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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061886
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】光測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/44 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
G01J1/44 E
G01J1/44 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042851
(22)【出願日】2024-03-18
(62)【分割の表示】P 2020215721の分割
【原出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】堀口 篤
(57)【要約】
【課題】光強度を検出する性能が向上された光測定装置を提供する。
【解決手段】光測定装置は、被測定光の光強度を電気信号に変換可能な受光素子と、電気信号が入力される入力端子と、対数増幅器を構成する第1増幅器及び非線形素子と、複数のオフセット抵抗と、スイッチ部と、制御部とを備える。第1増幅器の反転入力端子は、入力端子に電気的に接続される。複数のオフセット抵抗は、異なる抵抗値を各々有する。スイッチ部は、複数のオフセット抵抗のうちで電圧源と入力端子との間に電気的に接続させるオフセット抵抗を切り替え可能である。電圧源と入力端子との間に電気的に接続されたオフセット抵抗によってオフセット電流が入力端子に入力される。制御部は、第1増幅器の出力電圧値に基づいて光強度を測定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光測定装置であって、
被測定光の光強度を電気信号に変換可能な受光素子と、
前記電気信号が入力される入力端子と、
対数増幅器を構成する第1増幅器及び非線形素子であって、第1増幅器の反転入力端子は、前記入力端子に電気的に接続される、第1増幅器及び非線形素子と、
異なる抵抗値を各々有する複数のオフセット抵抗と、
前記複数のオフセット抵抗のうちで電圧源と前記入力端子との間に電気的に接続させる前記オフセット抵抗を切り替え可能なスイッチ部と、
制御部と、を備え、
前記電圧源と前記入力端子との間に電気的に接続された前記オフセット抵抗によってオフセット電流が前記入力端子に入力され、
前記制御部は、前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて前記光強度を測定する、光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光測定装置において、
前記制御部は、前記受光素子が遮光されているときの前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて前記オフセット電流の電流値を測定する、光測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光測定装置において、
前記制御部は、前記被測定光が前記受光素子に入射しているときの前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて算出される電流値から、前記受光素子が遮光されているときの前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて算出される前記オフセット電流の電流値を差し引くことにより、前記被測定光の光強度を算出する、光測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光測定装置において、
前記電圧源に電気的に接続される非反転入力端子を有する第2増幅器と、
前記受光素子と前記入力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第1スイッチと、
前記受光素子と前記第2増幅器の反転入力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第2スイッチと、
前記第2増幅器の反転入力端子と前記第2増幅器の出力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第3スイッチと、
前記第2増幅器の非反転入力端子を基準電位に電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第4スイッチと、を備え、
前記複数のオフセット抵抗は、前記受光素子と前記第2増幅器の出力端子との間に設けられる、光測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光測定装置において、
前記光測定装置は、前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて前記光強度を測定する第1モードと、前記第2増幅器の出力電圧値に基づいて前記光強度を測定する第2モードとを有し、
前記第1モードでは、前記第1スイッチによって前記受光素子と前記入力端子とが電気的に接続され、前記第2スイッチによって前記受光素子と第2増幅器の反転入力端子とが電気的に切り離され、前記第3スイッチによって前記第2増幅器の反転入力端子と前記第2増幅器の出力端子とが電気的に接続され、前記第4スイッチによって前記第2増幅器の非反転入力端子が基準電位から電気的に切り離され、
前記第1モードでは、前記第2増幅器の出力端子と前記入力端子との間に電気的に接続された前記オフセット抵抗によって、前記オフセット電流が前記入力端子に入力される、光測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光測定装置において、
前記電圧源は、デジタル-アナログ変換部である、光測定装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光測定装置において、
前記制御部は、前記第1モードにおいて前記受光素子が遮光されているときの前記第2増幅器の出力電圧値に基づいて前記オフセット電流の電流値を測定する、
光測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光測定装置において、
前記制御部は、
前記スイッチ部を切り替えながら前記オフセット電流の電流値毎の前記受光素子が遮光されているときの前記対数増幅器の出力電圧値と前記第2増幅器の出力電圧値を測定し、測定した前記対数増幅器の出力電圧値と、測定した前記第2増幅器の出力電圧値に基づいて算出される前記オフセット電流の電流値とを対応付けてテーブルを生成し、
前記被測定光が前記受光素子に入射しているときの前記対数増幅器の出力電圧値と、前記テーブルとに基づいて、前記被測定光の光強度を測定する、光測定装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光測定装置において、
ディプレッション型のNチャネル電界効果トランジスタであるトランジスタをさらに備え、
前記受光素子は、フォトダイオードであり、
前記フォトダイオードのアノードは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチに電気的に接続され、
前記トランジスタのゲートは、前記入力端子に電気的に接続され、前記トランジスタのソースは、前記フォトダイオードのカソードに電気的に接続され、前記トランジスタのドレインには正の電圧値の電圧が入力される、光測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光測定装置において、
前記フォトダイオードのカソードを基準電位に電気的に接続させるか又は前記トランジスタのソースに電気的に接続させるかを切り替え可能な第5スイッチをさらに備え、
前記第2モードでは、前記第5スイッチによって前記フォトダイオードのカソードが基準電位に電気的に接続される、光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定光の光強度を測定する装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の光電変換回路は、対数変換素子を負荷とする対数増幅用負帰還路と、抵抗を負荷とするリニア増幅用負帰還路を並列接続させた増幅器を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02-090025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被測定光の光強度を測定する装置では、被測定光の光強度を検出する性能を向上させることが求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、被測定光の光強度を検出する性能を向上させた光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る光測定装置は、被測定光の光強度を電気信号に変換可能な受光素子と、前記電気信号が入力される入力端子と、対数増幅器を構成する第1増幅器及び非線形素子であって、第1増幅器の反転入力端子は、前記入力端子に電気的に接続される、第1増幅器及び非線形素子と、異なる抵抗値を各々有する複数のオフセット抵抗と、前記複数のオフセット抵抗のうちで電圧源と前記入力端子との間に電気的に接続させる前記オフセット抵抗を切り替え可能なスイッチ部と、制御部と、を備え、前記電圧源と前記入力端子との間に電気的に接続された前記オフセット抵抗によってオフセット電流が前記入力端子に入力され、前記制御部は、前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて前記光強度を測定する。このような構成により、被測定光の光強度を歪みなく高速に測定することができる。従って、光強度を検出する性能を向上させた光測定装置が提供される。
【0007】
一実施形態に係る光測定装置において、前記制御部は、前記受光素子が遮光されているときの前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて前記オフセット電流の電流値を測定する。このような構成により、光測定装置は、オフセット電流の電流値を測定することができる。
【0008】
一実施形態に係る光測定装置において、前記制御部は、前記被測定光が前記受光素子に入射しているときの前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて算出される電流値から、前記受光素子が遮光されているときの前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて算出される前記オフセット電流の電流値を差し引くことにより、前記被測定光の光強度を算出する。このような構成により、被測定光の光強度を広範囲で測定することができる。
【0009】
一実施形態に係る光測定装置は、前記電圧源に電気的に接続される非反転入力端子を有する第2増幅器と、前記受光素子と前記入力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第1スイッチと、前記受光素子と前記第2増幅器の反転入力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第2スイッチと、前記第2増幅器の反転入力端子と前記第2増幅器の出力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第3スイッチと、前記第2増幅器の非反転入力端子を基準電位に電気的に接続させるか否かを切り替え可能な第4スイッチと、を備え、前記複数のオフセット抵抗は、前記受光素子と前記第2増幅器の出力端子との間に設けられる。このような構成により、光測定装置は、オフセット抵抗をオフセット電流の電流値の調整に用いるとともに第2増幅器の帰還抵抗として用いることができる。その結果、コスト削減及び実装面積の削減を実現しつつ、対数増幅器及びリニア増幅器の両方を構成することができる光測定装置が提供される。
【0010】
一実施形態に係る光測定装置は、前記対数増幅器の出力電圧値に基づいて前記光強度を測定する第1モードと、前記第2増幅器の出力電圧値に基づいて前記光強度を測定する第2モードとを有し、前記第1モードでは、前記第1スイッチによって前記受光素子と前記入力端子とが電気的に接続され、前記第2スイッチによって前記受光素子と第2増幅器の反転入力端子とが電気的に切り離され、前記第3スイッチによって前記第2増幅器の反転入力端子と前記第2増幅器の出力端子とが電気的に接続され、前記第4スイッチによって前記第2増幅器の非反転入力端子が基準電位から電気的に切り離され、前記第1モードでは、前記第2増幅器の出力端子と前記入力端子との間に電気的に接続された前記オフセット抵抗によって、前記オフセット電流が前記入力端子に入力される。このような構成により、例えばユーザは、光測定装置のモードを被測定光に応じて第1モード又は第2モードに適宜切り替えることができる。
【0011】
一実施形態に係る光測定装置において、前記電圧源は、デジタル-アナログ変換部である。このような構成により、光測定装置は、第1モード又は第2モードに応じた電圧をデジタル-アナログ変換部によって第2増幅器の非反転入力端子に入力することができる。
【0012】
一実施形態に係る光測定装置において、前記制御部は、前記第1モードにおいて前記受光素子が遮光されているときの前記第2増幅器の出力電圧値に基づいて前記オフセット電流の電流値を測定する。このような構成により、光測定装置は、オフセット電流の電流値を測定することができる。
【0013】
一実施形態に係る光測定装置において、前記制御部は、前記スイッチ部を切り替えながら前記オフセット電流の電流値毎の前記受光素子が遮光されているときの前記対数増幅器の出力電圧値と前記第2増幅器の出力電圧値を測定し、測定した前記対数増幅器の出力電圧値と、測定した前記第2増幅器の出力電圧値に基づいて算出される前記オフセット電流の電流値とを対応付けてテーブルを生成し、前記被測定光が前記受光素子に入射しているときの前記対数増幅器の出力電圧値と、前記テーブルとに基づいて、前記被測定光の光強度を測定する。このような構成により、第1モードにおいて被測定光の光強度が精度良く測定される。
【0014】
一実施形態に係る光測定装置は、ディプレッション型のNチャネル電界効果トランジスタであるトランジスタをさらに備え、前記受光素子は、フォトダイオードであり、前記フォトダイオードのアノードは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチに電気的に接続され、前記トランジスタのゲートは、前記入力端子に電気的に接続され、前記トランジスタのソースは、前記フォトダイオードのカソードに電気的に接続され、前記トランジスタのドレインには正の電圧値の電圧が入力される。このような構成により、第1モードにおいて被測定光の光強度が精度良く測定される。
【0015】
一実施形態に係る光測定装置は、前記フォトダイオードのカソードを基準電位に電気的に接続させるか又は前記トランジスタのソースに電気的に接続させるかを切り替え可能な第5スイッチをさらに備え、前記第2モードでは、前記第5スイッチによって前記フォトダイオードのカソードが基準電位に電気的に接続される。このような構成により、第2モードにおいて被測定光の光強度が精度良く測定される。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、光強度を検出する性能が向上された光測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の第1実施形態に係る光測定装置のブロック図である。
図2図1に示す対数増幅回路のブロック図である。
図3】測定感度の設定例を示す図である。
図4】光スペクトラムの波形を示す図である。
図5図1に示す光測定装置の光測定方法の一例を示すフローチャートである。
図6】第1比較例に係るリニア増幅器を用いた光測定装置である。
図7】第1比較例に係る測定感度の設定例を示す図である。
図8】第2比較例に係る対数増幅器を用いた光測定装置である。
図9】第1比較例及び第2比較例に係る光スペクトラムの波形を示す図である。
図10】本開示の第2実施形態に係る光測定装置のブロック図である。
図11】出力電圧値と電流値との関係を示すグラフである。
図12】出力電圧値に対する電流値を示すテーブルの一例である。
図13図10に示す光測定装置の光測定方法の一例を示すフローチャートである(その1)。
図14図10に示す光測定装置の光測定方法の一例を示すフローチャートである(その2)。
図15】本開示の第3実施形態に係る光測定装置のブロック図である。
