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特開2024-61956樹脂形材の接合方法及び樹脂形材の接合装置
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  • 特開-樹脂形材の接合方法及び樹脂形材の接合装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061956
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】樹脂形材の接合方法及び樹脂形材の接合装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/18 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B29C65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169621
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 勲
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸二
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA15
4F211AA40
4F211AG14
4F211AH48
4F211AR06
4F211AR07
4F211AR11
4F211AR12
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD07
4F211TJ14
4F211TJ15
4F211TN07
4F211TQ01
4F211TW22
(57)【要約】
【課題】生産性及び外観品質を向上させる。
【解決手段】樹脂形材の接合方法は、一対の樹脂形材を溶融させて圧着する樹脂形材の接合方法であって、一方の樹脂形材を第1の金型ユニットで保持し、他方の樹脂形材を第2の金型ユニットで保持する工程と、前記第1及び第2の金型ユニットにそれぞれ保持され、対向する前記一対の樹脂形材の端面を非接触で加熱する工程と、前記加熱する工程の後、前記第1及び第2の金型ユニットを前記一対の樹脂形材に対してその長手方向にそれぞれ相対移動させ、前記第1の金型ユニットと前記第2の金型ユニットとを前記一対の樹脂形材の端面間を跨いだ状態で当接させる工程と、前記第1及び第2の金型ユニットを当接させたままの状態で、前記一対の樹脂形材の端面同士を圧着し、前記一対の樹脂形材を接合する工程とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の樹脂形材を溶融させて圧着する樹脂形材の接合方法であって、
前記一対の樹脂形材のうち、一方の樹脂形材を第1の金型ユニットで保持し、他方の樹脂形材を第2の金型ユニットで保持する工程と、
前記第1及び第2の金型ユニットにそれぞれ保持され、対向する前記一対の樹脂形材の端面を非接触で加熱する工程と、
前記加熱する工程の後、前記第1及び第2の金型ユニットを前記一対の樹脂形材に対してその長手方向にそれぞれ相対移動させ、前記第1の金型ユニットと前記第2の金型ユニットとを前記一対の樹脂形材の端面間を跨いだ状態で当接させる工程と、
前記第1及び第2の金型ユニットを当接させたままの状態で、前記一対の樹脂形材の端面同士を圧着し、前記一対の樹脂形材を接合する工程と、
を有する
ことを特徴とする樹脂形材の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂形材の接合方法であって、
前記接合する工程において前記一対の樹脂形材の端面同士を圧着する際、前記第1の金型ユニットは、前記第2の金型ユニットとの当接状態を維持したまま前記一方の樹脂形材に対してその圧着方向と逆方向に相対移動させ、同時に、前記第2の金型ユニットは、前記第1の金型ユニットとの当接状態を維持したまま前記他方の樹脂形材に対してその圧着方向と逆方向に相対移動させる
ことを特徴とする樹脂形材の接合方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂形材の接合方法であって、
前記接合する工程は、前記一対の樹脂形材について、それぞれの端面から設定した範囲の端部を圧着代として圧着するものであり、
前記加熱する工程において、前記第1の金型ユニットは、前記一方の樹脂形材の圧着代よりも後退した位置に配置し、前記第2の金型ユニットは、前記他方の樹脂形材の圧着代よりも後退した位置に配置する
ことを特徴とする樹脂形材の接合方法。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂形材の接合方法であって、
さらに、前記保持する工程と前記加熱する工程との間に、前記一対の樹脂形材の各端面をそれぞれ切削する基準面出し加工を行う工程を有する
ことを特徴とする樹脂形材の接合方法。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂形材の接合方法であって、
前記一対の樹脂形材の端面は、それぞれの長手方向に対して傾斜しており、
前記接合する工程では、前記一対の樹脂形材をそれぞれの長手方向と直交する方向に移動させることで、互いの端面同士を圧着する
ことを特徴とする樹脂形材の接合方法。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂形材の接合方法であって、
前記一方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の横枠であり、
前記他方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の縦枠であり、
前記各工程は、それぞれ上下一対の前記横枠及び左右一対の前記縦枠の4本の樹脂形材のコーナー部に対して同時に実施する
ことを特徴とする樹脂形材の接合方法。
【請求項7】
一対の樹脂形材を溶融させて圧着する樹脂形材の接合装置であって、
前記一対の樹脂形材のうち、一方の樹脂形材をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第1の金型ユニットと、
前記一対の樹脂形材のうち、他方の樹脂形材をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第2の金型ユニットと、
