(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061976
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】濃度測定装置および濃度測定装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169665
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059DD12
2G059EE01
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059KK01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温ガスであってもリークを生じさせることなく適切に濃度測定を行うことができる濃度測定装置を提供する。
【解決手段】濃度測定装置100は、測定セル10を含む第1流路ブロックと、光源2と、測定セルからの通過光を受ける光検出器4と、第1流路ブロックと隣接して配置される第2流路ブロックと、第1流路ブロックと第2流路ブロックとの流路接続部に配置されたガスケット部材とを備え、第2流路ブロックは、第1流路ブロックに対面する第1穴部分と、より大きい断面積を有し第1穴部分から延長される第2穴部分とを含む接続穴を有し、接続穴に配置されたブロック固定部材の拡径部が接続穴の段差面を押圧することによって第2流路ブロックが固定され、第1穴部分の長さが、ブロック接続面から圧力センサ中央軸までの距離よりも短い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが通過する測定セルが形成された第1流路ブロックと、
測定セルに入射させる光を発する光源と、
測定セルを通過した光を受光する光検出器と、
前記第1流路ブロックと隣接して配置され、前記測定セル内のガスの圧力を測定する圧力センサが担持された第2流路ブロックと
を備え、前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとの流路の接続部においてガスケット部材が挟持されている濃度測定装置であって、
前記第2流路ブロックは、前記第1流路ブロックに向かって延びる接続穴を有し、前記接続穴は、第1の断面積を有し前記第1流路ブロックに対面する第1穴部分と、前記第1の断面積よりも大きい第2の断面積を有し前記第1穴部分から延長されて外側に延びる第2穴部分とを含み、前記第1穴部分と前記第2穴部分との境界に段差面が形成されており、
前記接続穴に配置されたブロック固定部材の拡径部が前記接続穴の前記段差面を押圧することによって、前記第2流路ブロックが前記第1流路ブロックに対して固定されており、
前記接続穴の前記第1穴部分の長さが、前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとの接続面から前記圧力センサの中央軸までの距離よりも短い、濃度測定装置。
【請求項2】
前記接続穴の前記第1穴部分の長さが、前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとの接続面から前記圧力センサのシール端部までの距離よりも短い、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記第2流路ブロックには2本の前記接続穴が設けられており、各接続穴に前記ブロック固定部材が配置されており、前記第2流路ブロックの内部に形成された流路であって前記ガスケット部材から延びる流路が、前記2本の接続穴と重なるように配置されている、請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の濃度測定装置の製造方法であって、
前記第1流路ブロック、前記第2流路ブロック、前記ガスケット部材、前記ブロック固定部材および前記圧力センサを用意する工程と、
前記第2流路ブロックに形成された前記接続穴に配置された前記ブロック固定部材を用いて、前記第2流路ブロックを前記第1流路ブロックに対して前記ガスケット部材を介在させて固定する工程と、
前記第2流路ブロックを前記第1流路ブロックに固定する工程の後に、前記圧力センサを前記第2流路ブロックに固定する工程と
を含む、濃度測定装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度測定装置およびその製造方法に関し、特に、測定セルを通過した光の強度に基づいて流体の濃度を測定する濃度測定装置およびその製造方法にする。
【背景技術】
【0002】
