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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061910
(43)【公開日】2024-05-08
(54)【発明の名称】トイレユニット
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20240426BHJP
   E03D 11/11 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
E03D11/00 A
E03D11/11
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046275
(22)【出願日】2024-03-22
(62)【分割の表示】P 2022141344の分割
【原出願日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021145357
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598067289
【氏名又は名称】中家 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中家 正行
(72)【発明者】
【氏名】中家 淳
(57)【要約】
【課題】トイレユニットにおいてポンプのメンテナンスの手間を省く。
【解決手段】便器12と、便器12から汚水を吸い込む吸引装置16と、吸引装置16の下方に設けた汚水を蓄える汚水タンク13とを有するトイレユニットを用いる。吸引装置16は、便器12から延びる排水管25が接続される吸込口31と、吸込口31から吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる一時タンク32と、一時タンク32内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構33と、一時タンク32の下方に設けた排出口34と、排出口34を密封できる開閉可能な蓋35と、を有し、吸込機構33は吸込口31よりも上方に配されたものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器(12)と、
前記便器(12)から汚水を吸い込む吸引装置(16a)と、
前記吸引装置(16a)の下方に設けた汚水を蓄える汚水タンク(13a)と、
を有し、
前記吸引装置(16a)は、
前記便器(12)から延びる排水管(25)が接続される吸込口(31)と、
前記吸込口(31)から吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる一時タンク(32)と、
前記一時タンク(32)内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構(33)と、
前記一時タンク(32)の側面に設けた排出口(61)と、
前記排出口(61)を密封できる、開閉可能な蓋(63)と、
を有し、
前記一時タンク(32)の内部に、前記排出口(61)へ向かって下る傾斜部(65)を有し、
前記吸込機構(33)は前記吸込口(31)よりも上方に配された、
トイレユニット。
【請求項2】
前記蓋(63)の上側に、蓋(63)を吸引装置(16a)の外周面に対して開閉可能に取り付けた蝶番(64)を有する、請求項2に記載のトイレユニット。
【請求項3】
前記排出口(61)の前記蓋(63)側に、前記排出口(61)を囲んで蓋(63)への密着性を向上させるパッキン(62)を有する、請求項1又は2に記載のトイレユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトイレユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下水道が無い場所で用いられるトイレユニットでは、使用後の便器から汚水を汚水タンクへと移送する。汚水タンクが便器の真下にある場合はそのまま汚水を落下させればよいが、それでは汚水タンクから臭いが直接上がってくる。このため、便器下方に水を常時満たす領域を形成させ、一旦その領域から配管が上がった後に、汚水タンクへと繋がる構造が採用されることがある。
【0003】
