(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062027
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240430BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240430BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240430BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240430BHJP
A61K 31/726 20060101ALI20240430BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240430BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/60
A61Q19/00
A61P17/16
A61K31/726
A61P43/00 121
A61K31/7004
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169764
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】399101201
【氏名又は名称】健栄製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】筒井 優
(72)【発明者】
【氏名】岸田 理沙
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC482
4C083AD092
4C083AD191
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD532
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE10
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物であって、従来よりも高い皮膚の保湿作用を有しつつ、好ましくは、敏感肌にも刺激が少ない皮膚外用組成物、好ましくは保湿剤を提供する。
【解決手段】ヘパリン類似物質と、混合異性化糖と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物を提供する。前記混合異性化糖の含有量は、皮膚外用組成物に対して、固形分含有量として0.01質量%~20質量%の範囲であることが好ましい。また、前記ヘパリン類似物質の含有量は、皮膚外用組成物に対して、0.005質量%~5質量%の範囲であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン類似物質と、混合異性化糖と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物。
【請求項2】
前記混合異性化糖が、前記皮膚外用組成物に対して、固形分含有量として0.01質量%~20質量%の範囲で含まれる、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記ヘパリン類似物質の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.005質量%~5質量%である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
保湿剤である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物の保湿作用を増強する方法であって、
前記皮膚外用組成物に、混合異性化糖を配合することを含む、保湿作用増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用組成物及び保湿作用増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質を含む組成物は、外用剤として皮膚に適用されると、皮膚の保湿作用や、皮膚の抗炎症作用や、血行促進作用などが得られることが知られている(非特許文献1)。そのため、ヘパリン類似物質を含む外用組成物がいくつか提案されており、例えば、特許文献1には、ヘパリン類似物質とアミノ酸成分を含む外用組成物が記載されており、特許文献2には、ヘパリン類似物質と、トコフェロール、抗炎症剤及び鎮痒剤を含む皮膚外用剤が記載されている。
【0003】
混合異性化糖とは、糖の異性化物の混合物であり、好ましくは皮膚(角質)の天然保湿因子(NMF: Natural Moisturizing Factor)である中性糖成分組成に類似している。混合異性化糖は、皮膚表面に強力に付着し、乾燥した空気中でも水分を保持する効果、すなわち水磁石のような役目をするものとして知られているもので、皮膚保湿効果に優れた成分である。このような混合異性化糖を配合した皮膚外用剤も知られており;例えば、混合異性化糖とコウジ酸又はその誘導体とを含む皮膚外用剤(特許文献3)、混合異性化糖とアミノ酸又はベタインを含む化粧料(特許文献4)、混合異性化糖と銀杏葉抽出物とを含む皮膚外用剤(特許文献5)、混合異性化糖とのアクリロイルジメチルタウレートポリマーとを含む局所用組成物(特許文献6)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-59524号公報
