(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061946
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】漏電ブレーカ
(51)【国際特許分類】
H01H 83/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
H01H83/02 H
H01H83/02 E
H01H83/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169608
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖也
(72)【発明者】
【氏名】谷 昇悟
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 康資
【テーマコード(参考)】
5G030
【Fターム(参考)】
5G030XX12
5G030YY06
(57)【要約】
【課題】漏電遮断用基板と過電流引外し用素子に電気を送るための経路を設定する作業工数を抑制できるようにすること。
【解決手段】電流が流れることで引外し機構を動作させる過電流引外し用素子と、漏電遮断用基板に電源を供給する経路となるリード線13と、可動接触子11と電気的に接続される導電性の接続部材50と、を備え、接続部材50に過電流引外し用素子の一部とリード線13を並べて共に接続部材50に接続する漏電ブレーカとする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れることで引外し機構を動作させる過電流引外し用素子と、漏電遮断用基板に電源を供給する経路となるリード線と、可動接触子と電気的に接続される導電性の接続部材と、を備え、
接続部材に過電流引外し用素子の一部とリード線を並べて共に接続部材に接続する漏電ブレーカ。
【請求項2】
可動接触子と接続部材を電気的に接続するより線を備え、
より線を接続部材の過電流引外し用素子とリード線の接続箇所とは異なる箇所に接続する請求項1に記載の漏電ブレーカ。
【請求項3】
接続部材に、リード線と過電流引外し用素子をかしめて固定するのに用いられる固定片を備えた請求項1又は2に記載の漏電ブレーカ。
【請求項4】
接続部材に備えた固定片に、リード線を仮保持することが可能な仮保持部を備えた請求項3に記載の漏電ブレーカ。
【請求項5】
接続部材に備えた固定片に、リード線を仮保持することが可能な貫通孔を備えた請求項4に記載の漏電ブレーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電ブレーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リード線は基板と導電部材(端子金具など)との間を接続するように配策され、基板に電源を供給する経路として用いられている。特許文献1に記載されているように、一般的にリード線は単独で導電部材に対して接続されていた。また、電流が流れることで引外し機構を動作させる過電流引外し用素子はリード線とは別に導電部材に対して接続されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、リード線と過電流引外し用素子に電流を送る経路を確保するために、端子部材までの径路を別々に確保しようとすると、作業工数がかかってしまう虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、漏電遮断用基板と過電流引外し用素子に電気を送るための経路を設定する作業工数を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、電流が流れることで引外し機構を動作させる過電流引外し用素子と、漏電遮断用基板に電源を供給する経路となるリード線と、可動接触子と電気的に接続される導電性の接続部材と、を備え、接続部材に過電流引外し用素子の一部とリード線を並べて共に接続部材に接続する漏電ブレーカとする。
【0007】
また、可動接触子と接続部材を電気的に接続するより線を備え、より線を接続部材の過電流引外し用素子とリード線の接続箇所とは異なる箇所に接続する構成とすることが好ましい。
【0008】
また、接続部材に、リード線と過電流引外し用素子をかしめて固定するのに用いられる固定片を備えた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、接続部材に備えた固定片に、リード線を仮保持することが可能な仮保持部を備えた構成とすることが好ましい。
【0010】
