(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062025
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】成形加工用包装材、包装ケース及び電池デバイス
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240430BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20240430BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240430BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240430BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240430BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240430BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240430BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240430BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240430BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240430BHJP
B65D 85/88 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B32B15/08 F
H01M50/122
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/119
H01M50/131
H01M50/105
B32B27/20 Z
B32B27/00 D
B65D65/40 D
B65D85/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169761
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】川北 圭太郎
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
5H011
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AA24
3E067AB32
3E067AC01
3E067BA10A
3E067BB11A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BC02A
3E067CA04
3E067CA05
3E067CA17
3E067CA24
3E067CA30
3E067EA06
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB02
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB74
3E086CA35
3E086DA06
4F100AA20B
4F100AA20D
4F100AB10C
4F100AB33C
4F100AK07D
4F100AK07E
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100AL07D
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA02D
4F100CA23B
4F100CA23D
4F100CB02B
4F100CB02D
4F100DE01B
4F100DE01D
4F100EJ55
4F100EJ68
4F100GB16
4F100GB41
4F100JA07
4F100JB13B
4F100JB13D
4F100JG04B
4F100JG04D
4F100JK01
4F100JK08D
4F100JL01
4F100JL11B
4F100JL11D
4F100JL12E
4F100YY00B
4F100YY00D
5H011AA01
5H011AA03
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC05
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD03
5H011DD14
5H011KK00
(57)【要約】
【課題】高い突き刺し強度と高い電気絶縁性を有する成形加工用包装材及び包装ケース、並びに当該包装材を用いた蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】成形加工用包装材1Aは、第1基材層3、第1接着剤層6R、第2基材層4、第2接着剤層7R、金属箔層2、第3接着剤層8R及び熱融着性樹脂層5がこの記載の順に積層されたものである。第1~第3接着剤層6R~8Rのうち少なくとも一つが絶縁性補強剤を含有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材層、第1接着剤層、第2基材層、第2接着剤層、金属箔層、第3接着剤層及び熱融着性樹脂層がこの記載の順に積層された成形加工用包装材であって、
前記第1~前記第3接着剤層のうち少なくとも一つが絶縁性補強剤を含有している成形加工用包装材。
【請求項2】
前記絶縁性補強剤として絶縁性補強粒子が用いられるとともに、
前記絶縁性補強粒子の個数平均径が0.01μm~3μmの範囲である請求項1記載の成形加工用包装材。
【請求項3】
前記絶縁性補強剤として絶縁性補強粒子が用いられるとともに、
前記絶縁性補強粒子の比表面積が1m2/g以上である請求項1又は2記載の成形加工用包装材。
【請求項4】
前記絶縁性補強剤として絶縁性補強粒子が用いられるとともに、
前記絶縁性補強粒子の体積抵抗率が1×1012Ωcm以上である請求項1又は2記載の成形加工用包装材。
【請求項5】
前記絶縁性補強剤を含有した前記接着剤層は、接着剤と前記絶縁性補強剤を含有する接着剤組成物の硬化膜からなり、
前記接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びをLとし、
前記接着剤を含有し前記絶縁性補強剤を含有しない接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びをL0とするとき、
前記Lは次の関係式1を満たしている請求項1又は2記載の成形加工用包装材。
15%≦{(L-L0)/L0}×100%≦250% …(式1)。
【請求項6】
前記絶縁性補強剤を含有した前記接着剤層の塗布量は2g/m2~10g/m2の範囲であり、
前記絶縁性補強剤を含有した前記接着剤層における前記絶縁性補強剤の含有量が0.2g/m2~1.0g/m2の範囲である請求項1又は2記載の成形加工用包装材。
【請求項7】
請求項1又は2記載の成形加工用包装材が深絞り成形加工又は張出し成形加工されて形成された包装ケース。
【請求項8】
蓄電デバイス本体と前記蓄電デバイス本体を包装した包装ケースとを具備する蓄電デバイスであって、
前記包装ケースとして、請求項7記載の包装ケースを備えている蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工用包装材、包装ケース及び電池デバイスに関する。なお、この包装材は、例えば、非定置型(ノートパソコン、携帯電話機、車載用など)や定置型の蓄電デバイス(リチウムイオン電池など)の包装材として用いられ、また食品や医薬品の包装材として用いられる。
【0002】
また本明細書及び特許請求の範囲において、各種物性値(比表面積、体積抵抗率、引張破断強度、引張破断伸びなど)は、特に文中に明示する場合を除き、室温での値である。
【背景技術】
【0003】
様々な蓄電デバイスのうち、例えば、モバイル機器(例:スマートフォン、タブレット、ノートパソコン)に使用されるリチウムイオン電池において、その電池本体は包装材で包装されている。この包装材として、例えば、金属箔の内面及び外面にそれぞれ樹脂フィルムが積層された金属-樹脂ラミネート材からなる包装材が使用されている。この包装材には電池本体を収容するための空間を形成するため絞り加工(例:深絞り成形加工、張出し成形加工)等の所定の成形加工が施される。
【0004】
この種の電池には一般に薄型化及び軽量化が要求されている。この要求に応えるために包装材において金属箔及び各樹脂フィルムを薄くすると、包装材の成形加工時にピンホールの発生確率が高くなり、一方、ピンホールの発生を抑制するために成形加工深さを浅くすると、電池の大容量化に対応することが困難になる。しかも、樹脂フィルムが薄くなると、包装材の突き刺し強度の低下を招き、外部からの衝撃による電池の破袋が起きやすくなる。
【0005】
上述したモバイル機器用リチウムイオン電池をはじめとする非定置型(移動型、持ち運び型など)の蓄電デバイスに用いられる包装材は、定置型の蓄電デバイスに用いられるものと比べて、衝撃、振動、外圧等の外力によって破損する可能性が高い。そのため、金属-樹脂ラミネート材からなる包装材にも外力に耐えうる機械強度、特に耐突き刺し性に優れたものが求められる。
【0006】
包装材の突き刺し強度を高めるため、特許文献1は、包装材の外側層として二軸延伸ポリエステルや二軸延伸ポリアミドフィルムを用いることを開示している。また、特許文献2は、包装材の内側層として、ブロック共重合ポリプロピレンを含有した中間層の内外両面にそれぞれランダム共重合ポリプロピレンを含有した被覆層が積層一体化されてなる熱融着性樹脂フィルムを用いることを開示している。その他に、包装材の突き刺し強度を高めることを開示した文献として例えば特許文献3がある。
【0007】
なお、包装材の突き刺し強度を高めることを目的するものではないが、包装材の外面を着色することを目的とした技術を開示した文献として特許文献4及び5がある。これらの文献は、包装材の金属箔層よりも外面側に設けられた接着剤層に包装材の外面を着色するための着色顔料としてカーボンブラック、酸化チタン等を添加することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-50325号公報(段落[0022]等)
【特許文献2】特開2015-143107号公報(段落[0028]等)
【特許文献3】特開2020-161326号公報
【特許文献4】特開2017-10941号公報
