバイス。
【0028】
[16] 前記細胞構造体が、細胞シートである、[13]~[15]のいずれか1項に記載のデバイス。
【0029】
[17] [13]~[15]のいずれか1項に記載のデバイス;
前記デバイスを浸漬する培地槽本体;
前記一対の爪部と嵌合する嵌合部と、前記第2ゲルアダプタホルダの前記接続部が貫通する接続部貫通口とを備え、前記培地槽本体を覆う培地槽蓋体;
前記第2ゲルアダプタホルダの前記接続部に接続された張力検出手段;
前記張力検出手段に接続され、前記張力検出手段で検出した信号を演算し、張力を算出する演算器;及び、
前記演算器により算出された結果を表示する出力手段、を備えた、
筋細胞を含む細胞構造体の張力測定システム。
【0030】
[18] 前記張力検出手段が、ロードセルである、[17]に記載のシステム。
【0031】
[19] 枠部材と、ゲルの一端を固定するために前記枠部材の内側面の一部に突出して設けられた第1ゲル保持部とを有する第1ゲルアダプタホルダであって、ここで前記枠部材が、前記第1ゲル保持部と対向する位置の枠部材上部に切り欠きを有し、それによって形成された一対の第1把持部を備え、ここで前記枠部材上部が一対の爪部を備える、前記第1ゲルアダプタホルダ;
前記ゲルの他端を固定するための第2ゲル保持部と、連結部を介して前記第2ゲル保持部と繋がった接続部とを有する第2ゲルアダプタホルダ;
前記枠部材の内側面に沿って嵌まる1対のゲル成形凸部を有する基板;及び
前記ゲルの上面を形成するために前記基板のゲル接触面に対して平行な面を有するゲル形成蓋体、を備え、
ここで前記第2ゲルアダプタホルダは、前記第2ゲル保持部が、前記枠部材の内側において前記第1ゲル保持部と対向するように、前記第1把持部で前記連結部を把持することによって前記第1ゲルアダプタホルダに取り付けられ、
ここで前記一対の第1把持部の間隔は、前記一対の爪部が培地槽蓋体と嵌合した時に広がることを特徴とする、[1]~[15]のいずれか1項に記載のデバイスを作製するためのキット。
【0032】
[20] 前記第1ゲル保持部が1つ以上の第1ゲル保持口を有し、前記第2ゲル保持部が1つ以上の第2ゲル保持口を有する、[19]に記載のキット。
【0033】
[21] 前記第1ゲル保持部及び前記第2ゲル保持部の厚さが、前記枠部材の厚さよりも薄い、[19]又は[20]に記載のキット。
【0034】
[22] さらに、前記ゲルを作製するためのゲル化剤を備えた、[19]~[21]のいずれか1項に記載のキット。
【0035】
[23]筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスであって、
ゲルの一端を固定するための第1ゲル保持部を備える第1ゲルアダプタホルダと、
前記ゲルの他端を固定するとともに前記第1ゲル保持部に対向して設けられる第2ゲル保持部を備える第2ゲルアダプタホルダと、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダを連結するための連結部材が固定可能な固定部と、を有する張力測定デバイス。
【0036】
[24] 前記第1ゲルアダプタホルダは、第1嵌合部を有し、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダが収容されるとともに、前記第1嵌合部と嵌合可能に構成された第2嵌合部を備える培地槽をさらに有する、[23]に記載の張力測定デバイス。
【0037】
[25] 前記固定部は、前記第1ゲルアダプタホルダに設けられ、前記連結部材に係合可能である、[23]または[24]に記載の張力測定デバイス。
【0038】
[26] 張力検出手段および前記第2ゲルアダプタホルダを連結するロッドをさらに有し、
前記第2ゲルアダプタホルダは、前記第2ゲル保持部の上側に設けられ、断面が砲弾型に構成された第1延在部をさらに有し、
前記ロッドは、前記第1延在部が挿入される凹部を有し、
前記第1延在部が前記凹部に挿入された状態で、前記第1延在部および前記凹部に固定部材を挿入することによって、前記第2ゲルアダプタホルダおよび前記ロッドが連結される、[23]~[25]のいずれか1項に記載の張力測定デバイス。
【0039】
[27] 前記第2ゲルアダプタホルダは、前記連結部材がスライド可能に挿入される一対の袖部を有する[23]~[26]のいずれか1項に記載の張力測定デバイス。
【0040】
[28] 筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス用のキットであって、
ゲルの一端を固定するための第1ゲル保持部を備える第1ゲルアダプタホルダと、
前記ゲルの他端を固定するとともに前記第1ゲル保持部に対向して設けられる第2ゲル保持部を備える第2ゲルアダプタホルダと、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダを連結するための連結部材と、
前記連結部材によって連結された前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダが嵌まる基板と、
前記連結部材が固定可能な固定部と、を有するキット。
【0041】
[29]前記第1ゲルアダプタホルダは第1嵌合部を備え、
前記第1ゲルアダプタホルダおよび前記第2ゲルアダプタホルダが収容されるとともに、前記第1嵌合部と嵌合可能に構成された第2嵌合部を備える培地槽をさらに有する、[28]に記載のキット。
【0042】
[30] 張力検出手段および前記第2ゲルアダプタホルダを連結するロッドと、
前記培地槽の頂部に固定可能であるとともに、前記ロッドを保持可能なロッド保持部を備えるロッド保持治具と、をさらに有する、[28]または[29]に記載のキット。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、筋細胞を含む細胞構造体の張力を、簡便に測定することを可能とする。また、本発明の当該デバイスは、筋細胞を含む細胞構造体の張力を測定するシステムに容易に組み込むことができ、再現性良く、安定的にデータを取得することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、第1実施形態の張力測定デバイスを示す図である。(A)正面図、(B)側面図、(C)斜視図。
【
図2】
図2は、第1実施形態の張力測定デバイスの第1ゲルアダプタホルダを示す図である。(A)正面図、(B)側面図、(C)斜視図。
【
図3】
図3は、第1実施形態の張力測定デバイスの第2ゲルアダプタホルダを示す図である。(A)正面図、(B)側面図、(C)斜視図。
【
図4】
図4は、第1実施形態の張力測定デバイスと共に用いられる基板を示す図である。(A)正面図、(B)側面図、(C)斜視図。
【
図5】
図5は、第1実施形態の張力測定デバイスと共に用いられる固定部材を示す図である。(A)正面図、(B)側面図、(C)斜視図。
【
図6】
図6は、
図2~5の各部材とゲル形成蓋体とを組み合わせた図である。(A)正面図、(B)側面図、(C)斜視図。
【
図7】
図7は、第1実施形態の張力測定デバイスを作製するためのキットを用いた、張力測定デバイスの作製工程を示す図である。(A)~(C):張力測定デバイスの作製工程、(D):(C)で得られた張力測定デバイスの断面図。
【
図8】
図8は、第1実施形態における、張力測定デバイスを作製する工程を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態における、張力測定デバイスの使用態様を示す図である。(A)平面図、(B)斜視図、(C)正面図、(D)側面図。
【
図10】
図10は、第1実施形態の張力測定システムを示す図である。(A)張力測定システムの使用態様を示す。(B):張力検出手段コネクタに接続した張力測定デバイスを示す。
【
図11】
図11は、本発明の第1実施形態の張力測定システムを示す図である。
【
図12】
図12は、比較例の張力測定デバイスを示す斜視図である。(A)第1ゲルアダプタホルダ、(B)第2ゲルアダプタホルダ、(C)第1ゲルアダプタホルダ、第2ゲルアダプタホルダ及び基板の組み合わせ。
【
図13】
図13は、本発明の張力測定デバイスを用いて測定したヒトiPS細胞由来心筋細胞の張力測定結果(10秒間)を示す。なお、張力値は、比較のためにベースとなる張力値をずらして同一グラフにプロットしている点に留意されたい。上段:アダプタ1(比較例)、下段:アダプタ2(本発明)を用いて検出した心筋細胞の張力測定結果。
【
図14】
図14は、本発明の張力測定デバイスを用いて測定したヒトiPS細胞由来心筋細胞の張力測定結果(1200秒間)を示す。なお、張力値は、比較のためにベースとなる張力値をずらして同一グラフにプロットしている点に留意されたい。上段:アダプタ1(比較例)、下段:アダプタ2(本発明)を用いて検出した心筋細胞の張力測定結果。
【
図15】
図15は、本発明の張力測定デバイスを用いて測定したヒトiPS細胞由来心筋細胞の張力測定結果を示し、
図14で得られた結果を平均値で規格化した結果がプロットされている。上段:アダプタ1(比較例)、下段:アダプタ2(本発明)を用いて検出した心筋細胞の張力測定結果。
【
図16】
