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  • 特開-遊星歯車装置の伝達誤差計測装置 図1
  • 特開-遊星歯車装置の伝達誤差計測装置 図2
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  • 特開-遊星歯車装置の伝達誤差計測装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061999
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】遊星歯車装置の伝達誤差計測装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240430BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16H1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169713
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】303025663
【氏名又は名称】株式会社日立ニコトランスミッション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】河野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】安村 光正
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠人
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA01
3J027GD04
3J027GE01
(57)【要約】
【課題】遊星歯車装置の伝達誤差計測において、検出歯車と遊星歯車列の歯数比を一致させることができ、かつ回転の検出値が軸のねじれの影響を受けることが無い遊星歯車装置の伝達誤差計測装置を提供する。
【解決手段】第2遊星歯車装置70を構成する第2太陽歯車72と第2内歯車76との伝達誤差を計測する装置であって、第2太陽歯車72を基点として動力を入力する動力伝達軸80と反対側に設けられた第1回転検出歯12と、第2内歯車76の外周側に設けられた第2回転検出歯14と、第1回転検出歯12の近傍に配置された第1回転検出器16と、第2回転検出歯14の近傍に配置された第2回転検出器18と、第1回転検出器16と第2回転検出器18とを介して出力されるパルスが入力される位相差演算器20と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車装置を構成する太陽歯車と内歯車との伝達誤差を計測する装置であって、
前記太陽歯車を基点として前記太陽歯車へ動力を入力するための軸と反対側に設けられた第1回転検出歯と、
前記内歯車の外周側に設けられた第2回転検出歯と、
前記第1回転検出歯の近傍に配置された第1回転検出器と、
前記第2回転検出歯の近傍に配置された第2回転検出器と、
前記第1回転検出器と前記第2回転検出器とを介して出力されるパルスが入力される位相差演算器と、
を有することを特徴とする遊星歯車装置の伝達誤差計測装置。
【請求項2】
前記遊星歯車装置は、動力循環装置であって、一対の遊星歯車装置を構成する歯車の歯数を異ならせていることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置の伝達誤差計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車に関する技術であり、特に遊星歯車装置で生じる伝達誤差(角度伝達誤差)を計測する場合に好適な遊星歯車装置の伝達誤差計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少ない段数で大きな減速比を得られ、入力軸と出力軸とを同軸上に配置する事ができる遊星歯車減速機(遊星歯車装置)は、小型化にも適しており、車両の変速機などにも適用されてきている。一方で、遊星歯車装置は、構造が複雑でギアの噛み合い部の隙間を大きくしがちとなり、結果としてバックラッシが大きくなるといった実状がある。しかし近年、減速機を用いた駆動制御では、正転、逆転、加速、減速、停止など複雑な回転制御を正確に行う事が求められており、遊星歯車装置に対しても、小バックラッシ化による制御性の向上が求められてきている。
【0003】
しかし、バックラッシを小さくすると、寸法誤差などの影響で噛み合い部が干渉し、回転トルクにムラが生じたり、騒音の増大などを招く要因となるとされている。このため、非特許文献1のように、バックラッシを小さくした際の遊星歯車の荷重配分や、角度伝達誤差(伝達誤差)、及び太陽歯車の軸直角方向変位などが検討され、シミュレーションが行われるようになってきている。また、特許文献1には、遊星歯車装置の角度伝達誤差を低減するための方法が開示されている。