また、接続部材に備えた固定片に、リード線を仮保持することが可能な貫通孔を備えた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、漏電遮断用基板と過電流引外し用素子に電気を送るための経路を設定する作業工数を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における漏電ブレーカの内部構造を示す断面図である。ただし、カバーは省略している。
【
図2】
図1に示す状態から引外し機構を動作させるコイルなどを分解した分解斜視図である。ただし、リード線は途中から省略している。
【
図3】
図2に示す引外し機構を動作させるコイルなどの斜視図である。
【
図4】
図2に示す引外し機構を動作させるコイルなどの側面図である。
【
図5】
図2に示す引外し機構を動作させるコイルなどを下方側から見た図である。
【
図6】
図3に示す引外し機構を動作させるコイルなどの分解斜視図である。
【
図7】
図3に示す引外し機構を動作させるコイルなどの分解斜視図である。ただし、
図6とは異なる方向から見た図である。
【
図8】リード線を仮保持部となる貫通孔に通した状態の例を示す図である。
【
図10】実施形態の接続部材の斜視図である。ただし、
図9とは異なる方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1乃至
図5に示されていることから理解されるように、実施形態の漏電ブレーカ1は、電流が流れることで引外し機構を動作させる過電流引外し用素子と、漏電遮断用基板12に電源を供給する経路となるリード線13と、可動接触子11と電気的に接続される導電性の接続部材50と、を備え、接続部材50に過電流引外し用素子の一部とリード線13を並べて共に接続部材50に接続する構成としている。このため、漏電遮断用基板12と過電流引外し用素子に電気を送るための経路を設定する作業工数を抑制することが可能となる。
【0014】
実施形態の漏電ブレーカ1は、可動接触子11と固定接触子が接触している場合に漏電ブレーカ1の一次側から送られてきた電気を漏電ブレーカ1の二次側に流すことができる。可動接触子11に流れた電気は漏電ブレーカ1の二次側に送るだけではなく、漏電ブレーカ1自体の電気的制御をすることなどに利用される。
【0015】
実施形態では、可動接触子11に流れた電気はリード線13などを介して漏電遮断用基板12に電気を送り、漏電の有無を判別する回路を実装した漏電遮断用基板12を用いた制御を可能としている。また、可動接触子11に流れた電気は過電流引外し用素子に流され、過電流などが生じた場合に、強制的に可動接触子11と固定接触子を引き離すことができるようにしている。
【0016】
これらを可能とするため、実施形態の漏電ブレーカ1には、可動接触子11から電気を引き込むことが可能な導電性の接続部材50を備えている。この接続部材50に、漏電遮断用基板12に電気を送るために用いられるリード線13と、過電流引外し用素子の一部を接続する。より詳しくは、この接続部材50に対して過電流引外し用素子の一部とリード線13を並べて共に接続部材50に接続する。このため、製造方法に必要な作業工数を抑制することが可能となる。
【0017】
なお、過電流引外し素子の典型例は、コイル72、バイメタル、バイメタルを熱するヒータ等であるが、それらに限定する必要はない。ただし、過電流引外し素子としては、その一部がリード線13と共に接続部材50に接続できるものである。
【0018】
過電流引外し素子は、接続部材50に接続されることになる部位として、より線14よりも径が小さい線を備えるものであることが好ましい。リード線13と同様、より線14よりも径が小さい線であれば、接続部材50への接続手法に対して制限がかかりにくい。例えば、接続部材50により線14を接続しようとする場合、より線14は太いため、溶接による接続がなされるが、過電流引外し素子の接続部材50に接続されることになる部位が、より線14よりも径が小さい線であれば、溶接による接続を回避することが可能となりうる。
【0019】
実施形態においては、過電流引外し素子としてコイル72を採用しており、このコイル72の一部であるコイル線72aがリード線13と共に接続部材50に接続される(
図3から
図7参照)。実施形態においては、接続部材50の一方側から固定箇所に向けてリード線13が配策されており、接続部材50の他方側から固定箇所に向けてコイル線72aが配策されている。リード線13とコイル線72aは固定箇所付近で隣り合うように配策され、そのように配策された状態でまとめて固定作業がなされる。実施形態においては、より線14よりも径の小さいコイル線72aとリード線13は、溶接以外の手段を用いて固定することができる。
【0020】
