(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006189
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】配設装置および取付体
(51)【国際特許分類】
H02G 3/12 20060101AFI20240110BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02G3/12
F16B5/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106859
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 佳樹
【テーマコード(参考)】
3J001
5G361
【Fターム(参考)】
3J001FA11
3J001GA01
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA03
3J001KA16
5G361AA01
5G361AA02
5G361AB01
5G361AC01
(57)【要約】
【課題】その設置面に傾きを有する構造物に対して配設体を所定の配置姿勢で設置し得る配設装置を提供する。
【解決手段】配設装置100は、構造物11に固定される固定部112、および、固定部112から延設方向に延び出る延設部115を有する取付体110と、構造物11から離間した位置で、延設部115に所定の配置姿勢で支持される配設体130と、を備える。取付体110が構造物11に固定された際に、鉛直方向に対する延設方向の角度が、異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合であっても、取付体110が配設体130を所定の配置姿勢で延設部115に支持可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に固定される固定部、および、前記固定部から延設方向に延び出る延設部を有する取付体と、
前記構造物から離間した位置で、前記延設部に所定の配置姿勢で支持される配設体と、を備え、
前記取付体が前記構造物に固定された際に、鉛直方向に対する前記延設方向の角度が、異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合であっても、前記取付体が前記配設体を前記所定の配置姿勢で前記延設部に支持可能であることを特徴とする配設装置。
【請求項2】
前記延設方向の角度が前記第1の角度および前記第2の角度のいずれの場合であっても、前記配設体の少なくとも2箇所に形成された結合部が、前記延設部に形成された被結合部に結合されることで、前記配設体が前記取付体に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の配設装置。
【請求項3】
前記延設部には、前記配設体の指標部を位置合わせするための基準部と、前記配設体を前記所定の配置姿勢で固定するビスがねじ込まれる止着部とが設けられ、前記指標部を前記基準部に位置合わせした状態で、前記基準部を回動軸として前記配設体を回動させて、前記配設体の姿勢を前記所定の配置姿勢へと変更することが可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の配設装置。
【請求項4】
前記指標部および前記基準部は、ビスをねじ込み可能な貫通孔からなることを特徴とする請求項3に記載の配設装置。
【請求項5】
前記配設体は、配設体群を成す、サイズが異なる複数の配設体から構成され、
前記配設体群の前記各配設体は、矩形状の底壁と、前記底壁から立設する2組の対向壁を有する周壁とを備える有底四角箱状を成し、
前記サイズが異なる複数の配設体の間で、前記周壁のうち第1の組の対向壁間の対向距離が互いに異なり、前記周壁のうち第2の組の対向壁間の対向距離が互いに共通し、かつ、前記第1の組の対向壁の片方の壁に対する前記指標部の相対位置が互いに共通していることを特徴とする請求項3に記載の配設装置。
【請求項6】
構造物に対して所定の配置姿勢で配設体を取り付けるための取付体であって、
前記構造物に固定される固定部と、
前記固定部から延設方向に延び出て、前記配設体を前記固定部から離れた位置に支持する延設部と、を備え、
前記固定部が前記構造物に固定された際に、鉛直方向に対する前記延設方向の角度が、互いに異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合であっても、前記配設体を前記所定の配置姿勢で前記延設部に支持可能であることを特徴とする取付体。
【請求項7】
前記延設方向の角度が前記第1の角度および前記第2の角度のいずれの場合であっても、前記延設部の少なくとも2箇所に形成された被結合部を介して、前記配設体が前記延設部に結合されて支持され、前記被結合部の少なくとも1つは、前記延設方向を横切るように延びるビス固定孔からなることを特徴とする請求項6に記載の取付体。
【請求項8】
前記延設部には、前記配設体の指標部を位置合わせするための基準部と、前記配設体の前記配置姿勢で前記配設体を固定するビスがねじ込まれる止着部とが設けられ、前記止着部は、前記基準部を中心とする円周上で円弧状に延びるビス固定孔からなることを特徴とする請求項6に記載の取付体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に対して配設体を設置するための配設装置、および、配設体を取り付けるための取付体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線ボックスなどの配設体を、壁裏の間柱などの構造物に対して、所定位置に支持及び固定するために種々の設置手段が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、建築物の壁面内などに収容されるボックス類を、既設の構造物である柱などを利用して固定するボックス固定具を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。ボックス固定具は、既設の構造物である柱(P)に取付される取付部(1a)、および、該取付部(1a)から延設されてボックス(B)を支持するための支持部(1b)を有する固定具本体(1)と、支持部(1b)の前面側にスライド可能に取付られてボックス(B)を保持する保持部材(4)とを備える。保持部材(4)は、ボックス(B)を保持した状態で支持部(1b)に対してスライド可能である。本ボックス固定具において、保持部材(4)をボックス(B)とともに支持部(1b)に沿ってスライドさせて位置調整した上で、ボックス(B)の前面開口からその底壁(B2)に形成された取付孔(B1)を貫通させた固定部材(1j)を支持部(1b)に固定することによって、ボックス(B)を支持部(1b)に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のボックス固定具は、鉛直に立設された柱に固定され、水平方向に延在する支持部(延設部)によって、柱から離間した位置でボックス(配設体)を所定の配置姿勢で支持するものである。