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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061900
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】角度調整器
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/30 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
G01D11/30 S
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044411
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2020145834の分割
【原出願日】2020-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直紀
(57)【要約】
【課題】直交する2方向に角度調整することができるコンパクトな角度調整器を提供する。
【解決手段】ベースプレートと、対向する一対のフランジ部を有し前記ベースプレートに当該ベースプレートと直交する軸の周りに回動可能に結合された第1枠体(12)と、検知器の取付け面を有し、前記第1枠体の前記一対のフランジ部に前記軸と直交する軸の周りに回動可能に結合された第2枠体(13)とを備えた角度調整器において、第2枠体は第1枠体の一対のフランジ部に面接触する一対のフランジ部を備え、第2枠体の一対のフランジ部には当該第2枠体の回動軸を中心とする円弧状の角度範囲規制用スリットが上記回動軸を挟むようにして2つ形成され、2つの角度範囲規制用スリットのうち一方のスリットは、他方のスリットよりも回動軸に近い位置に形成されているようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
対向する一対のフランジ部を有し、前記ベースプレートに、当該ベースプレートと直交する軸の周りに回動可能に結合された第1枠体と、
検知器の取付け面を有し、前記第1枠体の前記一対のフランジ部に、前記軸と直交する軸の周りに回動可能に結合された第2枠体と、
を備えた角度調整器であって、
前記第2枠体は、前記第1枠体の前記一対のフランジ部に面接触する一対のフランジ部を備え、
前記第2枠体の前記一対のフランジ部には、当該第2枠体の回動軸を中心とする円弧状の角度範囲規制用スリットが、
2つの前記角度範囲規制用スリットは、前記回動軸を挟んだ位置に設けられ、
2つの前記角度範囲規制用スリットのうち一方のスリットは、他方のスリットよりも前記回動軸に近い位置に形成されていることを特徴とする角度調整器。
【請求項2】
前記角度範囲規制用スリットには、前記第2枠体の前記一対のフランジ部と前記第1枠体の前記一対のフランジ部とを回動不能に固定するためのボルトがそれぞれ挿通され、
2つの前記角度範囲規制用スリットのそれぞれに挿通された2つの前記ボルトは、各中心が前記回動軸の中心と一直線上に並ばないように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の角度調整器。
【請求項3】
ベースプレートと、
対向する一対のフランジ部を有し、前記ベースプレートに、当該ベースプレートと直交する軸の周りに回動可能に結合された第1枠体と、
検知器の取付け面を有し、前記第1枠体の前記一対のフランジ部に、前記軸と直交する軸の周りに回動可能に結合された第2枠体と、
を備えた角度調整器であって、
前記第1枠体の前記ベースプレートとの接合面には、当該第1枠体の回動軸を中心とする円弧状の角度範囲規制用スリットが、前記ベースプレートが鉛直な取付け面に接合された状態で前記第1枠体の前記回動軸を挟むようにして上下に2つ形成されているとともに、
