(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062026
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】作業領域管理方法、作業領域管理システムおよび作業領域管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240430BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01B69/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169763
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】石川 彬
【テーマコード(参考)】
2B043
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA03
2B043BB01
2B043BB14
2B043EA34
2B043EA35
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】作業領域に非植付領域が存在する可能性を考慮することによって、実作業領域を簡単に、かつ、精度よく推定する。
【解決手段】作業領域管理方法は、圃場(9)内を移動しながら作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、作業装置が直線状に移動しながら作業を行う畝(93)の範囲を検出すること(S02)と、隣接する2つの畝の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、2つの畝の間の領域に存在する、作業の対象である作物を植え付けない非植付領域(94)の範囲を、畝の、畝が延在する方向の長さである畝長さと、畝間距離とに基づいて推定すること(S03)と、圃場のうちの、作業装置が作業を行った作業領域から、非植付領域を除外した実作業領域の範囲を推定すること(S05)と、実作業領域の範囲を表す情報を外部へ出力すること(S06)とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内を移動しながら作業を行う作業装置の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、前記作業装置が直線状に移動しながら前記作業を行う畝の範囲を検出することと、
隣接する2つの前記畝の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、前記2つの畝の間の領域に存在する、前記作業の対象である作物を植え付けない非植付領域の範囲を、前記畝の、前記畝が延在する方向の長さである畝長さと、前記畝間距離とに基づいて推定することと、
前記圃場のうちの、前記作業装置が前記作業を行った作業領域から、前記非植付領域を除外した実作業領域の範囲を推定することと、
前記実作業領域の前記範囲を表す情報を外部へ出力することと
を含む
作業領域管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の作業領域管理方法において、
前記畝の間に設けられて、防除作業を行うときに通路として使用する防除畝を、前記非植付領域として検出すること
をさらに含む
作業領域管理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業領域管理方法において、
前記閾値は、複数の前記畝間距離の統計値に所定の値を加算した値または前記統計値に所定の係数を積算した値である
作業領域管理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の作業領域管理方法において、
前記作業領域の単位面積当たりの生産量を、前記実作業領域の面積に基づいて評価すること
をさらに含む
作業領域管理方法。
【請求項5】
圃場内を移動しながら作業を行う作業装置の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、前記作業装置が直線状に移動しながら前記作業を行う畝の範囲を検出する畝検出部と、
隣接する2つの前記畝の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、前記2つの畝の間の領域に存在する、前記作業の対象である作物を植え付けない非植付領域の範囲を、前記畝の、前記畝が延在する方向の長さである畝長さと、前記畝間距離とに基づいて推定する非植付領域推定部と、
前記圃場のうちの、前記作業装置が前記作業を行った作業領域から、前記非植付領域を除外した実作業領域の範囲を推定する実作業領域推定部と、
前記実作業領域の前記範囲を表す情報を外部へ出力する出力部と
を備える
作業領域管理システム。
【請求項6】
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現するための作業領域管理プログラムであって、
