(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061994
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】光デバイス、光送信器及び光受信器
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20240430BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20240430BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240430BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G02B6/122 311
G02B6/125 301
G02B6/42
G02F1/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169703
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H137AB11
2H137BA35
2H137BA45
2H137BA52
2H137BA53
2H137BB02
2H137BC73
2H147AB24
2H147BA14
2H147BB02
2H147BE19
2H147BG09
2H147CB01
2H147CB02
2H147CB03
2H147DA10
2H147EA12A
2H147EA12B
2H147EA13A
2H147EA14A
2H147EA14B
2K102BA02
2K102BA40
2K102BD01
2K102DA04
2K102EA21
2K102EB16
2K102EB20
(57)【要約】
【課題】断熱変換部までの間で放射損失や反射損失を抑制できる光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、第1のアッセンブリ層と、第2のアッセンブリ層とを有する。光デバイスは、第1のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第1の導波路と、第2のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第2の導波路と、第1の導波路の間及び第2の導波路の間に配置された第3の導波路と、を有する。第1の導波路は、第1のテーパ導波路と、第2のテーパ導波路とを有する。第3の導波路は、第2のテーパ導波路と並走する第3のテーパ導波路を有する。第1のテーパ導波路は、第2のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる。第2のテーパ導波路は、第1のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる。第3のテーパ導波路は、導波路幅が徐々に広くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の近い側に形成された第1のアッセンブリ層と、
前記基板から離れた側に形成された第2のアッセンブリ層と、を有する光デバイスであって、
前記第1のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第1の導波路と、
前記第2のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第2の導波路と、
前記第1の導波路の間及び前記第2の導波路の間に配置された1本の第3の導波路と、を有し、
前記第1の導波路は、
第1のテーパ導波路と、前記第1のテーパ導波路と接続する第2のテーパ導波路とを有し、
前記第3の導波路は、
前記第2のテーパ導波路と並走する第3のテーパ導波路と、前記第1のテーパ導波路と離れる側の前記第3のテーパ導波路と接続する第4の導波路とを有し、
前記第1のテーパ導波路は、
前記第2のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて前記第1のテーパ導波路の始点まで導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、
前記第2のテーパ導波路は、
前記第1のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、
前記第3のテーパ導波路は、
前記第4の導波路の接合点に向かうに連れて導波路幅が徐々に広くなる構造を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第1のアッセンブリ層と前記基板との間に配置された第3のアッセンブリ層を有し、
前記第3の導波路は、
前記第3のアッセンブリ層に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1の導波路、前記第2の導波路及び前記第3の導波路を被覆するクラッドの材料の屈折率は前記第1の導波路及び前記第2の導波路の材料の屈折率よりも小さく、前記第1の導波路の材料の屈折率は前記第3の導波路の材料の屈折率よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第1の導波路は、
前記第1のテーパ導波路の始点における2本の第1のテーパ導波路同士の第1の間隔が、前記第1のテーパ導波路と前記第2のテーパ導波路との接続部位における2本の第1のテーパ導波路同士の第2の間隔に比較して広くなる構造にしたことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第1の導波路は、
前記第2のテーパ導波路の終点での2本の第2のテーパ導波路同士の第3の間隔が、前記第2の間隔に比較して狭くなる構造にしたことを特徴とする請求項4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記基板上に配置され、前記第1の導波路、前記第2の導波路及び前記第3の導波路を被覆するクラッドと、