このような配管構造をしているため、汚水にある程度の圧力を掛けて流さなければならない。大量の水で流すという手法もあるが、トイレユニットを設置しなければならない箇所は上水道が無い場所であることが多く、使用する洗浄水はできるだけ節約することが望ましい。
【0004】
これに対して、使用する水を節約しながら便器から汚水を排出させるために、ポンプで吸い上げることが考えられる。例えば特許文献1には、排出ポンプを介装した圧送排出機構部5を備えることで排出対象汚水(洗浄用水+汚物)を圧送排出して、洗浄用水の使用水量を減少させる節水トイレが提案されている。特許文献2でもポンプ24による排水が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-059306号公報
【特許文献2】特開2021-31867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、汚水をポンプで吸い上げると、ポンプの部品が直接汚水と接触することになるため、そのままではポンプが故障しやすい。汚水の中の固形分がポンプの部品と接しないようにフィルタを設けるということも考えられるが、その場合はフィルタが詰まりやすいためメンテナンスの必要頻度が上がり、遠隔地に設置することが多いトイレユニットとしては運用コストが上昇してしまうという問題があった。
【0007】
そこでこの発明は、故障しにくく、メンテナンスの手間が省けるトイレユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、
便器と、
前記便器から汚水を吸い込む吸引装置と、
前記吸引装置の下方に設けた汚水を蓄える汚水タンクと、
を有し、
前記吸引装置は、
前記便器から延びる排水管が接続される吸込口と、
前記吸込口から吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる一時タンクと、
前記一時タンク内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構と、
前記一時タンクの下方に設けた排出口と、
前記排出口を密封できる、開閉可能な蓋と、
を有し、
前記吸込機構は前記吸込口よりも上方に配された、
トイレユニットにより上記の課題を解決した。
【0009】
すなわち、前記吸込口より上方に前記吸込機構を設けると、前記吸込口から吸い込んだ前記汚水は、前記一時タンクが満杯にならない限りは前記吸込機構にまでは到達しない。前記一時タンクの容量を、一旦吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる程度の量を確保すれば、一回の利用で生じる汚水を全て吸い込んでも汚水は前記吸込機構に到達しない。必要な汚水を吸込みきったところで一時タンクの下方に設けた排出口の蓋を開放すれば、汚水が前記吸込機構に到達することなく、下方の汚水タンクへと移せるので、前記吸込機構が汚水を吸い込まずに済む。このため、この発明にかかるトイレユニットでは、前記吸込機構にフィルタを設けてそれを交換するといったメンテナンスが不要になり、また、軸受などの壊れやすい部品を含む前記吸込機構が汚水に浸漬されることがないので、前記吸込機構が汚水により劣化する事態をほぼ防ぐことができる。
【0010】
この発明にかかるトイレユニットでは、
前記排出口が、前記蓋を閉鎖するように付勢する閉鎖機構を有し、
前記閉鎖機構が掛ける荷重は、前記一時タンク内に所定量の汚水が蓄積されていたら、その汚水の重みにより前記蓋が開放されるように調整された実施形態を採用できる。この実施形態では、汚水を吸い込んでいる最中は、閉鎖機構による付勢した力と、吸込機構による吸引力とが合わさることで、汚水が追加されてもしばらくは蓋が開放されないまま吸引を続けることができる。一時タンクに所定量の汚水が溜まったところで、閉鎖機構による付勢した力と吸引力とを超える荷重がかかり、蓋が開放されるように調整しておくと、蓋の開放を汚水の蓄積に連動させて自動的に行うことができ、汚水タンクへの移行をスムーズに進行させることができる。これらの運用を電子的な時間計測やセンサによる情報などによる制御がなくとも行うことができる。特に開閉装置がエラーを起こしやすい過酷な設置環境において望ましい。
【0011】
またこの発明にかかるユニットでは、別の実施形態として、
前記蓋の開閉と、前記吸込機構の稼働/停止を制御できる制御装置を有し、