【特許文献5】国際公開第2019/070078号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、リチウムイオン電池等の蓄電デバイスの大容量化に伴い、蓄電デバイスの安全性が益々重要視されており、そのため、包装材にはより一層の高い突き刺し強度と高い電気絶縁性が要求されつつある。
【0010】
本発明は上述した技術背景に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、高い突き刺し強度と高い電気絶縁性を有する成形加工用包装材及び包装ケース、並びに当該包装材を用いた蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
1) 第1基材層、第1接着剤層、第2基材層、第2接着剤層、金属箔層、第3接着剤層及び熱融着性樹脂層がこの記載の順に積層された成形加工用包装材であって、
前記第1~前記第3接着剤層のうち少なくとも一つが絶縁性補強剤を含有している成形加工用包装材。
【0013】
2) 前記絶縁性補強剤として絶縁性補強粒子が用いられるとともに、
前記絶縁性補強粒子の個数平均径が0.01μm~3μmの範囲である前項1記載の成形加工用包装材。
【0014】
3) 前記絶縁性補強剤として絶縁性補強粒子が用いられるとともに、
前記絶縁性補強粒子の比表面積が1m2/g以上である前項1又は2記載の成形加工用包装材。
【0015】
4) 前記絶縁性補強剤として絶縁性補強粒子が用いられるとともに、
前記絶縁性補強粒子の体積抵抗率が1×1012Ωcm以上である前項1~3のいずれかに記載の成形加工用包装材。
【0016】
5) 前記絶縁性補強剤を含有した前記接着剤層は、接着剤と前記絶縁性補強剤を含有する接着剤組成物の硬化膜からなり、
前記接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びをLとし、
前記接着剤を含有し前記絶縁性補強剤を含有しない接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びをL0とするとき、
前記Lは次の関係式1を満たしている前項1~4のいずれかに記載の成形加工用包装材。
15%≦{(L-L0)/L0}×100%≦250% …(式1)。
【0017】
6) 前記絶縁性補強剤を含有した前記接着剤層の塗布量は2g/m2~10g/m2の範囲であり、
前記絶縁性補強剤を含有した前記接着剤層における前記絶縁性補強剤の含有量が0.2g/m2~1.0g/m2の範囲である前項1~5のいずれかに記載の成形加工用包装材。
【0018】
7) 前項1~6のいずれかに記載の成形加工用包装材が深絞り成形加工又は張出し成形加工されて形成された包装ケース。
【0019】
8) 蓄電デバイス本体と前記蓄電デバイス本体を包装した包装ケースとを具備する蓄電デバイスであって、
前記包装ケースとして、前項7記載の包装ケースを備えている蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下の効果を奏する。
【0021】
前項1では、第1接着剤層~第3接着剤層のうち少なくとも一つが絶縁性補強剤を含有していることにより、絶縁性補強剤を含有しない接着剤層に比べて当該接着剤層の電気絶縁性が向上するし、当該接着剤層の破断が起こりにくくなって当該接着剤層の破断強度(引張破断強度など)及び破断伸び(引張破断伸びなど)が向上する。そのため、包装材の電気絶縁性と突き刺し強度を高めることができる。
【0022】
したがって、例えば、成形加工による包装材の厳しい変形や、包装材の内面又は外面への突起物の接触によって、包装材の内面又は外面が亀裂、傷付き等の損傷を受けた場合でも、この損傷による包装材の電気絶縁性の低下を抑制することができる。
【0023】
前項2では、絶縁性補強剤としての絶縁性補強粒子の個数平均径が0.01μm~3μmの範囲であることにより、絶縁性補強粒子を含有した接着剤層における破断パスが長くなって当該接着剤層の破断強度及び破断伸びが更に向上する。そのため、包装材の突き刺し強度を更に高めることができる。
【0024】
前項3では、絶縁性補強粒子の比表面積が1m2/g以上であることにより、絶縁性補強剤を含有した接着剤層において絶縁性補強粒子と接着剤分子との相互作用が確実に大きくなり、当該接着剤層の破断強度が確実に向上する。そのため、包装材の突き刺し強度を確実に高めることができる。
【0025】
前項4では、絶縁性補強粒子の体積抵抗率が1×1012Ωcm以上であることにより、絶縁性補強剤を含有した接着剤層の電気絶縁性を確実に高めることできる。
【0026】
前項5では、接着剤と絶縁性補強剤を含有する接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びLが上記関係式1を満足することにより、包装材において当該接着剤層は金属箔層の変形に対して高い追随性を有する。そのため、包装材の突き刺し強度を確実に高めることができる。
【0027】
前項6では、絶縁性補強剤を含有した接着剤層の塗布量が2g/m2~10g/m2の範囲であり、当該接着剤層における絶縁性補強剤の含有量が0.2g/m2~1.0g/m2の範囲であることにより、当該着剤層の破断強度及び破断伸びが確実に向上する。そのため、包装材の突き刺し強度を確実に高めることができる。
【0028】
前項7では、高い突き刺し強度と高い電気絶縁性を有する包装ケースを提供できる。
【0029】
前項8では、蓄電デバイスは前項7記載の包装ケースを備えているので、衝撃、振動、外圧等の外力に対して高い耐久性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は本発明の第1実施形態に係る成形加工用包装材の概略断面図である。
【
図2】
図2は本発明の第2実施形態に係る成形加工用包装材の概略断面図である。
【
図3】
図3は本発明の第3実施形態に係る成形加工用包装材の概略断面図である。
【
図4】
図4は本発明の第4実施形態に係る成形加工用包装材の概略断面図である。
【
図5】
図5は本発明の第5実施形態に係る成形加工用包装材の概略断面図である。
【
図6】
図6は本発明の第6実施形態に係る成形加工用包装材の概略断面図である。
【
図7】
図7は本発明の一実施形態に係る蓄電デバイスの概略断面図である。
【
図8】
図8は同蓄電デバイスを分解して示す概略斜視図である。
【
図9】
図9は絶縁性補強粒子の体積抵抗率の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0032】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る成形加工用包装材1は内面1a及び外面1bを有するものである。
【0033】
この包装材1は、基本的には、第1基材層3、第1接着剤層6R、第2基材層4、第2接着剤層7R、金属箔層2、第3接着剤層8R及び熱融着性樹脂層5がこの記載の順に積層された積層体からなる。これらの層は積層状態で接合(接着)一体化されている。
【0034】
熱融着性樹脂層5は包装材1Aの内面1aに配置されており、したがって包装材1Aの内面1aは熱融着性樹脂層5の内面からなる。第1基材層3は包装材1Aの金属箔層2よりも外面1b側に配置されており、本第1実施形態では包装材1Aの外面1bに配置されており、したがって包装材1Aの外面1bは第1基材層3の外面からなる。
【0035】
金属箔層2の内面及び外面のうち少なくとも一方の面には金属箔層2の耐食性を高めるための化成皮膜2aが形成されている。本第1実施形態では金属箔層2の内面及び外面にそれぞれ化成皮膜2a、2aが形成されている。各化成皮膜2aは、金属箔の表面に化成処理が施されて形成されたものである。
【0036】
包装材1Aは、
図7及び8に示すように例えば蓄電デバイスの包装に用いられるものである。蓄電デバイスは具体的には例えばリチウムイオン電池30である。
【0037】
蓄電デバイスとしてのリチウムイオン電池30は、
図8に示すように、蓄電デバイス本体としてのリチウムイオン電池本体31と、電池本体31を包囲した状態に収容する包装ケース20とを具備する。包装ケース20は、上方に開口した容器状の包装ケース本体21と、包装ケース本体21の開口を閉塞する平板状の蓋体22とを、包装ケース20の構成部材として備えている。
【0038】
包装ケース本体21は、包装材1Aがその内面1aが内側に向くように深絞り成形加工又は張出し成形加工されて容器状に形成されたものである。すなわち、包装ケース本体21は包装材1の深絞り成形加工品又は張出し成形加工品からなる。
【0039】
包装ケース本体21の内面1aにおける中央部には電池本体31を収容する凹所21bが設けられている。包装ケース本体21の外周部に配置された側壁21cの上端には外側に突出したフランジ部21aが接合予定部として設けられている。
【0040】
蓋体22は、包装材1Aが成形加工されないで平坦な状態で用いられたものであり、蓋体22の外周部22aが蓋体22の接合予定部である。
【0041】
電池30では、包装ケース本体21の凹所21bに電池本体31が収容配置された状態で蓋体22がその内面1aを電池本体31側(下側)に向けて包装ケース本体21上に配置されており、そして包装ケース本体21のフランジ部21aの熱融着性樹脂層5と蓋体22の外周部22aの熱融着性樹脂層5とがヒートシールにより密封状態に熱融着(接合)されており、これにより
図7に示すように電池本体31が包装ケース20内に収容された状態の電池30が構成されている。
【0042】
なお
図7中の符号「23」は、包装ケース本体21のフランジ部21aの熱融着性樹脂層5と蓋体22の外周部22aの熱融着性樹脂層5とのヒートシール部(熱融着部)である。
【0043】
電池本体31に接続されたタブリード(図示せず)は一般に電池本体31からヒートシール部23を通って包装ケース20の外側に導出される。
【0044】
次に、第1実施形態の包装材1Aの構成及び包装材1Aの製造方法について以下に詳しく説明する。
【0045】
(第1基材層)
第1基材層3は例えば耐熱性樹脂フィルムからなる。第1基材層(耐熱性樹脂層フィルム)3の種類は限定されるものではなく、第1基材層3として、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が用いられ、好ましくはこれらの延伸フィルムが用いられる。中でも、第1基材層3としては、成形加工性および強度に優れている点で、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いることが好ましい。
