(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061948
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】フィルター交換マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240430BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169610
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】393022311
【氏名又は名称】陶山 英夫
(72)【発明者】
【氏名】陶山 英夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】陶山 直子
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA04
2E185CA03
2E185CB16
2E185CC33
(57)【要約】
【課題】隙間なく装着でき、呼吸しやすいN95性能相当の使い捨てマスクを提供する。
【解決手段】個別に用意された平坦な袋状フィルター12が、曲線構成のフィルターアタッチメント13の上下の挟み部17、19で保持されて展開され、フィルターアタッチメントの鼻当て部21、環状の押さえ部18の側辺部22と顎当て部23、さらに外側に並列配置された上部縁押さえ部24と下部縁押さえ部25によって、鼻、鼻と頬の間、口元、および、顎に当てられ、伸ばされて首の後ろで連結されたつる部27と下つる部30の張力で押し当てられて、比較的広いフィルター面積と小空間で鼻腔と口を隙間なく覆う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に用意された袋状フィルターとフィルターアタッチメントが一体化して用いられる使い捨てマスクにおいて、
前方向に凸形状の袋状部を有す前記袋状フィルターが、曲線構成の前記フィルターアタッチメントに取り付けられ、展開されて、前記フィルターアタッチメントの上部中央から左右外開きに延長された環状の押さえ部によって、鼻、鼻と頬の間、および顎に当てられ、加えて前記フィルターアタッチメントから左右に延長されたつる部の張力で押し当てられることにより、鼻腔と口を内側の閉じた空間で覆う、
ことを特徴とするフィルター交換マスク。
【請求項2】
前記袋状フィルターが、前記フィルターアタッチメントに取り付けられ、後方向に凸形状の開口部で展開されて、前記フィルターアタッチメントの上部中央の鼻当て部と、該鼻当て部の左右の側部の下端から下方向かつ左右外開きに延長された前記環状の押さえ部によって、鼻、鼻と頬の間、および顎に当てられ、加えて前記鼻当て部の左右の前記側部から左右外開きに延長されたつる部と、前記つる部の中途箇所と前記環状の押さえ部の中途箇所でつながれた下つる部の張力で押し当てられることにより、鼻腔と口を内側の閉じた空間で覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルター交換マスク。
【請求項3】
前記袋状フィルターが、前記袋状部の上端辺と下端辺で、前記フィルターアタッチメントの上部中央の前記鼻当て部と、前記環状の押さえ部の下部中央に設けられた2箇所の挟み部に取り付けられて展開され、前記鼻当て部と前記環状の押さえ部によって、鼻、鼻と頬の間、および顎に当てられ、加えて前記つる部の張力と、前記下つる部の張力で押し当てられることにより、鼻腔と口を内側の閉じた空間で覆う、
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルター交換マスク。
【請求項4】
前記袋状フィルターが、前記環状の押さえ部と、前記鼻当ての左右の前記側部の下端近傍から前記環状の押さえ部の外側に沿って並列に下部中央の前記挟み部まで連続された上部縁押さえ部と下部縁押さえ部によって、鼻、鼻と頬の間、および顎に当てられ、加えて前記つる部と前記下つる部の張力で押し当てられることにより、鼻腔と口を内側の閉じた空間で覆う、
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルター交換マスク。
【請求項5】
前記袋状フィルターは、不織布を含む複数層からなるフィルターシートが2枚重ねられて溶着で閉じられた前方向に凸形状の袋状部と、開いた後方向に凸形状の開口部で構成される、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のフィルター交換マスク。
【請求項6】
前記袋状フィルターは、下方向と上方向に対して45度プラスマイナス15度で前方向に傾斜した上端辺と下端辺と、該上端辺と該下端辺の前の端をつないだ前端辺からなる前方向に凸形状の前記袋状部を有す、
ことを特徴とする請求項5に記載のフィルター交換マスク。
【請求項7】
前記袋状フィルターは、重ねられた前記フィルターシートがそれぞれ開口部の後端から一定幅の範囲に離散して溶着された複数箇所を有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項5に記載のフィルター交換マスク。
【請求項8】
前記袋状フィルターは、円弧近似の前方向に凸形状の前記袋状部を有す、
ことを特徴とする請求項5または請求項7に記載のフィルター交換マスク。
【請求項9】
前記袋状フィルターは、上下対称な外形状にされる、
ことを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれかに記載のフィルター交換マスク。
【請求項10】
前記袋状フィルターは、左右対称な外形状にされる、
ことを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれかに記載のフィルター交換マスク。
【請求項11】
前記フィルターアタッチメントの前記鼻当て部は、下方向かつ左右外開きに配置された前記側部と、左右の前記側部の上部の内側から相対的に薄い左右の曲げ部に中央の下方向に開いた前記挟み部を連続したブリッジ部を有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載のフィルター交換マスク。
【請求項12】
