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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062020
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ヘッドレストカバー
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/05 20060101AFI20240430BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240430BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20240430BHJP
【FI】
B68G7/05 B
A47C7/38
B60N2/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169753
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅士
(72)【発明者】
【氏名】加納 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】金 俊
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD04
3B087DC05
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】ヘッドレストからの分離作業をより簡便にすることが可能なヘッドレストカバーを提供する。
【解決手段】ヘッドレストカバー2は、互いに袋状に縫合されてヘッドレスト本体1に被せられる複数のカバーピース2a~2dを有する。ヘッドレストカバー2は、複数のカバーピース2a~2dの隣り合う縁部同士を縫合する複数の縫合部3b~3d、4bを有する。複数の縫合部のうちの一部(縫合部3b~3d)が、他部(縫合部4b)よりも連結強度の低い弱連結縫合部3とされる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレスト本体に被せられるヘッドレストカバーであって、
互いに袋状に縫合されて前記ヘッドレスト本体に被せられる複数のカバーピースと、
複数の前記カバーピースの隣り合う縁部同士を縫合する複数の縫合部と、を有し、
複数の前記縫合部のうちの一部が、他部よりも連結強度の低い弱連結縫合部とされるヘッドレストカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレストカバーであって、
前記弱連結縫合部により縫合される各前記カバーピースの縁部間に、互いを縫合しないことで前記弱連結縫合部と隣接する貫通孔を形成する開口部を更に有するヘッドレストカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドレストカバーであって、
前記弱連結縫合部が、複数の前記カバーピースのうちの1つである解体着手用カバーピースの隣り合う2つの縁辺に跨って連続的に形成されるヘッドレストカバー。
【請求項4】
請求項2に記載のヘッドレストカバーであって、
前記弱連結縫合部と前記開口部とが、複数の前記カバーピースのうちの、前記ヘッドレスト本体の背面に被せられる背面カバーピースと、前記ヘッドレスト本体の底面に被せられる底面カバーピースと、の縁部間に設けられるヘッドレストカバー。
【請求項5】
請求項4に記載のヘッドレストカバーであって、
前記背面カバーピース又は前記底面カバーピースが、前記開口部をカバー内面側から覆うように端末が延長された延長部を有するヘッドレストカバー。
【請求項6】
請求項5に記載のヘッドレストカバーであって、
前記延長部が、前記底面カバーピースから延びて前記背面カバーピースとカバー内面側から重なるヘッドレストカバー。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドレストカバーであって、