前記制御装置は、
前記蓋を閉鎖し、
前記吸込機構を稼働し、前記汚水を前記便器から吸込み、前記排水管から吸い込みきった後に、吸込機構を停止し、
この停止と同時又はそれより後に、前記蓋を開放して、前記一時タンクに蓄えた汚水を前記汚水タンクへと落下させる
実施形態を採用できる。
この実施形態では、蓋の開閉を制御装置によってタイミングを定めて行う。汚水の一時タンクへの吸込みと落下を、確実なタイミングで実行することができる。制御装置によるコストを許容でき、制御装置がエラーを起こしにくい環境であると好ましい。
【0012】
さらに、この発明は、
便器と、
前記便器から汚水を吸い込む吸引装置と、
前記吸引装置の下方に設けた汚水を蓄える汚水タンクと、
を有し、
前記吸引装置は、
前記便器から延びる排水管が接続される吸込口と、
前記吸込口から吸い込んだ前記汚水を一時的に収容できる一時タンクと、
前記一時タンク内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構と、
前記一時タンクの側面に設けた排出口と、
前記排出口を密封できる、開閉可能な蓋と、
を有し、
前記一時タンクの内部に、前記排出口へ向かって下る傾斜部を有し、
前記吸込機構は前記吸込口よりも上方に配された、
トイレユニットによっても上記の課題を解決した。
【0013】
すなわち、このさらなる発明では、排出口を一時タンクの側面に設けて、傾斜部によって汚水を排出口へと導く構造にすることで、汚水の重量によって排出口の蓋にかかる力は、排出口が一時タンクの下方に設けられた上記の形態よりも軽減される。これにより、密封するために蓋に掛けることが必要な力も軽減することができるので、蓋に付勢する閉鎖機構や制御装置を備えなくても、吸引機構による負圧だけで排出口を十分に密封することができる。吸引が停止すれば、傾斜部により生じる排出口への圧力で蓋が押されて開き、自動的に汚水を排出することができる。
【0014】
また、上記のさらなる発明では、上記蓋の上側に、蓋を吸引装置の外周面に対して開閉可能に取り付けた蝶番を有する形態を採用することができる。蝶番により、蓋も荷重がかかっていないか、蓋を吸引する力が蓋を開けようとする力より大きければ蓋は閉まっており、蓋を開けようとする力が上回ったときのみ蓋が自動的に開くようになる。
【0015】
さらに、上記のさらなる発明では、上記排出口の上記蓋側に、上記排出口を囲んで蓋への密着性を向上させるパッキンを有する形態を採用することができる。パッキンを設けることにより、吸引時の密封性を向上させて、吸引力を高めることができる。
【0016】
これらの発明はさらに、
前記汚水タンクが、便器と並んで設けてあり、
前記汚水タンク内に設置する可撓性を有する袋である洗浄水袋と、前記洗浄水袋内に充填した洗浄水を汲み上げるポンプとを有する構成を採用できる。汚水タンクを便器の下方に据えようとすると、便器のある床面の高さを上げなければならず、バリアフリーな構成にすることが難しくなる。そこで、汚水タンクを便器の下方ではなく、便器と並んで設ける、すなわち便器と同じ高さかそれに近い高さに設置すると、便器の設置高さを下げてバリアフリーな設計がしやすくなる。一方で、吸込機構による吸引力で吸い上げることができるので、汚水タンクが便器より高い配置となっても利用することができる。上記吸込機構により一時タンクに吸い込むだけの力を発揮させることで、汚水タンクの投入口が便器より高い位置にあっても、十分な圧力で吸い上げて運用することができる。
【0017】
そして、洗浄水と汚水とのどちらも蓄えておくトイレユニットでは、洗浄水を充填した使用開始の段階では、汚水タンク内にはその洗浄水を利用した後の汚水を蓄えるためのスペースを確保することになる。補充しない限り洗浄水の残存量は使用と共に減少していき、それに応じて汚水タンク内に汚水が蓄積されていくので、徐々に汚水タンク内で汚水が占有する容量が増加していく。この洗浄水の減少量と、汚水タンク内の汚水の増加量は、汚物自体が占める容量による多少の変動はあるものの、ほぼ対応する関係にある。この発明はこのことを利用している。洗浄水を、形状を固定したタンクに詰めるのではなく、汚水タンク内に設置した可撓性を有する袋に入れておくと、当初は余剰スペースとなっている汚水タンク内を、洗浄水を入れるスペースとして活用することができる。利用が進むと、洗浄水袋の中に残る洗浄水量が減っていき、それとともに汚水タンク内に導入されて増加した汚水に押されて洗浄水袋の容積が小さくなる。すなわち、洗浄水を確保するスペースと汚水を保管するスペースとを共有し、その増減に合わせてシームレスに容積を活用できる。バリアフリーのために便器の下部に置くことができず便器と並んで設けた汚水タンクに加えて、さらに別途洗浄水用のタンクを設けようとすると、さらにトイレユニット内にスペースを確保しなければならなくなるが、汚水タンク内に設けた洗浄水袋に洗浄水を収容しておくことで、洗浄水用のタンクに必要なスペースを省くことができるので、バリアフリー構成と省スペースという二つの効果を併存できる。