図16図15に示す増幅対数回路の出力電圧値の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示において「リニア増幅器」は、増幅器の帰還部に固定抵抗を用いたものを意味する。帰還部に用いられる固定抵抗は、「帰還抵抗」とも記載される。リニア増幅器は、トランスインピーダンス回路に利用可能である。
【0019】
本開示において「対数増幅器」は、増幅器の帰還部に非線形素子を用いたものを意味する。非線形素子は、例えば、トランジスタ又はダイオード等である。対数増幅器に用いられる非線形素子は、非線形素子に入力される電流値を、その電流値の対数に比例する電圧値に変換する。この非線形素子は、「対数変換素子」とも呼ばれる。対数増幅器は、トランスインピーダンス回路に利用可能である。
【0020】
(第1実施形態)
光測定装置1は、被測定光の光強度を測定する多様な用途に適用可能である。以下に説明するように、光測定装置1は、広範囲の光強度を測定することができる。光測定装置1は、広範囲の光強度の測定が要求される光スペクトラムアナライザ又は光パワーメータ等に適用可能である。例えば、光スペクトラムアナライザでは、+10[dBm]から-90[dBm]までの広範囲の光強度の測定が要求される。以下、光測定装置1は、光スペクトラムアナライザに適用されるものとして説明する。
【0021】
光スペクトラムアナライザでは、被測定光は、回折格子等のモノクロメータによって分光される。分光された被測定光は、図1に示すように、光測定装置1に入力される。
【0022】
図1に示すように、光測定装置1は、フォトダイオード10(受光素子)と、対数増幅回路20と、抵抗R5と、スイッチ部30と、オフセット抵抗R30-1~R30-Nと、AD(Analog to Digital)変換部40と、演算装置2とを備える。演算装置2は、記憶部50と、入力部51と、制御部52とを有する。ただし、光測定装置1は、被測定光の光強度を電気信号に変換可能な受光素子であれば、フォトダイオード10以外の受光素子を備えてもよい。対数増幅回路20は、入力端子P1と、入力端子P2と、出力端子P3とを有する。
【0023】
以下、オフセット抵抗R30-1~R30-Nの各々を特に区別しない場合、これらは、まとめて「オフセット抵抗R30」とも記載される。
【0024】
フォトダイオード10のアノードは、対数増幅回路20の入力端子P1に電気的に接続される。フォトダイオード10のカソードは、基準電位に電気的に接続される。フォトダイオード10には、被測定光が入射する。フォトダイオード10は、光起電力効果によって、被測定光の光強度を光電流ipに変換する。光電流ipは、対数増幅回路20の入力端子P1に入力される。光電流ipの電流値は、「光電流値Ip」とも記載される。
【0025】
光電流値Ipは、トランスインピーダンス回路によって電圧値に変換される。本実施形態では、トランスインピーダンス回路は、以下に説明するような対数増幅器である。光測定装置1は、この対数増幅器の出力電圧値に基づいて被測定光の光強度を算出する。
【0026】
図2に示すように、対数増幅回路20は、増幅器21(第1増幅器)と、増幅器22と、増幅器23と、トランジスタT1と、トランジスタT2と、抵抗R1と、抵抗R2と、抵抗R3と、抵抗R4とを有する。トランジスタT1及びトランジスタT2は、例えば、バイポーラトランジスタである。
【0027】
増幅器21とトランジスタT1は、対数増幅器として構成される。例えば、トランジスタT1のエミッタが増幅器21の出力端子に電気的に接続され、トランジスタT1のコレクタが増幅器21の反転入力端子に電気的に接続される。また、トランジスタT1は、ベース接地型バイポーラトランジスタとして構成される。例えば、トランジスタT1のベースは、基準電位に電気的に接続される。また、増幅器21は、反転入力端子と非反転入力端子とが仮想短絡するように構成される。例えば、増幅器21の非反転入力端子は、基準電位に電気的に接続される。
【0028】
増幅器21の反転入力端子は、対数増幅回路20の入力端子P1に電気的に接続される。入力端子P1に入力される電流は、「電流i1」とも記載される。また、電流i1の電流値は、「電流値I1」とも記載される。
【0029】
電流値I1と増幅器21の出力電圧値Va1との関係は、バイポーラトランジスタの特性により、式(1)によって表される。
Va1=-kT/q×ln(I1/Is) 式(1)
式(1)において、定数kは、ボルツマン定数である。定数kは、例えば、1.38×10-23[J/K]である。温度Tは、トランジスタT1の絶対温度である。電荷量qは、電子1つ当たりの電荷量である。電荷量qは、例えば、1.602×10-19[C]である。電流値Isは、トランジスタT1の逆方向飽和電流の電流値である。
【0030】
本実施形態では、式(1)の電流値Isを打ち消すために、以下に説明するように、増幅器22、増幅器23、トランジスタT2、電圧源Vref及び抵抗R5が用いられる。
【0031】
増幅器22は、増幅器21のレプリカ回路である。増幅器22は、増幅器21と同じ電気的特性を有する。トランジスタT2は、トランジスタT1のレプリカ回路である。トランジスタT2は、トランジスタT1と同じ電気的特性を有する。トランジスタT2は、トランジスタT1に熱的に接触させられる。トランジスタT2は、トランジスタT1と同一温度で動作する。
【0032】
増幅器22とトランジスタT2は、対数増幅器として構成される。例えば、トランジスタT2のエミッタが増幅器22の出力端子に電気的に接続され、トランジスタT2のコレクタが増幅器22の反転入力端子に電気的に接続される。また、トランジスタT2は、ベース接地型バイポーラトランジスタとして構成される。例えば、トランジスタT2のベースは、基準電位に電気的に接続される。また、増幅器22は、反転入力端子と非反転入力端子とが仮想短絡するように構成される。例えば、増幅器22の非反転入力端子は、基準電位に電気的に接続される。
【0033】
増幅器22の反転入力端子は、対数増幅回路20の入力端子P2に電気的に接続される。入力端子P2には、電圧源Vrefからの電圧が抵抗R5を介して入力される。入力端子P2には、電流i2が入力される。電流i2の電流値は、「電流値I2」とも記載される。
【0034】
電流値I2は、電圧源Vrefの電圧値VREFと抵抗R5によって設定される。電流値I2は、既知となる。抵抗R5は、固定抵抗を含んで構成される。抵抗R5は、2つの端子を有する。抵抗R5の一方の端子は、入力端子P2に電気的に接続される。抵抗R5の他方の端子は、電圧源Vrefに電気的に接続される。
【0035】
電流値I2と増幅器22の出力電圧値Va2との関係は、上記式(1)と同様に、式(2)によって表される。
Va2=-kT/q×ln(I2/Is) 式(2)
【0036】
増幅器23の反転入力端子には、増幅器21の出力端子が抵抗R1を介して電気的に接続される。増幅器23の反転入力端子は、抵抗R2を介して増幅器23の出力端子に電気的に接続される。また、増幅器23の非反転入力端子には、増幅器22の出力端子が抵抗R3を介して電気的に接続される。増幅器23の非反転入力端子は、抵抗R4を介して基準電位に電気的に接続される。
【0037】
抵抗R1及び抵抗R3は、正の温度係数を有する測温抵抗体を含んで構成される。抵抗R2及び抵抗R4は、固定抵抗を含んで構成される。
【0038】
抵抗R1及び抵抗R2の各々は、2つの端子を有する。抵抗R1の一方の端子は、増幅器21の出力端子に電気的に接続される。抵抗R1の他方の端子は、抵抗R2の一方の端子及び増幅器23の反転入力端子に接続される。抵抗R2の他方の端子は、増幅器23の出力端子に接続される。抵抗R3及び抵抗R4の各々は、2つの端子を有する。抵抗R3の一方の端子は、増幅器22の出力端子に電気的に接続される。抵抗R3の他方の端子は、抵抗R4の一方の端子及び増幅器23の非反転入力端子に電気的に接続される。抵抗R4の他方の端子は、基準電位に電気的に接続される。
【0039】
後述のように、対数増幅回路20の出力電圧値に基づいて被測定光の光強度が算出される。増幅器23の出力電圧値すなわち対数増幅回路20の出力電圧値Vо1は、式(3)によって表される。
Vо1=G×(Va2-Va1)
=GkT/q×ln(I1/I2) 式(3)
式(3)において、G=r2/r1=r4/r3である。抵抗値r1は、抵抗R1の抵抗値である。抵抗値r2は、抵抗R2の抵抗値である。抵抗値r3は、抵抗R3の抵抗値である。抵抗値r4は、抵抗R4の抵抗値である。
【0040】
式(3)から、出力電圧値Vо1が温度依存性を有することが分かる。例えば、出力電圧値Vо1は、温度Tに比例する。出力電圧値Vо1の温度依存性は、抵抗R1~R4のうちの抵抗R1,R3に正の温度係数を有する測温抵抗体を用いることにより、低減される。
【0041】
ここで、フォトダイオード10が遮光されているとき、光電流値Ipは、0[A]以下になる。光電流値Ipが0[A]以下になることにより電流値I1が0[A]以下になると、トランジスタT1のエミッタからコレクタに流れる電流が非常に小さいことにより、増幅器21の出力電圧値Va1が正の電圧値に飽和する。つまり、増幅器21の出力電圧値Va1が正の電圧値に飽和し、増幅器21がラッチアップする。増幅器21がラッチアップすることを抑制するために、本実施形態では、スイッチ部30及びオフセット抵抗R30によって、オフセット電流iоffが入力端子P1に入力される。オフセット電流iоffの電流値は、「オフセット電流値Iоff」とも記載される。このような構成により、電流値I1は、オフセット電流値Iоffと光電流値Ipの和となる。電流値I1がオフセット電流値Iоffと光電流値Ipの和になることにより、電流値I1が0[A]以下になることが抑制され、増幅器21がラッチアップすることが抑制される。
【0042】
オフセット抵抗R30は、2つの端子を有する。オフセット抵抗R30は、固定抵抗を含んで構成される。オフセット抵抗R30-1~R30-Nの各々の抵抗値は、異なる。例えば、オフセット抵抗R30の抵抗値は、オフセット抵抗R30-1からオフセット抵抗R30-Nに向けて10倍ずつ大きくなる。
【0043】
スイッチ部30は、オフセット抵抗R30-1~R30-Nのうちで電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R30を切り替え可能である。スイッチ部30は、切り替えスイッチSW30-1~SW30-Nを含む。
【0044】
以下、切り替えスイッチSW30-1~SW30-Nを特に区別しない場合、これらは、「切り替えスイッチSW30」とも記載される。
【0045】
切り替えスイッチSW30は、2つの端子を有する。切り替えスイッチSW30は、メカニカルリレー、フォトモスリレー又はアナログスイッチ等を含んで構成される。ただし、スイッチ部30は、アナログマルチプレクサとして構成されてもよい。スイッチ部30がアナログマルチプレクサとして構成される場合、切り替えスイッチSW30-1~SW30-Nの各々の一方の端子が共通化される。
【0046】
以下、切り替えスイッチSW30-i(iは、1~Nまでの整数)に対応するオフセット抵抗R30は、「オフセット抵抗R30-i」とも記載される。
【0047】
切り替えスイッチSW30-iの一方の端子は、電圧源Vbに電気的に接続される。切り替えスイッチSW30-iの他方の端子は、オフセット抵抗R30-iの一方の端子に電気的に接続される。オフセット抵抗R30-iの他方の端子は、入力端子P1に電気的に接続される。ただし、オフセット抵抗R30-iの一方の端子が電圧源Vbに電気的に接続され、オフセット抵抗R30-iの他方の端子が切り替えスイッチSW30-iの一方の端子に接続されてもよい。この場合、切り替えスイッチSW30-iの他方の端子は、入力端子P1に電気的に接続される。
【0048】
切り替えスイッチSW30には、制御部52からの制御信号が出力される。切り替えスイッチSW30は、制御部52からの制御信号に基づいて、オン状態(導通状態)又はオフ状態(非導通状態)になる。切り替えスイッチSW30-iがオン状態になると、オフセット抵抗R30-iは、電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続される。また、切り替えスイッチSW30-iがオフ状態になると、オフセット抵抗R30-iは、電圧源Vbと入力端子P1との間から電気的に切り離される。
【0049】
AD変換部40は、アナログ-デジタル変換部である。AD変換部40は、増幅器23の出力端子に電気的に接続される。AD変換部40には、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1が入力される。AD変換部40は、アナログ信号としての出力電圧値Vо1をデジタル信号に変換する。AD変換部40は、デジタル信号を制御部52に出力する。
【0050】
記憶部50は、例えば、半導体メモリ、磁気メモリ又は光メモリ等である。ただし、記憶部50は、これらに限定されない。記憶部50は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部50は、光測定装置1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部50は、システムプログラム及びアプリケーションプログラム等の各種情報等を記憶してよい。
【0051】
入力部51は、ユーザからの入力を受け付ける入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、物理キー、静電容量キー、タッチスクリーン又は音声入力を受け付けるマイクロフォン等である。ただし、入力用インタフェースは、これらに限定されない。
【0052】
制御部52は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。制御部52は、光測定装置1の各部を制御しながら、光測定装置1の動作に関わる処理を実行する。
【0053】
[測定感度の設定処理]
制御部52は、例えば光スペクトラムの測定の実行前に、以下に説明する測定感度の入力を入力部51によって受け付ける。この入力は、ユーザによって入力部51から入力される。
【0054】
測定感度は、被測定光の光強度をどの程度の雑音レベルで測定するかを示す指標である。測定感度は、例えば、光測定装置1の感度で規定される。光測定装置1の感度が高いほど、雑音レベルは、小さくなる。例えば、図3に示すように、測定感度は、感度A、感度B、感度C及び感度Dと設定される。感度A、感度B、感度C及び感度Dの順に、雑音レベルは、小さくなる。感度A、感度B、感度C及び感度Dの各々の光測定装置1の雑音レベルは、-50[dBm]、-60[dBm]、-70[dBm]及び-80[dBm]である。
【0055】
増幅器21の帰還部の帰還抵抗値すなわちトランジスタT1の抵抗値Rtが高くなるほど、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1の電流値I1に対する感度が高くなる。つまり、トランジスタT1の抵抗値Rtが高くなるほど、対数増幅回路20の感度が高くなり、光測定装置1の雑音レベルが小さくなる。しかしながら、トランジスタT1の抵抗値Rtが高くなるほど、増幅器21の応答速度が低下するため、光測定装置1の測定速度が低下する。つまり、トランジスタT1の抵抗値Rtが高くなるほど、光測定装置1の雑音レベルが小さくなるが、光測定装置1の測定速度が低下する。例えば、感度A、感度B、感度C及び感度Dの順に雑音レベルが小さくなるが、感度A、感度B、感度C及び感度Dの順に測定速度は、10分の1ずつ小さくなる。
【0056】
ここで、トランジスタT1の抵抗値Rtは、式(4)によって表される。式(4)は、上記式(1)を微分することにより、導出される。また、増幅器21のカットオフ周波数fcは、式(5)によって表される。
Rt=kT/(q×I1) 式(4)
fc=1/(2π×Rt×Cj)=(q×I1)/(2π×kT×Cj) 式(5)
式(5)において、容量値Cjは、トランジスタT1の接合容量値である。例えば、容量値Cjが1[pF]であり、電流値I1が100[pA]である場合、カットオフ周波数fcは、600[Hz]となる。また、容量値Cjが1[pF]であり、電流値I1が1[nA]である場合、カットオフ周波数fcは、6[kHz]となる。
【0057】
式(4)から、電流値I1が小さいほど、抵抗値Rtが高くなることが分かる。また、上述のように、トランジスタT1の抵抗値Rtが高くなるほど、光測定装置1の測定感度が高くなるが、光測定装置1の測定速度が低下する。その結果、電流値I1が小さいほど抵抗値Rtが高くなり、光測定装置1の測定感度が高くなるが、光測定装置1の測定速度が低下する。また、式(5)から、カットオフ周波数fcが電流値I1に比例することが分かる。つまり、カットオフ周波数fcは、増幅器21の数[MHz]程度の増幅帯域まで電流値I1に比例して増加する。従って、電流値I1が大きいほどカットオフ周波数fcが高くなり、増幅器21の周波数帯域が広帯域になる。
【0058】