前記弱連結縫合部が、前記他部の縫合に使用される糸よりも番手の大きい糸で縫合されるヘッドレストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストの表皮材としてのヘッドレストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドレストは、ステー等の内蔵物をウレタンパッドで覆ったものに、別途準備したヘッドレストカバーを被せる、いわゆる被せ製法で製作されるものがある。このような被せ製法に用いられるヘッドレストカバーに関する技術として、例えば特許文献1では、フック手段を有するヘッドレストカバーが開示されている。
【0003】
具体的には、ヘッドレストカバーを構成する複数ピースのうち一つが略矩形状を呈しており、略矩形状の表皮材の周囲に、互いに組み合わせて掛け止め可能なフック手段が縫着される。このようなヘッドレストカバーをウレタンパッドに被せていき、最後にフック手段で掛け止めして端末処理が行われ、ヘッドレストが製作される。
【0004】
被せ製法では、ウレタンパッドを変形させながら、やや強引にヘッドレストカバーが被せられる。その結果、ヘッドレストカバーの端末処理は不可逆的なものとなることが多い。例えば上述した特許文献1では、ヘッドレストカバーに設けられたフック同士を引っ掛けることで端末処理がなされているが、フックには相当なテンションがかかるため、一旦引っ掛かったものを外すことは困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-245851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
廃棄品となったヘッドレストは、解体されて、適切に分別処理されることが求められる。ヘッドレストの解体・分別をするに当たっては、まずはヘッドレストからヘッドレストカバーを剥がす作業が必要である。
【0007】
上述したように、被せ製法では、ヘッドレストカバーの端末処理は不可逆的なものとなることが多い。そのため、ヘッドレストカバーのヘッドレストからの分離作業は、端末処理がなされた箇所を無理矢理にでも外す、あるいは、ナイフやハサミなどの刃物を使用してヘッドレストカバー自体を切って中身の大部分が露出するような大きな開口を得る等、相当に労力や時間がかかるものとなっているのが現状である。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ヘッドレストからの分離作業をより簡便にすることが可能なヘッドレストカバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1発明は、ヘッドレスト本体に被せられるヘッドレストカバーに関するものである。ヘッドレストカバーは、互いに袋状に縫合されて前記ヘッドレスト本体に被せられる複数のカバーピースと、複数の前記カバーピースの隣り合う縁部同士を縫合する複数の縫合部と、を有する。複数の前記縫合部のうちの一部が、他部よりも連結強度の低い弱連結縫合部とされている。
【0010】
第1発明によれば、弱連結縫合部によってカバーピース同士の連結を敢えて弱くさせており、弱連結縫合部を利用してカバーピース同士の連結状態を一部断ち切ることができる。カバーピース同士の連結状態を一部でも断ち切れば開口を得ることができ、開口を拡大するべく、その開口に指や工具を差し込んでカバーピースを引っ張る等、ヘッドレストカバーの分離作業が円滑に進む。よって、ヘッドレストからの分離作業をより簡便にすることができる。
【0011】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記弱連結縫合部により縫合される各前記カバーピースの縁部間に、互いを縫合しないことで前記弱連結縫合部と隣接する貫通孔を形成する開口部を更に有することを特徴とする。
【0012】
第2発明によれば、開口部が予め設けられているので、その分だけ作業の時間短縮ができる。また、開口部には弱連結縫合部が隣接しており、加えた力が弱連結縫合部にダイレクトに伝わるため、より簡単にカバーピース同士の連結状態を断ち切ることができる。
【0013】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記弱連結縫合部が、複数の前記カバーピースのうちの1つである解体着手用カバーピースの隣り合う2つの縁辺に跨って連続的に形成されることを特徴とする。
【0014】
第3発明によれば、少なくとも2つの縁辺を含む面状の開口を得ることができる。面状の開口が得られれば、その開口をきっかけにしてさらに大きな開口を得る、あるいは、カバーピースをめくりつつ中のウレタンパッドを取り出す等、以降のヘッドレストカバーの分離作業が円滑に進む。よって、ヘッドレストからの分離作業をより簡便にすることができる。
