(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061941
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】検知システム及び検知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G01S7/497
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169593
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA12
5J084AB01
5J084AB07
5J084AB17
5J084AB20
5J084AC10
5J084BA03
5J084EA34
(57)【要約】
【課題】PC等の外部機器を利用することなく検知モードの設定・変更を可能にした検知システムと検知装置を提供する。
【解決手段】対象物を検知する検知ユニット1と、検知した検知情報信号に基づいて対象物を監視する監視ユニット(2)を備える。検知ユニット1は対象物を検知して検知信号を取得する検知センサー(LiDAR)3と、検知信号から検知情報信号を得る情報制御装置4を備える。情報制御装置4は、検知信号から検知情報信号を得る信号処理手段41と、検知信号中のコードパターンを検出するパターン検出手段43と、検出したコードパターンに仮体された情報を認識する認識手段44,46と、この情報に基づいて信号処理手段41を制御する制御手段45,47を備える
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要の検知領域に存在する対象物を検知するための1つ以上の検知ユニットと、前記1つ以上の検知ユニットで検知した検知情報信号に基づいて前記検知領域に存在する対象物を監視する監視ユニットを備えた検知システムであって、前記検知ユニットは対象物を検知して検知信号を取得する検知センサーと、この検知信号から前記検知情報信号を得る情報制御装置を備えており、前記情報制御装置は、前記検知信号から前記検知情報信号を取得する信号処理手段と、前記検知信号に含まれているコードパターンを検出するパターン検出手段と、検出したコードパターンに仮体された情報を認識する認識手段と、認識した情報に基づいて前記信号処理手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする検知システム。
【請求項2】
前記検知センサーはLiDARで構成される請求項1に記載の検知システム。
【請求項3】
前記認識手段はコードパターンに仮体された情報としての検知モードを認識する手段であり、前記制御手段は、認識した検知モードに基づいて前記信号処理手段又は前記検知センサーにおける検知モードを設定・変更するモード設定手段である請求項2に記載の検知システム。
【請求項4】
前記認識手段はコードパターンに仮体された情報として対象物の固有情報を認識する手段であり、前記制御手段は、認識した固有情報を前記検知情報信号に重畳する固有情報重畳手段である請求項2に記載の検知システム。
【請求項5】
前記検知モードは、少なくとも検知領域を設定する検知領域モードと、検知対象を設定する検知対象モードと、検知情報信号の出力モードを設定する検知出力モードの少なくとも一つを含む請求項2に記載の検知システム。
【請求項6】
前記コードパターンは板状をしたコードパターンボードとして構成され、前記検知センサーの検知領域に掲示される請求項2に記載の検知システム。
【請求項7】
前記コードパターンは複数のセルがモザイク状に配列された正セルを含み、前記正セルは、前記検知ユニットにおける複数の異なる検知モードあるいは当該検知ユニットで検知する複数の異なる対象物の固有情報に対応したそれぞれユニークな複数の異なるコードパターンとして構成される請求項6に記載の検知システム。
【請求項8】
前記コードパターンは、当該コードパターンが検知モードと固有情報のいずれであるかを識別するための副セルを含む請求項7に記載の検知システム。
【請求項9】
前記検知ユニットは、それぞれ異なる検知領域を検知する複数の検知ユニットとして構成され、前記監視ユニットは前記複数の検知ユニットからの検知情報信号を統合する統合処理装置と、統合された検知情報信号に基づいて対象物を画像表示するモニターを備える請求項2に記載の検知システム。
【請求項10】
前記複数の検知ユニットと前記監視ユニットは通信手段にて接続され、前記検知情報信号は当該通信手段を介して検知ユニットから監視ユニットに送信される請求項9に記載の検知システム。
【請求項11】