【0018】
上記の洗浄水袋を有する構成では、前記ポンプからの洗浄水を通す配管が、洗浄水袋の口から抜き出され、便器へ接続されており、
前記便器からの汚水を通す排水管が、汚水タンクの洗浄水袋の口以外の箇所に接続される、実施形態を選択できる。
【0019】
この発明のトイレユニットを用いて、便器の下ではなく便器と並んで設置した汚水タンクの中に設けた前記洗浄水袋から抜き出した洗浄水を用いて便器を洗浄し、便器から吸い上げられた汚水を前記洗浄水袋以外の部分の汚水タンク内へ導入する、トイレユニットの運用方法が実現できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかるトイレユニットは、メンテナンスの手間が省けた省洗浄水のトイレユニットとして低コストで運用ができる。また、便器から汚水を吸い上げて汚水タンクに格納できるので、汚水タンクを便器の下に置くのではなく便器と同じ高さに設置しても問題なく運用できるので、バリアフリー対応のトイレユニットとしての運用もしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の第一の実施形態にかかるトイレユニットの実施形態例を示す側面断面図
図2】(a)吸引装置の実施形態例図、(b)ファンとモーターの実施形態例図
図3】(a)実施形態にかかるトイレユニットの吸引開始前の状態図、(b)吸引開始後の状態図、(c)一時タンクに汚水が到達した状態図、(d)一時タンクに汚水を吸引しきった状態図、(e)汚水タンクへ落下させる状態図
図4】(a)洗浄水袋を満水にした使用開始時点の汚水タンクの状況図、(b)洗浄水が減ってきた段階での汚水タンクの状況図、(c)洗浄水を使い切る直前の汚水タンクの状況図
図5】第二の実施形態における制御装置の配線例図
図6】(a)この発明の第三の実施形態にかかるトイレユニットの実施形態例を示す側面断面図、(b)(a)の排出口付近の拡大断面図、(c)(a)の排出口の蓋を開けた状態の拡大斜視図、(d)(c)の蓋が閉まった状態の拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明について具体的な実施形態を挙げて説明する。まず、第一の実施形態について、図1にトイレユニット11の側面断面図を示す。
【0023】
この実施形態にかかるトイレユニット11には、便器12が備えてある。図では洋式便器1つを備えた実施形態を記載しているが、和式便器でもよいし、男性小用便器でもよい。また、1つに限られず、2つ以上の便器12が備えられていてもよい。ただし、この発明のスペースを最小限にする効果をもっとも好適に発揮しようとすると、洋式便器又は和式便器を1つのみ備えているトイレユニット11であるのが最も効果が高い。
【0024】
トイレユニット11は、汚水タンク13を有する。この実施形態では便器12を有するフロアの便器12と同じ高さに、便器12と並んで設置している。なお、これに限らず便器12のある個室内とは別の区画に設置してもよい。ただし、この発明では後述する吸引
装置16があり汚水を引き上げることができるので、汚水タンク13の設置箇所は便器12のあるフロアの床下や地下の下方に限定されず、自由な位置に設置することができる。汚水タンク13自体は樹脂製又は金属製であり、形状を保持できるものであるとよい。また、汚水P自体が外に漏れないように当然に水密性を有する必要がある。
【0025】
