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特開2024-6199隠蔽層用組成物及び隠蔽層を有する磁気記録媒体
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  • 特開-隠蔽層用組成物及び隠蔽層を有する磁気記録媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006199
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】隠蔽層用組成物及び隠蔽層を有する磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240110BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240110BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240110BHJP
   C09C 1/64 20060101ALI20240110BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240110BHJP
   G11B 5/72 20060101ALI20240110BHJP
   G11B 23/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
C09C1/64
C09D17/00
G11B5/72
G11B23/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106870
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】小池 庸介
(72)【発明者】
【氏名】尾俣 慶
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
5D006
【Fターム(参考)】
4J037AA05
4J037DD05
4J037DD09
4J037DD10
4J038DG002
4J038EA011
4J038HA066
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA09
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA09
4J038PB11
5D006AA01
5D006AA05
(57)【要約】
【課題】ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いて隠蔽層を形成する場合であってもブロッキングを生じさせず、その一方で、リーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いた場合と同様の輝度、隠蔽性を得ることのできる、隠蔽用組成物、及びこれを用いて形成した隠蔽層を有する磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】アルミニウム顔料と樹脂ビーズとバインダー樹脂とを含む隠蔽層用組成物であって、前記アルミニウム顔料の固形分重量(P)と前記バインダー樹脂の固形分重量(R)との比率(P/R)が0.5~1の範囲であり、前記アルミニウム顔料100重量部に対し、前記樹脂ビーズを3~7重量部の割合で含む、隠蔽層用組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム顔料と樹脂ビーズとバインダー樹脂とを含む隠蔽層用組成物であって、前記アルミニウム顔料の固形分重量(P)と前記バインダー樹脂の固形分重量(R)との比率(P/R)が0.5~1の範囲であり、前記アルミニウム顔料100重量部に対し、前記樹脂ビーズを3~7重量部の割合で含む、隠蔽層用組成物。
【請求項2】
前記樹脂ビーズは、平均粒子径D50が0.5μm~10μmのウレタンビーズである、請求項1に記載の隠蔽層用組成物。
【請求項3】
前記アルミニウム顔料は、平均粒子径が5μm~20μmであり、平均厚みが0.01μm~0.1μmである、請求項1又は2に記載の隠蔽層用組成物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂は、重量平均分子量が1000~50000であり、ガラス転移温度が0℃~15℃である熱可塑性樹脂を含む、請求項1又は2に記載の隠蔽用積層用組成物。
【請求項5】