接続部材50により線14を接続することは必ずしも必要ではないが、接続部材50により線14を接続する場合、より線14は接続部材50に対して溶接などの強固な接続手段を用いることが考えられる。このため、可動接触子11と接続部材50を電気的に接続するより線14を備える場合、より線14を接続部材50の過電流引外し用素子とリード線13の接続箇所とは異なる箇所に接続するのが好ましい。このようにすれば、過電流引外し用素子とリード線13に対しては、溶接などの強固な接続手段を用いなくてもよくなる。つまり、接続部材50への接続対象に応じた適切な接続手段を採用しやすくなる。
【0021】
実施形態においては、接続部材50の一方の面により線14を固定し、他方の面にリード線13とコイル線72aを固定している。より線14とリード線13などは同じ面に固定してもよいが、より線14の固定とリード線13の固定が一緒になされないようにするのが好ましい。
【0022】
例えば、接続部材50に、リード線13と過電流引外し用素子をかしめて固定するのに用いられる固定片51を備えた構成とするのが好ましい。固定片51としては、どのようなものであってもよいが、実施形態では、板状の部材の一部を切り起こすことで構成している。この固定片51は鈍角をなすように折れ曲がった屈曲部51aを備えており、かしめ作業時などにリード線13などの移動を抑制できるようにしている。
【0023】
また、接続部材50に備えた固定片51に、リード線13を仮保持することが可能な仮保持部51bを備えた構成とするのが好ましい。リード線13を仮保持した状態でかしめることができるため、リード線13のかしめを適切に行うことができる。
【0024】
この仮保持部51bは貫通孔であることが好ましい。つまりは、接続部材50に備えた固定片51に、リード線13を仮保持することが可能な貫通孔を備えた構成とするのが好ましい。貫通孔という簡易な構造を採用することでリード線13を仮保持することができる。
【0025】
図8から
図10に示す例では貫通孔は固定片51の屈曲部51aと重なるように設けられている。固定片51に屈曲部51aを設ける場合でも、必ずしも貫通孔などの仮保持部51bを固定片51の屈曲部51aと重なるように設けなくてもよいが、それらを重なるように設ける構成とするのが好ましい。なお、貫通孔にリード線13を仮保持する場合は、リード線13を貫通孔に挿入した後に、リード線13を曲げて、リード線13が貫通孔から抜け落ちにくいようにするのが好ましい。
【0026】
かしめて固定するのに加えて、更に別の手法を用いて固定を補助するようにしても良い。例えば、はんだ付けをするようにしてもよい。はんだ付けは、より線14などに行われる溶接とは異なり、線を溶かすものではないため、それほど強固な固定ではないが、導通を確保するには適しており、かしめ固定とともに利用されることで、かしめ固定の補助として用いることができる。
【0027】
実施形態の接続部材50は、主たる部分が断面L字状となるように構成されており、その内角側に配置した過電流引外し素子の一部とリード線13を安定してかしめることができる。実施形態では、これらをかしめる際には、接続部材50に備えた固定片51を断面L字状の角となる側に押し付けるようにしてなすようにしている。なお、実施形態の固定片51はL字の角周辺を切り起こして形成されているが、このような構成である必要はない。ただし、過電流引外し素子の一部とリード線13を断面L字状の角となる側に押し付けるようにする位置に固定片51を備えるようにするのが好ましい。
【0028】
また、実施形態の接続部材50は、より線14が固定されるより線接続部53を接続部材50の端部に設けているが、より線接続部53を接続部材50の中央部付近に設けるように構成してもよい。
【0029】
ここで、過電流が生じた際に動作する引き外し機構の動作の一例について簡単に説明をする。
図3に示す例では、枠状のトリップベース71にコイル72が組み込まれている。コイル72の上端は負荷側の端子金具15に接続されている。スパイラル状のコイル72の中央には可動鉄心73が配置されており、その上方には可動鉄片74が配置されている。可動鉄片74は回路に大電流が流れたときに発生する磁力により可動鉄心73に引き寄せられ、トリガレバーを動作させるように機能する。このような構成を採用することにより、過電流が流れた場合に瞬時に可動接触子11と固定接触子を引き外すことができる構成としている。
【0030】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、仮保持部を形成するために切り欠きを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 漏電ブレーカ
11 可動接触子
12 漏電遮断用基板
13 リード線
14 より線
50 接続部材
51 固定片
51b 仮保持部