トイレユニット11は、汚水タンク13の中に、洗浄水袋20を有する。洗浄水袋20は可撓性がある袋であって、水密性があり、中に洗浄水Cを蓄えておくことができる。洗浄水袋20の内部に蓄えた洗浄水Cと、洗浄水袋20の外部である汚水タンク13に投下される汚水Pとが混ざらないことが必要である。洗浄水袋20として具体的にはゴムなどの樹脂シート製の袋を用いることができる。薄すぎると水圧やその他の原因で破れてしまうことがあるため、通常の利用では破れない程度の耐久性が必要である。用いる樹脂にもよるが、シートの厚さは0.5mm以上であると望ましい。一方で、シートが厚すぎると、内部の洗浄水が減少しても内部の空間を維持したままになるおそれがあるため、厚さ5mm以下であるとよい。
【0026】
トイレユニット11は、洗浄水袋20の洗浄水Cを汲み上げて配管22から便器12内のノズル23へ送り込む圧力を生じさせるポンプ21を有する。図1の実施形態では、汚水タンク13の上部にポンプ21を備えて、ポンプ21から下方へ延びる取水管21aを洗浄水袋20の中へと差し込み、洗浄水袋20に蓄えた洗浄水Cを汲み上げる形態を示す。ポンプ21の設置形態はこれに限られるものではなく、洗浄水袋20の水を配管22へと圧力を掛けて送出できるものであればよい。例えば、洗浄水袋20の中に、水中に沈めて設置するポンプ21を設置し、そこから洗浄水袋20の外まで汲み上げて配管22へ送り込む形態でもよい。
【0027】
汚水タンク13は、洗浄水袋20の口20aを上方に向けて開放して固定できる洗浄水取出口15を上面に有している。図1の実施形態ではこの洗浄水取出口15の上にポンプ21を据えており、洗浄水取出口15を通して取水管21aを洗浄水袋20内へと挿入している。ポンプ21から延びる配管22は便器12に接続され、導入された洗浄水Cが便器12内のノズル23から噴出される。なお、配管22には弁が設けられており、必要なときに操作した場合のみノズル23から洗浄水Cが噴き出る。ただし、それらの弁や操作部等はここでは略記する。
【0028】
便器12内には水(又は汚水P)が蓄えられている。便器12の下部は排水管25に繋がっている。なお、図示しないが、排水管25又はそれとの接続部に、逆流を防ぐための逆止弁を設けておくとよい。排水管25は、便器12内の水面を維持するために、一旦便器12の水面より高い位置を経由するか、又は便器12の水面より高い位置まで到達する。排水管25の先は、吸引装置16の吸込口31に接続される。吸引装置16は、ノズル23からの洗浄水Cの噴出と合わせて駆動し、便器12から汚水Pを吸い込む。
【0029】
吸引装置16の構造例を図2の断面図に示す。吸引装置16は、便器12から延びる排水管25が接続される吸込口31と、吸込口31から吸い込んだ汚水Pを一時的に収容できる一時タンク32と、一時タンク32内の気体を排出して吸込み圧力を生じさせる吸込機構33と、一時タンク32の下方に設けた排出口34と、排出口34を密封できる、開閉可能な蓋35とを有する。
【0030】
吸込口31は排水管25に、空気が漏れる隙間が生じないように密封して接続されている。吸込機構33による吸込み圧力を低下させないためである。
【0031】
一時タンク32は、便器12の一回分に使用される洗浄水Cよりも大きな一時収容容量を有する。具体的には、一回分の洗浄水Cの使用量に加えて追加されることが想定される
一回分の汚物量を加算した容量よりも大きな一時収容容量を有している。洗浄水Cと汚物とが合わさった一回分の汚物を一時的に収容できることが必要だからである。なお、ここで一時タンク32の一時収容容量とは、吸込口31の下側の縁31aよりも下に位置する容量である。吸込口31の下側の縁31aよりも上の部分にまで水位が上がると、吸込口31から便器12へ逆流する恐れがあるため、縁31aよりも上側の空間は、排出口34へ導入するまでの一時的な収容の役に立たない。なお、一回の使用ごとに収容した分を、後述する排出口34から排出するため、2回分の使用量を超える一時収容容量を確保しなくてもよい。
【0032】
吸込機構33は、一時タンク32内の気体を排出するものであり、具体的構成としては、モーター51と、モーター51に接続された回転軸54と、回転軸54の周りに据えられたファン52,53と、ファン52,53を格納する吸引室55と、気体を排出する排出口56とを有する。吸引室55内に格納されるファン52,53の構成は特に限定されないが、単独のファンのみであると、隙間から逆に空気が入ってきたりして、吸引する力が足りなくなりやすい。このため、図2(b)の展開図に例示するような、回転ファン53と固定ファン52とを組み合わせたりした、密封性の高いファンを採用することが望ましい。吸込機構33としては例示する形態に限らず、真空吸引できる程度の吸込み圧力を生じさせることができるものであれば、特に限定されない。
