(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062012
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】織物
(51)【国際特許分類】
D03D 15/54 20210101AFI20240430BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
D03D15/54
D06B11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169737
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】522415933
【氏名又は名称】秩父織塾工房横山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 友子
【テーマコード(参考)】
3B154
4L048
【Fターム(参考)】
3B154AB12
3B154BA09
3B154BB39
3B154BD01
3B154BE02
3B154DA13
4L048AA13
4L048AA16
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA26
4L048AA42
4L048AC01
4L048BA05
4L048CA00
4L048DA00
(57)【要約】
【課題】異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分及び様々な柄の独立柄部分を同時に表現することができる織物を提供する。
【解決手段】織物10は、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)が型を利用して経糸に捺染され、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)とは異なる態様(柄)の模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)が型を利用して緯糸に捺染され、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが部分的に重なるように歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)が捺染された経糸と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)が捺染された緯糸とを織り上げることから作られている。織物10では、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが部分的に重なる複合柄部分23と、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重ならない独立柄部分24とが形成されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とを織り上げることから作られた織物において、
所定の第1の柄が、型を利用して前記経糸に捺染され、前記第1の柄とは異なる態様の所定の第2の柄が、前記型を利用して前記緯糸に捺染され、前記織物は、前記第1の柄と前記第2の柄とが部分的に重なるように該第1の柄が捺染された経糸と該第2の柄が捺染された緯糸とを織り上げることから作られ、前記織物では、前記第1の柄と前記第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分と、前記第1の柄と前記第2の柄とが重ならない独立柄部分とが形成されていることを特徴とする織物。
【請求項2】
前記第1の柄が、前記経糸の一方の面と該一方の面の反対側の他方の面とに表れ、前記第2の柄が、前記緯糸の一方の面に捺染されているとともに該一方の面の反対側の他方の面に捺染され、前記緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と該緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが、同一の柄であって互いに鏡映対称の関係にあり、前記織物では、前記経糸に表れた第1の柄と前記鏡映対称の緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で前記第1の柄と前記第2の柄とが部分的に重なる前記複合柄部分が形成されている請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記第1の柄が、前記経糸の一方の面と該一方の面の反対側の他方の面とに表れ、前記第2の柄が、前記緯糸の一方の面に捺染されているとともに該一方の面の反対側の他方の面に捺染され、前記緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と該緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが、同一の柄であって互いに回転対称の関係にあり、前記織物では、前記経糸に表れた第1の柄と前記回転対称の緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で前記第1の柄と前記第2の柄とが部分的に重なる前記複合柄部分が形成されている請求項1に記載の織物。
【請求項4】
前記第1の柄が、前記経糸の一方の面と該一方の面の反対側の他方の面とに表れ、前記第2の柄が、前記緯糸の一方の面に捺染されているとともに該一方の面の反対側の他方の面に捺染され、前記緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と該緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが、異なる柄であり、前記織物では、前記経糸に表れた第1の柄と前記緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で前記第1の柄と前記第2の柄とが部分的に重なる前記複合柄部分が形成されている請求項1に記載の織物。