【0046】
さらに、第1基材層3として、突き刺し強度及び成形加工性に優れている点で、二軸延伸ポリアミドフィルムを用いることが特に好ましい。ポリアミドフィルムの種類は限定されるものではなく、ポリアミドフィルムとして、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。
【0047】
また、第1基材層3は包装材1Aの最外層であることから、第1基材層3として耐擦過性及び耐吸湿性に優れたフィルムを用いることが好ましく、具体的には二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることが好ましい。
【0048】
第1基材層3の厚さは限定されるものではないが、9μm~50μmの範囲であることが好適である。第1基材層3としてポリエステルフィルムを用いる場合にはその厚さは9μm~50μmの範囲であることが好適であり、ポリアミドフィルムを用いる場合にはその厚さは10μm~50μmの範囲であることが好適である。厚さが上記の好適な範囲の下限以上であることにより包装材1Aとして十分な強度を確実に確保できるとともに、厚さが上記の好適な範囲の上限以下であることにより深絞り成形加工及び張出し成形加工の際に包装材1Aに作用する加工応力を確実に小さくすることができて包装材1Aの成形加工性を確実に向上させることができる。
【0049】
(第2基材層)
第2基材層4は例えば耐熱性樹脂フィルムからなる。第2基材層(耐熱性樹脂層フィルム)4の種類は限定されるものではなく、第2基材層4として、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が用いられ、好ましくはこれらの延伸フィルムが用いられる。中でも、第2基材層4としては、成形加工性および強度に優れている点で、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いることが好ましい。
【0050】
さらに、第2基材層4として、突き刺し強度及び成形加工性に優れている点で、二軸延伸ポリアミドフィルムを用いることが特に好ましい。ポリアミドフィルムの種類は限定されるものではなく、ポリアミドフィルムとして、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。
【0051】
さらに、耐擦過性及び耐吸湿性に優れている点で、第2基材層4として二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることが好ましい。ここで、第2基材層4は包装材1Aの最外層ではないことから、耐擦過性及び耐吸湿性に優れている点よりも突き刺し強度及び成形加工性に優れている点の方を優先すると、第2基材層4として二軸延伸ポリアミドフィルムを用いることが好ましい。
【0052】
第2基材層4の厚さは限定されるものではないが、9μm~50μmの範囲であることが好適である。第2基材層4としてポリエステルフィルムを用いる場合にはその厚さは9μm~50μmの範囲であることが好適であり、ポリアミドフィルムを用いる場合にはその厚さは10μm~50μmの範囲であることが好適である。厚さが上記の好適な範囲の下限以上であることにより包装材1Aとして十分な強度を確実に確保できるとともに、厚さが上記の好適な範囲の上限以下であることにより深絞り成形加工及び張出し成形加工の際に包装材1Aに作用する加工応力を確実に小さくすることができて包装材1Aの成形加工性を確実に向上させることができる。
【0053】
(熱融着性樹脂層)
熱融着性樹脂層5は、リチウムイオン電池等の蓄電デバイス30で用いられる腐食性の強い電解液などに対して優れた耐薬品性を包装材1に具備させるとともに、包装材1Aにヒートシール性を付与する役割を担う層である。
【0054】
熱融着性樹脂層5は例えば熱融着性樹脂フィルムからなる。熱融着性樹脂層(熱融着性樹脂フィルム)5の種類は限定されるものではなく、熱融着性樹脂層5として好ましくは熱融着性樹脂未延伸フィルムを用いることがよい。熱融着性樹脂未延伸フィルムとしては、耐薬品性及びヒートシール性に優れている点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選択される少なくとも1種の熱融着性樹脂からなる未延伸フィルムを用いることが好ましい。特に、突き刺し強度に優れている点で、ブロック共重合ポリプロピレンを含有してなる中間層の両面に、ランダム共重合ポリプロピレンを含有してなる被覆層が積層一体化された三層共押しポリプロピレンフィルムを用いることが好適である。なお、未延伸三層共押しポリプロピレンフィルムの層厚比は限定されるものではないが、エチレン-プロピレンランダム共重合体(rPP):エチレン-プロピレンブロック共重合体(bPP): エチレン-プロピレンランダム共重合体(rPP)=1~1.5:7~8:1~1.5の範囲であることが好ましい。
【0055】
熱融着性樹脂層5の厚さは限定されるものではないが、20μm~80μmの範囲であることが好ましい。厚さが20μm以上であることにより成形加工品にピンホールが発生するのを確実に抑制することができる。厚さが80μm以下であることにより樹脂使用量を確実に低減できて包装材1Aの製造コストの低減を確実に図りうる。中でも、熱融着性樹脂層5の厚さは30μm~80μmの範囲であることが特に好ましい。
【0056】
(金属箔層)
金属箔層2は、包装材1Aに酸素及び水分の侵入を抑制するガスバリア性を付与する役割を担う層である。
【0057】
金属箔層2は例えば金属箔からなる。金属箔層2の種類は限定されるものではなく、金属箔層2として、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔等が用いられ、一般的にアルミニウム箔が用いられる。
【0058】
金属箔層2の厚さは限定されるものではなく、好ましくは20μm~100μmの範囲であることがよい。厚さが20μm以上であることにより金属箔を製造する際の圧延時においてピンホールの発生を確実に抑制することができる。厚さが100μm以下であることにより深絞り成形加工及び張出し成形加工の際に包装材1に作用する加工応力を確実に小さくすることができて包装材1の成形加工性を確実に向上させることができる。
【0059】
(金属箔層の化成皮膜)
化成皮膜2aは、金属箔層2の耐食性を向上させるための膜(層)であり、例えば、金属箔層2を構成する金属箔の表面にクロメート処理、ジルコニウム化合物などを用いたノンクロム型化成処理を施すことによって形成することができる。例えば、クロメート処理の場合は、脱脂処理を行った金属箔の表面に下記1)~3)のいずれかの混合物の水溶液を金属箔の表面に塗工した後乾燥させる。
【0060】
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩のうちの少なくとも一方と、の混合物
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂のうちのいずれかと、クロム酸およびクロム(III)塩のうちの少なくとも一方と、の混合物
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂のうちのいずれかと、クロム酸およびクロム(III)塩のうちの少なくとも一方と、フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩のうちの少なくとも一方と、の混合物。
【0061】
化成皮膜2aのクロム付着量は限定されるものではないが、金属箔の片面で0.1mg/m2~50mg/m2の範囲であることが好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2の範囲であることが好ましい。化成皮膜2aの厚さは限定されるものではなく、好ましくは0.001μm~0.1μmの範囲であることがよい。このようなクロム付着量又は厚さの化成皮膜2aであることにより金属箔層2の耐食性を確実に高めることができる。
【0062】
本第1実施形態では上述したように化成皮膜2aは金属箔層2の内面及び外面にそれぞれ形成されているが、本発明ではその他に化成皮膜2aは金属箔層2の内面及び外面のいずれか一方だけに形成されていてもよい。
【0063】
(第1接着剤層)
第1接着剤層6Rは、第1基材層3と第2基材層4との間に配置される層であり、本第1実施形態では当該両層3、4の接合を担う層である。
【0064】
第1接着剤層6Rは、第1接着剤と絶縁性補強剤を含有する第1接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0065】
以下では、第1接着剤と絶縁性補強剤を含有する上述のような第1接着剤組成物と、第1接着剤を含有し絶縁性補強剤を含有しない第1接着剤組成物とを区別するため、前者を「絶縁性補強剤含有第1接着剤組成物」、後者を「絶縁性補強剤非含有第1接着剤組成物」ともいう。したがって、本第1実施形態では第1接着剤層6Rは絶縁性補強剤含有第1接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0066】
第1接着剤の種類は限定されるものではなく、第1接着剤として、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、変性ポリプロピレン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などが用いられる。これらの中でも、ポリウレタン系接着剤を用いることが好ましい。
【0067】
さらに、第1接着剤は、ドライラミネート用接着剤(例:ウレタン系接着剤、オレフィン系接着剤)として用いられるものであることが好ましい。具体的には、そのような第1接着剤として、例えば、第1接着剤の主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤が用いられる。
【0068】
第1接着剤組成物により第1基材層3と第2基材層4を接合する方法は限定されるものではなく、例えばドライラミネート法を挙げることができる。
【0069】
絶縁性補強剤の構成については後述する。
【0070】
(第2接着剤層)
第2接着剤層7Rは、金属箔層2と第2基材層4との間に配置される層であり、本第1実施形態では当該両層2、4の接合を担う層である。
【0071】
第2接着剤層7Rは、第2接着剤と絶縁性補強剤を含有する第2接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0072】
