(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061943
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】舗装構造
(51)【国際特許分類】
E01C 7/14 20060101AFI20240430BHJP
E01C 7/22 20060101ALI20240430BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20240430BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
E01C7/14
E01C7/22
B01J20/04 C
B01J20/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169598
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】神下 竜三
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔大
(72)【発明者】
【氏名】好見 一馬
【テーマコード(参考)】
2D051
4G066
【Fターム(参考)】
2D051AA02
2D051AA05
2D051AF02
2D051AG15
2D051AG17
2D051EA02
2D051EA06
4G066AA13B
4G066AA27B
4G066AA43B
4G066BA09
4G066CA35
4G066DA03
4G066GA01
4G066GA32
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を吸収して大気中の二酸化炭素量の削減に寄与することが出来る舗装の提供。
【解決手段】本発明の二酸化炭素吸収舗装構造は、舗装表面側には空隙を有し且つ通気性を有する層が設けられ、当該通気性を有する層の下方には、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層が設けられ、二酸化炭素吸収路盤層の下方には路床が設けられており、空隙を有し且つ通気性を有する層により雨水を地中に涵養させることが可能としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装表面側には空隙を有し且つ通気性を有する層が設けられ、当該通気性を有する層の下方には、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層が設けられ、二酸化炭素吸収路盤層の下方には路床が設けられており、空隙を有し且つ通気性を有する層により雨水を地中に涵養させることが可能とすることを特徴とする二酸化炭素吸収舗装構造。
【請求項2】
舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層は、
アスファルトと骨材とを含むアスファルト混合物、
セメントと骨材と混和剤を含むセメント混合物、
骨材と樹脂を含む樹脂混合物、
木材チップと樹脂とを含む木質系混合物、
セメント系土壌固化材、石灰系土壌固化材或いは石膏系土壌固化材の何れかと土壌を含む土系材料、
の何れかを含み、
前記アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物あるいは木質系混合物の表面にはアクリル系あるいはエポキシ系樹脂が塗布された層を設けることが可能であり、
前記通気性を有する層の下方には、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層が設けられ、
二酸化炭素吸収路盤層の下方には路床が設けられていることを特徴とする二酸化炭素吸収舗装構造。
【請求項3】
舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層は、
常温常圧で二酸化炭素を吸収し200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材とアスファルトと骨材とを含むアスファルト混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収し300℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材とセメントと骨材と混和剤を含むセメント混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と骨材を含む樹脂混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と木材チップとを含む木質系混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材とセメント系土壌固化材、石灰系土壌固化材、石膏系土壌固化材の何れかと土壌を含む土系材料、の何れかを含み、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物あるいは木質系混合物の何れかを含む層の表面に塗布され、常温常圧では二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を含むアクリル系あるいはエポキシ系樹脂の層を有することが可能であるか、
或いは、舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材とアスファルトと骨材とを含むアスファルト混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収し300℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材とセメントと骨材と混和剤を含むセメント混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と骨材を含む樹脂混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と木材チップとを含む木質系混合物の何れかを含み、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、或いは木質系混合物の何れかを含む層の表面に塗布され、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を含まないアクリル系あるいはエポキシ系樹脂の層を有することが可能であるか、或いは、
舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていないアスファルト混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていないセメント混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていない樹脂混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていない木質系混合物の何れかを含み、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、或いは木質系混合物の何れかを含む層の表面に塗布され、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を含むアクリル系或いはエポキシ系樹脂の層を有するが可能であるか、
の何れかであり、