【請求項5】
前記第1の柄と該第1の柄とは異なる態様の第2の柄とが部分的に重なるとともに部分的に重ならないことで、前記織物の表れた複合柄部分と独立柄部分との間に強弱が生まれ、前記織物を平面視したときに、前記第1の柄と前記第2の柄とが重なる前記複合柄部分と前記第1及び第2の柄の独立柄部分とが立体的に視認される請求項1ないし請求項4いずれかに記載の織物。
【請求項6】
前記第1の柄と前記第2の柄とが、有彩色によって染められ、前記第1の柄の色と前記第2の柄の色とが、補色の関係にある請求項1ないし請求項5いずれかに記載の織物。
【請求項7】
前記織物を一方の面から平面視したときに、前記第1の柄と前記第2の柄とが重なる複合柄部分では、該第1の柄の色と該第2の柄の色とが混色することで無彩色になり、該第2の柄によって該第1の柄が隠蔽され、前記織物の一方の面を所定の角度で見たときに、前記第1の柄と前記第2の柄とが重なる複合柄部分では、該第1の柄の色と該第2の柄の色とが混色せず、該第1の柄が該第2の柄から透けて視認される請求項6に記載の織物。
【請求項8】
前記織物を一方の面から平面視したとき又は前記織物の一方の面を所定の角度で見たときに、前記第1の柄と前記第2の柄とが重ならない独立柄部分では、前記第1の柄の色と前記第2の柄の色との補色対比によって該第1の柄の色と該第2の柄の色との鮮やかさが強調されるとともに、該第1の柄と該第2の柄とが重なる複合柄部分に立体感、奥行き効果が発現する請求項6又は請求項7に記載の織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸と緯糸とを織り上げることから作られた織物に関する。
【背景技術】
【0002】
経糸の全部又は一部に、絣柄模様の部分のみを縞状に染めた絣糸を使用し、経糸の絣柄模様の部分の縞の色が緯糸の色と異なる色である絣織物が開示されている(特許文献1参照)。この絣織物は、縞状に染めた糸を絣柄に染めて絣糸とし、この絣糸を経糸のみに使用することによって絣織物の絣柄の中を更に絣状にして絣柄模様をソフトな感覚に表現することができ、縞の色、幅、間隔、縞の数等を変化させることによって、表現に多様性を持たせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の絣織物は、それに表れた絣柄模様が立体的に視認されることはなく、異なる柄が重なった見場がよい複合柄及び様々な柄の独立柄を同時に表現することができない。絣織物は、それを平面視したときに、絣柄模様が隠蔽されることはなく、それを所定の角度で見たときに、絣柄模様が変化することはなく、見る角度による柄の隠蔽や露出、柄の変化を表現することができない。絣織物は、絣柄模様の鮮やかさが強調されることはなく、立体感、奥行き効果を有する柄を表現することができない。
【0005】
本発明の目的は、異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分及び様々な柄の独立柄部分を同時に表現することができる織物を提供することにある。本発明の他の目的は、見る角度による柄の隠蔽や露出、柄の変化を表現することができる織物を提供することにある。本発明の他の目的は、柄の色の鮮やかさを強調することができ、柄が立体感や奥行き効果を発現し、立体感、奥行き効果を有する柄を表現することができる織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、経糸と緯糸とを織り上げることから作られた織物である。
【0007】
前記前提における本発明の特徴は、所定の第1の柄が、型を利用して経糸に捺染され、第1の柄とは異なる態様の所定の第2の柄が、型を利用して緯糸に捺染され、織物は、第1の柄と第2の柄とが部分的に重なるように第1の柄が捺染された経糸と第2の柄が捺染された緯糸とを織り上げることから作られ、織物では、第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分と、第1の柄と第2の柄とが重ならない独立柄部分とが形成されていることにある。
【0008】
本発明の一例としては、第1の柄が、経糸の一方の面と一方の面の反対側の他方の面とに表れ、第2の柄が、緯糸の一方の面に捺染されているとともに一方の面の反対側の他方の面に捺染され、緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが、同一の柄であって互いに鏡映対称の関係にあり、織物では、経糸に表れた第1の柄と鏡映対称の緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分が形成されている。
【0009】
本発明の他の一例としては、第1の柄が、経糸の一方の面と一方の面の反対側の他方の面とに表れ、第2の柄が、緯糸の一方の面に捺染されているとともに一方の面の反対側の他方の面に捺染され、緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが、同一の柄であって互いに回転対称の関係にあり、織物では、経糸に表れた第1の柄と回転対称の緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分が形成されている。
【0010】
本発明の他の一例としては、第1の柄が、経糸の一方の面と一方の面の反対側の他方の面とに表れ、第2の柄が、緯糸の一方の面に捺染されているとともに一方の面の反対側の他方の面に捺染され、緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが、異なる柄であり、織物では、経糸に表れた第1の柄と緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分が形成されている。