前記第1の金型ユニットを前記一方の樹脂形材の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記一方の樹脂形材との相対位置が固定された状態で該一方の樹脂形材を移動させる第1のベースユニットと、
前記第2の金型ユニットを前記他方の樹脂形材の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記他方の樹脂形材との相対位置が固定された状態で該他方の樹脂形材を移動させる第2のベースユニットと、
を備える
ことを特徴とする樹脂形材の接合装置。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂形材の接合装置であって、
前記第1のベースユニットは、所定以上の負荷を受けた際に後退する第1のスライド機構を用いて前記第1の金型ユニットを支持し、
前記第2のベースユニットは、所定以上の負荷を受けた際に後退する第2のスライド機構を用いて前記第2の金型ユニットを支持している
ことを特徴とする樹脂形材の接合装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の樹脂形材の接合装置であって、
さらに、前記第1及び第2の金型ユニットでそれぞれ保持された一対の樹脂形材の端面間に非接触で配置されるヒータプレートを備える
ことを特徴とする樹脂形材の接合装置。
【請求項10】
請求項7に記載の樹脂形材の接合装置であって、
前記一対の樹脂形材の端面は、それぞれの長手方向に対して傾斜しており、
前記第1及び第2のベースユニットは、それぞれ前記一対の樹脂形材をその長手方向と直交する方向に移動させることで、互いの端面同士を圧着可能である
ことを特徴とする樹脂形材の接合装置。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂形材の接合装置であって、
前記一方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の横枠であり、
前記他方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の縦枠であり、
前記第1及び第2の金型ユニットと前記第1及び第2のベースユニットとの組合せが、上下一対の前記横枠及び左右一対の前記縦枠の4本の樹脂形材のコーナー部に対してそれぞれ配置されている
ことを特徴とする樹脂形材の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂形材同士を接合する樹脂形材の接合方法及び樹脂形材の接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建具として用いられる開口枠やこれに支持される障子の框体は、断熱性能向上等の観点から樹脂形材同士を接合した樹脂枠で構成されることがある。樹脂形材の接合方法としては、一対の樹脂形材の各端面にヒータプレートを当てて加熱して溶融させた後、ヒータプレートを退避させて両者を圧着して接合する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5473667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような接合方法では、接合部の表面に溶融樹脂がはみ出してバリを形成するため、その処理が問題となる。
【0005】
上記特許文献1の方法では、溶着する樹脂形材と共に一対のカッター刃を前進させ、バリを切断している。ところが、建具を構成する樹脂形材のように複雑な断面形状を有する異形の形材同士の接合では、形材の表面に複雑な段差があるため、バリを完全に除去することが難しい。そこで、通常、このような樹脂形材は、手作業での後処理を行う必要があり、生産性が低下していた。また、この方法では、発生するカッター屑の清掃作業も必要となるため、生産性が一層低下していた。さらに、この方法では、バリをカッター刃で引きちぎる際に樹脂形材に白い筋状のせん断面が生じ、外観品質が低下するという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、生産性及び外観品質を向上させることができる樹脂形材の接合方法及び樹脂形材の接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る樹脂形材の接合方法は、一対の樹脂形材を溶融させて圧着する樹脂形材の接合方法であって、前記一対の樹脂形材のうち、一方の樹脂形材を第1の金型ユニットで保持し、他方の樹脂形材を第2の金型ユニットで保持する工程と、前記第1及び第2の金型ユニットにそれぞれ保持され、対向する前記一対の樹脂形材の端面を非接触で加熱する工程と、前記加熱する工程の後、前記第1及び第2の金型ユニットを前記一対の樹脂形材に対してその長手方向にそれぞれ相対移動させ、前記第1の金型ユニットと前記第2の金型ユニットとを前記一対の樹脂形材の端面間を跨いだ状態で当接させる工程と、前記第1及び第2の金型ユニットを当接させたままの状態で、前記一対の樹脂形材の端面同士を圧着し、前記一対の樹脂形材を接合する工程とを有する。
【0008】
本発明の第2態様に係る樹脂形材の接合装置は、一対の樹脂形材を溶融させて圧着する樹脂形材の接合装置であって、前記一対の樹脂形材のうち、一方の樹脂形材をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第1の金型ユニットと、前記一対の樹脂形材のうち、他方の樹脂形材をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第2の金型ユニットと、前記第1の金型ユニットを前記一方の樹脂形材の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記一方の樹脂形材との相対位置が固定された状態で該一方の樹脂形材を移動させる第1のベースユニットと、前記第2の金型ユニットを前記他方の樹脂形材の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記他方の樹脂形材との相対位置が固定された状態で該他方の樹脂形材を移動させる第2のベースユニットとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、生産性及び外観品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る樹脂形材の接合方法を用いて製造される樹脂枠の模式的な姿図である。
図2図1に示す樹脂枠の各樹脂形材同士を一実施形態に係る樹脂形材の接合装置を用いて接合する動作を模式的に示す説明図である。
図3A】樹脂形材の接合装置の構成を模式的に示す説明図である。
