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特開2024-62037工作機械システムおよび工作機械システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062037
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】工作機械システムおよび工作機械システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 13/08 20060101AFI20240430BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240430BHJP
   B23B 13/02 20060101ALI20240430BHJP
   B23Q 15/013 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B23B13/08
B23Q17/00 A
B23B13/02 B
B23Q15/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169781
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】内山 拓治
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 克宏
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 武史
(72)【発明者】
【氏名】賀来 則夫
【テーマコード(参考)】
3C001
3C029
3C045
【Fターム(参考)】
3C001KA07
3C001KB01
3C001TA01
3C001TB08
3C029EE02
3C045FC04
3C045FC38
(57)【要約】
【課題】加工品質の低下を防止した工作機械システムおよび工作機械システムの制御方法を提供する。
【解決手段】把持した棒材Wの軸心方向に沿って前進および後退が可能な主軸25と主軸25に把持された棒材Wを加工する第1工具T1が取り付けられた第1刃物台27とを備え、棒材Wの加工と加工が行われた加工済み部分の切り離しと棒材Wの把持を解除して主軸25が後退して棒材Wを所定把持位置で再把持する掴みかえとを繰り返すことで棒材Wから複数の同一形状の製品を製造する旋盤システム1において、旋盤システム1の状態が所定条件を満たす場合には再把持する位置として所定把持位置に代えて所定把持位置とは異なる特殊把持位置を選択する把持位置選択部20bを備えた。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持した棒材の軸心方向に沿って前進および後退が可能な主軸と該主軸に把持された該棒材を加工する加工工具が取り付けられた刃物台とを備え、該棒材の加工と加工が行われた加工済み部分の切り離しと該棒材の把持を解除して該主軸が後退して該棒材を所定把持位置で再把持する掴みかえとを繰り返すことで該棒材から複数の同一形状の製品を製造する工作機械システムにおいて、
この工作機械システムの状態が所定条件を満たす場合には前記再把持する位置として前記所定把持位置に代えて該所定把持位置とは異なる特殊把持位置を選択する把持位置選択部を備えたことを特徴とする工作機械システム。
【請求項2】
前記特殊把持位置は、前記所定把持位置よりも前記主軸の後退側の位置であることを特徴とする請求項1記載の工作機械システム。
【請求項3】
前記主軸よりも該主軸の後退側に配置され、前記棒材に接して振れ止めを行う振止位置と該棒材から離間した退避位置とに移動自在な振止部材を有する振止装置を備え、
前記所定条件は、前記掴みかえに際して前記振止部材を前記振止位置から前記退避位置に移動させる場合に満たされる条件であることを特徴とする請求項1または2記載の工作機械システム。
【請求項4】
前記棒材とともに前記軸心方向に移動する送り矢とを備え、
前記所定条件は、前記掴みかえに際して前記送り矢の位置が前記軸心方向における第1範囲に位置している場合に満たされる条件であることを特徴とする請求項1または2記載の工作機械システム。
【請求項5】
前記第1範囲は、加工プログラムで指定された範囲であることを特徴とする請求項4記載の工作機械システム。
【請求項6】
前記棒材の振れによって生じた振動を検出する振動検出器を備え、
前記所定条件は、前記振動検出器が検出した振動が閾値を超えている場合に満たされる条件であることを特徴とする請求項1または2記載の工作機械システム。
【請求項7】
主軸と該主軸に把持された棒材を加工する加工工具が取り付けられた刃物台とを備え、該棒材から複数の同一形状の製品を製造する工作機械システムの制御方法であって、
前記工作機械システムの状態が所定条件を満たさない場合には所定把持位置を選択し、前記所定条件を満たす場合には前記所定把持位置とは異なる特殊把持位置を選択する把持位置選択工程と、
前記棒材の把持を解除して前記把持位置選択工程において選択された把持位置に前記主軸が移動して該棒材を再把持する掴みかえ工程と、
前記掴みかえ工程によって前記再把持された棒材を加工する加工工程と、
前記加工工程において加工が行われた加工済み部分の切り離しを行う切り離し工程とを備えたことを特徴とする工作機械システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持した棒材の軸心方向に沿って前進および後退が可能な主軸と該主軸に把持された該棒材を加工する加工工具が取り付けられた刃物台とを備え、該棒材の加工と加工が行われた加工済み部分の切り離しと該棒材の把持を解除して該主軸が後退して該棒材を所定把持位置で再把持する掴みかえとを繰り返すことで該棒材から複数の同一形状の製品を製造する工作機械システムおよび工作機械システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械システムには、主軸や刃物台が設けられた加工装置と、加工装置に長尺状の棒材を供給する給材機とを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。加工装置の主軸は、把持解除可能に棒材を把持して回転する。主軸は、棒材を把持した状態および把持解除した状態の何れの状態においても棒材の軸心方向に移動可能に構成されている。加工装置には第1制御装置が組み込まれている。第1制御装置は、工作機械システムのオペレータなどが作成した加工プログラム(NCプログラム)や加工装置に設けられた操作パネルを用いた入力操作に従って加工工具が取り付けられた刃物台や主軸などの動作を制御する。第1制御装置が加工プログラムに従って刃物台や主軸の動作を制御することで、棒材の先端部分が所望の形状に加工され、加工された加工済み部分が切り離される。多くの場合、加工工具による加工が開始されてから加工済み部分が切り離されるまで棒材は主軸によって把持されている。加工装置は、加工済み部分が切り離されたら棒材の掴みかえを行う。掴みかえでは、主軸による把持を解除して主軸が棒材の後端側に後退した後、主軸が棒材を再把持する。加工工具による加工と棒材の切り離しと棒材の掴みかえとを複数サイクル繰り返すことで、1本の棒材からサイクル数に応じた複数の製品が製造される。
【0003】