【0004】
このように、遊星歯車装置の性能や特性を検討する上で、伝達誤差の検証は重要な役割を担う事となる。しかし、従来の伝達誤差の計測は、図4に示すような装置で行われていたため、次のような問題があった。第1に、入力側の検出対象歯車1と出力側の検出対象歯車2の歯数比(減速比)と、入力側回転検出歯3と出力側回転検出歯4の歯数比が必ずしも一致せず、速比変換演算を行う必要がある。このため、回転検出歯のパルスを検出する回転検出器5a,5bの分解能よりも劣る分解能でしか計測ができない。第2に、計測される伝達誤差に軸のねじり剛さの影響が重畳するため、歯車の伝達誤差を正確に計測することが困難となるといった問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2771418号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】城越教夫 他「小バックラッシ遊星歯車装置における各種誤差と性能に関する研究」日本機械学会論文集(C編)65巻633号(1999-5) 280頁-287頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、遊星歯車装置の伝達誤差計測において、検出歯車と遊星歯車列の歯数比を一致させることができ、かつ回転の検出値が軸のねじれの影響を受けることが無い遊星歯車装置の伝達誤差計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る遊星歯車装置の伝達誤差計測装置は、遊星歯車装置を構成する太陽歯車と内歯車との伝達誤差を計測する装置であって、前記太陽歯車を基点として前記太陽歯車へ動力を入力するための軸と反対側に設けられた第1回転検出歯と、前記内歯車の外周側に設けられた第2回転検出歯と、前記第1回転検出歯の近傍に配置された第1回転検出器と、前記第2回転検出歯の近傍に配置された第2回転検出器と、前記第1回転検出器と前記第2回転検出器とを介して出力されるパルスが入力される位相差演算器と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する遊星歯車装置の伝達誤差計測装置において、前記遊星歯車装置は、動力循環装置であって、一対の遊星歯車装置を構成する歯車の歯数を異ならせているようにすると良い。
【発明の効果】
【0010】
上記のような特徴を有する事によれば、遊星歯車装置の伝達誤差計測において、検出歯車と遊星歯車列の歯数比を一致させることができるようになる。また、回転の検出値が軸のねじれの影響を受けることが無く、高い分解能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一対の遊星歯車装置を有する動力循環装置に、伝達誤差計測装置を適用した場合の形態を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る伝達誤差計測装置の概略構成と、その機能を説明するための図である。
図3】一般的な遊星歯車装置に、伝達誤差計測装置を適用した場合の形態を示すブロック図である。
図4】従来の伝達誤差計測装置の配置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の遊星歯車装置の伝達誤差計測装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施するために好適な形態の一部であり、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0013】
[構成]
本実施形態では、図1に示すような動力循環装置50を構成する遊星歯車装置に対して伝達誤差計測装置10を適用する場合の例について説明する。実施形態に係る動力循環装置50は、第1の遊星歯車装置60と第2の遊星歯車装置70とが積層方向(歯車の厚み方向)に対を成すように配置されている。第1遊星歯車装置60は、第1太陽歯車62と、複数の第1遊星歯車64、及び第1内歯車66を備え、第2遊星歯車装置70は、第2太陽歯車72と、複数の第2遊星歯車74、及び第2内歯車76を備える。
【0014】