図3B図3Aに示す樹脂枠及び接合装置を断面方向から見た図である。
図4図2に示す樹脂枠のコーナー部での樹脂形材の接合方法の一手順を示す動作図である。
図5A図2に示す樹脂枠の方立部での樹脂形材の接合動作を模式的に示す平面図である。
図5B図5Aに示す樹脂形材の接合動作を模式的に示す縦断面図である。
図6図2に示す樹脂枠の方立部での樹脂形材の接合方法の第1の手順を示す動作図である。
図7図2に示す樹脂枠の方立部での樹脂形材の接合方法の第2の手順を示す動作図である。
図8図2に示す樹脂枠の方立部での樹脂形材の接合方法の第3の手順を示す動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る樹脂形材の接合方法及び接合装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る樹脂形材の接合方法及び装置は、樹脂枠10を製造可能な方法及び装置である。樹脂枠10は、上下一対の横枠11,11と、左右一対の縦枠12,12とを矩形状に枠組みすると共に、左右の縦枠12,12間に横向きの方立14を連結したものである。
【0013】
樹脂枠10の用途としては、障子を支持する開口枠や障子の框体を例示できる。開口枠として用いられる場合、樹脂枠10は、建物躯体の開口部に固定され、内側の開口部10aに障子が開閉可能に又は開閉不能に支持される。框体として用いられる場合、樹脂枠10は、開口部10aにガラス板等の面材を保持し、建物躯体の開口部に固定された開口枠の内側で開閉可能に又は開閉不能に支持される。樹脂枠10を用いた開口枠や框体は、例えば引違い窓や片引き窓等のスライド窓、すべり出し窓や縦すべり出し窓等の開閉窓、上げ下げ窓、嵌め殺し窓等、各種の建具に使用できる。方立14は、樹脂枠10の用途等によっては省略されてもよいし、上下の横枠11,11間で縦向きに設置されてもよい。方立14は、2本以上が並列されてもよい。
【0014】
以下では、樹脂枠10について、横枠11の長手方向に沿う左右方向をX方向、縦枠12の長手方向に沿う上下方向をY方向、X方向及びY方向に直交する奥行方向をZ方向と呼んで説明する。建具として用いた場合、樹脂枠10は、Z方向が室内外方向となる。
【0015】
樹脂枠10を構成する各枠11,12及び方立14は、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂材料を押出成形した樹脂形材である。各枠11,12は、所定長さで各端部11A,12Aが45度に切断された同一の断面形状を有する形材である。各枠11,12の端部11A,12Aは、隣接する枠12,11の45度に切断された端部12A,11Aが突き合わされ、溶着されることで互いに接合されている。方立14は、所定長さで各端部14Aが略直角三角形に切断された先細りの断面形状を有する形材である。方立14は、縦枠12の中間部分を略直角三角形に切除した凹状部12Bに対して端部14Aが突き合わされ、溶着されることで互いに接合されている。各枠11,12の端部11A,12Aの傾斜角度は45度以外でもよく、方立14の端部14Aの形状も三角形以外でもよい。
【0016】
先ず、横枠11と縦枠12との接合方法と、この接合方法を実行可能な接合装置16について説明する。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の樹脂枠10を構成する各枠11,12の4つのコーナー部C1~C4の接合方法は各枠11,12の向きや圧着方向が異なる以外は実質的に同一でよく、これらコーナー部C1~C4を接合するための接合装置16も同一でよい。そこで、以下では、図2中で右上のコーナー部C1、つまり上側の横枠11の右側の端部11Aと右側の縦枠12の上側の端部12Aとの接合方法及びこれを接合する接合装置16について代表的に説明し、他の3つのコーナー部C2~C4ついての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の接合方法は、4つのコーナー部C1~C4に設置された接合装置16を同時に動作させて、コーナー部C1~C4を同時に接合するものであるが、コーナー部C1~C4を個別に又は複数ずつ接合してもよい。
【0018】
先ず、接合装置16の構成例を説明する。図2及び図3Aに示すように、接合装置16は、一方の樹脂形材である横枠11を保持及び移動させる第1のユニット16Aと、他方の樹脂形材である縦枠12を保持及び移動させる第2のユニット16Bとで構成されている。図3A及び図3Bは、第1のユニット16Aの構成を模式的に示し、第2のユニット16Bの図示は省略している。なお、図2にも示す通り、第2のユニット16Bは、横枠11ではなく縦枠12を保持及び移動させる点以外は第1のユニット16Aと実質的に同一の構成でよい。そこで、第2のユニット16Bの構成要素等については、図3A及び図3B中に括弧書きで参照符号を示して詳細な説明や図示を省略する。
【0019】
図2及び図3Aに示すように、第1のユニット16Aは、横枠11をZ方向から挟むように設置される第1のベースユニット20A,20Bと、第1の金型ユニット21A,21Bと、第1のシリンダ22A,22Bと、第1のクランプ23A,23Bとを備える。なお、第1のベースユニット20A,20Bは、実質的に対称構造でよいため、以下では両者を区別することなく「第1のベースユニット20」と呼んで説明することがある。また、第1の金型ユニット21A,21B、第1のシリンダ22A,22B、第1のクランプ23A,23Bについても同様に、それぞれ「第1の金型ユニット21」、「第1のシリンダ22」、「第1のクランプ23」と呼んで説明することがあり、第2のユニット16Bの各構成要素についても同様とする。
【0020】
第1のベースユニット20は、横枠11をクランプする装置であり、横枠11との相対位置が固定されている。第1のベースユニット20は、モータ24によって横枠11の長手方向(X方向)に直交するY方向に沿って移動可能である。これにより第1のベースユニット20は、横枠11をY方向に移動させることができる。モータ24は、制御部26によって駆動制御される電動モータであり、例えばサーボモータである。
【0021】
なお、制御部26は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0022】