給材機は、加工装置と並んで加工装置よりも棒材の後端側に設置される。給材機は、送り矢と、送り矢を棒材の軸心方向に移動させる送り矢駆動機構と、送り矢駆動機構の動作を制御する第2制御装置とを備えている。送り矢は、先端にフィンガーチャックを備えている。そのフィンガーチャックが棒材の後端部分を掴むことで、送り矢は棒材と連結される。そして、送り矢駆動機構によって送り矢が棒材の先端側に向かって送り出されることで給材機に投入された棒材が加工装置に供給される。送り矢は、加工装置が加工を行っているときには所定の荷重で棒材の後端側から棒材の先端側に向かって棒材を付勢している。この荷重は、主軸が棒材を把持しているときに棒材と主軸の間に滑りが生じない比較的弱い荷重に設定されている。
【0004】
主軸よりも後端側には、振止装置が取り付けられていることがある。振止装置は、棒材の周面に接することで棒材が回転によって振れてしまうことを防止する振止部材を有している。送り矢のフィンガーチャックは棒材よりも外径が大きく、またフィンガーチャックには切り欠きが形成されていることもある。このため、振止部材がフィンガーチャックに接してしまうと振止部材が破損してしまう虞がある。そこで、振止部材がフィンガーチャックと接することがないように、送り矢が所定の範囲に位置する場合、振止部材は棒材から径方向に離間した退避位置に退避するように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-313267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振止部材が退避位置に退避している場合や振止装置が取り付けられていない場合、長尺状の棒材のうち主軸が把持している把持部分よりも後端側は片持ち状態になり、棒材の後端側の長さと主軸の回転数によっては大きく振れながら回転してしまうことがある。棒材の後端側が大きく振れながら回転すると棒材を把持している主軸が振動するため加工品質が低下して製造した製品が不良品になってしまうことがある。なお、この対策として主軸の回転数を低下させて加工することも考えられるが、その対策では加工速度が低下する上に加工品質も低下することもある。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、加工品質の低下を防止した工作機械システムおよび工作機械システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の工作機械システムは、
把持した棒材の軸心方向に沿って前進および後退が可能な主軸と該主軸に把持された該棒材を加工する加工工具が取り付けられた刃物台とを備え、該棒材の加工と加工が行われた加工済み部分の切り離しと該棒材の把持を解除して該主軸が後退して該棒材を所定把持位置で再把持する掴みかえとを繰り返すことで該棒材から複数の同一形状の製品を製造する工作機械システムにおいて、
この工作機械システムの状態が所定条件を満たす場合には前記再把持する位置として前記所定把持位置に代えて該所定把持位置とは異なる特殊把持位置を選択する把持位置選択部を備えたことを特徴とする。
【0009】
この工作機械システムによれば、前記把持位置選択部が把持位置を選択することで前記棒材の振れを抑制して加工品質の低下を防止できる。
【0010】
ここで、前記把持位置選択部は、前記掴みかえに際して、前記再把持する位置を選択するものであってもよい。前記所定把持位置は、加工プログラムで指定された位置であってもよく、操作パネルから入力された位置であってもよい。前記特殊把持位置は、前記加工プログラムで指定された位置であってもよく、前記棒材の性状と前記主軸の回転数から演算された位置であってもよく、前記主軸の前記軸心方向への移動可能距離に基づいて演算された位置であってもよく、操作パネルから入力された位置であってもよい。
【0011】
この工作機械システムにおいて、
前記特殊把持位置は、前記所定把持位置よりも前記主軸の後退側の位置であってもよい。
【0012】
こうすることで、棒材Wが危険速度で回転することを抑制して加工品質の低下を防止できる。
【0013】
この工作機械システムにおいて、
前記主軸よりも該主軸の後退側に配置され、前記棒材に接して振れ止めを行う振止位置と該棒材から離間した退避位置とに移動自在な振止部材を有する振止装置を備え、
前記所定条件は、前記掴みかえに際して前記振止部材を前記振止位置から前記退避位置に移動させる場合に満たされる条件であってもよい。
【0014】
前記振止部材が前記退避位置に移動する場合に前記特殊把持位置が選択することで、前記振止部材が前記棒材から離間しても振れを抑制して加工品質の低下を防止できる。ここで、前記退避位置は、前記振止部材が前記棒材に対して該棒材の径方向に離間した位置であってもよい。
【0015】
また、この工作機械システムにおいて、
前記棒材とともに前記軸心方向に移動する送り矢を備え、
前記所定条件は、前記掴みかえに際して前記送り矢の位置が前記軸心方向における第1範囲に位置している場合に満たされる条件であってもよい。
【0016】
前記第1範囲を適切に設定することで、前記棒材の振れを抑制して加工品質の低下を防止できる。
【0017】
ここで、この工作機械システムは、前記送り矢の前記軸心方向における位置を把握する送り矢位置把握部を備えていてもよい。また、前記第1範囲は、オペレータによって変更可能であってもよい。
【0018】
さらに、この工作機械システムにおいて、
前記第1範囲は、加工プログラムで指定された範囲であってもよい。
【0019】
こうすることで、オペレータが前記第1範囲を簡単な作業で変更できる。
【0020】
加えて、この工作機械システムにおいて、
前記棒材の振れによって生じた振動を検出する振動検出器を備え、
前記所定条件は、前記振動検出器が検出した振動が閾値を超えている場合に満たされる条件であってもよい。
【0021】
前記振動検出器が検出した振動が前記閾値を超えている場合に前記特殊把持位置が選択されるので、前記棒材の振れを抑制して加工品質の低下を防止できる。
【0022】
ここで、前記振動検出器は、前記主軸に取り付けられたものであってもよい。また、前記所定条件は、前記振動検出器が検出した振動の振幅が閾値を超えている場合に満たされる条件であってもよく、該振動検出器が検出した振動の加速度が閾値を超えている場合に満たされる条件であってもよい。
【0023】
上記課題を解決する本発明の工作機械システムの制御方法は、
主軸と該主軸に把持された棒材を加工する加工工具が取り付けられた刃物台とを備え、該棒材から複数の同一形状の製品を製造する工作機械システムの制御方法であって、
前記工作機械システムの状態が所定条件を満たさない場合には所定把持位置を選択し、前記所定条件を満たす場合には前記所定把持位置とは異なる特殊把持位置を選択する把持位置選択工程と、
前記棒材の把持を解除して前記把持位置選択工程において選択された把持位置に前記主軸が移動して該棒材を再把持する掴みかえ工程と、
前記掴みかえ工程によって前記再把持された棒材を加工する加工工程と、
前記加工工程において加工が行われた加工済み部分の切り離しを行う切り離し工程とを備えたことを特徴とする。
【0024】
この工作機械システムの制御方法によれば、把持位置選択工程において適切な把持位置を選択することで該棒材の振れを抑制して加工品質の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、加工品質の低下を防止した工作機械システムおよび工作機械システムの制御方法を提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態にかかる旋盤システムの正面図である。
図2図1に示した旋盤システムの内部構成を簡易的に示す平面図である。
図3】(a)は、振止部材が振止位置にある様子を示す振止装置の左側面図であり、(b)は、振止部材が退避位置にある様子を示す振止装置の左側面図である。