従来、有機金属(MO)等の液体材料や固体材料から形成された原料ガスを半導体製造装置へと供給するガス供給ラインに組み込まれる濃度測定装置、いわゆるインライン式濃度測定装置が知られている。インライン式濃度測定装置は、ガス供給ラインを流れるガスの濃度を測定するように構成されている。
【0003】
この種の濃度測定装置には、流体が流れる測定セルに、入射窓を介して光源から所定波長の光を入射させ、測定セル内を通過した透過光を受光素子で受光することにより吸光度を測定するものがある。測定された吸光度からは、ランベルト・ベールの法則に従って測定流体の濃度を求めることができる。
【0004】
本明細書において、内部に導入された測定流体の濃度を検出するために用いられる種々の透過光検出構造を広く、測定セルと呼ぶことにする。測定セルには、ガス供給ラインから分岐して別個に配置されたセル構造だけでなく、ガス供給ラインの途中に設けられたインライン式の透過光検出構造も含まれる。
【0005】
特許文献1には、測定セルの端部に反射部材を設け、測定セル内を往復した光の吸光度に基づいて測定セル内を流れる流体の濃度を検出する、反射型の濃度測定装置が開示されている。このような反射型の濃度測定装置では、コンパクトな態様ながら、光路長を比較的長くとれるので測定精度の向上が期待できる。
【0006】
また、特許文献2および3には、測定セルの下流側に圧力センサを設けて、光検出器の出力から測定流体の吸光度を求めるとともに、圧力センサの出力も用いて流体濃度を演算することができる濃度測定装置が開示されている。特に、特許文献4に開示されているように、ガスの濃度を測定するとき、その圧力および温度も考慮して濃度を計算することによって、混合ガス中の測定対象ガスの濃度を向上した精度で検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018/021311号
【特許文献2】特開2018-25499号公報
【特許文献3】国際公開第2020/066732号
【特許文献4】国際公開第2020/158506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ただし、特許文献2~4に記載のように、吸光度に加えてガス圧力も用いて濃度を測定するときには、測定セルの内部のガスの圧力を測定するための圧力センサを設ける必要がある。そして、測定セル内のガス圧をより正確に測定するためには、圧力センサは、なるべく測定セルの近傍に配置することが好ましい。このため、従来の濃度測定装置では、測定セルを構成する流路ブロックの下流側に、圧力センサを固定するための流路ブロックが隣接して配置されていた。
【0009】
ところが、上記のような濃度測定装置では、流路ブロックに設けた圧力センサの設置個所から、ガスリークが生じ得ることがわかった。特に、高温ガスの濃度測定を行う場合には、圧力センサの周辺からガスリークが生じる可能性が高まることがわかった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、高温ガスの濃度を適切に測定できるとともに、リークの発生を防止することができる、濃度測定装置およびその製造方法を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施態様に係る濃度測定装置は、ガスが通過する測定セルが形成された第1流路ブロックと、測定セルに入射させる光を発する光源と、測定セルを通過した光を受光する光検出器と、前記第1流路ブロックと隣接して配置され、前記測定セル内のガスの圧力を測定する圧力センサが担持された第2流路ブロックとを備え、前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとの流路の接続部においてガスケット部材が挟持されている濃度測定装置であって、前記第2流路ブロックは、前記第1流路ブロックに向かって延びる接続穴を有し、前記接続穴は、第1の断面積を有し前記第1流路ブロックに対面する第1穴部分と、前記第1の断面積よりも大きい第2の断面積を有し前記第1穴部分から延長されて外側に延びる第2穴部分とを含み、前記第1穴部分と前記第2穴部分との境界に段差面が形成されており、前記接続穴に配置されたブロック固定部材の拡径部が前記接続穴の前記段差面を押圧することによって、前記第2流路ブロックが前記第1流路ブロックに対して固定されており、前記接続穴の前記第1穴部分の長さが、前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとの接続面から前記圧力センサの中央軸までの距離よりも短い。
【0012】
ある実施形態において、前記接続穴の前記第1穴部分の長さは、前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとの接続面から前記圧力センサのシール端部までの距離よりも短い。
