(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062001
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ケーブル接続構造、連結電力ケーブル、およびケーブル接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/20 20060101AFI20240430BHJP
H02G 15/18 20060101ALI20240430BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240430BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20240430BHJP
H01R 4/70 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
H01R4/20
H02G15/18
H02G1/14
H01R43/048 Z
H01R4/70 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169717
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000213884
【氏名又は名称】住電機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大高 和良
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5E063CB02
5E063CB17
5E063CC02
5E063XA01
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD16
5E085EE03
5E085FF01
5E085HH09
5E085JJ03
5E085JJ06
5E085JJ36
5G355AA03
5G355BA14
5G355BA18
5G355CA06
5G375AA02
5G375CA02
5G375CA14
5G375CB06
5G375CB10
5G375CB36
5G375DB35
5G375DB44
(57)【要約】
【課題】ケーブル接続構造の電気特性および機械特性の両方を向上させる。
【解決手段】ケーブル接続構造は、導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルと、中空部を有する金属管として構成され、中空部内で一対の電力ケーブルの導体を接続するスリーブと、を有し、スリーブは、当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを有し、スリーブの中空部の断面積に対する、導体が占める面積の占積率は、複数のインデントのうち少なくとも1つを含むスリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルと、
中空部を有する金属管として構成され、前記中空部内で前記一対の電力ケーブルの前記導体を接続するスリーブと、
を有し、
前記スリーブは、当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを有し、
前記スリーブの前記中空部の断面積に対する、前記導体が占める面積の占積率は、前記複数のインデントのうち少なくとも1つを含む前記スリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満である
ケーブル接続構造。
【請求項2】
前記スリーブは、当該スリーブの軸方向に直交する断面が多角形となるように圧縮された複数の外周側面を有し、
前記複数のインデントのそれぞれは、前記複数の外周側面のそれぞれから前記スリーブの径方向に凹んでいる
請求項1に記載のケーブル接続構造。
【請求項3】
前記複数のインデントのうち2以上のインデントは、前記スリーブの軸方向に互いに異なる位置に配置され、且つ、前記複数の外周側面のうち互いに異なる外周側面に設けられている
請求項2に記載のケーブル接続構造。
【請求項4】
前記スリーブは、前記断面が六角形となるように圧縮され、
前記複数のインデントは、少なくとも1つのインデントを含む複数の異なる断面を、前記スリーブの軸方向に重ねて見たときに、前記スリーブの中心軸の周りに2回対称、3回対称または6回対称に配置されている
請求項2または請求項3に記載のケーブル接続構造。
【請求項5】
前記スリーブは、前記断面が六角形となるように圧縮され、
前記複数のインデントは、前記スリーブの軸方向に直交する同一の断面内において、前記スリーブの中心軸の周りに2回対称または3回対称に配置されている
請求項2または請求項3に記載のケーブル接続構造。
【請求項6】
前記複数の外周側面のそれぞれは、前記スリーブの軸方向に平行な平坦面よりも前記スリーブの径方向の外側に向けて膨らんでいる
請求項2または請求項3に記載のケーブル接続構造。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のケーブル接続構造を少なくとも1つ備える
連結電力ケーブル。
【請求項8】
導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルを準備する工程と、
中空部を有する金属管として構成されたスリーブにより、前記一対の電力ケーブルの前記導体を接続する工程と、
を有し、
前記導体を接続する工程は、
当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを形成する工程を有し、
前記複数のインデントを形成する工程では、
前記スリーブの前記中空部の断面積に対する、前記導体が占める面積の占積率を、前記複数のインデントのうち少なくとも1つを含む前記スリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満とする
ケーブル接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル接続構造、連結電力ケーブル、およびケーブル接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電力ケーブルを接続する場合に、筒状のスリーブを圧縮することにより導体を接続することがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、ケーブル接続構造の電気特性および機械特性の両方を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルと、
中空部を有する金属管として構成され、前記中空部内で前記一対の電力ケーブルの前記導体を接続するスリーブと、
を有し、
前記スリーブは、当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを有し、