前記接合面には、前記円弧状の角度範囲規制用スリットのうち上方に位置するスリットよりも前記第1枠体の回動軸に近い部位に当該回動軸を中心とする第3の円弧状の角度範囲規制用スリットが形成されていることを特徴とする角度調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付け角度を調整可能な角度調整器に関し、例えば建造物の壁面に設置される炎検知器の取付け角度を調整する角度調整器に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内部に設けられている火災報知システムに使用される火災感知器にはサーミスタを使用した熱感知器や光電式の煙感知器、赤外線センサのような素子を備え炎に固有の波長光を捉えて感知を行う炎検知器など種々の形式のものがある。このうち炎検知器は、検知範囲(視野角)が比較的狭いため、監視したいエリアを絞ってそのエリアが検知範囲に入るように角度調整器を使用して設置されることがある。
【0003】
従来、取付け角度を調整可能な機能を有する検出器として、特許文献1や2に記載されているものがあるが、これらの検出器は、1つの軸を中心にして角度調整可能に構成されているのみで、直交する2つの軸を中心にして角度調整可能な構造でないため、角度調整方向が制限されるという課題がある。
これに対し、図8(A)に示すように、取付け面に接合されるベースプレート11と、該ベースプレート11と直交する方向の軸(X軸)を中心にして左右方向に回動可能な第1枠体12と、該第1枠体12に支承され取付け面と平行な方向の軸(Y軸)を中心にして前後方向に傾動可能な第2枠体13とを備えるとともに、それぞれの調整角度を確認するための目盛りを設けた角度調整器がある。なお、この角度調整器においては、第2枠体13の前面部に炎検知器20が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60-146875号公報
【特許文献2】特開平8-201180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8に示されている角度調整器においては、図7(A)に示す第1枠体12において上下に存在する円弧状のスリット15a,15bが設けられていないもの、即ち回転軸Oを中心にして左右に円弧状のスリットが設けられた構成であり、これらのスリットにネジを挿通して締め付けることで回転が阻止された状態を維持するように構成されている。そして、ベースプレート11と第1枠体12には調整角度を確認するための目盛りが、また第2枠体13には指針となるマークが印刷によって付されていた。そのため、部品コストが高くなるという課題があった。
【0006】
また、図8に示されている従来の角度調整器においては、垂直な壁面に取り付けられた際に、枠体13の前面部に固定される炎検知器の重量で、図7(B)に示すように、第2枠体13がベースプレート11に対して回動する方向のモーメントMが枠体12に作用することとなる。しかるに、従来の角度調整器においては、第1枠体12に対して取付け面と平行な方向の軸(Y軸)を中心にして前後方向に傾動可能に結合される第2枠体13に回動範囲を規制するスリットと、該スリットに挿通されて第1枠体12に対して第2枠体13を回動不能に固定するボルトが左右にそれぞれ1つずつ設けられていた。そのため、締め付け力が不足し易く、上記モーメントによって、炎検知器の設置角度がずれるおそれがあるという課題があることが明らかになった。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、直交する2方向に角度調整することができるコンパクトな角度調整器を提供することにある。
本発明の他の目的は、角度調整器を台座として使用して炎検知器を建造物の壁面に設置した場合に、炎検知器の重量によって回動方向のモーメントが作用することにより、炎検知器の設置角度がずれるのを防止することができる角度調整器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
ベースプレートと、
対向する一対のフランジ部を有し、前記ベースプレートに、当該ベースプレートと直交する軸の周りに回動可能に結合された第1枠体と、
検知器の取付け面を有し、前記第1枠体の前記一対のフランジ部に、前記軸と直交する軸の周りに回動可能に結合された第2枠体と、
を備えた角度調整器であって、
前記第2枠体は、前記第1枠体の前記一対のフランジ部に面接触する一対のフランジ部を備え、
前記第2枠体の前記一対のフランジ部には、当該第2枠体の回動軸を中心とする円弧状の角度範囲規制用スリットが、
2つの前記角度範囲規制用スリットは、前記回動軸を挟んだ位置に設けられ、