【0013】
ある実施形態において、前記第2流路ブロックには2本の前記接続穴が設けられており、各接続穴に前記ブロック固定部材が配置されており、前記第2流路ブロックの内部に形成された流路であって前記ガスケット部材から延びる流路が、前記2本の接続穴と重なるように配置されている。
【0014】
本発明の実施態様に係る上記濃度測定装置の製造方法は、前記第1流路ブロック、前記第2流路ブロック、前記ガスケット部材、前記ブロック固定部材および前記圧力センサを用意する工程と、前記第2流路ブロックに形成された前記接続穴に配置された前記ブロック固定部材を用いて、前記第2流路ブロックを前記第1流路ブロックに対して前記ガスケット部材を介在させて固定する工程と、前記第2流路ブロックを前記第1流路ブロックに固定する工程の後に、前記圧力センサを前記第2流路ブロックに固定する工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態による濃度測定装置によれば、半導体製造装置などで用いられるガスの度を適切に測定できるとともに、高温ガスの供給ラインに組み込まれるときにもリークの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による濃度測定装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る濃度測定装置の高温ガスユニットのより具体的な構成例を示す断面図である。
【
図3】高温ガスユニットの外観を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示した高温ガスユニットの上部を切り取った断面を示す斜視図である。
【
図5】高温ガスユニットにおける隣接する2つの流路ブロックとその固定部材との配置関係を示す図であり、(a)は横から見たときの概念図、(b)は上から見たときの概念図である。
【
図6】高温ガスユニットにおける隣接する2つの流路ブロックとその固定部材との配置関係の別の態様を示す図であり、横から見たときの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態にかかる濃度測定装置100を示す。濃度測定装置100は、半導体製造システムなどで用いられるガス供給ラインにインライン式に組み込まれ、流路を流れるガスGの濃度を測定するために用いられる。濃度測定装置100が設けられたガス供給ラインは、例えば、気化器などによって生成された高温のガスを、原料ガスとして半導体製造装置のプロセスチャンバに供給するために用いられる。
【0019】
原料ガスとしては、例えば、HCDS(Si2Cl6)、あるいは、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)、TMGa(トリメチルガリウム)、TMAl(トリメチルアルミニウム)などの有機金属材料があげられる。これらの材料は室温では液体であり、例えば、150℃~200℃程度に加熱することによって気化させることができる。生成された材料ガスは、プロセスチャンバにおいて、例えば、シリコン窒化膜(SiNx膜)やシリコン酸化膜(SiO2膜)などの絶縁膜を形成するために用いられる。
【0020】
本実施形態の濃度測定装置100は、ガス供給ラインに組み込まれる高温ガスユニット50Aと、高温ガスユニット50Aと離して配置された電気ユニット50Bとを備えている。高温ガスユニット50Aには、測定セル10内のガスGの圧力を測定するための圧力センサ18が設けられている。電気ユニット50Bには、光源2、測定光検出器4、参照光検出器6、および演算処理回路8が設けられている。高温ガスユニット50Aと電気ユニット50Bとは、光ファイバケーブル5aおよびセンサケーブル5bによって光学的および電気的に接続されている。
【0021】
高温ガスユニット50Aは、測定流体の種類によって例えば100℃~150℃程度にまで加熱される可能性があるが、これと離間する電気ユニット50Bは典型的には室温(クリーンルーム雰囲気等)に維持されている。したがって、電気素子の熱による損傷を防止することができる。ただし、本実施形態では、高温ガスユニット50Aと称しているが、高温下での使用に限られず、常温(室温)や常温以下のガスを用いる場合は、高温にならない(加熱しない)状態で使用する場合もある。電気ユニット50Bには、濃度測定装置100への制御信号の送信や、濃度測定装置100からの測定信号の受信を行うように構成された外部制御装置が接続されていてもよい。
【0022】