【0011】
本発明の他の一例としては、第1の柄と第1の柄とは異なる態様の第2の柄とが部分的に重なるとともに部分的に重ならないことで、織物の表れた複合柄部分と独立柄部分との間に強弱が生まれ、織物を平面視したときに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分と第1及び第2の柄の独立柄部分とが立体的に視認される。
【0012】
本発明の他の一例としては、第1の柄と前記第2の柄とが、有彩色によって染められ、第1の柄の色と第2の柄の色とが、補色の関係にある。
【0013】
本発明の他の一例としては、織物を一方の面から平面視したときに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分では、第1の柄の色と第2の柄の色とが混色することで無彩色になり、第2の柄によって第1の柄が隠蔽され、織物の一方の面を所定の角度で見たときに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分では、第1の柄の色と第2の柄の色とが混色せず、第1の柄が第2の柄から透けて視認される。
【0014】
本発明の他の一例としては、織物を一方の面から平面視したとき又は織物の一方の面を所定の角度で見たときに、第1の柄と第2の柄とが重ならない独立柄部分では、第1の柄の色と第2の柄の色との補色対比によって第1の柄の色と第2の柄の色との鮮やかさが強調されるとともに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分に立体感、奥行き効果が発現する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る織物によれば、第1の柄と第1の柄とは異なる態様の第2の柄とが部分的に重なるように第1の柄が捺染された経糸と第2の柄が捺染された緯糸とを織り上げることから作られ、第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分と、第1の柄と第2の柄とが重ならない独立柄部分とが形成されているから、経糸に捺染された柄と緯糸に捺染された柄とが同一の場合と比較し、第1の柄と第1の柄とは異なる第2の柄とからなる複合柄部分を織物に表現することができるとともに、第1の柄及び第2の柄の独立柄部分を織物に表現することができ、異なる柄が重なった見場のよい複合柄部分と第1及び第2の柄の見場のよい独立柄部分とを同時に表現することができる。織物は、様々な柄の第1の柄を採用するとともに、第1の柄と異なる様々な柄の第2の柄を採用することで、第1の柄と第2の柄とが重なる様々な複合柄部分と第1及び第2の柄の様々な独立柄部分とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分及び独立柄部分を表現することができる。
【0016】
第1の柄が経糸の一方の面と他方の面とに表れ、第2の柄が緯糸の一方の面に捺染されているとともに他方の面に捺染され、緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが同一の柄であって互いに鏡映対称の関係にあり、経糸に表れた第1の柄と鏡映対称の緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分が形成されている織物は、第1の柄と互いに鏡映対称の関係にある第2の柄とからなる複合柄部分と、第1の柄及び第2の柄の独立柄部分とを織物に表現することができ、異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分と第1及び第2の柄の見場のよい独立柄部分とを同時に表現することができる。織物は、様々な柄の第1の柄を採用するとともに、第1の柄と異なる鏡映対称の様々な柄の第2の柄を採用することで、第1の柄と第2の柄とが重なる様々な複合柄部分と、第1及び第2の柄の様々な独立柄部分とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分及び独立柄部分を表現することができる。
【0017】
第1の柄が経糸の一方の面と他方の面とに表れ、第2の柄が緯糸の一方の面に捺染されているとともに他方の面に捺染され、緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが同一の柄であって互いに回転対称の関係にあり、経糸に表れた第1の柄と回転対称の緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分が形成されている織物は、第1の柄と互いに回転対称の関係にある第2の柄とからなる複合柄部分と、第1の柄及び第2の柄の独立柄部分とを織物に表現することができ、異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分と第1及び第2の柄の見場のよい独立柄部分とを同時に表現することができる。織物は、様々な柄の第1の柄を採用するとともに、第1の柄と異なる回転対称の様々な柄の第2の柄を採用することで、第1の柄と第2の柄とが重なる様々な複合柄部分と、第1及び第2の柄の様々な独立柄部分とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分及び独立柄部分を表現することができる。
【0018】