【0015】
本発明の第4発明は、上記第2発明において、前記弱連結縫合部と前記開口部とが、複数の前記カバーピースのうちの、前記ヘッドレスト本体の背面に被せられる背面カバーピースと、前記ヘッドレスト本体の底面に被せられる底面カバーピースと、の縁部間に設けられることを特徴とする。
【0016】
第4発明によれば、目立たない位置に開口部が設けられることになるので、ヘッドレストとしての見栄えを良くすることができる。
【0017】
本発明の第5発明は、上記第4発明において、前記背面カバーピース又は前記底面カバーピースが、前記開口部をカバー内面側から覆うように端末が延長された延長部を有することを特徴とする。
【0018】
第5発明によれば、開口部から中身のヘッドレスト本体(ウレタンパッド)が露出することを抑制できるので、ヘッドレストとしての見栄えをより良くすることができる。
【0019】
本発明の第6発明は、上記第5発明において、前記延長部が、前記底面カバーピースから延びて前記背面カバーピースとカバー内面側から重なることを特徴とする。
【0020】
第6発明によれば、開口部から差し込んだ指や工具が背面カバーピースの裏面にガイドされる。これにより、開口部と隣接する背面カバーピースの縁辺に形成された弱連結縫合部を利用して、背面カバーピースを一気に剥がすことができる。
【0021】
本発明の第7発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記弱連結縫合部が、前記他部の縫合に使用される糸よりも番手の大きい糸で縫合されることを特徴とする。
【0022】
第7発明によれば、例えば縫い目の間隔を広く取ることで連結強度を低くする場合と比較して、バラつきのない一様な連結強度の弱連結縫合部を簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態であるヘッドレストの正面図である。ヘッドレストが前後方向を向いた状態である。
図2図1におけるヘッドレストを後方左下から見た斜視図である。
図3図1におけるヘッドレストを後方右上から見た斜視図である。
図4図1のIV-IV矢視線断面図である。
図5】開口部を背面カバーピースと底面カバーピースの裏面から見た図である。
図6】開口部に工具を差し込んで分離作業に着手した状態を示す図である。
図7】背面カバーピースが剥がれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図7は、本発明の一実施形態を示す。本実施形態は、ヘッドレスト10の表皮材であるヘッドレストカバー2に本発明を適用した例である。図1~5において、矢印によりヘッドレスト10を自動車に搭載されたシートバックに取付けたときの各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0025】
図1に示すようにヘッドレスト10は、ヘッドレスト本体1と、ヘッドレストカバー2とを有する。ヘッドレスト本体1は、ウレタンパッド1a(図4参照)と、ステー1bとを有する。なお、ヘッドレスト本体1のウレタンパッド1a内には、樹脂ケース等の内蔵物が含まれていても良い。ここで、ヘッドレスト本体1、ヘッドレストカバー2が、それぞれ本発明の「ヘッドレスト本体」、「ヘッドレストカバー」に相当する。
【0026】
図1図3に示すようにヘッドレストカバー2は、複数のカバーピース(背面カバーピース2a、前面カバーピース2b、底面カバーピース2c、各側面カバーピース2d)が互いに縫合されて、袋状になっている。ヘッドレストカバー2は、ヘッドレスト本体1に被せられている。
【0027】
図2に示すようにヘッドレストカバー2は、底面カバーピース2cにて端末処理がなされている。例えば、底面カバーピース2cには、ステー1bの脚部を通す長穴と、前面カバーピース2bの端末とともに長穴に収納される端末が設けられている。両端末には面ファスナー等の留め具が設けられ、互いに接続されたうえで長穴に収納されて端末処理がなされる。このような端末処理がなされた端末処理部13を元に戻すことは、通常困難である。ここで、背面カバーピース2a、前面カバーピース2b、底面カバーピース2c、各側面カバーピース2dが、本発明の「複数のカバーピース」に相当する。また、背面カバーピース2aが、本発明の「解体着手用カバーピース」に相当する。
【0028】