前記基板及び前記クラッドに形成され、前記基板と前記クラッドとの間を分離する分離領域と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記分離領域内に充填された充填層を有することを特徴とする請求項6に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記第1のアッセンブリ層と前記基板との間に配置された第3のアッセンブリ層を有し、
前記第3の導波路は、
前記第3のアッセンブリ層に配置されたことを特徴とする請求項7に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記第1のアッセンブリ層に配置され、並列した状態で配置された2本の第1の導波路間に配置された第5の導波路と、
前記第2のアッセンブリ層に配置され、並列した状態で配置された2本の第2の導波路間に配置された第6の導波路と、
前記第5の導波路は、
第4のテーパ導波路と、前記第4のテーパ導波路と接続する第5のテーパ導波路とを有し、
前記第4のテーパ導波路は、
前記第5のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて前記第4のテーパ導波路の始点まで導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、
前記第5のテーパ導波路は、
前記第4のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、かつ、前記第3の導波路上に配置することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項10】
光源と、
送信信号を用いて前記光源からの光を光変調して送信光を送信する光変調部と、
前記光変調部内で前記光を導波する光デバイスと、を有する光送信器であって、
前記光デバイスは、
基板上の近い側に形成された第1のアッセンブリ層と、
前記基板から離れた側に形成された第2のアッセンブリ層と、を有する光デバイスであって、
前記第1のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第1の導波路と、
前記第2のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第2の導波路と、
前記第1の導波路の間及び前記第2の導波路の間に配置された1本の第3の導波路と、を有し、
前記第1の導波路は、
第1のテーパ導波路と、前記第1のテーパ導波路と接続する第2のテーパ導波路とを有し、
前記第3の導波路は、
前記第2のテーパ導波路と並走する第3のテーパ導波路と、前記第1のテーパ導波路と離れる側の前記第3のテーパ導波路と接続する第4の導波路とを有し、
前記第1のテーパ導波路は、
前記第2のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて前記第1のテーパ導波路の始点まで導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、
前記第2のテーパ導波路は、
前記第1のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、
前記第3のテーパ導波路は、
前記第4の導波路の接合点に向かうに連れて導波路幅が徐々に広くなる構造を有することを特徴とする光送信器。
【請求項11】
光源と、
前記光源からの光を用いて受信光から受信信号を受信する光受信部と、
前記光受信部内で前記光を導波路する光デバイスと、を有する光受信器であって、
前記光デバイスは、
基板上の近い側に形成された第1のアッセンブリ層と、
前記基板から離れた側に形成された第2のアッセンブリ層と、を有する光デバイスであって、
前記第1のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第1の導波路と、
前記第2のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第2の導波路と、
前記第1の導波路の間及び前記第2の導波路の間に配置された1本の第3の導波路と、を有し、
前記第1の導波路は、
第1のテーパ導波路と、前記第1のテーパ導波路と接続する第2のテーパ導波路とを有し、
前記第3の導波路は、
前記第2のテーパ導波路と並走する第3のテーパ導波路と、前記第1のテーパ導波路と離れる側の前記第3のテーパ導波路と接続する第4の導波路とを有し、
前記第1のテーパ導波路は、
前記第2のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて前記第1のテーパ導波路の始点まで導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、
前記第2のテーパ導波路は、
前記第1のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる構造を有し、
前記第3のテーパ導波路は、
前記第4の導波路の接合点に向かうに連れて導波路幅が徐々に広くなる構造を有することを特徴とする光受信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光送信器及び光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信容量の増加に伴って、光ファイバ通信の需要が増大しているため、電気信号を光信号に変換する小型の光デバイスが使用されている。そこで、近年、シリコンフォトニクスに代表される超小型の基板型光導波路素子(単に、光デバイスと称する)の開発が盛んに行われている。光デバイスでは、同じチップ上に異なる材料から成る2つ以上の導波路を集積できるエッジカプラである。
【0003】
光デバイスを構成する光部品は、例えば、材料屈折率によって得られる特性が異なるため、光部品毎に適切な材料の導波路を使用することで、光デバイスの特性の向上を図ることができる。そこで、異なる材料の導波路を使用する光デバイスでは、異なる導波路間で光を断熱的に光遷移する構造がある。
【0004】
図22は、従来例1の光デバイス100の一例を示す説明図である。
図22に示す光デバイス100は、光ファイバのコアと光結合する基板型光導波路素子である。光デバイス100は、SiO
2等で形成されたクラッド111と、クラッド111で被覆された、例えば、Si
3N