前記処理は、
圃場内を移動しながら作業を行う作業装置の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、前記作業装置が直線状に移動しながら前記作業を行う畝の範囲を検出することと、
隣接する2つの前記畝の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、前記2つの畝の間の領域に存在する、前記作業の対象である作物を植え付けない非植付領域の範囲を、前記畝の、前記畝が延在する方向の長さである畝長さと、前記畝間距離とに基づいて推定することと、
前記圃場のうちの、前記作業装置が前記作業を行った作業領域から、前記非植付領域を除外した実作業領域の範囲を推定することと、
前記実作業領域の前記範囲を表す情報を外部へ出力することと
を含む
作業領域管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業領域管理方法、作業領域管理システムおよび作業領域管理プログラムに関し、例えば、圃場のうちの農作業を行った作業領域の範囲の管理に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2022-030855号公報)には、作業管理システムが開示されている。この作業管理システムは、圃場を移動しながら作業を行う作業機械の、作業期間における複数の位置情報を取得し、作業機械が作業を行った作業領域を、これら複数の位置情報がそれぞれ表す複数の位置に対する凸包処理によって算出し、作業領域に基づいて圃場の収穫状態を評価する。
【0003】
特許文献1は、作業機械が作業を行った作業領域を、自動的に取得した位置情報に基づいて比較的簡単に検出できる点において優れている。ただし、このように検出した作業領域には、圃場の収穫量に直接的に寄与しない非植付領域が含まれる場合がある。非植付領域には、例えば、作業領域のうちの、作物が植え付けられている実作業領域に対して、ブームスプレーヤーなどを用いて防除作業を行う作業機械が通過する通路として設けられる、防除畝などが含まれる。したがって、圃場の収穫状態を評価するとき、正確には非植付領域を除外した実作業領域の単位面積当たりの収穫量に基づいて評価すべきところを、非植付領域を含む作業領域の単位面積当たりの収穫量を用いると、評価が実際より低くなる可能性がある、という課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、作業領域に非植付領域が存在する可能性を考慮することによって、実作業領域を簡単に、かつ、精度よく推定する作業領域管理方法、作業領域管理システムおよび作業領域管理プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0007】
一実施の形態によれば、作業領域管理方法は、圃場(9)内を移動しながら作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、作業装置(2)が直線状に移動しながら作業を行う畝(93)の範囲を検出すること(S02)を含む。作業領域管理方法は、さらに、隣接する2つの畝(93)の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、2つの畝(93)の間の領域に存在する、作業の対象である作物を植え付けない非植付領域(94)の範囲を、畝(93)の、畝(93)が延在する方向の長さである畝長さと、畝間距離とに基づいて推定すること(S03)を含む。作業領域管理方法は、さらに、圃場(9)のうちの、作業装置(2)が作業を行った作業領域から、非植付領域(94)を除外した実作業領域の範囲を推定すること(S05)と、実作業領域の範囲を表す情報を外部へ出力すること(S06)とを含む。
【0008】
一実施の形態によれば、作業領域管理システム(1)は、畝検出部(522)と、非植付領域推定部(523)と、実作業領域推定部(524)と、出力部(526)とを備える。畝検出部(522)は、圃場(9)内を移動しながら作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、作業装置(2)が直線状に移動しながら作業を行う畝(93)の範囲を検出する。非植付領域推定部(523)は、隣接する2つの畝(93)の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、2つの畝(93)の間の領域に存在する、作業の対象である作物を植え付けない非植付領域(94)の範囲を、畝(93)の、畝(93)が延在する方向の長さである畝長さと、畝間距離とに基づいて推定する。実作業領域推定部(524)は、圃場(9)のうちの、作業装置(2)が作業を行った作業領域から、非植付領域(94)を除外した実作業領域の範囲を推定する。出力部(526)は、実作業領域の範囲を表す情報を外部へ出力する。
【0009】