図16は、本発明の張力測定デバイスに、棒状のヒトiPS細胞由来心筋細胞を含む細胞構造体を適用した状態を示している。
【
図17】
図17は、第2実施形態の張力測定デバイスに連結部材が連結されている様子を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態の張力測定デバイスの第1ゲルアダプタホルダを示す図である。(A)斜視図、(B)正面図。
【
図19】
図19は、第2実施形態の張力測定デバイスの第2ゲルアダプタホルダを示す図である。(A)斜視図、(B)正面図。
【
図20】
図20は、第2実施形態の張力測定デバイスのロッドを示す図である。(A)斜視図、(B)正面図。
【
図21】
図21は、第2実施形態の張力測定デバイスのピンを示す斜視図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態の張力測定デバイスの第2ゲルアダプタホルダ、ロッド、およびピンがアッセンブリされた様子を示す図である。(A)斜視図、(B)側面図。
【
図23】
図23は、第2実施形態の張力測定デバイスの培地槽を示す図である。(A)斜視図、(B)上面図。
【
図24】
図24は、第2実施形態の張力測定デバイスと共に用いられる連結部材を示す図である。(A)斜視図、(B)正面図。
【
図25】
図25は、第2実施形態の張力測定デバイスと共に用いられる基材を示す図である。(A)斜視図、(B)正面図。
【
図26】
図26は、第1ゲルアダプタホルダおよび第2ゲルアダプタホルダを連結部材によって連結した様子を示す斜視図である。
【
図27】
図27は、連結部材によって連結された第1ゲルアダプタホルダおよび第2ゲルアダプタホルダが基板に配置されるとともに、ゲル形成蓋体が配置された様子を示す斜視図である。
【
図28】
図28は、連結部材によって連結された第1ゲルアダプタホルダおよび第2ゲルアダプタホルダを培地槽に固定した様子を示す図である。(A)斜視図、(B)断面図。
【
図29】
図29は、ロッド保持治具によってロッドを保持した状態を示す斜視図である。
【
図30】
図30は、
図29の状態から培地槽にリア側蓋体を取り付けた様子を示す斜視図である。
【
図31】
図31は、
図30の状態から連結部材を取り除いたときの様子を示す図である。(A)斜視図、(B)断面図。
【
図32】
図32は、
図31の状態からロッドを張力検出手段に接続させたときの様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、必要に応じて図面を参照にしながら説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明の構成は、実施形態の具体的構成に限定されない。
【0046】
<筋細胞を含む細胞構造体>
本明細書において、「筋細胞を含む細胞構造体」とは、生体から採取した筋細胞を含む生体組織(例えば、心筋組織、骨格筋組織、平滑筋組織など)や、筋細胞を含む構造体をいう。本発明に適用し得る、筋細胞を含む細胞構造体は、生体から採取した生体組織そのものや、生体から採取した生体組織を加工した生体組織であってもよい。また、本発明に適用し得る筋細胞を含む細胞構造体は、筋細胞を含む懸濁液とゲル溶液又はゲル化剤とを混合させて形成した細胞構造体であってもよく、細胞シートであってもよい。さらにまた、本発明に適用し得る筋細胞を含む細胞構造体とは、ゲルの上に、筋細胞を含む細胞群を直接播種し、培養することにより形成されるものであってもよい。
【0047】
一実施態様において、本発明に適用し得る、筋細胞を含む細胞構造体は、シート状、棒状及び紐状からなる群から少なくとも1つ選択されてもよく、好ましくはシート状の細胞構造体である。
【0048】
本明細書において、「シート状の細胞構造体」とは、例えば、約10μm(例えば、細胞1個分の厚さ)以上~約2mm以下の平均の厚さを有し、かつ、後述の第1ゲル保持部と第2ゲル保持部との間に適用し得る長さを有する、膜状の細胞構造体をいう。「シート状の細胞構造体」の幅は、第1ゲル保持部及び第2ゲル保持部に適用し得る幅であればよく、限定されない。1枚の「シート状の細胞構造体」が、張力測定デバイスに適用されてもよく、複数枚の「シート状の細胞構造体」が張力測定デバイスに適用されてもよい。複数枚の「シート状の細胞構造体」は、第1ゲル保持部と第2ゲル保持部の間に並列に適用されてもよく、積層されて適用されてもよい。
【0049】
本明細書において、「棒状の細胞構造体」とは、例えば、約100μm以上~約5mm以下の平均直径を有し、かつ、後述の第1ゲル保持部と第2ゲル保持部との間に適用し得る長さを有する細胞構造体をいう。1本の「棒状の細胞構造体」が、張力測定デバイスに適用されてもよく、複数本の「シート状の細胞構造体」が張力測定デバイスに適用されてもよい。複数本の「棒状の細胞構造体」は、第1ゲル保持部と第2ゲル保持部の間に並列に適用されてもよく、束ねられて適用されてもよい。
【0050】
本明細書において、「紐状の細胞構造体」とは、例えば、約10μm以上~約100μm未満の平均直径を有し、かつ、後述の第1ゲル保持部と第2ゲル保持部との間に適用し得る長さを有する三次元細胞構造体をいう。1本の「紐状の細胞構造体」が、張力測定デバイスに適用されてもよく、複数本の「紐状の細胞構造体」が張力測定デバイスに適用されてもよい。複数本の「紐状の細胞構造体」は、第1ゲル保持部と第2ゲル保持部の間に並列に適用されてもよく、束ねられて適用されてもよい。
【0051】
なお、「棒状の細胞構造体」と「紐状の細胞構造体」は、その直径によって便宜的に上記のように分けて表現しているが、いずれも細長い形状の細胞構造体を表すものであり、相互に用語を入れ替えて使用されてもよい。
【0052】
本発明に適用し得る「棒状の細胞構造体」又は「紐状の細胞構造体」は、例えば、シート状の細胞構造体を棒状又は紐状に形成(例えば、巻きとる、よじる、収縮させる、又は切断する等)してもよく、棒状又紐状のモールドに細胞と任意のゲルを含む懸濁液を流し込んで形成したものであってもよい(例えば、Zhao Y,Cell.2019 Feb 7;176(4):913-927参照)。
【0053】
本明細書において、「筋細胞を含む細胞構造体」とは、細胞構造体に含まれる筋細胞数のうち、少なくとも筋細胞が10%以上含まれるものをいい、例えば、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上含まれる。本明細書において、「筋細胞」とは、動物体の筋肉組織を形成する収縮性を有する細胞であり、例えば、心筋細胞、骨格筋細胞及び平滑筋細胞が挙げられる。一実施態様において、本発明において用いられる「筋細胞」は、心筋細胞、骨格筋細胞及び平滑筋細胞からなる群から少なくとも1つ選択される。本発明に用いることができる筋細胞は動物由来のものであればよく、例えば、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類の筋細胞を用いることができる。好ましくは、哺乳動物由来の筋細胞であり、例えば、マウス、ラット、ヒト、サル、ブタ、イヌ、ヒツジ、ネコ、ヤギなどの哺乳動物由来の筋細胞を用いることができる。
【0054】
本発明に利用可能な筋細胞は、生体組織から採取された初代細胞であってもよく、株化された細胞であってもよく、多能性幹細胞若しくは組織幹細胞から分化誘導された細胞であってもよい。
【0055】
本明細書において「多能性幹細胞」とは、あらゆる組織の細胞へと分化する能力(分化多能性)を有する幹細胞の総称することを意図する。限定されるわけではないが、多能性幹細胞は胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)、胚性癌腫細胞(embryonic carcinoma cell:EC細胞)、栄養芽幹細胞(trophoblast stem cell:TS細胞)、エビブラスト幹細胞(epiblast stem cell:EpiS細胞)、胚性生殖細胞(embryonic germ cell:EG細胞)、多能性生殖細胞(multipotent germline stem cell:mGS細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)、Muse細胞等を含む。好ましくは、ES細胞又はiPS細胞である。多能性幹細胞としては公知の任意のものを使用可能であるが、例えば、国際公開第2009/123349号(PCT/JP2009/057041)に記載の多能性幹細胞を使用することができる。
【0056】
本発明に用いることができる筋細胞は、多能性幹細胞から分化誘導された細胞であってもよい。多能性細胞から筋細胞へ分化させる方法は、公知の方法を用いることができる(例えば、Matsuura K.,et al.Creation of human cardiac cell sheets using pluripotent stem cells.Biochem.Biophys.Res.Commun.2012 Aug 24;425(2):321-327等を参照のこと)。
【0057】
筋細胞を含む細胞構造体には、筋細胞以外の細胞が含まれていてもよい。例えば、心筋芽細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞等が含まれていてもよい。