ヘッドレストカバー2は、複数のカバーピース2a~2dの隣り合う縁部同士が縫合されることで縫合部を有している。例えば、図4に示すように背面カバーピース2aの上縁部2xと前面カバーピース2bの上縁部2yが糸11によって縫合されて縫合部3aとなっている。
【0029】
同様に、図2図3に示すように背面カバーピース2aの左右縁部と各側面カバーピース2dの後縁部が縫合されて縫合部3bとなっている。図2に示すように背面カバーピース2aの下縁部と底面カバーピース2cの後縁部が縫合されて縫合部3c、3dとなっている。なお、縫合部3c、3dの間は、縫合されておらず、スリット状の開口部5が形成されている。開口部5の詳細は後述する。
【0030】
また、図1に示すように前面カバーピース2bの左右縁部と各側面カバーピース2dの前縁部が縫合されて縫合部4aとなっている。図2に示すように底面カバーピース2cの左右縁部と各側面カバーピース2dの後縁部が縫合されて縫合部4bとなっている。各カバーピース2a~2dは、このような複数の縫合部3a~3d、4a、4bによって連結されている。ここで、縫合部3a~3d、4a、4bが、本発明の「複数の縫合部」に相当する。
【0031】
複数の縫合部3a~3d、4a、4bのうち、縫合部3a~3dは、縫合部4a、4bよりも連結強度が低い。連結強度とは、縫合部がカバーピース同士の連結を維持する力の度合であり、例えば糸の番手によって変化させることができる。縫合部4a、4bに使用される糸は、従来のヘッドレストカバーに用いられている通常の糸である。通常の糸の番手としては、カバーピースを強引に引っ張った場合でも破断しないような大きさが選択されている。
【0032】
一方、図4に示すように背面カバーピース2aの上縁部2xと前面カバーピース2bの上縁部2yを縫合する縫合部3aには、通常の糸とは異なる番手の糸11が使用されている。同様に、縫合部3b~3dにも糸11と同じ糸が使用されている。
【0033】
糸11の番手は、縫合部4a、4bに使用される糸の番手より大きい。これにより、縫合部3a~3dは、縫合部4a、4bよりも連結強度が低くなって、弱連結縫合部3とされる。糸11の番手としては、ヘッドレスト10を通常に使用する際には破断せず、カバーピースを強引に引っ張った場合に破断するような大きさを選択することが望ましい。ここで、弱連結縫合部3が、本発明の「弱連結縫合部」に相当する。
【0034】
図2、3に示すように弱連結縫合部3は、ヘッドレスト10に装着されたヘッドレストカバー2において、背面カバーピース2aの隣り合う2つの縁辺に跨って連続的に形成されている。例えば、縫合部3b、3cは、背面カバーピース2aの隣り合う下縁辺と左縁辺に跨って連続的に形成されている。また、例えば、縫合部3b、3dは、背面カバーピース2aの隣り合う下縁辺と右縁辺に跨って連続的に形成されている。また、例えば、縫合部3a、3bは、背面カバーピース2aの隣り合う上縁辺と左右縁辺に跨って連続的に形成されている。つまり、弱連結縫合部3は、開口部5が形成された部分を除いて、背面カバーピース2aの各縁辺に跨って連続的に形成されている。
【0035】
図2に示すようにヘッドレストカバー2は、弱連結縫合部3により縫合される各カバーピース(背面カバーピース2aと底面カバーピース2c)の縁部間に、互いを縫合しないことで弱連結縫合部3と隣接する貫通孔を形成する開口部5を有する。
【0036】
具体的には、図5に示すように背面カバーピース2aの下縁部2pと底面カバーピース2cの後縁部2qは、糸(図4で示した糸11と同じ)によって縫合されて縫合部3c、3dとなっているが、縫合部3cと縫合部3dの間は縫合されていない。その結果、図2に示すようにヘッドレストカバー2がスリット状の開口部5を有することとなる。開口部5は、カバー外部からカバー内部(ヘッドレスト本体1)へ続く貫通孔となっている。なお、開口部5は、背面カバーピース2aの下縁辺中央に位置させるのが望ましい。
【0037】
また、図5に示すようにヘッドレストカバー2は、底面カバーピース2cの後縁部2qに、延長部6を有している。例えば底面カバーピース2cの縫代を十分に大きく取ることで延長部6とすることができる。延長部6は、開口部5をカバー内面側から覆うように延びている。ここで、開口部5、延長部6が、それぞれ本発明の「開口部」、「延長部」に相当する。
【0038】