本実施形態では、電流値I1は、上述のように、オフセット電流値Iоffと光電流値Ipの和となる。本実施形態では、スイッチ部30によって電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続されるオフセット抵抗R30を切り替えることにより、オフセット電流値Iоffを調整することができる。つまり、本実施形態では、オフセット電流値Iоffを調整することにより、電流値I1を調整して光測定装置1の測定感度、光測定装置1の測定速度及び増幅器21の周波数帯域を調整することができる。
【0059】
例えば、被測定光の光強度が低い場合、スイッチ部30によって、大きい抵抗値のオフセット抵抗R30を電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続させる。このような構成により、オフセット電流値Iоffが小さくなることにより電流値I1が小さくなり、光測定装置1の測定感度が高まる。
【0060】
例えば、被測定光の光強度が高い場合、スイッチ部30によって、小さい抵抗値のオフセット抵抗R30を電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続させる。このような構成により、オフセット電流値Iоffが大きくなることにより電流値I1が大きくなり、光測定装置1の測定速度が高速になる。
【0061】
図3に示すような感度A、感度B、感度C及び感度Dは、オフセット電流値Iоffを200[nA]、20[nA]、2[nA]及び200[pA]に調整することにより、設定される。この場合、感度A、感度B、感度C及び感度Dの各々のカットオフ周波数fcは、1[MHz]、100[kHz]、10[kHz]及び1[kHz]になる。図3において、抵抗値Rs30は、スイッチ部30によって入力端子P1と電圧源Vbとの間に電気的に接続されるオフセット抵抗R30の抵抗値である。電圧源Vbの電圧値VBが0.2[V]である場合、抵抗値Rs30を1[MΩ]、10[MΩ]、100[MΩ]及び1[GΩ]の各々にすることにより、測定感度は、感度A、感度B、感度C及び感度Dの各々に設定される。
【0062】
以下、オフセット抵抗R30-1,R30-2,R30-3,R30-4の各々の抵抗値は、1[MΩ]、10[MΩ]、100[MΩ]及び1[GΩ]であるとする。オフセット抵抗R30-1~R30-4の各々をスイッチ部30によって入力端子P1と電圧源Vbとの間に電気的に接続させることにより、光測定装置1の測定感度が感度A~Dの各々に設定される。つまり、感度A~Dの各々は、切り替えスイッチSW30-1~SW30-4の各々をオン状態にし、且つ切り替えスイッチSW30-1~SW30-4の各々以外の切り替えスイッチSW30をオフ状態にすることにより、設定される。
【0063】
記憶部50には、測定感度と、その測定感度に設定するためのスイッチ部30の切り替え情報とが対応付けて記憶される。スイッチ部30の切り替え情報は、オン状態にする切り替えスイッチSW30の情報及びオフ状態にする切り替えスイッチSW30の情報を含む。例えば、測定感度が図3に示すような感度Aである場合、スイッチ部の切り替え情報は、オン状態にする切り替えスイッチSW30-1の情報及びオフ状態にする切り替えスイッチSW30-1以外の切り替えスイッチSW30の情報である。
【0064】
[オフセット電流値の測定処理]
制御部52は、フォトダイオード10が遮光されているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定することにより、オフセット電流値Iоffを測定することができる。つまり、制御部52は、出力電圧値Vо1に基づいてオフセット電流値Iоffを算出することができる。オフセット電流値Iоffは、後述のように、被測定光の光強度の算出に用いられる。実際値としてのオフセット電流値Iоffは、光測定装置1の製造誤差等によって、図3に示すような設定値としてのオフセット電流値Iоffからずれる場合がある。オフセット電流値Iоffを測定することにより、被測定光の光強度がより精度良く測定される。
【0065】
制御部52は、出力電圧値Vо1と式(6)とによって、オフセット電流値Iоff1を算出する。オフセット電流値Iоff1は、出力電圧値Vо1からオフセット電流値として算出される電流値である。
Iоff1=I2×exp(Vо1/K) 式(6)
式(6)において、K=GkT/qである。
【0066】
式(6)から、出力電圧値Vо1によって算出されるオフセット電流値Iоff1は、温度Tに依存することが分かる。つまり、電圧源Vbと入力端子P1との間に接続されるオフセット抵抗R30が同じであっても、光測定装置1が光測定を実行する際の温度Tが異なると、オフセット電流値Iоff1が異なる。
【0067】
そこで、制御部52は、例えば光強度の測定処理の実行前又は定期的に、オフセット電流値Iоff1を測定する。制御部52は、オフセット抵抗R30毎すなわち測定感度毎のオフセット電流値Iоff1を測定してよい。この場合、制御部52は、スイッチ部30によって電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R30を切り替えながら、フォトダイオード10が遮光されているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1を測定する。制御部52は、オフセット抵抗R30毎のオフセット電流値Iоff1を、出力電圧値Vо1と式(6)とによって算出する。制御部52は、オフセット抵抗R30すなわち測定感度に対応付けたオフセット電流値Iоff1を記憶部50に記憶させる。
【0068】
[光強度の測定処理]
制御部52は、被測定光がフォトダイオード10に入射しているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。制御部52は、測定した出力電圧値Vо1と式(7)とによって、電流値I1を算出する。なお、式(7)は、上記式(3)から導出される。また、式(7)の電流値I2は、上述のように既知である。制御部52は、測定感度に対応付けられたオフセット電流値Iоff1を、記憶部50から取得する。制御部52は、式(8)によって電流値I1から取得したオフセット電流値Ioff1を差し引くことにより、光電流値Ipを算出する。制御部52は、光電流値Ipと式(9)とによって、光強度Pinを算出する。
I1=I2×exp(Vо1/K) 式(7)
Ip=I1-Iоff1 式(8)
Pin=Ip/S 式(9)
式(7)において、K=GkT/qである。また、式(9)において、受光感度Sは、フォトダイオード10の受光感度である。
【0069】
図4は、光スペクトラムの波形を示す図である。図4では、横軸は、光波長[nm]である。また、縦軸は、光強度[dBm]である。光スペクトラムアラナイザでは、光波長に対する光強度を連続的に測定することにより、光スペクトラムが測定される。つまり、光測定装置1が光スペクトラムアナライザに適用される場合、光測定装置1では、光波長を掃引させながら、光強度が測定される。
【0070】
波形W1は、式(8)によって電流値I1からオフセット電流値Iоff1を差し引かずに、Ip=I1として式(9)から算出された光強度を示す。波形W2は、式(8)によって電流値I1からオフセット電流値Ioff1を差し引いて光電流値Ipを算出し、算出した光電流値Ipと式(9)とによって算出されたものである。
【0071】
このように光測定装置1では、制御部52は、式(8)によって電流値I1からオフセット電流値Ioff1を差し引くことにより、光電流値Ipを算出する。このような構成により、被測定光の光強度を広範囲で測定することができる。
【0072】
[光測定装置の動作]
図5は、図1に示す光測定装置1の光測定方法の一例を示すフローチャートである。光測定方法は、制御部52等のプロセッサに実行させる光測定プログラムとして実現されてもよい。光測定プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。制御部52は、測定感度の入力を入力部51によって検出すると、図5に示すようなステップS10の処理を開始する。
【0073】
ステップS10の処理において、制御部52は、測定感度の入力を入力部51によって受け付ける。ユーザは、被測定光の光強度に応じて、図3に示すような感度A~Dの何れかを入力部51から入力する。例えば、被測定光の光強度が低い場合、ユーザは、感度Dを入力部51から入力する。また、被測定光の光強度が高い場合であって、ユーザが測定速度を速くしたい場合、ユーザは、感度Aを入力部51から入力する。
【0074】
ステップS11の処理の実行前に、フォトダイオード10は、遮光された状態にされる。ステップS11の処理において、制御部52は、スイッチ部30によって電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R30を切り替えながら、フォトダイオード10が遮光されているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1を測定する。
【0075】
ステップS12の処理において、制御部52は、オフセット抵抗R30毎のオフセット電流値Iоff1を、出力電圧値Vо1と上記式(6)とによって算出する。制御部52は、オフセット抵抗R30すなわち測定感度に対応付けたオフセット電流値Iоff1を記憶部50に記憶させる。
【0076】
ステップS13の処理において、制御部52は、ステップS10の処理で受け付けた測定感度に設定するためのスイッチ部30の切り替え情報を、記憶部50から取得する。制御部52は、取得したスイッチ部30の切り替え情報に基づいて、スイッチ部30を制御する。例えばステップS10の処理で受け付けた測定感度が図3に示すような感度Aである場合、制御部52は、切り替えスイッチSW30-1をオン状態にし、切り替えスイッチSW30-1以外の切り替えスイッチSW30をオフ状態にする。
【0077】
ステップS14の処理の実行前に、フォトダイオード10は、被測定光がフォトダイオード10を透過することが可能な状態にされる。ステップS14の処理では、被測定光がフォトダイオード10に入力される。ステップS14の処理において、制御部52は、被測定光がフォトダイオード10に入射しているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。
【0078】
ステップS15の処理において、制御部52は、ステップS10の処理で受け付けた測定感度に対応付けられたオフセット電流値Iоff1を、記憶部50から取得する。ステップS15の処理において、制御部52は、ステップS14の処理で測定した出力電圧値Vо1と、記憶部50から取得したオフセット電流値Iоff1と、上記式(7)から上記式(9)とによって、被測定光の光強度を算出する。
【0079】
なお、制御部52は、例えばステップS11,S12の処理を事前に実行していれば、ステップS11,S12の処理を実行しなくてもよい。
【0080】
また、制御部52は、ステップS11,S12の処理を任意のタイミングで定期的に実行してもよい。この場合、ステップS11の処理を実行する際に、ユーザが手動でフォトダイオード10を遮光してもよい。又は、ステップS11の処理を実行する際にフォトダイオード10が自動的に遮光させるように、光測定装置1が構成されてもよい。
【0081】
本実施形態に係る光測定装置1の効果が、第1比較例に係る光測定装置301及び第2比較例に係る光測定装置401と対比しながら説明される。
【0082】
<第1比較例>
図6は、第1比較例に係るリニア増幅器を用いた光測定装置301である。光測定装置301は、フォトダイオード10と、AD変換部40と、増幅器302と、帰還部303-1~303-Nと、抵抗R304と、抵抗R305と、DA(Digital to Analog)変換部306とを備える。なお、抵抗R304及び抵抗R305は、後述の図10に示すような抵抗R6及び抵抗R7と同様に用いられる。また、DA変換部306は、後述の図10に示すようなDA変換部70と同様に用いられる。
【0083】
フォトダイオード10のアノードは、増幅器302の反転入力端子に電気的に接続される。フォトダイオード10に被測定光が入射すると、フォトダイオード10から増幅器302の反転入力端子に向けて光電流ipが流れる。
【0084】
増幅器302と、帰還部303-1~303-Nとは、リニア増幅器を構成する。例えば、増幅器302の出力端子と増幅器302の反転入力端子との間には、帰還部303-1~303-Nが電気的に接続される。
【0085】
帰還部303-1~303-Nは、電気的に並列接続される。帰還部303-1~303-Nは、各々、コンデンサC303-1~C303-Nと、抵抗R303-1~R303-Nと、スイッチSW303-1~SW303-Nとを含む。
【0086】
以下、帰還部303-1~303-Nの各々を特に区別しない場合、これらは、まとめて「帰還部303」とも記載される。また、コンデンサC303-1~C303-Nの各々を特に区別しない場合、これらは、まとめて「コンデンサC303」とも記載される。また、抵抗R303-1~R303-Nの各々を特に区別しない場合、これらは、まとめて「抵抗R303」とも記載される。また、スイッチSW303-1~SW303-Nの各々を特に区別しない場合、これらは、まとめて「スイッチSW303」とも記載される。
【0087】
コンデンサC303は、2つの端子を有する。抵抗R303は、2つの端子を有する。スイッチSW303は、2つの端子を有する。
【0088】
以下、帰還部303-i(iは、1~Nまでの整数)に含まれるコンデンサC303、抵抗R303及びスイッチSW303の各々は、「コンデンサC303-i」、「抵抗R303-i」及び「スイッチSW303-i」とも記載される。
【0089】
コンデンサC303-iの一方の端子は、抵抗R303-iの一方の端子に電気的に接続される。コンデンサC303-iの他方の端子は、抵抗R303-iの他方の端子に電気的に接続される。抵抗R303-iの一方の端子は、増幅器302の反転入力端子に電気的に接続される。抵抗R303-iの他方の端子は、スイッチSW303-iの一方の端子に電気的に接続される。スイッチSW303-iの他方の端子は、増幅器302の出力に電気的に接続される。
【0090】
第1比較例では、AD変換部40は、増幅器302の出力端子に電気的に接続される。AD変換部40には、増幅器302の出力電圧値Vо302が入力される。第1比較例では、増幅器302の出力電圧値Vо302に基づいて被測定光の光強度が測定される。
【0091】
第1比較例に係る光測定装置301では、増幅器302の出力端子と反転入力端子との間に接続される抵抗R303すなわち帰還抵抗の抵抗値によって、測定感度が設定される。帰還抵抗の抵抗値が高くなると、光測定装置301の感度が高くなり、光測定装置301の雑音レベルが小さくなる。例えば、図7に示すように、光測定装置301の測定感度は、高感度、中感度及び低感度に設定される。低感度、中感度及び高感度の順に、帰還抵抗の抵抗値が高くなり、光測定装置301の雑音レベルが小さくなる。しかしながら、帰還抵抗の抵抗値が高くなると、増幅器302の応答速度が低下するため、光測定装置301の測定速度が低下する。つまり、帰還抵抗の抵抗値が高くなると、光測定装置301の雑音レベルが小さくなるが、光測定装置301の測定速度が低速になる。例えば、図7に示すように、低感度、中感度及び高感度の順に、光測定装置301の測定速度は、高速、中速及び低速になり低下する。
【0092】
第1比較例では、増幅器302のカットオフ周波数fcは、式(10)によって表される。
fc=1/(2π×Rf303×Cf303) 式(10)
式(10)において、帰還容量値Cf303は、増幅器302の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されるコンデンサC303すなわち帰還容量の容量値である。また、帰還抵抗値Rf303は、増幅器302の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続される抵抗R303すなわち帰還抵抗の抵抗値である。例えば、帰還容量値Cf303が1[pF]であり、帰還抵抗値Rf303が100[MΩ]である場合、カットオフ周波数は、1.6[kHz]となる。
【0093】
式(10)から、帰還抵抗値Rf303が小さくなるとカットオフ周波数fcが高くなり、増幅器302の周波数帯域が広帯域になることが分かる。また、上述のように、帰還抵抗値Rf303が小さくなると、光測定装置301の測定感度が低くなる。つまり、帰還抵抗値Rf303が小さくなると、光測定装置301の測定感度が低くなるが、増幅器302の周波数帯域が広帯域になる。例えば、図7に示すように、高感度、中感度及び低感度の順に、カットオフ周波数が低帯域、中帯域及び高帯域と高くなり、周波数帯域が広帯域になる。
【0094】