しかしながら、当該ボックス固定具は、配設体の設置対象を鉛直に立設された柱のみとするものであり、筋交いのような斜めに設置された構造物に取り付けられた場合、支持部とともに配設体が傾いて配置され、配設体もまた傾いた配置姿勢で支持される。すなわち、従来のボックス固定具では、構造物の規定の平面(鉛直平面)から傾いた設置面への固定の際、支持部の延設方向が所定(規定)の方向(つまり水平方向)から傾いてしまい、配設体を所定の配置姿勢で設置することができないことが問題であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、その設置面に傾きを有する構造物に対して配設体を所定の配置姿勢で設置し得る配設装置および取付体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の配設装置は、構造物に固定される固定部、および、前記固定部から延設方向に延び出る延設部を有する取付体と、
前記構造物から離間した位置で、前記延設部に所定の配置姿勢で支持される配設体と、を備え、
前記取付体が前記構造物に固定された際に、鉛直方向に対する前記延設方向の角度が、異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合であっても、前記取付体が前記配設体を前記所定の配置姿勢で前記延設部に支持可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の配設装置は、請求項1に記載の配設装置において、前記延設方向の角度が前記第1の角度および前記第2の角度のいずれの場合であっても、前記配設体の少なくとも2箇所に形成された結合部が、前記延設部に形成された被結合部に結合されることで、前記配設体が前記取付体に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の配設装置は、請求項1または2に記載の配設装置において、前記延設部には、前記配設体の指標部を位置合わせするための基準部と、前記配設体を前記所定の配置姿勢で固定するビスがねじ込まれる止着部とが設けられ、前記指標部を前記基準部に位置合わせした状態で、前記基準部を回動軸として前記配設体を回動させて、前記配設体の姿勢を前記所定の配置姿勢へと変更することが可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の配設装置は、請求項3に記載の配設装置において、前記指標部および前記基準部は、ビスをねじ込み可能な貫通孔からなることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の配設装置は、請求項3に記載の配設装置において、前記配設体は、配設体群を成す、サイズが異なる複数の配設体から構成され、
前記配設体群の前記各配設体は、矩形状の底壁と、前記底壁から立設する2組の対向壁を有する周壁とを備える有底四角箱状を成し、
前記サイズが異なる複数の配設体の間で、前記周壁のうち第1の組の対向壁間の対向距離が互いに異なり、前記周壁のうち第2の組の対向壁間の対向距離が互いに共通し、かつ、前記第1の組の対向壁の片方の壁に対する前記指標部の相対位置が互いに共通していることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の取付体は、構造物に対して所定の配置姿勢で配設体を取り付けるための取付体であって、
前記構造物に固定される固定部と、
前記固定部から延設方向に延び出て、前記配設体を前記固定部から離れた位置に支持する延設部と、を備え、
前記固定部が前記構造物に固定された際に、鉛直方向に対する前記延設方向の角度が、互いに異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合であっても、前記配設体を前記所定の配置姿勢で前記延設部に支持可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の取付体は、請求項6に記載の取付体において、前記延設方向の角度が前記第1の角度および前記第2の角度のいずれの場合であっても、前記延設部の少なくとも2箇所に形成された被結合部を介して、前記配設体が前記延設部に結合されて支持され、前記被結合部の少なくとも1つは、前記延設方向を横切るように延びるビス固定孔からなることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の取付体は、請求項6に記載の取付体において、前記延設部には、前記配設体の指標部を位置合わせするための基準部と、前記配設体の前記配置姿勢で前記配設体を固定するビスがねじ込まれる止着部とが設けられ、前記止着部は、前記基準部を中心とする円周上で円弧状に延びるビス固定孔からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、取付体が構造物に固定された際に、鉛直方向に対する延設方向の角度が、異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合であっても、取付体が配設体を所定の配置姿勢で延設部に支持可能である。すなわち、構造物の傾斜に応じて、取付体の延設部の延設方向が異なる(少なくとも)2つの角度で配置されたとしても、配設体を所定の配置姿勢で延設部で支持することが可能である。したがって、本発明の配設装置は、その設置面に傾きを有する構造物に対して配設体を所定の配置姿勢で設置することを可能とするものである。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、配設体の2箇所に形成された結合部を介して配設体が延設部の被結合部に結合される際、結合部が延設部に対する配設体の回り止めとして機能し、配設体の安定固定を可能とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、配設体の指標部と延設部の基準部とを用いて、延設部における配設体の取付位置を簡単に位置決めすることができる。さらに、位置決め後、基準部を回動軸として配設体を回動させることで、配設体の傾きを所定の配置姿勢に容易に調整し、止着部を介してビスで固定することができる。すなわち、本発明の配設装置は、配設体の延設部への取付作業を容易とするものである。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の発明の効果に加えて、指標部および基準部をビスを用いて仮止めした状態で位置合わせすることができる。そして、ビスを回動軸として、配設体を延設部に対して容易に回動させることが可能である。