第1太陽歯車62と第2太陽歯車72とは、動力伝達軸80で接続されており、第1内歯車66と第2内歯車76とは、単一のスリーブ状部材82の内側に、それぞれ形成されている。このような基本構成を有する動力循環装置50では、第2太陽歯車72と、第2内歯車76との間における伝達誤差を計測対象としている(図1中破線で囲った歯を持つ歯車)。このため、第1太陽歯車62を介して動力伝達軸80と反対側に、原動機84からの動力を入力する動力入力軸86が延設されている。そして、第2太陽歯車72を介して動力伝達軸80と反対側には、回転検出軸88が延設されており、この回転検出軸88に第1回転検出歯12が備えられている。また、スリーブ状部材82の外周には、第2回転検出歯14が備えられている。なお、図1中、第1回転検出歯12と、第2回転検出歯14は、一点鎖線で囲った部位である。
【0015】
ここで、第1回転検出歯12と、第2回転検出歯14は、それぞれ検出対象とする歯車(第1回転検出歯12は第2太陽歯車72、第2回転検出歯14は第2内歯車76)と同一、あるいは等倍できる歯数を持つようにし、第2太陽歯車72と第2内歯車76との歯数比と、第1回転検出歯12と第2回転検出歯14との歯数比が一致あるいは整数倍の関係にあるようにする。このような構成とすることで、回転検出値に対して複雑な速比変換を行う必要が無くなり、高い分解能での計測が可能となるからである。
【0016】
第1回転検出歯12の近傍と、第2回転検出歯14の近傍とには、それぞれ第1回転検出器16と第2回転検出器18とを設けている。これにより、第1回転検出歯12を介して第2太陽歯車72の回転数を検出し、第2回転検出歯14を介して第2内歯車76の回転数を検出するようにしている。ここで、第1回転検出器16と第2回転検出器18については、第1回転検出歯12や第2回転検出歯14の回転に伴い、その回転数(回転角度)を検出することが可能であれば、具体的な構成を限定するものでは無いが、具体的な一例としては、電磁式回転検出器を挙げることができる。第1回転検出器16と第2回転検出器18とを電磁式回転検出器とすることで、各回転検出器は、各回転検出歯の回転に起因して得られる歯の有無(ギヤの凹凸)に合わせた信号(パルス)を出力することとなる。なお、パルスは、回転検出歯の歯数に合わせて出力されるため、歯車の歯数が既知であれば、360度を歯数で割ることで、1パルス分の回転角度を算出することができる。
【0017】
第1回転検出器16と第2回転検出器18は、位相差演算器20に接続されており、第1回転検出器16と第2回転検出器18を介して検出されるパルスが、それぞれ位相差演算器20に入力される。位相差演算器20では、入力された2つのパルスに基づいて検出対象とする第2太陽歯車72と、第2内歯車76との間における伝達誤差を算出する(図2参照)。なお、ここでいう伝達誤差は、基準となる回転検出器からの検出パルスに対する対比検出パルスの立ち上がりの遅れ幅の大きさを高さとして表すものをいう。本実施形態を例に挙げると、第1回転検出器16により検出されるパルスを基準パルスとし、第2回転検出器18により検出されるパルスを対比検出パルスとして、その遅れ幅を示すものである。
【0018】
[効果]
上記のような構成の伝達誤差計測装置10によれば、従来のように速比換算器を介さずに伝達誤差を求めることができる。このため、回転検出器(第1回転検出器16、第2回転検出器18)の分解能に応じた高い精度での検出が可能となる。
【0019】
[応用形態]
上記のような動力循環装置50に伝達誤差計測装置10を適用して伝達誤差の計測を行う場合、第1遊星歯車装置60を構成する第1太陽歯車62並びに第1内歯車66と、第2遊星歯車装置70を構成する第2太陽歯車72並びに第2内歯車76との歯数を変えるようにすると良い。
【0020】
このような構成とした場合、第1遊星歯車装置60と第2遊星歯車装置70とで、発生する振動周波数が異なることとなる。これにより、第1遊星歯車装置60により発生する振動周波数に関連するデータを計測対象のデータから除外することが可能となるからである。なお、ここでいう振動周波数とは、各回転検出器による検出パルスを指すものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
上記実施形態では、伝達誤差計測装置10を適用する遊星歯車装置として、動力循環装置50を例に挙げて説明している。しかしながら、上記実施形態に係る伝達誤差計測装置10は、図3に示すような、通常の遊星歯車装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0022】
10………伝達誤差計測装置、12………第1回転検出歯、14………第2回転検出歯、16………第1回転検出器、18………第2回転検出器、20………位相差演算器、50………動力循環装置、60………第1遊星歯車装置、62………第1太陽歯車、64………第1遊星歯車、66………第1内歯車、70………第2遊星歯車装置、72………第2太陽歯車、74………第2遊星歯車、76………第2内歯車、80………動力伝達軸、82………スリーブ状部材、84………原動機、86………動力入力軸、88………回転検出軸。
図1
図2
図3
図4