所要の検知領域に存在する対象物を検知するための検知ユニットを含む検知装置であって、前記検知ユニットは対象物を検知して検知信号を取得するLiDARと、この検知信号から検知情報信号を得る情報制御装置を備えており、前記情報制御装置は、設定された検知モードに基づいて前記検知信号から前記検知情報信号を取得する信号処理手段と、前記検知信号に含まれているコードパターンを検出するパターン検出手段と、検出したコードパターンに仮体された情報を認識する認識手段と、認識した情報に基づいて前記信号処理手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人間や車両等の移動体を検知対象物とする検知システムと、当該検知システムに用いられる検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体を検知対象物とする検知システムとして、これまでは撮像装置で撮像した対象物の画像を画像解析して対象物を検知する検知システムが提案されている。また、近年ではレーザ光を利用したLiDAR(Laser imaging Detection and Ranging)が提案されており、例えば、特許文献1では、車両に固有のマークを配設し、このマークをLiDAR等の検知センサーで検出することにより、当該車両を検知する検知システムが提案されている。
【0003】
前者の撮像装置を利用した検知システムは、対象物に存在する文字や図柄等の視覚的に認識することが可能な情報を取得することは可能であるが、対象物を二次元的に検知しているため、対象物までの距離情報を得ることは難しい。後者のLiDARを用いた検知システムは、対象物で反射されたレーザを受光して検知を行うので三次元的な検知が可能であり、対象物の距離情報を得ることができる。例えば、道路を走行する自動車の位置や走行方向を検知して高制度の道路情報を取得することができる。あるいは、ショッピングモール内を移動する複数の人間の位置や動きを検知することができ、販売促進のための情報として取得することもできる。
【0004】
LiDARは対象物から反射された複数のレーザ光を受光し、当該対象物の位置情報を光ドットのデータとして取得し、このデータを演算処理することにより対象物の三次元的な位置情報を得ている。そのため、一つのLiDARが検知できる領域はレーザ光を照射してその反射光を受光することができる領域に限られる。そこで検知システムを検知ユニットと監視ユニットとで構成し、検知領域を複数の領域に分割した上で各検知領域をそれぞれ複数の検知ユニットで検知するようにした検知システムが考えられる。このようにすれば、各検知ユニットで得られたデータを監視ユニットで総合することにより、広い検知領域における対象物の検知を実現することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報WO2020/195607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような検知システムにおいては、システムにおける検知信号を処理する際のモードとしての検知モードを設定し、あるいは変更する際には、複数の検知センサーにおける検知モードをそれぞれ設定・変更する作業が必要とされる。このような検知モードの設定・変更は、各検知ユニットにPC(パソコン)等の外部機器を接続し、この外部機器を用いて行っている。しかし、検知領域が広くなって検知ユニットの数が二桁レベルの多数になると、各検知ユニットにPCを接続して設定・変更を行う手法では作業が煩雑なものとなる。特に、広い領域にわたって多数の検知ユニットが配設されている場合には、全ての検知ユニットに対して外部機器を接続して行う作業は時間と工数が膨大なものになる。また、設定・変更の作業には熟練技術が要求されるため、非熟練者が設定・変更を行うことは難しい。
【0007】
本発明の目的は、PC等の外部機器を利用することなく、しかも非熟練者でも容易に検知システムにおける検知モードの設定・変更を可能にした検知システムと検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検知システムは、所要の検知領域に存在する対象物を検知するための1つ以上の検知ユニットと、これら1つ以上の検知ユニットで検知した検知情報信号に基づいて検知領域に存在する対象物を監視する監視ユニットを備える。検知ユニットは対象物を検知して検知信号を取得する検知センサーと、この検知信号を信号処理して検知情報信号を得る情報制御装置を備える。さらに、情報制御装置は、検知信号を信号処理して検知情報信号を得る信号処理手段と、検知信号に含まれているコードパターンを検出するパターン検出手段と、検出したコードパターンに仮体された情報を認識する認識手段と、認識した情報に基づいて信号処理手段又を制御する制御手段を備える。
【0009】
本発明において、検知センサーはLiDARで構成されることが好ましい。また、本発明における好ましい一つの形態は、認識手段はコードパターンに仮体された情報として検知モードを認識し、信号処理手段を制御する制御手段は、認識した情報に基づいて検知モードを設定・変更するモード設定手段で構成される。本発明の好ましい他の形態は、認識手段はコードパターンに仮体された情報として対象物の固有情報を認識する手段であり、信号処理手段を制御する制御手段は、認識した固有情報を検知情報信号に重畳する固有情報重畳手段で構成される。
【0010】