一実施の形態によれば、作業領域管理プログラムは、演算装置に実行させることによって所定の処理を実現するためのプログラムである。この処理は、圃場(9)内を移動しながら作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、作業装置(2)が直線状に移動しながら作業を行う畝(93)の範囲を検出すること(S02)を含む。この処理は、さらに、隣接する2つの畝(93)の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、2つの畝(93)の間の領域に存在する、作業の対象である作物を植え付けない非植付領域(94)の範囲を、畝(93)の、畝(93)が延在する方向の長さである畝長さと、畝間距離とに基づいて推定すること(S03)を含む。この処理は、さらに、圃場(9)のうちの、作業装置(2)が作業を行った作業領域から、非植付領域(94)を除外した実作業領域の範囲を推定すること(S05)と、実作業領域の範囲を表す情報を外部へ出力すること(S06)とを含む。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、作業領域に非植付領域が存在する可能性を考慮することによって、実作業領域を簡単に、かつ、精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態による作業領域管理システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による作業領域管理装置の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図3】
図3は、一実施形態による作業領域管理方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、一実施形態による圃場、畝、作業領域、非植付領域および実作業領域の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本開示による作業領域管理方法、作業領域管理システムおよび作業領域管理プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0013】
(実施形態)
図1に示すように、一実施形態による作業領域管理システム1は、作業装置2に搭載された搭載端末3と、ネットワーク4を介して搭載端末3から位置情報を受信可能な作業領域管理装置5とを備える。
【0014】
作業装置2は、圃場9を移動しながら農作業などの作業を行うトラクターやコンバインなどの作業車両を含む。作業装置2は、さらに、圃場9の上方を飛行しながら農作業を行うドローンなどを含んでもよい。
【0015】
搭載端末3は、作業装置2が圃場9内で移動しながら作業したときに通過した複数の地点の位置をGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)などで測定することによって、作業装置2の複数の時刻における位置を表す位置情報を取得する。作業装置2の位置を測定した地点を、測地点と呼ぶ。GNSSアンテナと、搭載端末3とは、別体であっても一体であってもよいが、いずれの場合も、両者は共に作業装置2に搭載される。厳密には、測位点の位置は搭載端末3のGNSSアンテナの位置であるが、GNSSアンテナが搭載端末3と一体化または有線接続されており、かつ、GNSSアンテナが作業装置2に固定されているとき、測位点の位置は実質的に作業装置2の位置を表す。搭載端末3は、取得した位置情報を、ネットワーク4を介して作業領域管理装置5へ送信する。
【0016】
作業領域管理装置5は、受信した位置情報に基づいて、作業装置2が作業を行った作業領域に係る作業情報を管理する。作業情報の管理は、例えば、作業領域の範囲および面積、作業領域に植え付けた作物の株数および/または作業領域で収穫した作物の収穫量、作業領域における単位面積当たりの株数および/または収穫量、などを表す情報の取得、格納、出力などの処理を含む。
【0017】
図2に示すように、一実施形態による作業領域管理装置5は、いわゆるコンピュータとして構成されてもよい。
図2の例において、作業領域管理装置5は、バス51と、演算装置52と、記憶装置53と、通信装置54と、入出力装置55とを備える。バス51は、演算装置52、記憶装置53、通信装置54および入出力装置55を、互いに通信可能に接続するように構成されている。
【0018】
演算装置52は、位置情報取得部521と、畝検出部522と、非植付領域推定部523と、実作業領域推定部524と、評価部525と、出力部526とを備える。記憶装置53は、プログラム記憶部531と、データベース532とを備える。プログラム記憶部531は、作業領域管理プログラムを記憶する。データベース532は、搭載端末3から取得した作業装置2の位置情報や、圃場9の位置および範囲を表す圃場情報などを記憶する。
【0019】