図4図1に示した旋盤システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図1に示した旋盤システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図6図1に示した旋盤システムの動作を示すフローチャートである。
図7図1に示した旋盤システムの動作を示すフローチャートである。
図8図1に示した旋盤システムの動作を示すフローチャートである。
図9】(a)は、振止部材を退避位置に移動させない場合の送り矢の位置を簡易的に示す平面図であり、(b)は、振止部材を退避位置に移動させる場合の送り矢の位置を簡易的に示す平面図であり、(c)は、特殊把持位置の決定動作に用いられる各距離を説明するための平面図である。
図10】第1変形例における旋盤システムの内部構成を簡易的に示す平面図である。
図11】第2変形例における旋盤システムの動作を示す図6と同様のフローチャートである。
図12】他の実施形態における旋盤システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図13図12に示した旋盤システムの動作を示す図6と同様のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、本発明をNC旋盤と給材機とを備えた旋盤システムに適用した例を用いて説明する。
【0028】
図1は、本実施形態にかかる旋盤システムの正面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の旋盤システム1は、加工装置であるNC旋盤2と、材料供給装置である給材機4とを備えている。この旋盤システム1が、工作機械システムの一例に相当する。本実施形態のNC旋盤2は、いわゆるスイス型旋盤である。NC旋盤2は、切削室22と、主軸室23と、旋盤操作パネル24とを備えている。切削室22は、棒材W(図2参照)の先端部分を加工する空間が形成された部屋であり、正面側から見てNC旋盤2の右側に配置されている。主軸室23は、主軸25(図2参照)が配置された部屋であり、正面側から見てNC旋盤2の左側に配置されている。
【0030】
旋盤操作パネル24は、旋盤操作部241と旋盤表示画面242とを有している。旋盤操作部241は、旋盤システム1のオペレータによる入力操作を受け付ける複数のボタンやキー等からなる。なお、旋盤操作部241は、旋盤表示画面242と一体化されたタッチパネルであってもよい。旋盤システム1のオペレータは、旋盤操作部241や外部コンピューターを用いて作成した加工プログラムを後述する記憶部203(図4参照)に記憶させることができる。また、旋盤システム1のオペレータは、旋盤操作部241を用いて加工プログラムの修正を行い、修正した加工プログラムを記憶部203に記憶させることもできる。さらに、旋盤システム1のオペレータは、旋盤操作部241を用いて旋盤システム1の各構成要素を個別または連携して動作させることもできる。旋盤表示画面242は、記憶部203に記憶された加工プログラム、旋盤システム1の各種設定値およびエラー内容などの旋盤システム1に関する各種情報を表示するディスプレイである。
【0031】
給材機4は、長尺な棒材W(図2参照)をNC旋盤2に供給する。給材機4は、NC旋盤2と並んで設置される。給材機4には、複数の棒材Wが格納されている。給材機4は、格納された棒材Wのうちの1本をNC旋盤2に向かって送り出す。また、給材機4は、加工によって短くなった棒材Wである残材をNC旋盤2から引き抜いて排出する。残材を排出した後、給材機4は、格納された棒材Wからあらたに1本をNC旋盤2に向かって送り出す。給材機4には、給材機4を操作するための入力装置である給材機操作パネル42が設けられている。
【0032】
図2は、図1に示した旋盤システムの内部構成を簡易的に示す平面図である。
【0033】
図2に示すように、NC旋盤2は、主軸25と、ガイドブッシュ26と、第1刃物台27と、背面主軸28と、第2刃物台29とを備えている。主軸25、ガイドブッシュ26、第1刃物台27、背面主軸28および第2刃物台29は、土台である脚の上に配置されている。主軸25、第1刃物台27、背面主軸28および第2刃物台29は、加工動作が記述された加工プログラムや旋盤操作パネル24(図1参照)からの入力操作に従って動作する。
【0034】
主軸25は、Z1軸方向に移動可能である。主軸25は、主軸台によって主軸台とともにZ1軸方向に移動するが、主軸台は図示省略し説明も省略する。Z1軸方向は、水平方向であり、図2においては左右方向である。このZ1軸方向は、棒材Wの軸心方向の一例に相当する。主軸25は、その内部を貫通している棒材Wを把持解除可能に把持するためのコレットチャック251を先端部分に有している。主軸25は、棒材Wを把持して主軸中心線CLを中心として回転可能である。主軸中心線CLの方向はZ1軸方向と一致している。以下、主軸25が棒材Wの先端側に移動することを前進と称し、主軸25が棒材Wの後端側に移動することを後退と称することがある。図2においては、右方向が前進方向であり、左方向が後退方向である。
【0035】
ガイドブッシュ26は、土台である脚に固定されている。ガイドブッシュ26の、主軸25が配置された側とは反対側の端面は、切削室22(図1参照)内に露出している。ガイドブッシュ26は、主軸25の内部を貫通した棒材Wの先端側部分をZ1軸方向へ摺動自在に支持する。このガイドブッシュ26の、棒材Wを支持している部分は、主軸25と同期して主軸中心線CLを中心にして回転可能である。ガイドブッシュ26から切削室22内に突出した棒材Wの先端部分が第1刃物台27に取り付けられた第1工具T1によって加工される。この第1工具T1が、加工工具の一例に相当する。ガイドブッシュ26により、加工時の棒材Wの撓みが抑制されるので、特に細長い棒材WをNC旋盤2によって高精度に加工できる。
【0036】
第1刃物台27は、Z1軸方向と直交しかつ水平方向を向いたX1軸方向と、垂直方向を向いたY1軸方向に移動可能である。この第1刃物台27が、刃物台の一例に相当する。図2では、上下方向がX1軸方向であり、紙面に直交する方向がY1軸方向である。第1刃物台27には、切削工具、突切工具などを含む複数種類の第1工具T1がY1軸方向に並んで櫛歯状に取り付けられている。また、第1工具T1として、エンドミルやドリルなどの回転工具を第1刃物台27に取り付けることもできる。第1刃物台27がY1軸方向に移動することで、これらの複数種類の第1工具T1から任意の第1工具T1が選択される。そして、第1刃物台27がX1軸方向に移動することで、選択されている第1工具T1が主軸25に把持されガイドブッシュ26に支持された棒材Wの先端部分に切り込んで加工したり、棒材Wの加工済み部分を切り離したりする。なお、加工済み部分を切り離すための工具が突切工具である。
【0037】
背面主軸28は、X2軸方向およびZ2軸方向に移動可能である。背面主軸28は、背面主軸台によって背面主軸台とともにX2軸方向およびZ2軸方向に移動するが、背面主軸台は図示省略し説明も省略する。X2軸方向は上述したX1軸方向と同一の方向であり、Z2軸方向は上述したZ1軸方向と同一の方向である。また、Z2軸方向は、背面主軸28の軸線方向に相当する。図2には、背面主軸28が、ガイドブッシュ26を挟んで主軸25に対向した位置にある様子が示されている。この位置では背面主軸28の回転中心である背面主軸中心線は、主軸中心線CLと同一線上に配置されている。背面主軸中心線の方向はZ2軸方向と一致している。背面主軸28には、主軸25を用いた加工が完了した棒材Wの加工済み部分が、突切工具によって切り離されて受け渡される。以下、切り離された加工済み部分を切断済み部分と称する。背面主軸28は、主軸25から受け渡された切断済み部分を把持解除可能に把持する。また、背面主軸28は、X2軸方向およびZ2軸方向に移動することで把持した切断済み部分を移送する。