当該通気性を有する層の下方には、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、
雨水を地中に涵養させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層が設けられ、
二酸化炭素吸収路盤層の下方には路床が設けられていることを特徴とする二酸化炭素吸収舗装構造。
【請求項4】
常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させ、雨水を地中に涵養させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤の層と、
路床を含み、
二酸化炭素吸収路盤の層が表層であることを特徴とする二酸化炭素吸収舗装構造。
【請求項5】
表層に、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させ、雨水を地中に涵養させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層が設けられ、
二酸化炭素吸収路盤層の下方には路床が設けられている構造を備えている二酸化炭素吸収舗装構造において、
二酸化炭素吸収路盤の表面に、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と細骨材とアスファルト乳剤を包含する二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層が設けられていること、或いは
二酸化炭素吸収路盤の表面に、細骨材とアスファルト乳剤を包含するアスファルト乳剤層が設けられていること、
の何れかを特徴とする二酸化炭素吸収舗装構造。
【請求項6】
安定材は、アスファルト系安定材であり、フォームドアスファルト或いはアスファルト乳剤である請求項1~5の何れか1項の二酸化炭素吸収舗装構造。
【請求項7】
二酸化炭素吸収材は、ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかである請求項6の二酸化炭素吸収舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装路の構造に関し、特に、二酸化炭素吸収能力を有する二酸化炭素吸収舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素量の低減対策の一つとして、舗装材に二酸化炭素吸収能力を有する物質(二酸化炭素吸収材)を混合し、舗装路で二酸化炭素を吸収させることにより、大気中の二酸化炭素量を削減することが考えられる。
ここで、舗装路には種々の構造が存在し、個々の構造毎に二酸化炭素吸収の機序を工夫する必要がある。しかし、係る機序を系統立てて構成した舗装路の構造については、未だに提案されていない。
一方、二酸化炭素吸収材は、二酸化炭素を限界まで吸収すると、それ以上は二酸化炭素を吸収する能力が喪失する。そして、二酸化炭素吸収材には、吸収した二酸化炭素を熱や圧力等の何らかの外力を与えることにより吸収と放出を繰り返すものが存在する。
【0003】
その他の従来技術として、路盤に水酸化カルシウムまたはカルシウムシリケート水和物を含むコンクリート廃材を用いて、二酸化炭素を固定化する技術が提供されている(例えば特許文献1参照)。
ここで、路盤が二酸化炭素を吸収するためには、路盤の上の層が空気を通す性質を有する(通気性を有する)ことが必要である。その様な空気を通す層(通気性を有する層)としては、ポーラスアスファルトコンクリート舗装(開粒アスファルト舗装)、ポーラスコンクリート舗装、ポーラス樹脂コンクリート舗装、木質系舗装等がある。
しかし、空気を通す層(通気性を有する層)は、空気を通すだけではなく、雨水も通してしまう。雨水が路盤に浸透してしまうと、路盤に混合された二酸化炭素吸収材が、浸透した雨水によって流出してしまうので、二酸化炭素吸収能力が喪失すると共に、浸透した雨水によって舗装が弱くなり、舗装に損傷が生じる。
路盤への雨水の浸透を防止するため、上述した従来技術(特許文献1)では、路盤層の直上に不透水性を有する層を設けることが開示されている。しかし、不透水性を有する層を設けた場合、雨水が地下に涵養されないという問題が存在する。
【0004】
上述した従来技術(特許文献1)において二酸化炭素吸収能力を有する物質として提案されている水酸化カルシウムやカルシウムシリケート水和物は、一度限界まで二酸化炭素を吸収し、二酸化炭素吸収能力が喪失した場合に、喪失した二酸化炭素吸収能力を回復させるためには、600℃程度より高い温度で加熱する必要があり二酸化炭素吸収能力を回復させるために大量のエネルギー或いは燃料が消費されることになる。
また、上述した従来技術(特許文献1)には、水酸化カルシウムやカルシウムシリケート水和物を含むコンクリート廃材等を用いる技術が開示されている。しかし、コンクリートは300℃を超えて加熱すると強度(コンクリート強度)が著しく低下し、600℃程度より高い温度で加熱すると爆裂、劣化、変色してしまうため、二酸化炭素吸収能力が再生された材料として、再生路盤材やコンクリート組成物等の材料として再利用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、
二酸化炭素を吸収して大気中の二酸化炭素量の削減に寄与することが出来る舗装構造の提供と、
雨水が路盤に浸透しても十分な強度を有し、舗装が損傷せず、二酸化炭素吸収材の流出を防止し、二酸化炭素吸収能力を維持すると共に、雨水を地下に涵養することが可能な舗装構造の提供と、
二酸化炭素を吸収しても加熱することにより吸収した二酸化炭素を放出して二酸化炭素吸収能力が回復する性質を有する舗装(二酸化炭素を吸収する舗装)を構成する材料を再利用(リサイクル)することが可能な舗装構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10:CO2吸収舗装構造)は、舗装表面側には空隙を有し且つ通気性を有する層(2)が設けられ、当該通気性を有する層(2)の下方には、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満(例えば60℃~200℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層(1:CO2吸収路盤層)が設けられ、
前記二酸化炭素吸収路盤層(10)の下方には路床が設けられており、
多重構造を備えていることを特徴としている。
ここで、二酸化炭素吸収材の加熱による放出温度を200℃未満としたのは、アスファルトは200℃以上に加熱するとアスファルトが劣化してしまうため、安定材としてアスファルト系の材料を用いた場合には、二酸化炭素吸収材が含まれたアスファルト再生材料として、路盤材等に再利用することができないためである。
換言すれば、二酸化炭素放出温度が200℃未満の二酸化炭素吸収材であれば、二酸化炭素吸収能力を回復してもアスファルトが劣化せず、二酸化炭素を放出し、二酸化炭素吸収能力が回復した二酸化炭素吸収材を含むアスファルト再生材料として路盤材等に再利用可能である。
前記舗装表面側の通気性を有する層(2)は、例えばポーラスアスファルト(開粒アスファルト)、ポーラスコンクリート、ポーラス樹脂コンクリート、木質系材料等の様に、空隙があり且つ通気性を有する材料で構成することが出来る。
二酸化炭素吸収路盤層(1)における二酸化炭素吸収材の含有量は1~30重量%であるのが好ましい。二酸化炭素吸収材の含有量が1重量%未満となると二酸化炭素吸収量が少なくなり、且つ、二酸化炭素吸収材が少な過ぎて均一な材料とならない。一方、二酸化炭素吸収材の含有量が30重量%を超える場合は、施工性が低下し品質確保の観点から好ましくない。