【0058】
本明細書において、「シート状の細胞構造体」の一実施形態である「細胞シート」とは、複数の任意の細胞を含む細胞群を細胞培養基材上で培養し、細胞培養基材上から剥離することで得られる1層又は複数層のシート状の細胞群をいう。細胞シートを得る方法としては、例えば、温度、pH、光等の刺激によって分子構造が変化する高分子を被覆した刺激応答性培養基材上で細胞を培養し、温度、pH、光等の刺激の条件を変えて刺激応答性培養基材表面を変化させることで、細胞同士の接着状態は維持しつつ、刺激応答性培養基材から細胞をシート状に剥離する方法や、任意の培養基材上で細胞培養し、物理的にピンセット等により剥離して得る方法等が挙げられる。細胞シートを得るための刺激応答性培養基材としては、0~80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した温度応答性培養基材が知られている。温度応答性培養基材上で、ポリマーの水和力が弱い温度域で細胞を培養し、その後、培養液をポリマーの水和力が強い状態となる温度に変化させることで細胞をシート状の細胞群として剥離させることができる。
【0059】
細胞シートを得るために用いられる温度応答性培養基材は、細胞が培養可能な温度域でその表面の水和力を変化させる基材であることが好ましい。その温度域は、一般に細胞を培養する温度、例えば33℃~40℃であることが好ましい。細胞シートを得るために用いられる培養基材に被覆される温度応答性高分子は、ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2-211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。
【0060】
刺激応答性高分子、特に温度応答性高分子としてポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を用いた場合を例(温度応答性培養皿)に説明する。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は31℃に下限臨界溶解温度を有するポリマーとして知られ、遊離状態であれば、水中で31℃以上の温度で脱水和を起こしポリマー鎖が凝集して白濁する。逆に31℃未満の温度ではポリマー鎖は水和し、水に溶解した状態となる。本発明では、このポリマーがシャーレなどの基材表面に被覆されて固定されたものである。したがって、31℃以上の温度であれば、培養基材表面のポリマーも同じように脱水和するが、ポリマー鎖が培養基材表面に固定されているため、培養基材表面が疎水性を示すようになる。逆に、31℃未満の温度では、培養基材表面のポリマーは水和するが、ポリマー鎖が培養基材表面に被覆されているため、培養基材表面が親水性を示すようになる。このときの疎水的な表面は細胞が付着し、増殖できる適度な表面であり、また、親水的な表面は細胞が付着できない表面となる。そのため、該基材を31℃未満に冷却すると、細胞が基材表面から剥離する。細胞が培養面一面にコンフルエントになるまで培養されていれば、該基材を31℃未満に冷却することによって細胞シートを回収できる。温度応答性培養基材は、同一の効果を有するものであれば限定されるものではないが、例えば、セルシード社(東京、日本)が市販するUpCell(登録商標)などが挙げられる。
【0061】
<張力測定デバイス>
本発明は、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスであって、
枠部材と、ゲルの一端を固定するために前記枠部材の内側面の一部に突出して設けられた第1ゲル保持部とを有する第1ゲルアダプタホルダであって、ここで前記枠部材が、前記第1ゲル保持部と対向する位置の枠部材上部に切り欠きを有し、それによって形成された一対の第1把持部を備え、ここで前記枠部材上部が一対の爪部を備える、前記第1ゲルアダプタホルダ;および
前記ゲルの他端を固定するための第2ゲル保持部と、連結部を介して前記第2ゲル保持部と繋がった接続部とを有する第2ゲルアダプタホルダ;
を備え、
ここで前記第2ゲルアダプタホルダは、前記第2ゲル保持部が、前記枠部材の内側において前記第1ゲル保持部と対向するように、前記第1把持部で前記連結部を把持することによって前記第1ゲルアダプタホルダに取り付けられ、
ここで前記一対の第1把持部の間隔は、前記一対の爪部が培地槽蓋体と嵌合した時に広がることを特徴とする、デバイスを提供する。
【0062】
図1~6は、本発明の一実施態様の張力測定デバイス1、並びに、張力測定デバイス1と共に使用される留め具15、基板13及びゲル形成蓋体14を示す。張力測定デバイス1は、第1ゲルアダプタホルダ11と、第2ゲルアダプタホルダ12とを備えている。第1ゲルアダプタホルダ11は、枠部材110と、ゲルG(後述する)の一端を固定するために前記枠部材110の内側面(
図1の底部内面119)の一部に突出して設けられた第1ゲル保持部111を備えている。枠部材110は、枠部材下部1110と、枠部材下部1110の両端から垂直に設けられた枠部材側部116と、枠部材側部116の一端に設けられた枠部材上部114から形成されている。一実施態様において、枠部材側部116と枠部材上部114は、枠部材下部1110の厚さよりも厚さを有している。枠部材110は、ゲルGを形成する際の型枠の一部となる役割を果たすと同時に、ゲルG及び細胞構造体CSに側方から任意の物体が接触することを防止する役割も果たす。また、枠部材110の存在により、ゲルG及び細胞構造体CSの形状を維持したまま、張力測定デバイス1を容易に培地槽2の培地槽蓋体21(後述)に取り付けることができる。
【0063】
第1ゲル保持部111の両側は、枠部材側部116の内面(側部内面118)との間に第1ゲル非形成空間1180がそれぞれ設けられている。第1ゲル非形成空間1180に後述する基板13のゲル成形凸部131が嵌まる。
【0064】
第1ゲル保持部111は、形成されるゲルGの薄膜と平行になるように枠部材下部1110に設けられている。第1ゲル保持部111には、1つ以上の第1ゲル保持口112が設けられている。第1ゲル保持部111の両端には、さらに第1ゲル保持凹部113が設けられてもよい。
【0065】
本実施態様において、枠部材下部1110の厚さおよび第2ゲル保持部連結部1210(後述)の厚さが形成されるゲルGの厚さを規定する。そのため、枠部材下部1110の厚さおよび第2ゲル保持部連結部1210の厚さを変更することにより、ゲルGの厚さを適宜変更することができる。枠部材下部1110および第2ゲル保持部連結部1210の厚さは限定されないが、筋細胞を含む細胞構造体を接着させ、安定的に保持することが可能であり、かつ、筋細胞を含む細胞構造体が拍動して収縮する作用を妨げない厚さであればよく、例えば、0.5mm~3.0mm、0.5mm~2.5mm、0.5mm~2.0mm、0.5mm~1.5mm、1.0mm~3.0mm、1.0mm~2.5mm、1.0mm~2.0mm、1.0mm~1.5mmの厚さであり、好ましくは0.5mm~2.5mmであり、より好ましくは0.5mm~1.5mmである。
【0066】
第1ゲル保持部111の厚さは、枠部材下部1110の厚さおよび第2ゲル保持部連結部1210の厚さよりも薄く構成されている。また、第1ゲル保持部111は、底部内面119において、枠部材下部1110の厚さ方向の中間の位置に設けられる。これにより、ゲルGが第1ゲル保持部111の上面及び下面の両面を覆い、ゲルGが確実に保持される。
【0067】
第1ゲルアダプタホルダ11の枠部材110は、第1ゲル保持部111と対向する位置の枠部材110の一部(枠部材上部114)に切り欠き1143を有している(
図2(A)参照)。切り欠き1143によって、枠部材上部114には、一対の第1把持部1140が形成されている。切り欠き1143は、第1ゲル保持部111と第2ゲル保持部121とが対向する軸方向に沿って設けられる。切り欠き1143の幅は、組み合わせられる第2ゲルアダプタホルダ12の連結部124の幅に応じて適宜調整される。
【0068】
一対の第1把持部1140が、第2ゲルアダプタホルダ12の連結部124を把持する。それにより、第2ゲルアダプタホルダ12が第1ゲルアダプタホルダ11に取り付けられる。第1把持部1140は、さらに、連結部124を把持する方向に突出した凸部1141を備えてもよい。この場合、第2ゲルアダプタホルダ12の連結部124には、凸部1141が嵌まる凹部125が設けられる。一対の第1把持部1140が、第2ゲルアダプタホルダ12の連結部124を把持する時に、凸部1141が凹部125に嵌合することにより、第2ゲルアダプタホルダ12が第1ゲルアダプタホルダ11から脱落することが防止される。これにより、張力測定デバイス1に形成されたゲルの破損が防止され、さらには、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定時まで、張力測定デバイス1のハンドリングが容易となる。
【0069】