なお、式(10)から帰還容量値Cf303が小さくなるとカットオフ周波数fcが高くなり、増幅器302の周波数帯域が広帯域になることが分かる。ただし、帰還容量値Cf303が小さくなると増幅器302の高周波雑音が大きくなる。その結果、帰還容量値Cf303がある程度の値に制限され、帰還抵抗値Rf303によってカットオフ周波数fc等が調整される。
【0095】
ここで、第1比較例に係る光測定装置301では、測定可能な被測定光の光強度は、増幅器302と帰還部303とによって構成されるリニア増幅器の電源電圧によって制限される。第1比較例では、測定可能な被測定光の光強度がリニア増幅器の電源電圧によって制限されることにより、被測定光の光強度が大きい場合、帰還抵抗値Rf303を小さくすることが要求される。また、第1比較例では、被測定光の光強度が小さい場合、光測定装置301の測定感度を高くするために、帰還抵抗値Rf303を大きくすることが要求される。つまり、光測定装置301を光スペクトラムアナライザに適用する場合、光測定装置301では、被測定光の光強度が大きい場合に帰還抵抗値Rf303を小さくし、被測定光の光強度が小さい場合に帰還抵抗値Rf303を大きくすることが要求される。このような構成により、第1比較例では、被測定光の光強度に応じて、スイッチSW303を切り替えて増幅器302の出力端子と反転入力端子との間に接続される抵抗R303を切り替えることが要求される。従って、第1比較例では、光スペクトラムの測定中に光波長を掃引している際に、被測定光の光強度に応じて、スイッチSW303を切り替える動作が要求される。第1比較例では、スイッチSW303を切り替える動作が要求されることにより、光スペクトラムの測定時間が長くなる。さらに、光測定装置301では、スイッチSW303を切り替えた後、増幅器302の出力電圧値Vо302が収束するまで、光スペクトラムの測定を停止させることが要求される。光測定装置301では、増幅器302の出力電圧値Vо302が収束するまで光スペクトラムの測定が停止されることにより、光スペクトラムの測定時間が長くなる。
【0096】
このような第1比較例に対し、本実施形態に係る光測定装置1では、上記式(7)及び上記式(8)から分かるように、出力電圧値Vо1は、光電流値Ipの対数となる。出力電圧値Vо1が光電流値Ipの対数となることにより、光測定装置1では、測定可能な被測定光の光強度が対数増幅回路20の電源電圧によって制限されない。このような構成により、光測定装置1では、第1比較例のように光スペクトラムの測定中にスイッチSW303を切り替える動作が不要になる。また、光測定装置1では、第1比較例のように増幅器302の出力電圧値Vо302が収束するまで光スペクトラムの測定を停止させるといったことが要求されない。従って、本実施形態に係る光測定装置1では、第1比較例に係る光測定装置301よりも、光スペクトラムの測定時間が短くなる。
【0097】
<第2比較例>
図8は、第2比較例に係る対数増幅器を用いた光測定装置401である。光測定装置401は、フォトダイオード10と、対数増幅回路20と、抵抗R5とを備える。光測定装置401は、本実施形態に係るスイッチ部30及びオフセット抵抗R30の代わりに、抵抗R403を備える。
【0098】
第2比較例では、フォトダイオード10が遮光されているときに増幅器21がラッチアップすることを抑制するために、バイアス電流ibが用いられる。バイアス電流ibの電流値は、「バイアス電流値Ib」とも記載される。バイアス電流ibは、図1に示すようなオフセット電流iоffと同様に、入力端子P1に入力される。バイアス電流値Ibは、電圧源V402の電圧と抵抗R403の抵抗値とによって設定される。抵抗R403は、固定抵抗を含んで構成される。抵抗R403は、2つの端子を有する。抵抗R403の一方の端子は、入力端子P1に電気的に接続される。抵抗R403の他方の端子は、電圧源402に電気的に接続される。
【0099】
第2比較例でも、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1がAD変換部40によって測定される。ただし、第2比較例では、本実施形態とは異なり、出力電圧値Vо1に基づいてオフセット電流値Iоff1が測定されない。第2比較例では、出力電圧値Vо1と電流値I2と上記式(7)とによって算出された電流値I1が上記式(9)の光電流値Ipに代入されて光強度Pinが測定される。つまり、第2比較例では、上記式(8)によって電流値I1からオフセット電流値Iоff1を差し引かずに、上記式(9)にてI1=Ipとして光強度Pinが測定される。
【0100】
第2比較例では、電流値I1は、光電流値Ipとバイアス電流値Ibとの和になる。第2比較例でも、上記式(4)を参照して上述したように、電流値I1が小さいほど、抵抗値Rtが高くなり、光測定装置401の測定感度が高くなる。また、上記式(5)を参照して上述したように、電流値I1が大きいほど、カットオフ周波数fcが高くなり、増幅器21の周波数帯域が広帯域になる。このような構成により、第2比較例では、バイアス電流値Ibを調整することにより、電流値I1を調整して光測定装置401の測定感度、光測定装置401の測定速度及び増幅器21の周波数帯域が調整される。
【0101】
第2比較例において、バイアス電流値Ibを調整するためには、例えば電圧源V402にデジタル-アナログ変換部を採用し、電圧源V402の電圧値を可変にすることが考えられる。ここで、電圧源V402の電圧範囲は、光測定装置401の電源電圧によって制限される。その結果、バイアス電流値Ibを広範囲で設定するためには、抵抗R403の抵抗値を低く設定することが求められる。抵抗R403の抵抗値を低く設定すると、大きなバイアス電流値Ibを設定することができる。
【0102】
しかしながら、抵抗R403の抵抗値を低く設定すると、増幅器21の非反転入力端子側から観たゲインすなわちノイズゲインが上昇する。従って、電圧源V402の電圧値を低くして測定感度を高くしても雑音レベルを小さくする事が出来ない。第2比較例では、増幅器21のノイズゲインが上昇することを抑制するために、抵抗R403の抵抗値をある程度大きくすることが求められる。例えば、抵抗R403の抵抗値は、数[GΩ]に設定される。
【0103】
このように第2比較例では、増幅器21のノイズゲインの上昇を抑制するために、抵抗R403の抵抗値をある程度大きくすることが求められる。その結果、第2比較例では、バイアス電流値Ibを大きく設定することができない。第2比較例では、バイアス電流値Ibを大きく設定することができないため、増幅器21の周波数帯域を広帯域に設定することができない。増幅器21の周波数帯域を広帯域に設定することができないと、光測定装置401では、図9を参照して以下に説明するように、被測定光の光強度が低くなる光波長において波形に歪みが生じてしまう。
【0104】
図9に、第1比較例及び第2比較例に係る光スペクトラムの波形を示す。図9では、横軸は、光波長[nm]である。また、縦軸は、光強度[dBm]である。波形W3は、第1比較例に係る光測定装置301によって測定された光スペクトラムの波形である。波形W4は、第2比較例に係る光測定装置401によって測定された光スペクトラムの波形である。波形W4では、波形W3と比較すると、光強度が低くなる光波長の範囲において歪みが生じている。
【0105】
このような第2比較例に対し、本実施形態に係る光測定装置1では、図1に示すような、異なる抵抗値のオフセット抵抗R30によって多様なオフセット電流値Iоffを設定することができる。光測定装置1では、電圧源Vbの電圧値VBを低くすることなく、高い抵抗値のオフセット抵抗R30を電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続させることにより増幅器21のノイズゲインが上昇することを抑制し、低いオフセット電流値Iоffを設定することができる。また、光測定装置1では、低い抵抗値のオフセット抵抗R30を電圧源Vbと入力端子P1との間に電気的に接続させることにより、大きなオフセット電流値Iоffを設定することができる。その結果、増幅器21のノイズゲインが上昇することを抑制しつつ、大きなオフセット電流値Iоffを設定して増幅器21の周波数帯域を広帯域にすることができる。このような構成により、光測定装置1では、図9に示すように光強度が低くなる光波長の範囲において波形に歪みが生じることが抑制される。
【0106】
また、第2比較例では、上述のように、出力電圧値Vо1に基づいてオフセット電流値Iоff1が測定されない。つまり、第2比較例では、本実施形態とは異なり、上記式(8)によって電流値I1からオフセット電流値Iоff1を差し引かずに、上記式(9)にてI1=Ipとして光強度Pinが測定される。その結果、第2比較例では、バイアス電流値Ibよりも小さな光電流値Ipを測定することができない。
【0107】
このような第2比較例に対し、第1実施形態に係る光測定装置1では、制御部52は、上記式(8)によって電流値I1からオフセット電流値Ioff1を差し引くことにより、光電流値Ipを算出する。さらに、制御部52は、算出した光電流値Ipと上記式(9)とによって光強度Pinを算出する。このように上記式(8)によって電流値I1からオフセット電流値Ioff1を差し引いて光電流値Ipを算出することにより、オフセット電流値Iоff1をバイアス電流値Ibよりも大きくすることができる。オフセット電流値Iоff1を大きくすることにより、光測定装置1の測定速度を高速にすることができる。
【0108】
以上のように第1実施形態に係る光測定装置1では、被測定光の光強度を検出する性能が向上される。
【0109】
(第2実施形態)
図10に示すように、光測定装置101は、フォトダイオード10と、対数増幅回路20と、抵抗R5と、AD変換部40と、演算装置2とを備える。光測定装置101は、増幅器60(第2増幅器)と、抵抗R6と、抵抗R7と、DA変換部70と、スイッチSW1(第1スイッチ)と、スイッチSW2(第2スイッチ)と、スイッチSW3(第3スイッチ)と、スイッチSW4(第4スイッチ)と、スイッチSW5とを備える。光測定装置101は、スイッチ部130と、オフセット抵抗R130-1~R130-Nと、コンデンサC130-1~C130-Nとを備える。
【0110】
以下、オフセット抵抗R130-1~R130-Nの各々を特に区別しない場合、これらは、まとめて「オフセット抵抗R130」とも記載される。また、コンデンサC130-1~C130-Nの各々を特に区別しない場合、これらは、まとめて「コンデンサC130」とも記載される。
【0111】
スイッチSW1~SW5の各々は、メカニカルリレー、フォトモスリレー又はアナログスイッチ等を含んで構成される。スイッチSW1~SW5は、アナログマルチプレクサとして構成されてもよい。なお、図10において、スイッチSW1及びスイッチSW2は独立したスイッチとして示しているが、スイッチSW1及びスイッチSW2は1つのスイッチとして構成されてもよい。この場合、スイッチSW1及びスイッチ2は、フォトダイオード10のアノードの接続先を切り替えるスイッチであり、例えば、スイッチSW5のような構成であってよい。また、図10において、スイッチSW2及びスイッチSW3は独立したスイッチとして示しているが、スイッチSW2及びスイッチSW3は1つのスイッチとして構成されてもよい。この場合、スイッチSW2及びスイッチ3は、増幅器60の反転入力端子の接続先を切り替えるスイッチであり、例えば、スイッチSW5のような構成であってよい。
【0112】
スイッチSW1は、入力端子P1とフォトダイオード10のアノードとを電気的に接続させるか否かを切り替え可能である。例えば、スイッチSW1は、2つの端子を有する。スイッチSW1の一方の端子は、入力端子P1に電気的に接続される。スイッチSW1の他方の端子は、フォトダイオード10のアノードに電気的に接続される。スイッチSW1は、制御部52からの制御信号に基づいて、オン状態又はオフ状態になる。スイッチSW1がオン状態になると、入力端子P1とフォトダイオード10とは、電気的に接続される。また、スイッチSW1がオフ状態になると、入力端子P1とフォトダイオード10とは、電気的に切り離される。
【0113】
スイッチSW2は、フォトダイオード10のアノードと増幅器60の反転入力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能である。例えば、スイッチSW2は、2つの端子を有する。スイッチSW2の一方の端子は、フォトダイオード10のアノードに電気的に接続される。スイッチSW2の他方の端子は、増幅器60の反転入力端子に電気的に接続される。スイッチSW2は、制御部52からの制御信号に基づいて、オン状態又はオフ状態になる。スイッチSW2がオン状態になると、フォトダイオード10のアノードと増幅器60の反転入力端子とは、電気的に接続される。スイッチSW2がオフ状態になると、フォトダイオード10のアノードと増幅器60の反転入力端子とは、電気的に切り離される。
【0114】
スイッチSW3は、増幅器60の反転入力端子と増幅器60の出力端子とを電気的に接続させるか否かを切り替え可能である。例えば、スイッチSW3は、2つの端子を有する。スイッチSW3の一方の端子は、増幅器60の反転入力端子に電気的に接続される。スイッチSW3の他方の端子は、増幅器60の出力端子に電気的に接続される。スイッチSW3は、制御部52からの制御信号に基づいて、オン状態又はオフ状態になる。スイッチSW3がオン状態になると、増幅器60の反転入力端子と増幅器60の出力端子とは、電気的に接続される。スイッチSW3がオフ状態になると、増幅器60の反転入力端子と増幅器60の出力端子とは、電気的に切り離される。
【0115】
スイッチSW4は、増幅器60の非反転入力端子を基準電位に電気的に接続させるか否かを切り替え可能である。例えば、スイッチSW4は、2つの端子を有する。スイッチSW4の一方の端子は、抵抗R6を介して増幅器60の非反転入力端子に電気的に接続される。スイッチSW4の他方の端子は、基準電位に電気的に接続される。スイッチSW4は、制御部52からの制御信号に基づいて、オン状態又はオフ状態になる。スイッチSW4がオン状態になると、増幅器60の非反転入力端子は、基準電位に電気的に接続される。スイッチSW4がオフ状態になると、増幅器60の非反転入力端子は、基準電位から電気的に切り離される。
【0116】
スイッチSW5は、増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させるか又は対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40に電気的に接続させるかを切り替え可能である。例えば、スイッチSW5は、3つの端子を有する。スイッチSW5の一端子は、増幅器60の出力端子に電気的に接続される。スイッチSW5の一端子は、対数増幅回路20の出力端子P3に電気的に接続される。スイッチSW5の一端子は、AD変換部40に電気的に接続される。スイッチSW5は、制御部52からの制御信号に基づいて、増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させるか又は対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40に電気的に接続させるかを切り替える。
【0117】
増幅器60の出力端子は、スイッチSW5に電気的に接続される。増幅器60の反転入力端子は、スイッチSW2及びスイッチSW3に電気的に接続される。増幅器60の非反転入力端子は、抵抗R6及び抵抗R7に電気的に接続される。
【0118】
抵抗R6及び抵抗R7の各々は、2つの端子を有する。抵抗R6及び抵抗7の各々は、固定抵抗を含んで構成される。抵抗R6の一方の端子は、増幅器60の非反転入力端子に電気的に接続される。抵抗R6の他方の端子は、スイッチSW4に電気的に接続される。抵抗R7の一方の端子は、増幅器60の非反転入力端子に電気的に接続される。抵抗R7の他方の端子は、DA変換部70に電気的に接続される。
【0119】
DA変換部70は、デジタル-アナログ変換部である。DA変換部70は、抵抗R7を介して増幅器60の非反転入力端子に電気的に接続される。DA変換部70には、制御部52からの制御信号がデジタル信号として入力される。DA変換部70は、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。DA変換部70は、アナログ信号を、抵抗R7を介して増幅器60の非反転入力端子に出力する。このようなDA変換部70によって後述第1モード又は第2モードに応じた電圧が増幅器60の非反転入力端子に入力される。
【0120】
オフセット抵抗R130は、2つの端子を有する。オフセット抵抗R130は、固定抵抗を含んで構成される。オフセット抵抗R130-1~R130-Nの各々の抵抗値は、異なる。例えば、オフセット抵抗R130の抵抗値は、オフセット抵抗R130-1からオフセット抵抗R130-Nに向けて10倍ずつ大きくなる。
【0121】
コンデンサC130は、2つの端子を有する。コンデンサC130は、オフセット抵抗R130に電気的に並列接続される。例えば、コンデンサC130の一方の端子は、オフセット抵抗R130の一方の端子に電気的に接続される。コンデンサC130の他方の端子は、オフセット抵抗R130の他方の端子に電気的に接続される。