前記スリーブの前記中空部の断面積に対する、前記導体が占める面積の占積率は、前記複数のインデントのうち少なくとも1つを含む前記スリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満である
ケーブル接続構造が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ケーブル接続構造の電気特性および機械特性の両方を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、電力ケーブルを示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るケーブル接続構造を示す導体の軸方向に沿った概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るスリーブを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るスリーブの一部を拡大した断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係るケーブル接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態に係るケーブル接続構造の製造方法の一部を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係るケーブル接続構造の製造方法の一部を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態の変形例1に係るスリーブを示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態の変形例2に係るスリーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者の得た知見>
まず、発明者の得た知見について説明する。
【0009】
近年、電力ケーブルを軽量化させたり、電力ケーブルの製造コストを低減したりするため、アルミを含む導体の適用が増えてきている。しかしながら、当該アルミ導体を有する電力ケーブルを接続する場合には、導体素線の外周にアルミの酸化被膜が形成されているため、当該酸化被膜を除去する必要があった。
【0010】
上述のように導体素線が酸化被膜を有する状況下では、電力ケーブルの接続において、以下の課題が生じる可能性があった。
【0011】
例えば、従来の銅導体で適用されていた方法のように、断面が六角形となるようにスリーブを圧縮する方法では、スリーブとアルミ導体との接触抵抗を下げるために必要なスリーブ長が長くなっていた。
【0012】
例えば、アルミ導体を溶接する方法では、溶接部の機械的強度が低下したり、溶接に係る作業時間が長くなったりする可能性があった。
【0013】
本発明者は、これらの課題を解決するため、スリーブの径方向に凹ませたインデントを形成する方法を検討した。このようなインデントを形成することで、導体の潰れを大きくすることができ、導体素線の酸化被膜を破ることができる。これにより、スリーブと導体との接触面積を増やすことができる。その結果、スリーブと導体との接触抵抗を低減することができる。また、スリーブと導体との接触面積を増やすことで、引張強さを増加させることができる。
【0014】
しかしながら、スリーブにより接続された一対の電力ケーブルの引張強さが、インデント圧縮条件に依存して低下する場合があった。引張強さが低下したスリーブの断面を観察したところ、インデントが過度に押し込まれ、当該インデントにおけるスリーブの厚さが薄くなっていた。そのため、当該厚さが薄くなった部分において、スリーブ自体が破断していた。このような現象のため、ケーブル接続構造における電気特性および機械特性を両立することが困難となっていた。
【0015】
そこで、本発明者は、スリーブの圧縮態様を鋭意検討した結果、ケーブル接続構造における電気特性および機械特性が、スリーブ内に導体が占める占積率に依存することが分かった。その結果、ケーブル接続構造における電気特性および機械特性の両方を向上させることができる構成を見出した。
【0016】
以下の本開示は、本発明者が見出した上記知見に基づくものである。
【0017】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0018】
[1]本開示の一態様に係るケーブル接続構造は、
導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルと、
中空部を有する金属管として構成され、前記中空部内で前記一対の電力ケーブルの前記導体を接続するスリーブと、
を有し、
前記スリーブは、当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを有し、
前記スリーブの前記中空部の断面積に対する、前記導体が占める面積の占積率は、前記複数のインデントのうち少なくとも1つを含む前記スリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満である。
この構成によれば、ケーブル接続構造の電気特性および機械特性の両方を向上させることができる。
【0019】
[2]上記[1]に記載のケーブル接続構造において、
前記スリーブは、当該スリーブの軸方向に直交する断面が多角形となるように圧縮された複数の外周側面を有し、
前記複数のインデントのそれぞれは、前記複数の外周側面のそれぞれから前記スリーブの径方向に凹んでいる。
この構成によれば、スリーブの軸方向の長さを短くしつつ、ケーブル接続構造の電気特性および機械特性の両方を安定的に向上させることが可能となる。
【0020】
[3]上記[2]に記載のケーブル接続構造において、
前記複数のインデントのうち2以上のインデントは、前記スリーブの軸方向に互いに異なる位置に配置され、且つ、前記複数の外周側面のうち互いに異なる外周側面に設けられている。
この構成によれば、一対の導体の接続部における接触抵抗を安定的に低減することが可能となる。
【0021】
[4]上記[2]または[3]に記載のケーブル接続構造において、
前記スリーブは、前記断面が六角形となるように圧縮され、
前記複数のインデントは、少なくとも1つのインデントを含む複数の異なる断面を、前記スリーブの軸方向に重ねて見たときに、前記スリーブの中心軸の周りに2回対称、3回対称または6回対称に配置されている。
この構成によれば、ケーブル接続構造の電気特性および機械特性をより安定的に向上させることができる。
【0022】
なお、ここでいう「n回対称」とは、nを2以上の整数としたときに、中心軸の周りに(360/n)°回転させると自らと重なる回転対称性を意味する。
【0023】
[5]上記[2]から[4]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
前記スリーブは、前記断面が六角形となるように圧縮され、
前記複数のインデントは、前記スリーブの軸方向に直交する同一の断面内において、前記スリーブの中心軸の周りに2回対称または3回対称に配置されている。