2つの前記角度範囲規制用スリットのうち一方のスリットは、他方のスリットよりも前記回動軸に近い位置に形成されているように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する角度調整器によれば、直交する2方向に角度調整することができるとともに、第2枠体(垂直回転枠体)の回動軸の位置を第2枠体のフランジの中心よりも一方の端部に偏った位置に設定することができ、それによって第2枠体の回動軸と直交する方向の幅を小さくして角度調整器をコンパクトにすることができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記角度範囲規制用スリットには、前記第2枠体の前記一対のフランジ部と前記第1枠体の前記一対のフランジ部とを回動不能に固定するためのボルトがそれぞれ挿通され、
2つの前記角度範囲規制用スリットのそれぞれに挿通された2つの前記ボルトは、各中心が前記回動軸の中心と一直線上に並ばないように配設されているように構成する。
【0011】
上記のような構成によれば、第2枠体(垂直回転枠体)の一対のフランジ部に角度範囲規制用スリットにボルトがそれぞれ挿通されているため、当該角度調整器に取り付けられる検知器の重量により生じる回動方向へ作用するモーメントに対する抵抗力を大きくして、検知器の設置角度がずれるのを防止することができる。また、2つの角度範囲規制用スリットに挿通されたボルトが、回動軸と一直線上に並ばないように配設したので、縁に調整角度確認用の目盛りが付されているスリットを、2つの角度範囲規制用スリットの間に設けるようにする場合に、角度調整範囲を大きくすることができる。
【0012】
本出願の他の発明は、
ベースプレートと、
対向する一対のフランジ部を有し、前記ベースプレートに、当該ベースプレートと直交する軸の周りに回動可能に結合された第1枠体と、
検知器の取付け面を有し、前記第1枠体の前記一対のフランジ部に、前記軸と直交する軸の周りに回動可能に結合された第2枠体と、
を備えた角度調整器であって、
前記第1枠体の前記ベースプレートとの接合面には、当該第1枠体の回動軸を中心とする円弧状の角度範囲規制用スリットが、前記ベースプレートが鉛直な取付け面に接合された状態で前記第1枠体の前記回動軸を挟むようにして上下に2つ形成されているとともに、
前記接合面には、前記円弧状の角度範囲規制用スリットのうち上方に位置するスリットよりも前記第1枠体の回動軸に近い部位に当該回動軸を中心とする第3の円弧状の角度範囲規制用スリットが形成されているように配設したものである。
【0013】
上記のような構成によれば、当該角度調整器を建造物の壁面に設置した場合に、第3の円弧状の角度範囲規制用スリットに挿通されたボルトの軸力(締付け力)で、検知器の重量で発生する枠体を前方に傾倒させる方向のモーメントに対抗することができるため、角度調整器の重量が大きくなることなく、第1枠体(水平回転枠体)の上端がベースプレートから浮いたり、枠体が変形を起こしたりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の角度調整器によれば、直交する2方向に角度調整することができる。また、本発明の角度調整器を台座として使用して炎検知器を建造物の壁面に設置した場合に、炎検知器の重量によって回動方向のモーメントが作用することにより、炎検知器の設置角度がずれるのを防止することができる。さらに、重量の増加を招くことなく、枠体の上部をベースプレートから引き離す方向に作用するモーメントによる枠体の変形を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る角度調整器の一実施形態を示すもので、(A)は角度調整器を斜め上方から見た斜視図、(B)は角度調整器を斜め下方から見た斜視図である。
図2】実施形態の角度調整器を構成する第1枠体(水平回転枠体)とベースプレートとの関係を示す正面図で、(A)は正規位置の状態、(B)は第1枠体をベースプレートに対して回動させた状態を示す図である。
図3】実施形態の角度調整器を構成する第1枠体(水平回転枠体)とベースプレートの上部の詳細を示す拡大図である。
図4】実施形態の角度調整器を構成する第2枠体(垂直回転枠体)の要部の詳細を示す拡大図である。
図5】第2枠体(垂直回転枠体)に形成される角度範囲規制用スリットと目盛り用のスリットとの関係を示すもので、(A)は3本のボルトを直線上に並べた場合、(B)は3本のボルトに角度θを持たせて並べた場合を示す図である。
図6】(A)、(B)は実施形態の角度調整器の変形例を示す第1枠体(水平回転枠体)の構成図である。