高温ガスユニット50Aには、長手方向に延びる流路を光路として利用するように構成された測定セル10が設けられている。測定セル10の一端には、流路に接する窓(透光性プレート)を介してコリメートレンズからの光が内部に入射されるように構成された光学素子部材12が配置されている。また、測定セル10の他端には、入射した光を反射させるための反射部材14が配置されている。
【0023】
測定セル10には、光学素子部材12を介して光源2からの光が入射し、測定セル10の反射部材14によって反射された光が、光学素子部材12を介して測定光検出器4に導かれる。本明細書において、光とは、可視光線のみならず、少なくとも赤外線、紫外線を含み、任意の波長の電磁波を含み得る。また、透光性とは、測定セル10に入射させる前記の光に対する内部透過率が濃度測定を行い得る程度に十分に高いことを意味する。
【0024】
光源2から測定セル10への入射光の導光と、測定セル10からの出射光の測定光検出器4までの導光は、
図1に示したように共通の一本の光ファイバケーブルによって行っても良いし、それぞれ別の光ファイバケーブルを用いて別経路で行っても良い。
【0025】
一方、電気ユニット50Bには、測定セル10内に入射させる光を発生する光源2と、測定セル10から出射した光を受光する測定光検出器4と、光源2からの参照光を受光する参照光検出器6と、光の強度に応じた検出信号に基づいて測定流体の濃度を演算するように構成された演算処理回路8とが設けられている。
【0026】
本実施形態では、光源2は、2つの発光素子2a、2bを用いて構成されている。発光素子2a、2bは互いに異なる波長の紫外光を発する素子、例えば、それぞれ280~320nmの光および340~380nmの光を発するLEDによって構成される。発光素子2a、2bには、発振回路を用いて異なる周波数の駆動電流が流され、周波数解析(例えば、高速フーリエ変換やウェーブレット変換)を行うことによって、測定光検出器4が検出した検出信号から、各波長成分に対応した光の強度を測定することができる。発光素子2a、2bとしては、LD(レーザダイオード)を用いることもできる。また、単一波長の光源を利用することもでき、この場合、合波器や周波数解析回路は省略することができる。発光素子は、3つ以上設けられていてもよいし、設けたうちの選択された任意の発光素子のみを用いて入射光を生成するように構成されていてもよい。発光素子が発する光は、測定ガスの吸光特性に応じて任意の波長を有していてよく、紫外光に限られず可視光や赤外光であっても良い。
【0027】
また、本実施形態では、測定光検出器4と参照光検出器6とがビームスプリッタを挟んで対向して配置されており、光源2からの光の一部は参照光検出器6に入射し、また、測定セル10からの検出光が測定光検出器4に入射する。測定光検出器4および参照光検出器6を構成する受光素子としては、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタが用いられる。
【0028】
演算処理回路8は、例えば、回路基板に設けられたプロセッサやメモリなどの回路素子によって構成され、入力信号に基づいて所定の演算を実行するコンピュータプログラムを含み、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現され得る。なお、図示する態様では演算処理回路8は、電気ユニット50Bに内蔵されているが、その構成要素の一部(CPUなど)または全部が電気ユニット50Bの外側の装置に設けられていてもよい。
【0029】
以上に説明した濃度測定装置100において、測定セル10内を往復する光の光路長は、光学素子部材12の前の窓の表面と反射部材14の表面との距離の2倍によって規定することができる。濃度測定装置100において、測定セル10に入射され、その後、反射部材14によって反射された光は、測定セル10内の流路に存在するガスによって、ガスの濃度に依存した大きさで吸収される。そして、演算処理回路8は、測定光検出器4からの検出信号を周波数解析することによって、当該吸収波長での吸光度Aを測定することができ、さらに、以下の式(1)に示すランベルト・ベールの法則に基づいて、吸光度Aからガス濃度Cを算出することができる。
Aλ=-log10(I/I0)=α’LCM
【0030】
上記の式において、I0は測定セルに入射させる入射光の強度、Iは測定セル内のガス中を通過した光の強度、α’はモル吸光係数(m2/mol)、Lは測定セルの光路長(m)、CMはモル濃度(mol/m3)である。モル吸光係数α’は物質によって決まる係数である。なお、上記式における入射光強度I0については、測定セル1内に吸光性のガスが存在しないとき(例えば、紫外光を吸収しないガスが充満しているときや、真空に引かれているとき)に光検出器24によって検出された光の強度を入射光強度I0とみなしてよい。