この構成は、占積率を高くしたい場合に有効である。
【0024】
[6]上記[1]から[5]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造において、
前記複数の外周側面のそれぞれは、前記スリーブの軸方向に平行な平坦面よりも前記スリーブの径方向の外側に向けて膨らんでいる。
この構成によれば、最適な占積率を安定的に得ることができる。
【0025】
[7]本開示の他の態様に係る連結電力ケーブルは、
上記[1]から[6]のいずれか1つに記載のケーブル接続構造を少なくとも1つ備える。
この構成によれば、ケーブル接続構造の電気特性および機械特性の両方を向上させることができる。
【0026】
[8]本開示の更に他の態様に係るケーブル接続構造の製造方法は、
導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルを準備する工程と、
中空部を有する金属管として構成されたスリーブにより、前記一対の電力ケーブルの前記導体を接続する工程と、
を有し、
前記導体を接続する工程は、
当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを形成する工程を有し、
前記複数のインデントを形成する工程では、
前記スリーブの前記中空部の断面積に対する、前記導体が占める面積の占積率を、前記複数のインデントのうち少なくとも1つを含む前記スリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満とする。
この構成によれば、ケーブル接続構造の電気特性および機械特性の両方を向上させることができる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
<本開示の一実施形態>
(1)連結電力ケーブルおよびケーブル接続構造
本開示の一実施形態に係る連結電力ケーブル10およびケーブル接続構造(ケーブル接続部)20の概略構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0029】
なお、
図2では、下側半分の構成が省略されている。
図2において、電力ケーブルは、段剥ぎされた側面が示されている。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の連結電力ケーブル10は、例えば、複数の電力ケーブル100と、少なくとも1つのケーブル接続構造20と、を有している。
【0031】
なお、以下において、電力ケーブル100の「軸方向」とは、電力ケーブル100の中心軸に沿った方向のことをいう。電力ケーブル100の「径方向」とは、電力ケーブル100の中心軸から外周に向かう方向のことをいう。電力ケーブル100の「周方向」とは、電力ケーブル100の外周に沿った方向のことをいう。
【0032】
なお、筒状のスリーブ200などについても、電力ケーブル100と同様の用語を用いることができる。
【0033】
[電力ケーブル]
図1に示すように、電力ケーブル100は、例えば、高電圧の送電ケーブルである固体絶縁ケーブル(CEケーブルまたはCVケーブル:Crosslinked polyethylene(PE) insulated PE or PVC sheathed cable、XLPEケーブルともいう)として構成されている。
【0034】
電力ケーブル100は、例えば、水中ケーブル(海中ケーブル、海底ケーブルなど)として構成されている。電力ケーブル100は、例えば、導体110、ケーブル内部半導電層120、ケーブル絶縁層130、ケーブル外部半導電層140、吸水層(不図示)、ケーブル金属遮蔽層150、およびケーブル外周構造170を、導体110の中心軸から電力ケーブル100の外周に向けてこの順で有している。水中ケーブルでのケーブル外周構造170は、例えば、ケーブル金属遮蔽層150に近い領域から外周に向けて、防食層、座床ヤーン層、鉄線外装(鎧装)、およびヤーン層を有している。なお、水中ケーブルでのケーブル金属遮蔽層150は、例えば、金属被である。
【0035】
以下、説明簡略化のため、ケーブル金属遮蔽層150よりも外側は、ケーブルシース160であるものとして説明する。
【0036】
導体110は、例えば、複数の導体素線112を有している。それぞれの導体素線層114において、複数の導体素線112は、例えば、内側の層の外周面に沿って、螺旋状に撚り合わせて設けられている。
【0037】
一対の電力ケーブル100のうちの少なくとも一方における導体素線112は、例えば、酸化被膜を外周に有している。具体的には、本実施形態では、両方の電力ケーブル100において、導体素線112は、例えば、アルミまたはアルミ合金を含み、アルミ酸化被膜を外周に有している。
【0038】
図2に示すように、電力ケーブル100は、導体110の先端から反対に向けて段階的に剥がされている(いわゆる“段剥ぎ”されている)。すなわち、導体110、ケーブル内部半導電層120、ケーブル絶縁層130、ケーブル外部半導電層140、ケーブル金属遮蔽層150、およびケーブルシース160は、導体110の先端から反対に向けてこの順で露出している。以下、段剥ぎされた各部を「露出部」ということがある。このような構成により、電力ケーブル100同士を中心軸から外周に向けて順番に接続することができる。
【0039】
図2に示すように、電力ケーブル100は、複数設けられている。複数の電力ケーブル100のうち、一対の電力ケーブル100は、互いの導体110の軸を一致させて突き合わせられている。なお、以下において、当該一対の電力ケーブル100のうちの1つの電力ケーブル100を「第1電力ケーブル100a」といい、他の1つの電力ケーブル100を「第2電力ケーブル100b」ということがある。
【0040】
[ケーブル接続構造]
図2に示すように、ケーブル接続構造20は、例えば、一対の電力ケーブル100を接続するよう構成されている。具体的には、ケーブル接続構造20は、例えば、上述した一対の電力ケーブル100と、スリーブ(導体接続管)200と、スリーブカバー290と、絶縁筒(ゴム接続筒、ゴムユニット、絶縁ユニット)300と、保護管(金属管)400と、充填材480と、を有している。
【0041】
(スリーブ)
スリーブ200は、例えば、一対の電力ケーブル100の導体110同士を接続するよう、導体110間の接続点を囲むように設けられている。ここでいう「接続点(接続部)」とは、一対の導体110が互いの軸を突き合わせて一対の導体110の先端が近接した点(部分、箇所)のことを意味する。
【0042】
本実施形態では、スリーブ200は、例えば、複数のインデント240を有している。当該スリーブ200については詳細を後述する。
【0043】
(スリーブカバー)
スリーブカバー290は、例えば、筒状に構成され、スリーブ200の外周を囲むように設けられている。スリーブカバー290は、該スリーブカバー290の軸方向の端部に、スリーブカバー290の径方向に突出した係止部292を有している。係止部292は、一対の電力ケーブル100のそれぞれにおいて露出したケーブル絶縁層130に食い込んでいる。これにより、一対の電力ケーブル100においてケーブル絶縁層130のシュリンクバックを抑制することができる。