前記バインダー樹脂は、重量平均分子量が1000~50000であり、ガラス転移温度が-20℃~40℃である、前記熱可塑性樹脂とは別の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項4に記載の隠蔽用積層用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載されている隠蔽層用組成物を含む隠蔽層を有する磁気記録媒体であって、基材上に磁気記録層および磁気バーコードの少なくとも一方を有し、前記磁気記録層上または前記磁気バーコード上に厚さ0.2μm~10μmの前記隠蔽層を有する、磁気記録媒体。
【請求項7】
前記隠蔽層上にさらに感熱記録層を有する、請求項6に記載の磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽層用組成物に関する。とりわけ、本発明は、有色の磁気記録層や磁気バーコードを隠蔽する隠蔽層に用いる組成物、及びそのような隠蔽層を設けた磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材の片側に磁気記録層と感熱記録層を有する磁気記録媒体が知られている。このような磁気記録媒体は、感熱記録層に形成した文字等を視認させるため、磁気記録層の黒系色を隠蔽するための隠蔽層が、磁気記録層と感熱記録層の間に形成されている。隠蔽層としては、膜厚が薄くて隠蔽性が高いものが望ましいという理由から、アルミニウム顔料を主成分とした隠蔽層が用いられている。
【0003】
特許文献1には、基体の片面に磁気記録層、隠蔽層、感熱記録層が少なくとも順次積層される磁気感熱記録媒体において、前記隠蔽層をリーフィングタイプのアルミペーストと二酸化チタンの混合インキで形成してなることを特徴とする磁気感熱記録媒体が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、磁気記録層と、該磁気記録層上に設けられた隠蔽層と、該隠蔽層上に設けられた感熱記録層とを有する感熱磁気記録媒体において、前記隠蔽層は、ノンリーフィングタイプのアルミ粉とリーフィングタイプのアルミ粉とを混合したアルミペーストを含むことを特徴とする感熱磁気記録媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-262886号公報
【特許文献2】特開平8-183279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
隠蔽層を形成するのに使用されるアルミペーストに含まれるアルミニウム顔料には、鱗片状であることの多いリーフィングタイプのアルミニウム顔料と、粒子状であることの多いノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料とがあり、これらは表面張力などの性質において異なる。
隠蔽層には、膜厚が薄くて隠蔽性が高いものが望ましいという理由から、リーフィングタイプのアルミニウム顔料が用いられることが多い。
しかしながら、リーフィングタイプのアルミニウム顔料の場合、比較的大きな鱗片状の粒子が隠蔽層を形成する際の塗膜の表面に浮き上がってしまうことがあり、隠蔽層の密着性が乏しくなってしまうという問題がある。また、鱗片状の粒子は凝集しやすい傾向があり、隠蔽層を形成する際および形成した隠蔽層の性能に問題を生ずる。
以下に図を参照しながら、この問題についてさらに詳細に説明する。
【0007】
図2に、隠蔽層を形成する際に通常使用されるスクリーン印刷版のオープニング(開口部)を模式的に示す。
さらに、図3に、このようなオープニングを有するスクリーン印刷版を用いて従来の隠蔽層用組成物を用いて隠蔽層を印刷により形成する際に生じる問題を、模式的に示す。
隠蔽層を磁気記録層上にスクリーン印刷で形成する場合、隠蔽層を薄膜として形成することを目的として高メッシュ版(約460線/インチ)を用いると、図3(a)のように粗大な粒子や凝集した粒子がスクリーン印刷版のオープニングに詰まることがある。また、スクリーン印刷版には、縦線と横線とが織り交じられている交点が存在し、図3(b)のようにアルミニウム顔料がこの交点に入り込んでしまうと、アルミニウム顔料が開口部をふさいでしまう状態になりうる。このような状態では、スクリーン印刷版の開口部からインキが吐出されなくなり、印刷により形成した塗膜にピンホールが発生してしまう。同様に、隠蔽層を塗布により形成する場合、アルミニウム顔料の粒子が大きすぎると、塗工ヘッドにアルミニウム顔料がひっかかりやすくなり、塗工スジを発生させてしまうという問題を生じうる。
【0008】
これらリーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いる場合に生じうる問題を解決するため、比較的粒子径の小さいノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いることがある。ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料は塗膜中に均一に分散できるため、塗膜の密着性は良好である。
