(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006203
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】圧電駆動装置、移動ステージ、及びロボット
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20240110BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
H02N2/04
H01L41/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106880
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】岡前 雄大
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友寿
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA02
5H681BB02
5H681BB13
5H681BB14
5H681BC08
5H681BC10
5H681CC02
5H681DD23
5H681EE10
5H681EE20
(57)【要約】
【課題】圧電素子の発熱に伴うボルトの膨張による付勢力の低下を抑制した圧電駆動装置、移動ステージ、及びロボットを提供する。
【解決手段】圧電駆動装置10は、圧電素子60を有する振動部40と、ベース20と、ベース20に対して振動部40を固定するボルト50と、ボルト50の頭部51とベース20との間に配置されていて、線膨張係数が振動部40よりも大きいスペーサー70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有する振動部と、
ベースと、
前記ベースに対して前記振動部を固定するボルトと、
前記ボルトの頭部と前記ベースとの間に配置されていて、線膨張係数が前記振動部よりも大きいスペーサーと、を備える、
圧電駆動装置。
【請求項2】
前記スペーサーは、前記ボルトの軸方向からの平面視で、前記圧電素子と重なっている部分を有する、
請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項3】
前記スペーサーは2つあって、2つの前記スペーサーの間に前記圧電素子が配置されている、
請求項2に記載の圧電駆動装置。
【請求項4】
前記スペーサーと前記圧電素子との間に放熱グリスが配置されている、
請求項2に記載の圧電駆動装置。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記ボルトの軸に垂直な方向からの平面視で、前記圧電素子と少なくとも一部が重なっている、
請求項1に記載の圧電駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の圧電駆動装置と、
前記圧電駆動装置により移動するステージと、
前記圧電駆動装置を固定する基部と、を備える、
移動ステージ。
【請求項7】
請求項6に記載の移動ステージと、
ロボットアームと、を備え、
前記移動ステージは、前記ロボットアームの先端に接続されている、
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電駆動装置、移動ステージ、及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電素子の振動を利用する圧電駆動装置が開発されている。このような圧電駆動装置として、例えば特許文献1には、2つの圧電アクチュエーターによって作動される2つの駆動部と、駆動部の先端を被駆動部材に付勢するばね部と、を有する圧電駆動装置が開示されている。2つの駆動部とばね部とは、フレームに連結しており、フレームは、ボルトを用いてベースとなる基部フレームに固定して被駆動部材への付勢力を調整可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の圧電駆動装置は、圧電アクチュエーターからの発熱によりボルトが軸方向に膨張し、ボルトの軸力が低下することで基部フレームとの摩擦力が低下し、ばね部による付勢力が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
圧電駆動装置は、圧電素子を有する振動部と、ベースと、前記ベースに対して前記振動部を固定するボルトと、前記ボルトの頭部と前記ベースとの間に配置されていて、線膨張係数が前記振動部よりも大きいスペーサーと、を備える。
【0006】
移動ステージは、上記に記載の圧電駆動装置と、前記圧電駆動装置により移動するステージと、前記圧電駆動装置を固定する基部と、を備える。
【0007】
ロボットは、上記に記載の移動ステージと、ロボットアームと、を備え、前記移動ステージは、前記ロボットアームの先端に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る圧電駆動装置の構成を示す斜視図。
【
図5】第2実施形態に係る圧電駆動装置の構成を示す側面図。
【
図6】第3実施形態に係る圧電駆動装置の構成を示す側面図。
【
図8】第4実施形態に係る圧電駆動装置の構成を示す側面図。
【
図9】第5実施形態に係る圧電駆動装置を備えた移動ステージの構成を示す平面図。