前記鼻当て部の前記側部は、前から後ろに向かって幅が連続的に小さくなる断面形状と、外方向に傾斜した内側面を有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項11に記載のフィルター交換マスク。
【請求項13】
前記鼻当て部の前記側部は、中間位置の下の箇所から並列に分岐されて、内側方向に30度以下の角度で曲げられ、該箇所の近傍から下方向に前後の厚さが連続的に小さくなる構成にされる、
ことを特徴とする請求項12に記載のフィルター交換マスク。
【請求項14】
前記鼻当て部の前記ブリッジ部は、相対的に薄い前記曲げ部と、相対的に厚い断面形状の梁部からなる逆U字形状の前記挟み部を有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項11に記載のフィルター交換マスク。
【請求項15】
前記挟み部の逆U字形状の梁部が、前から後ろ方向に外側に傾斜した内側面を有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項14に記載のフィルター交換マスク。
【請求項16】
左右の側当て部が、相対的に薄い厚さで、左右の前記側部の上部の内側から左右の前記曲げ部と前記挟み部の下端に近似的に一定幅で連続されて、中間に前記挟み部のスリット部から更に狭い幅で連続する間隙を有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項15に記載のフィルター交換マスク。
【請求項17】
前記環状の押さえ部が、前記鼻当て部の左右の前記側部の下端から全体的に下方向かつ左右外開きの方向に延長され、下部中央の前記挟み部まで環状に形成される、
ことを特徴とする請求項2から請求項4、または請求項13のいずれかに記載のフィルター交換マスク。
【請求項18】
前記環状の押さえ部が、左右の前記側部の下端から外方向、内方向、外方向、内方向、さらに外方向と全体的に下方向かつ左右外開きに相対的に大きい曲率で順次屈曲され、中途箇所の境部まで連続して延長された蛇行形状の側辺部を上部に有す、
ことを特徴とする請求項17に記載のフィルター交換マスク。
【請求項19】
前記環状の押さえ部は、前記境部から下部中央の前記挟み部まで外方向に凸形状で延長され顎当て部を下部に有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項17、または請求項18に記載のフィルター交換マスク。
【請求項20】
下部中央の前記挟み部は、上方向に開いた導入部から下方向かつ左右外開きの方向に連続して2方向に傾斜するスリットを左右に有す構成にされる、
ことを特徴とする請求項3、または請求項4に記載のフィルター交換マスク。
【請求項21】
前半の前記上部縁押さえ部が左右の前記側部の下端近傍から蛇行形状で中途位置の前記境部まで、後半の前記下部縁押さえ部が外に凸な形状で前記境部から下部中央の前記挟み部まで連続して延長され、それぞれが前記環状の押さえ部に沿って並列に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルター交換マスク。
【請求項22】
前記つる部は、前記鼻当て部の左右の前記側部から、全体的に下方向かつ左右外開きの方向に延長されて、左右の端で連結可能にされる、
ことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載のフィルター交換マスク。
【請求項23】
前記つる部は、前後方向に相対的に厚い前記側部の前側に偏った箇所から延長される、
ことを特徴とする請求項22に記載のフィルター交換マスク。
【請求項24】
前記つる部は、左右の前記側部から延長された蛇行形状の顔当てつる部を前半に有す、
ことを特徴とする請求項22、または請求項23に記載のフィルター交換マスク。
【請求項25】
前記つる部は、左右の前記側部から下方向で左右外開きの方向に直線状に取り出され、連続して相対的に大きい曲率で曲げられて上方に直線状に伸ばされ、さらに相対的に大きい曲率で曲げられて下方に直線状に中途箇所の分岐部まで延長された蛇行形状の前記顔当てつる部を前半に有す、
ことを特徴とする請求項24に記載のフィルター交換マスク。
【請求項26】
前記顔当てつる部は、前記鼻当て部の左右の側部から中途箇所の前記分岐部まで近接した並列配置で構成される、
ことを特徴とする請求項24または請求項25に記載のフィルター交換マスク。
【請求項27】
前記つる部は、中途箇所の前記分岐部から下方向に、直線近似のフレーム部と蛇行形状の伸縮部が連続された後つる部を後半に有す、
ことを特徴とする請求項25、または請求項26に記載のフィルター交換マスク。
【請求項28】
前記つる部は、左右の端に孔形状の連結部、またはフック形状の連結部を有す、
ことを特徴とする請求項22に記載のフィルター交換マスク。
【請求項29】
左右の前記連結部は、フック形状の部分を除いて相対的に薄い平坦状にされる、
ことを特徴とする請求項28に記載のフィルター交換マスク。
【請求項30】
前記つる部は、左右の前記側部近傍に、外方向かつ後方向に突出した止め部を有す、
ことを特徴とする請求項23から請求項26までのいずれかに記載のフィルター交換マスク。
【請求項31】
前記フィルターアタッチメントは、曲線構成の各部分の前側が共通の平面で、後ろ側が数ミリメートル以内の凹凸形状で、さらに各部分の側面が斜面で構成される、
ことを特徴とする請求項11から請求項30までのいずれかに記載のフィルター交換マスク。
【請求項32】
両眼を覆う大きさの透明シートが、該透明シートの下部中央に設けられた凹部から前記ブリッジ部の下と前記鼻当て部の前記側部に沿って嵌め込まれ、前記つる部と前記上部縁押さえ部で挟まれ、前記凹部の左右の内側辺の段差部で前記つる部の突出した前記止め部に掛けられる構成にされる、
ことを特徴とする請求項30に記載のフィルター交換マスク。
【請求項33】
複数層の不織布からなる連続する2枚のフィルターシートが、それぞれ個別に、連続方向と直交するシート幅方向に複数逆向きに隣接して配置される前記袋状フィルターの前記開口部の後端に相当する位置からそれぞれ逆方向に前記袋状フィルターの前後の間隔の半分相当の範囲で離散的に複数箇所溶着された後、離散的な融着箇所を揃えて重ね合わされた後、シート幅方向に複数逆向きに隣接して配置される前記袋状フィルターの前記袋状部に相当する外形状に沿って一定幅以上で溶着され、さらに、シート幅方向に複数配置される前記袋状フィルターの溶着箇所を含む外形状に沿って切り込みが入れられる、