しかしながら、ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いた塗膜により隠蔽層を形成する場合、塗膜の膜厚を厚くしなければリーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いた場合と同様の輝度、隠蔽性が得られない傾向がある。一方、膜厚を厚くすると、隠蔽層を形成したシートを積載した際に、隠蔽層の一部がシート間ではく離してしまう現象(ブロッキング)が生じてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いて隠蔽層を形成する場合であってもブロッキングを生じさせず、その一方で、リーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いた場合と同様の輝度、隠蔽性を得ることのできる、隠蔽用組成物、及びこれを用いて形成した隠蔽層を有する磁気記録媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、アルミニウム顔料と樹脂ビーズとバインダー樹脂とを含む隠蔽層用組成物であって、前記アルミニウム顔料の固形分重量(P)と前記バインダー樹脂の固形分重量(R)との比率(P/R)が0.5~1の範囲であり、前記アルミニウム顔料100重量部に対し、前記樹脂ビーズを3~7重量部の割合で含む、隠蔽層用組成物である。
【0011】
本発明の隠蔽層用組成物には、前記樹脂ビーズとして、平均粒子径D50が0.5μm~10μmのウレタンビーズを好適に用いることができる。
【0012】
本発明の隠蔽層用組成物には、平均粒子径が5μm~20μmであり、平均厚みが0.01μm~0.1μmであるアルミニウム顔料を好適に用いることができる。
【0013】
本発明の隠蔽層用組成物には、前記バインダー樹脂として、重量平均分子量が1000~50000であり、ガラス転移温度が0℃~15℃である熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0014】
本発明の隠蔽層用組成物には、前記バインダー樹脂として、重量平均分子量が1000~50000であり、ガラス転移温度が-20℃~40℃である、前記熱可塑性樹脂とは別の熱可塑性樹脂をさらに含めることができる。
【0015】
本発明はまた、これら隠蔽層用組成物を含む隠蔽層を有する磁気記録媒体であって、基材上に磁気記録層および磁気バーコードの少なくとも一方を有し、前記磁気記録層上または前記磁気バーコード上に上述の厚さ0.2μm~10μmの前記隠蔽層を有する磁気記録媒体である。
【0016】
本発明はまた、前記隠蔽層上にさらに感熱記録層を有する磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いて隠蔽層を形成する場合であってもブロッキングを生じさせず、その一方で、リーフィングタイプのアルミニウム顔料を用いた場合と同様の輝度、隠蔽性を得ることができるとともに、隠蔽層を形成したシートを積載した際に、シート間にブロッキングが生じるのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の隠蔽層用組成物を用いた隠蔽層を有する磁気記録媒体の一例を模式的に示した断面図である。
図2】スクリーン印刷版のオープニングの例を示す模式図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図3】スクリーン印刷版のオープニングの目詰まりの様子を示した模式図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、アルミニウム顔料と樹脂ビーズとバインダー樹脂とを含む隠蔽層用組成物である。
【0020】
アルミニウム顔料は一般に、アルミニウム粉を薄く延ばしたフレーク状のアルミニウム顔料であって、その薄いフレーク形状と金属光沢とを生かして、有色の磁気記録層や磁気バーコードを隠蔽するのに好適に使用される。アルミニウム顔料は、粒子の表面張力の違いなどにより、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプの2種類に区別されることがある。本発明ではどちらのタイプのアルミニウム顔料を用いても構わないが、ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料は、表面にカップリング剤等の処理をすることが可能であるためバインダー樹脂への分散性をよくすることができる点で、本発明において好適に用いられる。
【0021】