【特許文献2】特開2016―196419号公報
【特許文献3】特開平11-335226号公報
【特許文献4】特開2003-267816号公報
【特許文献5】特開2005-298504号公報
【特許文献6】特開2021-515747号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】商品名ヒルマイルド添付文書 URL: https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J2001000156_02_A.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、ヘパリン類似物質を含む従来の皮膚外用組成物は、皮膚の保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用を有しているものの、これらの外用組成物には、さらなる高い作用、とりわけ、さらに高い保湿作用が求められることがあった。そこで本発明は、ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物であって、高い皮膚の保湿作用を有しつつ、好ましくは、敏感肌にも刺激が少ない皮膚外用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下に示す皮膚外用組成物に関する。
[1]ヘパリン類似物質と、混合異性化糖と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物。
[2]前記混合異性化糖が、前記皮膚外用組成物に対して、固形分含有量として0.01質量%~20質量%の範囲で含まれる、[1]に記載の皮膚外用組成物。
[3]前記ヘパリン類似物質の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.005質量%~5質量%である、[1]又は[2]に記載の皮膚外用組成物。
[4]保湿剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
【0008】
さらに本発明は、以下に示す保湿作用を増強する方法に関する。
[5]ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物の保湿作用を増強する方法であって;前記皮膚外用組成物に、混合異性化糖を配合することを含む、保湿作用増強方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用されることで、従来のヘパリン類似物質含有組成物と比較して、皮膚の保湿性をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.皮膚外用組成物]
本発明の皮膚外用組成物は、1)ヘパリン類似物質と、2)混合異性化糖と、3)液状担体と、を含有し、さらに、他の配合成分を含んでいてもよい。
【0011】
[1-1.ヘパリン類似物質]
ヘパリン類似物質とは、ムコ多糖類の多硫エステル体である。ムコ多糖類とは、動物組織や体液に広く分布するアミノ糖を含む複合多糖であり、例えば、コンドロイチン硫酸などである。ヘパリン類似物質は、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得てもよく、食用獣の組織(例えば、ウシの気管軟骨を含む肺臓)から抽出して得てもよい。また、本発明の皮膚外用組成物に含まれるヘパリン類似物質は、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質であってもよい。
【0012】
本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、組成物に対して0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上含む。また、本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、組成物に対して5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下含む。本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、例えば0.1質量%、又は0.3質量%含む。なお、ヘパリン類似物質の含有量は、皮膚外用組成物が適切な保湿作用を有するように、適宜設定することができる。
【0013】
[1-2. 混合異性化糖]
本発明の皮膚外用組成物は、混合異性化糖を含む。混合異性化糖は、本発明の皮膚外用組成物において、皮膚に対する独特の結合メカニズムで短時間及び長時間持続性の保湿作用を発揮し、しかも、ヘパリン類似物質との相乗作用により皮膚外用組成物の保湿作用を増強し得る。このことは、後述の実施例において示されている。
【0014】
混合異性化糖とは、糖の異性化物の混合物であり;好ましくは、フルクトース、D-及びL-グルコース、ガラクトース、ラクトース、マンノース、プシコースのような中性糖成分を含み、角質の中性糖成分組成に類似していることが好ましい。
【0015】