第1の金型ユニット21は、横枠11を保持する部分である。第1の金型ユニット21は、横枠11の開口部10a側とは逆側(枠外側)の表面11aに沿った金型形状を有し、表面11aを保持している。第1の金型ユニット21は、表面11aに接触する一部分のみを着脱可能に構成し、各種断面形状の樹脂形材に対してより柔軟に対応可能な構成としてもよい。第1の金型ユニット21は、第1のベースユニット20に対してリニアガイド28を介してX方向に移動可能に支持され、Y方向には相対移動不能となっている。図2では、モータ24及びリニアガイド28の図示を省略している。
【0023】
図3A及び図3Bに示すように、横枠11の端部11Aの端面11Aaは、複数の段差や角部を有する複雑な異形の断面形状を有する。このため、本実施形態の接合装置16は、第1の金型ユニット21をZ方向で2分割した構成とし、一方の金型ユニット21Aで表面11aの一方の部分11a1を保持し、他方の金型ユニット21Bで表面11aの他方の部分11a2を保持する構成としている。
【0024】
接合装置16は、このように分割された第1の金型ユニット21A,21Bに対応するため、第1のベースユニット20A,20B及び第1のシリンダ22A,22Bも2分割した構成としている。第1のベースユニット20、金型ユニット21、及び第1のシリンダ22は2分割構造でなく、一体構造としてもよい。
【0025】
このように、第1の金型ユニット21は、横枠11の表面11aに沿った金型表面で横枠11を保持する。このため、第1の金型ユニット21は、横枠11に対してその長手方向(X方向)に対しては相対移動可能であり、一方、これと直交するY方向に対しては相対移動不能となる。
【0026】
第1のシリンダ22は、第1のベースユニット20と第1の金型ユニット21との間に設けられたスライド機構である。第1のシリンダ22は、第1のベースユニット20に対して第1の金型ユニット21をX方向に進退可能に支持している。第1のシリンダ22は、例えばエアシリンダで構成されるが、油圧シリンダ、電動モータ、又はばね等で構成されてもよい。これにより第1のシリンダ22は、第1のベースユニット20に対して第1の金型ユニット21をX方向に進退させることができると共に、第1の金型ユニット21が所定以上の負荷を受けた際にはその後退を許容する。つまり第1のシリンダ22は、第1の金型ユニット21に対して第1方向に押圧した状態で所定以上の負荷を受けると、これとは逆の第2方向に圧縮され、第1の金型ユニット21をこれに追従して後退させることができる。なお、第1のクランプ23は、横枠11をクランプするクランプ装置である。
【0027】
上記した通り、第2のユニット16Bは、第1のユニット16Aと実質的に同一の構成でよい。つまり第2のユニット16Bは、縦枠12をZ方向から挟むように設置される第2のベースユニット30A,30B(「第2のベースユニット30」とも呼ぶ)と、第2の金型ユニット31A,31B(「第2の金型ユニット31」とも呼ぶ)と、第2のシリンダ32A,32B(「第2のシリンダ32」とも呼ぶ)と、第2のクランプ33A,33B(「第2のクランプ33」とも呼ぶ)とを備える。そして、これら第2のベースユニット30、第2の金型ユニット31、第2のシリンダ32、及び第2のクランプ33は、それぞれ上記した第1のベースユニット20、第1の金型ユニット21、第1のシリンダ22、及び第1のクランプ23と同一又は同様な構成でよい。また、第1の金型ユニット21と同様、第2の金型ユニット31も縦枠12の開口部10a側とは逆側(枠外側)の表面12aに沿った金型表面を有し、表面12aを保持している(図3A及び図3B参照)。
【0028】
次に、図4を参照して横枠11と縦枠12との接合方法を説明する。図4は、実際には90度に接合される横枠11と縦枠12とを180度に展開して図示したものである。図4に示す各工程は、制御部26の制御下に実行される。なお、ここで説明する横枠11と縦枠12の接合方法は、図1及び図2中の上下枠を構成する横枠11と縦枠12との接合方法を示す。但し、当該接合方法における横枠は、左右方向に沿って配置される枠材であると言い換えることもでき、この場合、当該接合方法は横枠(方立14)と縦枠12との接合方法に用いることもできる。略同様に、方立14は、上記したように上下の横枠11,11間で縦向きに設置されてもよい。つまり当該接合方法における縦枠は、上下方向に起立した方立であると言い換えるものもでき、この場合、当該接合方法は横枠11と縦枠(方立)との接合方法に用いることもできる。
【0029】
先ず、図4に示す初期工程において、第1の金型ユニット21で横枠11を保持し、第2の金型ユニット31で縦枠12を保持し、横枠11の端面11Aaと縦枠12の端面12Aaとを対向配置する。この際、金型ユニット21,31も互いの前端面21a,31aが対向配置され、端面11Aa,12Aaは前端面21a,31aよりも突出した位置に設定される。
【0030】
次に、基準面出し加工工程を実行する。基準面出し加工工程は、所定間隔を介して対向させた端面11Aa,12Aa間にエンドミル等の切削工具を挿入し、端面11Aa,12Aaを所定量切削する。この基準面出し加工により、各枠11,12の端部11A,12Aは、端面11Aa,12Aaが所望の平面度に形成されると共に、端面11Aa,12Aaから所定範囲が圧着代CAとして設定される。圧着代CAは、枠11,12を圧着した際に潰れて接合される部分である。すなわち、当該接合方法は、基準面出し加工工程を実行することで、圧着される端面11Aa,12Aaの平面度が確保され、同時に圧着代CAを設定範囲に設定することができ、後述する圧着後の枠11,12の接合強度の向上やバリの抑制効果が得られる。
【0031】
次に、非接触加熱工程を実行する。非接触加熱工程は、対向する端面11Aa,12Aa間にヒータプレート34を配置して各端部11A,11Bを非接触で加熱する。ヒータプレート34の各表面と各端面11Aa,12Aaとの隙間は、例えばそれぞれ1mm程度に設定される。ヒータプレート34は、一定温度に維持され、所定時間、例えば数秒間加熱する。これにより各枠11,12の端部11A,12Aは、少なくとも圧着代CAが溶融する。
【0032】
ところで、当該接合装置16は、金型ユニット21,31を枠11,12に対してその長手方向に相対移動可能である。そこで、図4に示すように、非接触加熱工程では、金型ユニット21,31を枠11,12の各端面11Aa,12Aaから後退した位置、具体的には、圧着代CAよりも後退した位置に配置するとよい。そうすると、非接触加熱された枠11,12の熱を金型ユニット21,31が奪ってしまうことを抑制できる。その結果、後述する圧着工程時に枠11,12の温度が低下することを抑制でき、接合強度が向上する。
【0033】