【
図10】第6実施形態に係る移動ステージを備えたロボットの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係る圧電駆動装置10について、
図1、
図2、及び
図3を参照して説明する。
尚、説明の便宜上、以降の
図1~
図9において、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z方向のプラス側を「上」、Z方向のマイナス側を「下」とも言う。
【0010】
圧電駆動装置10は、
図1及び
図2に示すように、付勢部30及び振動部40を保持するベース20と、振動部40を被駆動部に向けて付勢する付勢部30と、圧電素子60を有する振動部40と、2つの付勢部30の間に位置する固定部45と、軸力によりベース20に対して付勢部30及び振動部40を固定するボルト50と、ボルト50の頭部51とベース20との間に配置されているスペーサー70と、を備える。
【0011】
ベース20は、付勢部30及び振動部40等を保持するものであり、付勢部30及び振動部40側に突出する凸部21と、凸部21のX方向プラス側及びX方向マイナス側に被駆動部を移動させる装置の筐体に圧電駆動装置10を固定するための取付穴22と、を有する。
凸部21には、ボルト50のネジ部53に対応するネジ穴が設けられ、凸部21上に付勢部30及び振動部40等がボルト50によって固定される。また、取付穴22は、Y方向が長径の穴形状なので、圧電駆動装置10の取付位置をY方向に調整することで、付勢力を調整することができる。
【0012】
付勢部30は、付勢部30に接合された振動部40を被駆動部に向けて付勢するものであり、Z方向からの平面視で、基部31のY方向プラス側とY方向マイナス側にそれぞれY方向に変位可能なばね部32が設けられている。また、基部31のプラスX方向の端部に固定部33が設けられている。付勢部30は、振動部40を支持する基部31に設けられたばね部32をY方向に撓ませた状態で圧電駆動装置10を筐体に固定することにより、ばね部32の復元力を利用して振動部40に設けられた突起部44を被駆動部に向けて付勢することができる。また、Z方向からの平面視で、固定部33のボルト50と重なる位置に、ボルト50が通る貫通孔が設けられている。尚、本実施形態では、2つの付勢部30で振動部40を接合しているが、1つの付勢部30で振動部40を接合した構成でも構わない。また、付勢部30の構成材料としては、基部31、ばね部32、及び固定部33の外形形成において、加工精度に優れているシリコン等が用いられる。
【0013】
振動部40は、
図3に示すように、振動体41と、振動体41を支持する支持部42と、振動体41と支持部42とを接続する接続部43と、突起部44と、を有する。
【0014】
振動体41は、Z方向を厚さ方向とし、X軸及びY軸を含むX-Y平面に広がる板状をなし、Y方向に伸縮しながらX方向に屈曲することによりS字状に屈曲振動する。また、振動体41は、Z方向からの平面視で、伸縮方向であるY方向を長手とする長方形状となっている。
【0015】
また、振動体41は、振動体41上に5つの圧電素子60が設けられており、振動体41を振動させるための第1圧電素子61~第5圧電素子65を有する。
【0016】
第1圧電素子61は、振動体41のX方向の中央部において、Y方向に延伸するように配置されている。また、第1圧電素子61に対して振動体41のX方向マイナス側には、第2圧電素子62と第3圧電素子63とが振動体41のY方向に並んで配置され、X方向プラス側には、第4圧電素子64と第5圧電素子65とが振動体41のY方向に並んで配置されている。
【0017】
支持部42は、接続部43を介して振動体41を支持している。支持部42は、Z方向からの平面視で、振動体41のY方向プラス側を囲むU字形状となっており、付勢部30のばね部32を除く基部31と重なる位置で接着剤等により、付勢部30と接合している。従って、振動体41の振動を拘束しない状態で、振動部40と付勢部30とが接合され、付勢部30の付勢力を振動体41に伝達することができる。
【0018】
接続部43は、振動体41の屈曲振動の節となる部分、具体的には振動体41のY方向の中央部において、振動体41と支持部42とを接続している。尚、突起部44を除く振動部40の構成材料としては、振動体41、支持部42、及び接続部43の外形形成において、加工精度に優れているシリコン等が用いられる。
【0019】
突起部44は、振動体41のマイナスY方向の先端部に設けられ、振動体41からY方向マイナス側へ突出している。そして、突起部44の先端部は、被駆動部と接触している。そのため、振動体41の振動は、突起部44を介して被駆動部に伝達される。突起部44の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニア、アルミナ、チタニア等の各種セラミックスが挙げられる。これにより、耐久性に優れた突起部44となる。
【0020】
固定部45は、
図1及び
図2に示すように、2つの付勢部30の間に位置し、振動部40と同じ厚みを有する。Z方向からの平面視で、ボルト50と重なる位置に、ボルト50が通る貫通孔が設けられている。固定部45は、振動部40と同一基板から一体化して形成され、振動部40と固定部45とを連結する連結部を除去し、振動部40と固定部45とを分離したのちに、振動部40と固定部45とを付勢部30に接合している。従って、固定部45の構成材料としては、振動部40の構成材料と同じである。