【0038】
第2刃物台29は、Y2軸方向へ移動可能である。なお、第2刃物台29は、X2軸方向に移動可能に構成されていてもよい。Y2軸方向は上述したY1軸方向と同一の方向である。第2刃物台29には、切断済み部分を加工するドリルやエンドミル等の第2工具T2が取り付けられている。なお、第2工具T2は、Y2軸方向に並んで第2刃物台29に複数取り付けられている。第2刃物台29のY2軸方向への移動によって、これらの複数の第2工具T2から任意の第2工具T2が選択される。そして、背面主軸28がX2軸方向やZ2軸方向に移動することで、背面主軸28に把持された切断済み部分の切断端側が加工される。この切断端側の加工が完了した切断済み部分が旋盤システム1によって製造された製品になる。なお、背面主軸28を用いた加工を行わない場合もある。その場合、切断済み部分がそのまま製品になる。第2刃物台29には、製品を受け入れる製品受入口291と不図示のシューターとが設けられている。シューターは、第2刃物台29内に設けられている。背面主軸28は、製品を製品受入口291に挿入した後、把持を解除して背面主軸28に設けられたシリンダーによって押し出すことでシューターに製品を投下する。投下された製品は、不図示のコンベアによって所定位置まで移送されて旋盤システム1の外部に設けられた製品貯留部に排出される。
【0039】
給材機4は、上述した給材機操作パネル42(図1参照)の他に、送り矢44と、送り矢駆動機構45と、送り矢モータ46と、先端センサ47と、原点センサ48と、振止装置31とを有している。送り矢44は、不図示のガイドによってZ1軸方向に移動自在に案内されている。送り矢44の先端には、棒材Wの後端を把持するフィンガーチャック441が設けられている。このフィンガーチャック441は、送り矢44の他の部分に対して回転自在に取り付けられることで、主軸中心線CLを回転中心軸として回転自在になっている。フィンガーチャック441が棒材Wの後端を把持することで、送り矢44は棒材Wに連結される。すなわち、フィンガーチャック441が棒材Wを把持している間、送り矢44は棒材ととともにZ1軸方向に移動する。
【0040】
送り矢駆動機構45は、給材機4の先端側と後端側それぞれに設けられた不図示のプーリと、そのプーリに掛け渡された駆動ベルトによって構成されている。駆動ベルトには、連結部451が固定されている。この連結部451によって駆動ベルトと送り矢44の後端部分とが連結されている。給材機4の後端側に設けられたプーリは、送り矢モータ46の出力軸に固定されている。
【0041】
送り矢モータ46の出力軸が一方向に回転すると、送り矢駆動機構45と連結部451によって送り矢44はZ1軸に沿ってNC旋盤2に向かって移動する。反対に、送り矢モータ46の出力軸が他方向に回転すると、送り矢駆動機構45と連結部451によって送り矢44はZ1軸に沿ってNC旋盤2から離間する方向に移動する。給材機4内に格納された複数の棒材Wのうち軸心が主軸中心線CLと一致した位置にある棒材Wがフィンガーチャック441によって把持される。そして、送り矢44が移動することで、フィンガーチャック441に把持された棒材Wは、棒材Wの軸心方向に移動する。すなわち、送り矢モータ46の出力軸が一方向に回転すると、棒材Wはその先端側に移動し、送り矢モータ46の出力軸が他方向に回転すると、棒材Wはその後端側に移動する。送り矢モータ46は、送り矢エンコーダ461を有している。なお、送り矢エンコーダ461は、送り矢モータ46とは別に設置されていてもよい。送り矢エンコーダ461によって、送り矢モータ46の回転数や回転量が検出される。送り矢エンコーダ461の検出結果は、第2制御装置40(図4参照)に送信される。
【0042】
先端センサ47は、棒材Wの先端を検出する。また、原点センサ48は、送り矢44が原点に位置しているか否かを検出する。送り矢44の原点は、送り矢44の移動範囲のうち最も後端側に位置している。原点センサ48は、送り矢44の後端を検出するセンサである。これらの先端センサ47と原点センサ48の検出結果は、それぞれ第2制御装置40(図4参照)に送信される。第2制御装置40は、先端センサ47の検出結果と送り矢エンコーダ461の検出結果によって、NC旋盤2に電源投入後最初に棒材Wを供給する際やあらたに棒材Wを供給する際の棒材Wの先端位置がどの位置にあるかを把握する。また、第2制御装置40は、原点センサ48の検出結果と送り矢エンコーダ461の検出結果によって、送り矢44の位置を把握する。
【0043】
振止装置31は、不図示の主軸台に取り付けられている。なお、振止装置31は、NC旋盤2内に配置されているものの給材機4に属する構成である。図2に示す振止装置31は、主軸25とともにZ1軸方向に移動する。振止装置31は、棒材Wの周面に接して棒材Wの振れ止めを行う振止部材311を有している。振止装置31の構造については後に詳述する。
【0044】
図3(a)は、振止部材が振止位置にある様子を示す振止装置の左側面図であり、図3(b)は、振止部材が退避位置にある様子を示す振止装置の左側面図である。図3(a)および図3(b)には棒材Wも示されている。
【0045】
図3(a)および図3(b)に示すように、振止装置31は、中心部近傍に棒材Wを貫通させるための振止貫通孔310aが形成された振止筐体310と、3つの振止部材311とを有している。なお、振止部材311の数は、2つでもよく、4つ以上であってもよい。振止部材311は、主軸中心線CLを中心として120度づつ回転した位置に配置されている。振止部材311は、図3(a)に示す棒材Wに接して振れ止めを行う振止位置と、図3(b)に示す棒材Wから離間した退避位置とに移動自在に構成されている。振止位置と退避位置との切換えは、振止アクチュエータ313(図4参照)によって行われる。振止アクチュエータ313は、第1制御装置20(図4参照)によって制御されている。振止位置では、基本的には図3(a)に示すように3つの振止部材311が棒材Wの周面に接しているが、棒材Wの振れ状況などによって3つの振止部材311うちの1つまたは2つのみが棒材Wに接していることもある。退避位置では、3つの振止部材311は、それぞれ棒材Wの径方向に退避することで棒材Wから離間している。
【0046】
図4は、図1に示した旋盤システムのハードウェア構成を示すブロック図である。なお、この図4では、旋盤システム1のハードウェア構成のうち本発明との関連性の低いものは、これまで説明した構成要素を動作させるものであっても図示省略している。
【0047】
図4に示すように、NC旋盤2は、第1制御装置20と、上述した旋盤操作パネル24と、Z1軸モータ252と、主軸モータ253と、主軸アクチュエータ254とを有している。第1制御装置20は、いわゆるNC(Numerical Control)装置であり、CPU201と、PLC(Programmable Logic Controller)202と、記憶部203とを有している。第1制御装置20は、CPU201による演算機能を有するコンピュータである。第1制御装置20は、記憶部203に記憶されている加工プログラムや旋盤操作パネル24からの入力操作に従って図2に示した主軸25、第1刃物台27、背面主軸28および第2刃物台29等の各構成要素の動作を制御する。図4には、各構成要素を駆動するモータやアクチュエータのうちの一部が示されている。第1制御装置20は、主にNC旋盤2に設けられたサーボモータに対して数値制御を行う。また、第1制御装置20が有しているPLC202は、主にNC旋盤2に設けられたシリンダーやバルブ等のサーボモータ以外の機器の動作をシーケンス制御する。
【0048】