一実施態様において、第1ゲルアダプタホルダ11の枠部材上部114には、切り欠き1143を挟んで、一対の爪部117を備えている。一対の爪部117は、後述の培地槽蓋体21と嵌合し、張力測定デバイス1が培地槽蓋体21に固定される。一対の爪部117は、培地槽蓋体21と嵌合した時に、一対の第1把持部1140の間隔が広がるよう設けられている(
図9(C)参照)。これにより、第2ゲルアダプタホルダ12の連結部124と第1把持部1140との間に隙間が形成され、連結部124と第1把持部1140との摺動が減少し、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定時に検出される摺動に由来する測定値のばらつきが減少する。一対の爪部117の形状や位置は、培地槽蓋体21と嵌合した時に、連結部124と第1把持部1140との間に隙間が形成される形状や位置であればよく、例えば、
図2のように、枠部材上部114に向かって傾斜を有するものであってもよい。一実施形態において、一対の爪部117は、弾性によって変形することで培地槽蓋体21の嵌合部210に挿入され、第1ゲルアダプタホルダの復元力によって元の形に戻ることにより、培地槽蓋体21へと固定される。
【0070】
第1ゲルアダプタホルダ11の枠部材上部114の上部外面1144(
図2(A)参照)は、切り欠き1143に向かって傾斜が形成されていてもよい。これにより、培地槽蓋体21に張力測定デバイス1が固定された時に、上部外面1144の傾斜が培地槽蓋体21の内面に接触し、第2ゲルアダプタホルダ12の連結部124と第1把持部1140との間に隙間が形成される(
図9(C)参照)。
【0071】
一実施態様において、枠部材110は、第2ゲルアダプタホルダ12を把持するための第2把持部1142をさらに備えてもよい(例えば、
図1(A)参照)。第2把持部1142は、枠部材110の一部を、第2ゲルアダプタホルダ12の幅、例えば第2ゲル保持部連結部1210の幅に合わせて、内側に凹ませた形状であってもよい(
図1参照)。これにより、第2ゲルアダプタホルダ12が、第2把持部1142によって把持されて固定することができる。
【0072】
第1ゲルアダプタホルダ11の素材は、一対の爪部117が培地槽蓋体21と嵌合した時に、一対の第1把持部1140の間隔が広がる性質を有する素材であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド誘導体、ポリスルホン、セルロース、セルロース誘導体、ポリシリコーン、金属などが挙げられる。
【0073】
第2ゲルアダプタホルダ12は、ゲルGの他端を固定するための第2ゲル保持部121と、連結部124を介して第2ゲル保持部121と繋がった接続部120とを有する(
図3参照)。
図3(A)に示されるように、一実施態様において、接続部120と第2ゲル保持部121は、連結部124と第2ゲル保持部連結部1210とにより繋がっている。第2ゲル保持部121は、形成されるゲルGと平行になるように第2ゲル保持部連結部1210に設けられている。第2ゲル保持部121には、1つ以上の第2ゲル保持口122が設けられている。第2ゲル保持部121の両端には、さらに第2ゲル保持凹部123が設けられている。第2ゲル保持部121の厚さは、第2ゲル保持部連結部1210の厚さよりも薄く構成されており、好ましくは、第1ゲル保持部111と同じ厚さを有する。また、第2ゲル保持部121は、第2ゲル保持部連結部1210において、厚さ方向の中間の位置に設けられる。これにより、ゲルGが第2ゲル保持部121の上面及び下面の両面を覆い、ゲルGが確実に保持される。
【0074】
一実施態様において、連結部124には、第1ゲルアダプタホルダ11の第1把持部1140に設けられる凸部1141と嵌合して、第2ゲルアダプタホルダ12が第1ゲルアダプタホルダ11から脱落することを防止する凹部125が設けられてもよい(
図3参照)。特に、凹部125は、
図3(A)に示される第2ゲルアダプタホルダ12が、第1ゲルアダプタホルダ11から前後方向に脱落することを防止する。
【0075】
第2ゲルアダプタホルダ12を第1ゲルアダプタホルダ11に取り付けた時に、接続部120の底部(接続部下部1200)は、枠部材上部114の外面と接触するため、第2ゲルアダプタホルダ12の第1ゲル保持部111の方向(以下、「下方向」という。)への動きを制限することができ、ゲルの破損が防止される。また、同様に、第2ゲル保持部連結部1210も枠部材上部114の内面と接触するため、第2ゲルアダプタホルダ12の第1ゲル保持部111と反対方向(以下、「上方向」という。)への動きを制限することができ、ゲルの破損が防止される。第2ゲルアダプタホルダ12の上方向と下方向(以下、「上下方向」という。)の可動範囲は、接続部下部1200と第2ゲル保持部連結部1210との距離を調節することによって適宜変更することができる。
【0076】
接続部120には、張力検出手段コネクタ3と連結するための接続口126が設けられている。
【0077】
第1ゲル保持口112及び第2ゲル保持口122に流し込まれたゲルは、固まった後に、ゲルGの一端を第1ゲル保持部111に、他端を第2ゲル保持部121に固定する役割を担う。第1ゲル保持凹部113及び第2ゲル保持凹部123もまた、ゲルが固化した後にゲルGを固定する効果を果たす。第1ゲル保持口112及び第2ゲル保持口122の数、形状、大きさは、作製するゲルGの大きさや、ゲルの粘性、強度、重合度などによって適宜決定される。第1ゲル保持口112及び第2ゲル保持口122は、例えば1~10個、1~5個、2~5個、2~4個設けられても良い。第1ゲル保持部111と第2ゲル保持部121の形状は、対称であることが好ましい。
【0078】
張力測定デバイス1にゲルGを形成するために、基板13及びゲル形成蓋体14が用いられる(
図4および
図6参照)。基板13の平面部130には、第1ゲル保持部111及び第2ゲル保持部121と、側部内面118との間に嵌まる1対のゲル成形凸部131が設けられている。また、基板13には、第1ゲルアダプタホルダ11と第2ゲルアダプタホルダ12との間に形成される第2ゲル非形成空間1112に嵌まるゲル形成凸部上部132が設けられている。これにより、第2ゲル非形成空間1112にゲルが形成されない。
【0079】
ゲル形成蓋体14の幅は、基板13に設けられた1対のゲル成形凸部131の内面の幅とほぼ一致する。これにより、ゲル形成蓋体14は1対のゲル成形凸部131の間に嵌まりこむ。本実施形態のゲル形成蓋体14の長さは、ゲルGが形成される空間を覆う長さであればよい。
【0080】
一実施態様において、本発明の張力測定デバイス1は、
図5に示される留め具15を備えてもよい。留め具15は、留め具本体150と、留め具本体150の両端にほぼ垂直にもうけられた留め具脚部151とを備える。留め具15は、第2ゲルアダプタホルダ12が第1ゲルアダプタホルダ11に取り付けられた後、一対の爪部117の外側(留め具装着部1170)に引っかかるように取り付けられる(
図1参照)。留め具15を装着することにより、枠部材上部114の一対の第1把持部1140に内向きの圧力が付与され、第2ゲルアダプタホルダ12が確実に把持される。留め具15は、例えば、張力測定デバイス1を培地槽蓋体21に装着する時に外される。
【0081】
第2ゲルアダプタホルダ12、基板13、ゲル形成蓋体14及び留め具15の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド誘導体、ポリスルホン、セルロース、セルロース誘導体、ポリシリコーン、ガラス、セラミック、金属などが挙げられる。
【0082】
<筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスを作製するためのキット>
本発明は、
枠部材と、ゲルの一端を固定するために前記枠部材の内側面の一部に突出して設けられた第1ゲル保持部とを有する第1ゲルアダプタホルダであって、ここで前記枠部材が、前記第1ゲル保持部と対向する位置の枠部材上部に切り欠きを有し、それによって形成された一対の第1把持部を備え、ここで前記枠部材上部が一対の爪部を備える、前記第1ゲルアダプタホルダ;
前記ゲルの他端を固定するための第2ゲル保持部と、連結部を介して前記第2ゲル保持部と繋がった接続部とを有する第2ゲルアダプタホルダ;
前記枠部材の内側面に沿って嵌まる1対のゲル成形凸部を有する基板;及び
前記ゲルの上面を形成するために前記基板のゲル接触面に対して平行な面を有するゲル形成蓋体、を備え、
ここで前記第2ゲルアダプタホルダは、前記第2ゲル保持部が、前記枠部材の内側において前記第1ゲル保持部と対向するように、前記第1把持部で前記連結部を把持することによって前記第1ゲルアダプタホルダに取り付けられ、
ここで前記一対の第1把持部の間隔は、前記一対の爪部が培地槽蓋体と嵌合した時に広がることを特徴とする、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスを作製するためのキットを提供する。
【0083】
また、該キットには、第1ゲル保持部と前記第2ゲル保持部との間に形成するためのゲル化剤を備えたキットであってもよい。本発明に適用し得るゲル化剤とは、ゲルを形成することができる物質をいい、溶液又は粉末の形態で提供され得る。
【0084】