次に、加熱が完了したヒータプレート34を端面11Aa,12Aa間から退避させた後、金型ユニット21,31の前進工程を実行する。前進工程は、シリンダ22,32を付勢することで、金型ユニット21,31を互いに突き合う方向に沿って前進させる。本実施形態の金型ユニット21,31は、図2に示すように90度に交差して配置されている。このため、第1の金型ユニット21は、横枠11の長手方向に沿うX方向に前進し、第2の金型ユニット31は、縦枠12の長手方向に沿うY方向に前進する。その結果、金型ユニット21,31は、端面11Aa,12Aaを跨いだ状態で互いの前端面21a,31a同士が当接し、枠11,12の表面11a,12aを覆い隠す。
【0034】
次に、圧着工程を実行する。圧着工程は、金型ユニット21,31の前端面21a,31aを当接させたままの状態、つまりシリンダ22,32の付勢力を維持したままの状態でベースユニット20,30を駆動して端面11Aa,12Aaを圧着代CAの分だけ圧着する。本実施形態の場合は、図2に示すように45度に傾斜する端面11Aa,12Aaを圧着するために、第1のベースユニット20をY方向で枠内側に移動させ、第2のベースユニット30をX方向で枠内側に移動させる。これにより各枠11,12は、互いの端部11A,12A同士が圧し潰されて溶着される。なお、ベースユニット20,30による枠11,12の移動量、つまり圧着量は、制御部26によって制御されてもよいし、ベースユニット20,30の移動を所定位置で規制するストッパを設けることで物理的に制御してもよい。
【0035】
このように枠11,12を圧着する際、枠11,12が移動すると、金型ユニット21,31も互いの前端面21a,31aが突き合う方向の負荷を受ける。ここで、金型ユニット21,31は、所定以上の負荷を受けた際にはその後退を許容するシリンダ22,32を介してベースユニット20,30に支持されている。このため、端部11A,12Aが圧着される際、金型ユニット21,31は、互いの前端面21a,31a同士の当接状態を維持したまま、それぞれ圧着方向と逆方向へと枠11,12に対して相対移動する。つまり第1の金型ユニット21は、横枠11に対して端面11Aaから後退するX方向に相対移動する。第2の金型ユニット31は、縦枠12に対して端面12Aaから後退するY方向に相対移動する。
【0036】
従って、枠11,12は、互いの当接状態が維持された金型ユニット21,31によってその表面11a、12aがガイドされた状態で互いに圧着される。その結果、枠11,12は、図4に示すように互いの端部11A,12A間に圧着代CAが潰れて固まった溶着部Wが形成され、強固に接合される。
【0037】
この際、金型ユニット21,31でガイドされていた表面11a,12aでは、溶着された樹脂が膨出せず、バリの発生が抑制されるため、高い外観品質が得られる。一方、金型ユニット21,31で覆われた表面11a,12a以外の外面は、溶着された樹脂が膨出したバリBを生じる。しかしながら、バリBを生じた外面は、例えば樹脂枠10の開口部10a側(枠内側)の見込み面を形成する部分であって障子やガラスが配置される面となるため、バリBによる外観品質への影響はほとんどない。
【0038】
以上のように、本実施形態の接合方法は、表面11a,12aに金型ユニット21,31が当接した状態で枠11,12の圧着工程を実行する。このため、溶着後の枠11,12は、表面11a,12aでのバリの発生が抑制されるため、手作業での後工程や切断したバリの清掃作業等が不要となり、さらには接合後の塗装作業も不要となるため、生産性が向上する。また、当該接合方法では、表面11a,12aでのバリの発生自体が抑制されるため、バリをカッター刃で引きちぎる際に筋状のせん断面が生じることを回避でき、外観品質が向上する。
【0039】
また、本実施形態の接合装置16は、横枠11をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第1の金型ユニット21と、縦枠12をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第2の金型ユニット31と、第1の金型ユニット21を横枠11の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、横枠11を移動させる第1のベースユニット20と、第2の金型ユニット31を縦枠12の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、縦枠12を移動させる第2のベースユニット30とを備える。このため、当該接合装置16は、表面11a,12aに金型ユニット21,31を当接させた状態で枠11,12の圧着工程を実行でき、生産性及び外観品質の向上が可能となる。
【0040】
上記した通り、本実施形態の接合方法は、図2に示す矢印の方向に各コーナー部C1~C4の各接合装置16を同時に駆動することで、4つのコーナー部C1~C4を同時に接合し、一度に樹脂枠10を形成することができ、生産性が一層向上する。
【0041】
図4に示す接合方法及び接合装置16は、樹脂形材同士のコーナー部以外に適用してもよい。この場合は、第1のユニット16Aと第2のユニット16Bとが直線状に配置されると共に左右対称構造とされるとよく、ベースユニット20,30はそれぞれ樹脂形材をその長手方向に沿って移動させる構成とするとよい。
【0042】
次に、縦枠12と方立14との接合方法と、この接合方法を実行可能な接合装置36について説明する。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の樹脂枠10を構成する左右の縦枠12と方立14の両端部との接合方法は左右対称である以外は実質的に同一でよく、これを接合するための接合装置36も同一でよい。そこで、以下では、図2中で右側の方立部M1での接合方法及びこれを接合する接合装置36について代表的に説明し、左側の方立部M2での接合方法及び接合装置36についての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の接合方法は、2つの方立部M1,M2に設置された接合装置36を同時に動作させて、方立部M1,M2を同時に接合するものであるが、方立部M1,M2は別個に接合してもよい。
【0044】
先ず、接合装置36の構成例を説明する。図2図5A及び図5Bに示すように、接合装置36は、一方の樹脂形材である縦枠12を保持及び移動させる第1のクランプ装置38Aと、他方の樹脂形材である方立14を保持及び移動させる第2のクランプ装置38Bと、ガイド装置40とで構成されている。図5では、第2のクランプ装置38Bの図示は省略している。
【0045】
第1のクランプ装置38Aは、Z方向に対向配置されて相互間に縦枠12を保持する一対のクランプ38aをY方向で方立14を挟むように一対有する構成である。第1のクランプ装置38Aは、所定のベース台に対してモータ24と同様なモータによってX方向に沿って移動可能である。