本発明において、コードパターンは板状をしたコードパターンボードとして構成され、検知センサーの検知領域に掲示される構成とされる。このコードパターンは、複数の異なる検知モードあるいは複数の異なる対象物の固有情報に対応したそれぞれユニークな複数の異なるパターンとして構成される。また、コードパターンは、複数のセルがモザイク状に配列された構成であり、検知モード又は固有情報に対応される正セルを含む。さらには、当該コードパターンが検知モードと固有情報のいずれであるかを識別するための副セルを含むことが好ましい。
【0011】
本発明の検知装置は、所要の検知領域に存在する対象物を検知するための検知ユニットとして構成される。検知ユニットは対象物を検知して検知信号を取得するLiDARと、この検知信号から検知情報信号を得る情報制御装置を備えており、情報制御装置は、検知信号を信号処理して検知情報信号を得る信号処理手段と、検知信号に含まれているコードパターンを検出するパターン検出手段と、検出したコードパターンに仮体された情報を認識する認識手段と、この認識した情報に基づいて信号処理手段を制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コードパターンを検知し、検知したコードパターンに仮体された情報を認識して検知ユニットの信号処理手段を制御して検知モードの設定・変更を行うので、検知システム及び検知装置における検知モードの設定・変更に際し、熟練者が検知ユニットに外部機器を接続して設定・変更を行う必要がなく、設定・変更作業の簡略化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】検知ユニット(検知装置)のブロック構成図。
【
図3】コードパターンの平面図とコードパターンボードの斜視図。
【
図4】コードパターン(モードパターン)の対照テーブル。
【
図5】コードパターン(IDパターン)の対照テーブル。
【
図8】実施形態の検知シスムの作用を説明する概念図。
【
図9】実施形態の他の形態の作用を説明する概念図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は実施形態の検知システムの概念図である。公共施設あるいは繁華街等の人間が多数集まる領域の複数箇所にそれぞれ検知ユニット1が配設されている。ここでは道路を挟んだ両側の商店街が検知領域とされ、この商店街に検知システム1が配設されている。複数の検知ユニット1は商店街を複数の検知領域Aに区分し、各検知ユニット1は区分された各検知領域Aに存在する人間や自動車を検知対象物として検知することが可能とされている。同図に示すように、検知ユニット1は検知センサー3と、この検知センサー3で得られた検知信号を処理して検知情報信号を得る情報制御装置4を備えている。
【0015】
また、商店街の一箇所には監視センター2が設けられており、各検知ユニット1と通信回線を介して信号を送受できるように構成されている。
図1に示すように、監視センター2は、統合処理装置5とモニター6を備えている。統合処理装置5は、各検知ユニット1で検知して得られた検知情報信号を統合して対象物にかかわる画像データを生成し、生成した画像データに基づいて対象物をモニター6に表示する。監視センター2に駐在する監視員はこのモニター6の画像に基づいて検知領域の監視を行うことが可能とされている。例えば、得られた検知情報に基づいて商店街での安全対策、混雑緩和等の対応が可能になる。
【0016】
図2は検知ユニット1のブロック構成図である。検知ユニット1は検知センサー3と、この検知センサー3で得られた検知信号を処理して検知情報信号を得る情報制御装置4を備えている。この実施形態では、検知センサー3はレーザ光を送受して対象物にかかわる検知信号を得るLiDARで構成されているが、LiDARと同様な検知信号が得られるものであれば他の構成のセンサーであってもよい。
【0017】
LiDAR3については既に知られているので詳細な説明は省略するが、対象物に対してレーザ光を走査しながら投射し、対象物で反射されたレーザ光を複数の受光素子で、あるいは複数の異なるタイミングにおいて受光素子で受光し、受光したレーザ光を光電変換して検知信号を出力する。ここで、LiDAR3においてレーザ光を投射して対象物を検知する角度領域を検知領域(以下、FOV(Field Of View)と称することもある)とする。
【0018】
LiDAR3においては、対象物を空間的又は時間的に離散されたドットデータとして検知でき、検知信号はこのドットデータに対応したビット信号として出力される。また、LiDAR3は受光した受光信号の信号レベルに基づいて対象物における光反射率の違いを検知することができる。したがって、対象物のパターン、特に後述するコードパターンにおける高反射セルと低反射セルを検知かつ判別することが可能とされている。
【0019】
前記情報制御装置4は、信号処理部41と通信部42を備えている。さらに、本発明にかかわるパターン検出部43を備え、これに接続されるモード認識部44及びモード設定部45と、ID認識部46及びID重畳部47を備えている。
【0020】