ことを特徴とする請求項5から請求項10までのいずれかに記載のフィルター交換マスクの袋状フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルや飛沫の吸入と放出を最小化する使い捨てマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルなどの微粒子の吸入をほとんど無くし、微小飛沫の放出を低減するマスクとして、医療用に使用されるN95マスクがある。N95マスクは、特許文献1で示されるように、立体成形されたフィルターの周縁部にシール材が配置され、複数の止め紐の張力で強めに顔に当てがわれる。隙間が生じないように装着するには手間と錬度が必要であり、相対的に呼吸が苦しく、活動時や日常用途には使いにくい。
【0003】
家庭用マスクや医療用サージカルマスクは、特許文献2と特許文献3で示されるように、プリーツ形状や立体形状にされた柔軟なフィルターの左右の側縁部に伸縮する耳掛け部が設けられるが、隙間が生じやすく、エアロゾルやPM2.5などの微粒子の吸入を十分抑制できず、空気感染予防には不十分で、使用時に複数の不快感や不便が伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-202051号公報
【特許文献2】特許第5837252号公報
【特許文献3】特許第5696047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のフィルター交換マスクは、従来のマスクが有していた、さらには、マスクの性能や価値の向上を妨げる以下の課題を解決する。
【0006】
フィルターと顔との間に隙間が生じる。
【0007】
呼気による不快な蒸れ感が伴う。
【0008】
鼻での呼気漏れによる眼鏡の曇り、ドライアイが生じやすい。
【0009】
口の開閉や顎の上下動で、マスクの下ずれ、鼻だしマスクになりやすい。
【0010】
指の接触によるフィルター呼吸面の汚れが生じやすい。
【0011】
酸素不足と二酸化炭素過多による息苦しさ、頭痛が生じやすい。
【0012】
耳紐による耳の痛みと偏頭痛が生じやすい。
【0013】
口呼吸による口の乾燥で、口臭や歯槽膿漏が悪化しやすい。
【0014】
フィルターが口に密着しやすい。
【0015】
一般のマスクと医療用のN95マスクは異なる基本構成にされる。
【0016】
医療用のN95マスクは、呼吸しにくく、顔面への圧迫感が大きい。
【0017】
医療用のN95マスクは、一般的に高価格である。
【0018】
医療用のN95マスクは、既存の柔らかいN95相当フィルターが使用されない。
【0019】
エアロゾルや微粒子が眼に入る。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のフィルター交換マスクは、個別に用意された平坦状の袋状フィルターと曲線構成のフィルターアタッチメントが合体され、展開されて用いられることで、フィルターと顔との間に隙間が生じないようにされる。従来のマスクが有していた課題や、マスク性能や価値の向上を妨げる課題を解決する手段が、本発明のフィルター交換マスクの請求項の技術内容に基づいて説明される。
【0021】
請求項1から請求項4では、本発明のフィルター交換マスクの基本構成が示される。前方向に凸形状に閉じられた袋状部を有す袋状フィルターは、別に用意されたフィルターアタッチメントの上部中央の鼻当て部に設けられた挟み部と、鼻当て部の左右の側部から延長された環状の押さえ部の下部中央に設けられた挟み部に、袋状部の傾斜した上端辺と下端辺が挟まれ、開口部から展開されて顔に当てがわれる。さらに、袋状フィルターは、鼻当て部と環状の押さえ部、さらには、環状の押さえ部の外側に沿って並列に配置された上部縁押さえ部と下部縁押さえ部によって上から、鼻、鼻と頬の間、口元、顎に当てられる。
【0022】
加えて、袋状フィルターは、フィルターアタッチメントの鼻当て部の側部から延長されて首の後ろで連結される左右のつる部による張力と、環状の押さえ部の中途箇所とつる部の中途箇所でつながれた下つる部による張力で押し当てられることで、顔との間に隙間が生じないようにされる。
【0023】
請求項5から請求項10では、本発明のフィルター交換マスクの一部として個別に用意される袋状フィルターの構成が示される。袋状フィルターは、2枚の平坦なフィルターシートが重ね合わされて溶着され、閉じた袋状部を有す構成にされる。フィルターシートは、溶着可能な不織布が複数層重ね合わされ、集塵効率が大きく、圧力損失が比較的小さいN95性能相当のものが用いられる。従来のマスクに使用されているN95性能相当の柔らかいフィルターシートが用いられることも可能である。
【0024】
展開される以前の平坦状の袋状フィルターは、前方向に閉じた凸形状の袋状部と、後方向に開いた凸形状の開口部を有す。袋状部は、鼻に当てられる上端辺と、鼻腔と口に対向する上下方向の前端辺、および顎に当てられる下端辺で形成される。上端辺と下端辺は、それぞれ下方向と上方向に対して全体的に前方向に45度プラスマイナス15度の傾斜で、上下対称に配置される。袋状フィルターが展開されて顔に装着されると、鼻に当てられる上端辺の傾斜は少し大きくされ、顎に当てられる部分は顎骨の左右の広がりに対応して大きく拡げられ、下端辺は顎の下に沿うように大きく曲げられて当てられる。
【0025】
複数の不織布が重ねられた2枚の個々のフィルターシートは、開口部の端での層間分離しないように、かつシート全体の柔軟性を保つことができるように、開口部の後端から袋状フィルターの前後の間隔の半分ほどの範囲で複数箇所が離散的に溶着される。開口部の端の部分は、溶着された箇所と溶着されない箇所が交互に配置される。
【0026】
請求項11から請求項16では、フィルターアタッチメントの中央上部の鼻当て部の構成が示される。形状個人差の大きい鼻の近傍で隙間が生じないように、鼻当て部は、下方向かつ左右外開きの左右の側部と、左右の側部の上部を連結する位置にブリッジ部を有す形状にされる。ブリッジ部は、左右に薄く変形しやすい曲げ部と、左右の側部の間の中央に剛性を有す挟み部で構成されて、鼻を跨いで屈曲できるようにされる。
【0027】
左右の側部は、比較的高い剛性を有すように前後の厚さと断面が相対的に大きくされ、前から後ろに向かって外方向に傾斜した内側面を有し、前側に偏在した箇所から延長されたつる部の張力で内方向にねじられることで、内側面の後ろ側が鼻の両脇に当たりやすくされる。また、左右の側部は、中間位置より下の箇所から内側に30度以下の角度で曲げられ、この個所から並列配置で下方向に前後方向の厚さが連続的に薄くされることで下の位置ほど柔軟にされ、鼻の両脇の立ち上がり箇所近傍での隙間が生じにくくされる。