特には、ビスのねじ込み量を調整して回転抵抗を付与することで、姿勢の調整時に配設体の自由回転を規制し、姿勢の調整作業およびビスの止着作業をより一層容易とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3の発明の効果に加えて、配設装置は、異なるサイズからなる複数の配設体から所望のサイズの配設体を選択して、構造物に対して配設体を設置することを可能とする。特に、サイズが異なる複数の配設体の間で、(対向距離が変動する)第1の組の対向壁の片方の壁に対する指標部の相対位置を互いに共通とさせたことにより、サイズが異なる全ての配設体について、指標部を基準部に位置合わせした状態で、基準部を回動軸として配設体を回動させて、配設体の姿勢を所定の配置姿勢へと変更することが可能である。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、取付体が構造物に固定された際に、鉛直方向に対する延設方向の角度が、異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合であっても、取付体が配設体を所定の配置姿勢で延設部に支持可能である。すなわち、構造物の傾斜に応じて、取付体の延設部の延設方向が異なる(少なくとも)2つの角度で配置されたとしても、配設体を所定の配置姿勢で延設部で支持することが可能である。したがって、本発明の取付体は、その設置面に傾きを有する構造物に対して配設体を所定の配置姿勢で支持することを可能とするものである。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて、取付体の2箇所に形成された被結合部を介して配設体が延設部に結合される際、被結合部が延設部に対する配設体の回り止めとして機能し、配設体の安定固定を可能とする。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて、配設体の指標部と延設部の基準部とを用いて、延設部における配設体の取付位置を簡単に位置決めすることができる。そして、位置決め後、基準部を回動軸として配設体を回動させることで、配設体の傾きを所定の配置姿勢に容易に調整し、止着部を介してビスで固定することができる。さらに、止着部が基準部を中心とする円周上で円弧状に延びるビス固定孔であることにより、円弧状のビス固定孔に沿って連続的にビスの止着位置を変更することが可能である。すなわち、本発明の取付体は、配設体の延設部への取付作業を容易とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態の配設装置の分解斜視図。
【
図2】
図1の配設装置の取付体の(a)正面から見た概略斜視図、及び(b)背面から見た概略斜視図。
【
図4】
図2の取付体の(a)平面図、(b)背面図、(c)左側面図、および(d)右側面図。
【
図9】本発明の一実施形態の配設装置を構造物に対して設置した設置構造を例示的に示す概略正面図。
【
図10】本発明の一実施形態の配設装置を構造物に設置する方法において、取付体を構造物に固定し、配設体を取付体に仮固定する工程を示す模式図。
【
図11】本発明の一実施形態の配設装置を第1の構造物(第1の筋交い)に対して設置する方法において、(a)第1配設体および(b)第2配設体の配置姿勢を変更する工程をそれぞれ模式的に示す正面図。
【
図12】本発明の一実施形態の配設装置を第2の構造物(第2の筋交い)に対して設置する方法において、(a)第1配設体および(b)第2配設体の配置姿勢を変更する工程をそれぞれ模式的に示す正面図。
【
図13】本発明の一実施形態の配設装置を第3の構造物(間柱)に対して設置する方法において、(a)第1配設体および(b)第2配設体の配置姿勢を変更する工程をそれぞれ模式的に示す正面図。
【
図14】本発明の一実施形態の配設装置を第4の構造物(胴縁)に対して設置する方法において、(a)第1配設体および(b)第2配設体の配置姿勢を変更する工程をそれぞれ模式的に示す正面図。
【
図15】本発明の別実施形態の取付体を示す概略正面図。
【
図16】本発明の別実施形態の取付体を示す概略正面図。
【
図17】本発明の別実施形態の取付体を示す概略正面図。
【
図18】本発明の別実施形態の取付体を示す概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明に係る一実施形態の配設装置100の分解斜視図である。本実施形態では、配設装置100は、壁裏空間に設置された筋交いや間柱などの構造物に対して配設体130を設置し、スイッチやコンセント等の配線器具(図示せず)を壁表の所定位置に配設する用途に用いられる。しかしながら、当該用途は、例示にすぎず、本発明の配設装置は種々の用途に用いられてもよい。
【0026】
図1に示すとおり、本発明の一実施形態の配設装置100は、構造物に固定される取付体110と、該取付体110に取り付けられる配設体130(130A、130B)とを備える。そして、配設装置100では、配設体130の少なくとも2箇所に形成された結合部(指標部133、連結部134)が、取付体110の延設部115に形成された被結合部(基準部116、止着部117、縦孔118)に少なくとも2本のビス151,152によって結合されることで、配設体130および取付体110が互いに固定される。本実施形態では、配設体130は、サイズが異なる複数の配設体130(130A、130B)からなる配設体群から構成される。そして、配設装置100は、構造物から離間した位置で、所定の配置姿勢で(選択された)配設体130を配設するように構成されている。ここで、「所定の配置姿勢」とは、ユーザーによって予め定められ、配設体が最終的に配置されるべき姿勢をいう。本実施形態では、所定の配置姿勢は、配設体130の縦辺(第1の組の対向壁132a)を鉛直方向に沿うように配置した姿勢とした。しかしながら、本発明において、所定の配置姿勢として、必要に応じて、鉛直方向に対して任意の角度で傾いた姿勢が選択されてもよい。以下、
図2乃至
図8を参照して、各構成要素について説明する。
【0027】
まず、
図2及び
図3を参照して、取付体110について説明する。
図2(a),(b)は、取付体110の正面および背面から見た斜視図である。
図3は、当該取付体110の正面図である。
図4(a)~(d)は、当該取付体110の平面図、背面図、左側面図および右側面図である。
【0028】
取付体110は、
図2~
図4に示すように、その基端から先端まで延びる平面視L字形状の板体である。取付体110は、その基端に位置し、固定部112を介して構造物に固定される矩形板状の基端部111と、当該基端部111(または固定部112)からその先端に向けて延設方向(横方向)に沿って延びる矩形板状の延設部115とからなる。換言すると、当該取付体110はL字形状に屈曲しており、前後方向に延びる短片状の基端部111と、左右の延設方向に延びる長片状の延設部115とが略直角に連結されている。ここで、取付体110の前後方向および延設(左右)方向に直交する方向(つまり
図3の上下方向)を、幅方向(または縦方向)とする。なお、本実施形態では、取付体110は、金属材料を屈曲及び穿設加工することにより得られたが、合成樹脂等の他の材料で形成されてもよい。