信号処理部41は、LiDAR3との間で信号を送受できるように双方向接続されている。例えば、LiDAR3からの検知信号を受信し、かつ信号処理して検知情報信号を生成する。あるいは、信号処理部41からLiDAR3に対して所要の信号を送出してLiDAR3を制御する。この信号処理部41は、後述するようにモード設定部45により設定されている検知モードに基づいて信号処理を行う。すなわち、当該検知モードに規定されているアリゴリズム(演算プログラム)に基づいて信号処理を行う。処理された検知信号は検知情報信号として出力される。この検知情報信号には、検知対象としての車両や人間等の三次元位置データが含まれる。また、検知対象としての車両のID情報、すなわち車両の固有情報が含まれる。
【0021】
信号処理部41における検知モードとして、この実施形態では、現在の設定モードをリセットしてデフォルト設定とするリセットモードを含んでいる。また、他の検知モードとして、3つの検知モードを含んでいる。すなわち、具体例については後述するが、LiDAR3における光の走査角度領域であるFOVを設定する検知領域モードと、検知対象物を的確かつ高速に検知するために、対象物の形状やサイズ等の特徴に基づく信号処理を行うためのアルゴリズムにかかわる検知対象モードと、さらに、情報制御装置4から出力する検知情報信号の形態や出力形態を設定するための検知出力モードを含んでいる。これらの検知モードは信号処理に際して信号処理部41において適宜に設定されるようになっている。
【0022】
通信部42は、監視センター2に対して無線または有線の通信回線で接続されており、信号処理部41から出力された検知情報信号を監視センター2に向けて送信する。例えば、この実施形態では、通信部42は監視センター2と無線あるいは有線の通信回線の一つとしてLANにより接続されている。又は、インターネットで接続されてもよい。
【0023】
パターン検出部43は、信号処理部41において信号処理する検知信号に含まれるパターン信号を検出し、さらにこのパターン信号に含まれるモザイク状のパターンを検出する。このモザイク状のパターンは、後述するように検知モードやID情報をコード化したコードパターンとして構成されている。すなわち、このコードパターンは検知モード又はID情報が仮体されたパターンとして構成されている。パターン検出部43は検出したパターンをモード認識部44とID認識部46に出力することが可能であるが、ここでは、検出したパターンをモード認識部44とID認識部46のいずれかに選択して出力する。
【0024】
モード認識部44は、入力されたコードパターンに基づいて、後述するように当該コードパターンに対応する検知モードを認識する。なお、認識する検知モードは検知モードの種類等を含む検知モード情報のことを意味しているが、以降においては単に検知モードと称している。検知モードを認識したときには、認識した検知モードをモード設定部45に出力する。また、モード認識部44には、後述するモードパターンの対照テーブルが内蔵されている。
【0025】
モード設定部45は、前記した各検知モード、すなわち、リセットモード、検知領域モード、検知対象モード及び検知出力モードを実行させるためのソフト(プログラム)を保持している。そして、選択した検知モードを信号処理部41における検知モードとして設定することが可能とされている。モード設定部45は、モード認識部44からの検知モードが入力されたときに、当該検知モードを現在設定されている検知モードと比較し、両者が相違する際には入力された検知モードを信号処理部41に出力する。
【0026】
ID情報認識部46は、パターン検出部43から入力されたコードパターンに基づいて当該コードパターンに対応するID情報を認識する。このID認識部46には、後述するIDパターンの対照テーブルが内蔵されている。ID重畳部47は、ID認識部46で認識されたID情報を信号処理部41に出力する。
【0027】
図3(a)は本実施形態に適用されるコードパターン100の一例である。コードパターン100は3×3の枡目状の正セル101と、この正セル101の一側に配置された2つの独立した副セル102で構成されている。各セルは光の反射率が相対的に高い高反射セル、あるいは相対的に光の反射率が格段に低い低反射セルのいずれかに設定される。
図3では、便宜的に高反射セルを白色セルで表し、低反射セルを塗り潰しセルで表している。これにより、検知ユニット1においてコードパターン100を検知したときに、高反射セルと低反射セルでの光反射率の違いにより各セルを2値データとして検知でき、この2値データの配列により形成されるコードパターンから検知モードやID情報が認識できるようになる。
【0028】
2つの副セル102は、パターン検出部43においてパターンを検出する際の上下方向を特定するために利用される。また、2つの副セル102は当該コードパターンがモードパターンとIDパターンのいずれであるかを識別するためにも利用される。ここでは、2つの副セル102のうち、いずれか1つが低反射セルとして構成されたときには、当該コードパターン100は検知モードに対応したモードパターンとして認識される。また、2つの副セル102が2つとも低反射セルとして構成されたときには、当該コードパターン100はID情報に対応したIDパターンとして認識される。
【0029】