【0044】
(絶縁筒)
絶縁筒300は、例えば、絶縁性の筒状部材として構成され、スリーブ200の外周(スリーブカバー290の外周)と一対の電力ケーブル100のそれぞれの一部外周とを覆うように設けられている。
【0045】
絶縁筒300は、例えば、いわゆる常温収縮型として構成されている。すなわち、絶縁筒300は、一体としてモールドされた弾性材料を有し、常温で弾性的に収縮して電力ケーブル100の接続部分に密着するようになっている。
【0046】
絶縁筒300は、例えば、スリーブ200の周囲の絶縁性を保ちつつ、スリーブ200の周囲の電界を緩和するよう構成されている。具体的には、絶縁筒300は、例えば、内部半導電層320と、絶縁層340と、ストレスコーン部360と、外部半導電層380と、を有している。
【0047】
内部半導電層320は、スリーブ200の外周を覆うように筒状に構成されている。内部半導電層320は、例えば、半導電性を有するゴムを含んでいる。内部半導電層320は、スリーブ200と等電位となっている。
【0048】
絶縁層340は、内部半導電層320の外周を覆うように設けられている。絶縁層340は、例えば、絶縁性を有するゴムを含んでいる。
【0049】
ストレスコーン部360は、半導電性を有するゴムを含んでいる。ストレスコーン部360は、絶縁層340の軸方向の両端のそれぞれに近い領域に設けられ、絶縁層340の軸方向の中央に向けて拡径した円錐状の内周面を有している。ストレスコーン部360の内周面の一部は、段剥ぎされた電力ケーブル100のケーブル外部半導電層140に接している。
【0050】
外部半導電層380は、絶縁層340の外周を覆うように設けられている。外部半導電層380は、半導電性を有するゴムを含んでいる。
【0051】
このような絶縁筒300の構成により、スリーブ200の周囲の電界を緩和することができる。
【0052】
(保護管)
保護管400は、絶縁筒300の外周と一対の電力ケーブル100のそれぞれの一部外周とを覆うように設けられ、これらを保護するよう構成されている。保護管400は、例えば、金属からなっている。保護管400を構成する金属としては、銅、鉛が挙げられる。
【0053】
なお、保護管400の軸方向の両端のそれぞれと、電力ケーブル100との間は、所定のシール材(不図示)により封止されている。
【0054】
(充填材)
充填材480は、保護管400内において、絶縁筒300および保護管400の間に充填されている。充填材480としては、例えば、いわゆる防水混和物が挙げられる。これにより、保護管400内への水分の浸入を抑制することができる。
【0055】
(2)スリーブ
次に、本開示の一実施形態に係るスリーブ200について、
図3および
図4を参照して説明する。
【0056】
図3は、側面図、正面図、X-X’線断面図、Y-Y’線断面図、Z-Z’線断面図を有している。
図3および
図4において、導体110は省略されている。
【0057】
図3に示すように、スリーブ200は、例えば、中空部210を有する金属管として構成されている。スリーブ200の中空部210内には、接続点を含む一対の導体110の露出部が挿入され、当該一対の導体110が接続されている。スリーブ200の金属としては、例えば、アルミが挙げられる。
【0058】
なお、スリーブ200は、例えば、当該スリーブ200の軸方向の中央に、中空部210を塞ぐ隔壁を有していてもよい。これにより、導体110を通った水の伝播を抑制することができる。
【0059】
本実施形態のスリーブ200は、例えば、スリーブ200の径方向に凹んだ複数のインデント240を有している。すなわち、インデント240は、例えば、局所的にスリーブ200の径方向に導体110を圧縮している。
【0060】
インデント240は、スリーブ200の内周においてスリーブ200の中心軸に向けて突出した凸面242を形成している。スリーブ200の外周から見たインデント240の穴形状は、例えば、円形である。スリーブ200の内周におけるインデント240の凸面242は、スリーブ200の中心軸に向けて凸の球面状に湾曲している。
【0061】
このような構成において、インデント240の凸面242が導体素線112を圧縮したり、複数の導体素線112が相互に圧縮したりすることで、各導体素線112が有する酸化被膜の少なくとも一部が破られている。
【0062】
ここで、本実施形態では、スリーブ200内に導体110が占める占積率が最適化されている。
【0063】
具体的には、スリーブ200の中空部210の断面積Aに対する、導体110が占める面積Bの占積率B/Aは、複数のインデント240のうち少なくとも1つを含むスリーブ200の軸方向に直交する断面を見たときに、例えば、90%以上99%未満である。
【0064】
占積率B/Aを90%以上とすることで、導体素線112の酸化被膜を破ることができる。一方で、占積率B/Aを99%未満とすることで、スリーブ200の過度な圧縮に起因したスリーブ200の破断を抑制することができる。その結果、ケーブル接続構造20の電気特性および機械特性の両方を向上させることができる。
【0065】
本実施形態では、スリーブ200は、上述のような占積率B/Aを実現するため、例えば、いわゆる多角形圧縮と、インデント圧縮と、の両方が施されている。
【0066】
すなわち、スリーブ200は、例えば、当該スリーブ200の軸方向に直交する断面が多角形となるように圧縮された複数の外周側面220を有している。ここでいう「外周側面220」は、スリーブ200の軸方向に直交する断面を見たときに多角形の一辺を構成する側面のことを意味する。複数のインデント240のそれぞれは、例えば、複数の外周側面220のそれぞれからスリーブ200の径方向に凹んでいる。これにより、ケーブル接続構造20の電気特性および機械特性の両方を安定的に向上させることができる。
【0067】
本実施形態では、スリーブ200は、例えば、当該スリーブ200の軸方向に直交する断面が六角形となるように圧縮されている。これにより、各外周側面220をバランスよく圧縮することができる。その結果、導体110を中心軸に向けて均一に潰すことができる。
【0068】
本実施形態では、2以上のインデント240は、スリーブ200の軸方向に互いに異なる位置に配置され、且つ、互いに異なる外周側面220に設けられている。これにより、隣り合う2以上のインデント240の間における凹凸を充分に形成することができる。
【0069】
本実施形態では、複数のインデント240は、例えば、少なくとも1つのインデント240を含む複数の異なる断面を、スリーブ200の軸方向に重ねて見たときに、スリーブ200の中心軸の周りに3回対称に配置されている。これにより、スリーブ200の軸方向の全体にわたってバランスよく複数のインデント240を分布させることができる。
【0070】
本実施形態では、複数のインデント240は、例えば、互いに異なる導体素線112を圧縮している。これにより、接触抵抗の低減と、機械的強度の向上と、を両立することができる。