演算装置52は、作業領域管理プログラムを読み出して実行することによって、位置情報取得部521、畝検出部522、非植付領域推定部523、実作業領域推定部524、評価部525および出力部526のそれぞれの機能を実現する。位置情報取得部521、畝検出部522、非植付領域推定部523、実作業領域推定部524、評価部525および出力部526のそれぞれは、演算装置52および記憶装置53が協働して実現する処理を実行する仮想的な機能ブロックである。位置情報取得部521は、搭載端末3から送信された作業装置2の位置情報を取得する。畝検出部522は、圃場9のうち、作業装置2が直線的に移動しながら作業を行った範囲を畝として検出する。非植付領域推定部523は、作業装置2が作業を行った作業領域のうち、作物が植え付けられていない範囲を非植付領域として推定する。実作業領域推定部524は、作業領域のうち、作業装置2が作物に対して作業を行った範囲を実作業領域として推定する。評価部525は、作業領域から非植付領域を除外した実作業領域の単位面積当たりの生産量を、作業領域における単位面積当たりの生産量として評価する。出力部526は、作業領域の面積を表す情報、非植付領域の面積を表す情報、実作業領域の面積を表す情報、作業領域の評価を表す情報などを外部へ出力する。これらの機能ブロックのより具体的な処理については、後述する。
【0020】
作業領域管理プログラムは、外部の記録媒体530から読み出されてプログラム記憶部531に格納されてもよい。記録媒体530は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0021】
通信装置54は、ネットワーク4を介する無線通信および/または有線通信により、搭載端末3を含む外部の装置との通信を行う。作業領域管理プログラムは、通信装置54を介して外部から受信されてプログラム記憶部531に格納されてもよい。
【0022】
入出力装置55は、使用者に情報を出力し、使用者が入力する操作を受け付ける。一例として、入出力装置55は、画像を出力する表示装置、入力を受け付けるキーボードおよび/またはマウスなどを含む。
【0023】
図3のフローチャートを参照して、一実施の形態による作業領域管理方法の処理の一例について説明する。作業領域管理方法の処理は、作業領域管理装置5が起動するときに開始してもよい。このとき、作業領域管理装置5の演算装置52が作業領域管理プログラムを実行することによって、作業領域管理方法の処理が実現される。
【0024】
図3のフローチャートが開始すると、ステップS01が実行される。ステップS01において、作業領域管理装置5の位置情報取得部521が、搭載端末3から送信された作業装置2の位置情報を取得する。
【0025】
より詳細には、まず、作業装置2に搭載された搭載端末3が、位置情報を生成して作業領域管理装置5へ送信する。位置情報は、作業装置2の位置を複数の時刻において測定した測位情報と、位置の測定を行った測定時刻を表す時刻情報とを、搭載端末3が対応付けて生成したものである。作業装置2の位置の測定は、所定のサンプリング周期ごとに定期的に行われてもよい。測定時刻は、作業装置2がキーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの駆動期間に含まれる複数の時刻を含んでもよい。
【0026】
位置情報は、さらに、作業装置2を識別するための識別情報と、測定時刻における作業装置2の作業状況を表す状況情報とを含んでもよい。状況情報は、例えば、作業装置2がキーオン状態であるか、あるいはキーオフ状態であるかを表す。状況情報は、さらに、作業装置2の作業が実行中であるか、中断中であるかを表してもよい。
【0027】
搭載端末3が位置情報を送信すると、位置情報取得部521は、通信装置54を制御して位置情報を受信して取得し、取得した位置情報をデータベース532に格納する。
【0028】
位置情報取得部521は、この時点において、位置情報に含まれる複数の測位点の凸包を算出するなどして、圃場9のうちの、作業装置2が作業を行った作業領域を、自動的に検出してもよい。ただし、このように検出された作業領域は、後述するように、作物が植え付けられていない非植付領域を含む場合がある。非植付領域の存在を考慮せずに作業領域における単位面積当たりの作物の生産量を評価すると、圃場9に対する誤った評価につながる可能性がある。そこで、一実施形態では、作業領域の生産量を精度良く評価するために、非植付領域では作業装置2が作業を行わないことを利用して、以降の処理において非植付領域の範囲を自動的に推定する。
【0029】
図3のステップS01の後、ステップS02が実行される。ステップS02において、作業領域管理装置5の畝検出部522が、圃場9のうちの畝の範囲を検出する。
【0030】
より詳細には、畝検出部522が、位置情報に基づいて、作業装置2が直線的に移動しながら作業した範囲を、畝として検出する。
【0031】