また、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)における空隙は10~30容積%であるのが好ましい。空隙が10容積%未満であると通気性を有する層(2)として必要な通気性を確保できず、30容積%よりも大きいと強度が確保できない。
【0008】
本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10)において、
舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、
アスファルトと骨材とを含むアスファルト混合物(ポーラスアスファルトコンクリート)、
セメントと骨材と水と混和剤を含むセメント混合物(ポーラスセメントコンクリート)、
骨材と樹脂を含む樹脂混合物(ポーラス樹脂コンクリート)、
木材チップと樹脂とを含む木質系混合物、
セメント系土壌固化材、石灰系土壌固化材或いは石膏系土壌固化材の何れかと土壌を含む土系材料(土壌混合物)、
の何れかを含み、
前記アスファルト混合物、セメント混合物、木質系混合物または樹脂混合物の表面に、アクリル系或いはエポキシ系樹脂が塗布された層を設けることが可能であり、
当該通気性を有する層(2)の下方には、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満(例えば60℃~200℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層(1)が設けられ、
二酸化炭素吸収路盤層(1)の下方には路床が設けられており、多重構造を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10)において、
舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材とアスファルトと骨材とを含むアスファルト混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収し300℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材とセメントと骨材と水と混和剤を含むセメント混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と骨材を含む樹脂混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と木材チップとを含む木質系混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材とセメント系土壌固化材、石灰系土壌固化材、石膏系土壌固化材の何れかと土壌を含む土系材料(土壌混合物)、の何れかを含み、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、或いは木質系混合物の何れかを含む層(2)の表面に塗布され、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を含むアクリル系或いはエポキシ系樹脂の層を有することが可能であるか、
或いは、舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材とアスファルトと骨材とを含み空隙を有し且つ通気性を有するアスファルト混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収し300℃未満に加熱すると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材とセメントと水と混和剤とを含み空隙を有し且つ通気性を有するセメント混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と骨材を含む樹脂混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と樹脂と木材チップとを含む木質系混合物の何れかを含み、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、或いは木質系混合物の何れかを含む層(2)の表面に塗布され、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を含まないアクリル系或いはエポキシ系樹脂の層を有することが可能であるか、或いは、
舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていないアスファルト混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていないセメント混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていない樹脂混合物、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材が含まれていない木質系混合物の何れかを含み、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、或いは木質系混合物の何れかを含む層(2)の表面に塗布され、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を含むアクリル系或いはエポキシ系樹脂の層を有することが可能であるか、
の何れかであり、
前記通気性を有する層(2)の下方には、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層(1)が設けられ、
二酸化炭素吸収路盤層(1)の下方には路床が設けられており、
多重構造を備えていることを特徴としている。
【0010】
前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)がアスファルト混合物で構成される場合は、アスファルト混合物は、アスファルトと骨材と二酸化炭素吸収材とを包含し、二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満(例えば60℃~200℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出することが好ましい。
前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)がセメント混合物で構成される場合は、セメント混合物は、セメントと骨材と水と混和剤と二酸化炭素吸収材とを包含し、二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、300℃未満(例えば60℃~300℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出することが好ましい。
前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)が樹脂混合物で構成される場合は、樹脂混合物は、樹脂と骨材と二酸化炭素吸収材とを包含し、二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収することが好ましい。
【0011】
前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)が木質系混合物で構成されている場合は、木質系混合物は、木材チップと樹脂(例えば湿気硬化型樹脂)と二酸化炭素吸収材を包含し、二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収することが好ましい。