【0122】
コンデンサC130は、後述の第2モードでは、増幅器60の帰還容量として機能する。コンデンサC130の容量値は、後述の第2モードにおける増幅器60の応答特性に基づいて、適宜設定されてよい。
【0123】
スイッチ部130は、オフセット抵抗R130-1~R130-Nのうちで増幅器60の出力端子とフォトダイオード10との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R130を切り替え可能である。また、スイッチ部130は、コンデンサC130-1~C130-Nのうちで増幅器60の出力端子とフォトダイオード10との間に電気的に接続させるコンデンサC130を切り替え可能である。スイッチ部130は、切り替えスイッチSW130-1~S130-Nを含む。
【0124】
以下、切り替えスイッチSW130-1~SW130-Nを特に区別しない場合、これらは、「切り替えスイッチSW130」とも記載される。
【0125】
切り替えスイッチSW130は、2つの端子を有する。切り替えスイッチSW130は、メカニカルリレー、フォトモスリレー又はアナログスイッチ等を含んで構成される。ただし、スイッチ部130は、アナログマルチプレクサとして構成されてもよい。スイッチ部130がアナログマルチプレクサとして構成される場合、切り替えスイッチSW130~S130-Nの各々の一方の端子が共通化される。
【0126】
以下、切り替えスイッチSW130-i(iは、1~Nまでの整数)に対応するオフセット抵抗R130及びコンデンサC130の各々は、「オフセット抵抗R130-i」及び「コンデンサC130-i」とも記載される。
【0127】
切り替えスイッチSW130-iの一方の端子は、増幅器60の出力端子に電気的に接続される。切り替えスイッチSW130-iの他方の端子は、オフセット抵抗R130-iの一方の端子及びコンデンサC130-iの一方の端子に電気的に接続される。オフセット抵抗R130-iの他方の端子及びコンデンサC130-iの他方の端子は、フォトダイオード10のアノードに電気的に接続される。ただし、切り替えスイッチSW130-iの一方の端子がフォトダイオード10のアノードに電気的に接続されてもよい。この場合、切り替えスイッチSW130-iの他方の端子がオフセット抵抗R130-iの一方の端子及びコンデンサC130-iの一方の端子に電気的に接続される。また、オフセット抵抗R130-iの他方の端子及びコンデンサC130-iの他方の端子は、増幅器60の出力端子に電気的に接続される。
【0128】
切り替えスイッチSW130には、制御部52からの制御信号が出力される。切り替えスイッチSW130は、制御部52からの制御信号に基づいて、オン状態又はオフ状態になる。切り替えスイッチSW130-iがオン状態になると、オフセット抵抗R130-i及びコンデンサC130-iは、増幅器60の出力端子とフォトダイオード10のアノードとの間に接続される。また、切り替えスイッチSW130-iがオフ状態になると、オフセット抵抗R130-i及びコンデンサC130-iは、増幅器60の出力端子とフォトダイオード10のアノードとの間から電気的に切り離される。
【0129】
光測定装置101は、第1モードと、第2モードとを有する。第1モードは、第1実施形態と同様に、図2に示すような対数増幅回路20の出力電圧値Vо1に基づいて被測定光の光強度を測定するモードである。第2モードは、以下に説明するように、増幅器60の出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度を測定するモードである。
【0130】
[第1モード]
制御部52は、光測定装置101のモードを切り替えるための入力を、入力部51によって受け付ける。この入力は、ユーザによって入力部51から入力される。制御部52は、この入力を入力部51によって受け付けると、光測定装置101のモードを第1モードに切り替える。
【0131】
制御部52は、スイッチSW1~SW4に制御信号を適宜出力し、光測定装置101の接続状態を第1モードに対応する接続状態に切り替える。第1モードでは、制御部52は、スイッチSW1をオン状態、スイッチSW2をオフ状態、スイッチSW3をオン状態及び第4スイッチをオフ状態にする。
【0132】
第1モードでは、スイッチSW1によってフォトダイオード10のアノードと入力端子P1とが電気的に接続され、スイッチSW2によってフォトダイオード10のアノードと増幅器60の反転入力端子とが電気的に切り離される。また、第1モードでは、スイッチSW3によって増幅器60の反転入力端子と増幅器60の出力端子とが電気的に接続され、スイッチSW4によって増幅器60の非反転入力端子が基準電位から電気的に切り離される。
【0133】
制御部52は、第1モードにおいて対数増幅回路20の出力電圧値Vо1を測定する際、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40から電気的に切り離し、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40に電気的に接続させる。このような構成により、制御部52は、出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定することができる。
【0134】
制御部52は、第1モードにおいて増幅器60の出力電圧値Vо2を測定する際、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。このような構成により、制御部52は、増幅器60の出力電圧値Vо2をAD変換部40によって測定することができる。
【0135】
第1モードでは、増幅器60の反転入力端子と増幅器60の出力端子とがスイッチSW3によって電気的に接続されることにより、増幅器60は、ボルテージフォロワとして機能する。増幅器60がボルテージフォロワとして機能することにより、増幅器60の出力電圧値Vо2は、増幅器60の非反転入力端子の電圧と等しくなる。増幅器60の非反転入力端子に入力される電圧は、DA変換部70、抵抗R6及び抵抗R7によって設定される。第1モードでは、DA変換部70が図1に示すような電圧源Vbとして機能する。増幅器60の出力電圧値Vо2は、増幅器60がボルテージフォロワとして機能することにより、図1に示すような電圧源Vbの電圧値VBに対応する。
【0136】
第1モードでは、スイッチ部130は、オフセット抵抗R130-1~R130-Nのうちで増幅器60の出力端子と入力端子P1との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R130を切り替え可能である。第1モードでは、スイッチ部130によって増幅器60の出力端子と入力端子P1との間に電気的に接続されたオフセット抵抗R130によって、オフセット電流iоffがスイッチSW1を介して入力端子P1に入力される。
【0137】
[第1モード:測定感度の設定処理]
制御部52は、例えば光スペクトラムの測定処理前に、第1モードの測定感度の入力を入力部51によって受け付ける。第1モードの測定感度は、第1モードにて設定される光測定装置101の測定感度である。第1モードの測定感度は、図3を参照して上述したようなものであってよい。
【0138】
第2実施形態では、記憶部50には、第1モードの測定感度と、第1モードのその測定感度に設定するためのスイッチ部130の切り替え情報と、第1モードのその測定感度に設定するためのDA変換部70に入力するデジタル信号の情報とが対応付けて記憶される。スイッチ部130の切り替え情報は、オン状態にする切り替えスイッチSW130の情報及びオフ状態にする切り替えスイッチSW130の情報を含む。
【0139】
制御部52は、第1モードの測定感度を入力部51によって受け付けると、第1モードの測定感度に対応付けられたスイッチ部130の切り替え情報と、DA変換部70に入力するデジタル信号の情報を、記憶部50から取得する。制御部52は、取得したデジタル信号の情報に基づいて、DA変換部70にデジタル信号を出力することにより、DA変換部70の出力電圧値を設定する。また、制御部52は、取得したスイッチ部130の切り替え情報に基づいて、第1実施形態のスイッチ部30と同様に、スイッチ部130を制御する。
【0140】
[第1モード:テーブル作成処理]
ところで、出力電圧値Vо1と電流値I1との実際の関係は、上記式(7)が表す関係からずれる場合がある。図11に、出力電圧値Vо1と電流値I1との関係を示すグラフを示す。図11では、横軸は、出力電圧値Vо1[V]である。また、縦軸は、電流値I1[A]である。図11において、破線は、上記式(7)によって算出される出力電圧値Vо1と電流値I1との関係を示す。実線は、実際の出力電圧値Vо1と電流値I1との関係を示す。図7に示すように、実線と破線との間には、ずれが生じている。このずれ量は、温度によって変化する。
【0141】
ここで、フォトダイオード10が遮光された状態では、光電流値Ipが0[A](Ip=0)となり、電流値I1がオフセット電流値Iоffと等しくなる(I1=Iоff)。さらに、第1モードでは、上述のように、増幅器60の出力電圧値Vо2は、図1に示すような電圧源Vbの電圧値VBに対応する。従って、第2実施形態では、制御部52は、フォトダイオード10が遮光されているときの増幅器60の出力電圧値Vо2をAD変換部40によって測定することにより、電流値I1を測定することができる。
【0142】
制御部52は、DA変換部70の出力電圧値を変化させること及びスイッチ部130を切り替えることによって、オフセット電流値Iоffすなわち電流値I1を設定する。制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、スイッチSW5を適宜切り替えることにより、フォトダイオード10が遮光されているときの出力電圧値Vо1と出力電圧値Vо2とをAD変換部40によって測定する。例えば、制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって、増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、増幅器60の出力電圧値Vо2をAD変換部40によって測定する。また、制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって、増幅器60の出力端子をAD変換部40から電気的に切り離し、且つ対数増幅回路20の出力端子P3とAD変換部40を電気的に接続させる。制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。
【0143】
制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、測定した出力電圧値Vо1と、測定した出力電圧値Vо2に基づいて算出される電流値I1とを対応づけることにより、図12に示すようなテーブルを生成する。制御部52は、測定した出力電圧値Vо2と式(11)とによって、オフセット電流値Iоffすなわち電流値I1を算出する。
Iоff=Vо2/Rs130 式(11)
式(11)において、抵抗値Rs130は、スイッチ部130によって増幅器60の出力端子と入力端子P1との間に電気的に接続されたオフセット抵抗R130の抵抗値である。
【0144】
図12に示すようなテーブルでは、出力電圧値Vо1には、AD変換部40によってデジタルデータとして測定される出力電圧値Vо1が用いられる。図12では、デジタルデータとしての出力電圧値Vо1のAAA、BBB及びCCCの各々と電流値I1のaaa、bbb及びcccの各々とが対応付けられている。制御部52は、生成したテーブルを記憶部50に記憶させる。
【0145】
ここで、DA変換部70の出力電圧値の変化及びスイッチ部130の切り替えによって設定可能なオフセット電流値Iоffの範囲は、+10[dBm]から-90[dBm]までの広範囲の光強度に対応する光電流値Ipと同じ範囲である。+10[dBm]から-90[dBm]までの光強度の範囲は、後述の第2モードの測定範囲と同程度である。制御部52は、広範囲で複数のオフセット電流値Iоffを設定し、設定したオフセット電流値Iоff毎に測定した出力電圧値Vо1及び出力電圧値Vо2によってテーブルを生成することができる。
【0146】
制御部52は、上記式(7)の代わりに生成したテーブルを用い、被測定光の光強度を算出することができる。上記式(7)によって算出される電流値I1は、上述のように実際の電流値I1からずれている。テーブルが用いられることにより、出力電圧値Vо1と電流値I1との実際の関係を用いて被測定光の光強度が算出される。このような構成により、被測定光の光強度が精度良く測定される。
【0147】
ここで、切り替えスイッチSW130-1~SW130-Nの全てがオフ状態である場合、オフセット電流値Iоffが0[A](Iоff=0)となり、電流値I1が光電流値Ipと等しくなる(I1=Ip)。光強度が既知である被測定光をフォトダイオード10に入力し、既知の被測定光の光強度から算出される光電流値Ipに対応する対数増幅回路20の出力電圧値Vо1を、被測定光の光強度を変化させながら測定することにより、テーブルを作成することも可能である。しかしながら、光強度が既知である被測定光をフォトダイオード10に入力することは、手間がかかる。また、被測定光を別途準備しなければ、上記式(7)によって算出される電流値I1と実際の電流値I1との間に生じるずれ量の温度に対する変化に対応することができない。このような構成に対し、本実施形態では、光強度が既知である被測定光をフォトダイオード10に入力することなく、フォトダイオード10を遮光した状態で、DA変換部70の出力電圧値を変化させること及びスイッチ部130を切り替えることにより、広範囲でIоffを設定することが可能である。さらに、本実施形態では、スイッチSW5を切り替えながら出力電圧値Vо1及び出力電圧値Vо2を測定することにより、テーブルを作成することができる。従って、本実施形態では、テーブルを容易に作成することができる。よって、本実施形態では、例えば光強度の測定処理の実行前又は定期的にテーブルを作成することにより、上記式(7)によって算出される電流値I1と実際の電流値I1との間に生じるずれ量の温度に対する変化にも対応することができる。
【0148】
なお、テーブルを作成するために、広範囲で複数のオフセット電流値Iоffを設定し、設定したオフセット電流値Iоff毎に、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1と増幅器60の出力電圧値Vо2とを測定することには、時間がかかる場合がある。ここで、上記式(7)によって算出される電流値I1と実際の電流値I1との間に生じるずれ量の温度に対する変化は、出力電圧値Vо1のドリフトが支配的である。そこで、制御部52は、一つのオフセット電流値Iоffの設定に対して、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1と、増幅器60の出力電圧値Vо2とを測定してよい。さらに、制御部52は、測定した出力電圧値Vо2と上記式(11)とにより算出されるオフセット電流値Ioffに対応した出力電圧値Vо1をテーブルから算出する。制御部52は、算出した出力電圧値Vо1と測定した出力電圧値Vо1との差分を算出し、この差分をテーブルの出力電圧値Vо1の各々に加算する。この差分をテーブルの出力電圧値Vо1の各々に加算することにより、上記ドリフトによるずれ量の変化をテーブルに反映することができる。このような構成により、テーブルを作成する時間を短縮することができる。ここで、DA変換部70の出力電圧値と、スイッチ部130により設定されるオフセット電流値Iоffとは、電流値I2と同じ値であってよい。
【0149】
[第1モード:オフセット電流値の測定処理]
制御部52は、第1実施形態と同様に、例えば光強度の測定処理の実行前又は定期的に、オフセット電流値Iоff1を測定する。第2実施形態では、制御部52は、DA変換部70に各測定感度に対応する出力電圧値を出力させ、且つスイッチ部130によって各測定感度に対応するオフセット電流値Iоffを設定していきながら、フォトダイオード10が遮光されているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。制御部52は、増幅器60の出力端子と入力端子P1との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R130を切り替えることにより、各測定感度に対応するオフセット電流値Iоffを設定する。制御部52は、測定感度毎のオフセット電流値Iоff1を、出力電圧値Vо1と上記テーブルにより算出する。制御部52は、測定感度に対応付けたオフセット電流値Iоff1を記憶部50に記憶させる。ただし、制御部52は、第1実施形態と同様に、出力電圧値Vо1と、上記式(6)からオフセット電流値Iоff1を算出してもよい。