本発明で使用するアルミニウム顔料の平均粒子径は、好ましくは5μm~20μmであり、さらに好ましくは8μm~12μmである。アルミニウム顔料の平均厚みは、好ましくは0.01μm~0.1μmであり、さらに好ましくは0.025μm~0.08μmであるとよい
【0022】
樹脂ビーズは一般に、球状で粒子径が均一であり、耐熱性や耐薬品性に優れるため、インキや化粧品顔料に好適に用いられる。
本発明で使用する樹脂ビーズの樹脂種としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリルウレタン、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル-スチレン共重合体、ポリエチレンナフタレートなどから1種もしくは2種以上を任意に選択して用いることができる。
特に本発明の隠蔽層用組成物では、耐薬品性や適度な硬度を有するウレタンビーズが好適に用いられ、ウレタンビーズの好適な平均粒子径D50は0.5μm~10μm、さらに好ましくは1μm~5μmである。ウレタンビーズは塗料やインキ中に含まれる有機溶剤に対して不溶であることから、インキ中で、さらには塗膜形成後も、元のビーズ形状を維持することができる。
【0023】
本発明で使用するバインダー樹脂としては、重量平均分子量が1000~50000であり、ガラス転移温度が0℃~15℃である熱可塑性樹脂が好適に用いられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステルウレタン樹脂などから1種もしくは2種以上を任意に選択して用いることができる。
【0024】
本発明の隠蔽層用組成物には、バインダー樹脂として、重量平均分子量が1000~50000であり、ガラス転移温度が-20℃~40℃である、上記熱可塑性樹脂とは別の熱可塑性樹脂をさらに含めることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステルウレタン樹脂などから1種もしくは2種以上を任意に選択して用いることができる。別の熱可塑性樹脂をさらに含めることにより、塗料やインキの製造時の樹脂溶解性や流動性を調整することが可能となる。
【0025】
バインダー樹脂としては、本発明の隠蔽層用組成物を用いた隠蔽層を適用する被隠蔽物の基材のガラス転移温度よりも低いガラス転移温度を有するものを選択するのが好ましい。例えば、被隠蔽物の基材がPETであれば、-20℃~50℃の範囲のガラス転移温度を有するバインダー樹脂を選択するのが良い。そのようなバインダー樹脂を選択することにより、スクリーン印刷や塗布工程における塗膜形成時のインキの流動性を確保するとともに、塗膜形成後の乾燥工程において、PET基材に熱による変形を起こさせない温度で塗膜を乾燥させることが可能となるからである。
【0026】
本発明の隠蔽層用組成物は、アルミニウム顔料、樹脂ビーズ、およびバインダー樹脂を含むものであって、これらを溶剤と混練したペースト状のインキや塗料にして、磁気記録層や磁気バーコードなどを有する被隠蔽物の上に、スクリーン印刷やコーティングにより隠蔽層を形成するのに使用することができる。
本発明の隠蔽層用組成物において、アルミニウム顔料の固形分重量(P)とバインダー樹脂の固形分重量(R)との比率(P/R)は0.5~1の範囲である。好ましくは、P/Rは0.75~0.85の範囲である。P/Rが0.5より小さくなると、アルミニウム顔料の含有量が少なくなるため好適なメタリック色の輝度、隠蔽性を得るのが難しくなる。一方、P/Rが1.0より大きくなると、磁気記録層などの被隠蔽物との密着が悪くなり、ブロッキングが生じやすくなる。
本発明の隠蔽層用組成物は、アルミニウム顔料100重量部に対し、樹脂ビーズを3~7重量部での割合で含む。この割合で樹脂ビーズを添加することにより、ブロッキングの発生を有効に抑えることができる。
【0027】
本発明の隠蔽層用組成物において、アルミニウム顔料をペースト状のインキや塗料とするために、インキ用の溶剤を使用することができる。溶剤としては、有機溶剤が好ましく、本発明の隠蔽層用組成物に含まれるバインダー樹脂を溶解する溶剤であれば特に制限はない。例えば、ケトン系溶剤として、アセトン、MEK、MIBK、DIBK、MIPK、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、芳香族炭化水素系溶剤として、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルへプタン、イソオクタン、ノルマルデカン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ベンゼン、シクロベンゼン、エステル系溶剤として、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、グリコール系溶剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロプレングリコール、石油系溶剤として、ミネラルスピリットや各種ソルベントを用いることができる。