図7】(A)は実施形態の角度調整器の第1枠体(水平回転枠体)における角度調整範囲規制用スリットの配置を示す図、(B)は第1枠体(水平回転枠体)にかかる傾倒方向のモーメントの作用を示す図である。
図8】(A)は従来の角度調整器を示す斜視図、(B)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る角度調整器の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態の角度調整器10の斜視図、図2はその内部構造を示す断面図である。
本実施形態の角度調整器を用いて炎検知器を設置する場合、通常は背面側を取付け面に向けた状態で建造物の壁面に固定設置されるが、建造物の天井面に角度調整器を介して固定設置されても良い。
【0017】
本実施形態の角度調整器10は、図1に示すように、建造物の壁面等の取付け面に接合されて固定されるベースプレート11と、該ベースプレート11のほぼ中央に設けられる該ベースプレート11と直交する方向の軸(X軸)を中心にして左右方向に回動可能に結合された第1枠体としての水平回転枠体12と、該水平回転枠体12の左右のフランジ12A,12Bの外側面に接合されたフランジ13A,13Bを有しベースプレート11と平行な方向の軸(Y軸)の周りに前後方向に傾動可能に設けられた第2枠体としての垂直回転枠体13とを備える。なお、垂直回転枠体13のフランジ13A,13Bの上部後端側の角部は、軽量化のために斜めにカットされている。
【0018】
水平回転枠体12と垂直回転枠体13は、それぞれ一対のフランジ間を連結するベース部12C,13Cを有し、上面視でコの字状をなすように形成されている。ベースプレート11は、両側に取付け面に接合される接合翼片11A,11Bを有し、中央には接合翼片11A,11Bよりも一段高い台座部11Cを有し、この台座部11Cに水平回転枠体12が回動可能に結合される。接合翼片11A,11Bよりも一段高い台座部11Cを設けているのは、水平回転枠体12をベースプレート11に固定するボルト(5本ある)14に螺合されるナット(図示省略)が、取付け面と干渉しないようにするためである。なお、これらのナットはベースプレート11の裏面の所定位置に固着されている。
【0019】
ボルト14には例えば六角穴ボルトが使用され、図2に示すように、そのうち1本はベースプレート11のほぼ中央に配設され、水平回転枠体12の回動中心となる。残りの4本のボルトは、中央のボルトの上下と左右に配設される。具体的には、水平回転枠体12のベース部12Cには、中央のボルトを中点とし上下に位置する角度範囲規制用の円弧状をなすスリット15a,15bと、左右に位置する円弧状のスリット16a,16bとがそれぞれ形成され、これらのスリットにそれぞれボルト14が挿通されている。
これにより、ボルト14を緩めて水平回転枠体12全体を回すことによって、図2(B)に示すように、ベースプレート11に対して水平回転枠体12を回動させることができるように構成されている。
【0020】
なお、水平回転枠体12のベース部12Cが縦長形状であるため、中央のボルトから左右のスリット16a,16bまでの距離(半径)は、上下のスリット15a,15bまでの距離よりも小さくなるように設定されている。ここで、従来の角度調整器の水平回転枠体においては、前述したように、上下のスリット15a,15bがなく左右のスリット16a,16bのみ設けられていたのに対し、本実施形態の角度調整器の水平回転枠体12においては、上下のスリット15a,15bとこれに挿通されるボルト14が追加されている。そのため、各ボルトにおける軸力(締付け力)をF、図7(A)に示すように上記実施形態の角度調整器における回転中心Oと左右2つのボルトとの間の距離をrC1、rC2、上下2つのボルトとの間の距離をrC3、rC2としたとき、従来の角度調整器においては、保持力(抵抗モーメント)MCは、MC=F×(rC1+rC2)となる対し、本実施形態の角度調整器の保持力(抵抗モーメント)MCは、MC=F×(rC1+rC2+rC3+rC4)となり、回転保持力が2倍以上に向上するという利点がある。
【0021】
さらに、水平回転枠体12のスリット15aの上方の縁部は同じく円弧状をなすように形成され、その円弧状縁部の中央には、図3に示すように、小さなV字状の切欠き17aが設けられているとともに、ベースプレート11の台座部11Cの内面の上記円弧状縁部に対応する部位には、調整角度を示す目盛りが印刷等により付記されている。これにより、上記V字状の切欠き17aは、水平回転枠体12を回動させた際に、目盛りに沿って移動して指針として機能するように構成されている。切欠き17aの代わりに、山形の突起を設けても良い。