混合異性化糖は、グルコース(ブドウ糖)の異性化物と、ラクトース(乳糖)の異性化物との混合物であり、ここで異性化とは、糖を水酸化ナトリウムなどの苛性アルカリによって処理することである。グルコース(ブドウ糖)の異性化物と、ラクトース(乳糖)の異性化物との混合物からなる混合異性化糖は、好ましくは、グルコース(ブドウ糖)の希アルカリ処理物とラクトース(乳糖)の希アルカリ処理物を19:1の割合で混合した糖類の混合物であり、グルコース、フルクトース(果糖)、マンノース及びガラクトースなどを含み、主としてグルコース及びフルクトースからなることが好ましい。このような混合異性化糖は、PENTAVITIN(ペンタバイティン(登録商標)、DSM社)、HYANIFY(登録商標、Lipotec社)、EPS BRIGHT P、EPS SEAGLOW MNB、EPS SEAPUR PA(CODIF INTERNATIONAL S.A.S.)として市場から入手可能である。また、このような混合異性化糖は、CAS番号100843-69-4として登録された物質でもよい。
【0016】
また、混合異性化糖は、例えば、次のようにして調製することもできる。精製水に溶解したD-グルコースに、攪拌しながら10(w/v)%水酸化ナトリウム溶液を添加して、室温で密封静置した後、pH9以上を維持しながら10(w/v)%水酸化ナトリウム溶液を加える。さらに、所定のpHに調整して反応を終了させる。別途に、精製水に溶解したラクトースを同様に攪拌しながら10(w/v)%水酸化ナトリウム溶液を添加し、室温で密封静置し、同様にして水酸化ナトリウム溶液を加えた後、所定のpHに調整して反応を終了させる。両者を適切な重量比で混合し、混合異性化糖(異性化糖の混合物)とすることができる。
【0017】
混合異性化糖は、通常は、各種中性糖を含む水溶液として用意される。当該水溶液は、pHを調整するためのpH調整剤を含むことができ、例えばクエン酸及びその塩、乳酸及びその塩、などを含みうる。
【0018】
また、混合異性化糖は中性糖を含む水溶液として用意されるが、それに含まれる糖の含有量を固形分含有量(乾燥後の残量)として定量することもできるが、当該水溶液における中性糖の含有率は、ブドウ糖に換算した量として、以下のように求めることができる。
(1) 中性糖を含む水溶液0.1gに、水を加えて1000mlとして試料溶液とする。この試料溶液1mlに、アントロン試液5mlを加えて混和し、10分間加熱し、室温まで急冷する。
(2) 別途、ブドウ糖0.1gを水に加えて1000mlとし;2ml、4ml、6ml、8ml及び10mlを量りとり、これらに水を加えて10mlとして、検量線作成の標準溶液とする。各標準溶液1mlに、アントロン試液5mlを加えて混和し、10分間加熱し、室温まで急冷する。
(3) また、対照液として、水1mlに、アントロン試液5mlを加えて混和し、10分間加熱し、室温まで急冷する。
(4) 上記(1)~(3) で得られた液につき、波長620nmにおける吸光度を測定する。
(5) 上記(2) で得られた液の吸光度から得られた検量線に、(1) で得られた液の吸光度を適用して、さらに(3) で得られた液の吸光度に基いて補正をし、(1) で得られた液に含まれる中性糖の含量を、ブドウ糖に換算した量として求めることができる。
【0019】
本発明の皮膚外用組成物における混合異性化糖の含有割合は、固形分含有量として、好ましくは0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり;一方、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。当該含有量が0.01質量%に満たないと保湿効果が表れないばかりか潤い感も感じられないことがあり;一方、20質量%を超えるとべたつきが生じて好ましくない。
【0020】
[1-3. 液状担体]
本発明の皮膚外用組成物は、組成物の性状に応じて適切な液状担体を含むことができる。例えば、本発明の皮膚外用組成物が水溶液(例えば、化粧水や美容液)やジェルであれば主な担体を水とすることができるし、乳液であれば水とともに油分(例えば、ワセリンなど)を主な担体とすることができるし、軟膏や油性クリームであれば主な担体を油分とすることができる。
【0021】
本発明の皮膚外用組成物は、液状担体として、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールを含むことができる。さらに、本発明の皮膚外用組成物は、液状担体として、エタノールやプロパノールなどの低級アルコールを含んでもよい。ただし、本発明の皮膚外用組成物を敏感肌に適用したときの皮膚への刺激を少なくすることが望まれる場合には、皮膚外用組成物が低級アルコール、特にエタノールを含まないか、または実質的に含まないことが好ましい。
【0022】
[1-4. 他の配合成分]