【0033】
ただし、吸込機構33は吸込口31よりも上方に配されることが必要である。上方であるとはすなわち、吸込口31の下側の縁31aの位置よりも、吸込機構33の気体を吸い込む部分の最も下側の位置が、上方にあることを意味する。そのように配置すると、吸込口31から吸い込まれた汚水Pが吸込機構33に吸い込まれることをほぼ防止できる。より望ましくは、吸込口31の上側の縁31bの位置よりも、吸込機構33の気体を吸い込む部分の最も下側の位置が上方にある形態である。図2の実施形態では、吸込機構33の全部を吸込口31の上側の縁31bの位置よりも上に配置している。
【0034】
このように吸込機構33は吸込口31よりも上方に配されることで、吸込機構33が汚水Pを吸い込まずに済むため、吸込機構33のファン52,53やモーター51が汚れることを防ぐためのフィルタなどを設置する必要がなくなる。これにより、定期的なフィルタ掃除のメンテナンスが要らなくなり、フィルタが介在することで吸込み圧力が低減することも防止でき、安定した出力でトイレユニットを運用することができる。
【0035】
排出口34は、一時タンク32の下方に設けられ、一時タンク32に一時的に収容された汚水Pを汚水タンク13へ導入するものである。一時タンク32の下方とは一時タンク32の底にある汚水Pも排出できる位置であることをいう。すなわち排出口34は、必ずしもタンクの底面でなくてもよく、側面の底部近傍に設けられていてもよい。ただし、底面に設けられていると、汚水Pが残存しにくく運用しやすい。
【0036】
排出口34に設けられる蓋35は、排出口34を密封して閉鎖でき、また開放も可能である。ここで密封とは、蓋35が閉鎖されている際には汚水Pが汚水タンク13に落下せず、一時タンク32内に留めておける程度の気密性・水密性が確保できればよく、汚水Pの一部が落下するも大半がとどまる程度の漏れがあってもよい。ただし、気密性・水密性が高いことが望ましい。
【0037】
蓋35を閉鎖する機構としては、例えば、物理的な重量による閉鎖機構36を設ける第一の実施形態と、電気的に制御装置45からの指示によってモーターなどで駆動する開閉装置41を設ける第二の実施形態が挙げられる。
【0038】
図2(a)では閉鎖機構36を設ける第一の実施形態を例示する。蓋35を開閉自在に
する軸37の蓋35とは反対側に、所定の質量を有して蓋35を閉鎖するように付勢するように荷重を掛ける閉鎖機構36を取り付ける。閉鎖機構36が掛ける荷重は、蓋35に内側からかかる力が無ければ蓋35を閉鎖し、一時タンク32内に所定量の汚水Pが蓄積されていたらその汚水Pの重みにより蓋35が開放されるように調整する。ここで所定量とはある程度調整できるが、便器12の一回分の洗浄水Cの量か、それに想定される汚物の量を加算した量の範疇で適宜調整するとよい。このように適切な調整をすると、閉鎖機構36に電子的な制御機構を設けることなく、吸込機構33が便器12から適切に汚水Pを吸い込む変化に従って、自動的に蓋35を閉鎖し、必要なタイミングで開放させることができる。
【0039】
この閉鎖機構36による蓋の閉鎖と開放の手順例を、図3を用いて説明する。便器12を使用した直後の状態を図3(a)に示す。トイレユニット11に供えられた所定のスイッチやボタンなどが操作された指示に従って、ポンプ21を駆動させてノズル23から洗浄水Cを放出する。この段階では蓋35は閉鎖機構36による荷重によって閉鎖されている。洗浄水Cの放出による洗浄開始と同時か、その洗浄に引き続いて、吸引装置16の吸込機構33を駆動させると、蓋35が閉鎖されているため、一時タンク32内の気体が排出されることに従って、排水管25内の汚水Pが吸い上げられる吸込み圧力が生じる。これにより、便器12内の汚水Pが排出される(図3(b))。吸込み圧力が続くと、排水管25内の汚水Pは一時タンク32に到達して一時的に収容されていく(図3(c))。この時点で蓋35にかかる荷重は、蓄えられた汚水Pも吸われる吸込み圧力によって低減されることもあり、閉鎖機構36により閉鎖するように掛ける荷重を上回るほどではないので、蓋35は閉鎖されたまま、吸込み圧力が持続する。汚水Pを吸込みきると(図3(d)、排水管25が閉鎖されないため、吸込機構33が可動していても、汚水Pはそれ以上吸われなくなり、汚水Pの全荷重が蓋35に掛かる。こうなると吸込機構33を停止してよい。吸込機構33を停止するのが望ましいタイミングは、排水管25内の汚水Pを吸い込みきったタイミングであるため、排水管25の内部容量と吸込機構33の出力から概算で求めることができるため、タイマーで制御しておくとよい。一方、閉鎖機構36が掛ける荷重はこの段階での汚水Pの全荷重より小さく調整しているので、蓋35は閉鎖しきれなくなり、開放される。一旦開放されると、汚水Pの勢いもあるため、閉鎖機構36の荷重があってもある程度汚水Pは汚水タンク13へと落下する(図3(e))。さらに、一旦開放された蓋35が戻るまで時間がかかるような機械的機構を設けておいてもよい。