【0031】
測定セル10の光路長Lは、上記のように、窓と反射部材との距離の2倍として規定することができるので、光入射窓と光出射窓とを測定セルの両端部に備える濃度測定装置に比べて、2倍の光路長を得ることができる。これにより、小型化したにも関わらず、測定精度を向上させることができる。また、濃度測定装置100では、測定セル10の片側に設けた1の光学素子部材12のみを用いて光入射および光出射を行うので、メンテナンスがしやすく部品点数を削減することができる。
【0032】
ただし、他の実施形態において、上記のいわゆる反射型の測定セルの代わりに透過型の測定セルが用いられてもよい。透過型の測定セルでは、測定セルの一端から光を入射させ、他端(反射部材なし)から測定セルを通過した光を出射させる。この場合、光源光および透過光は、測定セルの両端に接続された別々の光ファイバによってそれぞれ伝送される。
【0033】
さらに、濃度測定装置100では、高温ガスユニット50Aに圧力センサ18が設けられており、測定セル10内のガスGの圧力を測定することができる。したがって、圧力センサ18からの出力に基づいて、測定された吸光度を所定圧力(例えば、1気圧)のときの吸光度に補正することができる。そして、補正した吸光度に基づいて、特許文献3~4に記載の濃度測定装置と同様に、ランベルト・ベールの法則を改変して、測定流体の濃度を演算により求めることができる。また、測定セル10を流れるガスの温度を測定する温度センサ16をさらに設けているので、温度による補正をさらに行って濃度検出を行うこともできる。
【0034】
圧力センサ18としては、例えば、歪ゲージが設けられた感圧ダイヤフラムを有するシリコン単結晶製の圧力センサや、キャパシタンスマノメータが用いられる。圧力センサ26としては、例えば、国際公開第2022/137812号に記載の圧力センサを用いることもできる。また、温度センサ16としては、例えば、熱電対やサーミスタ、白金測温抵抗体が用いられる。
【0035】
濃度測定装置100は、圧力センサ18および温度センサ16の出力をも参照して、測定セル10を流れるガスの濃度を、例えば、以下の関係式から求めることができる。
Cv=(RT/αLPt)・ln(I0/I)
【0036】
上記式において、Cvは全体ガス中の測定ガスの濃度(体積%)であり、αは測定ガスの吸光係数であり、Ptは圧力センサ18によって測定できる全圧であり、Tは温度センサ16によって測定できる温度であり、Rは気体定数である。また、ランベルト・ベールの法則と同様に、Lは測定セルの光路長、I0は入射光強度、Iは透過光強度である。
【0037】
以上のようにして、濃度測定装置100は、測定セル10内の流体の濃度を、測定光検出器4の出力(透過光強度I)に基づいて求めることができる。ただし、高温ガスユニット50Aに圧力センサ18を用いる場合、特に高温ガスの濃度測定を行うときには、圧力センサ18の固定箇所からガスリークが生じる可能性があることが確認された。
【0038】
これは、圧力センサ18を固定した流路ブロックを別の流路ブロックに締付け固定した後、高温での使用のための機器のエージングを行うと、ブロック同士の固定においてボルト締付け時の応力(歪)が圧力センサ18の固定部分の形状に影響を及ぼしたためと考えられる。高温で使用するときには、わずかな応力(歪)でも影響が大きく、リークが発生しやすい。そこで、以下に説明するようにして、濃度測定装置100では、高温ガスを取り扱うためにリーク対策がなされている。
【0039】
図2は、高温ガスユニット50Aの構成例を示す断面図であり、
図3は、高温ガスユニット50Aの構成例を示す斜視図である。高温ガスユニット50Aは、測定セル10が形成された第1流路ブロックBL1と、第1流路ブロックBL1に隣接して配置され圧力センサ18を担持する第2流路ブロックBL2とによって構成されている。
【0040】
ここで、流路ブロックとは、典型的には金属製のブロック体であって、その内部に、流路や流体収容空間が形成されたブロック体を意味しており、本体ブロックとも称される。第1流路ブロックBL1および第2流路ブロックBL2は、例えばSUS316L等のステンレス製の金属ブロックであり、ドリルによる穿孔によって内部にガス流路が形成されている。
【0041】
なお、
図3では、第1流路ブロックBL1に光学素子部材12(光ファイバケーブル5aは省略)が取り付けられ、第2流路ブロックBL2には圧力センサ18を取り付ける前の状態(取り付け凹部18Hが露出する状態)が示されている。後述するように、ある実施形態による高温ガスユニット50Aの製造方法において、圧力センサ18は、第1流路ブロックBL1と第2流路ブロックBL2との固定を行った後に、第2流路ブロックBL2に対して固定され、いったん