本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質、混合異性化糖、及び液状担体に加えて、皮膚外用組成物に求められる効果、あるいは、所望とする製剤の剤形に応じて、他の配合成分を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の皮膚外用組成物は、他の有効成分、例えば、アンチエイジング剤、抗炎症剤、アクネケア剤、抗ヒスタミン剤などを含んでいてもよい。アンチエイジング剤の例には、ナイアシンアミド(ニコチン酸アミドともいう)、アルブチン、トラネキサム酸、ビタミン類(例えば、トコフェロール誘導体、ビタミンC誘導体、パルミチン酸レチノール等)、エラグ酸、リノール酸などが含まれ;抗炎症剤の例には、アラントイン、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム)、ε-アミノカプロン酸などが含まれ;アクネケア剤の例には、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸などが含まれ;抗ヒスタミン剤の例には、ジフェンヒドラミンまたはその塩などが含まれる。
【0024】
本発明の皮膚外用組成物は、さらに湿潤剤を含んでいてもよい。前述の混合異性化糖も湿潤剤として機能し得るが;さらに、1)セラミド又はセラミド類似成分、2)リン脂質ポリマー、3)植物エキス、4)アミノ酸系湿潤剤、5)スクワラン、6)多価アルコール、7)タンパク質加水分解物などが含まれうる。これらは、皮膚外用組成物に求められる保湿作用などに応じて、その配合量を設定することができる。
【0025】
1)セラミドとはスフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴイドに脂肪酸がアミド結合した化合物である。セラミド類似成分は、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドのような糖セラミドであっても、ソフケア(登録商標)セラミドSL-E(花王株式会社製、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチルヘキサデカナミド))、CERACUTE(登録商標)-L(日油株式会社、グリセリル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)カルバメート・メタクリル酸ステアリル共重合体)のような合成セラミドであってもよい。本発明の皮膚外用組成物におけるセラミド及び/又はセラミド類似成分の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0026】
2)リン脂質ポリマーとは、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体であり、生体膜の主要な構成成分であるリン脂質に類似する生体適合性ポリマーである。リン脂質ポリマーの例には、リピジュア (登録商標)(日油株式会社、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、NIKKOL (登録商標) 、レシノール S-10(日光ケミカルズ株式会社、水素添加大豆リン脂質)などが含まれる。本発明の皮膚外用組成物におけるリン脂質ポリマーの含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0027】
3)植物エキスには、アマチャエキス、アルテア根エキス、アルニカ花エキス、アロエエキス、アロエベラエキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウワウルシエキス、エンドウエキス、オウゴンエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、カッコンエキス、カミツレエキス、カラスムギエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、キイチゴエキス、キダチアロエエキス、キュウリエキス、クインスシードエキス、クミンエキス、クレマティスエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、ゴボウエキス、コムギ胚芽エキス、コンドルスクリスプスエキス、シモツケソウエキス、シャクヤク根エキス、ジャノヒゲ根エキス、スイカズラ花エキス、スピルリナマキシマエキス、セイヨウオトギリソウエキス、セイヨウカノコソウ根エキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウネズエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、タイムエキス、タチジャコウソウエキス、チャ葉エキス、ツボクサエキス、テルミナリアエキス、トウガラシ果実エキス、トウキンセンカエキス、トマトエキス、トルメンチラエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、バクガエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、パリエタリアエキス、ビターオレンジ果皮エキス、ヒバマタエキス、ビルベリーエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、フユボダイジュ花エキス、プラセンタエキス、プルーンエキス、ヘイフラワーエキス、ベニバナエキス、ホップエキス、マグワ根皮エキス、マリアアザミエキス、マロニエエキス、メリッサエキス、メリロートエキス、モウコヨモギエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ヤマヨモギエキス、ユーカリエキス、ユリエキス、ヨーロッパシラカバエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、ラミナリアディギタータエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキスなどが含まれる。本発明の皮膚外用組成物は、任意の植物エキスを含むことができるが、例えば、アロエエキス、ツボクサエキス、モモエキス、ヨモギエキスなどが好適に例示される。