以下では、第2接着剤と絶縁性補強剤を含有する上述のような第2接着剤組成物と、第2接着剤を含有し絶縁性補強剤を含有しない第2接着剤組成物とを区別するため、前者を「絶縁性補強剤含有第2接着剤組成物」、後者を「絶縁性補強剤非含有第2接着剤組成物」ともいう。したがって、本第1実施形態では第2接着剤層7Rは絶縁性補強剤含有第2接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0073】
第2接着剤の種類は限定されるものではなく、第2接着剤として、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、変性ポリプロピレン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などが用いられる。これらの中でも、ポリウレタン系接着剤を用いることが好ましい。
【0074】
さらに、第2接着剤は、ドライラミネート用接着剤(例:ウレタン系接着剤、オレフィン系接着剤)として用いられるものであることが好ましい。具体的には、そのような第2接着剤として、例えば、第2接着剤の主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤が用いられる。
【0075】
第2接着剤組成物により金属箔層2と第2基材層4を接合する方法は限定されるものではなく、例えばドライラミネート法を挙げることができる。
【0076】
絶縁性補強剤の構成については後述する。
【0077】
(第3接着剤層)
第3接着剤層8Rは、金属箔層2と熱融着性樹脂層5との間に配置される層であり、本第1実施形態では当該両層2、5の接合を担う層である。
【0078】
第3接着剤層8Rは、第3接着剤と絶縁性補強剤を含有する第3接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0079】
以下では、第3接着剤と絶縁性補強剤を含有する上述のような第3接着剤組成物と、第3接着剤を含有し絶縁性補強剤を含有しない第3接着剤組成物とを区別するため、前者を「絶縁性補強剤含有第3接着剤組成物」、後者を「絶縁性補強剤非含有第3接着剤組成物」ともいう。したがって、本第1実施形態では第3接着剤層8Rは絶縁性補強剤含有第3接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0080】
第3接着剤の種類は限定されるものではなく、第3接着剤として、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤(例:酸変性ポリプロピレン接着剤)、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤などが用いられる。中でも、アクリル系接着剤及びポリオレフィン系接着剤を用いることが好ましく、この場合、包装材1Aの耐電解液性及び水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0081】
第3接着剤組成物により金属箔層2と熱融着性樹脂層5を接合する方法は限定されるものではなく、例えばドライラミネート法を挙げることができる。
【0082】
絶縁性補強剤の構成については後述する。
【0083】
(絶縁性補強剤)
上述した絶縁性補強剤として絶縁性補強粒子が用いられる。この絶縁性補強粒子としては絶縁性無機粒子及び有機粒子のうち少なくとも一種が用いられる。なお、一般に有機粒子は電気絶縁性を有している。
【0084】
絶縁性無機粒子としては、例えば、白木義一著「補強(その1) 無機補強剤」、日本ゴム協会誌、1980年、第53巻、第1号、第17-33頁における「表1 充てん剤の種類と性質」に挙げられている充填剤が用いられる。すなわち具体的には、絶縁性無機粒子として、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム、カルシウム・マグネシウム炭酸塩、ケイ酸塩、シリカ(ケイ酸:SiO2)、アルミニウム水和物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種の粒子が好適に用いられる。
【0085】
有機粒子としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の粒子(ビーズ)が好適に用いられる。
【0086】
したがって、絶縁性補強粒子としては、上述の絶縁性無機粒子と上述の有機粒子とからなる群より選択される少なくとも一種が好適に用いられる。また、絶縁性無機粒子と有機粒子は混合して用いられてもよい。
【0087】
本第1実施形態では、第1接着剤層6R、第2接着剤層7R及び第3接着剤層8Rのそれぞれに絶縁性補強剤が含有されている。これにより、絶縁性補強剤を含有しない接着剤層に比べて、各接着剤層6R、7R、8Rの電気絶縁性が向上するし、各接着剤層6R、7R、8Rの破断が起こりにくくなって各接着剤層6R、7R、8Rの破断強度(引張破断強度など)及び破断伸び(引張破断伸びなど)が向上する。そのため、包装材1Aの電気絶縁性と突き刺し強度を高めることができる。
【0088】
絶縁性補強粒子(絶縁性補強剤)の個数平均径は小さい方が好ましく、より好ましくは0.01μm~3μmの範囲であることがよい。この場合、各接着剤層6R、7R、8Rにおける破断パスが長くなって各接着剤層6R、7R、8Rの破断強度及び破断伸びが更に向上する。そのため、包装材1Aの突き刺し強度を更に高めることができる。絶縁性補強粒子の個数平均径のより好ましい上限は2.0μmである。
【0089】
絶縁性補強粒子の比表面積は大きい方が好ましく、好ましくは1m2/g以上であることがよい。この場合、絶縁性補強粒子と接着剤分子との相互作用が確実に大きくなり、各接着剤層6R、7R、8Rの破断強度が確実に向上する。そのため、包装材1Aの突き刺し強度を確実に高めることができる。絶縁性補強粒子の比表面積のより好ましい下限は10m2/gであり、より好ましい上限は500m2/gであり、更に好ましい上限は350m2/gである。
【0090】
絶縁性補強粒子の体積抵抗率は1×1012Ωcm以上であることが好ましい。すなわち、一般に各接着剤層6R、7R、8Rの接着剤として用いられている接着剤の硬化膜の体積抵抗率は1×1011Ωcm以上であることから、絶縁性補強粒子の体積抵抗率が1×1012Ωcm以上であることにより各接着剤層6R、7R、8Rの電気絶縁性を確実に高めることができる。絶縁性補強粒子の体積抵抗率のより好ましい下限は1×1013Ωcmであり、より好ましい上限は1×1016Ωcmである。
【0091】
参考のため、一般に各接着剤層6R、7R、8Rの接着剤として用いられる接着剤(樹脂)の硬化膜の体積抵抗率について幾つかの例を以下に記載する。
【0092】
ウレタン樹脂(接着剤層を想定) :1×1011~1×1013Ωcm
アクリル樹脂(メタクリル樹脂) :≧1×1014Ωcm
ポリエステル樹脂 :1×1015~1×1016Ωcm
ポリプロピレン樹脂 :≧1×1016Ωcm
ポリアミド樹脂(ポリアミド6) :1×1011Ωcm。
【0093】
さらに参考のため、シリカ粒子、炭化カルシウム粒子、酸化チタン粒子及びカーボンブラックの体積抵抗率を以下に記載する。
【0094】
シリカ粒子(SiO2粒子) :1×1016Ωcm
炭酸カルシウム粒子(CaCO3粒子):1×1014Ωcm
酸化チタン粒子(TiO2粒子) :1×104~1×1011Ωcm
カーボンブラック :1×10-2~1×10-1Ωcm。
【0095】
シリカ粒子、炭化カルシウム粒子、酸化チタン粒子及びカーボンブラックの中では体積抵抗率が1×1012Ωcm以上である粒子はシリカ粒子及び炭酸カルシウム粒子であることから、絶縁性補強粒子としてシリカ粒子及び炭酸カルシウム粒子の少なくとも一方を用いることが特に好ましい。
【0096】
絶縁性補強剤(絶縁性補強粒子)には、シラン系やチタン系のカップリング剤処理、又は合成高分子等による表面処理が絶縁性補強剤に施されることによって官能基が付加されていてもよく、この場合、絶縁性補強剤の表面活性を高めて絶縁性補強剤の接着剤との界面接着力を向上させることができる。
【0097】
絶縁性補強剤含有接着剤組成物の好ましい条件は以下のとおりである。
【0098】
絶縁性補強剤と接着剤の主剤との合計量に対する絶縁性補強剤の含有率は2質量%~10質量%の範囲であることが好ましい。なお、この含有率は詳述すると固形分含有率を意味しており、即ちこの含有率は溶剤の質量を含んでいない。以下同じである。
【0099】
各接着剤層6R、7R、8Rの塗布量は2g/m2~10g/m2の範囲であることが好ましい。さらに、各接着剤層6R、7R、8Rにおける絶縁性補強剤の含有量は0.2g/m2~1.0g/m2の範囲であることが好ましい。各接着剤層6R、7R、8Rの塗布量が上記の範囲であり且つ絶縁性補強剤の含有量が上記の範囲であることにより、各接着剤層6R、7R、8Rの破断強度及び破断伸びが確実に向上する。そのため、包装材1Aの突き刺し強度を確実に高めることができるし、包装材1Aの成形加工性も確実に高めることができる。なお、上述した各接着剤層6R、7R、8Rの塗布量は詳述すると固形分塗布量を意味し、上述した絶縁性補強剤の含有量は詳述すると固形分含有量を意味する。以下同じである。
【0100】
上述した各接着剤層6R、7R、8Rの塗布量のより好ましい下限は4g/m2であり、より好ましい上限は9g/m2である。上述した絶縁性補強剤の含有量のより好ましい下限は0.2g/m2であり、より好ましい上限は0.7g/m2である。
【0101】
また、各接着剤層6R、7R、8Rにおいて、絶縁性補強剤含有接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びをLとし、絶縁性補強剤非含有接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びをL0とするとき、Lは次の関係式1を満たしていることが好ましい。
【0102】
15%≦{(L-L0)/L0}×100%≦250% …(式1)。
【0103】
Lが上記関係式1を満足することにより、包装材1Aにおいて各接着剤層6R、7R、8Rは金属箔層2の変形に対して高い追随性を有する。そのため、包装材1Aの突き刺し強度を確実に高めることができるし、包装材1Aの成形加工性も確実に高めることができる。
【0104】
上記関係式1において、その中間辺である{(L-L0)/L0}×100%は絶縁性補強剤の含有による接着剤組成物(接着剤層)の硬化膜の引張破断伸びの向上率ΔLを意味している。この向上率ΔLは50%~230%の範囲であることが特に好ましい。
【0105】