また、ヘッドレストカバー2は、延長部6の左右両端と背面カバーピース2aを縫合する縫合部6a、6bを有する。縫合部6a、6bによって、底面カバーピース2cから延びた延長部6が、背面カバーピース2aの内面側と重なり易くなっている。縫合部6aから縫合部6bまでは、開口部5の幅と同じ距離が取られており、縫合部6aは縫合部3dに続き、縫合部6bは縫合部3cに続く。なお、縫合部6a、6bには、図4で示した糸11と同じ糸を使用する。
【0039】
ヘッドレストカバー2をヘッドレスト10から分離する作業の一例について説明する。図6に示すように作業者は、ドライバーやヘラなどの適当な工具12を開口部5に差し込む(自分の指でも良い)。次に作業者は、ヘッドレスト10から背面カバーピース2aをヘッドレスト10から引き離すように力を掛けていく。なお、開口部5が背面カバーピース2aの下縁辺中央に位置するので、縫合部3c、3dに対して均等に力が掛かる。すると、開口部5に隣接する縫合部3c、3dに使用される糸が破断する。同時に縫合部6a、6b(図5参照)に使用される糸も破断する。
【0040】
次に作業者は、背面カバーピース2aの下縁部をつかんで力を掛けていく。すると、縫合部3bに使用される糸が破断する。これにより、例えば図7に示すように、背面カバーピース2aが前面カバーピース2bのみに繋がり、ヘッドレスト本体1の背面側が露出する状態となる。あとは、前面カバーピース2bや各側面カバーピース2dをめくっていけば、ヘッドレストカバー2をヘッドレスト10から分離することができる。
【0041】
なお、このように開口部5を利用して背面カバーピース2aの下縁辺から分離作業を着手しなくとも良い。例えば、背面カバーピース2aの上縁辺や左右縁辺から分離作業を着手しても良い。例えば、背面カバーピース2aの上縁辺付近を少しだけ切って指を入れて引っ張れば、同様に縫合部3aに使用される糸が破断し、開口が得られる。そして、背面カバーピース2aの上縁部をつかんで力を掛ければ、縫合部3bに使用される糸が破断し、さらに大きな開口を得ることができる。あとは、同様に前面カバーピース2bや各側面カバーピース2dをめくっていけば、ヘッドレストカバー2をヘッドレスト10から分離することができる。
【0042】
以上のように構成される実施形態は、以下のような作用効果を奏する。弱連結縫合部3によってカバーピース同士(背面カバーピース2a、底面カバーピース2c)の連結を敢えて弱くさせており、弱連結縫合部3を利用してカバーピース同士の連結状態を一部断ち切ることができる。カバーピース同士の連結状態を一部でも断ち切れば開口を得ることができ、開口を拡大するべく、その開口に指や工具を差し込んでカバーピースを引っ張る等、ヘッドレストカバー2の分離作業が円滑に進む。よって、ヘッドレスト10からの分離作業をより簡便にすることができる。
【0043】
また、開口部5が予め設けられているので、その分だけ作業の時間短縮ができる。また、開口部5には弱連結縫合部3が隣接しており、加えた力が弱連結縫合部3c、3dにダイレクトに伝わるため、より簡単にカバーピース同士の連結状態を断ち切ることができる。さらに、背面カバーピース2aにおいて少なくとも2つの縁辺を含む面状の開口を得ることができる。面状の開口が得られれば、その開口をきっかけにしてさらに大きな開口を得る、あるいは、背面カバーピース2aをめくりつつ中のウレタンパッドを取り出す等、以降のヘッドレストカバー2の分離作業が円滑に進む。
【0044】
また、目立たない位置に開口部5が設けられることになるので、ヘッドレスト10としての見栄えを良くすることができる。さらに、開口部5から中身のヘッドレスト本体1(ウレタンパッド1a)が露出することを抑制できるので、ヘッドレスト10としての見栄えをより良くすることができる。開口部5から差し込んだ指や工具が背面カバーピース2aの裏面にガイドされる。これにより、開口部5と隣接する背面カバーピース2aの縁辺に形成された弱連結縫合部3b~3dを利用して、背面カバーピース2aを一気に剥がすことができる。
【0045】
また、番手の大きい糸11を使用するので、例えば縫い目の間隔を広く取ることで連結強度を低くする場合と比較して、バラつきのない一様な連結強度の弱連結縫合部3を簡単に実現することができる。
【0046】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0047】