第1の柄が経糸の一方の面と他方の面とに表れ、第2の柄が緯糸の一方の面に捺染されているとともに他方の面に捺染され、緯糸の一方の面に捺染された第2の柄と緯糸の他方の面に捺染された第2の柄とが異なる柄であり、経糸に表れた第1の柄と緯糸に表れた第2の柄とが対向した状態で第1の柄と第2の柄とが部分的に重なる複合柄部分が形成されている織物は、第1の柄と一方の面及び他方の面に捺染された異なる柄の第2の柄とからなる複合柄部分と、第1の柄及び第2の柄の独立柄部分とを織物に表現することができ、異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分と第1及び第2の柄の見場のよい独立柄部分とを同時に表現することができる。織物は、様々な柄の第1の柄を採用するとともに、第1の柄と異なる様々な柄の第2の柄を採用することで、第1の柄と第2の柄とが重なる様々な複合柄部分と、第1及び第2の柄の様々な独立柄部分とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分及び独立柄部分を表現することができる。
【0019】
第1の柄と第1の柄とは異なる態様の第2の柄とが部分的に重なるとともに部分的に重ならないことで、織物の表れた複合柄部分と独立柄部分との間に強弱が生まれ、織物を平面視したときに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分と第1及び第2の柄の独立柄部分とが立体的に視認される織物は、織物の表れた複合柄部分と独立柄部分との間に強弱が生じ、複合柄部分と独立柄部分との間に奥行き効果が発現するから、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分を立体的に表現することができ、第1及び第2の柄の独立柄部分を立体的に表現することができる。
【0020】
第1の柄と第2の柄とが有彩色によって染められ、第1の柄の色と第2の柄の色とが補色の関係にある織物は、第1の柄と第2の柄とが様々な色の有彩色によって染められることで、第1の柄と第1の柄とは異なる第2の柄とからなる様々な色の複合柄部分を織物に表現することができるとともに、第1の柄及び第2の柄の様々な色の独立柄部分を織物に表現することができ、異なる柄が重なった見場のよい有彩色の鮮やかな複合柄部分と第1及び第2の柄の見場のよい有彩色の鮮やかな独立柄部分とを立体的に表現することができる。織物は、様々な色柄の第1の柄を採用するとともに、第1の柄と異なる様々な色柄の第2の柄を採用することで、第1の柄と第2の柄とが重なる有彩色の鮮やかな様々な複合柄部分と第1及び第2の柄の有彩色の鮮やかな様々な独立柄部分とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分及び独立柄部分を表現することができる。
【0021】
織物を一方の面から平面視したときに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分において、第1の柄の色と第2の柄の色とが混色することで無彩色になり、第2の柄によって第1の柄が隠蔽され、織物の一方の面を所定の角度で見たときに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分において、第1の柄の色と第2の柄の色とが混色せず、第1の柄が第2の柄から透けて視認される記載の織物は、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分において互いに補色の関係にある第1の柄の色と第2の柄の色とが混色することで無彩色になるから、織物を一方の面から平面視したときに、第2の柄によって第1の柄が隠蔽されて主に第2の柄を視認させることができ、主に第2の柄からなる独立柄部分を表現することができるとともに、織物の一方の面を所定の角度で見たときに、第1の柄の色と第2の柄の色とが混色せず、第1の柄と第2の柄とからなる複合柄部分を表現することができる。織物は、それを見る角度によって主に第2の柄が見え、又は、第1の柄と第2の柄とからなる複合柄部分を見ることができるから、見る角度による柄の変化を表現することができる。
【0022】
織物を一方の面から平面視したとき又は織物の一方の面を所定の角度で見たときに、第1の柄と第2の柄とが重ならない独立柄部分において、第1の柄の色と第2の柄の色との補色対比によって第1の柄の色と第2の柄の色との鮮やかさが強調されるとともに、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分に立体感、奥行き効果が発現する織物は、第1の柄の色と第2の柄の色とが重ならない独立柄部分において、第1の柄の色と第2の柄の色との補色対比によって第1の柄の色と第2の柄の色との鮮やかさが強調されるから、第1の柄からなる見場のよい有彩色の鮮やかな独立柄部分を表現することができ、第2の柄からなる見場のよい有彩色の鮮やかな独立柄部分を表現することができる。織物は、第1の柄と第2の柄とが重なる複合柄部分に立体感、奥行き効果が発現するから、第1の柄と第2の柄とが重なった独立柄部分を立体的に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】織物を形成する経糸の捺染加工を模式的に示す図。
【
図3】織物を形成する緯糸の捺染加工後の緯糸の一例を示す模式図。
【
図4】織物を形成する緯糸の捺染加工後の緯糸の他の一例を示す模式図。
【
図5】織物を形成する緯糸の捺染加工後の緯糸の他の一例を示す模式図。
【
図7】機織り機を使用した経糸及び緯糸を織り込みの一例を示す斜視図。
【
図10】
図9の織物を所定の角度で見た場合の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照し、本発明に係る織物の詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、
図1は、織物10を形成する経糸11の捺染加工を模式的に示す図であり、
図2は、捺染された経糸11の一例を示す斜視図である。
図3は、織物10を形成する緯糸12の捺染加工後の緯糸の一例を示す模式図であり、
図4は、織物10を形成する緯糸12の捺染加工後の緯糸12の他の一例を示す模式図である。
図5は、織物10を形成する緯糸12の捺染加工後の緯糸12の他の一例を示す模式図であり、
図6は、捺染された緯糸12の一例を示す斜視図である。
図1,
図3,
図4,