一例として、畝検出部522は、位置情報に含まれて、かつ、連続する2つの測定時刻にそれぞれ位置を測定した2つの測位点のうち、先に測定した測位点から、後に測定した測位点へ向かうベクトルを、これら2つの測位点のどちらかにおける作業装置2の車速を表す車速ベクトルとして算出する。畝検出部522は、位置情報に含まれる測位点のうち、対応する車速ベクトルの方角と、所定の方角との間の角度が所定の閾値より小さく、かつ、測定時刻が連続する測位点の集合を抽出して、同一の畝の範囲に含まれる測位点の集合として検出する。畝検出部522は、同一の畝の範囲に含まれる複数の位置のうち、最初に測定した測位点から、最後に測定した測位点までの距離を、対応する畝の長さとして算出する。
【0032】
畝検出部522は、複数の畝の範囲にそれぞれ含まれる複数の測位点の集合を同様に検出してもよい。また、畝検出部522は、複数の畝のそれぞれの長さを同様に算出してもよい。
【0033】
図4の例では、まず、測位を行いながら作物を植え付ける作業を行う植付機などの作業装置2が、キーオン状態になって、圃場9の端部に位置する開始地点81から移動を開始し、第1の畝93Aの一方の端部82Aで作業を開始し、第1の畝93Aの長手方向に対してほぼ平行な第1の作業経路84Aに沿って移動しながら作業を行い、第1の畝93Aの他方の端部83Aに到達すると作業を中断する。その後、作業装置2は、第1の旋回経路85Aに沿って旋回しながら、第1の畝93Aに隣接する第2の畝93Bの一方の端部82Bまで移動する。次に、作業装置2は、端部82Bで作業を再開し、第2の畝93Bの長手方向に対してほぼ平行な第2の作業経路84Bに沿って移動しながら作業を行い、第2の畝93Bの他方の端部83Bに到達すると作業を中断する。さらに、作業装置2は、第3の畝93Cと第4の畝93Dとにおいても同様に作業を行った後、移動経路86に沿って移動しながら非植付領域94の向こう側にある第5の畝93Eにおいても作業を行い、圃場9の端部に位置する終了地点87まで移動して作業を終了する。ここで、圃場9のうち、第1の畝93A~第4の畝93Dが配置されている領域を、便宜上、第1の植付領域92Aと呼ぶ。同様に、圃場9のうち、第5の畝93Eが配置されている領域を、第2の植付領域92Bと呼ぶ。このとき、圃場9のうち、圃場9の周縁に設けられた枕地91以外で作物が植え付けられていない非植付領域94は、第1の植付領域92Aと、第2の植付領域92Bとの間に設けられている。以降、植付領域92A、92Bを区別しないとき、これらを植付領域92と総称する。
【0034】
一例として、非植付領域94は、防除畝であってもよい。防除畝とは、圃場9のうち、枕地91以外の植付領域92に設けた複数の畝93のうちの一部であって、残りの畝93に対して防除作業を行うときに、上述のように測位を行った作業装置2とは異なる作業装置2としての防除機などが通過する通路として用いられる領域である。
図4の例では、防除機が、防除畝として使用される非植付領域94に沿って移動しながら、作業装置2の進行方向に向かって左右に延在するブームスプレーヤーから第1の植付領域92Aと第2の植付領域92Bとに防除剤を散布する。
【0035】
このような場合において、畝検出部522は、位置情報のうち、端部82Aまたは端部82Aの直後に位置を測定した測位点から、端部83Aまたは端部83Aの直前に位置を測定した測位点までの範囲に含まれる測位点を、第1の畝93Aの範囲に含まれる測位点の集合として抽出してデータベース532に格納する。同様に、畝検出部522は、位置情報のうち、端部82Bまたは端部82Bの直後に位置を測定した測位点から、端部83Bまたは端部83Bの直前に位置を測定した測位点までの範囲に含まれる測位点を、第2の畝93Bの範囲に含まれる測位点の集合として抽出してデータベース532に格納する。
【0036】
以降、畝93A、93Bなどを区別しないとき、これらを畝93と総称する。同様に、作業経路84A、84Bなどを区別しないとき、これらを作業経路84と総称する。
【0037】
図3のステップS02の後、ステップS03が実行される。ステップS03において、作業領域管理装置5の非植付領域推定部523が、圃場9のうちの非植付領域94の範囲を推定する。
【0038】
より詳細には、まず、非植付領域推定部523が、ステップS02で検出した複数の畝93のうち、隣接する2つの畝93にそれぞれ対応する2つの作業経路84の間の距離を、これら2つの畝93の間の距離を表す畝間距離として、位置情報に基づいて算出する。ここで、非植付領域推定部523は、検出した複数の畝93のうち、隣接する畝93の対のそれぞれについて、畝間距離を算出する。その後、非植付領域推定部523は、算出した複数の畝間距離の統計値を算出する。統計値は、例えば、平均値や中央値などであってもよい。ただし、この場合の畝間距離とは、ある畝93の幅方向の中心から、この畝93に隣接する畝93の幅方向の中心までの距離を表す。この統計値は、後述する判定の閾値として用いる。この閾値として、予め設定された推奨畝間距離などの定数を用いてもよい。
【0039】