その上で、コードパターン100がモードパターンとして認識されたときには、3×3の正セル101における高反射セルと低反射セルの組み合わせパターンによりコードが構成され、前記した複数の検知モードのうちの1つの検知モードが特定される。また、コードパターン100がIDパターンとして認識されたときには、正セル101の高反射セルと低反射セルの組み合わせパターンによりコードが構成され、ID情報が特定される。
【0030】
図4は、コードパターンの1つの副セル102が低反射セル(塗り潰しセル)として構成されており、モードパターンとして構成されたときの検知モードとの対応を示す対照テーブルの一部である。この対照テーブルはモード認識部44に設定されており、縦枠に検知モード種が示されている。ここでは前記したようにリセットモード、検知領域モード、検知対象モード、検知出力モードに区分されている。
【0031】
検知領域モードはLiDAR3における検知領域を設定するモードであり、LiDAR3のFOVを制御する。検知対象モードは信号処理部41における信号処理効率を高めるためのモードであり、対象物の違いに基づく信号処理のアルゴリズムを制御する。検知出力モードは検知情報信号の出力形態を制御するモードであり、生(RAW)データ、データ出力速度、ドットデータのドット密度、信号形態等が制御される。
【0032】
この例では、検知領域モードはFOVが「60」°、「90°」、等の複数の異なるFOVに対応する複数のコードパターンで構成されている。検知対象モードは「人間」、「車両」等の複数の対象物に対応する複数のコードパターンで構成されている。検知出力モードは、LiDAR3から出力される検知信号がそのまま検知情報信号として出力される生信号「RAW」モード、あるいは単位面積当たりのドット密度を制御した密度モード、さらに、検知信号であるビット信号の信号出力速度、例えばビット出力速度「100bps」のような速度モード・・を含む異なる複数の検知出力モードに対応した複数のコードパターンで構成されている。また、リセットモードはデフォルトモードを表すコードパターンで構成されている。
【0033】
一方、
図5は、コードパターンの2つの副セル102がいずれも低反射セル(塗り潰しセル)として構成されており、IDパターンとして構成されたときのID情報との対応を示す対照テーブルの一部である。各IDパターンは、所要の構成のコードを各車両のID情報、例えば「A車」,「B車」・・として紐付けしたユニークなパターンとされている。これにより、IDパターンと各車両のID情報とを一対一に対照させることが可能になる。この場合、正セル101により構成されるIDパターンは、モードパターンの正セル101のパターンと同一のパターンとして重複されてもよい。
【0034】
これらのコードパターンは、所要の縦横寸法をしたコードパターンボード(板材)として構成されることが好ましい。例えば、
図3(b)に示すように、表面が光反射率の高い白色ボード111の表面に、正セル101と副セル102を構成するための光反射率の低い矩形の黒色シート112が選択的に貼り付けられたコードパターンボード110として形成される。すなわち、黒色シート112が貼り付けられたセルはコードパターンにおける低反射セルとして構成され、反射シートが貼り付けられておらず白色ボード111の表面が表れているセルは高反射セルとして構成される。なお、黒色シート112に代えて光反射率の低い塗料を塗布してもよい。あるいは光反射率の低いボードに光反射率の高いシートを貼り付け、あるいは光反射率の低い塗料を塗布してもよい。
【0035】
このように構成されるコードパターンボード110の縦横寸法は、検知ユニット1におけるLiDAR3の分解能や検知領域の広さ、あるいは検知対象物までの距離の違いによっても相違するが、通常では、コードパターンボード110の全体でA3用紙程度のサイズに構成されればよい。LiDAR31の分解能が高い場合にはこれよりも小さなサイズに構成され、分解能が低い場合や検知対象物までの距離が長くなれば、これよりも大きなサイズに構成されることが好ましい。
【0036】
以上の構成の検知システムにおいて、
図6(a)に検知ユニット1における動作フローを示す。システムを立ち上げると、複数の各検知ユニット1はそれぞれ対象物の検知を開始する(S11)。検知に際しては、各検知ユニット1のLiDAR3においてそれぞれの検知領域に対してレーザ光を照射し、対象物からの反射光を受光する。受光した光は電気信号に光電変換され、検知信号として出力される。この出力される検知信号は、前記したように、空間的又は時間的に離散されるとともに、対象物の光反射率の違いに基づいて信号レベルが相違するドットデータに対応した信号、ここではビット信号として出力される。
【0037】
この検知信号は情報制御装置4の信号処理部41において信号処理が行われ、検知情報信号が生成される(S12)。信号処理はモード設定部45により設定されている検知モードに基づいて行われる。通常は前回シャットダウンしたときの検知モードであるが、検知モードが設定されていないときには初期状態の検知モード(デフォルト)が設定され、この検知モードに基づいて信号処理が行われる。
【0038】