本発明において適用され得るゲルとは、(1)筋細胞を含む細胞構造体が接着可能であり、(2)シート形状を維持できる強度を有し、(3)細胞の生育、機能発現等に悪影響を与えない、すなわち生体適合性のものであれば利用することができる。本発明に適用され得るゲルは、例えば、ハイドロゲルである。本発明に適応し得るハイドロゲルとしては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの水溶性、水親和性、若しくは水吸収性合成高分子、多糖、タンパク質、核酸などを化学架橋したハイドロゲルが挙げられる。多糖としては、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、セルロース等が挙げられる。また、タンパク質としては、コラーゲン及びその加水分解物であるゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エンタクチン、テネイシン、トロンボスポンジン、フォンビルブランド因子、オステオポンチン、フィブリノーゲン(例えば、フィブリノーゲンとトロンビンを反応させたフィブリンゲル)等が挙げられる。これらのハイドロゲルに対し、公知の方法を用いて架橋処理を行い、強度を上げて使用してもよい。本発明に適用され得るゲルとしては、好ましくは、フィブリンゲルである。本発明の一実施形態において、ゲルは、予め細胞と混合させて形成させたものであってもよい。
【0085】
<筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスを作製するためのキットの使用方法>
図7及び
図8を参照しながら、一実施態様における、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイスを作製するためのキットの使用方法について説明する。
【0086】
(i)張力測定デバイス1(第1ゲルアダプタホルダ11及び第2ゲルアダプタホルダ12)に基板13をセットし、ゲル形成部Sへ、ピペットPを用いて、硬化前のゲル化剤(例えば、フィブリノーゲン(SIGMA ウシ血漿由来 Type I-S)、トロンビン(SIGMA ウシ血漿由来 T4648)、CaCl
2溶液(8mM)、およびFactor XIII(CSL Behring フィブロガミンP静注用)の混合液)を注入する(
図7(A))。この時、第1ゲル保持口112及び第2ゲル保持口122に空気が混入しないように注意しながら硬化前のゲルを注入する。
【0087】
(ii)注入後、ゲル形成蓋体14でゲル形成部Sに蓋をする(
図7(B))。
【0088】
(iii)ゲルが硬化後、張力測定デバイス1からゲル形成蓋体14及び基板13を取り外す(
図7(C))。
【0089】
(iv)上記とは別に、温度応答性培養皿D1(例えば、UpCell(登録商標)(セルシード社、東京、日本)上に筋細胞を含む細胞群を播種してコンフルエントになるまで37℃で予め培養しておく。
【0090】
(v)温度応答性培養皿D1の筋細胞を含む細胞構造体CSの上に、上記で得られたゲルを備えた張力測定デバイス1を載せる(
図7(C))。
【0091】
(vi)その後、温度応答性培養皿D1の下限臨界溶液温度以下、例えば20℃に保ち、温度応答性培養皿D1から筋細胞を含む細胞構造体CSを剥離させると同時に、ゲルGの下面に筋細胞を含む細胞構造体CSを接着させる(
図7(D))。
【0092】
筋細胞を含む細胞構造体CSは、ゲルGに単層で接着させてもよく、複数層で接着させてもよい。複数層の筋細胞を含む細胞構造体CSを接着させるには、上記(v)及び(vi)を任意の回数繰り返すことで得られる。
【0093】
筋細胞を含む細胞構造体CSは、ゲルGと接着させる前に、予めゲルGの形状と同一の形状であることが好ましい。ゲルGの形状と同一に成形する方法としては、例えば、培養したシート状の細胞群を、メス等を用いてカットする方法、細胞が接着する領域を予めゲルGの形状に制限するモールドMを利用して、細胞を播種する方法が挙げられる(例えば、
図8(A)参照)。ゲルGの形状に形成された筋細胞を含む細胞構造体CS上にゲルGの下面を接着させることにより、筋細胞を含む細胞構造体CSを収縮することなく、簡便にゲルGへと接着させることができる(
図8(B)参照)。
【0094】
他の実施形態において、上記(iii)工程によって形成されたゲルGの上面に、筋細胞を含む細胞群を直接播種し、37℃にてコンフルエント又はサブコンフルエントになるまで培養することにより筋細胞を含む細胞構造体CSを形成させてもよい。これにより、筋細胞を含む細胞構造体CSを接着させたゲルGを得ることができる。
【0095】
本発明の張力測定デバイス1は、上記の使用方法によって、第1ゲル保持部111及び第2ゲル保持部121の間にゲルGを予め形成させたものとして提供されてもよく、また、さらに筋細胞を含む細胞構造体CSをゲルGに接着させたものが提供されてもよい。
【0096】
<筋細胞を含む細胞構造体の張力測定システム>
本発明は、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定システムも提供する。筋細胞を含む細胞構造体の張力測定システムは、例えば、以下を含む:
(1)枠部材と、ゲルの一端を固定するために前記枠部材の内側面の一部に突出して設けられた第1ゲル保持部とを有する第1ゲルアダプタホルダであって、ここで前記枠部材が、前記第1ゲル保持部と対向する位置の枠部材上部に切り欠きを有し、それによって形成された一対の第1把持部を備え、ここで前記枠部材上部が一対の爪部を備える、前記第1ゲルアダプタホルダ;および
前記ゲルの他端を固定するための第2ゲル保持部と、連結部を介して前記第2ゲル保持部と繋がった接続部とを有する第2ゲルアダプタホルダ;
を備え、
ここで前記第2ゲルアダプタホルダは、前記第2ゲル保持部が、前記枠部材の内側において前記第1ゲル保持部と対向するように、前記第1把持部で前記連結部を把持することによって前記第1ゲルアダプタホルダに取り付けられ、
ここで前記一対の第1把持部の間隔は、前記一対の爪部が培地槽蓋体と嵌合した時に広がることを特徴とする、細胞構造体の張力測定デバイスであって、前記第1ゲル保持部と前記第2ゲル保持部との間に、ゲルを備え、
前記ゲルの下面に接着させた筋細胞を含む細胞構造体を備えた、
デバイス;
(2)(1)のデバイスを浸漬する培地槽本体;
(3)前記一対の爪部と嵌合する嵌合部と、前記第2ゲルアダプタホルダの前記接続部が貫通する接続部貫通口とを備え、前記培地槽本体を覆う培地槽蓋体;
(4)前記第2ゲルアダプタホルダの前記接続部に接続された張力検出手段;
(5)前記張力検出手段に接続され、前記張力検出手段で検出した信号を演算し、張力を算出する演算器;及び、
(6)前記演算器により算出された結果を表示する出力手段。
【0097】
ゲルと、前記ゲルに接着させた筋細胞を含む細胞構造体を備えた、張力測定デバイスは、培地槽2に収容される(
図9参照)。培地槽2は、培地槽本体20と培地槽蓋体21から構成される。培地槽蓋体21は、培地供給ライン口22と、培地排出ライン口23とを備えてもよく、それぞれに培地供給ライン及び培地排出ラインを接続することができる(図示しない)。これにより、培地槽2内の培地を交換することができる。
【0098】
培地槽蓋体21には、張力測定デバイス1の一対の爪部117が嵌合する一対の嵌合部210が設けられている。嵌合部210は、爪部117によって接続可能な形状であればよく、例えば、
図9(A)のような貫通口であってもよく、培地槽蓋体21の内側に、嵌合手段が設けられたものであってもよい(図示しない)。一対の嵌合部210は、一対の爪部117と嵌合した時に、一対の第1把持部1140の間隔が広がるよう設けられている(
図9(C)参照)。
【0099】
培地槽蓋体21には、第2ゲルアダプタホルダ12の接続部120が貫通する接続部貫通口211が設けられている。接続部貫通口211は、第2ゲルアダプタホルダ12の接続部120が通過可能な形状を有している。
【0100】
培地槽蓋体21には、さらに、センサ導入口24が設けられていてもよい。センサ導入口を24によって、任意のセンサ(例えば、pHセンサ、溶存酸素センサ、温度センサ等)を導入することができる。また、培地槽蓋体21には、例えば、後述の張力検出手段コネクタ3のフック31を第2ゲルアダプタホルダ12の接続口126へ導きやすいようにフックスライド溝212が設けられてもよい(
図9(A)および(B)参照)。
【0101】
張力検出手段コネクタ3のフック31を、第2ゲルアダプタホルダ12の接続口126に通し、培地槽2を培養システム4に設置する(
図10参照)。培地槽本体20は、培養システム4に設置しやいようにガイドレール42に沿った移動を可能とする培養槽凹部が設けられていてもよい。
【0102】
培養システム4には、張力検出手段40が設けられている。張力検出手段コネクタ3の張力検出手段接続部32は張力検出手段40へ接続される。筋細胞を含む細胞構造体CSが収縮すると、第2ゲルアダプタホルダ12が下方へ引っ張られ、張力検出手段コネクタ3を介して張力検出手段40により加重が検出される。張力検出手段40は、例えば、公知のロードセルを用いることができる。これにより、筋細胞を含む細胞構造体CSが拍動することにより生じる収縮する力(張力)を測定することができる。張力検出手段コネクタ3は、第2ゲルアダプタホルダ12と張力検出手段40とを連結する機能を有していればよく、フック31の他、挟持する手段(図示しない)であってもよい。