ここで、前記二酸化炭素吸収材として、例えば60℃以上に加熱されると二酸化炭素を放出する性状を有する二酸化炭素吸収材を選択することが出来る。舗装路面温度が屋外の供用環境では60℃程度になることから、それ以上の温度で二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を選択すれば、二酸化炭素吸収能力の再生が効率的に行えるためである。
或いは、前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)が土壌混合物で構成されている場合には、当該土壌混合物は、土とセメント系土壌固化材、石灰系土壌固化材或いは石膏系土壌固化材と水と二酸化炭素吸収材を包含し、二酸化炭素吸収材は、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、例えば60℃以上に加熱されると二酸化炭素を放出するのが好ましい。
【0012】
また、前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)がアスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、或いは木質系混合物で構成され、
前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)の表面にはアクリル系或いはエポキシ系樹脂が塗布されており、
前記アクリル系或いはエポキシ系樹脂は、常温常圧では二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を散布し(ニート工法)或いは予め樹脂に二酸化炭素吸収材を混合し塗布して構成された二酸化炭素吸収樹脂層を有するのが好ましい。
ここで、前記二酸化炭素吸収材として、例えば60℃以上に加熱されると二酸化炭素を放出する性状を有する二酸化炭素吸収材を選択することが出来て、
当該二酸化炭素吸収材は、アルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)、酸化セリウム、ナトリウムフェライト等から、炭酸カリウム或いはナトリウムフェライトの何れかを選択することが好ましい。
さらに、前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)をアスファルト混合物で構成する場合には、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、200℃未満(例えば60℃~200℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を包含することが出来て、
前記層(2)をセメント混合物で構成する場合には、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、300℃未満(例えば60℃~300℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を包含することが出来て、或いは、
前記層(2)を樹脂混合物または木質系混合物で構成する場合には、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、(例えば60℃以上に)加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を包含することが出来るのが好ましい。
【0013】
本発明において、二酸化炭素吸収路盤層(1)に用いる安定材は、アスファルト系安定材であり、フォームドアスファルト或いはアスファルト乳剤であるのが好ましい。
また、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、加熱することで二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材には、アルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)、酸化セリウム、ナトリウムフェライト等があるが、本発明においては、二酸化炭素吸収材は、ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかであるのが好ましい。
或いは本発明において、路盤層は、アスファルト系安定材と、骨材と、水を含むのが好ましい。ここで前記路盤層は、セメント或いは石灰等の安定材を含むことが出来る。
【0014】
また、本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10)において、
二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材であるアルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)、酸化セリウム、ナトリウムフェライト等のうち、ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかであり、
二酸化炭素吸収材の含有量が、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)を構成する材料に対して最小で0.5重量%、最大で30重量%であるのが好ましい。空隙を有し且つ通気性を有する層(2)を構成する材料に対して0.5重量%より少ないと二酸化炭素吸収能力が低くなり、30重量%より多いと空隙を有し且つ通気性を有する層(2)の強度が低下する。
【0015】
本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10-1)は、
常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤の層(1)と、路床を含み、二酸化炭素吸収路盤の層(1)が表層であることを特徴としている。
また、本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10-1)は、
表層に、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材と安定材と骨材と水を含み、雨水を浸透させることが可能な性質を有する二酸化炭素吸収路盤層が設けられ、
二酸化炭素吸収路盤層の下方には路床が設けられている構造を備えている二酸化炭素吸収舗装構造(10-1)において、
二酸化炭素吸収路盤(1)の表面に、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材と細骨材とアスファルト乳剤を包含する二酸化炭素吸収乳剤層(例えば、二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層)が設けられていることを特徴としている。
ここで、二酸化炭素吸収路盤(1)の表面には、細骨材とアスファルト乳剤で構成され且つ二酸化炭素吸収材が含まれていない乳剤層を設置することができる。
【0016】
本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10-1:CO2吸収舗装構造)は、
アスファルト系安定材を用いた二酸化炭素吸収路盤層(1)と、路床を含み、
二酸化炭素吸収路盤層(1)が表層である。
ここで、表層を構成する二酸化炭素吸収路盤(1)の層にはアスファルト乳剤と砂が散布され(シールコート)、当該砂には二酸化炭素吸収材が混合されているのが好ましい。