【0040】
こうして汚水タンク13の中に設けられた洗浄水袋20から洗浄水Cが吸い上げられ、それとともに汚水Pが汚水タンク13の中であって洗浄水袋20の外部に蓄積される。洗浄水袋20から抜き出した洗浄水Cを用いて便器12を洗浄し、汚水を洗浄水袋20以外の汚水タンク13内へ導入する運用が可能になる。この運用方法により、一つの汚水タンク13のみの占有スペースで、洗浄水Cと汚水Pとの占有領域を分けた運用ができる。この運用の過程を図4(a)~(c)に示す。初期状態を図4(a)に示す。初期状態では汚水タンク13内の汚水Pは全て汲み取った状態か又は空の状態である。一方、汚水タンク13内に設けた洗浄水袋20内は洗浄水Cで満水にしてある。
【0041】
利用が進むと図4(b)のようになる。洗浄水袋20内の洗浄水Cが減り、洗浄水袋20が撓んで容積が減少する。一方で、洗浄水袋20の外には汚水Pが蓄積していく。使用限界での状況を図4(c)に示す。洗浄水袋20内の洗浄水Cはほぼ無くなり、洗浄水袋20は撓んで内容積がほぼなくなっている。一方、洗浄水袋20の外側には汚水Pが満たされている。こうなると汚水Pの汲み取りと洗浄水Cの補充が必要になる。これを検知するため、汚水タンク13内の洗浄水袋20の外側に、水位センサ(図示せず)を取り付けておくとよい。水位センサにより、汚水Pが所定の容量以上になったことが検知されたら、通信手段(図示せず)により遠隔地にある管理団体にその旨を通知する。通信手段としては固定電話回線や携帯電話回線、その他無線など、一般的な方法を選択できる。
【0042】
次に、第二の実施形態として、開閉装置41により蓋35の開閉と吸込機構33の稼働/停止を制御する実施形態について説明する。この実施形態を実行するトイレユニット全体を制御する機構のブロック図を図5に示す。ポンプ21と、吸込機構33と、蓋35を開閉する開閉装置41とが、一つの制御装置45と電気的に接続されている。また、便器12を使用した使用者が、洗浄の指示として押下するボタン42も接続されている。
【0043】
ボタン42が押されたら、制御装置45は、ポンプ21を駆動して、洗浄水Cを便器12へ供給させて便器12を洗浄する。この洗浄開始と同時、又は所定の時間を空けた時点で、又は初期状態の段階から、制御装置45は開閉装置41に対して、蓋35を閉鎖する指示を出し、蓋35を閉鎖しておく。そうして、制御装置45は吸込機構33を稼働させ(図3(b)の状態に相当する。)、汚水Pを排水管25を介して便器12から吸引装置16の一時タンク32へと吸い込ませる。この吸込機構33の稼働は、蓋35を閉鎖したまま、排水管25の汚水Pが吸い込みきるまで(図3(d)の状態に相当する。)続ける。これが吸い込みきるまでの時間は、排水管25の容量と吸込機構33の吸込み能力から予め計算し、制御装置45に記録させておくとよい。なお、時間制御ではなく、一時タンク32内にセンサなどを設けて制御する形態もありえるが、センサの清掃が必要になるため、メンテナンスの手間を省くという点からは時間制御の方が好ましい。吸込機構33の停止と同時又はそれより後に、制御装置45は開閉装置41に対して蓋35を開放する指示を出す。これにより、一時タンク32に収容された汚水Pが汚水タンク13へと落下する(図3(e)の状態に相当する。)。
【0044】
なお、制御装置45は、上記の水位センサや通信手段とも接続されていて、上記の通知を担当していてもよい。
【0045】
この実施形態では、汚水タンク13は、洗浄水取出口15とは別に、汚水Pが蓄積された際に汲み上げるための汚水汲上口14を上面に有している。汚水汲上口14も同様に蓋を取り付けてある。なお、汚水汲上口14の上に吸引装置16を取り付けてもよい。
【0046】