溶剤の使用量は、製造条件に合わせインキ粘度を数10~数万mPa・sに調整することができる量とすればよい。一般的に、塗工用の塗料粘度としては、10~100mPa・s、グラビア印刷用インキ粘度としては、50~1,000mPa・s、スクリーン印刷用インキとしては、1,000mPa・s~1万mPa・sの範囲となるような量で、溶剤を使用するのが好ましい。
【0028】
本発明の隠蔽層用組成物は、基材上に磁気記録層および磁気バーコードの少なくとも一方が設けられた磁気記録媒体の隠蔽層として用いることができ、特に隠蔽層上に感熱記録層が設けられた磁気記録媒体に好適に用いられる。
図1は、本発明の隠蔽層用組成物を用いた磁気記録媒体の一例を模式的に示した断面図である。図1には、基材2の一方の面に、磁気記録層3、磁気バーコード4、隠蔽層5、感熱記録層6、保護層7が設けられた感熱記録型の磁気記録媒体1が示されている。
【0029】
本発明の磁気記録媒体の基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、紙、又はYUPOなどの複合材からなるものを使用することができるが、これらに特に限定されるものではない。基材としては、厚みが好ましくは50μm~500μm、さらに好ましくは100μm~300μmのものが通常用いられる。
【0030】
本発明の磁気記録媒体の磁気記録層は(存在する場合)、バリウムフェライト、γ-酸化鉄、ε-酸化鉄、カルボニル鉄粉等の磁性材料をポリウレタン、塩化ビニル、ビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリエステル樹脂などから選ばれる1種または2種以上のバインダー樹脂中に分散したものであって、必要により分散剤やイソシアネート系等の硬化剤が含まれるものを使用して、形成することができる。磁気記録層の厚みは好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μmである。
【0031】
本発明の磁気記録媒体の磁気バーコードは(存在する場合)、γ-酸化鉄、ε-酸化鉄、カルボニル鉄粉等の磁性材料をポリウレタン、塩化ビニル、ビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリエステル樹脂などから選ばれる1種または2種以上のバインダー樹脂中に分散したものであって、必要により分散剤やイソシアネート系等の硬化剤が含まれるものを使用して、形成することができる。磁気バーコードの厚みは好ましくは2μm~20μm、さらに好ましくは5μm~10μmである。
【0032】
本発明の磁気記録媒体の隠蔽層は、上述した本発明の隠蔽用組成物を含むものであって、磁気記録層上または磁気バーコード上に、厚み0.2μm~10μmで設けられる。隠蔽層の厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0033】
本発明の磁気記録媒体において、感熱記録層は熱の印加により文字や図柄が形成できるものであれば特に制限されないが、典型的には、染料前駆体と顕色剤を含むロイコ系の感熱記録層が好適に用いられる。感熱記録層の厚みは1μm~10μm、好ましくは2.5μm~6μmである。
【0034】
上記のとおり、本発明の磁気記録媒体は保護層を有するものとすることができる。保護層は、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステルウレタン樹脂などを含むものであって、必要により潤滑剤やフィラーが含まれるものを使用して、形成することができる。保護層の厚みは好ましくは1μm~5μm、さらに好ましくは1.5μm~3μmである。
【0035】
磁気記録層、磁気バーコード、隠蔽層、感熱記録層、保護層は、グラビアコート、ナイフコート、バーコート、ロールコート、コンマコートなどのコーティング方法やスクリーン印刷、オフセット印刷などの印刷方法により形成することができる。その際、必要によりIR乾燥、熱風乾燥を組み合わせて使用することができる。
【実施例0036】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例において各層の厚みは次の通りとし、磁気バーコード層は形成しなかった。
【0037】
基材 188μmポリエチレンテレフタレート(東レ(株)E20)
磁気記録層 15μm
隠蔽層 2μm
感熱記録層 4μm
保護層 2μm
【0038】
(実施例1)
磁気記録層は、以下の組成物を十分に混錬・分散させ、基材上に塗布し形成した。
磁性粉 :バリウムフェライト(戸田工業(株)製MC127) 100重量部