【0017】
係る本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10-1)において、
二酸化炭素吸収路盤層(1)で構成される表層は二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層を含み、
二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層は、前記二酸化炭素吸収路盤層(1)の表面に予めアスファルト乳剤と二酸化炭素吸収材とを混合した混合物を塗布し、その表面に砂が散布され、
当該二酸化炭素吸収材は常温常圧では二酸化炭素を吸収するのが好ましい。
ここで、前記二酸化炭素吸収材として、例えば60℃~200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する性状を有する二酸化炭素吸収材を選択することが出来る。
そして前記砂は、滑り止めとして(ニート工法により)散布されるのが好ましい。
【0018】
そして、係る本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10-1)において、
前記二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層は、二酸化炭素吸収材を含まないアスファルト乳剤が路盤上に設置され、当該アスファルト乳剤に砂と二酸化炭素吸収材が散布されているのが好ましい(二酸化炭素吸収材を散布するタイプ)。この場合、二酸化炭素吸収材の含有量は、砂に対して0.5~2.0重量%であるのが好ましい。0.5重量%未満であると二酸化炭素吸収能力が低下してしまい、2.0重量%よりも多いと路面のすべり抵抗が小さく、通過する車両が滑り易くなってしまうからである。
或いは、係る本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10-1)において、
予めアスファルト乳剤に二酸化炭素吸収材を混合した混合物が路盤上に設置され、当該混合物(アスファルト乳剤に二酸化炭素吸収材を混合した混合物)に砂が散布されているのが好ましい(二酸化炭素吸収材をプレミックスするタイプ)。この場合、二酸化炭素吸収材の含有量は、アスファルト乳剤に対して0.5~10重量%であるのが好ましい。0.5重量%未満であると二酸化炭素吸収能力が低下してしまい、10重量%よりも多いと施工性が悪くなり、路盤を保護する層(二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層)が均一に構築し難くなる。
二酸化炭素吸収材をプレミックスするタイプと散布するタイプの何れにおいても、二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収し、加熱されると二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材であるアルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)、酸化セリウム、ナトリウムフェライト等のうち、ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかより選択されるのが好ましい。
【0019】
或いは、係る本発明の二酸化炭素吸収舗装構造(10-1)において、
前記二酸化炭素吸収材は、二酸化炭素吸収材の0.5~2.0重量%のアスファルトでプレコーティングされた二酸化炭素吸収材であるのが好ましい。0.5重量%未満では、アスファルトでプレコーティングしきれなくなるという不具合が生じ、2.0重量%より多いと過剰なプレコーティングとなって二酸化炭素吸収を阻害する可能性がある。
ここで、例えば60℃~200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出する性状を有する二酸化炭素吸収材を選択することが出来る。
【0020】
本発明の舗装構造で用いられる舗装材は、未だ使用されていない新規材料(舗装を構成する材料として、それまでに使用されていない材料)或いは再生材(舗装を構成する材料として使用された材料)の何れでも良いし、その組み合わせでも良い。
【発明の効果】
【0021】
上述の構成を具備する本発明によれば、舗装表面側には空隙を有し且つ通気性を有する層(2)が設けられ、当該通気性を有する層(2)の下方にはアスファルト系安定材を用いた二酸化炭素吸収路盤層(1)が設けられているので、大気中の二酸化炭素は舗装表面側には空隙を有し且つ通気性を有する層(2)を介して二酸化炭素吸収路盤層(1)により吸収される。その結果、大気中の二酸化炭素量が減少する。また、雨水が地下に涵養されることが可能になる。
ここで、二酸化炭素吸収材を路盤材のみ或いは表層材及び路盤材の双方に包含することにより、大気中の二酸化炭素を効率的に吸収することが出来る。
【0022】
本発明において、200℃未満の加熱により二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材である炭酸カリウム、ナトリウムフェライトを包含すれば、アスファルト或いはアスファルト系安定材を用いた舗装材(混合物)の場合、200℃未満の加熱で二酸化炭素吸収能力が回復し、且つ、200℃未満の加熱でアスファルト或いはアスファルト系安定材を劣化させないので、二酸化炭素吸収材を含む舗装材として再利用が可能である。
或いは、セメントを用いた舗装材(混合物)の場合には、300℃未満の加熱により二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材である炭酸カリウム、ナトリウムフェライトを包含すれば、300℃未満の加熱で二酸化炭素吸収能力が回復し、且つ、300℃未満の加熱であるためセメント組成物が爆裂、劣化、変色しないので、二酸化炭素吸収材を含む舗装材として再利用が可能である。
【0023】
本発明の舗装構造において安定材を包含していれば、骨材同士を結合させるため、雨水が浸透しても路盤としての所要強度が得られ、支持力低下による舗装体の損傷が生じない。
アスファルト系安定材であれば、二酸化炭素吸収材等の比表面積が大きい細粒分を被覆して骨材に固着することが出来るので、雨水の浸透により二酸化炭素吸収材が流出することがなく、二酸化炭素吸収能力の低下が防止される。
本発明の舗装構造において、アスファルトを含み、二酸化炭素吸収材がナトリウムフェライトであれば、ナトリウムフェライトがアスファルトで被覆されるので、ナトリウムフェライトが水と接触して分解することが防止されて、二酸化炭素吸収能力が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】本発明の実施形態で用いられる二酸化炭素(CO
2)吸収舗装構造の説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示す。
図1において、第1実施形態に係る二酸化炭素吸収舗装構造10は、表面側(
図1では上側)に、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)が設けられている。
空隙を有し且つ通気性を有する層(2)の下方(
図1では下側)には、アスファルト系安定材を用いた二酸化炭素吸収路盤層(1)が設けられている。
二酸化炭素吸収路盤層(1)の下方には路床が設けられているが、
図1では路床の図示は省略する。
図1において符号Sは、舗装面を走行する車両である。