図5では、長手方向を矢印Xで示し、幅方向を矢印Yで示す。
【0025】
織物10(例えば、秩父銘仙)は、経糸11(たていと)と緯糸12(よこいと)とを織り上げることから作られている。経糸11及び緯糸12には、例えば、前処理(精錬漂白後、染色)した又は前処理しない生糸(絹糸)を甘諸よりした145~175デニールの糸が使用される。経糸11及び緯糸12には、生糸(天然繊維糸)の他に、綿花を紡いだ綿糸(天然繊維糸)を使用することができるとともに、化学繊維から作られた化学繊維糸を使用することができる。化学繊維糸には、ポリエステルやナイロン(ポリアミド)、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維から作られた合成繊維糸、天然の高分子物質を化学的に処理した半合成繊維から作られた半合成繊維糸、天然高分子化合物を原料にそれを溶解してから紡糸したレーヨンやキュプラ等の再生繊維糸を使用することができる。
【0026】
織物10の製造工程には、整経工程、巻取工程、仮織り工程、ほぐし捺染工程(型染め工程)、巻き返し工程、本織り工程(製織工程)がある。整経工程では、経糸11(白い経糸)の必要本数、長さ、密度を決定した後、整経機を利用し、経糸11の長さを揃えた状態でドラムに平均した張力で巻き取る。経糸11は、ドラムに平均したテンション(張力)で隙間なく平滑に巻き付けられる。巻取工程は、整経工程によってドラムに巻き付けられた経糸11を箱に巻き取る。箱は、整経機の端部に取り付けられた巻き取りローラーに取り付けられている。仮織り工程では、経糸11どうしが幅方向の間隔を正しく保持し得るとともに一反分のずれがないように、仮織り機を利用し、数cm間隔で経糸11に緯糸12を斜め方向へ織り込む。
【0027】
経糸11には、ほぐし捺染工程(型染め工程)によって所定の第1の柄Aが捺染(プリント)される。緯糸12には、ほぐし捺染工程によって第1の柄Aとは異なる態様(柄)の所定の第2の柄B及び第2の柄Cが捺染(プリント)される。尚、第1の柄A及び第2の柄B、第2の柄Cについて特に限定はなく、あらゆるデザインの柄を採用することができる。
【0028】
第1の柄A及び第2の柄B、第2の柄Cは、無彩色を含む有彩色によって染められている。第1の柄Aの色と第2の柄Bの色、第2の柄Cとは、補色の関係にある。補色としては、例えば、黄色と青紫色、黄緑色と紫色、緑色と赤紫色、青緑色と赤色、緑みの青と黄みの橙色、青色と赤みの橙色の組み合わせがある。それら補色の組み合わせには、同一トーン配色、類似トーン配色、対照トーン配色がある。
【0029】
経糸11のほぐし捺染工程では、整経工程及び巻取工程を経た荒らく仮織りした白の経糸11を捺染台(図示せず)の上に広げ、
図1に示すように、一反分(約15m)の経糸11の上に型紙13(シルクスクリーン型)を入れた四角の型枠14を乗せ、型紙13を移動しながら、染料(浸染)のついた刷毛で刷り、色を重ねて染色する。複数種類の型紙13を順に経糸11の上に置き、繰り返し色を重ねる。
【0030】
第1の柄Aは、その複数が経糸11の長手方向へ等間隔並んだ状態で捺染される。ほぐし捺染では、染料を布に染めるのではなく、糸のうちに染めることで、経糸11の表面15(一方の面)及び裏面16(他方の面)に同一の第1の柄Aが染色される。経糸11のほぐし捺染工程では、捺染(染色)された経糸11に染料を定着させるため、専用の蒸し箱で経糸11を蒸す。蒸された経糸11は、タンブルで乾燥される。巻き返し工程では、染料が安定した後、本織りの前に経糸11を巻き返す。
【0031】
緯糸12のほぐし捺染工程では、木の緯板17に巻かれた緯糸12の表面18(一方の面)及び裏面19(他方の面)に、型紙(図示せず)を利用して第2の柄Bを捺染(染色)する。経糸11の捺染では経糸11が長さ方向へ連続的に繋がっているから、型紙13の両端部で図柄を合わせて捺染するが、緯糸12の捺染では緯板17の単位で捺染するので、柄は緯板17と型紙の端部センターに開けられた小穴であわせる。
【0032】
緯糸12のほぐし捺染工程は、経糸11の捺染で使用した捺染台に緯糸12の長手方向の間隔で木箱を並べ、木箱の上に緯板17に巻かれた緯糸12を置いた後、緯糸12の表面18を一色目から順次捺染する。緯糸12の捺染では、複数種類の型紙を順に緯糸12の上に置き、繰り返し色を重ねる。緯糸12の表面18の捺染が完了した後、染料の乾きを確認し、緯板17をひっくり返す。緯板17をひっくり返した後、緯糸12の裏面19を一色目から順次捺染する。
【0033】
捺染加工後の緯糸12の一例としては、
図3に示すように、緯糸12の表面18(一方の面)に捺染された第2の柄Bと緯糸12の裏面19(他方の面)に捺染された第2の柄Bとが互いに鏡映対称の関係にある。捺染加工後の緯糸12の他の一例としては、
図4に示すように、緯糸12の表面18(一方の面)に捺染された第2の柄Bと緯糸12の裏面19(他方の面)に捺染された第2の柄Bとが互いに回転対称の関係にある。緯糸12の表裏面18,19に第2の柄Bを捺染した後、緯糸12を巻いた緯板17を集める。緯糸12の表面18と裏面19とに捺染された第2の柄Bは同一の柄である。捺染加工後の緯糸12の他の一例としては、
図5に示すように、緯糸12の表面18(一方の面)に第2の柄Bが捺染され、緯糸12の裏面19(他方の面)に第2の柄Cが捺染されている。緯糸12の表面18に捺染された第2の柄Bと裏面19に捺染された第2の柄Cとは異なる柄である。尚、緯糸12の表面18(一方の面)に第2の柄Cが捺染され、緯糸12の裏面19(他方の面)に第2の柄Bが捺染されていてもよい。
【0034】
集めた緯板17を積重ね、本織り工程において経糸11と緯糸12を合わせ易くするため、積み重ねられた緯糸12の側面に別の色を捺染する。次に、緯板17の両サイドの留め金具を外し、緯板17を半分に分解して緯糸12から緯板17を取り外す。緯板17を取り外して新聞紙に巻かれたままの緯糸12の間に新聞紙を挟んで8,9枚重ね合わせ、紐で軽く結わえる。複数枚の緯糸12を束ねた後、捺染(染色)された緯糸12に染料を定着させるため、専用の蒸し箱で緯糸12を蒸し、蒸された緯糸12を乾燥させる。