図3に示すよう状態に組み立てられる。
【0042】
図2に示すように、第1流路ブロックBL1において、測定セル10を形成するために、光学素子部材12の前に窓13が配置されており、窓13は、押さえ部材11によって第1流路ブロックBL1に固定されている。また、反射部材14は、押さえ部材15によって第1流路ブロックBL1に固定されている。窓13および反射部材14は、シール性を高めるために、ガスケットを介して固定されている。
【0043】
窓13としては、例えば、サファイアプレートが用いられる。窓13は、測定セル10の中心軸に対して垂直な面から、わずかに(例えば1°~5°)傾けて配置されていてもよく、これによって、表面反射光による測定への影響を抑制し得る。
【0044】
反射部材14としては、例えば、サファイアプレートの裏面にスパッタリングによって反射層としてのアルミニウム層が形成されたものが用いられる。ただし、反射部材14は、サファイアプレートの裏面に反射ミラーが配置された構成を有していてもよい。また、反射部材14は、反射層として誘電体多層膜を含むものであってもよく、誘電体多層膜を用いれば、特定波長域の光(例えば近紫外線)を選択的に反射させることができる。誘電体多層膜は、屈折率の異なる複数の光学被膜の積層体(例えば、高屈折率薄膜と低屈折率薄膜との積層体)によって構成されるものであり、各層の厚さや屈折率を適宜選択することによって、特定の波長の光を反射したり透過させたりすることができる。また、誘電体多層膜は、任意の割合で光を反射させることが出来るため、一部(例えば10%)の光を透過するようにし、受光素子で透過光を検出することで、
図1に示した電気ユニット50Bが備える参照光検出器6の代替とすることも可能である。
【0045】
他方、圧力センサ18は、ガスケット18Gによってシール性を高めながらボンネット19によって押圧される態様で第2流路ブロックBL2の上面(光学素子部材12の隣)に固定されている。第2流路ブロックBL2への圧力センサ18の固定は、外周にねじが設けられたボンネット19を回転させることによって行うことができる。なお、圧力センサ18は、第2流路ブロックBL2の下面(反射部材14の隣)や側面に配置されていてもよい。
【0046】
また、第1流路ブロックBL1と第2流路ブロックBL2との流路接続部には、ガスケット部材20が配置されている。これにより、第1流路ブロックBL1と第2流路ブロックとの接続面BLSにおいて流路を流れるガスのリークの発生を抑制することができる。ガスケット部材20は、通常、金属製(例えばSUS316L製)または樹脂製(例えばPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)製)であり、第1流路ブロックBL1と第2流路ブロックBL2との接続部において挟持され、流路の接続部のシール性を確保するために設けられている。
【0047】
そして、本実施形態では、第1流路ブロックBL1と第2流路ブロックBL2との固定を、
図3に示すように、第2流路ブロックBL2の端面から第1流路ブロックBL1の方向に延びる接続穴Hに、典型的にはボルトであるブロック固定部材を挿入し、第1流路ブロックBL1に設けた受け穴まで挿通させることによって行われる。
図3に示すように、本実施形態では、第2流路ブロックBL2の内部の流路を挟むようにして平行に設けられた2本の接続穴Hのそれぞれにブロック固定部材を配置することによって行われる。ただし、固定に問題が無いようであれば、接続穴Hの数は、1つまたは3つ以上であっても良い。
【0048】
図4は、
図3における高温ガスユニット50Aの上半分を接続穴Hの高さ位置で切り取ったときの図である。
図4に示すように、第2流路ブロックBL2に設けられた接続穴Hは、第1流路ブロックBL1に対面する第1の断面積を有する第1穴部分H1と、その延長部分として外側に延びるより大径(より大きい第2の断面積)を有する第2穴部分H2とによって構成されている。第1穴部分H1と第2穴部分H2との境界には段差面HS(第2穴部分H2の底面)が形成されている。
【0049】
なお、流路ブロックが並ぶ方向を水平方向と記載し、
図2の紙面上でこれに直交する方向を垂直方向または上下方向と記載することがある。ただし、高温ガスユニット50Aの姿勢や取り付け方向によって、実際の水平方向および鉛直方向とは異なる場合があってもよいことは言うまでもない。また、便宜上、ブロック接続面に平行な面を、ブロックの端面と記載し、素子等が取り付けられる面を、ブロックの上下面と記載し、上下面の間の横面(端面と直交する面)を、ブロックの側面と記載することがある。
【0050】