【0046】
第2のクランプ装置38Bは、Z方向に対向配置されて相互間に方立14を保持する一対のクランプで構成されている。第2のクランプ装置38Bは、位置が固定されている。但し、第1のクランプ装置38Aを固定式としてもよく、この場合は、第2のクランプ装置38Bを所定のベース台に対してモータによってX方向に沿って移動可能な構成とするとよい。
【0047】
ガイド装置40は、縦枠12と方立14との接合部を挟み込むようにZ方向に移動可能な一対のガイド部材40A,40Bを備える。
【0048】
一方のガイド部材40Aは、縦枠12及び方立14のZ方向で一方側(例えば室内側)の表面12b,14aに対してスタンプされるように当接する。他方のガイド部材40Bは、縦枠12及び方立14のZ方向で他方側(例えば室外側)の表面12c,14bに対してスタンプされるように当接する。本実施形態の場合、表面12b,12c,14a,14bは平面であり(図5B参照)、ガイド部材40A,40Bの当接面も平面でよい。ガイド部材40A,40Bは、エンジニアリングプラスチック、例えばポリイミド系のベスベル(登録商標)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のように、断熱性能が高い硬質の樹脂で形成されるとよい。ガイド部材40A,40Bは、金属製でもよい。
【0049】
接合装置36の動作は、上記した接合装置16と共用の制御部26によって制御される(図5B参照)。接合装置36の制御部は、制御部26とは別個に設けてもよい。
【0050】
次に、図6を参照して横枠11と縦枠12との接合方法の第1の手順を説明する。図6に示す各工程は、制御部26の制御下に実行されるものであり、図7及び図8に示す各工程も同様である。
【0051】
先ず、図4に示す初期工程と同様な初期工程を実行する。この初期工程では、第1のクランプ装置38Aで縦枠12を保持し、第2のクランプ装置38Bで方立14を保持し、凹状部12Bと端部14Aとを対向配置する。この際、ガイド部材40A,40Bは、それぞれ表面12b,14a及び表面12c,14bから退避した位置に配置されている。
【0052】
次に、図4に示す基準面出し加工工程と同様な基準面出し加工工程を実行する。この基準面出し加工工程では、凹状部12Bと端部14Aとの間にエンドミル等の切削工具を挿入し、それぞれの端面を所定量切削する。図示は省略するが、この場合の基準面出し加工においても、凹状部12Bと端部14Aの端面が所定の平面度に形成されると共に、それぞれの端面から所定範囲が圧着代として設定される。
【0053】
図6に示すように、次に、非接触加熱工程を実行する。非接触加熱工程は、対向さする凹状部12Bと端部14Aとの間にヒータプレート42を配置してそれぞれを非接触で加熱する。ヒータプレート42は、例えば凹状部12Bと端部14Aの端面形状に沿う略V字形状のプレートである。ヒータプレート42の各表面と凹状部12B及び端部14Aの端面との隙間は、例えばそれぞれ1mm程度に設定される。ヒータプレート42は、一定温度に維持され、所定時間、例えば数秒間加熱する。これにより縦枠12と方立14は、少なくとも圧着代が溶融する。
【0054】
次に、加熱が完了したヒータプレート42を凹状部12Bと端部14Aとの間から後退させた後、ガイド当接工程を実行する。ガイド当接工程は、ガイド部材40Aを凹状部12Bと端部14Aとの端面間を跨ぐようにして表面12b,14aに当接させ、同時にガイド部材40Bを上記端面間を跨ぐようにして表面12c,14bに当接させる。つまり縦枠12と方立14の各表面12b,14a,12c,14bに対して、ガイド部材40A,40Bがスタンプするように当接される。
【0055】
次に、圧着工程を実行する。圧着工程は、表面12b,14a,12c,14bにガイド部材40A,40Bを当接させたままの状態で、クランプ装置38Aを駆動して凹状部12Bと端部14Aを圧着代の分だけ圧着する。これにより縦枠12及び方立14は、互いの凹状部12Bと端部14Aが圧し潰されて溶着される。
【0056】
その結果、図6に示すように、縦枠12及び方立14は、互いの圧着代が潰れて固まった溶着部Wが形成され、強固に接合される。この際、縦枠12及び方立14の表面12b,14a,12c,14bは、ガイド部材40A,40Bでガイドされた状態で圧着されたため、溶着された樹脂が膨出せず、バリの発生が抑制されるため、高い外観品質が得られる。一方、ガイド部材40A,40Bで覆われていない表面12b,14a,12c,14bの裏面は、溶着された樹脂が膨出したバリBを生じる。しかしながら、バリBを生じた裏面は、形材の内側で外部からは視認されないため、バリBによる外観品質への影響はほとんどない。
【0057】
ところで、図6に示す第1の手順に係る接合方法は、圧着工程の前に非接触加熱された縦枠12及び方立14にガイド部材40A,40Bを当接させる。このため、当該第1の手順では、加熱された縦枠12及び方立14の熱がガイド部材40A,40Bに奪われ、圧着工程時に縦枠12及び方立14の温度が低下する可能性がある。この点につき、本実施形態のガイド部材40A,40Bは、上記した断熱性能の高い樹脂で形成されている。このため、第1の手順でも、縦枠12及び方立14の温度低下を最小限に抑えることはできているが、以下の第2の手順では温度低下をさらに抑制可能となっている。
【0058】
そこで、次に、図7を参照して横枠11と縦枠12との接合方法の第2の手順を説明する。
【0059】
図7に示す第2の手順においても、初期工程、基準面出し加工、非接触加熱工程、及びヒータプレート42の後退工程は、図6に示す第1の手順と同様でよいため、詳細な説明は省略する。
【0060】
図7に示すように、当該第2の手順は、縦枠12及び方立14を非接触で加熱した後、続いて、端面突合せ工程を実行する。端面突合せ工程は、ガイド部材40A,40Bを退避させた状態でクランプ装置38Aを駆動して、凹状部12Bと端部14Aとの互いの端面を突き合わせて停止する。この際、縦枠12と方立14とは圧着せず、相互の端面同士が当接した直後にクランプ装置38Aの駆動を停止する。
【0061】
次に、圧着工程を実行する。圧着工程は、ガイド部材40A,40Bを凹状部12Bと端部14Aとの端面間を跨ぐようにして表面12b,14a,12c,14bに当接させ、これと同時に又は僅かに遅れてクランプ装置38Aを駆動して凹状部12Bと端部14Aを圧着代の分だけ圧着する。つまり当該第2の手順での圧着工程は、上記した第1の手順のガイド当接工程と圧着工程とを同時に実行するものであると言い換えることもできる。