【0028】
ブリッジ部の中央の挟み部は、前側の幅が大きく、相対的に前後に厚く傾斜した内側面をからなる断面形状の高い剛性を有す梁部で、逆U字形状に形成される。左右の梁部につる部からの張力が加わった際に、逆U字形状部のスリットの間隔の広がりが抑えられて、挟まれた袋状フィルターが外れないようにされる。
【0029】
また、請求項16では、薄い左右の側当て部が、左右の側部の上部内側から左右の曲げ部と厚い逆U字形状の梁部の下端に連続して配置され、中間位置に、逆U字形状のスリットより狭い幅で、位置と方向が一致した間隙を連続して有す構成にされる。袋状フィルターの上端辺が、間隙の上端の小さく突出した箇所で止められて、はずれにくくされる。
【0030】
請求項17から請求項20では、平坦状の曲線形状で構成されたフィルターアタッチメントの環状の押さえ部が、上部中央の鼻当て部の側部の下端から中途箇所の境部まで、下方向かつ左右外開きの方向に配置された蛇行形状の側辺部を有し、上下、左右、前後に伸縮、屈曲可能することで、全体的に凸形状の顔面に当たるようにされ、さらに環状の押さえ部の境部から下方向に続く顎当て部が、外に凸な曲線形状で左右に配置されて、口元近傍の顔面に沿って顎骨の箇所で曲げられて、顎の下にも当たるようにされる。
【0031】
環状の押さえ部の下部中央の挟み部は、上方向に開いた中央の導入部から連続する下方向かつ左右外方向に傾斜した2つのスリットを有す扁平な構成にされ、顎を引いた際に喉に当たりにくくされる。
【0032】
請求項21では、鼻当て部の側部の下端から中途箇所の境部まで延長された蛇行形状の上部縁押さえ部と、環状の押さえ部と共通にされた境部から下部中央の挟み部まで外に凸形状に連続された下部縁押さえ部が、環状の押さえ部の外側に沿って並列に配置されて、袋状フィルターの開口部の縁の近傍を押さえることで、フィルターと顔との間に隙間がさらに生じにくくされ、また顔への当たりも緩和される。
【0033】
請求項22から請求項27では、フィルターアタッチメントの鼻当て部の側部の中間より上の箇所から、下方向かつ左右外開きの方向に延長されたつる部が示される。つる部は、前半の顔当てつる部と、後半の後つる部で構成にされる。
【0034】
前半の顔当てつる部は、蛇行形状で中途箇所の分岐部まで並列に配置され、袋状フィルターの開口部の端の一部を押さえ、顔への当たりを緩和する。並列配置の環状の押さえ部の場合と同様に、樹脂成形時における必要な流路断面積の確保と温度管理を容易にする。
【0035】
相対的に厚さと剛性を有す側部の前側に偏在した箇所から取り出されたつる部は、後方にのばされて生じる張力で鼻を跨ぐブリッジ部を曲げて、側部を捩じり、鼻当て部の傾斜した内側面の幅の狭い部分を鼻の両脇に沿って当て、袋状フィルターと鼻の両脇との間に隙間が生じないようにする。
【0036】
後半の後つる部は、中途箇所の分岐部から下方向に延長された直線近似のフレーム部と、さらにフレーム部の下端から連続されて長さと張力を調整する蛇行形状の伸縮部からなり、左右の伸縮部の端には異なる形状の連結部が配置される。
【0037】
請求項28と請求項29では、左右の連結部が、フック形状または孔形状で形成され、装着と脱着が容易にされる。孔形状の連結部は直列配置の2箇所の孔を有し、フック形状の連結部がいずれかの孔に嵌められることで、つる部全体の長さと張力の調整をある程度可能にする。また、左右の連結部は、フック部以外の部分が薄く平坦な形状にされることでつまむ操作が容易にされ、捩じられやすくされ、方向を調整して連結することが容易になり、首への当たりも緩和される。
【0038】
請求項31では、全体が平坦状に配置された曲線構成のフィルターアタッチメントの各部が示される。顔に当たらない前側が共通の平面で、後ろ側が数ミリメートル以内の凹凸形状に、各側面が斜面で構成されることで、金型製作と樹脂成形が容易にされる。
【0039】
請求項30と請求項32では、眼を保護する透明シートを取り付ける構成が示される。両眼を覆う形状にされた透明シートは、中央下部の凹部に設けられた段差部がつる部の突出した止め部に嵌め込められることにより、容易に装着、脱着される。
【0040】
請求項33では、袋状フィルターの製造方法が示される。複数層の不織布からなる連続する2枚のフィルターシートが、個別に連続方向と直交するシート幅方向に逆向きに隣接して配置される複数の袋状フィルターの開口部の後端に相当する位置から袋状フィルターの前後の間隔の半分相当の範囲で離散的に溶着された後、この離散的な溶着箇所の領域を揃えて重ね合わされる。続いて、逆向きに隣接して配置される袋状フィルターの袋状部に相当する形状に沿って一定幅で溶着される。さらに、袋状フィルターの形状に沿って切り込みが入れられる。連続して重ねられた2枚のフィルターシートは、ローラーなどによる送りと停止が繰り返され、停止時に各工程が実施される。
【発明の効果】
【0041】
簡単な装着で、顔とフィルターとの間に隙間が生じない使い捨てマスクである。
【0042】
呼吸し易く、当たりが緩和されて、日常的に使い易い使い捨てマスクである。
【0043】
従来の柔軟なN95相当のフィルターを用いたN95性能の使い捨てマスクである。
【0044】
医療用、家庭用とも同じ基本構成のマスクである。
【0045】
高性能で低コストの使い易いマスクになる。
【0046】
酸素不足や二酸化炭素過多にならず、息苦しさや頭痛が生じない。
【0047】
耳紐がなく、耳の痛みと偏頭痛が生じない。
【0048】
蒸れによる不快感が大幅に緩和される。
【0049】
鼻での隙間がなくなることで、眼鏡の曇りやドライアイが生じない。
【0050】
口の開閉や顎の上下動によるマスクの下ずれ、鼻だしマスクが生じない。
【0051】
指の接触によるフィルター呼吸面の汚染が生じにくい。
【0052】
口呼吸を抑制して、口の乾燥による口臭の増大と歯槽膿漏の進行を止める。
【0053】
袋状の溶着凸状部の剛性で、フィルターの口への密着が生じにくくされる。
【0054】
微粒子が眼に入らないように、眼を覆う透明シートが簡単に装着される。
【0055】
薄い袋状フィルターが、使い捨て用として安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本発明のフィルター交換マスクの実施例1が斜視図で示される。