非植付領域推定部523は、複数の畝間距離のうち、統計値や推奨畝間距離などの閾値より長い畝間距離に対応する2つの畝93の間には、作物が植え付けられていない領域である非植付領域94が存在すると推定する。反対に、非植付領域推定部523は、複数の畝間距離のうち、閾値より短い畝間距離に対応する2つの畝93の間には、非植付領域94が存在しないと推定する。ただし、この推定に用いる閾値は、上記のように畝間距離の統計値または推奨畝間距離そのものであってもよいし、畝間距離の統計値または推奨畝間距離に適宜な値を加算した値であってもよいし、畝間距離の統計値または推奨畝間距離に適宜な係数を積算した値であってもよい。
【0040】
図4の例では、第4の畝93Dと第5の畝93Eの間に、非植付領域94が存在している。このような場合には、第4の畝93Dと第5の畝93Eの間の畝間距離は、畝93A、93Bの畝間距離、畝93B、93Cの畝間距離、畝93C、93Dの畝間距離および畝93D、93Eの畝間距離の平均値よりも長く、その他の畝間距離は平均値より短い。このようにして、非植付領域推定部523は、第4の畝93Dと第5の畝93Eの間における非植付領域94の存在を検出する。
【0041】
非植付領域推定部523は、さらに、第4の畝93Dと第5の畝93Eとの間の畝間距離と、
図3のステップS02で算出した複数の畝93の長さとに基づいて、非植付領域94の範囲を推定する。ここで、非植付領域94の幅は、第4の畝93Dと第5の畝93Eとの間の畝間距離から、非植付領域94が間に存在しない畝93の対の畝間距離の平均値を減算した差として算出してもよい。非植付領域94が間に存在しない畝93の対の畝間距離の平均値とは、
図4の例では、第1の畝93A~第4の畝93Dの間の畝間距離の平均値である。これらの畝間距離は、隣接する畝93の対のそれぞれについて算出した畝間距離のうち、非植付領域94を検出するために用いた閾値より小さい畝間距離を抽出し、このように抽出した畝間距離の平均値として算出してもよい。また、非植付領域94の長さは、畝93の長さの平均値として算出してもよい。非植付領域94の範囲は、上記のように算出した非植付領域94の幅と長さとを有する長方形として推測される。
【0042】
図3のステップS03の後、ステップS04が実行される。ステップS04において、作業領域管理装置5の実作業領域推定部524が、圃場9のうちの実作業領域の範囲を推定する。
【0043】
より詳細には、実作業領域推定部524は、位置情報に基づいて算出した作業領域から、ステップS03で推定した非植付領域94の範囲を除外した範囲を、実作業領域の範囲として推定し、推定した実作業領域の版の面積を算出する。作業領域は、上述のように、ステップS01の段階で位置情報取得部521によって算出されていてもよいし、ステップS04の段階で実作業領域推定部524が算出してもよい。いずれの場合も、位置情報に含まれる複数の位置の凸包を算出し、この凸包を外側に、畝93の幅の半分の距離だけ拡張して得られる範囲を、作業領域として算出してもよい。
【0044】
図4の例では、作業領域を、自動認識作業領域71として算出している。自動認識作業領域71は、作業装置2が開始地点81から終了地点87までを移動しながら位置を測定した、畝93A~93Eを通るための作業経路84と、枕地91を通って畝93A~93Eの間を移動するための旋回経路85および移動経路86とに含まれる複数の測位点のうち、作業対象外である枕地91に含まれない測位点の凸包を、畝93の幅の半分の距離だけ外側に拡張して得られる範囲である。
図4の例では、自動認識作業領域71から非植付領域94を除外した残りの範囲を、実作業領域の範囲として推定する。
【0045】
図3のステップS04の後、ステップS05が実行される。ステップS05において、作業領域管理装置5の評価部525が、実作業領域の単位面積当たりの生産量を、圃場9のうちの作業領域の生産量として評価する。ここで、生産量は、上述のように、実作業領域に植え付けられている作物の株数や、実作業領域で収穫された作物の収穫量などを含む。
【0046】
より詳細には、評価部525は、畝93の生産量を表す情報を取得し、実作業領域の単位面積当たりの生産量を算出する。生産量を表す情報は、例えば、作業領域管理装置5のデータベース532に格納されていてもよい。評価部525は、実作業領域の単位面積当たりの生産量を、作業領域の生産量に係る評価としてデータベース532に格納する。
【0047】
図3のステップS05の後、ステップS06が実行される。ステップS06において、作業領域管理装置5の出力部526が、実作業領域の範囲、実作業領域の単位面積当たりの生産量、作業領域の生産量に係る評価などを表す情報を外部に出力する。
【0048】
より詳細には、出力部526が、通信装置54を制御して、実作業領域の面積や、実作業領域の単位面積当たりの生産量などを表す情報を、ネットワーク4を介して外部に出力する。出力部526は、入出力装置55を制御して、これらの情報を画像や音声として外部に出力してもよい。
【0049】
図3のステップS06の後、
図3のフローチャートの処理は終了する。
【0050】
以上のように、一実施形態によれば、本開示は、作業領域に非植付領域94が存在する可能性を考慮することによって、実作業領域を簡単に、かつ、精度よく推定することができる。その結果、作業領域の単位面積当たりの生産量を簡単に、かつ、精度よく評価することができる。