記憶部203には、ラダープログラムやマクロプログラムなどの各種プログラムがあらかじめ記憶されている。さらに、記憶部203には、加工プログラムの他に、工具に関するデータ、棒材Wの径データおよび製品長データなどの諸情報がオペレータによって記憶される。記憶部203は、ROM、HDDおよびSSD等の不揮発性メモリとRAM等の揮発性メモリとから構成されている。
【0049】
Z1軸モータ252は、第1制御装置20からの指令を受けて回転するサーボモータである。Z1軸モータ252が回転することで主軸25(図2参照)はZ1軸方向に移動する。なお、第1制御装置20とZ1軸モータ252の間には不図示のアンプが設けられており、第1制御装置20がアンプに指令を送信することでZ1軸モータ252が制御されている。以下、アンプについては説明を省略する。Z1軸モータ252は、Z1軸エンコーダ2521を有している。Z1軸エンコーダ2521の出力が第1制御装置20にフィードバックされることで、第1制御装置20は、主軸25(図2参照)のZ1軸方向における位置を常時把握している。
【0050】
主軸25(図2参照)には、ビルトインモーター等の主軸モータ253が設けられている。主軸モータ253は、第1制御装置20から指令を受けて回転する。主軸モータ253が回転することで、主軸25および主軸25に把持された棒材W(図2参照)は、主軸中心線CL(図2参照)を中心にして回転する。なお、主軸25と同様に、背面主軸28にも背面主軸モータが設けられているが説明は省略する。主軸アクチュエータ254は、コレットチャック251(図2参照)を動作させるための油圧シリンダー等のアクチュエータである。主軸アクチュエータ254によって不図示のチャックスリーブが前進方向に移動することで、コレットチャック251が閉じて棒材Wが主軸25によって把持される。また、チャックスリーブが後退方向に移動することで、コレットチャック251が開いて主軸25による棒材Wの把持が解除される。
【0051】
給材機4は、上述した給材機操作パネル42、送り矢モータ46、先端センサ47および原点センサ48の他に第2制御装置40と振止アクチュエータ313とを有している。第2制御装置40は、給材機4の各構成要素についてシーケンス制御を行う制御装置である。振止アクチュエータ313は、振止部材311を図3(a)に示した振止位置と図3(b)に示した退避位置とに移動させるための油圧シリンダー等のアクチュエータである。第2制御装置40は、各センサや送り矢エンコーダ461等から受信した情報に基づいて送り矢モータ46や給材機4に設けられた不図示のアクチュエータの動作を制御する。また、第2制御装置40は、第1制御装置20からの動作要求に応じて給材機4の動作を制御する。さらに、第2制御装置40は、振止アクチュエータ313を制御することでNC旋盤2内に配置されている振止装置31の動作も制御する。そして、第2制御装置40は、振止部材311を振止位置や退避位置に移動させた際に、それぞれ第1制御装置20にその旨を送信する。
【0052】
送り矢モータ46は、第2制御装置40からの指令を受けて回転するサーボモータである。送り矢モータ46が回転することで送り矢44(図2参照)はZ1軸方向に移動する。上述したように、第2制御装置40は、送り矢44の原点からの移動距離を原点センサ48の検出結果と送り矢エンコーダ461の検出結果によって把握することで、送り矢44のZ1軸方向における位置を常時把握し、給材機4に関する情報として第1制御装置20に送信している。また、第2制御装置40は、あらたに供給する棒材Wの先端や電源投入後最初にNC旋盤2に送り出した棒材Wの先端のZ1軸方向における位置を第1制御装置20に送信する。NC旋盤2が加工を開始した後、残材の引き抜き開始までは、第2制御装置40によって送り矢モータ46は基本的に一定のトルクで一方向に回転しようとするように制御される。これにより、棒材Wは、設定された荷重で棒材Wの先端側に向かって送り矢44によって付勢される。この荷重は、主軸25が棒材Wを把持しているときに棒材Wと主軸25との間に滑りが生じる虞が無い比較的弱い荷重に設定される。
【0053】
給材機操作パネル42は、操作部と表示画面とが一体になったタッチパネルである。なお、給材機4には、給材機操作パネル42の他に非常停止ボタンや送り矢モータ46のトルク設定スイッチ等が設けられている。旋盤システム1のオペレータは、給材機操作パネル42を用いて、送り矢44(図2参照)をZ1軸方向に手動操作で移動させたり、給材機4の各種設定値を入力することができる。また、給材機操作パネル42には、給材機4の各種設定値およびエラー内容などの給材機4に関する各種情報並びに給材機4の操作ボタンが表示される。
【0054】
第1制御装置20と第2制御装置40とは信号ケーブルで接続されている。第1制御装置20は、信号ケーブルを介して第2制御装置40に動作要求などを送信する。また、第2制御装置40は、信号ケーブルを介して第1制御装置20に送り矢44の位置情報を含む給材機4に関する各種情報を随時送信する。
【0055】
図5は、図1に示した旋盤システムの機能構成を示す機能ブロック図である。なお、図5でも、本発明に特に関連性の高い機能構成のみを示し、旋盤システム1が有するその他の機能構成は図示省略し説明も省略する。
【0056】
図5に示すように、第1制御装置20によって、機械制御部20aと把持位置選択部20bとが構成されている。機械制御部20aは、主に図3に示したCPU201とPLC202と記憶部203によって達成される機能構成である。また、把持位置選択部20bは、主にCPU201と記憶部203によって達成される機能構成である。また、第2制御装置40によって、給材制御部40aと送り矢位置把握部40bが構成されている。
【0057】
機械制御部20aは、NC旋盤2の各構成要素の動作を制御するものである。また、機械制御部20aは、第2制御装置40に動作要求や情報送信要求を送信することもある。把持位置選択部20bは、掴みかえにおいて主軸25が棒材Wを再把持する位置を選択するものである。具体的には、把持位置選択部20bは、旋盤システム1の状態が所定条件を満たさない場合には通常の把持位置である所定把持位置を選択し、所定条件を満たす場合には特殊把持位置を選択する。
【0058】
給材制御部40aは、給材機4に設けられた各種センサからの出力、給材機操作パネル42からの入力操作および第1制御装置20からの動作要求に従って送り矢モータ46などの動作を制御する機能構成である。送り矢位置把握部40bは、原点センサ48の検出結果と送り矢エンコーダ461の検出結果を用いて原点センサ48からの送り矢44のZ1軸方向の位置を演算することで送り矢44(図2参照)の後端位置を把握する。第2制御装置40が有する不図示のメモリーには、送り矢44の長さ情報が保存されている。送り矢位置把握部40bは、送り矢44の後端位置に送り矢44の長さを加算することで先端位置も把握している。
【0059】
図6図7及び図8は、図1に示した旋盤システムの動作を示すフローチャートである。
【0060】
図6図7及び図8に示すフローチャートは、電源投入後の初期動作が完了した後や新しい製品を加工するための段取り作業が完了した後、加工プログラムに従って実行される旋盤システム1のサイクル動作を示している。サイクル動作を一巡することで製品が1つ製造され、複数回巡回することで同一形状の製品が複数製造される。初期動作や段取り動作では、棒材Wの先端が突切工具で切断される。初期動作や段取り動作が完了した状態は、突切工具がストッパとして作用して棒材Wの先端が突切工具に当接している状態である。この状態では、棒材Wは送り矢44によって先端側に向かって付勢されることで突切工具に押し付けられている。
【0061】