【0062】
その結果、図7に示すように、縦枠12及び方立14は、互いの圧着代が潰れて固まった溶着部Wが形成され、強固に接合される。この際、縦枠12及び方立14は、表面12b,14a,12c,14bがガイド部材40A,40Bでガイドされた状態で圧着されたため、上記した第1の手順と同様に溶着された樹脂が膨出せず、バリの発生が抑制されるため、高い外観品質が得られる。
【0063】
しかも、当該第2の手順では、圧着工程において、圧着動作と略同時にガイド部材40A,40Bを縦枠12及び方立14に当接させる。このため、当該第2の手順では、加熱された縦枠12及び方立14の熱がガイド部材40A,40Bで奪われ、圧着工程時に縦枠12及び方立14の温度が低下することを一層確実に抑制でき、縦枠12との方立14との接合強度が一層向上する。なお、図6に示す第1の手順は、図7に示す端面突合せ工程が不要であるため、制御部26による制御が簡素となるという利点がある。
【0064】
なお、このような第2の手順であっても、圧着時にガイド部材40A,40Bが縦枠12及び方立14に当接しているため、ある程度の温度低下は避けられない。
【0065】
そこで、次に、図8を参照して横枠11と縦枠12との接合方法の第3の手順を説明する。この第3の手順は、上記した第1及び第2の手順と比べて、圧着時の縦枠12及び方立14の温度低下を一層抑制することが可能である。
【0066】
図8に示す第3の手順においても、初期工程、基準面出し加工、非接触加熱工程、ヒータプレート42の後退工程、及び端面突合せ工程は、図7に示す第2の手順と同様でよいため、詳細な説明は省略する。なお、当該第3の手順での端面突合せ工程は、第2の手順での端面突合せ工程とは異なり、凹状部12Bと端部14Aの端面を突き合わせた後にクランプ装置38Aを停止する必要はない。つまり当該第3の手順では、端面突合せ工程は実質的に圧着工程の一部となるため、省略されてもよい。
【0067】
図8に示すように、当該第3の手順は、非接触加熱工程及び端面突合わせ工程の後、ガイド部材40A,40Bを退避させた状態のままで圧着工程を実行する。この圧着工程は、表面12b,14a,12c,14bにガイド部材40A,40Bが当接していない状態で、クランプ装置38Aを駆動して凹状部12Bと端部14Aを圧着代の分だけ圧着する。これにより縦枠12及び方立14は、互いの凹状部12Bと端部14Aが圧し潰されて溶着され、強固に接合される。但し、この場合は、縦枠12及び方立14の裏面のバリBだけでなく、表面12b,14a,12c,14bにもバリB1,B2を生じてしまう。
【0068】
そこで、次に、これらのバリB1,B2を圧し潰すためのガイド当接工程を実行する。このガイド当接工程は、バリの発生を未然に防止するものではなく、形成されてしまったバリB1,B2を圧し潰すものである。すなわち、このガイド当接工程は、圧着工程の直後にバリB1,B2が軟化している状態で実行される。ガイド部材40Aは、バリB1の上から表面12b,14aに当接されてこれを圧し潰し、同時にガイド部材40Bは、バリB2の上から表面12c,14bに当接されてこれを圧し潰す。このため、この場合のガイド部材40A,40Bは、上記したガイド当接工程と同様な50~150Nの負荷でよいが、好ましくは100N以上の負荷で強く表面12b,14a,12c,14bに当接されるとよい。
【0069】
その結果、図8に示すように、縦枠12及び方立14は、バリB1,B2がガイド部材40A,40Bで圧し潰されて高い外観品質が得られる。このように、当該第3の手順では、圧着時の縦枠12及び方立14の温度低下を一層抑制してその接合強度を一層向上することができる。但し、当該第3の手順では、表面12b,14a,12c,14bに一旦形成れたバリB1,B2を後から圧し潰すため、表面12b,14a,12c,14bにテカリを生じることがある。一方、このようなテカリの発生による外観品質の低下を生じない点で上記した第1及び第2の手順は当該第3の手順よりも優れていると言うこともできる。
【0070】
以上のように、本実施形態の接合方法は、ガイド部材40A,40Bを用いることで、縦枠12と方立14との溶着時のバリの発生を未然に防止するか、又は発生したバリを消去することができる。このため、溶着後の縦枠12及び方立14は、表面12b,14a,12c,14bでのバリの発生が抑制されるため、手作業での後工程や切断したバリの清掃作業等が不要となり、生産性が向上する。また、当該接合方法では、表面12b,14a,12c,14bでのバリの発生自体が抑制され、或いは発生したバリB1,B2をカッター刃で引きちぎることは不要であるため、外観品質が向上する。さらに、図6及び図7に示す第1及び第2の手順では、表面12b,14a,12c,14bにテカリ等を生じることがなく、接合後の塗装作業も不要となる。
【0071】
ガイド部材40A,40Bは、一方のみを用いてもよく、この場合は他方は進退しない受け部材で構成してもよい。但し、一対のガイド部材40A,40Bで樹脂形材をサンドイッチするように当接させることで、ガイド部材40A,40Bによる樹脂形材への当接が安定し、またバリの発生を抑制できる範囲を拡大できる。
【0072】
このような縦枠12と方立14との接合方法は、上記した枠11,12の接合方法と同時に実行されてもよい。そうすると、各枠11,12及び方立14が接合された樹脂枠10を一度に形成することができ、生産性が一層向上する。勿論、縦枠12と方立14との接合方法は、上記した枠11,12の接合方法と別個に実行されてもよい。
【0073】
図6図8に示す接合方法及び接合装置36は、方立部M1,M2以外、例えばコーナー部C1~C4或いは樹脂形材同士を180度方向に接合する部分に適用してもよい。但し、ガイド部材40A,40Bは、樹脂形材の表面に対してスタンプするように当接する構造の都合上、当接される表面は上記した表面12b,14a等のような平面であることが好ましい。つまり、図4に示す接合方法及び接合装置16は、複雑な形状の表面11a,12aに対して特に有効であり、図6図8に示す接合方法及び接合装置36は、平面形状の表面12b,14a等に対して特に有効であるとも言える。
【0074】
なお、図4及び図6図8に示す接合方法及び接合装置16,36において、圧着代、ヒータ温度、各隙間の距離、及び加熱時間等は、接合対称である樹脂形材の材質、形状、大きさ、用途、雰囲気温度等によって適宜変更されるものであり、上記例示した条件に限られるものではない。
【0075】