バインダー樹脂:塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合物 30重量部
(日信化学工業(株))
硬化剤 :コロネートL(日本ポリウレタン工業(株)) 3重量部
溶剤 :メチルエチルケトン/トルエン (7/3) 適量
【0039】
隠蔽層は、以下の方法で作製した。
まず、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合物(日信化学工業(株))を30重量部に対し、メチルエチルケトン/トルエン(7/3)を70重量部加え、撹拌・溶解し、固形分重量(R)が30%のスクリーン印刷用バインダーを作製した。
次に、アルミニウム顔料の固形分重量(P)とバインダー樹脂の固形分重量(R)との比率(P/R)が1.0となるようにした以下の組成物を十分に混錬・分散させ、磁気記録層上にスクリーン印刷で隠蔽層を形成した。
ノンリーフィングタイプアルミニウムペースト
(東洋アルミニウム(株)製型番2172 固形分重量(P)68.25%) 100重量部
30%スクリーン印刷用バインダー 227.5重量部
ウレタン樹脂ビーズ((株)セイコーアドバンス製 3μm) 5重量部
溶剤 :メチルエチルケトン/トルエン (7/3) 適量
【0040】
感熱記録層は、以下の組成物を十分に混錬・分散させ、隠蔽層上に形成した。
A液 フルオラン系ロイコ染料(日本化薬株式会社製TG-31) 10重量部
アクリルエマルション(ヘキスト合成株式会社製モビニール730) 20重量部
水 5重量部
B液 4-ヒドロキシ-4’イソプロピルオキシジフェニルスルフォン 10重量部
アクリルエマルション(ヘキスト合成株式会社製モビニール730) 20重量部
水 5重量部
A液とB液を1:1の割合に混合し、高速インペラーにて攪拌し、スクリーン印刷を用いて、隠蔽層上に形成した。
【0041】
保護層は、(株)T&K TOKA製オフセットインキUV161 メジウムUV硬化型インキを用いてオフセット印刷で形成した。
【0042】
(実施例2)
実施例1において、ウレタンビーズの添加量を3重量部にして隠蔽層を磁気記録層上に形成した。
【0043】
(実施例3)
実施例1において、ウレタンビーズの添加量を7重量部にして隠蔽層を磁気記録層上に形成した。
【0044】
(比較例1)
実施例1において、ウレタンビーズを添加せずに隠蔽層を磁気記録層上に形成した。
【0045】
(比較例2)
実施例1において、ウレタンビーズの添加量を2重量部にして隠蔽層を磁気記録層上に形成した。
【0046】
(比較例3)
実施例1において、ウレタンビーズの添加量を10重量部にして隠蔽層を磁気記録層上に形成した。
【0047】
(実施例4)
実施例1において、リーフィングタイプのアルミニウム顔料(東洋アルミニウム(株)製 型番0100M)に変えて、隠蔽層を磁気記録層上に形成した。
【0048】
実施例及び比較例について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0049】
隠蔽性:磁気記録層が黒色であり、隠蔽層がシルバーメタリック色であることより、輝度L*値を用いて評価した。測定器及び測定条件としては次の通りである:
測定器 X-Rite eXact
測定条件 イルミナント/観測者視野 D50/2度
濃度ステータス ISOステータス E
濃度白色標準 絶対
評価基準 〇:L*値:75±5未満、×:755以上
【0050】
ブロッキング:基材/磁気記録層/隠蔽層の構成で形成した後、シート5枚を隠蔽層と基材が接するように重ね合わせ、1g/mm2の荷重を加え、40度90%環境下で48時間保管したのち、シートを引き剥がし、隠蔽層が基材に転移しているか目視で確認した。
評価基準 〇:隠蔽層の転移無し、×:隠蔽層の剥離若しくは転移有り
【0051】
生産性:隠蔽層をスクリーン印刷で連続印刷した際に、スクリーン版の裂傷がないか目視で確認した。
評価基準 問題無し、×:連続生産で版切れ有り
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1~実施例3は、特に問題無く良好な結果を示した。
一方、比較例1及び比較例2は、シート間でブロッキングしてしまった。比較例3は、ウレタンビーズを添加しすぎたために、アルミニウムのシルバー光沢が失われてしまった。
実施例4は、表面隠蔽性及びブロッキングは特に問題がなかったが、スクリーンの紗目に引っかかりやすい傾向があった。版切れは発生しなかったが、アルミニウム顔料を引きずった跡が確認された。そのため、評価は△とし、総合評価を△とした。
【符号の説明】
【0054】
1 磁気記録媒体
2 基材
3 磁気記録層
4 磁気バーコード
5 隠蔽層
6 感熱記録層
7 保護層
8 スクリーン版メッシュ
9 アルミニウム顔料
図1
図2
図3