【0035】
図7は、織機20を使用した経糸11及び緯糸12を織り込みの一例を示す斜視図であり、
図8は、製作された織物10の一例を示す斜視図である。
図8では、有彩色で着色された牡丹の花の柄21(第1の柄A)と有彩色で着色された所定の模様(例えば、花柄)の柄22(第2の柄B)とが捺染(プリント)されている。本織り工程(製織工程)では、織機20を使用し、牡丹の花の柄21(第1の柄)が捺染された経糸11と模様の柄22(第2の柄B)が捺染された緯糸12とを織り込むことで、
図8に示す織物10(併用絣)が製作される。
【0036】
本織り工程は、経糸11と緯糸12の準備が完了した後、織機20(手織機又は自動織機(力織機))を使っての製織の段階に移る。尚、製織の前準備としては 機上、綜絖通し、筬通し、織付、経継等がある。織機20では、織幅分に揃えた経糸11を機台上に張り、それに緯糸12を直交させて織物10を作る。織機20の動作は、主運動、副運動、補助運動に大別される。主運動には、経糸11を上下に広げ、緯糸12が入るようにする開口(カイコウ)運動、開口した経糸11の間に緯糸12を通す緯入れ(ヨコイレ)運動、緯入れした緯糸12を筬で経糸11と織物10との境界まで押し込み、緯糸12を経糸11と交差させる筬打ち(サオウチ)運動がある。副運動には、主運動で織られるにしたがって経糸11を給糸する送り出し運動、織られた分を巻き取って製織を続ける巻き取り運動がある。
【0037】
本織り工程(主運動、副運動、補助運動)を経て製作された織物10は、
図8に示すように、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と模様(例えば、花柄)の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが部分的に重なるように牡丹の花の柄21(第1の柄A)が捺染された経糸11と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)が捺染された緯糸12とを織り上げることから作られている。牡丹の花の柄21(第1の柄A)は、青緑色又は緑みの青或いは青色(有彩色)に着色され、模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)は、赤色又は黄みの橙色或いは赤みの橙色(有彩色)に着色されている。牡丹の花の柄21(第1の柄A)の色と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)の色とは、補色の関係にある。尚、牡丹の花の柄21(第1の柄A)の色と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)の色とが補色の関係になくてもよい。
【0038】
図8の織物10では、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが部分的に重なる複合柄部分23(混合柄部分)と、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と花の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが重ならず、模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)が単独で表れる独立柄部分24とが形成されている。尚、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが部分的に重なる複合柄部分23(混合柄部分)と、牡丹の花の柄21(第1の柄A)が単独で表れる独立柄部分24と、模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)が単独で表れる独立柄部分24とが形成されていてもよい。又、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが部分的に重なる複合柄部分23(混合柄部分)と、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と花の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが重ならず、牡丹の花の柄21(第1の柄A)が単独で表れる独立柄部分24とが形成されていてもよい。
【0039】
織物10は、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と、牡丹の花の柄21(第1の柄A)とは異なる態様(柄)の模様(例えば、花)の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが部分的に重なるように牡丹の花の柄21(第1の柄A)が捺染された経糸11と花の柄22(第2の柄B、第2の柄C)が捺染された緯糸12とを織り上げることから作られ、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが部分的に重なる複合柄部分23と、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とが重ならない独立柄部分24とが形成されているから、経糸11に捺染された柄と緯糸12に捺染された柄とが同一の場合と比較し、牡丹の花の柄21(第1の柄A)と、牡丹の花の柄21(第1の柄A)とは異なる模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)とからなる複合柄部分23を織物10に表現することができるとともに、牡丹の花の柄21(第1の柄A)及び模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)の独立柄部分24を織物10に表現することができ、異なる柄が重なった見場のよい複合柄部分23と牡丹の花の柄21(第1の柄A)及び模様の柄22(第2の柄B、第2の柄C)の見場のよい独立柄部分24とを同時に表現することができる。