【0029】
当該取付体110の基端部111には、3つの長孔からなる固定部112が形成されている。当該固定部112を介して構造物に固定ビスで該取付体110を固定可能である。各長孔は、(基端側から先端側へと)前後方向に延びており、固定ビスを固定部112を介して構造物にねじ込んだ際、構造物に対する取付体110の位置調整を前後のスライドにより可能とする。また、基端部111の基端縁には、幅方向の両端に2つの位置合わせ片113が形成されている。位置合わせ片113を含む基端部111の前後方向の長さは、配設体130の前後幅に対応している。つまり、位置合わせ片113の基端縁が、取付体110に取り付けられた配設体130の前面開口の位置を表示し得る。よって、ユーザーは、位置合わせ片113の基端縁の位置を基準として、配設体130を所望の前後位置に設置すべく、取付体110の構造物に対する前後の固定位置を位置決めすることが可能である。なお、位置合わせ片113は、工具等で簡単に折り取り可能に構成されている。位置合わせ片113を折り取ることにより、基端部111は、前後方向により短くなり、より薄型の配設体に対応する形状となる。
【0030】
延設部115は、前面および後面を有する縦辺および横辺を有する矩形状の平板であり、前面に配設体130を支持するように構成されている。延設部115の前面は、配設体130が取り付けられる取付面を成し、配設体130の摺動を許容するように平坦である。また、延設部115の幅方向中央の基端部111から所定の距離で離間した位置には、配設体130の指標部133が位置合わせされる基準部116が設けられている。基準部116は、第1ビス151がねじ込まれる貫通孔であり、第1ビス151が基準部116および指標部133にねじ込まれた状態で、配設体130を回動させるための回動軸(または回動中心点)となり得る。基準部116と基端部111との間の延設方向に沿った距離は、位置合わせされた配設体130が基端部111(または固定部112)から離間した位置に配置されるように定められた。この基準部116の位置は、予め定められた構造物に対する配設体130の相対位置に基づいて定められる。特には、基準部116を軸として配設体130を回動させた際に、固定部112が固定された構造物(または基端部111)に配設体130を干渉させることなく回動させられる範囲が45°以上であるように設計されることが好ましい。
【0031】
延設部115は、
図3に示すように、基端部111(固定部112)に対する基準部116よりも遠位方向に、配設体130を所定の配置姿勢で固定するための止着部117を有している。本実施形態では、止着部117は、基準部116を中心とする複数の円周上で円弧状に延びる複数のビス固定孔117a,117b,117cから構成されている。これにより、円弧状のビス固定孔117a,117b,117cに沿って連続的に止着位置を変更することが可能である。より具体的には、第1ビス固定孔117aは第1の円弧半径r1を有し、第2ビス固定孔117bは第2の円弧半径r2(>r1)を有し、第3ビス固定孔117cは第3の円弧半径r3(>r2)を有している。第1の円弧半径r1、第2の円弧半径r2および第3の円弧半径r3は、後述する、配設体130の指標部133から連結部134(134a、134b、134c)までの距離にそれぞれ合致する。各ビス固定孔117a,117b,117cの円弧長の中心は、延設部115の幅方向の中心に位置している。また、延設部115には、延設方向に直交して延びる複数(本実施形態では3つ)の縦孔118が形成されている。最も基端側の縦孔118は、基端部111と基準部116との間に位置している。真ん中の縦孔118は、基準部116と第1ビス固定孔117aの間に位置している。最も先端側の縦孔118は、第2ビス固定孔117bと第3ビス固定孔117cとの間に位置している。なお、基準部116、止着部117および縦孔118は、いずれも、ビス151,152のねじ込みによって、配設体130の結合部(指標部133、連結部134)に結合される被結合部として機能するものである。
【0032】
また、延設部115の前面には、延設方向に対する配設体130の相対的な傾斜角を表示する表示部121が形成されている。表示部121は、幅方向の中央を通る延設方向に沿った線(表示せず)を0度とし、そこからの上下方向への傾斜角15°、30°、45°を表示している。表示部121は、配設体130の取付時にその姿勢の調整を補助するように機能する。すなわち、ユーザーは、表示部121を目視しながら、配設体130の姿勢を所定の配置姿勢により簡単に調整することが可能である。また、表示部121によれば、第1ビス固定孔117aおよび第2ビス固定孔117bの円弧の中心角が約45°であり、第3ビス固定孔117cの円弧の中心角が約30°である。これはまた、各ビス固定孔117a,117b,117cにおける対応可能な傾きの角度範囲(つまり、延設部115の延設方向と配設体130の横方向とがなす角度のうち対応可能な角度範囲)を示している。ここで、構造物の傾きとは、構造物が地面(水平面)に対して立設する角度である。換言すると、本実施形態の取付体110は、60~90°の範囲の傾きがある構造物(
図12および
図13参照)に対しては、全てのビス固定孔117a,117b,117cを使用することが可能である。一方で、45~60°の範囲の傾きがある構造物(
図11参照)に対しては、第3ビス固定孔117cを使用できず、第1ビス固定孔117aおよび第2ビス固定孔117bを使用することとなる。そして、各ビス固定孔117a,117b,117cは、45°未満の傾きの構造物には対応していない。なお、ビス固定孔の円弧の中心角を拡げるようにビス固定孔の円弧長さを拡張したり、新たなビス固定孔を追加することにより、より広範囲の傾きの構造物に対応可能としてもよい。
【0033】
次に、
図5乃至
図8を参照して、配設体130について説明する。本実施形態では、異なる複数のサイズの配設体130(130A,130B)から構成される配設体群が用いられる。ここでは、2つの異なるサイズの配設体130A,130Bについて例示するが、さらに異なるサイズの1または複数の配設体が追加されてもよい。また、配設体群を構成する全ての配設体130は、取付体110の延設部115によって支持され得るように構成されている。
図5は、配設体群のうち第1配設体130Aの概略斜視図である。
図6は、第1配設体130Aの概略正面図である。
図7は、配設体群のうち第2配設体130Bの概略斜視図である。
図8は、第2配設体130Bの概略正面図である。
【0034】
第1配設体130Aおよび第2配設体130Bは、
図5~