4(単に、SiN(Silicon Nitride)等で形成された第1の導波路102と、を有する。光デバイス100は、クラッド111で被覆された、例えば、Si等で形成された第2の導波路104と、第1の導波路102と第2の導波路104との間で光が断熱的に光遷移する断熱変換部105と、を有する。
【0005】
第1の導波路102は、第1のテーパ導波路102Aと、第1のテーパ導波路102Aと接続する第2のテーパ導波路102Bとを有する。第1のテーパ導波路102Aは、第2のテーパ導波路102Bの接合点から離れるに連れて第1のテーパ導波路102Aの始点であるチップ端面D11まで導波路幅が徐々に狭くなる構造を有する。第2のテーパ導波路102Bは、第1のテーパ導波路102Aの接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる構造を有する。
【0006】
第2の導波路104は、第2のテーパ導波路102Bの下に配置された第3のテーパ導波路104Aと、第3のテーパ導波路104Aと接続する直線導波路104Bとを有する。第3のテーパ導波路104Aは、第2のテーパ導波路102Bの始点の下から直線導波路104Bの接合点に近づくに連れて導波路幅が徐々に広くなる構造を有する。直線導波路104Bは、第3のテーパ導波路104Aの接合点からチップ端面D12までの導波路幅が一定の直線導波路である。
【0007】
図23Aは、
図22に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図23Aに示す光デバイス100は、Si基板112と、Si基板112上に積層されたクラッド111と、を有する。
図23Aに示すA-A線の略断面部分は、第1のテーパ導波路102Aが配置された光デバイス100の断面部位である。更に、光デバイス100は、Si基板112上の近い側に形成された第1のアッセンブリ層121Aと、Si基板112から離れた側に形成された第2のアッセンブリ層121Bと、を有する。第2のアッセンブリ層121Bは、第1の導波路102内の第1のテーパ導波路102Aが配置されている。
【0008】
図23Bは、
図22に示すB-B線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図23Bに示す光デバイス100は、Si基板112と、クラッド111と、第1のアッセンブリ層121Aと、第2のアッセンブリ層121Bとを有する。
図23Bに示すB-B線の略断面部分は、断熱変換部105の始点が配置された光デバイス100の断面部位である。第1のアッセンブリ層121Aには、第2の導波路104内の第3のテーパ導波路104Aが配置されている。第2のアッセンブリ層121Bには、第1の導波路102内の第1のテーパ導波路102Aと第2のテーパ導波路102Bとの接合点が配置されている。
【0009】
図23Cは、
図22に示すC-C線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図23Cに示す光デバイス100は、Si基板112と、クラッド111と、第1のアッセンブリ層121Aと、第2のアッセンブリ層121Bとを有する。
図23Cに示すC-C線の略断面部分は、直線導波路104Bが配置された光デバイス100の断面部位である。第1のアッセンブリ層121Aには、第2の導波路104内の直線導波路104Bが配置されている。
【0010】
図22に示す光デバイス100の断熱変換部105では、第2の導波路104の導波路幅がテーパ状に変化する。第1の導波路102は、第2の導波路104に比較して屈折率が低いので光のモードフィールドを大きくでき、光ファイバとの結合損失を小さくできる。
【0011】
しかしながら、
図22に示す光デバイス100では、第2の導波路104のモードフィールドが光ファイバのモードフィールドに比較して小さいため、モードフィールドのミスマッチにより結合損失が発生することになる。そこで、光ファイバとの結合損失を低減する従来例2の光デバイス100Aが知られている。
【0012】
図24は、従来例2の光デバイス100Aの一例を示す説明図である。
図24に示す光デバイス100Aは、光ファイバのコアと光結合する基板型光導波路素子である。光デバイス100Aは、第1の導波路152と、第2の導波路154と、第1の導波路152及び第2の導波路154を被覆する、クラッド161とを有する。更に、光デバイス100Aは、第1の導波路152と第2の導波路154との間で光を光遷移する断熱変換部155Aと、2本の第3の導波路153とを有する。第1の導波路152は、例えば、Si
3N
4(以下、単にSiNと称する)で形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiNの材料屈折率は1.99である。第2の導波路154は、例えば、Siで形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiの材料屈折率は3.48である。クラッド161は、例えば、SiO
2で形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiO
2の材料屈折率は1.44である。
【0013】
第1の導波路152は、3本の第1の直線導波路152A1,152A2、152A3と、3本の第1の直線導波路152A1,152A2、152A3と接続する第2のテーパ導波路152Bとを有する。第1の直線導波路152A1,152A2、152A3は、始点X11であるチップ端面D11から接合点X12までの導波路幅が一定となる導波路である。第2のテーパ導波路152Bは、第1の直線導波路152A1,152A2、152A3の接合点X12から終点X13に向けて導波路幅が徐々に狭くなるテーパ構造を有する導波路である。第2のテーパ導波路102Bの始点である接合点X12の導波路幅は、第2のテーパ導波路152Bの終点X13の導波路幅に比較して広い。第1の直線導波路152A1,152A2、152A3及び第2のテーパ導波路152Bのコアの厚みは、同一とする。第1の導波路152の始点X11は、光ファイバのコアと光結合する光デバイス100Aのチップ端面D11を起点とする。
【0014】