さらに、蓋と排出口の形態が異なる第三の実施形態について、図6を用いて説明する。この実施形態での吸引装置16aの基本的構造は、上記の実施形態での吸引装置16と同様である。全体像となる断面図を図6(a)に示す。吸込機構33の構造は同様のものが採用できる。汚水Pの排出に関する部分が異なる。吸引装置16aが含む一時タンク32の下方ではなく側面に、排出口61が空けられている。排出口61の下には、汚水タンク13aの汚水汲上口14が導入口を兼ねて配される。一時タンク32の底部には、排出口61に向かって下るように傾斜した傾斜部65が設けられている(図6(b))。これにより、汚水Pの重量による力が傾斜により軽減されて排出口61へ向かう。この傾斜の角度は設計次第であるが、例えば3度以上30度以下程度であると概ね重量の分散効果が効果的に得られる。
【0047】
排出口61の外周面側には、図6(c)(d)に示すように開閉する蓋63が取り付けられている。蓋63の上側には、吸引装置16aの外周面に対して蓋63が回動することで開閉可能となる蝶番64が設けられている。この蝶番64は蓋63の荷重により、何も力が加わっていなければ図6(a)に示すように、排出口61を閉ざした状態となる。また、吸込機構33が動作しているときには、排出口61に対して密着して汚水Pを漏らさないように密封性を発揮する。
【0048】
排出口61の外周側面には、排出口61を囲むパッキン62が取り付けられている。パッキン62はゴムなどの弾性体でできており、吸込機構33の動作時に密封して空気や汚水Pが漏れないようにする密封性を向上させることができる。
【0049】
すなわち、この第三の実施形態にかかるトイレユニットは、便器12から汚水Pを吸い込む際には、吸込機構33が動作することで一時タンク32内が負圧になるとともに、蓋63が排出口61を囲むパッキン62に密着して、密封される。これにより、一時タンク32の密封性を確保して、汚水Pが便器12から吸い上げられる。吸い上げられた汚水Pは、傾斜部65に沿って排出口61に向かって流れ落ちるが、排出口61が側面に設けられているために、傾斜部65の角度によって軽減された、汚水Pの重量の一部のみが掛かることになる。これにより、吸込機構33による負圧で排出口61に対して押さえつけられた蓋63は、汚水Pの圧力でも開かないままとなる。これにより、便器12から汚水Pを吸い上げる間の密封性を確保し続けることができる。汚水Pの吸い上げが完了したタイミングで吸込機構33が停止したら、傾斜部65の角度によって軽減された汚水Pの重量により、蓋63が内側から押されて開き、汚水Pが汚水タンク13aへと落下する。
【0050】
この第三の実施形態では、汚水タンク13aを真下に配置する必要がなく、配置の自由度が上がる。排出口61の下に蛇腹ホースなどの配管を設けて繋げた別の箇所に汚水タンク13aを設置してもよい。これにより、この第三の実施形態は汚水タンク13aとそれ以外の部分とを分離して設置、管理しやすく、メンテナンス性が高いものとなる。
【0051】
汚水タンク13aは、上記の汚水タンク13と同様の構成で洗浄水袋20とポンプ21を有し、洗浄水と汚水との占有体積を入れ替えつつ利用する構造を選択できる。ただし、この形態では、汚水汲上口14が、排出口61からの汚水の導入口を兼ねることができ、構造を簡略化することができる。また、洗浄水を汲み上げるポンプ21は、汚水タンク13aの外ではなく、洗浄水袋20の中で洗浄水に浸漬して汲み上げる図6のような形態でもよい。なお、このようなポンプ21を洗浄水に浸漬する形態は第一、第二の実施形態で採用してもよい。また、洗浄水袋20とポンプ21を含む洗浄水に関する要素はこの発明にかかるトイレユニットにおいて必須ではなく、別途、水道水を直結して便器に洗浄水として使う構成でもよい。
【符号の説明】
【0052】
11 トイレユニット
12 便器
13,13a 汚水タンク
14 汚水汲上口
15 洗浄水取出口
16,16a 吸引装置
20 洗浄水袋
20a 口
21 ポンプ
21a 取水管
22 配管
23 ノズル
25 排水管
31 吸込口
31a 下側の縁
31b 上側の縁
32 一時タンク
33 吸込機構
34 排出口
35 蓋
36 閉鎖機構
41 開閉装置
42 ボタン
45 制御装置
51 モーター
52 固定ファン
53 可動ファン
54 回転軸
55 吸引室
56 排出口
61 排出口
62 パッキン
63 蓋
64 蝶番
65 傾斜部
F トイレ床面
P 汚水
C 洗浄水
図1
図2
図3
図4
図5
図6