【0103】
培地槽蓋体21には、図示されないが、さらに試薬供給口が設けられてもよい。試薬供給口より、任意の薬剤を添加することにより、薬剤による筋細胞への影響を調べることができる。薬剤は、培地供給ラインに接続された培地貯留槽(図示しない)に添加することにより、培地槽2内へ供給されてもよい。ここでは図示しないが、培地は、例えばチューブポンプにより培地槽2へ供給され、チューブポンプにより、培地が排出されてもよい。
【0104】
培養システム4の培養制御部41は、培地の温度を一定に保つようにヒーターを備えている。また、マグネチックスターラー機能を有していてもよい。これにより、培地槽2内の培地を攪拌することができる。培養システム4には、培地槽2へ異物が混入しないようするために、フード(図示しない)が設けられていてもよい。
【0105】
図11は、本発明の一実施態様の張力測定システム5を示す。張力測定デバイス1をセットした培養システム4の張力検出手段40は、ケーブル52を介して電気的に演算器51と接続されている。張力検出手段40で検出した信号が、ケーブル52を介して演算器51に入力され、演算器51によりその信号を演算することにより、張力が算出される。算出された結果は、演算器51に電気的に接続された出力手段、例えばモニタ等によって表示される。
【実施例0106】
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を限定することを意図するものではない。
<実施例1>
1.実験材料と方法
1-1.心筋細胞シートの調製
iPS細胞由来の心筋細胞を含む心筋細胞シートは、Matsuuraら(Matsuura K.,et al.Creation of human cardiac cell sheets using pluripotent stem cells.Biochem.Biophys.Res.Commun.2012 Aug 24;425(2):321-327)の方法に従って準備した。
1-2.張力測定デバイス
張力測定デバイスとして、第1ゲルアダプタホルダの枠部材に切り欠きを有する張力測定デバイス(上記、「張力測定デバイス1」に相当)を使用した。実施例1では、生体適合性樹脂(MED610、ストラタシス社)製の張力測定デバイス1を3Dプリンタ(OBJET260 CONNEX3、ストラタシス社)で作製した。
【0107】
また、切り欠きの効果を検証するために、切り欠きを有さない張力測定デバイス1a(
図12参照)を比較例として用いた。
【0108】
張力測定デバイス1a(第1ゲルアダプタホルダ11a、第2ゲルアダプタホルダ12a)の基本的な構成は、上記の張力測定デバイス1の各部材と同一である。各部材の符号の番号に「a」が付加されていること以外、張力測定デバイス1aの各部材についての説明は、上記の張力測定デバイス1の対応する各部材についての上述の説明が適用される。ここでは、張力測定デバイス1の各部材の説明が適用されない部材について簡単に説明する。
【0109】
第1ゲルアダプタホルダ11aの枠部材上部114aは、第1ガイド溝1110aと第2ガイド溝1111aとを備えており、これによって、第2ゲルアダプタホルダ12aのスライド方向を、前記第1ゲル保持部111aと前記第2ゲル保持部121aとが対向する軸方向に限定する。
【0110】
第2ゲルアダプタホルダ12aは、L字部材125aを備えている。L字部材125aは第1ガイド溝1110aに嵌められ、第2ゲルアダプタホルダ本体127aは、第2ガイド溝1111aに嵌められ、それによって第2ゲルアダプタホルダ12aは第1ゲルアダプタホルダ11aに取り付けられる。従って、張力測定デバイス1aは、使用時においても、第2ゲルアダプタホルダ12aと第1ゲルアダプタホルダ11aとが常に摺動する。
【0111】
1-3.心筋細胞を含むシート状細胞構造体(心筋細胞シート)の張力測定
上記張力測定デバイス1または比較例の張力測定デバイス1aを用いて心筋細胞を含む細胞構造体の張力を以下の手順で測定した(符号は省略する)。
【0112】
(i)張力測定デバイス(第1ゲルアダプタホルダ及び第2ゲルアダプタホルダ)に基板をセットし、ゲル形成部へ、ピペットを用いて、硬化前のゲル化剤(フィブリノーゲン(SIGMA ウシ血漿由来 Type I-S)、トロンビン(SIGMA ウシ血漿由来 T4648)、CaCl2溶液(8mM)、およびFactor XIII(CSL Behring フィブロガミンP静注用)の混合液)を注入した。
【0113】
(ii)注入後、ゲル形成蓋体でゲル形成部に蓋をした。
【0114】
(iii)ゲルが硬化後、張力測定デバイスからゲル形成蓋体及び基板を取り外した。
【0115】
(iv)上記とは別に、温度応答性培養皿(UpCell(登録商標)(セルシード社、東京、日本)上にiPS細胞由来心筋細胞を含む細胞群を播種してコンフルエントになるまで37℃で予め培養した。
【0116】
(v)心筋細胞を含むシート状細胞構造体の上に、上記で得られたゲルを備えた張力測定デバイスを載せた。
【0117】
(vi)その後、温度応答性培養皿を20℃に保ち、ゲルの下面に心筋細胞を含むシート状細胞構造体(以下、心筋細胞シート)を接着させた。
【0118】
(vii)心筋細胞シートを接着させた張力測定デバイスを、心筋培養用培地(10%ウシ胎児血清(FBS;ニチレイバイオサイエンス)、500KIU/mlアプロチニン(Wako 016-11836)、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Wako 161-23181)を添加した高グルコースDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM,Wako 043-30085))に浸漬させた状態で、1ヶ月間、37℃、5%CO2下で培養した。
【0119】
(viii)心筋細胞シートを接着させた張力測定デバイスを用いて、
図10に記載の張力測定システムを構築し、張力の測定を行った。
【0120】
2.結果
本発明の張力測定デバイス1を用いて測定した心筋細胞シートは、切り欠きを有しない張力測定デバイス1aと比較して、拍動(ストローク)毎の張力(
図13および
図14の帯の幅に相当)のばらつきが小さくなることが明らかとなった(
図15)。
<実施例2>
実施例1の1-3に記載の(i)~(vi)に従って、心筋細胞シートを接着させた張力測定デバイスを得た。その際、ポリプロピレン製の張力測定デバイス1を使用した。心筋細胞組織体を備えた張力測定デバイスを心筋培養用培地で長期間(1ヶ月以上)、37℃、5%CO
2下で培養した。その結果、中心付近の直径が約100~200μmの棒状の心筋細胞組織体を形成した(
図16)。
【0121】
棒状の心筋細胞組織体を備えた張力測定デバイスを用いて、
図10に記載の張力測定システムを構築したところ、張力を問題なく測定することができた。
【0122】
<第2実施形態>
次に、
図17~
図33を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と共通する部分は説明を省略し、第2実施形態のみに特徴のある箇所について説明する。
【0123】
図17~
図33は、本発明の第2実施形態に係る張力測定デバイス6、並びに、張力測定デバイス6と共に使用される連結部材66、基板67、ゲル形成蓋体68、ロッド保持治具69、リア側蓋体70、およびフロント側蓋体71等を示す。
【0124】
第2実施形態に係る張力測定デバイス6は、
図17~
図23に示すように、ゲルの一端を固定する第1ゲルアダプタホルダ61と、ゲルの他端を固定する第2ゲルアダプタホルダ62と、張力検出手段40および第2ゲルアダプタホルダ62を連結するロッド63と、第2ゲルアダプタホルダ62およびロッド63を連結する固定部材(本実施形態では例えばピン64)と、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62を収容する培地槽65と、を有する。以下、各構成について詳述する。
【0125】
第1ゲルアダプタホルダ61は、
図17に示すように、培地槽65に固定されるように配置される。第1ゲルアダプタホルダ61は、
図17、
図18に示すように、第1ゲル保持部61Aと、第1嵌合部61Bと、固定部61Cと、を有する。
【0126】
第1ゲル保持部61Aは、後述する第2ゲルアダプタホルダ62の第2ゲル保持部62Aに対向するように配置されている。第2実施形態に係る第1ゲル保持部61Aの構成は、上述した第1実施形態に係る第1ゲル保持部111の構成と同一であるため、ここでは説明は省略する。
【0127】
第1嵌合部61Bは、後述する培地槽65の第2嵌合部65Bに嵌合されるように構成されている。第1嵌合部61Bは、
図18に示すように、鉛直方向の下向きに突出する第1突出部61Eと、第1突出部61Eの下部に設けられ、紙面の手前方向に突出する第2突出部61Fと、を有する。また、図示は省略するが、第2突出部61Fの紙面の奥側には凹部が形成されている。