【0028】
植物エキスであるアロエエキスとは、ユリ科の薬用植物であるアロエ(ケープアロエ、アロエベラ、キダチアロエなど)の葉肉などからの抽出成分である。アロエエキスには、ウロン酸、脂質、蛋白、アミノ酸、アントラキノン系化合物(アロイン、アロエエモジン等)が含有しているとされている。本発明の皮膚外用組成物におけるアロエエキスの含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0029】
植物エキスであるモモエキスとは、バラ科(Rosaceae)に属するモモ(Prunus persica)の抽出物であればよく:白鳳系、白桃系、黄金桃系のモモの抽出物が挙げられる。モモの抽出物は、モモの葉、果実、核(内果皮)、花、全草等を抽出処理して得ることができ;好ましくはモモの葉、果実、核(内果皮)を、より好ましくはモモの葉を抽出処理して得ることができる。
【0030】
植物エキスであるヨモギエキスとは、ヨモギ属植物の抽出物におけるヨモギ属植物は、キク科 (Asteraceae) ヨモギ属(Artemisia) の植物の花,茎,葉,根の各部位及び全草を抽出処理することで得られる抽出物である。
【0031】
植物エキスであるツボクサエキスとは、セリ科の植物であるツボクサ(別名:積雪草)の一部または全草から抽出された生薬エキスである。ツボクサエキス抽出物は、アジアチコサイド、マデカシコサイドなどのトリテルペン誘導体の成分を含みうる。
【0032】
4)アミノ酸系湿潤剤とは、グルタミン酸などのアミノ酸から導かれる湿潤剤である。アミノ酸系湿潤剤としては、ピロリドンカルボン酸又はその塩類(例えば、ナトリウム塩)、ピロリジンカルボン酸又はその塩類、アシルピロリジンカルボン酸又はその塩類、アシル塩基性アミノ酸アルキルエステル又はその塩類などが挙げられる。アミノ酸系湿潤剤のアミノ酸は、ラセミ体であってもよいし、光学活性体であってもよい。アミノ酸系湿潤剤は、AJIDEW (登録商標)(味の素株式会社)、PRODEW (登録商標)(味の素株式会社)、アクアデュウ(登録商標) (味の素株式会社)、CAE(登録商標)(味の素ヘルシーサプライ社)などとして市場から入手可能である。本発明の皮膚外用組成物におけるアミノ酸系湿潤剤の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0033】
5)スクワランとは、アイザメなど深海に生息するサメ類の肝油から得られる炭化水素であるスクワレンを還元(水素添加)させて得られる飽和炭化水素であり、無色液体である。本発明の皮膚外用組成物におけるアミノ酸系湿潤剤の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0034】
湿潤剤としての6)多価アルコールの例には、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが含まれる。
【0035】
7)タンパク質加水分解物とは、特に限定されないが、加水分解エラスチン、加水分解カゼイン、加水分解ケラチン、加水分解コムギ、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、加水分解ゼラチン、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解トサカ、加水分解バレイショタンパク、加水分解フィブロネクチンなどが含まれる。
【0036】
本発明の皮膚外用組成物は、粘稠剤を含んでいてもよい。粘稠剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本発明の皮膚外用組成物は、組成物のpHを所望の値に調整するためのpH調整剤を含んでいてもよい。pH調整剤の例には、無機酸(リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、硫酸、硝酸、塩酸など)及びその塩;有機酸(モノカルボン酸(例えば、酢酸、ソルビン酸)、ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸)、オキシカルボン酸[例えば、ヒドロキシモノカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、グルコン酸)、ヒドロキシポリカルボン酸(例えば、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等)等])及びその塩;無機塩基(金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等)等);有機塩基(アミン類[例えば、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等)等]、アミノ酸(例えば、グリシン等)等)があげられる。本発明の皮膚外用組成物は、複数種のpH調整剤を組み合わせて含んでいてもよい。
【0038】