【0022】
また、垂直回転枠体13の左右のフランジ13A,13Bには、図1に示すように、水平回転枠体12に垂直回転枠体13を固定するための3本のボルト18A,18B,18Cが設けられており、そのうち1本(18C)は垂直回転枠体13の中心よりも少し下方の位置に配設され、垂直回転枠体13の回動中心となる。残りの2本のボルト18A,18Bは、回動中心のボルト18Cの斜め上方と斜め下方に配設される。具体的には、垂直回転枠体13の左右のフランジ13A,13Bには、回動中心のボルト18Cを中点とし上下に位置する円弧状のスリット19a,19bが形成され、これらのスリットにそれぞれボルト18A,18Bが挿通されている。
一方、水平回転枠体12の左右のフランジ12A,12Bの上記3本のボルト18A,18B,18Cに対応する位置には、ボルト挿通穴が形成され、フランジの内壁面には上記ボルトに螺合可能なナットが固着されている。
【0023】
さらに、垂直回転枠体13を前方へ傾動させるように回動させた際に、下部がベースプレート11と干渉しないようにするため、垂直回転枠体13のフランジ下部のベースプレート11寄りの角部は円弧状に形成されている。
上記のように回動中心のボルト18Cを垂直回転枠体13の中心よりも少し下方位置に設定しているのは、垂直回転枠体13の高さすなわちフランジの幅を小さくして、角度調整器の前後方向の大きさを小さくするためである。また、回動中心を垂直回転枠体13の中心よりも少し下方位置に設定しているのに応じて、円弧状のスリット19a,19bは、下方に位置するスリット19bの方が、上方に位置するスリット19aよりも回動中心との距離(半径)が小さな位置に形成されている。
【0024】
さらに、垂直回転枠体13の左右のフランジ13A,13Bのうち一方のフランジ13Aには、上記ボルト18A,18Bが挿通されるスリット19a,19bの他に、2つのスリット19a,19b間に位置する第3のスリット19cが設けられ、このスリット19cの縁部には調整角度を示す目盛りが印刷等により付記されている。
また、水平回転枠体12のフランジ12Aには、図4に示すように、上記スリット19cの開口に臨む部位に、ボルト18Cを中心とする円の径方向に長い長穴17bが形成されており、スリット19cと長穴17bとが重なるように構成されている。これにより、垂直回転枠体13を回動させた際に、長穴17bが目盛りの指針として機能するようになる。その結果、垂直回転枠体13には印刷による指針となるマークを付す必要がなくなり、部品コストを低減することができる。
【0025】
また、図8に示す従来の角度調整器においては、左右4本のボルトで固定していたが、本実施形態の角度調整器では左右6本のボルトで固定するため、炎検知器の重量により生じる傾倒方向へ作用するモーメントに対する抵抗力を大きくすることができる。
具体的には、各ボルトにおける軸力(締付け力)をF、図8に示す従来の角度調整器における回転軸とボルトとの間の距離をrA、図4に示すように上記実施形態の角度調整器における回転軸と2つのボルトとの間の距離をrB1、rB2としたとき、それぞれの保持力(抵抗モーメント)MA,MBは、図8の従来品が、MA=(F×rA)×2、本実施形態の角度調整器が、MB=F×rB1+F×rB2={F×(rB1+rB2)}×2となる。
ここで、それぞれ回転軸とボルト間の距離rA、rB2を、rA≒rB2とすると、本実施形態の角度調整器の方が、従来品よりも(F×rB1)×2だけ保持力が増加していることが分かる。従って、本実施形態の角度調整器は、炎検知器の重量で垂直回転枠体13が回転して角度がずれるのをより確実に防止することができる。
【0026】
さらに、本実施形態の角度調整器10においては、垂直回転枠体13のフランジ側部の3本のボルト18A,18B,18Cが一直線上に並ばず、図4に示すように、角度θ(≠180°)を有するように設定されている。上述したように、本実施形態では、回動角度範囲を規制するスリット19a,19b間に、回動角度を確認するための目盛りが付されたスリット19cが設けられているため、3本のボルト18A,18B,18Cが一直線上に並ぶように設けた場合、図5(A)に示すように、それぞれのスリット19a,19b,19cの角度は90度未満の長さに制限されて、垂直回転枠体13の調整可能な角度も90度未満に限定されてしまう。