第3の導波路153は、2本の第4のテーパ導波路153A1及び153A2を有する。第4のテーパ導波路153A1及び153A2は、チップ端面D11を起点にして第2のテーパ導波路152Bに向けて導波路幅が徐々に狭くなる構造を有する。第4のテーパ導波路153A1は、第1の直線導波路152A3上に配置すると共に、第4のテーパ導波路153A2は、第1の直線導波路152A3下に配置する。
【0015】
第2の導波路154は、第3のテーパ導波路154Aと、第3のテーパ導波路154Aと接続する直線導波路154Bとを有する。第3のテーパ導波路154Aは、始点Y11から直線導波路154Bの接合点Y12に向けて導波路幅が徐々に広くなるテーパ構造を有する導波路である。直線導波路154Bは、第3のテーパ導波路154Aからチップ端面D12に向けて導波路幅が一定の導波路である。直線導波路154B及び第3のテーパ導波路154Aのコアの厚みは、同一とする。
【0016】
断熱変換部155Aは、第2のテーパ導波路152Bと第3のテーパ導波路154Aとの間を上下方向に離間した状態で第2のテーパ導波路152Bの下に第3のテーパ導波路154Aを重ねて配置することで構成する。尚、第2のテーパ導波路152Bと第3のテーパ導波路154Aとの間の間隔は一定とする。
【0017】
図25Aは、
図24に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図25Aに示すA-A線の略断面部分は、第1の導波路152の3本の第1の直線導波路152A1、152A2及び152A3が配置された光デバイス100Aの断面部位である。光デバイス100Aは、Si基板162と、Si基板162上に積層されたクラッド161と、第1のアッセンブリ層181Aと、第2のアッセンブリ層181Bと、第3のアッセンブリ層181Cとを有する。
【0018】
第1のアッセンブリ層181Aは、第2のアッセンブリ層181Bと第3のアッセンブリ層181Cとの間に配置されたアッセンブリ層である。第3のアッセンブリ層181Cは、Si基板162と第1のアッセンブリ層181Aとの間に配置されたアッセンブリ層である。
【0019】
第1のアッセンブリ層181Aは、第1の導波路152の3本の第1の直線導波路152A1、152A2及び152A3が配置されている。第2のアッセンブリ層181Bは、第3の導波路153内の第4のテーパ導波路153A1が配置されている。第3のアッセンブリ層181Cは、第3の導波路153内の第4のテーパ導波路153A2が配置されている。
【0020】
図25Bは、
図24に示すB-B線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図25Bに示すB-B線の略断面部分は、断熱変換部155Aが配置された光デバイス100Aの断面部位である。光デバイス100Aは、Si基板162と、クラッド161と、第1のアッセンブリ層181Aと、第2のアッセンブリ層181Bと、第3のアッセンブリ層181Cとを有する。
【0021】
第1のアッセンブリ層181Aは、第1の導波路152の第2のテーパ導波路152Bが配置されている。第3のアッセンブリ層181Cは、第2の導波路154内の第3のテーパ導波路154Aが配置されている。
【0022】
図25Cは、
図24に示すC-C線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図25Cに示すC-C線の略断面部分は、第2の導波路154内の直線導波路154Bが配置された光デバイス100Aの断面部位である。光デバイス100Aは、Si基板162と、クラッド161と、第1のアッセンブリ層181Aと、第2のアッセンブリ層181Bと、第3のアッセンブリ層181Cとを有する。第3のアッセンブリ層181Cは、第2の導波路154内の直線導波路154Bが配置されている。
【0023】
断熱変換部155Aの始点は、第2のテーパ導波路152Bの導波路幅が広く、第3のテーパ導波路154Aの導波路幅が狭く、終点では、第2のテーパ導波路152Bの導波路幅が狭く、第3のテーパ導波路154Aの導波路幅が広くなる構造とする。つまり、第2のテーパ導波路152Bの導波路幅が始点から終点に向けて徐々に狭く、第3のテーパ導波路154Aの導波路幅が始点から終点に向けて徐々に広くなる構造にした。一般的に、導波路の導波路幅が広いほど、コアへの光閉じ込めが強くなるため、コアの材料屈折率の影響を受けて実効屈折率は大きくなる。
【0024】
光デバイス100Aでは、第1のアッセンブリ層181Aに第1の導波路152の3本の第1の直線導波路152A1、152A2及び152A3を配置、第2のアッセンブリ層181Bに第3の導波路153内の第4のテーパ導波路153A1を配置する。更に、光デバイス100Aでは、第3のアッセンブリ層181Cに第3の導波路153内の第4のテーパ導波路153A2を配置する。その結果、従来の光デバイス100Aに比較して、第1の導波路152のモードフィールドを光ファイバのモードフィールドに近づけることで、光ファイバとの間の結合損失を抑制できる。
【0025】
第4のテーパ導波路153A1及び第4のテーパ導波路153A2をテーパ状に細くしたので、第1のアッセンブリ層181Aの第1の導波路152内の第1の直線導波路152A3に光を遷移させる。更に、第1のアッセンブリ層181Aの3つに分かれた第2のテーパ導波路152Bを1つに結合し、そのうえで第3のテーパ導波路154Aに断熱的に光を遷移させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0067259号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0369333号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0371102号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
光デバイス100Aでは、第4のテーパ導波路153A1の終端、第4のテーパ導波路153A2の終端、3本の第1の直線導波路152A1,152A2及び152A3の終端と断熱変換部155A内の第2のテーパ導波路152Bと接続する。しかしながら、これら接続する断熱変換部155A内の第2のテーパ導波路152Bとの接合部分が不連続箇所となるために光のモードフィールドが急激に変化してしまう。その結果、断熱変換部105までの間で光の放射損失及び反射損失が発生することになる。