本発明の皮膚外用組成物は、防腐剤を含んでいてもよい。防腐剤の例には、いわゆる「パラベン」と称されるパラオキシ安息香酸エステルが含まれる。具体的には、メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)、エチルパラベン(パラオキシ安息香酸エチル)、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン等、及びそれらの塩が防腐剤として例示される。本発明の皮膚外用組成物は、複数種のパラベンを組み合わせて含んでいてもよく、例えば、メチルパラベンと、エチルパラベンまたはプロピルパラベンとを組み合わせてもよい。本発明の皮膚外用組成物にパラベンが含まれる場合には、組成物に対するパラベンの含有量は、1w/v%以下、好ましくは 0.5 w/v%以下、さらに好ましくは0.25w/v%以下でありうる。
【0039】
本発明の皮膚外用組成物は、剤形が乳液である場合には乳化剤を含む。乳化剤は、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性界面活性剤のいずれかでありうる。乳化剤の例には、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ポリオキシル、ジステアリン酸グリコール、レシチン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ステアレス-2、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルなどが含まれるが、特に限定されない。
【0040】
本発明の皮膚外用組成物は、軟化剤、着色剤や香料などを含有してもよい。
【0041】
[1-5. 皮膚外用組成物の剤形]
本発明の皮膚外用組成物は液状製剤であることが好ましいが、水性製剤、油性製剤、エマルション製剤(水中油型エマルション、油中水型エマルションのいずれもよい)、サスペンション製剤、エアゾール製剤、ゲル製剤など、剤形は特に限定されない。また、本発明の皮膚外用組成物は、化粧品の剤形として、固型(ソリッド)、プレスト、オイル(油)、液状(リキッド)、ジェル、練り(バーム)、マッド、クリーム、乳液、ローション、フォーム(バブル)、フィルム、パウダー(粉)、水、ペンシル、スプレー(ミスト)、スティック、シート等であり得る。
【0042】
本発明の皮膚外用組成物のpHは5~7の範囲に調整されていることが好ましい。皮膚外用組成物の皮膚への浸透性を高めやすいからである。
【0043】
本発明の皮膚外用組成物の粘度は、製剤の剤形、及び組成物を皮膚に適用するときに求められる使用感に応じて、適宜調整されうる。例えば、組成物の粘度が低い方が、皮膚に適用されたときに濡れ広がりやすさを有しやすく;組成物の粘度が高い方が、皮膚に適用されたときに馴染みやすさを有しやすい。例えば目安として、本発明の皮膚外用組成物が水溶液であれば粘度400~1300mPa・sの範囲にあり、乳液であれば粘度2000~12000mPa・sの範囲にあり得る。粘度は、レオメーター条件:25℃、0.33rpm 90秒後の粘度として測定される。
【0044】
本発明の皮膚外用組成物は、容器に充填されているが、例えば、遮光容器に充填されている。また、本発明の皮膚外用組成物はポンプ又はスプレータイプの容器に充填されることで、皮膚への適用を簡便にすることができる。
【0045】
[2. 皮膚外用組成物の用途]
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用、例えば、皮膚に塗布されることで使用される。例えば、皮膚外用組成物を直接皮膚にすりこんだり、皮膚外用組成物を染み込ませたガーゼなどを皮膚に貼ったりすることができる。本発明の皮膚外用組成物を適用する患部は、皮膚である限り特に限定されず、例えば、特に保湿が求められる患部、例えば、顔、粉ふきがあるひざやかかと、背中、などが例示されるが、特に限定されない。皮膚に適用する頻度は、特に限定されないが、1日1~数回程度でありうる。
【0046】
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用されることで、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用などを発揮することが期待され;それにより、肌荒れやあれ性の改善、あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防いだり、肌を整えて皮膚をすこやかに保つ、皮膚にうるおいを与える、皮膚を保護する、皮膚の乾燥を防ぐ、などの効果が得られうる。
【0047】
本発明の皮膚外用組成物は、特に、皮膚への保湿作用が高いため、皮膚の保湿剤として用いられることが好ましい。異性化糖は、ヒト表皮(角質中)のNMFの炭水化物組成と同様の組成を有しており、NMFと同様のメカニズムで保湿作用を示していると考えられる。これは、ヘパリン類似物質の保湿メカニズムとして推定される角層細胞間脂質のラメラ構造の回復促進と2次結合水量の増加作用とは別途のメカニズムである。そのため、ヘパリン類似物質と異性化糖とは、作用メカニズムの違いによる保湿効力の相乗効果を有すると考えられた。この相乗効果は、後述の実施例で確認されている。
【0048】
[3. 皮膚外用組成物の製造方法]