絶縁性補強剤を接着剤に含有させるために絶縁性補強剤を接着剤に分散させる際には分散機を用いて分散を行うことが好ましく、またこの分散の際に界面活性剤等の分散剤を使用してもよい。
【0106】
絶縁性補強剤を接着剤に分散させる方法は限定されるものではないが、好ましくは次の方法であることがよい。
【0107】
すなわち、予め絶縁性補強剤を高濃度に含有させたインキ(これを「絶縁性補強剤高濃度含有インキ」ともいう)を調製しておく。そして、このインキを接着剤(好ましくは接着剤の主剤)に絶縁性補強剤の含有率が所定率になるように添加及び混合することにより、絶縁性補強剤を接着剤(その主剤)に分散させる。
【0108】
このインキの調製は例えば次のように行われる。
【0109】
すなわち、ビヒクル(樹脂と溶剤との混合物)に絶縁性補強剤を添加及び混合してインキのベースを調製し、これに助剤(界面活性剤、粘性調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤、沈降防止剤、消泡剤など)を添加し、分散機を用いて混練及び分散することにより、ビヒクルに絶縁性補強剤を均一に分散させて上述した絶縁性補強剤高濃度含有インキを調製する。
【0110】
ビヒクル用樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、塩素化ゴム、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂及びニトロセルロースからなる群より選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、この樹脂として、接着剤の主剤と同じ種類(より好ましくは同じ組成)の樹脂を用いるのが好ましく、これによりインキと接着剤の主剤とが相溶(混合)し易くなる。
【0111】
ビヒクル用溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、この溶剤として、接着剤用溶剤としても用いられる酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサン等を用いるのが好ましい。また必要に応じて助溶剤としてトルエン、メチルエチルケトン等を用いることができる。
【0112】
絶縁性補強剤としては、上述した絶縁性無機粒子及び上述した有機粒子のうち少なくとも一種が用いられることが好ましい。
【0113】
インキは、ビヒクル用樹脂、ビヒクル用溶剤、絶縁性補強剤及び助剤を次のような配合比率で調製されることが好ましい。
【0114】
樹脂 :15質量%~25質量%
溶剤 :40質量%~70質量%
絶縁性補強剤:5質量%~50質量%
助剤 :1質量%~5質量%。
【0115】
さらに、インキにおいて絶縁性補強剤が高濃度で且つ均一に分散されていることが好ましい。このようなインキを調製するため、上述の分散機として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、ダイノミル、ロールミル、超音波ミル、高圧衝突分散機などを用いることができるし、また1種類の分散機を用いて一回又は複数回分散処理をしてもよいし、2種類以上の分散機を併用して複数回分散処理をしてもよい。
【0116】
このように、絶縁性補強剤が高濃度に含有したインキを接着剤(好ましくは接着剤の主剤)に絶縁性補強剤の含有率が所定率になるように添加し、均一に混合及び分散することにより、絶縁性補強剤同士が2次凝集粒子を生成することを確実に抑制し、接着剤(その主剤)に絶縁性補強剤を確実に均一に分散させることができる。これにより、接着剤(その主剤)への絶縁性補強剤の添加後、数ヶ月放置しても絶縁性補強剤の沈降が発生しないといった、絶縁性補強剤が良好に分散性している接着剤(その主剤)を確実に得ることができる。
【0117】
絶縁性補強剤が例えば接着剤の主剤に添加される場合、上述のようにして得られた、絶縁性補強剤が良好に分散している接着剤の主剤と、硬化剤(例:イソシアネート硬化剤)とを反応させることで、絶縁性補強剤の2次凝集粒子による塗膜欠陥が非常に少ない接着剤組成物の硬化膜(即ち各接着剤層6R、7R、8R)を確実に形成することができる。これにより、この硬化膜は、絶縁性補強剤を含有しない接着剤組成物の硬化膜と比較して、引張破断伸びLが確実に向上し、成形加工時の変形や突き刺し変形に対して接着剤組成物の硬化膜が確実に追随できる。そのため各接着剤層6R、7R、8Rは良好な接着性を確実に維持することができる。
【0118】
(包装材の製造方法)
包装材1Aの好ましい製造方法の一例は次のとおりである。
【0119】
内面及び外面にそれぞれ化成皮膜2aが形成された金属箔層2を準備する。次いで、金属箔層2の外面に絶縁性補強剤含有第2接着剤組成物を所定の塗布方法で層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、金属箔層2の外面と第2基材層4の内面とを貼り合わせ、組成物の硬化条件に従って所定温度に保持(エージング)することにより組成物を硬化させる。
【0120】
次いで、第2基材層4の外面に絶縁性補強剤含有第1接着剤組成物を所定の塗布方法で層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、第2基材層4の外面と第1基材層3の内面とを貼り合わせ、組成物の硬化条件に従って所定温度に保持(エージング)することにより組成物を硬化させる。
【0121】
次いで、金属箔層2の内面に絶縁性補強剤含有第3接着剤組成物を所定の塗布方法で層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、金属箔層2の内面と熱融着性樹脂層5の外面とを貼り合わせ、組成物の硬化条件に従って所定温度に保持(エージング)することにより組成物を硬化させる。
【0122】
これにより、金属箔層2の外面に第2接着剤層7Rを介して第2基材層4が接合され且つ第2基材層4の外面に第1接着剤層6Rを介して第1基材層3が接合され且つ金属箔層2の内面に第3接着剤層8Rを介して熱融着性樹脂層5が接合されて、包装材1Aが得られる。
【0123】
ただし、本発明に係る包装材は上述した包装材1Aの製造方法により製造されたものに限定されるものではく、その他の方法により製造されたものであってもよい。
【0124】
例えば、第1基材層3と第2基材層4を予め第1接着剤層6Rを介して接合することにより、複層の基材層(即ち複数の基材層の接合一体化物)を作製しておく。次いで、金属箔層2と複層の基材層を第2接着剤層7Rを介して接合し、その後、金属箔層2と熱融着性樹脂層5を第3接着剤層8Rを介して接合する。この方法により包装材1Aが製造されたものであってもよい。
【0125】
本発明に係る成形加工用包装材は、上記第1実施形態の包装材1Aに限定されるものではなく、その他に例えば、
図2~6にそれぞれ示した第2~第6実施形態の包装材1B~1Fであってもよい。これらの包装材1B~1Fは上記第1実施形態の包装材1Aと同じく例えば蓄電デバイス30(
図7及び8参照)の包装に用いられる。
【0126】
これらの図において、上記第1実施形態の包装材1Aの要素と同じ作用を奏する要素には同じ符号が付されている。また、「6R」の符号が付された第1接着剤層は上記第1実施形態の包装材1Aの第1接着剤層と同じく絶縁性補強剤を含有しているものであり、「6」の符号が付された第1接着剤層は絶縁性補強剤を含有しないものである。また、「7R」の符号が付された第2接着剤層は上記第1実施形態の包装材1Aの第2接着剤層と同じく絶縁性補強剤を含有しているものであり、「7」の符号が付された第2接着剤層は絶縁性補強剤を含有しないものである。また、「8R」の符号が付された第3接着剤層は上記第1実施形態の包装材1Aの第3接着剤層と同じく絶縁性補強剤を含有しているものであり、「8」の符号が付された第3接着剤層は絶縁性補強剤を含有しないものである。
【0127】
以下、第2~第6実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0128】
図2に示した第2実施形態では、包装材1Bの第3接着剤層8は絶縁性補強剤を含有しない。したがって、第3接着剤層8は絶縁性補強剤非含有第3接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0129】
図3に示した第3実施形態では、包装材1Cの第2接着剤層7は絶縁性補強剤を含有しない。したがって、第2接着剤層7は絶縁性補強剤非含有第2接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0130】
図4に示した第4実施形態では、包装材1Dの第1接着剤層6は絶縁性補強剤を含有しない。したがって、第1接着剤層6は絶縁性補強剤非含有第1接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0131】
図5に示した第5実施形態では、包装材1Eの第2接着剤層7及び第3接着剤層8はそれぞれ絶縁性補強剤を含有しない。したがって、第2接着剤層7は絶縁性補強剤非含有第2接着剤組成物の硬化膜からなり、第3接着剤層8は絶縁性補強剤非含有第3接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0132】
図6に示した第6実施形態では、包装材1Fの第1接着剤層6及び第3接着剤層8はそれぞれ絶縁性補強剤を含有しない。したがって、第1接着剤層6は絶縁性補強剤非含有第1接着剤組成物の硬化膜からなり、第3接着剤層8は絶縁性補強剤非含有第3接着剤組成物の硬化膜からなる。
【0133】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0134】
例えば、本発明に係る包装材は、
図1に示した複数の層を備えたものに限定されるものではなく、その他に例えば、
図1に示した複数の層に新たに層が追加されて包装材の機能が付加又は向上されたものであってもよい。
【実施例0135】
本発明の具体的な実施例及び比較例を以下に示す。だたし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0136】
ここで、下記実施例1~8及び下記比較例1では、金属箔層2として、全て同じ材質のアルミニウム箔を用いた。その材質はJIS H4160で規定されたアルミニウム合金記号A8079である。全てのアルミニウム箔の厚さは40μmである。さらに、全てのアルミニウム箔の内面及び外面にはそれぞれ実施例1と同じ化成処理による化成皮膜2aが形成されている。
【0137】