図6に示すように、まず把持位置選択部20bは、自動制振機能が有効になっているか否かを判定する(ステップS11)。自動制振機能の有効/無効は、加工プログラムによって指定され、記憶部203に記憶されている。ただし、旋盤操作パネル24からの入力操作によって記憶部203に記憶するように構成してもよい。自動制振機能が有効である場合(ステップS11でYES)、把持位置選択部20bは、掴みかえに際して振止部材311を振止位置から退避位置に移動させるか否かに基づいて、主軸25が棒材Wを再把持する位置を所定把持位置にするか特殊把持位置にするかを選択する(ステップS12)。このステップS12が、把持位置選択工程の一例に相当する。また、この掴みかえに際して振止部材311を振止位置から退避位置に移動させる場合が、所定条件を満たす場合の一例に相当する。把持位置選択部20bは、通常は所定把持位置を選択し、所定条件を満たす場合には所定把持位置に代えて特殊把持位置を選択する。所定把持位置は、加工プログラム又は旋盤操作パネル24からの入力操作で指定された通常の把持位置である。特殊把持位置は、振れを抑制するための位置であり、所定把持位置とは別に指定されるか後述する演算によって定まる把持位置である。特殊把持位置は、所定把持位置と異なる位置であり、通常は所定把持位置よりも後退側の位置である。
【0062】
図9(a)は、振止部材を退避位置に移動させない場合の送り矢の位置を簡易的に示す平面図であり、図9(b)は、振止部材を退避位置に移動させる場合の送り矢の位置を簡易的に示す平面図である。
【0063】
給材制御部40aは、掴みかえにおいて送り矢44が所定位置を超えた位置まで前進している場合に振止部材311を振止位置から退避位置に移動させる制御を行う。なお、この所定位置は、材欠位置とも称される位置である。図9(a)は、送り矢44がこの所定位置を超えていない場合を示しており、図9(b)は、送り矢44がこの所定位置を超えている場合を示している。図9(a)および図9(b)には、掴みかえ前のコレットチャック251が二点鎖線で示され、掴みかえにおいて後退した主軸25およびコレットチャック251が実線で示されている。所定位置を超えているか否かは、送り矢位置把握部40bが判定している。そして、送り矢位置把握部40bが所定位置を超えていると判定した場合、給材制御部40aが振止部材311を振止位置から退避位置に移動させて機械制御部20aにその旨を送信している。なお、送り矢44がこの所定位置を超えているか否かを機械制御部20aが判定してもよく、機械制御部20aが振止装置31を制御して振止部材311を振止位置から退避位置に移動させてもよい。振止装置31は、主軸25とともに後退するため、振止位置にある振止部材311に送り矢44の先端が到達してしまうと振止装置31、送り矢44又は送り矢駆動機構45等が損傷してしまう虞がある。このため、主軸25が移動可能範囲の最後端にあるときの振止部材311に送り矢44の先端が到達する位置よりも少し後方となる位置が初期の所定位置として設定され第2制御装置40に設けられた不図示のメモリーに記憶されている。ただし、この所定位置は、給材機操作パネル42からの入力操作によって変更可能である。図9(b)に示すように一度退避位置に移動した振止部材311は、残材がNC旋盤2から引き抜かれるまでは退避位置に配置されたまま維持される。
【0064】
自動制振機能が無効である場合(ステップS11でNO)および掴みかえに際して振止部材311を振止位置から退避位置に移動させない場合(ステップS12でNO)、機械制御部20aは、主軸25による棒材Wの把持を解除させる(ステップS13)。ここで、掴みかえに際して振止部材311を振止位置から退避位置に移動させない場合には、振止部材311が既に退避位置にあり退避位置のまま維持する場合を含んでいる。その後、機械制御部20aは、所定把持位置に主軸25を後退させ(ステップS14)、主軸25に棒材Wを再把持させる(ステップS15)。これらステップS13~15が、掴みかえ工程の一例に相当する。
【0065】
次いで、機械制御部20aは、加工プログラムに従って主軸25と第1刃物台27を動作させることで主軸25に再把持された棒材Wの先端部分を加工する(ステップS16)。このステップS16が、加工工程の一例に相当する。主軸25を用いた加工が完了したら、機械制御部20aは、第1刃物台27を動作させて突切工具によって加工済み部分の切り離しを行う(ステップS17)。このステップS17が、切り離し工程の一例に相当する。切り離しが完了したら、機械制御部20aは、サイクル動作を開始してから、加工プログラムで指定されたサイクル数の加工が完了したか判定する(ステップS18)。指定されたサイクル数の加工が完了していたら(ステップS18でYES)、加工動作を終了する。指定されれたサイクル数の加工が完了していない場合(ステップS18でNO)はS11に戻る。
【0066】
掴みかえに際して振止部材311を振止位置から退避位置に移動させる場合(ステップS12でYES)、給材制御部40aは、振止部材311を退避位置に移動させる制御を行う(ステップS19)。そして、機械制御部20aは、特殊把持位置の計算機能が有効であるか否かを判定する(ステップS21)。特殊把持位置の計算機能の有効/無効は、加工プログラムで指定され、記憶部203に記憶されている。ただし、旋盤操作パネル24からの入力操作によって特殊把持位置の計算機能の有効/無効を記憶部203に記憶するように構成してもよい。特殊把持位置の計算機能が有効である場合(ステップS21でYES)又は後述するステップS37において特殊把持位置の指定が無い場合(ステップS37でNO)、機械制御部20aは、特殊把持位置の決定動作を実行する。
【0067】
図9(c)は、ステップS22~S29、ステップS34~S36、ステップS39~S44における特殊把持位置の決定動作に用いられる各距離を説明するための平面図である。
【0068】
第1距離L1は、掴みかえ前のコレットチャック251後端から送り矢44先端までの距離である。第2距離L2は、掴みかえにおける主軸25の計算上の後退距離である。第3距離L3は、コレットチャック251と送り矢44が衝突しないための余裕代である。この第3距離L3は、記憶部203に記憶されており、加工プログラムにおける指定または旋盤操作パネル24からの入力操作によって変更可能である。第4距離L4は、掴みかえ前の主軸25の位置から主軸25の移動可能範囲における最後端までの主軸25の移動可能距離である。第5距離L5は、棒材Wの共振を防止できる位置でコレットチャック251が棒材Wを把持したときのコレットチャック251の後端から送り矢44先端までの距離である。
【0069】
図6のステップS21において特殊把持位置の計算機能が有効である場合(ステップS21でYES)、機械制御部20aは、第1距離L1及び第4距離L4を演算する(ステップS22)。これらは、機械制御部20aが把握している主軸25の位置情報および主軸25の移動可能範囲の情報並びに送り矢位置把握部40bから随時送信されてくる送り矢44の位置情報を用いて演算される。
【0070】
次いで、機械制御部20aは、記憶部203に記憶されている棒材Wのヤング率E(N/mm)、棒材Wの直径d(mm)、加工時における主軸25の最大回転数N(rpm)、支持定数λ=1.875、棒材Wの密度γ(kg/mm)、第3距離L3(mm)を取得する(ステップS23)。これらの情報は、加工プログラムにおける指定または旋盤操作パネル24からの入力操作によって記憶部203に記憶されている。そして、機械制御部20aは、π×d÷64を演算することで棒材Wの断面二次モーメントI(mm)を算出し、π×d÷4を演算することで棒材Wの断面積A(mm)を算出する(ステップS24)。
【0071】