二酸化炭素吸収路盤層(1)の路盤材については、例えば二酸化炭素吸収路盤材を使用することが出来る。二酸化炭素吸収路盤材については後述する。
【0026】
図1において、舗装表面側における通気性を有する層(2)は、例えばアスファルト混合物(ポーラスアスファルトコンクリート)、セメント混合物(ポーラスセメントコンクリート)、樹脂混合物(ポーラス樹脂コンクリート)、木質系混合物、土壌混合物等の様に、空隙があり且つ通気性を有する材料で構成されている。
図1の第1実施形態では、舗装表面側には空隙を有し且つ通気性を有する層(2)が設けられ、通気性を有する層(2)の下方にはアスファルト系安定材を用いた二酸化炭素吸収路盤層(1)が設けられているので、大気中の二酸化炭素は舗装表面側の空隙を有し且つ通気性を有する層(2)を介して二酸化炭素吸収路盤層(1)によって吸収される。そのため、大気中の二酸化炭素を減少させることが出来る。
【0027】
図1において、二酸化炭素吸収路盤層(1)のアスファルト系安定材は、例えばフォームドアスファルト或いはアスファルト乳剤としている。
二酸化炭素吸収材としては、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、例えば60℃~200℃未満に加熱されると二酸化炭素を放出するナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかが選択される。
ここで、二酸化炭素吸収路盤層(1)における二酸化炭素吸収材の含有量は1.0重量%~30重量%としている。含有量が1.0重量%未満となると二酸化炭素吸収量が少なくなり、且つ、二酸化炭素吸収材が少な過ぎて均一な材料とならない。一方、二酸化炭素吸収材の含有量が30重量%を超える場合は、施工性が低下し品質確保の観点から好ましくない。
路盤材の安定材は、フォームドアスファルト或いは、アスファルト乳剤であり、添加量は一般的には1~10重量%の範囲内である。当該範囲よりも安定材が多い場合は、アスファルト量が過多となり、路盤の塑性変形が生じやすくなる。一方、前記範囲よりも安定材含有量が少ない場合は、強度不足、練り混ぜ時の均一性を確保できない等の不具合がある。
さらに、路盤の強度を確保することを目的に、路盤材にはセメント或いは消石灰等の安定材を添加することができ、添加量は一般的には1重量%~10重量%の範囲内である。発明者の実験では、当該範囲よりも安定材が多い場合は強度過多、すなわちセメント量が過多となり、収縮量が増大する。また、環境負荷が大きくなる。一方、前記範囲よりも安定材含有量が少ない場合は、強度不足、練り混ぜ時の均一性を確保できない等の不具合がある。
【0028】
図1において、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、アスファルト混合物から構成することが出来る。アスファルト混合物は、アスファルトと骨材と二酸化炭素吸収材を包含している。
そして二酸化炭素吸収材は、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、例えば60℃~200℃未満に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する材料を選択している。
また、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)における空隙は、アスファルト混合物の10~30容積%である。発明者の実験によれば、空隙がアスファルト混合物の10容積%未満であると通気性を有する層(2)として必要な通気性を確保できず、アスファルト混合物の30容積%よりも大きいと強度が確保できなかった。
【0029】
図1において、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、セメント混合物から構成することが出来る。セメント混合物は、セメントと骨材と水と混和剤と二酸化炭素吸収材を包含している。そして、二酸化炭素吸収材は、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、例えば60℃~300℃未満に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する材料を選択している。
また、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)における空隙は、セメント混合物の10~30容積%である。発明者の実験によれば、空隙がセメント混合物の10容積%未満であると通気性を有する層(2)として必要な通気性を確保できず、セメント混合物の30%よりも大きいと強度が確保できなかった。
【0030】
図1において、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、樹脂混合物から構成することが出来る。樹脂混合物は、樹脂と骨材と二酸化炭素吸収材を包含している。そして、二酸化炭素吸収材は、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、例えば60℃以上に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する材料を選択している。
また、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)における空隙は、樹脂混合物の10~30容積%である。発明者の実験によれば、空隙が樹脂混合物の10容積%未満であると通気性を有する層(2)として必要な通気性を確保できず、樹脂混合物の30容積%よりも大きいと強度が確保できなかった。
【0031】
図1における空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、木質系混合物で構成することが出来る。木質系混合物は、木材チップと樹脂(例えば湿気硬化型樹脂)と二酸化炭素吸収材を包含している。そして、二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収する性状を有する材料を選択している。
さらに、二酸化炭素吸収材として、常温常圧で二酸化炭素を吸収する性状に加え、例えば60℃以上に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する二酸化炭素吸収材を選択することが出来る。
【0032】
或いは、
図1における空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、土壌混合物で構成することが出来る。土壌混合物は、土とセメント系土壌固化材、石灰系土壌固化材或いは石膏系土壌固化材と水と二酸化炭素吸収材を包含している。
二酸化炭素吸収材は、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、例えば60℃以上に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する材料を選択している。
【0033】
図1において、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)は、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、或いは木質系混合物で構成することが出来る。その場合、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)の表面にはアクリル系或いはエポキシ系樹脂が塗布されている。さらに、アクリル系或いはエポキシ系樹脂に、常温常圧では二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を散布し、或いは、予め樹脂に二酸化炭素吸収材を混合し、塗布して構成された二酸化炭素吸収樹脂層を有することができる。
