IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コンバイン 図1
  • 特開-コンバイン 図2
  • 特開-コンバイン 図3
  • 特開-コンバイン 図4
  • 特開-コンバイン 図5
  • 特開-コンバイン 図6
  • 特開-コンバイン 図7
  • 特開-コンバイン 図8
  • 特開-コンバイン 図9
  • 特開-コンバイン 図10
  • 特開-コンバイン 図11
  • 特開-コンバイン 図12
  • 特開-コンバイン 図13
  • 特開-コンバイン 図14
  • 特開-コンバイン 図15
  • 特開-コンバイン 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061985
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/22 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A01F12/22 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169679
(22)【出願日】2022-10-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 一志
(72)【発明者】
【氏名】内山 龍介
【テーマコード(参考)】
2B094
【Fターム(参考)】
2B094AA01
2B094AA11
2B094EA05
2B094EB09
2B094EB20
2B094ED06
2B094GC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】破損等したツースの交換作業の作業負担を軽減することができるコンバインを提案する。
【解決手段】扱胴は、脱穀装置の前壁と後壁に架設された回転軸(30)と、回転軸(30)における前側に配置された支持された前ロータ(32A)と、後側に支持された後ロータ(32B)から形成され、前ロータ(32A)と後ロータ(32B)は、それぞれ円形状の前プレートと、円形状の後プレートと、前プレートと後プレートに架設された周方向に所定の間隔を隔てて前後方向に延在するバーフレーム(50)と前後フレームと、前後フレームに前後方向に所定の間隔を隔てて設けた円形状のリングフレーム(52)と、リングフレーム(52)の外周部に周方向に所定の間隔を隔てて立設された穀稈を掻込むツース(58)から形成した。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の前側に刈取前処理装置(3)を設け、該刈取前処理装置(3)の後方に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記脱穀装置(4)の上部に、前記刈取前処理装置(3)から搬送されてきた穀稈を脱穀する扱胴(11)と、該扱胴(11)の下側に穀稈の落下を抑制する受網(12)を設け、
前記扱胴(11)は、前記脱穀装置(4)の前壁と後壁に架設された回転軸(30)と、該回転軸(30)における前側に配置された支持された前ロータ(32A)と、後側に支持された後ロータ(32B)から形成され、
前記回転軸(30)の前部に第1プレート(41)を設け、前記回転軸(30)の後部に第3プレート(36)を設け、前記回転軸(30)における第1プレート(41)と第3プレート(36)の中間に第2プレート(35)を設け、
前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)は、それぞれ円形状の前プレート(53)と、円形状の後プレート(54)と、前記前プレート(53)と後プレート(54)に架設された周方向に所定の間隔を隔てて前後方向に延在するバーフレーム(50)と前後フレーム(51)と、該前後フレーム(51)に前後方向に所定の間隔を隔てて設けた円形状のリングフレーム(52)と、該リングフレーム(52)の外周部に周方向に所定の間隔を隔てて立設された穀稈を掻込むツース(58)から形成され、
前記前ロータ(32A)の前プレート(53)を第1プレート(41)の後面に、前記前ロータ(32A)の後プレート(54)を第2プレート(35)の前面に装着し、
前記後ロータ(32B)の前プレート(53)を第2プレート(35)の後面に、前記後ロータ(32B)の後プレート(54)を第3プレート(36)の前面に装着したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記前プレート(53)と後プレート(54)を周方向に分割し、
前記前後フレーム(51)を、前記前プレート(53)と後プレート(54)の回転方向の上手部に配置される上手前後フレーム(55)と下手部に配置される下手前後フレーム(56)で形成し、
前記上手前後フレーム(55)と下手前後フレーム(56)で、周方向に分割された前プレート(53)と後プレート(54)を周方向に連結した請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