【0150】
[第1モード:光強度の測定処理]
制御部52は、光強度の測定処理を実行する前に、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40から電気的に切り離し、且つ対数増幅回路20の出力端子P3とAD変換部40を電気的に接続させる。
【0151】
制御部52は、被測定光がフォトダイオード10に入射しているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。制御部52は、測定した出力電圧値Vо1と、記憶部50に記憶された図12に示すようなテーブルと、測定感度に対応付けられたオフセット電流値Iоff1と、上記式(8)及び上記式(9)とによって、被測定光の光強度を算出する。つまり、制御部52は、上記式(7)の代わりに図12に示すようなテーブルを用いて被測定光の光強度を算出する。このような構成により、上述のように、被測定光の光強度が精度良く測定される。ただし、制御部52は、第1実施形態と同様に、出力電圧値Vо1と、上記式(7)から上記式(9)とによって、被測定光の光強度を算出してもよい。
【0152】
[第2モード]
制御部52は、光測定装置101のモードを第2モードに切り替えるための入力を、入力部51によって受け付ける。この入力は、ユーザによって入力部51から入力される。制御部52は、この入力を入力部51によって受け付けると、光測定装置101のモードを第2モードに切り替える。
【0153】
制御部52は、スイッチSW1~SW4に制御信号を適宜出力し、光測定装置101の接続状態を第2モードに対応する接続状態に切り替える。第2モードでは、制御部52は、スイッチSW1をオフ状態、スイッチSW2をオン状態、スイッチSW3をオフ状態及び第4スイッチをオン状態にする。
【0154】
第2モードでは、スイッチSW1によってフォトダイオード10のアノードと入力端子P1とが電気的に切り離され、スイッチSW2によってフォトダイオード10のアノードと増幅器60の反転入力端子とが電気的に接続される。また、第2モードでは、スイッチSW3によって増幅器60の反転入力端子と増幅器60の出力端子とが電気的に切り離され、スイッチSW4によって増幅器60の非反転入力端子が基準電位に電気的に接続される。
【0155】
制御部52は、第2モードにおいて増幅器60の出力電圧値Vо2を測定する際、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。このような構成により、制御部52は、増幅器60の出力電圧値Vо2をAD変換部40によって測定することができる。
【0156】
第2モードでは、スイッチ部130は、オフセット抵抗R130-1~R130-Nのうちで増幅器60の出力端子と増幅器60の反転入力端子との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R130を切り替え可能である。増幅器60の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されたオフセット抵抗R130と、増幅器60とは、リニア増幅器を構成する。つまり、増幅器60の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されたオフセット抵抗R130は、増幅器60の帰還抵抗として機能する。以下、第2モードにおいて増幅器60の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されたオフセット抵抗R130の抵抗値は、「帰還抵抗値Rf130」とも記載される。
【0157】
第2モードでは、スイッチ部130は、コンデンサC130-1~C130-Nのうちで増幅器60の出力端子と増幅器60の反転入力端子との間に電気的に接続させるコンデンサC130を切り替え可能である。増幅器60の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されたコンデンサC130は、増幅器60の帰還容量として機能する。以下、第2モードにおいて増幅器60の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されたコンデンサC130の容量値は、「帰還容量値Cf130」とも記載される。
【0158】
[第2モード:測定感度の設定処理]
制御部52は、例えば光スペクトラムの測定の実行前に、第2モードの測定感度の入力を入力部51によって受け付ける。第2モードの測定感度は、第2モードにおいて設定される光測定装置101の測定感度である。
【0159】
第2モードでは、増幅器60の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されたオフセット抵抗R130の抵抗値すなわち帰還抵抗値Rf130によって、光測定装置101の測定感度が変化する。帰還抵抗値Rf130が高くなるほど、光測定装置101の測定感度が高くなりなり、光測定装置101の雑音レベルが小さくなる。しかしながら、帰還抵抗値Rf130が高くなるほど、増幅器60の応答速度が低下するため、光測定装置101の測定速度が低下する。また、増幅器60のカットオフ周波数fcは、式(12)によって表される。
【0160】
fc=1/(2π×Rf130×Cf130) 式(12)
式(12)において、帰還容量値Cf130は、上述のように、増幅器60の出力端子と反転入力端子との間に電気的に接続されたコンデンサC130すなわち帰還容量の容量値である。
【0161】
式(12)から、帰還抵抗値Rf130が低くなるほどカットオフ周波数fcが高くなり、増幅器60の周波数帯域が広帯域になることが分かる。また、帰還容量値Cf130が小さくなるほどカットオフ周波数fcが高くなり、増幅器60の周波数帯域が広帯域になることが分かる。ただし、帰還容量値Cf130が小さくなると、増幅器60の高周波雑音が大きくなる。従って、本実施形態では、帰還容量値Cf130をある程度の値に制限し、帰還抵抗値Rf130によってカットオフ周波数fcが調整される。
【0162】
まとめると、第2モードでは、帰還抵抗値Rf130がより高くなるほど、第2モードの測定感度がより高くなる。第2モードの測定感度がより高くなるほど、増幅器60の周波数帯域がより狭帯域になり、光測定装置101の測定速度がより低速になる。また、第2モードでは、帰還抵抗値Rfがより低くなるほど、第2モードの測定感度がより低くなる。第2モードの測定感度がより低くなるほど、増幅器60の周波数帯域がより広帯域になり、光測定装置101の測定速度がより高速になる。
【0163】
そこで、第2モードでは、入力部51によって受け付けた第2モードの測定感度毎に、最大の帰還抵抗値Rf130が設定される。この最大の帰還抵抗値Rf130を超えないように、増幅器60の出力電圧値Vо2に基づいて帰還抵抗値Rf130が調整される。なお、最大の帰還抵抗値Rf130のデータは、第2モードの測定感度に対応付けて記憶部50に記憶されてよい。
【0164】
ここで、第2モードでは、光強度の測定処理にて後述するように、増幅器60の出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度が算出される。この出力電圧値Vо2は、被測定光の光強度が大きくなるほど、大きくなる。出力電圧値Vо2がある程度大きくなると、リニア増幅器の電源電圧が制限されていることにより、この出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度を精度良くできない場合がある。つまり、第2モードでは、被測定光の光強度がある程度大きい場合、帰還抵抗値Rf130を小さくし、出力電圧値Vо2を小さくすることが望まれる。
【0165】
一例として、制御部52は、後述の光強度の測定処理において、増幅器60の出力電圧値Vо2をAD変換部40によって測定する。この際、制御部52は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲内であるか否か判定する。所定範囲の上限値は、増幅器60の出力電圧値Vо2の最大の定格電圧値に基づいて設定されてもよいし、又は光強度の測定精度を保証する出力電圧値Vо2の絶対値の最大値に基づいて設定されてもよい。所定範囲の下限値は、現在の帰還抵抗値Rf130より1段階高い帰還抵抗値Rf130と所定範囲の上限値とに基づいて設定されてもよいし、又は光強度の測定精度を保証する出力電圧値Vо2の絶対値の最小値に基づいて設定されてもよい。
【0166】
制御部52は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲内であると判定した場合、光強度の測定処理にて後述すように、出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度を測定する。
【0167】
一方、制御部52は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を超えると判定した場合、スイッチ部130を制御して現在の帰還抵抗値Rf130を1段階低い帰還抵抗値Rf130に切り替える。出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を超える場合、リニア増幅器の電源電圧が制限されることにより、その出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度を精度良く算出できない可能性が高い。出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を超える場合に現在の帰還抵抗値Rf130を1段階低い帰還抵抗値Rf130に切り替えることにより、出力電圧値Vо2を現在の電圧値よりも小さくすることができる。このような構成により、帰還抵抗値Rf130を切り替えた後の出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度が精度良く算出される。
【0168】
また、制御部52は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を下回ると判定した場合、スイッチ部130を制御して現在の帰還抵抗値Rf130を1段階高い帰還抵抗値Rf130に切り替える。出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を下回る場合、雑音等の影響によって、その出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度を精度良く算出できない可能性が高い。出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を下回る場合に現在の帰還抵抗値Rf130を1段階高い帰還抵抗値Rf130に切り替えることにより、光測定装置101の測定感度が現在の測定感度よりも高くなる。このような構成により、帰還抵抗値Rf130を切り替えた後の出力電圧値Vо2に基づいて被測定光の光強度が精度良く算出される。
【0169】
[第2モード:光強度の測定処理]
制御部52は、光強度の測定処理を実行する前に、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。
【0170】
制御部52は、フォトダイオード10に被測定光が入射しているときの増幅器60の出力電圧値Vо2をAD変換部40によって測定する。出力電圧値Vо2と、光電流値Ipとの関係は、式(13)によって表される。
Vо2=-Rf130×Ip+Vоff 式(13)
式(13)において、帰還抵抗値Rf130は、上述したように、増幅器60の出力端子と増幅器60の反転入力端子との間に電気的に接続されたオフセット抵抗R130の抵抗値である。電圧値Vоffは、増幅器60の反転入力端子と非反転入力端子との間の電位差が0[V]であるときの増幅器60の出力電圧値Vо2すなわち増幅器60の出力オフセット電圧値である。
【0171】
式(13)の電圧値Vоffを低減させるために、図10に示す構成では、増幅器60の非反転入力端子に、DA変換部70が出力する電圧を抵抗R6と抵抗R7によって分圧させた電圧が入力される。電圧値Vоffは、数[mV]程度である。抵抗R6の抵抗値が例えば数[Ω]程度に設定され、抵抗R7の抵抗値は、抵抗R6の抵抗値よりも十分に大きくなるように設定される。また、電圧値Vоffは、後述のように、帰還抵抗値Rf130に対応付けて記憶部50に記憶される。
【0172】
制御部52は、記憶部50から取得した電圧値Vоffと、測定した出力電圧値Vо2と、式(13)とによって、光電流値Ipを算出する。制御部52は、算出した光電流値Ipと上記式(9)とによって、被測定光の光強度Pinを算出する。
【0173】
ここで、ユーザは、パルス光の光強度を測定したい場合、光測定装置101のモードを第2モードに切り替えるための入力を入力部51から入力することにより、光測定装置101のモードを第2モードに切り替えることができる。第2モードにおけるリニア増幅器では、例えば対数増幅器よりも、パルス光の光強度の時間平均値を容易に測定することができる。例えば、リニア増幅器では、リニア増幅器の帰還容量値Cf130を大きくすることにより、パルス光の光強度の時間平均値を測定することができる。この場合、第2モードにおいて、制御部52は、パルス光の周期に応じた帰還容量値Cf130を有するコンデンサC130をスイッチ部130によって増幅器60の出力端子と増幅器60の反転入力端子との間に電気的に接続させてよい。また、増幅器60の出力端子とAD変換部40との間に低域通過濾波器が設けられてもよい。低域通過濾波器を介して増幅器60の出力電圧値をAD変換部40によって測定することにより、パルス光の光強度の時間平均値を測定することができる。
【0174】
また、第1モードにおける対数増幅器の1/f雑音は、第2モードにおけるリニア増幅器の1/f雑音よりも大きくなる場合がある。その結果、第1モードでは第2モードほど、光測定装置101の測定感度を高感度にできない場合がある。この場合、ユーザは、被測定光の光強度が小さいために光測定装置101の測定感度をより高感度に設定したい場合、光測定装置101のモードを第2モードに切り替えることができる。
【0175】
[第2モード:電圧値Vоeの調整処理及び電圧値Vоffの測定処理]
フォトダイオード10が遮光された状態である場合、上記式(13)は、式(14)のように表される。
Vо2=Vоff 式(14)
【0176】
式(14)から、フォトダイオード10が遮光された状態であるときの増幅器60の出力電圧値Vо2を測定することにより、電圧値Vоffを測定することができることが分かる。
【0177】
ここで、電圧値Vоffは、式(15)によって表される。
Vоff=(1+Rf130/Rpd)×
(Vоe+r6/(r6+r7)×Vо3) 式(15)
式(15)において、電圧値Vоeは、増幅器60の入力オフセット電圧値である。抵抗値Rpdは、フォトダイオード10の並列抵抗値である。抵抗値r6は、抵抗R6の抵抗値である。抵抗値r7は、抵抗R7の抵抗値である。出力電圧値Vо3は、DA変換部70が出力する出力電圧値である。
【0178】
制御部52は、電圧値Vоeを打ち消すようにDA変換部70の出力電圧値を調整してよい。例えば、帰還抵抗値Rf130が最小値であるとき、リニア増幅器のノイズゲインの影響が小さくなることにより、電圧値Vоffと電圧値Vоeとの対応関係は、式(16)によって表せられる。
【0179】
Vоff≒Vоe+r6/(r6+r7)×Vо3 式(16)
式(16)から分かるように、帰還抵抗値Rf130が最小値であるとき、電圧値Vоffを測定することにより、電圧値Vоeを打ち消すための出力電圧値Vо3を求めることが可能となる。
【0180】
制御部52は、スイッチ部130を制御して帰還抵抗値Rf130を最小値にし、フォトダイオード10が遮光された状態であるときの増幅器60の出力電圧値Vо2すなわち電圧値VоffをAD変換部40によって測定する。制御部52は、式(16)より電圧値Vоffを0[V]にするためのDA変換部70の出力電圧値Vо3を算出する。制御部52は、算出した出力電圧値Vо3をDA変換部70に出力させるためにDA変換部70に入力するデジタル信号を特定する。制御部52は、このデジタル信号をDA変換部70に入力することにより、電圧値Vоeを打ち消す。制御部52は、このデジタル信号の情報を記憶部50に記憶させる。
【0181】
このような構成により、帰還抵抗値Rf130が最小値であるとき、電圧値Vоffは、0[V]からの誤差が小さくなる。しかしながら、帰還抵抗値Rf130が最小値以外であるとき、電圧値Vоffは、ノイズゲインにより誤差が増幅されるため、0[V]からの誤差が大きくなる。
【0182】