例えば、検知モードのうち、検知領域モードが「60°」に設定されているときには、信号処理部41に設定されている検知モードの信号に基づいてLiDAR3はFOVが「60°」となるようにレーザ光の走査領域を制御する。あるいは、信号処理部41において、LiDAR3から出力される検知信号のうち「60°」の領域に相当する検知信号に対して信号処理が実行され、検知情報信号を得るようにしてもよい。また、信号処理部41は、検知対象モードが「人間」に設定されているとときには、人間を検知したときに得られる特有のパターンを検知して検知情報信号を得る。さらに、信号処理部41は、検知出力モードが「100bps」に設定されているときには、信号処理により得られた検知情報信号をビットレートが100bit/secの速度で出力する。
【0039】
図1の実施形態では、検知システムは商店街に配設されており、LiDAR3は商店街の道路を走行する自動車や、歩道を歩行する人間を検知する。検知情報装置4は、平日は検知対象モードが「車両・人間」に設定されているので、信号処理部41はこの検知信号に基づいて車両や人間にかかわる検知情報信号を出力する。この検知情報信号は通信部42を通して監視センター2に送信される(S13)。
【0040】
監視センター2は、
図6(b)のフローに示すように、図示を省略した通信部において各検知ユニット1からの検知情報信号を受信する(S21)。そして、
図1に示した統合処理部5において各検知ユニット1からの検知情報信号を統合し、所定の処理を行って画像信号を生成する(S22)。そして、画像信号に基づいて三次元位置情報を含む自動車や人間を含む対象物の画像をモニター6に表示する(S23)。この画像はビット信号、すなわちドットデータに基づいてドットが集合されて対象物を表示する画像となる。監視員は、モニター6に表示された画像から対象物を確認し、検知領域に存在する車両や人間の動きを監視することができる。
【0041】
この検知システムにおいて、ステップS12における信号処理に際し、検知領域、検知対象、検知出力の各検知モードを設定する場合や変更する場合には、情報制御装置4のモード設定部45により新たに検知モードを設定し、あるいは設定されている検知モードを異なる検知モードに変更する。
【0042】
このような検知モードの設定・変更において、これまでは熟練した作業員が複数の検知ユニットのそれぞれにPC(パソコン)等の外部機器を接続し、この外部機器を操作して各検知ユニット1における検知モードを設定・変更している。そのため、設定作業が煩雑になるとともに、作業に時間がかかるという課題が生じる。この課題の改善案として、各検知ユニット1と監視センター2を接続している通信回線を通して監視センター2において各検知ユニット1の検知モードの更新を行うことも考えられるが、この場合には検知ユニット1や監視ユニット2の構造が複雑になる。また、この場合においても熟練した作業員が外部機器を用いて検知モードの設定作業を行う必要があり、作業が面倒なものになる。
【0043】
この実施形態では、検知ユニット1における検知モードの設定・変更において、
図7のフローに示すように、検知システム1が稼働している状態のときに各検知ユニット1の検知領域Aに
図3に示したコードパターンボード110を掲示する(S31)。この掲示は、人間がコードパターンボード110を手で持って各検知領域を移動してもよく、あるいはコードパターンボード110を無人車や有人車等の車両に装着した上で当該車両を検知領域内で走行させてもよい。
【0044】
各検知ユニット1では、LiDAR3において検知領域の対象物を検知するが、この際に検知領域に掲示されたコードパターンボード110も検知する(S32)。得られた検知信号は情報制御装置4の信号処理部41において信号処理される。この信号処理では、設定されている検知モードに基づいて検知情報信号が得られるが、この信号処理に際しては、検知信号を信号処理する際のデータ解析(検知信号のビット情報解析)の結果からパターン検出部43においてコードパターンボード110のコードパターンが検出される(S33)。この検出では、副セル102によりコードパターンの上下方向が検出されるとともに、この副セル102の数によりコードパターンがモードパターンであるかIDパターンであるかが検出される(S34)。
【0045】
モードパターンを検出したときには、検出したモードパターンをモード認識部44に出力する。モード認識部44は、
図4に示した対照テーブルを対照することにより、入力されたモードパターンに対応する検知モードを認識する(S35)。そして、この認識した検知モードをモード設定部45に出力する。モード設定部45は、入力された検知モードと現在の検知モードとの異同を判定し、異なる場合には当該検知モードにかかわる信号を信号処理部41に出力し、信号処理部41における検知モードを変更する(S36)。
【0046】
前記した検知モードの変更に際し、ステップS34において認識したモードパターンがリセットモードのときには、モード設定部45は設定されている検知モードをデフォルトモードに変更する。また、認識したモードパターンが検知領域モード、検知対象モード、検知出力モードのいずれかである場合には、当該モードパターンに対応する検知モードに変更する。例えば、検知領域モードのときには、検知領域モードの情報をLiDAR3に出力し、LiDAR3のFOVを「60°」、「90」°、・・のいずれかに変更する。検知対象モードのときには、「人間」、「車両」、・・のいずれかに変更する。検知出力モードのときには「RAW」、「100bps」・・のいずれかに変更する。このように、モード設定部45によって検知モードが変更されると、以降での信号処理部41での信号処理は当該変更された検知モードに基づいて行われ、得られた検知情報信号は通信部42を通して監視センター2に送信される。