穀粒径が小さい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを長くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を狭くした請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
穀粒径が大きい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを短くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を広くした請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項5】
穀粒径が大きい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前記前ロータ(32A)のツース(58)の径方向の長さを短くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を広くし、前記後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを長くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を狭くした請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項6】
平面視において、前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)の前後方向に隣接するツース(58)を結ぶ仮想線(L)を回転方向の上手部に向かって延在させた請求項5記載のコンバイン。
【請求項7】
正面視において、前記後ロータ(32B)の前プレート(53)の外周部を、前記後ロータ(32B)のツース(58)の先端部の回転軌跡よりも径方向の外側に延在させた請求項6記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの脱穀装置の扱胴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀装置の前後壁に扱胴の回転軸を架設し、扱胴軸の前後と後部に支持された前側プレートと後側プレートの外周部に周方向に所定の間隔を隔てて複数の扱歯フレームを架設し、扱歯フレームに前後方向に所定の間隔を隔てて複数の扱歯が立設する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-187308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術においては、使用によって破損等した扱歯を交換する場合には、前側プレートと後側プレートに架設された扱歯フレームを取外す必要が有ることから交換作業の作業負担が大きいという問題点が指摘されていた。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、使用によって破損等したツース(扱歯)の交換作業の作業負担を軽減することができるコンバインを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、機体フレーム(1)の前側に刈取前処理装置(3)を設け、該刈取前処理装置(3)の後方に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記脱穀装置(4)の上部に、前記刈取前処理装置(3)から搬送されてきた穀稈を脱穀する扱胴(11)と、該扱胴(11)の下側に穀稈の落下を抑制する受網(12)を設け、前記扱胴(11)は、前記脱穀装置(4)の前壁と後壁に架設された回転軸(30)と、該回転軸(30)における前側に配置された支持された前ロータ(32A)と、後側に支持された後ロータ(32B)から形成され、前記回転軸(30)の前部に第1プレート(41)を設け、前記回転軸(30)の後部に第3プレート(36)を設け、前記回転軸(30)における第1プレート(41)と第3プレート(36)の中間に第2プレート(35)を設け、前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)は、それぞれ円形状の前プレート(53)と、円形状の後プレート(54)と、前記前プレート(53)と後プレート(54)に架設された周方向に所定の間隔を隔てて前後方向に延在するバーフレーム(50)と前後フレーム(51)と、該前後フレーム(51)に前後方向に所定の間隔を隔てて設けた円形状のリングフレーム(52)と、該リングフレーム(52)の外周部に周方向に所定の間隔を隔てて立設された穀稈を掻込むツース(58)から形成され、前記前ロータ(32A)の前プレート(53)を第1プレート(41)の後面に、前記前ロータ(32A)の後プレート(54)を第2プレート(35)の前面に装着し、前記後ロータ(32B)の前プレート(53)を第2プレート(35)の後面に、前記後ロータ(32B)の後プレート(54)を第3プレート(36)の前面に装着したことを特徴とするコンバインである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記前プレート(53)と後プレート(54)を周方向に分割し、前記前後フレーム(51)を、前記前プレート(53)と後プレート(54)の回転方向の上手部に配置される上手前後フレーム(55)と下手部に配置される下手前後フレーム(56)で形成し、前記上手前後フレーム(55)と下手前後フレーム(56)で、周方向に分割された前プレート(53)と後プレート(54)を周方向に連結した請求項1記載のコンバインである。