【
図2】本発明に使用される袋状フィルターが平面図で示される。
【
図3】袋状フィルターが開口部から展開された形状で示される。
【
図4】本発明に使用されるフィルターアタッチメントが平面図で示される。
【
図5】本発明のフィルター交換マスクの実施例2が斜視図で示される。
【
図6】本発明に使用される袋状フィルターの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明のフィルター交換マスクは、個別に用意された平坦状の袋状フィルターと、全体的に平坦で曲線構成のフィルターアタッチメントが、一体化されて用いられる使い捨てマスクである。また、本発明のフィルター交換マスクは、飛沫の飛散を抑え、呼吸し易いことは当然として、エアロゾルやPM2.5、花粉などの微粒子の吸入をN95性能相当の捕集効率で抑制することを主な目的とする。さらに、使い易くするための複数の課題を解決することを意図する。以下、
図1から
図6までの図を参照して実施形態が示される。
【実施例0058】
図1は、本発明のフィルター交換マスク11の実施例1を斜視図で示す。複数層の不織布からなるフィルターシートで形成された袋状フィルター12が、フィルターアタッチメント13に取り付けられて展開され、鼻腔と口の前に比較的小さい空間を形成して顔に当てがわれる。
【0059】
袋状フィルター12は、前方向に凸形状にされた袋状部14の上端辺15と下端辺16が、フィルターアタッチメント13の上部中央に配置された下開きの挟み部17と、環状の押さえ部18の下部中央に設けられた上開きの挟み部19で鋏まれて保持され、左右方向に拡げられて、展開前の平坦形状に較べて上下方向の間隔が小さくされる。
【0060】
袋状フィルター12は、鼻から頬、さらに口元から顎に当たるように、後方向に凸形状の開口部20で展開され、フィルターアタッチメント13の鼻当て部21、環状の押さえ部18の上部の側辺部22と下部の顎当て部23、さらに外に沿って配置された上部縁押さえ部24と下部縁押さえ部25によって上から当てられる。
【0061】
鼻当て部21の左右の側部26から延長された左右のつる部27は、伸ばされて首の後ろで連結されることで、左右の側部26に後方向の張力を加える。さらに、つる部27の中途箇所の分岐部28と、環状の押さえ部18の上部の側辺部22と下部の顎当て部23の中途箇所、および上部縁押さえ部24と下部縁押さえ部25の中途箇所を共通にした境部29を連結して配置された下つる部30からも張力が加えられることで、袋状フィルター12は、環状の押さえ部18、上部縁押さえ部24と下部縁押さえ部25によって上から幅広く押し当てられ、顔との間に隙間が生じにないようにされる。
【0062】
鼻の形状は個人差が大きく、複数層の不織布からなる柔らかい袋状フィルター12が鼻に隙間なく押し当てられるためには、鼻当て部21は、鼻の形状に追随して変形できるようにされる。鼻当て部21の上部のブリッジ部31は、鼻を跨いで曲げられることで、下向きで少し外開きにされた左右の側部26は、鼻筋に対して交差する方向に鼻の両脇に当たるように配置される。
【0063】
鼻当て部21の左右の側部26は、前側の幅が3ミリメートルほど、前後方向の厚さが5ミリメートルほどの三角形状近似の断面で相対的に高剛性にされ、また、鼻の両脇に沿って当たりやすくなるように、後ろに向かって左右外方向に傾斜した内側面を有す形状にされる。ブリッジ部31は、左右の符号で示されない薄い曲げ部と、中央の高剛性の梁からなる挟み部17で構成される。袋状フィルター12の上端辺15は、挟み部17で挟まれて保持される。
【0064】
鼻当て部21の左右の側部26は、上下方向の中間位置の下の箇所から30度未満の角度で内側に曲げられ、曲げられた箇所近傍から並列に分けられて、下方向に向かって厚さが連続的に薄くされる。側部26は、顔面に対して前側に偏った箇所から延長されたつる部27の張力でねじられ、内側面の後ろ薄い箇所が鼻近傍に変形して当てられる。
【0065】
環状の押さえ部18は、上部の側辺部22から中途箇所の境部29を介して顎当て部23に連続され、下部の挟み部19に連続される。左右の側辺部22は、鼻当て部21の左右の側部26の下端の内側から、下方向かつ外開きに引き出され、やや下向き、かつ内方向に屈曲され、さらに下向き、かつ外開きの方向に屈曲された蛇行形状で、境部29まで延長される。左右の側辺部22は、前後、上下、および左右に変形し易くされることで、鼻近傍から鼻と頬の間、口元近傍までの顔面に沿って当たるようにされる。
【0066】
中途箇所の境部29から外に凸形状に配置された顎当て部23は、下つる部30の後方向、かつ上方向の張力で引かれて、顎骨の曲率の大きい箇所にやや斜め後ろ方向に傾斜して曲げられ、顎の下から口の左右外側に当てられることで、袋状フィルター12と顔および顎との間の隙間をなくす。
【0067】
また、展開された袋状フィルター12の下端辺16から左右に拡がる内側の面は、顎の奥行方向の位置に対応して大きく変化する顎骨の左右の間隔に対応して展開の幅が変化し、顎の下に沿う形状にされて、前端辺40近傍で大きく屈曲された下端辺16をほぼ中央にして顎の下に沿って配置される。
【0068】
形状個人差の大きい鼻から顎までの長さに対応できるように、鼻当て部21の左右の側部26は、鼻を跨いで掛けられる位置と傾斜や、掛けられる顎骨の位置によって変わる顎当て部23の左右の幅、さらに、下つる部30の張力の大きさによって変わる蛇行形状の側辺部22の全体の傾斜方向と伸縮によって対応される。
【0069】
鼻当て部21の左右の側部26の並列配置の外側の下端から境部29までの上部縁押さえ部24と、境部29から下部中央の挟み部19までの下部縁押さえ部25が連続されて、全体として環状の押さえ部18の側辺部22と顎当て部23の外側に沿って並列に、中途箇所の境部29を共通にして下部中央の挟み部19まで延長される。
【0070】
上部縁押さえ部24は、蛇行形状にされることで、形状個人差の大きい頬の形状に追従して当たるようにされ、袋状フィルターの12を側辺部22と共に幅広く押さえることで、袋状フィルター12と鼻近傍、および頬、口元との間の隙間が生じにくくされる。
【0071】
外側の上部縁押さえ部24と下部縁押さえ部25は、内側に並列配置された環状の押さえ部18と同様に、共通の境部29に加わる下つる部30の張力によって顔形状の個人差に対応し、同時に顔への当たりを緩和する。
【0072】