本発明の第1態様に係る樹脂形材の接合方法は、一対の樹脂形材を溶融させて圧着する樹脂形材の接合方法であって、前記一対の樹脂形材のうち、一方の樹脂形材を第1の金型ユニットで保持し、他方の樹脂形材を第2の金型ユニットで保持する工程と、前記第1及び第2の金型ユニットにそれぞれ保持され、対向する前記一対の樹脂形材の端面を非接触で加熱する工程と、前記加熱する工程の後、前記第1及び第2の金型ユニットを前記一対の樹脂形材に対してその長手方向にそれぞれ相対移動させ、前記第1の金型ユニットと前記第2の金型ユニットとを前記一対の樹脂形材の端面間を跨いだ状態で当接させる工程と、前記第1及び第2の金型ユニットを当接させたままの状態で、前記一対の樹脂形材の端面同士を圧着し、前記一対の樹脂形材を接合する工程とを有する。このような方法によれば、圧着工程での樹脂形材の表面でのバリの発生を金型ユニットによって抑制することができるため、生産性及び外観品質が向上する。
【0076】
前記接合する工程において前記一対の樹脂形材の端面同士を圧着する際、前記第1の金型ユニットは、前記第2の金型ユニットとの当接状態を維持したまま前記一方の樹脂形材に対してその圧着方向と逆方向に相対移動させ、同時に、前記第2の金型ユニットは、前記第1の金型ユニットとの当接状態を維持したまま前記他方の樹脂形材に対してその圧着方向と逆方向に相対移動させてもよい。そうすると、当接されたままの状態にある第1及び第2の金型ユニットが、圧着工程時にぶつかり合って樹脂形材の移動を邪魔することがなく、円滑に圧着工程を実行することができる。
【0077】
前記接合する工程は、前記一対の樹脂形材について、それぞれの端面から設定した範囲の端部を圧着代として圧着するものであり、前記加熱する工程において、前記第1の金型ユニットは、前記一方の樹脂形材の圧着代よりも後退した位置に配置し、前記第2の金型ユニットは、前記他方の樹脂形材の圧着代よりも後退した位置に配置してもよい。そうすると、加熱される樹脂形材の端面付近にある第1及び第2の金型ユニットが樹脂形材の熱を奪ってしまうことを抑制でき、圧着工程時に樹脂形材の温度が低下することを抑制できる。
【0078】
さらに、前記保持する工程と前記加熱する工程との間に、前記一対の樹脂形材の各端面をそれぞれ切削する基準面出し加工を行う工程を有してもよい。そうすると、圧着される端面の平面度が確保され、同時に圧着代を設定範囲に設定することができ、接合強度の向上やバリの抑制効果が得られる。
【0079】
前記一対の樹脂形材の端面は、それぞれの長手方向に対して傾斜しており、前記接合する工程では、前記一対の樹脂形材をそれぞれの長手方向と直交する方向に移動させることで、互いの端面同士を圧着してもよい。そうすると、樹脂枠のコーナー部を構成する樹脂形材同士を円滑に接合することができる。
【0080】
前記一方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の横枠であり、前記他方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の縦枠であり、前記各工程は、それぞれ上下一対の前記横枠及び左右一対の前記縦枠の4本の樹脂形材のコーナー部に対して同時に実施してもよい。そうすると、一度に樹脂枠を形成することができ、生産性が一層向上する。
【0081】
本発明の第2態様に係る樹脂形材の接合装置は、一対の樹脂形材を溶融させて圧着する樹脂形材の接合装置であって、前記一対の樹脂形材のうち、一方の樹脂形材をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第1の金型ユニットと、前記一対の樹脂形材のうち、他方の樹脂形材をその長手方向に沿って相対移動可能な状態で保持する第2の金型ユニットと、前記第1の金型ユニットを前記一方の樹脂形材の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記一方の樹脂形材との相対位置が固定された状態で該一方の樹脂形材を移動させる第1のベースユニットと、前記第2の金型ユニットを前記他方の樹脂形材の長手方向に沿って移動可能に支持すると共に、前記他方の樹脂形材との相対位置が固定された状態で該他方の樹脂形材を移動させる第2のベースユニットとを備える。このような構成によれば、樹脂形材の表面に第1及び第2の金型ユニットを当接させた状態で圧着工程を実行でき、生産性及び外観品質の向上が可能となる。
【0082】
前記第1のベースユニットは、所定以上の負荷を受けた際に後退する第1のスライド機構を用いて前記第1の金型ユニットを支持し、前記第2のベースユニットは、所定以上の負荷を受けた際に後退する第2のスライド機構を用いて前記第2の金型ユニットを支持した構成としてもよい。そうすると、樹脂形材同士を圧着する際に、予め当接させている第1及び第2の金型ユニットが互いにぶつかり合って樹脂形材の移動を邪魔することがなく、樹脂形材の圧着が円滑になる。
【0083】
さらに、前記第1及び第2の金型ユニットでそれぞれ保持された一対の樹脂形材の端面間に非接触で配置されるヒータプレートを備えてもよい。そうすると、樹脂形材の非接触での円滑な加熱が可能となる。
【0084】
前記一対の樹脂形材の端面は、それぞれの長手方向に対して傾斜しており、前記第1及び第2のベースユニットは、それぞれ前記一対の樹脂形材をその長手方向と直交する方向に移動させることで、互いの端面同士を圧着可能である構成としてもよい。そうすると、樹脂枠のコーナー部を構成する樹脂形材同士を円滑に接合することができる。
【0085】
前記一方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の横枠であり、前記他方の樹脂形材は、建具を構成する樹脂枠の縦枠であり、前記第1及び第2の金型ユニットと前記第1及び第2のクランプベースとの組合せが、上下一対の前記横枠及び左右一対の前記縦枠の4本の樹脂形材のコーナー部に対してそれぞれ配置されていてもよい。そうすると、一度に樹脂枠を形成することができ、生産性が一層向上する。
【0086】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0087】
10 樹脂枠、11 横枠、12 縦枠、16,36 接合装置、16A 第1のユニット、16B 第2のユニット、20A,20B 第1のベースユニット、21A,21B 第1の金型ユニット,22A,22B 第1のシリンダ、30A,30B 第2のベースユニット、31A,31B 第2の金型ユニット、32A,32B 第2のシリンダ、34,42 ヒータプレート、38A 第1のクランプ装置、38B 第2のクランプ装置、40 ガイド装置、40A,40B ガイド部材
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8