さらに、下記実施例1~8及び下記比較例1では、第1基材層3として、全て同じ単層の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。全てのフィルムの厚さは12μmである。また全てのフィルムの内面には接着剤組成物との濡れ性を向上させるため予めコロナ処理が施されている。
【0138】
さらに、下記実施例1~8及び下記比較例1では、第2基材層4として、全て同じ単層の二軸延伸ナイロン(ONY)フィルムを用いた。全てのフィルムの厚さは15μmである。また全てのフィルムの内面及び外面にはそれぞれ接着剤組成物との濡れ性を向上させるため予めコロナ処理が施されている。
【0139】
さらに、下記実施例1~8及び下記比較例1では、熱融着性樹脂層5として、全て同じ未延伸三層共押しポリプロピレン(CPP)フィルムを用いた。全てのフィルムの厚さは80μmであり、その層厚比はrPP:bPP:rPP=1:8:1である。また全てのフィルムの外面(即ちフィルムにおける金属箔層2との貼り合わせ面)には接着剤組成物との濡れ性を向上させるため予めコロナ処理が施されている。
【0140】
<実施例1>
第1接着剤層を構成する第1接着剤組成物として、まず、第1接着剤を含有し絶縁性補強剤を含有しない第1接着剤組成物、即ち絶縁性補強剤非含有第1接着剤組成物を準備した。この第1接着剤組成物では、第1接着剤として二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を用いた。この第1接着剤組成物の作製方法は次のとおりであった。
【0141】
まず、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の主剤であるポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)を次の方法で作製した。すなわち、ネオペンチルグリコール30モル部、エチレングリコール30モル部、及び1,6-ヘキサンジオール40モル部を80℃で溶融し、撹拌しながらこの溶融物と脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸(メチレン数4)30モル部及び芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸70モル部とを210℃で20時間縮重合反応させることにより、主剤であるポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオールは、数平均分子量(Mn)12,000、重量平均分子量(Mw)20,500、及びこれらの比率(Mw/Mn)1.7であった。さらに、このポリエステルポリオール40質量部に酢酸エチル60質量部を添加することにより流動状のポリエステルポリオール樹脂溶液を調製した。その水酸基価は2.2mgKOH/g(溶液値)であった。
【0142】
次いで、上記の主剤であるポリエステルポリオール樹脂溶液100質量部に対して、硬化剤として芳香族イソシアネート化合物であるトリレンジイソシアネート(TDI)(芳香族系)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体(NCO13.0質量%、固形分75質量%)7.1質量部を添加し、さらに酢酸エチル34.1質量部を添加して撹拌及び混合することによって、絶縁性補強剤非含有第1接着剤組成物(即ち二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂)を作製した。この第1接着剤組成物において、イソシアネート官能基(-NCO)とポリエステルポリオール水酸基(-OH)のモル比(-NCO)/(-OH)は10であった。
【0143】
次いで、この第1接着剤組成物の硬化膜をその物性を評価するため次の方法により作製した。
【0144】
すなわち、この第1接着剤組成物を非接着性の未処理ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚さが10μmとなるように層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、残存イソシアネートが5質量%以下になるまで組成物を60℃でエージングすることで硬化させた。その後、当該硬化物を上述の未処理ポリプロピレンフィルムから剥離することにより、第1接着剤組成物の硬化膜(厚さ10μm)を作製した。
【0145】
この硬化膜を15mm幅に切断することにより試験片を採取した。そして、この試験片について引張試験を行い、試験片の引張破断強度及び引張破断伸びL0を測定したところ、引張破断強度が30MPa及び引張破断伸びL0が18%であった。
【0146】
なお、上記の引張試験はJIS K7161-1:2014に準拠して標点距離50mm及び引張速度100mm/minの条件で行った。以下同じである。
【0147】
次いで、二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂の主剤であるポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)と、絶縁性補強剤としてシリカ粒子(SiO2粒子:個数平均径0.4μm、比表面積10m2/g、体積抵抗率1×1016Ωcm)とを含有する第1接着剤組成物、即ち絶縁性補強剤含有第1接着剤組成物を準備した。この組成物の作製方法は以下のとおりであった。
【0148】
ビヒクル用樹脂として上記のポリエステルポリオール20質量部と、ビヒクル用溶剤として酢酸エチル40質量部と、絶縁性補強剤として上記のシリカ粒子35質量部と、助剤(分散剤及び沈降防止剤)5質量部とを混合し、この混合物を分散機を用いて混練及び分散することにより、シリカ粒子を高濃度に含有したインキ(シリカ粒子の含有濃度:35質量%)を調製した。
【0149】
次いで、上記のポリエステルポリオール樹脂溶液100質量部と酢酸エチル64.4質量部とに、上記のインキを所定量添加し、分散機を用いて混合及び分散することにより、シリカ粒子含有第1接着剤の主剤を作製した。
この主剤100質量部に対して、硬化剤として芳香族イソシアネート化合物であるトリレンジイソシアネート(TDI)(芳香族系)とトリメチロールプロパンとのアダクト体(NCO13.0質量%、固形分75質量%)7.1質量部を添加し、さらに酢酸エチル34.1質量部を添加して撹拌及び混合することによってシリカ粒子含有第1接着剤組成物(即ちシリカ粒子含有二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂)を作製した。この第1接着剤組成物において、イソシアネート官能基(-NCO)とポリエステルポリオール水酸基(-OH)のモル比(-NCO)/(-OH)は10であり、この第1接着剤組成物におけるシリカ粒子の含有率は4.6質量%であった。
【0150】
次いで、この第1接着剤組成物の硬化膜をその物性を評価するため次の方法により作製した。
【0151】
すなわち、この第1接着剤組成物を非接着性の未処理ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚さが10μmとなるように層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、残存イソシアネートが5質量%以下になるまで組成物を60℃でエージングすることで硬化させた。その後、当該硬化物を上述の未処理ポリプロピレンフィルムから剥離することにより、第1接着剤組成物の硬化膜(厚さ10μm)を作製した。
【0152】
この硬化膜を15mm幅に切断することにより試験片を採取した。そして、この試験片について引張試験を行い、引張破断強度及び引張破断伸びLを測定したところ、引張破断強度が33MPa及び引張破断伸びLが32%であった。
【0153】
したがって、シリカ粒子の含有による第1接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びの向上率ΔL(={(L-L0)/L0}×100%)は78%であった。
【0154】
次いで、第1基材層3としての上記の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの内面に上記の第1接着剤組成物を4.5g/m2の塗布量(詳述すると固形分塗布量。以下同じ)で層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの内面と第2基材層4としての上記の二軸延伸ナイロン(ONY)フィルムの外面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第1接着剤層6Rにおけるシリカ粒子の含有量は0.21g/m2であった。このようにして、複層の基材層(即ち第1基材層3と第2基材層4との接合一体化物)を作製した。
【0155】
次いで、金属箔層2としての上記のアルミニウム箔の内面及び外面にそれぞれ化成皮膜2aを形成した。この化成皮膜2aの形成は、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水及びアルコールからなる化成処理液をアルミニウム箔の内面及び外面に塗布した後、150℃で乾燥することにより行った。化成皮膜2aのクロム付着量はアルミニウム箔の片面で10mg/m2であり、各化成皮膜2aの厚さは0.01μmであった。
【0156】
次いで、アルミニウム箔の外面に上記のシリカ粒子含有第1接着剤組成物を第2接着剤組成物として4.5g/m2の塗布量で層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、アルミニウム箔の外面と第2基材層4としての上記の二軸延伸ナイロン(ONY)フィルムの内面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第2接着剤層7Rにおけるシリカ粒子の含有量は0.21g/m2であった。
【0157】
次いで、第3接着剤層を構成する第3接着剤組成物として、まず、第3接着剤を含有し絶縁性補強剤を含有しない第3接着剤組成物、即ち絶縁性補強剤非含有第3接着剤組成物を準備した。この第3接着剤組成物では、第3接着剤として酸変性ポリプロピレン(PP)接着剤を用いた。この第3接着剤組成物の作製方法は次のとおりであった。
【0158】
すなわち、酸変性ポリプロピレン樹脂溶液15質量部と、メチルシクロヘキサン:メチルエチルケトン=8質量部:2質量部の混合有機溶剤85質量部とに対して、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のポリマー体(多官能イソシアネート化合物)を当量比(NCO/OH)が1.8になるように0.9質量部添加して撹拌及び混合することによって、上記の第3接着剤組成物を作製した。