【0071】
より具体的な構成としては、スリーブ200は、例えば、第1外周側面220a、第2外周側面220b、第3外周側面220c、第4外周側面220d、第5外周側面220e、および第6外周側面220fを中心軸の周りに有している。
【0072】
スリーブ200は、例えば、第1インデント240a、第2インデント240bおよび第3インデント240cを有している。
【0073】
第1インデント240aは、X-X’線断面を中心とした位置に配置されている。第1インデント240aは、例えば、第1外周側面220aに設けられている。第1インデント240aは、X-X’線断面内において、例えば、1つだけ設けられている。
【0074】
第2インデント240bは、スリーブ200の軸方向に第1インデント240aと異なる位置に配置されている。第2インデント240bは、例えば、Y-Y’線断面を中心とした位置に配置されている。第2インデント240bは、例えば、第3外周側面220cに設けられている。第2インデント240bは、Y-Y’線断面内において、例えば、1つだけ設けられている。
【0075】
第3インデント240cは、スリーブ200の軸方向に第1インデント240aおよび第2インデント240bと異なる位置に配置されている。第3インデント240cは、例えば、Z-Z’線断面を中心とした位置に配置されている。第3インデント240cは、例えば、第5外周側面220eに設けられている。第3インデント240cは、Z-Z’線断面内において、例えば、1つだけ設けられている。
【0076】
第1インデント240a、第2インデント240bおよび第3インデント240cは、スリーブ200の軸方向に均等な間隔で設けられている。
【0077】
第1インデント240aの大きさ(穴直径、凹み深さ)、第2インデント240bの大きさおよび第3インデント240cの大きさは、互いに等しい。
【0078】
第1インデント240a、第2インデント240bおよび第3インデント240cを含むセットは、例えば、2セット設けられている。当該2セットは、スリーブ200の軸方向の中央を挟んで対称に配置されている。
【0079】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、複数の外周側面220のそれぞれは、例えば、スリーブ200の軸方向に平行な平坦面FPよりもスリーブ200の径方向の外側に向けて膨らんでいる。これにより、上述の占積率B/Aを安定的に得ることができる。
【0080】
以上のような構成により、ケーブル接続構造20におけるケーブル接続構造20の電気特性および機械特性の両方を安定的に向上させることができる。
【0081】
(3)ケーブル接続構造の製造方法(連結電力ケーブルの製造方法、ケーブル接続方法)
次に、
図1~
図7を参照し、本実施形態に係るケーブル接続構造の製造方法について説明する。なお、
図6において、導体110は省略されている。
【0082】
図5に示すように、本実施形態のケーブル接続構造20の製造方法は、例えば、準備工程S10と、導体接続工程S20と、絶縁筒配置工程S30と、保護管配置工程S40と、充填工程S50と、を有している。
【0083】
(S10:準備工程)
まず、ケーブル接続構造20を構成する一対の電力ケーブル100、スリーブ200、スリーブカバー290、絶縁筒300および保護管400を準備する。
【0084】
例えば、工場において、事前に、絶縁筒300の中空部内に半割れ状パイプ(不図示)を挿入しておく。これにより、絶縁筒300を拡径しておく。
【0085】
次に、例えば、電力ケーブル100の布設現場において、一対の電力ケーブル100のそれぞれの一端から軸方向に段階的に剥がす。これにより、導体110、ケーブル絶縁層130、ケーブル外部半導電層140およびケーブルシース160を、電力ケーブル100の先端からこの順で露出させる。
【0086】
ケーブル接続構造20を構成する各部材を準備したら、絶縁筒300および保護管400のそれぞれを電力ケーブル100に通し、絶縁筒300および保護管400のそれぞれを電力ケーブル100の先端から離れた所定位置に移動させておく。
【0087】
(S20:導体接続工程)
準備工程S10が完了したら、一対の電力ケーブル100を、スリーブ200内で互いの導体110の軸を一致させて突き合わせる。一対の電力ケーブル100を突き合わせたら、スリーブ200を圧縮することにより、一対の電力ケーブル100の導体110を接続する。
【0088】
本実施形態では、スリーブ200の径方向に凹んだ複数のインデント240を形成する。このとき、スリーブ200内に導体110が占める占積率B/Aを、複数のインデント240のうち少なくとも1つを含むスリーブ200の軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満とする。
【0089】
図5~
図7に示すように、本実施形態では、導体接続工程S20は、上述のような占積率B/Aを実現するため、例えば、多角形圧縮工程S22と、インデント圧縮工程S24と、を有してる。
【0090】
本実施形態では、インデント圧縮工程S24は、例えば、多角形圧縮工程S22の後に行う。これにより、離型不良を回避することができる。本実施形態のインデント圧縮工程S24では、多角形圧縮工程S22用の圧縮機を用い、後述のように状況に応じて、下側ダイス820および上側ダイス840のいずれかと、インデント用ダイス860と、を入れ替える。
【0091】
(S22:多角形圧縮工程)
まず、
図6の左図に示すように、多角形圧縮工程S22では、スリーブ200の軸方向に直交する断面が多角形となるようにスリーブ200を圧縮する。これにより、複数の外周側面220を形成する。
【0092】
具体的には、鉛直下に配置された下側ダイス820と、鉛直上に配置された上側ダイス840との間に、円筒状のスリーブ200を配置する。下側ダイス820および上側ダイス840は、多角形のスリーブ200の外周側面220を形成する内周面を有している。これらの間にスリーブ200を配置したら、下側ダイス820と上側ダイス840とにより、断面が六角形となるようにスリーブ200を圧縮する。
【0093】
(S24:インデント圧縮工程)
上述の多角形圧縮工程S22が完了したら、
図6の中央図に示すように、上側ダイス840をインデント用ダイス860に取り換える。インデント用ダイス860は、例えば、インデント240を形成する突起部862を内周中央に有している。インデント用ダイス860のうち、突起部862以外の部分は、スリーブ200に接触しないように構成されている。
【0094】
インデント用ダイス860への取り換えが完了したら、
図6の右図に示すように、インデント圧縮工程S24において、下側ダイス820とインデント用ダイス860とにより、第1インデント240aを、第1外周側面220aからスリーブ200の径方向に凹ませる。
【0095】
このとき、すでに断面が六角形となったスリーブ200が、下側ダイス820の内周面に対して固定されている。これにより、インデント240の圧縮時におけるスリーブ200の周方向の回転ずれを抑制することができる。