ここで、二酸化炭素吸収材として、例えば60℃以上に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する二酸化炭素吸収材を選択することが出来る。
また、前記二酸化炭素吸収材をアクリル系或いはエポキシ系樹脂に散布するに際して、いわゆる「ニート工法」により散布することが出来る。
その様に構成すれば、大気中の二酸化炭素はアクリル系或いはエポキシ系樹脂に散布された二酸化炭素吸収材により吸収され、その結果、大気中の二酸化炭素量の低減に寄与することが出来る。
さらに前記空隙を有し且つ通気性を有する層(2)のアスファルト混合物には、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、200℃未満(例えば60℃~200℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材を包含し、
セメント混合物には、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、300℃未満(例えば60℃~300℃未満)に加熱されると二酸化炭素を放出される二酸化炭素吸収材を包含し、或いは
樹脂系混合物には、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材或いは木質系混合物には、常温常圧で二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収材を包含することが出来る。
発明者の実験によれば、空隙がアスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、木質系混合物それぞれの10容積%未満であると通気性を有する層(2)として必要な通気性を確保できず、アスファルト混合物、セメント混合物、樹脂混合物、木質系混合物それぞれの30容積%よりも大きいと強度が確保できなかった。
【0034】
図1において、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)に包含される二酸化炭素吸収材は、ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかである。
その場合、二酸化炭素吸収材の含有量は、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)を構成する材料の0.5~30重量%としている。発明者の実験によれば、二酸化炭素吸収材の含有量が0.5重量%未満では二酸化炭素吸収量が少なくなり、また、二酸化炭素吸収材が少な過ぎて均一な材料とならないという不具合がある。一方、二酸化炭素吸収材の含有量が30重量%を超える場合において、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)の強度が低下するという問題がある。
また、本発明の実施形態において、二酸化炭素吸収材における二酸化炭素放出加熱温度は、使用する材料により異なる。
すなわち、アスファルト系安定材を使用している路盤(層(1))や、アスファルト混合物、二酸化炭素吸収材を含むポーラスアスファルト(アスファルト混合物)と二酸化炭素吸収材を含まない樹脂から成る材料、或いは、二酸化炭素吸収材を含むポーラスアスファルト(アスファルト混合物)と二酸化炭素吸収材を含む樹脂から成る材料を使用している層(2)における二酸化炭素吸収材であれば、200℃未満の温度で二酸化炭素を放出するものを選択する。
セメント混合物、二酸化炭素吸収材を含むポーラスコンクリート(コンクリート混合物)と二酸化炭素吸収材を含まない樹脂から成る材料、或いは二酸化炭素吸収材を含むポーラスコンクリート(コンクリート混合物)と二酸化炭素吸収材を含む樹脂から成る材料を使用する層(2)の場合には、300℃未満の温度で二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を選択する。
層(2)が土壌混合物、樹脂混合物、二酸化炭素吸収材を含まないポーラスアスファルト(アスファルト混合物)と二酸化炭素吸収材を含む樹脂から成る材料、二酸化炭素吸収材を含まないポーラスコンクリート(セメント混合物)と二酸化炭素吸収材を含む樹脂から成る材料、或いは木質系混合物の何れかの場合には、二酸化炭素放出加熱温度は例えば60℃以上である。この60℃以上という温度は、常温より高い温度であって、供用場所の温度よりも高い温度として設定されている。
【0035】
ここで、
図2を参照して図示の実施形態で使用される二酸化炭素(CO
2)吸収舗装構造(或いはCO
2吸収舗装)について説明する。
図2(A)で示す舗装構造は、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)(舗装材)と、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)の下方における二酸化炭素吸収路盤の層(1)(路盤)が積層されている。二酸化炭素吸収路盤の層(1)を構成する二酸化炭素吸収路盤材は、二酸化炭素吸収材(CO
2吸収材)を包含している。また、空隙を有し且つ通気性を有する層(2)の舗装材は、例えば、ポーラスアスファルト、ポーラスコンクリート、ポーラス樹脂コンクリート、木質系(ウッドチップ)等が選択可能である。
図2(B)に示す構成では、二酸化炭素吸収材を包含する二酸化炭素吸収路盤の層(1)の表層(
図2(B)の上方)には、薄い層(3)が積層されている。薄い層(3)は、例えば表面に塗布されたアスファルト乳剤に散布された砂で構成されている。
図2(B)で示す構造は、簡易舗装、仮設道路等に適用される。ここで、層(3)を構成する散布砂(図示しない)に二酸化炭素吸収材を混合することが出来る。
或いは、層(3)は、予めアスファルト乳剤と二酸化炭素吸収材を混合したものが表面に塗布され、その上から散布された砂で構成されている。
また、二酸化炭素吸収舗装の使用形態によっては層(3)を除くことができる。
【0036】
路盤材(層(1))における二酸化炭素吸収材の含有量は、1~30重量%である。発明者の実験によれば、二酸化炭素吸収材の含有量が1重量%未満であると二酸化炭素吸収能力が低下し、30重量%を超えてしまうと路盤材として必要な強度が確保できない。
路盤材の安定材は、フォームドアスファルト或いはアスファルト乳剤であり、添加量は一般的には1~10重量%の範囲内である。当該範囲よりも安定材が多い場合は、アスファルト量が過多となり、路盤の塑性変形が生じやすくなる。一方、前記範囲よりも安定材が少ない場合は、強度不足、練り混ぜ時の均一性を確保できない等の不具合がある。
さらに、路盤の強度を確保するため、路盤材にはセメント或いは消石灰等の安定材を添加することができ、添加量は一般的には1重量%~10重量%の範囲内である。当該範囲よりも安定材が多い場合は強度過多、すなわちセメント量が過多となり、収縮量が増大する。また、環境負荷が大きくなる。一方、前記範囲よりも安定材含有量が少ない場合は、強度不足、練り混ぜ時の均一性を確保できない等の不具合がある。
ここで、アスファルト系安定材には舗装用石油アスファルト(ストレートアスファルト)、ポリマー改質アスファルト、セミブローンアスファルト、硬質アスファルト等のフォームドアスファルト、或いは石油アスファルト乳剤、改質アスファルト乳剤、高浸透性アスファルト乳剤、高濃度アスファルト乳剤等があり、これらの何れかが使用される。