【0159】
次いで、この第3接着剤組成物の硬化膜をその物性を評価するため次の方法により作製した。
【0160】
すなわち、この第3接着剤組成物を非接着性の未処理ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚さが10μmとなるように層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、残存イソシアネートが5質量%以下になるまで組成物を40℃でエージングすることで硬化させた。その後、当該硬化物を上述の未処理ポリプロピレンフィルムから剥離することにより、第3接着剤組成物の硬化膜(厚さ10μm)を作製した。
【0161】
この硬化膜を15mm幅に切断することにより試験片を採取した。そして、この試験片について引張試験を行い、引張破断強度及び引張破断伸びL0を測定したところ、引張破断強度が20MPa及び引張破断伸びが105%であった。
【0162】
次いで、酸変性ポリプロピレン接着剤と、絶縁性補強剤としてシリカ粒子(SiO2粒子:個数平均径0.4μm、比表面積10m2/g、体積抵抗率1×1016Ωcm)とを含有する第3接着剤組成物、即ち絶縁性補強剤含有第3接着剤組成物を準備した。この組成物の作製方法は以下のとおりであった。
【0163】
ビヒクル用樹脂として上記の酸変性ポリプロピレン樹脂溶液20質量部と、ビヒクル用溶剤としてメチルシクロヘキサン:メチルエチルケトン=8質量部:2質量部の混合有機溶剤40質量部と、上記のシリカ粒子35質量部と、助剤(分散剤及び沈降防止剤)5質量部とを混合し、この混合物を分散機を用いて混練及び分散することにより、シリカ粒子を高濃度に含有したインキ(シリカ粒子の含有濃度:35質量%)を調製した。
【0164】
次いで、酸変性ポリプロピレン樹脂溶液15質量部とメチルシクロヘキサン:メチルエチルケトン=8質量部:2質量部の混合有機溶剤85質量部とに、上記のインキを所定量添加し、分散機を用いて混合及び分散することにより、シリカ粒子含有第3接着剤の主剤を作製した。
【0165】
この主剤100質量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のポリマー体(多官能イソシアネート化合物)を当量比(NCO/OH)が1.8になるように0.9質量部添加して撹拌及び混合することによってシリカ粒子含有第3接着剤組成物(即ちシリカ粒子含有酸変性ポリプロピレン樹脂)を作製した。この第3接着剤組成物におけるシリカ粒子の含有率は4.2質量%であった。
【0166】
次いで、この第3接着剤組成物の硬化膜をその物性を評価するため次の方法により作製した。
【0167】
すなわち、この第3接着剤組成物を非接着性の未処理ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚さが10μmとなるように層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、残存イソシアネートが5質量%以下になるまで組成物を40℃でエージングすることで硬化させた。その後、当該硬化物を上述の未処理ポリプロピレンフィルムから剥離することにより、第3接着剤組成物の硬化膜(厚さ10μm)を作製した。
【0168】
この硬化膜を15mm幅に切断することにより試験片を採取した。そして、この試験片について引張試験を行い、引張破断強度及び引張破断伸びLを測定したところ、引張破断強度が23MPa及び引張破断伸びLが138%であった。
【0169】
したがって、シリカ粒子の含有による第3接着剤組成物の硬化膜の引張破断伸びの向上率ΔLは31%であった。
【0170】
次いで、アルミニウム箔の内面に上記のシリカ粒子含有第3接着剤組成物を5.0g/m2の塗布量(詳述すると固形分塗布量。以下同じ)で層状に塗布し、組成物中の溶剤を乾燥蒸発させ、そして、アルミニウム箔の内面と熱融着性樹脂層5として上記の未延伸三層共押しポリプロピレン(CPP)フィルムの外面とを貼り合わせ、40℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第3接着剤層8Rにおけるシリカ粒子の含有量は0.21g/m2であった。
【0171】
以上の方法により包装材を製造した。
【0172】
<実施例2>
実施例1において、絶縁性補強剤をシリカ粒子(SiO2粒子:個数平均径0.03μm、比表面積150m2/g、体積抵抗率1×1016Ωcm)とし且つ第1及び第2接着剤組成物におけるシリカ粒子の含有率をそれぞれ6.0質量%としたこと、並びに、第3接着剤組成物におけるシリカ粒子の含有率を5.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして各接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、包装材を製造した。この場合、第1及び第2接着剤層6R、7Rにおけるシリカ粒子の含有量はそれぞれ0.27g/m2であり、第3接着剤層8Rにおけるシリカ粒子の含有量は0.25g/m2であった。
【0173】
また、各接着剤組成物の硬化膜の引張試験で測定及び算出された引張破断伸び及びその向上率ΔLの値を表1の各接着剤層の「硬化膜」欄に記載した。下記実施例3~8及び下記比較例1でも同じである。
【0174】
<実施例3>
実施例1において、絶縁性補強剤をシリカ粒子(SiO2粒子:個数平均径0.01μm、比表面積330m2/g、体積抵抗率1×1016Ωcm)とし且つ第1及び第2接着剤組成物におけるシリカ粒子の含有率をそれぞれ7.5質量%とし且つ第1及び第2接着剤組成物の塗布量をそれぞれ5.5g/m2としたこと、並びに、第3接着剤組成物におけるシリカ粒子の含有率を6.5質量%とし且つ第3接着剤組成物の塗布量を6.0g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして各接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、包装材を製造した。この場合、第1及び第2接着剤層6R、7Rにおけるシリカ粒子の含有量はそれぞれ0.41g/m2であり、第3接着剤層8Rにおけるシリカ粒子の含有量は0.39g/m2であった。
【0175】
<実施例4>
実施例1において、絶縁性補強剤を炭酸カルシウム粒子(CaCO3粒子:個数平均径0.03μm、比表面積130m2/g、体積抵抗率1×1014Ωcm)とし且つ第1及び第2接着剤組成物における炭酸カルシウム粒子の含有率をそれぞれ3.5質量%とし且つ第1及び第2接着剤組成物の塗布量をそれぞれ6.5g/m2としたこと、並びに、第3接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にして各接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、包装材を製造した。この場合、第1及び第2接着剤層6R、7Rにおける炭酸カルシウム粒子の含有量はそれぞれ0.23g/m2であった。
【0176】
<実施例5>
実施例1において、絶縁性補強剤を炭酸カルシウム粒子(CaCO3粒子:個数平均径0.03μm、比表面積130m2/g、体積抵抗率1×1014Ωcm)とし且つ第1接着剤組成物における炭酸カルシウム粒子の含有率を3.5質量%とし且つ第1接着剤組成物の塗布量を6.5g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして第1接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第1基材層3)の内面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の外面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第1接着剤層6Rにおける炭酸カルシウム粒子の含有量は0.23g/m2であった。
【0177】
次いで、実施例1において、第2接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム箔の外面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の内面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。
【0178】
次いで、実施例1において、絶縁性補強剤を炭酸カルシウム粒子(CaCO3粒子:個数平均径0.03μm、比表面積130m2/g、体積抵抗率1×1014Ωcm)とし且つ第3接着剤組成物における炭酸カルシウム粒子の含有率を3.5質量%とし且つ第3接着剤組成物の塗布量を6.5g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして第3接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、アルミニウム箔の内面と未延伸三層共押しポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂層5)の外面とを貼り合わせ、40℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第3接着剤層8Rにおける炭酸カルシウム粒子の含有量は0.23g/m2であった。
【0179】
以上の方法により包装材を製造した。
【0180】
<実施例6>
実施例1において、第1接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第1基材層3)の内面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の外面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。
【0181】
次いで、実施例1において、絶縁性補強剤を炭酸カルシウム粒子(CaCO3粒子:個数平均径0.03μm、比表面積130m2/g、体積抵抗率1×1014Ωcm)とし且つ第2接着剤組成物における炭酸カルシウム粒子の含有率を3.5質量%とし且つ第2接着剤組成物の塗布量を6.5g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして第2接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、アルミニウム箔の外面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の内面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第2接着剤層7Rにおける炭酸カルシウム粒子の含有量は0.23g/m2であった。