【0040】
織物10は、様々な態様(柄)の第1の柄Aを採用するとともに、第1の柄Aと異なる様々な態様(柄)の第2の柄B又は第2の柄Cを採用することで、第1の柄Aと第2の柄B又は第2の柄Cとが重なる様々な態様(柄)の複合柄部分23(混合柄部分)と第1の柄Aのみ及び第2の柄B又は第2の柄Cのみが表れた様々な独立柄部分24とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分23及び独立柄部分24を表現することができる。
【0041】
緯糸12の表面18(一方の面)に捺染された第2の柄Bと緯糸12の裏面19(他方の面)に捺染された第2の柄Bとが互いに鏡映対称の関係にある織物10は、第1の柄Aと互いに鏡映対称の関係にある第2の柄Bとからなる複合柄部分23と第1の柄A及び第2の柄Bが単独で表れる独立柄部分24とを織物10に表現することができ、異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分23と第1及び第2の柄A,Bの見場のよい独立柄部分24とを同時に表現することができる。織物10は、様々な柄の第1の柄Aを採用するとともに、第1の柄Aと異なる態様(柄)の鏡映対称の様々な柄の第2の柄Bを採用することで、第1の柄Aと第2の柄Bとが重なる様々な態様(柄)の複合柄部分23と第1及び第2の柄A,Bの様々な態様(柄)の独立柄部分24とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分23及び独立柄部分24を表現することができる。
【0042】
緯糸12の表面18(一方の面)に捺染された第2の柄Bと緯糸12の裏面19(他方の面)に捺染された第2の柄Bとが互いに回転対称の関係にある織物10は、第1の柄Aと互いに回転対称の関係にある第2の柄Bとからなる複合柄部分23と第1の柄A及び第2の柄Bが単独で表れる独立柄部分24とを織物10に表現することができ、異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分23と第1及び第2の柄A,Bの見場のよい独立柄部分24とを同時に表現することができる。織物10は、様々な柄の第1の柄Aを採用するとともに、第1の柄Aと異なる態様(柄)の回転対称の様々な柄の第2の柄Bを採用することで、第1の柄Aと第2の柄Bとが重なる様々な態様(柄)の複合柄部分23と第1及び第2の柄A,Bの様々な態様(柄)の独立柄部分24とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分23及び独立柄部分24を表現することができる。
【0043】
緯糸12の表面18(一方の面)に捺染された第2の柄Bと緯糸12の裏面19(他方の面)に捺染された第2の柄Cとが異なる柄である織物10は、第1の柄Aと異なる柄の第2の柄B及び第2の柄Cとからなる複合柄部分23と第1の柄A及び第2の柄B、第2の柄Cが単独で表れる独立柄部分24とを織物10に表現することができ、異なる柄が重なった見場がよい複合柄部分23と第1及び第2の柄A,B,Cの見場のよい独立柄部分24とを同時に表現することができる。織物10は、様々な柄の第1の柄Aを採用するとともに、第1の柄Aと異なる態様(柄)の様々な柄の第2の柄B、第2の柄Cを採用することで、第1の柄Aと第2の柄B、第2の柄Cとが重なる様々な態様(柄)の複合柄部分23と第1及び第2の柄A,B,Cの様々な態様(柄)の独立柄部分24とを表現することができ、見たものを引き付ける魅力のある複合柄部分23及び独立柄部分24を表現することができる。
【0044】
織物10は、第1の柄Aと第1の柄Aとは異なる態様(柄)の第2の柄B、第2の柄Cとが部分的に重なるとともに部分的に重ならないことで、織物10の表れた複合柄部分23と独立柄部分24との間に強弱が生じ、複合柄部分23と独立柄部分24との間に奥行き効果が発現するから、第1の柄Aと第2の柄Bとが重なる複合柄部分23を立体的に表現することができ、第1及び第2の柄A,B,Cの独立柄部分24を立体的に表現することができる。
【0045】
図9は、製作された織物10の他の一例を示す斜視図であり、
図10は、
図9の織物10を所定の角度で見た場合の斜視図である。
図9,10では、無彩色を含む有彩色で着色された歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と有彩色で着色された所定の模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが捺染(プリント)されている。
図9は、織物10の表面15,18(一方の面)を真上から平面視した状態を示し、
図10は、織物10の表面15,18(一方の面)を約45°の角度から斜めに見た状態を示す。
図9,10の織物10では、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色とが補色の関係にある。尚、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色とが補色の関係になくてもよい。
【0046】
図9及び
図10に表れた柄を比較すると、織物10の表面15,18(一方の面)を真上から平面視した
図8では、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重なる複合柄部分23において、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色とが混色することで無彩色になり、模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)によって歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)が隠蔽され、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)が見え難くなっている。これに対し、織物10の表面15,18(一方の面)を約45°の角度から斜めに見た