図8に示すように、縦辺および横辺を有する矩形状の底壁131と、該底壁131から立設する2組の対向壁132a、132bを有する周壁132とを備える。つまり、第1配設体130Aおよび第2配設体130Bは、有底四角箱状を成す合成樹脂製の配線ボックスからなる。一般的に、配線ボックスは、構造物から離間した位置に支持され、構造物の前面に壁材が立設され、壁裏に隠蔽されるように配設され、その壁表に臨ませるように器具を設置するものである。ここで、第1の組の対向壁132aは、横幅方向に対向する一対の壁であり、第2の組の対向壁132bは、縦幅方向に対向する一対の壁である。配設群をなす複数の配設体130(130A、130B)の間では、周壁132のうち第1の組の対向壁132a間の対向距離が互いに異なり、周壁132のうち第2の組の対向壁132b間の対向距離が互いに共通している。より具体的には、第2配設体130Bの第1の組の対向壁132a間の対向距離が、第1配設体130Aの対向距離の約3倍である。また、第1配設体130Aおよび第2配設体130Bは、前面に開口する前面開口部を有し、該前面開口部を縁取る端縁の幅方向上下には、器具(図示せず)をビスで取り付けるための器具取付部135が設けられている。第1配設体130Aには、上下1組の器具取付部135が設けられ、第2配設体130Bには、上下3組の器具取付部135が設けられている。
【0035】
第1配設体130Aおよび第2配設体130Bの底壁131には、取付体110の基準部116に対して位置合わせされる指標部133が設けられている。指標部133は、第1ビス151がねじ込まれる貫通孔である。配設群をなす複数の配設体130(130A、130B)の間では、第1の組の対向壁132aの片方の壁に対する指標部133の相対位置が互いに共通している。換言すると、指標部133と、該指標部133に近い側の対向壁132aとの横幅方向の距離が、複数の配設体130の間で一定である。すなわち、配設体群のいずれの配設体130も、延設部115の延設方向に対して少なくとも2つの角度のいずれかで取付体110に固定すべく、基準部116を軸に回動させる姿勢調整の際に、取付体110の固定部112(または基端部111)と干渉しないように構成されている。
【0036】
また、底壁131には、指標部133から横幅方向に離間した位置に、1または複数の連結部134が設けられている。連結部134は、第2ビス152がねじ込まれる貫通孔である。
図6に示すように、第1配設体130Aでは、1つの連結部134が形成されている。
図8に示すように、第2配設体130Bには、複数の連結部134が形成されている。ここで、第2配設体130Bの連結部134について、指標部133に近い側から、第1連結孔134a、第2連結孔134b、第3連結孔134cとする。指標部133と各連結部134(134a、134b、134c)との間の距離は、取付体110の基準部116と止着部117との間の距離(円弧半径r1~r3)に対応している。これにより、指標部133と基準部116を重ね合わせたとき、配設体130のある程度の傾斜姿勢にかかわらず、連結部134と止着部117とを重合させ、第2ビス152で結合することが可能である。なお、第1配設体130Aおよび第2配設体130Bは、上下左右に対称となる形状を有していることから、指標部133と、その反対側の連結部134とは相互に入れ替えて使用可能である。
【0037】
図9は、配設装置100を構造物11に対して設置した設置構造10を例示的に示す概略正面図である。ここで、構造物11は、傾斜する筋交いとして例示する。
図9に示す設置構造10では、鉛直方向から傾斜して立設する構造物11の両側に第1配設体130Aおよび第2配設体130Bがそれぞれ取付体110,110によって配設されている。設置構造10において、2つの取付体110が、筋交い11の側面をなし、水平面に対して所定の角度で傾斜する設置面に対し、固定部112を介してビスでそれぞれ固定されている。このとき、延設部115は、構造物11から離間するように、その延設方向が水平方向から斜めに傾斜して延在している。各配設体130は、底壁131の2箇所の結合部でビス151、152によって取付体110の延設部115に固定されている。具体的には、第1配設体130Aでは、指標部133および基準部116が合わさって第1ビス151で固定され、かつ、連結部134および止着部117(第1ビス固定孔117a)が第2ビス152で固定されている。他方、第2配設体130Bでは、指標部133および基準部116が合わさって第1ビス151で固定され、かつ、第3連結孔134cおよび止着部117(第2ビス固定孔117b)が第2ビス152で固定されている。なお、第3連結孔134cの代わりに、または、第3連結孔134cに追加して、他の連結孔134a、134bが選択されて止着部117に固定されてもよい。このように、結合部および被結合部が少なくとも2箇所で結合されることにより、少なくとも2本のビス151,152が延設部115に対する配設体130の回り止めとして機能し、配設体130が安定的に取付体110に固定されている。また、各配設体130(第1配設体130Aおよび第2配設体130B)は、筋交い11から離間した位置で、縦辺が鉛直方向に沿うように所定の配置姿勢で配設されている。
【0038】
ここで、
図9の設置構造10では、構造物11の右側の上側斜め面(第1の設置面)と、左側面の下側斜め面(第2の設置面)とは、互いに平行であり、かつ、水平面に対して同じ傾斜角で傾斜している。2つの取付体110,100は、第1および第2配設体130A,130Bの前面開口部を同一方向に向けるべく、左右で反転して構造物11の上側斜め面および下側斜め面にそれぞれ固定されている。このような場合であっても、本発明において、
図9に示すように、鉛直方向に対する延設部115の延設方向の角度は、上側斜め面に固定された取付体110と、下側斜め面に固定された取付体110との間で同じ角度θであると見なされる。すなわち、「鉛直方向に対する延設方向の角度」とは、互いに交差する鉛直方向と延設方向とがなす(4つの)角度のうち0~90°の範囲の角度を指すものである。例えば、
図9において、上側斜め面に固定された取付体110の鉛直方向に対する延設方向の角度θが60°である場合、下側斜め面に固定された取付体110の鉛直方向に対する延設方向の角度θも60°であり、120°や300°ではない。
【0039】
次に、
図10を参照して、配設装置100の取付体110を構造物11の設置面に固定する工程、および、配設体130を取付体110に仮止めする工程について説明する。ここで、構造物11は、傾斜する筋交いとして例示する。
【0040】
まず、
図10に示すように、取付体110を構造物11の設置面(筋交いの側面)に宛がい、所定の高さおよび前後位置に位置合わせする。取付体110の位置合わせ片の端縁を、構造物11の前面に合わせることによって、支持する配設体130の前面開口部を構造物11の前面と同一平面上になるように設置することができる。このとき、固定部112が長孔であることから、固定部112を介して構造物11の設置面に固定ビスを部分的に打ち込んで、取付体110を構造物11に対して仮止めした状態で、取付体110の前後位置を容易に調整することができる。
【0041】