【0028】
一つの側面では、チップ端面でのファイバとの結合損失を低減しながら、断熱変換部までの間で放射損失や反射損失を抑制できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
一つの態様の光デバイスは、基板上の近い側に形成された第1のアッセンブリ層と、基板から離れた側に形成された第2のアッセンブリ層と、を有する。光デバイスは、第1のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第1の導波路と、第2のアッセンブリ層に並列した状態で配置された2本の第2の導波路と、第1の導波路の間及び第2の導波路の間に配置された1本の第3の導波路と、を有する。第1の導波路は、第1のテーパ導波路と、第1のテーパ導波路と接続する第2のテーパ導波路とを有する。第3の導波路は、第2のテーパ導波路と並走する第3のテーパ導波路と、第1のテーパ導波路と離れる側の第3のテーパ導波路と接続する第4の導波路とを有する。第1のテーパ導波路は、第2のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて第1のテーパ導波路の始点まで導波路幅が徐々に狭くなる構造を有する。第2のテーパ導波路は、第1のテーパ導波路の接合点から離れるに連れて導波路幅が徐々に狭くなる構造を有する。第3のテーパ導波路は、第4の導波路の接合点に向かうに連れて導波路幅が徐々に広くなる構造を有する。
【発明の効果】
【0030】
一つの側面によれば、チップ端面でのファイバとの結合損失を低減しながら、断熱変換部までの間で放射損失や反射損失を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施例1の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施例2の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施例3の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施例4の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施例5の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施例6の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、実施例7の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施例8の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図17】
図17は、実施例9の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図19】
図19は、光デバイスを内蔵した光通信装置の一例を示す説明図である。
【
図20】
図20は、比較例の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図22】
図22は、従来例1の光デバイスの一例を示す説明図である。
【
図24】
図24は、従来例2の光デバイスの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
そこで、チップ端面でのファイバとの結合損失を低減しながら、断熱変換部までの間で放射損失や反射損失を抑制できる光デバイスについて説明する。
<比較例>
図20は、比較例の光デバイス80の一例を示す説明図である。
図20に示す光デバイス80は、光ファイバのコアと光結合する基板型光導波路素子である。光デバイス80は、第1の導波路82と、第2の導波路84と、第1の導波路82及び第2の導波路84を被覆する、クラッド81とを有する。更に、光デバイス80は、第1の導波路82と第2の導波路84との間を断熱的に光遷移する断熱変換部85を有する。第1の導波路82は、例えば、Si
3N
4(以下、単にSiNと称する)で形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiNの材料屈折率は1.99である。第2の導波路84は、例えば、Siで形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiの材料屈折率は3.48である。クラッド81は、例えば、SiO
2で形成し、光波長が1.55μmとした場合のSiO
2の材料屈折率は1.44である。
【0033】
第1の導波路82は、第2のアッセンブリ層85Bに並列配置された2本の第1の直線導波路82Aと、第1のアッセンブリ層85Aに並列配置された2本の第2の直線導波路82Bとを有する。第1の直線導波路82Aは、チップ端面D21の始点から終点までの導波路幅が一定となる導波路である。第2の直線導波路82Bは、チップ端面D21の始点から終点までの導波路幅が一定となる導波路である。第1の直線導波路82A及び第2の直線導波路82Bのコアの厚みは、同一とする。第2の直線導波路82Bは、第1の直線導波路82A上に配置する。
【0034】
第2の導波路84は、第3のアッセンブリ層85Cに配置されている。第2の導波路84は、第1のテーパ導波路84Aと、第1のテーパ導波路84Aと接続する直線導波路84Bとを有する。第1のテーパ導波路84Aは、始点から終点に向けて導波路幅が徐々に広くなるテーパ構造を有する導波路である。直線導波路84Bは、始点から終点に向けて導波路幅が一定の導波路である。直線導波路84B及び第1のテーパ導波路84Aのコアの厚みは、同一とする。第2の導波路84の直線導波路84Bの終点は、光デバイス80のチップ端面D21と対向するチップ端面D22を終点とする。
【0035】
断熱変換部85は、第1の導波路82と第1のテーパ導波路84Aとの間を離間した状態で第1の導波路82間に第1のテーパ導波路84Aを配置することで構成する。
【0036】
図21Aは、
図20に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図21Aに示すA-A線の略断面部分は、第1の導波路82が配置された光デバイス80の断面部位である。光デバイス80は、Si基板83と、Si基板83上に積層されたクラッド81と、第1のアッセンブリ層85Aと、第2のアッセンブリ層85Bと、第3のアッセンブリ層85Cとを有する。