【0021】
ボルト50は、軸力によりベース20に対して付勢部30及び振動部40を固定するものであり、頭部51と、軸力方向と直交する断面積が頭部51より小さい胴部52及びネジ部53と、を有する。ボルト50は、付勢部30と固定部45とに設けられた貫通孔を通り、ベース20に設けられたネジ穴にネジ部53を締めることで、付勢部30及び振動部40をベース20に固定することができる。尚、ボルト50の構成材料としては、炭素鋼等が用いられる。
【0022】
スペーサー70は、ボルト50の頭部51とベース20との間に配置されている。具体的には、ボルト50の頭部51と、振動部40の上面に固定された付勢部30の上面との間に配置されている。スペーサー70は、Z方向からの平面視で、ボルト50と重なる位置に、ボルト50が通る貫通孔が設けられている。そのため、ボルト50をスペーサー70、付勢部30、及び固定部45に設けられた貫通孔を通過させ、ベース20に設けられたネジ穴にネジ部53を締めることで、付勢部30及び振動部40をベース20に固定することができる。尚、スペーサー70の構成材料としては、線膨張係数が振動部40よりも大きい、例えば、アルミニュウム等が用いられる。また、スペーサー70の構成材料は、線膨張係数がボルト50より大きいのがより好ましい。
【0023】
ボルト50の頭部51とベース20との間に、線膨張係数が振動部40よりも大きいスペーサー70を配置することにより、振動部40の発熱によるボルト50の頭部51とベース20との間のスペーサー70、付勢部30、及び固定部45の軸方向であるZ方向の膨張量の総量が、同様に振動部40の発熱によるボルト50のZ方向の膨張量と近い値とすることができる。そのため、ボルト50の頭部51とベース20との間に、スペーサー70が配置されていない場合に比べ、ボルト50の軸力の低下を低減し、付勢部30の付勢力の低下を低減することができる。
【0024】
次に、振動部40の屈曲振動について、
図4を参照して説明する。
振動部40において、駆動電圧VV1を第2圧電素子62と第5圧電素子65に印加し、駆動電圧VV1と180度位相を異ならしめた駆動電圧VV2を第3圧電素子63と第4圧電素子64に印加し、駆動電圧VV1、駆動電圧VV2のいずれかとも位相を異ならしめた駆動電圧VV3を第1圧電素子61に印加する。そうすると、
図4に示すように、振動体41がY方向に伸縮振動しつつX方向にS字状に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、突起部44の先端が反時計回りに楕円運動をする。このような突起部44の楕円運動によって被駆動部であるステージ100を矢印L1で示す方向に移動させることができる。また、駆動電圧VV1を第3圧電素子63と第4圧電素子64に印加し、駆動電圧VV2を第2圧電素子62と第5圧電素子65に、駆動電圧VV3を第1圧電素子61に、それぞれ印加すると突起部44の先端が時計回りに楕円運動し、ステージ100を矢印L1と反対方向に移動させることができる。
【0025】
以上で述べたように本実施形態の圧電駆動装置10は、ボルト50の頭部51とベース20との間に、線膨張係数が振動部40よりも大きいスペーサー70が配置されているため、振動部40の発熱が付勢部30を介してスペーサー70に伝わり軸方向に膨張する。この膨張量がボルト50の軸方向の膨張量との差を補うことができる。そのため、ボルト50の軸力の低下を低減し、付勢部30の付勢力の低下を低減することができる。
【0026】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る圧電駆動装置10aについて、
図5を参照して説明する。
【0027】
本実施形態の圧電駆動装置10aは、第1実施形態の圧電駆動装置10に比べ、スペーサー70aの構造とスペーサー70aの数が異なっていること以外は、第1実施形態の圧電駆動装置10と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0028】
圧電駆動装置10aは、
図5に示すように、ベース20と、圧電素子60を有する振動部40と、振動部40の上下に配置された2つの付勢部30と、2つの付勢部30の間に位置する固定部45と、ボルト50と、ボルト50の頭部51とベース20との間に配置されている2つのスペーサー70aと、を備える。
【0029】
圧電駆動装置10aのスペーサー70aは、ボルト50の軸方向であるZ方向からの平面視で、矩形であり、圧電素子60と重なっている部分を有する。そのため、2つのスペーサー70aの間に圧電素子60が配置されている。尚、スペーサー70aの構成材料としては、線膨張係数が振動部40よりも大きい、例えば、アルミニュウム等が用いられる。
【0030】
このような構成とすることで、圧電素子60の上下に配置されたスペーサー70aが振動部40の発熱を吸収してボルト50の軸方向に膨張するため、第1実施形態の圧電駆動装置10と同等の効果を得ることができる。
【0031】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る圧電駆動装置10bについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0032】