【0008】
請求項3記載の発明は、穀粒径が小さい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを長くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を狭くした請求項1又は2記載のコンバインである。
【0009】
請求項4記載の発明は、穀粒径が大きい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを短くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を広くした請求項1又は2記載のコンバインである。
【0010】
請求項5記載の発明は、穀粒径が大きい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前記前ロータ(32A)のツース(58)の径方向の長さを短くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を広くし、前記後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを長くして、前記ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を狭くした請求項1又は2記載のコンバインである。
【0011】
請求項6記載の発明は、平面視において、前記前ロータ(32A)と後ロータ(32B)の前後方向に隣接するツース(58)を結ぶ仮想線(L)を回転方向の上手部に向かって延在させた請求項5記載のコンバインである。
【0012】
請求項7記載の発明は、正面視において、前記後ロータ(32B)の前プレート(53)の外周部を、前記後ロータ(32B)のツース(58)の先端部の回転軌跡よりも径方向の外側に延在させた請求項6記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、脱穀装置(4)の上部に、刈取前処理装置(3)から搬送されてきた穀稈を脱穀する扱胴(11)と、扱胴(11)の下側に穀稈の落下を抑制する受網(12)を設け、扱胴(11)は、脱穀装置(4)の前壁と後壁に架設された回転軸(30)と、回転軸(30)における前側に配置された支持された前ロータ(32A)と、後側に支持された後ロータ(32B)から形成され、回転軸(30)の前部に第1プレート(41)を設け、回転軸(30)の後部に第3プレート(36)を設け、回転軸(30)における第1プレート(41)と第3プレート(36)の中間に第2プレート(35)を設け、前ロータ(32A)と後ロータ(32B)は、それぞれ円形状の前プレート(53)と、円形状の後プレート(54)と、前プレート(53)と後プレート(54)に架設された周方向に所定の間隔を隔てて前後方向に延在するバーフレーム(50)と前後フレーム(51)と、前後フレーム(51)に前後方向に所定の間隔を隔てて設けた円形状のリングフレーム(52)と、リングフレーム(52)の外周部に周方向に所定の間隔を隔てて立設された穀稈を掻込むツース(58)から形成され、前ロータ(32A)の前プレート(53)を第1プレート(41)の後面に、前ロータ(32A)の後プレート(54)を第2プレート(35)の前面に装着し、後ロータ(32B)の前プレート(53)を第2プレート(35)の後面に、後ロータ(32B)の後プレート(54)を第3プレート(36)の前面に装着したので、前ロータ(32A)と後ロータ(32B)の破損等したツース(58)の交換作業の作業負担を軽減することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、前プレート(53)と後プレート(54)を周方向に分割し、前後フレーム(51)を、前プレート(53)と後プレート(54)の回転方向の上手部に配置される上手前後フレーム(55)と下手部に配置される下手前後フレーム(56)で形成し、上手前後フレーム(55)と下手前後フレーム(56)で、周方向に分割された前プレート(53)と後プレート(54)を周方向に連結したので、前ロータ(32A)と後ロータ(32B)の破損等したツース(58)の交換作業の作業負担をより軽減することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、穀粒径が小さい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前ロータ(32A)と後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを長くして、ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を狭くしたので、穀粒径が小さい米、麦、そば、菜種等の穀粒を効率良く脱穀することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、穀粒径が大きい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前ロータ(32A)と後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを短くして、ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を広くしたので、穀粒径が大きい大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の穀粒の外皮に加わる損傷を抑制することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、穀粒径が大きい穀粒を有する穀稈の脱穀作業を行う場合には、前ロータ(32A)のツース(58)の径方向の長さを短くして、ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を広くし、後ロータ(32B)のツース(58)の径方向の長さを長くして、ツース(58)の先端部と受網(12)の隙間を狭くしたので、穀粒径が大きい大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の穀粒の外皮に加わる損傷を抑制して、脱穀された穀粒に穀稈の切れ屑等が混入するのを抑制することもできる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明による効果に加えて、平面視において、前ロータ(32A)と後ロータ(32B)の前後方向に隣接するツース(58)を結ぶ仮想線(L)を回転方向の上手部に向かって延在させたので、穀稈を回転方向の下手側に効率良く搬送することができる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明による効果に加えて、正面視において、後ロータ(32B)の前プレート(53)の外周部を、後ロータ(32B)のツース(58)の先端部の回転軌跡よりも径方向の外側に延在させたので、前ロータ(32A)と受網(12)の隙間を後側に搬送されてくる穀粒を堰き止めて、外部に排出される穀粒を減らして回収ロスを削減することができる。また、受網(12)の内周面に後側に搬送されてくる穀粒を堰き止める部材を設ける必要がなくなり部品点数を削減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】コンバインの正面図である。
図2】コンバインの左側面図である。
図3】コンバインの平面図である。
図4】脱穀装置の前後方向の縦断面図である。
図5】扱胴の斜視図である。
図6】扱胴の左側面図である。
図7】ロータの前部の背面図である。
図8】リングフレームの(a)は背面図であり、(b)は径方向視の展開図であり、(c)は上手前後フレームの周方向視の側面図であり、(d)は下手前後フレームの周方向視の側面図である。
図9】米、麦等の小さな穀粒用のロータの(a)は板状ツースの説明図であり、(b)は丸棒ツースの説明図である。
図10】小さな穀粒用のロータの丸棒ツースの後退角の説明図である。
図11】大豆、小豆等の大きな穀粒用のロータの(a)は板状ツースの説明図であり、(b)は丸棒ツースの説明図である。
図12】大きな穀粒用のロータの丸棒ツースの後退角の説明図である。
図13】リングフレームに螺旋状に設けられたツースの説明図である。
図14】他のロータの前部の背面図である。
図15】扱胴の後側に他のロータを装着した扱胴の左側面図である。
図16】扱胴の後側にさらに他のロータを装着した扱胴の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3に示すように、汎用コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取前処理装置3が設けられ、刈取前処理装置3の後方左側に収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取前処理装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0022】
操縦部5の下側にエンジンを内装するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側に脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する排出オーガ8が設けられている。
【0023】
刈取前処理装置3は、圃場の穀稈を起立させながら後側に搬送する搬送装置3Aと、搬送装置3Aの後側下部に搬送された穀稈の株元を切断する刈刃装置3Bと、搬送装置3Aの後側に搬送された穀稈を左側に寄せ集めるオーガ装置3Cと、寄せ集められた穀稈を脱穀装置4に搬送するフィーダハウス3Dから構成されている。
【0024】