【0037】
第1のアッセンブリ層85Aは、第2のアッセンブリ層85Bと第3のアッセンブリ層85Cとの間に配置されたアッセンブリ層である。第3のアッセンブリ層85Cは、Si基板83と第1のアッセンブリ層85Aとの間に配置されたアッセンブリ層である。
【0038】
第1のアッセンブリ層85Aは、第1の導波路82の2本の第2の直線導波路82Bが配置されている。第2のアッセンブリ層85Bは、第1の導波路82の2本の第1の直線導波路82Aが配置されている。
【0039】
図21Bは、
図20に示すB-B線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図21Bに示すB-B線の略断面部分は、断熱変換部85が配置された光デバイス80の断面部位である。光デバイス80は、Si基板83と、Si基板83上に積層されたクラッド81と、第1のアッセンブリ層85Aと、第2のアッセンブリ層85Bと、第3のアッセンブリ層85Cとを有する。
【0040】
第1のアッセンブリ層85Aは、第1の導波路82の2本の第2の直線導波路82Bが配置されている。第2のアッセンブリ層85Bは、第1の導波路82の2本の第1の直線導波路82Aが配置されている。第3のアッセンブリ層85Cは、第2の導波路84の第1のテーパ導波路84Aが配置されている。
【0041】
図21Cは、
図20に示すC-C線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図21Cに示すC-C線の略断面部分は、第2の導波路84内の直線導波路84Bが配置された光デバイス80の断面部位である。光デバイス80は、Si基板83と、Si基板83上に積層されたクラッド81と、第1のアッセンブリ層85Aと、第2のアッセンブリ層85Bと、第3のアッセンブリ層85Cとを有する。第3のアッセンブリ層85Cは、第2の導波路84の直線導波路84Bが配置されている。
【0042】
断熱変換部85の始点は、2本の第1の直線導波路82A間及び、2本の第2の直線導波路82B間に配置されている第2の導波路84内の第1のテーパ導波路84Aの始点である。断熱変換部85の終点は、2本の第1の直線導波路82A間及び、2本の第2の直線導波路82B間に配置されている第2の導波路84内の第1のテーパ導波路84Aの終点である。
【0043】
比較例の断熱変換部85では、2本の第1の直線導波路82A(2本の第2の直線導波路82B)間に第1のテーパ導波路84Aを配置したので、第1の直線導波路82A(第2の直線導波路82B)から第1のテーパ導波路84Aに光を断熱的に遷移する。その結果、第1の導波路82内で不連続箇所がなくなるため、光の放射損失や反射損失の発生を抑制できる。
【0044】
しかしながら、断熱変換部85では、2本の第1の直線導波路82A及び2本の第2の直線導波路82Bの光の閉じ込めが弱く、第1の導波路82内の第1のテーパ導波路84Aの始点における放射損失が大きくなる。その結果、第2の導波路84と第1の導波路82とが離間した状態で並列配置される断熱変換部85の長さをある程度確保する必要があるため、部品サイズが大きくなる。
【0045】
そこで、このような事態を解消する光デバイスの実施の形態につき、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0046】
図1は、実施例1の光デバイス1の一例を示す説明図である。
図1に示す光デバイス1は、光ファイバのコアと光結合する基板型光導波路素子である。光デバイス1は、第1の導波路2と、第2の導波路3と、第3の導波路4と、第1の導波路2、第2の導波路3及び第3の導波路4を被覆する、クラッド11とを有する。更に、光デバイス1は、第1の導波路2及び第2の導波路3と、第3の導波路4との間を断熱的に光遷移する断熱変換部5を有する。
【0047】
第1の導波路2は、2本の第1のテーパ導波路2Aと、2本の第2のテーパ導波路2Bとを有する、例えば、SiN(Silicon Nitride)導波路である。第1の導波路2は、例えば、Si3N4(以下、単にSiNと称する)で形成し、光波長を1.55μmとした場合のSiNの材料屈折率は1.99である。第1のテーパ導波路2Aは、始点X1から終点X2に向けて徐々に広くなる構造を有する導波路である。第2のテーパ導波路2Bは、始点X2から終点X3に向けて徐々に狭くなる構造を有する導波路である。第1のテーパ導波路2Aの終点X2と第2のテーパ導波路2Bの始点X2とを接続することで、第1のテーパ導波路2Aと第2のテーパ導波路2Bとの間を接続する。第1のテーパ導波路2A及び第2のテーパ導波路2Bのコアの厚みは同一とする。第1の導波路2の始点X1は、光ファイバのコアと光結合する光デバイス1のチップ端面D1を起点とする。
【0048】
第2の導波路3は、第1の導波路2上に配置する直線状の導波路である。第2の導波路3は、例えば、SiN(Silicon Nitride)導波路である。第2の導波路3は、光波長を1.55μmとした場合のSiNの材料屈折率は1.99である。
【0049】
第3の導波路4は、第3のテーパ導波路4Aと、第3のテーパ導波路4Aと接続する直線導波路4Bとを有する、例えば、Si(Silicon)導波路である。第3の導波路4は、光波長を1.55μmとした場合のSiの材料屈折率は3.48である。SiNの材料屈折率は、Siの材料屈折率よりも小さい。第3のテーパ導波路4Aは、始点Y1から終点Y2に向けて導波路幅が徐々に広くなるテーパ構造を有する導波路である。直線導波路4Bは、始点Y2から終点に向けて導波路幅が一定の導波路である。直線導波路4B及び第3のテーパ導波路4Aのコアの厚みは、同一とする。第3の導波路4の直線導波路4Bの終点は、光デバイス1のチップ端面D1と対向するチップ端面D2を終点とする。
【0050】
クラッド11は、例えば、SiO2で形成する層である。光波長を1.55μmとした場合のSiO2の材料屈折率は1.44である。
【0051】