下部中央の挟み部19は、上方向に開いた導入部から左右外向き、下方向に傾斜して2つのスリットに連続して形成され、左右いずれかのスリットの箇所で袋状フィルター12の下端辺16を挟んで保持する。また、挟み部19は、顎から下方向への突出量が小さくされることで、顎の動作で喉に強く当たらないようにされる。
【0073】
左右のつる部27は、平坦な曲線構成の状態から展開されて首の後ろに伸ばされることによる張力で、鼻当て部21や並列配置の環状の押さえ部18などを袋状フィルター12に押し当て、顔との隙間が生じないようにする。つる部27は、鼻当て部21の左右の側部26から蛇行形状に並列配置された前半の顔当てつる部33と、中途箇所の分岐部28から伸びた直線近似のフレーム部34、および蛇行形状の連結伸長部35からなる後半の後つる部36で形成される。左右のつる部27の端には、連結部が配置される。
【0074】
顔当てつる部33は、前後に厚い左右の側部26の前側に偏った箇所から並列配置で延長される。鼻当て部21のブリッジ部31は、顔に当てがわれて後方向の張力が加えられた際に鼻を跨いで曲げられ、側部26は捩じられて内側面の傾きが変えられ、側部26の内側面の後ろ側の幅の小さい部分が変形しながら袋状フィルター12の上から鼻の両脇に当てられて、袋状フィルター12と鼻との間に隙間が生じないようにされる。
【0075】
並列配置の顔当てつる部33は、展開前には下方向と上方向に平行に対向する直線状の部分を含む蛇行形状から後方への張力で顔に沿った非平行の配置にされて、上下の曲率の大きい屈曲部が顔に強く当たらないようにされる。さらには、並列配置の蛇行形状の顔当てつる部33は、前後左右上下に変形しやすくされることで、当たりが分散化され、顔への当たりが緩和される。
【0076】
後つる部36は、頬から耳の下までの顔面に沿って持ち上げられ、直線近似のフレーム部34の部分が左右の顔面に沿って当てられ、さらに、蛇行形状の連結伸縮部35が伸長されて首の後部に回され、左右の端に設けられた連結部で首の後ろでつながれて、全体の長さと張力が調整される。図示されてない左右の連結部は、孔形状とフック形状を有す構成で、連結と離脱を容易にする。
【0077】
下つる部30によって境部29に加えられる上方向、かつ後方向の張力によって、並列に配置された顎当て部23と下部縁押さえ部25が、袋状フィルター12の上から顎を上方向に押し上げるため、無意識に口を開ける頻度が少なくされる。口が開くことによる口の乾燥に起因する雑菌の増殖と口臭、および歯槽膿漏の発生、悪化などが抑制される。
【0078】
従来の家庭用マスクや医療用のサージカルマスクは、プリーツ形状や立体形状のフィルターの左右の縁部の上下の端に取り付けられた伸縮する耳掛け部によって、ほぼ水平方向の強くない力で顔に当てがわれる。マスクを上方向に持ち上げ、あるいは、保持する有効な方法が採用されてないため、口の開閉や顎の上下動によってマスクが下方向にずれ、鼻が出た状態になりやすい。
【0079】
つる部27の張力によって、ブリッジ部31には鼻筋の傾きに対して上方向に持ち上げる力の成分が少しあり、鼻当て部21のブリッジ部31から下方向かつ左右に開いた左右の側部26からなる逆V字形状の部分が、下方向ほど左右の幅と高さが大きくなる鼻に食い込む楔効果により下方向へのずれを止め、さらに、下つる部30から顎当て部21と下部縁押さえ部25に加えられるやや上方向で後方への張力、および、蛇行形状の側辺部や上部縁押さえ部24の伸縮による上方向の力の成分が生じることで、口の開閉や顎の上下動によるマスク全体の下ずれが抑えられ、使用中に鼻が出た状態になりにくい
【0080】
本発明のフィルター交換マスク11は、袋状フィルター12が、上からフィルターアタッチメント13の鼻当て部21と環状の押さえ部18、さらに、上部縁押さえ部24と下部縁押さえ部25で鼻から鼻と頬の間、口元、さらには顎、および、顎の下に当てられ、つる部27と下つる部30による張力で押し当てられて、隙間が生じない構成にされる。
【0081】
フィルターの外縁部や鼻近傍に隙間が生じると、エアロゾルやPM2.5、花粉などの微粒子の吸入や、それに伴う感染を十分に抑制できない。しかし、隙間を生じさせない本発明の構成では、従来の一般的なマスクで用いられている柔軟なN95性能フィルターを用いて、N95マスク相当の捕集効率が可能にされ、微粒子吸入の問題が解決される。
【0082】
また、フィルターの外縁部や鼻近傍の隙間で漏れる顔面に沿った呼気の流動で、顔面との熱交換による蒸れ感が強調される。さらに、鼻近傍の隙間から流出する呼気で、眼鏡の曇りやドライアイが生じやすく、コンタクトレンズ使用時に苦痛が伴いやすい。本発明の構成で鼻との隙間をなくすことにより、蒸れ感、眼鏡の曇り、ドライアイが抑制される。
【0083】
医療用のN95マスクは、隙間が生じにくくされ、立体状に成形される固めのフィルターの単位面積当たりの通気抵抗が大きく、呼吸しにくい。また、鼻孔や口を覆う空間が相対的に大きいため、マスクに残留する呼気が多く、結果、酸素不足と二酸化炭素過多が生じ、運動時や日常用途には使いにくい。さらに、相対的な血液中の二酸化炭素濃度の増大で、血管膨張で頭痛や眠気や疲労感が生じやすい。
【0084】
前に凸形状の袋状フィルター12は、平坦状から展開されて、鼻腔と口から小さい間隔で、鼻から頬と顎に沿って開口部20が配置されることで、小さい容積、かつ相対的に大きいフィルター面積を有す密閉空間を形成する。一般的マスクで用いられるN95性能相当のフィルター材が袋状フィルター12に使用されることで、呼吸し易く、蒸れ感が抑えられ、酸素不足や二酸化炭素過多による頭痛、眠気、および疲労感が生じにくくされる。
【0085】
また、フィルター交換マスク11は、フィルターアタッチメント13のつる部27を操作することで首の後ろで簡単に脱着され、下へのずれの修正もほとんど必要としないため、袋状フィルター12の内側の呼吸面に指が触れにくく、呼吸面の汚染が防止される。
【0086】
図2は、展開される前の平坦な袋状フィルター12を、平面図で示す。袋状フィルター12は、複数層の不織布からなるフィルターシートが2枚重ね合わされて、袋状部14が凸形状に一定幅で溶着されて形成される。フィルターシートは、例えば、顔に当たる内側に吸湿性の層、外側に撥水性の層、間に集塵効率の大きい層、さらに、必要に応じて抗菌性の層などが重ねられて、超音波溶可能にされる。
【0087】