図10では、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重なる複合柄部分23において、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色とが混色せず、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)が模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)から露出し、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)が模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)から透けて視認され、
図8と比較して歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)をはっきりと見ることができる。
【0047】
又、織物10の表面15,18(一方の面)を真上から平面視した
図9又は織物10の表面15,18(一方の面)を約45°の角度から斜めに見た
図10において、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色とが重ならない独立柄部分24では、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色との補色対比によって歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色とが強調されるとともに、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重なる複合柄部分23に立体感、奥行き効果が発現している。
【0048】
織物10は、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重なる複合柄部分23において互いに補色の関係にある歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが混色することで無彩色になるから、織物10の表面15,18(一方の面)を真上から平面視したときに、模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)によって歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)が隠蔽されて主に模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)を視認させることができ、主に模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)からなる独立柄部分24を表現することができるとともに、織物10の表面15,18(一方の面)を約45°の角度から斜めに見たときに、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色とが混色せず、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とからなる複合柄部分23を表現することができる。織物10は、それを見る角度によって主に模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)が見え、又は、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とからなる複合柄部分23を見ることができるから、見る角度による柄の変化を表現することができる。
【0049】
織物10は、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重ならない独立柄部分24において、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色との補色対比によって歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)の色と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)の色との鮮やかさが強調されるから、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)からなる見場のよい有彩色(無彩色を含む)の鮮やかな独立柄部分24を表現することができ、模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)からなる見場のよい有彩色の鮮やかな独立柄部分24を表現することができる。織物10は、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重なる複合柄部分23に立体感、奥行き効果が発現するから、歌舞伎役者の柄25(第1の柄A)と模様の柄26(第2の柄B又は第2の柄C)とが重なった独立柄部分24を立体的に表現することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 織物
11 経糸(たていと)
12 緯糸(よこいと)
13 型紙(シルクスクリーン型)
14 型枠
15 表面
16 裏面
17 緯板
18 表面
19 裏面
20 織機
21 牡丹の花の柄(第1の柄)
22 模様(例えば、花)の柄(第2の柄)
23 複合柄部分
24 独立柄部分
25 歌舞伎役者の柄(第1の柄)
26 模様の柄(第2の柄)
A 第1の柄
B 第2の柄
C 第2の柄