1.上記実施形態においては、縫合部3a~3dに使用する糸の番手を、通常の糸の番手より大きくすることで弱連結縫合部3とする例を説明した。しかし、これに関わらず、例えば糸の材質を変えることで弱連結縫合部3としてもよい。また、縫合部に使用する糸の番手も材質も同じであるが、縫い目の間隔を変えることでも弱連結縫合部3とすることができる。さらに、以上に挙げた手段を組み合わせたものであっても良い。
【0048】
2.上記実施形態においては、糸が破断することで弱連結縫合部3が消失し、その結果カバーピースの連結状態が断ち切られるものとして説明した。しかし、これに関わらず、糸の破断はなされずに弱連結縫合部3が残ったまま、カバーピース側が破れることでカバーピースの連結状態が断ち切られるものとしても良い。例えば、縫合部3a~3dには通常の糸を使用し、縫い目の間隔を縫合部4a、4bより狭くする。これにより、縫合部3a~3d自体の強度が増す一方、カバーピースは針が多く通されることで縫合部3a~3dに沿った縁辺が脆弱となる。このような縫合部3a~3dを有するヘッドレスト10の場合、背面カバーピース2aをヘッドレスト10から引き離すように力を掛けていくと、背面カバーピース2aが縫合部3a~3dに沿って破れる。これをもってカバーピースの連結状態が断ち切られるものとしても良い。
【0049】
3.上記実施形態においては、開口部5が背面カバーピース2aと底面カバーピース2cとの縁部間に設けられるものとした。しかし、これに関わらず、背面カバーピース2aと前面カバーピース2bとの縁部間、あるいは、背面カバーピース2aと各側面カバーピース2dとの縁部間に設けられても良い。なお、そもそも開口部5自体を設けなくとも良い。
【0050】
4.上記実施形態においては、弱連結縫合部3が、開口部5が形成された部分を除いて、背面カバーピース2aの各縁辺に跨って連続的に形成されるものとした。しかし、これに関わらず、例えば、背面カバーピース2aの隣り合う下縁辺と左縁辺の2辺のみに跨って連続的に形成されていても良い。
【0051】
5.上記実施形態においては、延長部6が底面カバーピース2cから延びて背面カバーピース2aとカバー内面側から重なるものとした。しかし、これに関わらず、延長部6が背面カバーピース2aから延びて底面カバーピース2cとカバー内面側から重なるようにしてもよい。また、いずれの場合も、延長部6と、該延長部6に重なるカバーピースとを縫い合わせなくとも良い。さらに、そもそも延長部6自体を設けなくとも良い。また、底面カバーピース2cと背面カバーピース2aの両方から延長部を設けて、延長部の両端同士を縫合することで、開口部5からカバー内部(ヘッドレスト本体1)へ続く通路が形成されるようにしても良い。これによれば、背面カバーピース2aに縫い目が現れないので、延長部6の左右両端と背面カバーピース2aを縫合する場合と比較して、ヘッドレスト10としての見栄えを良くすることができる。
【0052】
6.上記実施形態においては、開口部5に工具12や指を差し込んでヘッドレストカバー2の分離作業に着手する例を説明した。しかし、背面カバーピース2aを引き離すように力が掛けられれば良く、例えば、背面カバーピース2aと繋がるテープ(帯状の布)を開口部5の奥に仕込んでおいても良い。テープは、ヘッドレスト10の通常使用時には隠されており、分離作業時にのみ開口部5から取り出される。作業者は、取り出したテープを引っ張ることで背面カバーピース2aをヘッドレスト10から引き離すように力を掛けることができる。
【0053】
7.上記実施形態においては、本発明をヘッドレスト本体1に被せられるヘッドレストカバー2に適用したが、表皮一体発泡により製造されるヘッドレストにおけるヘッドレストカバーに適用しても良い。
【0054】
8.上記実施形態においては、本発明を自動車に搭載されたシートバックに取り付けられるヘッドレストのヘッドレスト
カバーに適用したが、飛行機、船、電車等に搭載されたシートバックに取り付けられるヘッドレストのヘッドレストカバーに適用しても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 ヘッドレスト本体
1a ウレタンパッド
1b ステー
2 ヘッドレストカバー
2a 背面カバーピース
2b 前面カバーピース
2c 底面カバーピース
2d 各側面カバーピース
2p 下縁部
2q 後縁部
2x、2y 上縁部
3 弱連結縫合部
3a~3d、4a、4b、6a、6b 縫合部
5 開口部
6 延長部
10 ヘッドレスト
11 糸
12 工具
13 端末処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7