袋状フィルター12は、前方向に凸形状に閉じられた袋状部14と、後方向に凸形状に開いた開口部20で形成される。平坦状の袋状フィルター12は、開口部20から展開されて顔に当てがわれ、袋状部14が鼻腔と口を比較的小さい間隔を介して小さい空間で覆うようにされる。開口部20は、頬や顎に面状に当てられ、上からフィルターアタッチメントで押し当てられ、隙間が生じないようにされる。
【0088】
袋状部14の外形は、下方向に対して45ほど傾斜した直線状の上端辺15、上下方向に直線状の前端辺40、および上方向に対して45度傾斜した直線状の下端辺16が連続した凸形状にされる。外形に沿って幅を有して溶着されることで相対的に剛性を有す上端辺15と下端辺16とその近傍は、フィルターアタッチメントの上下の挟み部のスリットに挿入されやすくされて、挟まれ、保持される。
【0089】
袋状フィルター12は、上下対称な形状にされることで、装着する際に上下の識別の必要がなくなる。また、前方向に凸形状の袋状部14の外形と、後方向に凸形状にされた開口部20の外形が対称にされることで、前後の向きを識別することなく重ねて保管し易くなり、はみ出すことなく縁部での変形が抑えられる。
【0090】
袋状フィルター12の上端辺15は、展開された内側が鼻筋に沿って配置され、上端辺15と前端辺40のなす角度は、鼻筋の傾きと前端辺40がなす角になり、平坦状での角度より大きくなる。前端辺40は、鼻先から少し前に出た上部の位置から下方向かつ口に近づく内方向に少し傾斜して配置される。
【0091】
下端辺16、およびその近傍の内側の面は、顎の奥行位置で大きく変化する顎骨の左右の幅に対応して展開され、開口部20は左右に大きく広げられ、下端辺16は前端部近傍の箇所で展開される前の45度ほどの傾きから局所的な屈曲で大きく変えられ、顎の下に沿った方向に配置される。
【0092】
袋状フィルター12の開口部20の縁の箇所は、複数層の不織布からなるフィルターシートが層間分離しないように処理される必要がある。フィルターシートは、柔軟さを保ちながら層間分離が生じないように、2枚重ね合わされる前に、開口部20の後端近傍から一定幅の範囲で離散的に溶着部55が複数箇所に形成される。離散的な溶着部55の形状は、文字、数字、さらには記号でもよい。
【0093】
図3は、本発明のフィルター交換マスクの袋状フィルター12が顔に当てがわれて展開された際の形状を、顔やフィルターアタッチメントを省いて、開口部20の側から観た袋状フィルターのみの斜視図で示す。袋状部14は、5ミリメートルほどの幅で溶着されて、上端辺15と下端辺16、および前端辺40が相対的に高剛性にされることで、口や鼻腔からある程度の間隔を保つ袋形状を維持できるようにされる。
【0094】
袋状フィルター12の内側は、鼻の両脇から、頬、口の周り、および、顎に当たって広がる開口部20の左右の縁の広がり程度に対応して、上端辺15および下端辺16と上下方向の前端辺となす角度が、それぞれ平坦における45度の角度から上で少し大きく、および、下で大きく変化する。顎骨の左右の間隔に対応して顎の下に沿って広がる内面の中央に配置される下端辺16は、前端辺40近傍で大きく屈曲される。
【0095】
図4は、本発明のフィルター交換マスクのフィルターアタッチメントを平面図で示す。フィルターアタッチメント13は、袋状フィルターと顔との隙間をなくし、脱着を容易にすることを目的とする。曲線構成の各部が数ミリメートル以内の凹凸形状と傾斜した側面からなる。図示される側は、フィルターアタッチメントの顔に当てがわれる後ろ側であり、図示されない反対の前側は、凹凸部を有しない共通の平面内の平面で形成される。フィルターアタッチメント13は、下部の左右の連結箇所を除いて左右対称な形状にされる。左右対称な各部の2箇所を同じ符号で示す代わりに、1箇所のみに符号が付記される。
【0096】
フィルターアタッチメント13は、鼻当て部21の上部中央の挟み部17と左右の側部26、側部26の内側の下端から下方向かつ外開きに延長された蛇行形状の上部の側辺部22と外に凸な下部の顎当て部23が連続された環状の押さえ部18、および、側部26の外の下端から環状の押さえ部18の外側に沿って並列配置に延長された蛇行形状の上部縁押さえ部24と外に凸な下部縁押さえ部25が連続されて配置され、さらに、下部中央に環状の押さえ部18と下部縁押さえ部25に連続する挟み部19などで構成される部分で、袋状フィルターを上下で挟んで固定し、展開して顔に当てる。
【0097】
さらに、フィルターアタッチメント13は、袋状フィルターを鼻に押し当てる張力を鼻当て部21に加えるために、鼻当て部21の側部26から延長されたつる部27を有す、袋状フィルターの開口部の内側を押さえる張力を加えるために、下つる部30を有す。つる部27は、前半の蛇行形状の顔当てつる部33と後半の後つる部36で形成され、後つる部36は、直線近似のフレーム部34と蛇行形状の連結伸縮部35が連続され、左右の端に異なる形状の連結部37、38が配置される。
【0098】
フィルターアタッチメント13の鼻当て部21の上部のブリッジ部31は、中間位置に高剛性で逆U字形状の梁部からなる挟み部17と、挟み部17と左右の側部26をつなぐ相対的に薄い曲げ部32で形成される。
【0099】
相対的に薄い左右の側当て部42が、左右の側部26の上部の内側から左右の曲げ部の下端、および挟み部17の下端に連続してつながり、挟み部17のスリットより狭い間隙を間に有す形状で配置されて、鼻に当てられた際に鼻との隙間をなくし、鼻への当たりを緩和する。また、スリットと間隙の境の局所的な段差部で袋状フィルターを止める。
【0100】
2倍に拡大されたA-A断面で示されるように、ブリッジ部31の左右の曲げ部32は、1ミリメートルほどの厚さで、3ミリメートル程度の幅にされて、曲がりやすくされる。中間に配置される挟み部17を形成する逆U字形状の梁は、3.5ミリメートルほどの前の幅、4ミリメートルほどの前後の厚さ、さらに、傾斜した内側面を有す断面形状にされて、スリットの間隔の拡がり抑える剛性を有し、成形時に金型から離脱し易くされる。
【0101】
鼻当て部17の側部26は、2倍に拡大されたB-B断面で示されるように、3.5ミリメートルほどの前側の幅、5ミリメートルほどの前後の厚さ、さらに、後方に向かって外方向に傾斜した内側面からなる三角形近似の断面形状にされる。側部26は、前に偏った位置から延長されたつる部による左右外開きで後ろ方向の張力で捩じられ、側部26の内側面の後方近傍の狭い幅の部分が変形することで、鼻の両脇に隙間が生じないように袋状フィルターの上から当てられる。