【0027】
これに対し、3本のボルト18A,18B,18Cが中心角θを有するように設定されると、図5(B)に示すように、各スリット19a,19b,19cは120度弱の範囲まで延長することができ、調整可能な角度も最大で120度弱まで設定可能になる。
なお、3本のボルト18A,18B,18Cを一直線上に並べるようにしても、調整角度確認用のスリット19cの半径位置を、角度範囲規制用のスリット19a,19bよりも小さくして、スリットの一部が径方向に重なるように形成することで、調整可能な角度を90度以上に広げることも可能である。しかし、そのように調整角度確認用のスリット19cの半径を小さくして回動中心に近い位置に形成すると、同一寸法当りの目盛りの刻み幅が狭くなり、角度の読み取り精度が悪くなるという欠点が生じるが、3本のボルトが中心角θを有するように設定することでそのような欠点を回避することができる。
【0028】
図6(A),(B)には、上記実施形態の角度調整器10の変形例が示されている。
このうち、図6(A)に示す変形例は、上記実施形態と図8に示す従来の角度調整器では、図7(A)に示すように、枠体12に形成されている左右のスリット16a,16bが、上下のスリット15a,15bの中間に形成されていたものを、上側のスリット15aに近い位置に形成するようにしたものである。また、図6(B)に示す変形例は、左右のスリットを設ける代わりに、上側のスリット15aに近い位置に、角度範囲の広いスリット16cを形成するようにしたものである。
【0029】
図8に示す従来の角度調整器においては、垂直な壁面に取り付けられた際に、枠体13のベース部13Cの前面に固定される炎検知器の重量で、図7(B)に示すように、枠体12の上部がベースプレート11から離れる方向に傾倒させるモーメントMが枠体12に作用することにより、枠体12の上端がベースプレート11の表面から浮いてしまったり、枠体12が変形を起こしたりするおそれがある。
なお、枠体12の変形を防止するために枠体12の厚みを厚くすることが考えられるが、そのようにすると角度調整器の重量が大きくなってしまうという課題が発生する。
【0030】
これに対し、図6(A)に示す変形例においては、左右のスリット16a,16bが、上側のスリット15aに近い位置に形成されることで、左右のスリット16a,16bに挿通されるボルトB2の位置が高くなり、ボルトの軸力(締付け力)で、炎検知器の重量で発生する枠体12を前方に傾倒させる方向のモーメントMに対抗することができる。そのため、枠体12の上端がベースプレート11から浮いたり、枠体12が変形を起こしたりするのを防止することができる。なお、図7(B)において、B1は図2におけるボルト14Aに相当し、B2はボルト14Cに相当し、B3はボルト14Bに相当する。
【0031】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、角度調整器として0°~90°の範囲で角度調整可能なものを示したが、垂直回転枠体13のフランジ13A,13Bの下部後端側のみでなく下部前端側も湾曲した形状を有するように形成することで、90°以上の範囲で角度調整できるように構成することも可能である。このような構成は、角度調整器が天井面に取り付けられる場合に有効である。
【0032】
また、上記実施形態では、水平回転枠体12の回転中心と垂直回転枠体の回転中心になる回動軸にボルトを使用しているが、これらの回動軸はピン軸であっても良い。
さらに、上記実施形態では、炎検知器を設置するために角度調整器を使用すると説明したが、設置対象は炎検知器に限定されるものではなく、火災感知器一般さらには監視カメラを設置する際にも利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 角度調整器
11 ベースプレート
12 第1枠体(水平回転枠体)
12A,12B フランジ部
12C ベース部
13 第2枠体(垂直回転枠体)
13A,13B フランジ部
14 固定用ボルト
15a,15b 角度範囲規制用スリット
16a,16b 角度範囲規制用スリット
17a 切欠き
17b 長穴
18A,18B,18C 固定用ボルト
19a,19b 角度範囲規制用スリット
19c 目盛り用のスリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8