断熱変換部5は、2本の第2のテーパ導波路2Bの間及び2本の第2の導波路3の間に第3のテーパ導波路4Aを離間した状態で配置して構成する。尚、第1の導波路2は、第2の導波路3の真上になくても、モードフィールドは2本の第2のテーパ導波路2B及び2本の第2の導波路3を中心に跨っているため、第1の導波路2及び第2の導波路3から第3の導波路4に光が断熱的に遷移することになる。
【0052】
断熱変換部5は、始点X2(Y1)と、終点Y2と、始点X2(Y1)と終点Y2との間である中間部とを有する。
図2Aは、
図1に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Aに示すA-A線の略断面部分は、第1の導波路2内の2本の第1のテーパ導波路2Aが配置された光デバイス1の断面部位である。光デバイス1は、クラッド11と、Si基板12と、第1のアッセンブリ層13Aと、第2のアッセンブリ層13Bと、第3のアッセンブリ層13Cとを有する。第1のアッセンブリ層13Aは、Si基板12上の近い側に形成されたアッセンブリ層である。第2のアッセンブリ層13Bは、Si基板12から離れた側に形成されたアッセンブリ層である。第3のアッセンブリ層13Cは、Si基板12と第1のアッセンブリ層13Aとの間のアッセンブリ層である。第1のアッセンブリ層13Aには、第1の導波路2内の第1のテーパ導波路2Aが配置されている。第2のアッセンブリ層13Bには、第2の導波路3が配置されている。
【0053】
図2Bは、
図1に示すB-B線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Bに示すB-B線の略断面部分は、断熱変換部5の始点が配置された光デバイス1の断面部位である。光デバイス1は、クラッド11と、Si基板12と、第1のアッセンブリ層13Aと、第2のアッセンブリ層13Bと、第3のアッセンブリ層13Cとを有する。第1のアッセンブリ層13Aには、第1の導波路2内の第1のテーパ導波路2A及び第2のテーパ導波路2Bの結合部分が配置されている。第2のアッセンブリ層13Bには、第2の導波路3が配置されている。第3のアッセンブリ層13Cには、第3の導波路4内の第3のテーパ導波路4Aが配置されている。断熱変換部5は、2本の第2のテーパ導波路2Bの間で第3のテーパ導波路4Aが並走する構造である。
【0054】
図2Cは、
図1に示すC-C線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Cに示すC-C線の略断面部分は、断熱変換部5の終点が配置された光デバイス1の断面部位である。光デバイス1は、クラッド11と、Si基板12と、第1のアッセンブリ層13Aと、第2のアッセンブリ層13Bと、第3のアッセンブリ層13Cとを有する。第1のアッセンブリ層13Aには、第1の導波路2内の第2のテーパ導波路2Bが配置されている。第2のアッセンブリ層13Bには、第2の導波路3が配置されている。第3のアッセンブリ層13Cには、第3の導波路4内の第3のテーパ導波路4Aが配置されている。
【0055】
図2Dは、
図1に示すD-D線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2Dに示すD-D線の略断面部分は、第3の導波路4内の直線導波路4Bが配置された光デバイス1の断面部位である。光デバイス1は、クラッド11と、Si基板12と、第1のアッセンブリ層13Aと、第2のアッセンブリ層13Bと、第3のアッセンブリ層13Cとを有する。第3のアッセンブリ層13Cには、第3の導波路4内の直線導波路4Bが配置されている。
【0056】
実施例1の光デバイス1では、第1の導波路2内の2本の第1のテーパ導波路2Aの導波路幅を徐々に広くしたので、光の閉じ込めを強くできる。その結果、断熱変換部5の始点での第3の導波路4の先端における放射損失が小さくなるため、断熱変換部5の長さを小さくできる。しかしながら、第1の導波路2の閉じ込めが強いままだと断熱変換部5の変換効率が波長や偏波により異なるので、変換効率に対する波長及び偏波の依存性が高くなる。
【0057】
そこで、光デバイス1の断熱変換部5では、第1の導波路2内の2本の第1のテーパ導波路2Aの導波路幅を徐々に狭くしたので、変換効率に対する波長及び偏波の依存性を小さくできる。
【0058】
断熱変換部5では、2本の第2のテーパ導波路2B(第2の導波路3)間に第3のテーパ導波路4Aを配置したので、第2のテーパ導波路2B(第2の導波路3)から第3のテーパ導波路4Aに光を断熱的に遷移する。その結果、第1の導波路2内で不連続箇所がなくなるため、光の放射損失や反射損失の発生を抑制できる。
【0059】
光デバイス1では、第1のアッセンブリ層13Aに2本の第1の導波路2、第2のアッセンブリ層13Bに2本の第2の導波路3をチップ端面D1側に配置する。その結果、第1の導波路2及び第2の導波路3のモードフィールドを光ファイバのモードフィールドに近づけることで、ある程度の光ファイバとの間の結合損失を抑制できる。
【0060】
つまり、光デバイス1では、チップ端面でのファイバとの結合損失を低減しながら、断熱変換部までの間で放射損失や反射損失を抑制できる。
【0061】
しかしながら、実施例1の光デバイス1では、光ファイバのコアと光結合する2本の第1のテーパ導波路2Aの始点X1間の間隔を若干狭くした構造である。その結果、チップ端面D1での光デバイス1のモードフィールドが小さく、光ファイバのコアのモードフィールドが大きく、光デバイス1の光ファイバのコアとの結合効率が低下することも考えられる。そこで、光デバイス1に比較して、光ファイバのコアとの結合効率を高くできる実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
第2の導波路3は、第1の導波路2上に配置する直線状の導波路である。第2の導波路3は、例えば、SiN導波路である。第2の導波路3は、光波長を1.55μmとした場合のSiNの材料屈折率は1.99である。
第3の導波路4は、第3のテーパ導波路4A1と、第3のテーパ導波路4A1と接続する直線導波路4B1とを有する、例えば、Si導波路である。第3の導波路4は、光波長を1.55μmとした場合のSiの材料屈折率は3.48である。SiNの材料屈折率は、Siの材料屈折率よりも小さい。第3のテーパ導波路4A1は、始点Y1から終点Y2に向けて導波路幅が徐々に広くなるテーパ構造を有する導波路である。直線導波路4B1は、始点Y2から終点に向けて導波路幅が一定の導波路である。直線導波路4B1及び第3のテーパ導波路4A1のコアの厚みは、同一とする。第3の導波路4の直線導波路4B1の終点は、光デバイス1のチップ端面D1と対向するチップ端面D2を終点とする。