【0047】
図1に示した実施形態の商店街の例では、
図8に示すように商店街が休日に歩行者天国となる場合には、検知対象を「人間」に特定することが好ましく、検知モードのうち検知対象モードを「人間」に変更する。この場合には、
図3に示した検知対象モードが「人間」となるコードパターンボード110を設定する。すなわち、正セル101については「人間」のコードパターンとし、2つの副セル102については、1つを低反射セルとしたコードパターンとして作成する。なお、この例では検知領域モード、検知出力モードについては変更しないことにしているが、これらのモードを変更する場合には別のコードパターンボードを作成する。
【0048】
そして、検知システム1を稼働させた状態で、各検知ユニット1の検知領域にコードパターンボード110を掲示する。
図8では、人間Mがコードパターンボード110を掲げて各検知ユニット1の検知領域Aの間を歩行している。あるいは、図示は省略するが、当該人間Mが自転車等で走行してもよい。または、商店街の複数の商店のうち、各検知ユニット1の検知領域Aに含まれる商店の店頭に所定のコードパターンボード110を掲示するようにしてもよい。
【0049】
これにより、検知システムを構成している複数の検知ユニット1のうち、歩行者天国の対象となる区域を検知する検知ユニット1においては、検知領域Aにコードパターンボード110が掲示され、当該検知ユニット1のLiDAR3は掲示されたコードパターンボード110を検知して検知信号を出力する。情報制御装置4では信号処理部41において当該検知信号を信号処理するとともに、パターン検出部43において検知信号に含まれるコードパターン100を検出する。
【0050】
パターン検出部43は、検出したコードパターンのうち、検出した副セル102が1つであることを認識することにより、当該コードパターンはモードパターンであることを検出し、検知したモードパターンをモード認識部44に出力する。モード認識部44は、当該モードパターンに対応する検知モードが「人間」であることを認識し、認識した検知モードをモード設定部45に出力する。このモード設定部45の出力により、信号処理部41は設定されている検知モードを、出力されてきた「人間」の検知モードに変更する。これにより、検知ユニット1における以降の検知対象は人間に限定され、信号処理部41においては検知対象から車両を除外し、検知信号を人間に対応した好適なアルゴリズムにより信号処理することができるようになり、信号処理の処理工数が削減でき、検知速度の向上につながる。
【0051】
歩行者天国の対象とされない区域を検知領域とする検知ユニット1(1A)では、検知領域Aにコードパターンボード110が掲示されないため、前記したようなコードパターンボードに基づく検知ユニット1での検知モードの変更は行われない。この例では、検知ユニット1(1A)における検知対象モードは通常時に設定されている「人間・車両」の検知モード(この「人間・車両」の検知モードのモードパターンについては
図4では図示を省略している)が保持され、人間と車両の両方を検知する。
【0052】
信号処理部41から出力される検知情報信号は通信部42を介して監視センター2に送信される。監視センター2は、複数の検知ユニット1からの検知情報信号を受信し、統合制御装置5において統合した上でモニター6に表示する。モニター6には、LiDAR3で検知した対象物が複数のドットを集合させた画像として画像表示される。これにより、監視者は商店街を歩行する人間を監視することができる。この際においても、監視センター2に送信されてくる検知情報信号は、検知対象が人間に絞られた検知情報信号であるので、統合制御装置5における信号処理工数が削減でき、処理速度の向上につながる。
【0053】
歩行者天国が終了したときには、図示は省略するが、検知ユニット1の検知領域Aに「人間・車両」の検知モードに対応するコードパターンボード110を掲示することにより、各検知ユニット1における検知モードが通常時の検知モードに変更される。この場合においても、コードパターンボード110を所持した人間が各検知ユニット1の検知領域Aを歩行してもよく、あるいは商店の店頭に掲示させるだけでよい。
【0054】
このように、複数の検知ユニット1を備える検知システムにおいて、各検知ユニット1の検知領域にコードパターンボード110を掲示するだけで当該検知ユニット1の検知モードの設定・変更が実現できる。したがって、複数の検知ユニット1に外部機器を接続して熟練者が検知モードを変更する作業は不要となり、検知モードの設定・変更の作業が簡易化できるとともに作業効率を高めることができる。
【0055】