【0128】
固定部61Cは、第1ゲル保持部61Aの左右方向の両側に一対設けられる。固定部61Cは、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62を連結する連結部材66が固定可能となるように構成されている。第2実施形態において、1つの固定部61Cは、
図18に示すように、一対の弾性変形可能な弾性部材61Gから構成されている。弾性部材61Gのうち上方に設けられる弾性部材61Gは、上方に幅広となる幅広部61Hを有し、弾性部材61Gのうち下方に設けられる弾性部材61Gは、下方に幅広となる幅広部61Hを有する。このように構成された固定部61Cによれば、後述する連結部材66の第2貫通孔66Gが挿通されることによって、固定部61Cが連結部材66の第2貫通孔66Gに係合して、連結部材66が第1ゲルアダプタホルダ61に対して固定される。
【0129】
第2ゲルアダプタホルダ62は、
図17に示すように、第1ゲルアダプタホルダ61の上方に配置される。第2ゲルアダプタホルダ62は、
図17、
図19に示すように、第2ゲル保持部62Aと、第1延在部62Bと、袖部62Cと、を有する。
【0130】
第2ゲル保持部62Aは、第1ゲル保持部61Aと対向するように配置されている。第2実施形態に係る第2ゲル保持部62Aの構成は、上述した第1実施形態に係る第2ゲル保持部121の構成と同一であるため、ここでは説明は省略する。
【0131】
第1延在部62Bは、第2ゲル保持部62Aの反対側である上端に設けられる。第1延在部62Bは、
図19に示すように、第2ゲル保持部62Aと左右方向に沿って延在するように構成されている。第1延在部62Bは、上方が矩形状に構成され下方が円状に構成されている。
【0132】
第1延在部62Bは、
図19に示すように、貫通孔62Hを有する。貫通孔62Hには、ピン64が挿通される。貫通孔62Hの孔径は、ピン64の外径よりもわずかに大きくなるように構成されている。
【0133】
袖部62Cは、
図19に示すように、左右に一対設けられる。袖部62Cは、左右方向に沿って延在して設けられる。袖部62Cは、後述する連結部材66の第1貫通孔66Hに挿通される。
【0134】
ロッド63は、
図17に示すように、張力検出手段40および第2ゲルアダプタホルダ62を連結する。ロッド63は、第2ゲルアダプタホルダ62の上方に配置される。第2実施形態に係るロッド63は、第1実施形態に係る張力検出手段コネクタに相当する。ロッド63は、
図20に示すように、上下方向に延在して構成される。ロッド63は、上方に設けられる上部63Aと、下方に設けられる下部63Bと、上部63Aおよび下部63Bの間に設けられる中間部63Cと、を有する。
【0135】
中間部63Cには、左右方向の内方に向けてくびれたくびれ部63Eが設けられる。くびれ部63Eは、後述するロッド保持治具69のロッド保持部69Dが係合される。これによって、ロッド保持治具69がロッド63を保持する。
【0136】
下部63Bは、
図20に示すように、左右に一対設けられた半割部63Fと、凹部63Gと、貫通孔63Hと、を有する。半割部63Fの上面の後方には、凹部63Gが設けられる。また、正面視したときに、一対の半割部63Fの間に、貫通孔63Hが設けられる。
【0137】
凹部63Gには、
図22に示すように、第2ゲルアダプタホルダ62の第1延在部62Bが配置される。凹部63Gは、第2ゲルアダプタホルダ62の第1延在部62Bの下方の円形状に沿うように凹状に構成されている。
【0138】
貫通孔63Hには、ピン64が挿通される。貫通孔63Hの孔径は、ピン64の外径よりもわずかに大きくなるように構成されている。
【0139】
ピン64は、
図17、
図22に示すように、第2ゲルアダプタホルダ62の貫通孔62Hおよびロッド63の貫通孔63Hに挿入される。ピン64は、
図21に示すように、把持可能な把持部64Aが構成されている。使用者は、把持部64Aを把持して、ロッド63の貫通孔63H、第2ゲルアダプタホルダ62の貫通孔62Hの順に、ピン64を挿入していく。
【0140】
具体的には、
図22に示すように、第2ゲルアダプタホルダ62の第1延在部62Bを、ロッド63の凹部63Gに配置した状態で、ピン64を、ロッド63の貫通孔63H、第2ゲルアダプタホルダ62の貫通孔62Hの順に挿入することによって、第2ゲルアダプタホルダ62およびロッド63が連結される。
【0141】
培地槽65は、
図17に示すように、第1ゲルアダプタホルダ61が固定される。培地槽65は、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62等が収容される。
【0142】
培地槽65は、
図23に示すように、円筒状に構成される培地槽本体65Aと、第1ゲルアダプタホルダ61の第1嵌合部61Bが嵌合可能に構成された第2嵌合部65Bと、を有する。第2実施形態に係る培地槽65の培地槽本体65Aは、上述した第1実施形態に係る培地槽2の培地槽本体20と略同一の構成であるため、説明は省略する。
【0143】
第2嵌合部65Bは、
図17、
図23に示すように、培地槽本体65Aと一体的に構成されており、培地槽本体65Aから上方に突出するように構成されている。第2嵌合部65Bは、
図17、
図23に示すように、上方に突出する突出部65Cと、突出部65Cの内方に形成された被挿入部65Dと、を有する。
【0144】
被挿入部65Dには、互いに内方に突出する3つの突出部65Hが形成されている。このように構成された第2嵌合部65Bの被挿入部65Dに、第1嵌合部61Bを挿入することによって、第1嵌合部61Bの第1突出部61Eが、被挿入部65Dの形状に合わせて、弾性変形する。この弾性変形の弾性力によって、第1ゲルアダプタホルダ61が培地槽65に固定される。
【0145】
以上、第2実施形態に係る張力測定デバイス6の構成について説明した。次に、張力測定デバイス6と共に用いられる、張力測定デバイス6のキットの構成について説明する。張力測定デバイス6のキットとしては、連結部材66、基板67、ゲル形成蓋体68、ロッド保持治具69、リア側蓋体70、およびフロント側蓋体71が挙げられる。
【0146】
張力測定デバイス6にゲルGを形成するために、連結部材66、基板67、およびゲル形成蓋体68が用いられる(
図24~
図27参照)。以下、各構成について説明する。
【0147】
連結部材66は、
図17に示すように、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62を連結する。連結部材66は、張力測定デバイス6の測定時には、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62から外される。連結部材66は、
図17、
図24に示すように、左右に一対設けられる。左右に一対設けられる連結部材66は、鉛直の線に沿って左右対称となるように構成されている。
【0148】
以下、一対の連結部材66のうち、
図17、
図26において左側に設けられる連結部材66の構成を代表して説明する。連結部材66は、
図24に示すように、上下方向に延在する第2延在部66Aと、第2延在部66Aの上方から左向きに延在する第3延在部66Bと、第2延在部66Aの上下方向の中央付近から右向きに延在する第4延在部66Cと、第2延在部66Aの下方から下向きに延在する第5延在部66Dと、を有する。
【0149】
第4延在部66Cの内方には、左右方向に沿って、第1貫通孔66Hが形成されている。第1貫通孔66Hは、
図17、
図26に示すように、第2ゲルアダプタホルダ62の袖部62Cに挿通される。
【0150】
第5延在部66Dには、左右方向に沿って、第2貫通孔66Gが形成されている。第2貫通孔66Gは、
図17、
図26に示すように、第1ゲルアダプタホルダ61の固定部61Cが挿通されて、固定部61Cが第2貫通孔66Gに係合する。
【0151】
基板67には、
図27に示すように、連結部材66によって連結された状態の第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62が載置される。基板67は、
図25に示すように、連結部材66によって連結された状態の第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62が載置されるように、複数の凸部67Hを有する。連結部材66によって連結された状態の第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62は、複数の凸部67Hの間の凹みに嵌まる。なお、第2実施形態に係る基板67は、第1実施形態に係る基板13と同一の機能を果たすため、詳細な構成の説明は省略する。
【0152】
ゲル形成蓋体68は、上述した第1実施形態に係るゲル形成蓋体14と同一の構成であるため、説明は省略する。
【0153】
以下、キットの使用方法について説明しつつ、ロッド保持治具69、リア側蓋体70、およびフロント側蓋体71の構成についても説明する。
【0154】
ゲルの形成方法、および筋細胞を含む細胞構造体の取得方法は、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。なお、ゲルの形成時において、