図4に示すように、脱穀装置4は、穀稈を脱穀する扱室10と、脱穀された穀粒を選別する選別室20から形成されている。
【0025】
扱室10の前後壁には、フィーダハウス3Dから搬送されてくる穀稈を脱穀する扱胴11が架設され、扱胴11の下側には、扱胴11の外周下部に沿って半円弧形状に形成された受網12が設けられ、受網12の内周面の前後方向の中間部には、扱胴11に向かって半円弧形状に形成された抵抗体13が立設されている。また、扱胴11の上部は、開閉可能な扱胴カバー14で覆われており、扱胴カバー14の内周面には、穀稈を扱室10の後部に案内する送塵板15が設けられている。
【0026】
選別室20の上部には、扱室10から漏下してくる穀粒を選別処理する揺動選別装置21が設けられている。揺動選別装置21の下部には、前側から順に、揺動選別装置21に選別風を送風する唐箕25と、唐箕25の後方に選別風の送風方向を変更する風割26と、揺動選別装置21から漏下してくる穀粒をグレンタンク7に搬送する1番螺旋27と、揺動選別装置21の後部から漏下してくる枝梗等が付着した穀粒を揺動選別装置21の前部の選別棚に再搬送する2番螺旋28が設けられている。
【0027】
図5,6に示すように、扱胴11は、扱室10の前後壁に回転自在に架設される回転軸30と、回転軸30の前部に支持された円錐台形状のインペラ31とロータ32から形成されている。
【0028】
インペラ31は、円形状の前板40と、前板40よりも径が大きい円形状の後板(請求項の「第1プレート」)41と、前板40と後板41の外周部を連結する側板42から形成されている。
【0029】
側板42の外周面には、インペラ31の前部に搬送された穀稈をインペラ31の後部に搬送する上下一対の搬送螺旋43が立設されている。これにより、インペラ31に移送されてきた穀稈をインペラ31の前部から後部に効率よく搬送してロータ32に移送することができる。
【0030】
搬送螺旋43の前面には、円周方向に所定角度を隔てて側板42と搬送螺旋43の前面下部を連結する略三角形状の補強リブ44が設けられている。これにより、搬送螺旋43の剛性を高めて、穀稈から搬送螺旋43に加わる負荷による搬送螺旋43の変形を抑制することができる。
【0031】
ロータ32は、前後方向に2分割されてインペラ31の後側に設けられたロータ(請求項の「前ロータ」)32Aと、ロータ32Aの後側に設けられたロータ(請求項の「後ロータ」)32Bから形成されている。なお、本実施形態では、ロータ32を前後方向にロータ32Aとロータ32Bに2分割して形成しているが、前後方向に3~4分割して形成することもできる。
【0032】
ロータ32Aは、インペラ31の後板41と回転軸30の中間部に設けられた中間板(請求項の「第2プレート」)35の間に設けられ、ロータ32Bは、回転軸30の中間板35と回転軸30の後板(請求項の「第3プレート」)36の間に設けられている。なお、中間板35は、回転軸30の前後方向の中間部に設けられた左右方向の縦断面が六角形状の中間支持部材34の外周面に立設している。
【0033】
ロータ32Aは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持されたリングフレーム52から形成されている。
【0034】
同様に、ロータ32Bは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持されたリングフレーム52から形成されている。
【0035】
ロータ32Aとロータ32Bは同一構造なので、以下ではロータ32Aを例に取って説明する。
【0036】
図7に示すように、ロータ32Aの前後フレーム51の前部は、周方向に三分割された分割プレート(請求項の「前プレート」)53を介してインペラ31の後板41の後面に装着され、前後フレーム51の後部は、周方向に三分割された分割プレート(請求項の「後プレート」)54を介して回転軸30の中間板35の前面に装着されている。なお、本実施形態では、ロータ32を周方向に3分割して形成しているが、周方向に2分割、4分割して形成することもできる。また、矢印は回転方向を示し、以下同じである。
【0037】
分割プレート53の外周部は、後板41の外周部に沿うように円弧状に形成され、分割プレート53の内周部は、中間支持部材34の外周部に沿うように頂角が120度に形成された三角形状の切欠き部が形成されている。
【0038】
分割プレート53の外周部には、周方向に所定の間隔を隔ててバーフレーム50を挿通させる外周部が開口された円状の開口部53Aが2個形成されている。これにより、分割プレート53とバーフレーム50の連結を強固に行うことができ、分割プレート53の外周部の外側にバーフレーム50が延出するのを抑制することができる。
【0039】
同様に、分割プレート54の外周部は、中間板35の外周部に沿うように円弧状に形成され、分割プレート54の内周部は、中間支持部材34の外周部に沿うように頂角が120度に形成された三角形状の切欠き部が形成されている。
【0040】
分割プレート54の外周部には、周方向に所定の間隔を隔ててバーフレーム50を挿通させる外周部が開口された円状の開口部54Aが2個形成されている。これにより、分割プレート54とバーフレーム50の連結を強固に行うことができ、分割プレート54の外周部の外側にバーフレーム50が延出するのを抑制することができる。