そして、機械制御部20aは、以下に記載する式1を用いて距離L50を演算し、その距離L50に任意の安全率Sを乗算する式2を用いて第5距離L5を演算する(ステップS25)。距離L50は、片持ち梁の構成において梁がその長さ未満であれば共振をおこさない距離である。すなわち、棒材Wを把持したコレットチャック251の後端から送り矢44先端までの距離が距離L50よりも短ければ、棒材Wが大きく振れながら危険速度で回転してしまうことはない。逆にいえば、コレットチャック251の後端から送り矢44先端までの距離が距離L50よりも長く且つ振止装置31が振れを抑制していない場合には、棒材Wが大きく振れながら回転してしまう虞がある。なお、距離L50の計算は省略してもよい。
【数1】

【数2】
【0072】
ここで、直径dが10(mm)の炭素鋼S50Cを棒材Wとして用いた例で、式2による計算の一例を記載する。ステップS24において算出される棒材Wの断面二次モーメントIは490.874(mm)、棒材Wの断面積Aは78.540(mm)である。棒材Wのヤング率Eは2.058×10(N/mm)、棒材Wの密度γは7.874×10-6(kg/mm)、主軸25の最大回転数Nは6000(rpm)とし、安全率Sとして0.4を用いる。なお、支持定数λは上述した1.875である。この例において演算される第5距離L5は、169(mm)である。
【0073】
その後、機械制御部20aは、第1距離L1と演算した第5距離L5とを比較する(ステップS251)。第1距離L1が第5距離L5以下であれば(ステップS251でNO)、ステップS13に進んで、機械制御部20aは、所定把持位に主軸25を後退させる掴みかえを実行させる。これは、第1距離L1が第5距離L5以下である場合は第1距離L1が短いので、主軸25が所定把持位置で再把持しても棒材Wが振れにくいためである。
【0074】
第1距離L1が第5距離L5を超えていれば(ステップS251でYES)、機械制御部20aは、第1距離L1から第5距離L5を減算することで、計算上の後退距離である第2距離L2を演算する(ステップS26)。その後、第2距離L2と主軸25の移動可能範囲の最後端までの距離である第4距離L4とを比較する(ステップS27)。このステップS27は、演算した第2距離L2が主軸25の移動可能範囲内にあるか否かを判定するためのステップである。第2距離L2が第4距離L4以下であれば(ステップS27でYES)、移動可能範囲内であるため、コレットチャック251後端から送り矢44先端までの距離である第1距離L1から余裕代である第3距離L3を減算した距離と第2距離L2とを比較する(ステップS28)。このステップS28は、演算した第2距離L2を主軸25が移動しても主軸25のコレットチャック251と送り矢44が干渉しないかを判定するためのステップである。第2距離L2が第1距離L1-第3距離L3以下であれば(ステップS28でYES)、第2距離L2移動しても主軸25のコレットチャック251と送り矢44が干渉する虞がないので、機械制御部20aは、主軸25が第2距離L2だけ後退した位置を特殊把持位置に決定する(ステップS29)。
【0075】
特殊把持位置を決定したら、機械制御部20aは、主軸25による棒材Wの把持を解除させる(ステップS31)。その後、機械制御部20aは、特殊把持位置に主軸25を後退させ(ステップS32)、主軸25に棒材Wを再把持させる(ステップS33)。これらステップS31~33も、掴みかえ工程の一例に相当する。再把持が完了したら、ステップS16に進んで加工を開始する。
【0076】
ステップS27において第2距離L2が第4距離L4より長ければ(ステップS27でNO)、コレットチャック251後端から送り矢44先端までの距離である第1距離L1から余裕代である第3距離L3を減算した距離と第4距離L4とを比較する(ステップS35)。このステップS35は、第4距離L4を主軸25が移動しても主軸25のコレットチャック251と送り矢44が干渉しないかを判定するためのステップである。第4距離L4が第1距離L1-第3距離L3以下であれば(ステップS35でYES)、第4距離L4移動しても主軸25のコレットチャック251と送り矢44が干渉する虞がないので、機械制御部20aは、主軸25が第4距離L4だけ後退した位置を特殊把持位置に決定する(ステップS36)。そして、ステップS31を実行しその後のステップS32において、ステップS36で決定した特殊把持位置に主軸を後退させる。
【0077】
ステップS28において第1距離L1-第3距離L3よりも第2距離L2の方が長い場合(ステップS28でNO)またはステップS35において第1距離L1-第3距離L3よりも第4距離L4の方が長い場合(ステップS35でNO)、機械制御部20aは、主軸25が第1距離L1-第3距離L3だけ後退した位置を特殊把持位置に決定する(ステップS34)。そして、ステップS31を実行しその後のステップS32において、ステップS34で決定した特殊把持位置に主軸を後退させる。
【0078】
一方、ステップS21において特殊把持位置の計算機能が無効である場合(ステップS21でNO)、機械制御部20aは、加工プログラムや旋盤操作パネル24を用いてオペレータが特殊把持位置を指定しているか否かを判定する(ステップS37)。指定している場合、特殊把持位置は、記憶部203に記憶されている。指定されている場合(ステップS37でYES)、機械制御部20aは、その指定されている位置を特殊把持位置に決定する(ステップS38)。なお、オペレータが指定する場合の特殊把持位置は、所定把持位置よりも棒材Wの後端側、すなわち所定把持位置よりも主軸25の後退側の位置に限定されている。そして、ステップS31を実行しその後のステップS32において、ステップS38で決定した特殊把持位置に主軸を後退させる。
【0079】
ステップS37において、特殊把持位置が指定されていない場合(ステップS37でNO)、機械制御部20aは、ステップS22と同様に、第1距離L1と第4距離L4を演算し(ステップS39)、第3距離L3を記憶部203から取得する(ステップS41)。次いで機械制御部20aは、第1距離L1から第3距離L3を減算した距離と第4距離L4とを比較する(ステップS42)。このステップS42は、第4距離L4を主軸25が移動しても主軸25のコレットチャック251と送り矢44が干渉しないかを判定するためのステップである。第4距離L4が第1距離L1-第3距離L3以下であれば(ステップS42でYES)、機械制御部20aは、主軸25が第4距離L4だけ後退した位置を特殊把持位置に決定する(ステップS43)。そして、ステップS31を実行しその後のステップS32において、ステップS43で決定した特殊把持位置に主軸を後退させる。
【0080】
ステップS42において第1距離L1-第3距離L3よりも第4距離L4の方が長い場合(ステップS42でNO)、機械制御部20aは、主軸25が第1距離L1-第3距離L3だけ後退した位置を特殊把持位置に決定する(ステップS44)。そして、ステップS31を実行しその後のステップS32において、ステップS44で決定した特殊把持位置に主軸を後退させる。
【0081】
棒材Wの振れは、棒材Wが危険速度(共振が生じる回転数)で回転する場合に極めて大きくなる。危険速度は、棒材Wの材質や長さなどの性状から定まるが、主軸25に通常設定される回転数では、コレットチャック251よりも後端側の棒材Wが短い場合には危険速度に達する可能性が低い。このため、コレットチャック251よりも後端側の棒材Wが短い場合、棒材Wの振れは発生しにくい。その一方で、コレットチャック251よりも後端側の棒材Wが長い場合でも振止部材311が振止位置にあるときは、振止部材311が振れを防止しているので棒材Wの振れは発生しにくい。以上説明した旋盤システム1および旋盤システム1の制御方法によれば、振止部材311を振止位置から退避位置に移動させる場合に把持位置選択部20bが所定把持位置に代えて特殊把持位置を選択している。すなわち、片持ち状態の棒材Wの後端からコレットチャック251までの長さが比較的長く振止装置31が機能していない棒材Wが最も振れやすいときに、把持位置選択部20bは特殊把持位置を選択している。これにより、棒材Wの振れ及びその振れによる主軸25の振動が抑制されるので、旋盤システムの加工品質の低下を防止することができる。