始点X1における第1のテーパ導波路2A1のコア中心と終点X2における第1のテーパ導波路2A1のコア中心とを結ぶラインを第1の中心線CL1とする。尚、第1のテーパ導波路2A1の終点X2と第2のテーパ導波路2B1の始点X2とは同じである。始点X2における第2のテーパ導波路2B1のコア中心と終点X3における第2のテーパ導波路2B1のコア中心とを結ぶラインを第2の中心線CL2とする。
そして、一方の第1のテーパ導波路2A1の始点X1のコア中心と他方の第1のテーパ導波路2A1の始点X1のコア中心との間の距離を第1の間隔L1とする。言い換えれば、第1の間隔L1は、第1のテーパ導波路2A1の始点X1における2本の第1の導波路2同士の間隔である。一方の第1のテーパ導波路2A1の終点X2のコア中心と他方の第1のテーパ導波路2A1の終点X2のコア中心との間の距離を第2の間隔L2とする。言い換えれば、第2の間隔L2は、第1のテーパ導波路2A1と第2のテーパ導波路2B1との接続部位における2本の第1の導波路2同士の間隔である。一方の第2のテーパ導波路2B1の終点X3のコア中心と他方の第2のテーパ導波路2B1の終点X3のコア中心との間の距離を第3の間隔L3とする。そして、第1の間隔L1、第2の間隔L2及び第3の間隔L3の関係は、L1>L2、L1>L3及びL2=L3が成立する。言い換えれば、第1の導波路2は、第1の間隔L1が第2の間隔L2に比較して広くなる構造である。
光デバイス1Aは、光ファイバのコアと光結合するチップ端面D1の第1の導波路2の部位を広くし、光ファイバのコアのモードフィールドに近づけるべく、2本の第1のテーパ導波路2A1間の距離を第1の間隔L1とした。その結果、チップ端面D1での光デバイス1Aのモードフィールドが光ファイバのコアのモードフィールドに近づくことで、光デバイス1Aの光ファイバのコアとの結合効率が良好となる。
第3の導波路4は、第3のテーパ導波路4A1と、第3のテーパ導波路4A1と接続する直線導波路4B1とを有する。第3のテーパ導波路4A1は、始点Y1から終点Y2に向けて導波路幅が徐々に広くなるテーパ構造を有する導波路である。言い換えれば、第3のテーパ導波路4A1は、直線導波路4B1に向かうにつれて導波路幅が徐々に広くなる構造である。直線導波路4B1は、始点Y2から終点に向けて導波路幅が一定の導波路である。言い換えれば、直線導波路4B1は、第3のテーパ導波路4A1の第1のテーパ導波路2A1が設けられている側と反対側に接続する導波路である。第3のテーパ導波路4A1及び直線導波路4B1のコアの厚みは同一とする。第3の導波路4の直線導波路4B1の終点は、光デバイス1Aのチップ端面D1と対向するチップ端面D2を終点とする。
断熱変換部5Aは、第1の導波路2内の2本の第2のテーパ導波路2B1と、第3の導波路4内の第3のテーパ導波路4A1とを有する。断熱変換部5Aは、2本の第2のテーパ導波路2B1の間に第3のテーパ導波路4A1を配置し、第2のテーパ導波路2B1の下に第3のテーパ導波路4A1を離間した状態で並走して配置することで構成する。尚、第1の導波路2は、モードフィールドが2本の第2のテーパ導波路2B1を中心に跨っているため、第1の導波路2から第3の導波路4に光が断熱的に遷移することになる。
断熱変換部5Aの始点は、第2のテーパ導波路2B1の始点X2と第3のテーパ導波路4A1の始点Y1とが配置される箇所である。第2のテーパ導波路2B1の始点X2の導波路幅は、第3のテーパ導波路4A1の始点Y1の導波路幅に比較して広くしている。断熱変換部5Aは、2本の第2のテーパ導波路2B1の間で下方に第3のテーパ導波路4A1が並走する構造である。
断熱変換部5Aの終点は、第2のテーパ導波路2B1の終点X3と第3のテーパ導波路4A1の終点Y2とが配置される箇所である。第2のテーパ導波路2B1の終点X3の導波路幅は、第3のテーパ導波路4A1の終点Y3の導波路幅に比較して狭くしている。
実施例2の光デバイス1Aの断熱変換部5Aでは、2本の第2のテーパ導波路2B1間に第3のテーパ導波路4A1を配置したので、第2のテーパ導波路2B1と第3のテーパ導波路4A1との間で光を断熱的に遷移する。その結果、第1の導波路2内で不連続箇所がなくなるため、光の放射損失や反射損失の発生を抑制できる。
光デバイス1Aでは、第1の導波路2内の2本の第1のテーパ導波路2A1の導波路幅を徐々に広くしたので、光の閉じ込めを強くできる。その結果、断熱変換部5Aの始点での第3の導波路4の先端における放射損失が小さくなるため、断熱変換部5Aの長さを短くできる。
更に、光デバイス1Aでは、第1の導波路2内の2本の第2のテーパ導波路2B1の導波路幅を徐々に狭くしたので、第1の導波路2の実効屈折率が小さくなることで、変換効率に対する波長及び偏波の依存性を小さくしながら、変換効率の低下を抑制できる。
更に、光デバイス1Aは、2本の第1のテーパ導波路2A1間の間隔が始点X1から終点X2にかけて徐々に狭くなるように変化した構造にした。光デバイス1Aでは、光ファイバのコアと光結合するチップ端面D1の第1の導波路2の部位を広くし、第1の間隔L1が第2の間隔L2よりも広くした。その結果、チップ端面D1での光デバイス1Aのモードフィールドが光ファイバのコアのモードフィールドに近づくことで、光デバイス1Aの光ファイバのコアとの結合効率が改善して光挿入損失を抑制できる。
説明の便宜上、光デバイス1Aは、第1の間隔L1が第2の間隔L2に比較して長くした。しかしながら、チップ端面D1での光デバイス1Aのモードフィールドが光ファイバのコアのモードフィールドに近づくように第1の間隔L1を広くすればよく、第1の間隔が第2の間隔に比較して短くしても良い。
尚、実施例2の光デバイス1Aでは、第2の間隔L2及び第3の間隔L3の関係がL2=L3であるため、断熱変換部5Aのモードフィールドが広く、断熱変換部5Aと光結合する第3の導波路4内の直線導波路4B1のモードフィールドに近づけることができない。その結果、断熱変換部5Aでの第3の導波路4との間のモードフィールドのミスマッチにより結合損失が発生する場合が考えられる。そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。