【0041】
分割プレート53と分割プレート54の回転方向の上手部には前後方向に延在する上手前後フレーム55が架設され、分割プレート53と分割プレート54の回転方向の下手部には前後方向に延在する下手前後フレーム56が架設連結されている。
【0042】
上手前後フレーム55の左右方向の縦断面形状はL字状に形成され、上手前後フレーム55の外周部は回転方向の上手方向に延在して形成されている。また、下手前後フレーム56の左右方向の縦断面形状はL字状に形成され、下手前後フレーム56の外周部は回転方向の上手方向に延在して形成されている。
【0043】
前後フレーム51は、分割プレート53と分割プレート54の下手側に架設された下手前後フレーム56と、この分割プレート53と分割プレート54の回転方向の下手側に隣接する分割プレート53と分割プレート54の上手側に架設された上手前後フレーム55をボルト等の締結部材によって連結して形成され、下手前後フレーム56の外周部の外周面に上手前後フレーム55の外周部の内周面を重ね合わせて形成されている。これにより、上手前後フレーム55と下手前後フレーム56の連結部に穀稈が絡み付くのを抑制することができる。
【0044】
図8に示すように、上手前後フレーム55には、径方向の所定の位置に前後方向に所定の間隔を隔ててリングフレーム52を挿通する穴55Aが8個形成され、前側から1番目の穴55Aと8番目の穴55Aの内周部は開口して形成されている。
【0045】
下手前後フレーム56には、径方向の所定の位置に前後方向に所定の間隔を隔ててリングフレーム52を挿通する穴56Aが8個形成され、前側から1番目の穴56Aと8番目の穴56Aの内周部は開口して形成されている。また、穴55Aと穴56Aは径方向と前後方向の同一位置に形成されている。これにより、リングフレーム52を上手前後フレーム55の穴55Aと下手前後フレーム56の穴56Aに容易に挿通することができる。
【0046】
上手前後フレーム55には、径方向において穴55Aよりも内周側の位置に前後方向に所定の間隔を隔てて締結部材を挿通する穴55Bが3個形成されている。
【0047】
下手前後フレーム56には、径方向の穴56Aよりも内周側の位置に前後方向に所定の間隔を隔てて締結部材を係合するウエルドナット等の係合部56Bが3個形成されている。なお、穴55Bと係合部56Bは径方向と前後方向の同一位置に形成されている。これにより、上手前後フレーム55と下手前後フレーム56を締結部材で容易に連結することができる。
【0048】
本実施形態では、リングフレーム52とこれに隣接するリングフレーム52の前後方向の間隔を同一間隔に形成しているが、間隔を広い間隔と狭い間隔を交互に形成することもできる。また、後側から数えて1番目と2番目に位置するリングフレーム52の間隔を他の、例えば2番目と3番目に位置するリングフレーム52の間隔よりも広い間隔に形成することができる。これにより、リングフレーム52とリングフレーム52の間から内周部に入込んだ穀稈をリングフレーム52の外周部に効率良く排出することができる。
【0049】
リングフレーム52は、丸鋼、角鋼で形成することができるが、丸鋼で形成するのが好ましい。これにより、穀稈がリングフレーム52に絡まり付くのを防止することができる。
【0050】
リングフレーム52の外周部には、周方向に所定の間隔を隔てて、ツース58が外周部に向けて立設している。
【0051】
図9には、穀粒の径が大きい大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の脱穀作業に使用する大穀粒径用ロータ33Aを図示し、図11には、穀粒の径が小さい米、麦、そば、菜種等の脱穀作業に使用する小穀粒径用ロータ33Bを図示している。
【0052】
大穀粒径用ロータ33Aのツース58の先端部と受網12の隙間は、小穀粒径用ロータ33Bのツース58の先端部と受網12の隙間に比べて広く、約2~3倍の隙間に形成されている。これにより、大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の大径穀粒を脱穀する場合に、穀粒皮の損傷を抑制することができる。一方、小穀粒径用ロータ33Bのツース58の先端部と受網12の隙間は、大穀粒径用ロータ33Aのツース58の先端部と受網12の隙間に比べて狭く、約1/3~1/2の隙間に形成されている。これにより、米、麦、そば、菜種等の小径穀粒を効率良く脱穀することができる。
【0053】
穀粒の径が大きい大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の刈取脱穀作業を行う場合には、扱胴11の前側のロータ32Aに大穀粒径用ロータ33Aを装着し、後側のロータ32Bにも大穀粒径用ロータ33Aを装着するのが好ましい。これにより、大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の大径穀粒を脱穀する場合に、穀粒皮の損傷を抑制することができる。また、穀粒の径が大きい大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の刈取脱穀作業を行う場合に、扱胴11の前側のロータ32Aに大穀粒径用ロータ33Aを装着し、後側のロータ32Bには小穀粒径用ロータ33Bを装着することもできる。これにより、大豆、小豆、とうもろこし、ひまわり等の大径穀粒を脱穀する場合に、穀粒皮の損傷を抑制し、脱穀された穀粒に穀稈の切れ屑等の混入を抑制することもできる。また、小穀粒径用ロータ33Bから大穀粒径用ロータ33Aへの交換作業の負担を軽減することもできる。