こうして、固定部112を介して取付体110を構造物11の設置面に固定した後、配設体130の指標部133を、取付体110の基準部116に位置合わせし、これらに第1ビス151をねじ込むことにより、配設体130を取付体110に仮保持させることが可能である。この仮保持状態では、基準部116(または第1ビス151)を回動軸として配設体130を回動操作可能である。この仮保持状態のまま、配設体130の連結部134を取付体110の円弧状の止着部117の任意の位置に合わせて、第2ビス152を緩くねじ込んでもよい。これにより、仮保持状態を維持しつつ、配設体130の自由回転可能な範囲を止着部117の円弧長の範囲に規制することができる。また、作業の際、第1ビス151(または第2ビス152)のねじ込み量を調整して、回転抵抗を付与することで、姿勢調整時に配設体130の自由回転を規制し、その後の調整作業および/または止着作業を容易とすることができる。なお、ここでは図示しないが、胴縁のように構造物が水平方向に延びる場合(
図14参照)、配設体130の指標部133を、取付体110の縦孔118に位置合わせし、これらに第1ビス151をねじ込むことにより、同様に、配設体130を取付体110に仮保持させることができる。
【0042】
続いて、異なる種類の構造物の各々について、配設体130の傾きを所定の配置姿勢に調整する工程について説明する。例示される対象となる構造物は、水平方向に対して第1の角度θ1(=約56°)で傾斜して立設する第1の筋交い11A(
図11参照)、第2の角度θ2(=約71°)で傾斜して立設する第2の筋交い11B(
図12参照)、垂直方向に延びる間柱11C(
図13参照)、および、水平方向に延びる胴縁11D(
図14参照)である。
【0043】
図11に示すように、第1の筋交い11Aの側面に取付体110が固定された状態では、鉛直方向に対する取付体110の延設方向の角度(つまり、鉛直方向と延設部115との間の角度)は、第1の角度θ1(=約56°)となる。つまり、配設体130を所定の配置姿勢に配置したとき、延設部115の延設方向と配設体130の横方向とがなす角度が約34°となる。
図11(a)、(b)に示すように、配設体130(第1配設体130A,第2配設体130B)の指標部133および取付体110の基準部116が第1ビス151で結合されている。この第1ビス151が完全に締め付けられていない状態では、基準部116を回動軸として、傾斜姿勢の配設体130を回動させて、所定の配置姿勢へと調整することができる。このとき、止着部117に第2ビス152を緩く螺着した状態であっても、配設体130の回動操作可能な状態を維持することができる。配設体130を所定の配置姿勢に配置した後、第1ビス151および第2ビス152を締め付けることによって、配設体130を取付体110に対し、少なくとも2箇所で安定的に固定することができる。
【0044】
より具体的には、第1配設体130Aを選択して取付体110に取り付ける場合、
図11(a)に示すように、基準部116を回動軸として第1配設体130Aを回動させると、連結部134を円弧状に延びる第1ビス固定孔117a(止着部117の1つ)に重合させながら移動させることができる。このとき、連結部134と第1ビス固定孔117aとを合わせて第2ビス152を緩く螺着した状態であってもよく、または、第2ビス152が連結部134と第1ビス固定孔117aとにねじ込まれる前であってもよい。そして、指標部133および連結部134が水平に配置されるまで、第1配設体130Aを回動させることにより、第1配設体130Aの(例えば仮想線に示すような)傾斜姿勢を(縦方向を鉛直方向に合わせる)所定の配置姿勢へと簡単に調整することができる。次いで、2本のビス151、152を締め付けることにより、第1配設体130Aを取付体110に所定の配置姿勢で固定することができる。
【0045】
より大きいサイズの第2配設体130Bを選択して取付体110に取り付ける場合、
図11(b)に示すように、第2配設体130Bの連結部134のうち第1連結孔134aおよび第2連結孔134bを、取付体110の止着部117のうち第1ビス固定孔117aおよび第2ビス固定孔117bにそれぞれ重合させることができる。ここでは、基準部116から延設方向に離れた、第2連結孔134bおよび第2ビス固定孔117bが選択されて第2ビス152がねじ込まれた。なぜなら、第2配設体130Bを所定の配置姿勢に配置した際の延設部115の延設方向と第2配設体130Bの横方向とがなす角度が30°を超えることから、第3ビス固定孔117cを使用できないからである。しかしながら、3つの結合部(指標部133、第1連結孔134aおよび第2連結孔134b)および被結合部(基準部116、第1ビス固定孔117aおよび第2ビス固定孔117b)の組のうち任意の2組以上が選択されて、第2配設体130Bが取付体110に固定されてもよく、必ずしも、指標部133および基準部116の組が選択されなくてもよい。そして、第1配設体130Aと同様に、指標部133および第2連結孔134bが水平に配置されるまで、第2配設体130Bを回動させることにより、第2配設体130Bの(例えば仮想線に示すような)傾斜姿勢を(縦方向を鉛直方向に合わせる)所定の配置姿勢へと簡単に調整することができる。次いで、2本のビス151、152を締め付けることにより、第2配設体130Bを取付体110に所定の配置姿勢で固定することができる。
【0046】
図12に示すように、第2の筋交い11Bの側面に取付体110が固定された状態では、鉛直方向に対する取付体110の延設方向の角度は、第2の角度θ2(=約71°)となる。つまり、配設体130を所定の配置姿勢に配置したとき、延設部115の延設方向と配設体130の横方向とがなす角度が約19°となる。配設装置100を構造物の傾きが異なる第2の筋交い11Bに設置する場合であっても、第1の筋交い11Aに設置する場合と同様の手順で、配設体130を回動させつつ所定の配置姿勢に調整し、第1ビス151および第2ビス152を締め付けることによって、配設体130を取付体110に対し、少なくとも2箇所で安定的に固定することができる。
【0047】
一方で、
図12(b)に示すように、第2の筋交い11Bへの設置では、第2配設体130Bの連結部134のうち第1連結孔134a、第2連結孔134bおよび第3連結孔134cを、取付体110の止着部117のうち第1ビス固定孔117a、第2ビス固定孔117bおよび第3ビス固定孔117cにそれぞれ重合させることができる。ここでは、基準部116から延設方向に最も離れた、第3連結孔134cおよび第3ビス固定孔117cが選択されて第2ビス152がねじ込まれ、第2配設体130Bが延設部115に固定された。しかしながら、第2配設体130Bの姿勢調整後、4つの結合部(指標部133、第1連結孔134a、第2連結孔134bおよび第3連結孔134c)および被結合部(基準部116、第1ビス固定孔117a、第2ビス固定孔117bおよび第3ビス固定孔117c)の組のうち任意の2組以上が選択されて、第2配設体130Bが取付体110に固定されてもよく、必ずしも、指標部133および基準部116の組が選択されなくてもよい。
【0048】