【0082】
なお、所定把持位置は主軸25の移動可能範囲のうちできるかぎり前進側に設定されることが多い。これは、コレットチャック251とガイドブッシュ26とを近づけることで、加工点において棒材Wを撓みにくくして加工品質をより高めるためである。これに対し、特殊把持位置は所定把持位置よりも主軸25の後退側の位置になるため、特殊把持位置を用いた場合には加工点における棒材Wの撓みが所定把持位置を用いた場合よりも僅かながら大きくなる虞はある。しかし、棒材Wの振れによる加工品質の低下と比較すると上述の棒材Wの撓みによる加工品質の低下は極僅かである。このため、振れが増大することが予想される位置関係にある場合には、本実施形態のように特殊把持位置を選択して棒材Wの振れを防止することが好ましい。
【0083】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素、制御および動作には、これまで用いた符号と同じ符号を付して重複する説明は省略することがある。
【0084】
図10は、第1変形例における旋盤システムの内部構成を簡易的に示す平面図である。
【0085】
図10に示すように、第1変形例の旋盤システム1では、給材機4内にも振止装置31が配置されている点が先の実施形態と異なる。図10には、給材機4内に振止装置31が2つ配置された様子が示されている。給材機4内に配置された振止装置31は、先に説明した実施形態の振止装置31と同様の構成をしているが、給材機4に固定されている点は異なる。つまり、NC旋盤1内に配置された振止装置31と異なり、給材機4内に配置された振止装置31は、主軸25の移動にかかわらず移動することはない。また、給材機4に配置された振止装置31は、給材制御部40a(図5参照)によって制御される。給材機4に振止装置31が配置されている場合、第2制御装置40は、振止部材311を振止位置から退避位置に移動させる際に移動させる旨の情報を第1制御装置20に送信する。
【0086】
そして、第1変形例の把持位置選択部20b(図5参照)は、図6に示したステップS12において3つの振止装置31のうち何れか1つが振止部材311を振止位置から退避位置に移動させる場合に特殊把持位置を選択する。すなわち、先の実施形態では1本の棒材Wから同一形状の複数の製品を製造する際に1回のみ特殊把持位置が選択されていたが、第1変形例の旋盤システム1では特殊把持位置が3回選択される。この変形例でも、先の実施形態と同様の効果を奏する。
【0087】
図11は、第2変形例における旋盤システムの動作を示す図6と同様のフローチャートである。なお、図7及び図8のフローチャートを用いて説明した動作は、この第2変形例の旋盤システム1でも同一であるため説明は省略する。
【0088】
第2変形例の旋盤システム1の把持位置選択部20b(図5参照)は、振止部材311(図2参照)の退避位置への移動に基づいて選択したステップS12の代わりに、掴みかえに際して送り矢44が第1範囲に位置しているか否かに基づいて所定把持位置と特殊把持位置の何れかを選択する(ステップS121)。この掴みかえに際して送り矢44が第1範囲に位置している場合が、所定条件を満たす場合の一例に相当する。この第2変形例の旋盤システム1では、振止部材311の退避位置への移動処理とは無関係に把持位置選択部20bによる選択が実行される。このため、図11に示すフローチャートにはステップS19の動作は記載されてない。第1範囲は、加工プログラムで指定され、記憶部203に記憶されている。ただし、旋盤操作パネル24からの入力操作によって第1範囲を指定して記憶部203に記憶するように構成してもよい。なお、第1範囲は、送り矢44の原点センサ48の検出位置からの移動距離で指定されてもよく、送り矢44の先端位置で指定されてもよい。
【0089】
この変形例でも、先の実施形態と同様の効果を奏する。加えて、振止装置31の動作位置とは別に棒材Wが振れやすい範囲をオペレータが自由に第1範囲として設定できるといった効果も奏する。
【0090】
続いて、他の実施形態の旋盤システム1について説明する。
【0091】
図12は、他の実施形態における旋盤システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0092】
図12に示すように、他の実施形態の旋盤システム1は、振動検出器32を備えている点が先の実施形態と異なる。また、把持位置選択部20b(図5参照)が、振動検出器32の検出結果に基づいて選択する点も先の実施形態と異なる。振動検出器32は、主軸25(図2参照)に取り付けられ、主に主軸25の振動を検出する。ただし、振動検出器32を、主軸台や脚などのNC旋盤2に設けられた他の構造物に取り付けてもよい。振動検出器32は、振動を検出するセンサであり検出された振動の波形は第1制御装置20に常時送信される。
【0093】
図13は、図12に示した旋盤システムの動作を示す図6と同様のフローチャートである。なお、図7及び図8のフローチャートを用いて説明した動作は、他の実施形態の旋盤システム1でも同一であるため説明は省略する。
【0094】
他の実施形態の旋盤システム1の把持位置選択部20bは、振止部材311の退避位置への移動に基づいて選択したステップS12の代わりに、振動検出器32が検出した振動が閾値を超えているか否かに基づいて所定把持位置と特殊把持位置の何れかを選択する(ステップS122)。この掴みかえに際して振動検出器32が検出した振動が閾値を超えている場合が、所定条件を満たす場合の一例に相当する。他の実施形態の旋盤システム1では、振止部材311の退避位置への移動処理とは無関係に把持位置選択部20bによる選択が実行される。このため、図13に示すフローチャートにはステップS19の動作は記載されてない。把持位置選択部20bは、振動検出器32が検出した振動が閾値を超えているか否かを、振幅の大きさによって判定している。ただし、把持位置選択部20bは、振動検出器32が検出した振動が閾値を超えているか否かを、振動の加速度によって判定してもよい。また、把持位置選択部20bは、振動検出器32が検出した振動が閾値を超えているか否かを、振幅の大きさと振動の加速度を総合的に判定してもよい。把持位置選択部20bが用いる閾値は、加工プログラムで指定され、記憶部203に記憶されている。ただし、旋盤操作パネル24からの入力操作によって閾値を指定して記憶部203に記憶するように構成してもよい。
【0095】
以上説明した他の実施形態においても、先の実施形態と同様の効果を奏する。加えて、振動検出器32が検出した振動に基づいて把持位置選択部20bが再把持する位置を選択するので、実際の振動に対応した選択をすることができる。
【0096】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことができる。また、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 旋盤システム(工作機械システム)
20b 把持位置選択部
25 主軸
27 第1刃物台(刃物台)
T1 第1工具T1(加工工具)
W 棒材
図1
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図13