【0051】
(変形例)
図4に示した例において、作業装置2が、ある畝93の次に隣接する畝93へ移る場合の構成について説明した。この構成の変形例として、作業装置2は、ある畝93の次に、隣接する畝93とは別の畝93へ移る、いわゆる条飛ばしを行ってもよい。条飛ばしの一例として、作業装置2は、
図4に示す畝93A、畝93C、畝93E、畝93D、畝93Bをこの順番に移りながら作業を行ってもよい。
【0052】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0053】
(付記)
各実施の形態で記載した作業領域管理方法、作業領域管理システムおよび作業領域管理プログラムは、以下のように言うことができる。
【0054】
第1の態様に係る作業領域管理方法は、
圃場内を移動しながら作業を行う作業装置の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、前記作業装置が直線状に移動しながら前記作業を行う畝の範囲を検出することと、
隣接する2つの前記畝の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、前記2つの畝の間の領域に存在する、前記作業の対象である作物を植え付けない非植付領域の面積を、前記畝の、前記畝が延在する方向の長さである畝長さと、前記畝間距離とに基づいて推定することと、
前記圃場のうちの、前記作業装置が前記作業を行った作業領域から、前記非植付領域を除外した実作業領域の面積を推定することと、
前記実作業領域の前記面積を表す情報を外部へ出力することと
を含む。
【0055】
第2の態様に係る作業領域管理方法は、第1の態様に係る作業領域管理方法であって、
前記畝の間に設けられて、防除作業を行うときに通路として使用する防除畝を、前記非植付領域として検出すること
をさらに含む。
【0056】
第3の態様に係る作業領域管理方法は、第1または第2の態様に係る作業領域管理方法であって、
前記閾値は、複数の前記畝間距離の統計値に所定の値を加算した値または前記統計値に所定の係数を積算した値である。
【0057】
第4の態様に係る作業領域管理方法は、第1~第3の態様のいずれか1つに係る作業領域管理方法であって、
前記作業領域の単位面積当たりの生産量を、前記実作業領域の前記面積に基づいて評価すること
をさらに含む。
【0058】
第5の態様に係る作業領域管理システムは、
圃場内を移動しながら作業を行う作業装置の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、前記作業装置が直線状に移動しながら前記作業を行う畝の範囲を検出する畝検出部と、
隣接する2つの前記畝の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、前記2つの畝の間の領域に存在する、前記作業の対象である作物を植え付けない非植付領域の面積を、前記畝の、前記畝が延在する方向の長さである畝長さと、前記畝間距離とに基づいて推定する非植付領域推定部と、
前記圃場のうちの、前記作業装置が前記作業を行った作業領域から、前記非植付領域を除外した実作業領域の面積を推定する実作業領域推定部と、
前記実作業領域の前記面積を表す情報を外部へ出力する出力部と
を備える。
【0059】
第6の態様に係る作業領域管理プログラムは、演算装置に実行させることによって所定の処理を実現するためのプログラムであって、
前記処理は、
圃場内を移動しながら作業を行う作業装置の、複数の時刻のそれぞれにおいて取得した位置情報に基づいて、前記作業装置が直線状に移動しながら前記作業を行う畝の範囲を検出することと、
隣接する2つの前記畝の間の距離である畝間距離が所定の閾値より長いとき、前記2つの畝の間の領域に存在する、前記作業の対象である作物を植え付けない非植付領域の面積を、前記畝の、前記畝が延在する方向の長さである畝長さと、前記畝間距離とに基づいて推定することと、
前記圃場のうちの、前記作業装置が前記作業を行った作業領域から、前記非植付領域を除外した実作業領域の面積を推定することと、
前記実作業領域の前記面積を表す情報を外部へ出力することと
を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 作業領域管理システム
2 作業装置
3 搭載端末
4 ネットワーク
5 作業領域管理装置
51 バス
52 演算装置
521 位置情報取得部
522 畝検出部
523 非植付領域推定部
524 実作業領域推定部
525 評価部
526 出力部
53 記憶装置
530 記録媒体
531 プログラム記憶部
532 データベース
54 通信装置
55 入出力装置
71 自動認識作業領域
81 開始地点
82A、82B 端部
83A、83B 端部
84A、84B 作業経路
85A 旋回経路
86 移動経路
87 終了地点
9 圃場
91 枕地
92A、92B 植付領域
93A、93B、93C、93D 畝
94 非植付領域