【0102】
環状の押さえ部18の上部の側辺部22と上部縁押さえ部24は、互いに2ミリメートルほどの間隔で並列に配置されて、鼻当て部21の左右の側部26の分岐した下端の左右
の箇所から、全体的に、下向き、かつ左右外開きの方向に、中途箇所の境部29まで蛇行形状にされて延長される。
【0103】
2倍に拡大されたC-C断面で示されるように、蛇行形状の側辺部22と外側に沿う上部縁押さえ部24は、顔面に当たらない前側の幅と前後方向の厚さが2ミリメートルほどで、2ミリメートルほどの間隔で並列に配置されて、柔軟な樹脂材料で成形されることで、前後、上下、ねじれ、のいずれの方向にも変形可能にされる。前側の幅が後ろ側の幅より大きくされ、両側部が傾斜面にされることで金型から抜き取りやすくされる。
【0104】
環状の押さえ部18の下部の顎当て部23と下部縁押さえ部25は、側辺部22と上部縁押さえ部24と同じように、顔面に当たらない図示されてない前側の幅と前後方向の厚さが2ミリメートルほどにされ、2ミリメートルほどの間隔で並列に配置されて、共通の境部29から下部中央の挟み部19まで外方向に凸形状に延長され、下つる部の後方向きの張力で口元から顎骨、および顎に当たるようにされる。
【0105】
下部中央の挟み部19は、上開きの導入部43から左右斜め下向き2方向に連続するスリット44を有した扁平な構成にされて、顎が上下に大きく動いた際に喉に強く、あるいは鋭く当たらないようにされる。
【0106】
袋状フィルターの下端辺が、左右の顎当て部23の端の間をつなぐ逆M字形状の弾性梁45の変形により左右のスリット44のいずれかに挿入されて挟まれる。逆M字形状の弾性梁45の上下方向の変形による弾性力でスリット44の幅が変えられることで、袋状フィルターが挿入されやすくされ、挟まれ、保持される。さらに、袋状フィルターは、スリットの途中で突出した箇所で止められ、外れにくくされる。
【0107】
つる部27は、鼻当て部21の左右の側部26から全体的に下方向、かつ左右外開きの方向に並列配置で、中途箇所の分岐部28まで延長された前半の顔当てつる部33と、分岐部28から端の連結部37、38まで下方向に延長された後半の後つる部36で形成される。環状の押さえ部18の側辺部22にも適用された並列配置の構成を有す顔当てつる部33は、それぞれの前側の幅と前後の厚さが2ミリメートルほどの断面形状で、後ろ側から前側に広がる傾斜した両側面を有し、変形し易くされて顔への当たりを緩和し、さらには、成形時の樹脂流量の確保と温度管理しやすくされる。
【0108】
後つる部36は、つる部27の中途箇所の分岐部28から下方向に延長された直線近似のフレーム部34、さらに蛇行形状の連結伸長部35が連続して配置された形状にされる。顔に沿う左右方向の幅が2ミリメートル以下、前後方向に相当する顔方向の厚さが2ミリメートルより大きい断面形状にされることで、フレーム部34が顔に沿って当たり、連結伸長部35が屈曲、伸縮しやすく、顔に沿って延伸される。
【0109】
フック形状の連結部37と孔形状の連結部38が、左右のつる部27の端に配置される。蛇行形状の連結伸長部35の前後方向に2ミリメートルより厚い端部が、1.5ミリメートルほどの薄い連結部37、38の平坦状の部分に数ミリメートルほど重ね合わされて連続される。
【0110】
フック形状の連結部37は、1.5ミリメートルほどの薄い平坦部の先に厚さ2ミリメートル以上のフック部が配置される。孔形状の連結部38は、1.5ミリメートルほどの薄い平坦部に、先方向が幅狭にされた2つの孔部が直列に配置されて、つる部27の長さと張力が調整される。個々の孔部の先の一部が、補強のため、厚くされてもよい。
【0111】
下つる部30は、つる部27の中途箇所の分岐部28の内側の位置から後つる部36と非平行に並んで下方向に延長され、環状の押さえ部18の中途箇所、および上部縁押さえ部24と下部縁押さえ部25の中途箇所を共通にした境部29につながれて配置される。下つる部30の前側の幅と前後の厚さは1.5ミリメートルほどにされて、屈曲、伸長しやすくされる。並列配置の顔当てつる部33の総断面積と、後側の後つる部36と下つる部30の総断面積がほぼ同じにされて、成形時の樹脂の流量が連続するようにされる。
【0112】
つる部27が側部26からの引き出される箇所近傍に、突出部48が並列配置のつる部の外側の部分から後ろ向き、かつ左右外向きに配置される。
【0113】
平坦状のフィルターアタッチメント13は、高密度ポリエチレンなどを用いて、曲線構成に成形される。図示された側が顔面に当てられる裏側で、図示されてない側が顔に当たらない表側になる。表側は、凹凸のない同一の面内の平坦構成にされ、裏側は、数ミリメートルの範囲の凹凸で形成される。樹脂成形用のゲートは、上部では鼻当て部21の中央上部の1箇所に上向で、下部では、左右の連結部と逆M字形状の左右をつないだ2箇所に下向きに設けられる。
透明シート46の下部中央に形成された凹部が、袋状フィルター47の上端辺49と鼻を跨いで、鼻当て部21のブリッジ部31の下に入れ込まれ、鼻当て部21の左右の側部26の外側に沿って合わされ、凹部の内側辺に設けられた段差部が、鼻当て部21近傍のつる部27の下の突出部48に嵌め合わされことで、透明シート46が保持される。
透明シート46は、左右の下の部分で蛇腹状の顔当てつる部33によって押さえられ、眼と小さい間隔を保って配置されることで、エアロゾル、PM2.5、花粉などの微粒子が眼に入るのを抑制する。また、眼鏡は透明シート46の前に装着される。
袋状フィルター47は、円弧形状近似に溶着され閉じられた円弧状端辺40を有す袋状部50と、前後対称な円弧形状近似の後方向に凸形状の外形を有す開口部51からなり、また、上下も対称な外形にされる。展開されて顔に当てがわれた袋状フィルター47は、フィルターアタッチメント13によって顔との間に隙間なく、鼻腔と口を比較的小さい空間と間隔で覆う。
2枚のフィルターシート52、53は、離散的な溶着箇所55、56の領域を揃えて重ね合わされ、逆方向に隣接する個々の袋状フィルターの袋状部に沿って溶着される。切り込まれて個別にされた後の袋状フィルターの溶着部の幅より大きい幅で溶着される。
離散的な溶着と幅を有した袋状外形の溶着の後、シート幅方向に配置された複数の袋状フィルター58の外形に沿って切り込み部59が入れられたのち、抜き取られる。溶着、切り込み、抜き取りの各工程が、連続方向の送りと静止の繰り返しに同期して行われる。送りと静止は、フィルターシートを挟むローラーによって実施される。