【0096】
第1インデント240aの圧縮が完了したら、
図7の左図に示すように、上側ダイス840をもとに戻し、下側ダイス820をインデント用ダイス860に取り換える。このとき、上側ダイス840とインデント用ダイス860との間において、スリーブ200を周方向に回転させずに、スリーブ200を軸方向に所定距離移動させる。
【0097】
さらに、
図7の中央図に示すように、圧縮機をスリーブ200の中心軸の周りに60°回転させる。これにより、インデント用ダイス860の突起部862を、第3外周側面220cと対向させる。このようにインデント用ダイス860を入れ替えつつ、圧縮機を回転させることで、重量が重い圧縮機を回転させる角度を小さくすることができる。
【0098】
次に、
図7の右図に示すように、上側ダイス840とインデント用ダイス860とにより、第2インデント240bを、第3外周側面220cからスリーブ200の径方向に凹ませる。
【0099】
第2インデント240bの圧縮が完了したら、圧縮機をスリーブ200の中心軸の周りに120°回転させる(不図示)。上側ダイス840とインデント用ダイス860との間において、スリーブ200を周方向に回転させずに、スリーブ200を軸方向に所定距離移動させる。この状態で、第3インデント240cを、第5外周側面220eからスリーブ200の径方向に凹ませる。
【0100】
このようにして、第1インデント240a、第2インデント240bおよび第3インデント240cを含む第1のセットが形成される。スリーブ200の軸方向の中央を挟んで対称に配置された第2のセットにおけるインデント圧縮工程は、上述の第1のセットのそれと同様に行えばよい。
【0101】
以上のインデント圧縮工程S24により、複数のインデント240のうち2以上のインデント240が、スリーブ200の軸方向に互いに異なる位置に配置され、且つ、複数の外周側面220のうち互いに異なる外周側面220に形成される。
【0102】
少なくとも1つのインデント240を含む複数の異なる断面を、スリーブ200の軸方向に重ねて見たときに、複数のインデント240がスリーブ200の中心軸の周りに3回対称に配置される。
【0103】
上述のようにインデント圧縮工程S24を多角形圧縮工程S22の後に行うことで、複数の外周側面220のそれぞれが、スリーブ200の軸方向に平行な平坦面FPよりもスリーブ200の径方向の外側に向けて膨らむこととなる。
【0104】
多角形圧縮工程S22およびインデント圧縮工程S24が完了したら、スリーブ200の外周を覆うようにスリーブカバー290を被せる。なお、インデント240の凹み内に、導電性の充填材(不図示)を充填してもよい。
【0105】
(S30:絶縁筒配置工程)
導体接続工程S20が完了したら、スリーブ200の外周および一対の電力ケーブル100のそれぞれの一部外周を覆うように、絶縁筒300を配置する。具体的には、インナーコアにより拡径された絶縁筒300を、スリーブ200と重なる位置に移動させる。絶縁筒300を所定位置に配置したら、半割れ状パイプを徐々に抜いていき、絶縁筒300を軸方向に徐々に縮径させていく。
【0106】
(S40:保護管配置工程)
絶縁筒300を配置したら、絶縁筒300の外周および一対の電力ケーブル100のそれぞれの一部外周を覆うように保護管400を配置する。保護管400を配置したら、保護管400の軸方向の両端のそれぞれを封止する。
【0107】
(S50:充填材充填工程)
保護管配置工程S40が完了したら、保護管400の注入口から保護管400内に充填材480を注入し、絶縁筒300と保護管400との間に充填材480を充填する。充填材480を充填したら、所定の条件で充填材480を硬化させる。
【0108】
以上により、本実施形態のケーブル接続構造20が製造される。
【0109】
(4)本実施形態のまとめ
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0110】
(a)本実施形態では、スリーブ200内に導体110が占める占積率B/Aは、複数のインデント240のうち少なくとも1つを含むスリーブ200の軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満である。
【0111】
占積率B/Aを90%以上とすることで、インデント240の凸面242が導体素線112を圧縮したり、複数の導体素線112が相互に圧縮したりすることができる。このような適度な圧縮により、各導体素線112が有する酸化被膜の少なくとも一部を破ることができる。その結果、一対の導体110の接続部における接触抵抗を低減することができる。
【0112】
一方で、占積率B/Aを99%未満とすることで、スリーブ200の過度な圧縮に起因して、インデント240においてスリーブ200の厚さが過度に薄くなることを抑制することができる。これにより、引張時のスリーブ200の破断を抑制することができる。その結果、ケーブル接続構造20における引張荷重(スリーブ200が破断するときの引張荷重)の低下を抑制することができる。
【0113】
このように、本実施形態によれば、ケーブル接続構造20の電気特性および機械特性を向上させることができる。
【0114】
(b)本実施形態では、スリーブ200は、当該スリーブ200の軸方向に直交する断面が多角形となるように圧縮された複数の外周側面220を有している。このように、スリーブ200の全体を断面多角形に圧縮することで、スリーブ200内で複数の導体素線112を均等に密接させることができる。
【0115】
この状態で、複数のインデント240のそれぞれは、複数の外周側面220のそれぞれからスリーブ200の径方向に凹んでいる。これにより、インデント240の数を少なくしても、導体素線112の酸化被膜を確実に破ることができる。
【0116】
その結果、スリーブ200の軸方向の長さを短くしつつ、上述の最適な占積率B/Aを安定的に得ることができる。すなわち、ケーブル接続構造20の電気特性および機械特性の両方を安定的に向上させることが可能となる。
【0117】
(c)本実施形態では、2以上のインデント240は、スリーブ200の軸方向に互いに異なる位置に配置され、且つ、互いに異なる外周側面220に設けられている。これにより、隣り合う2以上のインデント240が過度に近接することを抑制することができる。これらのインデント240の間において、スリーブ200の内周面の凹凸を充分に形成することができる。すなわち、インデント240の連続配置に起因した、スリーブ200と導体110との接触面積の減少を抑制することができる。その結果、一対の導体110の接続部における接触抵抗を安定的に低減することが可能となる。
【0118】
(d)本実施形態では、複数のインデント240は、少なくとも1つのインデント240を含む複数の異なる断面を、スリーブ200の軸方向に重ねて見たときに、スリーブ200の中心軸の周りに3回対称に配置されている。すなわち、スリーブ200の軸方向に異なる位置に配置された複数のインデント240により、スリーブ200の中心軸を中心としてバランスよく導体110を圧縮することができる。