本実施形態の圧電駆動装置10bは、第1実施形態の圧電駆動装置10に比べ、スペーサー70bの構造とスペーサー70bの数が異なっており、新たにスペーサー71bが配置され、スペーサー70bと圧電素子60との間に放熱グリス80が配置されていること以外は、第1実施形態の圧電駆動装置10と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0033】
圧電駆動装置10bは、
図6及び
図7に示すように、ベース20と、圧電素子60を有する振動部40と、振動部40の上下に配置された2つのスペーサー71bと、2つのスペーサー71bの上下に配置された2つの付勢部30と、2つの付勢部30の間に位置する固定部45と、ボルト50と、ボルト50の頭部51とベース20との間に配置されている2つのスペーサー70bと、を備える。
【0034】
圧電駆動装置10bのスペーサー70bとスペーサー71bとは、Z方向からの平面視で、矩形であり、圧電素子60と重なっている部分を有し、付勢部30のばね部32と重なっている。また、スペーサー70bと圧電素子60との間に放熱グリス80が配置されている。より具体的には、スペーサー70bとスペーサー71bとの間に付勢部30が配置され、ばね部32で構成される空隙に放熱グリス80が配置されている。尚、振動部40の上下に配置されるスペーサー71bの構成材料としては、製造を容易にするために振動部40と同じ、例えばシリコンを用いてもよい。
【0035】
このような構成とすることで、圧電素子60の上下に配置されたスペーサー70b、スペーサー71b、及び放熱グリス80が振動部40の発熱を吸収してボルト50の軸方向に膨張するため、第1実施形態の圧電駆動装置10と同等の効果を得ることができる。
【0036】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態に係る圧電駆動装置10cについて、
図8を参照して説明する。
【0037】
本実施形態の圧電駆動装置10cは、第1実施形態の圧電駆動装置10に比べ、スペーサー70cの配置位置が異なっていること以外は、第1実施形態の圧電駆動装置10と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0038】
圧電駆動装置10cは、
図8に示すように、ベース20と、圧電素子60を有する振動部40と、振動部40の上下に配置された2つの付勢部30と、ボルト50と、ボルト50の頭部51とベース20との間に配置され、2つの付勢部30の間に位置するスペーサー70cと、を備える。
【0039】
圧電駆動装置10cのスペーサー70cは、Z方向からの平面視で、ボルト50と重なっている。また、ボルト50の軸に垂直な方向であるX方向からの平面視で、圧電素子60と少なくとも一部が重なっている。
【0040】
このような構成とすることで、振動部40の発熱がスペーサー70cに伝わり、第1実施形態の圧電駆動装置10と同等の効果を得ることができる。
【0041】
5.第5実施形態
次に、第5実施形態に係る圧電駆動装置10,10a,10b,10cを備えている移動ステージ300について、圧電駆動装置10を適用した構成を例示し、
図9を参照して説明する。
【0042】
移動ステージ300は、
図9に示すように、基部310と、基部310に対して移動するステージ320と、基部310に対してステージ320を移動させる移動機構330と、を有する。互いに直交する3軸をX軸、Y軸、及びZ軸としたとき、ステージ320は、基部310に対してZ軸まわりに回転可能なθステージ320θと、θステージ320θに対してY軸に沿う方向に移動可能なYステージ320Yと、Yステージ320Yに対してX軸に沿う方向に移動可能なXステージ320Xと、を有する。Xステージ320XとYステージ320Yは、リニアガイドによってそれぞれX軸方向及びY軸方向に直動案内されており、リニアガイドのレール方向において滑らかにガタ無く移動することができる。
【0043】
また、移動機構330は、θステージ320θを基部310に対してZ軸まわりに移動させるθ移動機構330θと、Yステージ320Yをθステージ320θに対してY軸に沿う方向に移動させるY移動機構330Yと、Xステージ320XをYステージ320Yに対してX軸に沿う方向に移動させるX移動機構330Xと、を有する。
【0044】
また、θ移動機構330θ、Y移動機構330Y、及びX移動機構330Xは、それぞれ、駆動源として圧電駆動装置10を有する。これにより、移動ステージ300の小型化及び軽量化を図ることができる。減速機を用いずにダイレクト駆動を行えるので、更なる軽量化及び小型化を図ることができる。また、移動ステージ300の駆動精度が向上する。尚、圧電駆動装置10は、圧電素子60の伸縮を利用して振動する構成であり、振動を各ステージ320θ、320X、320Yに伝達することにより、各ステージ320θ、320X、320Yを移動させる。
【0045】
このような移動ステージ300は、ベース20に付勢部30及び振動部40を保持するボルト50の頭部51とベース20との間に、線膨張係数が振動部40よりも大きいスペーサー70が配置された圧電駆動装置10と、圧電駆動装置10により移動するステージ320と、圧電駆動装置10を固定する基部310と、を備えている。そのため、振動部40の発熱によるボルト50のZ方向の膨張に伴うボルト50の軸力の低下を低減し、付勢部30による付勢力の低下を低減できる。従って、振動部40の振動を確実に各ステージ320θ、320X、320Yに伝達することができ、駆動精度の優れた移動ステージ300を得ることができる。