図13に示すように、間柱11Cの側面に取付体110が固定された状態では、取付体110の延設方向は(延設方向に直交する)水平方向に配置されている。配設装置100を鉛直方向に延びる間柱11Cに設置する場合であっても、第1の筋交い11A、第2の筋交い11Bに設置する場合と同様の手順で、配設体130を回動させつつ所定の配置姿勢に調整し、第1ビス151および第2ビス152を締め付けることによって、配設体130を取付体110に対し、少なくとも2箇所で安定的に固定することができる。なお、弧状の繋ぎ部分を第2ビス152で強引に貫通させるか、切断してそこに第2ビス152をねじ込むことによっても、配設体130を取付体110に固定できる。
【0049】
図14に示すように、胴縁11Dの上面(または下面)に取付体110が固定された状態では、取付体110の延設方向は鉛直方向に配置されている。配設装置100を水平方向に延びる胴縁11Dに設置する場合、取付体110の(基準部116および止着部117を使用せずに)縦孔118と、配設体130の指標部133および/または連結部134とを重合させ、ビス151、152をねじ込むことによって、配設体130を取付体110に対し、少なくとも2箇所で安定的に固定することができる。
【0050】
より具体的には、
図14(a)に示す第1配設体130Aでは、指標部133および連結部134がビス151、152による固定に用いられるのに対し、
図14(b)に示す第2配設体130Bでは第2連結孔134bおよび第3連結孔134cが、(任意に選択可能であるが)選択されてビス151、152による固定に用いられた。なお、縦孔118は、胴縁11Dとともに水平方向に沿って延びることから、配設体130の指標部133および/または連結部134を縦孔118に重合させることで、配設体130が所定の配置姿勢に配置される。また、ビス151、152が縦孔118内を移動可能であるので、ビス151、152の締め付け前の段階では、配設体130を取付体110に対して水平方向に沿ってスライドさせて、水平位置の調整が可能である。なお、同一半径の弧状のビス固定孔に2本のビス151、152をねじ込んで固定することも可能である。
【0051】
以下、本発明に係る一実施形態の配設装置100(および取付体110)における作用効果について説明する。
【0052】
本実施形態の配設装置100によれば、取付体110が構造物11に固定された際に、鉛直方向に対する延設方向の角度が、異なる第1の角度または第2の角度のいずれの場合(
図11~
図14参照)であっても、取付体110が配設体130を所定の配置姿勢で延設部115に支持可能である。すなわち、構造物11の(設置面の)傾斜に応じて、取付体110の延設部115の延設方向が異なる(少なくとも)2つの角度で配置されたとしても、配設体130を所定の配置姿勢で延設部115で支持することが可能である。したがって、本実施形態の配設装置100は、その設置面に傾きを有する構造物11に対して配設体130を所定の配置姿勢で設置することを可能とするものである。
【0053】
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、符番が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0054】
(1)本発明の配設装置および取付体は、上記実施形態に限定されない。
図15は、本発明のさらなる実施形態の取付体110Aの正面図である。取付体110Aは、上記実施形態の取付体110と同様に、固定部112を有する基端部111と、当該基端部111からその先端に向けて延設方向に沿って延びる延設部115とからなる。また、延設部115には、基準部116、止着部117(第1ビス固定孔117a、第2ビス固定孔117b、第3ビス固定孔117c)および縦孔118に加えて、延設部115の略中央部分から先端側に向けて延設方向に沿って直線状に延びる長孔119が設けられている。基準部116および長孔119は、1つの孔として一体的に連通している。この長孔119は、取付体110Aが、構造物として間柱等の垂直柱の側面に固定された際、配設体130を延設部115に固定するための被結合部として使用される。長孔119により、配設体130の固定位置を延設部115の延設方向に沿って連続的に調整することが可能である。なお、長孔119は延設部115に複数形成されてもよい。
【0055】
(2)本発明の配設装置および取付体は、上記実施形態に限定されない。本発明の取付体に形成される止着部の形状は、円弧状の長孔でなくてもよく、種々の形状を取り得る。
図16は、本発明のさらなる実施形態の取付体110Bの正面図である。取付体110Bは、上記実施形態の取付体110と同様に、固定部112を有する基端部111と、当該基端部111からその先端に向けて延設方向に沿って延びる延設部115とからなる。また、延設部115には、基準部116、および、止着部117(第4ビス固定孔117d、第5ビス固定孔117e)が設けられている。第4ビス固定孔117dは、配設体130の連結部134(第2配設体130Bの第1連結孔134a)に対応し、基準部116を中心とする第1の円周上に点在する4つの孔である。また、第5ビス固定孔117eは、配設体130の連結部134(第2配設体130Bの第2連結孔134b)に対応し、基準部116を中心とする第2の円周上に点在する4つの孔である。表示部121によれば、止着部117は、基準部116を通る延設方向の直線から上下に15°および45°の位置に形成されている。すなわち、取付体110Bが構造物に固定された際に、鉛直方向に対する延設方向の角度が、異なる第1の角度(約75°)または第2の角度(約45°)のいずれの場合であっても、取付体110Bが配設体130を所定の配置姿勢で延設部115に支持可能である。よって、取付体110Bは、2つの異なる角度で傾斜する構造物に対して配設体130を設置可能とするものである。なお、ビス固定孔の配列は、上記実施形態に限定されるものではなく、各ビス固定孔は、所定の角度でなく、マトリックス状または網目状に(縦横に等間隔または任意の間隔で)多数点在するように形成されてもよい。
【0056】
(3)本発明の配設装置および取付体は、上記実施形態に限定されない。本発明の取付体に形成される止着部の構成は、種々の構成を取り得る。
図17は、本発明のさらなる実施形態の取付体110Cの正面図である。取付体110Cは、上記実施形態の取付体110と同様に、固定部112を有する基端部111と、当該基端部111からその先端に向けて延設方向に沿って延びる延設部115とからなる。また、延設部115には、基準部116、止着部117(第6ビス固定孔117f、第7ビス固定孔117g)、および、延設部115の略中央部分から先端側に向けて延設方向に沿って直線状に延びる長孔119が設けられている。第6ビス固定孔117fは、配設体130の連結部134(第2配設体130Bの第1連結孔134a)に対応し、基準部116を中心とする第1の円周上に配置された2つの孔である。また、第7ビス固定孔117gは、配設体130の連結部134(第2配設体130Bの第2連結孔134b)に対応し、基準部116を中心とする第2の円周上に配置された2つの孔である。表示部121によれば、止着部117は、基準部116を通る延設方向の直線から上下に30°の位置に形成されている。また、基準部116および長孔119は、1つの孔として一体的に連通している。この長孔119は、取付体110Cが、構造物として間柱等の垂直柱の側面に固定された際、配設体130を延設部115に固定するための被結合部として使用される。長孔119により、配設体130の固定位置を延設部115の延設方向に沿って調整することが可能である。すなわち、取付体110Cが構造物に固定された際に、鉛直方向に対する延設方向の角度が、異なる第1の角度(60°)または第2の角度(90°)のいずれの場合であっても、取付体110Cが配設体130を所定の配置姿勢で延設部115に支持可能である。よって、取付体110Cは、2つの異なる角度の構造物に対して配設体130を設置可能とするものである。