【0119】
これにより、スリーブ200と導体110との導通箇所と、導体110へのインデント240のアンカー箇所とを、スリーブ200の軸方向の全体にわたってバランスよく分布させることができる。その結果、ケーブル接続構造20の電気特性および機械特性をより安定的に向上させることができる。
【0120】
(e)本実施形態では、複数のインデント240は、互いに異なる導体素線112を圧縮している。つまり、複数のインデント240により、互いに異なる導体素線112の酸化被膜を破ることができる。その結果、スリーブ200と導体110との接触抵抗を安定的に低減することができる。
【0121】
また、スリーブ200の内周面に複雑に入り組んだ凹凸を形成することができる。これにより、スリーブ200による導体110の引留力を向上させることができる。
【0122】
(f)本実施形態では、インデント圧縮工程S24は、多角形圧縮工程S22の後に行う。
【0123】
ここで、インデント圧縮工程S24を多角形圧縮工程S22と同時に行う場合では、ダイス内で、インデント240の圧縮に起因してスリーブ200の外形が広がる。このため、ダイス内の多角形の角部を形成する部分において、スリーブ200の充填率が相対的に高くなる。その結果、スリーブ200の離型が困難となる。
【0124】
これに対し、本実施形態では、インデント圧縮工程S24を多角形圧縮工程S22の後に行うことで、インデント240の圧縮に起因したスリーブ200の外形広がりを許容することができる。これにより、離型不良を回避することができる。
【0125】
また、本実施形態では、このような工程順により、複数の外周側面220のそれぞれを、スリーブ200の軸方向に平行な平坦面FPよりもスリーブ200の径方向の外側に向けて膨らませることができる。すなわち、インデント240による導体素線112への過剰な圧縮応力を、外周側面220からスリーブ200の径方向の外側に向けて逃がすことができる。これにより、上述の最適な占積率B/Aを安定的に得ることができる。
【0126】
(g)本実施形態のインデント圧縮工程S24では、多角形圧縮工程S22用の圧縮機を用い、下側ダイス820および上側ダイス840のいずれかと、インデント用ダイス860と、を入れ替える。
【0127】
ここで、断面円形のスリーブ200においてインデント圧縮工程を行う場合には、スリーブ200の直径に応じた専用のインデント圧縮装置が必要となる。このようなインデント圧縮装置を用いる場合では、当該装置の組み立て、操作方法、及び施工方法において、高度な熟練が必要となる。
【0128】
これに対し、本実施形態では、インデント用ダイス860を準備しておけば、多角形圧縮工程S22用に市販されている圧縮機を用いることができる。これにより、専用のインデント圧縮装置を不要とし、コストを低減することができる。さらには、高度な熟練を不要とすることができる。
【0129】
(h)本実施形態のインデント圧縮工程S24では、すでに断面が六角形となったスリーブ200が下側ダイス820および上側ダイス840のいずれかの内周面に対して固定された状態で、インデント用ダイス860により、スリーブ200にインデント240を形成する。これにより、インデント240の圧縮時におけるスリーブ200の周方向の回転ずれを抑制することができる。つまり、スリーブ200の軸方向の位置と、外周側面220の位置とを決めるだけで、インデント240の位置ずれを生じさせずに、インデント240を安定的に圧縮することができる。これにより、従来の六角圧縮工程を知る経験者は、特殊な訓練を必要とせずに、工程を容易に理解することができ、作業を確実に行うことが可能となる。
【0130】
(5)一実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0131】
<変形例1>
図8に示すように、変形例1では、複数のインデント240は、例えば、スリーブ200の軸方向に直交する同一の断面内において、スリーブ200の中心軸の周りに2回対称に配置されている。
【0132】
変形例1では、複数のインデント240は、例えば、少なくとも1つのインデント240を含む複数の異なる断面を、スリーブ200の軸方向に重ねて見たときに、スリーブ200の中心軸の周りに3回対称に配置されている。変形例1では、複数のインデント240が互いに同一の断面形状を有しているため、当該重ね合わせ断面を見たときの複数のインデント240の配置は、2回対称または6回対称と考えることもできる。
【0133】
変形例1によれば、一対のインデント240による圧縮応力をスリーブ200の中心軸で交差させることができる。これにより、一対のインデント240で挟まれた部分の導体110を確実に圧縮することができる。つまり、変形例1は、上述の実施形態よりも占積率B/Aを高くしたい場合に有効である。変形例1では、上述の実施形態よりも導体110が圧縮されることで、導体110の潰れを大きくし、スリーブ200と導体110との接触面積を増やすことができる。その結果、ケーブル接続構造20の電気特性および機械特性を安定的に向上させることができる。
【0134】
<変形例2>
図9に示すように、変形例2では、複数のインデント240は、例えば、スリーブ200の軸方向に直交する同一の断面内において、スリーブ200の中心軸の周りに3回対称に配置されている。
【0135】
変形例2では、複数のインデント240は、例えば、少なくとも1つのインデント240を含む複数の異なる断面を、スリーブ200の軸方向に重ねて見たときに、スリーブ200の中心軸の周りに2回対称に配置されている。なお、変形例2では、複数のインデント240が互いに同一の断面形状を有しているため、当該重ね合わせ断面を見たときの複数のインデント240の配置は、3回対称または6回対称と考えることもできる。
【0136】
変形例2によれば、3つのインデント240による圧縮応力をスリーブ200の中心軸で交差させることができる。これにより、3つのインデント240で挟まれた部分の導体110を確実に圧縮することができる。つまり、変形例2は、上述の実施形態および変形例1よりも占積率B/Aを更に高くしたい場合に有効である。変形例2では、変形例1よりも更に導体110が圧縮されることで、ケーブル接続構造20の電気特性および機械特性を安定的により安定的に向上させることができる。
【0137】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0138】
上述の実施形態では、一例として、電力ケーブル100が水中ケーブルとして構成されている場合について説明したが、電力ケーブル100は、陸上ケーブルまたは地中ケーブルとして構成されていてもよい。
【0139】
上述の実施形態では、導体素線112が、アルミまたはアルミ合金を含み、アルミ酸化被膜を外周に有している場合について説明したが、導体110は、いわゆる素線絶縁導体として構成されていてもよい。すなわち、導体素線112は、例えば、銅または銅合金を含み、絶縁被覆を外周に有していてもよい。