【0046】
6.第6実施形態
次に、第6実施形態に係る移動ステージ300を備えているロボット1000について、
図10を参照して説明する。
【0047】
ロボット1000は、
図10に示すように、駆動部200と、駆動部200の駆動を制御するロボット制御装置900と、カメラ800と、を有する。
【0048】
駆動部200は、6つの駆動軸を有する6軸ロボットである。駆動部200は、床に固定された基台210と、基台210に接続されたロボットアーム220と、ロボットアーム220に移動ステージ300を介して接続された工具400と、を有する。
【0049】
また、ロボットアーム220は、複数のアーム221,222,223,224,225,226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2,J3,J5は、曲げ関節であり、関節J1,J4,J6は、ねじり関節である。また、関節J1,J2,J3,J4,J5,J6には、それぞれ、駆動源であるモーターMと、モーターMの回転量を検出するエンコーダーEとが設置されている。
【0050】
そして、ロボットアーム220の先端であるアーム226の先端部に移動ステージ300が接続されており、移動ステージ300を介して工具400が接続されている。すなわち、移動ステージ300は、アーム226に保持され、工具400は、移動ステージ300に取り付けられている。工具400としては、特に限定されず、目的の作業に応じて適宜設定することができるが、本実施形態では、プリンターヘッド、その中でも特にインクジェットヘッド410が用いられている。インクジェットヘッド410は、図示しないインク室及びインク室の壁面に配置された振動板と、インク室に繋がるインク吐出孔411と、を有し、振動板が振動することによりインク室内のインクがインク吐出孔411から吐出する構成となっている。ただし、インクジェットヘッド410の構成としては、特に限定されない。また、プリンターヘッドとしては、インクジェットヘッド410に限定されない。
【0051】
図10に示すように、カメラ800は、ロボットアーム220の先端側を向いた状態でアーム225に配置されている。このようにカメラ800をロボットアーム220に配置することにより、比較的近距離からカメラ800で対象物Qを撮像することができる。
【0052】
アーム225の先端側にインクジェットヘッド410が位置する関係は、アーム225以外のアーム221~224,226がそれぞれどのように動いても維持される。そのため、アーム225にカメラ800を配置することにより、カメラ800は、常に、インクジェットヘッド410の先端側を撮像することができる。従って、インクジェットヘッド410を用いて対象物Qへの印刷を行う際の姿勢、つまり、インクジェットヘッド410が対象物Qに対して如何なる姿勢で対向しても、当該姿勢において対象物Qを撮像することができる。ただし、カメラ800の配置は、特に限定されず、アーム221~224,226に配置されていてもよい。
【0053】
また、ロボット制御装置900は、関節J1~J6、移動ステージ300、インクジェットヘッド410、及びカメラ800の駆動を制御して、駆動部200に後述する所定の作業を行わせる。このようなロボット制御装置900は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するCPUなどのプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェイスと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0054】
このようなロボット1000は、ロボット制御装置900が駆動部200を始めとする各部を制御することにより、例えば、
図10に示すように、固定部材700に固定された対象物Qの印刷面Q1にインクジェットヘッド410を用いて所望の模様を印刷する作業を行うことができる。
【0055】
また、ロボット1000は、ボルト50の頭部51とベース20との間に、線膨張係数が振動部40よりも大きいスペーサー70が配置された圧電駆動装置10を備えた移動ステージ300がロボットアーム220の先端に接続されているため、振動部40の発熱による付勢部30による付勢力の低下を低減でき、移動ステージ300に取り付けられたインクジェットヘッド410等の工具400を高精度に操作することができる。そのため、移動ステージ300に取り付けられた工具400を高精度に制御可能なロボット1000を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
10…圧電駆動装置、20…ベース、21…凸部、22…取付穴、30…付勢部、31…基部、32…ばね部、33…固定部、40…振動部、41…振動体、42…支持部、43…接続部、44…突起部、45…固定部、50…ボルト、51…頭部、52…胴部、53…ネジ部、60…圧電素子、61…第1圧電素子、62…第2圧電素子、63…第3圧電素子、64…第4圧電素子、65…第5圧電素子、70…スペーサー、80…放熱グリス、100…ステージ、300…移動ステージ、1000…ロボット、L1…矢印。