【0054】
穀粒の径が小さい米、麦、そば、菜種等の刈取脱穀作業を行う場合には、扱胴11の前側のロータ32Aに小穀粒径用ロータ33Bを装着し、後側のロータ32Bにも小穀粒径用ロータ33Bを装着するのが好ましい。これにより、米、麦、そば、菜種等の小径穀粒を効率良く脱穀することができ、また、回収ロスを削減することもできる。
【0055】
図9(a)に示すように、ツース58は、平鋼を打ち抜いて板体に形成することができる。ツース58を板体に形成する場合には、リングフレーム52に固定される周方向の基部の幅を、径方向の先端部の幅よりも大きく形成するのが好ましい。これにより、ツース58の回転方向の下手部に、径方向に延在するに従って上手側に向かって傾斜する傾斜部を形成して、穀稈を回転方向の上手側に案内してツース58に絡み付くのを防止することができる。
【0056】
図9(b)に示すように、丸鋼を所定の長さに切断して丸棒体に形成することができる。ツース58を丸棒体に形成する場合には、図10に破線で示すように、リングフレーム52に固定される基部よりも径方向の先端部を回転方向の上手部に位置させて所定の後退角を持たせて立設するのが好ましい。これにより、ツース58の回転方向の下手部に、径方向に延在するに従って上手側に向かって傾斜する傾斜部を形成して、穀稈を回転方向の上手側に案内してツース58に絡み付くのを防止することができる。
【0057】
図11(a)に示すように、ツース58は、平鋼を打ち抜いて板体に形成することができる。ツース58を板体に形成する場合には、リングフレーム52に固定される周方向の基部の幅を、径方向の先端部の幅よりも大きく形成するのが好ましい。これにより、ツース58の回転方向の下手部に、径方向に延在するに従って上手側に向かって傾斜する傾斜部を形成して、穀稈を回転方向の上手側に案内してツース58に絡み付くのを防止することができる。なお、図11(a)二点鎖線の円は、大穀粒径用ロータ33Aのツース58の先端の回転軌跡を図示している。
【0058】
図11(b)に示すように、丸鋼を所定の長さに切断して丸棒体に形成することができる。ツース58を丸棒体に形成する場合には、図12に破線で示すように、リングフレーム52に固定される基部よりも径方向の先端部を回転方向の上手部に位置させて所定の後退角を持たせて立設するのが好ましい。これにより、ツース58の回転方向の下手部に、径方向に延在するに従って上手側に向かって傾斜する傾斜部を形成して、穀稈を回転方向の上手側に案内してツース58に絡み付くのを防止することができる。なお、図11(b)、図12の二点鎖線の円は、大穀粒径用ロータ33Aのツース58の先端の回転軌跡を図示している。
【0059】
図13に示すように、平面視において、リングフレーム52に立設されたツース58は後方右側に向けて螺旋状に設けられている。また、扱胴カバー14の送塵板15は、リングフレーム52とこれに隣接するリングフレーム52に設けられたツース58の中心部を結んだ仮想線Lと交差し、交差角度は略90度に形成されている。これにより、穀稈をツース58で送塵板15に沿って後方左側に効率良く搬送することができる。
【0060】
<他のロータ>
図14,15に示すように、背面視において、他のロータ32Aは、分割プレート53の外周部をツース58の先端よりも径方向の外周まで延在して形成している。これにより、ロータ32Aと受網12の隙間を後方に搬送されてくる穀粒を堰き止めて、外部に排出される穀粒を減らして回収ロスを削減することができる。また、図4に示す受網12の内周面に抵抗体13を設ける必要もなくなり部品点数を削減することもできる。
【0061】
<さらに他のロータ>
図16に示すように、さらに他のロータ32Bは、連続螺旋59で形成されている。また、前ロータ32Aのツース58を後ロータBの連続螺旋59よりも低く形成している。これにより、前ロータ32Aで径の大きいとうもろこしを粉砕し、後ロータ32Bで粉砕したとうもろこしの芯部分を速やかに後方に送られるので、粒の損傷が抑制され、選別性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 機体フレーム
3 刈取前処理装置
4 脱穀装置
11 扱胴
12 受網
30 回転軸
32A ロータ(前ロータ)
32B ロータ(後ロータ)
35 中間板(第2プレート)
36 後板(第3プレート)
41 後板(第1プレート)
50 バーフレーム
51 前後フレーム
52 リングフレーム
53 分割プレート(前プレート)
54 分割プレート(後プレート)
55 上手前後フレーム
56 下手前後フレーム
58 ツース
L 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16