【0057】
(4)本発明の配設装置および取付体は、上記実施形態に限定されない。本発明の取付体に形成される止着部の構成は、種々の構成を取り得る。
図18は、本発明のさらなる実施形態の取付体110Dの正面図である。取付体110Dは、上記実施形態の取付体110と同様に、固定部112を有する基端部111と、当該基端部111からその先端に向けて延設方向に沿って延びる延設部115とからなる。また、延設部115には、基準部116、止着部117(第6ビス固定孔117f、第7ビス固定孔117g)、および、延設部115の延設方向に直交して直線状に延びる縦孔118が設けられている。第6ビス固定孔117fは、配設体130の連結部134(第2配設体130Bの第1連結孔134a)に対応し、基準部116を中心とする第1の円周上に配置された2つの孔である。また、第7ビス固定孔117gは、配設体130の連結部134(第2配設体130Bの第2連結孔134b)に対応し、基準部116を中心とする第2の円周上に配置された2つの孔である。表示部121によれば、止着部117は、基準部116を通る延設方向の直線から上下に30°の位置に形成されている。また、縦孔118は、取付体110Dが、構造物として胴縁等の水平材の上面または下面に固定された際、配設体130を延設部115に固定するために使用される。取付体110Dは、2つの異なる角度の構造物に対して配設体130を設置可能とするものである。すなわち、取付体110Dが構造物に固定された際に、鉛直方向に対する延設方向の角度が、異なる第1の角度(60°)または第2の角度(0°)のいずれの場合であっても、取付体110Dが配設体130を所定の配置姿勢で延設部115に支持可能である。よって、取付体110Dは、2つの異なる角度の構造物に対して配設体130を設置可能とするものである。この例では、同じビス固定孔を用いずに2つの角度に対応しているが、縦孔118を省略し、配設体130の結合部の位置に従って縦方向に並ぶ2つの第6ビス固定孔117f(または第7ビス固定孔117g)が、水平材への固定に使用されてもよい。さらに、長孔118の1つと、第6ビス固定孔117f(または第7ビス固定孔117g)との間隔を、配設体130の結合部の間隔に対応させることで、垂直柱(第3の角度(90°))に対応できるようにしてもよい。
【0058】
(5)本発明の配設装置および取付体は、上記実施形態に限定されない。本発明の取付体に形成される基準部および/または指標部の構成は、貫通孔でなくてもよい。例えば、基準部(または指標部)が係合爪として形成され、該係合爪を貫通孔として形成された指標部(または基準部)に引っ掛けつつ、基準部を回動軸として配設体を回動させてもよい。
【0059】
(6)本発明の配設装置および取付体は、上記実施形態に限定されない。本発明の取付体の被結合部の構成は、貫通孔でなくてもよい。例えば、被結合部は、ビスが螺合される薄肉により塞がれた窪みであってもよい。
【0060】
(7)上記実施形態では、構造物は、壁裏に構築される筋交い、間柱および胴縁として例示され、配設体は、壁裏に隠蔽されて配設される配線ボックスとして例示された。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではない。すなわち、配設体は、壁裏に隠蔽されるものに限らない。また、配設体は、ボックスに限らず、延設部に留め付けられて、配線・配管材を延設部に取り付けるための配線・配管材取付具であったり、水栓器具を取り付ける継手などの配管用継手取付具であってもよい。また、配設体が設置される対象である構造物は、壁材の設置面などの想定され得るいかなる構造物をも含んでいる。
【0061】
(8)本発明の配設装置は、上記実施形態に限定されない。本発明の配設体の構成は、有底四角箱状のボックスでなくてもよい。例えば、ボックスは丸型であってもよく、その場合の所定の配置姿勢は、ユーザーによって適宜設定されてもよい。
【0062】
(9)本発明の配設装置は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、配設装置は、異なる複数のサイズの配設体から構成される配設体群を備えるが、本発明はこれに限定されず、配設体が1サイズの配設体のみから構成されてもよい。
【0063】
(10)本発明の配設装置の取付体は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、取付体は、その基端から先端まで延びる平面視L字形状の板体から構成されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、取付体は、構造物に固定される固定部、および、固定部から延設方向に延び出る延設部を有すればよく、固定部および延設部を同一面上に含む直線状に延びる板体や、厚みを有する複雑な立体形状等で構成されてもよい。
【0064】
(11)本発明の配設装置は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態では、配設装置は、配設体を取付体に2本のビスで固定しているが、本発明はこれに限定されず、1本のビスのみで固定してもよく、または、3本以上のビスで固定してもよい。
【0065】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0066】
10 設置構造
11 構造物
11A 第1の筋交い(構造物)
11B 第2の筋交い(構造物)
11C 間柱(構造物)
11D 胴縁(構造物)
100 配設装置
110 取付体
111 基端部
112 固定部
113 位置合わせ片
115 延設部
116 基準部(被結合部)
117 止着部(被結合部)
117a 第1ビス固定孔
117b 第2ビス固定孔
117c 第3ビス固定孔
118 縦孔(被結合部)
119 長孔(被結合部)
121 表示部
130 配設体(130A 第1配設体、130B 第2配設体)
131 底壁
132 周壁
132a 第1の組の対向壁
132b 第2の組の対向壁
133 指標部(結合部)
134 連結部(結合部)
134a 第1連結孔
134b 第2連結孔
134c 第3連結孔
135 器具取付部
151 第1ビス
152 第2ビス