図4に示すように、本実施形態の高温ガスユニット50Aでは、接続穴Hにおける第1穴部分H1の長さLaが比較的短くなっており、言い換えると、接続穴Hの座繰りの深さ(第2穴部分H2の長さ)が、比較的深くなっている。ここで、座繰りとは、拡径部分の穴のことであり、配置されるねじやボルトなどの固定部材の頭部が出っ張らないように径を大きくして掘り下げた部分である。
【0051】
また、ブロック固定部材22は、本実施形態では、拡径部(または頭部)22Hを有する六角穴付きボルトであり、その先端部は、第1流路ブロックBL1に形成された受け穴に挿入される。本実施形態では、ブロック固定部材22の挿入部外周にはネジが形成されており、また、受け穴にもネジが形成されている。このため、拡径部22Hを回転させることによって、ブロック固定部材22を第1流路ブロックBL1の方向に進行させることができる。なお、図示していないが、拡径部22Hと、接続穴Hの段差面HSとの間にはワッシャーが配置されていても良い。
【0052】
拡径部22Hが、段差面HSに当接した後は、拡径部22Hのさらなる回転により段差面HSを押圧するようにして、第2流路ブロックBL2を第1流路ブロックBL1に対してしっかりと強固に固定することが可能である。これによって、ブロック境界にガスケット部材20を配置する構成であっても、接続面BLSからのガスリークの発生を防止することができる。
【0053】
ただし、ブロック固定部材22の締め付けによって、第2流路ブロックBL2には、比較的大きい応力が発生する。これに対して、本実施形態の濃度測定装置100では、上記のように座繰りを深く掘り込むことによって、第2流路ブロックBL2を第1流路ブロックBL1にブロック固定部材22によって固定するときに、第2流路ブロックBL2に生じる応力を、第1流路ブロックBL1の近傍の部分に集中させている。これによって、圧力センサ18の取り付け凹部18Hの近傍での応力や歪みの発生を抑制して、圧力センサ18の固定箇所からのガスリークの発生を防止することができる。
【0054】
図5(a)および(b)は、ブロック固定部材22を用いた、第2流路ブロックBL2の第1流路ブロックBL1への固定態様を説明するための図である。
図5(a)において、流路部分を破線で示しており、圧力センサ18やブロック固定部材22等は実線で示している。ただし、これらは、位置関係の説明のための概念図であり、例えば
図5(b)に示すブロック固定部材22は、実際には上面からは視認できるものではなく、流路ブロックの内部での配置を示したものにすぎない。
【0055】
図5(a)および(b)に示すように、本実施形態において、第2流路ブロックBL2に形成された第1穴部分H1の長さLaは、第1流路ブロックBL1と第2流路ブロックBL2との接続面BLSから圧力センサ18の中央軸18xまでの距離Lbよりも短く設定されている。また、接続穴Hと、第2流路ブロックBL2の内部に形成されたガスケット部材20(
図2、
図4参照)から延びる水平方向の流路とが、横から見たときに重なるように配置されている。圧力センサ18の中央軸18xは、本実施形態では、第2流路ブロックBL2に形成された長手方向に延びる流路の中央軸と一致している。
【0056】
このようにして、圧力センサ18の中央軸18xよりも接続面BLSに近い側に段差面HS(すなわち、ブロック固定部材22の押圧面)を設けることによって、圧力センサ18の固定箇所の全体にわたってブロック固定部材22の締め付け時に生じる応力が拡大することが防止される。したがって、圧力センサ18の固定箇所で生じる歪みの発生を抑制し、リークの発生を防止することができる。また、ガスケット部材20の横をブロック固定部材22によって固定しているので、ブロック固定部材22の締め付けによって効率的にシール性を高めることができる。このため、過剰な締め付けによる応力の発生が防止され、圧力センサ18の固定箇所での歪みおよびリークの発生を防止できる。
【0057】
ブロック固定部材22は、ガスケット部材20をブロック間にしっかり挟持させることができればよいので、ガスケット部材20によってシール性が確保されるのであれば、流路ブロック同士の締付けの長さを大きくする必要はない。このため、敢えて座繰りを深く形成して、圧力センサ18の固定箇所からのリークを防止することで、高温ガスユニット50Aの全体としてのリーク発生確率を低下させることができている。
【0058】
また、圧力センサ18は、第2流路ブロックBL2への取り付け面において、環状のガスケット18G(
図2参照)を挟んだ形でシール性を確保して固定されていてもよく、このガスケット18Gの外周面が、圧力センサ18のシール端部として規定される。
【0059】
この場合に、