そこで、制御部52は、スイッチ部130を切り替えながら帰還抵抗値Rf130毎に、フォトダイオード10が遮光された状態であるときの増幅器60の出力電圧値Vо2すなわち電圧値VоffをAD変換部40によって測定する。制御部52は、測定した電圧値Vоffと、その電圧値Vоffを測定したときの帰還抵抗値Rf130とを対応付けて記憶部50に記憶させる。制御部52は、測定した電圧値Vоffと、その電圧値Vоffを測定したときの帰還抵抗値Rf130に設定するためのスイッチ部130の切り替え情報とを対応付けて、記憶部50に記憶させる。
【0183】
なお、制御部52は、電圧値Vоeを打ち消すようにDA変換部70の出力電圧値Vо3を調整しなくてもよい。この場合、制御部52は、上述したように、帰還抵抗値Rf130毎の電圧値Vоffを測定し、測定した電圧値Vоffと、その電圧値Vоffを測定したときの帰還抵抗値Rf130とを対応付けて記憶部50に記憶させる。
【0184】
制御部52は、定期的に、電圧値Vоeを打ち消すようにDA変換部70の出力電圧値Vо3を調整してよい。また、制御部52は、定期的に、帰還抵抗値Rf130毎の電圧値Vоffを測定してよい。電圧値Vоeは、光測定装置101の温度に応じて変化する。電圧値Vоeを打ち消すように定期的にDA変換部70の出力電圧値Vо3が調整されることにより、第2モードにおいて被測定光の光強度が精度良く測定される。また、帰還抵抗値Rf130毎の電圧値Vоffが定期的に測定されることにより、第2モードにおいて被測定光の光強度が精度良く測定される。
【0185】
[光測定装置の動作]
図13及び図14は、図10に示す光測定装置101の光測定方法の一例を示すフローチャートである。光測定方法は、制御部52等のプロセッサに実行させる光測定プログラムとして実現されてもよい。光測定プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。制御部52は、光測定装置101のモードを切り替えるための入力を入力部51によって検出すると、図13に示すようなステップS20の処理を開始する。
【0186】
ステップ20の処理において、制御部52は、光測定装置101のモードを切り替えるための入力を、入力部51によって受け付ける。制御部52は、この入力が第1モードに切り替えるための入力であるか否か判定する(ステップS21)。制御部52は、この入力が第1モードに切り替えるための入力であると判定する場合(ステップS21:Yes)、ステップS22の処理に進む。一方、制御部52は、この入力が第2モードに切り替えるための入力であると判定する場合(ステップS21:Nо)、ステップS32の処理に進む。
【0187】
ステップS22の処理において、制御部52は、スイッチSW1~SW4に制御信号を適宜出力し、光測定装置101の接続状態を第1モードに対応する接続状態に切り替える。
【0188】
ステップS23の処理において、制御部52は、第1モードの測定感度の入力を入力部51によって受け付ける。
【0189】
ステップS24の処理の実行前に、フォトダイオード10は、遮光された状態にされる。ステップS24の処理において、制御部52は、DA変換部70の出力電圧値を変化させること及びスイッチ部130を切り替えることによって、オフセット電流値Iоffすなわち電流値I1を設定する。制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、スイッチSW5を適宜切り替えることにより、フォトダイオード10が遮光されているときの出力電圧値Vо1と出力電圧値Vо2とをAD変換部40によって測定する。
【0190】
ステップS25の処理において、制御部52は、設定したオフセット電流値Iоff毎に、ステップS24の処理で測定した出力電圧値Vо1と、ステップS24の処理で測定した出力電圧値Vо2に基づいて算出される電流値I1とを対応付けることにより、図12に示すようなテーブルを生成する。制御部52は、測定した出力電圧値Vо2と上記式(11)とによって、オフセット電流値Iоffすなわち電流値I1を算出する。
【0191】
ステップS26の処理において、制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40から電気的に切り離し、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40に電気的に接続させる。
【0192】
ステップS27の処理の実行前に、フォトダイオード10は、遮光された状態にされる。ステップS27の処理において、制御部52は、各測定感度に設定するためのスイッチ部130の切り替え情報と各測定感度に設定するためのDA変換部70に入力するデジタル信号の情報を、記憶部50から取得する。制御部52は、取得した情報に基づいて、DA変換部70に各測定感度に対応する出力電圧値を出力させ、且つスイッチ部130によって各測定感度に対応するオフセット電流値Iоffを設定していきながら、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。
【0193】
ステップS28の処理において、制御部52は、オフセット電流値Iоff1を、ステップS27の処理で測定した出力電圧値Vо1とステップS25の処理で生成したテーブルとによって算出する。制御部52は、第1モードの各測定感度に対応付けたオフセット電流値Iоff1を記憶部50に記憶させる。
【0194】
ステップS29の処理において、制御部52は、ステップS23の処理で受け付けた第1モードの測定感度に設定するためのスイッチ部130の切り替え情報と、その第1モードの測定感度に設定するためのDA変換部70に入力するデジタル信号の情報を、記憶部50から取得する。制御部52は、取得した情報に基づいて、DA変換部70とスイッチ部130を制御する。
【0195】
ステップS30の処理の実行前に、フォトダイオード10は、被測定光がフォトダイオード10を透過することが可能な状態にされる。ステップS30の処理では、光波長を掃引させながら被測定光がフォトダイオード10に入力される。ステップS30の処理において、制御部52は、被測定光がフォトダイオード10に入射しているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。
【0196】
ステップS31の処理において、制御部52は、ステップS30の処理で測定した出力電圧値Vо1と、ステップS25の処理で生成したテーブルと、上記式(8)及び上記式(9)とによって、被測定光の光強度を算出する。
【0197】
ステップS32の処理において、制御部52は、スイッチSW1~SW4に制御信号を適宜出力し、光測定装置101の接続状態を第2モードに対応する接続状態に切り替える。
【0198】
ステップS33の処理において、制御部52は、第2モードの測定感度の入力を入力部51によって受け付ける。
【0199】
ステップS34の処理において、制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。
【0200】
ステップS35の処理の実行前に、フォトダイオード10は、遮光された状態にされる。ステップS35の処理において、制御部52は、スイッチ部130を制御して帰還抵抗値Rf130を最小値にし、フォトダイオード10が遮光された状態であるときの増幅器60の出力電圧値Vо2すなわち電圧値VоffをAD変換部40によって測定する。ステップS35の処理において、制御部52は、電圧値Vоffを0[V]にするためにDA変換部70に入力するデジタル信号を特定する。制御部52は、特定したデジタル信号をDA変換部70に入力することにより、電圧値Vоeを打ち消す。
【0201】
ステップS36の処理の実行前に、フォトダイオード10は、遮光された状態にされる。ステップS36の処理において、制御部52は、スイッチ部130を切り替えながら帰還抵抗値Rf130毎に、フォトダイオード10が遮光された状態であるときの増幅器60の出力電圧値Vо2すなわち電圧値VоffをAD変換部40によって測定する。
【0202】
ステップS37の処理において、制御部52は、ステップS33の処理で受け付けた第2モードの測定感度に対応付けられた最大の帰還抵抗値Rf130のデータを記憶部50から取得する。制御部52は、スイッチ部130を制御して帰還抵抗値Rf130を、最小の帰還抵抗値Rf130と取得した最大の帰還抵抗値Rf130との間の中間値の帰還抵抗値Rf130にする。この最小の帰還抵抗値Rf130は、オフセット抵抗R130で設定可能な帰還抵抗値Rf130のうちで最小の帰還抵抗値Rf130である。
【0203】
ステップS38の処理の実行前に、フォトダイオード10は、被測定光がフォトダイオード10を透過することが可能な状態にされる。また、ステップS38の処理の実行前に、制御部52は、ステップS35の処理で特定したデジタル信号をDA変換部70に出力する。ステップS38の処理では、被測定光がフォトダイオード10に入力される。ステップS38の処理において、制御部52は、被測定光がフォトダイオード10に入射しているときの増幅器60の出力電圧値Vо2をAD変換部40によって測定する。
【0204】
制御部52は、ステップS38の処理の実行後、図14に示すようなステップS39の処理に進む。
【0205】
ステップS39の処理において、制御部52は、ステップS38の処理で測定した出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲内であるか否か判定する。制御部52は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲内であると判定した場合(ステップS39:Yes)、ステップS40の処理に進む。一方、制御部39は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲外であると判定した場合(ステップS39:Nо)、ステップS41の処理に進む。
【0206】
ステップS40の処理において、制御部52は、ステップS36の処理で測定した電圧値Vоffと、測定した出力電圧値Vо2と、上記式(13)とによって光電流値Ipを算出する。ステップS40の処理において、制御部52は、光電流値Ipと上記式(9)とによって被測定光の光強度Pinを算出する。
【0207】
ステップS41の処理において、制御部52は、ステップS38の処理で測定した出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を超えるか否か判定する。制御部52は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を超えると判定する場合(ステップS41:Yes)、ステップS42の処理に進む。一方、制御部52は、出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を超えると判定しない場合(ステップS41:No)すなわち出力電圧値Vо2の絶対値が所定範囲を下回る場合、ステップS44の処理に進む。
【0208】
ステップS42の処理において、制御部52は、現在の帰還抵抗値Rf130が最小の帰還抵抗値Rf130であるか否か判定する。制御部52は、現在の帰還抵抗値Rf130が最小の帰還抵抗値Rf130あると判定した場合(ステップS42:Yes)、ステップS40の処理に進む。一方、制御部52は、現在の帰還抵抗値Rf130が最小の帰還抵抗値Rf130とではないと判定した場合(ステップS42:Nо)、ステップS43の処理に進む。
【0209】
ステップS43の処理において、制御部52は、スイッチ部130を制御して現在の帰還抵抗値Rf130を1段階低い帰還抵抗値Rf130に切り替える。ステップS43の処理を実行した後、制御部52は、ステップS38の処理に戻る。
【0210】
ステップS44の処理において、制御部52は、現在の帰還抵抗値Rf130がステップS37の処理で取得した最大の帰還抵抗値Rf130であるか否か判定する。制御部52は、現在の帰還抵抗値Rf130が最大の帰還抵抗値Rf130であると判定した場合(ステップS44:Yes)、ステップS40の処理に進む。一方、制御部52は、現在の帰還抵抗値Rf130が最大の帰還抵抗値Rf130とではないと判定した場合(ステップS44:Nо)、ステップS45の処理に進む。
【0211】
ステップS45の処理において、制御部52は、スイッチ部130を制御して現在の帰還抵抗値Rf130を1段階高い帰還抵抗値Rf130に切り替える。ステップS45の処理を実行した後、制御部52は、ステップS38の処理に戻る。
【0212】
なお、制御部52は、例えばステップS24~S25、ステップS26~S28及びステップS35,S36の各々の処理を事前に実行していれば、ステップS24~S25、ステップS26~S28及びステップS35,S36の各々の処理を実行しなくてもよい。
【0213】
また、制御部52は、ステップS24~S25、ステップS26~S28及びステップS35,S36の処理を任意のタイミングで定期的に実行してもよい。ステップS24~S25,S26~S28,S35,S36を実行する際に、第1実施形態にて上述したように、ユーザが手動でフォトダイオード10を遮光してもよいし、フォトダイオード10が自動的に遮光させるように光測定装置101が構成されてもよい。
【0214】
以上のように第2実施形態では、オフセット抵抗R130をオフセット電流値Iоffの調整に用いるとともに増幅器60の帰還抵抗として用いることができる。このような構成により、コスト削減及び実装面積の削減を実現しつつ、対数増幅器及びリニア増幅器の両方を構成することができる光測定装置101が提供される。また、光測定装置101が第1モード及び第2モードを有することにより、例えばユーザは、被測定光に応じて光測定装置101のモードを第1モード又は第2モードに適宜切り替えることができる。
【0215】
第2実施形態に係る光測定装置101のその他の構成及び効果は、第1実施形態に係る光測定装置1の構成及び効果と同様である。
【0216】
(第3実施形態)
図15に示すように、光測定装置201は、フォトダイオード10と、対数増幅回路20と、抵抗R5と、抵抗R6と、抵抗R7と、AD変換部40と、演算装置2と、増幅器60と、DA変換部70と、スイッチSW1と、スイッチSW2と、スイッチSW3と、スイッチSW4と、スイッチSW5と、スイッチ部130と、オフセット抵抗R130-1~R130-Nと、コンデンサC130-1~C130-Nとを備える。光測定装置201は、トランジスタT3と、抵抗R8と、スイッチSW6(第5スイッチ)とを備える。
【0217】
トランジスタT3は、ディプレッション型のNチャネル電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。トランジスタT3は、例えば、ディプレッション型のNチャネル接合型電界効果トランジスタ(JFET:Junction Field Effect Transistor)である。ただし、トランジスタT3は、ディプレッション型のNチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってもよい。
【0218】
トランジスタT3のゲートは、対数増幅回路20の入力端子P1に電気的に接続される。トランジスタT3のドレインは、電圧源Vccに電気的に接続される。電圧源Vccは、電圧値VCCの電圧を供給する。電圧値VCCは、正の電圧値である。トランジスタT3のドレインには、電圧値VCCの電圧が入力される。トランジスタT3のソースは、抵抗R8を介して電圧源Veeに電気的に接続される。電圧源Veeは、電圧値VEEの電圧を供給する。電圧値VEEは、負の電圧値である。トランジスタT3のソースには、電圧値VEEの電圧が抵抗R8を介して入力される。なお、トランジスタT3において、ドレインとソースは機能的に区別できない。したがって、本実施形態の説明において、トランジスタT3のドレインとソースとを入れ替えても、トランジスタT3は入れ替える前と同様の機能を有する。
【0219】
抵抗R8は、2つの端子を有する。抵抗R8は、固定抵抗を含んで構成される。抵抗8の一方の端子は、トランジスタT3のソースに電気的に接続される。抵抗R8の他方の端子は、電圧源Veeに電気的に接続される。抵抗R8の抵抗値は、トランジスタT3の所望のソース電圧値に基づいて、適宜設定される。
【0220】
スイッチSW6は、メカニカルリレー、フォトモスリレー又はアナログスイッチ等を含んで構成される。スイッチSW6は、アナログマルチプレクサとして構成されてもよい。
【0221】
スイッチSW6は、フォトダイオード10のカソードを基準電位に電気的に接続させるか又はトランジスタT3のソースに電気的に接続させるかを切り替え可能である。例えば、スイッチSW6は、3つの端子を有する。スイッチSW6の一端子は、フォトダイオード10のカソードに電気的に接続される。スイッチSW6の一端子は、トランジスタT3のソースに電気的に接続される。スイッチSW6の一端子は、基準電位に電気的に接続される。スイッチSW6は、制御部52からの制御信号に基づいて、フォトダイオード10のカソードを基準電位に電気的に接続させるか又はトランジスタT3のソースに電気的に接続させるかを切り替える。