図27に示すように、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62は、連結部材66によって連結されている。
【0155】
次に、連結部材66によって第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62が連結された状態で、
図28に示すように、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62を鉛直方向に持ち上げて、第1ゲルアダプタホルダ61の第1嵌合部61Bを、培地槽65の第2嵌合部65Bに固定する。このとき、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62は、連結部材66によって連結されているため、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62の間に配置されている、細胞構造体CSが接着したゲルGは、引張力が付与されることを好適に防止できるため、細胞構造体CSを傷めることを好適に防止できる。
【0156】
次に、
図29に示すように、ロッド保持治具69を培地槽65に固定するとともに、ロッド保持治具69によって、ロッド63を保持する。以下、ロッド保持治具69の構成について説明する。
【0157】
ロッド保持治具69は、
図29に示すように、平面状に構成される平面部69Aと、平面部69Aから立ち上がる縦壁部69Bと、を有する。平面部69Aには、後述するリア側蓋体70の突起部70Bが配置される、一対の凹部69Cが形成されている。縦壁部69Bの後方には、ロッド63のくびれ部63Eを保持可能なロッド保持部69Dが形成されている。ロッド保持部69Dは、ロッド保持部69D上にロッド63が接するまでくびれ部63Eに向かって挿入されることにより、くびれ部63を支えるとともに、くびれ部63Eを把持する。
【0158】
次に、
図30に示すように、リア側蓋体70を培地槽65に固定するとともに、リア側蓋体70の突起部70Bをロッド保持治具69の凹部69Cに挿入する。リア側蓋体70は、
図30に示すように、平面状に構成される平面部70Aと、平面部70Aの端部に設けられる突起部70Bと、を有する。
【0159】
次に、
図31に示すように、ロッド保持治具69およびリア側蓋体70の間から上方に飛び出た連結部材66の第3延在部66Bを左右方向の外方にスライドさせて(
図30(A)の矢印参照)、連結部材66を、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62から取り外す。このとき、ロッド保持治具69のロッド保持部69Dによって、ロッド63が保持されているため、連結部材66を取り外しても、ロッド63、細胞構造体CSが接着したゲルG等の位置を維持することができる。
【0160】
次に、
図32に示すように、ロッド63を張力検出手段40に接続させる。このとき、連結部材66を外した状態でも、ロッド保持治具69によってロッド63を規定の位置に保持しておけるため、培地槽65をスライドさせることで容易に接続することができる。そして、ロッド63を張力検出手段40に接続させた後、ロッド保持治具69を取り外して、
図33に示すフロント側蓋体71を、ロッド保持治具69を取り付けていた箇所と同一の箇所に固定する。
【0161】
以上説明したように、第2実施形態に係る張力測定デバイス6は、筋細胞を含む細胞構造体の張力測定デバイス6である。張力測定デバイス6は、ゲルGの一端を固定するための第1ゲル保持部61A、および第1嵌合部61Bを備える第1ゲルアダプタホルダ61と、ゲルGの他端を固定するとともに第1ゲル保持部61Aに対向して設けられる第2ゲル保持部62Aを備える第2ゲルアダプタホルダ62と、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62が収容されるとともに、第1嵌合部61Bと嵌合可能に構成された第2嵌合部65Bを備える培地槽65と、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62を連結するための連結部材66が固定可能な固定部61Cと、を有する。このように構成された張力測定デバイス6によれば、筋細胞を含む細胞構造体の張力を、簡便に測定することを可能とする。
【0162】
また、固定部61Cは、第1ゲルアダプタホルダ61に設けられ、連結部材66に係合可能である。この構成によれば、確実に連結部材66を第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62に固定することができる。
【0163】
また、張力測定デバイス6は、張力検出手段40および第2ゲルアダプタホルダ62を連結するロッド63をさらに有する。第2ゲルアダプタホルダ62は、第2ゲル保持部62Aの上方に設けられる第1延在部62Bをさらに有し、ロッド63は、第1延在部62Bが挿入される凹部63Gを有する。第1延在部62Bが凹部63Gに挿入された状態で、第1延在部62Bおよび凹部63Gにピン64を挿入することによって、第2ゲルアダプタホルダ62およびロッド63が連結される。この構成によれば、ロッド63および第2ゲルアダプタホルダ62が面接触することになり、互いをピン64で固定しているため、ロッド63および第2ゲルアダプタホルダ62を好適に拘束することができる。
【0164】
また、第2ゲルアダプタホルダ62は、連結部材66がスライド可能に挿入される一対の袖部62Cを有する。この構成によれば、連結部材66を第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62から取り外すときに、容易に取り外すことができる。
【0165】
また、第2実施形態に係る張力測定デバイス6用のキットは、ゲルGの一端を固定するための第1ゲル保持部61A、および第1嵌合部61Bを備える第1ゲルアダプタホルダ61と、ゲルGの他端を固定するとともに第1ゲル保持部61Aに対向して設けられる第2ゲル保持部62Aを備える第2ゲルアダプタホルダ62と、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62が収容されるとともに、第1嵌合部61Bと嵌合可能に構成された第2嵌合部65Bを備える培地槽65と、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62を連結するための連結部材66と、連結部材66によって連結された第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62が嵌まる基板67と、連結部材66が固定可能な固定部61Cと、を有する。このように構成されたキットによれば、第1ゲルアダプタホルダ61および第2ゲルアダプタホルダ62を鉛直方向に持ち上げて、第1ゲルアダプタホルダ61の第1嵌合部61Bを、培地槽65の第2嵌合部65Bに固定する際に、細胞構造体CSが接着したゲルGは、引張力が付与されることを好適に防止できるため、細胞構造体CSを傷めることを好適に防止できる。
【0166】
また、キットは、張力検出手段40および第2ゲルアダプタホルダ62を連結するロッド63と、培地槽65の頂部に固定可能であるとともに、ロッド63を保持可能なロッド保持部69Dを備えるロッド保持治具69と、を有する。このように構成されたキットによれば、連結部材66を取り外しても、ロッド63、細胞構造体CSが接着したゲルG等の位置を維持することができる。
【0167】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0168】
例えば上述した第2実施形態では、固定部61Cは、第1ゲルアダプタホルダ61に設けられた。しかしながら、固定部は、連結部材66が固定可能であれば任意の箇所に設けられ、さらにその形状も限定されない。また、固定部61Cの一対の弾性変形可能な弾性部材61Gに設けられる幅広部61Hは、弾性部材61Gのうち上方または下方の少なくとも1つに設けられるものとしても良い。
【0169】
また、上述した第2実施形態では、第2ゲルアダプタホルダ62の第1延在部62Bがロッド63の凹部63Gに挿入された状態で、ピン64によって互いが固定されて、第2ゲルアダプタホルダ62およびロッド63が連結されていた。しかしながら、第2ゲルアダプタホルダ62およびロッド63を連結させる手段としては、上記の構成に限定されない。
【0170】
また、上述した第2実施形態では、第1ゲルアダプタホルダに第1嵌合部61Bを備え、第2嵌合部65Bの被挿入部65Dに、第1嵌合部61Bを挿入することによって、第1嵌合部61Bの第1突出部61Eが、被挿入部65Dの形状に合わせて、第1ゲルアダプタホルダ61が培地槽65に固定されるものとしたが、第1ゲルアダプタと、第2ゲルアダプタとが固定可能であれば、これに限らず、例えば、第1ゲルアダプタホルダの第1嵌合部61Bと、第2嵌合部65Bの被挿入部65Dとが入れ替えられた構成としてもよく、その他、任意の箇所に設けられてもよく、さらにその形状も上記の構成に限定されない。