図6に示すように、第1穴部分H1の長さLaは、接続面BLSから圧力センサ18のシール端部までの距離Lcよりも短くなるように設定されていてもよい。このようにして、穴の段差面HSを、ブロックの接続面BLSにできるだけ近づけることによって、ブロック固定部材22の締め付け時に生じる応力が圧力センサ18の周囲を歪ませることをより効果的に抑制することが可能である。
【0060】
第1穴部分H1の長さLaは、ブロックの接続面BLSから第2流路ブロックBL2に形成された長手方向に延びる流路までの距離よりも短く設定されていてもよい。
【0061】
次に、上記の濃度測定装置100の製造方法において、さらに、圧力センサ18の固定箇所からのガスリークの発生を低減させ得る方法について説明する。
【0062】
流路ブロックの接続において、通常、圧力センサなどの素子を予め流路ブロックに固定したうえで隣接する流路ブロックの接続を行うことが多い。しかしながら、本実施形態による濃度測定装置100の製造方法では、第2流路ブロックBL2への圧力センサ18の固定を、第2流路ブロックBL2を第1流路ブロックBL1に固定した後に行う。
【0063】
より具体的に説明すると、まず、測定セル10が形成された第1流路ブロックBL1を用意する。次に、圧力センサ18が固定されていない状態の第2流路ブロックBL2を用意し、ガスケット部材20を介在させた状態で、これを、接続穴Hを用いて、ブロック固定部材29によって、第1流路ブロックBL1に対して、しっかりと固定する。このとき、ブロック固定部材22による固定によって、第2流路ブロックBL2には応力が生じ得るが、上記のように段差面HSを第1流路ブロックBL1の比較的近い位置に形成しているため、圧力センサ18の固定箇所での歪みの発生を低減することができる。
【0064】
そして、第1流路ブロックBL1に第2流路ブロックBL2を固定してから、第2流路ブロックBL2への圧力センサ18への固定を行う。この圧力センサ18の固定は、ガスケット18Gを介して第2流路ブロックBL2の凹所にセンサ本体を配置するとともに、ボンネット19を上から被せて回転させることによって実行することができる。ガスケット18Gの周囲には、ガスケットガイドリングが設けられていてもよい。また、ボンネット19とセンサ本体との間に供回り防止ワッシャーを挟んでもよい。ボンネット19の外周面に形成されたネジを、第2流路ブロックBL2の凹所の内周面に形成したネジに篏合させ、ボンネット19を回転させることによって、ガスケット18Gを押圧しながらセンサ本体を第2流路ブロックBL2にシール性高くしっかりと固定することができる。
【0065】
このようにして、先に第1流路ブロックBL1に固定しておいた第2流路ブロックBL2に対して、圧力センサ18を固定する方法によれば、圧力センサ18の取り付け箇所からのガスリークの発生がさらに抑制され得ることがわかった。その理由は、圧力センサ18の取り付け前に、第2流路ブロックBL2に多少の歪が生じていたとしても、その後、圧力センサ18を固定する過程で、ガスケットが適度に変形するなどしてシール性が回復するからと考えられる。したがって、圧力センサ18を後から取り付ける製造方法によれば、ガスリークの発生をさらに効果的に防止することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、種々の改変が可能である。例えば、上記には、第1の径を有する第1穴部分H1と、より大きい第2の径を有する第2穴部分H2とによって構成される接続穴Hを説明したがこれに限られない。第2穴部分H2は、必ずしも長穴形状を有していなくても良く、例えば、第2流路ブロックBL2の側面に形成された溝や凹所であってもよい。形成された溝や凹所は、第2流路ブロックBL2の下流側の端面まで達していなくても良い。第2穴部分H2の断面積が、第1穴部分H1の断面積よりも大きく、これらの境界において段差面HSが形成される限り、第2穴部分H2の形状は任意のものであり得る。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の実施形態による流量制御装置および気化供給装置は、半導体製造設備等のガス供給システムに組み込まれて幅広い制御レンジで流量制御を行うために適切に利用される。
【符号の説明】
【0068】
2 光源
4 測定光検出器
6 参照光検出器
8 演算処理回路
10 測定セル
12 光学素子部材
14 反射部材
16 温度センサ
18 圧力センサ
20 ガスケット部材
22 ブロック固定部材
22H ブロック固定部材の拡径部(頭部)
50A 高温ガスユニット
50B 電気ユニット
100 濃度測定装置
BL1 第1流路ブロック
BL2 第2流路ブロック
H 接続穴
H1 第1穴部分
H2 第2穴部分
HS 段差面