本発明の皮膚外用組成物の製法は、特に限定されず、剤形に応じて常法にしたがって製造することができる。例えば、所定量の各配合成分(少なくとも、ヘパリン類似物質及び混合異性化糖を含む)を、液状担体に順次、添加・混合することで得ることができる。各剤形の組成物の製造方法は、例えば、「エマルションの調製技術事例集(出版社:技術情報協会、著者:水野朝子, 寺田千春 企画編集)」に記載がされており、参照することができる。
【実施例0049】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これら実施例によって本発明は限定して解釈されない。
【0050】
[混合異性化糖の調製]
D-グルコース1kgに所定量の精製水を加えて溶解し、攪拌しながら10(w/v)%水酸化ナトリウム水溶液10mlを加え、21℃~23℃で密封静置する。その後、常にpHが9以上となるように10(w/v)%水酸化ナトリウム水溶液10mlずつを加えていき、合計60mlを添加した後、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを加えてpHを4.1として反応を終了させ、I液とする。
【0051】
次に、ラクトース1kgに所定量の精製水を加えて溶解し、攪拌しながら10(w/v)%水酸化ナトリウム水溶液60mlを加え、21℃~23℃で密封静置する。その後、常にpHが9以上となるように10(w/v)%水酸化ナトリウム水溶液10mlずつを加えていき、合計140mlを添加した後、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを加えてpHを4.1として反応を終了させ、II液とする。
【0052】
上記のI液とII液を重量比にして19:1の割合で混合し、混合異性化糖とした。なお、混合異性化糖として得られた溶液における糖の含有量は、固形分含量として約50質量%であった。また、混合異性化糖における糖成分の合計に対する各糖成分の含有割合を下記表に示す。
【表1】
【0053】
[実施例1]及び[実施例2]の検体:精製水に、表2及び表3に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)と上記で得られた混合異性化糖とを添加して常温で溶解させた。
[比較例1]の検体:精製水に、表2及び3に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)を添加して常温で溶解させた。
[比較例2]及び[比較例3]の検体:精製水に、表2及び3に示す通りの配合量の上記で得られた混合異性化糖を添加して常温で溶解させた。
【0054】
各実施例及び各比較例で調製した検体、及び水(対照検体)について、被験者(ヒト2名)の皮膚における保湿作用を確認した。まず、各検体の塗布前に、被験者の皮膚塗布部位(前腕内側)の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布前水分量Xとした。そして、当該部位の直径約0.8 cmの円領域に、各検体5μLを塗布した。塗布後1時間経過した時点で、皮膚塗布部位の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布後水分量Yとした。
【0055】
各検体ついて、「(塗布後水分量Y-塗布前水分量X)/塗布前水分量X×100」を算出して水分上昇率Z(%)とした。各検体での水分上昇率Z(%)から、対照検体である水での水分上昇率(%)を差し引いた値を、各表の「皮膚水分量の上昇率」として示した。
【0056】
皮膚水分量の測定は、皮表角層水分量測定装置SKICON(登録商標)-200EX (株式会社ヤヨイ)を用いて行った。本装置は、高周波を用いた交流電流に対する伝導度(conductanceμS)を測定することで、「表層」の角層の水分量を測定することができる。高周波電流は物の表面を流れやすく、伝導度と水分含有量の間には密接な相関関係があるからである。このように、本実施例では、「表層」の角層の水分量を測定することで、皮膚の柔らかさ
や滑らかさを適切に評価している。
【0057】
【0058】
【0059】
表2に示される試験例1の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含む比較例1の検体では13%の水分上昇率、糖含量(ブドウ糖含量に換算)として0.05質量%超の混合異性化糖を含む比較例2の検体では19%の水分上昇率であったのに対して、実施例1の検体では46%の水分上昇率が認められた。同様に、表3に示される試験例2の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含む比較例1の検体では18%の水分上昇率、糖含量として5質量%の混合異性化糖を含む比較例3の検体では44%の水分上昇率であったのに対して、実施例2の検体では73%の水分上昇率が認められた。これらの結果は、ヘパリン類似物質と混合異性化糖とが相乗作用をすることで、検体の保湿作用を増強していることを示す。
【0060】
なお、試験例1と2とで、比較例1の検体での水分上昇率が若干異なるのは、被験者の個人差によるものである。
【0061】
以下に、本発明の皮膚外用組成物を化粧水として調製する例を示す。
【0062】
本発明によれば、保湿作用が増強された皮膚外用組成物を提供することができるため、皮膚にうるおいを与えたり、皮膚を保護したり、皮膚の乾燥を防いだりするための化粧料
等として本発明を利用することができる。