【0222】
光測定装置201は、第2実施形態と同様に、第1モードと、第2モードとを有する。
【0223】
[第1モード]
制御部52は、第2実施形態と同様に、光測定装置201のモードを第1モードに切り替えるための入力を入力部51によって受け付ける。制御部52は、この入力を受け付けると、スイッチSW1~SW4に制御信号を適宜出力し、第2実施形態と同様に、光測定装置201の接続状態を第1モードに対応する接続状態に切り替える。
【0224】
制御部52は、第2実施形態と同様に、第1モードにおいて対数増幅回路20の出力電圧値Vо1を測定する際、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40から電気的に切り離し、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40に電気的に接続させる。
【0225】
制御部52は、第2実施形態と同様に、第1モードにおいて増幅器60の出力電圧値Vо2を測定する際、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。
【0226】
[第1モード:光強度の測定処理]
制御部52は、第2実施形態と同様に、光強度の測定処理を実行する前に、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40から電気的に切り離し、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40に電気的に接続させる。
【0227】
第3実施形態では、制御部52は、光強度の測定処理を実行する前に、スイッチSW6に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW6に制御信号を出力し、スイッチSW6によってフォトダイオード10のカソードを基準電位から電気的に切り離し、且つフォトダイオード10のカソードをトランジスタT3のソースに電気的に接続させる。
【0228】
トランジスタT3のゲートは、スイッチSW1を介してフォトダイオード10のアノードに電気的に接続される。トランジスタT3のソースは、スイッチSW6を介してフォトダイオード10のカソードに電気的に接続される。フォトダイオード10のカソードに対するアノードの電圧値は、トランジスタT3のソースに対するゲートの電圧値と同じになる。ここで、トランジスタT3は、ディプレッション型のトランジスタであることにより、トランジスタT3のソースに対するゲートの電圧値が負の電圧値であるときも、オンすることができる。このような構成により、フォトダイオード10に逆バイアスを入力することができる。また、フォトダイオード10に入力される逆バイアスは、トランジスタT3のソースに対するゲートの電圧値に維持される。つまり、トランジスタT3は、ブートストラップ回路として機能する。
【0229】
このようにフォトダイオード10に入力される逆バイアスがトランジスタT3のソースに対するゲートの電圧値に維持されることにより、対数増幅回路20の入力端子P1から観たフォトダイオード10の静電容量値が等価的に小さくなる。フォトダイオード10の静電容量値が等価的に小さくなることにより、図16を参照して以下に説明するようなリカバリタイムが低減される。
【0230】
図16に、図15に示す対数増幅回路20の出力電圧値Vо1の波形を示す。図16では、横軸は、時間[msec]である。また、縦軸は、出力電圧値Vо1[V]である。時間0[msec]で、電流値I1は、10[mA]から10[nA]に急激に低下する。
【0231】
波形W5は、トランジスタT3を備えない光測定装置における出力電圧値Vо1の波形である。波形W6は、トランジスタT3を備える光測定装置201における出力電圧値Vо1の波形である。
【0232】
電流値I1が急激に低下した場合、図2に示すような増幅器21が電流値I1の急激な変化に応答できず、図2に示すようなトランジスタT1のコレクタからエミッタに電流が流れ続けてしまう場合がある。トランジスタT1のコレクタからエミッタに電流が流れ続けてしまうと、入力端子P1に入力される電圧値が負になる。入力端子P1に入力される電圧値が負になると、トランジスタT1のエミッタからコレクタに流れる電流が非常に小さいことにより、増幅器21の出力電圧値Va1は、正の電圧値に飽和する。増幅器21の出力電圧値Va1が正の電圧値に飽和すると、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1は、負の電圧値に飽和する。
【0233】
出力電圧値Vо1が負の電圧値に飽和すると、トランジスタT3を備えない光測定装置では、波形W5のように出力電圧値Vо1が電流値I1に対応した電圧値に回復するまでのリカバリタイムが必要になる。波形W5のリカバリタイムは、0.2[msec]程度である。
【0234】
これに対し、本実施形態では、トランジスタT3によってフォトダイオード10の静電容量値を等価的に小さくすることができるため、波形W6のようにリカバリタイムが低減される。
【0235】
ここで、オフセット電流値Iоffを大きくすることにより、リカバタイムを低減することができる。しかしながら、オフセット電流値Iоffを大きくすると、対数増幅回路20の雑音が大きくなる場合がある。本実施形態では、オフセット電流値Iоffを大きくすることなく、トランジスタT3を追加することによりリカバリタイムを低減することができる。このような構成により、対数増幅回路20の雑音が大きくなることを抑制しつつ、リカバリタイムを低減することができる。
【0236】
また、フォトダイオード10の受光面積を小さくしてフォトダイオード10の静電容量値を小さくすることにより、リカバリタイムを低減することができる。しかしながら、フォトダイオード10の受光面積を小さくすると、フォトダイオード10への被測定光の結合効率が低下する。本実施形態では、フォトダイオード10の受光面積を小さくすることなく、トランジスタT3を追加することによりリカバリタイムを低減することができる。このような構成により、フォトダイオード10への被測定光の結合効率が低下することを抑制しつつ、リカバリタイムを低減することができる。
【0237】
[第1モード:測定感度の設定処理]
トランジスタT3のソース電圧値は、トランジスタT3の電流特性及び抵抗R8の抵抗値によって決まる。例えば、トランジスタT3のソース電圧値は、1[V]程度となる。トランジスタT3のソース電圧値が0[V]以上になることにより、トランジスタT3のソースがフォトダイオード10のカソードに電気的に接続されると、数[nA]から数十[pA]の電流値の暗電流が生じる場合がある。
【0238】
そこで、第3実施形態では、制御部52は、後述するようにDA変換部70の出力電圧値を調整する。調整後の出力電圧値をDA変換部70に出力させるためにDA変換部70に入力されるデジタル信号の情報は、測定感度毎に記憶部50に記憶される。
【0239】
制御部52は、第2実施形態と同様に、例えば光スペクトラムの測定処理前に、第1モードの測定感度の入力を入力部51によって受け付ける。制御部52は、この入力を受け付けると、第1モードの測定感度に対応付けられたDA変換部70の出力電圧値を調整するためのデジタル信号の情報を取得する。制御部52は、取得した情報に基づいて、デジタル信号をDA変換部70に出力する。また、制御部52は、第2実施形態と同様に、第1モードの測定感度に対応付けられたスイッチ部130の切り替え情報を、記憶部50から取得する。制御部52は、第2実施形態と同様に、取得したスイッチ部130の切り替え情報に基づいて、スイッチ部130を制御する。
【0240】
[第1モード:テーブルの作成処理]
制御部52は、図12に示すようなテーブルを作成する際、スイッチSW6に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW6に制御信号を出力し、スイッチSW6によってフォトダイオード10のカソードを基準電位に電気的に接続させ、且つフォトダイオード10のカソードをトランジスタT3のソースから電気的に切り離す。このような構成により、暗電流の影響を受けることなく、図12に示すようなテーブルを作成することができる。
【0241】
[第1モード:オフセット電流値の測定処理]
制御部52は、第2実施形態と同様に、例えば光強度の測定処理の実行前又は定期的に、オフセット電流値Iоff1を測定する。
【0242】
第3実施形態では、制御部52は、オフセット電流値の測定処理を実行する前に、スイッチSW6に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW6によってフォトダイオード10のカソードを基準電位から電気的に切り離し、且つフォトダイオード10のカソードをトランジスタT3のソースに電気的に接続させる。
【0243】
制御部52は、第2実施形態と同様に、DA変換部70に各測定感度に対応する出力電圧値を出力させ、且つスイッチ部130によって各測定感度に対応するオフセット電流値Iоffを設定していきながら、フォトダイオード10が遮光されているときの対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。さらに、制御部52は、測定感度毎のオフセット電流値Iоff1を、出力電圧値Vо1と上記テーブルにより算出する。
【0244】
制御部52は、測定感度に対応付けたオフセット電流値Iоff1を記憶部50に記憶させる。ただし、制御部52は、第1実施形態と同様に、出力電圧値Vо1と、上記式(6)からオフセット電流値Iоff1を算出してもよい。
【0245】
ここで、第3実施形態では、オフセット電流値Iоff1は、暗電流の影響により、図3に示すような感度設定毎のオフセット電流値Iоffと大きく異なる場合がある。オフセット電流値Iоff1は、DA変換部70の出力電圧値により変化させることが可能である。そこで、制御部52は、オフセット電流値Iоff1が図3に示すようなオフセット電流値と同じ値になるときにDA変換部70に入力されるデジタル信号を特定する。例えば、第1モードの測定感度が図3に示すような感度Aの場合、増幅器60の出力端子と入力端子P1との間に電気的に接続させるオフセット抵抗R130の抵抗値は、図3に示すような抵抗値Rs30と同じ1[MΩ]に設定される。第1モードの測定感度が感度Aである場合、制御部52は、オフセット電流値Iоff1が200[nA]になるときにDA変換部70に入力されるデジタル信号を特定する。制御部52は、特定したデジタル信号の情報を、第1モードの測定感度に対応付けて記憶部50に記憶する。
【0246】
第1モードのその他の処理は、第2実施形態と同様である。
【0247】
[第2モード]
制御部52は、第2実施形態と同様に、光測定装置201のモードを第2モードに切り替えるための入力を入力部51によって受け付ける。制御部52は、この入力を受け付けると、第2実施形態と同様に、スイッチSW1~SW4に制御信号を適宜出力し、光測定装置201の接続状態を第2モードに対応する接続状態に切り替える。
【0248】
制御部52は、第2実施形態と同様に、第2モードにおいて増幅器60の出力電圧値Vо2を測定する際、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。
【0249】
[第2モード:光強度の測定処理]
制御部52は、第2実施形態と同様に、光強度の測定処理を実行する前に、スイッチSW5に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW5に制御信号を出力し、スイッチSW5によって増幅器60の出力端子をAD変換部40に電気的に接続させ、且つ対数増幅回路20の出力端子P3をAD変換部40から電気的に切り離す。
【0250】
ここで、上述のように、トランジスタT3のソース電圧値が0[V]以上になることにより、数[nA]から数十[pA]の電流値の暗電流が生じる場合がある。
【0251】
そこで、制御部52は、光強度の測定処理を実行する前に、スイッチSW6に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW6に制御信号を出力し、スイッチSW6によってフォトダイオード10のカソードを基準電位に電気的に接続させ、フォトダイオード10のカソードをトランジスタT3のソースから電気的に切り離す。このような構成により、光測定装置201において、上述の暗電流が生じることが抑制され、光測定装置201の雑音が大きくなることが抑制される。
【0252】
第2モードのその他の処理は、第2実施形態と同様である。
【0253】
[光測定装置の動作]
第3実施形態に係る光測定装置201の光測定方法は、図13及び図14を参照して上述したように実行されてよい。
【0254】
ただし、第3実施形態では、ステップS24の処理において、制御部52は、出力電圧値Vо1及び出力電圧値Vо2を測定する前に、スイッチSW6に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW6に制御信号を出力し、スイッチSW6によってフォトダイオード10のカソードを基準電位に電気的に接続させ、且つフォトダイオード10のカソードをトランジスタT3のソースから電気的に切り離す。
【0255】
また、第3実施形態では、ステップS26の処理において、制御部52は、スイッチSW5を制御することに加えて、スイッチSW6を制御する。ステップS26の処理において、制御部52は、スイッチSW6に制御信号を出力する。制御部52は、スイッチSW6に制御信号を出力し、スイッチSW6によってフォトダイオード10のカソードを基準電位から電気的に切り離し、フォトダイオード10のカソードをトランジスタT3のソースに電気的に接続する。
【0256】
また、第3実施形態では、ステップS34の処理において、制御部52は、スイッチSW5を制御することに加えて、スイッチSW6を制御する。ステップS34の処理において、制御部52は、スイッチSW6に制御信号を出力し、スイッチSW6によってフォトダイオード10のカソードを基準電位に電気的に接続させ、フォトダイオード10のカソードをトランジスタT3のソースから電気的に切り離す。
【0257】
第3実施形態に係る光測定装置201のその他の構成及び効果は、第1実施形態に係る光測定装置1又は第2実施形態に係る光測定装置101の構成及び効果と同様である。
【0258】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0259】
例えば、上述の実施形態では、非線形素子としてのトランジスタT1が増幅器21の出力端子と非反転入力端子との間に電気的に接続されるものとして説明した。ただし、トランジスタT1以外の非線形素子が増幅器21の出力端子と非反転入力端子との間に電気的に接続されてもよい。
【0260】
例えば、図1に示すような電圧源Vbにアナログ-デジタル変換部が採用されてよい。電圧源Vbにアナログ-デジタル変換部が採用されることにより、電圧値VBを可変にすることができる。
【0261】
例えば、図1に示すような光測定装置1が図15に示すようなトランジスタT3、抵抗R8及びスイッチSW6を備えてもよい。
【0262】
例えば、図1に示すような光測定装置1が図12に示すようなテーブルを生成し、上記式(7)の代わりに当該テーブルを用いて被測定光の光強度を測定してもよい。光測定装置1がテーブルを生成する際、オフセット電流値Iоffを0[A]にした状態で、光強度が既知である被測定光がフォトダイオード10に入力される。つまり、電流値I1は、既知の光電流値Ipと等しくなる。制御部52は、既知の光電流値Ipすなわち電流値I1を変化させながら、対数増幅回路20の出力電圧値Vо1をAD変換部40によって測定する。制御部52は、光電流値Ipと出力電圧値Vо1とを対応付けることにより、テーブルを生成する。
【符号の説明】
【0263】
1,101,201 光測定装置
2 演算装置
10 フォトダイオード
20 対数増幅回路(対数増幅器)
21 増幅器(第1増幅器)
22,23 増幅器
30,130 スイッチ部
40 AD変換部
50 記憶部
51 入力部
52 制御部
60 増幅器(第2増幅器)
70 DA変換部
C130 コンデンサ
P1 入力端子
P2 入力端子
P3 出力端子
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8 抵抗
R30,R130 オフセット抵抗
SW1 スイッチ(第1スイッチ)
SW2 スイッチ(第2スイッチ)
SW3 スイッチ(第3スイッチ)
SW4 スイッチ(第4スイッチ)
SW5 スイッチ
SW6 スイッチ(第5スイッチ)
SW30,SW130 切り替えスイッチ
T1,T2 トランジスタ(非線形素子)
T3 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
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図16