【0037】
図示の実施形態で使用される路盤材(層(1))(二酸化炭素吸収路盤材)は、二酸化炭素(CO2)を吸収する材料である二酸化炭素吸収材(CO2吸収材)を包含している。
二酸化炭素吸収材は、常温常圧で二酸化炭素を吸収する性質と、例えば60~200℃未満に加熱すると吸収した二酸化炭素を放出して路盤材(層(1))の二酸化炭素吸収能力を復活(再生)する性質を有している。その様な二酸化炭素吸収材としては、アルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)、酸化セリウム、ナトリウムフェライト等のうち、ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかである。
係る二酸化炭素吸収材は常温常圧の環境下で二酸化炭素を吸収する性質を持つため、当該二酸化炭素吸収材を包含する路盤を有する舗装路は、通常の自然環境下において、二酸化炭素を吸収することが出来る。
また、例えば200℃未満に加熱すると二酸化炭素を放出する性質を持つため、二酸化炭素吸収材を包含する路盤材(層(1))は、アスファルト混合物の製造設備或いは道路で加熱処理すれば、二酸化炭素吸収能力を再生(回復)することが可能である。ここで、二酸化炭素吸収能力を回復のための加熱が200℃未満で良いので、路盤材(層(1))のアスファルトやコンクリート(コンクリート再生砕石)を劣化させてしまうことがない。そのため、路盤材(層(1))のアスファルトやコンクリートの再利用が可能となる。
発明者の実験によれば、図示の実施形態で使用される路盤材(層(1))(二酸化炭素吸収路盤材)により構成された路盤を有する舗装路は、通常の路盤材(二酸化炭素を吸収する材料を包含しない路盤材)で構成された路盤を有する舗装路に比較して、二酸化炭素吸収量が有意に多かった。そのため、道路の二酸化炭素吸収能力を向上するという本発明の目的に合致した。
【0038】
図示の実施形態で使用される路盤材(層(1))(二酸化炭素吸収路盤材)はアスファルト系安定材を包含しており、アスファルト系安定材はフォームドアスファルト或いはアスファルト乳剤の何れかである。
これらのアスファルト系安定材を含有することにより、アスファルト系安定材が比表面積の大きい二酸化炭素吸収材などの細粒分を被覆し路盤材(層(1))の骨材に固着するので、上層に空隙を有する舗装構造の場合(
図1、
図2(A)の場合)、二酸化炭素吸収路盤材(層(1))を簡易舗装の表層として用いた場合(
図2(B)、
図3の場合)の何れにおいても、雨水の浸透により、二酸化炭素吸収材が流失してしまうことが防止される。
また、二酸化炭素吸収材としてナトリウムフェライトを選択した場合、ナトリウムフェライトは水に触れると分解する性質を有している。これに対して、アスファルト系安定材がナトリウムフェライトをアスファルトで被覆(コーティング)すれば、ナトリウムフェライトが水と接触して分解することが防止出来る。
【0039】
従来技術において、安定材として、アスファルト系安定材とセメント系安定材とがあり、セメント系安定材を使用した場合(セメント安定処理路盤の場合)は、再利用に際して新たなセメントを混合する必要がある。
それに対して、アスファルト系安定材を使用した二酸化炭素吸収路盤材では、例えば200℃未満の加熱により二酸化炭素吸収性能を再生(回復)することが出来るので、アスファルト系安定材が劣化して安定材としての機能を失うことがない。アスファルト系安定材は、二酸化炭素吸収性能の再生処置を行った二酸化炭素吸収再生材に含まれるアスファルト安定材が二酸化炭素吸収路盤材として不足する場合のみ、その必要量を追加すればよい。
図示の実施形態で使用される路盤材において、安定材としてアスファルト系の安定材を使用した場合に、セメント或いは消石灰を追加することがある。
図2を参照して上述した二酸化炭素吸収路盤材は、
図3で示す第2実施形態においても用いることが出来る。
【0040】
図3を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図3において、第2実施形態に係る二酸化炭素吸収舗装構造10-1は、アスファルト系安定材を用いた二酸化炭素吸収路盤の層(1)が、路床(図示せず)を被覆しており、二酸化炭素吸収路盤の層(1)が表層となっている。
ここで、表層を構成する二酸化炭素吸収路盤の層(1)にはアスファルト乳剤と砂で構成されるアスファルト乳剤層(符号A)を含むことができ、さらにアスファルト乳剤層には、常温常圧では二酸化炭素を吸収し、例えば60℃~200℃未満に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する二酸化炭素吸収材を包含することが出来る(二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層)。
二酸化炭素吸収路盤層(1)において、アスファルト乳剤層或いは二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層の表面近傍より下方の部分は、
図1の第1実施形態の路盤材(層(1))と同様の構成である。
図3において符号Sは、舗装面を走行する車両である。
【0041】
図3において、係る二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層は、アスファルト乳剤が散布され、さらにその上に砂と二酸化炭素吸収材が散布される。散布する砂と二酸化炭素吸収材は予め混合(混合砂)することも出来る。或いは、アスファルト乳剤と二酸化炭素吸収材とを予め混合した混合物を路盤層(1)の表面に塗布した後に砂が散布される。
ここで、二酸化炭素吸収材として、例えば60℃~200℃未満に加熱すると二酸化炭素を放出する性状を有する材料を選択することが出来る。
二酸化炭素吸収路盤層(1)の表面近傍の構成として、散布されたアスファルト乳剤の上に混合砂を散布する場合と、アスファルト乳剤と二酸化炭素吸収材とを予め混合した混合物を塗布した後に砂を散布する場合のうち、どちらか一方を選択して実施することが出来る。
【0042】
前記二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層について、二酸化炭素吸収材を含まないアスファルト乳剤が路盤上に設置され、当該アスファルト乳剤に混合砂(砂と二酸化炭素吸収材の混合物)が散布されている場合には(二酸化炭素吸収材を散布するタイプ)、二酸化炭素吸収材の含有量は、砂に対して0.5~2.0重量%である。発明者の実験では、0.5重量%未満であると二酸化炭素吸収能力が低下し、2.0重量%よりも多いと路面のすべり抵抗が小さく、通過する車両が滑り易くなった。
また、予めアスファルト乳剤に二酸化炭素吸収材を混合した混合物が路盤上に設置され、当該混合物(アスファルト乳剤に二酸化炭素吸収材を混合した混合物)に砂が散布されている場合には(二酸化炭素吸収材をプレミックスするタイプ)、二酸化炭素吸収材の含有量は、アスファルト乳剤に対して0.5~10重量%である。発明者の実験では、0.5重量%未満であると二酸化炭素吸収能力が低下してしまい、10重量%よりも多いと施工性が悪くなり、路盤を保護する層(二酸化炭素吸収アスファルト乳剤層)が均一に構築し難くなった。
【0043】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0044】
1・・・二酸化炭素吸収路盤層
2・・・空隙を有し且つ通気性を有する層
10、10-1・・・二酸化炭素吸収舗装構造