【0140】
上述の実施形態では、導体110が円筒状の導体素線層114を有しているよう示したが、導体110は、いわゆる分割導体であってもよい。すなわち、導体素線層114は、例えば、扇形状などの異形層であってもよい。
【0141】
上述の実施形態では、両方の電力ケーブル100における導体素線112が酸化被膜または絶縁被膜を外周に有している場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。一対の電力ケーブル100のうちの少なくとも一方における導体素線112が、酸化被膜または絶縁被膜を外周に有していればよい。
【0142】
上述の実施形態では、第1インデント240aの大きさ(穴直径、凹み深さ)、第2インデント240bの大きさおよび第3インデント240cの大きさが、互いに等しい場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。複数のインデント240の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0143】
上述の実施形態では、コンパウンドの適用について言及しなかったが、本開示においてコンパウンドを適用してもよい。例えば、導体110およびスリーブ200がアルミまたはアルミ合金を含む場合には、スリーブ200の内周面と導体110の外周面との間には、鉱物を含むコンパウンドが設けられていてもよい。これにより、スリーブ200内への酸素の侵入を抑制することができ、アルミの酸化皮膜の再形成を抑制することができる。その結果、電気抵抗を安定的に低減することができる。
【0144】
上述の実施形態では、ケーブル接続構造20が、一体としてモールドされたゴムからなる絶縁筒300を有する場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。ケーブル接続構造20がいわゆる工場ジョイントとして構成され、内部半導電層320、絶縁層340、ストレスコーン部360および外部半導電層380が個別に構成されていてもよい。
【0145】
上述の実施形態では、連結電力ケーブル10が有する1つのケーブル接続構造20について説明したが、連結電力ケーブル10は複数のケーブル接続構造20を有していてもよい。
【0146】
<付記>
以下、本開示の態様を付記する。
【0147】
(付記1)
導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルと、
中空部を有する金属管として構成され、前記中空部内で前記一対の電力ケーブルの前記導体を接続するスリーブと、
を有し、
前記スリーブは、当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを有し、
前記スリーブの前記中空部の断面積に対する、前記導体が占める面積の占積率は、前記複数のインデントのうち少なくとも1つを含む前記スリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満である
ケーブル接続構造。
【0148】
(付記2)
前記スリーブは、当該スリーブの軸方向に直交する断面が多角形となるように圧縮された複数の外周側面を有し、
前記複数のインデントのそれぞれは、前記複数の外周側面のそれぞれから前記スリーブの径方向に凹んでいる
付記1に記載のケーブル接続構造。
【0149】
(付記3)
前記複数のインデントのうち2以上のインデントは、前記スリーブの軸方向に互いに異なる位置に配置され、且つ、前記複数の外周側面のうち互いに異なる外周側面に設けられている
付記2に記載のケーブル接続構造。
【0150】
(付記4)
前記スリーブは、前記断面が六角形となるように圧縮され、
前記複数のインデントは、少なくとも1つのインデントを含む複数の異なる断面を、前記スリーブの軸方向に重ねて見たときに、前記スリーブの中心軸の周りに2回対称、3回対称または6回対称に配置されている
付記2または付記3に記載のケーブル接続構造。
【0151】
(付記5)
前記スリーブは、前記断面が六角形となるように圧縮され、
前記複数のインデントは、前記スリーブの軸方向に直交する同一の断面内において、前記スリーブの中心軸の周りに2回対称または3回対称に配置されている
付記2から付記4のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0152】
(付記6)
前記複数の外周側面のそれぞれは、前記スリーブの軸方向に平行な平坦面よりも前記スリーブの径方向の外側に向けて膨らんでいる
付記2から付記5のいずれか1つに記載のケーブル接続構造。
【0153】
(付記7)
付記1から付記6のいずれか1つに記載のケーブル接続構造を少なくとも1つ備える
連結電力ケーブル。
【0154】
(付記8)
導体をそれぞれ有する一対の電力ケーブルを準備する工程と、
中空部を有する金属管として構成されたスリーブにより、前記一対の電力ケーブルの前記導体を接続する工程と、
を有し、
前記導体を接続する工程は、
当該スリーブの径方向に凹んだ複数のインデントを形成する工程を有し、
前記複数のインデントを形成する工程では、
前記スリーブの前記中空部の断面積に対する、前記導体が占める面積の占積率を、前記複数のインデントのうち少なくとも1つを含む前記スリーブの軸方向に直交する断面を見たときに、90%以上99%未満とする
ケーブル接続構造の製造方法。
【0155】
(付記9)
前記導体を接続する工程は、
当該スリーブの軸方向に直交する断面が多角形となるように前記スリーブを圧縮することで、複数の外周側面を形成する工程を有し、
前記複数のインデントを形成する工程では、
前記複数のインデントのそれぞれを、前記複数の外周側面のそれぞれから前記スリーブの径方向に凹ませる
付記8に記載のケーブル接続構造の製造方法。
【0156】
(付記10)
前記複数のインデントを形成する工程は、前記多角形となるように前記スリーブを圧縮する工程の後に行う
付記8または付記9に記載のケーブル接続構造の製造方法。
【符号の説明】
【0157】
10 連結電力ケーブル
20 ケーブル接続構造
100 電力ケーブル
100a 第1電力ケーブル
100b 第2電力ケーブル
110 導体
112 導体素線
114 導体素線層
120 ケーブル内部半導電層
130 ケーブル絶縁層
140 ケーブル外部半導電層
150 ケーブル金属遮蔽層
160 ケーブルシース
170 ケーブル外周構造
200 スリーブ
210 中空部
220 外周側面
220a 第1外周側面
220b 第2外周側面
220c 第3外周側面
220d 第4外周側面
220e 第5外周側面
220f 第6外周側面
240 インデント
240a 第1インデント
240b 第2インデント
240c 第3インデント
242 凸面
290 スリーブカバー
292 係止部
300 絶縁筒
320 内部半導電層
340 絶縁層
360 ストレスコーン部
380 外部半導電層
400 保護管
480 充填材
820 下側ダイス
840 上側ダイス
860 インデント用ダイス
862 突起部