【0182】
次いで、実施例1において、絶縁性補強剤を炭酸カルシウム粒子(CaCO3粒子:個数平均径0.03μm、比表面積130m2/g、体積抵抗率1×1014Ωcm)とし且つ第3接着剤組成物における炭酸カルシウム粒子の含有率を3.5質量%とし且つ第3接着剤組成物の塗布量を6.5g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして第3接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、アルミニウム箔の内面と未延伸三層共押しポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂層5)の外面とを貼り合わせ、40℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第3接着剤層8Rにおける炭酸カルシウム粒子の含有量は0.23g/m2であった。
【0183】
以上の方法により包装材を製造した。
【0184】
<実施例7>
実施例1において、絶縁性補強剤をアクリル樹脂粒子(個数平均径2.0μm、比表面積2.5m2/g、体積抵抗率1×1015Ωcm)とし且つ第1接着剤組成物におけるアクリル樹脂粒子の含有率を5.5質量%とし且つ第1接着剤組成物の塗布量を5.0g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして第1接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第1基材層3)の内面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の外面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第1接着剤層6Rにおけるアクリル樹脂粒子の含有量は0.28g/m2であった。
【0185】
次いで、実施例1において、第3接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム箔の外面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の内面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。
【0186】
次いで、実施例1において、第3接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させなかったこと及び第3接着剤組成物の塗布量を6.5g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして第3接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、アルミニウム箔の内面と未延伸三層共押しポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂層5)の外面とを貼り合わせ、40℃でエージングすることで組成物を硬化させた。
【0187】
以上の方法により包装材を製造した。
【0188】
<実施例8>
実施例1において、第1接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にして第1接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第1基材層3)の内面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の外面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。
【0189】
次いで、実施例1において、絶縁性補強剤をアクリル樹脂粒子(個数平均径2.0μm、比表面積2.5m2/g、体積抵抗率1×1015Ωcm)とし且つ第2接着剤組成物におけるアクリル樹脂粒子の含有率を5.5質量%とし且つ第2接着剤組成物の塗布量を5.0g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして第2接着剤組成物の硬化膜の引張試験を行うとともに、アルミニウム箔の外面と二軸延伸ナイロンフィルム(第2基材層4)の内面とを貼り合わせ、60℃でエージングすることで組成物を硬化させた。この場合、第2接着剤層7Rにおけるアクリル樹脂粒子の含有量は0.28g/m2であった。
【0190】
次いで、実施例1において、第3接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させなかったこと及び第3接着剤組成物の塗布量を6.5g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム箔の内面と未延伸三層共押しポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂層5)の外面とを貼り合わせ、40℃でエージングすることで組成物を硬化させた。
【0191】
以上の方法により包装材を製造した。
【0192】
<比較例1>
実施例1において、第1~第3接着剤組成物に絶縁性補強剤を含有させないこと以外は、実施例1と同様にして包装材を製造した。
【0193】
(比表面積の測定方法)
上記実施例1~8及び上記比較例1において、絶縁性補強剤(絶縁性補強粒子)の比表面積はJIS Z8330:2013に準拠して次の方法により測定した。
【0194】
すなわち、補強剤を秤量し、秤量した補強剤をガス吸着式細孔分布測定器(NOVA4200e:株式会社セイシン企業)を用いてN2ガスパージ法(ガス流量20cm3/min、ガス圧力20kPa、加熱温度200℃、処理時間2時間)にて前処理した後、BET多点法により絶縁性補強剤の比表面積を測定した。
【0195】
(体積抵抗率の測定方法)
上記実施例1~8及び上記比較例1において、
図9に示すように、絶縁性補強剤(絶縁性補強粒子)60の体積抵抗率は、絶縁抵抗計59とガード付き電極50を用いてASTM D257に準拠して次の手順1~6に従って測定した。
【0196】
なお、ガード付き電極50は、主電極51(直径25mm)、ガード電極52及び対向電極53(寸法50mm×50mm)を備えており、両電極51、53間の隙間dは10mmであった。また、絶縁抵抗計59として株式会社エーディーシー製のデジタル超高抵抗/微小電流計「5450」を用いた。
【0197】
手順1:ガード付き電極50の充填部に絶縁性補強剤60を測定容器57内いっぱいに入れる。
【0198】
手順2:測定容器57を高さ10cmまで持ち上げて落下させることにより絶縁性補強剤60を測定容器57内に圧縮充填する。
【0199】
手順3:この持上げ-落下操作を50回繰り返したのち、主電極51及び対向電極53から延びた導線55、55を絶縁抵抗計59に接続する。
【0200】
手順4:絶縁抵抗計59の印加スイッチをONにし、印加電圧500Vで通電時間1分経過時の抵抗値を読み取る。
【0201】
手順5:ガード付き電極50を取り出し、両電極51、53間に挟まれていた絶縁性補強剤60を秤量し、絶縁性補強剤60の充填密度を計算する。
【0202】
手順6:主電極51の有効面積(491mm2)、両電極51、53間の隙間d(10mm)、印加電圧(500V)、抵抗値及び絶縁性補強剤60の充填密度を用いて、絶縁性補強剤60の体積抵抗率を算出する。
【0203】
(個数平均径の求め方)
絶縁性補強剤の個数平均径は次の方法により求めた。
【0204】
絶縁性補強粒子の懸濁液を調製し、懸濁液に対してレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(Partica LA-960V2:株式会社堀場製作所)を用いて絶縁性補強粒子の粒度分布を測定し、絶縁性補強粒子の個数平均径を求めた。
【0205】
(包装材の評価)
上記実施例1~8及び上記比較例1のそれぞれの包装材について突き刺し強度の測定及び成形加工性試験を行った。その結果を次の表1に示す。
【0206】
【0207】
<突き刺し強度>
包装材の突き刺し強度はJIS Z1707:2019に準拠して測定した。その際の突き刺し強度試験は次の手順1~2に従って行った。
【0208】
手順1:包装材から採取した試験片をジグで固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を試験速度50±5mm/minで耐熱性樹脂層側から突き刺し、針が貫通するまでの最大力(N)を測定する。
【0209】
手順2:包装材から採取する試験片の数は5個以上とし、包装材の全幅にわたって平均するように試験片を採取する。
【0210】
表1中の「突き刺し強度」欄において符号の意味は次のとおりである。なお、◎、○及び△を突き刺し強度試験の合格とした。
【0211】
◎:突き刺し強度が28N超
〇:突き刺し強度が27N以上28N以下
△:突き刺し強度が25N超27N未満
×:突き刺し強度が25N以下。
【0212】
<成形加工性試験>
パンチ形状:33mm×54mm、パンチのコーナーR:2mm、パンチ肩R:1.3mm、ダイス形状のダイス肩R:1mmの金型が設置された株式会社アマダ製プレス機を準備した。
【0213】
そして、包装材から縦100mm×横125mmの長方形状の試験素板を採取し、上記プレス機を用いて試験素板を深絞り成形加工することにより成形加工品を形成した。
【0214】
この成形加工品におけるコーナー部のピンホール及びクラック(割れ)の有無を暗室にて透過光法により確認し、ピンホール及び割れが発生しない「最大成形加工深さ(mm)」を調べ、包装材の成形加工性を評価した。その評価基準は以下のとおりである。なお、◎及び○を成形加工性試験の合格とした。
【0215】
◎:最大成形加工深さが7.5mm以上でクラック及びピンホール無し
〇:最大成形加工深さが7mm以上7.5m未満でクラック及びピンホール無し
×:最大成形加工深さが7mm未満でクラック又は/及びピンホール有り。
【0216】
上記表1から分かるように、第1~第3接着剤層6R~8Rのうち少なくとも一つが絶縁性補強剤を含有している実施例1~8の包装材は高い突き刺し強度を有していることを確認し得た。