ここで、コードパターン100の正セル101を構成する枡目の数を適宜の数に設定し、1つのコードパターンボード110に、検知領域モード、検知対象モード、検知出力モードを含む複数の検知モードのコードパターン100を混在させた構成としてもよい。このようにすれば、1つのコードパターンボード110で異なる複数の検知モードの設定・変更を同時に行うことが可能になる。
【0056】
図9は検知システムを異なる実施形態に適用した概念図である。この形態は、道路を走行する自動車Vを識別するためのシステムとして構成されている。識別対象となる自動車Vが走行する道路の所定領域に沿って複数の検知ユニット1が配設されており、これらの所定領域がこれら複数の検知ユニット1の検知領域Aとされている。ここでは信号機Sの一部に検知ユニット1が配設されている。この検知システムの構成は
図1に示した実施形態の構成と同じであり、検知ユニット1と監視ユニット2の構成も同じである。
【0057】
この形態においては、複数の検知ユニット1は検知対象が自動車であるため、検知情報装置4は通常では検知対象モードが「車両」に設定されている。また、この形態においては、コードパターンボード110は、識別対象となる車両、ここでは自動車Vに装着されている。このコードパターンボード110の各コードパターン100は
図4に示したIDパターンとして構成されている。すなわち、3×3の正セル101と、2つの副セル102で構成されていることはモードパターンの場合と同じであるが、正セル101は自動車のID情報を示し、2つの副セル102はいずれも低反射セルとして構成されている。
【0058】
識別対象となる自動車Vには車体の一部、例えば車体の左右側面、前後面、天井面の少なくとも一つの面に、当該自動車VのID情報に基づくIDパターンを含むコードパターンボード110が装着される。このコードパターンボード110を装着した自動車Vが道路を走行すると、複数の検知ユニット1は検知領域Aを走行した当該自動車Vを検知する。検知に際しては、
図7に示したフロー図のステップS31とS32と同様であり、各検知ユニット1のLiDAR3においてそれぞれの検知領域Aに対してレーザ光を照射し、自動車Vからの反射光を受光する。受光した光は電気信号に光電変換され、コードパターンの情報を含む検知信号が検出される。
【0059】
この検知信号は情報制御装置4の信号処理部41において信号処理が行われ、この際のデータ解析の結果からパターン検出部44においてコードパターンが検出される(S33)。この検出においては、副セル102によりコードパターンの上下方向が特定されるとともに、2つの副セル102が低反射率であることを検知することにより、当該コードパターンがIDパターンであることが検出される(S34)。
【0060】
パターン検出部43はIDパターンを検出したときには、検出したIDパターンをID認識部46に出力する。ID認識部46は入力されたIDパターンを、
図5に示した対照テーブルを対照することにより、当該IDパターンに対応するID情報を認識する(S37)。ここでは、ID情報として、「A車」、「B車」等の車種を判別するための情報を認識する。そして、ID重畳部47は、この認識したID情報を信号処理部41に出力し、信号処理された検知情報信号に重畳させる(S38)。この検知情報信号は通信部42により監視センター2に送信される。
【0061】
監視センター2は、統合処理装置5において受信した検知情報信号に含まれるID情報を認識することにより、検知した自動車のID情報を確認することができる。このID情報は検知した自動車の画像に関連付けてモニター6に表示させることができる。例えば、モニター6に表示された自動車の画像に、認識した当該自動車のID情報としての「A車」、「B車」等を判別させるための文字や図柄等を重畳表示させてもよい。
【0062】
以上の実施形態で説明したように、本発明の検知システムは、検知システムを構成している複数の検知ユニット、すなわち検知装置における検知モードを変更する際には、変更する検知モードに対応するモードパターンのコードパターンボードを各検知ユニットの検知領域内に掲示すればよい。あるいは、コードパターンボードを装着した自動車等の車両を各検知装置の検知領域で走行させてもよい。これにより、前記した商店街での形態と同様に各検知ユニットの検知モードが変更される。したがって、各検知装置にそれぞれ外部機器を接続して検知モードを変更する作業は不要になる。
【0063】
また、本発明の検知システムは、ID情報に対応させたコードパターンボードを車両に装着すれば、検知装置の検知領域を走行する車両を検知したときに、当該コードパターンボードのコードパターンから当該車両のID情報を検知できる。これにより、検知システムの有効利用が可能になる。
【符号の説明】
【0064】
1 検知ユニット(検知装置)
2 監視センター
3 検知センサー(LiDAR)
4 情報制御装置(情報処理手段)
5 統合処理装置(統合処理手段)
6 モニター
41 信号処理部(信号処理手段)
42 通信部(通信手段)
43 パターン検出部(パターン検出手段)
44 モード認識部(制御手段)
45 モード設定部(制御手段)
46 ID認識部(制御手段)
47 ID重畳部(制御手段)
100 コードパターン
101 正セル
102 副セル
110 コードパターンボード
A 検知領域